がん患者の療法の継続した問題のうちの1つは、療法に対する応答が個々に異なる点である。成果が得られるがん療法の開発の進歩が進む一方で、いずれかの特定の療法には、一部の患者しか応答しない。多くの利用可能ながん療法は、治療指数が低く、毒性を持つ可能性があることから、このような応答差は、不要かつ効果がなく、さらには有害であり得る療法レジメンが患者に適用される一因となる可能性がある。設計した療法を最適化して、個々の患者を治療できれば、上記のような状況を軽減でき、さらには、排除することもできる。さらに、標的設計した療法によって、総体的に、さらに的が絞られているとともに成果が得られる患者療法を実現できる。したがって、特定のがん療法を実施したときに良好な転帰を示すと予測される特定のがん患者と、より積極的ながん療法及び/または代わりのがん療法、例えば、その患者に過去に行ったがん療法に代わる療法を用いると、良好な転帰を示し得る特定のがん患者とを同定するニーズが存在する。すなわち、特定のがん抑制療法から恩恵を受けるがん患者(例えば非血液がん患者、例えば、固形腫瘍(例えば、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胃がん、腎臓がん、膵臓がん、膀胱がんまたはメラノーマ)の患者を含む)と、より積極的な及び/または代わりのがん抑制療法、例えば、その患者が受けた1つのがん療法または複数のがん療法に代わる療法から恩恵を受けるがん患者の診断、病期診断、予後及びモニタリングを行って、その結果、適切な予防的措置をもたらすことは有益である。
本開示は部分的には、変異遺伝子を含む細胞のオーロラAキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブに対する感受性と、マーカー遺伝子の変異を関連付けることができるという認識に基づくものである。いくつかの実施形態では、そのマーカー遺伝子は、WNT/β−カテニンシグナル伝達経路に関与するものであり、例えば、変異するとその経路を活性化させる遺伝子である。WNT/β−カテニンシグナル伝達経路は、十分に説明されている発がん経路である。別の実施形態では、マーカー遺伝子は、Hippoシグナル伝達経路に関与するものである。Hippo経路の構成要素は概ね、腫瘍サプレッサーとして知られている。WNT/β−カテニンシグナル伝達経路とHippoシグナル伝達経路のいずれも、オーロラAと機能的な相互作用を有する。例えばアリセルチブによってオーロラAを阻害すると、細胞の有糸分裂異常が誘導され、その結果、4倍体によって誘発される、細胞周期の停止が起こる。興味深いことに、Hippo経路は、遺伝的及び機能的に、WNT/β−カテニンシグナル伝達経路を抑制する。オーロラA遺伝子のサイレンシングによっても、WNT/β−カテニン依存性シグナル伝達がダウンレギュレートされる。
マーカー遺伝子は、その変異の存在によって、コードされる遺伝子産物の発現または活性に影響が及び得る1つ以上の変異、例えば、体細胞変異を呈することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞または腫瘍におけるマーカー遺伝子に、2つ以上の変異が存在し得る。さらなる実施形態では、腫瘍形成に至り得る変異を含め、1つ以上の追加の遺伝子に変異を有する細胞に、マーカー遺伝子変異が存在し得るが、変異したその追加の遺伝子(複数可)は、本発明でみなされるマーカー遺伝子とは限らない。いくつかの実施形態では、変異は、活性化変異である。他の実施形態では、変異によって、マーカー遺伝子の発現に影響が及ぶ。他の実施形態では、変異により、コードされた遺伝子産物と細胞結合パートナーとの相互作用が変化し得る。
マーカー遺伝子内の変異の同定及び/または測定を用いて、腫瘍の治療、例えば、オーロラキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブによる療法による良好な転帰が予測されるか、または例えば、オーロラキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブに代わる療法及び/もしくは例えば、オーロラキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブによる、より積極的な療法によって、応答が向上し得るかを判断できる。例えば、本発明で提供する組成物と方法を用いて、患者が、オーロラキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブ治療剤の投薬または投与レジメンに対して良好な転帰を示すと予測されるかを判断できる。本開示は、これらの同定に基づき、限定するものではないが、1)オーロラキナーゼインヒビター、例えば、アリセルチブによる療法レジメンが、良好な転帰をもたらしたり、及び/またはがんを管理したりするのに、有効であるか否かを判断するための方法と組成物と、2)腫瘍の治療で用いる、オーロラキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブによる療法(単剤または併用)、投薬及び投与の有効性をモニタリングするための方法と組成物と、3)腫瘍を治療するための方法と組成物であって、例えば、オーロラキナーゼインヒビター、例えば、アリセルチブによる療法レジメンを含む方法と組成物と、4)具体的な治療剤及び治療剤の組み合わせ、ならびに特定の患者の腫瘍の治療に有効な投薬及び投与レジメンを同定するための方法と組成物と、5)疾患管理策を同定するための方法と組成物とを提供する。
