実施の形態1.
図1から図15を参照して、この発明の実施の形態1に係るモビルスーツの構造を説明する。これらの図では、モビルスーツ100を着用した着用者90が直立した姿勢をとる状態での図である。着用者90が直立した姿勢をとる状態を、基準状態と呼ぶ。図1および図2は、モビルスーツ100の前方または後方から見た斜視図である。図3および図4は、モビルスーツ100を人が着用した状態での前方または後方から見た斜視図である。モビルスーツ100の正面図、右側面図、平面図および底面図を、それぞれ図5、図6、図7および図8に示す。図9、図10および図11は、モビルスーツの腰から上の右側面図、後方から見た斜視図および前方から見た斜視図である。図12、図13および図14は、モビルスーツの腰から下の正面図、右側面図および前方から見た斜視図である。図15は、モビルスーツが有する腕部を示す拡大右側面図である。
モビルスーツ100の左右方向の軸をX軸とし、前後方向をY軸とし、高さ方向をZ軸とする。右から左への向きをX軸の正の向きとし、前から後への向きをY軸の正の向きとし、下から上への向きをZ軸の正の向きとする。
モビルスーツ100は、上体部1、荷物積載部2、腰部3、2本の脚部7、2本の腕部8および電子制御部9を有する。上体部1は、モビルスーツ100を着用する人である着用者90の上体を囲む。荷物を積載するための荷物積載部2は、上体部1の背中側に設けられる。腰部3は、上体部1の下方にあって上体部1を回転可能に支持する。2本の脚部7のそれぞれは、腰部3の左右に下に向かって接続する。2本の脚部7のそれぞれは、大腿部4、下腿部5および足部6を有する。大腿部4、下腿部5および足部6は、腰部3から直列に接続する。腕部8は、上体部2の前方に取り付けられる。電子制御部9は、上体部9の背中側に配置される。この明細書で、足とは足首よりも下の部分のことである。モビルスーツ100は、立ち上がる、歩くなどの動作を着用者がする際に着用者を補助する動作補助装置である。
図3および図4に示すように、着用者90の上体は上体部1の内部に位置する。上体部1の両側面から着用者90の腕が出で、上側からは頭が出る。腰部3は、着用者90の腰と連結される。大腿部4および下腿部5は、着用者90の外側に位置する。着用者90の足は、足部6の上側に固定される。着用者90は、腰と両足だけでモビルスーツ100と連結される。
上体部1は、2個の上体フレーム10、背部連結フレーム11、胸側バンド12および2個の積載部連結フレーム13を有する。上体フレーム10の外形は、側面から見ると長方形の上部に半円を下部に三角を加えた図形の形状である。前後方向から見ると、2個の上体フレーム10の間隔は、側面からみて長方形および半円の部分が、側面から見て三角の部分よりも狭くなっている。2個の上体フレーム10は、上側の間隔が狭い部分および下側の間隔の広い部分で、それぞれ平行である。上体フレーム10は、このような形状の外形になるように、断面が円筒のフレームが折れ曲がっている。他のフレームも、断面が円筒のフレームである。背部連結フレーム11は、2個の上体フレーム10を背中側で連結する。胸側バンド12は、2個の上体フレーム10を胸側で連結する。2個の積載部連結フレーム13のそれぞれは、2個の上体フレーム10のそれぞれから後側に出る。背部連結フレーム11は、2個の上体フレーム10の同じ高さの位置を連結する。背部連結フレーム11は、その中央部が下がるように折れ曲がった形状である。積載部連結フレーム13は、背部連結フレーム11と上体フレーム10の接続部付近で後側斜め下に突き出た短い棒状のフレームである。上体フレーム10は、積載部連結フレーム13と接続する位置の少し下で左右方向の外側に開く。胸側バンド12は、その中央部で分離および結合できる。上体フレーム10の上方前側の曲線部分に沿って、荷物などをかけるための肩掛け金具14が設けられている。肩掛け金具14は、その断面が凹部を有する形状である。
荷物積載部2は、後方から見ると略U字状のフレームである。U字の開いた側で、荷物積載部2は積載部連結フレーム13と接続する。積載部連結フレーム13の先端には、荷物積載部2の端が回転可能に接続する積載部接続部J1が設けられる。2個の積載部接続部J1は、同じ高さで同一直線上に設けられる。そのため、2個の積載部接続部J1を通る仮想的な回転軸(X軸に平行)の回りを、荷物積載部2が積載部連結フレーム13に対して回転できる。荷物積載部2が積載部連結フレーム13に対して回転できる角度には、上限がある。積載部接続部J1は、回転角度範囲を制限するストッパを有する。ストッパは、荷物積載部2が上体フレーム10に垂直になる角度以上は回転しないように積載部接続部J1の回転角度を制限する。なお、物体を積載するのではなく、物体を吊り下げる形で保持するようにしてもよい。荷物積載部2は、物体を保持する物体保持部である。荷物積載部2からの荷重は、上体部1により支えられる。
積載部接続部J1は、積載部連結フレーム13および荷物積載部2に設けられた穴を通る軸部材を両側から板状の部材で挟む構造である。軸部材を回転可能に保持する穴または突起が設けられた互いに対向する部材を、ヨークと呼ぶ。積載部接続部J1は、軸部材が回転する際の抵抗を低減するベアリングを有する。積載部連結フレーム13と荷物積載部2とを回転可能に接続するものであれば、積載部接続部J1は、どのようなものでもよい。以上のことは、2つの部材を回転可能に接続する他の接続部に関しても同様である。
腰部3は、板状の腰背面フレーム15、板状の腰前面フレーム16、および2本の腰連結ベルト17を有する。腰背面フレーム15は、着用者90の背中側に存在する。腰前面フレーム16は、着用者90の側面側および前面側に存在する。腰前面フレーム16は、腰背面フレーム15の中央部の2点で腰背面フレーム15と接続する。2本の腰連結ベルト17のそれぞれは、着用者90の体幹と接続される。体幹とは、人の体において腕、脚、首および頭を除いた部分である。腰背面フレーム15および腰前面フレーム16を上から見ると、腰背面フレーム15の中央部と腰前面フレーム16とで略楕円が形成される。腰部3の形状は、楕円と、その楕円の背面側で左右に腰背面フレーム15が出る形状である。
腰背面フレーム15および腰前面フレーム16の上端は、同一平面上にある。この平面を腰部基準面と呼ぶ。腰部基準面は、腰部3の形状を表現する上で基準となる面である。腰部基準面は、腰部3と上体部1および大腿部4との関係を規定する上も基準となる面として使用する。腰部基準面は、2個の上体フレーム10の下端を結ぶ直線すなわち上体部1の下端に平行である。なお、腰背面フレーム15および腰前面フレーム16の上端に高さの違いがあるため、上端すべてが存在するような平面が無い場合は、腰部基準面を腰部3の適切な位置に設定する。
2本の腰連結ベルト17は、着用者90を左右から挟み、着用者90が着ている衣服と連結する。腰連結ベルト17は、着用者90の体幹の移動に応じて腰部3を移動させる着用者動作伝達部である。また、腰連結ベルト17の腰背面フレーム15および腰前面フレーム16との接続部で発生する応力を検出する腰応力センサ17S(図示せず)が、腰連結ベルト17には設けられている。
上から見て腰前面フレーム16の左右方向に最も幅が広くなる位置の少し背中側の位置に、上体フレーム10と接続する2個の板状の上体接続突起18が上に向けて設けられている。上体接続突起18は平行であり、着用者90を挟んで対向している。上体接続突起18には、上体腰接続部J2が設けられる。上体腰接続部J2には、上体フレーム10の下側の三角形の頂点部分が回転可能に接続する。2個の上体腰接続部J2は、同じ高さで同一直線上に設けられる。そのため、2個の上体腰接続部J2を通る仮想的な回転軸(X軸に平行)の回りを、上体フレーム10を含む上体部1が腰前面フレーム16すなわち腰部3に対して回転できる。2個の上体腰接続部J2により構成される仮想的な回転軸を上体回転軸と呼ぶ。図10に点線で示す回転軸が上体回転軸である。上体回転軸は、腰部基準面と平行である。
腰背面フレーム15の左右方向の中央から後方に背面中央突起部19が設けられる。背面中央突起部19と背部連結フレーム11との間には、上体アクチュエータ20が設けられる。上体アクチュエータ20は、上体重心線が上体回転軸から決められた範囲内を通るように制御する。上体重心線とは、腰部3が上体部2から受ける荷重の重心である上体重心を通る鉛直な直線である。
背部連結フレーム11には、上体側リンク取付部J3が設けられる。上体側リンク取付部J3すなわち上体部1には、上体アクチュエータ20が有する長さが変更可能な上体駆動リンク20Lの一端が1回転自由度で回転可能に接続される。上体側リンク取付部J3は、背部連結フレーム11の中央に設けられる。
背面中央突起部19には、腰側リンク取付部J4が設けられる。腰側リンク取付部J4すなわち腰部3には、上体駆動リンク20Lの他端が1回転自由度で回転可能に接続される。上体側リンク取付部J3および腰側リンク取付部J4の回転軸は、X軸に平行である。上体駆動リンク20LはYZ平面上に存在する。
上体アクチュエータ20は、上体駆動リンク20Lと、電動機20Mとを有する。上体駆動リンク20Lは、その一端が上体側リンク取付部J3に回転可能に接続され、他端が腰側リンク取付部J4に回転可能に接続される。電動機20Mは、上体駆動リンク20Lの長さを変更する力を発生させる動力源である。上体駆動リンク20Lは、長さが変更可能な可変長リンクである。図には上体駆動リンク20Lおよび電動機20Mの符号を図示し、上体アクチュエータ20の符号は図示しない。他のアクチュエータに関しても同様である。
上体駆動リンク20Lには、荷重センサ21(図示せず)が設けられている。荷重センサ21は、上体駆動リンク20Lに働く圧縮力または引張力を計測する。上体アクチュエータ20は、荷重センサ21が計測する力の絶対値が決められた閾値未満になるように、上体駆動リンク20Lの長さを変化させる。圧縮力で閾値未満になるように、上体駆動リンク20Lの長さを変化させてもよい。そうすることで、上体重心線が上体回転軸から決められた範囲を通るようにできる。その理由は、上体重心線が上体回転軸を通る場合には、上体部2にかかる荷重はすべて上体腰接続部J2にかかり、上体駆動リンク20Lに働く力がゼロになるからである。上体駆動リンク20Lに働く力の絶対値が決められた閾値未満である場合は、閾値に対応する決められた上限距離未満の距離だけ上体回転軸から離れた位置を上体重心線が通ることになる。荷重センサ21以外の手段で、上体重心線が上体回転軸から決められた上限距離より近い範囲を通るかどうかを検出するようにしてもよい。
モビルスーツ100が有するアクチュエータは、動作させるかどうか、動作させる場合の動作モードを着用者90が決められる。ただし、上体アクチュエータ20は、積載部2に物体が載っている状態では、着用者90が動作をロックする(動作させなくする)操作はできないとする。
動作モードとしては、フルサポートモードと歩行モードがある。フルサポートモードでは、着用者90の動作を補助するように、モビルスーツ100の各アクチュエータが動作する。歩行モードでは、モビルスーツ100を着用者90が2足歩行ができるように各アクチュエータが動作する。
図16を参照して、上体駆動リンク20Lの構造を説明する。他のアクチュエータが有する可変長リンクも同様な構造である。図16は、アクチュエータが有する可変長リンクの構造を説明する断面図である。図16には、断面表示しない電動機20Mも示す。電動機20Mと円筒20Cとは、互いの位置関係が固定されている。上体アクチュエータ20は、ねじ棒20A、ナット20B、円筒20C、ナット位置固定部20D、ナット回転保持部20Eおよびナットギヤ20Fを有する。ねじ棒20Aは、側面に雄ねじが設けられた断面が円形の棒である。ナット20Bは、ねじ棒20Aとかみ合う雌ねじが内面に設けられた貫通穴を有する部材である。ねじ棒20Aとナット20Bとの間のねじは、ボールネジや台ねじなどの回転時の摩擦が小さいものを使用する。円筒20Cは、ねじ棒20Aの一部およびナット20Bを内部に収容する。ナット位置固定部20Dは、ねじ棒20Aの軸方向において円筒20Cに対するナット20Bの位置を固定する。ナット回転保持部20Eは、ナット20Bを円筒20Cに対して回転可能に保持する。ナットギヤ20Fは、ナット20Bと共に回転するギヤである。
