以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.実施形態の概要]
(1)実施形態に係る方法は、対象エリア内における無線リソース割り当て方法であって、対象エリア内に含まれる第1エリア内に設置される第1路側機に、第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、前記対象エリア内に含まれる第2エリア内に設置される第2路側機に、前記第1無線リソースとは異なる第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、を含む。前記第1エリアは、前記対象エリアの境界に隣接する。前記第2エリアは、前記第1エリアに隣接し、前記第1エリアよりも前記境界から離れている。境界に隣接する第1エリアと、境界から遠い第2エリアとで、無線リソースを異ならせることで、境界付近における無線リソース割り当てにおいて生じる問題を、第1エリアに集中させることができる。第2エリアでは、境界から遠く、第1エリアとは無線リソースが異なるため、境界付近における無線リソース割り当てにおいて発生する問題を軽減できる。なお、第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てるステップと、第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てるステップとが、実行される順番は問わず、いずれが先でもよい。
ここで、対象エリアとは、無線リソースの割り当ての対象となるエリアである。対象エリアは、例えば、道路管理機関の管轄対象領域である。対象エリアは、例えば、都道府県の領域、市町村の領域などである。対象エリアは、複数の都道府県が集合したエリア、又は複数の市町村が集合した領域であってもよい。対象エリアが都道府県である場合、境界は都道府県の境界となる。なお、対象エリアは、行政区画に対応している必要はない。無線リソースとは、例えば、時間、周波数である。
(2)前記対象エリアは、前記第2エリアに隣接し前記第2エリアよりも前記境界から離れている第3エリアを、更に含むのが好ましい。前記方法は、前記第3エリア内に設置される第3路側機に、前記第1無線リソース及び前記第2無線リソースを含む無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、を更に含むのが好ましい。第3エリアでは、第1エリアから離れているので、第2エリアで割り当てられる第2無線リソースのほか、第1エリアで割り当てられる第1無線リソースも利用可能となる。
(3)前記第1無線リソースは、第4エリア内に設置される第4路側機に割り当てられる第4無線リソースとは異なり、前記第4エリアは、前記対象エリアとは異なる機関によって管轄される対象外エリアに含まれ、前記境界に隣接するのが好ましい。第1エリアの第1無線リソースが、対象エリア外の第4無線リソースと異なることで、第1エリアにおける無線リソース割り当ての際に、対象外エリアを管轄する機関との調整が不要となる。
(4)前記第2無線リソースは、前記第4無線リソースの少なくとも一部を含むのが好ましい。この場合、第2エリアでは、対象エリア外で利用されている無線リソースも利用できる。
(5)前記第1路側機に前記第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てることは、無線リソース割り当てのための第1アルゴリズムに基づいて行われ、前記第2路側機に前記第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てることは、前記第1アルゴリズムとは異なる、無線リソース割り当てのための第2アルゴリズムに基づいて行われるのが好ましい。境界付近の第1エリアと、境界から離れた第2エリアとでは、エリアの特質が異なることがあるため、異なるアルゴリズムによって、無線リソース割り当てを行うことで、エリアの特質に応じた適切な割り当てが可能となる。
(6)前記第1アルゴリズムは、複数の前記第1路側機の設置位置に基づいて、複数の前記第1路側機間の干渉関係を求めて、前記第1路側機に、前記第1無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが決定されるアルゴリズムであり、前記第2アルゴリズムは、前記第2路側機が設置されるエリアを区分した複数の部分エリア毎に、前記第2無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが予め決定されているアリゴリズムであるのが好ましい。第1アルゴリズムは、路側機設置密度が低いエリアに適しており、第2アルゴリズムは、路側機設置密度が高くなる可能性のあるエリアに適している。境界付近の第1エリアは、路側機設置密度が低いことが多いため、第1アルゴリズムが好適である。第2エリアは、都市部を含む可能性が高く、路側機設置密度が高い場所が生じ易いため、第2アルゴリズムが好適である。
(7)前記第1無線リソースは、第4エリア内に設置される第4路側機に割り当てられる第4無線リソースと共通であり、前記第4エリアは、前記対象エリアとは異なる機関によって管轄される対象外エリアに含まれ、前記境界に隣接するのが好ましい。この場合、境界付近の第1エリアでは、対象外エリアとの協調で、無線リソース割り当てが決定される。
(8)前記第1路側機に前記第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てることは、前記第1エリア及び前記第4エリアを一つのエリアとみなして、前記第1エリア内に設置される第1路側機及び前記第4エリア内に設置される第4路側機に対する前記第1無線リソースの少なくとも一部の割り当てを、無線リソース割り当てのための第1アルゴリズムに基づいて行うことでなされ、前記第2路側機に前記第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てることは、前記第1アルゴリズムとは異なる、無線リソース割り当てのための第2アルゴリズムに基づいて行われるのが好ましい。この場合、第1エリアと第4エリアではまとめて無線リソース割り当てがなされる。また、第2エリアでは、第1エリアとは異なるアルゴリズムで適切な無線リソース割り当てを行える。
(9)実施形態に係る路側機システムは、対象エリア内に含まれる第1エリア内に設置され、第1無線リソースの少なくとも一部が割り当てられた複数の第1路側機と、前記対象エリア内に含まれる第2エリア内に設置され、前記第1無線リソースとは異なる第2無線リソースの少なくとも一部が割り当てられた複数の第2路側機と、を含む。前記第1エリアは、前記対象エリアの境界に隣接し、前記第2エリアは、前記第1エリアに隣接し、前記第1エリアよりも前記境界から離れている。
