JP6867681B2 - 変異型asxl1のノックインマウス - Google Patents

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Description

本発明は、変異型ASXL1ノックインマウスとその利用に関する。
ASXL1遺伝子の変異は様々な骨髄系造血器腫瘍および一部の固形癌で認められ、悪い予後と相関がある。変異の約90%が最終エクソンの5'側に集中していること、変異は必ず一方の遺伝子のみに起こること、はASXL1変異が優性抑制型(dominant-negative)の変異あるいは機能獲得型(gain-of-function)の変異であることを示唆している。しかしながら、ASXL1ノックダウンやノックアウトがマウスにおいてMDSを誘導する(非特許文献1および2を参照)ことから、ASXL1変異が機能喪失型変異(loss-of-function変異)と考えている研究者が優勢である。本発明者らは、C末端欠失型ASXL1変異(ASXL1-MT)がマウスにおいてMDS発症を誘導すること、ASXL1に変異を有するMDSの細胞株で欠失型ASXL1が実際に発現することを示した(非特許文献3および4を参照)。
Abdel-Wahab O et al., Cancer Cell. 2012 Aug 14; 22(2):180-93 Abdel-Wahab O et al., J Exp Med. 2013 Nov18; 210(12):2641-59 Inoue et al. J Clin Invest. 2013 Nov; 123(11):4627-40 Inoue et al., Exp hematol, 2016 Mar; 44(3):172-6
本発明は、ミエロイド系腫瘍の前癌状態のモデルマウスとなり得る変異型ASXL1ノックインマウスの提供を目的とする。
本発明者らは、骨髄異形成症候群(MDS)で認められるASXL1遺伝子の変異をマウスに導入することにより、ミエロイド系腫瘍の前癌状態のモデルマウスとなり得ると考え、そのようなマウスの作製方法について鋭意検討を行った。
本発明者らは、loxPで挟んだ終止コドンのあとにMDS患者由来の典型的ASXL1変異体をマウスRosa26座にノックインした(ASXL1-MT-KIマウス)。この結果、該マウスは通常ではRosa26で終止コドンが働き、発現されないが、Creを発現するマウスと交配し、その子孫マウスにおいて、Creを発現することによって組織特異的に終止コドンを除き、変異型ASXL1遺伝子を発現させることが可能になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] マーカー遺伝子とストップコドンが2つのloxP配列に挟まれ、その下流にヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が挿入されたDNA構築物がRosa26遺伝子座に導入されたマウス。
[2] ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号1で表されるマウスの野生型ASXL1遺伝子のCDSの塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜3210番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列からなる変異型ASXL1遺伝子である[1]のマウス。
[3] ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号2で表されるマウスの野生型ASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜1070番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列を残しそれ以降のC末端側のアミノ酸配列が切断された変異型のASXL1タンパク質を発現し得るマウスの変異型ASXL1遺伝子である、[1]または[2]のマウス。
[4] [1]〜[3]のいずれかのマウスをVav-Creマウスと交配することにより、子孫として得られる、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子がノックインされ、造血細胞で特異的に発現するノックインマウスを作製する方法。
[5] [4]の方法により得られる、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子がノックインされ、該遺伝子が造血細胞で特異的に発現するノックインマウス。
[6] マウスの変異型ASXL1遺伝子をRosa26遺伝子座にノックインした、[5]のノックインマウス。
[7] ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号1で表されるマウスの野生型ASXL1遺伝子の塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜3210番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列からなる変異型ASXL1遺伝子である[5]または[6]のノックインマウス。
