以下、本発明の一実施の形態に係る共焦点変位計について図面を参照しながら説明する。
[1]第1の実施の形態
(1)共焦点変位計の基本構成
図1は、第1の実施の形態に係る共焦点変位計の構成を示す模式図である。図1に示すように、共焦点変位計500は、処理装置100、計測ヘッド200、導光部300、PC(パーソナルコンピュータ)600、主表示部700および操作部800を備える。導光部300は、複数の光ファイバを含み、処理装置100と計測ヘッド200とを光学的に接続する。
処理装置100は、筐体110、投光部120、分光部130、受光部140、演算処理部150、電力供給部160および副表示部400を含む。筐体110は、投光部120、分光部130、受光部140、演算処理部150および電力供給部160を収容する。副表示部400は、7セグメント表示器またはドットマトリクス表示器等の表示器を含み、筐体110に取り付けられる。投光部120は、広い波長帯域(例えば500nm〜700nm)の光すなわち複数の波長を有する光を出射可能に構成される。投光部120の詳細な構成については後述する。投光部120により出射された光は、後述する導光部300の光ファイバ311に入力される。
分光部130は、回折格子131および複数(本例では2個)のレンズ132,133を含む。後述するように、投光部120により出射されて計測対象物Sの表面で反射された光の一部が、導光部300の光ファイバ312から出力される。光ファイバ312から出力された光は、レンズ132を通過することにより略平行化され、回折格子131に入射される。本実施の形態においては、回折格子131は反射型の回折格子である。回折格子131に入射された光は、波長ごとに異なる角度で反射するように分光され、レンズ133を通過することにより波長ごとに異なる一次元上の位置に合焦される。
受光部140は、複数の画素が一次元状に配列された撮像素子(一次元ラインセンサ)を含む。撮像素子は、多分割PD(フォトダイオード)、CCD(電荷結合素子)カメラまたはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサであってもよいし、他の素子であってもよい。受光部140は、分光部130のレンズ133により形成された波長ごとに異なる複数の合焦位置で撮像素子の複数の画素がそれぞれ光を受光するように配置される。受光部140の各画素からは、受光量に対応するアナログの電気信号(以下、受光信号と呼ぶ。)が出力される。受光信号は、各画素で受光される光の強度を示す。
演算処理部150は、記憶部151および制御部152を含む。記憶部151は、例えばROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)またはハードディスクを含む。記憶部151には、処理装置100内の各構成要素を制御するための制御プログラムおよび変位を算出するための算出プログラムが記憶されるとともに、変位計測に用いられる種々のデータが記憶される。制御部152は、例えばCPU(中央演算処理装置)を含む。
制御部152は、受光部140により出力される受光信号を取得し、記憶部151に記憶された算出プログラムおよびデータに基づいて計測対象物Sの変位を計測し、計測結果を副表示部400に表示する。
ここで、演算処理部150には、PC600が接続される。PC600は、CPU(中央演算処理装置)601およびメモリ602を含む。メモリ602には、変位計測プログラムが記憶されるとともに、変位計測に用いられる種々のデータが記憶される。
処理装置100の制御部152は、さらに受光部140から取得された受光信号をPC600のCPU601に与える。CPU601は、制御部152から与えられた受光信号を取得し、メモリ602に記憶された変位計測プログラムおよびデータに基づいて計測対象物Sの変位を計測するとともに、その計測結果に関する種々の処理を行う。例えば、CPU601は、計測結果の値を表示部700に表示する。また、CPU601は、制御部152から与えられた受光信号の波形を表示部700に表示する。さらに、CPU601は、現時点よりも前の複数の時点で取得された複数の計測結果についての統計を表示部700に表示する。
計測ヘッド200は、略軸対称形状(例えば、円筒形状)を有する筐体210、光ファイバ314、光照射部1およびレンズユニット220を含む。筐体210は、光ファイバ314、光照射部1およびレンズユニット220を収容する。
筐体210の一端に後述する導光部300のファイバコネクタ330が取り付けられている。光ファイバ314は、筐体210内でファイバコネクタ330に接続されている。処理装置100から光ファイバ314に導光部300を通して光が導かれる。光ファイバ314に導かれた光は、筐体210内で光ファイバ314から出力され、レンズユニット220に導かれる。
レンズユニット220は、屈折レンズ221、回折レンズ222および対物レンズ223を含む。レンズユニット220に導かれた光は、屈折レンズ221および回折レンズ222を順に通過する。これにより、光軸方向に沿って光に色収差が発生する。色収差が発生した光は、対物レンズ223を通して筐体210の外部に導かれ、計測対象物Sに照射される。対物レンズ223は、色収差が発生した光が計測対象物Sの表面近傍の位置で合焦可能に配置される。
光照射部1は、例えば電動式の駆動機構を含み、計測ヘッド200から計測対象物Sに向かって照射される光をレンズユニット220の光軸に直交する方向へシフトさせる。なお、光照射部1は、計測対象物Sに照射される光をシフトさせることができればよく、筐体210の内部に設けられなくてもよい。この場合、光照射部1は、例えば筐体210を計測対象物Sに対して相対的に移動させることが可能に構成されてもよいし、計測対象物Sを筐体210に対して相対的に移動させることが可能に構成されてもよい。
本例の光照射部1には、図示しない電源ケーブルを介して処理装置100の電力供給部160から電力が供給される。そのため、光照射部1に電力を供給するための装置を筐体210に収容する必要がない。これにより、計測ヘッド200を小型化および軽量化することができる。
導光部300は、複数(本例では3個)の光ファイバ311,312,319、ファイバカプラ320およびファイバコネクタ330を含む。図1の例では、ファイバカプラ320は処理装置100の筐体110に設けられる。ファイバコネクタ330は上記のように計測ヘッド200の筐体210に取り付けられる。本発明はこれに限定されず、ファイバカプラ320は処理装置100の筐体110以外の部分に設けられてもよい。また、ファイバコネクタ330は計測ヘッド200の筐体210以外の部分に設けられてもよい。
ファイバカプラ320は、いわゆる1×2型の構成を有し、3個のポート321〜323および本体部324を含む。ポート321,322とポート323とは、本体部324を挟んで対向するように本体部324に接続される。ポート321,322の少なくとも1つのポートに入力された光は、ポート323から出力される。ポート323に入力された光は、ポート321,322の各々から出力される。
ファイバコネクタ330は、2個のポート331,332および本体部333を含む。ポート331とポート332とは、本体部333を挟んで対向するように本体部333に接続される。ポート331に入力された光はポート332から出力され、ポート332に入力された光はポート331から出力される。
ファイバカプラ320のポート321,322には、光ファイバ311,312がそれぞれ接続される。ファイバコネクタ330のポート332には、光ファイバ314が接続される。ファイバカプラ320のポート323とファイバコネクタ330のポート331とが光ファイバ319により接続される。
この構成によれば、処理装置100の投光部120により出射された光は、光ファイバ311を通してファイバカプラ320のポート321に入力される。ポート321に入力された光は、ポート323から出力され、光ファイバ319を通してファイバコネクタ330のポート331に入力される。ポート331に入力された光は、ポート332から出力され、光ファイバ314およびレンズユニット220を通して計測対象物Sに照射される。
計測対象物Sの表面で反射された光の一部は、レンズユニット220および光ファイバ314を通してファイバコネクタ330のポート332に入力される。ポート332に入力された光は、ポート331から出力され、光ファイバ319を通してファイバカプラ320のポート323に入力される。ポート323に入力された光は、ポート321,322から出力される。ポート322から出力された光は、光ファイバ312を通して分光部130に導かれる。これにより、変位計測処理が行われる。
主表示部700は、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルまたは液晶ディスプレイパネル等の表示装置を含む。操作部800は、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。ポインティングデバイスは、マウスまたはジョイスティック等を含む。主表示部700および操作部800は、PC600に接続される。上記のように、主表示部700には、例えば変位の計測結果の値または受光信号の波形等が表示される。使用者は、操作部800を操作することにより、例えば主表示部700に表示される種々のボタンを操作すること、および変位計測に関する所望の情報を入力することができる。
図2は、主表示部700における計測結果の値の表示例である。図3は、主表示部700における受光信号の波形の表示例である。
図2の例では、主表示部700に、変位の計測結果を示す数値が表示されるとともに切替ボタン491が表示される。また、図3の例では、主表示部700に、現時点で取得される受光信号の波形が表示されるとともに切替ボタン491が表示される。図3の受光信号の波形を示すグラフにおいては、横軸は受光された光の波長を示し、縦軸は受光信号の強度を示す。
使用者は、図1の操作部800を用いて図2の切替ボタン491を操作することにより、主表示部700の表示状態を図3の受光波形の表示状態に切り替えることができる。また、使用者は、図1の操作部800を用いて図3の切替ボタン491を操作することにより、主表示部700の表示状態を図2の数値による計測結果の値の表示状態に切り替えることができる。
PC600は、さらにプログラマブルコントローラ等の図示しない外部装置に接続可能に構成され、変位の計測結果および受光信号を外部装置に送信することが可能である。
PC600には、計測対象物Sの計測距離に対する良否判定用の基準範囲が設定されてもよい。この場合、計測距離が基準範囲内であるときには、計測対象物Sが良品であることを示す判定結果(例えば「OK」)が主表示部700に表示される。一方、計測距離が基準範囲外であるときには、計測対象物Sが不良品を示す判定結果(例えば「NG」)が主表示部700に表示される。
(2)共焦点変位計の動作原理
