JP6794246B2 - ジヒドロリポ酸及びその塩の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はジヒドロリポ酸及びその塩の製造方法に関する。
α−リポ酸は、体内のエネルギー代謝に必要な化合物であり、体内ではその還元体であるジヒドロリポ酸としても存在している。このジヒドロリポ酸は非常に強い還元能力があり、それに見合った抗酸化活性を持つ。そのため、DNAや組織を酸化劣化させるヒドロキシラジカルを消去する能力を持ち、亜急性壊死性脳脊髄炎の治療薬としても用いられている他、糖尿病や神経疾患の改善も報告されており、近年、注目されている物質である。
このように、強力な抗酸化活性を持つジヒドロリポ酸は、医薬品、食品添加物、化粧品用途として、今後ますます重要な化合物である。これらの用途を鑑みるとき、他の化合物の混入が少ないという意味での高い純度、また、場合によっては、高い光学純度がさらに求められている。
ところで、このα−リポ酸およびジヒドロリポ酸の体内での生産量は年齢とともに減少するため、外から補うこと、すなわち、食物により補給する方法が効果的である。α−リポ酸を多く含む食物としては、レバー、にんじん、ほうれん草、ブロッコリー、トマト、ジャガイモなどがあげられるが、1日の目安量である100mgをこれらの食物で毎日補うことは非常に難しい。そこで、不足分をサプリメントなどにより摂取する方法が考えられるが、上述したような含有量が極めて少ない野菜などの天然物から抽出することが難しいため、従来、α−リポ酸やジヒドロリポ酸は有機合成により製造されていた。
抗酸化活性が非常に高いジヒドロリポ酸を有機合成により得る方法として、シクロヘキサノンとビニルアルキルエーテルを過酸化物でラジカル反応し、中間体のアルコキシエチルシクロヘキサノンをバイヤー−ビリガー酸化した後、チオ尿素で硫黄を導入する手法が特許文献1により開示されている。当該手法によれば、安価な原材料を出発物質として用いることは利点であるが、工程が長く、滴下、温度調整など管理が複雑で、溶剤としてクロロホルムを使用し、大量の廃棄物が発生するなど、環境負荷が大きく、かつ、得られるジヒドロリポ酸の純度および光学純度がかなり低いという問題点があった。
純度および光学純度を向上させる合成方法として、純度および光学純度が高いα−リポ酸を合成後、還元によりジヒドロリポ酸を合成する方法が考えられる。特許文献2には、下記化合式[A]で表されるビスメシレートの分子内に硫化ナトリウムや硫黄を用いて硫黄元素を導入する手法が開示されている。しかしながら、この方法では、系内にナトリウム塩等の不純物が多く残るため純度も低く、また光学純度も80%未満程度にしか高めることができない上に、環境負荷の大きいトルエンの使用や、トルエン層の水洗浄液として大量の含水廃液が発生するなど、まだ課題があった。
Figure 0006794246
純度および光学純度を向上し、さらに環境負荷が低い合成法として、特許文献3には培養法が開示されている。この培養法は、α−リポ酸から生菌生物(乳酸菌種等)と栄養剤(ウコンの根茎)により培養でジヒドロリポ酸を得る手法がある。当該手法によれば、生物活性の高いR体のみが、すなわち、光学純度が高いジヒドロリポ酸が生成する利点があるが、7日間の長期の培養時間が必要であるため、工業的製造方法とはいえない。さらに培養法では生物活性の高いR体のみを生成させるが、生菌生物を生存させるためには、常に培養液中に酸素を吹き込む必要がある。この酸素が酸化剤の働きをし、生成したジヒドロリポ酸をα−リポ酸に酸化させるため、転換率が悪い欠点があった。
さらに化学合成法として、非特許文献1にあるように、水素化ホウ素ナトリウムによる化学還元法があるが、不活性ガス雰囲気下での温度調整と滴下反応、環境負荷の大きいベンゼンの使用など、複雑な反応場の管理が必要である。また、当該方法による合成では光学純度が下がる問題があった。ジヒドロリポ酸の遊離酸は不快臭が強い油状であり、水溶性が低く、必ずしも取り扱い易いとはいいがたい。
特開平6−172301号公報 特表2004−514716号公報 特表2008−526767号公報
ARTIVULES OF BIOCHEMISTRY AND BIOPHYSIC 173,71−81 (1976)
ジヒドロリポ酸及びその塩は、強力な抗酸化活性を持つため、医薬品、食品添加物、化粧品用途として、今後ますます重要な化合物である。これらの用途を鑑みるとき、他の化合物の混入が少ないという意味での高い純度、また、場合によっては、高い光学純度がさらに求められる。しかし、上記参照したように、化学合成の方法では、精製工程を経ても高純度、例えば純度90%のジヒドロリポ酸及びその塩を得ることは困難であり、培養法では純度の高いジヒドロリポ酸を製造することができるが、長時間培養させる必要があるため、工業的に製造できない問題があった。
以上を鑑みて、本発明は、低環境負荷で工業的製造に適し、かつ、高純度及び高い光学活性のジヒドロリポ酸及びその塩を得ることができる製造方法の提供を目的とする。さらには、水溶性が低く不快臭が強いジヒドロリポ酸について、より取り扱い易い形態で取得し得る製造方法の提供も目的とする。
