[発明の実施の形態1]
この発明の実施の形態1について、図1から図15を用いて説明する。
図1には、本発明に係る仮想競技システム1の全体構成を示す概略ブロック図が示されている。
この仮想競技システム1は、仮想競技者が、現実の競技コースと別の場所に設置されている仮想競技装置6に、競技動作の入力を行い、現実のレースと同一の競技コースを想定して仮想的に行われる疑似レースに参加することによって、仮想的に現実のレースに参加できるように構成されている。レースを再現するために、現実のレースにおいて、センサを用いてデータを測定し、得られた情報を、疑似レースに反映させるようになっている。そして、レースに参加した現実競技者の実測位置と、仮想競技者の入力に基づいて算出される位置とが、競技コース上に重ねて表示されるようになっている。
この機能を実現するために、図1に示されている仮想競技システム1は、このシステム全体を管理するシステムサーバ2、現実競技者の情報を検出する現実競技者装着デバイス3、レースの環境を測定する環境測定センサ4、レースの映像などを撮影するビデオカメラユニット5、疑似レースに参加する仮想競技者が競技動作の入力を行う仮想競技装置6、仮想競技装置6の周囲の温度、風向き、風速を含む仮想競技装置周囲環境を変化させる「環境生成手段」である周囲環境生成装置7、データの送受信が行われる通信回線8、衛星測位システムであり位置情報の算出に使用されるGPSシステム9などにより構成されている。
通信回線8は、専用回線、バーチャルプライベートネットワーク(VPN:Virtual Private Network)回線、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)、ワイドエリアネットワーク(WAN:Wide Area Network)、インターネットなどにより構成することができる。
レース中、現実競技者には、複数のセンサから構成される現実競技者装着デバイス3が装着されて、位置などの情報が検出される。この他に、温度、風向、風速などの環境の情報や、レース映像なども取得される。このようにして得られるレースの情報は、通信回線8を介して、システムサーバ2に送られ、記憶されるようになっている。
仮想競技者が、疑似レースに参加するときには、システムサーバ2からこれらの情報が取り出されて、仮想競技装置6に現実のレースが再現される。この結果、仮想競技者は、あたかも現実のレースに参加しているかのような体験をすることができる。
<システムサーバ2>
図2には、システムサーバ2の概略ブロック図が示されている。
このシステムサーバ2は、この仮想競技システム1の「制御部」であるシステムサーバ制御部20、システムサーバ側時計21、データの送受信を行うシステムサーバデータ通信部22、様々な種類の情報を記憶していつでも読み出すことができるデータベース記憶部23、仮想競技装置6の構成の各部分の設定を示す仮想競技装置パラメータ記憶部24などから構成されている。
システムサーバ側時計21からは、時刻が読み出される。この仮想競技システム1では、現実のレースと疑似レースの開始からの経過時間を同期させて、各要素を制御する必要がある。このため、時刻を取得することが必要になる。
システムサーバ側時計21としては、通信回線8を介して、NTP(Network Time Protocol)サーバにアクセスして時刻を読み取るようにしてもよい。
システムサーバデータ通信部22は、通信回線8に接続されており、このシステムを構成している各要素間でデータの送受信ができるようになっている。
なお、各要素間でのデータのやりとりは、通信回線8でなく、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの外部メモリを使用して行うようにしてもよい。
データベース記憶部23には、現実競技者のレース時の情報や、現実の競技コースの地形情報など、仮想競技装置6に現実のレースを再現するときに必要となる情報などが記憶されている。
図3には、このデータベース記憶部23に記憶される情報の一例が示されている。このデータベース記憶部23には、実測位置情報、地形情報、環境情報、レース映像情報、現実競技装置センサ情報、現実競技装置パラメータ、仮想競技者競技結果情報などが記憶されるようになっている。
実測位置情報は、レース開始からの経過時間における現実競技者の実測位置を含んでいる。いつでもレースの状況が再現できるように、レースの経過時間と実測位置とが対応づけられている。このため、時間を指定することにより、レース中の現実競技者の位置を読み出せるようになっている。
現実競技者は、ID(Identification)によって管理されているため、複数の現実競技者が同時にレースに参加している場合でも、個々の現実競技者を特定することができるようになっている。
地形情報は、現実の競技コースの経路や高低差を含む地形データを含んでいる。また、地形情報に、路面の舗装方法や舗装状況を含めるようにすると、路面の摩擦の影響などをより正確に再現できるようになる。
自転車などの場合、路面とタイヤの摩擦抵抗が大きくなると、直進時には、抵抗が大きくなるため減速し不利に作用する。一方、コーナリング時には、摩擦抵抗が大きいほど、遠心力に対してグリップする力が大きくなり、コーナリング速度を高めることができ、有利に作用する。このように路面の摩擦が走行状態に影響をする。
仮想競技者の競技コース上の位置を指定することにより、その地点の地形の詳細な形状などを地形情報から読み出せるようになっている。
環境情報は、レース開始からの経過時間における競技コースの温度、風向き、風速などを含んでいる。レース中の時間と、競技コース上の位置を指定することにより、そのときの環境が読み出せるようになっている。
レース映像情報は、競技コース上の複数の映像撮影位置で撮影された、レース開始からの経過時間におけるレース映像を含んでいる。時間と位置を指定すると、その時間において、最も近い位置で撮影されたレース映像が読み出される。
現実競技装置センサ情報は、現実競技者が搭乗する現実競技装置に装着されている各種センサによって検出されるデータを含んでいる。これらのデータは、レース開始からの経過時間における現実競技装置の動作状態を示す。現実競技者と同様に、現実競技装置も、IDによって管理されているため、複数の現実競技装置が同時にレースに参加しても、それぞれの現実競技装置を特定できるようになっている。
現実競技装置パラメータには、現実競技装置を構成する各部分の設定が含まれている。この現実競技装置パラメータは、現実競技装置のセッティングの状態を示すものであるため、レース開始前にあらかじめ決定される。現実競技者は、そのセッティングの状態で、レースに臨むことになる。
仮想競技者競技結果情報には、疑似レースにおける仮想競技者の競技データなどが含まれている。レース終了後に、競技の内容を再現して分析したり、レースを繰り返して行った結果を比較したりして、仮想競技者の競技能力の向上に役立てることができる。また、心拍数、血圧、体温、呼吸数などのバイタルサイン情報が測定されている場合には、これらのデータも含まれ、競技中の仮想競技者の状態を詳細に把握できるようになっている。
図2に示されている、仮想競技装置パラメータ記憶部24には、仮想競技装置6を構成する各部分の設定を示す仮想競技装置パラメータが記憶されている。この仮想競技装置パラメータは、仮想競技装置6への競技動作の入力に基づいて、仮想競技者の位置を算出する際に使用される。
システムサーバ制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、主記憶部(RAM:Random Access Memory)、補助記憶部(ハードディスク)などを含むように構成される。
補助記憶部(ハードディスク)には、プログラムやデータが保存される。補助記憶部として使用されるメモリの種類は、ハードディスクに限らず、フラッシュメモリや、光ディスクなどのその他の不揮発性メモリを使用できる。
主記憶部(RAM)には、データを一時的に記憶できる揮発性メモリが使用される。
CPUは、主記憶部(RAM)を用いて、補助記憶部(ハードディスク)に記憶されているプログラムを実行したり、データ処理を行ったりする。
このシステムサーバ制御部20は、この仮想競技システム1が全体として所望の機能を発揮するように制御を行う。
例えば、このシステムサーバ制御部20は、仮想競技者の位置を算出して、算出される仮想競技者の位置と、実測位置情報から読み出される現実競技者の位置とを表示させる。
仮想競技者の位置は、その時点の競技状態を示す情報から構成される仮想競技者ステータス情報と、仮想競技装置6への競技動作の入力を検出して取得される仮想競技者入力情報とに基づいて、算出される。
仮想競技者ステータス情報は、データベース記憶部23に記憶されている地形情報、仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶されている仮想競技装置パラメータ、及び、その時点における競技コース上の仮想競技者の位置を含むように構成されている。また、仮想競技者ステータス情報には、データベース記憶部23に記憶されている環境情報が含まれるようにしてもよい。
その時点における仮想競技者の位置と、地形情報を参照することにより、現実の競技コースの勾配、凹凸、舗装状態などの路面状況を読み取ることができる。上りと下り勾配の相違のように路面の状況が異なると、それに応じて、同一の入力を行ったときの挙動も異なってくる。また、舗装状態によって、路面の摩擦の影響が異なるため、走行状態も変化する。自転車などの場合には、路面とタイヤの摩擦抵抗が大きいと、直進時に、抵抗となるため不利に作用し、他方、コーナリング時に、グリップ力が大きくなるため有利に作用する。
また、仮想競技装置パラメータに基づいて、入出力の伝達状態が決定されるため、仮想競技装置6への入力に対して、定量的に仮想競技者の移動量などが算出される。