図4は、計測ヘッド200を用いた共焦点変位計500の動作原理を説明するための図である。図4に示すように、光ファイバ314は、コア310aおよびクラッド310bを含む。コア310aはクラッド310bにより被覆される。コア310aの一端部に入力された光は、コア310aの他端部から出力される。なお、図1の光ファイバ311,312,319も光ファイバ314と同様の構成を有する。コア310aの直径は、200μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
光ファイバ314から出力された光は、屈折レンズ221および回折レンズ222を通過する。これにより、光に色収差が発生する。色収差が発生した光は、対物レンズ223を通過することにより波長ごとに異なる位置で合焦する。例えば、波長が短い光は対物レンズ223に近い位置で合焦し、波長が長い光は対物レンズ223から遠い位置で合焦する。対物レンズ223に最も近い合焦位置P1と対物レンズ223から最も遠い合焦位置P2との間の範囲が計測範囲MRとなる。本例では、屈折レンズ221は凸型を有し、回折レンズ222は凹型を有する。この場合、光に発生する色収差が大きくなる。これにより、計測範囲MRを大きくすることができる。
計測範囲MRに計測対象物Sの表面が存在する場合には、対物レンズ223を通過した光は、計測対象物Sの表面に照射された後、当該表面により広範囲に反射される。ここで、本実施の形態においては、光ファイバ314の先端部分は、微小なピンホールを有する空間フィルタとして機能する。したがって、計測対象物Sの表面で反射された光のほとんどは、光ファイバ314に入力されない。
一方、計測対象物Sの表面の位置で合焦した特定の波長を有する光は、当該表面で反射されることによりレンズユニット220を通過し、光ファイバ314のコア310aの先端部分に入力される。光ファイバ314に入力された光の波長は、計測距離を示す。ここで、計測距離とは、所定の基準位置RPから計測対象物Sの表面の位置までの距離である。なお、本例では、基準位置RPは計測対象物Sに最も近い筐体210の端部の位置である。
光ファイバ314に入力された光は、図1の処理装置100に導かれ、回折格子131により分光されるとともにレンズ133により波長ごとに異なる位置に合焦される。受光部140の複数の画素は、波長ごとに異なる複数の光の合焦位置にそれぞれ配置される。そのため、受光部140の各画素は、当該画素に対応付けられた波長の光を受光し、受光信号を出力する。
この構成によれば、受光信号を出力する受光部140の画素の位置を特定することにより、受光された光の波長を特定することができる。また、受光された光の波長を特定することにより、計測距離を特定することができる。しかしながら、計測対象物Sの表面における光の乱反射により、計測対象物Sの表面の位置とは異なる位置で合焦すべき光が光ファイバ314に入力されることがある。この場合、処理装置100により特定される計測距離には、計測対象物Sの表面の粗さよりも大きい度合いの計測誤差が発生する。
本実施の形態に係る共焦点変位計500においては、光照射部1が、計測対象物Sに向かって照射される光をレンズユニット220の光軸に直交する方向へシフトさせる。この場合、計測対象物Sの表面の複数の領域に光が照射される。以下、計測対象物Sの表面上で計測ヘッド200から光が照射される領域を照射領域と呼ぶ。光がシフトされるごとに、照射領域の位置で合焦した光がレンズユニット220を通過して光ファイバ314のコア310aに入力され、受光部140により受光される。
図5は、受光部140により受光された光の波長と受光信号の強度との関係を示す図である。図5の横軸は受光された光の波長を示し、縦軸は受光信号の強度を示す。後述する図8〜図10および図12においても同様である。図5ならびに後述する図8〜図10および図12の横軸は、受光部140の画素の位置に相当する。
本例では、光照射部1は、計測対象物Sの表面の互いに異なる4つの部分に光が順次照射されるように、計測ヘッド200から計測対象物Sに向かって照射される光をシフトさせる。図5においては、計測対象物Sの表面の4つの部分に光が照射されるときに光ファイバ314に入力される光に対応する受光信号の波形(以下、受光波形と呼ぶ。)W1〜W4が、点線、一点鎖線、二点鎖線および破線によりそれぞれ示される。受光波形W1〜W4のピークの波長(以下、ピーク波長と呼ぶ。)は、それぞれλ1〜λ4である。複数の受光波形W1〜W4のピーク波長λ1〜λ4は、計測対象物Sの表面の乱反射により互いに異なる。
そこで、受光部140は、計測対象物Sの表面における照射領域の複数の部分に光が照射される期間の間露光を行う。照射領域の複数の部分について光が照射された後、受光部140の各画素から全露光期間に積算された受光信号が出力される。これにより、受光部140から出力される受光信号には、強度の平均化処理が行われる。第1の実施の形態における平均化処理とは、計測対象物Sの照射領域の複数の部分により反射されてピンホールを順次通過した複数の光についての波長ごとの強度の平均に対応する平均信号を生成する処理を意味する。本例では、平均化処理は積算処理である。図5においては、受光部140により出力される平均化処理後の受光波形W0が実線で示される。受光波形W0のピーク波長はλ0である。
このように、光学的に受光波形W0の平均化処理が行われることにより、乱反射によるランダムな計測誤差を発生させる光の成分が打ち消される。そのため、ピーク波長λ0は、ピーク波長λ1〜λ4よりも真の計測距離に対応するピーク波長に近い。ここで、真の計測距離とは、光の乱反射が生じないときに特定されるべき計測距離である。したがって、受光波形W0のピーク波長λ0を特定することにより、計測距離をより正確に特定することができる。
(3)投光部
図6(a),(b)は、それぞれ投光部120の構成を示す平面図および断面図である。図6(a),(b)に示すように、投光部120は、光源121、蛍光体122、フェルール123、レンズ124、保持具125、フィルタ素子126および素子ホルダ127を含む。素子ホルダ127は、光源固定部127A、フェルール固定部127Bおよびレンズ固定部127Cを含む。光源121、フェルール123およびレンズ124は、素子ホルダ127の光源固定部127A、フェルール固定部127Bおよびレンズ固定部127Cにそれぞれ固定される。
光源121は、単一波長の光を出射するレーザダイオードである。本実施の形態においては、光源121は波長450nm以下の青色領域または紫外領域の光を出射する。蛍光体122は、青色領域または紫外領域の励起光を吸収し、励起光の波長領域とは異なる波長領域の蛍光を放出する。
本例の蛍光体122から放出される蛍光は、励起光に比べて広い範囲の波長を有する。すなわち、蛍光体122から放出される蛍光は、複数の波長を有する。なお、蛍光体122は、黄色領域の蛍光を放出してもよいし、緑色領域の蛍光を放出してもよいし、赤色領域の蛍光を放出してもよい。また、蛍光体122は、複数の蛍光部材により構成されてもよい。
フェルール123は、図1の導光部300の光ファイバ311の端部を保持する。レンズ124は、光源121とフェルール123との間に配置される。フェルール123(光ファイバ311)の端部には、円環状を有する保持具125の一端面が取り付けられる。保持具125の内周部に蛍光体122が収容される。保持具125内の蛍光体122を覆うように保持具125の他端面にフィルタ素子126が取り付けられる。フィルタ素子126は反射型フィルタであり、黄色領域、緑色領域または赤色領域の光を反射するとともに、青色領域または紫外領域の光を透過させる。
この構成によれば、光源121により出射された光は、レンズ124を通過することにより、励起光として蛍光体122上に集光される。蛍光体122は、励起光を吸収して蛍光を放出する。ここで、蛍光体122に吸収されずに透過した励起光と蛍光体122からの蛍光とが混合されることにより、広い波長帯域の光が生成される。本例においては、励起光と蛍光とが所望の割合で混合された光を生成するために、光路方向における蛍光体122の厚みが、例えば10μm〜200μmに形成される。また、保持具125内における蛍光体122の濃度が、例えば30%〜60%に形成される。
投光部120において生成された光は、フェルール123を通過することにより光ファイバ311に入力される。蛍光体122により光ファイバ311とは反対の方向に放出された蛍光は、フィルタ素子126により光ファイバ311の方向に反射される。これにより、蛍光を効率よく光ファイバ311に入力することができる。
本例においては、蛍光体122は保持具125内に収容されるが、本発明はこれに限定されない。蛍光体122は、フェルール123の端面に塗布されてもよい。この場合、投光部120は保持具125を含まない。また、投光部120はフィルタ素子126を含むが、本発明はこれに限定されない。十分な蛍光が光ファイバ311に入力される場合には、投光部120はフィルタ素子126を含まなくてもよい。
(4)演算処理部
図1の演算処理部150の記憶部151には、受光部140の画素の位置と、出力される受光波形W0のピーク波長λ0と、計測距離との換算式が上記の算出プログラムとともに予め記憶されている。演算処理部150の制御部152は、受光信号を出力する画素の位置を特定するとともに、特定された画素の位置および記憶部151に記憶された換算式に基づいて受光波形W0のピーク波長λ0および計測距離を順次算出し、算出した計測距離を副表示部400に表示する。これにより、計測対象物Sの厚み、距離または変位を計測することができる。また、制御部152は、計測距離をより正確に算出するために、以下に説明する不要成分除去補正、受光波形シフト補正および受光波形尺度補正を行う。
(a)不要成分除去補正
計測対象物Sの表面で合焦しつつ反射された光とは異なる光が受光部140により受光されることがある。以下の説明では、受光部140により受光される光のうち計測対象物Sの表面で合焦しつつ反射された光を除く光を不要光と呼ぶ。
図7は、計測対象物Sとは異なる部分で反射される不要光の一例を示す模式図である。図7では、図1の光照射部1の図示は省略する。図7の例においては、レンズユニット220の屈折レンズ221により直接反射された光(矢印で示す光)が光ファイバ314に入力される。このような光に対応する受光波形W0は、計測距離を示す成分を含まずに、不要な成分を含む。
図8は、不要な成分を含む受光波形W0を示す図である。図8の受光波形W0には、3個のピークP0,Px,Pyが含まれる。ピークP0は、計測対象物Sの表面で合焦しつつ反射された光により発生する。ピークP0は急峻な形状を有し、ピーク波長はλ0である。ピークPxは、例えば図7の不要光に対応する成分を含み、計測対象物Sとは異なる部分で反射された光により発生する。ピークPxは滑らかな形状を有し、ピーク波長はλxである。ピークPyは、発振波長λyの光源121(図6)の光により発生する。より具体的には、ピークPyは、光源121(図6)により発生されるとともに蛍光体122(図6)を通過しつつ計測対象物Sの表面に導かれ、計測対象物Sの表面で合焦することなく反射された不要光により発生する。ピークPyは急峻な形状を有し、ピーク波長はλyである。
