つぎに、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池システムを説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池システム(SOFC)を示す全体構成図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池システム(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のモジュール容器8(以下では適宜「モジュールケース」と呼ぶ。)が内蔵されている。この密閉空間であるモジュールケース8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤ガス(以下では適宜「発電用空気」又は「空気」と呼ぶ。)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、8個の燃料電池セルスタック14(詳細は図6で後述する)を備え、この燃料電池セルスタック14は、各々が燃料電池セルを含む、16本の燃料電池セルユニット16(詳細は図5で後述する)から構成されている。この例では、燃料電池セル集合体12は、128本の燃料電池セルユニット16を有する。なお、ハウジング6は必須ではなく、断熱材7を保持するようなフレームを用いてもよい。燃料電池セル集合体12は、複数の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2のモジュールケース8の発電室10の上方には、燃焼部としての燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガス(オフガス)と残余の空気とが燃焼し、排気ガス(言い換えると燃焼ガス)を生成するようになっている。さらに、モジュールケース8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外気へ発散するのを抑制している。また、この燃焼室18の上方には、原燃料ガス(原料ガス)を改質する改質器120が配置され、残余ガスの燃焼熱によって改質器120を改質反応が可能な温度となるように加熱している。
さらに、ハウジング6内においてモジュールケース8の上方には、蒸発混合器140が断熱材7内に設けられている。蒸発混合器140は、供給された水と排気ガスとの間で熱交換を行うことによって、水を蒸発させて水蒸気を生成し、この水蒸気と原燃料ガスとの混合ガス(以下では「燃料ガス」と呼ぶこともある。)をモジュールケース8内の改質器120に供給する。
つぎに、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26から供給される水の流量を調整する水供給装置である水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料ガス供給装置である燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器120に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
なお、本実施形態では、装置の起動時に改質器120内において、部分酸化改質反応(POX)のみが生じるPOX工程から、部分酸化改質反応(POX)と水蒸気改質反応(SR)が混在したオートサーマル改質反応(ATR)が生じるATR工程を経て、水蒸気改質反応のみが生じるSR工程が行われるように構成してもよいし、POX工程を省略してATR工程からSR工程に移行されるように構成してもよいし、POX工程及びATR工程を省略してSR工程のみが行われるように構成してもよい。なお、SR工程のみが行われる構成では、改質用空気流量調整ユニット44は不要である。
つぎに、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
つぎに、図2〜図4を参照して、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池モジュールの構造について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図であり、図4は、モジュールケース及び空気通路カバーの分解斜視図である。なお、図2、3ではハウジングは省略している。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2は、断熱材7で覆われたモジュールケース8の内部に設けられた燃料電池セル集合体12及び改質器120を有すると共に、モジュールケース8の外部で且つ断熱材7内に設けられた蒸発混合器140を有する。
まず、モジュールケース8は、図4に示すように、略矩形の天板8a,底板8c,これらの長手方向(図2の左右方向)に延びる辺同士を連結する対向する一対の側板8bからなる筒状体と、この筒状体の長手方向の両端部の2つの対向する開口部を塞ぎ、天板8a及び底板8cの幅方向(図3の左右方向)に延びる辺同士を連結する閉鎖側板8d,8eからなる。
モジュールケース8は、空気通路カバー160によって天板8a及び側板8bが覆われている。空気通路カバー160は、天板160aと、対向する一対の側板160bとを有する。天板160aの略中央部分には、排気管171を貫通させるための開口部167が設けられている。また、天板160aの閉鎖側板8d側の部分には、発電用空気導入管74が接続される開口部168が設けられている。天板160aと天板8aとの間、及び、側板160bと側板8bとの間は、所定の距離だけ離間した状態となっている。これにより、モジュールケース8の外側と断熱材7との間、具体的にはモジュールケース8の天板8a及び側板8bと、空気通路カバー160の天板160a及び側板160bとの間には、酸化剤ガス供給通路としての空気通路161a,161bが形成されている(図3参照)。
モジュールケース8の側板8bの下部には、複数の貫通孔である吹出口8fが設けられている(図4参照)。発電用空気は、空気通路カバー160の天板160aのうち、モジュールケース8の閉鎖側板8d側の略中央部に設けられた発電用空気導入管74から空気通路161a内に供給される(図2参照)。そして、発電用空気は、空気通路161a,161bを通って、吹出口8fから燃料電池セル集合体12に向けて発電室10内に噴射される(図3、図4参照)。
また、空気通路161a,161bの内部には、熱交換促進部材としてのプレートフィン162,163が設けられている(図3参照)。プレートフィン162は、モジュールケース8の天板8aと空気通路カバー160の天板160aの間で長手方向及び幅方向に延びるように水平方向に設けられ、プレートフィン163は、モジュールケース8の側板8bと空気通路カバー160の側板160bとの間であって、且つ、燃料電池セルユニット16よりも上方の位置に長手方向及び鉛直方向に延びるように設けられている。
空気通路161a,161bを流れる発電用空気は、特にプレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の内側のモジュールケース8内(具体的には天板8a,側板8bに沿って設けられた排気通路)を通過する排気ガスとの間で熱交換を行い、加熱されることとなる。このようなことから、空気通路161a,161bにおいてプレートフィン162,163が設けられた部分は、熱交換器(熱交換部)として機能する。なお、プレートフィン162が設けられた部分が主たる熱交換器部分を構成し、プレートフィン163が設けられた部分が従たる熱交換器部分を構成する。
つぎに、蒸発混合器140は、モジュールケース8の天板8a上で水平方向に延びるように固定されている。そして、蒸発混合器140は、長手方向(図2の左右方向)の一側端側に、に排気管171及び混合ガス供給管112が接続され、長手方向の他側端側に排気ガス排出管82が接続され、排気管171により支持されている。また、蒸発混合器140とモジュールケース8との間には、これらの隙間を埋めるように断熱材7の一部分が配置されている(図2及び図3参照)。
具体的には、蒸発混合器140は、長手方向(図2の左右方向)の一側端側に、水及び原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい)を供給する水供給配管62及び原燃料供給配管63と、排気ガスを排出するための排気ガス排出管82(図2参照)とが連結され、長手方向の他側端側に、排気管171の上端部が連結されている。排気管171は、空気通路カバー160の天板160aに形成された開口部167を貫通して下方へ延び、モジュールケース8の天板8a上に形成された排気口111に連結されている。排気口111は、モジュールケース8内の燃焼室18で生成された排気ガスをモジュールケース8の外へ排出する開口部であり、モジュールケース8の上面視略矩形の天板8aのほぼ中央部に形成されている。
