以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る生体情報検出装置及び生体情報検出方法を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(生体情報検出装置の概略構成)
図1は、本実施形態の生体情報検出装置10の概略構成を示す図である。
本実施形態の生体情報検出装置は、接触型の測定器を用いることなく、被検者を撮像した映像情報によって、生体情報の一例として、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を非接触で検出する。この際、生体情報検出装置は、測定対象となる被検者の皮膚に対して複数の異なる波長の光を照射し、照射位置を含む被検者の体を撮像してその映像情報から反射光を抽出し、生体における吸光特性によって血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を推定する。
本実施形態では、測定対象の生体としての被検者50の顔51に測定光として第1波長の光31及び第2波長の光32を照射し、被検者50の顔51を含む皮膚表面の映像を撮像して、顔51の映像情報から第1波長の光31及び第2波長の光32の反射光を抽出して生体情報の推定のための演算を行う構成例を示す。
生体情報検出装置10は、第1光源11、第2光源12、撮像部13、制御装置20を含む構成である。第1光源11は、測定光の一つである第1波長の光31として、例えば赤外光を発光し、被検者50に向けて照射する光源装置である。第2光源12は、測定光の他の一つである第1波長とは異なる第2波長の光32として、可視光又は赤外光を発光し、被検者50に向けて照射する光源装置である。撮像部13は、測定光の受光部として機能するもので、撮像レンズ及び撮像素子を有するカメラ等により構成され、被検者50を撮像して測定光の反射光を受光する撮像装置である。
制御装置20は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータを含む構成であり、第1光源11及び第2光源12の制御、撮像部13にて撮像した映像信号の信号処理、映像信号に基づく生体情報の演算処理など、各種の処理を実行する。
被検者50に対して波長が異なる複数の測定光を照射する際に、通常状態では顔51の部分が一番大きな面積で肌が露出しているため、照射位置として顔51の領域を用いるのが好ましい。顔領域における測定光の照射位置は、例えば頬、額など、効率良く高精度に反射光の強度を計測可能な領域に設定する。なお、測定光の照射位置は顔領域に限定されるものではなく、手や腕などの他の部位を用いてもよい。
図2は、本実施形態の生体情報検出装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。撮像部13は、撮像レンズと、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等による撮像素子と、を有する。受光部の一例として機能する撮像部13は、被検者50を撮像することによって測定光の反射光を受光し、被検者50の顔51を含む被写体の映像データを取得して出力する。
生体情報検出装置10の制御装置20は、処理部21、記憶部22、映像入力部23、外部インタフェース24、表示部25、出力部26を含む構成である。処理部21は、プロセッサ、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成される。記憶部22は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のうちの少なくとも一つを含むメモリ、或いはメモリ又は他の記憶手段からなるストレージにより構成される。処理部21は、記憶部22に記憶されたプログラムに従って各種の処理を実行し、第1光源11及び第2光源12に対する測定光照射に関する制御信号の出力、撮像部13から入力される映像データの解析、映像解析に基づく血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度の算出、などを行う。これにより、処理部21は、測定対象の被検者50に照射された測定光に対する、照射位置からの反射光の強度に基づいて、生体情報を算出する。
映像入力部23は、撮像部13と接続され、撮像部13にて取得した映像データを入力する映像信号入出力用のインタフェースである。外部インタフェース24は、第1光源11及び第2光源12と接続され、第1光源11、第2光源12との間で制御信号を送受信する外部機器用のインタフェースである。第1光源11、第2光源12は、例えばLED(Light Emitting Diode)を用いて構成される。第2光源12は、測定光の照射位置を調整する照射位置調整部の一例として、照射する光の角度を調整する角度調整機構等による照射角度調整部15を有する。なお、第1光源11が照射位置調整部を有してよい。
表示部25は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイを用いて構成される。表示部25は、生体情報検出装置10の動作時の操作画面、設定画面、生体情報の測定結果等の各種情報を表示する。出力部26は、外部装置、通信回線、又はネットワークと接続され、生体情報検出装置10によって検出した血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度の生体情報を出力するデータ出力用のインタフェースである。
本実施形態の生体情報検出装置10における、制御装置20の処理部21を中心とした機能及び動作の具体例については後述する。
(非接触の生体情報検出における課題)