[8] ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号2で表されるマウスの野生型ASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜1070番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列を残しそれ以降のC末端側のアミノ酸配列が切断された変異型のASXL1タンパク質を発現し得るマウスの変異型ASXL1遺伝子である、[5]〜[7]のいずれかのノックインマウス。
[9] クローナル造血またはミエロイド系腫瘍の前癌状態モデルマウスである、[5]〜[8]のいずれかのノックインマウス。
本発明の、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子がノックインされたノックインマウスは、変異型ASXL1遺伝子を造血細胞で特異的に発現する。そのため、クローナル造血/前白血病状態等のミエロイド系腫瘍(骨髄系腫瘍)の前癌状態のモデルマウスとして利用することができ、前癌状態から癌に進行することを防ぐ医薬となり得る化合物のスクリーニング、前癌状態の細胞から腫瘍が発生することに関与する分子機構の解析腫瘍発生の予防のための薬剤開発に利用することができる。
ASXL1遺伝子の野生型の構造と変異型(1900-1922del;E635RfsX15変異)の構造を示す図である。 targeting vectorの構造とRosa26遺伝子座への組換え位置(図2A)、並びにノックインマウスをCreマウスと交配したときのASXL1変異体発現のメカニズム(図2B)を示す図である。 変異型ASXL1のノックインマウス骨髄細胞および脾臓細胞における変異体の発現を示す図である。 変異型ASXL1のノックインマウスにおける、1年2〜5ヶ月齢での白血球(WBC)(A)および赤血球(RBC)(B)の数、並びにヘモグロビン(Hgb)(C)および血小板(PLT)(D)の量を示す図である。 ノックインマウスに5FUを投与した試験の結果を示す図である。上図は白血球(WBC)を示し、下図は血小板(PLT)を示す。 ノックインマウスに5FUを投与した試験の結果を示す図である。上図はヘモグロビン(Hgb)を示し、下図は赤血球(RBC)の結果を示す。 ノックインマウスの骨髄細胞を用いたコロニーアッセイの結果を示す図である。図6A〜Cは、それぞれ、CFU-GM、BFU-EおよびCFU-Eの結果を示す。 CD11b/Gr1染色によるミエロイドマーカー発現の状況を示す図である。 CD71/Ter119染色による赤血球分化の状況を示す図である。 ノックインマウスにおける幹細胞分画についてFACS解析の結果を示す図である。 競合的移植実験の方法を示す図である。 競合的移植実験での、移植後4週間におけるマウス末梢血のキメリズム(図11A),CD11bマーカーの発現(図11B)、B220マーカーの発現(図11C)およびCD3マーカー(図11D)の発現量を示す図である。 ノックインマウスにおけるHoxa遺伝子群の発現上昇を示す図である。 RUNX1野生型とRUNX1変異体(点突然変異体およびC末端欠失型)の構造を示す図である。 ASXL1変異およびRUNX1変異の両方が導入されたマウスを用いた実験の方法を示す図である。 ASXL1変異およびRUNX1変異の両方が導入されたマウスが大球性貧血を呈したことを示す図である。 ASXL1変異およびRUNX1変異の両方が導入されたマウスがMDS/AMLを発症したことを示す図である。 胎児期のノックインマウスに遺伝子変異を誘発するMOL4070Aウイルスを投与したときの経過観察の結果を示す図である。 ノックインマウスのc-Kit陽性骨髄細胞を用いてChIP-seq解析を行った結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.変異型ASXL1(Additional sex comb-like 1)遺伝子がノックインされたノックインマウスの作製
本発明は変異型ASXL1(Additional sex comb-like 1)遺伝子がノックインされたノックインマウスである。本発明のノックインマウスにおいては、変異型ASXL1遺伝子が骨髄細胞、脾臓細胞等の造血細胞で特異的に発現するようにノックインされ、変異型ASXL1遺伝子は骨髄細胞、脾臓細胞等の造血細胞特異的に発現する。本発明のノックインマウスを「ASXL1-MT-KIマウス」と呼ぶ。
本発明においてマウスにノックインする変異型ASXL1遺伝子は、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes、以下MDSと称する)患者において、臨床上高頻度に認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスのASXL1遺伝子の変異遺伝子である。ヒトのMDS患者において、臨床上高頻度に認められるASXL1変異遺伝子は、ASXL1タンパク質のC末端が欠失した切断型のASXL1タンパク質を発現する。ASXL1タンパク質のC末端が欠失した切断型は、ASXL1遺伝子(NM_001039939.1)の最終エクソン(エクソン13)中の上流部位、すなわち5'側における変異によりC末端が切断されたタンパク質として発現される。該変異の90%はASXL1タンパク質のオープンリーディングフレームにおいて終止コドン(X)の導入をもたらすナンセンス変異またはASXL1遺伝子中の欠失もしくは挿入に起因するフレームシフト変異である。
