しかしながら、従来用いられている点墨法では、墨汁が注入部位から拡散し、正確な切除範囲が同定できなくなることや、腹腔内に墨汁が漏出することで、腹膜炎を惹起することがある。また、上述のように術中内視鏡を併用する場合では、人的負担や経済的負担、手術時間の延長など患者に与える影響が大きい。
特に消化器癌領域においては、病変部位により術式が決定されるため、色素のみを用いたマーキングでは術式の選択が困難な場合もあり、不要な広範囲切除による患者への手術侵襲の増大と術後のQOLの低下に大きな影響を与えることが懸念される。
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて、簡便且つ安全に用いることができ、正確な病変部位及び切除範囲の同定が可能なRFタグマーカー、発光マーカー及びそれらの検出器を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
管腔に留置されるRFタグマーカーであって、
本体と、
上記本体に設けられる貫通部と
を有するRFタグマーカーに関する。
上記発明の一実施形態において、上記RFタグマーカーは、アンテナとメモリと制御回路とを有する。メモリと制御回路とをICチップで構成することができる。後述の検出器(例えば、リーダ/ライタ)が上記メモリの情報を読み/書きすることができる。
上記発明の一実施形態において、上記メモリは、識別情報を記録することができる。
上記発明の一実施形態において、上記貫通部は、上記本体を貫通する部位に設けられていてもよい。上記貫通部は、上記本体と隣り合うように連設されていてもよい。上記貫通部は、上記本体の少なくとも一方端に接続され、所定のすき間をあけて、上記本体を包むように設けられていてもよい。上記貫通部は、一つであってもよく、複数であってもよい。上記貫通部が、上記本体を貫通する部位に設けられている場合、上記貫通部は、上記本体の中央部又は中央部からずれた外側に設けることができる。RFタグマーカーを内視鏡用クリップ等に挿通し、その開閉アームを閉じた状態で鉗子チャンネル等に挿通可能であるために、上記貫通部は、上記本体の中央部からずれた外側に設けることが好ましい。上記のすき間は、内視鏡用クリップに挿通可能な程度に設けることができる。
上記発明の一実施形態において、内視鏡用クリップの開閉アームは、少なくとも1つの爪部を有している。上記貫通部は、内視鏡用クリップの爪部の少なくとも1つに挿通される。上記内視鏡用クリップは、上記爪部を複数有していてもよく、上記爪部の数は2つであっても3つであってもよい。また上記内視鏡用クリップは、さらにそれ以上の数の爪部を有していてもよい。上記発明の一実施形態において、上記貫通部は、上記内視鏡用クリップの爪部の少なくとも1つに挿通され得る。
上記爪部の遠位側の先端は、上記内視鏡用クリップの内方向(挟む方向)に突出した突出部を有していてもよい。上記突出部を有することにより、粘膜等の組織を掴みやすくなり、上記内視鏡用クリップが管腔の腸管壁に留置されやすくなる。
本明細書において、「遠位」とは、内視鏡等の操作者が操作する側から遠い側をいう。また、「近位」とは、上記操作者が操作する側から近い側をいう。
本明細書において、内視鏡用クリップの「内方向」とは、内視鏡用クリップの中心軸又は当該軸の延長線に向かう方向をいい、径方向における内方向を含む。
上記貫通部を、上記内視鏡用クリップの爪部に挿通させた場合、手術中の操作によって、RFタグマーカーが内視鏡用クリップから容易に外れないようにすることの観点から、上記貫通部は、上記内視鏡用クリップの開閉アームの爪部との接触面が、同等の大きさ又は少し小さい大きさを有していることが好ましい。このような構成により、上記RFタグマーカーは、あらゆる内視鏡用クリップの爪部に挿通可能となる。上記RFタグマーカーを上記内視鏡用クリップの爪部に挿通させることは、手術前に術者において行うことも可能であり、内視鏡用クリップの爪部にRFタグマーカーが予め挿通された状態で販売されることも可能である。
上記発明の一実施形態において、上記貫通部が、上記内視鏡用クリップの開閉アームの少なくとも1つの爪部に挿通される際に、上記本体は、上記内視鏡用クリップの開閉アーム内側に配置される。これにより、上記内視鏡用クリップの開閉アームが閉じている状態において、上記RFタグマーカーが上記内視鏡用クリップの開閉アームが閉じた状態の最大径より内側に位置することとなり、内視鏡の鉗子チャンネル等に挿通可能となる。
上記発明の一実施形態において、上記貫通部は、生体適合性材料により形成され得る。上記貫通部が、上記本体を貫通する部位に設けられている場合、上記RFタグマーカーにおける貫通部を含めた全外壁が、生体適合性材料により形成され得る。上記貫通部が、上記本体と隣り合うように連設されていているか、又は上記本体の少なくとも一方端に接続され、所定のすき間をあけて、上記本体を包むように設けられていている場合、上記貫通部は、フィルム材により形成され、このフィルム材が生体適合性材料により形成され得る。RFタグマーカーの全周囲を被覆する部位が生体適合性材料であってもよい。上記生体適合性材料は、シリコーン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、セロファン及びアセテートからなる群より選択される少なくとも1種である。
上記発明の一実施形態において、上記RFタグマーカーは、内視鏡の鉗子チャンネル(本明細書において鉗子孔ともいう)内に挿通可能なサイズである。また、RFタグマーカーを内視鏡用クリップにセットした状態で、RFタグマーカー及び内視鏡用クリップが、内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通可能なサイズであってもよい。RFタグマーカーを内視鏡の鉗子チャンネルを通る程度にまで小さくすることにより、臨床的な有用性を高め、内視鏡下に留置しやすい形態となる。
上記発明の一実施形態において、上記鉗子チャンネルの内径は、2mm〜10mmである。消化管内視鏡が用いられる場合は、上記鉗子チャンネルの内径は、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることが更に好ましい。従って、上記RFタグマーカーのサイズは、上記鉗子チャンネルの内径よりも小さいことが好ましい。RFタグマーカーの長手方向に直行する面の最大径は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが更に好ましく、3mm以下であることが特に好ましく、2mm以下であることが最も好ましい。限定はされないが、RFタグマーカーの上記本体は直方体の形状とすることができる。