ここで、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を非接触で検出する場合に想定される課題について述べる。
図3は、被検者の距離変動に起因する生体情報の計測信号の乱れを説明する図である。図4は、被検者の距離変動がある場合の生体情報の各信号の一例を示す図である。血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を非接触で検出する場合、生体情報検出装置10は、測定光として、第1光源11からの第1波長の光31と、第2光源12からの第2波長の光32とを、被検者50の顔51の照射領域52にそれぞれ照射する。そして、生体情報検出装置10は、照射領域52を含む被検者50の顔51の映像を撮像部13によって撮像し、映像データにおいて顔51の組織内で散乱して出射した測定光の反射光を抽出し、生体における測定光の吸光度を算出する。
本実施形態の生体情報検出装置10による検査は、例えば、被検者50が椅子に座った状態又は立った状態で生体情報検出装置10に対向して実施することが想定される。この場合、被検者50は完全に固定されないので、被検者50の照射領域52と生体情報検出装置10との距離d、例えば照射位置と第1光源11及び第2光源12、又は撮像部13との距離が変動することが生じ得る。距離dが変動すると、距離の変動分Δdによって、被検者50への測定光の照射強度及び被検者50からの反射光の受光強度が変動する。このため、反射光から取得した脈波情報などの生体情報の信号強度が変動し、生体情報の信号に乱れが生じて、検出した生体情報に距離変動の影響による誤差が含まれるという課題が生じる。
図4(A)に示す抽出すべき本来の脈波情報に対して、測定光の反射光から取得される脈波情報の理想的な計測信号は図4(B)に示すようになる。ここで、図4(C)に示すような距離の変化による信号強度の変化が生じた場合、測定光の反射光から実際に計測される計測信号は図4(D)に示すようになり、計測信号のレベルが距離変動によってシフトし、波形振幅の変動に大きな乱れが生じる。本実施形態では、被検者の距離変動による影響を補償し、生体情報の計測信号の乱れを低減する構成を備える。一例として、生体情報検出装置10は、光源又は撮像部から被検者までの距離を検出し、距離変動に起因する生体情報の計測信号の変動を相殺する。具体例については後述する。
図5は、外来ノイズに起因する生体情報の計測信号の乱れを説明する図である。図6は、外来ノイズがある場合の生体情報の各信号の一例を示す図である。生体情報検出装置10によって血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を非接触で検出する際に、照明装置61の照明光などからの外来ノイズ62が、照射領域52や撮像部13の撮像レンズ、或いは測定光及び反射光の光路中に入ることがある。外来ノイズ62の影響によって、反射光から取得した脈波情報などの生体情報の信号強度が変動する。例えば、蛍光灯のようにパルス状の外来ノイズ62が存在する場合、生体情報の信号のピークに乱れが生じ、生体情報の誤検出が発生するおそれがある。また、検出した生体情報に外来ノイズの影響による誤差が含まれるという課題が生じる。
図6(A)に示す抽出すべき本来の脈波情報に対して、測定光の反射光から取得される脈波情報の理想的な計測信号は図6(B)に示すようになる。ここで、図6(C)に示すような外来ノイズのノイズ波形による信号強度の変化が生じた場合、測定光の反射光から実際に計測される計測信号は図6(D)に示すようになり、計測信号のレベルがパルス状の外来ノイズによって乱れ、脈波のピークでないところに計測信号の波形のピークが生じる。本実施形態では、外来ノイズによる影響を補償し、生体情報の計測信号の乱れを低減する構成を備える。一例として、生体情報検出装置10は、外来ノイズによる計測信号のレベル変化を検出し、外来ノイズに起因する生体情報の計測信号の変動を除去する。具体例については後述する。
(測定光について)
次に、被検者50に対して照射する測定光及びその調整について、いくつかの具体例を示す。
図7は、本実施形態において測定光として用いる光源の一例の距離減衰特性を示す図である。本実施形態の生体情報検出装置10では、例えば、第1光源11、第2光源12として、それぞれコリメートLEDによる光源を用いる。コリメートLEDは、平行光束のビーム光を出射する光源であり、ビーム光が平行状態に光学調整されたコリメート光となるLEDである。コリメートLEDを用いたコリメート光源の場合、一般的なLED等の通常光源と比較して、距離による光量の減衰がなだらかな変化であり、平行ビームのコリメート光によって、遠い距離まで大きな光量で照射できる。例えば、光源から被検者までの測定距離として2mぐらいの範囲内を想定すると、相対光量は2mで50%程度であり、生体情報の測定に必要な光量が得られる。
図8は、被検者における照射対象除外領域を説明する図である。生体情報検出装置10は、被検者50の顔51に対して、測定光として第1波長の光31と第2波長の光32とを照射する場合、顔51において目がある領域を照射範囲から除外し、測定光の赤外光や可視光が被検者50の目に入らないようにする。生体情報検出装置10は、被検者50を撮像した映像データを用いて、顔領域の検出(顔検出)、及び目領域の検出(目検出)を実行し、顔51において目領域を含む照射対象除外領域53を設定する。生体情報検出装置10は、第1光源11及び第2光源12の照射位置又は照射角度を設定、調整し、照射対象除外領域53を除いた顔51の領域が照射位置となるよう、第1波長の光31と第2波長の光32を照射する。
ここで、複数の測定光の照射位置に基づく測定距離の検出、及び照射位置の調整について、具体例を挙げて説明する。