例えば、ヒトのMDS患者において認められるヒトASXL1タンパク質のC末端が欠失する変異として、1900-1922del; E635Rfsx15(塩基配列中の1900番目〜1922番目の塩基が欠失しフレームシフト変異が生じ、その結果、アミノ酸配列の635番目のE以下に変化が生じ、Rで始まる新たなリーディングフレームができ、そこから数えて15番目のリーディングフレームが終止コドンとなる変異)、1934dupG; G646Wfsx12(塩基配列中の1934番目のGが重複しフレームシフト変異が生じ、その結果、アミノ酸配列の646番目のG以下に変化が生じ、Wで始まる新たなリーディングフレームができ、そこから数えて12番目のリーディングフレームが終止コドンとなる変異)等が挙げられる。
また、ヒトASXL1遺伝子に認められるナンセンス変異の例として、Y591X、Q592X、K618X、R693X、Q759X、Q768X、L775X、Rl068X等が挙げられる。これらのナンセンス変異においては、その変異部位以降の翻訳は行われないので、C末端が欠失したASXL1タンパク質ができる。
マウスASXL1遺伝子の塩基配列(cDNA配列、アクセッション番号:NM_001039939.1)を配列番号1に表し、マウスASXL1タンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。配列番号1に表される配列中、第196番目の塩基から第4740番目の塩基までの領域がCDS(コーディング領域)である。エクソン13はCDSの1711番目の塩基(配列番号1に表される塩基配列の1906番目の塩基)以降の配列である。
マウスにノックインする、ヒトのMDS患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子として、マウスの野生型ASXL1遺伝子のCDSの塩基配列のうちエクソン13の塩基配列の全部または一部を欠失させた変異型ASXL1遺伝子が挙げられる。ここで、マウスの野生型ASXL1遺伝子のCDSの塩基配列のうちエクソン13の塩基配列の一部を欠失させた変異型ASXL1遺伝子とは、上流側(5'側)の1〜1500塩基程度、好ましくは1〜1000塩基程度、さらに好ましくは1〜501塩基程度、さらに好ましくは1〜201塩基程度、特に好ましくは180塩基を残したその下流側(3'側)の塩基を欠失させた変異型ASXL1遺伝子が挙げられる。すなわち、マウスの野生型ASXL1遺伝子のCDSの塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜3210番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列(配列番号1に表される塩基配列の196番目の塩基から始まり1905番目〜3405番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列)、好ましくはASXL1遺伝子のCDSの塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜2710番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列(配列番号1に表される塩基配列の196番目の塩基から始まり1905番目〜2905番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列)、さらに好ましくはASXL1遺伝子のCDSの塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜2211番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列(配列番号1に表される塩基配列の196番目の塩基から始まり1905番目〜2406番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列)、さらに好ましくはASXL1遺伝子のCDSの塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜1911番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列(配列番号1に表される塩基配列の196番目の塩基から始まり1905番目〜2106番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列)、特に好ましくはASXL1遺伝子のCDSの塩基配列の1番目の塩基から始まり1890番目の塩基で終わる塩基配列(配列番号1に表される塩基配列の196番目の塩基から始まり2085番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列)からなる変異型ASXL1遺伝子が挙げられる。
マウスにノックインするマウスの変異型ASXL1において、その塩基配列は、配列番号1で表されるマウスASXL1遺伝子の対応する塩基配列と配列同一性が100%である必要はなく、配列番号1で表される塩基配列中の対応する塩基配列とBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有していればよい。
ASXL1変異遺伝子の5'側には、翻訳の開始に関与するKozak配列やFLAG等のエピトープタグを連結させてもよく、3'側にはstop codonを付加する。また、変異型ASXL1遺伝子の3'側にはIRES配列-GFPを配しASXL1-MTを発現した細胞がGFP陽性細胞として分取できるようにしてもよい。