がんと関連する変異の公の一覧の作成に関心が寄せられている。がんと関連する変異に関する情報を含む公開データベースの例は、National Center for Biotechnology Information(メリーランド州ベセスダ)によって維持されているDatabase of Genotypes and Phenotypes(dbGaP)と、Wellcome Trust Sanger Institute(英国ケンブリッジ)によって維持されているCatalogue of Somatic Mutations in Cancer(COSMIC)というデータベースである。
血液腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫など)または固形腫瘍(例えば、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胃がん、腎臓がん、膵臓がん、膀胱がんもしくはメラノーマ)のマーカー遺伝子における変異を同定し、治療に対する応答、無憎悪期間及び治療後生存期間を予測するための組成物と方法を提供する。
アリセルチブによる治療に対して感受性を示す腫瘍細胞の遺伝子プロファイルに基づき、マーカーを同定した。観察された感受性は概して、2つ以上の方法によって試験した腫瘍細胞間で一貫している。
別段の定義がない限り、本明細書で用いられているすべての技術用語と科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。一般的に、本明細書に記載されている、細胞培養、組織培養、分子生物学、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションとの関連で用いられている命名法とその技法は、当該技術分野において知られているものである。GenBankまたはGenPept受託番号と、有用な核酸配列及びペプチド配列は、メリーランド州ベセスダのNational Center for Biotechnology Informationによって維持されているウェブサイトで見ることができる。本願(表を含む)の全体にわたって引用されているすべてのデータベース受託記録(例えば、Affymetrix HG133アノテーションファイル、Entrez、GenBank、RefSeq、COSMIC)の内容は、参照により、本明細書に援用される。組み換えDNA、オリゴヌクレオチドの合成、タンパク質の精製、組織培養、ならびに形質転換及びトランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクションなど)には、標準的な技法を使用している。酵素反応は、メーカーの仕様書に従って、当該技術分野において一般的に実施されているようにして、または本明細書に記載されているようにして行っている。上記の技法及び手順は概して、当該技術分野において知られている方法、例えば、様々な一般的参照文献、ならびに本明細書の全体にわたって引用及び考察されているさらに具体的な参照文献に記載されているような方法に従って行われている。例えば、Sambrook et al.(2000)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)またはHarlow,E.and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。本明細書に記載されている、分析化学、合成有機化学、医薬品化学及び製薬化学との関連で用いられている命名法、ならびにその研究手順及び技法は、当該技術分野において知られているものである。化学合成、化学分析、医薬の調製、調合及び送達、ならびに患者の治療には、標準的な技法を使用している。さらに、文脈によって別段に求められない限り、単数形の用語には、複数形が含まれるものとし、複数形の用語には、単数形が含まれるものとする。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先される。
定義:
本明細書で使用されている用語は、別段の定めのない限り、下に定義されている意味に従うものとする。
本明細書で使用する場合、「良好な」転帰または予後とは、生存期間が長いこと、無憎悪期間(TTP)が長いこと及び/または応答が良好なことを指す。反対に、「不良な」転帰または予後とは、生存期間が短いこと、無憎悪期間(TTP)が短いこと及び/または応答が不良なことを指す。
本明細書で使用する場合、「マーカー」には、患者の腫瘍細胞において変異を有するものとして同定されているマーカー遺伝子と関連する物質が含まれ、さらに、その変異は、治療、例えば、オーロラAキナーゼインヒビター(アリセルチブなど)での治療による転帰が良好または不良な患者の特徴を示すものである。マーカーの例としては、物質、例えば、染色体遺伝子座、遺伝子のDNA、遺伝子のRNAまたは遺伝子のタンパク質が挙げられる。例えば、マーカーとしては、生存期間の短い患者を示す特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられ、あるいは、マーカーとしては、生存期間の長い患者を示す変異または特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられる。別の例では、マーカーとしては、その変異または特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量が、治療に対する応答の不良な患者を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられ、あるいは、マーカーとしては、その変異または特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量が、治療に対する応答の良好な患者を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられる。さらなる例では、マーカーとしては、その変異または特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量が、治療後の疾患の無憎悪期間(TTP)の短い患者を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられ、あるいは、マーカーとしては、その変異または特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量が、治療後の疾患のTTPの長い患者を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられる。さらなる例では、マーカーとしては、その変異または特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量が、治療後の疾患の生存期間の短い患者を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられ、あるいは、マーカーとしては、その変異または特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量が、治療後の疾患の生存期間の長い患者を示すマーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質が挙げられる。したがって、本明細書で使用する場合、「マーカー」または「マーカーセット」に言及するときには、マーカーは、これらのすべての可能性を含むように意図されており、さらに、1つのマーカーをそれぞれ個別にマーカーとして含むことも、あるいは、特徴の1つ以上または全部を併せて含むことができる。
「マーカー核酸」は、本開示のマーカー遺伝子によってコードされるか、または本開示のマーカー遺伝子に対応する核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、cDNA)である。このようなマーカー核酸としては、DNA、例えば、全配列または部分的な配列を含むゲノムDNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖(例えば、そのDNAに見られるいずれかのイントロンを含む)、例えば、ゲノムDNAのエキソンのうちの1つ以上、マーカー遺伝子のうちのいずれかのオープンリーディングフレームまでとオープンリーディングフレーム、またはこのような配列の相補体が挙げられる。マーカー核酸としては、いずれかのマーカーの全配列もしくは部分的な配列を含むRNA、またはそのような配列の相補体であって、すべてのチミジン残基がウリジン残基に置き換えられているRNAまたは相補体、ゲノムDNAの転写によって生成されたRNA(すなわち、スプライシング前)、ゲノムDNAから転写されたRNAのスプライシングによって生成されたRNA、及びスプライシングされたRNAの翻訳によって生成されたタンパク質(すなわち、通常の切断部位(膜貫通シグナル配列など)の切断前と切断後の両方のタンパク質を含む)も挙げられる。本明細書で使用する場合、「マーカー核酸」としては、ゲノムDNAの転写によって生成されたRNA(スプライシングしたRNAを含む)の逆転写によって生成されたcDNAも挙げてよい。マーカー核酸としては、遺伝暗号の縮重により、本開示のマーカー、例えば、変異したマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列とは異なる配列、すなわち、同じタンパク質、例えば、変異したタンパク質をコードする配列も挙げてよい。本明細書で使用する場合、「アレルバリアント」という語句は、所定の遺伝子座で見られるヌクレオチド配列、またはそのヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドを指す。このような自然なアレル多様性は典型的には、所定の遺伝子のヌクレオチド配列を1〜5%変動させる。多くの様々な個体、例えば、がんではない個体の細胞、例えば生殖細胞における目的の遺伝子をシーケンシングすることによって、代替的なアレルを同定できる。この作業は、様々な個体における同じ遺伝子座を同定するためのハイブリダイゼーションプローブを用いることによって、容易に行うことができる。自然のアレル多様性によるものであるとともに、野生型マーカー遺伝子の機能的活性を変化させない上記のあらゆるヌクレオチド多様性と、その結果生じるアミノ酸の多型または多様性の検出は、本明細書に記載されているマーカーの野生型の範囲内であるように意図されている。「マーカータンパク質」は、本開示のマーカー、例えば変異体核酸によってコードされるか、本開示のマーカーに対応するタンパク質である。「タンパク質」と「ポリペプチド」という用語は、同義的に用いられている。マーカーのタンパク質は、具体的には、その名称またはアミノ酸配列によって言及することができるが、当業者であれば、変異、欠失及び/または翻訳後修飾によって、タンパク質の構造、外観、細胞位置及び/または挙動に影響が及び得ることが分かる。別段の定めのない限り、このような違いは、本発明では区別されず、本明細書に記載されているマーカーは、このようなあらゆる変種を含むように意図されている。