仮想競技者のその時点における位置に、移動量を加算することにより、仮想競技者の位置が更新されていく。
このようにして算出される仮想競技者の位置と、データベース記憶部23に記憶されている実測位置情報から読み出される現実競技者の位置は、疑似レース開始からの経過時間と現実のレース開始からの経過時間の同期が保たれるように、合成されて表示される。
また、このシステムサーバ制御部20は、仮想競技者ステータス情報に基づいて、現実のレースに参加した状態が再現されるように、仮想競技装置6への競技動作の入力抵抗となる入力負荷を算出して、算出された入力負荷が発生するように仮想競技装置6を作動させる。
上述したように、その時点における仮想競技者の位置が指定されると、地形情報からその場所の路面状況を読み出すことができる。そして、現実の競技コース上を走行する場合と同様の体験が得られるように、仮想競技装置6の入力負荷を変化させることにより、競技コースが再現される。
また、このシステムサーバ制御部20では、環境情報を含む仮想競技者ステータス情報と、仮想競技者入力情報とに基づいて、仮想競技者の位置を算出するようにしてもよい。例えば、向かい風の場合には減速し、追い風の場合には加速するというように、環境が変化すれば、競技者の走行状態も変化する。算出される仮想競技者の位置をより現実に近づけるため、環境の影響が反映される。また、例えば、温度についても、路面の摩擦係数の違いから走行状態が変化し、仮想競技者の位置の算出に影響する。
また、このシステムサーバ制御部20では、環境情報を含む仮想競技者ステータス情報に基づいて、仮想競技装置6の入力負荷を算出するようにしてもよい。地形情報や、仮想競技装置パラメータなどの影響だけでなく、その時点における環境の影響も含めて、入力負荷が、決定されるため、仮想競技者には、仮想競技装置6への入力を行う際に、現実と同様の負荷がかかるようになる。例えば、向かい風の場合には、入力負荷が大きくなり、追い風の場合には、小さくなるように変化する。また、温度によって路面の摩擦係数などが変化し、それに伴って入力負荷が変化する。
また、このシステムサーバ制御部20は、データベース記憶部23に記憶されているレース映像情報から、仮想競技者の位置に最も近い映像撮影位置のレース映像を取り出して、取り出したレース映像と、仮想競技者の位置と、現実競技者の位置とを、疑似レース開始からの経過時間と現実のレース開始からの経過時間を同期させて、重ね合わせるように合成して表示させる。
仮想競技者と現実競技者の表示は、コンピュータグラフィックス(CG:Computer Graphics)により画像を作成して、仮想競技者と現実競技者の位置関係が正しく表現されるようにレース映像の上にそれらの画像を重ねて表示させるようにしてもよい。
また、現実競技者の表示は、レース映像の中の現実競技者の画像を使用してもよい。
また、現実競技者を、あらかじめカメラで撮影された画像で表示するようにしてもよい。
また、このシステムサーバ制御部20では、現実競技者の競技状態を示すデータの集合により構成される現実競技者レース情報と、仮想競技者ステータス情報及び仮想競技者入力情報と、を比較演算することにより、仮想競技者ステータス情報と仮想競技者入力情報と、に基づいて算出された仮想競技者の位置を補正するようにしてもよい。
現実競技者レース情報は、データベース記憶部23に記憶されている、実測位置情報、現実競技装置センサ情報、及び、現実競技装置パラメータを含むように構成されている。
仮想競技者の位置は、仮想競技者ステータス情報と仮想競技者による仮想競技装置6への入力に基づいて算出することができるが、このようにして算出される位置は、現実のレースにおける位置からわずかにずれを生ずることがある。例えば、スリップなど現実の路面の状態に起因する現象を完全に再現することは困難を伴うからである。そこで、現実のレースにおける現実競技者のデータを反映させることにより、仮想競技者の位置をより現実に近づけることができる。現実競技者と仮想競技者の位置や、速さ、装置の操作状況などの現実競技装置のデータと、仮想競技装置6のデータとを比較して、演算することにより、仮想競技者の位置が補正される。
また、このシステムサーバ制御部20では、現実競技者レース情報と、仮想競技者ステータス情報とに基づいて、仮想競技装置6の入力負荷を算出するようにしてもよい。現実競技者レース情報から、競技コース上の各地点における、現実競技者にかかっている現実の負荷を取り出すことができるため、この負荷を仮想競技装置6で再現できる。
また、このシステムサーバ制御部20が、仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶されている仮想競技装置パラメータを仮想競技者が認識できるように表示したり、仮想競技者の設定操作によって変更された仮想競技装置パラメータを仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶させたりするようにしてもよい。
また、このシステムサーバ制御部20が、データベース記憶部23に記憶されている環境情報に基づいて、レース開始からの経過時間における現実の競技コースの温度、風向き、風速を含む環境を仮想競技装置6の周囲に再現するように、周囲環境生成装置7を作動させるようにしてもよい。
<現実競技者装着デバイス3>
現実競技者装着デバイス3は、各種のセンサなどから構成されており、現実競技者や現実競技装置に装着されて、レース中の競技状態を取得するために使用される。
図4には、現実競技者装着デバイス3の概略ブロック図が示されている。
この現実競技者装着デバイス3は、GPSシステム9からの信号を受信して位置や時刻を算出する現実競技者装着GPSモジュール31、レース中の映像を撮影する現実競技者装着ビデオカメラ32、現実競技装置の動作状態を検出する現実競技装置センサ33、レース開始からの経過時間を計測するための現実競技者装着時計34、データの送受信を行う現実競技者装着モバイルデータ通信手段35、この現実競技者装着デバイス3を構成している要素が所望の動作を行うように制御する現実競技者装着デバイス制御手段30などから構成されている。
現実競技者装着GPSモジュール31は、現実競技者の実測位置を検出するために使用される。レース開始からゴールするまでの期間、停止することなく位置を算出し続けて、算出された位置と時間が関連づけられるように、実測位置情報としてデータベース記憶部23に記憶される。
このように、レース開始からの現実競技者の位置を追跡する情報(トラッキングデータ)が保存されるため、いつでも現実競技者の位置を詳細に再現できる。
また、このデータを処理することにより、速度や加速度を算出できる。
なお、上述したように現実競技者の各々に割り付けられるIDによってデータが管理されており、指定した現実競技者のデータを抽出できるようになっている。
現実競技者装着ビデオカメラ32は、現実競技者の位置から撮影されるレース映像を取得するために用いられる。撮影される映像は、レース映像情報として、データベース記憶部23に記憶される。
データベース記憶部23に記憶されているレース映像情報からは、レース開始からの経過時間におけるレース映像を読み出すことができ、実測位置情報からは、レース開始からの現実競技者の位置を読み出すことができる。これらの情報を組み合わせることにより、レース映像の映像撮影位置を検出できるようになっている。レース中、現実競技者は競技コース上を走行しているため、それに伴って映像撮影位置も変化する。この結果、レース映像は、競技コース上の複数の映像撮影位置で撮影されたものになる。
現実競技装置センサ33は、競技の種類によって、現実競技装置の構造が異なるため、それに応じて、必要とされるセンサ類が選択される。
競技が自転車レースの場合には、現実競技装置が、競技用自転車になる。図5には、競技用自転車についての現実競技装置センサ33の概略ブロック図が示されている。
この現実競技装置センサ33には、現実自転車用ペダル回転数センサ33a、現実自転車用ペダルトルクセンサ33b、現実自転車用ブレーキレバー変位量センサ33c、現実自転車用ブレーキレバー力センサ33d、現実自転車用ハンドル角度センサ33e、現実自転車用シフトレバーギアセンサ33f、現実自転車用タイヤ回転数センサ33g、現実自転車用バンクセンサ33hなどが含まれている。これらのセンサは、一例であり、これらのすべてのセンサを含む必要はなく、また、異なるセンサを追加してもよい。この他に、タイヤ空気圧、タイヤ温度、ペダル圧力などを検出するようにしてもよい。さらに、心拍数などのバイタルサイン情報を検出するセンサを追加してもよい。
現実自転車用ペダル回転数センサ33aや、現実自転車用ハンドル角度センサ33eなど、回転数や角度の検出には、エンコーダなどの角度センサが使用される。また、現実自転車用ペダルトルクセンサ33bには、非接触の磁歪式トルクセンサなどが使用される。ペダルトルクを検出することにより、ペダルを踏圧する力も求めることができて、現実競技者にかかっている現実の負荷も測定できる。現実自転車用ブレーキレバー力センサ33dなどで、力を検出するには、圧電式やひずみゲージ式の力センサを使用することができる。
現実自転車用タイヤ回転数センサ33gにより、タイヤの回転数が検出されると、タイヤ径などから競技用自転車の速さを求めることができる。
現実自転車用バンクセンサ33hでは、競技用自転車の傾きが計測される。コーナリングの際、自転車を内側にバンク(傾斜)させて、走行し、コーナリング速度を上げる手法がとられる。カーブを曲がるときには、鉛直方向の重力加速度に加え、水平方向に遠心力が作用するため、タイヤを路面に押し付ける力が大きくなる。これに伴い路面とタイヤの摩擦抵抗が増大するため、ペダルを回転させなければ速度が減少する。このように、競技用自転車の走行状態を検出する上で、バンク角度を測定することが有効になる。