ナット位置固定部20Dは、円筒20Cの周方向の内側に設けられた3つの突起である。ナット20Bの側にも、ナット20Bに対して軸方向に位置が固定された周方向の突起が設けられている。ナット20Bの側に設けられた突起は、ナット回転保持部20Eと、ナット回転保持部20Eとナットギヤ20Fの間に設けられた突起である。ナット位置固定部20Dは、ナット20Bの側の突起を挟むように設けられる。ナット位置固定部20Dは、ナット回転保持部20Eの両側と、ナットギヤ20Fと隣接する位置に、円筒20Cの周方向の突起として設けられる。ナット位置固定部20Dは、ねじ棒20Aの軸方向での円筒20Cに対するナット20Bの相対位置を固定するものであれば、どのようなものでもよい。ねじ棒20Aの軸方向は、円筒20Cの長さ方向でもある。
ナットギヤ20Fは、円筒20Cの外側に配置される。ナットギヤ20Fは、電動機20Mの回転軸に設けられた駆動ギヤ20Gとかみ合う。駆動ギヤ20Gが回転すると、ナットギヤ20Fおよびナット20Bが回転する。ナット20Bが回転すると、ナット20Bはねじ棒20Aに対して移動することになる。ナット20Bの位置は円筒20Cの長さ方向に対して固定されている。そのため、ナット20Bが回転すると、ねじ棒20Aがナット20Bおよび円筒20Cに対して移動する。電動機20Mの回転をナット20Bに伝えるために、ギヤではなくタイミングベルトなどを使用してもよい。
ねじ棒20Aの一端が、腰側リンク取付部J4により、背面中央突起部19すなわち腰部3に回転可能に取付けられる。円筒20Cの一端が、上体側リンク取付部J3により、背部連結フレーム11すなわち上体部1に取付けられる。ねじ棒20Aが円筒20Cから出る方向に移動すると、上体側リンク取付部J3と腰側リンク取付部J4の距離が長くなる。ねじ棒20Aが円筒20Cに入る方向に移動すると、上体側リンク取付部J3と腰側リンク取付部J4の距離が短くなる。このように、上体駆動リンク20Lはその長さが変更可能であり、その両端が取付けられる2点間の距離を変更できる。
上体駆動リンク20Lが有するねじ棒20Aの側の端は、腰部3ではなく、上体部1に取付けられてもよい。その場合には、円筒20Cは、腰部3に取付けられる。雄ねじが設けられたねじ棒20Aは、その一端が上体駆動リンク20Lの両端を取付けるための2個のリンク取付部のどちらかに取付けられる。円筒20Cの一端は、2個のリンク取付部の中で、ねじ棒20Aが取付けられていないリンク取付部に取付けられる。
ナット20Bは、ねじ棒20Aに設けられた雄ねじとかみ合う雌ねじが内面に設けられた貫通穴を有する。ナット20Bは、電動機20Mからの力が伝えられて回転する回転部材である。円筒20Cは、ねじ棒20Aおよびナット20Bを収容する筒である。ナット位置固定部20Dは、ねじ棒20Aの軸方向での円筒20Cに対するナット20Bの相対位置を固定する回転部材位置固定部である。ナット回転保持部20Eは、ナット20Bと円筒20Cの間に設けられて、ナット20Bを円筒20Cに対して回転可能に保持する回転部材保持部である。回転部材保持部を有するので、可変長リンクである上体駆動リンク20Lは軸方向の回りの回転を可能とする1回転自由度を有する。なお、上体駆動リンク20Lはその両端が1回転自由度で接続されるので、上体駆動リンク20Lをねじるような力はかからない。よって、上体駆動リンク20Lは、ナット回転保持部20Eを有しないものでもよい。
ねじ棒およびナットを収容する筒は、角筒でもよく、平面と曲面が組み合わさった形状の断面を持つものでもよい。長さ方向で筒の径が変化してもよい。ねじ棒の一端が回転可能に取り付けられ、筒または電動機の端を回転可能に取付けられるものであれば、可変長リンクの両端はどのような構造でもよい。取付具を介して筒または電動機側の端を取付けてもよい。筒の端部でない部分をリンク取付部に取付けてもよい。その場合には、リンク取付部に取付けられる筒の箇所までが可変長リンクであり、可変長リンクの一端がリンク取付部に取付けられることになる。
モビルスーツ100の腰部3の構造の説明に戻る。図8に示すように、腰背面フレーム15の左右の端には、開閉脚軸J5が設けられる。開閉脚軸J5は、脚部7を左右方向に開脚または閉脚するように回転させる回転軸である。開閉脚軸J5は、腰背面フレーム15の左右の端に設けられた軸が腰部基準面に垂直な円筒の中を、ベアリングを介して棒状の大腿開閉脚フレーム22が通る構成である。なお、開閉脚軸J5は腰部基準面に対して垂直でなくてもよく、左右が対称になるような位置で、腰部基準面に対して垂直に近く決められた角度で交差してもよい。開閉脚軸J5は、腰部3に大腿開閉脚フレーム22を回転可能に接続する。大腿開閉脚フレーム22は、腰部の左右に設けられた開閉脚軸J5のそれぞれに接続する大腿開閉脚部である。
図13に示すように、大腿開閉脚フレーム22は、開閉脚軸J5を通る部分の上下で折れ曲がっている。大腿開閉脚フレーム22は、開閉脚軸J5の下側で90度折れ曲がり、前方に伸び、上体腰接続部J2の下側付近で斜め上側に曲がる。斜め上側に曲がった大腿開閉脚フレーム22は、腰前面フレーム16の前後方向の少し後ろ側の位置まで、前方斜め上方向に延在する。大腿開閉脚フレーム22は、開閉脚軸J5の上側で90度折れ曲がり、短く後方に延在する。図7に示すように、大腿開閉脚フレーム22は、上から見るとほぼ1直線になるように延在する。
開閉脚軸J5を中心に大腿開閉脚フレーム22が回転することで、脚部7が左右方向に移動する。すなわち、脚部7が開脚したり閉脚したりする。開閉脚軸J5の回りに脚部7全体が向く方向を変更できるので、容易に歩く方向を変更できる。また、2足歩行で重心位置を左右の足の間で移動させることが容易になる。
大腿開閉脚フレーム22の背面側の端と腰背面フレーム15との間には、開閉脚バネ23が設けられる。開閉脚バネ23は、開閉脚軸J5を中心に大腿開閉脚フレーム22が回転した後で元の状態に戻す力を発生させる。大腿開閉脚フレーム22の背面側の端には、脚側バネ取付部J7が設けられる。脚側バネ取付部J7には、開閉脚バネ23の一端が回転可能に取付けられる。腰背面フレーム15の背面中央突起部19の左右の両側に、バネ取付用突起24が設けられる。バネ取付用突起24の先端には、腰側バネ取付部J8が設けられる。腰側バネ取付部J8には、開閉脚バネ23の他端が回転可能に取付けられる。開閉脚バネ23の強さは、着用者90の力により伸縮できるように、かつ外力が無くなった時に元の長さに戻れるように適切に調整しておく。
開閉脚バネ23は、長さが変更可能な腰部リンクである。脚側バネ取付部J7は、大腿開閉脚フレーム22に設けられた脚側腰部リンク取付部である。腰側バネ取付部J8は、腰部3に設けられた腰側腰部リンク取付部である。
大腿開閉脚フレーム22の上体腰接続部J2の下側付近で折れ曲がる部分には、股関節部J6が設けられる。股関節部J6は、大腿骨フレーム25の一端を大腿開閉脚フレーム22に回転可能に接続する。股関節部J6は、腰部基準面に平行な回転軸の回りに大腿骨フレーム25すなわち大腿部4が回転する。脚部7において1回転自由度で回転可能に接続する接続部では、回転軸はすべて股関節部J6の回転軸に平行である。
大腿骨フレーム25は、細長い板状の部材である。基準状態では、大腿骨フレーム25は前方斜め下に伸びて、大腿開閉脚フレーム22の前方側の端の真下あたりで下腿部5の一端と接続する。膝関節部J9は、大腿骨フレーム25の他端と下腿部5の一端とを接続する。板状の大腿骨フレーム25の他端は、直方体状の膝関節接続ブロック26に接続する。膝関節接続ブロック26は、2枚の膝側大腿板27で挟まれる。大腿骨フレーム25、膝関節接続ブロック26および膝側大腿板27は、股関節部J6の回転軸に平行な方向から見ると一直線になる。大腿骨フレーム25、膝関節接続ブロック26および膝側大腿板27は、一端が大腿開閉脚フレーム22に接続し他端が下腿部5に接続する大腿骨部を構成する。股関節部J6は、大腿骨部と大腿開閉脚フレーム22とがなす角度を変更可能に大腿骨部の一端を大腿開閉脚フレーム22に接続する。
大腿開閉脚フレーム22の前方側の端には、腰側大腿駆動リンク取付部J10が設けられる。腰側大腿駆動リンク取付部J10の取付位置は、股関節部から離れた位置である。腰側大腿駆動リンク取付部J10には、股関節部J6を中心に大腿骨フレーム25を回転させるための大腿駆動リンク28Lの一端が回転可能に取付けられる。長さが変更可能な可変長リンクである大腿駆動リンク28Lは、電動発電機28Mとともに大腿駆動アクチュエータ28を構成する。電動発電機28Mは、電力が供給されて大腿駆動リンク28Lのねじ棒28A(符号は図に示さない)を回転させる。電動発電機28Mは、ねじ棒28Aが回転すると、ねじ棒28Aにより回転させられて電力を発生させる。他の電動発電機も同様である。大腿駆動アクチュエータ28は、大腿駆動リンク28Lの長さが変化することを防止する長さロック機構28S(図示せず)を有する。長さロック機構28Sは、大腿駆動リンク28Lの長さが変化することを防止するための膝関節ロック部である。
大腿駆動リンク28Lの他端は、大腿側大腿駆動リンク取付部J11により大腿骨フレーム25に回転可能に取付けられる。大腿側大腿駆動リンク取付部J11は、大腿骨フレーム25に膝関節接続ブロック26が接続する位置よりも少し上側の位置に設けられる。大腿駆動リンク28Lの他端には、大腿骨フレーム25を挟む大腿膝側ヨーク29が設けられる。大腿膝側ヨーク29は、略U字状の断面を有する。大腿側大腿駆動リンク取付部J11は、大腿骨フレーム25および大腿膝側ヨーク29に設けられた貫通穴を軸部材が通る構造である。大腿膝側ヨーク29は、大腿駆動リンク28Lに対する角度が約120度になるように、大腿駆動リンク28Lの他端に設けられる。
図17により、大腿骨フレーム25が延在する方向を変更するためのリンク配置を説明する。図17は、モビルスーツの左の脚部での大腿骨部および膝関節部を動かすリンク配置を説明する模式図である。図17(A)が、リンク配置を模式的に表す平面図である。図17(B)が、リンク配置を模式的に表す右側面図である。腰部3の背面の左右に設けられた開閉脚軸J5により、大腿開閉脚フレーム22および大腿骨フレーム25が水平面内で回転できる。図17(A)では、開閉脚軸J5を楕円で表す。水平面内で回転した大腿開閉脚フレーム22および大腿骨フレーム25は、外力が無くなれば開閉脚バネ23により元の位置に戻る。大腿骨フレーム25は、股関節部J6を中心に回転できる。大腿駆動リンク28Lが短くなれば股関節部J6が前に回転し、大腿骨フレーム25が上がる。上がった大腿骨フレーム25は、大腿駆動リンク28Lが長くなれば股関節部J6が後に回転し、下がって元の位置に戻る。なお、大腿駆動リンク28Lの伸縮により、膝関節部J9の角度は変化しない。
膝関節部J9では、2枚の膝側大腿板27によるヨークが板状の下腿膝側ブロック30を挟む。2枚の膝側大腿板27と下腿膝側ブロック30には貫通孔が設けられており、その貫通穴を通る軸部材により、膝側大腿板27すなわち大腿骨部の他端に、下腿膝側ブロック30すなわち下腿部5の一端が回転可能に接続する。
下腿膝側ブロック30には、2本の下腿リンク31の一端が接続する。2本の下腿リンク31の他端は、下腿足首側ブロック32に接続する。下腿足首側ブロック32の下端には、下腿足首側ブロック32すなわち下腿部5に足部6を3回転自由度で回転可能に接続する足首関節部J16が設けられる。
下腿リンク31は、圧縮した(予圧された)気体が封入されたガススプリングである。予圧以下の圧縮力では、下腿リンク31の長さは変化しない。予圧より大きい圧縮力が下腿リンク31に加えられると、下腿リンク31は圧縮力の大きさに応じて縮む。つまり、下腿リンク31は、伸びることができず、気体を圧縮する圧力よりも大きな圧力が加えられた場合に縮むガススプリングである。そのため、足部6が着地した時に大きな力が発生する場合には、大きな力を下腿リンク31により吸収する。大きな力が下腿リンク31により吸収されるので、モビルスーツ100が損壊することは無い。図18は、下腿部を2本のガススプリングで構成することの効果を説明する図である。図18では、膝部を前方に動かす大きな外力が加えられた場合に、前側の下腿リンク31が大きく縮んで外力が吸収できることを示す。
足首関節部J16では、3回転自由度で回転可能である。足首関節部J16では、前後方向または左右方向に傾く回転、下腿部の回りの回転には、それぞれ許容限度がある。許容限度以上は回転しないように、足首関節部J16にはストッパが設けられる。特に大きく曲がりやすい前後方向に関しては、下腿部5が前後方向に配置した2本のガススプリングである下腿リンク31により、大きな外力が加わってもガススプリングが外力を負担するような構成としている。下腿リンク31の足首側は、下腿足首側ブロック32にピン接合されている。ストッパで許容される角度以上の角度で曲げようとする外力は、下腿リンク31に曲げ荷重としてかかる。曲げ荷重を受けた下腿リンク31は、曲がる先の側の下腿リンク31が短くなる。短くなることで、下腿リンク31の反力が大きくなる。下腿リンク31により、足首関節部J16の回りに、弾性回転力が働くことになる。下腿リンク31による弾性回転力が足首の回転負荷のダンパーの役目を果たし、下腿部5および足首関節部J16を衝撃などから保護する。