本明細書で使用する場合、「マーカー遺伝子」とは、そのDNA、RNA及び/またはタンパク質が、治療後の予後に関する情報を与える(すなわち、「情報伝達的」である)特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量(複数可)を有するように変異を有し得る遺伝子を指す。オーロラAキナーゼインヒビター(アリセルチブなど)(例えば、MLN8237)による治療後の転帰に関連付けられるものとして、本明細書に記載されているマーカー遺伝子が、マーカー遺伝子の例であり、表8、9及び10に示されている。表8、9及び10に列挙されているマーカー遺伝子は、ユビキタスであるかまたは発現が限定されているアイソフォームを有し得る。これらの配列は、マーカー遺伝子の中身をそのアイソフォームまたは前駆体に限定するようには意図されていない。追加のアイソフォームと成熟タンパク質は、表9及び10に列挙されているID番号によって同定されるEntrez Gene(メリーランド州ベセスダのNational Center for Biotechnology Informationによって維持されているデータベース)に示されている情報を検討することによって、容易に導き出すことが可能であり、当業者であれば理解できる。
WNT経路では、「LEF1」とは、GenBank受託番号NM_016269.4(配列番号1)が付されており、GenPept受託番号NP_057353.1(配列番号2)をコードする遺伝子を指す。LEF1の別名には、TCF1−α及びT細胞特異的転写因子1−αがある。このタンパク質は、ハイモビリティグループタンパク質−1と相同性を共有するタンパク質のファミリーに属する転写因子をコードする。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、T細胞レセプターαエンハンサーの機能的に重要な部位に結合し、それによって、最大エンハンサー活性を付与することができる。この転写因子は、Wntシグナル伝達経路に関与し、有毛細胞の分化と毛包の形態形成において機能し得る。この遺伝子における変異は、体細胞脂腺腫で見出されている。この遺伝子は、アンドロゲン非依存性前立腺がんを含む他のがんにも関連付けられている。選択的スプライシングにより、複数の転写バリアントが生じる。LEF1をマーカー遺伝子として用いることは、器官に特異的であってよく、すなわち、LEF1は、乳房新生物、結腸直腸新生物、インスリン耐性及びその他のタイプの疾患、特にがんのマーカーであることができる。
WNT経路では、「MAP3K7」とは、GenBank受託番号NM_145331.2(配列番号3)が付されており、GenPept受託番号NP_663304.1(配列番号4)をコードする遺伝子を指す。MAP3K7の別名には、形質転換成長因子−β活性化キナーゼ1、TGF−β活性化キナーゼ1及びTGF−β活性化キナーゼ1がある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼファミリーのメンバーである。このキナーゼは、TGFβと形態形成タンパク質(BMP)によって誘導されるシグナル伝達を媒介し、転写調節とアポトーシスを含む様々な細胞機能を制御する。このタンパク質は、IL−1に応答して、TRAF6、MAP3K7P1/TAB1及びMAP3K7P2/TAB2を含むキナーゼ複合体を形成し、核因子κBの活性化に、この複合体が必要となる。このキナーゼは、MAPK8/JNK、MAP2K4/MKK4を活性化することもできるので、環境ストレスに対する細胞応答において役割を果たす。選択的スプライシングが行われた転写バリアントであって、別個のアイソフォームをコードする4つの転写バリアントが報告されている。MAP3K7をマーカー遺伝子として使用することは、疾患に特異的であってよく、すなわち、MAP3K7は、関節炎、リウマチ、子宮内膜新生物及び腎臓がんのマーカーであることができる。
WNT経路では、「APC」とは、GenBank受託番号NM_000038.5(配列番号5)が付されており、GenPept受託番号NP_000029.2(配列番号6)をコードする遺伝子を指す。APCの別名には、タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット46、大腸腺腫様ポリポーシス腫瘍サプレッサー、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、ポリポーシス2.5欠失及び大腸腺腫様ポリポーシスがある。この遺伝子は、Wntシグナル伝達経路のアンタゴニストとして機能する腫瘍サプレッサータンパク質をコードする。この遺伝子は、細胞遊走、細胞接着、転写活性化及びアポトーシスを含む他のプロセスにも関与する。この遺伝子の欠損は、家族性腺腫様ポリポーシス(FAP)(通常悪性に進行する常染色体優性前がん疾患)を引き起こす。疾患に関連付けられている変異は、変異クラスター領域(MCR)という小さい領域にクラスター化される傾向があり、その結果、トランケート型タンパク質産物が産生される。APCのマーカー遺伝子としての用途は、結腸直腸新生物及びその他のがん徴候を含む多くの疾患を対象としてよい。
WNT経路では、「FZD2」とは、GenBank受託番号NM_001466.3(配列番号7)が付されており、GenPept受託番号NP_001457.1(配列番号8)をコードする遺伝子を指す。FZD2の別名には、frizzledホモログ2(ショウジョウバエ)、frizzledホモログ2、frizzled−2、frizzled(ショウジョウバエ)ホモログ2、frizzled2、7回膜貫通レセプター及びfrizzledファミリーレセプター2がある。このイントロンレス遺伝子は、frizzled遺伝子ファミリーのメンバーである。このファミリーのメンバーは、シグナル伝達タンパク質のウィングレス型MMTV組み込み部位ファミリーのレセプターである7回膜貫通ドメインタンパク質をコードする。この遺伝子は、β−カテニンカノニカルシグナル伝達経路に結合されるタンパク質をコードする。このタンパク質の結合をめぐる、ウィングレス型MMTV組み込み部位ファミリーメンバー3A遺伝子産物とウィングレス型MMTV組み込み部位ファミリーメンバー5A遺伝子産物との競合が、β−カテニン依存性経路とβ−カテニン非依存性経路を調節すると考えられる。FZD2のマーカー遺伝子としての用途は、MAP3K7と同様であってよく、関節炎、リウマチ、結腸直腸新生物及び子宮内膜新生物を対象とする。