上記発明の一実施形態において、上記RFタグマーカーは、内視鏡用クリップと共に腫瘍近傍に留置される。本明細書において、腫瘍の「近傍」とは、腫瘍の位置が特定できる程度に腫瘍から近いことをいう。留置位置が腫瘍から遠すぎると、病変部位の特定が不明確となり、腫瘍直上であると腫瘍組織を傷付ける可能性があるため好ましくない。留置位置は、病変部位の特定が明確である限りにおいて限定はされないが、例えば、腫瘍から3cm以内であることが好ましく、2cm以内であることがより好ましく、1cm以内であることが更に好ましい。
また、本発明は、上記RFタグマーカーがセットされた内視鏡用クリップであり得る。例えば、内視鏡用クリップの爪部がRFタグマーカーの貫通部に配置されていることで、RFタグマーカーが内視鏡用クリップにセットされる。
また、本発明は、上記RFタグマーカーと、上記内視鏡用クリップとを含む、キットであり得る。
また、本発明は、管腔内に留置されるRFタグマーカーを管腔外から検出する検出器であって、
上記RFタグマーカーと通信可能なアンテナとリーダとを有する検出部を有する、検出器に関する。
上記発明の一実施形態において、上記検出部は、上記検出部に設けられる支持部をさらに有していてもよい。上記支持部は、リジット状又はフレキシブル状とすることができる。限定はされないが、上記支持部がリジット状の場合は、上記支持部を棒状とすることができる。また、上記支持部がフレキシブル状である場合は、自在に曲げることができ、曲げた状態を保持できる構造であることが好ましい。
上記発明の一実施形態において、上記RFタグマーカーは、電磁誘導方式又は電波方式のパッシブタグである。
上記発明の一実施形態において、上記リーダは、上記RFタグマーカーが有するICチップの情報を読み取ることが可能である。
上記発明の一実施形態において、上記検出部は、さらにライタを有する。上記ライタにより、上記ICチップにデータを書き込むことが可能である。
上記発明の一実施形態において、上記検出器は、さらに電源を有する。
上記発明の一実施形態において、上記検出器は、さらにモニターを有する。
上記発明の一実施形態において、上記検出部は、上記リーダが上記ICチップの情報を読み取ったことを出力する通知部を有する。
上記発明の一実施形態において、上記通知部は、音又はモニター表示により検出を通知する。
上記発明の一実施形態において、上記検出部は、上記RFタグマーカーと、電磁誘導方式又は電波方式により通信する。
上記発明の一実施形態において、少なくとも上記検出部及び上記支持部は、腹腔鏡ポート(本明細書において、トロッカーとも呼ぶ)に挿通可能である。
上記発明の一実施形態において、上記腹腔鏡ポートの内径は、2mm〜20mmである。
上記発明の一実施形態において、少なくとも上記検出部及び上記支持部は、高温高圧蒸気滅菌可能に構成されている。
上記発明の一実施形態において、少なくとも上記検出部及び上記支持部の一部は、無酸素銅、シリコーン製、ポリカーボネート製、ポリプロピレン製、ポリオレフィン製、ポリサルホン製、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、テフロン(登録商標)製、ゴム状重合体製、又はポリ塩化ビニル製である。限定はされないが、検出部において、アンテナやリーダが配置されている基板を、上記のような高温高圧蒸気滅菌可能な材質で覆うことにより、検出器の本体を構成することが可能である。また、限定はされないが、支持部において、配線の被覆材を上記のような高温高圧蒸気滅菌可能な材質で構成することが可能である。本発明の効果を顕著に奏する観点から、少なくとも上記検出部及び上記支持部の一部は、無酸素銅又はシリコーンを用いることが好ましい。検出器の支持部に一定の柔軟性を付与する場合は、シリコーン製、ポリ塩化ビニル製等の柔軟性を有した絶縁皮膜を用いることが好ましい。
また、本発明は、
管腔に留置される発光マーカーであって、
ベース部と、
該ベース部に巻回されるコイルと、
該コイルと電気的に接続される発光部と、
少なくとも該ベース部と該コイルとを被覆するカバー部、とを有し、
該発光部が、可視光を発する光源を有する、発光マーカーに関する。
本明細書において、「発光マーカー」とは、可視光により留置位置が特定可能なものをいう。上記発光マーカーは、後述の検出器からの磁束又は電波が作用することで、電磁誘導又は共振によって、電流を発生させ、発光部へその電流を供給して、可視光を発する。
上記発光マーカーは、制御回路を有していてもよい。制御回路は、コイルと発光部との間に接続されることで、コイルから発光部へ供給される電流を制御することができる。限定はされないが、一定の電流値以下では、発光部へ電流を供給しないように設定をしておくことで、上記発光マーカーの検出可能距離を調整することが可能となる。上記発光部は、上記ベース部の一方端に設けられてもよい。
可視光の波長としては、限定はされないが、380nm〜780nmとすることができる。発光マーカーは腫瘍等の病変部を有する管腔に留置され、管腔外から後述の検出器で探知される。このため、可視光の色は、臓器の壁面を透過しやすいものが好ましく、例えば、赤色又は橙色とすることができる。また、臓器の壁面の透過性の観点から、可視光の波長は、600nm〜780nmとすることが可能であり、650nm〜770nmが好ましく、680nm〜760がより好ましく、700nm〜750nmが特に好ましい。
上記発明の一実施形態において、上記光源は、LEDであり得る。上記LEDは、発光部に収容され得る。上記発光部が管腔内でどの方向を向いていても、管腔外へ光が通過しやすいようにする観点から、上記発光部は、透明な材質により形成することが好ましい。限定はされないが、上記発光部は、透明な樹脂素材などにより形成することが可能である。透明な樹脂素材としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、パラキシリレン樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物等を用いることができる。光の拡散性を高める観点から、上記発光部には、拡散粒子を分散して配置することができる。拡散粒子としては、例えばシリカや石英の粉末を用いることができる。