現実自転車用バンクセンサ33hとしては、傾斜センサや、重力加速度を検出する加速度センサなどが使用される。
現実競技装置センサ33の各種のセンサから検出されるデータは、検出した時間と関連づけられて、システムサーバ2に送信され、現実競技装置センサ情報としてデータベース記憶部23に記憶される。
図4に示されている、現実競技者装着時計34によって、時刻が取得される。現実競技者装着時計34から得られる時刻は、現実競技者装着GPSモジュール31から取得される時刻と一致するように補正される。
こうすることにより、現実競技者装着デバイス3から取得されるデータが、全ての現実競技者や現実競技装置の間で、同期するようになる。
また、時刻について、GPSシステム9からの信号が受信できる環境では、現実競技者装着GPSモジュール31によって取得される時刻を使用し、GPSシステム9からの信号が受信できないときに、現実競技者装着時計34から時刻を読み取るようにしてもよい。
現実競技者装着モバイルデータ通信手段35は、通信回線8に接続されて、データの送受信が行えるように機能する。通信回線8への接続は、デジタル携帯電話回線を介して行ってもよいし、Wi−Fi(登録商標)を介して行ってもよい。
また、データの送受信は、通信回線8を介さず、無線通信のみで構成するようにしてもよい。
データの受け渡しは、通信でなくメモリを介して行うこともできる。例えば、レース中のすべてのデータを、メモリに記憶させておき、レース終了後に、そのメモリを取り出して、データの移動をするようにしてもよい。
現実競技者装着デバイス制御手段30は、CPU、主記憶部(RAM)、補助記憶部(フラッシュメモリ)などから構成され、この現実競技者装着デバイス3の全体が所望の動作を行うように制御する。
例えば、現実競技者装着GPSモジュール31、現実競技者装着ビデオカメラ32、現実競技装置センサ33からデータを取得したり、取得したデータをこの仮想競技システム1で取り扱える形式に加工したり、このようにして得られたデータを現実競技者装着モバイルデータ通信手段35から、システムサーバ2に向けて送信したりする。
<現実競技装置パラメータ>
現実競技装置である競技用自転車は、レースで最高の性能が発揮されるように、各部分の調整が行われる。この現実競技装置のセッティングの状態が、現実競技装置パラメータとして、記録される。
例えば、現実競技装置パラメータは、ペダルについては、クランクの長さ、ブレーキレバーについては、レバー変位量とブレーキパッドの変位量、ブレーキパッドの固さ、ブレーキパッドとタイヤとの摩擦係数、シフトレバーについては、シフト段数、ギア比、タイヤについては、タイヤ径、タイヤ幅、タイヤの溝形状であるトレッド形状、タイヤ空気圧、タイヤ材質、車輪軸とハブについては、車輪回転の摩擦係数、車体については、重量、重心位置、前輪と後輪の距離などから構成される。また、現実競技者の体重や身長なども、現実競技装置パラメータに含めるようにしてもよい。
現実競技装置パラメータは、上述したように、データベース記憶部23に記憶される。
<環境測定センサ4>
環境測定センサ4は、各種の環境センサなどから構成されており、競技コースの近くに設置されるなどして、レース中の環境を測定するために使用される。
図6には、環境測定センサ4の概略ブロック図が示されている。
この環境測定センサ4は、位置や時刻が算出される環境測定センサ側GPSモジュール41、温度計42、風向計43、風速計44、環境測定センサ側時計45、データの送受信を行う環境測定センサ側モバイルデータ通信手段46、環境測定センサ4の動作を制御する環境測定センサ側制御手段40などから構成されている。これらの環境センサは、一例であり、すべてを含む必要はなく、また、湿度、気圧などを測定する新たな環境センサを追加してもよい。この他に、路面温度や、路面摩擦係数などを測定するようにしてもよい。例えば、雨量計を備えていれば、雨天の場合の路面状況をより正確に検出することができ、路面とタイヤの摩擦の状態などをより厳密に取得することができる。
測定される環境データは、測定された位置や時間と関連づけられて、データベース記憶部23に、環境情報として記憶される。
環境測定センサ側制御手段40は、CPU、主記憶部、補助記憶部などから構成されおり、環境センサからのデータを読み取ったり、測定される環境データを環境測定センサ側モバイルデータ通信手段46から、システムサーバ2に向けて送信したりする。
レース環境の測定には、通常、複数の環境測定センサ4が使用される。
<ビデオカメラユニット5>
ビデオカメラユニット5は、競技コースの近くに設置されたり、観客席に設置されたり、競技場の屋根に設置されたり、中継車に搭載されたりして、レース映像を撮影するために使用される。
図7には、ビデオカメラユニット5の概略ブロック図が示されている。
このビデオカメラユニット5は、撮影位置や時刻を算出するビデオカメラユニット側GPSモジュール51、映像を撮影するビデオカメラ52、ビデオカメラユニット側時計53、映像のデータを送信するビデオカメラユニット側モバイルデータ通信手段54、このビデオカメラユニット5の動作を制御するビデオカメラユニット制御手段50などから構成されている。
撮影されるレース映像は、撮影位置や時間と関連づけられて、レース映像情報として、データベース記憶部23に記憶される。
上述したように、現実競技者装着ビデオカメラ32により撮影されるレース映像も、レース映像情報として、データベース記憶部23に記憶されるが、ビデオカメラユニット5により撮影される映像も同様に記憶されて、同様に取り扱われる。
複数のビデオカメラユニット5を設置することにより、様々な撮影位置からの映像が取得され、レースの全体像が記録できるようになる。
<仮想競技装置6>
仮想競技装置6は、仮想競技者が、疑似レースに参加するために使用される。
図8には、仮想競技装置6の概略ブロック図が示されている。
この仮想競技装置6は、仮想競技者が競技動作の入力を行う仮想競技装置競技動作入力手段61、入力負荷を発生させる入力負荷発生手段62、仮想競技者の入力を検出する仮想競技装置センサ63、疑似レース開始からの経過時間を計測するための仮想競技装置側時計64、データの送受信を行う仮想競技装置データ通信手段65、この仮想競技システム1の「表示手段」である仮想競技装置表示手段66、仮想競技者による設定操作などを受け付ける仮想競技装置設定受付手段67、この仮想競技装置6の動作を制御する仮想競技装置制御手段60などから構成されている。
図9には、自転車レース用の仮想競技装置6の概略モデル図が示されている。
この仮想競技装置6は、競技用自転車を模して作成された、仮想自転車用ペダル61a、仮想自転車用ブレーキレバー61b、仮想自転車用ハンドル61c、及び、仮想自転車用シフトレバー61dを含む、仮想競技装置競技動作入力手段61によって、仮想自転車用入力部が構成されている。
図10には、仮想競技装置競技動作入力手段61の概略ブロック図が示されており、仮想競技者が両足で踏圧して回転させることにより疑似レースにおける仮想競技者の位置を進行させる仮想自転車用ペダル61a、仮想競技者の速さを減速させるための仮想自転車用ブレーキレバー61b、仮想競技者の進行方向を変更させるための仮想自転車用ハンドル61c、仮想自転車用ペダル61aの回転と仮想競技者の進行量の関係を決めるギア比を変更するための仮想自転車用シフトレバー61dを含む構成になっている。
この仮想競技装置6によって、仮想的に現実競技装置の状態を再現できるように、仮想競技装置6を構成する各部分のセッティング状態が、仮想競技装置パラメータとして記録される。
図11には、自転車レース用の仮想競技装置パラメータ24aの一例が示されている。ペダル、ブレーキレバー、ハンドル、シフトレバー、タイヤ、車輪軸とハブ、車体、仮想競技者などの要素について、パラメータが設定される。これらは、上述した現実競技装置パラメータと多くの項目で一致している。
上述のように、仮想競技装置パラメータ24aは、仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶されるようになっている。
仮想競技装置パラメータ24aが設定されることにより、仮想競技装置6への入力に対して、仮想競技者の位置が算出できるようになる。
例えば、タイヤ径や、シフトレバーのシフト段、ギア比が設定されると、仮想自転車用ペダル61aの回転に対する仮想競技者の移動量が算出される。また、タイヤの空気圧によっても、仮想競技者の移動量に変化が生じる。
また、タイヤの材質によって、摩擦係数が異なるため、走行時の路面とタイヤの摩擦抵抗に違いが生ずる。路面とタイヤの摩擦抵抗について、直進時には抵抗として減速させる作用をし、コーナリング時には、グリップ力として、高速でカーブを走行できるように作用する。
また、車体の前輪と後輪の距離によっても、ハンドルを操作したときの挙動が異なる。
また、仮想競技者が移動している場合、仮想自転車用ペダル61aの回転を止めても、慣性によって仮想競技者の位置は、移動を続けるが、車輪軸とハブに関する車輪回転の摩擦係数に起因して、減速していく。
また、仮想競技者の身長などによっても、風などの環境に起因する影響が異なってくる。
このように、仮想競技装置パラメータ24aの各項目は、算出される仮想競技者の位置に影響を及ぼす。このため、それぞれの項目について、その影響をどのように反映させるかについて仮想競技装置パラメータ記憶部24に記録されている。
また、仮想競技装置パラメータ24aに設定されているペダルのクランクの長さ、ブレーキレバーの固さや遊びなどの状態、ハンドルの重さや高さ、サドル高さなどが、ハードウェアとして仮想競技装置6に再現されるようにすると、仮想競技者は、より現実に近いレース体験をすることができるようになる。