膝関節部J9には、膝関節駆動アクチュエータ33が設けられる。膝関節駆動アクチュエータ33は、膝側大腿板27すなわち大腿骨部と下腿膝側ブロック30すなわち下腿部5とがなす角度を変更するためのものである。膝関節駆動アクチュエータ33は、長さが変更可能な可変長リンクである膝関節駆動リンク33L、電動発電機33Mおよび長さロック機構33S(図示せず)を有して構成される。電動発電機33Mは、電動発電機28Mと同様に動作する。長さロック機構33Sは、膝関節駆動リンク33Lの長さが変化することを防止するための股関節ロック部である。
電動発電機28M、33Mを腰部3に近い側に配置している。そうすることで、膝関節部J9に近い側の空間を大きくできる。
大腿部4は、大腿開閉脚フレーム22、大腿骨フレーム25を含む大腿骨部、大腿駆動アクチュエータ28および膝関節駆動アクチュエータ33を有して構成される。
大腿骨フレーム25の腰部3側の後側に、板状の突起25Tが設けられる。突起25Tには、大腿側膝関節駆動リンク取付部J12が設けられる。大腿側膝関節駆動リンク取付部J12は、膝関節駆動リンク33Lの一端を突起25Tすなわち大腿骨部に回転可能に取付ける。大腿側膝関節駆動リンク取付部J12では、膝関節駆動リンク33Lの一端に設けられたヨークが突起25Tを挟む。ヨークおよび突起25Tに設けられた貫通穴に軸部材を通すことで、大腿側膝関節駆動リンク取付部J12は、膝関節駆動リンク33Lの一端を突起25Tに回転可能に取付ける。
膝関節駆動リンク33Lの他端は、膝関節部J10側で2個の補助具を使用して、膝関節接続ブロック26と下腿膝側ブロック30の両方に接続している。2個の補助具とは、大腿側補助具34と下腿側補助具35である。大腿側補助具34は、一端が膝関節駆動リンク33Lの他端に回転可能に取付けられる。大腿側補助具34の一端と膝関節駆動リンク33Lの他端が取付けられる箇所を、膝関節駆動リンク補助具接続部J13と呼ぶ。大腿側補助具34の他端は、大腿側補助具取付部J14に回転可能に取付けられる。大腿側補助具取付部J14は、膝関節接続ブロック26に設けられる。下腿側補助具35の一端も、膝関節駆動リンク補助具接続部J13すなわち膝関節駆動リンク33Lの他端に回転可能に取付けられる。下腿側補助具35の他端は、下腿側補助具取付部J15に回転可能に取付けられる。下腿側補助具取付部J15は、下腿部5が有する下腿膝側ブロック30に設けられる。
大腿側補助具34は、2個の板状のフレームの側面を連結した形状である。膝関節接続ブロック26には貫通穴が設けられている。また、大腿側補助具34の他端にも貫通穴が設けられている。大腿側補助具34が、それぞれの貫通穴の位置が一致するように膝関節接続ブロック26を挟む。大腿側補助具取付部J14は、大腿側補助具34および膝関節接続ブロック26の貫通穴を回転軸が通る構造である。大腿側補助具取付部J14は、大腿側補助具の他端が回転可能に取付けられるように大腿骨部に設けられる。
大腿側補助具34の反対側の一端は、膝関節駆動リンク補助具接続部J13で下腿側補助具35および膝関節駆動リンク33Lと1回転自由度で接続する。下腿側補助具35は、2個のフレームの側面を連結した形状である。膝関節駆動リンク補助具接続部J13では、大腿側補助具34が膝関節駆動リンク33Lを挟む。さらに、下腿側補助具35が、大腿側補助具34および膝関節駆動リンク33Lを挟む。この挟んだ箇所には、下腿側補助具35、大腿側補助具34および膝関節駆動リンク33Lに、それぞれ貫通穴が設けられる。それらの貫通穴を通る回転軸により、大腿側補助具34、下腿側補助具35および膝関節駆動リンク33Lは互いに1回転自由度で回転可能である。
下腿膝側ブロック30に、下腿側補助具取付部J15が設けられる。下腿側補助具取付部J15には、下腿側補助具35の一端が1回転自由度で回転可能に取付けられる。下腿側補助具取付部J15は、下腿膝側ブロック30に設けられた貫通穴と、下腿側補助具35に設けられた貫通穴とに、回転軸を通した構造である。下腿側補助具取付部J15により、下腿側補助具35は、下腿膝側ブロック30に1回転自由度で取付けられる。
膝関節部J10、大腿側膝関節駆動リンク取付部J12および大腿側補助具取付部J14は、膝関節接続ブロック26に固定されており、互いの相対的な位置関係は固定されている。下腿側補助具取付部J15は、下腿膝側ブロック30に固定されている。下腿側補助具取付部J15は、膝関節部J10からの距離が決まっている。膝関節駆動リンク補助具接続部J13は、大腿側補助具取付部J14および下腿側補助具取付部J15からの距離がそれぞれ決まっている。したがって、膝関節部J10の回転角度が決まると、パンタグラフのように大腿側補助具34と下腿側補助具35が動き、膝関節駆動リンク補助具接続部J13の位置が決まる。逆に、膝関節駆動リンク補助具接続部J13の位置が決まると、膝関節部J10の回転角度が決まる。
膝関節駆動リンク33Lの長さは、大腿側膝関節駆動リンク取付部J12と膝関節駆動リンク補助具接続部J13との間の距離である。よって、図17(B)に示すように、膝関節駆動リンク33Lの長さを変更することで、膝関節部J10の回転角度を変えることができる。膝関節駆動リンク33Lが長くなると、膝関節部J9での大腿骨部と下腿部5がなす角度が大きくなる。膝関節駆動リンク33Lが短くなると、膝関節部J9での大腿骨部と下腿部5がなす角度が小さくなる。なお、膝関節駆動リンク33Lの伸縮により、股関節部J6の角度は変化しない。
大腿側補助具34および下腿側補助具35を有するので、膝関節駆動リンク33Lの伸縮による力をパンタグラフのようにして大腿側補助具取付部J14および下腿側補助具取付部J15に伝えることができる。そのため、大腿骨部25と下腿部7とが平行に近くなるほどに膝関節部J9を大きく曲げた場合に、膝関節部J9を回転させる力を伝えやすくなる。その結果、膝関節駆動アクチュエータ33が発生する力が小さくても、膝関節部J9の屈伸運動をよりスムーズにできるようになる。膝関節駆動リンク33Lを下腿部5だけに接続してもよい。
下腿膝側ブロック30すなわち下腿部5の下端(他端)は、足首関節部J16により3回転自由度で回転可能に足部6に接続する。足首関節部J16は、基準状態では膝関節部J9よりも後方で股関節部J6よりも前方に存在する。
足部6は、足本体部6Aと下腿接続突起6Bを有する。足本体部6Aは、上から見ると角が丸い長方形の平板状の形状である。下腿接続突起6Bは、足本体部6Aの後方の左右方向の外側に接続する。足首関節部J16は、2枚の球面軸受が、球面を両側から挟む構造である。球面軸受は、下腿膝側ブロック30の下端の2枚の板の内面に設けられる。球面は、下腿接続突起6Bに設けられる。足部6は、足保持部6Cを有する。足保持部6Cは、着用者90の足とともに足部6が移動するように、着用者90の足を保持する。図をシンプルにするために、足保持部6Cは、サンダルのストラップのように図示している。足保持部6Cは、例えば、スキー靴をスキーに固定するような機構でもよい。着用者90の足とともに足部6が移動するようにするものであれば、足保持部6Cはどのようなものでもよい。足部6は、その底面が地面と接触している場合に、地面から受ける反力を検出する反力センサ6D(図示せず)を有する。
主に図15を参照して、腕部8の構造を説明する。腕部8は、腕回転棒36、上腕フレーム37、前腕フレーム38および手部39を有して構成される。腕回転棒36は、腕部8を水平面内で回転させるものである。上腕フレーム37の上側の一端は、腕回転棒36の上端に回転可能に接続される。肩関節部J18は、上腕フレーム37を腕回転棒36に回転可能に接続する。上腕フレーム37の下側の他端には、前腕フレーム38の上側の一端が回転可能に接続する。肘関節部J19は、前腕フレーム38を上腕フレーム37に回転可能に接続する。前腕フレーム38の下側の他端には、手部39が回転可能に接続する。手首関節部J20は、1回転自由度で回転可能に手部39を前腕フレーム38に接続する。手首関節部J20により、前腕フレーム38に平行な回転軸の回りに手部39は回転できる。基準状態では、上から下に上腕フレーム37、前腕フレーム38および手部39が配置される。肩関節部J18、肘関節部J19および手首関節部J20の回転角度を変更することで、物体を持ちやすい位置に持ちやすい角度で手部39を配置できる。なお、肩関節部J18および肘関節部J19の回転軸は平行である。
腕回転棒36は、断面が円筒である棒である。腕回転棒36は、概略はまっすぐな棒であるが、腕回転接続部J17を通る部分が少し平行移動したように折れ曲がった形状である。腕回転接続部J17は、腕回転棒36の外側に設けられた円筒である。腕回転棒36と腕回転接続部J17の間には、ベアリングを配置している。腕回転接続部J17は、上体フレーム10に着脱可能に取付けられる。腕回転接続部J17により、腕回転棒36は上体フレーム10に平行な回転軸(基準状態ではZ軸)の回りに回転できる。腕回転接続部J17が自由に回転できる状態と、回転できない状態とを切り替える腕回転ロック部36S(図示せず)を有する。腕回転棒36と上体フレーム10とは平行でなくてもよく、決められた角度であればよい。
上腕フレーム37は、折れ曲がった角柱状である。肩関節部J18は、上腕フレーム37の上端に設けられたヨークが、腕回転棒36の上端に設けられた板状の上腕接続突起40を挟む構造である。上腕フレーム37側のヨークが挟む軸部材が、上腕接続突起40に設けられた貫通穴を通ることで、上腕フレーム37は上腕接続突起40すなわち腕回転棒36に回転可能に取付けられる。
前腕フレーム38は板状である。肘関節部J19は、上腕フレーム37の下端に設けられたヨークが、前腕フレーム38を挟む構造である。上腕フレーム37側のヨークが挟む軸部材が、前腕フレーム38に設けられた貫通穴を通ることで、前腕フレーム38は上腕フレーム37に回転可能に取付けられる。
腕回転接続部J17は、上体部1に設けられた腕部保持部である。腕回転接続部J17は、腕部回転軸の回りに回転可能に腕部8を保持する。腕部回転軸は、上体部1に対して決められた角度を有するように設けられる。腕回転棒36は、腕回転接続部J17に保持される棒状の部分を有する腕基部である。上腕フレーム37は、腕回転棒36の上部に一端が接続される上腕部である。肩関節部J18は、上腕フレーム37と腕回転棒36とがなす角度を変更可能に上腕フレーム37の一端を腕回転棒36に接続する。前腕フレーム38は、上腕フレーム37の他端に接続される前腕部である。肘関節部J19は、前腕フレーム38と上腕フレーム37とがなす角度を変更可能に、前腕フレーム38の一端を上腕フレーム37の他端に接続する。手部39は、前腕フレーム38の他端に接続する。手首関節部J20は、手部39を前腕フレーム38の他端に接続する。手首関節部J20により、手部39は、前腕フレーム38に対して決められた角度を有する回転軸の回りに回転可能である。手首関節部J20は、手部39と前腕フレーム38との間の角度を変更できるように、2回転自由度または3回転自由度を持つものでもよい。
肩関節部J18を中心に上腕フレーム37を回転させるために、上腕駆動アクチュエータ41が設けられる。上腕駆動アクチュエータ41は、上腕フレーム37の後側に設けられる。上腕駆動アクチュエータ41は、上腕駆動リンク41L、電動機41Mおよび長さロック機構41S(図示せず)を有する。上腕駆動リンク41Lは、長さが変更可能な可変長リンクである。上腕駆動リンク41Lの上側の一端は、上腕フレーム37に回転可能に取付けられる。上腕駆動リンク41Lの下側の他端は、腕回転棒36の下端に回転可能に取付けられる。電動機41Mは、上腕駆動リンク41Lの長さを変更する力を発生させる上腕部動力源である。電動機41Mは、上腕駆動リンク41Lの左右方向の外側に設けられる。
上腕側上腕駆動リンク取付部J21は、上腕駆動リンク41Lの上側の一端を上腕フレーム37に回転可能に取付ける。上腕側上腕駆動リンク取付部J21は、上腕フレーム37に設けられたヨークが、直方体状のブロックを挟む構造である。直方体状のブロックは、上腕駆動リンク41Lのねじ棒側の先端に設けられる。ブロックには貫通穴が設けられている。上腕駆動リンク41L側のヨークで保持された軸部材が、ブロックの貫通穴を通ることで、上腕側上腕駆動リンク取付部J21は、上腕駆動リンク41Lの上側の一端を上腕フレーム37に回転可能に取付ける。