限定はされないが、発光マーカーは、カバー部の外周に輪状に糸を括り付けることで、内視鏡用クリップにセットされ得る。発光マーカーは、内視鏡用クリップと共に内視鏡の鉗子チャンネルを挿通し、腫瘍近傍に留置され得る。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーは、さらに貫通部を有する。上記貫通部は、上記発光マーカーを貫通する部位に設けられていてもよい。上記貫通部は、上記発光マーカーと隣り合うように連設されていてもよい。上記貫通部は、上記発光マーカーの少なくとも一方端に接続され、所定のすき間をあけて、上記発光マーカーを包むように設けられていてもよい。上記貫通部は、一つであってもよく、複数であってもよい。上記貫通部が、上記発光マーカーを貫通する部位に設けられている場合、上記貫通部は、上記発光マーカーの中央部又は中央部からずれた外側に設けることができる。発光マーカーを内視鏡用クリップ等にセットし、その開閉アームを閉じた状態で鉗子チャンネル等に挿通可能であるために、上記貫通部は、上記発光マーカーの中央部からずれた外側に設けることが好ましい。上記のすき間は、内視鏡用クリップに挿通可能な程度に設けることができる。
上記発明の一実施形態において、上記カバー部は、高分子基剤により形成される。これにより、上記ベース部、コイル、発光部等が胃液や腸液に曝されることから保護できるため、短期〜長期の留置においても安全に利用できるようになる。上記高分子基剤は、シリコーン、ポリウレタン等を用いることが可能である。上記貫通部が上記発光マーカーを貫通する部位に設けられている場合は、その貫通部も高分子基剤で形成することができる。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーは、内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通可能なサイズである。また、上記発光マーカーを内視鏡用クリップにセットした状態で、上記発光マーカー及び内視鏡用クリップが、内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通可能なサイズであってもよい。発光マーカーを内視鏡の鉗子チャンネルを挿通可能な程度にまで小さくすることにより、臨床的な有用性を高め、内視鏡下に留置しやすい形態となる。上記発光マーカーは、公知の方法により、内視鏡用クリップに接続された状態で、内視鏡の鉗子チャンネルを挿通される。この貫通部を内視鏡用クリップの爪部で保持することにより、内視鏡手術時に発光マーカーを病変の近傍に留置することが可能である。また、限定はされないが、発光マーカーを内視鏡用クリップの一部に組み込むことにより、一体化して用いてもよい。
上記発明の一実施形態において、上記鉗子チャンネルの内径は、2mm〜10mmである。消化管内視鏡が用いられる場合は、上記鉗子チャンネルの内径は、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることが更に好ましい。従って、上記発光マーカーのサイズは、上記鉗子チャンネルの内径よりも小さいことが好ましい。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーは、円柱形状、直方体形状、立方体形状等とすることができる。上記発光マーカーの長手方向に直交する面の最大径は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが更に好ましく、3mm以下であることが特に好ましく、2mm以下であることが最も好ましい。また、上記発光マーカーの長手方向に直交する面の最大径は、2mm〜2.9mmとすることができ、2.2mm〜2.5mmとすることが好ましい。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーは、腫瘍近傍に留置される。留置位置が腫瘍から遠すぎると、病変部位の特定が不明確となり、腫瘍直上であると腫瘍組織を傷付ける可能性があるため好ましくない。留置位置は、病変部位の特定が明確である限りにおいて限定はされないが、例えば、腫瘍から3cm以内であることが好ましく、2cm以内であることがより好ましく、1cm以内であることが更に好ましい。上記発光マーカーは、腫瘍の位置を特定するため、腫瘍の近傍に2箇所以上留置して用いられ得る。例えば、腫瘍の両端に管腔の長手方向に沿って留置することが可能である。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーのベース部にメモリを有する。上記メモリには、識別情報を記録することができ、後述の検出器(例えば、リーダ/ライタ)が上記メモリの情報を読み/書きすることができる。
また、本発明は、上記発光マーカーと、内視鏡用クリップとを含む、キットであり得る。
また、本発明は、管腔内に留置された発光マーカーを管腔外から検出する検出器であって、上記発光マーカーのコイルと作用するアンテナを有する検出部を有する、検出器に関する。
上記発明の一実施形態において、上記検出部は、上記検出部に設けられる支持部をさらに有していてもよい。上記支持部は、リジット状又はフレキシブル状とすることができる。限定はされないが、上記支持部がリジット状の場合は、上記支持部を棒状とすることができる。また、上記支持部がフレキシブル状である場合は、自在に曲げることができ、曲げた状態を保持できる構造であることが好ましい。
上記発明の一実施形態において、上記アンテナはコイル式アンテナである。上記検出器からの磁束又は電波が上記発光マーカーに作用することで、電磁誘導又は共振によって、電流が発生する。上記発光マーカーの発光部へその電流を供給して、上記発光マーカーは可視光を発する。
上記発明の一実施形態において、上記検出器は、さらに電源を有する。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーがメモリを有する場合には、上記検出器は、さらにモニターを有することが好ましい。メモリから読みだした情報を検出器のモニターで表示することが可能となる。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーがメモリを有し、RFタグとしての機能を有していてもよい。
上記発明の一実施形態において、上記発光マーカーは、電磁誘導方式又は電波方式のパッシブタグであり得る。
上記発光マーカーがメモリを有する場合には、さらにメモリに対して情報を読み書きする制御回路を有していてもよい。
上記発明の一実施形態において、少なくとも上記検出部及び上記支持部は、腹腔鏡ポートに挿通可能である。