図9に示されている、入力負荷発生手段62は、仮想自転車用ペダル61aを回転させる際の重さを発生させるように機能する。入力負荷発生手段62は、負荷モータなどによって構成してもよい。この場合には、仮想自転車用ペダル61aとチェーンなどを介して接続し、負荷モータの回転負荷を制御することにより、所望の入力負荷を発生させることができる。
入力負荷発生手段62が発生する入力負荷は、疑似レースにおける仮想競技者の位置に応じて、現実のレースが再現されるように決定される。
この入力負荷の算出は、システムサーバ制御部20で行われ、算出された入力負荷の情報が、システムサーバ2から仮想競技装置6に向けて送信される。仮想競技装置6では、この入力負荷の情報を仮想競技装置データ通信手段65で受信して、仮想競技装置制御手段60がこの負荷を発生させるように、入力負荷発生手段62を制御するようになっている。
入力負荷の算出は、次のように行われる。
データベース記憶部23に記憶されている地形情報から、疑似レース中の仮想競技者の現在位置における路面状態を読み出すことができる。このようにして検出される路面の傾斜角度などと、仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶されているペダルクランプの長さ、タイヤ径、ギア比、仮想競技者の体重などの仮想競技装置パラメータ24aとを、用いて演算することにより、仮想自転車用ペダル61aの負荷が求められる。
また、データベース記憶部23に記憶されている環境情報から、風向や風速などの環境データを取り出して、入力負荷に環境の影響を反映させることもできる。
データベース記憶部23に記憶されている現実競技装置センサ情報には、現実自転車用ペダルトルクセンサ33bによって検出されたトルクのデータや、そのときの使用ギアなどの現実競技者の詳細な競技状態が記憶されている。また、実測位置情報には、現実競技者の実測位置が記憶されている。これらの情報から、競技コース上における現実競技者のペダルトルクの検出データを読み出すことができる。また、現実競技装置パラメータには、現実競技装置のセッティング状態が記憶されている。そして、仮想競技装置パラメータ24aには、仮想競技装置6のセッティング状態が記憶されている。セッティング状態を示す、ペダルクランプの長さ、タイヤ径、ギア比、競技者の体重などを比較して、現実競技者のペダルトルクの検出データを変換することにより、入力負荷を求めることもできる。
図9には図示されていないが、仮想競技装置6には、仮想競技者の競技動作の入力を検出するために複数種類のセンサから構成される仮想競技装置センサ63が設置されている。
図12には、自転車レース用の仮想競技装置センサ63が示されている。
この仮想競技装置センサ63は、仮想自転車用ペダル61aの回転数を検出する仮想自転車用ペダル回転数センサ63a、仮想自転車用ペダル61aにかかるトルクを検出する仮想自転車用ペダルトルクセンサ63b、仮想自転車用ブレーキレバー61bの変位量を検出する仮想自転車用ブレーキレバー変位量センサ63c、仮想自転車用ブレーキレバー61bにかかる力を検出する仮想自転車用ブレーキレバー力センサ63d、仮想自転車用ハンドル61cの回転角度を検出する仮想自転車用ハンドル角度センサ63e、仮想自転車用シフトレバー61dにより設定されるギアの状態を検出する仮想自転車用シフトレバーギアセンサ63f、仮想競技者重心位置検出センサ63gなどから構成されている。なお、これらのセンサをすべて含む必要はなく、また、これらと異なるセンサを追加してもよい。仮想競技者のレース中の身体状態を検出できるように、心拍数などのバイタルサイン情報を検出するセンサを追加してもよい。
仮想競技者重心位置検出センサ63gでは、仮想競技者の重心位置が検出される。現実の自転車では、コーナリングをする際、内側にバンク(傾斜)させて走行するが、仮想競技装置6では、検出される重心位置から傾斜角度を求めて、走行状態を算出するようになっている。
仮想競技者重心位置検出センサ63gは、仮想競技装置6のサドルの下に複数の力センサを平面状に配置して重心が検出されるように構成してもよいし、仮想競技者をカメラで撮影して、撮影画像から、画像処理によって重心位置が検出されるようにしてもよい。また、その他の方法で、重心位置を求めるようにしてもよい。
仮想競技装置センサ63から検出される情報が、仮想競技者による仮想競技装置6への競技動作の入力を検出して取得される仮想競技者入力情報を構成する。
また、仮想競技装置センサ63の各種のセンサから検出されるデータは、時間と関連づけられて、システムサーバ2に送信され、データベース記憶部23の仮想競技者競技結果情報として記憶される。
仮想自転車用ペダル回転数センサ63aから検出されるペダルの回転数と、仮想自転車用シフトレバーギアセンサ63fから検出されるシフト段と、仮想競技装置パラメータ24aに設定されているタイヤ径、タイヤ材質、ギア比などと、仮想競技装置パラメータ記憶部24の地形情報から読み取られる路面の傾斜、舗装状態などの路面状況などを用いることによって、仮想競技者の進行量が算出される。また、仮想競技者の速さも求めることができる。
例えば、路面が急な下り勾配の場合では、ペダルを回転させなくても、仮想競技者の速さが加速することなどもある。
また、仮想自転車用ハンドル角度センサ63eから検出されるハンドルの回転角度や、仮想競技者重心位置検出センサ63gから検出される仮想競技者の重心位置などに基づいて、仮想競技者の進行方向が算出される。
カーブを曲がるときには、重力加速度と遠心力が作用し、タイヤを路面に押し付ける力が増加して、路面とタイヤの摩擦抵抗が大きくなる。このため、直進運動エネルギが減少して、ペダルを回転させなければ速度が減少する。このように、自転車の傾斜角度は、仮想競技者の進行状態を算出する際に考慮される。仮想競技装置6では、仮想競技者の重心位置から傾斜角度を求めるようになっている。
また、仮想自転車用ブレーキレバー変位量センサ63cから検出されるレバー変位量と、仮想自転車用ブレーキレバー力センサ63dから検出されるレバーに作用する力の大きさと、仮想競技装置パラメータ24aに設定されているブレーキレバー変位量とブレーキパッド変位量の関係、ブレーキパッドの固さ、ブレーキパッドとタイヤホイールとの摩擦係数、車体と仮想競技者の重量などから、制動力が算出され、仮想競技者の減速の状態が求められる。
また、仮想自転車用ペダルトルクセンサ63bから検出されるトルクと、入力負荷発生手段62により発生させる入力負荷を比較して、フィードバック制御を行うことにより、仮想自転車用ペダル61aに作用する負荷を精度よく現実に近づけることができる。
仮想競技装置センサ63を構成しているセンサの種類と、上述した現実競技装置センサ33を構成するセンサの種類とは、その多くが一致している。そして、現実競技者のデータは、データベース記憶部23に現実競技装置センサ情報として記憶されている。また、実測位置情報として、実測位置も記憶されている。
現実競技装置センサ33のデータから現実競技者の位置を算出することもできるが、こうして算出される位置と、現実競技者の実測位置との差異は、センサ情報に基づいて算出される際に生ずる誤差に相当する。この位置の算出に伴って生ずる誤差の影響を、仮想競技者に適用して、算出される仮想競技者の位置を補正することもできる。
すなわち、仮想競技装置センサ63により検出されたデータと、現実競技装置センサ33により検出されたデータを、比較演算することより、算出の過程で生ずる仮想競技者の位置の誤差量を求めて、補正することができる。
例えば、競技コース上の同じ地点における、現実自転車用ペダル回転数センサ33aと仮想自転車用ペダル回転数センサ63aから検出されるペダルの回転数、現実自転車用シフトレバーギアセンサ33fと仮想自転車用シフトレバーギアセンサ63fから検出されるシフト段、現実自転車用ハンドル角度センサ33eと仮想自転車用ハンドル角度センサ63eから検出されるハンドルの回転角度、現実自転車用バンクセンサ33hから検出される傾斜角度と仮想競技者重心位置検出センサ63gから検出される重心位置、現実競技装置パラメータと仮想競技装置パラメータ24aに設定されているタイヤ径、ギア比などのセッティング状態などを比較して演算すると、現実競技者と仮想競技者の移動量の差異を算出できる。そして、この移動量の差異に基づいて、現実競技者の実測結果から求められた位置算出の過程で生ずる誤差量を、仮想競技者に適合するように修正し、これにより、仮想競技者の位置を補正することができる。
図9に示されているように、疑似レース中に、仮想競技者が表示を見ることができる位置に仮想競技装置表示手段66が配置されている。
仮想競技装置表示手段66としては、タッチパネル付きLCD(Liquid Crystal Display)を使用することができる。液晶以外にも、有機EL(Electro-Luminescence)などのその他の表示デバイスや、ヘッドマウントディスプレイなどを使用することもできる。
タッチパネル付きLCDは、画面の表示をするとともに、画面にタッチすることにより入力を行えるように機能する。この入力機能が、仮想競技装置設定受付手段67を構成している。なお、仮想競技装置設定受付手段67としては、画面とは別の位置に設けられているキーボードやマウスなどの入力デバイスにより構成してもよい。
仮想競技装置表示手段66には、疑似レースの設定を行う画面が表示されたり、レースの実行画面が表示されたりする。
例えば、仮想競技者が参加しようとする現実レースの開催場所や日程などを選択する画面が表示される。また、仮想競技装置6のセッティング状態を確認できるように、仮想競技装置パラメータ24aも表示される。
仮想競技装置パラメータ24aは、仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶されているため、システムサーバ2から送信されてくる。これを仮想競技装置データ通信手段65で受信して、仮想競技装置制御手段60が、受信した仮想競技装置パラメータ24aを仮想競技装置表示手段66に表示させる。