図9は、光源から被検者までの測定距離の検出を行う測距方法の第1例を示す図である。本実施形態の生体情報検出装置10では、第1光源11から第1波長の光31を、第2光源12から第2波長の光32を、それぞれ所定の照射角度で被検者50の顔51の照射領域52に向けて照射する。このため、第1光源11及び第2光源12から被検者50の照射領域52までの測定距離を、予め設定しておき、照射領域52において第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置が一致するように、照射角度を設定して照射位置の位置合わせを行う。ここで、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置が一致する所定の測定距離をd0とする。なお、本実施形態の生体情報検出装置10は、詳細は後述するが、測定光の反射光を受光する際、コリメート光であるビーム光の照射位置を中心に同心円状に区分して反射光の強度を取得することにより、反射光の信号計測を実行する。これに対応して、被検者50に照射した第1波長の光31及び第2波長の光32を同心円で図示している。
被検者50の位置が変動し、第1光源11及び第2光源12から被検者50の照射領域52までの距離dが変化すると、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置の相対位置が変動する。図示例では、d≒d0の場合は第1波長の光31と第2波長の光32とが一致し、d>d0の場合は第2波長の光32の照射位置が上方にずれ、d<d0の場合は第2波長の光32の照射位置が下方にずれる様子を示している。生体情報検出装置10は、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置の位置ずれ量Eを検出することにより、位置ずれ量E、測定距離d0、及び第1光源11と第2光源12の照射角度又は光源間の距離から、光源から照射位置までの距離dを演算により推定できる。
図10は、光源から被検者までの測定距離の検出を行う測距方法の第2例を示す図である。被検者50の位置が変動して光源から照射位置までの距離dが変化し、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置の相対位置が変動した場合、生体情報検出装置10は、少なくとも一方の光源の照射角度を調整して位置ずれを補正し、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置を一致させる。図示例では、第2光源12における第2波長の光32の照射角度を調整する様子を示している。この場合、生体情報検出装置10は、第2光源12に設けた照射角度調整部15の角度調整機構を駆動させて第2光源12の照射角度θ1を調整する。ここでは第1光源11の照射角度θ0は固定とする。生体情報検出装置10は、第2光源12の照射角度θ1の調整角度Δθを検出することにより、調整角度Δθ、測定距離d0、第1光源11の照射角度θ0及び第2光源12の照射角度θ1から、光源から照射位置までの距離dを演算により推定できる。
2つの測定光の照射位置を一致させるために、光源の照射角度調整による照射位置の調整方法の一例を以下に示す。まず、生体情報検出装置10は、第1光源11から赤外光による第1波長の光31を被検者50の照射領域52に照射する。次に、生体情報検出装置10は、第1波長の光31を照射しながら、第2光源12から可視光又は赤外光による第2波長の光32を被検者50の照射領域52にパルス的に照射し、2つの光31、32の照射位置が一致するように、照射角度調整部15の角度調整機構を駆動させて第2光源12の照射角度θ1を調整する。なお、第2波長の光32をパルス的に照射するのは、照射位置の調整時に被検者にとって測定光が目立たないように見えづらくするためである。よって、第2波長の光32として赤外光を用いた場合、連続的に照射してもよい。そして、生体情報検出装置10は、第2光源12の照射角度θ1の調整角度Δθによって、光源から照射位置までの距離dを推定する。
図11は、測定光の照射位置の調整を行う際の表示画面の一例を示す図である。生体情報検出装置10は、例えば制御装置20の表示部25において、測定時の操作画面、設定画面、生体情報の測定結果等の表示画面を表示する。図示例は、2つの測定光の照射位置の調整を行う際に表示される、光源位置合わせ用の表示画面41の表示例を示している。光源位置合わせ用の表示画面41には、自動設定ボタン(AUTO)42、手動設定ボタン(MANUAL)43、カーソルボタン44、測定光の照射位置周辺のモニタ画像45が表示される。
ユーザが自動設定ボタン42を操作した場合、生体情報検出装置10は自動制御にて2つの測定光の照射位置が一致するように第2光源12からの第2波長の光32の照射角度を調整する。ユーザが手動設定ボタン43を操作した場合、生体情報検出装置10はユーザによるカーソルボタン44の操作指示に従って、第2光源12からの第2波長の光32の照射角度を調整する。手動設定の場合、ユーザはモニタ画像45を見ながらカーソルボタン44を操作し、第1波長の光31の照射位置マーク451と第2波長の光32の照射位置マーク452とが重なって一致するように、第2波長の光32の照射角度を調整して照射位置を移動させる。また、モニタ画像45において、被検者への照射対象除外領域を示す光源照射除去範囲455を表示し、照射位置の調整時に第1波長の光31及び第2波長の光32がこの範囲に入らないように目視で確認可能にする。これにより、被検者の目領域を測定光の照射範囲から除外し、照射位置を設定する。第2波長の光32の照射角度を調整して照射位置を移動させる際、第2波長の光32は、光源照射除去範囲455に対して遠い位置から移動させるのが望ましい。
(血中酸素飽和度及びヘモグロビン濃度の推定方法)