上記発明の一実施形態において、上記腹腔鏡ポートの内径は、2mm〜20mmである。
上記発明の一実施形態において、少なくとも上記検出部及び上記支持部は、高温高圧蒸気滅菌可能に構成されている。
上記発明の一実施形態において、少なくとも上記検出部及び上記支持部の一部は、無酸素銅、シリコーン製、ポリカーボネート製、ポリプロピレン製、ポリオレフィン製、ポリサルホン製、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、テフロン(登録商標)製、ゴム状重合体製、又はポリ塩化ビニル製である。限定はされないが、検出部において、アンテナやリーダが配置されている基板を、上記のような高温高圧蒸気滅菌可能な材質で覆うことにより、検出器の本体を構成することが可能である。また、限定はされないが、支持部において、配線の被覆材を上記のような高温高圧蒸気滅菌可能な材質で構成することが可能である。本発明の効果を顕著に奏する観点から、少なくとも上記検出部及び上記支持部の一部は、無酸素銅又はシリコーンを用いることが好ましい。検出器の支持部に一定の柔軟性を付与する場合は、シリコーン製、ポリ塩化ビニル製等の柔軟性を有した絶縁皮膜を用いることが好ましい。
本発明によれば、正確な病変部位及び切除範囲の同定が可能なRFタグマーカー、発光マーカー及びそれらの検出器を提供することができる。
以下、図を用いて本発明について説明する。
なお、以下の説明において、下記の実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることがある。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
(ICタグマーカー)
本発明のICタグマーカー1は、図1および図2に示すように、本体11と、本体11に設けられる貫通部15とを有する。本実施形態において、ICタグマーカー1は、管腔に留置して使用される。
本明細書において、管腔とは、小腸、大腸等の管を有する臓器の内側をいう。管腔を有する臓器は、特に限定はされないが、内視鏡により処置することが可能であることの観点から、消化管であることが好ましく、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸であることがより好ましく、胃、大腸、結腸、直腸であることが更に好ましい。
ICタグマーカー1は、図3に示すように、ICタグマーカー1の本体11の内部にICチップ12及びアンテナ13を有していてもよい。本明細書において、RFIDとは、Radio Frequency IDentificationの略称であり、電波等を用いてICタグマーカー内に記録されたデータを非接触にて読み書きするシステムをいう。ICタグマーカー1は、RFIDのシステムを用いて、ICチップ12のメモリに記録された識別情報を読み書きすることができる。
ICチップ12は、識別情報が記録されるメモリを有していてもよい。識別情報としては、限定はされないが、患者の氏名、性別、年齢等の患者のプライバシー情報、患者の過去の病歴及び/又は現在の病状(既往歴)、患者整理番号、術者の氏名、病院の名称、手術の日付、臓器名、留置位置の情報等が挙げられる。またICチップ12のメモリは、データを随時書き込むことも可能であるため、ICタグマーカー1を留置したまま切除された組織サンプルが、どのように保存されているか、どのように処理されているか等を記録して、トレーサビリティを担保することも可能である。
アンテナ13は、後述の検出器6と作用することにより生じる誘導電磁界又は電波により誘導起電力を得て作動することができる観点から、コイル式アンテナであることが好ましい。
ICチップ12は、制御回路を有していてもよい。制御回路は、コイルとメモリとの間に接続されることで、コイルから生じる誘導起電力を制御することができる。
ICタグマーカー1は、パッシブタグ(受動タグ)、アクティブタグ(能動タグ)又は双方を組み合せたセミアクティブタグのいずれをも用いることが可能であるが、電池を内蔵する必要がなく、ICタグマーカー1の本体11を小型化できることの観点から、パッシブタグが好ましい。ICタグマーカー1がパッシブタグとして用いられる場合、後述のアンテナ62からの電波等をエネルギー源として作動し、ICチップ12のメモリに記録されている識別情報をリーダ/ライタ61にて読み書きすることができる。
ICタグマーカー1で用いられる周波数帯は、本発明の効果が得られる範囲であれば、特に限定されないが、ISO/IECで標準化されている周波数帯が好ましく、例えば、130〜135KHz帯、13.56MHz帯、2.45GHz帯、860MHz〜960MHz帯、433MHz帯等を用いることができる。これらの中でも、ICタグマーカー1がパッシブタグとして用いられる場合、ICタグマーカー1で用いられる周波数帯は、130〜135KHz帯又は13.56MHz帯であることが好ましい。ICタグマーカー1で用いられる周波数帯を130〜135KHz帯又は13.56MHz帯とすることにより、周波数が比較的低いため、管腔内外の水分の影響を受けにくい状況で用いることが可能となる。ICタグマーカー1で用いられる周波数帯を130〜135KHz帯又は13.56MHzとすることにより、無線LAN等で用いられている2.45MHz帯、携帯電話等で用いられている860MHz〜960MHz帯等の既存のシステムと電波干渉することなく用いることが可能となる。
図1aに示されるように、内視鏡用処置具3は、近位側に支持部32及びスライダ33を有する。また、内視鏡用処置具3は、遠位側に保護シース31を有する。術者は、支持部32を持ち、スライダ33を操作することにより、保護シース31の先端部に装着された装置を操作することができる。
図1bは保護シース31の先端部の拡大図を示す。内視鏡用クリップ2は、クリップユニット22及び開閉アーム21を有する。図1bに示す一例では、開閉アーム21は2本の対となる爪部21a及び21bとからなる。また、爪部21a及び21bの遠位端には、内視鏡用クリップ2の内方向に突出した突出部23a及び23bを有する。内視鏡用クリップ2は、内視鏡用処置具3の保護シース31の先端に取り付けられ、1対の爪部21a及び21bは、内視鏡用処置具3のスライダ33を操作することにより開閉する。