WNT経路では、「PRKCA」とは、GenBank受託番号XM_011524990.1(配列番号9)が付されており、GenPept受託番号XP_011523292.1(配列番号10)をコードする遺伝子を指す。PRKCAの別名には、加齢関連遺伝子6とタンパク質キナーゼCα型、PKC−Aがある。タンパク質キナーゼC(PKC)は、カルシウムとセカンドメッセンジャーのジアシルグリセロールによって活性化できるセリン及びトレオニン特異的タンパク質キナーゼのファミリーである。PKCファミリーメンバーは、広範なタンパク質標的をリン酸化し、多様な細胞内シグナル伝達経路に関与することが知られている。PKCファミリーメンバーは、腫瘍プロモーターの一種であるホルボールエステルの主要レセプターとしても機能する。PKCファミリーの各メンバーは、特有の発現プロファイルを有し、細胞において独特の役割を果たすと考えられている。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、PKCファミリーメンバーの1つである。このキナーゼは、細胞の接着、細胞の形質転換、細胞周期チェックポイント及び細胞体積の制御のような多種多様な細胞プロセスにおいて役割を果たすことが報告されている。マウスにおけるノックアウト試験によって、このキナーゼは、筋細胞における心収縮力とCa(2+)ハンドリングの基本的レギュレーターであり得ることが示唆されている。PRKCAのマーカー遺伝子としての用途は、器官特異的であってよく、すなわち、PRKCAは、アルツハイマー病と筋萎縮性側索症のマーカーであることができる。
WNT経路では、「RORA」とは、GenBank受託番号NM_002943.3(配列番号11)が付されており、GenPept受託番号NP_002934.1(配列番号12)をコードする遺伝子を指す。RORAの別名には、レチノイン酸レセプター関連オーファンレセプターα、ROR−α、転写因子RZR−α、甲状腺ホルモン核レセプターαバリアント4、核レセプターRZR−α、レチノイド関連オーファンレセプターα、核レセプターROR−α及び核レセプターサブファミリー1グループFメンバー1がある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、核ホルモンレセプターのNR1サブファミリーのメンバーである。そのタンパク質は、モノマーまたはホモダイマーとして、数遺伝子上流のホルモン応答エレメントに結合して、それらの遺伝子の発現を高めることができる。コードされたタンパク質は、NM23−2(器官形成と分化に関与するヌクレオシドジフォスフェートキナーゼ)と、NM23−1(腫瘍転移サプレッサー候補遺伝子の産物)と相互作用することが示されている。また、概日リズムに関与するいくつかの遺伝子の転写調節を補助することも示されている。この遺伝子に関しては、異なるアイソフォームをコードする4つの転写バリアントが説明されている。RORAのマーカー遺伝子としての用途は、様々な疾患であってよく、すなわち、RORAは、酸素欠乏症、双極性障害、がん、特に非小細胞肺がんのマーカーであることができる。
WNT経路では、「CAMK2G」とは、GenBank受託番号NM_172171.2(配列番号13)が付されており、GenPept受託番号NP_751911.1(配列番号14)をコードする遺伝子を指す。CAMK2Gの別名には、カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMキナーゼ)IIγ、II型カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼサブユニットγ及びcaMK−IIサブユニットγがある。この遺伝子の産物は、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼファミリーとCa(2+)/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼサブファミリーとに属する酵素の4つのサブユニットの1つである。カルシウムシグナル伝達は、グルタミン酸作動性シナプスにおける可塑性のいくつかの局面に不可欠である。哺乳動物細胞では、この酵素は、α、β、γ及びδという4つの異なる鎖から構成されている。この遺伝子の産物は、γ鎖である。異なるアイソフォームをコードする多くの選択的スプライシング転写物が説明されているが、すべてのバリアントの完全長の性質は分かっていない。CAMK2Gのマーカー遺伝子としての用途は、神経変性疾患、心血管疾患及びがんであってよく、すなわち、CAMK2Gは、アルツハイマー病、不整脈、結腸直腸新生物及び神経膠肉腫のマーカーであることができる。