(10)実施形態に係る方法は、無線リソース割り当て方法であって、第1対象エリア内に含まれる第1エリア内に設置される第1路側機に、第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、前記第1対象エリア内に含まれる第2エリア内に設置される第2路側機に、前記第1無線リソースとは異なる第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、第2対象エリア内に含まれる第4エリア内に設置される第4路側機に、第4無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、前記第2対象エリア内に含まれる第5エリア内に設置される第5路側機に、前記第4無線リソースとは異なる第5無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、を含む。前記第1エリアは、前記第1対象エリアの境界に隣接する。前記第2エリアは、前記第1エリアに隣接し、前記第1エリアよりも前記境界から離れている。前記第2対象エリアは、前記第1対象エリアとは異なる機関によって管轄され、前記境界に隣接する。前記第4エリアは、前記境界に隣接する。前記第5エリアは、前記第4エリアに隣接し、前記第4エリアよりも前記境界から離れている。
(11)実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、処理部、及び、対象エリア内に含まれる第1エリア及び第2エリアの位置を示すエリア情報を記憶する記憶部として機能させるためのコンピュータプログラムである。前記第1エリアは、前記対象エリアの境界に隣接する。前記第2エリアは、前記第1エリアに隣接し、前記第1エリアよりも前記境界から離れている。前記処理部は、路側機が設置される位置情報を取得し、前記エリア情報に基づいて、前記位置情報が示す前記路側機の設置位置が前記第1エリアに含まれると判定した場合、前記路側機を、第1割り当て処理の対象として決定し、前記エリア情報に基づいて、前記位置情報が示す前記路側機の設置位置が前記第2エリアに含まれると判定した場合、前記路側機を、第2割り当て処理の対象として決定することを含む処理を行う。前記第1割り当て処理は、前記第1エリア内に設置される路側機に、第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てる処理である。前記第2割り当て処理は、前記第2エリア内に設置される路側機に、前記第1無線リソースとは異なる第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てる処理である。
(12)実施形態に係る方法は、無線リソース割り当て方法であって、第1アルゴリズムに基づいて、第1エリア内に設置される第1路側機に、第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、第2アルゴリズムに基づいて、前記第1エリアよりも路側機設置密度が高い第2エリア内に設置される第2路側機に、第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てること、を含み、前記第1アルゴリズムは、複数の前記第1路側機の設置位置に基づいて、複数の前記第1路側機間の干渉関係を求めて、前記第1路側機に、前記第1無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが決定されるアルゴリズムであり、前記第2アルゴリズムは、前記第2路側機が設置されるエリアを区分した複数の部分エリア毎に、前記第2無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが予め決定されているアリゴリズムである。エリア毎に異なるアルゴリズムで無線リソース割り当てをすることで、エリアの特質に応じて適切に割り当てを行える。
(13)前記第2エリアは、前記第1エリアに隣接し、前記第2無線リソースは、前記第1無線リソースとは異なるのが好ましい。
(14)実施形態に係るシステムは、無線リソース割り当てシステムであって、第1アルゴリズムに基づいて、第1エリア内に設置される第1路側機に、第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てる処理と、第2アルゴリズムに基づいて、前記第1エリアよりも路側機設置密度が高い第2エリア内に設置される第2路側機に、第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てる処理と、を含む処理を実行する処理部を備え、前記第1アルゴリズムは、複数の前記第1路側機の設置位置に基づいて、複数の前記第1路側機間の干渉関係を求めて、前記第1路側機に、前記第1無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが決定されるアルゴリズムであり、前記第2アルゴリズムは、前記第2路側機が設置されるエリアを区分した複数の部分エリア毎に、前記第2無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが予め決定されているアリゴリズムである。
(15)実施形態に係るコンピュータプログラムは、第1アルゴリズムに基づいて、第1エリア内に設置される第1路側機に、第1無線リソースの少なくとも一部を割り当てる処理と、第2アルゴリズムに基づいて、前記第1エリアよりも路側機設置密度が高い第2エリア内に設置される第2路側機に、第2無線リソースの少なくとも一部を割り当てる処理と、を含む処理を実行させるためのコンピュータプログラムである。前記第1アルゴリズムは、複数の前記第1路側機の設置位置に基づいて、複数の前記第1路側機間の干渉関係を求めて、前記第1路側機に、前記第1無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが決定されるアルゴリズムである。前記第2アルゴリズムは、前記第2路側機が設置されるエリアを区分した複数の部分エリア毎に、前記第2無線リソースに含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが予め決定されているアリゴリズムである。
[2.実施形態の詳細]
[2.1 無線リソース割り当てシステム]
図1に示す複数の無線リソース割り当てシステム10は、それぞれ、X県用の無線割り当てシステム10及びY県用の無線リソース割り当てシステム10である。無線リソース割り当てシステム10は、記憶部11と処理部12と、を備えている。無線リソース割り当てシステムは、無線リソース割り当てのための処理を行うコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータによって構成されている。コンピュータは、コンピュータプログラムが実行されることにより、図1に示す記憶部11及び処理部12としての機能を発揮する。