上体側上腕駆動リンク取付部J22は、上腕駆動リンク41Lの下側の他端を腕回転棒36の下端に回転可能に取付ける。上体側上腕駆動リンク取付部J22は、肩関節部J18よりも下側の位置に設けられる。上体側上腕駆動リンク取付部J22は、上腕駆動リンク41Lの筒側の端に設けられたヨークが、腕回転棒36の下端に設けられた板状の上腕駆動リンク接続突起42(図示せず)を挟む構造である。上腕駆動リンク接続突起42には貫通穴が設けられている。上腕駆動リンク41L側のヨークで保持された軸部材が、貫通穴を通る。そうすることで、上体側上腕駆動リンク取付部J22は、上腕駆動リンク41Lの下側の他端を上腕駆動リンク41Lに回転可能に取付ける。
長さロック機構41Sは、ラチェット機構を有し、前腕駆動リンク43Lの長さを両方向に変更できる状態、長くする方向にだけ変更できる状態および長さを変更できない状態を切り替える。腕部8を使用しない場合は、上腕駆動リンク41Lの長さは最短になっている。長さロック機構41Sを、長くなる方向にだけ変更できる状態にしておき、肩関節部J18が適切な角度になる位置に、上腕フレーム37を手で持って移動させる。適切な角度になれば、手を離しても上腕フレーム37はその位置を保持できる。予期せぬ力が加わって肩関節部J18の角度が変化しないように、肩関節部J18の角度が適切になれば、長さロック機構41Sは長さを変更できない状態にする。リモコンなどで電動機41Mを制御して、肩関節部J18の角度を適切な値に設定してもよい。長さロック機構41Sは、上腕駆動リンク41Lの長さが変化することを防止する上腕ロック部である。
肘関節部J19を中心に前腕フレーム38を回転させるために、前腕駆動アクチュエータ43が設けられる。前腕駆動アクチュエータ43は、上腕フレーム37の前側に設けられる。前腕駆動アクチュエータ43は、前腕駆動リンク43L、電動機43Mおよび長さロック機構43S(図示せず)を有する。前腕駆動リンク43Lは、長さが変更可能な可変長リンクである。前腕駆動リンク43Lの上側の一端は、上腕フレーム37に回転可能に取付けられる。前腕駆動リンク43Lの下側の他端は、前腕フレーム38に回転可能に取付けられる。電動機43Mは、前腕駆動リンク43Lの長さを変更する力を発生させる前腕部動力源である。電動機43Mは、前腕駆動リンク43Lの左右方向の内側に設けられる。着用者90の前方で電動機41Mよりも着用者90から遠い側に存在する電動機43Mを左右方向の中央側に配置することで、着用者90から電動機43Mまたは電動機41Mまでの距離を大きくできる。そのため、上体部1の前方で、着用者90が動ける空間を大きくできる。
上腕側前腕駆動リンク取付部J23は、前腕駆動リンク43Lの上側の一端を上腕フレーム37に回転可能に取付ける。上腕側前腕駆動リンク取付部J23は、上腕フレーム37に設けられたヨークが、前腕駆動リンク43Lの筒側の先端に設けられた直方体状のブロックを挟む構造である。前腕駆動リンク43Lの先端のブロックには貫通穴が設けられている。上腕駆動リンク41L側のヨークで保持された軸部材が、ブロックの貫通穴を通ることで、上腕側前腕駆動リンク取付部J23前腕駆動リンク43Lの上側の一端を上腕駆動リンク41Lに回転可能に取付ける。
前腕側前腕駆動リンク取付部J24は、前腕駆動リンク43Lの下側の他端を前腕フレーム38の手首関節部J20に近い部分に回転可能に取付ける。前腕側前腕駆動リンク取付部J24は、前腕駆動リンク43Lのねじ棒側の端に設けられたヨークが、板状の前腕フレーム38を挟む構造である。前腕フレーム38には貫通穴が設けられている。前腕駆動リンク側のヨークで保持された軸部材が、前腕フレーム38が有する貫通穴を通る。そうすることで、前腕側前腕駆動リンク取付部J24は、前腕駆動リンク43Lの下側の他端を前腕フレーム38に回転可能に取付ける。
長さロック機構43Sは、長さロック機構41Sと同様な構造および機能を有する。肘関節部J19の角度も、肩関節部J18と同様にして適切な値に設定する。肩関節部J18と肘関節部J19との角度を同時に設定するようにしてもよい。長さロック機構43Sは、前腕駆動リンク43Lの長さが変化することを防止する前腕ロック部である。
図19により、腕部8の位置と方向を変更するためのリンク配置を説明する。図19(A)に、上側から見たリンク配置を示す。図19(B)に、腕部8に垂直な方向から見たリンク配置を示す。図19(A)に示すように、腕回転接続部J17の回りを腕回転棒36が回転することで、腕回転棒36とともに上腕フレーム37、前腕フレームおよび手部39が回転する。上体部1が直立している場合は、腕部8がZ軸の回りを回転することになる。図19(B)に示すように、上腕駆動リンク41Lを長くすると上腕フレーム37が上がり、短くすると上腕フレーム37が下がる。前腕駆動リンク43Lを長くすると前腕フレーム38と上腕フレーム37との間の角度が小さくなり、短くすると前腕フレーム38と上腕フレーム37との間の角度が小さくなる。
手首関節部J20では、前腕フレーム38に平行な回転軸の回りを回転する回転部材が前腕フレームの他端に設けられている。回転部材には、手部39が取付けられる手首板部44(符号を図15に図示)が接続する。手首板部44は、長方形の板状である。回転部材により、手部39は前腕フレーム38の回りに回転できる。手首関節部J20は、手首回転ロック部44S(図示せず)を有する。手首回転ロック部44Sは、前腕フレーム38に平行な回転軸の回りに手部39が回転できる状態と回転できない状態を切替える。
図20から図22を参照して、手部39の構造を説明する。図20、図21および図22は、左の手部39の正面図、裏面図、対向可能指部51が存在しない側から見た側面図である。
手部39は、手首板部44、板状の掌板部46、手部取付部45、4本の普通指部である第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50および対向可能指部51を有する。手部取付部45は、掌板部46を手首板部44に垂直に接続する。4本の普通指部は、掌板部46の手部取付部45とは反対側に接続される。第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50は、ほぼ同じ方向を向いて並ぶ。対向可能指部51は、掌板部46に4本の普通指部とは異なる方向に接続し、普通指部と対向する位置に移動できる。手首板部44は、手首関節部36を介して前腕フレーム38と接続する。
手部39は、人の手に似ている。対向可能指部51は親指に相当する。第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50はそれぞれ、人差指、中指、薬指、小指に相当する。掌板部46の指部が曲がる側の面を手の平側とよび、その反対側の面を手の甲側と呼ぶ。掌板部46と平行な平面において、普通指部が延在する方向を指先方向と呼ぶ。指先方向は、手首から指先に向かう方向である。指先方向と直交する方向を手幅方向と呼ぶ。手部39の基準状態では、手首板部44が前腕フレーム38に垂直であり、掌板部46に垂直な方向から見ると、対向可能指部51は掌板部46と並んで延在する。
手首板部44に掌板部46を取付ける手部取付部45は、図22から分るように、取付板部45Aと掌板部接続板部45Bとが、横から見るとL字状に接続した部材である。取付板部45Aは、手首板部44に接続する。掌板部接続板部45Bには、掌板部46が接続される。掌板部46の取付板部45Aと対向する辺に、第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50が接続する。第2指部48が手首板部44のほぼ中央に位置する。第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50は、根元側よりも先端側の間隔が広くなるように設けられる。図21から分るように、第2指部48は取付板部45Aに対して垂直で、第2指部48の中心と取付板部45Aの中心は一致している。
対向可能指部51は、第1指部47などにほぼ直交する方向に、第1指部47などよりも取付板部45Aに近い側に設けられる。掌板部46は、指部が接続する基部である。
第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50は、同様な構造である。第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50を普通指部と呼ぶ。図において符合が付けやすい第4指部50で、普通指部の構造を説明する。
第4指部50は、掌板部46に近い側から第1指節部50A、第2指節部50B、第3指節部50Cが直列に接続する。掌板部46と第1指節部50Aとの間には、第1指関節部50Dが存在する。第1指関節部50Dは、第1指節部50Aを掌板部46に回転可能に接続する。第1指節部50Aと第2指節部50Bとの間には、第2指関節部50Eが存在する。第2指関節部50Eは、第2指節部50Bを第1指節部50Aに回転可能に接続する。第2指節部50Bと第3指節部50Cとの間には、第3指関節部50Fが存在する。第3指関節部50Fは、第3指節部50Cを第2指節部50Bに回転可能に接続する。第1指関節部50D、第2指関節部50Eおよび第3指関節部50Fの回転軸は、互いに平行である。
掌板部46、第1指節部50A、第2指節部50Bおよび第3指節部50Cの中の隣接する2個に関して、掌板部46に近い側を基部側部材、基部側部材でない側を先端側部材と呼ぶ。第1指関節部50D、第2指関節部50E、第3指関節部50Fは、第1指節部50A、第2指節部50B、第3指節部50Cの何れかである先端側部材を基部側部材に回転可能に接続する3個の指関節部である。
基準状態では、第1指関節部50Dは、掌板部46の裏面側に設けられる。手部39を側面から見ると、第1指関節部50D、第2指関節部50E、第3指関節部50Fの回転軸は、取付板部45Aにほぼ垂直な平面上にある。図15から分るように、この平面上または近くを、基準状態で前腕フレーム38を手部39の側に延長した線が通る。基準状態では、取付板部45Aに対して前腕フレーム38が垂直である。
第1指関節部50Dの回転軸は、掌板部46の裏面側に設けられた指元ヨーク50Gに保持される。第1指関節部50Dの回転軸は、掌板部46から少し外側に出た決められた位置に配置される。指元ヨーク50Gの間には、指部第1電動機50Hが配置される。第1指部電動機50Hの回転軸に直結した第1ウォーム50J(ねじ歯車)が、第1指関節部50Dの回転軸の回りを回転する第1ウォームホイール50K(斜歯歯車)とかみ合う。指部第1電動機50Hおよび第1ウォーム50Jは、掌板部46に対して傾斜して設けられる。第1ウォームホイール50Kは第2指節部50Bに取付けられている。第1指部電動機50Hが回転すると、第1ウォーム50Jが回転し、第1ウォームホイール50Kが第1指節部50Aと共に回転する。
第1指関節部50Dは、指部第1電動機50H、第1ウォーム50Jおよび第1ウォームホイール50Kを有するウォームギヤ機構により第1指節部50Aを掌板部46に対して回転させる。指部第1電動機50Hは、掌板部46に配置される。第1ウォーム50Jは、指部第1電動機50Hにより回転する。第1ウォームホイール50Kは、第1ウォーム50Jとかみ合い第1指節部50Aと共に第1指関節部50Dの回転軸の回りを回転する。
第1指節部50Aは、第1ウォームホイール50Kと共に回転する部材と、第2指関節部50Eの回転軸を保持するヨーク部材とが同じ方向で結合した構造である。第1指節部50Aに、指部第2電動機50Lが取付けられる。指部第2電動機50Lの回転軸に直結した第2ウォーム50Mが、第2ウォームホイール50Nとかみ合う。第2ウォームホイール50Nは、第2指関節部50Eの回転軸の回りを回転する。指部第2電動機50Lおよび第2ウォーム50Mは、第1指節部50Aに対して傾斜して設けられる。第2ウォームホイール50Nは第2指節部50Bに取付けられている。指部第2電動機50Lが回転すると、第2ウォーム50Mが回転し、第2ウォームホイール50Nが第2指節部50Bと共に回転する。
第2指関節部50Eは、第1指関節部50Dと同様な構造である。第2指関節部50Eは、指部第2電動機50L、第2ウォーム50Mおよび第2ウォームホイール50Nを有するウォームギヤ機構により第2指関節部50Eを第1指節部50Aに対して回転させる。指部第2電動機50Lは、第1指節部50Aに配置される。第2ウォーム50Mは、指部第2電動機50Lにより回転する。第2ウォームホイール50Nは、第2ウォーム50Mとかみ合い第2指節部50Bと共に第2指関節部50Eの回転軸の回りを回転する。
第1指関節部50Dと第2指関節部50Eは、それぞれ別の電動機により駆動されるので、第1指関節部50Dの回転角度と第2指関節部50Eの回転角度は独立に決めることができる。