WNT経路では、「JUN」とは、GenBank受託番号NM_002228.3(配列番号15)が付されており、GenPept受託番号NP_002219.1(配列番号16)をコードする遺伝子を指す。JUNの別名には、v−junトリ肉腫ウイルス17発がん遺伝子ホモログ、活性化タンパク質1、Jun活性化ドメイン結合タンパク質、v−jun肉腫ウイルス17発がん遺伝子ホモログ、エンハンサー結合タンパク質AP1、jun発がん遺伝子、p39、がん原遺伝子c−Jun、転写因子AP−1及びv−jun肉腫ウイルス17発がん遺伝子ホモログ(トリ)がある。この遺伝子は、トリ肉腫ウイルス17の推定形質転換遺伝子である。この遺伝子は、そのウイルスタンパク質と非常に似ているとともに、特異的な標的DNA配列と直接相互作用して、遺伝子発現を調節するタンパク質をコードする。この遺伝子は、イントロンレスであり、1p32〜p31(ヒト悪性腫瘍における転座と欠失の両方に関与する染色体領域)にマッピングされる。JUNのマーカー遺伝子としての用途は、がん及び自己免疫疾患であってよく、すなわち、JUNは、乳房新生物、結腸直腸新生物、クローン病及びぜんそくのマーカーであることができる。
WNT経路では、「XPO1」とは、GenBank受託番号NM_003400.3(配列番号17)が付されており、GenPept受託番号NP_003391.1(配列番号18)をコードする遺伝子を指す。XPO1の別名には、エクスポーチン1(CRM1、酵母、ホモログ)、エクスポーチン−1(染色体領域の維持に必要)、エクスポーチン1(CRM1ホモログ、酵母)、エクスポーチン−1、染色体領域維持1タンパク質ホモログ及び染色体領域維持1ホモログがある。この細胞周期調節遺伝子は、ロイシンリッチ核外輸送シグナル(NES)依存性のタンパク質の輸送を媒介するタンパク質をコードする。このタンパク質は、Rev及びU snRNAの核外輸送を特異的に阻害する。このタンパク質は、サイクリンB、MPAK及びMAPKAPキナーゼ2の局在を制御することによって、いくつかの細胞プロセスの制御に関与する。このタンパク質は、NFATとAP−1も調節する。XPO1のマーカー遺伝子としての用途は、がんに関するものであってよく、すなわち、XPO1は、乳房新生物、子宮内膜新生物及び卵巣新生物のマーカーであることができる。
WNT経路では、「ROR2」とは、GenBank受託番号NM_004560.3(配列番号19)が付されており、GenPept受託番号NP_004551.2(配列番号20)をコードする遺伝子を指す。ROR2の別名には、神経栄養性チロシンキナーゼレセプター関連2及びチロシン−タンパク質キナーゼ膜貫通レセプターROR2がある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、レセプタータンパク質チロシンキナーゼと、細胞表面レセプターのRORサブファミリーに属するI型膜貫通タンパク質である。このタンパク質は、軟骨細胞の早期形成に関与でき、軟骨と成長板の発生に必要とされることがある。この遺伝子の変異は、指末節骨と爪の発育不全/形成不全によって特徴付けられる短指症B型という骨格障害を引き起こし得る。加えて、この遺伝子の変異は、全四肢骨の短縮、脊椎の部分欠損、短指症及び顔貌異常を有する骨格異形成によって特徴付けられる常染色体劣性形式のロビノー症候群を引き起こし得る。ROR2のマーカー遺伝子としての用途は、がんに関するものであってよく、すなわち、ROR2は、乳房新生物、非小細胞肺がん及び結腸直腸新生物のマーカーであることができる。
WNT経路では、「CCND1」とは、GenBank受託番号NM_053056.2(配列番号21)が付されており、GenPept受託番号NP_444284.1(配列番号22)をコードする遺伝子を指す。CCND1の別名には、B細胞CLL/リンパ腫1、BCL−1発がん遺伝子、PRAD1発がん遺伝子、B細胞リンパ腫1タンパク質及びG1/S特異的サイクリン−D1及びサイクリンD1(PRAD1:副甲状腺腺腫1)がある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、高度に保存されたサイクリンファミリー(そのメンバーは、細胞周期全体にわたるタンパク質存在量の劇的な周期によって特徴付けられる)に属する。サイクリンは、CDKキナーゼのレギュレーターとして機能する。それぞれのサイクリンによって、異なる発現及び分解パターン(各有糸分裂イベントの時間的協調に寄与する)を示す。このサイクリンは、CDK4またはCDK6(その活性は、細胞周期G1/S期の移行に必要となる)と複合体を形成し、CDK4またはCDK6の調節サブユニットとして機能する。このタンパク質は、腫瘍サプレッサータンパク質Rbと相互作用することが示されており、この遺伝子の発現は、Rbによって正に調節される。この遺伝子(細胞周期の進行を変更する)の変異、増幅及び過剰発現は、様々な腫瘍において頻繁に観察され、腫瘍形成の一因となり得る。CCND1のマーカー遺伝子としての用途は、多くの疾患に関連するものであってよく、すなわち、CCND1は、様々なタイプのがんと神経変性疾患のマーカーであることができる。
WNT経路では、「CTNNB1」とは、GenBank受託番号NM_001098209.1(配列番号23)が付されており、GenPept受託番号NP_001091679.1(配列番号24)をコードする遺伝子を指す。CTNNB1の別名には、カテニンβ−1、カテニン(カドヘリン関連タンパク質)及びβ1(88kD)がある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、接着結合(AJ)を構成するタンパク質の複合体の一部である。AJは、細胞の成長と細胞間の接着を調節することによって、上皮細胞層を作製及び維持するのに必要である。また、コードされたタンパク質は、アクチン細胞骨格を固定するものであり、上皮シートが完成したら細胞の分裂を停止させる接触阻害シグナルの伝達を担い得る。そして、このタンパク質は、大腸の腺腫様ポリポーシスにおいて変異しているAPC遺伝子の産物に結合する。この遺伝子の変異は、結腸直腸がん(CRC)、毛質腫(PTR)、髄芽腫(MDB)及び卵巣がんの原因である。この遺伝子では、同じタンパク質をコードする3つの転写バリアントが発見されている。CTNNB1のマーカー遺伝子としての用途は、多くの疾患に関するものであってよく、すなわち、CTNNB1は、様々なタイプのがん、特に、結腸直腸新生物と、免疫疾患のマーカーであることができる