つぎに、図2及び図3に示すように、改質器120は、燃焼室18の上方でモジュールケース8の長手方向に沿って水平方向に延びるように配置され、モジュールケース8の天板8aとの間に排気ガス誘導部材130を介して所定距離隔てられて状態で、天板8aに対して固定されている。改質器120は、上面視で外形略矩形であるが、中央部に貫通孔120bが形成された環状構造体であり、上側ケース121と下側ケース122とが接合された筐体を有している。この貫通孔120bは、天板8aに形成された排気口111と上面視で重なるように位置し、好ましくは、貫通孔120bの中央位置に排気口111が形成される。
改質器120の長手方向の一端側(モジュールケース8の閉鎖側板8e側)では、上側ケース121に設けられた混合ガス供給口120aに混合ガス供給管112が連結されており、他端側(閉鎖側板8d側)では、燃料ガス供給管64が下側ケース122に、脱硫器36まで延びる水添脱硫器用水素取出管65が上側ケース121にそれぞれ連結されている。したがって、改質器120は、混合ガス供給管112から混合ガス(つまり水蒸気が混合された原燃料ガス(改質用空気を含めてもよい))を受け取り、内部で混合ガスを改質し、燃料ガス供給管64及び水添脱硫器用水素取出管65から改質後のガス(即ち、燃料ガス)を排出するように構成されている。
改質器120は、その内部空間が2つの仕切り板123a,123bによって3つの空間に仕切られることにより、改質器120内に、混合ガス供給管112からの混合ガスを受入れる混合ガス受入部120Aと、混合ガスを改質するための改質触媒(図示せず)が充填された改質部120Bと、改質部120Bを通過したガスを排出するガス排出部120Cと、が形成されている(図2参照)。改質部120Bは、仕切り板123a,123bに挟まれた空間であり、この空間に改質触媒が保持されている。混合ガス及び改質後の燃料ガスは、仕切り板123a,123bに設けられた複数の連通孔(スリット)を通って移動可能となっている。また、改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
混合ガス受入部120Aには、蒸発混合器140から混合ガス供給管112を介して供給された混合ガスが混合ガス供給口120aを通して噴出される。この混合ガスは、混合ガス受入部120A内で拡張されて噴出速度が低下し、仕切り板123aを通過して改質部120Bに供給される。
改質部120Bでは、低速で移動する混合ガスが改質触媒により燃料ガスに改質され、この燃料ガスが仕切り板123bを通過してガス排出部120Cに供給される。
ガス排出部120Cでは、燃料ガスが燃料ガス供給管64、及び、水添脱硫器用水素取出管65へ排出される。
燃料ガス供給通路としての燃料ガス供給管64は、モジュールケース8内を閉鎖側板8dに沿って下方へ延び、底板8c付近で略90°屈曲されて水平方向に延びて、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内へ入り、更にマニホールド66内で逆側の閉鎖側板8e付近まで水平方向に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、燃料ガスがマニホールド66内に供給される。このマニホールド66の上方には、燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。また、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
排気ガス誘導部材130は、改質器120と天板8aとの間でモジュールケース8の長手方向に沿って水平方向に延びるように配置されている。排気ガス誘導部材130は、上下方向に所定距離だけ離間された下部誘導板131及び上部誘導板132と、これらの長手方向の両端辺が取り付けられる連結板133,134とを備えている(図2,図3参照)。上部誘導板132は、幅方向の両端部が下方に向けて折り曲げられ、下部誘導板131に連結されている。連結板133,134は、上端部が天板8aに連結され、下端部が改質器120に連結されており、これにより、排気ガス誘導部材130及び改質器120を天板8aに固定している。
下部誘導板131は、幅方向(図3の左右方向)の中央部が下方に向けて突出する凸状段部131aが形成されている。一方、上部誘導板132は、下部誘導板131と同様に、幅方向の中央部が下方に向けて凹状となるように凹部132aが形成されている。凸状段部131aと凹部132aは、上下方向で並行して長手方向に延びている。混合ガス供給管112は、モジュールケース8内でこの凹部132a内を水平方向に延びた後、閉鎖側板8e付近で下方に向けて屈曲し、上部誘導板132及び下部誘導板131を貫通して、改質器120に連結されている。
排気ガス誘導部材130は、上部誘導板132、下部誘導板131、連結板133,134によって、断熱層として機能する内部空間であるガス溜135が形成されている。このガス溜135は、燃焼室18と流体連通している。すなわち、上部誘導板132、下部誘導板131、連結板133,134は、所定の隙間を形成するように連結されており、気密的には連結されていない。ガス溜135には、運転中に燃焼室18から排気ガスが流入したり、停止時に外部から空気が流入したりすることが可能となっているが、総じてガス溜135の内外間のガスの移動は緩やかである。
上部誘導板132は、天板8aと所定の上下方向距離を隔てて配置されており、上部誘導板132と天板8aとの間には、長手方向及び幅方向に沿って水平方向に延びる排気通路172が形成されている。この排気通路172は、モジュールケース8の天板8aを挟んで空気通路161aと並設されており、排気通路172内には、空気通路161a,161b内のプレートフィン162,163と同様なプレートフィン175が配置されている。このプレートフィン175は、プレートフィン162と上面視で略同一箇所に設けられており、天板8aを挟んで上下方向に対向している。空気通路161a及び排気通路172のうち、プレートフィン162,175が設けられた部分において、空気通路161aを流れる発電用空気と排気通路172を流れる排気ガスとの間で効率的な熱交換が行われて、排気ガスの熱により発電用空気が昇温されることとなる。
また、改質器120は、モジュールケース8の側板8bと所定の水平方向距離を隔てて配置されており、改質器120と側板8bとの間には、排気ガスを下方から上方へ通過させる排気通路173が形成されている。また、排気ガス誘導部材130も側板8bと所定の水平方向距離を隔てて配置されており、排気通路173は、排気ガス誘導部材130と側板8bとの間の通路を含んで天板8aまで延びている。排気通路173は、天板8aと側板8bとの角部に位置する排気ガス導入口172aで排気通路172と連通している。この排気ガス導入口172aは、モジュールケース8内で長手方向に延びている。
さらに、下部誘導板131は、改質器120の上側ケース121の天面から所定の上下方向距離を隔てて配置されており、下部誘導板131と上側ケース121との間、及び、改質器120の貫通孔120bは、貫通孔120bを下方から上方へ向けて通過した排気ガスを通過させる排気通路174を形成している。この排気通路174は、改質器120の上方で排気通路173と合流する。
つぎに、図5を参照して、燃料電池セルユニット16について説明する。
図5は、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図5に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル84の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路細管98が形成されている。
この燃料ガス流路細管98は、内側電極端子86の中心から燃料電池セル84の軸線方向に延びるように設けられた細長い細管である。このため、マニホールド66(図2参照)から、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃料ガス流路88に流入する燃料ガスの流れには、所定の圧力損失が発生する。従って、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流入側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。また、燃料ガス流路88から、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃焼室18(図2参照)に流出する燃料ガスの流れにも所定の圧力損失が発生する。従って、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流出側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
つぎに、図6を参照して、燃料電池セルスタック14について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図6に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。