第1指関節部50Dが第1指節部50Aを回転させる方向、第2指関節部50Eが第2指節部50Bを回転させる方向、第3指関節部50Fが第3指節部50Cを回転させる方向は、すべて同じ方向である。
指部第1電動機50Hおよび第1ウォーム50Jを掌板部46に対して傾斜して設けることで、掌板部46を小さくできる。指部第2電動機50Lおよび第2ウォーム50Mを第1指節部50Aに対して傾斜して設けることで、第1指節部50Aを短くできる。その結果、手部39を人の手と同程度の大きさにできる。
第1指節部50Aは、ウォームギヤ機構を有する第1指関節部50Dにより掌板部46に対して回転し、かつウォームギヤ機構を有する第2指関節部50Eにより第2指節部50Bと回転可能に接続する。手部39の4本の普通指部では、手の平側から2個の指関節部である第1指関節部と第2指関節部に、ウォームギヤ機構を適用している。
第3指関節部50Fを回転させる機構を説明する。第3指関節部50Fには、第3指節駆動歯車50Pが設けられる。第3指節駆動歯車50Pは、第3指節部50Cと共に回転する。第2指節部50Bには、3個のアイドラギヤが設けられる。3個のアイドラギヤは、第2ウォームホイール50Nの回転を、第3指節駆動歯車50Pに伝える。アイドラギヤが3個と奇数個なので、第2ウォームホイール50Nが回転すると、第3指節駆動歯車50Pが同じ方向に回転する。
第2ウォームホイール48N、3個のアイドラギヤ、第3指節駆動歯車48Pのギヤ比は、第2ウォームホイール48Nの回転角度φ2と第3指節駆動歯車48Pの回転角度φ3が同じになるように決めている。つまり、φ3のφ2に対する比の値f=φ3/φ2を、f=1としている。第2ウォームホイール48Nすなわち第2指節部48Bの回転角度φ2に対する第3指節駆動歯車48Pすなわち第3指節部48Cの回転角度φ3の比の値f=φ3/φ2は、1に近い適切な値であればよい。
第3指関節部を第2指関節部に連動させて回転させることで、1本の指部あたり2個の電動機で3個の指関節部を回転させることができる。第2指関節部および第3指関節部が連動して回転することは、手部39を使用する上で問題にはならない。第2指関節部を曲げないで第3指関節部だけを曲げるような動作をする必要がある場合は、ほとんどないからである。なお、第3指関節部も、第1指関節部および第2指関節部と同様にウォームギヤ機構で回転させるようにしてもよい。
対向可能指部51の構造を説明する。図21に示すように、対向可能指部51の第1指関節部51Dの回転軸を保持する指元ヨーク51Gは、掌板部46の裏面側の取付板部45Aに近い位置に設けられる。指元ヨーク51Gは、第2指部48とほぼ直交する方向に設けられる。指元ヨーク51Gの間には、指部第1電動機51Hが配置される。第1指部電動機51Hの回転軸に直結した第1ウォーム51Jが、第1指関節部51Dの回転軸の回りを回転する第1ウォームホイール51Kとかみ合う。第1ウォームホイール51Kは第2指節部51Bに取付けられている。第1指部電動機51Hが回転すると、第1ウォームホイール51Kが第1指節部51Aと共に回転する。第1指節部51Aが回転すると、第1指部47などと対向する位置に第2指節部51Bおよび第3指節部51Cが移動する。
対向可能指部51の第1指節部51Aは、第1指節元部51Tと、第1指節先部51Uとを有する。第1指節元部51Tは、第1ウォームホイール51Kが回転することで第1指節部51Aと共に回転する。第1指節先部51Uは、第1指節元部51Tの回転方向と約70度の角度を有する方向を向く。なお、第1指節先部51Uが向く方向は、第1指節部47Aなどが向く方向と平行である。第1指節元部51Tの第1指関節部51Dに接続する側とは反対側の端は平板状になっている。第1指節元部51Tの平板状の部分に、第1指節先部51Uが結合する。第1指節先部51Uには、指部第2電動機51Hが配置され、第2指関節部47Eの回転軸を保持するヨーク部材が設けられる。
対向可能指部51では、第1指関節部51Dが第1指節部51Aを回転させる方向が、第2指関節部51Eが第2指節部51Bを回転させる方向とは異なる。対向可能指部51の第2指関節部51Eから指先側の構造は、第1指部47などと同様である。
手部39では、指関節部を駆動するためのすべての機構が手部39の内部に設けられている。そのため、手部39だけを取外してメンテナンスや故障の修理などができる。
モビルスーツ100は、人の手と同様な構造の手部39を有している。そのため、人が把持可能な形状の物であればどのような物でも、手部39で把持できる。腕部8を動かして、物を把持した手部39を適切な位置に移動させる。手部39をその位置に保持したまま、2本の脚部7を動かして歩くことで、物を運搬できる。また、モビルスーツ100の手部39で把持するので、人の手で直接触れることのできない危険物体を把持できる。手部39は、片手あたり10個の電動機で、5本の指の曲げ具合を、持つ物体に合わせることができる。
手部39では、電動機が回転すれば、ウォームギヤ機構により指関節部が回転する。電動機に電力が供給されなくなり電動機が回転しない場合は、ウォームギヤ機構が指関節部の角度をそのまま保持する。ウォームギヤ機構では、指関節部を回転させようとする力が働いても、ねじの抵抗によりウォームが回転せず、指関節部が回転しない。指関節部に非常に大きな力がかかる場合は、指関節部を駆動する機構にラチェット機構あるいはロック機構を持たせてもよい。
手部の指関節部に電動機の替わりにラチェット機構を持たせてもよい。ラチェット機構により、小さい力で曲げることができるが伸ばすことはできないようにしてもよい。持つ物体の形状に合わせて指の曲がり具合を変えて、物体を持つようにしてもよい。ある曲がり具合で指関節部の角度を固定することも可能とする。角度を決めた状態からは、ボタンなどを押すことで自由に動かせる状態に変更できる。指部の数は5本でなくてもよく、少なくとも3本あればよい。他の指と対向可能な対向可能指は無くてもよい。1本の指あたり1個または2個の指関節部を有するようにしてもよい。第1指関節部と第1指関節ロック部を有するものであれば、手部はどのようなものでもよい。第1指関節部は、第1指節部と掌板部とがなす角度を変更可能に掌板部に接続する。第1指関節ロック部は、第1指関節部の角度が変化することを防止する。
電子制御部9は、蓄電池、電動機駆動回路および制御回路などを有する。蓄電池は、モバイルスーツ100の電源となる。蓄電池は、モバイルスーツ100が有する電動機や電動発電機に供給する電力を貯蔵している。電動機駆動回路は、各電動機を駆動する電流を生成する。制御回路は、各種のセンサの検出値が入力されてモバイルスーツ100が有する電動機やロック部を制御する。電子制御部9は、分割して配置してもよく、背中以外の場所に配置してもよい。電子制御部9を背中側に配置することで、電子制御部9が大きい場合でも着用者90の手足の動きを妨げることが少なくなる。また、電子制御部9が背中側にあることで、モバイルスーツ100を着用した着用者90が前後の重心のバランスをとることが容易になる。
動作を説明する。図23は、モビルスーツ100を着用して重量物を運搬する手順を説明するフローチャートである。ここでは、図24および図25に示すように、物体91と物体92を運搬する場合で説明する。物体91は、荷物積載部2にを載せる。物体92は、前方に上げて上側に向けた手部39の上に載せる。図24および図25は、モビルスーツを人が着用して荷物を運搬している状態での前方から見た斜視図および正面図である。
物体91が運搬したい重量物である。物体91は、図示しないロープなどにより荷物積載部2に固定されている。手部39の上に載せる物体92は、物体91とつりあいを取るためのカウンターウェイトの役割も持っている。手部39の上に物体92を載せることで、着用者90の上体の前傾が小さい姿勢でも上体重心を上体回転軸の上に位置させることができる。物体92は手部39に固定されておらず、物体92の側面を着用者90が手で押さえる。
ステップS01で、着用者90がモビルスーツ100を着用する。着用者90が、上体部1および腰部3の中に上から入る。腰連結ベルト17を着用者90の服に設けられたベルト通しに通して、着用者90の体幹と腰部3を連結する。着用者90の右足を右の足本体部6Aに載せ足保持部6Cで固定する。左足も同様に左の足本体部6Aに固定する。モビルスーツ100を着用した後では、着用者90は椅子に座っているとする。モビルスーツ100の各アクチュエータは動作できる、フルサポートモードとする。
ステップS02で、左右の腕部8を前方に出し、手部39を上に向けた状態にする。長さロック機構41S、43Sを、上腕駆動リンク41Lおよび前腕駆動リンク43Lの長さを変更可能な状態にする。リモコンなどで腕部8の各電動機を回転させて、上腕フレーム37および上腕フレーム38を着用者90が移動させる。適切な位置に手部39が存在する状態で、長さロック機構41S、43Sを、長さを変更できない状態にする。なお、ねじ駆動系のアクチュエータでは、電動機に電力が供給されなくても、その長さを維持できる特徴があるので、長さロック機構41S、43Sは有しなくてもよい。
手首回転ロック部44Sを回転可能な状態にして、着用者90が手部39を回転させて、手部39の手の平が適切な方向を向くようにする。さらに、必要であれば、手部39の各電動機をリモコンで動作させ、第1指部47、第2指部48、第3指部49、第4指部50の第1指関節および第2指関節の角度を適切な角度にする。腕部8の位置および向きを物体の運搬に適した状態にするためのプログラムを予め作成しておき、そのプログラムにより電動機41M、43Mと手部39の各モータを制御してもよい。
ステップS03で、荷物積載部2に物体91を載せて固定する。S03は、着用者90ではない人が実施する。ステップS04で、左右の手部39の上に物体92を載せる。物体92を載せるのは、着用者90ではない人でもよいし、物体92を手渡された着用者90でもよい。S03とS04は、順番を入れ替えてもよい。
ステップS05で、着用者90が立ち上がる。腰応力センサ17Sが、着用者90の腰が腰部3を上に移動させようとする力を発生していることを検出する。検出した上向きの力に応じて、両脚の大腿駆動アクチュエータ28および膝関節駆動アクチュエータ33が動作し、大腿駆動リンク28Lおよび膝関節駆動リンク33Lが長くなり、着用者90が立ち上がることができる。着用者90の腰が腰部3を上に移動させようとする力を検出しなくなる時点で、大腿駆動リンク28Lおよび膝関節駆動リンク33Lの長さは変化しなくなる。
ステップS06で、着用者90が両脚の大腿駆動アクチュエータ28および膝関節駆動アクチュエータ33を歩行モードにする。モード変更は、着用者90の手以外でも操作できるものとする。
ステップS07で、着用者90が歩いて物体91、92を運ぶ。歩く動作の詳細は、後で説明する。
ステップS08で、目的地に着いた着用者90が、両脚の大腿駆動アクチュエータ28および膝関節駆動アクチュエータ33をフルサポートモードにする。
ステップS09で、着用者90が座る。腰応力センサ17Sが、着用者90の腰が腰部3を下に移動させようとする力を発生していることを検出する。検出した下向きの力に応じて、両脚の大腿駆動アクチュエータ28および膝関節駆動アクチュエータ33が動作する。ゆっくりと重心を下方に移動させるように、大腿駆動リンク28Lおよび膝関節駆動リンク33Lが短くなる。こうして、着用者90が座ることができる。着用者90が座ると、腰応力センサ17Sが着用者90の腰が腰部3を下に移動させようとする力を検出しなくなる。その時点で、大腿駆動リンク28Lおよび膝関節駆動リンク33Lの長さは変化しなくなる。
ステップS10で、荷物積載部2から物体91を下ろす。S10は、着用者90ではない人が実施する。ステップS11で、左右の手部39の上から物体92を下ろす。S11は、着用者90ではない人が実施する。S10とS11は、順番を入れ替えてもよい。
ステップS12で、左右の腕部8を基準状態に戻す。
ステップS13で、着用者90がモビルスーツ100を脱ぐ。複数の物体を運んだ後で、着用者90がモビルスーツ100を脱ぐようにしてもよい。
モビルスーツ100を着用した着用者90が歩く際の動作を説明する。モビルスーツ100を着用した状態では、物体91、92およびモビルスーツ100の荷重(負荷荷重)は、モビルスーツ100の上体部1、腰部3および2本の脚部7が支える。着用者90には、負荷荷重はかからない。負荷荷重は、着地している左右の足首関節部J16にかかる荷重の合計である。そのため、負荷荷重には、モビルスーツ100の着地している足部6の重量は含まれない。着用者90は、体幹を動かすことで腰連結ベルト17を介して腰部3を移動させ、モビルスーツ100が倒れない適切な位置に負荷荷重の重心が存在するように制御する。