hippo経路では、「AMOT」とは、GenBank受託番号NM_001113490.1(配列番号25)が付されており、GenPept受託番号NP_001106962.1(配列番号26)をコードする遺伝子を指す。AMOTの別名には、アンジオモチンp130アイソフォーム及びアンジオモチンp80アイソフォームがある。この遺伝子は、保存されたコイルドコイルドメインとC末端PDZ結合モチーフによって特徴付けられるアンギオスタチン結合タンパク質のモチンファミリーに属する。コードされたタンパク質は、毛細血管の内皮細胞と、胎盤の太い血管で主に発現し、この場所で、管形成と、新たな血管の形成中における内皮細胞の成長因子の方への移動に対するアンギオスタチンの阻害作用を媒介し得る。選択的スプライシングにより、異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントが生成される。AMOTのマーカー遺伝子としての用途は、がんに関するものであってよく、すなわち、AMOTは、乳房新生物、子宮内膜新生物及び白血病のマーカーであることができる。
hippo経路では、「DVL2」とは、GenBank受託番号NM_004422.2(配列番号27)が付されており、GenPept受託番号NP_004413.1(配列番号28)をコードする遺伝子を指す。DVL2の別名には、dishevelled2(ショウジョウバエdshと相同)、セグメントポラリティータンパク質dishevelledホモログDVL−2、dishevelled、dshホモログ2及びdishevelled、dhsホモログ2(ショウジョウバエ)がある。この遺伝子は、保存されたコイルドコイルドメインとC末端PDZ結合モチーフによって特徴付けられるアンギオスタチン結合タンパク質のモチンファミリーに属する。この遺伝子は、dishevelled(dsh)タンパク質ファミリーのメンバーをコードする。脊椎動物dshタンパク質のショウジョウバエdshとのアミノ酸配列類似性は、約40%である。この遺伝子は、翻訳後リン酸化されて、95kDの細胞質タンパク質(複数のWNTタンパク質によって媒介されるシグナル伝達経路において役割を果たし得る)を形成する90kDのタンパク質をコードする。Wntシグナル伝達におけるdishevelledの機能の機構は、後生動物の間で保存されている可能性が高い。DVL2のマーカー遺伝子としての用途は、がんと精神疾患に関連してよく、すなわち、DVL2は、乳房新生物、非小細胞がん、双極性障害及び喫煙障害のマーカーであることができる。
hippo経路では、「LATS1」とは、GenBank受託番号NM_004690.3(配列番号29)と関連付られており、GenPept受託番号NP_004681.1(配列番号30)をコードする遺伝子を指す。LATS1の別名には、WARTSタンパク質キナーゼ、LATS(大腫瘍サプレッサー、ショウジョウバエ)ホモログ1、大腫瘍サプレッサーホモログ1、セリン/トレオニン−タンパク質キナーゼLATS1、h−warts、LATS、大腫瘍サプレッサー、ホモログ1、LATS及び大腫瘍サプレッサー、ホモログ1(ショウジョウバエ)がある。この遺伝子は、保存されたコイルドコイルドメインとC末端PDZ結合モチーフによって特徴付けられるアンギオスタチン結合タンパク質のモチンファミリーに属する。この遺伝子は、dishevelled(dsh)タンパク質ファミリーのメンバーをコードする。脊椎動物dshタンパク質のショウジョウバエdshとのアミノ酸配列類似性は、約40%である。この遺伝子は、翻訳後リン酸化されて、95kDの細胞質タンパク質(複数のWNTタンパク質によって媒介されるシグナル伝達経路において役割を果たし得る)を形成する90kDのタンパク質をコードする。Wntシグナル伝達におけるdishevelledの機能の機構は、後生動物の間で保存されている可能性が高い。LATS1のマーカー遺伝子としての用途は、がんと精神疾患に関連してよく、すなわち、LATS1は、乳房新生物、非小細胞がん、双極性障害及び喫煙障害のマーカーであることができる。
hippo経路では、「LATS2」とは、GenBank受託番号XM_005266342.1(配列番号31)が付されており、GenPept受託番号XP_005266399.1(配列番号32)をコードする遺伝子を指す。LATS2の別名には、セリン/トレオニンキナーゼKPM、warts様キナーゼ、LATS(大腫瘍サプレッサー、ショウジョウバエ)ホモログ2、有糸分裂中にリン酸化されるキナーゼタンパク質、大腫瘍サプレッサーホモログ2、セリン/トレオニン−タンパク質キナーゼkpm、セリン/トレオニン−タンパク質キナーゼLATS2、LATS、大腫瘍サプレッサー、ホモログ2、LATS、及び大腫瘍サプレッサー、ホモログ2(ショウジョウバエ)がある。この遺伝子は、LATS腫瘍サプレッサーファミリーに属するセリン/トレオニンタンパク質キナーゼをコードする。このタンパク質は、間期、ならびに中期の始め及び中期の後半の間、中心体に局在する。このタンパク質は、中心体タンパク質のオーロラA及びアジュバと相互作用するとともに、有糸分裂の開始時に、γ−チューブリンの蓄積と紡錘体形成に必要とされる。また、このタンパク質は、p53のネガティブレギュレーターと相互作用し、細胞骨格損傷に応答するp53によるポジティブフィードバックループにおいて機能し得る。加えて、このタンパク質は、アンドロゲン応答遺伝子の発現のコリプレッサーとして機能することができる。LATS2のマーカー遺伝子としての用途は、がんと免疫疾患に関連してよく、すなわち、LATS2は、乳房新生物とぜんそくのマーカーであることができる。