各燃料電池セルユニット16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(図2参照)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セルユニット16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面と電気的に接続される空気極用接続部102bとを接続するように一体的に形成されている。また、各燃料電池セルユニット16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に空気極用接続部102bが接触することにより、集電体102は空気極全体と電気的に接続される。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図6では左端の奥側)に位置する燃料電池セルユニット16の空気極には、2つの外部端子104がそれぞれ接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の内側電極端子86に接続され、上述したように、128本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に、図7乃至図10を参照して、蒸発混合器140の詳細な構造を説明する。
図7は、図2に示す固体酸化物形燃料電池システムの蒸発混合器を拡大して示す拡大断面図である。また、図8は、図2に示す固体酸化物形燃料電池システムの蒸発混合器の天板を省略した状態の斜視図である。図9は、固体酸化物形燃料電池システムの蒸発混合器の上面図である。図10は、固体酸化物形燃料電池システムの蒸発混合器を、図9のX−X線に沿って切断した断面図である。
図7に示すように、蒸発混合器140は、上面視で略矩形の箱状の蒸発器ケース141(図2、図3)を有している。この蒸発器ケース141は、第1の容器143と、第1の容器143の下方に重ね合わされた第2の容器144と、第1の容器143の上部を塞ぐ天板142とにより構成されている。この構成により、第1の容器143の上側と天板142の下側との間に蒸発室150及び混合室151が夫々形成される。従って、天板142の下側の面は、蒸発室150及び混合室151の連続した天井面を構成する。また、第1の容器143の下側と第2の容器144の上側との間には、排気ガス室である排気ガス流路154が形成される。このように、蒸発混合器140には、その上層側に蒸発室150及び混合室151が形成され、下層側に排気ガス流路154が形成されている。
また、蒸発室150内には、多数の粒状の熱伝導性の部材から形成された蒸発促進材(図7に想像線で示す)が充填されている。蒸発促進材としては、例えば、球状のアルミナボールなどを用いることができる。蒸発室150内に充填されたアルミナボールは、天板142に当接している。
天板142は、平板状の金属部材からなる。天板142の一方の端部の幅方向一側部には原燃料供給配管63を接続するための開口部が形成され、一方の端部の幅方向中央には水供給配管62を接続するための開口部が形成されている。さらに、天板142には、プレス加工により、下方に向けて突出する3本の突出部142Aが形成されている。即ち、3本の突出部142Aは、夫々、蒸発室150の天井面から下方に向けて突出し、蒸発室150内に充填されたアルミナボールと接触している。
図9に示すように、3本の突出部142Aは、蒸発室150の短手方向(幅方向)に延びるように、等間隔に平行に設けられている。一方、図9に示すように、水供給配管62及び原燃料供給配管63は、蒸発混合器140の長手方向の一方の端部に接続されている。ここから流入した原燃料ガス及び水(水蒸気)は、図9において左方向に流れ、蒸発混合器140の左側端部に形成された混合室151に流入する。このように、突出部142Aは、水及び原燃料ガスの蒸発室150への流入口と、蒸発室150と混合室151の接続部とを結ぶ「流れ経路」を横断するように延びている。また、天板142に3本の突出部142Aを設けることにより、天板142は補強され、その変形が抑制されている。
ここで、蒸発室150の下層には排気ガス流路154が形成されており、蒸発室150の床面(蒸発面)は高温となる。このため、蒸発室150内に供給された水は、その床面上で蒸発され水蒸気となる。一方、蒸発室150の天井面は、排気ガス流路154から離間していると共に、蒸発室150内に供給される低温の原燃料ガスによって冷却されるので温度が低くなりやすい。このため、蒸発室150内で生成された水蒸気がその天井面に接触すると、結露して水滴が生成される場合がある。
このように、蒸発室150の天井面で生成された水滴が大きな水滴に成長し、この水滴が、連続した天井面を形成している混合室151まで伝わって流れ、混合室151に侵入すると突沸の発生原因となる。即ち、天井面で成長した大きな水滴が天井面を伝わって流れ、混合室151内で床面に落下すると、混合室151の床面は排気ガスにより高温に加熱されているため、多量の水が瞬間的に蒸発され、突沸が起こる。突沸が発生すると、混合室151内及び蒸発室150内の圧力が急上昇するので、一時的に蒸発室150内に原燃料ガスが導入されにくくなり、燃料電池セルスタック14は燃料不足の状態となる。この一時的な燃料不足が、一時的な発電電圧の低下を引き起こしたり、各燃料電池セルユニット16の劣化の原因となる。
本実施形態においては、蒸発室150を形成する天板142に3本の突出部142Aが設けられているので、天井面で生成された水滴が大きな水滴に成長する前に、これを蒸発室150内に落下させることができる。即ち、3本の突出部142Aは、水及び原燃料ガスの蒸発室150への流入口と、蒸発室150と混合室151の接続部とを結ぶ「流れ経路」を横断するように設けられている。このため、天井面を伝わって混合室151の方へ移動する水滴は、突出部142Aによって確実にその移動を阻止され、蒸発室150内に落下する。このため、天井面で生成された水滴は大きな水滴に成長し難く、水滴が大きく成長した場合でも、天井面を伝わって混合室151に侵入することはない。従って、天板142に設けた突出部142Aは、混合室151への水滴の流入を抑制する「流入抑制部」として機能する。
また、突出部142Aは蒸発室150内に充填された蒸発促進材であるアルミナボールと接触しているので、突出部142Aによって移動を阻止された水滴は、突出部142Aに接触しているアルミナボールに誘導され、これを伝わって蒸発室150内に容易に落下する。充填されたアルミナボールは蒸発室150の床面よりも温度が低いため、アルミナボールに伝わった水滴は少しずつ蒸発され、突沸を発生することがない。
さらに、天板142に設けた3本の突出部142Aは、天板142を補強し、その変形を抑制している。ここで、天板142が変形により傾斜すると、天井面に付着した水滴は混合室151の方へ流れやすくなる。また、天板142の変形により、蒸発室150内に充填されたアルミナボールと天板142の間に大きな隙間ができると、この隙間を蒸発室150内に導入された低温の原燃料ガスが吹き抜けることとなる。これにより、天板142が冷却されると、天板142における結露が促進されてしまう。即ち、突出部142Aは、天板142を補強することによっても、水滴の混合室151室への流入を抑制している。換言すれば、本実施形態における突出部142A以外の構成であっても、天板142を補強するための構成は「流入抑制部」として機能させることができる。
図7及び図8に示すように、第1の容器143は一枚の金属部材をプレス成形して構成されており、底面143A1、143A2と、側壁143Bと、鍔部143Cと、隔壁147とはひと続きの一体成型部材として構成されている。即ち、第1の容器143は、1枚の金属板により、第1の底面143A1、第2の底面143A2と、これらの外周縁から上方に延びる側壁143Bと、側壁143Bの上端から水平方向外方に延びる鍔部143Cと、隔壁147と、を形成している。ここで、蒸発室150及び混合室151は、第1の容器143の上側に形成され、これらは隔壁147によって分離される。また、本実施形態においては、蒸発室150の床面となる第1の底面143A1にはブラスト加工が施されている。ブラスト加工によって蒸発室150の床面に適切な表面粗さを与えることにより床面の親水性が高くなり、床面上に供給された水は大きく広がり蒸発しやすくなる。
第1の容器143の第1の底面143A1と第2の底面143A2は隔壁147により分割される。第1の底面143A1は水供給配管62及び原燃料供給配管63が接続される蒸発室150の床面を構成し、第2の底面143A2は混合ガス供給管112が接続される混合室151の床面を構成している。第1の底面143A1は、後述するように蒸発室150の床面であり、排気ガスと水供給配管62から供給された水との間で熱交換するための蒸発面として機能する。