ピーク波長λxはピーク波長λ0に比較的近く、ピークPxの幅は広い。そのため、ピークP0はピークPxに埋もれることとなる。この場合、ピーク波長λ0を正確に特定することは困難である。そこで、受光波形W0からピークPxに起因する部分(以下、基底波形BLと呼ぶ。)を不要成分として除去するための不要成分除去補正が行われる。
図9は、受光波形W0の基底波形BLを示す図である。本実施の形態では、制御部152は、ピークPxとピークP0とを識別する低域通過フィルタ処理を受光波形W0に適用することにより、図9の基底波形BLを取得する。基底波形BLを取得する方式は上記の方式に限定されず、図1の記憶部151に基底波形BLを示すデータが予め記憶されていてもよい。この場合、制御部152は、取得した図9の基底波形BLに基づいて、図8の受光波形W0から基底波形BLを除去するように受光波形W0の補正を行う。
図10は、基底波形BLが除去された受光波形W0を示す図である。図10の例では、ピーク波長λ0が図8のピーク波長λ0よりも短波長側にわずかにシフトしている。このように、受光波形W0から基底波形BLを除去することにより、ピーク波長λ0をより正確に特定することができる。その結果、計測距離をより正確に算出することが可能になる。
ここで、図8の受光波形W0のピークPyに起因する部分は、ピーク波長λ0の正確な特定に影響を与えない。したがって、不要成分除去補正においては、受光波形W0のピークPyに起因する部分は、受光波形W0から除去されなくてもよいし、受光波形W0から除去されてもよい。ピークPyに起因する部分が計測範囲MR(図4)に対応する波長の範囲に近い場合には、基底波形BLとともに受光波形W0のピークPyに起因する部分を受光波形W0から除去することが好ましい。
なお、本実施の形態では、レーザダイオードからなる光源121により出射される励起光の強度が変位の計測に適した強度に対して過剰に大きいので、励起光に相当する波長成分の光を不要光としている。したがって、光源121により出射される励起光の強度が変位の計測に適した範囲内であれば励起光を変位の計測に用いてもよい。
不要光のさらに他の例について説明する。図11は、受光部140に導かれる光の経路を示す図である。図11に示すように、受光部140には、回折格子131により分光された1次光に加えて、回折格子131により0次回折(本例では正反射)された0次光が導かれる。図11においては、1次光が実線で示され、0次光が一点鎖線で示される。
図12は、図11の受光部140に導かれる光の受光波形W0を示す図である。図12に示すように、受光波形W0は、1次光に対応する部分と0次光に対応する部分とを含む。図8の受光波形W0と同様に、1次光に対応する受光波形W0の部分には、3個のピークP0,Px,Pyが含まれる。0次光に対応する受光波形W0の部分には、1個のピークPzが含まれる。
0次光は、波長に関係なく回折格子131により一定の方向に反射される。回折格子131は、0次光が計測範囲MR(図4)に対応する画素で受光されないように配置される。そのため、0次光は、計測距離の算出には用いられない。図12に示すように、受光波形W0が不要光として0次光の成分を含む場合、不要成分除去補正においては、受光波形W0のピークPzに起因する部分は、受光波形W0から除去されなくてもよいし、受光波形W0から除去されてもよい。
(b)受光波形シフト補正および受光波形尺度補正
以下の説明では、図7の例で説明したように、投光部120から出射されるとともにレンズユニット220で反射されて受光部140に受光される不要光を第1の不要光と呼ぶ。また、光源121により発生されて蛍光体122を通過しつつ計測対象物Sの表面に導かれ、計測対象物Sの表面で合焦することなく反射されて受光部140に受光される不要光を第2の不要光と呼ぶ。さらに、図11の例で説明したように、回折格子131により発生されて受光部140に受光される0次光を第3の不要光と呼ぶ。
上記のように、特定の波長を有する光は、当該波長に対応付けられた受光部140の画素により受光される。しかしながら、周囲の温度変化に伴う受光部140の受光面の位置の変化または受光面の傾きの変化により、特定の波長を有する光が予め対応付けられた画素とは異なる画素により受光されることがある。この場合、温度変化に伴って計測結果が変動することにより計測距離を正確に算出することができない。そこで、以下に説明する受光波形シフト補正および受光波形尺度補正が行われる。受光波形シフト補正は、温度に依存する受光波形W0の波長軸上のシフトを補正する処理である。受光波形尺度補正は、温度に依存する受光波形W0の波長軸上での尺度を補正する処理である。
計測対象物Sの変位を計測する際の受光波形W0には、例えば図12に示すように、計測対象物Sの変位に依存するピークP0とともに第1〜第3の不要光にそれぞれ対応するピークPx,Py,Pzが含まれる。
ピークPxは、第1の不要光が計測対象物Sに到達しないので、計測対象物Sの変位に依存しない。また、ピークPyは、第2の不要光が光源121の発振波長λyを有するので、計測対象物Sの変位に依存しない。また、ピークPzは、第3の不要光が波長に関係なく受光部140の特定の画素により受光されるので、計測対象物Sの変位に依存しない。受光波形シフト補正では、3つのピークPx,Py,Pzのうち少なくとも1つが用いられる。受光波形尺度補正では、3つのピークPx,Py,Pzのうち少なくとも2つが用いられる。
受光波形シフト補正を行うために、図1の記憶部151には、ピークPx,Py,Pzのうち少なくとも1つのピークの中心が現れるべき波長が基準波長として予め記憶される。制御部152は、記憶部151に記憶された基準波長に対応するピークPx〜Pzの波長を特定する。制御部152は、特定したピークPx〜Pzの波長と基準波長とを比較することにより受光波形W0の波長軸上でのシフト量を算出し、算出されたシフト量に基づいて受光波形W0の波長軸上でのシフトを補正する。図12には、受光波形W0の波長軸上でのシフトが補正された後の受光波形W0が点線で示されている。
受光波形尺度補正を行うために、記憶部151には、ピークPx,Py,Pzの少なくとも2つのピークの中心が現れるべき波長の間隔が基準間隔として予め記憶される。制御部152は、記憶部151に記憶された基準間隔に対応するピークPx〜Pzの間隔を特定する。制御部152は、特定したピークPx〜Pzの間隔と基準間隔とを比較することにより受光波形W0の波長軸上での尺度のずれを算出し、算出した尺度のずれに基づいて受光波形W0の波長軸上での尺度を補正する。
受光部140の温度特性に関する補正として、受光波形シフト補正および受光波形尺度補正のうち一方のみが行われてもよいし、両方が行われてもよい。受光波形シフト補正および受光波形尺度補正は、上記の不要成分除去補正よりも先に行われる。受光波形シフト補正および受光波形尺度補正が行われた後の受光波形W0のピークP0を特定することにより、計測距離をより正確に算出することができる。
制御部152において不要成分除去補正、受光波形シフト補正および受光波形尺度補正が行われた受光信号がPC600に与えられる。この場合、CPU601は、適切に補正された受光信号に基づいて変位を計測することができる。
(5)効果
本実施の形態に係る共焦点変位計500においては、複数の波長を有する光が投光部120により出射される。投光部120により出射された光は、計測ヘッド200において光照射部1により計測対象物Sの複数の部分に順次照射される。光照射部1により計測対象物Sに照射される光には、レンズユニット220により光軸方向に沿った色収差が発生する。また、色収差を有する光はレンズユニット220により収束される。
計測対象物Sの表面の複数の部分で合焦しつつ反射された波長の光が光ファイバ314のコア310aを順次通過する。光ファイバ314を順次通過した複数の光は、ファイバコネクタ330、光ファイバ319、ファイバカプラ320および光ファイバ312を通して分光部130に順次導かれ、分光される。分光部130により分光された複数の光は、計測対象物Sの表面の複数の部分にそれぞれ光が照射される期間に受光部140により受光される。そのため、受光部140から出力される波長ごとの受光量を示す電気的な受光信号は、複数の部分にそれぞれ対応する複数の光についての波長ごとの強度が積算された平均信号となる。これにより、複数の光の平均化処理を容易に行うことができる。平均化処理後の光の強度に基づいて、制御部152により計測対象物Sの変位が算出される。
計測対象物Sの表面での乱反射により、計測対象物Sの表面の位置とは異なる位置で合焦した光が光ファイバ314を通過することがある。そのような場合でも、上記の構成によれば、平均化処理において光ファイバ314を通過した複数の光についての波長ごとの強度が平均される。それにより、乱反射によるランダムな計測誤差を発生させる光の成分が打ち消される。さらに、上記の構成においては、計測対象物Sの変位が算出される前に、不要成分除去補正により受光波形W0から少なくとも基底波形BLを含む不要光の成分が除去される。これらの結果、共焦点変位計500により計測される計測対象物Sの変位の誤差を低減することができる。
また、上記の構成においては、不要成分除去補正の前に受光波形シフト補正が行われる。受光波形シフト補正として、計測対象物Sの変位に依存しない第1〜第3の不要光にそれぞれ対応するピークPx,Py,Pzのうち少なくとも1つのピークに基づいて温度に依存する受光波形W0の波長軸上でのシフトが補正される。それにより、温度変化に伴って受光波形W0が波長軸上でシフトすることによる計測結果の変動を補償することができる。
さらに、上記の構成においては、不要成分除去補正の前に受光波形尺度補正が行われる。受光波形尺度補正として、計測対象物Sの変位に依存しない第1〜第3の不要光にそれぞれ対応するピークPx,Py,Pzのうち少なくとも2つのピークに基づいて温度に依存する受光波形W0の波長軸上での尺度が補正される。それにより、温度変化に伴う受光波形W0の波長軸上での尺度のずれによる計測結果の変動を補償することができる。
また、上記の構成においては、平均化処理を行うための演算を行う必要がないので、計測対象物Sの変位を効率よく算出することができる。
また、本実施の形態においては、光ファイバ314の先端部分がピンホールとして機能する。この場合、ピンホールを別個に配置する必要がない。これにより、共焦点変位計500の構成をコンパクトにすることができる。このように、光ファイバ314のクラッド310bを遮光部とし、コア310aをピンホールとして用いることにより、簡易な構成で共焦点光学系を実現することができる。一方で、光の損失を許容できる場合には、遮光性を有する板にピンホールを設けた遮光部材を計測ヘッド200側における光ファイバ314の端部に配置してもよい。
さらに、本実施の形態においては、処理装置100と計測ヘッド200とが別体的に設けられ、導光部300により光学的に接続される。そのため、計測対象物Sの形状もしくは配置等に応じて適切な色収差を発生させるレンズユニット220または適切な焦点距離を有するレンズユニット220を含む計測ヘッド200を用いることが容易になる。これにより、計測対象物Sの変位をより容易に計測することができる。