記憶部11は、上記のコンピュータプログラム、及びエリア情報11aを記憶している。エリア情報11aは、県内のエリアを判定するための情報である。エリア情報11aについては後述する。処理部12は、図1に示す各種の処理12a〜12cを実行する。エリア判定処理12aは、路側機が後述のいずれのエリアに属するかを判定する処理である。第1割り当て処理12b及び第2割り当て処理12cは、路側機へ無線リソースを割り当てるための処理である。これらの処理12a〜12cについては後述する。
[2.2 無線リソースと路側機システム]
本実施形態において割り当て対象となる無線リソースは、図2(a)に示すタイムスロットSL1〜SL16である。タイムスロットSL1〜SL16は、ITS用路側機(基地局)10A,10B,10D,10Eに割り当てられる。図2(a)に示すように、複数(16個)のタイムスロットSL1〜S16は、所定時間長(100ms)を有する制御周期内において、設定されている。制御周期は繰り返し生じる。なお、制御周期内において、各タイムスロットSL1〜S16の間の期間は、車載器などの移動局による通信に用いられる。
このようなタイムスロットSL1〜SL16は、700MHz帯高度道路交通システム(ARIB STD−T109)において規定されている。本実施形態の高度道路交通システムでは、図2(a)に示すタイムスロットSL1〜SL16が、使用可能な無線リソースとして扱われる。本実施形態では、これら16個のタイムスロットSL1〜SL16のうちの少なくとも1個が、各路側機に割り当てられる。なお、各路側機への無線リソース割り当ては、各タイムスロット内の一部の時間(サブタイムスロット)単位で行われても良い。
図2(b)は、X県とY県との県境B付近に配置された複数の路側機10A,10B,10D,10Eを示している。図2(b)において、県境Bよりも左上側がX県のエリア(第1対象エリア)であり、県境Bよりも右下側がY県のエリア(第2対象エリア)である。X県には、複数の路側機10A,10Bを有してなる路側機システム1Aが設けられ、Y県には、複数の路側機10D,10Eを有してなる路側機システム1Bが設けられている。
図2(b)において、各路側機10A,10B,10D,10Eは、格子状の道路の交差点に設置されており、丸印で示されている。丸印内の数字は、タイムスロットSL1〜SL16のスロット番号を示しており、1〜16の範囲の値である。例えば、丸印内の数字が「1」であれば、その丸印で示される路側機には、第1タイムスロットSL1が割り当てられていることを示す。また、丸印内の数字が「15」であれば、その丸印で示される路側機には、第15タイムスロットSL15が割り当てられていることを示す。同一のタイムスロットが割り当てられた複数の路側機が近接していると、電波干渉が生じ易くなるため、同一のタイムスロットが割り当てられた複数の路側機の間の距離は十分に大きくするのが好ましい。
本実施形態において、X県内の路側機10A,10Bに対する無線リソース割り当ては、X県を管轄する第1機関の責任で行われる。Y県内の路側機10D,10Eに対する無線リソース割り当ては、Y県を管轄する第2機関の責任で行われる。換言すると、第1機関の管轄する第1対象エリアはX県であり、第2機関の管轄する第2対象エリアはY県である。第1機関にとって、Y県は管轄ではなく、対象外エリアであり、第2機関にとって、X県は管轄ではなく、対象外エリアである。なお、X県内の無線リソース割り当ては、X県の無線リソース割り当てシステム10によって行われ、Y県内の無線リソース割り当ては、Y県の無線リソース割り当てシステム10によって行われる。
第1機関及び第2機関は、それぞれ別機関である。各機関は、700MHz帯高度道路交通システム(ARIB−STD T109)に従った高度道路交通システムを、各機関が管轄する対象エリア内で管理・運用する。すなわち、第1機関は、X県内の路側機システム1Aを構成する複数の路側機10A,10Bに対する、タイムスロットの割り当てを、基本的に独自に決定する。第2機関は、Y県内の路側機システム1Bを構成する複数の路側機10D,10Eに対する、タイムスロットの割り当てを、基本的に独自に決定する。
第1機関及び第2機関それぞれが、完全に独自に、自県内のことだけを考えて、タイムスロットSL1〜SL16の割り当てを決定すると、県境付近のX県内路側機10A及びY県内路側機10Dに同じタイムスロットが割り当てられるおそれがある。この場合、X県からY県に電波干渉が生じ、Y県からもX県に電波干渉が生じる相互干渉が発生する。
そこで、本実施形態では、図2に示すような無線リソース割り当てが行われる。図2では、X県及びY県がそれぞれ2つのエリアに分けられている。すなわち、X県は、Y県との県境Bに隣接する相互干渉エリア(第1エリア)101と、相互干渉エリア101の内側にある独立エリア(第2エリア)102と、に分けられている。相互干渉エリア101内に設置される路側機10Aを第1路側機といい、独立エリア102内に設置される路側機10Bを第2路側機という。Y県は、X県との県境Bに隣接する相互干渉エリア(第4エリア)104と、相互干渉エリア104の内側にある独立エリア(第5エリア)105と、に分けられている。相互干渉エリア104内に設置される路側機10Dを第4路側機といい、独立エリア105内に設置される路側機10Eを第5路側機という。
各県の県内領域の大部分のエリアは、独立エリア102,105であり、県境付近のエリアが相互干渉エリア101,104である。独立エリア102,105は、県内の大部分の領域であるため、都市部を含むことが多く、路側機設置密度が比較的高くなる場所が生じることが多い。一方、相互干渉エリアは、県境B付近であるため、郊外であることが多く、路側機設置密度が比較的低くなる。
相互干渉エリア101,104は、その内部に設置された路側機10A,10Dが他県の路側機に干渉を与えるとともに、他県の路側機から干渉を受けるおそれのあるエリアである。相互干渉エリア101,104は、それぞれ、県境Bに沿った幅狭のエリアである。相互干渉エリア101,104のエリア幅W1,W2は、1.5kmから2km程度である。なお、エリア幅W1,W2は、それぞれ、相互干渉エリア101,104と独立エリア102,105との境界111,121から、県境Bまでの間隔である。
一方、独立エリア102,105は、他県の路側機に干渉を与えにくく、他県の路側機から干渉を受けにくいエリアである。独立エリア102,105は、相互干渉エリア101,104に隣接するが、相互干渉エリア101,104よりも県境Bから離れているので、相互干渉が生じないか、又は相互干渉が弱い。
図2では、16個のタイムスロットSL1〜SL16のうち、相互干渉エリア101,104と独立エリア102,105とでは、路側機へ割り当て可能な無線リソース(タイムスロット)が分けられている。図2(a)に示すように、16個のタイムスロットSL1〜SL16のうち、第1タイムスロットSL1から第10タイムスロットSL10までの10個のタイムスロットは、独立エリア102,105の路側機10B,10Eへの割り当て用である。残りの第11タイムスロットSL11から第16タイムスロットSL16までの6個のタイムスロットは、相互干渉エリア101,104の路側機10A,10Dへの割り当て用である。