第2の底面143A2の中央には混合室151の排出口として開口部が形成されており、この開口部には混合ガス供給管112の上端が接続されている。この混合ガス供給管112は、排気管171の内部を通過するように配置されており、一端が第1の容器143に形成された開口部に連結され、他端が改質器120の天面に形成された混合ガス供給口120a(図2)に連結されている。混合ガス供給管112は、排気管171内を通過してモジュールケース8内まで鉛直下方に延び、そこで略90°屈曲されて天板8aに沿って水平方向に延びた後、下方へ略90°屈曲されて改質器120に連結されている。
隔壁147は、第1の容器143の長手方向に延びる側壁143Bの間を短手方向に延びており、金属板が上方に向けて突出するように曲げることにより形成されている。隔壁147は、第1及び第2の底面143A1、143A2の縁から上方に平行に延びる一対の側壁147Bと、一対の側壁147Bの上端の間を結ぶ上面147Cと、を備える。また、隔壁147の上部の短手方向(隔壁147の延びる方向)の中央には凹部147Aが形成されており、この凹部147Aが蒸発室150と混合室151を連通させる接続部として機能している。
図7及び図8に示すように、隔壁147の上面147Cは平坦面として形成されており、鍔部143Cと面一に形成されている。また、凹部147Aの幅は、第1の底面143A1側が第2の底面143A2側よりも広くなっており、第2の底面143A2側に向かうにつれて徐々に狭くなっている。また、凹部147Aの上面147Cからの深さは、蒸発室150内に充填された蒸発促進材であるアルミナボールの径よりも小さい。このため、蒸発室150内のアルミナボールが凹部147Aを通って混合室151に侵入することはない。
第1の容器143と天板142とは、天板142の下面と、鍔部143Cの上面及び隔壁147の上面147Cが当接した状態で接合されている。これにより、蒸発室150は、天板142と、第1の容器143の第1の底面143A1、側壁143B、及び隔壁147とにより区画される。また、混合室151は、天板142と、第1の容器143の第2の底面143A2、側壁143B、及び隔壁147とにより区画される。そして、蒸発室150と混合室151の接続部が、隔壁147の凹部147Aと天板142とにより区画され、蒸発混合器140の幅方向中央の上部で、蒸発室150と混合室151を連通させている。
図8に示すように、混合室151の内部には、仕切り部材152が配置されている。仕切り部材152は、同一断面で幅方向に延びる耐熱性を有する金属材料で形成された部材である。仕切り部材152は、上面152Aと、上面152Aの両側部から下方に平行に延びる一対の側壁部152Bと、を備える。蒸発室150側の側壁部152Bの幅方向両側部には横長の開口部152Dが形成されている。
仕切り部材152の長手方向長さは、混合室151の幅とほぼ等しい。仕切り部材152は、第1の容器143の第2の底面143A2に形成された混合ガス供給管112が接続された開口部(排出口)を覆うように蒸発室150内に配置されている。仕切り部材152は、側壁部152Bの下端が第1の容器143の第2の底面143A2と当接した状態で、第1の容器143に固定されている。仕切り部材152の一対の側壁部152Bの側部と、第1の容器143の内壁との間は溶接されておらず、隙間が形成されている。また、仕切り部材152の上面152Aは第1の容器143の鍔部143Cと略等しい高さとなっている。
仕切り部材152が設けられることにより、混合室151内の空間は、隔壁147と仕切り部材152との間の第1の空間153Aと、仕切り部材152の一対の側壁部152Bの間の第2の空間153Bと、仕切り部材152と第1の容器143の側壁143Bとの間の第3の空間153Cとに分割されている。第1の空間153Aと第2の空間153Bとは、側壁部152Bに形成された開口部152Dを通じて連通している。また、第3の空間153Cは、仕切り部材152の一対の側壁部152Bの両側部と第1の容器143の内壁との間の隙間を介して、第1の空間153A及び第2の空間153Bと連通している。
次に、図7に示すように、第2の容器144は、第1の容器143の下側に配置された容器であり、底面144Aと、底面144Aの外周縁から上方に延びる側壁144Bと、側壁144Bの上端から水平方向外方に延びる鍔部144Cと、を備える。第2の容器144の底面144Aには排気管171の上端が接続される開口部が形成され、側壁144Bには排気ガス排出管82が接続される開口部が形成されている。第2の容器144は、第1の容器143に下方から重ね合わされた状態において、その鍔部144Cの上面が、第1の容器143の鍔部143Cの下面に当接している。
また、図7に示すように、第1の容器143と第2の容器144の間の空間には、ガス流路形成板159が配置されている。このガス流路形成板159は薄板を折り曲げることにより、第1垂直部159Aと、底面部159Bと、傾斜面部159Cと、上面部159Dと、第2垂直部159Eと、脚面部159Fと、を形成している。また、第1垂直部159Aには、排気ガスを通過させるための複数の開口部(図示せず)が形成されている。
第1垂直部159Aは隔壁147から鉛直下方に延びる部分であり、この第1垂直部159Aの下端から底面部159Bが水平方向に延びている。この底面部159Bは、第2の容器144の底面144A上に当接するように配置されている。傾斜面部159Cは、底面部159Bの先端から斜め上方に延びる傾斜面であり、第1の容器143の第1の底面143A1(蒸発面)の近傍まで延びている。上面部159Dは、傾斜面部159Cの上端から水平方向に延びる平面であり、第1の容器143の第1の底面143A1と平行に延びている。この上面部159Dにより、排気ガス流路154の下流側の床面が高くされている。第2垂直部159Eは上面部159Dの先端から鉛直下方に延びる面であり、その下端は第2の容器144の底面144Aまで延びている。第2垂直部159Eの下端からは、脚面部159Fが、第2の容器144の底面144Aと当接するように水平方向に延びている。
また、第1の容器143の第1、第2の底面143A1、143A2と、第2の容器144の底面144Aとの間の空間は、排気ガス流路154として機能する。この排気ガス流路154は、排気管171と排気ガス排出管82とを連通させるように、蒸発混合器140の長手方向に延びている。また、上記のように、第1の容器143と第2の容器144の間の空間にガス流路形成板159が配置されることにより、排気ガス流路154の形態が形作られている。即ち、ガス流路形成板159を配置することにより、排気ガス室である排気ガス流路154の下流側の床面が高くされ、この部分で排気ガスの流路断面積が狭くされている。
さらに、排気ガス流路154には、プレートフィン155が配置されている。このプレートフィン155は、排気ガス流路154内の、第1の容器143の第1の底面143A1と、ガス流路形成板159の上面部159Dとの間に、これらと当接するように配置されている。プレートフィン155は、平面の金属板にプレス加工を施すことにより、板面の表側及び裏側に多数の突起部を形成したものである。プレートフィン155に設けられたこれらの突起部は、第1の底面143A1及び上面部159Dと夫々当接しており、これにより、排気ガス流路154内を流れる排気ガスの熱が蒸発面である第1の底面143A1に効果的に伝達される。
また、排気ガス流路154内に配置されたガス流路形成板159の第1垂直部159Aと傾斜面部159Cの間の空間には、燃焼触媒が充填されている。これにより、この空間に流入した排気ガスに含まれる一酸化炭素等の有害ガス(未燃燃料)が燃焼触媒により酸化され、無害化される。従って、排気ガス流路154内の、第1垂直部159Aと傾斜面部159Cの間の空間は燃焼触媒器としても機能する。
さらに、蒸発混合器140はヒータ157を備える。図8に示すように、ヒータ157は矩形状の蒸発混合器140の三辺の外周に沿うように設けられており、両端部は蒸発室150側に向かって延在している。図7に示すように、ヒータ157は第1の容器143の側壁143Bと、第2の容器144の側壁144Bとが重なり合った第1の重なり部に側方から当接している。さらに、ヒータ157は、第1の容器143の鍔部143Cと、第2の容器144の鍔部144Cと、天板142とが重なり合った第2の重なり部に下方から当接している。なお、ヒータ157は蒸発混合器140の全周に沿うように設けてもよいし、ヒータ157を設けなくても良い。
図8及び図9に示すように、水供給配管62及び原燃料供給配管63は、天板142に形成された開口に挿通され、蒸発室150室内まで延びている。なお、水供給配管62は、蒸発室150の端部の幅方向(短手方向)中央に挿通され、原燃料供給配管63は、蒸発室150の端部の蒸発室150の幅方向一側に挿通されている。このように、水供給配管62が蒸発室150の幅方向中央に配置されていることにより、水供給配管62から蒸発室150の床面上に供給された水は、床面の一部分に偏ることなく床面全体に均等に広がるので、蒸発室150の床面全体を蒸発面として有効に利用することができる。さらに、水供給配管62が蒸発室150の幅方向中央に配置されているので、蒸発室150の長手方向の側壁面(蒸発混合器140の長手方向に延びる側壁143B)から最も離れた位置に水が供給され、大きな水滴が側壁面に接触することによる突沸の発生を抑制することができる。