これらの変異の結果、野生型マウスASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜1070番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列、好ましくは野生型マウスASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜903番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列、さらに好ましくは野生型マウスASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜737番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列、さらに好ましくは野生型マウスASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜637番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列、特に好ましくは野生型マウスASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって630番目のアミノ酸に終わるアミノ酸配列を残しそれよりC末端側のアミノ酸配列が切断された変異型のASXL1タンパク質が生じる。すなわち、本発明のマウスASXL1遺伝子の変異は、マウスASXL1タンパク質のC末端が切断された変異型タンパク質を発現する変異であり、マウスASXL1タンパク質のエクソン13中の上流部でC末端が切断された変異型タンパク質を発現する変異である。C末端が切断された変異型ASXL1タンパク質の残ったアミノ酸は、対応する野生型マウスASXL1のアミノ酸配列と100%同一である必要はなく、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有していればよい。
本発明の変異型ASXL1遺伝子がノックインされ、該変異型ASXL1遺伝子が造血細胞で特異的に発現するマウスは、リコンビナーゼとそれを認識する配列を組合せて用いて、変異型ASXL1遺伝子が発現するようにすることにより得られる。DNA分子内に2つのリコンビナーゼ認識配列が同じ向きで存在するとき、リコンビナーゼは該配列を認識し2つのリコンビナーゼ認識配列の間で部位特異的組換えが生じ、2つのリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列を切り出し欠失させる。リコンビナーゼとその認識配列を組合せた部位特異的組換えシステムとして、Cre-loxPシステムやFLP-FRTシステムが挙げられ、この中でもCre-loxPシステムが好ましい。Cre-loxPシステムにおけるリコンビナーゼが認識する配列としては、loxP配列(ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT、配列番号3)が挙げられ、さらにloxP配列の変異配列であるlox511(ATAACTTCGTATAGtATACATTATACGAAGTTAT、配列番号4)、lox2272(ATAACTTCGTATAGgATACtTTATACGAAGTTAT、配列番号5)、loxFAS(ATAACTTCGTATAtacctttcTATACGAAGTTAT、配列番号6)等も用いることができる。本発明においては、loxP配列の変異配列もloxP配列と呼ぶ。
具体的には、2つのリコンビナーゼ認識配列の間にストップコドンを鋏み、その下流に変異型ASXL1遺伝子を挿入する。この際、2つのリコンビナーゼ認識配列の間のストップコドンの上流にさらに、薬剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として含ませてよい。薬剤耐性遺伝子として、ネオマイシン(neo)耐性遺伝子、HPRT(hypoxanthine phosphoribosyl transferase)遺伝子等が挙げられる。ストップコドンとマーカー遺伝子が2つのloxP配列に挟まれたDNA構築物を、LoxP flanked stopカセット(ストップカセット)と呼ぶことがある。リコンビナーゼが存在しない場合は、遺伝子の転写が始まった場合でもリコンビナーゼ認識配列中のストップコドンで転写が終結するので、変異型ASXL1遺伝子が転写、翻訳されることはない。一方、リコンビナーゼが存在する場合、リコンビナーゼ認識配列中のストップコドンは欠失するので、変異型ASXL1遺伝子が転写、翻訳され、変異型ASXL1タンパク質が発現する。
実際には、2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物をベクター上で構築し、ターゲティングベクターを作製する。ターゲティングベクターは、pBluescriptII等の市販のプラスミドベクターを利用して構築することができる。該ターゲティングベクターを胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、相同組換えにより2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物をES細胞のゲノム上の所定の位置に挿入する。この際、ターゲティングベクターをES細胞に導入する方法は限定されないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム法等の公知の方法により行うことができる。