次に、生体におけるヘモグロビンの吸光特性を利用した血中酸素飽和度及びヘモグロビン濃度の推定方法について説明する。
図12は、生体におけるヘモグロビンの光吸収スペクトルを示す特性図である。図12において、横軸は光の波長を示し、縦軸は酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元ヘモグロビン(Hb)のそれぞれのモル吸光係数を示しており、生体におけるヘモグロビンの吸光特性と波長との関係が示されている。図示例では、第1波長(第1波長の光31の波長)は950nm、第2波長(第2波長の光32の波長)は660nmとしている。この場合、第1波長の光31として可視光範囲外の波長を持つ赤外光を、第2波長の光32として可視光を用いる。光の波長によって、酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元ヘモグロビン(Hb)の吸光度が異なるため、2つの波長の測定光に対する吸光特性の違いを利用して、反射光の計測信号に基づき、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの濃度比率を算出できる。
図13は、血中酸素飽和度及びヘモグロビン濃度の測定原理を説明する図である。ここでは、生体組織内の血管を流れる血液をモデル化した溶液を想定する。ランベルト・ベールの法則(Lambert-Beer law)より、溶液の吸光度Aは、溶液の吸光係数をK、溶液の濃度をC、溶液層の厚さ(セルの光路長)をLとすると、以下の(1)式で表され、溶液の濃度Cとセルの光路長Lに比例する。
A=K・C・L …(1)
図13(A)に示すように、セルの光路長Lが同じで溶液の濃度Cが異なる場合、吸光度Aは濃度Cに比例し、濃度Cが2倍(1mg/ml→2mg/ml)になると吸光度Aは2倍(1.0→2.0)になる。また、図13(A)に示すように、溶液の濃度Cが同じでセルの光路長Lが異なる場合、吸光度Aは光路長Lに比例し、光路長Lが1/2倍(1cm→0.5cm)になると吸光度Aは1/2倍(1.0→0.5)になる。
上記(1)式より、溶液の濃度Cは以下の(2)式で表される。
C=A/(K・L) …(2)
一方、入射光の強度をI0、透過光の強度をIとすると、吸光度Aは、下の(3)式で表される。
A=−log(I/I0) …(3)
よって、上記(2)、(3)式より、セルの光路長Lと入射光の強度I0が分かれば、透過光の強度Iを計測することによって、溶液における吸光度A、及び溶液の濃度Cを算出できる。この溶液の濃度Cの算出方法を応用して、異なる複数の波長の光を測定光として用いて各波長の透過光又は反射光の強度を計測することにより、血中酸素飽和度及びヘモグロビン濃度を推定可能である。
本実施形態では、被検者50を撮像した映像データを用いて、透過光の代わりに反射光の計測信号に基づいて、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度の推定を行う。
図14は、本実施形態における測定光の反射光の測定方法を説明する図である。生体情報検出装置10は、第1光源11から第1波長の光31の測定光311を、被検者50の照射領域52の皮膚表面55に照射する。そして、生体情報検出装置10は、組織内56を透過して生体外部へ出射した測定光の反射光312を、撮像部13にて受光して撮像する。このとき、照射領域52において照射位置を中心に同心円状に区分し、撮像した反射光312の強度を同心円状に各区分にて取得して計測することによって、組織内56に透過した測定光の透過光の強度を、反射光の強度で置き換える。
図14の下側に示すように、皮膚表面55のa点に入射し、組織内56の深さD1のb点まで透過した光の強度は、組織内56を散乱してb点と同一半径である皮膚表面55のd点より出射した光の強度と等しくなる。よって、d点の反射光の強度が光路長L=D1における透過光の強度と等しいことになる。同様に、組織内56の深さD2のc点まで透過した光の強度は、組織内56を散乱してc点と同一半径である皮膚表面55のe点より出射した光の強度と等しく、e点の反射光の強度が光路長L=D2における透過光の強度と等しいことになる。
(参考文献)酒井秋男、外4名、「組織酸素飽和度(StO2)およびヘモグロビン量(Hb vol)測定装置の開発」、医科器械学、日本医療機器学会、1994年、Vol.64,No.6、p.264−269
したがって、測定光を所定強度で被検者50の皮膚表面55に照射し、生体の組織内を散乱して出射した反射光を、被検者50を撮像した映像データから取得し、照射位置において同心円状に区分して反射光の強度の計測値を得ることにより、この反射光と同等の光路長に応じた透過光の強度を取得できる。そして、異なる複数の波長の測定光として、第1波長の光31と第2波長の光32を照射して反射光の強度を計測することにより、反射光の各波長の計測信号のデータに基づき、演算によって血中酸素飽和度及びヘモグロビン濃度を推定できる。
血中酸素飽和度SpO2は、酸化ヘモグロビンの濃度をC(HbO2)、還元ヘモグロビンの濃度をC(Hb)とすると、以下の(4)式で表される。
StO2=C(HbO2)/{C(HbO2)+C(Hb)}
×100[%] …(4)
酸化ヘモグロビンの濃度と還元ヘモグロビンの濃度を合わせたトータルのヘモグロビン濃度SpHbは、以下の(5)式で表される。
SpHb=C(HbO2)+C(Hb) …(5)
なお、生体情報検出装置10は、血中酸素飽和度とヘモグロビン濃度のいずれか一方、又は両方を推定して検出してよい。
(生体情報検出装置の機能及び動作)
次に、本実施形態の生体情報検出装置の機能及び動作の具体例について説明する。