なお、仮想競技装置パラメータ24aは、仮想競技者が、仮想競技装置設定受付手段67に設定操作を行うことにより、変更することができる。変更された仮想競技装置パラメータ24aは、仮想競技装置データ通信手段65から、システムサーバ2に向けて送信され、受信するシステムサーバ2では、システムサーバ制御部20が、仮想競技装置パラメータ記憶部24を書き換えて記憶させる。このように、仮想競技装置設定受付手段67とシステムサーバ制御部20により、書き換えた仮想競技装置パラメータ24aを仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶させる「仮想競技装置パラメータ書換手段」が構成される。
仮想競技装置表示手段66には、疑似レース中に、仮想競技者の位置と現実競技者の位置が競技コース上に重ね合わせて表示される。
図13(a)には、レース画面の一例が概略的に示されている。この画面には、仮想競技者の視点から見たレース状況が表示されており、画面手前のハンドルと両手によって、仮想競技者の位置が示されている。また、前方を走行しているレーサーが、現実競技者の位置を示す表示である。このようにして、仮想競技者と現実競技者の正確な位置関係が表示されている。
データベース記憶部23に記憶されているレース映像情報から、レース開始からの経過時間における仮想競技者の位置に最も近い映像撮影位置のレース映像を取り出して、表示させる。そして、そのレース映像に仮想競技者の位置と、現実競技者の位置とを、レース開始からの経過時間を同期させて、重ね合わせるように合成して表示させている。
仮想競技者を示す表示は、CGで作成した画像を使用して表現している。他方、現実競技者を示す表示は、レース映像中の現実競技者の映像を使用してもよいし、CGで作成した画像を使用するようにしてもよい。
図13(b)には、レース画面のその他の例が概略的に示されている。
図13(b)では、地図上に、競技コースの経路と、仮想競技者と現実競技者の位置が表示されている。白抜きの×印が仮想競技者の位置を示し、塗り潰しの×印が現実競技者の位置を示している。このような形態でもレースを表示することができる。
また、仮想競技装置表示手段66には、仮想競技者のタイム、速さ、走行距離、順位などの仮想競技者の状況や、経路や勾配などの競技コースの情報も表示される。
なお、仮想競技装置表示手段66に表示される画面表示データは、システムサーバ制御部20で作成されて、システムサーバ2から、仮想競技装置6に向けて送信される。仮想競技装置6では、このデータを受信して、仮想競技装置制御手段60が、仮想競技装置表示手段66に表示させる。
図9に示されているように、仮想競技装置6は、温度や風速などの周囲環境を変化させる周囲環境生成装置7の内部に設置されている。
図14には、周囲環境生成装置7の概略ブロック図が示されている。
この周囲環境生成装置7は、温度を調節するエアコンディショナ71、風向や風速などを再現する送風機72、データの送受信をする周囲環境生成装置データ通信手段73、周囲環境生成装置7の全体を制御する周囲環境生成装置制御手段70を含むように構成されている。送風機72は、仮想競技装置6を取り囲むように複数配置されており、レース環境を再現するだけでなく、仮想競技者の速さに応じて、仮想競技者の受ける風圧などを再現する目的でも使用される。また、この他にも、湿度や気圧などを調整できるように機能を追加してもよい。
データベース記憶部23に記憶されている環境情報に基づいて、仮想競技装置6の周囲にレース環境が再現される。
<仮想競技システム1の使用方法>
次に、この実施の形態1に係る仮想競技システム1の使用方法について説明する。
図15には、この仮想競技システム1の使用方法を説明するフローチャートが示されている。
まず、システムサーバ2には、競技コースの地形情報や、レースに参加する現実競技装置の現実競技装置パラメータなどが、レース設定情報として入力される(S20ステップ)。これらのレース設定情報は、システムサーバ2に受け付けられて、システムサーバ制御部20が、データベース記憶部23に記憶させる。
レース前には、現実競技者と現実競技装置に、現実競技者装着デバイス3が装着される(S30ステップ)。
レースが開始すると、現実競技者装着デバイス3からは、現実競技者の実測位置、レース映像、現実競技装置の動作状態を検出する現実競技装置センサ33からのデータなどが取得される。このようにして得られる実測位置情報、レース映像情報、現実競技装置センサ情報などは、現実競技者装着モバイルデータ通信手段35から、システムサーバ2に向けて送信される(S31ステップ)。
システムサーバ2では、送信されてくる情報をシステムサーバデータ通信部22で受け付けて、システムサーバ制御部20が、データベース記憶部23に記憶させる(S21ステップ)。
また、レース中、環境測定センサ4では環境データが測定され、ビデオカメラユニット5ではレース映像が撮影される。これらの情報も、システムサーバ2に送信されて、データベース記憶部23に記憶される。
このようなレース情報の取得(S31ステップ)と受付(S21ステップ)が、レース終了まで繰り返される。こうすることにより、レース全体の情報が、データベース記憶部23に記憶され、保存される。
仮想競技者が、疑似レースに参加するときには、レースに先立って、仮想競技装置6の仮想競技装置設定受付手段67に、競技コース、レース開催日、仮想競技装置パラメータ24aなどを設定する(S60ステップ)。このように仮想競技者に入力設定される疑似レース設定情報は、仮想競技装置データ通信手段65から、システムサーバ2に向けて送信される。
システムサーバ2では、このようにして送信されてくる疑似レース設定情報を受け付けて(S22ステップ)、受け付けた設定に基づいて、現実のレースが再現されるように、疑似レースを構成する。
疑似レースが開始されると、システムサーバ制御部20は、仮想競技装置6の入力負荷を算出して、入力負荷を作動させるように仮想競技装置6に送信したり、仮想競技装置6から仮想競技者入力情報を受け付けて、仮想競技者の位置を算出したり、算出した仮想競技者の位置と、現実競技者の実測位置とを、レース開始からの経過時間を同期させて表示させるように、画面表示情報を仮想競技装置6に送信したりする(S23ステップ)。
入力負荷の算出は、仮想競技者のレース中の位置とデータベース記憶部23に記憶されている地形情報からコース路面を読み出して、仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶されているタイヤ径などの仮想競技装置パラメータ24aに基づいて、現実のレースに参加している状態が再現されるように行われる。
仮想競技者は、仮想競技装置6に競技動作の入力を行う(S61ステップ)。すなわち、入力負荷に抗して仮想自転車用ペダル61aを回転させて、競技コースから外れないように仮想自転車用ブレーキレバー61bや仮想自転車用ハンドル61cの操作を行う。また、仮想自転車用シフトレバー61dによって、シフト段を切り換えて、最適な走行状態を実現する。
仮想競技者によって行われる、仮想競技装置6への入力は、仮想競技装置センサ63で検出される。このようにして検出される情報が、仮想競技者入力情報となる。
検出される仮想競技者入力情報は、仮想競技装置データ通信手段65から、システムサーバ2に向けて送信される。
システムサーバ2では、受け付けた仮想競技者入力情報に基づいて、仮想競技者の位置が算出される。仮想自転車用ペダル61aの回転数、選択されているシフト段、仮想競技装置パラメータ24aに設定されているタイヤ径、ギア比などによって、仮想競技者の進行量が算出される。そして、仮想競技者の位置に算出される進行量を加えることで、位置が更新される。また、仮想自転車用ハンドル61cの回転角度などにより、進行方向が算出される。
システムサーバ制御部20では、算出された仮想競技者の位置と、実測位置情報としてデータベース記憶部23に記憶されている現実競技者の位置とを、仮想競技装置6に表示させるための画面が作成される。この画面は、データベース記憶部23にレース映像情報として記憶されているレース映像と、仮想競技者と現実競技者の位置が、合成表示されるように構成される。構成される画面では、仮想競技者と現実競技者の位置関係が、正しく反映されるように表示される。
このようにして作成される画面表示情報は、システムサーバデータ通信部22から、仮想競技装置6に向けて送信される。
仮想競技装置6では、この情報を受け付けて、仮想競技装置表示手段66に画面表示する。
疑似レースが終了するまで、仮想競技者によって仮想競技装置6への入力が継続され、そのレース状況が、仮想競技装置表示手段66に画面表示される。
<仮想競技システム1の効果>
次に、この実施の形態1に係る仮想競技システム1の効果を説明する。
この仮想競技システム1によれば、仮想競技装置6への競技動作の入力に基づいて、競技コース上の仮想競技者の位置が算出される際、現実の競技コースの地形情報や、仮想競技装置6を構成する各部分の設定を示す仮想競技装置パラメータ24aの影響が含まれるようになっている。そして、仮想競技装置パラメータ24aにより、仮想競技装置6が、レースに参加する現実の構成に関連づけられており、現実のレースにおける動きが再現されるようになっている。
このように、現実に近い形で再現されるようになっているため、仮想競技者は、仮想的に現実のレースを体験することができる。
また、実際と同じ競技動作によって、入力が行われる場合、仮想競技者は、現実のレースに参加するときと同じ疲労感を体験することができる。
さらに、仮想競技者の位置と、現実のレースにおける現実競技者の位置とが、レース開始からの経過時間を同期させて、合成して表示されるため、仮想競技者は、現実のレースにおける自らの順位などを、レースにあたかも参加したかのように臨場感を持って、体験的に確認することができる。