本発明においては、2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物を、好ましくは、遺伝子を安全に挿入することができるセーフハーバー遺伝子座であるRosa26遺伝子座に導入する。Rosa26遺伝子座にDNA構築物を導入するためには、ターゲティングベクターにDNA構築物を導入するRosa26遺伝子の部位の3'および5'側の相同領域を含ませればよい。図2Aにターゲティングベクターの構造の例を示す。ターゲティングベクターをES細胞に導入した場合、図2Aに示すように、ES細胞の染色体上のRosa26遺伝子座の一部が前記ターゲティングベクターで置換され、Rosa26遺伝子座に2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物が導入される。
ターゲティングベクターが導入されたES細胞は、ベクター中のマーカーにより選択することができる。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子をマーカーとして用いる場合、G418を添加したES細胞用培地中で培養することによりターゲティングベクターが導入されたES細胞を選択することができる。また、所望のDNA構築物が導入されているかは、サザンブロッティングやPCR法によるジェノタイプ解析により確認することができる。
ターゲティングベクターが導入されたESクローンを受精卵または8細胞期胚等の初期胚に導入する。導入は、マイクロインジェクション法やアグリゲーション法等により行うことができる。受精卵または初期胚を仮親マウスに移植し、発生させ、キメラマウスを得ることができる。得られたキメラマウスを同系のマウスと交配し、2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物をヘテロで有するF1マウスを得ることができる。F1マウス同士を交配することにより2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物をホモで有するマウスを得ることができる。
本発明は、2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物を有するマウスを包含する。
次いで、上記の2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物を有するマウスをCre発現ベクターを導入したCre発現組換えマウスと交配することにより、変異型ASXL1遺伝子を発現するCre-loxP組換えマウスを作製することができる。
また、上記のターゲティングベクターが導入されたES細胞に、Creタンパク質を特異的プロモーターに連結して作製したCre発現ベクターを導入して、得られたES細胞クローンからマウスを得ることによってもCre-loxP組換えマウスを作製することができる。
ASXL1の変異型は骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML:Acute myeloid leukemia、以下、AMLと称する)の発症に関与しているため、MDSやAMLの発症組織細胞である造血系細胞で、Creを発現させる。このためには、Creを発現させるときに造血細胞特異的なプロモーターとCre遺伝子を連結すればよい。このようなCreとして、マウスのvav遺伝子のプロモーターと連結したCre遺伝子(Vav-Cre)を発現させればよい。
この際、Vav-Creを発現するVav-Creマウス(Georgiades P., et al., Genesis, 2002 Dec; 34(4): 251-6)と交配してVav-Cre-loxP組換えマウスを作製することができる。Vav-Creマウスは、The Jackson Laboratoryから入手することができる。
2つのリコンビナーゼ認識配列にストップコドンが挟まれ、その下流に変異型ASXL1遺伝子が挿入されているDNA構築物を有するマウスとVav-Creマウスを交配して得られたCre-loxP組換えマウスにおいては、骨髄細胞、脾臓細胞等の造血細胞においてのみCreリコンビナーゼが作用し、ストップカセットを除去し終止コドンを除くことができ、その結果、変異型ASXL1遺伝子が特異的に発現する。
このようにして、本発明の変異型ASXL1(Additional sex comb-like 1)遺伝子がノックインされたノックインマウスを得ることができ、該ノックインマウスにおいて、変異型ASXL1遺伝子はRosa26遺伝子座にノックインされている。
Cre-loxPシステムの代りに、FLP-FRTシステムを用いる場合には、Creリコンビナーゼの代りにFLPリコンビナーゼを用い、loxP配列の代りにFRT配列を利用すればよい。
2.変異型ASXL1(Additional sex comb-like 1)遺伝子がノックインされたノックインマウスの表現形
本発明の変異型ASXL1遺伝子がノックインされたノックインマウスは、以下のような表現型を有する。
(1)造血組織特異的に変異型ASXL1遺伝子を発現している。
(2)1年2〜5ヶ月齢で、赤血球およびヘモグロビンの減少傾向(貧血傾向)が認められる。
(3)5FUを投与した場合、健常マウスに比べ、血小板と白血球値について回復の遅延が認められる。
(4)骨髄細胞を用いてコロニーアッセイを行った場合、ミエロイド系コロニー(CFU-GM)の増加と赤血球系コロニー(BFU-E、CFU-E)の減少が認められる。