本発明者らは、液相中でα−リポ酸を電極反応により還元させる電解合成法を用いると、環境負荷を小さく、工業的生産規模で安価に、高純度および高い光学純度のジヒドロリポ酸を得られ、上記記載の問題点を全て解決することができたので、以下に本発明の詳細を記載する。
[1]液相中でα−リポ酸又はその塩を電極反応により還元させる工程を有するジヒドロリポ酸又はその塩の製造方法。
[2]液相が7.0を超えるpHの水溶液系である[1]の製造方法。
[3]液相中にナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン及び銅イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンが含まれる[1]〜[2]の製造方法。
[4]上記電極反応に用いる電流密度が0.1〜50A/dmである[2]〜[3]の製造方法。
[5]液相が有機系であり、液相中にα−リポ酸以外の電解質をさらに含む[1]の製造方法。
[6]上記電極反応に用いる電流密度が0.01〜10A/dmである[5]の製造方法。
[7]上記電極反応に用いる陰極が、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、それらの酸化物及びカーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる[1]〜[6]の製造方法。
[8]上記α−リポ酸又はその塩が光学活性体であり、製造されるジヒドロリポ酸又はその塩が光学純度90%以上の光学活性体である[1]〜[7]の製造方法。
[9]純度90%以上のジヒドロリポ酸又はその塩を得る製造方法であり、前記純度はα−リポ酸又はその塩及びジヒドロリポ酸又はその塩の合計質量に対するジヒドロリポ酸又はその塩の質量のパーセンテージである、[1]〜[8]の製造方法。
本発明によれば、高純度及び高い光学純度のジヒドロリポ酸及びその塩を得ることができる。さらに本方法は環境負荷が非常に低く、容易に工業的規模への適用も可能である。本発明の好適態様によれば、ジヒドロリポ酸をナトリウム塩その他の塩として得ることができ、それらの塩は水溶性に優れ、不快臭が少なく、粉末状で取り扱い易い点で好ましい。
有機電解合成の模式図である。
本発明では、下記化学式(I)で表されるα−リポ酸又はその塩を電極反応により下記化学式(II)で表されるジヒドロリポ酸又はその塩へと還元させることを主な電気化学反応として利用する。以下、特に区別しない限りは、α−リポ酸又はその塩を単にα−リポ酸と表記し、ジヒドロリポ酸又はその塩を単にジヒドロリポ酸と表記する場合がある。
Figure 0006794246
ジヒドロリポ酸は、上記化学式(II)で表される6,8−ジメルカプトオクタン酸である。ジヒドロリポ酸には、構造異性体によりR体とS体が存在する。通常、糖尿病や神経疾患の改善を示す生化学的活性がより高いのはR体である。そのため、出発原料としてR体のα−リポ酸を用いることで、より光学純度が高いR体のジヒドロリポ酸を製造することが可能である。
本発明はいわゆる有機電解合成の手法を用いる。有機電解合成は、電極反応による有機化合物の酸化あるいは還元反応を利用した化学合成である。電極反応は、電極と電解質溶液との界面で生じる、電気化学的な反応の総称である。図1は、有機電解合成の模式図である。陽極室3には電解液11及びそれに浸した陽極1が収容され、陰極室4には電解液12及びそれに浸した陰極2が収容される。電源6により、陽極1及び陰極2へそれぞれ正負の電位が印加される。陽極室3及び陰極室4にそれぞれ収容される電解液11、12は好ましくはセパレータ5を介して隔てられる。このセパレータ5により、陽イオンは陽極室から陰極室へと移動をすることで電気化学反応が進行し、生成したジヒドロリポ酸の移動を妨げることにより、陽極における酸化、すなわちα−リポ酸への合成反応を抑制することができる。
一般的に、両電極1、2に電源6から直流の電流を流すと、負の電位をもつ陰極2では金属イオンや有機化合物の還元反応などがおこり、正の電位をもつ陽極1では各種の酸化反応や、水酸化物イオンの放電、金属の溶出などがおこる。
電解液、換言すると電解質溶液は、溶媒である水や有機化合物に、目的とする反応物の原料である電解質を溶かした電気伝導性を有する溶液である。電解液には、電気伝導性をさらに向上せしめるために支持電解質と呼ばれる電解質をさらに加えてもよい。支持電解質としては、電極反応に対しては不活性な物質が好ましく、一般的には硫酸塩類や過塩素酸塩類などが使用される。
本発明では、陰極2においてα−リポ酸がジヒドロリポ酸へと電気化学的に還元されることを利用する。本発明では、電解液は水溶液系であってもよいし、有機系であってもよい。便宜的な区別のため、本明細書では水を10質量%以上含む電解液を用いる場合に液相が水溶液系であるとみなし、それ以外の場合には液相が有機系であるとみなす。
まず、液相が水溶液系である場合を例にとって本発明を説明する。