2足歩行時にモビルスーツ100が倒れないためには、モビルスーツ100の2個の足部6がともに着地している場合は、2個の足首関節部J16を結ぶ線分の上に負荷荷重の重心が存在するようにすればよい。1個の足部6だけが着地している場合は、着地している足部6の足首関節部J16の上に負荷荷重の重心が存在するようにすればよい。ここで、負荷荷重の重心である負荷重心を通る鉛直な直線を負荷重心線と呼ぶ。厳密には、負荷重心線が、着地している2個の足部6の足首関節部J16を結ぶ線分、または1個だけが着地している足部6の足首関節部J16から決められた範囲を通るようにすればよい。当然ながら、左右のどちらの足部6でも片方の足部6だけが着地した姿勢を、モバイルスーツ100を着用した着用者90が取れる必要がある。足部6が着地しているかどうかは、反力センサ6Dの検出する反力の大きさで判断する。反力が決められた閾値未満であれば着地していないと判断し、反力が閾値以上であれば着地していると判断する。
ここで、足部6が着地するとは、足本体部6Aの底面が地面などに接触している場合を意味する。地面などには、アスファルトの道路、コンクリートの岸壁、橋や塔など屋外の構造物など、建築物の床面、階段、屋根など、さらには床に置かれた家具なども含むものとする。地面などには、地球の表面に荷重が伝えられる場所すべてが含まれる。また、モビルスーツ100を車両や船舶や航空機などの上や内部などで使用する場合において、足本体部6Aの底面が車両や船舶や航空機などに接触している場合は、着地している場合に含むとする。
図26から図34を参照して、モバイルスーツ100を着用した着用者90が片足で立っている場合について説明する。図26から図32は、物体を保持していない場合であるが、物体を保持している場合も同様である。図26、図27および図28は、モビルスーツ100を人が着用して左足を上げた状態での前方から見た斜視図、正面図および左側面図である。図29、図30、図31および図32は、モビルスーツ100を人が着用して左足を上げた状態でのモビルスーツ100の正面図、左側面図、平面図および底面図である。図33は、モビルスーツ100を人が着用して両足を着地した状態と左足を上げた状態でのモビルスーツ100の正面図を比較する図である。図34は、モビルスーツ100を人が着用して両足を着地した状態と左足を上げた状態でのモビルスーツ100の底面図を比較する図である。図33および図34では、両足で立つ場合が(A)であり、片足で立つ場合が(B)である。
モバイルスーツ100を着用した着用者90は、片足で立つことができる。図33に、股関節部J6と足首関節部J16を結ぶ直線(脚直線と呼ぶ)を点線で示す。鉛直な直線を一点鎖線で示す。片足で立つ場合の方が、脚直線の左右方向の傾きが大きく、足首関節部J16が股関節部J6に対して左右方向の中央側に来るように傾いている。図34に、開閉脚軸J5と腰側大腿駆動リンク取付部J10を結ぶ直線(開閉脚線と呼ぶ)を点線で示す。Y軸に平行な直線を一点鎖線で示す。両足で立つ(A)の場合は、開閉脚線の前方側は、Y軸に平行な直線に対して少し外側に開いている。片足で立つ(B)の場合は、開閉脚線の前方側が内側に存在している。これにより、片足で立つ場合には、足首関節部J16が左右方向の中央に来ることになる。開閉脚軸J5が股関節部J6よりも後側に配置されているので、片足で立つ場合に、開閉脚線の前方側が左右方向の内側に存在することになる。脚直線が傾くこと、開閉脚線の前方側が左右方向の内側に存在することのどちらも、片足で立つ場合に負荷重心線を着地している足部6の足首関節部J16に近づける効果がある。
両足が着地している状態から左右のどちらか一方の側の足(片足)だけで着地する状態へ変化させるには、着用者90が片足側に体幹を移動させる。体幹が移動すると、腰連結ベルト17により腰部3が移動する。モビルスーツ100では、体幹が移動する先の側(移動先側)の足首関節部J16が負荷重心線に近づくように、大腿開閉脚フレーム22、大腿骨部および下腿部が回転する。このため、モビルスーツ100では、両足で立つ状態から片足だけで立つ状態へとスムーズに容易に変化できる。片足が左右どちらの足でも、同様である。
2足歩行時に大腿駆動リンク28を伸縮することによりX軸回りの回転モーメントが発生する。X軸回りの回転モーメントは、腰部3を経由して反対側の脚部7に伝わる。反対側の脚部7は着地しているので、地面から反力および逆方向の回転モーメントを受ける。その結果、モビルスーツ100全体としてはX軸回りに回転することなく、2足歩行できる。
着用者90は、両足が着地している状態で、片足側に体幹を移動させ、体幹が移動する先の側の脚部7にだけ負荷荷重がかかるようにする。片脚だけに負荷荷重がかかった状態で、負荷荷重がかからない方の脚部7を上げて前方に移動させる。片足だけが着地している状態でも着用者90は体幹を移動させることで、負荷荷重の重心が着地している足部6の足首関節部J16の上にくるようにバランスをとることができる。着用者90は、着地していない脚部7を前方に着地させる。着地した後は、前側の脚部7にだけ負荷荷重がかかるように、体幹を移動させる。前側の脚部7だけが負荷荷重を負担するようになると、後側の脚部7をあげて前方に移動させる。このような動作を繰り返すことで、モバイルスーツ100を着用した着用者90は歩く。
大腿駆動アクチュエータ28と膝関節駆動アクチュエータ33は、負荷重心の位置を移動させる上で電力をほとんど使用しなくてもよい。着地している脚部7で負荷荷重を支えることができるように、膝関節部J9の角度が適切になるように膝関節駆動アクチュエータ33が動作する。着地している脚部7の股関節部J6の角度は、負荷重心の移動に合わせて変化すればよい。そのため、大腿駆動アクチュエータ28は電力を消費しなくてもよい。着地していない側の脚部7では、着用者90の動きに合わせて電動発電機28M、33Mが回転するので、発電できる。なお、電動発電機28M、33Mが発電した電力は、電子制御部9の内部またはその他の場所にある蓄電池に貯蔵する。電動発電機28M、33Mの界磁は、着用者90にとって発電時の負担が重くなく、発電量が大きくなるように適切な強さとする。
着用者90が歩く動作に合わせて大腿駆動リンク28Lおよび膝関節駆動リンク33Lが伸縮する条件について説明する。まず、大腿駆動リンク28Lについて説明する。長さロック機構28Sが動作(ロック)していない場合は、股関節部J6の回りに大腿骨フレーム25を大腿開閉脚フレームに対して回転させるトルク(股回転トルク)が加えられると、大腿駆動リンク28Lには長さを変更する力が加えられる。大腿駆動リンク28Lのは長さを変更する力の大きさは、股関節部J6と大腿駆動リンク28Lの間の距離に応じて決まる。大腿駆動リンク28Lが有するねじ部での摩擦力が大腿駆動リンク28Lの長さを変更する力よりも小さければ、大腿駆動リンク28Lの長さを変更する力によりねじ棒が回転して大腿駆動リンク28Lが伸縮する。ねじ部での摩擦力から決まる股回転トルク閾値以上の股回転トルクが加えられた場合に、大腿駆動リンク28Lの長さを変更できる。着用者90の動きに応じて発電する場合は、股回転トルク閾値を着用者90が出せるトルクよりも小さくしておけば、着用者90の動作に合わせて大腿駆動リンク28Lが伸縮する。
膝関節駆動リンク33Lについても同様に、長さロック機構33Sが動作していない場合は、膝回転トルク閾値以上の膝回転トルクが加えられると、膝関節駆動リンク33Lの長さを変更できる。膝回転トルク閾値は、膝関節駆動リンク33Lのねじ部での摩擦力から決まる。膝回転トルクとは、膝関節部J9の回りに下腿部5を大腿骨フレーム25に対して回転させるトルクである。着用者90の動きに応じて発電する場合は、膝回転トルク閾値を着用者90が出せるトルクよりも小さくしておけば、着用者90の動作に合わせて膝関節駆動リンク33Lが伸縮する。
片足だけで着地している場合は、着地している脚部7の膝関節駆動リンク33Lの長さが変化しないように長さロック機構33Sをロック状態にすれば、消費する電力をさらに少なくできる。電子制御部9の内部の制御回路が、長さロック機構33Sをロック状態にする。片足だけで着地している場合は、左右どちらか一方の足部6の反力センサ6Dが検出する反力が閾値未満である場合である。制御回路は、左右どちらか一方の足部6の反力センサ6Dが検出する反力が閾値未満である場合に、他方の反力センサが設けられた足部6の側の長さロック機構33Sを動作させるロック制御部である。
歩行モードであっても、着用者90が転ばないように急激な加速度が発生する場合は、モビルスーツ100は各関節で、加速度が発生している方向とは反対の方向の力を発生させる。
モビルスーツ100では、着用者90が2足歩行できる。着用者90が重量物を背中あるいは胸側、または両方に抱えている場合でも、同様に2足歩行できる。モビルスーツ100を着用して歩く際には、モビルスーツ100が負荷荷重を支える。着用者90は、腰の動きでバランスをとり、左右交互に片足が地面から離れるように脚を動かすことにより2足歩行できる。モビルスーツ100では、2足歩行時の消費電力を従来よりも低減できる。立ち上がる、荷物を持ち上げるなど大きな力が必要な場合は、モビルスーツ100が力を出し、着用者90には負荷をかけない。
モビルスーツ100では、重心のバランスをとる機能を着用者90に任せている。そのため、着用者90が2足歩行できるようにモビルスーツ100の各部を制御するプログラムを、従来よりも容易に作成できる。
腕部8は、上下動だけをアクチュエータにより駆動するので、構造が簡単になる。なお、左右方向の回転および物体が落ちないように持つことは着用者90に任せられる。この場合に、左右方向には重力がかからないので、着用者90の負荷は軽い。なお、腕部の左右方向の回転をアクチュエータで駆動するようにしてもよい。非常に繊細な物体を持つ場合は、人の手を手部39の手の平側に置き、手部39により人の手を支持させることもできる。ロボットハンドである手部39を介して人の手の感覚で、ものを移動させたり、把持したりできる。腕部8だけをロボットアームとして使用することもできる。また、腕部は、上体部と、上体部からの荷重を支える腰部と、腰部の左右に直列に接続した大腿部、下腿部および足部をそれぞれ有する左右一対の脚部を有するモビルスーツに適用できる。
腕部8を上体部1の前面に設けるので、背部から腕部を出す場合よりも構造が簡単で軽量にできる。腕部8は、前面の最小限のスペースと重量でコンパクトな構成を有する。そのため、腕部8で物を持って移動することが可能である。前面に腕部を設けることは、背中に重い荷物を背負う場合にも、腕部の位置を変更することで前後方向のバランスをとることを容易にする。
これに対して、肩越しに背後からアームハンドが伸びる従来の構成の場合は、必要とするスペースが大きくなり、重量が重くなり、駆動エネルギも多く必要である。実務に応用する際は、従来の構成は、スペースの観点から非常に使いづらいものである。従来の構成では、背中側に機器が集中しているため、前後のバランスが取りにくい構造である。
従来のモビルスーツでは、関節部にギアボックスとモータを配置する構成であるため、関節部が大きくなる。この発明に係るモビルスーツは、可変長リンクを有するアクチュエータにより骨格が接続する関節部を駆動する方式である。そのため、関節部がコンパクトになる。
人の筋肉が出す力を検知して人の力に応じた補助力を出すのではなく、モビルスーツの自重と荷物の重量をモビルスーツで受け持つようにしている。人に作用する荷重は前後移動時の反力のみである。腰から上のフレーム(上体部)は人に密着していない。上体部は、上体の重心が上体回転軸の上に存在するように自動で制御する。上体回転軸は、上体部が前後方向に回転する回転軸である。この機能の動作により、重量物の運搬時に着用者が重心のバランスをとる動作が容易になる。
この発明に係るモビルスーツは、災害救助時や建設または土木の工事などで、重量物を人手により移動させる状況で有効に使用できる。負傷者の護送や機材の積み下ろし、設置作業など通常の人力以上の作業を長時間することも、モビルスーツにより可能である。また、原子力発電所など着用者を保護するための重量がある保護具を着用して作業することも、モビルスーツにより可能である。
モビルスーツを実用することで、重量物を扱う、同じ姿勢を長時間とるなど、人に負荷が大きい作業をする際に、人の負荷を軽減できる。例えば、大型構造物の組立作業、高齢化社会により必要性が増大している介護支援者の介護作業、筋力が十分でない高齢者の労働などに利用できると考えられる。
以上のことは、他の実施の形態にもあてはまる。
実施の形態2.