図15は、本実施形態の生体情報検出装置10のシステム構成の一例を示す図である。生体情報検出装置10は、第1光源11、第2光源12、撮像部13を有するとともに、制御部201、映像入力部202、測距部203、光源調整部204、映像解析部205、顔/目検出部206、生体情報算出部207、記憶部208、出力部209、及びPC(Personal Computer)210を含む構成である。制御部201、測距部203、光源調整部204、映像解析部205、顔/目検出部206、及び生体情報算出部207は、図2に示した制御装置20の処理部21によって各機能を実現可能である。なお、これらの構成要素は、処理部21におけるソフトウェアの処理動作に限らず、処理回路を含むハードウェアや専用のプロセッサ等によって実現してもよい。
制御部201は、生体情報検出装置10の各部の制御を司るものであり、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を含む生体情報の検出に関する各動作を制御する。撮像部13は、測定光の照射領域52を含む被検者50の顔51を撮像し、被写体の映像データを取得する。映像入力部202は、撮像部13にて取得した測定光の反射光を含む映像データを入力する。
測距部203は、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置の位置ずれ量に基づき、照射位置までの測定距離を推定することにより、測距を行う。或いは、測距部203は、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置の位置合わせを行った際の第2光源12の照射角度の調整量に基づき、照射位置までの測定距離を推定することにより、測距を行う。また、測距部203の第1変形例として、撮像部13にて撮像した被写体映像の位相差検出又はコントラスト検出、或いは照射領域52への超音波又はレーザ光の送受信等により、直接的に距離を計測する構成としてもよい。また、測距部203の第2変形例として、撮像部13にて撮像した被写体映像から測定光の照度を取得し、この照度から照射位置までの距離を換算することにより、測定距離を検出する構成としてもよい。また、測距部203の第3変形例として、撮像部13にて撮像した被写体映像から測定光の照度を取得し、照射領域52における照度が所定値となるように光源出力を調整し、この調光量から照射位置までの距離を推定することにより、測定距離を検出する構成としてもよい。
光源調整部204は、第1光源11、第2光源12に対して制御信号を出力し、各光源にて出射する測定光(第1波長の光31、第2波長の光32)の強度の調整を行い、2つの光源の出力切り替えを行う。また、光源調整部204は、照射位置調整部の一例としての照射角度調整部15を駆動して、第2光源12の照射角度を調整し、測定光の照射位置を調整する。これにより、光源調整部204は、2つの光源からの第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置を一致させる。なお、光源調整部204は、第2光源12の代わりに第1光源11の照射角度を調整してもよいし、両光源の照射角度を調整してもよい。
映像解析部205は、撮像部13にて取得した映像データを解析し、被検者50の照射領域52における測定光の反射光を抽出する。顔/目検出部206は、撮像部13にて取得した映像データにおいて、顔検出処理によって被検者50の顔51を検出し、目検出処理によって顔51における目の位置を検出する。生体情報算出部207は、測定光の反射光の映像において、2つの測定光のそれぞれの波長における反射光の強度を算出し、取得した反射光の強度に基づいて上述した推定方法による所定の演算を行い、生体情報として、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を推定する。
記憶部208は、被検者50の映像データ、各種設定データ、調整データ、算出した生体情報等を、メモリ又はストレージに記憶する。出力部209は、算出した血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度の生体情報を、生体情報の測定データとして出力する。PC210は、算出された生体情報を入力し、生体情報検出装置10にて検出した生体情報の測定結果として表示する。また、PC210は、外部装置に対して、或いは通信回線又はネットワークを介して他の装置に対して、生体情報を送信し、生体情報検出装置10にて検出した生体情報の測定結果を出力する。なお、PC210は、制御部201に代わって各部の動作を制御する構成としてもよい、
図16は、本実施形態の生体情報検出装置10の機能構成の一例を示す図である。以下の機能ブロックは、図2に示した制御装置20の処理部21を中心とした生体情報検出装置10の処理によって、各機能が実行される。
映像入力部221は、撮像部13にて撮像した被検者50の照射領域52を含む映像データを入力する。顔検出部222は、取得した映像データから被検者50の顔51を検出する。目検出部223は、検出した顔51の中から被検者50の目の位置を検出する。目領域除外処理部224は、被検者50の目を含む領域(目領域)を、測定光の照射領域52から除外する除外処理を行い、測定光が目領域に照射されないようにする。角度調整部225は、第1光源11、第2光源12の照射角度の調整を行い、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置が一致するように位置調整を行う。照度調整部226は、第1光源11、第2光源12の出射光量の調整を行い、第1波長の光31、第2波長の光32の照射位置における照度が所定値となるように照度調整を行う。角度調整部225による照射角度の調整、及び照度調整部226による測定光の照度調整は、距離演算部229による照射位置までの測定距離の算出結果に基づいて実行する。光源制御部227は、角度調整部225及び照度調整部226からの制御信号に基づき、第1光源11、第2光源12に対して、出射光量、照射角度をそれぞれ制御する。これにより、第1光源11からの第1波長の光31と、第2光源12からの第2波長の光32とが、所定の照度、所定の照射位置となり、2つの測定光の照射位置が一致するように調整される。