水溶液系では、ジヒドロリポ酸塩又はジヒドロリポ酸を得ることができる。陽極室3に収容する電解液11については、水溶液系の電気分解反応で、電解酸化により、電子を放出する反応であれば特に限定は無いが、一般的には、酸素発生反応を選択することが好ましい。
酸素発生反応における電解液11には水、反応の原料であるα−リポ酸又はその塩、さらに好ましくは支持電解質として過塩素酸や硫酸などの無機酸やその塩類、硫酸ナトリウムや硫酸カリウムなどの中性塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基やその塩基塩類、アンモニウムやテトラエチルアンモニウムなどの有機塩基やその有機塩類が含まれる。工業的生産な観点から安価で電気伝導性により優れる無機酸や無機塩基が支持電解質として好ましく用いられる。
陽極1の材質としては、特に限定はなく、例えば白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケルおよびその合金などの金属電極、Ti基体上に熱分解法により成膜された酸化イリジウム、酸化イリジウム−酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化ルテニウム−酸化チタン、酸化イリジウム−白金などの金属酸化物電極などが使用できる。耐久性の観点から、中性から酸性条件下では酸化イリジウムや酸化イリジウム−酸化タンタル、塩基性条件下では白金、ステンレス、ニッケルその合金の電極を使用することが好ましい。
電解液12中のα−リポ酸またはその塩の濃度は、工業的に生産するための十分な電気伝導性を得るため、1〜30重量%が好ましい。電解液12のpHは7.0を超えることが好ましい。電解液12のpHを高めるために、支持電解質として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅のいずれかのイオンを陽イオンとする塩が好ましく挙げられる。これらの塩は人間の必須ミネラルであり、ジヒドロリポ酸が医薬品やサプリメントなどに利用されることと整合的である。
上述したナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅を陽イオンとする塩としては水酸化物塩、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩などが挙げられ、安価で電気伝導性に優れる水酸化物塩、炭酸塩を用いるのがより好ましい。
電解液12中の支持電解質の濃度は好ましくは1〜20重量%であり、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。電解液12はpHが7.0超になっていれば良く、例えば電気伝導性に非常に優れるナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムを陽イオンとするイオン性物質である硫酸塩を主成分とする支持電解質に用い、pH7.0超とするために、上述したナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムを陽イオンとするイオン性物質としては水酸化物塩、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩が加えられた電解液でも使用することができる。
陰極室4内に配置される陰極2の材質としては、カーボンからなる材料もしくは白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウムおよび/またはその酸化物および/またはその複合物である材料が好適である。
カーボンからなる材料の電極としては、黒鉛、グラファイト、グラッシーカーボン、パイロリティックグラファイト、ベーサルプレインパイロリティックグラファイト、カーボンペースト、炭素繊維、高配向性熱分解グラファイト、アモルファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド電極などが挙げられる。前述したこれら材料は水素過電圧が非常に高いために、副反応である水素発生を抑える効果があり、工業的生産規模で安価に使用できる黒鉛、グラファイト、炭素繊維、アモルファスカーボンを使用するのが好適である。
白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウムおよび/またはその酸化物および/またはその複合物である電極材料としては、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウムの板や、TiまたはNi板状にめっきされた電極、TiまたはNi板上に熱分解法により熱分解法により成膜された白金、酸化イリジウム、酸化パラジウム、酸化イリジウム−酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化ルテニウム−酸化セリウム、酸化ルテニウム−酸化パラジウム、酸化イリジウム−白金などの金属酸化物電極などが使用できる。その中でも、水素または原子状水素を特異的に吸着、吸蔵できる白金、パラジウム、ルテニウムおよび/またはその酸化物および/またはその複合物である、これら材料は陰極として還元触媒作用を持つため、高い転換効率を達成するのに好適である。