このように、仮想競技者は、現実と異なる場所や、異なる時間に、現実が再現されたレースに参加できるようになっている。
また、この仮想競技システム1によれば、仮想競技装置6への入力負荷が、地形情報や、仮想競技装置パラメータ24aの設定の影響も含めて、現実のレースを再現するようになっている。このため、仮想競技者は、現実のレースに参加している場合と同じ負荷を感じながら、仮想競技装置6に競技動作の入力を行い、また、同じ疲労を体験できるようになっている。
また、この仮想競技システム1によれば、仮想競技者の位置が、温度、風向き、風速を含む環境情報の影響を含めて、算出される。このため、仮想競技者は、現実のレースの環境を含めて、再現された中で、より現実に近いレース体験をすることができる。
また、この仮想競技システム1によれば、環境の影響を含むように、仮想競技装置6の入力負荷が算出されて、現実のレースにおける負荷が再現されるようになっている。このため、仮想競技者は、より現実に近いレース体験をすることができる。また、仮想競技者のレースにおける順位も、より現実に近い結果を反映することになる。
また、この仮想競技システム1によれば、競技コース上で撮影されたレース映像と、仮想競技者の位置と、現実競技者の位置とが、合成して表示される。あたかも現実のレースに参加しているかのような映像が表示されるため、仮想競技者は、臨場感を持って、現実のレースに参加しているような体験ができる。
また、この仮想競技システム1によれば、現実競技装置の動作状態を検出する現実競技装置センサ33からの情報や、現実競技装置を構成する各部分の設定を示す現実競技装置パラメータなどの影響も含めて、より現実に近づくように、仮想競技者の位置が算出されるようになっている。このため、仮想競技者は、現実競技者の現実の動きを反映させて、より現実に近い動きを体験することができる。
また、この仮想競技システム1によれば、現実競技装置センサ33からの情報や、現実競技装置パラメータなどを用いて、現実の負荷により近づくように、仮想競技装置6の入力負荷が算出される。このため、仮想競技者は、現実により近い状態の入力負荷を体験できる。
また、この仮想競技システム1によれば、仮想競技装置パラメータ24aを書き換えることができるようになっている。これにより、仮想競技者は、様々に仮想競技装置6の設定状態を変化させて、レースを体験することができる。設定を変化させながら、レースを繰り返すことにより、最適な仮想競技装置パラメータ24aの設定を選択することもできる。
また、この仮想競技システム1によれば、現実のレースの環境が、仮想競技装置6の周囲に再現される。このため、仮想競技者は、現実と同じ環境条件で、レースを体験することができる。
また、この仮想競技システム1によれば、競技として自転車レースが対象とされており、仮想競技者は、仮想的に現実の自転車レースを体験できる。
[発明の実施の形態2]
この発明の実施の形態2について、図16から図23を用いて説明する。
この実施の形態2では、競技として自動車レースを対象としている。上述した実施の形態1とは、競技の種類が異なるのみであり、仮想競技システム1の構成、使用方法、効果は、ほぼ同様となっている。
このため、実施の形態1と重複する要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
この実施の形態2に係る仮想競技システム1の全体構成は、図1に示されている概略ブロック図と同様であり、説明も同様である。
また、このシステム全体を管理するシステムサーバ2の構成も、図2に示されている概略ブロック図と同様であり、説明も同様である。データベース記憶部23に記憶される情報も、図3に示されている内容と同様である。現実競技者の情報を検出する現実競技者装着デバイス3の構成も、図4に示されている概略ブロック図と同様である。レースの環境を測定する環境測定センサ4も、図6に示されている概略ブロック図と同様である。レースの映像を撮影するビデオカメラユニット5も、図7に示されている概略ブロック図と同様である。疑似レースに参加する仮想競技者が競技動作の入力を行う仮想競技装置6も、図8に示されている概略ブロック図と同様である。仮想競技装置6の周囲の温度、風向き、風速を含む仮想競技装置周囲環境を変化させる周囲環境生成装置7も、図14に示されている概略ブロック図と同様である。
現実競技者や現実競技装置に装着されて、レース中の競技状態を取得するために使用される現実競技者装着デバイス3は、図4に示されているように、現実競技装置センサ33を含んでいる。現実競技装置センサ33は、競技の種類に応じて、必要とされるセンサ類が選択される。
競技が自動車レースの場合には、現実競技装置が、競技用自動車になる。図16には、競技用自動車についての現実競技装置センサ33の概略ブロック図が示されている。
この現実競技装置センサ33には、現実自動車用ステアリング角度センサ33m、現実自動車用ステアリングトルクセンサ33n、現実自動車用アクセルペダル変位量センサ33o、現実自動車用ブレーキペダル変位量センサ33p、現実自動車用クラッチペダル変位量センサ33q、現実自動車用シフトレバーギアセンサ33r、現実自動車用タイヤ回転数センサ33s、現実自動車用エンジン回転数センサ33tが含まれている。これらのセンサは、一例であり、これらのすべてのセンサを含む必要はなく、また、異なるセンサを追加してもよい。この他に、タイヤ空気圧、タイヤ温度、ローター温度、ブレーキパッド温度、水温、油温、油圧、燃料消費量、吸入空気温度、排気温度、速度、加速度などを検出するようにしてもよい。
現実競技装置センサ33の各種のセンサから検出されるデータは、検出した時間と関連づけられて、システムサーバ2に送信され、現実競技装置センサ情報としてデータベース記憶部23に記憶される。
データベース記憶部23には、現実競技装置を構成する各部分の設定を示す現実競技装置パラメータも記憶されている。この現実競技装置パラメータは、現実競技装置のセッティングの状態を示すものである。
例えば、現実競技装置パラメータは、ステアリングについては、ステアリング径、ステアリング回転角度とタイヤ回転角度の伝達関係、アクセルペダルについては、ペダル変位量とアクセル開度、ペダルの固さ、ペダルの遊び、ブレーキペダルについては、ペダル変位量と制動性能、ペダルの固さ、ペダルの遊び、ブレーキバランス、クラッチペダルについては、ペダル変位量とクラッチ性能、ペダルの固さ、ペダルの遊び、シフトレバーについては、シフト段数、ギア比、タイヤについては、タイヤ径、タイヤ幅、タイヤ空気圧、トレッド形状、タイヤ材質、車体については、重量、車高、サスペンション、車輪のトー、車輪のキャンバーなどから構成される。また、現実競技者の体重なども、現実競技装置パラメータに含めるようにしてもよい。
ブレーキバランスとは、フロントブレーキとリアブレーキのブレーキディスクに加わる圧力のバランスである。
サスペンションは、車両が移動するときのエネルギを吸収する。サスペンションのスプリングの強さによって、移動中の車両の重心の位置が変わってくるため、走行性能に影響する。
車輪のトーは、車両を上部から平面視したときの前輪の角度である。車輪のトーにより、車輪の進む方向が設定される。前方側を閉じるようにするトーインに設定すると、走行の安定性が高まる。一方、前方側を開くようにするトーアウトに設定すると、回頭性が高まる。
車輪のキャンバーは、車両を正面視したときの車輪の角度である。キャンバーが大きいほど、タイヤの接地面が少なくなるため、直線では高速になる。しかし、大きなキャンバーは、ブレーキング性能や加速性能を低下させる。通常、車輪の接地面側を開いて、正面視がハの字になるようにするネガティブキャンバーに設定される。
図17には、自動車レース用の仮想競技装置6の概略モデル図が示されている。
この仮想競技装置6は、競技用自動車を模して作成された、仮想自動車用ステアリング61m、仮想自動車用アクセルペダル61n、仮想自動車用ブレーキペダル61o、仮想自動車用クラッチペダル61p、及び、仮想自動車用シフトレバー61qを含む、仮想競技装置競技動作入力手段61によって、仮想自動車用入力部が構成されている。
図18には、仮想競技装置競技動作入力手段61の概略ブロック図が示されており、仮想競技者の進行方向を変更させる仮想自動車用ステアリング61m、踏み込むことにより疑似レースにおける仮想競技者の位置を進行させる仮想自動車用アクセルペダル61n、踏み込むことにより仮想競技者の速さを減速させる仮想自動車用ブレーキペダル61o、シフト段を変更可能とする仮想自動車用クラッチペダル61p、シフト段を切り換えて、ギア比を選択する仮想自動車用シフトレバー61qを含む構成になっている。
仮想競技装置6によって、仮想的に現実競技装置の状態を再現できるように、仮想競技装置6を構成する各部分のセッティング状態が、仮想競技装置パラメータとして記録される。
図19には、自動車レース用の仮想競技装置パラメータ24bの一例が示されている。ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル、シフトレバー、タイヤ、車体、仮想競技者などの要素について、パラメータが設定される。これらは、上述した現実競技装置パラメータと多くの項目で一致している。
仮想競技装置パラメータ24bは、仮想競技装置パラメータ記憶部24に記憶される。
仮想競技装置パラメータ24bが設定されることにより、仮想競技装置6への入力に対して、仮想競技者の位置が算出できるようになる。
例えば、アクセルペダルの変位量とアクセル開度が設定されると、アクセルペダルを踏み込んだときのエンジンの回転数を算出することができ、ギア比やタイヤ径が設定されると、仮想競技者の移動量が算出される。