また、導光部300が光ファイバを含むことにより、処理装置100と計測ヘッド200とを離間して配置することができる。計測ヘッド200には発熱源が存在しない。そのため、計測ヘッド200を多様な環境に配置することができる。また、後述するように、計測ヘッド200の露出する部分をガラスにより形成することにより、計測ヘッド200をより多様な環境に配置することができる。
上記のように、投光部120においては、レーザダイオードからなる光源121により出射された光の一部が蛍光体122に吸収される。それにより、蛍光体122から複数の波長を有する光が発生される。発生された光は、レンズユニット220を通して色収差が発生されつつ計測対象物Sに照射される。それにより、計測対象物Sの変位を計測するための複数の波長の光を容易に発生させることができる。
光源121としてレーザダイオードを用いる場合には、導光部300が光ファイバを含むことが好ましい。例えば、図6に示すように、光源121により出射されるレーザ光により蛍光体122を励起し、複数の波長を有する光を生成する場合には、光ファイバを用いることにより生成された光を効率よく抽出することができる。また、光ファイバを用いることにより、抽出された光を計測ヘッド200に効率よく供給できる。
また、投光部120においては、光源121により出射された光がレンズ124を通過することにより蛍光体122上に集光される。それにより、蛍光体122に入射する光の光量を増大させることができる。それにより、蛍光体122からレンズユニット220へ出射される複数の波長の光の光量が増加する。したがって、計測対象物Sの表面上に形成される照射領域のサイズを小さくした場合でも、光ファイバ314のコア310aを通過する光の光量が著しく低下することが防止される。したがって、照射領域のサイズを小さくすることが可能となる。
上記のように、レンズユニット220は、凸型を有する屈折レンズ221と凹型を有する回折レンズ222を含む。また、屈折レンズ221および回折レンズ222は、光ファイバ314から出力された光が、屈折レンズ221および回折レンズ222を通過するように配置される。この場合、屈折レンズ221および回折レンズ222によって発生する色収差の方向がそれぞれのレンズで同じ方向になるため、結果としてレンズユニット220の光軸上の色収差が大きくなる。したがって、共焦点変位計500の計測範囲MRを大きくすることができる。
(6)光照射部の具体的な構成
図13は、図1の共焦点変位計500のより具体的な構成を示す模式図である。図13の共焦点変位計500では、図1の光照射部1として計測ヘッド200の筐体210の内部に平板部材230および駆動部240が設けられる。
平板部材230は、透過性を有する平板状の部材により形成される。平板部材230は、例えば平板ガラスであってもよいし、レンズ素子であってもよいし、他の素子であってもよい。駆動部240は、例えば中空モータである。駆動部240には、図示しない電源ケーブルを介して処理装置100の電力供給部160から電力が供給される。
図14は、図13の計測ヘッド200を用いた共焦点変位計500の動作原理を説明するための図である。図14に示すように、駆動部240は、円筒状の固定部241および円筒状の回転軸242を含む。回転軸242は、固定部241と同心になるように固定部241の中空部分に設けられる。
光ファイバ314の端部は、例えば図示しないフェルールに挿入された状態で、回転軸242の中空部分に固定される。平板部材230は、入射面231および出射面232が光ファイバ314の光軸に直交する面に対して傾斜した状態で回転軸242に取り付けられる。光ファイバ314から光が出射された状態で、回転軸242が回転する。駆動部240の回転速度は100rpm以上が好ましく、6000rpm以上がより好ましい。駆動部240は連続的に回転するが、本発明はこれに限定されない。駆動部240は間欠的に回転してもよい。
図15は、図14の駆動部240の回転時における光の光路を示す図である。図15(a)は、初期時点における光の光路を示す。図15(b)は、初期時点から一定時間が経過した時点(初期時点から駆動部240が90度回転した時点)における光の光路を示す。図15(c)は、図15(b)の時点からさらに一定時間が経過した時点(図15(b)の時点から駆動部240がさらに90度回転した時点)における光の光路を示す。
図15(a)〜(c)に示すように、光ファイバ314から出力された光は、光ファイバ314の光軸と略平行に平板部材230の入射面231に入射される。平板部材230の入射面231は光ファイバ314の光軸に直交する面に対して傾斜しているので、平板部材230の入射面231に入射された光は、入射角に対して傾斜した角度で平板部材230内を透過する。その後、光は、入射角と略等しい角度で平板部材230の出射面232から出射される。これにより、光をシフトさせつつ、図14のレンズユニット220を通して計測対象物Sに光を照射することができる。
図16は、図14の計測ヘッド200により光が照射される計測対象物Sの領域を示す図である。図16に示すように、計測対象物Sの表面の円環状の領域に光が照射される。このように、計測対象物Sの表面に円環状の照射領域IRが形成される。この構成によれば、計測対象物Sの表面の直線状の領域に光を照射する場合に比べて、光照射部1の物理的な動作部分の負担が小さい。これにより、平板部材230および駆動部240の寿命を長期化することができる。平板部材230の傾斜角度、厚みおよび屈折率等を選択することにより、照射領域IRの外径ODを決定することができる。本例では、外径ODは例えば250μmである。このように外径ODは微小であるため、使用者には照射領域IRは円環状ではなく1つの点として認識される。
計測対象物Sの照射領域IRで反射された光のうち、照射領域IRの位置で合焦した光がレンズユニット220および平板部材230を通過して光ファイバ314に入力され、受光部140により受光される。
駆動部240が1回転する期間のうち互いに異なる複数の時点では、計測対象物Sの互いに異なる複数の部分にそれぞれ光が照射される。それにより、複数の時点においては、例えば図5に示されるような複数の受光波形W1〜W4を取得することができる。そこで、受光部140は、駆動部240が1回転する期間の間露光を行う。なお、本例では受光部140は連続的に露光を行うが、本発明はこれに限定されない。受光部140は間欠的に露光を行ってもよい。
駆動部240が1回転した後、受光部140の各画素から露光期間に積算された受光信号が出力される。これにより、受光部140から出力される受光信号には、強度の平均化処理が行われる。その結果、図5の受光波形W0が得られる。したがって、受光波形W0のピーク波長λ0を特定することにより、計測距離をより正確に特定することができる。
照射領域IRの外径ODは100μm以上であることが好ましい。この場合、計測対象物Sの表面における十分に大きな領域の複数の部分で光が反射される。そのため、平均分布の信号において、乱反射によるランダムな計測誤差を発生させる光の成分が十分に打ち消される。これにより、共焦点変位計500により計測される計測対象物Sの変位の誤差をより低減することができる。
また、照射領域IRの外径ODは500μm以下であることが好ましい。この場合、光照射部1により計測対象物Sに照射される光は過度に大きく広がらないので、レンズユニット220の中心付近を通過することができる。そのため、コマ収差等の測定精度を低下させる収差がほとんど発生しない。これにより、計測対象物Sの変位をより高い精度で計測することができる。
上記のように、駆動部240が1回転する間の単一の露光期間に受光部140により受光される。その後、受光部140から受光信号が出力される。それにより、平均化処理を行うための演算を行う必要がないので、計測対象物Sの変位を効率よく算出することができる。
(7)レンズユニットの変形例
本実施の形態において、レンズユニット220は屈折レンズ221および回折レンズ222を含むが、本発明はこれに限定されない。レンズユニット220は屈折レンズ221および回折レンズ222の一方または両方を含まなくてもよい。図17(a)〜(d)は、レンズユニット220の第1〜第4の変形例を示す図である。
図17(a)に示すように、第1の変形例におけるレンズユニット220は、図1の屈折レンズ221を含まずに回折レンズ222および対物レンズ223を含む。図17(b)に示すように、第2の変形例におけるレンズユニット220は、第1の変形例と同様に、図1の屈折レンズ221を含まずに回折レンズ222および対物レンズ223を含む。第2の変形例においては、回折レンズ222および対物レンズ223は、第1の変形例における回折レンズ222および対物レンズ223の位置とは逆に配置される。
図17(c)に示すように、第3の変形例におけるレンズユニット220は、第1の変形例の回折レンズ222に代えて、ダブレットレンズ224を含む。図17(d)に示すように、第4の変形例におけるレンズユニット220は、第2の変形例の回折レンズ222に代えて、ダブレットレンズ224を含む。このように、レンズユニット220は、例えば回折レンズ、ダブレットレンズ、GRIN(グレーデッドインデックス)レンズもしくはプリズムまたはこれらの組み合わせにより構成されてもよい。これらのレンズユニット220の構成によれば、投光部120により出射された光に光軸方向に沿った色収差を発生させるとともに、色収差を有する光を収束させて計測対象物Sに照射することができる。
上記のレンズは、ガラスレンズであってもよいし、樹脂レンズであってもよいし、表面上に樹脂がコーティングされたガラスレンズであってもよい。ガラスレンズは、高い耐熱性を有する。樹脂レンズは、安価に製造することができる。樹脂がコーティングされたガラスレンズは、比較的安価に製造することができ、かつ比較的高い耐熱性を有する。
レンズユニット220のうち、計測対象物Sに最も接近させることが可能なレンズは、例えば外部に露出する状態で配置される。このように、外部に露出するレンズは、ガラスにより形成されることが好ましい。工場等の製造ラインにおいては、計測ヘッド200は、水分または油分等が存在する環境に配置される。計測ヘッド200の外部に露出している部分の光学系をガラスにより形成することにより、計測ヘッド200の耐油性、耐水性および耐汚染性を向上させることができる。
上記の例と同じ理由により、レンズユニット220に外部に露出する部分が存在する場合、その露出部分はガラスにより形成されることが好ましい。なお、レンズユニット220の全体を計測ヘッド200の外部の雰囲気から遮断することができるのであれば、屈折レンズ221、回折レンズ222、対物レンズ223またはダブレットレンズ224がガラスではなく、樹脂により形成されてもよい。例えば、図17(a)〜(d)の例においては、レンズユニット220が筐体210内に配置された状態で、レンズユニット220の下側(計測対象物S側)にカバーガラスが設けられてもよい。
(8)投光部の変形例