(5)CD11b/Gr1共に陽性の好中球分画の増加が認められる。
(6)赤血球分化阻害が生じている。
(7)LSK分画(Sca-1とc-Kitが陽性の分画)の顕著な減少が認められる。
(8)ノックインマウス細胞のキメリズムはコントロールと比較して顕著に減少する。
(9)ミエロイド系マーカーであるCD11bが高く、B細胞系マーカーであるB220が低く、ミエロイド系に傾倒した表現型を示す。
(10)c-Kit陽性骨髄細胞を用いてRNA-seq解析により、Hoxa遺伝子群の発現上昇、Myc結合配列を有する遺伝子群の発現上昇、GATA1結合配列を有する遺伝子群の発現減少、RUNX1結合配列を有する遺伝子群の発現減少が認められる。
(11)ノックインマウスの骨髄細胞にRUNX1変異を導入して非致死量の放射線を投与したマウスに導入した場合、健常マウスにRUNX1変異を導入したマウスと比較して、ノックインマウスでは移植後約3ヶ月で大球性貧血を呈し、さらに移植後約5ヶ月でMDS/AMLを発症する。
3.変異型ASXL1(Additional sex comb-like 1)遺伝子がノックインされたノックインマウスの利用方法
骨髄異形性症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)をはじめとして種々のミエロイド系腫瘍に認められるASXL1の変異は、60歳以上の健常者に認められるクローナル造血においても2、3番目に頻度の高い遺伝子変異である。クローナル造血を有する高齢者は高率に造血器腫瘍を発症することが報告されており、前白血病であると考えられている。
本発明のASXL1変異体が造血器だけで発現するノックインマウスも、そのままでは白血病を発症しないが、レトロウイルス感染させることにより付加的変異を導入するとほぼ全例白血病を発症することから、前白血病のモデルとして様々な利用価値が考えられる。例えば、ウイルス挿入部位を調べることによってMDSが白血病化する原因を同定できる可能性がある。また、ノックインマウスの骨髄細胞の幹細胞分画においてミトコンドリア機能が亢進し、ROS(活性酸素種)が増加していることが判明した。このことはASXL1変異体のノックインマウスの造血幹細胞では、DNA修復の異常から付加的変異が導入されやすい状態であることを示唆している。また、臨床的にASXL1変異と併存しやすいRunx1変異体をASXL1変異体ノックインマウスの骨髄細胞に導入して移植すると、マウスに数ヶ月で白血病発症を誘導する。このように、変異型ASXL1遺伝子ノックインマウスはクローナル造血/ミエロイド系腫瘍(骨髄系腫瘍)の前癌状態の良いモデルマウスとなる。
ミエロイド系腫瘍(骨髄系腫瘍)としては、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML:chronic myelomonocytic leukemia)、若年性骨髄単球性白血病(JMML:juvenile myelomonocytic leukemia)、骨髄増殖性腫瘍、好酸球増多症やPGDFRA、PDGFRBもしくはFGFR遺伝子異常を有する骨髄・リンパ性腫瘍等が含まれる。
このように、本発明のノックインマウスを、前癌状態から癌に進行することを防ぐ医薬となり得る化合物のスクリーニング、前癌状態の細胞から腫瘍が発生することに関与する分子機構の解析腫瘍発生の予防のための薬剤開発に利用することができる。
また、クローナル造血は高齢者社会の現在において重要な研究テーマであり、本発明のノックインマウスを用いてクローナル造血から造血器腫瘍を発症する分子機構を明らかにすることができる可能性があり、クローナル造血から造血器腫瘍の発症を抑制する予防法の開発のみならず、前癌状態から癌の発症を抑える方法の開発につながる可能性もある。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1] 変異型ASXL1のノックインマウスの作製
骨髄異形成症候群において臨床上高頻度に認められるASXL1変異として1900-1922del;E635RfsX15変異が挙げられる。ASXL1遺伝子の野生型の構造と変異型の構造を図1に示す。まずこの変異を模したマウスASXL1変異体を作製した。具体的にはcdsの1-1890塩基(NM_001039939.1)(配列番号1に表される塩基配列の196番目〜2085番目)のN末端にKozak配列+3xFLAG、C末端にstop codon (TGA)を付加して、AscI酵素サイトを用いてSTOP-EGFP-ROSA TV targeting vectorに挿入した。
targeting vectorには3xFLAG-ASXL1 mutant cDNAの5’側にloxP siteで挟まれたNeo選択カセットとstop codonが存在する。内在性プロモーター下ではstop codonが恒常的に発現され、3xFLAG-ASXL1 mutant cDNAは発現しない。一方、組織特異的Creマウスを使用する事で選択的なASXL1 mutant cDNAの発現が可能である。このtargeting vectorを用いて、標的遺伝子を安全に挿入可能なセーフハーバー遺伝子座と考えられているRosa26 遺伝子座のintron1からexon2にかけてエレクトロポレーションにより組換え、knockin alleleを含むES細胞を作成した。PCRとサザンブロットによりポジティブクローンを確認したのち、ターゲッティングしたESクローンを受精卵にマイクロインジェクションし仮親マウスに移植した。その後C57BL/6マウスと交配してバッククロスを行ったのち、Vav-Creマウス、Mx-Creマウスなど造血細胞特異的に発現するCreマウスと交配する事で造血細胞に特異的にASXL1変異体が発現するノックインマウスを作製した。図2にtargeting vectorの構造とRosa26遺伝子座への組換え位置(図2A)、並びにノックインマウスをCreマウスと交配したときのASXL1変異体発現のメカニズム(図2B)を示す。