映像解析部228は、撮像部13にて取得した映像データを解析し、被検者50の照射領域52における測定光の反射光を抽出する。距離演算部229は、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置の位置ずれ量、又は第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置を一致させたときの照射角度の調整量に基づき、光源から照射位置までの測定距離を算出する。
外乱影響除去処理部230は、外乱の一つとしての被検者の距離変動による影響を除去する処理を行う。この場合、外乱影響除去処理部230は、光源から照射位置までの測定距離の変動に起因する反射光の強度の検出レベルの変動を相殺する処理を行うか、或いは、測定距離の変動によって反射光の強度の検出レベルが変動しないように、測定距離に応じて光源からの測定光の照度を調整する処理を行う。また、外乱影響除去処理部230は、外乱の一つとしての外来ノイズよる影響を除去する処理を行う。この場合、外乱影響除去処理部230は、撮像部13にて取得した映像データから外来ノイズによるノイズ波形を検出し、反射光の強度の計測信号からノイズ波形を相殺して除去する処理を行う。
生体情報算出処理部231は、抽出した測定光の反射光の映像データにおいて、2つの測定光のそれぞれの波長における反射光の強度を算出し、取得した反射光の強度及び光路長に基づいて上述した推定方法による所定の演算を行い、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を推定することにより、生体情報を算出する。生体情報出力部232は、算出した血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度の生体情報を出力し、生体情報の検出結果の表示、又は生体情報の記録等を行う。
図17及び図18は、本実施形態の生体情報検出装置10における生体情報算出に関する処理手順を示すフローチャートである。図17及び図18では、生体情報の測定開始から、測定光の調整、測定光の照射、照射領域の撮影、生体情報の算出までの各手順を示している。以下の処理は、例えば図2に示した制御装置20の処理部21が主体となって実行する。
生体情報検出装置10は、撮像部13による被検者50の映像撮影を行い、顔51の照射領域52を含む被写体映像を取得する(S11)。この撮像部13による被検者50の撮像動作は、後述する測定光の調整及び照射を実行するまでは少なくとも継続する。生体情報検出装置10は、被検者50の生体情報の抽出を行うかどうかを判定し(S12)、ユーザの操作指示等に基づいて生体情報の抽出を行う場合(S12:Yes)は、続いて被検者50の顔検出を行うかどうかを判定する(S13)。なお、生体情報の抽出を行わない場合(S12:No)、生体情報検出装置10は、図18のステップS30に進み、ユーザの処理停止要求があるかどうかを判定し、処理停止要求がある場合(S30:Yes)は本処理を終了する。一方、処理停止要求がない場合(S30:No)、生体情報検出装置10は、図17のステップS11に戻って本処理を始めから再び実行する。
顔検出を行う場合(S13:Yes)、生体情報検出装置10は、顔検出処理を実行し(S14)、被検者50の顔51が検出されたかどうか判定する(S15)。被検者50の顔51が検出された場合(S15:Yes)、生体情報検出装置10は、次に目領域の検出を行うかどうかを判定する(S16)。目検出を行う場合(S16:Yes)、生体情報検出装置10は、目領域検出処理を実行し(S17)、被検者50の顔51において目領域が検出されたかどうか判定する(S18)。被検者50の目領域が検出された場合(S18:Yes)、生体情報検出装置10は、目領域を含む所定範囲を照射対象除外領域53として光源照射範囲から除外する処理を実行する(S19)。
一方、顔検出を行わない場合(S13:No)、被検者50の顔51が検出されなかった場合(S15:No)、目領域の検出を行わない場合(S16:No)、被検者50の目領域が検出されなかった場合(S18:No)、生体情報検出装置10は、被検者50の顔以外で生体情報の抽出を行うかどうかを判定する(S20)。生体情報検出装置10は、ユーザの操作指示等に基づいて顔以外で生体情報の抽出を行う場合(S20:Yes)は、図18のステップS26に進み、2つの波長の測定光のうち、波長の長い方の光(図示例では第1波長の光31)から、2つの波長の光を照射する。また、被検者50の顔以外で生体情報の抽出を行わない場合(S20:No)、生体情報検出装置10は、図18のステップS30に進み、ユーザの処理停止要求があるかどうかを判定し、処理停止要求がある場合(S30:Yes)は本処理を終了する。
ステップS19にて目領域を光源照射範囲から除外する処理を実行した後、生体情報検出装置10は、2つの波長の測定光のうち、波長の長い方の光(図示例では第1波長の光31)を目領域以外に照射する(S21)。生体情報検出装置10は、被検者50の顔51の目領域以外に適切に測定光が照射されたかどうか確認し(S22)、目領域以外に適切に照射された場合(S22:Yes)、生体情報検出装置10は、続いて波長の短い方の光(図示例では第2波長の光32)を目領域から離れた方向から照射する(S23)。また、目領域以外に適切に測定光が照射されていない場合(S22:No)、生体情報検出装置10は、測定光の照射を一旦停止し(S24)、ユーザによる設定や所定条件等に基づき、再照射を行うかどうか判定する(S25)。生体情報検出装置10は、再照射を行う場合(S25:Yes)、波長の長い方の光を目領域以外に再び照射し、目領域以外に適切に測定光が照射されたかどうか確認する(S21、S22)。一方、生体情報検出装置10は、再照射を行わない場合(S25:No)、ステップS30に進み、ユーザの処理停止要求があるかどうかを判定し、処理停止要求がある場合(S30:Yes)は本処理を終了する。