本実施の形態において、光源121から出射される光とフェルール123の中心軸とが一直線上に配置されるが、本発明はこれに限定されない。図18は、投光部120の変形例を示す図である。図18に示すように、変形例における投光部120は、光源121、蛍光体122、フェルール123、レンズ124,128および反射部材129を含む。レンズ124は、光源121と反射部材129との間に配置される。レンズ128は、反射部材129とフェルール123との間に配置される。蛍光体122は、反射部材129の反射面に塗布される。
光源121により出射された光は、レンズ124を通過することにより、励起光として反射部材129に塗布された蛍光体122上に集光される。蛍光体122は、励起光を吸収して蛍光を放出する。ここで、蛍光体122に吸収されずに透過した励起光と蛍光体122からの蛍光とが混合されることにより、広い波長帯域の光が生成される。生成された光は、反射部材129の反射面で反射されることにより、レンズ128を通してフェルール123に導かれる。これにより、光ファイバ311に光が入力される。この構成においては、光学素子の配置の自由度が大きくなる。そのため、投光部120を小型化することが容易になる。
投光部120により生成される光の強度を増加させるために、光源121により出射される光の光量を大きくすることが好ましい。一方で、光源121からの光の光量を大きくすると、蛍光体122の発熱が大きくなることにより、反射部材129の反射効率が低下するとともに、蛍光体122からの蛍光の放出が飽和しやすくなる。そこで、反射部材129が回転または移動可能に構成されてもよい。これにより、蛍光体122が冷却され、発熱を抑制することができる。その結果、投光部120により生成される光の強度をより増加させることができる。
(9)分光部の変形例
本実施の形態において、分光部130の回折格子131は反射型を有するが、本発明はこれに限定されない。図19は、分光部130の変形例を示す図である。図19に示すように、分光部130の変形例においては、回折格子131は透過型を有する。回折格子131に入射された光は、波長ごとに異なる角度で透過するように分光される。回折格子131により分光された光は、レンズ133を通過することにより波長ごとに異なる受光部140の画素の位置に合焦される。
本例の分光部130においては、回折格子131を直進して通過する0次光が発生する場合がある。その0次光が受光部140により受光される場合には、0次光に対応する受光波形のピークを、上記の受光波形シフト補正および受光波形尺度補正に用いることができる。
[2]第2の実施の形態
(1)共焦点変位計の基本構成および動作原理
本発明の第2の実施の形態に係る共焦点変位計について、第1の実施の形態に係る共焦点変位計500と異なる点を説明する。図20は、第2の実施の形態に係る共焦点変位計の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る共焦点変位計500は、計測ヘッド200および導光部300の構成が第1の実施の形態に係る共焦点変位計500とは異なる。
図20の計測ヘッド200は、複数(本例では4個)の光ファイバ393〜396を含む。また、導光部300は、複数(本例では4個)の光ファイバ391,392,397,398および複数(本例では2個)のファイバカプラ340,350を含む。ファイバカプラ340は処理装置100の筐体110に設けられ、ファイバカプラ350は計測ヘッド200の筐体210に設けられる。本発明はこれに限定されず、ファイバカプラ340は処理装置100の筐体110以外の部分に設けられてもよいし、ファイバカプラ350は計測ヘッド200の筐体210以外の部分に設けられてもよい。
ファイバカプラ340は、いわゆる2×2型の構成を有し、4個のポート341〜344および本体部345を含む。ポート341,342とポート343,344とは、本体部345を挟んで対向するように本体部345に接続される。ポート341,342の少なくとも1つのポートに入力された光は、ポート343,344の各々から出力される。ポート343,344の少なくとも1つのポートに入力された光は、ポート341,342の各々から出力される。
ファイバカプラ350は、いわゆる2×4型の構成を有し、6個のポート351〜356および本体部357を含む。ポート351,352とポート353〜356とは、本体部357を挟んで対向するように本体部357に接続される。ポート351,352の少なくとも1つのポートに入力された光は、ポート353〜356の各々から出力される。ポート353〜356の少なくとも1つのポートに入力された光は、ポート351,352の各々から出力される。
ファイバカプラ340のポート341,342には、光ファイバ391,392がそれぞれ接続される。ファイバカプラ350のポート353〜356には、光ファイバ393〜396がそれぞれ接続される。ファイバカプラ340のポート343とファイバカプラ350のポート351とが光ファイバ397により接続される。ファイバカプラ340のポート344とファイバカプラ350のポート352とが光ファイバ398により接続される。
この構成によれば、処理装置100の投光部120により出射された光は、光ファイバ391を通してファイバカプラ340のポート341に入力される。ポート341に入力された光は、ポート343,344から出力され、光ファイバ397,398を通してファイバカプラ350のポート351,352に入力される。ポート351,352に入力された光は、ポート353〜356から出力され、光ファイバ393〜396およびレンズユニット220を通して計測対象物Sに照射される。
計測対象物Sの表面で反射された光の一部は、レンズユニット220および光ファイバ393〜396を通してファイバカプラ350のポート353〜356に入力される。ポート353〜356に入力された光は、ポート351,352から出力され、光ファイバ397,398を通してファイバカプラ340のポート343,344に入力される。ポート343,344に入力された光は、ポート341,342から出力される。ポート342から出力された光は、光ファイバ392を通して分光部130に導かれる。これにより、変位計測処理が行われる。
図21は、図20の計測ヘッド200を用いた共焦点変位計500の動作原理を説明するための図である。本例の計測ヘッド200においては、処理装置100から導光部300を通して入力された光が4個の光ファイバ393〜396の各々から出力される。4個の光ファイバ393〜396からそれぞれ出力された光は、レンズユニット220を通過することにより色収差が発生されつつ計測対象物Sの表面の互いに異なる4つの部分に照射される。この場合、計測対象物Sの表面上では、4個の光ファイバ393〜396にそれぞれ対応する4つの照射領域が形成される。
図22は、図21の4個の光ファイバ393〜396の配置を示す断面図である。図22に示すように、本例では、4個の光ファイバ393〜396が保持部材302により束ねられた状態で一体的に保持されている。以下の説明では、4個の光ファイバ393〜396と保持部材302とを含む構成をファイバユニット301と呼ぶ。
各光ファイバ393〜396は、コア310aおよびクラッド310bを含む。コア310aはクラッド310bにより被覆される。光ファイバ393〜396のコア310aの一端部に入力された光は、コア310aの他端部から出力される。なお、図20の光ファイバ391,392,397,398も光ファイバ393〜396と同様の構成を有する。
ファイバユニット301は、その軸の中心と図21のレンズユニット220の光軸とが略一致するように配置される。この場合、ファイバユニット301の光ファイバ393〜396は、レンズユニット220の光軸に対して対称に配置されることが好ましい。図22の例においては、ファイバユニット301の中心は、光学系220の光軸上に配置され、各光ファイバ393〜396のコア310a(光軸)は、レンズユニット220の光軸に対して対称に配置される。この場合、各光ファイバ393〜396のコア310a(光軸)は、ファイバユニット301の中心、すなわちレンズユニット220の光軸から略同一距離離間する。
このように、レンズユニット220の光軸から略等間隔離れた位置に各光ファイバ393〜396のコア310aが配置されることにより、光軸方向に沿った収差を生じさせるためのレンズユニット220の光学設計を容易に行うことができる。ここで、光軸とは、屈折レンズ221、回折レンズ222および対物レンズ223の各々の光軸が略一致している場合における当該光軸を意味するだけでなく、屈折レンズ221、回折レンズ222および対物レンズ223のいずれか1つ以上の光軸を意味してもよい。
図22の例では、光ファイバ393〜396は正方形の4つの角部に位置するように配置される。各コア310aの直径L1は、200μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。この場合、4個の光ファイバ393〜396は近接して配置されるので、使用者には計測対象物Sの表面の1つの部分に光が照射されているように認識される。
計測対象物Sの表面の4つの部分(照射領域)で反射された光のうち、計測対象物Sの表面の位置で合焦した光が対応する光ファイバ393〜396に入力され、図20の処理装置100に導かれる。処理装置100に導かれた光は、回折格子131により分光されつつ受光部140により受光される。ここで、隣り合うコア310aの中心間の距離L2は、直径L1の3倍以上であることが好ましい。距離L2が直径L1の3倍以上である場合には、計測対象物Sの表面の一部分で合焦しつつ反射された光が当該一部分に対応する光ファイバ393〜396のピンホールを通過し、外乱光として当該一部分に対応しない他の光ファイバ393〜396のピンホールを通過することがほとんどない。
隣り合うコア310aの中心間の距離L2は、直径L1の5倍以上10倍以下であることがより好ましい。距離L2が直径L1の5倍以上10倍以下以上である場合には、計測対象物Sの表面の一部分で合焦しつつ反射された光が外乱光として当該一部分に対応しない他のピンホールを通過することがさらに抑制される。また、複数の光は大きく離間していないので、レンズユニット220の中心付近を通過することができる。そのため、コマ収差等の測定精度を低下させる収差がほとんど発生しない。本例では、直径L1は例えば50μmであり、距離L2は例えば250μmである。
上記のように、計測対象物Sの4つの部分で合焦しつつ反射されて光ファイバ393〜396に入力された光は、光信号としてファイバカプラ350、光ファイバ397,398およびファイバカプラ340を通して光ファイバ392から出力されるまでの過程で混合される。その後、混合された光信号は、分光部130を経て受光部140により電気信号に変換される。すなわち、本例では、光信号の状態で平均化処理が行われる。
上記のように、混合されつつ光ファイバ392から出力される光信号に、強度の平均化処理が行われる。第2の実施の形態における平均化処理とは、複数のピンホールを通過した複数の光についての波長ごとの強度の平均に対応する平均分布の信号を生成する処理を意味する。本例では、平均化処理は積算処理である。