内視鏡用クリップ2における1対の爪部21a及び21bの少なくとも片方に、ICタグマーカー1の貫通部15を挿通させることができる。図1bに示す一例では、ICタグマーカー1の貫通部15が、爪部21bに挿通されている。爪部21a及び21bの遠位端には、突出部23a及び23bを有するため、ICタグマーカー1が脱落しにくい。また、手術中の操作により、ICタグマーカー1が爪部21bから脱落することを防止するため、手術中は開閉アーム21を閉じた状態で操作することも可能である。手術中は開閉アーム21を閉じた状態で操作する等の観点から、ICタグマーカー1の長手方向の長さは、爪部21bの長さより短く設定することが好ましい。また、爪部21bの遠位端からICタグマーカー1が脱落することを防止する観点から、ICタグマーカー1の長手方向の長さは、爪部21bの遠位端にある突出部23bより短く設定することが好ましい。
図1cは、図1bにおけるX−X断面を示している。図1cに示す一例では、ICタグマーカー1の貫通部15は、ICタグマーカー1の本体11と隣り合った状態で上記本体11の外部に設けられている。貫通部15は、フィルム151等で構成されていてもよく、その内側に爪部21bが挿通している。手術中の操作により、ICタグマーカー1が爪部21bから脱落することを防止するため、貫通部15の内径は、爪部21bの太さに合わせて設定することができ、または爪部21bの太さに合わせて伸縮するように設定することができる。このような構成により、内視鏡用クリップ2は、様々な形状の内視鏡用クリップを用いることが可能となる。
図1b及び図1cに示す一例では、ICタグマーカー1の本体11は、内視鏡用クリップ2の開閉アーム21の内側に配置されている。具体的には、ICタグマーカー1の本体11は、1対の爪部21a及び21bの内方向に配置されている。このような構成により、図2aに示すように、内視鏡用クリップ2が内視鏡用処置具3の補助シース31の先端に取り付けられた状態で、内視鏡5の鉗子チャンネルの入口53を挿通する際に、ICタグマーカー1の本体11が妨げとならない。但し、ICタグマーカー1を内視鏡5の鉗子チャンネルに挿通する際に妨げとならない態様であれば、ICタグマーカー1の本体11を内視鏡用クリップ2の開閉アーム21の外側にセットすることも可能である。
図2aに示すように、内視鏡用処置具3の保護シース31の先端に取り付けられた内視鏡用クリップ2は、ICタグマーカー1を爪部21bに挿通された状態で、内視鏡5の鉗子チャンネル内を挿通し、病変部位まで送達される。具体的には、内視鏡用処置具3の保護シース31の先端に取り付けられた内視鏡用クリップ2は、内視鏡5の鉗子チャンネルの入口53から挿入され、鉗子チャンネルの出口51を通って病変部位まで送達される。図2bに示すように、術者が病変部位を確認し、切除部位を決定した後、所望の部位の管腔の内側42に、内視鏡用クリップ2の爪部21a及び21bの突出部23a及び23bを当て、内視鏡用処置具3を操作することにより、爪部21a及び21bを閉じる。限定はされないが、内視鏡用処置具3の更なる操作により、爪部21a及び21bは閉じた状態で固定され、内視鏡用クリップ2が補助シース31から離脱されることでICタグマーカー1が留置される構成とすることが好ましい。
ICタグマーカー1を留置する部位は、疾患の種類、疾患が存在している臓器や部位、その他の患者の状態によって決定され得る。例えば、癌が疑われる部位を切除する場合、切除する組織サンプルを傷付けることを避ける観点等から、癌が疑われる部位の近傍にICタグマーカー1を留置することができる。また、例えば、癌を切除する場合、開閉アーム21の爪部21a及び21bにより癌組織が傷付けられると、癌細胞が管腔内や血管に飛散する恐れがある観点等から、切除部位の近傍にICタグマーカー1を留置することができる。図2bでは、ICタグマーカー1が、内視鏡用クリップ2に挿通された状態で、腫瘍Cによる隆起の近傍C’に留置された状態を示している。この場合、管腔が消化管であれば、管腔内側42における粘膜部分に、ICタグマーカー1を留置することが可能である。
図4では、ICタグマーカー1の貫通部15の様々な実施形態を示している。具体的には、図4aでは、貫通部15が、ICタグマーカー1の本体11を貫通する部位に設けられている。図4aでは、貫通部15が、本体11の中央部からずれた外側の位置に存在することにより、もう片側にICチップ12やアンテナ13を配置することが可能となる。またこのような構成により、開閉アーム21の内側にICチップ12やアンテナ13を配置するようにICタグマーカー1を開閉アーム21の爪部21bに挿通することが可能となり、内視鏡5の鉗子チャンネルを挿通させる時にICタグマーカー1が妨げとなりにくい。
図4bでは、貫通部15が、ICタグマーカー1の本体11隣り合うように連設されていている。また、図4cでは、貫通部15が、所定のすき間をあけて、上記本体を包むように設けられていている。貫通部15が本体11の外部に位置する場合は、貫通部15は生体適合性材料により形成され得る。例えば、貫通部15がフィルム材151で形成されている場合、公知の方法により、筒状のフィルム材151をICタグマーカー1の本体11の側面に設けることができる。
(ICタグマーカーの別実施形態)
ICタグマーカー1は、貫通部15を有さない構成とすることも可能である。貫通部15は、管腔への留置を補助するための内視鏡用クリップ2等と連結させる際の連結部としての役割を有しているため、例えば、ICタグマーカーを内視鏡用クリップ2自体に組み込む場合には不要となる。よって、本発明の別の実施態様では、管腔に留置される内視鏡用クリップであって、アンテナとICチップを有するRFタグマーカーを有する内視鏡用クリップを提供することが可能である。
ICタグマーカーを内視鏡用クリップに付する態様は、本発明の効果を奏する限り、限定されないが、ICタグマーカーは、内視鏡用クリップの開閉アーム21又はクリップユニット22に設けることが可能である。ICタグマーカーが内視鏡用クリップに設けられる場合、内蔵する部位に限定はされないが、例えば、図2bにおいて示される内視鏡用クリップ2のクリップユニット22の内部又は外部に設けることが可能である。ICタグマーカーが設けられた内視鏡用クリップは、内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通可能なサイズであることが好ましい。ICタグマーカーは、貫通部15を有さない構成とした場合における内視鏡用クリップの構成や操作は上記に準じる。
(ICタグマーカーの検出器)
検出器6は、図5bに示されるように、ICタグマーカー1と通信可能なアンテナ62とリーダ61とを有する検出部60を備える。また、検出器6は、検出部60から伸びる支持部65を有していてもよい。本実施形態において、検出器6を用いることにより、管腔内に留置されたICタグマーカー1を管腔外から検出することができる。具体的には、腹腔鏡下手術において、検出器6を用いることにより、管腔内に留置されたICタグマーカー1を腸管の漿膜面から検出し、切除範囲を同定することが可能となる。