図2では、独立エリア102,105は、相互干渉エリア101,104よりも多くの割り当て可能な無線リソースを有する。独立エリア102,105は、相互干渉エリア101,104に比べて非常に大きい上、路側機の設置密度が高くなると想定されるため、割り当て可能な無線リソースが多いことで、無線リソース割り当てが容易となる。
ここで、X県の相互干渉エリア(第1エリア)101の第1路側機10Aに割り当てられるタイムスロットSL11〜SL16を第1無線リソースといい、X県の独立エリア(第2エリア)102の第2路側機10Bに割り当てられるタイムスロットSL1〜SL10を第2無線リソースという。また、Y県の相互干渉エリア(第4エリア)104の第4路側機10Dに割り当てられるタイムスロットSL11〜SL16を第4無線リソースともいい、Y県の独立エリア(第5エリア)105の第5路側機10Eに割り当てられるタイムスロットSL1〜SL10を第5無線リソースともいう。ここでは、図2に示すように、第1無線リソースと第4無線リソースとは共通であり、第2無線リソースと第5無線リソースも共通である。
独立エリア102,105は県境Bから離れているため、各県の無線リソース割り当てシステム10は、独立エリア102,105内の路側機10B,10Eに対しては、他県のことを考慮せずに、独自に、無線リソース割り当てを決定することができる。つまり、X県のシステム10は、Y県内での割り当てを考慮せずに、独立エリア102内の複数の路側機10Bに対して、第2無線リソースであるスロットSL1〜SL10の少なくとも一部を割り当てる。また、Y県のシステム10は、X県内での割り当てを考慮せずに、独立エリア105内の複数の路側機10Eに対して、第5無線リソースであるスロットSL1〜SL10の少なくとも一部を割り当てる。なお、無線リソースの割り当ての処理は、新規に路側機が設置される際に行われる。新規に路側機が設置される場合、無線リソース割り当て処理は、新規に設置される路側機へ割り当てられる無線リソースを決めるだけでもよいが、既設の路側機に割り当てられた無線リソースの変更を伴っても良い。
相互干渉エリア101,104に関しては、各県が独自に決定するのではなく、隣接する県の機関同士で調整し合いながら、相互干渉エリア101,104内の路側機10A,10Dへの無線リソース割り当てを決定することができる。相互干渉エリア101,104への割り当て用の無線リソース(タイムスロットSL11〜SL16)は、独立エリア102,105への割り当て用の無線リソース(タイムスロットSL1〜SL10)とは異なるため、相互干渉エリア101,104での割り当ては、自県及び他県の独立エリア102,105での割り当てを考慮せずに、行うことができる。
ここでは、X県及びY県の相互干渉エリア101,104の無線リソース割り当てに関しては、2つの相互干渉エリア101,104を一つのエリアとみなす。つまり、県境Bを介して存在する複数の相互干渉エリアを一つのエリアとみなす。一つのエリアとしてみなされた複数の相互干渉エリア101,104における無線リソースの割り当て処理では、各路側機10A,10Dに相互干渉が生じないように、相互干渉エリア用の第1無線リソース(=第4無線リソース)の範囲内で割り当てを決定することで、県境B付近における相互干渉の発生を防止できる。相互干渉エリアは、県内領域のごく一部でよく、路側機設置密度も低いと想定されるため、複数の県にまたがる相互干渉エリアを一つのエリアとみなしても、各県の機関は独自性を高く維持できる。
[2.3 無線リソース量及び無線リソース割り当て変更頻度に関する考察]
図3は、無線リソース量及び無線リソース割り当て変更頻度(変更率)が、路側機設置密度の増加に伴ってどのように変化するかを示している。なお、路側機設置密度は、時間が経過すると新設路側機が増加するため、増加する。図3(a)は、X県及びY県それぞれが自己中心的にリソース割り当てを決定する場合であり、図3(b)は、X県だけが妥協してリソース割り当てを決定する場合であり、図3(c)は、各県双方が妥協してリソース割り当てを決定する場合である。
自己中心的な決定では、各県が完全に独自に、自県内のことだけを考えて、タイムスロットSL1〜SL16の割り当てを決定することになる。この場合、各県の独自性が高まるが、他県のために自県における既割り当てのリソース変更を行わないことになるため、図3(a)に示すように、路側機の数が増えて路側機設置密度が増加すると、必要となる無線リソース数がX県及びY県ともに増加する。このため、無線リソース不足が生じる。ただし、自己中心的な決定では、他県のために自県における既割り当てのリソース変更を行う必要がないので、リソース変更率の増加は緩やかとなる。
Y県のリソース割り当ての仕方に応じて、X県だけが妥協して、X県内における既割り当てのリソース変更を行う場合、Y県は自県内のことだけを考えて割り当てを決定できる。したがって、図3(b)に示すように、Y県における路側機設置密度は緩やかである。一方、X県では、路側機設置密度がある程度大きくなると、Y県における路側機設置密度増加との相乗効果によって、X県内における既割り当てのリソース変更を行う必要性が高まる。この結果、リソース変更率が急激に増加し、割り当て変更や変更後の動作確認等の調整負荷が増加する。また、X県では、干渉が生じないようなリソース割り当てを行うために必要なリソース量が増加しやすい。
このように、自己中心的な決定や一方の県の妥協では、無線リソース量の増加や無線リソース割り当てを変更する頻度の増加を招き易い。これに対して、図3(c)に示すように、各県双方が妥協してリソース割り当てを決定する場合、無線リソース量及びリソース変更率が大幅に増加することを防止でき、無線リソース量の増加及びリソース変更率の増加の程度を、各県において適切な範囲に抑えることができる。
図2に示す無線リソース割り当ては、相互干渉エリア101,104において、双方妥協型となるため、無線リソース量の増加及びリソース変更率の増加の程度を、各県において適切な範囲に抑えることができる。しかも、独立エリア101,104は、自己中心的に無線リソース割り当てを決定できるため、各県の独自性も維持できる。
[2.4 相互干渉エリア用無線リソースの都道府県毎割り当て]
図4は、相互干渉エリ101,104への割り当て用であるタイムスロットSL11〜SL16を、各県それぞれに事前割り当てした場合のリソース割り当て方法を示している。第1タイムスロットSL1から第10タイムスロットSL10は、図2と同様に独立エリア102,105の路側機10B,10Eへの割り当て用である。一方、第11タイムスロットSL11から第16タイムスロットSL16は、相互干渉エリア101,104への割り当て用であるが、第11タイムスロットSL11から第16タイムスロットSL16は、各県用に予め分けられている。つまり、各県の相互干渉エリア101,104の路側機10A,10Dは、互いに異なるタイムスロットを使用する。