ここで、上述した電極を用いて還元反応を行うと光学純度が高いジヒドロリポ酸が得られる理由を考察する。一般的に、有機合成でα−リポ酸を還元してジヒドロリポ酸を得る反応の場合には、反応槽内に投入した溶媒にα−リポ酸を入れて撹拌溶解させ、続いてヒドラジンや亜硫酸ナトリウムなどの還元剤水溶液を投入し、その系に適した温度、時間、撹拌速度を用いた条件下で還元反応を進行させる。しかしながら、還元剤の還元電位はその物質によって決まっているため反応制御が非常に困難であり、反応も3次元的に進行するため、還元反応がランダムに行われる。その結果、光学純度が高いR体のα−リポ酸を使用しても、鏡像異性体であるS体が一部生成してしまい、光学純度を高くすることが困難であった。
しかしながら、電極反応を用いた還元反応は、電極上でのみ還元反応が行われる2次元反応であるため、α−リポ酸分子が電極に吸着した場合にのみ還元反応が進行し、その反応も同様な形で行われるためR体のジヒドロリポ酸が生成すると思われる。さらに上述した電極を用いるとカーボン材料では水素過電圧が大きいため、副反応である水素発生を抑制する効果がある。また、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウムおよび/またはその酸化物および/またはその複合物である電極材料では、陰極上で生成する水素や原子状水素を吸着、吸蔵する特性を持つため、還元電極触媒能に優れている。
また、電極反応を用いた還元反応は、電位や電流によって反応も制御することが容易であり、大規模な生産設備でもS体が生成し難い条件で反応を行えるため、工業的規模での生産にも適した方法である。
陰極2において電極反応を起こさせるために、電源6から電流を供給して電極1、2間に電位差を生じさせる。電流量は、好ましくは0.1〜50A/dm、より好ましくは1〜35A/dmである。電流値を上げたほうが反応速度は速くなるが、電流値を上げると電圧が高くなり、陰極2では副反応の水の電気分解により水素発生が優先されてしまい、反応効率が低下する。逆に、電流値を低くし過ぎると、ジヒドロリポ酸の生産速度が極端に遅くなるため工業的生産規模で操業することが困難となる。よって、水の電気分解等が生じない範囲で電流量を上げるという観点から上記好適値が提示される。
電極反応を用いた還元反応にも欠点があり、2次元反応であるが故に反応終盤にα−リポ酸が電極上に吸着する確率が低下し、α−リポ酸からジヒドロリポ酸への転換率が99.5重量%以上にすることが難しいことがある。きわめて高い転換率を達成することを重視する場合は、金属メディエーターを用いた方法を用いることもできる。
電解液12には電解質であるα−リポ酸、支持電解質である水酸化物塩や酢酸塩などの他に、さらに、金属メディエーターとなるイオン性物質である第2の電解質を加えることができる。電解液12に電解質および支持電解質に含まれる陽イオン以外の、電析可能なメディエーターとなる金属イオンが溶解していることにより、陰極2に該金属イオンが接触し得る。前記の金属メディエーターとなる金属イオンとしては亜鉛イオンや鉄イオンやスズイオンなどが好ましくは挙げられる。これらの金属イオンの対陰イオンは特に限定は無く、水酸化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等であってもよいが、好ましくは、後処理を省くことができる水酸化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオンからなるイオン性物質が使用される。液相が水溶液系である場合に、陰極2の近傍に金属メディエーターの金属イオンが存在することの利点を、以下、説明する。
電解還元により電解質であるα−リポ酸がジヒドロリポ酸に転換されてα−リポ酸濃度が少なくなると陰極2とα−リポ酸の接触確率も同様に下がり、副反応である水素生成が主反応となり、高い転換率を達成するためには多くの電力と時間が必要となる。そこで、電析により陰極2上に析出した金属をメディエーターに用いて残りのα−リポ酸を化学反応によりジヒドロリポ酸へ転換し、高い転換率を達成することができるようになる。
このように、亜鉛等の金属が電子の受け渡し役(メディエータ)になることで、電流効率が上がり、反応終盤においても、α−リポ酸への反応確率が上がるため、高純度のジヒドロリポ酸を製造することができる。また、反応完了後、不純物の亜鉛等の金属は電極表面に析出するため、反応液への混入もなく、後処理が不必要になる。よって、陰極2との関係で、電気化学反応における還元反応において陰極2の表面に析出し得る金属の金属イオンとしては亜鉛イオンや鉄イオンやスズイオンが好ましい。
陰極2に接触し得る電解液12における第2の電解質の金属イオンの含有量は、好ましくは0.1〜5.0質量%であり、より好ましくは0.5〜4.0質量%である。反応中盤では、該金属イオンは電子を運ぶ役割(メディエータ)を担うため、反応効率を上げる観点からは高濃度が好ましく、他方、コンタミネーションを少なくする観点からは低濃度が好ましく、それらを勘案して、上記好適量が導出される。第2の電解質による金属イオンは、反応終盤にα−リポ酸を高変換率で還元するために特に好ましく、本発明は少量でも効果が期待できる。