また、図10に示すように、原燃料供給配管63の先端の開口は、水供給配管62先端の開口よりも上方に位置している。即ち、原燃料供給配管63の先端の開口は、水供給配管62先端の開口よりも、蒸発室150の床面(蒸発面)から離間した位置に配置されている。このため、水供給配管62から供給され、蒸発室150の床面上に落下した水は、原燃料供給配管63の先端の開口から流出した原燃料ガスの流れの影響を殆ど受けることなく、蒸発室150の床面上に留まり、床面上で少しずつ蒸発される。なお、本実施形態においては、原燃料供給配管63の先端の開口は、蒸発室150の天井面のほぼ面内、即ち、原燃料供給配管63の先端の開口は天井面とほぼ面一に配置されている。
ここで、固体酸化物形燃料電池システム1による発電量が多い状態では、原燃料ガスの供給量も増大するので、原燃料供給配管63を介して蒸発室150内に流入する原燃料ガスの流速が速くなる。一方、発電量の多い状態では、水供給配管62から導入される水の量も増加し、蒸発室150の床面上に或る程度の量の水が溜まった状態となる。特に、固体酸化物形燃料電池システム1による発電量が増加傾向にある場合には、排気ガス流路154に流入する燃焼ガスの熱量に対して供給される水の量が多くなるため蒸発室150の床面上に溜まる水の量が多くなる。これにより、蒸発室150の床面上に溜まった水が、原燃料供給配管63から流出する流速の速い原燃料ガスの流れによる影響を受ける場合がある。
例えば、原燃料供給配管の先端の開口が、蒸発室の床面の至近に配置されている場合には、高速で蒸発室に流入した原燃料ガスが床面に溜まっている水を攪拌してしまう虞がある。床面上に溜まった水が原燃料ガスの流れにより攪拌されると、攪拌された水が蒸発室の天井面等に付着しやすくなり、これが突沸の原因となる。本実施形態においては、原燃料供給配管63の先端の開口は、水供給配管62先端の開口よりも、蒸発室150の床面(蒸発面)から離間した位置に配置されているので、蒸発室150の床面上に溜まった水が原燃料ガスの流れにより攪拌されることがない。また、蒸発室150にはアルミナボールが充填されているため、原燃料供給配管63から流入した原燃料ガスは、アルミナボールに当たった後、蒸発室150の床面に到達する。このため、流入した原燃料ガスの流れはアルミナボールにより分散され、床面上に溜まった水には影響を与えにくい。
好ましくは、原燃料供給配管63の先端部は、原燃料供給配管63の先端の開口と、これに対向する蒸発室150の床面により、原燃料ガスの流路断面積が絞られることのないように位置決めする。例えば、原燃料供給配管63の内径をdとし、原燃料供給配管63の先端と蒸発室150の床面との間の距離をhとしたとき、原燃料供給配管63内を導かれた原燃料ガスは、原燃料供給配管63の先端と床面との間のπdhの断面積を有する流路を通って蒸発室150内に流入する。この流路断面積πdhが、原燃料供給配管63内部の流路断面積(πd2/4)よりも小さくならないように原燃料供給配管63の先端を位置決めするのがよい。
また、図8に示すように、蒸発混合器140に接続されている原燃料供給配管63には、その途中に流路断面積を狭くするための絞り部63aが設けられている。原燃料供給配管63は金属製の円管で構成されているが、その途中を所定量押し潰すことにより絞り部63aを形成している。このように、原燃料供給配管63の途中に絞り部63aを形成し、流路断面積を狭くすることにより、蒸発室150内に充填されたアルミナボールが輸送中等に原燃料供給配管63内に深く侵入するのを阻止している。なお、原燃料供給配管63の先端開口の面積を絞ることによってもアルミナボールの侵入を阻止することができるが、先端開口を絞ると原燃料供給配管63から流出する原燃料ガスの流速が高くなってしまう。上記のように、原燃料供給配管63から流出する原燃料ガスの流速が高くなると、蒸発室150の床面上に溜まった水が攪拌されやすくなるため、原燃料供給配管63の先端開口を絞ることは好ましくなく、絞り部63aは原燃料供給配管63の途中に設けるのが良い。
同様に、水供給配管62の途中にも、流路断面積を狭くするための絞り部62aが設けられている。
一方、図7に示すように、排気ガス排出管82は、排気ガス流路154の下流端部の、幅方向(短手方向)中央に接続され、水平方向に延びている。即ち、排気ガスは、蒸発混合器140を形成する第2の容器144の側壁144B(排気ガス室の側壁面)に設けられた排気ガス排出口を通って排気ガス排出管82に流入する。従って、水供給配管62先端の水導入口と排気ガス排出口は、蒸発混合器140の上面視において、略同位置に配置されている。
このような蒸発混合器140では、図7に示すように、排気管171から供給された排気ガスは排気ガス流路154を流れ、排気ガス排出管82へと排出される。そして、水供給配管62から蒸発室150に供給された水は、その床面(第1の底面143A1)上を拡がりながら流れる。そして、第1の底面143A1を介して排気ガスと水との間で熱交換が行われ、水が蒸発して水蒸気が生成される。蒸発室150で発生した水蒸気は、原燃料供給配管63から供給された原燃料ガスとともに混合室151に流れこみ、水蒸気と燃料ガスとが混合されて、混合ガス供給管112へと排出される。即ち、排気ガスは、蒸発混合器140の長手方向の第1の端部(混合室151側の端部:図7の左側端部)から蒸発混合器140の第2の端部(蒸発室150側の端部:図7の右側端部)へ流れる。一方、水蒸気及び原燃料ガスは蒸発混合器140の第2の端部から第1の端部側へ(図7の右側から左方向へ)流れる。このように、本実施形態においては、熱交換を行う流体が反対方向に流れるカウンターフローが実現されている。
ここで、排気管171から蒸発混合器140に流入した高温の排気ガスは、第2の容器144内の、ガス流路形成板159の第1垂直部159Aの左側の空間に流入し、第1垂直部159Aに設けられた開口部(図示せず)を通ってその右側の空間に流入する。これにより、排気ガスは、蒸発室150の下流側の端部の床面(第1の底面143A1)を加熱し、蒸発室150内の水を蒸発させる。次いで、排気ガスは、第1の容器143の第1の底面143A1と、ガス流路形成板159の上面部159Dの間の、高さの低い流路に流入する。このように、排気ガスを高さの高い流路から高さの低い流路に流入させることにより、加熱すべき蒸発室150の床面近傍に排気ガスを集中させることができる。このため、蒸発室150の下流側部分において熱交換を行い温度が低下した排気ガスであっても、蒸発室150の床面を効果的に加熱することができる。また、高さの低い流路にはプレートフィン155が配置されているため、排気ガスの熱を効率良く蒸発室150の床面に伝えることができる。
さらに、蒸発室150の床面(第1の底面143A1)を加熱した排気ガスは、ガス流路形成板159の第2垂直部159Eの右側の空間に流入する。この空間に流入した排気ガスは、蒸発混合器140に接続された排気ガス排出管82から流出する。ここで、上記のように、排気ガス排出管82は、排気ガス流路154の幅方向中央に接続されているので、排気ガスは排気ガス排出口が設けられた幅方向中央に集められ、蒸発室150床面の幅方向中央を効果的に加熱する。この幅方向中央には、水供給配管62から蒸発室150内に水を流入させる水導入口が設けられているので、水供給配管62から蒸発室150の床面に落下した水を効果的に加熱することができる。
つぎに、図11及び図12を参照して、本発明の第1実施形態による固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池モジュール内のガスの流れについて説明する。
図11は、図2と同様の、固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図12は、図3と同様の、図2のIII−III線に沿った断面図である。なお、図11及び図12は、それぞれ、図2及び図3中にガスの流れを示す矢印を新たに付加した図である。図中、実線矢印は燃料ガスの流れ、破線矢印は発電用空気の流れ、一点鎖線矢印は排気ガスの流れを示す。
図11及び図12に示すように、水及び原燃料ガス(原料ガス)は、蒸発混合器140の長手方向の一端側に連結された水供給配管62及び原燃料供給配管63から蒸発混合器140の上層に設けられた蒸発室150内に供給される。蒸発室150に供給された水は、第1の容器143の底面143A1の上面の広範囲に拡がる。このようにして広範囲に広がった水は、蒸発混合器140の下層に設けられた排気ガス流路154を流れる排気ガスにより加熱され水蒸気となる。この際、蒸発室150内にはアルミナボール(蒸発促進部材)が充填されているため、排気ガス流路154からの熱がアルミナボールを介して水に伝達される。この水蒸気と、原燃料供給配管63から供給された原燃料ガスとが、蒸発室150内を下流方向に流れて行く。