支持部65は、近位側に操作部66を有していてもよい。この操作部66を術者が握り、検出器6の位置や方向を操作することが可能である。また、支持部65は、近位側で電源67に接続されていてもよい。さらに、支持部65は、近位側に音発生部68及び/又はモニター69等の通知部を有していてもよい。検出器6が通知部を有していることにより、術者にICタグマーカー1の検出を音や光や画面表示により通知するよう構成できる。限定はされないが、検出器6が腸管の漿膜面からICタグマーカー1に近づくと、一定の距離まで近づくと音発生部68から音を発するように設定することができる。
検出器6は、電源67から電力を供給される。また検出器6は、ICタグマーカー1から、アンテナ62で受け取った信号をリーダ61で読み取る。管腔外から、管腔内に留置したICタグマーカー1を検出する場合において、検出器6がICタグマーカー1に近づくことによって、アンテナ62はICタグマーカー1から信号を検出することが可能となる。
検出器6がICタグマーカー1を検出できる範囲は、ICタグマーカー1やアンテナ62の種類や性能によって異なり、限定はされないが、例えば、ICタグマーカー1がパッシブタグとして用いられている場合は、腸管等の壁面や水分を介在した場合でも、少なくとも5cm以内とすることができる。正確にICタグマーカー1の位置を検出する観点から、検出範囲は、5cm以内であることが好ましく、3cm以内であることがより好ましい。また、検出範囲は、0cm以上(ICタグマーカー1とアンテナ62とが接触した状態)とすることができる。
電源67や通知部は、操作部66に内蔵されていてもよい。電源67が操作部66に内蔵される場合は、操作部66に充電池等の電池を配置することが可能である。限定はされないが、操作部66に電源67や音発生部68を内蔵させることにより、検出器6をコードレスで用いることが可能となる。
検出器6における検出部60は、更にライタ61を有していてもよい。この場合、ライタ61により、ICチップ12のメモリに情報を書き込むことが可能となる。例えば、切除された組織サンプルを保管する場合において、手術の日時、患者整理番号、臓器名、留置位置の情報、保管場所、検査結果等の情報をICチップ12のメモリに書き込むことができる。
図5cに示すように、腹腔鏡ポート7は、腹腔鏡下手術において腹壁Aに挿通されて用いられる。検出器6は、腹腔鏡ポート7に挿通されて、腹腔内に送達される。術者は検出器6を公知の方法により操作し、管腔内に留置されたICタグマーカー1の位置を検出する。検出器6は、X方向のように、管腔に沿ってICタグマーカー1に近づき、ICタグマーカー1を検出することができる。また、検出器6は、Y方向のように、管腔から離れた場所からICタグマーカー1に近づき、ICタグマーカー1を検出することもできる。図5cに示す一例では、ICタグマーカー1は腫瘍Cの近傍C’に留置されており、検出器6でICタグマーカー1を腸管の漿膜面(すなわち管腔外側41)から検出することで、切除範囲の同定を行うことが可能となる。
検出器6は、高温高圧蒸気滅菌可能に構成されていてもよい。この場合は、検出器6を安全に繰り返し利用することができる点で有用である。
ICタグマーカー1は、貫通部を有さない構成とする場合、別の実施形態として、管腔内に留置される内視鏡用クリップを管腔外から検出する検出器であって、アンテナとリーダとを有する検出部を有する検出器を提供することが可能である。検出器の具体的な構成や操作は、上記に準じる。
(発光マーカー)
図6aに示すように、本発明の発光マーカー8は、ベース部81と、ベース部81に巻回されるコイル82と、コイル82と電気的に接続される発光部83とを有する。発光部83は、ベース部81の一方端に設けられていてもよい。発光部83は、光源を有し、この光源にコイル82から電流が供給される。得られる電流は、コイル82の巻き数により調整することができる。コイル82の巻き径は、発光マーカー8が内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通できるサイズに調整される。
小電流でも発光することができる観点から、発光部83で用いられる光源としては、LED84が好ましい。光源としては、LEDの他に半導体レーザ、SLD(Superluminescent diode)でもよい。発光部83内でLED84は、コイル82と接続される。LED84は、発光部83内のいずれの位置にも配置することが可能であるが、より効率良く光を拡散させる観点から、発光部83の中央部が好ましい。発光マーカー8が内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通できるサイズであれば、発光マーカー8は、複数のコイル82及びLED84を備えていてもよい。
図6bに示すように、発光マーカー8は、ベース部81とコイル82と発光部83とが高分子基剤で構成されているカバー部9で被覆されている。コイル82がベース部81の外側面に巻き付けられている場合は、手術中や留置中に胃液や腸液に曝されることにより腐食する可能性がある。ベース部81とコイル82と発光部83との外側面をカバー部9で被覆することにより、胃液や腸液、又は物理的な刺激から保護することができるようになる。
図6c及び図6dは、発光マーカー8の回路を概念的に示した図である。発光マーカー8は、ベース部81にコイル82が巻回して設けられ、コイル82と電気的に接続される発光部84を有している。コイル82と発光部84との間に制御回路86が接続されていてもよい。検出器6が近づくにつれて発生する電流が大きくなり、これに伴い発光部84からの発光も強くなる。また、検出器6が遠ざかるにつれて、発生する電流が小さくなり、これに伴い発光部84からの発光も弱くなる。制御回路86は、定電流回路を含んでいてもよい。制御回路86は、コイル82で発生した電流をそのまま光源へ供給してもよい。また、制御回路86は、コイル82で発生した電流が所定範囲のしきい値であるときは、そのしきい値に相当する電流を供給してもよい。所定範囲のしきい値(下限〜上限)が複数設定されていてもよい。