[実施例2] ASXL1-MT(変異型ASXL1)コンディショナルノックインマウス(以下ノックインマウスと表記)の表現型の確認
1.ASXL1-MT発現確認
ノックインマウスでは、Cre酵素による切断によってストップカセットが除去され、下流のASXL1-MTが発現するとGFP蛍光を発するように設計されている(図2B)。ERT2-Cre、Mx-Cre、Vav-Creマウスと掛け合わせた結果、ASXL1-MTが最も効率的に誘導されるのはVav-Creマウスと掛け合わせた時であり、骨髄および血液で90%以上のGFP蛍光を認めた。また、ノックインマウスではASXL1-MTに3xFLAGタグが付いており、ウエスタンブロッティング(WB)によりFLAG抗体でASXL1-MTの発現を確認することが可能である。そこでVav-Creと掛け合わせたノックインマウスで種々の組織におけるWBを行ったところ、肝臓、肺、皮膚の細胞ではASXL1MTが発現せず、一方で骨髄、脾臓でASXL1-MTを発現していることから、ノックインマウスでは造血組織特異的にASXL1-MTを発現していることが確認された(図3)。
2.長期経過観察
長期経過観察の結果、ノックインマウスでは1年2〜5ヶ月齢で、赤血球およびヘモグロビンの減少傾向(貧血傾向)を認めた(図4)。
3.5FU投与試験
ノックインマウスに5FUを投与し、5日おきに血算値を測定して各血液細胞の回復傾向を調べた。5FUは30日おきに投与することを3回繰り返し、全90日間の観察を行った。結果を図5−1、5−2に示す。赤血球およびヘモグロビン値はコントロールと同様の傾向を示した。一方で血小板と白血球値についてはコントロールよりも回復の遅延が認められた。白血球値に関しては、投与の回を重ねるごとに回復の遅延が顕著になった。
4.骨髄細胞を用いたコロニーアッセイ
ノックインマウスの骨髄細胞を用いてコロニーアッセイを行った。結果を図6に示す。、コントロールと比較してミエロイド系コロニー(CFU-GM)の増加と赤血球系コロニー(BFU-E、CFU-E)の減少を認めた。
5.骨髄細胞を用いたFACS解析/12ヶ月齢
まず、CD11b/Gr1染色によるミエロイドマーカー発現を調べたところ、ノックインマウスではコントロールと比較してCD11b/Gr1共に陽性の好中球分画の増加が認められた(図7)。
次にCD71/Ter119染色による赤血球分化を調べた。CD71/Ter119展開により、i : HSC, early progenitors, ii : proerythroblasts, iii : basophilic erythroblasts, iv : poly chromatophilic erythroblasts, v : orthochromatophilic erythrobiastsのi〜v段階で赤血球の分化段階を評価した。コントロールと比較してノックインマウスではivとvの分画の減少が認められ、赤血球分化阻害が生じている可能性が示唆された(図8)。
さらに、ノックインマウスにおける幹細胞分画についてFACS解析を行ったところ、コントロールと比較してLSK分画(Sca-1とc-Kitが陽性の分画)の顕著な減少が認められた(図9)。ASXL1ノックアウトマウスではLSK分画が増加することを踏まえると、LSK分画の減少はノックインマウス特有の表現型であることが示唆される。
6.競合的移植実験および非競合的移植実験
競合的移植実験ではコントロールマウスとノックインマウスの骨髄細胞を1対1の割合で混ぜ、致死量で放射線照射したマウスに移植した(図10)。移植後4週間でマウスの末梢血を解析した結果、ノックインマウス細胞のキメリズムはコントロールと比較して顕著に減少していた(図11A)。さらにノックインマウス細胞の分画ではミエロイド系マーカーであるCD11bが高く(図11B)、B細胞系マーカーであるB220が低く(図11C)、T細胞系マーカーであるCD3が低い(図11D)傾向を認め、ミエロイド系に傾倒した表現型を示すことが分かった。これに対し、非競合的移植実験ではコントロールマウスまたはノックインマウスの骨髄細胞を致死量で放射線照射したマウスに移植した。競合的移植実験と同様にノックインマウス細胞の分画では移植後4週間でミエロイド系に傾倒した表現型を示した。
7.遺伝子発現解析
ノックインマウスのc-Kit陽性骨髄細胞を用いてRNA-seq解析を行った結果、Hoxa遺伝子群の発現上昇(図12)、Myc結合配列を有する遺伝子群の発現上昇、GATA1結合配列を有する遺伝子群の発現減少、RUNX1結合配列を有する遺伝子群の発現減少が認められた。
8.RUNX1(Runt-related transcription factor)変異導入モデル
ノックインマウスは1年以上の長期経過観察を経てもMDSを発症しなかった。これはASXL1変異によるエピゲノム異常を背景とした前MDS状態に、新たな遺伝子変異が蓄積することによりMDS発症が惹起されるためであると考えられた。そこで、臨床上ASXL1変異と高頻度に共存するRUNX1変異を導入することで発症が惹起されるかを検討した。