例えば、X県の相互干渉エリア101への割り当て用として、第11タイムスロットSL11及び第12タイムスロットSL12が確保され、Y県の相互干渉エリア104への割り当て用として、第13タイムスロットSL13及び第14タイムスロットSL14が確保されているものとする。この場合、各県の相互干渉エリア101,104において使用可能なタイムスロット数は少なくなるが、各県の相互干渉エリア101,104において使用されるタイムスロットは異なるため、各県の無線リソース割り当てシステム10は、相互干渉エリア101,104においても独自に無線リソース割り当てを行うことができる。
ここで、図4(a)(b)に示すように、X県の相互干渉エリア(第1エリア)101に割り当てられるタイムスロットSL11,SL12を第1無線リソースといい、X県の独立エリア(第2エリア)102に割り当てられるタイムスロットを第2無線リソースという。第2無線リソースには、独立エリア用のタイムスロットSL1〜SL10のほか、相互干渉エリア用のタイムスロットSL11〜SL16のうち、X県(自県)の相互干渉エリア101では使用されないタイムスロットSL13〜SL16も含まれる。X県の独立エリア102では、X県(自県)の相互干渉エリア101で使用されないがY県(他県)の相互干渉エリア104で使用されるタイムスロットを使用しても、相互干渉が生じない。したがって、X県の独立エリア102では、タイムスロットSL13〜SL16を、第2無線リソースとして使用でき、使用可能なリソース量が多くなる。
また、Y県の相互干渉エリア(第4エリア)104に割り当てられるタイムスロットSL13、SL14を第4無線リソースといい、Y県の独立エリア(第5エリア)105に割り当てられるタイムスロットを第5無線リソースという。第5無線リソースには、独立エリア用のタイムスロットSL1〜SL10のほか、相互干渉エリア用のタイムスロットSL11〜SL16のうち、Y県(自県)の相互干渉エリア104では使用されないタイムスロットSL11,SL12,SL15,SL16も含まれる。Y県の独立エリア105では、Y県(自県)の相互干渉エリア104で使用されないがX県(他県)の相互干渉エリア101で使用されるタイムスロットを使用しても、相互干渉が生じない。したがって、Y県の独立エリア105では、タイムスロットSL11,SL12,SL15,SL16を、第5無線リソースとして使用でき、使用可能なリソース量が多くなる。
図4(a)(b)に示すように、X県の独立エリア102で使用される第2無線リソースとY県の独立エリア105で使用される第5無線リソースは、一部(SL1〜SL10)において共通する。X県の相互干渉エリア101で使用される第1無線リソースSL11,SL12と、Y県の相互干渉エリア104で使用される第4無線リソースSL13,14とは異なる。X県の独立エリア102で使用される第2無線リソースSL1〜SL10,SL13〜SL16は、第4無線リソースSL13,SL14を含む。Y県の独立エリア105で使用される第5無線リソースSL1〜SL10,SL11,SL12,SL15,SL16は、第1無線リソースSL11,SL12を含む。
X県の独立エリア102で使用される第2無線リソースSL1〜SL10,SL13〜SL16のうち、本来的に独立エリア用であるタイムスロットSL1〜SL10を独立エリアにおける割り当てのための基本無線リソースとし、本体的には相互干渉エリア用であるタイムスロットSL13〜SL16を予備無線リソースとして用いることができる。例えば、X県の独立エリア102において、通常の無線リソース割り当てでは、基本無線リソースSL1〜SL10だけを用いる一方、密に路側機が設置されて、特異な干渉関係が生じるエリアについて、そのエリアの路側機には、予備無線リソースSL13〜SL16を割り当てることで、密に路側機が設置されたエリアでのリソース割り当てを柔軟に実施できる。同様の割り当て方は、Y県の独立エリア105においても行える。
[2.5 独立エリア中心部の無線リソース割り当て]
図5は、各県の独立エリア(相互干渉エリアを除くエリア)を周辺部102と中心部103に分けた場合の無線リソース割り当て方法を示している。図5では、X県の独立エリア1020が、その周辺部102と中心部103に分けられている。以下では、独立エリア1020のうち周辺部102を第2エリアといい、独立エリア1020のうち中心部103を第3エリアという。第3エリア103は、第2エリア102に隣接し、相互干渉エリアである第1エリアよりも県境Bから離れている。
したがって、図5では、X県は、県境Bに隣接する相互干渉エリア(第1エリア)101と、相互干渉エリア101に隣接する独立エリア周辺部(第2エリア)102と、独立エリア周辺部102に隣接する独立エリア中心部(第3エリア)103と、に分けられている。相互干渉エリア101内に設置された路側機10Aを第1路側機といい、独立エリア周辺部102内に設置された路側機10Bを第2路側機といい、独立エリア中心部103内に設置された路側機10Cを第3路側機という。
X県の県内領域の大部分のエリアは、独立エリア中心部103である。X県の独立エリア周辺部102は、X県の相互干渉エリア101との相互干渉が生じるおそれがあるが、Y県との相互干渉は生じないエリアである。X県の独立エリア中心部103は、X県の相互干渉エリア101との相互干渉も生じないエリアである。図5では、Y県の独立エリア中心部を図示していないが、Y県も同様に、3つのエリアに分けられる。
独立エリア周辺部102は、相互干渉エリア101と独立エリアとの境界111に沿った幅狭のエリアである。独立エリア周辺部102のエリア幅W1は、1.5kmから2km程度である。なお、独立エリア周辺部102のエリア幅W1、相互干渉エリア101と独立エリアとの境界111から、独立エリア周辺部102と独立エリア中心部103との境界112までの間隔である。
図5の独立エリア周辺部102では、図4の独立エリア102と同様に、第2無線リソースが利用可能である。独立エリア中心部103では、第2無線リソースだけでなく、相互干渉エリア101への割り当て用の第1無線リソースも利用可能である。すなわち、独立エリア中心部103では、全てのタイムスロットSL1〜SL16を利用可能である。独立エリア中心部103は、相互干渉エリア101との間の相互干渉も生じないため、相互干渉エリア101で利用される無線リソースを含む多くの無線リソースを利用可能である。
独立エリア中心部103で利用される無線リソースは、自県(X県)の相互干渉エリア101用の無線リソースを含むことができるほか、他県(Y県)の相互干渉エリア102用の無線リソースを含むこともできる。
X県の独立エリア中心部103で使用される無線リソースSL1〜SL16のうち、独立エリア周辺部102でも使用可能な無線リソースSL1〜SL10,SL13,SL16を、独立エリア中心部103における割り当てのための基本無線リソースとし、相互干渉エリア101で使用可能な無線リソースSL11,SL12を予備無線リソースとして用いることができる。例えば、X県の独立エリア中心部103において、通常の無線リソース割り当てでは、X県の独立エリア周辺部102と同様に、基本無線リソースSL1〜SL10,SL13〜SL16だけを用いる一方、密に路側機が設置されて、特異な干渉関係が生じるエリアについて、そのエリアの路側機には、予備無線リソースSL11,SL12を割り当てることで、密に路側機が設置されたエリアでのリソース割り当てを柔軟に実施できる。同様の割り当て方は、Y県の独立エリア1050においても行える。