図7では、発光マーカー8の貫通部85の様々な実施形態を示している。具体的には、図7aでは、貫通部85が、発光マーカー8を貫通する部位に設けられていている。図7aでは、貫通部85が、発光マーカー8の中央部からずれた外側の位置に存在する。図7bでは、貫通部85が、発光マーカー8と隣り合うように連設されていている。図7cでは、貫通部85が、発光マーカー8との間に所定のすき間をあけて、上記ベース部を包むように設けられている。貫通部85が発光マーカー8の外部に位置する場合は、貫通部85は生体適合性材料により形成され得る。例えば、貫通部85がフィルム材851で形成されている場合、公知の方法により、筒状のフィルム材851を発光マーカー8の側面に設けることができる。このような構成により、内視鏡用クリップ2に取り付けた際に、発光マーカー8と内視鏡用クリップ2とが直線的に直列して内視鏡5の鉗子チャンネルに挿通させることができるようになる。図7dでは、発光マーカー8に手術で用いられる糸88が括り付けられており、この糸88を輪状851に設けることで、貫通部85を形成している。
発光マーカー8は、貫通部85を有さない構成とすることも可能である。貫通部85は、管腔への留置を補助するための内視鏡用クリップ2等と連結させる際の連結部としての役割を有している。よって、例えば、発光マーカー8を内視鏡用クリップ2自体に組み込む場合には不要となる。本発明の別の実施態様では、管腔に留置される内視鏡用クリップであって、コイルと発光部とを有する発光マーカーを有する内視鏡用クリップを提供することが可能である。
図8aに示されるように、内視鏡用処置具3は、近位側に支持部32及びスライダ33を有する。また、内視鏡用処置具3は、遠位側に保護シース31を有する。術者は、支持部32を持ち、スライダ33を操作することにより、保護シース31の先端部に装着された内視鏡用クリップ2を操作することができる。図8aでは、内視鏡用クリップ2の爪部21aに発光マーカー8の貫通部85を挿通させている。
内視鏡用クリップ2における1対の爪部21a及び21bの少なくとも片方に、発光マーカー8の貫通部85を挿通させることができる。爪部21a及び21bの遠位端には、突出部23a及び23bを有するため、発光マーカー8が脱落しにくい。図8bに示す一例では、発光マーカー8の貫通部85が爪部21aに挿通された後、開閉アーム21が閉じ、発光マーカー8と内視鏡用クリップ2とが、直線的に直列して配置している。このように配置することで、発光マーカー8は内視鏡の鉗子チャンネルに挿通されやすくなる。図8cに示す一例のように、発光マーカー8は、内視鏡用クリップ2の開閉アーム21の内側に配置されていてもよい。発光マーカー8が、内視鏡用クリップ2の開閉アーム21の内側に配置される場合、発光マーカー8は、貫通部85を手術で用いられる糸で形成し、内視鏡用クリップ2における爪部21bにセットしてもよい。
内視鏡用処置具3の保護シース31の先端に取り付けられた内視鏡用クリップ2は、発光マーカー8を爪部21に挿通された状態で、内視鏡の鉗子チャンネル内を挿通し、病変部位まで送達され得る。内視鏡の操作と留置の方法については、ICタグマーカー1について図2aや図2bで説明した方法に準じる。
発光マーカー8を留置する部位は、疾患の種類、疾患が存在している臓器や部位、その他の患者の状態によって決定され得る。例えば、癌が疑われる部位を切除する場合、切除する組織サンプルを傷付けることを避ける観点等から、癌が疑われる部位の近傍に発光マーカー8を留置することができる。また、例えば、癌を切除する場合、開閉アーム21の爪部21a及び21bにより癌組織が傷付けられると、癌細胞が管腔内や血管に飛散する恐れがある観点等から、切除部位の近傍に発光マーカー8を留置することができる。図9では、発光マーカー8が、内視鏡用クリップ2に挿通された状態で、腫瘍Cによる隆起の近傍C’に留置された状態を示している。この場合、管腔が消化管であれば、管腔内側42における粘膜部分に、発光マーカー8を留置することが可能である。
(発光マーカーの別実施形態)
発光マーカーは、内視鏡用クリップに内蔵される態様で用いられてもよい。よって、本発明の別の実施態様では、管腔に留置される内視鏡用クリップであって、コイルと、上記コイルと電気的に接続される発光部、とを有し、上記発光部が、可視光を発する光源を有する、発光マーカーを有する内視鏡用クリップを提供することが可能である。上記コイルは、内視鏡用クリップの一部に巻回して設けられていてもよい。
発光マーカーを内視鏡用クリップに内蔵する態様は、本発明の効果を奏する限り、限定されないが、発光マーカーは、内視鏡用クリップの開閉アーム21又はクリップユニット22に設けることが可能である。発光マーカーは、例えば、図2bにおいて示される内視鏡用クリップ2のクリップユニット22の内部又は外部に設けることが可能である。発光マーカーが設けられた内視鏡用クリップは、内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通可能なサイズであることが好ましい。
発光マーカーを内視鏡用クリップに内蔵する場合、発光部は、内視鏡用クリップの一方端に設けられていてもよい。発光マーカーを有する内視鏡用クリップは、少なくともコイルと発光部とが高分子基剤で構成されるカバー部で被覆されていてもよい。その他、内視鏡用クリップに内蔵される発光マーカーの構造や操作方法については、上記の発光マーカーの説明に準じる。
(発光マーカーの検出器)
図9に示されるように、管腔内側42に留置された発光マーカー8は、管腔外側41(腸管の漿膜面)から、検出器6により検出される。検出器6が有するコイル式アンテナ62が近づくことにより、電磁誘導によりコイル82に電流が生じ、コイル82と電気的に接続されたLED84が発光する。検出器6は、X方向のように、管腔に沿って発光マーカー8に近づき、LED84を発光させることができる。また、検出器6は、Y方向のように、管腔から離れた場所から発光マーカー8に近づき、LED84を発光させることもできる。
上記発光マーカー8で用いられる周波数帯は、本発明の効果が得られる範囲であれば、特に限定されないが、ISO/IECで標準化されている周波数帯が好ましく、例えば、130〜135KHz帯、13.56MHz帯、2.45GHz帯、860MHz〜960MHz帯、433MHz帯等を用いることができる。発光マーカー8で用いられる周波数帯は、130〜135KHz帯又は13.56MHz帯であることが好ましい。発光マーカー8で用いられる周波数帯を130〜135KHz帯又は13.56MHz帯とすることにより、周波数が比較的低いため、管腔内外の水分の影響を受けにくい状況で用いることが可能となる。発光マーカー8で用いられる周波数帯を130〜135KHz帯又は13.56MHzとすることにより、無線LAN等で用いられている2.45MHz帯、携帯電話等で用いられている860MHz〜960MHz帯等の既存のシステムと電波干渉することなく用いることが可能となる。