それにより、計測対象物Sの4つの部分で合焦しつつ反射される光に対応する受光信号の波形が例えば図5の受光波形W1〜W4で表される場合に、演算を行うことなく図5の受光波形W0を得ることができる。したがって、受光波形W0のピーク波長λ0を特定することにより、計測距離をより正確に特定することができる。
(2)効果
本実施の形態に係る共焦点変位計500においては、投光部120から出射された光は、計測ヘッド200において複数の光ファイバ393〜396により計測対象物Sの複数の部分にそれぞれ照射される。計測対象物Sの複数の照射領域で合焦しつつ反射された波長の光が複数の光ファイバ393〜396を通過する。
複数の光ファイバ393〜396を通過した複数の光は、ファイバカプラ350、光ファイバ397,398、ファイバカプラ340および光ファイバ392を通して分光部130に導かれる。そのため、複数の光ファイバ393〜396を通過した複数の光が、分光部130に導かれる過程で一の光に合成される。この場合、複数の光ファイバ393〜396を通過した複数の光についての波長ごとの強度の平均分布を生成するために演算を行う必要がない。したがって、複数の光の平均化処理を高速で効率よく容易に行うことができる。
図20に示すように、ファイバカプラ340が処理装置100側に配置され、ファイバカプラ350が計測ヘッド200側に配置される。また、ファイバカプラ340,350間が2つのコア310aを有する光ファイバ397,398により接続される。この構成によれば、計測対象物Sから反射される光信号の損失を抑制しつつ、ファイバカプラ340,350の配置のための設計自由度を向上させることができる。
図20においては、ファイバカプラ350は、計測ヘッド200の筐体210に設けられているが、ファイバカプラ350は、筐体210と光ファイバ393〜396とのコネクタ部内に設けられていてもよい。金属等の強固な筐体(コネクタ部)の中にファイバカプラ350が配置されることにより、ファイバカプラ350を固定および保護しつつ計測ヘッド200が大型化することを防止することができる。ファイバカプラ350は、コネクタ部の近傍に設けられてもよい。
(3)導光部の変形例
第2の実施の形態に係る導光部300は、処理装置100内の投光部120および分光部130と計測ヘッド200の光ファイバ393〜396との間で光を伝送するための構成として2×2型のファイバカプラ340、2×4型のファイバカプラ350および4個の光ファイバ391,392,397,398を含むが、本発明はこれに限定されない。
光ファイバ391をファイバカプラ350のポート351に接続し、光ファイバ392をファイバカプラ350のポート352に接続してもよい。それにより、投光部120および分光部130と計測ヘッド200の光ファイバ393〜396との間で光を伝送させることができる。この構成によれば、図20のファイバカプラ340および光ファイバ397,398が不要になる。
または、第2の実施の形態に係る導光部300は、2×4型のファイバカプラ350に代えて1×2型のファイバカプラを2つ備え、それらの2つのファイバカプラが計測ヘッド200に設けられてもよい。この場合、一方のファイバカプラにおいては、1つのポートに光ファイバ397を接続し、その1つのポートに対向する2つのポートに光ファイバ393,394を接続する。また、他方のファイバカプラにおいては、1つのポートに光ファイバ398を接続し、その1つのポートに対向する2つのポートに光ファイバ395,396を接続する。それにより、投光部120および分光部130と計測ヘッド200の光ファイバ393〜396との間で光を伝送させることができる。
または、第2の実施の形態に係る導光部300は、2×2型のファイバカプラ340および2×4型のファイバカプラ350に代えて1×2型のファイバカプラおよび1×4型のファイバカプラを備えてもよい。この場合、例えば1×2型のファイバカプラを処理装置100に設け、1×4型のファイバカプラを計測ヘッド200に設ける。また、1×2型のファイバカプラの2つのポートに光ファイバ391,392を接続し、それら2つのポートに対向する1つのポートに光ファイバ397の一端を接続する。さらに、1×4型のファイバカプラの1つのポートに光ファイバ397の他端を接続し、その1つのポートに対向する4つのポートに光ファイバ393〜396を接続する。それにより、投光部120および分光部130と計測ヘッド200の光ファイバ393〜396との間で光を伝送させることができる。この構成によれば、図20の光ファイバ398が不要になる。
[3]他の実施の形態
(1)第1の実施の形態においては、導光部300は光ファイバを含み、光ファイバを用いて処理装置100と計測ヘッド200との間で光が伝送されるが、本発明はこれに限定されない。導光部300は光ファイバを含まず、ミラーおよびハーフミラー等の光学素子を用いて処理装置100と計測ヘッド200との間で光が伝送されてもよい。
図23は、他の実施の形態に係る共焦点変位計の構成を示す模式図である。図23の計測ヘッド200は、図1および図13の光ファイバ314を有さない。また、本例の導光部300は、図1および図13の光ファイバ311,312,319、ファイバカプラ320およびファイバコネクタ330に代えて、ハーフミラー371および複数(本例では2個)の空間フィルタ372,373を含む。空間フィルタ372,373には、ピンホール372a,373aがそれぞれ形成される。
投光部120から出射された光は、空間フィルタ372のピンホール372aを通過した後、ハーフミラー371を通過する。ハーフミラー371を通過した光は、平板部材230およびレンズユニット220を通して計測対象物Sに照射される。この状態で、平板部材230が図示しない駆動部240により回転される。それにより、計測対象物S上の円環状の領域に光が照射される。計測対象物Sの表面で反射された光の一部は、平板部材230およびレンズユニット220を通過し、ハーフミラー371により反射される。ハーフミラー371により反射された光は、空間フィルタ373のピンホール373aを通過して分光部130に導かれる。受光部140は、分光部130により分光された光を受光し、受光信号を出力する。
演算処理部150は、受光部140により出力される受光信号に基づいて、平均化処理が行われた受光波形W0を取得する。このように、受光波形W0の平均化処理が行われることにより、乱反射によるランダムな計測誤差を発生させる光の成分が打ち消される。受光波形W0のピーク波長λ0を特定することにより、計測距離をより正確に特定することができる。
第2の実施の形態においても、上記の図23の例と同様に、導光部300は光ファイバを含まず、ミラーおよびハーフミラー等の光学素子を用いて処理装置100と計測ヘッド200との間で光が伝送されてもよい。なお、この場合、共焦点計測装置500には、例えば4個の光源121と、これらにそれぞれ対応する4個の空間フィルタ372および4個の空間フィルタ373が設けられる。
(2)第1の実施の形態においては、計測対象物Sの複数の部分に対応する受光波形の平均化処理として光学的な積算処理が行われるが、本発明はこれに限定されない。受光波形の平均化処理として、電気的な積算処理、平均処理または加重平均処理が行われてもよいし、他の処理が行われてもよい。
例えば、受光部140は、分光部130により順次分光された複数の光を順次受光し、順次受光された複数の光の各々について受光信号を出力してもよい。この場合、制御部152は、受光部140から出力される複数の受光信号を波長ごとに平均または積算等することにより波長ごとの信号強度として平均信号を算出し、算出された平均信号に基づいて計測対象物Sの変位を算出することができる。
あるいは、受光部140は、分光部130により順次分光された複数の光を複数の露光期間内に受光し、各露光期間内に受光した光について受光信号を出力してもよい。この場合、制御部152は、受光部140から出力される複数の受光信号を波長ごとに平均または積算等することにより波長ごとの信号強度として平均信号を算出し、算出された平均信号に基づいて計測対象物Sの変位を算出することができる。これらの構成によれば、平均信号の算出において、複数の光の強度を考慮した所望の演算を行うことができる。これにより、計測対象物Sの変位をより正確に算出することができる。
(3)第1の実施の形態の図13の具体例においては、平板部材230を回転させるため駆動部240として中空モータが用いられるが、本発明はこれに限定されない。駆動部240は、平板部材230を回転させることが可能であればよく、中空モータ以外のモータ、1または複数のロータおよびベルト等により構成されてもよい。
(4)第1の実施の形態においては、ファイバカプラ320を用いて光の結合および分岐が行われるが、本発明はこれに限定されない。ファイバカプラ320が用いられず、複数のコア310aが1つに融着された複数の光ファイバ311,312,319を用いて光の結合および分岐が行われてもよい。
(5)第1の実施の形態の図13の例においては、平板部材230は光ファイバ314とレンズユニット220との間に配置されるが、本発明はこれに限定されない。平板部材230は、光路上におけるいずれの位置に配置されてもよい。
(6)第2の実施の形態においては、共焦点変位計500は計測対象物Sの表面の4つの部分に光が照射されるように構成されるが、本発明はこれに限定されない。共焦点変位計500は、計測対象物Sの表面の2つの部分、3つの部分または5つ以上の部分に光が照射されるように構成されてもよい。
したがって、ファイバユニット301に含まれる光ファイバの数は、2個以上であることが好ましく、4個以上であることがより好ましい。ファイバユニット301の光ファイバの数を増加させた場合、平均化処理により測定精度をより向上させることができる一方で、ファイバユニット301の外径が大型化する。そのため、要求される測定精度とファイバユニット301の外径とに応じて光ファイバの数が決定されてもよい。
(7)第2の実施の形態において、ファイバユニット301は、その中心がレンズユニット220の光軸と略一致するように配置されるが、本発明はこれに限定されない。ファイバユニット301は、その中心がレンズユニット220の光軸から離間して配置されてもよい。
(8)第2の実施の形態において、ファイバユニット301の中心を重ならないように複数の光ファイバ313〜316が配置されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、ファイバユニット301の中心に重なるように1個の光ファイバが配置され、当該光ファイバの周囲に他の複数のファイバが配置されてもよい。
また、光ファイバ393,395が、図22における光ファイバ393,395の位置よりも光ファイバ393,395の配列方向に距離L2の半分だけ変位して配置されてもよい。この場合、光ファイバ393が光ファイバ394,396に接触するとともに、光ファイバ396が光ファイバ393,395に接触するように光ファイバ393〜396が配置されてもよい。
(9)第2の実施の形態においては、複数のファイバカプラ340,350を用いて光の結合および分岐が行われるが、本発明はこれに限定されない。ファイバカプラ340,350が用いられず、複数のコア310aが1つに融着された複数の光ファイバ391〜398を用いて光の結合および分岐が行われてもよい。