図6は、互いに隣接するX県、Y県、及びZ県それぞれを、前述の3つのエリアに分けた様子を示している。図6では、X県は、県境B1を介してY県と接しており、県境B2を介してZ県と接している。X県の相互干渉エリア101は、県境B1,B2に沿って設けられている。X県の相互干渉エリア101の内側には、独立エリア1020が設けられている。独立エリア1020は、相互干渉エリア101に隣接する独立エリア周辺部102と、独立エリア周辺部102の内側に設けられた独立エリア中心部103と、を含む。
Y県は、県境B1を介してX県と接しており、県境B3を介してZ県と接している。Y県の相互干渉エリア104は、県境B1,B3に沿って設けられている。Y県の相互干渉エリア104の内側には、独立エリア1050が設けられている。独立エリア1050は、相互干渉エリア104に隣接する独立エリア周辺部105と、独立エリア周辺部106の内側に設けられた独立エリア中心部(第6エリア)106と、を含む。なお、独立エリア周辺部105内に設置された路側機を第5路側機といい、独立エリア中心部106内に設置された路側機を第6路側機という。
Z県の相互干渉エリア107は、県境B2,B3に沿って設けられている。Z県の相互干渉エリア107の内側には、独立エリア1080が設けられている。独立エリア1080は、相互干渉エリア107に隣接する独立エリア周辺部108と、独立エリア周辺部108の内側に設けられた独立エリア中心部109と、を含む。なお、相互干渉エリア107内に設置された路側機を第7路側機といい、独立エリア周辺部108内に設置された路側機を第8路側機といい、独立エリア中心部109内に設置された路側機を第9路側機という。
図7は、図6に示すX県の相互干渉エリア101、独立エリア周辺部102、独立エリア中心部103それぞれにおいて、路側機に割り当て可能なタイムスロットを示している。相互干渉エリア101において、第1路側機10Aに割り当て可能な無線リソースはタイムスロットSL11,SL12である。相互干渉エリア101では、その他のタイムスロットは使用不可である。独立エリア周辺部102において、第2路側機10Bに割り当て可能な無線リソースは、本来的に独立エリア1020で使用可能なタイムスロットSL1〜SL10のほか、他県の相互干渉エリア104,107で使用されるタイムスロットSL13〜SL16の少なくなくとも一部である。つまり、独立エリア周辺部102において、相互干渉エリア101で使用されるタイムスロットSL11,SL12は使用不可である。一方、独立エリア中心部103では、独立エリア周辺部102で使用不可であるタイムスロットSL11,SL12の少なくとも一部を使用可能であり、ここでは、全タイムスロットSL1〜SL16を第3路側機10Cへ割り当て可能である。
図8は、図6に示すY県の相互干渉エリア104、独立エリア周辺部105、独立エリア中心部106それぞれにおいて、路側機に割り当て可能なタイムスロットを示している。相互干渉エリア104において、第4路側機10Dに割り当て可能な無線リソースはタイムスロットSL13,SL14である。相互干渉エリア104では、その他のタイムスロットは使用不可である。独立エリア周辺部105において、第5路側機10Eに割り当て可能な無線リソースは、本来的に独立エリア1050で使用可能なタイムスロットSL1〜SL10のほか、他県の相互干渉エリア101,107で使用されるタイムスロットSL11,SL12,SL15,SL16の少なくとも一部である。つまり、独立エリア周辺部105において、相互干渉エリア104で使用されるタイムスロットSL13,SL14は使用不可である。一方、独立エリア中心部106では、独立エリア周辺部105で使用不可であるタイムスロットSL13,SL14の少なくとも一部を使用可能であり、ここでは、全タイムスロットSL1〜SL16を第6路側機へ割り当て可能である。
図9は、図6に示すZ県の相互干渉エリア107、独立エリア周辺部108、独立エリア中心部109それぞれにおいて、路側機に割り当て可能なタイムスロットを示している。相互干渉エリア107において、第7路側機に割り当て可能な無線リソースはタイムスロットSL15,SL16である。相互干渉エリア107では、その他のタイムスロットは使用不可である。独立エリア周辺部108において、第6路側機に割り当て可能な無線リソースは、本来的に独立エリア1080で使用可能なタイムスロットSL1〜SL10のほか、他県の相互干渉エリア101,104で使用されるタイムスロットSL11〜SL14の少なくとも一部である。つまり、独立エリア周辺部108において、相互干渉エリア107で使用されるタイムスロットSL15,SL16は使用不可である。一方、独立エリア中心部109では、独立エリア周辺部108で使用不可であるタイムスロットSL15,SL16の少なくとも一部を使用可能であり、ここでは、全タイムスロットSL1〜SL16を第9路側機へ割り当て可能である。
図7〜図9に示すように、独立エリア中心部103,106,109では、相互干渉エリア101,104,107で使用される無線リソースを利用可能であるため、多くの無線リソースを確保できる。
[2.6 無線リソース割り当てシステムによる処理]
無線リソース割り当ては、相互干渉エリアと独立エリアとでは、別々の処理によって行われる。ここでは、相互干渉エリア内の路側機に対する無線リソース割り当てのための処理を、第1割り当て処理12bといい、独立エリア内の路側機に対する無線リソース割り当てのための処理を、第2割り当て処理12cという(図1参照)。それぞれの処理12b,12cは、共通のアルゴリズムで無線リソース割り当てを行うものであってもよいが、本実施形態では、エリアの特質の違いに鑑みて、異なるアルゴリズムで無線リソース割り当てを行う。
相互干渉エリアと独立エリアとでは、割り当て処理12b,12cが異なるため、各県の無線リソース割り当てシステム10は、自県内に設置される路側機が、相互干渉エリア内に位置するのか、独立エリア内に位置するのかを区別する必要がある。また、独立エリアが、周辺部と中心部とに区分されている場合、周辺部と中心部とでは使用可能な無線リソースが異なるため、独立エリア内の路側機が周辺部に位置するのか中心部に位置するのかを区別する必要がある。
図10は、路側機がどのエリアに属するのかを判定するエリア判定処理12a(図1参照)を示している。エリア判定処理12aは、各県毎に、無線リソース割り当てシステム10によって行われる。このエリア判定処理12aでは、ステップS11として、路側機の位置(県内の位置)の取得が行われる。位置は、地理座標系における位置として表されても良いし、道路地図上の位置でもよい。位置の取得は、例えば、ユーザ入力によって行われても良いし、記憶部11aからの取得又は他のシステムからの通信による取得でもよい。