また、第2の電解質である金属イオンについてはジヒドロリポ酸中の不純物となるため取り除く必要がある。そこで、ジヒドロリポ酸への転換率が99.8%以上の所望する値になった後も、暫く電流を流すことで陰極2上に第2の電解質である金属イオンを金属として回収することができる。金属を効率良く回収するためには、電流密度が小さく、電極面積が大きい方が良く、他方、ジヒドロリポ酸の生産速度を向上させる観点から、液相が水溶液系である場合の電流密度は0.1〜50A/dmが好適である。
以上、概観したように、陰極2に接触し得る電解液12に、電解質であるα−リポ酸またはα−リポ酸塩、第2の電解質である水酸化亜鉛などのイオン性物質、支持電解質である水酸化ナトリウムなどをすべて含有せしめることで、電流効率が向上し、α−リポ酸からジヒドロリポ酸への還元がきわめて高効率に進行することが期待される。その結果、より高い純度のジヒドロリポ酸を製造することができる。
好ましくは、陽極1に接触し得る電解液11と、陰極2に接触し得る電解液12とはセパレータ5で隔離される。セパレータ5は、陽イオンまたは陰イオンを自由に通すことができ、かつ、ジヒドロリポ酸イオンの通過を妨げるものが好ましい。セパレータ5として、ポリ塩化ビニル製やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製隔膜、ショ糖脂肪酸エステル製隔膜、又は陽イオン交換膜、陰イオン交換膜などが特に限定無く挙げられ、好ましくは、陽イオン交換膜がセパレータ5として挙げられ、陽イオン交換膜の中でも炭素−フッ素からなる疎水性テフロン(登録商標)骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖から構成されるパーフルオロカーボン材料である膜(例えば、ナフィオン(登録商標)膜、デュポン社製)が好ましく挙げられる。セパレータ5を設けることによって、電解還元したジヒドロリポ酸が陽極1でα−リポ酸へと酸化されてしまうことを防止することができる。
上述の製造方法により、用いる支持電解質が溶解したジヒドロリポ酸水溶液を得ることができる。得られた溶液中の不純物となる支持電解質を取り除くには、例えば、イオン交換樹脂、ゼオライト、キレート剤による金属イオンを捕集して水素イオンに交換する方法や、電気透析により金属イオンを水素イオンに交換する方法が挙げられるが、取り扱いが容易で、簡便な装置であるイオン交換樹脂法を用いるのが好ましい。
このように、本発明によれば、ジヒドロリポ酸は遊離酸あるいは塩の任意の形態で取得することができる。水への溶解性、臭いの少なさの点から、ジヒドロリポ酸は塩として取得することが好ましい。さらに、遊離酸は油状であるのに対して、ナトリウム塩等は粉末状であるため、取り扱い易い。
本発明によれば、ジヒドロリポ酸の製造は、液相が有機系であってもよい。
陽極室3、陰極室4に収容する電解液11、12の有機溶媒はα−リポ酸を溶解し得るものが好ましく、ニトリル類、アミド類、カーボネート類、アルコール類の溶媒が好適に挙げられ、具体的には、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、メタノール、エタノールなどが例示され、水溶液系よりも多くのα−リポ酸を溶解することができ、溶媒除去が容易なアセトニトリル、プロピレンカーボネート、メタノール、エタノールが好適である。
陽極室3に収容する電解液11については、有機溶媒系の電気分解反応で、電解酸化により、電子を放出する反応であれば特に限定は無いが、一般的には、有機物の酸化分解反応を選択することが好ましい。
有機物の酸化分解反応における電解液11の溶媒は例えばアセトニトリルであり、電解質としては酸化分解し易いシュウ酸や酢酸、ギ酸などが好ましく、支持電解質としては電気伝導性に優れる過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩などといった有機系での電解合成における公知の支持電解質材料を加えることができる。
陽極1の材質としては、特に限定はなく、例えば、グラファイトなどのカーボン材料からなる電極、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケルおよびその合金などの金属電極、Ti基体上に熱分解法により成膜された酸化イリジウム、酸化イリジウム−酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化ルテニウム−酸化チタン、酸化イリジウム−白金などの金属酸化物電極などが使用できる。有機溶媒系の電気分解反応における陽極には、耐久性の観点から、カーボン材料からなる電極を用いるのが好ましい。