実施の形態2は、着用者の動作を検出する機構を膝部にも設けるように実施の形態1を変更した場合である。図35は、この発明の実施の形態2に係るモビルスーツ100Aの前方から見た斜視図である。図36は、モビルスーツ100Aを人が着用した状態での前方から見た斜視図である。図37および図38は、モビルスーツ100Aの正面図および右側面図である。
モビルスーツ100Aが有する脚部7Aは、膝上パッド52および膝下パッド53を有する。膝上パッド52は、大腿骨フレーム25の膝付近の前方の決められた位置に存在するように設けられる。膝下パッド53は、下腿部5の膝付近前方の決められた位置に存在するように設けられる。膝上パッド52および膝下パッド53は、着用者90の脚が接触しているかどうかを検出する。
膝上パッド52は、膝関節接続ブロック28の前方に位置するように膝関節接続ブロック28に設けられている。膝上パッド52を大腿骨フレーム32に固定してもよい。左右一対の大腿骨部のそれぞれの前方の決められた位置に設けられ、着用者の脚が接触していることを検出する大腿動作検出センサである。
膝下パッド53は、下腿膝側ブロック30の前方に位置するように下腿膝側ブロック30に設けられている。膝下パッド53を下腿リンク31に固定してもよい。左右一対の下腿部のそれぞれの前方の決められた位置に設けられ、着用者の脚が接触していることを検出する下腿動作検出センサである。
動作を説明する。腰連結ベルト17により着用者90の体幹の移動に合わせて腰部3を移動させる動作は、実施の形態1の場合と同様である。また、腰応力センサ17Sによる上下方向の応力を検出しての動作も同様である。さらに、膝上パッド52が、着用者90の脚が接触していることを検知している場合は、電子制御部9の内部の制御回路は、大腿駆動リンク28Lが短くなるように電動発電機28Mを駆動する。制御回路は、大腿駆動リンク28Lの長さを変更する力を発生させる電動発電機28Mを駆動する大腿駆動リンク制御部である。
膝下パッド53が、着用者90の脚が接触していることを検知している場合は、電子制御部9の内部の制御回路は、膝関節駆動リンク33Lが短くなるように電動発電機33Mを駆動する。制御回路は、膝関節駆動リンク33Lの長さを変更する力を発生させる電動発電機33Mを駆動する膝関節駆動リンク制御部である。
足と腰に加えて、膝でも着用者の体の動きまたは姿勢を検出することで、着用者の動作をより正確に検出できる。そのため、モビルスーツ100Aは、着用者90の下半身の姿勢に対して、より整合した姿勢を取ることができる。その結果、着用者90がモビルスーツ100Aの姿勢または動きに対して感じる違和感を軽減できる。
膝上パッド52と膝下パッド53のどちらかだけを備えるようにしてもよい。
実施の形態3.
実施の形態3は、着用者の臀部を載せることができる座席部をさらに備えるように実施の形態1を変更した場合である。座席部は、直立した状態よりも着用者の腰が低くなる姿勢で使用される。図39は、この発明の実施の形態3に係るモビルスーツ100Bを人が着用した状態での腰部付近を拡大した右側面図である。図40は、モビルスーツ100Bを人が着用した状態での腰部付近を拡大した背面図である。
モビルスーツ100Bが有する腰前面フレーム16Bには、布製の座席部54が設けられる。座席部54は、腰前面フレーム16Bの左右に最も幅が広い部分に、その両端が接続される。座席部54は、常時は腰前面フレーム16Aおよび腰後面フレーム15Aの内面側に存在する。必要な時に、着用者90が座席部54を引き出して使用する。その際には、脚部7が有するアクチュエータの可変長リンクの長さが変化しないようにロックさせる。脚部7の可変長リンクの長さが固定されると、腰部3および脚部7の姿勢も固定される。位置が決まった腰部3Bから吊るされた座席部54を有することで、着用者90は座席部54に腰掛けることができる。
モビルスーツ100は、負荷荷重を着用者90には負担させない。逆に言うと、着用者90がその姿勢を保持することを支援する機能を、モビルスーツ100は有さない。モビルスーツ100Bが有する座席部54は、着用者90の臀部を下から支える。つまり、着用者90が、腰の位置を直立した姿勢よりも低くなる姿勢(いわゆる中腰の姿勢)を長時間とる必要がある場合に、着用者90は座席部54に腰を掛けることができる。モビルスーツ100Bは、中腰の姿勢をとる場合に、着用者90の負荷を低減できる。
座席部54は、少なくとも2箇所で腰部3Bから吊るされていればよい。また、座席部を樹脂または金属製として、両端を回転可能に腰部に接続してもよい。座席部54を使用しない時は、腰部の背中側に収納される。そのため、立ったり歩いたりする時に、座席部が邪魔になることはない。膝関節部の角度と連動して、2本の脚部の膝関節部の角度を検出して、自動で座席部を収納する機構を持たせてもよい。
実施の形態4.
実施の形態4は、作業者への指示や、判断情報、手順指示など、多様な情報を着用者に伝達するために、モビルスーツの前方に透明スクリーンと、透明スクリーンに映像を投影する映写機を備えるように、実施の形態2を変更した場合である。図41、図42および図43は、実施の形態4に係るモビルスーツ100Cを人が着用した状態での正面図、右側面図および平面図である。
モビルスーツ100Cは、上体部1Cが有する上体フレーム10Cの前方の上部に透明スクリーン55を取り付けている。また、上体フレーム10Cの最上部付近に、透明スクリーン55に映像を投影するための映写機56を設けている。映写機56は2台として、立体映像が投射できるようにしている。映写機56を1台にしてもよい。投影される映像は着用者90が決めてもよいし、通信機能でモビルスーツ100Cが受信した情報を表示してもよい。
透明スクリーン55は、着用者90の正面に広い範囲で存在するように上体フレーム10Cに固定されている。そのため、着用者90は、両手が自由な状態で、必要な情報を見ることができる。透明スクリーン55は、視野が広いので、多くの情報を表示できる。作業者への指示や、判断情報、手順指示などを着用者90に伝えることができる。透明スクリーン55は透明なので、周囲の状況なども着用者90が見ることができる。透明スクリーン55を強化ガラスなどで製造することで、前方からの飛来物から着用者を保護するようにしてもよい。
実施の形態5.