また、ステアリング回転角度とタイヤ回転角度の伝達関係が設定されると、ステアリングを操作したときの仮想競技者の進行方向が算出される。
また、ブレーキペダルの変位量と制動性能が設定されると、仮想競技者の速さの減速量が算出される。
また、タイヤの材質の設定によって、摩擦係数が異なるため、走行時の路面とタイヤの摩擦抵抗に違いが生じる。この摩擦抵抗は、直進時には抵抗として減速させ、コーナリング時には、グリップ力として、高速での走行を可能にする。
このように、仮想競技装置パラメータ24bの各項目は、算出される仮想競技者の位置や速さに影響を及ぼす。このため、それぞれの項目について、その影響をどのように反映させるかについて仮想競技装置パラメータ記憶部24に記録されている。
また、仮想競技装置パラメータ24bに設定されているステアリング径や、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルの固さや遊びなどの状態が、ハードウェアとして仮想競技装置6に再現されるようにすると、仮想競技者は、より現実に近いレース体験をすることができる。
図9に示されている、入力負荷発生手段62は、仮想自動車用ステアリング61mを回転させる際の重さを発生させるように機能する。入力負荷発生手段62が発生する入力負荷は、疑似レースにおける仮想競技者の速さなどに応じて、現実のレースが再現されるように決定される。
この入力負荷の算出は、システムサーバ制御部20で行われ、算出された入力負荷の情報が、システムサーバ2から仮想競技装置6に向けて送信される。仮想競技装置6では、この入力負荷の情報を仮想競技装置データ通信手段65で受信して、仮想競技装置制御手段60がこの負荷を発生させるように、入力負荷発生手段62を制御するようになっている。
入力負荷の算出は、例えば、次のように行われる。
データベース記憶部23に記憶されている現実競技装置センサ情報には、現実自動車用ステアリングトルクセンサ33nによって検出されたトルクのデータや、そのときの現実競技者の詳細な競技状態が記憶されている。また、実測位置情報には、現実競技者の実測位置が記憶されている。これらの情報から、競技コース上における現実競技者のステアリングトルクの検出データを読み出すことができる。また、現実競技装置パラメータには、現実競技装置のセッティング状態が記憶されている。一方、仮想競技装置パラメータ24bには、仮想競技装置6のセッティング状態が記憶されている。これらのセッティング状態を比較して、現実競技者のステアリングトルクの検出データを利用することにより、入力負荷である仮想競技装置6のステアリングトルクを求めることができる。
図17には図示されていないが、仮想競技装置6には、仮想競技者の競技動作の入力を検出するために複数種類のセンサから構成される仮想競技装置センサ63が設置されている。
図20には、自動車レース用の仮想競技装置センサ63が示されている。
この仮想競技装置センサ63は、仮想自動車用ステアリング61mの回転角度を検出する仮想自動車用ステアリング角度センサ63m、仮想自動車用ステアリング61mのトルクを検出する仮想自動車用ステアリングトルクセンサ63n、仮想自動車用アクセルペダル61nの変位量を検出する仮想自動車用アクセルペダル変位量センサ63o、仮想自動車用ブレーキペダル61oの変位量を検出する仮想自動車用ブレーキペダル変位量センサ63p、仮想自動車用クラッチペダル61pの変位量を検出する仮想自動車用クラッチペダル変位量センサ63q、仮想自動車用シフトレバー61qにより設定されるギアの状態を検出する仮想自動車用シフトレバーギアセンサ63rを含むように構成されている。なお、これらのセンサをすべて含む必要はなく、また、これらと異なるセンサを追加してもよい。
仮想競技装置センサ63から検出される情報が、仮想競技者による仮想競技装置6への仮想競技者入力情報を構成する。また、仮想競技装置センサ63の各種のセンサから検出されるデータは、時間と関連づけられて、システムサーバ2に送信され、データベース記憶部23の仮想競技者競技結果情報として記憶される。
仮想自動車用アクセルペダル変位量センサ63oから検出されるペダル変位量と、仮想自動車用シフトレバーギアセンサ63rから検出されるシフト段と、仮想競技装置パラメータ24bに設定されているアクセルペダル変位量とアクセル開度、ギア比、タイヤ径、タイヤ材質などと、仮想競技装置パラメータ記憶部24の地形情報から読み取られる路面の傾斜や舗装状態などの路面状況を用いることによって、仮想競技者の進行量が算出される。また、仮想競技者の速さも求めることができる。
例えば、路面が上り勾配と下り勾配のときでは、アクセルペダルの変位量に対するエンジンの回転数が変わってくるため、それに応じて、仮想競技者の速さも異なってくる。
また、仮想自動車用ステアリング角度センサ63mから検出されるステアリング回転角度などに基づいて、仮想競技者の進行方向が算出される。
また、路面の舗装状態などによって、路面の摩擦が異なり、タイヤ材質により決まる摩擦係数との関係で、路面とタイヤの摩擦抵抗が算出される。これによって、直進時やコーナリング時の走行状態が変化する。
また、仮想自動車用ブレーキペダル変位量センサ63pから検出されるペダル変位量と、仮想競技装置パラメータ24bに設定されているブレーキペダル変位量と制動性能の関係、ブレーキバランス、車体の重量などから、制動力が算出され、仮想競技者の減速の状態が求められる。
また、仮想自動車用ステアリングトルクセンサ63nから検出されるトルクと、入力負荷発生手段62により発生させる入力負荷を比較して、フィードバック制御を行うことにより、仮想自動車用ステアリング61mに作用する負荷を精度よく現実に近づけることができる。
仮想競技装置センサ63と、上述した現実競技装置センサ33を構成するセンサの種類は、その多くが一致している。現実競技者のデータは、データベース記憶部23に現実競技装置センサ情報として記憶されており、実測位置情報として、実測位置も記憶されている。また、現実競技者の実測位置が分かれば、データベース記憶部23に記憶されている地形情報から路面の傾斜や舗装状況などの路面状態も読み取ることができる。
現実自動車用アクセルペダル変位量センサ33oで検出されるアクセルペダル変位量と、現実自動車用シフトレバーギアセンサ33rから検出されるシフト段と、現実自動車用エンジン回転数センサ33tで検出されるエンジン回転数と、現実競技装置パラメータに設定されているアクセルペダル変位量とアクセル開度の関係、ギア比、タイヤ径、タイヤ材質、車体重量などと、路面の状態などから、その位置における現実競技装置の状態を再現できる。
一方、疑似レース中の仮想競技者についても、そのときの状態が検出される。すなわち、仮想自動車用アクセルペダル変位量センサ63oからペダル変位量が検出され、仮想自動車用シフトレバーギアセンサ63rから選択されているシフト段が検出される。また、仮想競技装置パラメータ24bには、アクセルペダル変位量とアクセル開度の関係、ギア比、タイヤ径、タイヤ材質、車体重量などが設定されている。そして、仮想競技者の位置と地形情報から路面状態も読み取ることができる。
このようにして得られる現実競技者と仮想競技者のデータを比較して演算することにより、その時点のおける仮想自動車用アクセルペダル61nの変位量に対するエンジン回転数を算出して、仮想競技者の速さや位置を求めることもできる。
図17に示されているように、仮想競技装置6には、疑似レース中に、仮想競技者が表示を見ることができる位置に仮想競技装置表示手段66が配置されている。
仮想競技者が座るシートの脇には、疑似レースの設定を行える仮想競技装置設定受付手段67が配置されている。仮想競技装置設定受付手段67は、タッチパネル付きLCDなどの入力デバイスによって構成される。
仮想競技装置設定受付手段67には、現実レースの開催場所や日程などの画面が表示され、仮想競技者が参加しようとするレースを選択できるようになっている。また、仮想競技装置パラメータ24bが表示され、設定操作を行うことにより、変更することができるようになっている。
仮想競技装置表示手段66には、レースの状況が表示され、仮想競技者の位置と現実競技者の位置が競技コース上に重ね合わせて示される。
図21(a)には、レース画面の一例が概略的に示されている。この画面には、仮想競技者の視点から見たレース映像が表示されており、画面手前のステアリングによって、仮想競技者の位置が示されている。また、前方を走行している競技用自動車が、現実競技者の位置を示す表示である。このように、仮想競技者と現実競技者の正確な位置関係が表示される。
図21(b)にも、レース画面のその他の例が概略的に示されている。この画面には、競技コース脇の視点から見たレース映像が表示されており、前方を走行している車両が、仮想競技者の位置を示す表示であり、後方を走行している車両が現実競技者の位置を示す表示である。
図22にも、レース画面の例が概略的に示されている。この画面には、仮想競技者の視点から見たレース映像が表示されている。この図に示されているように、競技用自動車のコックピット(運転席)が忠実に再現され、より現実に近い映像になっている。このため、仮想競技者は、あたかもレースに参加しているかのような臨場感を体験することができる。仮想競技者の位置は、画面左端のステアリングと、そのステアリングを握る両手によって表示されている。また、この画面の前方には、競技コースの映像が表示されているのみであり、車両が表示されていない。これは、仮想競技者の視界の範囲に、車両が走行していないためであり、前方または後方を走行している現実競技者の位置が、画面の中央右下の表示領域に、現実競技者の競技用自動車の映像として表示されている。
また、画面の中央下部には、3個のメータが表示されている。中央は、仮想競技者の速さを表示するスピードメータ(速度計)、左側は、仮想競技者のエンジン回転数を表示するタコメータ(回転速度計)、右側は、仮想競技者が選択しているシフトレバーの位置を表示するシフトレバー位置表示メータと、燃料メータが示されている。これらのメータの表示は、仮想競技者の走行状態を反映するように変化する。