蒸発室150内で発生した水蒸気と原燃料ガスとは、蒸発室150と混合室151の接続部である、隔壁147の中央に形成された凹部147A内を通過して混合室151へと流入する(図7及び図8)。なお、蒸発室150と混合室151は隔壁147により分離されているので、蒸発室150内で蒸発していない水は、混合室151には侵入しない。そして、凹部147Aから混合室151の第1の空間153A内に流入した水蒸気と原燃料ガスとは、幅方向両側に分かれて流れる。水蒸気と原燃料ガスとは、このように第1の空間153A及び第2の空間153Bを流れる間に混合されて、混合ガス供給管112へと排出される。
混合ガス供給管112へ流入した混合ガス(原燃料ガス+水蒸気)は、混合ガス供給管112を通って、モジュールケース8内の改質器120に供給される。混合ガス供給管112は、排気ガス流路154,排気管171,及び排気通路172の近傍を順に通過しているため、これらの通路を流れる排気ガスにより、混合ガス供給管112内の混合ガスは更に加熱される。
混合ガスは、改質器120内の混合ガス受入部120A内に流入し、ここから仕切り板123aを通過して改質部120Bに流入する。混合ガスは、改質部120Bにおいて改質されて燃料ガスとなる。こうして生成された燃料ガスは、仕切り板123bを通過して、ガス排出部120Cに流入する。
さらに、燃料ガスは、ガス排出部120Cから燃料ガス供給管64と水添脱硫器用水素取出管65とに分岐する。そして、燃料ガス供給管64に流入した燃料ガスは、燃料ガス供給管64の水平部64aに設けられた燃料供給孔64bからマニホールド66内に供給され、マニホールド66から各燃料電池セルユニット16内に供給される。
また、図11及び図12に示すように、発電用空気は、発電用空気導入管74から空気通路161aに供給される。発電用空気は、空気通路161a,161b内において、プレートフィン162,163を通過する際に、これらプレートフィン162,163の下部のモジュールケース8内に形成された排気通路172,173を通過する排気ガスとの間で効率的な熱交換を行い、加熱されることとなる。特に、排気通路172内には、空気通路161aのプレートフィン162に対応してプレートフィン175が設けられているので、発電用空気は、プレートフィン162とプレートフィン175とを介して、排気ガスとより効率的な熱交換を行う。この後、発電用空気は、モジュールケース8の側板8bの下部に設けられた複数の吹出口8fから燃料電池セル集合体12に向けて発電室10内に噴射される。
これにより、マニホールド66から各燃料電池セルユニット16内に供給された燃料ガスと、吹出口8fから発電室10内に噴射され、各燃料電池セルユニット16の周囲を流れる発電用空気との間で発電反応が発生し、電力が生成される。また、各燃料電池セルユニット16において発電に利用されずに残った燃料ガスは、各燃料電池セルユニット16の先端で、燃焼室18内において燃焼されて燃焼ガス(排気ガス)となり、モジュールケース8内を上昇していく。具体的には、排気ガスは、排気通路173と排気通路174とに分岐して、改質器120の外側面とモジュールケース8の側板8bとの間、及び、改質器120の貫通孔120bから改質器120と排気ガス誘導部材130との間をそれぞれ通過する。このとき、排気通路174を通過する排気ガスは、改質器120の貫通孔120bの上方に配置された凸状段部131aによって幅方向に二分され、排気ガス誘導部材130の下部に留まることなく排気通路173に向けて誘導され、排気通路173を流れる排気ガスに素早く合流される。
その後、排気ガスは、排気ガス導入口172aから排気通路172に流入する。排気通路172内では、排気ガスは、排気通路172を水平方向に流れていき、モジュールケース8の天板8aの中央に形成された排気口111から流出する。
なお、排気ガスが排気通路173を上方へ流れていく際に、空気通路161b内に設けられたプレートフィン163を介して、発電用空気と排気ガスとの間で熱交換が行われる。また、排気ガスが排気通路172を水平方向に流れていく際に、排気通路172内に設けられたプレートフィン175と、このプレートフィン175に対応して空気通路161a内に設けられたプレートフィン162とを介して、発電用空気と排気ガスとの間で効率的な熱交換が行われる。このようにして、排気ガスの熱により発電用空気が昇温される。
そして、排気口111から流出した排気ガスは、モジュールケース8の外部に設けられた排気管171を通過して蒸発混合器140の排気ガス流路154に流入する。排気ガス流路154に流入した排気ガスは、排気ガス流路154内を排気ガス排出管82に向かって流れる。この際、排気ガス流路154には、プレートフィン155が設けられているため、より効率良く排気ガスと蒸発室150内の水との熱交換が行われる。
本発明の第1実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、原燃料供給配管63先端の開口が、水供給配管62先端の開口よりも、蒸発室150の床面(底面143A1)から離間した位置に配置されているので(図10)、蒸発室150の床面上に溜まった水が原燃料ガスの流れによる攪拌を受けにくく、突沸の発生を抑制することができる。
また、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、蒸発室150内に導入された原燃料ガスが、蒸発促進材であるアルミナボール(図7)に当たった後、蒸発室150の床面(底面143A1)に到達するので、原燃料ガスの流れが分散されると共に流速が低下し、床面上に溜まった水が攪拌されにくくなり、突沸の発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、原燃料供給配管63の先端と蒸発室150の床面(底面143A1)との間に形成される流路の断面積(原燃料供給配管63の内径をd、原燃料供給配管63の先端と蒸発室150の床面との間の距離をhとしたとき断面積πdh)が、原燃料供給配管63の内部の流路断面積(πd2/4)よりも大きくなるように構成されているので、原燃料供給配管63を通って供給された原燃料ガスの流れが原燃料供給配管63の出口において絞られ、流速が増大するのを防止することができる。これにより、床面上に溜まった水が攪拌されにくくなり、突沸の発生を抑制することができる。
また、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、絞り部63a(図8)が原燃料供給配管63の途中に設けられているので、アルミナボールが原燃料供給配管63内に深く侵入するのを防止しながら、流出する原燃料ガスの流速を低く抑えることができる。これにより、床面上に溜まった水が攪拌されにくくなり、突沸の発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、原燃料供給配管63の先端が蒸発室150の天井面(天板142)の面内に配置されている(図10)ので、原燃料供給配管63の先端を床面(底面143A1)から最も大きく離間させることができ、床面に到達する原燃料ガスの流速を低下させることができる。これにより、床面上に溜まった水が攪拌されにくくなり、突沸の発生を抑制することができる。
次に、図13及び図14を参照して、本発明の第2実施形態による固体酸化物形燃料電池システムを説明する。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池システムは、蒸発混合気の構成が上述した第1実施形態とは異なっており、その他の部分は第1実施形態と同様である。従って、ここでは、本実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
図13は、本発明の第2実施形態による固体酸化物形燃料電池システムの蒸発混合器を拡大断面図である。また、図14は、図13に示す固体酸化物形燃料電池システムの蒸発混合器の天板を省略した状態の斜視図である。
図13に示すように、蒸発混合器240は、上面視で略矩形の箱状の蒸発器ケース241を有している。この蒸発器ケース241は、第1の容器243と、第1の容器243の下方に重ね合わされた第2の容器244と、第1の容器243の上部を塞ぐ天板242とにより構成されている。この構成により、第1の容器243の上側と天板242の下側との間に蒸発室250及び混合室251が夫々形成される。従って、天板242の下側の面は、蒸発室250及び混合室251の連続した天井面を構成する。また、第1の容器243の下側と第2の容器244の上側との間には、排気ガス室である排気ガス流路254が形成される。このように、蒸発混合器240には、その上層側に蒸発室250及び混合室251が形成され、下層側に排気ガス流路254が形成されている。
また、蒸発室250内には、多数の粒状の熱伝導性の部材から形成された蒸発促進材(図13に想像線で示す)が充填されている。蒸発促進材としては、例えば、球状のアルミナボールなどを用いることができる。蒸発室250内に充填されたアルミナボールは、天板242に当接している。
天板242は、平板状の金属部材からなる。天板242の一方の端部の幅方向一側部には原燃料供給配管263を接続するための開口部が形成され、一方の端部の幅方向中央には水供給配管262を接続するための開口部が形成されている。さらに、天板242には、下方に向けて突出するように、L字型断面の補強部材242Aが幅方向に延びるように取り付けられている。この補強部材242Aは、蒸発室250の天井面から下方に向けて突出し、蒸発室250内に充填されたアルミナボールと接触している。