図6dに示すように、別の実施形態では、発光マーカー8は、制御回路86及びメモリ87で構成されるICチップを有する。メモリ87には、識別情報を記録することができる。識別情報としては、限定はされないが、患者の氏名、性別、年齢等の患者のプライバシー情報、患者の過去の病歴及び/又は現在の病状(既往歴)、患者整理番号、術者の氏名、病院の名称、手術の日付、臓器名、留置位置の情報等が挙げられる。発光マーカー8がICチップを有する場合には、検出器6にリーダ/ライタを設けることにより、メモリ87の情報を読み/書きすることができる。メモリ87は、データを随時書き込むことも可能であるため、ICチップを有する発光マーカー8を留置したまま切除された組織サンプルが、どのように保存されているか、どのように処理されているか等を記録して、トレーサビリティを担保することも可能である。発光マーカー8に設けられるICチップの構造及び操作方法については、ICタグマーカー1の説明に準じる。制御回路86は、メモリ87に記録された情報を読み出し、その情報を信号としてコイル82を介して検出器6のリーダへ送る制御を行う。
(ICタグマーカー及び検出器の作成)
長手方向に直交する面の最大径が2mmであるICタグマーカーを作成した。このICタグマーカーは、貫通部が、上記本体を貫通する部位に設けられている。このICタグマーカーは、消化管内視鏡の鉗子チャンネル(径3mm)を介して消化管に送達され、市販されているマーキングクリップを介して腫瘍近傍に留置される。
また、検出部と、検出部から伸びる支持部とを有する検出器を作成した。この検出器は、長手方向に直交する面の最大径が10mmであり、12mmポートから腹腔内に挿入することができる。また、検出器の本体及び支持部が、シリコーンもしくは無酸素銅(いわゆる純銅)に絶縁皮膜を施しているため、高温高圧蒸気滅菌に対応している。
腹腔鏡下手術前に消化器内視鏡を用いて腫瘍近傍にICチップを内蔵したICタグマーカーを留置しておく。ICタグマーカーにはコイル式アンテナが内蔵されており、腹腔内から検出器のアンテナを近接させることによって、電磁誘導により、コイル式アンテナに電流が生じ、その電流がICチップに供給される。ICチップに記録された情報が、コイル式アンテナを解して検出器に送られ、リーダが情報を解析する。その解析結果に応じて、通知部が音を出力する。ICタグマーカーと検出器との検出距離は、肉片や水を介在した中で3cmまで可能であり、大腸の腸管壁の厚みは約10mmであることから、ICタグマーカーは検出器を用いて十分に検出可能である。
(豚モデルを用いたin vivo評価試験)
30kgの豚モデルの胃又は大腸内に、内視鏡カメラを用いて、上記のICタグマーカーを挿通したマーキングクリップを留置した。具体的には、ICタグマーカーの貫通部を、マーキングクリップ(ロングクリップ、HX−610−135L、オリンパス株式会社製)の開閉アームの爪部の一方に挿通させた。ICタグマーカーが挿通されたマーキングクリップを内視鏡用処置具の保護シース先端に取り付けた。保護シースの先端部分から内視鏡の鉗子孔を挿通させて、豚モデルの胃又は大腸内の粘膜に、ICタグマーカーが挿通されたマーキングクリップを留置した。留置後、内視鏡を豚モデルから取り出した。
豚モデルの腹部を一部切開し、12mmポートを取り付けた。12mmポートを介して、検出器を豚モデルの腹腔内に挿通し、留置したICタグマーカーを検索した。検出器のアンテナがICタグマーカーに近接することによって、検出器から音が発生した。ICタグマーカーと検出器との検出距離は、肉片や水を介在した中で3cmまで可能であり、正確に留置部位の特定が可能であった。
(ヒト組織を用いたICタグマーカーの検出評価試験)
大阪府立成人病センターの倫理委員会で承認を受けた後、ヒトの切除標本を用いて、ICタグマーカーと検出器との検出感度を評価した。切除した消化管組織(胃又は大腸、それぞれ3例ずつ)の粘膜面に、ICタグマーカーを留置し、漿膜面から検出器を近接させた。検出器は、ICタグマーカーに近接することで、電磁波をアンテナから感知し、音を発生させた。胃又は大腸の3例ともに正しく検出され、検出誤差は10mm以下であった。
(発光マーカー及び検出器の作成)
長手方向の寸法が12mmであり、長手方向に直交する面(直径)の寸法が3mmである、シリコーンの高分子基剤に被覆されて密閉された円柱形状の発光マーカーを作成した。LEDの色は、臓器の管腔壁を透過しやすい赤色を用いた。この発光マーカーは、消化管内視鏡の鉗子チャンネル(径3mm)を介して消化管に送達され、市販されているマーキングクリップを介して腫瘍近傍に留置される。
また、検出部を有する直方体状の検出器を作成した。この検出器は、長手方向に直交する面の最大径が10mmであり、12mmポートから腹腔内に挿入することができる。また、検出器の本体及び支持部が、シリコーンもしくは無酸素銅(いわゆる純銅)に絶縁皮膜を施しているため、高温高圧蒸気滅菌に対応している。
腹腔鏡下手術前に消化器内視鏡を用いて腫瘍近傍に発光マーカーを留置しておく。腹腔鏡下手術において、管腔外側から検出器が有するアンテナが近づくことにより、電磁誘導により、コイルに電流が生じ、その電流がLEDに供給される。検出器が近づくにつれて発生する電流が大きくなり、これに伴いLEDからの発光も強くなる。また、検出器が遠ざかるにつれて、発生する電流が小さくなり、これに伴いLEDからの発光も弱くなる。
(ヒト組織を用いた発光マーカーの検出評価試験)
大阪府立成人病センターの倫理委員会で承認を受けた後、ヒトの切除標本を用いて、発光マーカーと検出器との検出感度を評価した。切除した消化管組織(胃又は大腸、それぞれ3例ずつ)の粘膜面に、発光マーカーを留置した(図10a)。留置した発光マーカーが、消化管組織の粘膜面に包まれるようにした(図10b)。図10aは管腔内側を示し、図10bは管腔外側を示している。管腔の上方から発光マーカーへ徐々に検出器を近接させた。検出器が発光マーカーに近づくにつれて、コイルに発生する電流が大きくなり、これに伴ってLEDの発光が強まった(図10c〜図10d)。検出器から発光マーカーまでの距離が長い図10cでは、弱く発光(薄い赤色)し、検出器から発光マーカーまでの距離が短い図10dでは、強く発光(濃い赤色)していたことが、目視で確認された。胃又は大腸の3例ともに正しく検出され、検出誤差は5mm以下であった。