また、この画面の右端には、仮想競技者が仮想的に参加している現実レースの開催日や、天候、温度、風向き、風速、湿度が、表示されている。図22には示されていないが、仮想競技者の速さ、エンジン回転数、シフト段、順位なども表示されるようになっている。
図23にも、レース画面の例が概略的に示されている。この画面には、競技コース脇の視点から見たレース映像が表示されている。画面右端の先頭を走行している車両(バーチャルレーシングカー)が、仮想競技者の位置を示す表示である。この仮想競技者の車両の他に、3台の車両が表示されているが、リアルレーシングカーと表示されている先頭から2台目と4台目を走行している車両が現実競技者の位置を示す表示である。
また、先頭から3台目を走行している車両には、バーチャルレーシングカーの表示がされているが、これは、この疑似レースに、同時に参加している、他の仮想競技者の位置を表示している。このように、複数の仮想競技者が、同一の疑似レースを同時刻にスタートして、それぞれの位置を、画面に表示するようにしてもよい。こうすることにより、複数の仮想競技者の間でも競争を行うことができ、それぞれの位置が画面に表示されるため、互いの位置関係を把握しながら順位を争うことができるようになる。
以上のようなレース画面は、システムサーバ制御部20で作成され、仮想競技装置6に送信されて、仮想競技装置表示手段66に表示される。
データベース記憶部23に記憶されているレース映像情報から、レース開始からの経過時間における仮想競技者の位置に最も近い映像撮影位置のレース映像を取り出して、そのレース映像に仮想競技者の位置と、現実競技者の位置とを、レース開始からの経過時間を同期させて、重ね合わせるように合成して作成し、表示させている。
また、仮想競技装置表示手段66には、仮想競技者のタイム、速さ、走行距離、順位などの仮想競技者の状況や、経路や勾配などの競技コースの情報を表示させてもよい。
次に、この実施の形態2に係るこの仮想競技システム1の使用方法について説明する。使用方法についても、上述した実施の形態1と同様である。したがって、この実施の形態2に係る仮想競技システム1の使用方法を説明するフローチャートも、図15に示されているものと同様になる。
まず、システムサーバ2には、競技コースの地形情報や、現実競技装置の現実競技装置パラメータなどが、レース設定情報として入力される(S20ステップ)。
レース前には、現実競技者と現実競技装置に、現実競技者装着デバイス3が装着される(S30ステップ)。
レースが開始すると、現実競技者装着デバイス3からは、現実競技者の実測位置、レース映像、現実競技装置の動作状態を検出する現実競技装置センサ33からのデータなどが取得され、システムサーバ2に向けて送信される(S31ステップ)。
システムサーバ2では、送信されてくる情報をデータベース記憶部23に記憶する(S21ステップ)。
また、レース中、環境測定センサ4では環境データが測定され、ビデオカメラユニット5ではレース映像が撮影される。これらの情報も、システムサーバ2に送信されて、データベース記憶部23に記憶される。
このようなレース情報の取得(S31ステップ)と受付(S21ステップ)が、レース終了まで繰り返される。こうすることにより、レース全体の情報が、データベース記憶部23に記憶され、保存される。
仮想競技者が、疑似レースに参加するときには、レースに先立って、仮想競技装置6の仮想競技装置設定受付手段67に、競技コース、レース開催日、仮想競技装置パラメータ24bなどを設定する(S60ステップ)。
システムサーバ2では、送信されてくる疑似レース設定情報を受け付けて(S22ステップ)、受け付けた設定に基づいて、現実のレースが再現されるように、疑似レースを構成する。
疑似レースが開始されると、システムサーバ制御部20は、仮想競技装置6の入力負荷を算出して、入力負荷を作動させるように仮想競技装置6に送信したり、仮想競技装置6から仮想競技者入力情報を受け付けて、仮想競技者の位置を算出したり、算出した仮想競技者の位置と、現実競技者の実測位置とを、レース開始からの経過時間を同期させて表示させるように、画面表示情報を仮想競技装置6に送信したりする(S23ステップ)。
仮想競技者は、仮想競技装置6に競技動作の入力を行う(S61ステップ)。すなわち、競技コースから外れないように、仮想自動車用ステアリング61m、仮想自動車用アクセルペダル61n、仮想自動車用ブレーキペダル61oなどの操作を行う。
仮想競技者によって行われる、仮想競技装置6への入力は、仮想競技装置センサ63で検出され、これが仮想競技者入力情報となる。このように検出される仮想競技者入力情報は、システムサーバ2に向けて送信される。
システムサーバ2では、受け付けた仮想競技者入力情報に基づいて、仮想競技者の位置が算出される。そして、算出された仮想競技者の位置と、実測位置情報としてデータベース記憶部23に記憶されている現実競技者の位置とを、仮想競技装置6に表示させるための画面が作成される。このようにして作成される画面表示情報は、仮想競技装置6に向けて送信される。
仮想競技装置6では、この情報を受け付けて、仮想競技装置表示手段66に画面表示する。
疑似レースが終了するまで、仮想競技者の仮想競技装置6への入力が継続され、そのレース状況が、仮想競技装置表示手段66に画面表示される。
この実施の形態2に係る仮想競技システム1の効果は、上述した実施の形態1に係る仮想競技システム1の効果と同様である。
また、この実施の形態2に係る仮想競技システム1によれば、競技として自動車レースが対象とされており、仮想競技者は、仮想的に現実の自動車レースを体験できる。
[発明のその他の実施の形態]
なお、この仮想競技システム1は、自転車レースや自動車レースだけでなく、様々な種類の競技について適用することができる。例えば、スキー、オートバイ、トライアスロン、マラソンなどの競技についても適用することができる。
また、システムサーバ2の機能を、仮想競技装置6に含めるようにしてもよい。こうすることにより、システムの構成が簡素化される。また、システムサーバ2と仮想競技装置6の間のデータ通信を、通信回線8を介して行う必要がなくなるため、通信に伴う遅れの影響が軽減され、リアルタイム性が向上する。
また、この発明の実施の形態1と2では、仮想競技者による疑似レースが、現実のレースの開催後に、行われる形式で説明されているが、現実のレースと同時に、ライブで行われるようにしてもよい。
また、仮想競技装置6への競技動作の入力方法は、キーボード、ジョイスティック、キーパッド、マウスなどの入力デバイスにより行うようにしてもよい。こうすることにより、障害を持った人も、この仮想競技システム1によりレース体験をすることができる。
また、周囲環境生成装置7は、必須ではない。周囲環境生成装置7を伴わずに、この仮想競技システム1を構成することにより、システムが簡素化され、コストダウンすることができる。
また、GPSシステム9に代えて、GLONASS、Galileo、みちびき等のその他の衛星測位システムを使用することができる。
また、疑似レース中の仮想競技装置表示手段66の画面表示として、この発明の実施の形態1と2では、レース開始からの経過時間におけるレース映像、すなわちレース中に撮影されたレース映像に、仮想競技者の位置と現実競技者の位置が重ね合わせて表示される。
画面表示として、この他に、競技コース上の複数の画像撮影位置で、競技コースの画像であるコース画像を撮影して記憶させておき、疑似レース中、仮想競技者の位置に最も近い画像撮影位置のコース画像を取り出して、取り出したコース画像を仮想競技装置表示手段66に表示させ、仮想競技者の位置と、現実競技者の位置とを、コース画像に重ね合わせて表示させるようにしてもよい。
コース画像の撮影は、現実競技者装着ビデオカメラ32や、ビデオカメラユニット5を用いて行うことができる。
また、コース画像が撮影される画像撮影位置は、現実競技者装着GPSモジュール31や、ビデオカメラユニット側GPSモジュール51で算出される位置から取得されるようにすればよい。
また、コース画像の撮影は、レース中に限らず、レースの前後で行うようにしてもよい。
このような画面表示を実現するためには、図3に示されているデータベース記憶部23に、コース画像などを含むコース画像情報が、追加して記憶されるようにすればよい。
コース画像情報は、競技コース上の画像撮影位置とコース画像とが関連づけられるように、構成されており、位置が指定されると、そこから最も近い画像撮影位置で撮影されたコース画像が取り出されるようにすればよい。
仮想競技者が、疑似レースを開始すると、システムサーバ制御部20が、データベース記憶部23に記憶されているコース画像情報から、疑似レース中の仮想競技者の位置に最も近い画像撮影位置のコース画像を取り出して、取り出したコース画像を表示させ、そのコース画像に重ね合わせるように、仮想競技者の位置と、現実競技者の位置とを、表示させるようにすればよい。仮想競技者と現実競技者の表示は、CGにより画像を作成して、仮想競技者と現実競技者の位置関係が正しく表現されるようにコース画像の上にそれらの画像を重ねて表示させるようにすればよい。
このような画面表示を行うことにより、競技コース上で撮影されたコース画像が背景として表示され、仮想競技者の位置と現実競技者の位置が重ねて表示される。表示画面には、現実に近い画像が表示されるため、仮想競技者は、臨場感を持って、レースに参加することができる。
また、複数の仮想競技者が疑似レースに同時に参加するようにしてもよい。そして、それぞれの仮想競技者の位置を、画面に表示するようにしてもよい。こうすることにより、複数の仮想競技者の間で、互いの位置関係を確認しながら競争できるようになる。