電解液12に含まれるα−リポ酸またはその塩の濃度は、工業的に生産するための十分な電気伝導性を得るため、10〜30重量%が好ましい。α−リポ酸を有機溶媒に溶解した電解液12は電気伝導性が不十分であるため、支持電解質を加える。その支持電解質としては、電気伝導性に優れる過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩を用いることができる。
陰極室4内に配置される陰極2の材質としては、カーボンからなる材料もしくは白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウムおよび/またはその酸化物および/またはその複合物である材料が使用できるが、電位窓が広く耐久性に優れ、還元電極触媒能に優れるカーボンなる材料が適している。
カーボンからなる材料の電極としては、黒鉛、グラファイト、グラッシーカーボン、パイロリティックグラファイト、ベーサルプレインパイロリティックグラファイト、カーボンペースト、炭素繊維、高配向性熱分解グラファイト、アモルファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド電極などが挙げられる。
水溶液系の場合と同様に、α−リポ酸は陰極2において還元反応に供されて、ジヒドロリポ酸が生成する。液相が有機系である場合の電流密度は、好ましくは0.01〜10A/dmであり、より好ましくは0.05〜5A/dmであり、さらに好ましくは、0.1〜3A/dmである。溶媒の分解を避け及び電極寿命を延ばす観点から電流密度は低い方が好ましく、ジヒドロリポ酸の生産速度を向上させる観点からは電流密度は高い方が好ましく、これらを総合して、上述の好適範囲が提示される。上述したように、α−リポ酸は有機酸として供給することができるので、その場合は、ジヒドロリポ酸もまた有機酸として得られる。ジヒドロリポ酸の単離のために、溶媒を除去後に、生成物を洗浄して支持電解質を洗い流すことが好ましい。
本発明の製造方法を用いると、水系、有機系及び混合系の何れの場合において、純度および光学純度が高いジヒドロリポ酸を電解合成可能であるが、より低い電圧でより大きい電流を流せる水系の方が、電力原単位を小さくでき、安全性も高いため、工業的規模での生産には適している。
その他、本発明の製造方法における具体的な実施形態については、電解合成における公知の技術を適宜採り入れることができ、また、後述の実施例において好適態様が具体的に示される。
液相が水溶液系であっても、有機系であっても、本発明の製造方法によれば、高純度のジヒドロリポ酸を得ることができる。ここで、純度とは、α−リポ酸及びジヒドロリポ酸の合計質量に対するジヒドロリポ酸の質量のパーセンテージである。つまり、α−リポ酸のほぼ全量をジヒドロリポ酸へと還元させることができる。好適には、得られるジヒドロリポ酸の純度は90%以上であり、より好ましくは95%以上である。
先行技術による一般的な化学法では、高い純度の光学活性のα−リポ酸を用いても、得られるジヒドロリポ酸の光学活性は下がる。しかしながら、本発明の製造方法によれば、液相が水溶液系であっても、有機系であっても、還元反応の前後で反応物質の光学純度が維持される。具体的には光学活性のα−リポ酸を原料として用いれば、光学活性のジヒドロリポ酸が得られる、ということである。好適には、得られるジヒドロリポ酸の光学純度は90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは、98%以上である。このためには、高い光学純度のα−リポ酸を原料として用いればよい。
以下に実施例を挙げることによって本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれら実施例に限定されるわけではない。
液相が水溶液系である場合の参考例を示す。
セパレータとして疎水性テフロン(登録商標)骨格とスルホン酸基を持つナフィオン(登録商標)424(デュポン社製)を用いた隔膜電解槽(陽極室及び陰極室の容量が各々100mL)で、陽極1としてニッケル電極(面積:0.06dm2)、陰極2としてカーボン電極(面積:0.06dm2)を用いた。陽極室3に収容した電解液(陽極液)11及び陰極室4に収容した電解液(陰極液)12の構成は後述のとおりである。陽極室3、陰極室4両方にテフロン(登録商標)製撹拌子13、14を導入し、循環させながら5A/dm2の電流密度及び電解温度20℃にて、13時間通電した。
液相が有機系である場合の実施例を示す。
上述の水溶液系の場合から、以下の変更を施した。陽極1として、ニッケル電極の代わりにカーボン電極(面積:0.06dm)を用いた。陽極室3に収容する電解液11(陽極液)及び陰極室4に収容する電解液12(陰極液)は後述のとおりとした。液相が有機系である場合には、電解における電流密度は0.5A/dm、電解温度20℃にて、30時間通電にした。液相が水溶液系である場合との対比において、液相が有機系である場合は、水溶液系に比べ電気伝導性が低いため、電解における電流密度を高くし難く、通電時間が長くなった。
各実施例・参考例における電解液の構成は以下のとおりである。
α−リポ酸については光学純度が100%である東京化成工業社製(R)−α−リポ酸を用いた。
以下の記載において、「AN」はアセトニトリルを表す。