図14に想像線で示すように、補強部材242Aは、蒸発室250の短手方向(幅方向)に延びるように設けられている。一方、図13に示すように、水供給配管262及び原燃料供給配管263は、蒸発混合器240の長手方向の一方の端部に接続されている。ここから流入した原燃料ガス及び水(水蒸気)は、図13において左方向に流れ、蒸発混合器240の左側に形成された混合室251に流入する。このように、補強部材242Aは、水及び原燃料ガスの蒸発室250への流入口と、蒸発室250と混合室251の接続部とを結ぶ「流れ経路」を横断するように延びている。また、天板242に補強部材242Aを取り付けることにより、天板242は補強され、その変形が抑制されている。
ここで、蒸発室250の下層には排気ガス流路254が形成されており、蒸発室250の床面(蒸発面)は高温となる。このため、蒸発室250内に供給された水は、その床面上で蒸発され水蒸気となる。一方、蒸発室250の天井面は、排気ガス流路254から離間していると共に、蒸発室250内に供給される低温の原燃料ガスによって冷却されるので温度が低くなりやすい。このため、蒸発室250内で生成された水蒸気がその天井面に接触すると、結露して水滴が生成される場合がある。
このように、蒸発室250の天井面で生成された水滴が大きな水滴に成長し、この水滴が、連続した天井面を形成している混合室251まで伝わって流れ、混合室251に侵入すると突沸の発生原因となる。即ち、天井面で成長した大きな水滴が天井面を伝わって流れ、混合室251内で床面に落下すると、混合室251の床面は排気ガスにより高温に加熱されているため、多量の水が瞬間的に蒸発され、突沸が起こる。突沸が発生すると、混合室251内及び蒸発室250内の圧力が急上昇するので、一時的に蒸発室250内に原燃料ガスが導入されにくくなり、燃料電池セルスタック14は燃料不足の状態となる。この一時的な燃料不足が、一時的な発電電圧の低下を引き起こしたり、各燃料電池セルユニット16の劣化の原因となる。
本実施形態においては、蒸発室250を形成する天板242に補強部材242Aが取り付けられているので、天井面で生成された水滴が大きな水滴に成長する前に、これを蒸発室250内に落下させることができる。即ち、補強部材242Aは、水及び原燃料ガスの蒸発室250への流入口と、蒸発室250と混合室251の接続部とを結ぶ「流れ経路」を横断するように設けられている。このため、天井面を伝わって混合室251の方へ移動する水滴は、補強部材242Aによって確実にその移動を阻止され、蒸発室250内に落下する。このため、天井面で生成された水滴は大きな水滴に成長し難く、水滴が大きく成長した場合でも、天井面を伝わって混合室251に侵入することはない。従って、天板242に設けた補強部材242Aは、混合室251への水滴の流入を抑制する「流入抑制部」として機能する。
また、補強部材242Aは蒸発室250内に充填された蒸発促進材であるアルミナボールと接触しているので、補強部材242Aによって移動を阻止された水滴は、補強部材242Aに接触しているアルミナボールに誘導され、これを伝わって蒸発室250内に容易に落下する。充填されたアルミナボールは蒸発室250の床面よりも温度が低いため、アルミナボールに伝わった水滴は少しずつ蒸発され、突沸を発生することがない。
さらに、天板242に設けた補強部材242Aは、天板242を補強し、その変形を抑制している。ここで、天板242が変形により傾斜すると、天井面に付着した水滴は混合室251の方へ流れやすくなる。即ち、補強部材242Aは、天板242を補強することによっても、水滴の混合室251室への流入を抑制している。換言すれば、本実施形態における補強部材242A以外の構成であっても、天板242を補強するための構成は「流入抑制部」として機能させることができる。
図13及び図14に示すように、第1の容器243は一枚の金属部材をプレス成形して構成されてる。即ち、第1の容器243は、1枚の金属板により、底面243Aと、この外周縁から上方に延びる側壁243Bと、側壁243Bの上端から水平方向外方に延びる鍔部243Cと、を形成している。さらに、底面243Aの、水供給配管262及び原燃料供給配管263とは反対側の長手方向端部には、円筒形の隔壁247が取り付けられている。ここで、蒸発室250及び混合室251は、第1の容器243上側の底面243A上に形成され、これらは隔壁247によって分離される。また、本実施形態においては、蒸発室250の床面となる底面243Aにはブラスト加工が施されている。ブラスト加工によって蒸発室250の床面に適切な表面粗さを与えることにより床面の親水性が高くなり、床面上に供給された水は大きく広がり蒸発しやすくなる。
第1の容器243の底面243Aは隔壁247により分割され、この隔壁247の外側は水供給配管262及び原燃料供給配管263が接続される蒸発室250の床面を構成し、隔壁247の内側の底面243Aは混合ガス供給管112が接続される混合室251の床面を構成している。円筒形の隔壁247の外側の底面243Aは、蒸発室250の床面であり、排気ガスと水供給配管262から供給された水との間で熱交換するための蒸発面として機能する。従って、混合室251は、上面視において円形に構成され、蒸発室250の蒸発面によって周囲を取り囲まれている。
また、図14に示すように、隔壁247の上端の一部には切欠247Aが設けられており、この切欠247Aと天板242の間の隙間が、蒸発室250と混合室251を連通させる接続部であり、混合室流入口として機能する。また、切欠247Aは、蒸発混合器240に接続されている水供給配管262とは反対の側に設けられており、水供給配管262から蒸発室250内へ水を流入させる水流入口から最も離れた位置に形成されている。なお、切欠247Aの深さは、蒸発室250内に充填された蒸発促進材であるアルミナボールの径よりも小さい。このため、蒸発室250内のアルミナボールが切欠247Aを通って混合室251に侵入することはない。
円筒形の隔壁247の内側には、同心円状に混合ガス供給管112の上端が突出している。即ち、混合ガス供給管112の上端は、混合室251の内部に突出し、その天井面(天板242)まで延びている。この混合ガス供給管112の先端部には連通口112aが形成されており、混合ガス供給管112の外側と内側は連通口112aを介して連通されている。連通口112aは、隔壁247に設けられた切欠247Aの反対側に形成されており、切欠247Aによって形成された混合室流入口から最も離れた位置に位置している。これにより、混合室251内には、混合室流入口(切欠247A)から流入した気体が、一旦2つの流路に分岐されて混合ガス供給管112の両側へ流れた後、連通口112aにおいてそれらが再び合流されるように流路が形成される。
混合ガス供給管112の内側に流入した混合ガス(原燃料ガス+水蒸気)は、混合ガス供給管112の中を通って底面243Aの下側に流出する。従って、混合ガス供給管112の底面243Aを貫通する部分は、混合室流出口251aとして機能し、この混合室流出口251aは蒸発室250の蒸発面によって周囲を取り囲まれている。また、隔壁247は混合室251の外周壁として機能し、この内側に位置する混合ガス供給管112の壁面は、混合室251の内周壁として機能する。
混合ガス供給管112は、排気管171の内部を通過するように配置されており、一端が第1の容器243に形成された開口部に挿入され、他端が改質器120の天面に形成された混合ガス供給口120a(図2)に連結されている。混合ガス供給管112は、排気管171内を通過してモジュールケース8内まで鉛直下方に延び、そこで略90°屈曲されて天板8aに沿って水平方向に延びた後、下方へ略90°屈曲されて改質器120に連結されている。
次に、図13に示すように、第2の容器244は、第1の容器243の下側に配置された容器であり、底面244Aと、底面244Aの外周縁から上方に延びる側壁244Bと、側壁244Bの上端から水平方向外方に延びる鍔部244Cと、を備える。第2の容器244の底面244Aには排気管171の上端が接続される開口部が形成され、側壁244Bには排気ガス排出管82が接続される開口部が形成されている。第2の容器244は、第1の容器243に下方から重ね合わされた状態において、その鍔部244Cの上面が、第1の容器243の鍔部243Cの下面に当接している。
また、図13に示すように、第1の容器243と第2の容器244の間の空間には、ガス流路形成板259が配置されている。このガス流路形成板259は薄板を折り曲げることにより、第1垂直部259Aと、底面部259Bと、傾斜面部259Cと、上面部259Dと、第2垂直部259Eと、脚面部259Fと、を形成している。また、第1垂直部259Aには、排気ガスを通過させるための複数の開口部(図示せず)が形成されている。