ステップS11にて取得された位置情報は、ステップS12において、記憶部11に記憶されているエリア情報11aと対比される。エリア情報11aは、県内エリアを、相互干渉エリア(第1エリア)101,104,107、独立エリア周辺部102,105,108、独立エリア中心部103,106,109に区分した情報である。独立エリアが周辺部と中心部に区分されていない場合、エリア情報11aは、県内エリアを、相互干渉エリア101,104、独立エリア102,105に区分した情報となる。
位置情報とエリア情報11aとの対比に基づいて、ステップS13では、位置情報が示す路側機の位置が、いずれのエリアに属するのか判定される。ステップS13の判定において、路側機の位置が、第1エリアである相互干渉エリア内であると判定されると、その路側機は、第1割り当て処理12bの対象として決定される(ステップS14)。例えば、X県の場合、相互干渉エリア101で使用可能な無線リソースは、第1無線リソースであるタイムスロットSL11,SL12であるので、その路側機には、第1割り当て処理12bによって、タイムスロットSL11,SL12のいずれかが割り当てられる。
また、ステップS13の判定において、路側機の位置が、第2エリアである独立エリア周辺部内であると判定されると、その路側機は、第2割り当て処理12cの対象として決定される(ステップS15)。例えば、X県の場合、独立エリア周辺部102で使用可能な無線リソースは、第2無線リソースであるタイムスロットSL1〜SL10、SL13〜SL16であるので、その路側機には、第2割り当て処理12cによって、タイムスロットSL1〜SL10、SL13〜SL16のいずれかが割り当てられる。
さらに、ステップS13の判定において、路側機の位置が、第3エリアである独立エリア中心部内であると判定されると、その路側機は、第2割り当て処理12cの対象として決定される(ステップS16)。例えば、X県の場合、独立エリア中心部103で使用可能な無線リソースは、第1無線リソース及び第2無線リソースの双方であるタイムスロットSL1〜SL16であるので、その路側機には、第2割り当て処理12cによって、タイムスロットSL1〜SL16のいずれかが割り当てられる。
このエリア判定処理12aは、無線リソース割り当てが必要な路側機が複数あれば、複数の路側機全てを対象に行われる。
第1割り当て処理12bは、判定処理12aにおいて、第1エリアである相互干渉エリア内であると判定された1又は複数の第1路側機を対象として行われる。第1割り当て処理12bは、無線リソース割り当てのための第1アルゴリズムに基づいて行われる。本実施形態の第1アルゴリズムは、路側機が実際に設置される位置に基づいて、複数の路側機間の干渉関係を求めて、無線リソース割り当てを決定するアルゴリズムである。このような第1アルゴリズムとしては、例えば、Station−based Greddy(SG)アルゴリズム(非特許文献1,2参照)がある。
SGアルゴリズムは、路側機の設置位置に基づいて、路側機(Station)単位に、相互干渉(与干渉、被干渉)を計算し、相互干渉のない複数の路側機に対して同一のリソース(タイムスロット)を割り当てるアルゴリズムである。SGアルゴリズムでは、密に設置されている路側機から無線リソースの割り当てが行われる。リソース選択余地の少ない密なエリアから無線リソース割り当てを決めることで、路側機が疎なエリアから無線リソース割り当てを決めるより、必要リソース数を少なくできる。
図11は、SGアルゴリズムに基づく無線リソース割り当ての決め方を示している。図11において、A1〜A26は、それぞれ路側機であり、交差点に設置されている。まず、図11(a)に示すように、最も設置密度が高い路側機A15を、対象路側機として選択し、無線リソース(例えば、タイムスロットSL11)を割り当てる。このとき、路側機A15はタイムスロットSL11を割り当てた最初の路側機である。続いて、路側機A15と同じ無線リソースを割り当てられる路側機を探索する。具体的には、対象路側機A15と他の路側機A1〜A14,A16〜A26との間での干渉関係が計算され、対象路側機A15が、与干渉源とならない第1非干渉路側機(対象路側機A15から干渉を受けない路側機)を抽出する(図11(a)参照)。例えば、対象路側機A15から路側機A9の通信エリアE内へ与えられる電波干渉が計算され、電波干渉が弱ければ、路側機A9は第1非干渉路側機として抽出される。
続いて、干渉関係の計算結果に基づいて、図11(a)に示す第1非干渉路側機のうちで、対象路側機A15への与干渉源とならない第2非干渉路側機(対象路側機Aへ干渉を与えない路側機)を抽出する(図11(b)参照)。例えば、第1非干渉路側機のうち、路側機A4や路側機A9が、対象路側機A15の通信エリアE内へ与える電波干渉が計算され、電波干渉が強ければ、路側機A4や路側機A9は第2非干渉路側機としては抽出されない。図11(b)では、路側機A1,A5,A6,A8,A21,A22,A26が第2非干渉路側機として抽出されている。
第2非路側干渉路側機は、既に無線リソースを割り当てた対象路側機A15と同じ無線リソースが割り当てることができる。このうち、対象路側機A15からの距離が最も短い、または、路側機の密度が最も高い路側機に、対象路側機A15と同じ無線リソース(例えば、タイムスロットSL11)を割り当てる。ここでは、例えば、路側機A22に、対象路側機A15と同じ無線リソースを割り当てる。続いて、第2非干渉路側機のうち、路側機A22の次に、対象路側機A15からの距離が最も短い、または、路側機の密度が最も高い路側機が、路側機A8である場合には、路側機A8が、既に無線リソースを割り当てた路側機A15に加えて同路側機A22とも相互干渉の関係に無ければ、路側機A8にも対象路側機A15と同じ無線リソースが割り当てる。一方、相互干渉の関係にあれば、路側機A15やと路側機A22と異なる無線リソースの割り当てを試みる。このとき、当該異なる無線リソース(例えば、タイムスロットSL10)を割り当てられた路側機が他になければ、路側機A15と同様の処理を行う。当該異なる無線リソースを割り当てられた路側機が他にあれば、路側機A15がタイムスロットSL11の場合に行った処理と同様の処理を行う。これを、タイムスロットSL11における複数の第2非干渉路側機について繰り返すことで、対象路側機A15と同じ無線リソース(タイムスロットSL11)を割り当てることができる路側機A6,A8,A22,A26を決定する(図11(c)参照)。
以上の処理が終了すると、対象路側機A15の近傍の路側機(例えば、路側機A10)を、次の対象路側機として、図11(a)〜図11(c)の処理を繰り返す。これにより、第1割り当て処理が対象とするエリア(相互干渉エリア)に設置された各路側機へ、第1無線リソース(SL11,SL12)に含まれるどの無線リソースが割り当てられるかが決定される。