溶剤 含有物質 pH
参考例1(陰極室) 水(50mL) α−リポ酸(5g)、NaOH(2.5g) 13.5
(陽極室) 水(50mL) NaOH(15g) 13.8
参考例2(陰極室) 水(50mL) α−リポ酸(5g)、NH3(2.5g) 11.3
(陽極室) 水(50mL) NH3(15g) 12.0
実施例3(陰極室) AN(50mL) α−リポ酸(5g)、NH4BF4(5.2g)
(陽極室) AN(50mL) シュウ酸(6.54g)、NH4BF4(5.2g)
実施例4(陰極室) AN(50mL) α−リポ酸(6g)、NH4PF6(19.4g)
(陽極室) AN(50mL) シュウ酸(6.55g)、NH4PF6(19.4g)
参考例5(陰極室) 水(50mL) α−リポ酸(5g)、NaOH(2.5g)、Zn(OH)2(0.5g) 13.5
(陽極室) 水(50mL) NaOH(15g) 13.8
比較例1として、特許文献1の実施例2の製造を追試した。当該製造は、化学合成によるものであり、より詳細には、シクロヘキサノンとビニルアルキルエーテルを過酸化物でラジカル反応し、中間体のアルコキシエチルシクロヘキサノンをバイヤー−ビリガー酸化した後、チオ尿素で硫黄を導入する手法である。過酸化水素水を2−エトキシエチルシクロヘキサノンのギ酸溶液に添加して、45℃にて1時間反応させた。これにより得られた、8−エトキシ−6−ホルミルオキシオクタン酸を、チオ尿素の臭化水素酸水溶液に添加して36時間還流させた。この溶液を水酸化カリウム水溶液に供給してさらに還流させた。その後、塩酸を含有する洗浄塔及び水酸化ナトリウム及びナトリウムハイポクロリド溶液を含む洗浄塔に、反応液を通過させ、メチル第三ブチルエーテルでジヒドロリポ酸を抽出した。
比較例2として、特許文献2の実施例2の製造を追試した。当該製造は、ビスメシレートの分子内に硫化ナトリウムや硫黄を用いて硫黄元素を導入する化学合成によるものである。ビスメシレート溶液にメタノールとNaS・3HOと硫黄とからなる溶液を窒素雰囲気化で滴下して撹拌した。次いで、NaBH溶液を加えて撹拌し、硫酸を用いて、pH=9、さらに、pH=4にてジヒドロリポ酸をトルエン相に抽出した。
比較例3として、非特許文献1の72頁記載の実験を追試した。当該製造は、水素化ホウ素ナトリウムによる化学還元法であり、α−リポ酸をKPO及びNaBHで処理することにより、ジヒドロリポ酸を得た。
比較例4として、比較例3における還元剤をNaBHからチオ硫酸ナトリウムに変更してジヒドロリポ酸を得た。
電極反応の後に、以下のようにして遊離酸を単離した。
液相が水溶液系である場合は、電解反応液中の電解質による陽イオン1molに対し、2mol当量の陽イオン交換樹脂(三菱化学社製PK216)を含むカラムに通液し、つづいて、電解質による陰イオン1molに対し、2mol当量の陰イオン交換樹脂(三菱化学社製PA316)を含むカラムに通液し、電解質を除いた後、減圧蒸留(160〜161℃/0.7torr)によりジヒドロリポ酸を得た。
液相が有機系である場合は、電解反応液中の溶剤を減圧留去した後、水を加え、電解質及び支持電解質を溶解し、発生した油状分(ジヒドロリポ酸)を取り出し、減圧蒸留(160〜161℃/0.7torr)によりジヒドロリポ酸を得た。
得られたジヒドロリポ酸の純度は以下のように求めた。ここで、「純度」とは、α−リポ酸及びジヒドロリポ酸の合計質量に対するジヒドロリポ酸の質量のパーセンテージである。下記測定条件のもとで、高速液体クロマトグラフを求め、検量線を作成して純度(%)を算出した。
使用装置:WATERS ALLIANCE 2695
検出器:WATERS 2998 フォトダイオードアレイ検出器
カラム:Intersil ODS−3 5μm 4.6mmID 25センチ
温度:30℃
溶離液:A)アセトニトリル
B)50mMKHPO(pH2.4;HPO
A/B=52/48 (w/w)
流量:1.5mL/min
注入量:10μL
検出波長:210nm
検量線作成のために、α−リポ酸及びジヒドロリポ酸それぞれを100、200、300ppmに調整、高速液体クロマトグラフで測定して、α−リポ酸及びジヒドロリポ酸の濃度と検出強度の関係をグラフにし、検量線を作成した。この検量線に基づいて、各実施例・参考例で得られたジヒドロリポ酸の純度を算出した。
特許文献3に記載の培養法で得られたα−リポ酸、ジヒドロリポ酸を減圧蒸留(160〜161℃/0.7torr)により単離したジヒドロリポ酸について、下記条件のもとでのHPLCにより光学純度を測定した。
カラム:CHIRALPAK AD−RH
移動相:5mMりん酸二水素カリウム(pH3.5)/アセトニトリル=1/1
流速:0.6mL/min
カラム温度:25度
波長:UV215mm
注入量:10μL
試料濃度:20mg/10mL

この測定の結果、特許文献3に記載の培養法で得られたジヒドロリポ酸が光学純度100%であったため、これを、各実施例・参考例及び比較例における光学純度測定の標準品とした。
比旋光度は、日本分光社製 DIP−360、エタノール溶媒中で、濃度100mg/mLにて測定した。