第1垂直部259Aは第1の容器243の底面243Aから鉛直下方に延びる部分であり、この第1垂直部259Aの下端から底面部259Bが水平方向に延びている。この底面部259Bは、第2の容器244の底面244A上に当接するように配置されている。傾斜面部259Cは、底面部259Bの先端から斜め上方に延びる傾斜面であり、第1の容器243の底面243A(蒸発面)の近傍まで延びている。上面部259Dは、傾斜面部259Cの上端から水平方向に延びる平面であり、第1の容器243の底面243Aと平行に延びている。第2垂直部259Eは上面部259Dの先端から鉛直下方に延びる面であり、その下端は第2の容器244の底面244Aまで延びている。第2垂直部259Eの下端からは、脚面部259Fが、第2の容器244の底面244Aと当接するように水平方向に延びている。
また、第1の容器243の底面243Aと、第2の容器244の底面244Aとの間の空間は、排気ガス流路254として機能する。この排気ガス流路254は、排気管171と排気ガス排出管82とを連通させるように、蒸発混合器240の長手方向に延びている。また、上記のように、第1の容器243と第2の容器244の間の空間にガス流路形成板259が配置されることにより、排気ガス流路254の形態が形作られている。即ち、ガス流路形成板259を配置することにより、排気ガス室である排気ガス流路254の下流側の床面が高くされ、この部分で排気ガスの流路断面積が狭くされている。
さらに、排気ガス流路254には、プレートフィン255が配置されている。このプレートフィン255は、排気ガス流路254内の、第1の容器243の底面243Aと、ガス流路形成板259の上面部259Dとの間に、これらと当接するように配置されている。プレートフィン255は、平面の金属板にプレス加工を施すことにより、板面の表側及び裏側に多数の突起部を形成したものである。プレートフィン255に設けられたこれらの突起部は、底面243A及び上面部259Dと夫々当接しており、これにより、排気ガス流路254内を流れる排気ガスの熱が蒸発面である底面243Aに効果的に伝達される。
さらに、蒸発混合器240はヒータ157を備える。図14に示すように、ヒータ157は矩形状の蒸発混合器240の三辺の外周に沿うように設けられており、両端部は蒸発室250側に向かって延在している。図13に示すように、ヒータ157は第1の容器243の側壁243Bと、第2の容器244の側壁244Bとが重なり合った第1の重なり部に側方から当接している。さらに、ヒータ157は、第1の容器243の鍔部243Cと、第2の容器244の鍔部244Cと、天板242とが重なり合った第2の重なり部に下方から当接している。なお、ヒータ157は蒸発混合器240の全周に沿うように設けてもよいし、ヒータ157を設けなくても良い。
図13及び図14に示すように、水供給配管262及び原燃料供給配管263は、天板242に形成された開口に挿通され、蒸発室250室内まで延びている。なお、水供給配管262は、蒸発室250の端部の幅方向(短手方向)中央に挿通され、原燃料供給配管263は、蒸発室250の端部の蒸発室250の幅方向一側に挿通されている。このように、水供給配管262が蒸発室250の幅方向中央に配置されていることにより、水供給配管262から蒸発室250の床面上に供給された水は、床面の一部分に偏ることなく床面全体に均等に広がるので、蒸発室250の床面全体を蒸発面として有効に利用することができる。
また、図14に示すように、蒸発混合器240に接続されている原燃料供給配管263には、その途中に流路断面積を狭くするための絞り部263aが設けられている。原燃料供給配管263は金属製の円管で構成されているが、その途中を所定量押し潰すことにより絞り部263aを形成している。このように、原燃料供給配管263の途中に絞り部263aを形成し、流路断面積を狭くすることにより、蒸発室250内に充填されたアルミナボールが輸送中等に原燃料供給配管263内に深く侵入するのを阻止している。同様に、水供給配管262の途中にも、流路断面積を狭くするための絞り部262aが設けられている。
一方、図13及び図14に示すように、排気ガス排出管82は、排気ガス流路254の下流端部の、幅方向(短手方向)中央に接続され、水平方向に延びている。即ち、排気ガスは、蒸発混合器240を形成する第2の容器244の側壁244Bに設けられた排気ガス排出口を通って排気ガス排出管82に流入する。
このような蒸発混合器240では、図13に示すように、排気管171から供給された排気ガスは排気ガス流路254を流れ、排気ガス排出管82へと排出される。そして、水供給配管262から蒸発室250に供給された水は、その床面(底面243A)上を拡がりながら流れる。そして、底面243Aを介して排気ガスと水との間で熱交換が行われ、水が蒸発して水蒸気が生成される。蒸発室250で発生した水蒸気は、原燃料供給配管263から供給された原燃料ガスとともに混合室251に流れこみ、水蒸気と燃料ガスとが混合されて、混合ガス供給管112へと排出される。即ち、排気ガスは、蒸発混合器240の長手方向の第1の端部(混合室251側の端部:図13の左側端部)から蒸発混合器240の第2の端部(蒸発室250側の端部:図13の右側端部)へ流れる。一方、水蒸気及び原燃料ガスは蒸発混合器240の第2の端部から第1の端部側へ(図13の右側から左方向へ)流れる。このように、本実施形態においては、熱交換を行う流体が反対方向に流れるカウンターフローが実現されている。
ここで、排気管171から蒸発混合器240に流入した高温の排気ガスは、第2の容器244内の、ガス流路形成板259の第1垂直部259Aの左側の空間に流入し、第1垂直部259Aに設けられた開口部(図示せず)を通ってその右側の空間に流入する。これにより、排気ガスは、蒸発室250の下流側の端部の床面(底面243A)を加熱し、蒸発室250内の水を蒸発させる。次いで、排気ガスは、第1の容器243の底面243Aと、ガス流路形成板259の上面部259Dの間の、高さの低い流路に流入する。このように、排気ガスを高さの高い流路から高さの低い流路に流入させることにより、加熱すべき蒸発室250の床面近傍に排気ガスを集中させることができる。このため、蒸発室250の下流側部分において熱交換を行い温度が低下した排気ガスであっても、蒸発室250の床面を効果的に加熱することができる。また、高さの低い流路にはプレートフィン255が配置されているため、排気ガスの熱を効率良く蒸発室250の床面に伝えることができる。
さらに、蒸発室250の床面(底面243A)を加熱した排気ガスは、ガス流路形成板259の第2垂直部259Eの右側の空間に流入する。この空間に流入した排気ガスは、蒸発混合器240に接続された排気ガス排出管82から流出する。ここで、上記のように、排気ガス排出管82は、排気ガス流路254の幅方向中央に接続されているので、排気ガスは排気ガス排出口が設けられた幅方向中央に集められ、蒸発室250床面の幅方向中央を効果的に加熱する。この幅方向中央には、水供給配管262から蒸発室250内に水を流入させる水導入口が設けられているので、水供給配管262から蒸発室250の床面に落下した水を効果的に加熱することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した第1、第2実施形態においては、水供給配管及び原燃料供給配管は、蒸発室の上流側の端部(混合室の反対側の端部)に並べて配置されていたが、変形例として、原燃料供給配管を水供給配管よりも下流側に配置することもできる。
図15は、本発明の第1実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1における蒸発混合器のこのような変形例を示す図である。
図15に示す変形例においては、蒸発混合気140の蒸発室150の上流側端部に水供給配管362が設けられ、蒸発混合気140の長手方向中央付近に原燃料供給配管363が配置されている。蒸発混合気140において、排気管171から導入された排気ガスは、熱交換を行いながら排気ガス流路154内を図15における左から右方向に流れる。従って、蒸発室150の床面の温度は、その長手方向の下流側端部(混合室151側の端部)において最も高く、上流側端部(水供給配管362が設けられている端部)において最も低くなる。
水供給配管362から導入された水は蒸発室150の床面上に落下し、そこで加熱されて水蒸気となる。水の供給量が多い場合には、床面上に落下した水が直ぐに蒸発せず、蒸発室150の床面上に溜まり、床面上を下流側に向けて広がる。この際、蒸発室150の床面の温度は下流側が高くなっているので、下流側に広がった水は蒸発されやすく、蒸発室150の床面の下流側には水が溜まりにくい。このため、原燃料供給配管363直下の床面には水が溜まりにくく、床面に溜まった水が、原燃料供給配管363から流入する原燃料ガスの流れにより攪拌されたり、吹き上げられることはない。
即ち、本変形例によれば、原燃料供給配管363が、水供給配管362よりも蒸発室150の流出口(隔壁147の凹部147A)に近い位置に接続されているので、原燃料供給配管363を水供給配管362から離間させることができ、水が溜まりやすい水供給配管362の直下の床面から原燃料供給配管363を離間させることができる。この結果、原燃料ガスの流れにより、蒸発室150の床面上に溜まった水が攪拌されにくくなり、突沸の発生を抑制することができる。