図13にRUNX1野生型とRUNX1変異体(点突然変異体およびC末端欠失型)の構造を示す。
ノックインマウスの骨髄細胞にRUNX1変異を導入して非致死量の放射線を投与したマウスに導入すると(図14)、コントロールマウスにRUNX1変異を導入したマウスと比較して、ノックインマウスでは移植後約3ヶ月で大球性貧血を呈した(図15)。さらに移植後約5ヶ月でMDS/AMLを発症することが分かった(図16)。
コントロールマウスまたはノックインマウスにRUNX1変異を導入し移植後約4ヶ月の時点で骨髄細胞を用いたRNA-seq解析を行ったところ、ノックインマウスでは幹細胞で発現する遺伝子の上昇が認められ、コントロールと比較して早期に未分化な状態となっていることが示唆された。
発症したRUNX1変異を導入したノックインマウス由来の細胞はSerialに植え継ぐことが可能であり、薬剤投与モデルとして応用が可能である。
9.MOL4070Aウイルス投与
胎児期のノックインマウスに遺伝子変異を誘発するMOL4070Aウイルスを投与して経過を観察した。結果を図17に示す。図17Aはウイルス投与によりAMLを発症したサイトスピン像であり、未分化細胞が増えていることを示し、図17Bは生存率を示す。投与後約1.5年において、同様にウイルスを投与したコントロールマウスは生存しているにも関わらず、ノックインマウスは主にAMLを発症して全て死亡した。
10.ChIP-seq解析
ノックインマウスのc-Kit陽性骨髄細胞を用いてChIP-seq解析を行った。結果を図18に示す。
コントロールと比較してH3K27me3では大きな変化は認められなかったが、H3K4me3およびH2AK119Ubは低下傾向を認めた。
ノックインマウスではH3K4me3が低下している遺伝子として赤血球分化に関与するものが多く存在しており、ASXL1変異と赤血球系細胞の分化阻害との関連を示している。
本発明のノックインマウスはクローナル造血/前白血病状態等のミエロイド系腫瘍(骨髄系腫瘍)の前癌状態のモデルマウスとして、前癌状態から癌に進行することを防ぐ医薬の開発等に利用することができる。
配列番号3〜6 合成

Claims (9)

  1. マーカー遺伝子とストップコドンが2つのloxP配列に挟まれ、その下流にヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が挿入されたDNA構築物がRosa26遺伝子座に導入されたマウス。
  2. ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号1で表されるマウスの野生型ASXL1遺伝子のCDSの塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜3210番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列からなる変異型ASXL1遺伝子である請求項1記載のマウス。
  3. ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号2で表されるマウスの野生型ASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜1070番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列を残しそれ以降のC末端側のアミノ酸配列が切断された変異型のASXL1タンパク質を発現し得るマウスの変異型ASXL1遺伝子である、請求項1または2に記載のマウス。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のマウスをVav-Creマウスと交配することにより、子孫として得られる、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子がノックインされ、造血細胞で特異的に発現するノックインマウスを作製する方法。
  5. 請求項4に記載の方法により得られる、ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子がノックインされ、該遺伝子が造血細胞で特異的に発現するノックインマウス。
  6. マウスの変異型ASXL1遺伝子をRosa26遺伝子座にノックインした、請求項5記載のノックインマウス。
  7. ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号1で表されるマウスの野生型ASXL1遺伝子の塩基配列の1番目の塩基から始まり1710番目〜3210番目のいずれかの塩基で終わる塩基配列からなる変異型ASXL1遺伝子である請求項5または6に記載のノックインマウス。
  8. ヒトの骨髄異形成症候群(MDS)患者において認められるASXL1変異遺伝子を模倣したマウスの変異型ASXL1遺伝子が、配列番号2で表されるマウスの野生型ASXL1のアミノ酸配列中の1番目のアミノ酸に始まって570番目〜1070番目のいずれかのアミノ酸に終わるアミノ酸配列を残しそれ以降のC末端側のアミノ酸配列が切断された変異型のASXL1タンパク質を発現し得るマウスの変異型ASXL1遺伝子である、請求項5〜7のいずれか1項に記載のノックインマウス。
  9. クローナル造血またはミエロイド系腫瘍の前癌状態モデルマウスである、請求項5〜8のいずれか1項に記載のノックインマウス。
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