ステップS23又はS26において測定光を照射した後、生体情報検出装置10は、波長の短い光の照射位置が波長の長い光の照射位置と合うように、光源(図示例では第2光源12)の照射角度を調整し、2つの波長の光の照射位置を一致させる(S27)。生体情報検出装置10は、2つの波長の光の照射位置が一致したかどうか判定し(S28)、照射位置が一致しない場合(S28:No)、ステップS27に戻って光源の角度調整を行い、照射位置が一致するまで繰り返す。2つの波長の光の照射位置が一致した場合(S28:Yes)、生体情報検出装置10は、撮像部13により撮像した被検者50の照射領域52の映像データから、2つの波長の光の反射光を抽出し、反射光の強度に基づいて生体情報を算出する処理を実行する(S29)。生体情報の算出処理が完了すると、生体情報検出装置10は、ユーザの処理停止要求があるかどうかを判定し(S30)、処理停止要求がある場合(S30:Yes)は本処理を終了する。一方、処理停止要求がない場合(S30:No)、生体情報検出装置10は、図17のステップS11に戻って本処理を始めから再び実行する。
図19は、本実施形態の生体情報検出装置10における生体情報の算出処理の手順を示すフローチャートである。図19では、図18のステップS29における生体情報の算出処理の各手順を示している。以下の処理は、例えば図2に示した制御装置20の処理部21が主体となって実行する。
生体情報検出装置10は、第1波長の光31と第2波長の光32の2つの光を照射した被検者50の照射領域52を含む映像データを入力して取得する(S41)。また、生体情報検出装置10は、第1光源11と第2光源12の2つの光源の角度調整情報、又は照射位置における測定光の照度情報、若しくは距離測定による被検者50の照射位置までの測距情報などに基づき、被検者50までの測定距離を取得する(S42)。
生体情報検出装置10は、測定距離の変動による測定光の反射光の強度変化をキャンセルする処理等により、反射光の計測データにおいて被検者50までの距離による影響を除去する処理を実行する(S43)。また、生体情報検出装置10は、自装置に入ってくる外来ノイズをキャンセルする処理等により、反射光の計測データにおいて外乱による影響を除去する処理を実行する(S44)。
そして、生体情報検出装置10は、測定光の反射光の映像データを解析し(S45)、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度等の生体情報の推定に関する演算処理を実行する(S46)。この際、生体情報検出装置10は、上述した血中酸素飽和度及びヘモグロビン濃度の推定方法に基づき、被検者50の照射領域52における反射光の強度を同心円状に区分して検出する。そして、生体情報検出装置10は、測定光の照射位置を中心とした同心円の半径によって被検者50の生体組織において透過した測定光の光路長を算出するとともに、光路長に応じた反射光の強度を算出する。次に、生体情報検出装置10は、反射光の強度と光路長とから、2つの波長の測定光による被検者50の生体組織における吸光度と酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの濃度を算出し、酸化ヘモグロビンの濃度比率から血中酸素飽和度を推定し、濃度の総和からヘモグロビン濃度を推定する。
次に、生体情報検出装置10は、算出した血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度等の生体情報を出力し、表示部への生体情報の検出結果の表示、記憶部への生体情報の記録、又は外部装置への生体情報の送信等を行う(S47)。
なお、上記実施形態では、波長の異なる複数の測定光として、第1波長の光31と第2波長の光32の2つの波長の光を用いて生体情報を検出する構成例を示したが、3つ以上の異なる波長の光を測定光として用いて、生体情報を検出する構成としてもよい。測定光として用いる異なる波長の組合せは、赤外光と可視光、第1の赤外光と第2の赤外光、など、少なくとも一つの赤外光を含む種々の組合せを用いてよい。
なお、生体情報検出装置10の第1光源11、第2光源12、及び撮像部13の前面に、カバー部材を設け、被検者50に光源や撮像部が直接露出しない構成としてもよい。カバー部材は、第1光源11、第2光源12、及び撮像部13と被検者50との間の測定光及び反射光の光路において、ハーフミラー、或いはガラス又はアクリル等の透明又は半透明の部材など、測定光及び反射光を透過可能な部材であれば、いずれのものでもよい。ハーフミラーのカバー部材を設ける場合、被検者から光源や撮像部が直接見えないので、生体情報の検査時の心理的なハードルを下げることができ、簡易な生体情報の検査を実現可能となる。カバー部材を設ける場合、カバー部材における測定光及び反射光の反射率、透過率、減衰量等に応じて、出射する測定光の照度、受光する反射光の強度を調整することにより、カバー部材による影響を除去することができる。
なお、光源の照射角度調整による照射位置の調整、光源から出射する測定光の照度調整、反射光の強度の測定距離に応じた補償など、被検者50までの距離変動に応じた処理は、測定開始時に実行、所定の時間間隔で実行、所定の距離以上変動した場合に実行、リアルタイムで距離変動に応じて実行など、各種の実行方法を適用してよい。