(10)第2の実施の形態においては、4個の光ファイバ393〜396を通過する4つの光が分光部130に導かれる過程で一の光に合成されるように導光部300が構成されるが、本発明はこれに限定されない。
光ファイバ393〜396を通過する4つの光が個別に分光部130に導かれるように導光部300が構成されてもよい。また、分光部130により分光された4つの光が受光部140で個別に受光されるように、分光部130および受光部140が構成されてもよい。
この場合、受光部140から4つの光にそれぞれ対応する4つの受光信号が出力される。そこで、制御部152は、受光部140から出力される4つの受光信号を波長ごとに平均または積算等することにより波長ごとの信号強度として平均信号を算出し、算出された平均信号に基づいて計測対象物Sの変位を算出することができる。
分光部130により分光された4つの光を個別にかつ同時に受光する受光部140として、複数の画素が二次元状に配列された二次元ラインセンサを用いることができる。この場合、4つの光にそれぞれ対応する一次元ラインセンサとして、その二次元ラインセンサに4個の受光領域が設定される。なお、受光部140として二次元ラインセンサを用いる代わりに、4個の一次元ラインセンサを用いてもよい。また、本例では、分光部130は、4つの光の各々に対応するように4個設けられてもよい。
(11)第2の実施の形態においては、4個の光ファイバ393〜396を通過する4つの光が分光部130に導かれる過程で一の光に合成されるように導光部300が構成されるが、本発明はこれに限定されない。
光ファイバ393〜396を通過する4つの光が分光部130に導かれる過程で、4つの光のうち2つの光からなる一の合成光と残りの2つの光からなる他の合成光とが生成され、それらの合成光が個別に分光部130に導かれるように導光部300が構成されてもよい。また、分光部130により分光された2つの合成光が受光部140で個別に受光されるように、分光部130および受光部140が構成されてもよい。
この場合、受光部140から2つの合成光にそれぞれ対応する2つの受光信号が出力される。そこで、制御部152は、受光部140から出力される2つの受光信号を波長ごとに平均または積算等することにより波長ごとの信号強度として平均信号を算出し、算出された平均信号に基づいて計測対象物Sの変位を算出することができる。
分光部130により分光された2つの合成光を個別にかつ同時に受光する受光部140として、複数の画素が二次元状に配列された二次元ラインセンサを用いることができる。この場合、2つの合成光にそれぞれ対応する一次元ラインセンサとして、その二次元ラインセンサに2つの受光領域が設定される。なお、受光部140として二次元ラインセンサを用いる代わりに、2個の一次元ラインセンサを用いてもよい。また、本例では、分光部130は、2つの合成光の各々に対応するように2個設けられてもよい。
(12)第2の実施の形態においては、投光部120により出射された光が同時に4個の光ファイバ393〜396に導かれるとともに、4個の光ファイバ393〜396を通過する4つの光が分光部130に同時に導かれるように導光部300が構成されるが、本発明はこれに限定されない。
投光部120により出射される光が光ファイバ393〜396に順次切り替えて入力されるように、導光部300が構成されてもよい。この場合、投光部120により出射される光が光ファイバ393〜396に順次入力されることにより、計測対象物Sの表面で反射されて光ファイバ393〜396をそれぞれ通過する4つの光が順次受光部140に受光される。
ここで、受光部140は、4つの光が受光部140に照射される間露光を行ってもよい。この場合、露光終了後に受光部140の各画素から露光期間に積算された受光信号が出力される。これにより、受光部140から出力される受光信号には、強度の平均化処理が行われる。したがって、制御部152は、取得される受光信号に基づいて計測対象物Sの変位を算出することができる。
一方、受光部140は、分光部130により順次分光された複数の光を順次受光し、順次受光された4つの光の各々について受光信号を出力してもよい。この場合、制御部152は、受光部140から出力される4つの受光信号を波長ごとに平均または積算等することにより波長ごとの信号強度として平均信号を算出し、算出された平均信号に基づいて計測対象物Sの変位を算出することができる。
(13)第1および第2の実施の形態においては、図6および図18の投光部120の光源121として単一波長の光を出射するレーザダイオードが用いられるが、本発明はこれに限定されない。光源121として単一波長の光を出射するLED(発光ダイオード)が用いられてもよいし、広い波長帯域の光を出射するLEDが用いられてもよい。光源121として白色光等の広い波長帯域の光を出射するLEDが用いられる場合には、蛍光体122を設けてもよいし、蛍光体122を設けなくてもよい。
(14)第1および第2の実施の形態においては、投光部120は波長500nm〜700nmの光を出射するが、本発明はこれに限定されない。投光部120は他の波長帯域の光を出射してもよい。例えば、投光部120は赤外領域の光を出射してもよいし、紫外領域の光を出射してもよい。
(15)第1および第2の実施の形態においては、処理装置100と計測ヘッド200とが別体として構成されるが、本発明はこれに限定されない。処理装置100と計測ヘッド200とが一体的に構成されてもよい。
(16)上記実施の形態においては、演算処理部150の制御部152は、受光部140から取得される受光信号について補正を行うとともに計測対象物Sの変位を計測し、計測結果を副表示部400に表示する。また、制御部152は、受光部140から取得される受光信号をPC600に与える。一方、PC600のCPU601は、変位計測プログラムに基づいて計測対象物Sの変位計測処理を実行する。本発明はこれに限定されない。
例えば、PC600は設けられなくてもよい。この場合、主表示部700および操作部800を処理装置100の演算処理部150に接続してもよい。また、演算処理部150の記憶部151に変位計測プログラムを記憶させてもよい。それにより、制御部152が変位計測プログラムに基づく変位計測処理および変位計測結果に関する種々の処理を実行してもよい。
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態では、計測対象物Sが計測対象物の例であり、共焦点変位計500が共焦点変位計の例であり、投光部120が投光部の例であり、レンズユニット220が光学部材の例であり、光ファイバ314の先端部分または空間フィルタ373のピンホール373a、光ファイバ393〜396の先端部分がピンホールの例であり、光ファイバ314,393〜396または空間フィルタ373がピンホール部材の例であり、光ファイバ393〜396のコア310aがそれぞれ第1〜第4のピンホールの例であり、光ファイバ393〜396がそれぞれ第1〜第4の光ファイバの例であり、ファイバカプラ340,350がファイバカプラの例である。
また、分光部130、受光部140、演算処理部150、導光部300およびCPU601が変位計測部の例であり、不要成分除去補正が第1の補正処理の例であり、受光波形シフト補正が第2の補正処理の例である。
また、光ファイバ311,312,314,319,391〜396,397,398が導光部の例であり、光源121が光源の例であり、蛍光体122が蛍光体の例であり、分光部130が分光部の例である。
また、処理装置100が処理装置の例であり、計測ヘッド200がヘッド部の例であり、筐体110が第1の筐体の例であり、筐体210が第2の筐体の例であり、レンズ124が集光部材の例であり、屈折レンズ221が屈折レンズの例であり、回折レンズ222が回折レンズの例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
[5]参考形態
(1)本参考形態に係る共焦点変位計は、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点変位計であって、複数の波長を有する光を出射する投光部と、投光部により出射された光に光軸方向に沿った色収差を発生させるとともに、色収差を有する光を収束させて計測対象物に照射する光学部材と、光学部材により計測対象物に照射された光のうち、計測対象物の表面で合焦しつつ反射された波長の光を通過させる1または複数のピンホールを有するピンホール部材と、計測対象物の複数の部分で反射されるとともに1または複数のピンホールを通過した複数の光について波長ごとの強度の平均に対応する平均信号の波長ごとの信号強度に基づいて計測対象物の変位を算出する変位計測部とを備え、変位計測部は、計測対象物の変位を算出する前に、平均信号から計測対象物の表面で合焦しつつ反射される光を除く不要な光に対応する不要成分の少なくとも一部が除去されるように第1の補正処理を行う。
その共焦点変位計においては、複数の波長を有する光が投光部により出射される。投光部により出射された光には、光学部材により光軸方向に沿った色収差が発生する。また、色収差を有する光が光学部材により収束されて計測対象物に照射される。
光学部材により計測対象物に照射された光のうち、計測対象物の表面の複数の部分で合焦しつつ反射された波長の光がピンホール部材の1または複数のピンホールを通過する。1または複数のピンホールを通過した複数の光についての波長ごとの強度の平均に対応する平均信号の波長ごとの信号強度に基づいて計測対象物の変位が算出される。
計測対象物の表面での乱反射により、計測対象物の表面の位置とは異なる位置で合焦した光が1または複数のピンホールを通過することがある。そのような場合でも、上記の構成によれば、平均信号において1または複数のピンホールを通過した複数の光についての波長ごとの強度が平均される。それにより、乱反射によるランダムな計測誤差を発生させる光の成分が打ち消される。さらに、計測対象物の変位が算出される前に、第1の補正処理が行われることにより平均信号から計測対象物の表面で合焦しつつ反射される光を除く不要な光に対応する不要成分の少なくとも一部が除去される。これらの結果、共焦点変位計により計測される計測対象物の変位の誤差を低減することができる。
(2)共焦点変位計は、処理装置と、ヘッド部と、処理装置とヘッド部とをつなぐ光ファイバとをさらに備え、処理装置は、変位計測部の一部および投光部を含むとともに変位計測部の一部および投光部を収容する第1の筐体をさらに含み、ヘッド部は、光学部材およびピンホール部材を含むとともに光学部材およびピンホール部材を収容する第2の筐体をさらに含み、光ファイバは、投光部により出射された光を光学部材へ導き、光ファイバの少なくとも一部は、変位計測部のうち第1の筐体に収容されない部分であってもよい。
この場合、投光部および変位計測部の一部を含む処理装置と光学部材およびピンホール部材を含むヘッド部とが光ファイバを介して別体的に設けられる。そのため、計測対象物の形状もしくは配置等に応じて適切な色収差を発生させる光学部材または適切な焦点距離を有する光学部材を含むヘッド部を用いることが容易になる。これにより、計測対象物の変位をより容易に計測することができる。