各実施例・参考例で得られたジヒドロリポ酸の光学純度は以下の式から算出した、ここで、標準品の比旋光度は上述のとおり特許文献3記載の培養法で得られたジヒドロリポ酸の比旋光度である。
試料の光学純度(%ee)=100×(試料の比旋光度/標準品の比旋光度)
得られた結果は以下のとおりである。

純度(%) 光学純度(%)
参考例1 99.5 98
参考例2 99.4 98
実施例3 99.4 98
実施例4 99.4 98
参考例5 99.9 98
比較例1 75.4 72
比較例2 79.2 75
比較例3 88.9 85
比較例4 87.6 84
上記のとおり、いずれの実施例についてもα−リポ酸がごく少量しか残存しないという意味で高純度であり、しかも、光学純度も高いジヒドロリポ酸が得られた。
さらに、ジヒドロリポ酸の遊離酸とナトリウム塩との対比を行った。
サンプルとして、(1)参考例1で得たジヒドロリポ酸の遊離酸、(2)参考例1において最終的に遊離酸を得る前のナトリウム塩を、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製PK216)により過剰なナトリウム金属を除去し、ナトリウムとジヒドロリポ酸が等モルとなるように調整した後、スプレードライヤによりナトリウム塩を粉末化したもの、(3)参考例5において最終的に遊離酸を得る前のナトリウム塩を、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製PK216)により過剰なナトリウム金属を除去した、ナトリウムとジヒドロリポ酸が等モルとなるように調整した後、スプレードライヤによりナトリウム塩を粉末化したものを用意した。(1)のサンプルは油状であり、(2)及び(3)のサンプルは乾燥した粉末状である。
以下のようにして、水への溶解度を評価した。
1.20℃の恒温槽内にサンプル及び希釈水(純水)を24時間保存し、恒量とする。
2.100mL蓋付きフラスコに純水を50mL量りとる。
3.試料を0.5g(約1%)加えて蓋をし、一分間超音波を掛ける。
4.目視により、溶解を確認した後、さらにサンプル0.5g(約1%)加え蓋をし、一分間超音波を掛ける。
5.「4.」の操作を、溶け残りが出現するまで繰り返す。
6.溶け残りが発生したサンプル添加量から、溶解度を算出する。

溶解度(%)は、100(%)×X÷Yとして算出される。
ここで、Xは、(サンプル添加量)−0.5gであり、
Yは、(水の添加量)+(サンプル添加量)−0.5gである。
以下のようにして、不快臭を評価した。
温度25℃、湿度40%の雰囲気下で、板ガラス上にサンプルを50mgのせて、10分放置する。その後、5人のパネラーにサンプルから20cmの距離で匂いを嗅いでもらい、不快臭の官能評価を行った。以下の基準で判定した。
(評価方法)
3点:不快臭が全く感じられない
2点:不快臭がほとんど感じられない
1点:僅かに不快臭が感じられる
0点:不快臭が感じられる

5人のパネラーからの評価を集計して、以下のようにランク付けする。
A+:5人の平均点が2.5点超〜3.0点
A:5人の平均点が2.0点超〜2.5点以下
B:5人の平均点が1.5点超〜2.0点以下
C:5人の平均点が1.5以下
得られた結果は以下のとおりである。

溶解度(%) 不快臭平均点 不快臭ランク
サンプル(1) 0.0 1.8 C
サンプル(2) 36.7 2.4 A
サンプル(3) 37.5 2.8 A+
以上のように、ジヒドロリポ酸は遊離酸よりも塩にした方が水溶性が向上し、不快臭が減少し、粉末として取り扱い易いことが判明した。
1 陽極 2 陰極
3 陽極室 4 陰極室
5 セパレータ 6 電源
11、12 電解液 13、14 撹拌子

Claims (5)

  1. 液相中でα−リポ酸又はその塩を電極反応により還元させる工程を有し、前記液相が有機系であり、前記液相中に過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩から選ばれる少なくとも1種の支持電解質がさらに含まれる、ジヒドロリポ酸又はその塩の製造方法。
  2. 上記電極反応に用いる電流密度が0.01〜10A/dmである請求項記載の製造方法。
  3. 上記電極反応に用いる陰極が、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、それらの酸化物及びカーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 上記α−リポ酸又はその塩が光学活性体であり、製造されるジヒドロリポ酸又はその塩が光学純度90%以上の光学活性体である請求項1〜のいずれか1項記載の製造方法。
  5. 純度90%以上のジヒドロリポ酸又はその塩を得る製造方法であり、前記純度はα−リポ酸又はその塩及びジヒドロリポ酸又はその塩の合計質量に対するジヒドロリポ酸又はその塩の質量のパーセンテージである、請求項1〜のいずれか1項記載の製造方法。
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