実施の形態5は、大腿駆動アクチュエータの替わりに、圧縮された気体が封入された2本のガススプリングを使用して股関節部の回りに大腿骨部を回転可能とするように実施の形態1を変更した場合である。図44は、この発明の実施の形態5に係るモビルスーツ100Dが有する圧縮ガスを利用した大腿駆動機構の構造を説明する右側面図である。図44は、ガススプリングが大腿骨フレームを回転させる力を発生しない場合である。図45は、モビルスーツ100Dが有する圧縮ガスを利用した大腿駆動機構が大腿部を上げる場合の動作を説明する図である。図46は、モビルスーツ100Dが有する圧縮ガスを利用した大腿駆動機構が大腿部を下げる場合の動作を説明する図である。
モビルスーツ100Dが有する大腿部4Dは、大腿駆動アクチュエータ28の替わりに2本の大腿駆動ガススプリング57、58を有する。前側の大腿駆動ガススプリング57の膝側の他端は、大腿側大腿駆動リンク取付部J25に回転可能に取り付けられる。後側の大腿駆動ガススプリング58の膝側の他端は、大腿側大腿駆動リンク取付部J26に回転可能に取り付けられる。大腿側大腿駆動リンク取付部J25、J26は、大腿骨フレーム25Dに設けられる。大腿駆動ガススプリング57、58の腰側の一端は、大腿駆動リンク連結部59により連結される。大腿駆動ガススプリング57、58と大腿駆動リンク連結部59は、大腿骨フレーム25Dよりも左右方向の外側に存在する。大腿駆動リンク連結部59の両端にはそれぞれ1個のガイド用突起59A、59B(点線で図示)が左右方向の内側に設けられる。ガイド用突起59A、59Bは、溝状のリンク端ガイドレール60の溝の中に入り、リンク端ガイドレール60に沿って移動できる。リンク端ガイドレール60は、大腿開閉脚フレーム22Dの左右方向の外側に設けられる。図を簡潔に表現するために、リンク端ガイドレール60は、2点鎖線の円弧で表現している。また、図では、リンク端ガイドレール60上での大腿駆動リンク連結部59の移動角度を実際よりも大きく描いている。
大腿駆動ガススプリング57、58は、気体が圧縮して封入され、その長さが長くなろうとする力を発生させる大腿駆動リンクである。ガイド用突起59A、59Bは、大腿駆動ガススプリング57、58のそれぞれの一端が回転可能に取付けられる腰側大腿駆動リンク取付部である。大腿駆動ガススプリング57、58は、股関節部J6を中心に大腿骨フレーム25Dを回転させる。リンク端ガイドレール60は、大腿開閉脚フレーム22Dに設けられた、ガイド用突起59A、59Bが移動する大腿駆動リンク端ガイドレールである。大腿駆動リンク連結部59は、ガイド用突起59A、59Bの間隔を決められた間隔に固定する。
図45に示すように、大腿駆動リンク連結部59およびガイド用突起59A、59Bが大腿骨フレーム25Dよりも後側にある場合は、大腿駆動ガススプリング57、58が伸びることで大腿骨フレーム25Dおよび股関節部J6を上に移動させることができる。大腿駆動リンク連結部59を下側に移動させることで、大腿駆動ガススプリング57、58に作用する反力の方向と、リンク端ガイドレール60の半径方向に股関節部J6から伸びる大腿骨フレーム25Dの方向とがずれる。この方向のずれが発生することで、大腿骨フレーム25Dに接線方向の力が働く。
図46に示すように、大腿駆動リンク連結部59およびガイド用突起59A、59Bが大腿骨フレーム25Dよりも前側にある場合は、大腿駆動ガススプリング57、58が伸びることで大腿骨フレーム25Dおよび股関節部J6を下に移動させることができる。このように、大腿駆動ガススプリング57、58の腰側のリンク端をレールに沿って移動させることで、伸びるガススプリングを使用して股関節部J6を両方向に回転させることができる。
このように、ガススプリングを使用することで、予め封入した気体のエネルギを利用してモビルスーツの股関節部を駆動できる。肩関節部などの他の関節部でもガススプリングは使用できる。動作時に電力を使用しない駆動方法をパッシブな駆動方法と呼ぶ。ガススプリングを使用する駆動方法は、パッシブな駆動方法である。
大腿駆動リンク連結部59は手動で移動させてもよいし、移動させる機構をモビルスーツが備えてもよい。大腿駆動ガススプリングは1本でもよい。2本にすることで、同じ力を発生させるためのリンク端ガイドレール60上での移動距離を、1本の場合よりも短くできる。
2本のガススプリングを使用する場合には、2本のガススプリングの方向を人力や体重移動で大腿骨フレームの方向と異ならせることで、伸展力のアンバランスが発生する。伸展力のアンバランスが脚軸回転力へと変換される。このアンバランスの発生方向を人が意識してコントロールするか、または、歩行時の移動で自然にコントロールさせることで、ガススプリングの脚軸の回転力向きをコントロールできる。つまり必要に応じて、アシスト力の発生タイミングをコントロールできる。これにより、電源を使わないパッシブな駆動方法で、着用者90の下半身の動作補助が可能である。
リンク端ガイドレール60は、大腿駆動リンク連結部59が移動する際の軌跡を決める。リンク端ガイドレール60を、ガススプリングの回転半径と同じ曲率でガイド用突起59が移動するように配置する。そうすることで、ガイド用突起59が移動する際の反力を、すべり反力、あるいは転がり反力として一定に抑えることが可能である。意識的に人力(手の前後移動)で、ガススプリングの位置変更を着用者90が楽にできるようになる。ガススプリングの位置変更によって、脚部の上下回転方向のアシスト力を、意識的に反転させることが可能である。
ガススプリングが発生する力を弱めたい時や強めたい時の操作が、着用者90により意識的に変更可能である。ガススプリングが発生する力を着用者90が変更可能であることは、一般に言われているモビルスーツの無負荷時の使いにくさを解消する一つの方法となる。
実施の形態6.
実施の形態6は、油圧機構を利用したアクチュエータを使用するように実施の形態1を変更した場合である。モビルスーツ100Zは、油圧機構を使用したアクチュエータを有する。図47は、この発明の実施の形態6に係るモビルスーツで使用されるアクチュエータが有する可変長リンクの構造を説明する断面図である。
上体駆動リンク20LZを例にして、油圧機構を使用するアクチュエータの構造を説明する。アクチュエータ20Zは、可変長リンク20LZおよび電動機20Mを有する。可変長リンク20LZは、シリンダ20H、ピストン20J、配管20Kおよびポンプ20Nを有する。シリンダ20Hには、鉱物油などの液体が充填される。ピストン20Jは、シリンダ20Hの内部を第1の部屋20Pと第2の部屋20Qとに区分する。ピストン20Jが移動することで、第1の部屋20Pおよび第2の部屋20Qの容積が変化する。なお、第1の部屋20Pの容積と第2の部屋20Qの容積の合計は、一定である。配管20Kは、第1の部屋20Pと第2の部屋20Qとを結ぶ。配管20Kには、液体が充填される。ポンプ20Nは、配管20Kの途中に設けられる。ポンプ20Nは、電動機20Mにより駆動される。ポンプ20Nは、液体を第1の部屋20Pから第2の部屋20Qへ移動させることができ、液体を第2の部屋20Qから第1の部屋20Pへ移動させることができる。
ピストン20Jの一端が胸側中央リンク取付部J5に取付けられえる。シリンダ20Hの一端が腰側中央リンク取付部J10に取付けられる。
ポンプ20Nが、第1の部屋20Pから第2の部屋20Qへ液体を移動させると、ピストン20Jが胸側中央リンク取付部J5に近づく方向へ移動する。ポンプ20Nが、第2の部屋20Qから第1の部屋20Pへ液体を移動させると、ピストン20Jが胸側中央リンク取付部J5から遠ざかる方向へ移動する。第1の部屋20Pとの第2の部屋20Qとの間で液体が移動しなければ、ピストン20Jの位置は変化しない。このように、可変長リンク20LZの長さは変化可能であり、可動範囲内の任意の長さを維持できる。
電動機20Mがポンプ20Nを駆動することで、ねじ棒20Aなどを使用するスクリュー系のアクチュエータの替わりに油圧機構を使用するアクチュエータを使用できる。各駆動軸の制御も電気駆動モータの各軸回転制御と同じ手法で各リニアアクチュエータを制御することが可能であり、そのまま置き換えることができる。
油圧機構では、スクリュー系のアクチュエータの場合に必要であった回転連結部品が不要になり、信頼性が向上する。油圧機構のアクチュエータで駆動させた場合の効果として、電気モータでスクリュー系を駆動するアクチュエータと比べてより大きな推力を発生させることが可能である。より大きな推力が出せることで、災害救助などに、モビルスーツをより使用しやすくなる。
実施の形態7.
実施の形態7は、膝関節駆動リンクの上側の接続先を大腿骨フレームではなく大腿開閉脚フレームに変更した場合である。図48から図54を参照して、この発明の実施の形態7に係るモビルスーツの構造を説明する。図48および図49は、モビルスーツ100Eの前方または後方から見た斜視図である。モビルスーツ100Eの正面図、右側面図、平面図および底面図を、それぞれ図50、図51、図52および図53に示す。図54は、モビルスーツの腰から下の右側面図である。モビルスーツ100Eが、実施の形態1のモビルスーツ100と異なる点を説明する。
大腿部4Eが有する大腿骨フレーム25Eは、突起25Tを有しない。膝関節駆動アクチュエータ33Eが有する膝関節駆動リンク33LEの一端は、大腿開閉脚フレーム22Eに回転可能に取付けられる。大腿側膝関節駆動リンク取付部J27では、膝関節駆動リンク33LEの一端に設けられたヨークが大腿開閉脚フレーム22Eを挟む。ヨークおよび大腿開閉脚フレーム22Eに設けられた貫通穴に軸部材を通すことで、大腿側膝関節駆動リンク取付部J27は、膝関節駆動リンク33LEの一端を大腿開閉脚フレーム22Eに回転可能に取付ける。
大腿駆動アクチュエータ28および膝関節駆動アクチュエータ33Eは、腰部3の側ではともに大腿開閉脚フレーム22Eに接続する。大腿駆動アクチュエータ28および膝関節駆動アクチュエータ33Eが、前後から挟むように大腿骨部に接続する。膝関節駆動アクチュエータ33Eは、下腿部5にも接続する。このようなリンク配置により、より人に近い形で脚部7Eの関節部を駆動する力を発生させことができる。モビルスーツ100Eのリンク配置は、高度な人の動きに近い動きで脚部7Eを駆動することが可能なリンク配置である。
図55により、大腿骨フレーム25Eの方向を変更するためのリンクの配置について説明する。図55は、モビルスーツの左の脚部での大腿骨部を動かすリンク配置を説明する模式図である。図55(A)が、基準状態でのリンク配置を模式的に表す右側面図である。図55(B)が、基準状態から大腿駆動リンク28Lを短くした状態でのリンク配置を模式的に表す右側面図である。図55(C)が、基準状態から大腿駆動リンク28Lを長くした状態でのリンク配置を模式的に表す右側面図である。膝関節駆動リンク33LEの長さは変化させないとする。図55(A)に示すように、大腿骨フレーム25Eが鉛直方向となす角度を変数θで表す。膝関節部J9で大腿骨部と下腿部5とがなす角度を変数φで表す。下腿部5が鉛直方向となす角度を変数ξで表す。θ+φ+ξ=180°の関係が常に成立する。
図55(A)に示す基準状態では、θ=13°、φ=155°、ξ=12°である。図55(B)では、大腿駆動リンク28Lを短くしてθ=21°と股関節部J6の角度θを8°増加させる。φ=145°と膝関節部J9の角度φは10°減少する。その結果、下腿部5の角度ξ=14°になる。図55(C)では、大腿駆動リンク28Lを長くしてθ=5°と股関節部J6の角度θを8°減少させる。φ=160°と膝関節部J9の角度φは5°増加する。その結果、下腿部5の角度ξ=15°になる。大腿駆動リンク28Lだけを伸縮させることで、股関節部J6と膝関節部J9の両方の角度が変化する。大腿駆動リンク28Lだけを長くすると、股関節部J6の角度θが減少し、膝関節部J9の角度φは増加する。大腿駆動リンク28Lだけを短くすると、股関節部J6の角度θが増加し、膝関節部J9の角度φは減少する。なお、大腿駆動リンク28Lの長さの変化と、股関節部J6の角度θおよび膝関節部J9の角度φの変化の間の係数(感度)は、大腿駆動リンク28Lの長さにより変化する。大腿駆動リンク28Lの長さの変化に対する膝関節部J9の角度φの感度は、膝関節駆動リンク33LEの長さにも依存する。
図56により、膝関節部J9の角度を変更するためのリンクの配置について説明する。図56は、モビルスーツの左の脚部での膝関節部を動かすリンク配置を説明する模式図である。図56(A)が、基準状態でのリンク配置を模式的に表す右側面図である。図56(A)と図55(A)で、各関節部の角度は同じである。図56(B)が、基準状態から膝関節駆動リンク33LEを短くした状態でのリンク配置を模式的に表す右側面図である。図56(C)が、基準状態から膝関節駆動リンク33LEを長くした状態でのリンク配置を模式的に表す右側面図である。大腿駆動リンク28L長さは変化させないとする。
図56(B)では、膝関節駆動リンク33LEを短くしてφ=147°と膝関節部J9の角度φを8°減少させる。股関節部J6の角度θ=13°で変化しない。その結果、下腿部5の角度ξ=20°になる。図56(C)では、膝関節駆動リンク33LEを長くしてφ=163°と膝関節部J9の角度φを8°増加させる。股関節部J6の角度θ=13°で変化しない。その結果、下腿部5の角度ξ=4°になる。膝関節駆動リンク33LEだけを長くすると、膝関節部J9の角度φは増加する。膝関節駆動リンク33LEだけを短くすると、膝関節部J9の角度φは減少する。膝関節駆動リンク33LEの長さが変化しても、股関節部J6の角度θは変化しない。膝関節駆動リンク33LEの長さの変化に対する膝関節部J9の角度φの感度は、膝関節駆動リンク33LEの長さにより変化する。
モビルスーツ100では、膝関節部J6の角度を大きくする力は、膝関節駆動リンク33Lが長くなる場合だけ発生する。モビルスーツ100Eでは、膝関節部J6の角度を大きくする力は、膝関節駆動リンク33Lが長くなる場合に加えて、大腿駆動リンク28Lが長くなる場合にも働く。つまり、膝関節部J6の角度は、膝関節駆動リンク33Lおよび大腿駆動リンク28Lの長さで決まる。そのため、2足歩行の際に、膝関節部J9の角度を維持することが、モビルスーツ100Eの方が容易になる。
本発明はその発明の精神の範囲内において各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の変形や省略が可能である。