(3)光ファイバの一端は第1の筐体に設けられ、光ファイバの他端は、第2の筐体に設けられ、投光部は、レーザダイオードからなる光源と、光源により発生された光を集光する集光部材と、光ファイバの一端に設けられ、集光部材により集光された光の一部を吸収して複数の波長を有する光を光ファイバを通して光学部材へ出射する蛍光体とを含んでもよい。
この場合、光源で発生された光が集光部材により蛍光体に集光されるので、蛍光体に入射する光の光量を増加させることができる。それにより、蛍光体から発生される複数の波長を有する光の光量も増加する。
また、上記の構成によれば、蛍光体が光ファイバの一端に設けられているので、複数の波長を有する光が蛍光体から光ファイバの一端に効率よく入射し、光ファイバの他端から光学部材を通して計測対象物に照射される。したがって、計測対象物上に形成される照射領域のサイズを小さくした場合でも、1または複数のピンホールを通過する光の光量が著しく低下することが防止される。その結果、照射領域のサイズを小さくすることが可能になる。
(4)不要成分は、平均信号の波長軸上での位置が計測対象物の変位に依存しない不要ピークを含み、変位計測部は、第1の補正処理の前に、平均信号の波長軸上での不要ピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上でのシフトを補正する第2の補正処理を行ってもよい。
この場合、平均信号の波長軸上での不要ピークの位置は計測対象物の変位に依存せず、温度に依存して変化する。そのため、平均信号の波長軸上での不要ピークの位置は、温度の変化による平均信号の波長軸上でのシフトに対応する。したがって、平均信号の波長軸上での不要ピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上でのシフトを補正することにより、温度変化による計測結果の変動を補償することができる。
(5)不要ピークは、投光部から出射されるとともに光学部材で反射されて変位計測部に導かれる第1の不要光に対応する第1のピークを含んでもよい。
この場合、第1の不要光は計測対象物には到達しないため、平均信号の波長軸上での第1のピークの位置は計測対象物の変位には依存しない。したがって、平均信号の波長軸上における第1のピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上でのシフトを補正することにより、温度変化による計測結果の変動を補償することができる。
(6)投光部は、光源と、光源により発生された光の一部を吸収して複数の波長を有する光を光学部材へ出射する蛍光体とを含み、不要ピークは、光源により発生されて蛍光体を通過しつつ光学部材へ出射される第2の不要光に対応する第2のピークを含んでもよい。
この場合、第2の不要光は特定の波長を有するため、平均信号の波長軸上での第2のピークの位置は計測対象物の変位には依存しない。したがって、平均信号の波長軸上における第2のピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上でのシフトを補正することにより、温度変化による計測結果の変動を補償することができる。
(7)変位計測部は、1または複数のピンホールを通過した光を回折することにより分光する分光部を含み、不要ピークは、分光部で0次回折される第3の不要光に対応する第3のピークを含んでもよい。
この場合、0次回折光である第3の不要光は波長に関係なく分光部により一定の方向へ導かれるため、平均信号の波長軸上での第3のピークの位置は第3の不要光の波長に依存しない。そのため、平均信号の波長軸上での第3のピークの位置は計測対象物の変位には依存しない。したがって、平均信号の波長軸上における第3のピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上でのシフトを補正することにより、温度変化による計測結果の変動を補償することができる。
(8)不要成分は、平均信号の波長軸上での位置が計測対象物の変位に依存しない少なくとも2つの不要ピークを含み、変位計測部は、第1の補正処理の前に、平均信号の波長軸上での少なくとも2つの不要ピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上での尺度を補正する第3の補正処理を行ってもよい。
この場合、平均信号の波長軸上での不要ピークの位置は計測対象物の変位に依存せず、温度に依存して変化する。そのため、平均信号の波長軸上での2つの不要ピークの間の間隔は、温度の変化による平均信号の波長軸上での尺度のずれに対応する。したがって、平均信号の波長軸上での2つの不要ピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上での尺度を補正することにより、温度変化による計測結果の変動を補償することができる。
(9)投光部は、光源と、光源により発生された光の一部を吸収して複数の波長を有する光を光学部材へ出射する蛍光体とを含み、変位計測部は、1または複数のピンホールを通過した光を反射しつつ分光する分光部を含み、少なくとも2つの不要ピークは、投光部から出射されるとともに光学部材で反射されて変位計測部に導かれる第1の不要光に対応する第1のピーク、光源により発生されて蛍光体を通過しつつ光学部材へ出射される第2の不要光に対応する第2のピーク、および分光部で0次回折される第3の不要光に対応する第3のピークのうち少なくとも2つのピークを含んでもよい。
この場合、第1の不要光は計測対象物には到達しないため、平均信号の波長軸上での第1のピークの位置は計測対象物の変位には依存しない。第2の不要光は特定の波長を有するため、平均信号の波長軸上での第2のピークの位置は計測対象物の変位には依存しない。0次回折光である第3の不要光は波長に関係なく分光部により一定の方向へ導かれるため、平均信号の波長軸上での第3のピークの位置は第3の不要光の波長に依存しない。したがって、平均信号の波長軸上における第1〜第3のピークのうち少なくとも2つのピークの位置に基づいて、温度に依存する平均信号の波長軸上での尺度を補正することにより、温度変化による計測結果の変動を補償することができる。
(10)ピンホール部材は、複数のピンホールを含み、変位計測部は、計測対象物の複数の部分で反射されるとともに複数のピンホールを通過した複数の光について波長ごとの強度の平均に対応する平均信号の波長ごとの信号強度に基づいて計測対象物の変位を算出してもよい。
この場合、簡単な構成で計測対象物の複数の部分で合焦しつつ反射される複数の光を取得することができる。
(11)変位計測部は、複数の光取得部により取得される複数の光を合成することにより一の合成光を生成する合成部と、合成部により生成された合成光を分光する分光部と、分光部により分光された光を受光し、合成部により生成された合成光について波長ごとの強度を示す電気的な受光信号を平均信号として出力する受光部と、受光部から出力される平均信号について第1の補正処理を行うとともに補正された平均信号に基づいて計測対象物の変位を算出する算出部とをさらに含んでもよい。
この場合、複数のピンホールをそれぞれ通過した複数の光が受光部により受光される前に合成部により合成されることにより、一の合成光が生成される。そのため、受光部から出力される波長ごとの強度を示す電気的な受光信号は、複数の光についての波長ごとの強度が積算された平均信号となる。この構成によれば、平均信号を生成するための演算を行う必要がない。これにより、計測対象物の変位を高速で効率よく算出することができる。
(12)共焦点変位計は、投光部により出射された光を計測対象物の複数の部分に順次照射する光照射部をさらに備え、光学部材は、光照射部により計測対象物に照射される光に色収差を発生させるとともに、色収差を有する光を収束させ、ピンホール部材は、1つのピンホールを含み、1つのピンホールは、計測対象物の複数の部分で合焦しつつ反射された波長の光を順次通過させ、変位計測部は、1つのピンホールを順次通過した複数の光についての波長ごとの強度の平均に対応する平均信号の波長ごとの信号強度に基づいて計測対象物の変位を算出してもよい。
この場合、簡単な構成で計測対象物の複数の部分で合焦しつつ反射される複数の光を取得することができる。
(13)変位計測部は、1つのピンホールを順次通過した複数の光を順次分光する分光部と、分光部により順次分光された複数の光を単一の露光期間内に受光し、受光した光について波長ごとの強度を示す電気的な受光信号を平均信号として出力する受光部と、受光部から出力される平均信号について第1の補正処理を行うとともに補正された平均信号に基づいて計測対象物の変位を算出する算出部とを含んでもよい。
この場合、1つのピンホールを順次通過した複数の光が単一の露光期間内に受光部により受光される。そのため、受光部から出力される波長ごとの強度を示す電気的な受光信号は、複数の光についての波長ごとの強度が積算された平均信号となる。この構成によれば、平均信号を生成するための演算を行う必要がない。これにより、計測対象物の変位を効率よく算出することができる。
(14)変位計測部は、1つのピンホールを順次通過した複数の光を順次分光する分光部と、分光部により順次分光された複数の光を順次受光し、順次受光された複数の光の各々について波長ごとの強度を示す電気的な受光信号を出力する受光部と、受光部から出力される複数の受光信号を波長ごとに平均または積算することにより波長ごとの信号強度として平均信号を算出し、受光部から出力される複数の受光信号または算出された平均信号について第1の補正処理を行うとともに補正された平均信号に基づいて計測対象物の変位を算出する算出部とを含んでもよい。
この場合、1つのピンホールを順次通過した複数の光にそれぞれ対応する複数の受光信号が受光部により出力される。受光部から出力される複数の受光信号が算出部により波長ごとに平均または積算されることにより平均信号が算出される。この構成によれば、平均信号の算出において、複数の光の強度を考慮した所望の平均または積算を行うことができる。これにより、計測対象物の変位をより正確に算出することができる。
(15)複数の部分は、計測対象物の表面の円環状の領域上に位置し、光照射部は、光が計測対象物の表面の円環状の領域上の複数の部分に照射されるように、投光部により出射された光の光軸を計測対象物の表面に沿ってシフトさせてもよい。
この構成によれば、計測対象物の表面の直線状の領域上の複数の部分に光を照射する場合に比べて、光照射部の物理的な動作部分の負担が小さい。これにより、光照射部の寿命を長期化することができる。
(16)光学部材は、凸型を有する屈折レンズと、凹型を有する回折レンズとを含み、屈折レンズおよび回折レンズは、投光部から出射される光が通過するように配置されてもよい。
この場合、各レンズによって発生する色収差の方向がそれぞれのレンズで同じ方向になるため、結果として光学部材の光軸上の色収差が大きくなる。それにより、共焦点変位計により計測可能な範囲を大きくすることができる。