上述したように、本実施形態によれば、複数の異なる波長の測定光(第1波長の光31と第2波長の光32)の照射位置を一致させて被検者50に照射し、被検者50を撮像した映像を取得し、照射位置における測定光の反射光の強度に基づいて血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度を算出することにより、非接触で生体情報を検出することができる。本実施形態の生体情報検出装置10を使用することにより、例えば自治体の役所、保健所などのパブリックスペースにおいて、簡易に非接触で血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度等の生体情報を測定でき、人の貧血等の検査を手軽に実施できる。
以上のように、本実施形態の生体情報検出装置10は、複数の異なる波長の光による測定光である第1波長の光31、第2波長の光32をそれぞれ測定対象となる被検者50の顔51等に照射する第1光源11、第2光源12と、測定対象までの測定距離に応じて第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置を調整する照射位置調整部の一例としての照射角度調整部15と、被検者50の照射位置周辺における測定光の反射光を受光する受光部としての撮像部13と、反射光の強度に基づいて生体情報を算出する処理部21と、を有する。
上記構成により、接触型の測定器を用いることなく、照射位置の位置合わせを行った複数の異なる波長の測定光によって被検者50の皮膚からの反射光を取得し、反射光の強度に基づき、血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度などの血液に関する生体情報を非接触で検出可能となる。
また、生体情報検出装置10において、第1光源11、第2光源12が照射する測定光は、少なくとも一つが可視光範囲外の波長を持つ光であり、処理部21は、可視光範囲外の波長を持つ光である第1波長の光31を測定対象に照射し、第1波長の光31の照射位置に、第1波長とは異なる第2波長の光32を照射し、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置が一致するように照射位置調整部によって照射位置の位置合わせを行う。これにより、可視光範囲外の第1波長の光31と、これとは波長が異なる第2波長の光32との照射位置を一致させ、2つの波長の測定光の反射光強度を適切に計測して取得することができる。
また、生体情報検出装置10において、測定対象における目領域を検出する目検出部を有し、処理部21は、測定対象としての被検者50の顔51の領域に第1波長の光31と第2波長の光32を照射し、この際、目領域を照射対象除外領域53として測定光の照射範囲から除外し、照射位置を設定する。これにより、被検者50の目領域を除いた顔領域に対して適切に測定光を照射可能となる。
また、生体情報検出装置10において、照射位置調整部は、第1波長の光31と第2波長の光32の少なくとも一方の照射角度を調整する照射角度調整部15を有し、処理部21は、照射角度調整部15による照射角度の調整量に基づいて測定対象までの測定距離を推定する測距部を、有する。これにより、測定光の位置合わせ時における照射角度の調整量に基づき、測定対象までの測定距離を計測できるとともに、第1波長の光31と第2波長の光32の位置合わせを実行できる。
また、生体情報検出装置10において、処理部21は、第1波長の光31と第2波長の光32の照射位置の位置ずれ量に基づいて測定対象までの測定距離を推定する測距部を、有する。これにより、2つの測定光の照射位置の位置ずれ量に基づき、測定対象までの測定距離を計測できる。
また、生体情報検出装置10において、処理部21は、測定対象において照射位置を中心に同心円状に区分して反射光の強度を取得することにより、測定対象の生体の皮膚組織内に透過した測定光の透過光の強度を、生体の皮膚表面の反射光の強度で置き換えて取得する。これにより、被検者50の照射領域52において同心円状に区分して測定光の反射光を計測することで、皮膚組織内への入射強度を皮膚表面の反射強度で置き換えて、非接触で血中酸素飽和度又はヘモグロビン濃度等の生体情報を算出することができる。
また、生体情報検出装置10において、処理部21は、第1波長の光31を照射しながら、第2波長の光32をパルス的に照射し、照射位置の位置合わせを行う。これにより、被検者50に対して照射する測定光の強度を弱めることができ、また、装置の消費電力を削減できる。
また、生体情報検出装置10において、処理部21は、測定対象までの測定距離の変動による反射光の強度の変動を除去する。これにより、被検者50までの距離が変動した場合に、距離変動による影響を除去でき、反射光強度の計測精度、生体情報の推定精度を向上できる。
また、生体情報検出装置10において、処理部21は、外乱による反射光の強度の変動を除去する。これにより、外来ノイズ等の外乱による影響を除去でき、反射光強度の計測精度、生体情報の推定精度を向上できる。
また、生体情報検出装置10において、第1光源11、第2光源12は、測定光として、異なる波長の複数のコリメート光を出射する。これにより、被検者50に対して十分な強度で測定光を照射でき、また、反射光の強度を適切に検出できる。
また、本実施形態の生体情報検出方法は、生体情報検出装置10において、複数の異なる波長の光による測定光を光源より測定対象の生体に照射するステップと、測定対象までの測定距離に応じて複数の異なる波長の光の照射位置を調整するステップと、測定対象の生体からの反射光を受光部により受光するステップと、反射光の強度に基づいて生体情報を算出するステップと、を有する。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。