なお、図4及び図5に示すように、各県の相互干渉エリア101,104で使用される無線リソースが異なる場合、第1割り当て処理12bは、各県の無線リソース割り当てシステム10が独立して実行できる。複数県において必要な調整は、割り当ての前に、各県が相互干渉エリア101,104においてどの無線リソースを使用するかの調整のみで済む。一方、図2に示すように、隣接する相互干渉エリア101,104で、共通の無線リソースSL11〜SL16を利用する場合、各県の無線リソース割り当てシステム10は、協調して第1割り当て処理12bを実行することになる。あるいは、一方の県(例えば、X県)の無線リソース割り当てシステム10が、Y県の相互干渉エリア104を含む複数の相互干渉エリア101,104を一つの相互干渉エリアとみなして、第1割り当て処理12bを実行して、複数の相互干渉エリア101,104内の路側機10A,10Dへの無線リソース割り当てを決定してもよい。
第2割り当て処理12cは、判定処理12bにおいて、第2エリアである独立エリア周辺部内であると判定された第2路側機及び第3エリアである独立エリア中心部であると判定された第3路側機の双方を対象として行われる。ただし、独立エリア中心部の第3路側機へは、第1無線リソース及び第2無線リソースに含まれるどのタイムスロットでも割り当て可能であるが、独立エリア周辺部の第2路側機へは、第2無線リソースだけが割り当て可能であり、自県の相互干渉エリアで使用される第1無線リソースは、割り当てられない。
第2割り当て処理12cは、無線リソース割り当てのための第2アルゴリズムに基づいて行われる。本実施形態の第2アルゴリズムは、路側機が設置されるエリア(独立エリア)を区分した複数の部分エリア(セル)毎に、どの無線リソースが割り当てられるかが予め決められたセル割り当て情報を用いて、路側機にどの無線リソースが割り当てられるかが決められるアルゴリズムである。このようなセル割り当て情報を決定するアルゴリズムとして、例えば、Vector−based cell Cover(VC)アルゴリズム(非特許文献1,2)参照がある。
VCアルゴリズムでは、図12(a)に示すように、路側機が設置されるエリア(例えば、独立エリア)が、あるサイズのメッシュ状の部分エリア(セル)に区切られる。図12(a)では、路側機が設置されるエリアは、格子状の道路Rを有するエリアであり、路側機が設置される交差点が黒丸で示されている。セルの大きさは、一つのセルに一つの路側機が入る程度が好ましい。
VCアルゴリズムでは、路側機の実際の設置位置ではなく、各セル間の干渉関係が計算され、特定のセルに対して、干渉距離が短くセル間で規則性を持つ適度なサイズのセルが探索される、互いに非干渉となる距離(非干渉ベクトル)の先にあるセルに、前記特定のセルと同じ無線リソース(タイムスロット)が割り当てられる。例えば、図12(a)に示すセルC1とセルC2とが干渉関係にある場合、セルC1とセルC2とには異なる無線リソースが割り当てられる。また、セルC1とセルC3とが非干渉である場合、セルC1とセルC3とには同じ無線リソースを割り当てることができる。図12(b)は、セル毎に無線リソース(タイムスロット)が割り当てられたセル割り当て情報を示している。図12(b)において、セル内の数字は、タイムスロット番号(1〜16の値)を示しており、セルC2は、セルC1とは異なる第5タイムスロットSL5が割り当てられ、セルC3には、セル1と同じ第3タイムスロットSL6が割り当てられている。なお、図12(b)は、一つのセルに一つのタイムスロットしか割り当てられていないが、一つのセルに複数のタイムスロットを割り当てることもできる。
なお、独立エリア中心部内のセルへは、第1無線リソース及び第2無線リソースに含まれるどのタイムスロットでも割り当て可能であるが、独立エリア周辺部内のセルへは、第2無線リソースだけが割り当て可能であり、第1無線リソースは、割り当てられない。
第2割り当て処理12cでは、独立エリア(第2エリア又は第3エリア)内の路側機の位置情報に基づき、セル割り当て情報において、路側機の位置に対応するセルを抽出し、抽出されたセルに割り当てられた無線リソース(タイムスロット)を、その路側機へ割り当てられる無線リソースとして決定する。なお、一つのセルに複数のタイムスロットが割り当てられている場合、一つのセル内に複数の路側機が設置される場合にも対応できる。
図13は、SGアルゴリズムとVCアルゴリズムとの対比を示している。図13は、各アルゴリズムにおいて、無線リソース数(量)及びリソース割り当て変化数(リソース変更率)が、路側機設置密度の増加に伴ってどのように変化するかを示している。なお、図13において、「SG」は、SGアルゴリズムにおいて、路側機が新設されると、既設路側機の割り当て無線リソースの変更を許容しつつ、新設路側機の無線リソースの割り当てを決定する場合を示している。一方、図13において「SG’」は、SGアルゴリズムにおいて、既設路側機への割り当て無線リソース変更は許容せず、新設路側機への割り当て無線リソースを決定する場合を示している。
図13に示すように、SGでは、新設路側機があると、既設路側機も含めてリソース再割り当てを行うため、必要なリソース数は比較的少なく済むが、割り当て変化数は多くなり、割り当て変更や変更後の動作確認等の調整負荷が大きい。一方、VCは、事前に、各セルに対して、予め将来を見据えたリソース割り当てを行うことで、設置密度(設置数)が少ないときでもリソース数が多くなるものの、リソース変化率が少なくなり、調整負荷が小さい。SG’は、既設路側機のリソース変更を行わないため、SGよりリソース変化数は少ないが、VCのように、計画的に割り当てが行えないため、路側機の設置が進んで路側機数が増加すると、必要なリソース数が増加しやすい。
このように、アルゴリズムによって、必要リソース数や割り当て変更数(調整負荷)が異なる。したがって、リソース割り当てが行われるエリアの特質にあわせてアルゴリズムを異ならせることで、エリアの特質にあった適切な無線リソース割り当てが可能である。例えば、SGやSG’は、設置密度が増加すると、割り当て変化数が増加するか、又は、リソース数が増加するため、路側機の設置密度が高くなる可能性のあるエリアよりも、路側機の設置密度が低いエリアに適したアルゴリズムである。つまり、相互干渉エリア(第1エリア)のように、県境付近のエリアであり、路側機の設置密度が低い場合には、SGアルゴリズムが適している。
一方、VCは、設置密度が増加しても、割り当て変化数が増加しないため、路側機設置密度が高くなる可能性のあるエリアに適したあるアルゴリズムである。つまり、独立エリア(第2エリア)のように、都市部を含むことが多く、路側機の設置密度が高い場合には、VCアルゴリズムが適している。
なお、相互干渉エリア(県境付近エリア)であっても、設置密度が高い場合には、VCアルゴリズムを使用でき、独立エリアであっても、設置密度が低い場合には、SGアルゴリズムを使用できる。
[3.付記]
上記実施の形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。