hippo経路では、「MOB1B」とは、GenBank受託番号NM_001244766.1(配列番号33)が付されており、GenPept受託番号NP_001231695.1(配列番号34)をコードする遺伝子を指す。MOB1Bの別名には、MOB1 Mps One BinderホモログB、MOB1 Mps One BinderホモログB(酵母)、MOB1、Mps One Binderキナーゼアクチベーター様1A(酵母)、mob1A、mps one binderキナーゼアクチベーター様1A、mob1ホモログ1A、MOB1及びMps One Binderキナーゼアクチベーター様1Aがある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、酵母Mob1タンパク質と類似のものである。酵母Mob1は、紡錘極体複製と有糸分裂チェックポイントの調節に不可欠なタンパク質キナーゼのMps1pと結合する。この遺伝子では、異なるアイソフォームをコードする3つの転写バリアントが発見されている。MOB1Bのマーカー遺伝子としての用途は、がんに関連してよく、すなわち、MOB1Bは、乳房新生物、子宮内膜新生物及び肺新生物のマーカーであることができる。
hippo経路では、「NPHP4」とは、GenBank受託番号NM_015102.4(配列番号35)が付されており、GenPept受託番号NP_055917.1(配列番号36)をコードする遺伝子を指す。NPHP4の別名には、ネフロレチニン、ネフロシスチン−4及びPOC10中心小体タンパク質ホモログがある。この遺伝子は、尿細管の発生と機能に関与するタンパク質をコードする。このタンパク質は、ネフロシスチンと相互作用するとともに、アクチンと微小管ベースの構造に局在する多機能複合体に属する。この遺伝子の変異は、腎疾患の4型ネフロン癆と、ネフロン癆及び網膜色素変性症が組み合わさった4型セニオール・ローケン症候群と関連する。選択的スプライシングにより、複数の転写バリアントが生じる。NPHP4のマーカー遺伝子としての用途は、がんと眼疾患に関連してよく、すなわち、NPHP4は、乳房新生物、子宮内膜新生物及び網膜炎のマーカーであることができる。
hippo経路では、「TJP1」は、GenBank受託番号NM_003257.4(配列番号37)が付されており、GenPept受託番号NP_003248.3(配列番号38)をコードする遺伝子を指す。TJP1の別名には、タイトジャンクションタンパク質ZO−1、zona occludens1及びzonula occludens1タンパク質がある。この遺伝子は、細胞間タイトジャンクションの細胞質膜表面にあるタンパク質をコードする。コードされたタンパク質は、細胞−細胞間結合でのシグナル伝達に関与し得る。この遺伝子の選択的スプライシングにより、複数の転写バリアントが生成される。TJP1のマーカー遺伝子としての用途は、がんと免疫疾患に関連してよく、すなわち、TJP1は、乳房新生物、肝細胞新生物及びぜんそくのマーカーであることができる。
hippo経路では、「TJP2」は、GenBank受託番号NM_004817.3(配列番号39)が付されており、GenPept受託番号NP_004808.2(配列番号40)をコードする遺伝子を指す。TJP2の別名には、フリートライヒ運動失調症領域遺伝子X104(タイトジャンクションタンパク質ZO−2)、難聴、常染色体優性51、zonula occludensタンパク質2、タイトジャンクションタンパク質ZO−2及びzona occludens2がある。この遺伝子は、膜関連グアニレートキナーゼホモログファミリーのメンバーであるzonula occludenをコードする。コードされたタンパク質は、上皮細胞と内皮細胞におけるタイトジャンクションバリアの構成要素として機能するとともに、タイトジャンクションの適切な組み立てに必要である。この遺伝子の変異は、高胆汁性貧血患者において同定されており、この遺伝子を含む270kb領域のゲノム重複によって、常染色体優性難聴−51が生じる。この遺伝子では、複数のアイソフォームをコードする選択的スプライシング転写物が観察されている。TJP2のマーカー遺伝子としての用途は、がんに関連してよく、すなわち、TJP2は、乳房新生物のマーカーであることができる。
hippo経路では、「WWC1」は、GenBank受託番号NM_001161661.1(配列番号41)が付されており、GenPept受託番号NP_001155133.1(配列番号42)をコードする遺伝子を指す。WWC1の別名には、腎臓及び脳タンパク質、WW、C2及びコイルドコイルドメイン含有1、HBeAg結合タンパク質3、タンパク質WWC1、タンパク質KIBRA、タンパク質ホスファターゼ1、ならびに調節サブユニット168がある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、PRKC−ζ及びダイニン軽鎖−1と相互作用する細胞質リンタンパク質である。この遺伝子のアレルであって、一部の個体において、記憶力を高めるアレルが見つかっている。この遺伝子では、異なるアイソフォームをコードする3つの転写バリアントが発見されている。WWC1のマーカー遺伝子としての用途は、がん及び神経変性疾患に関連してよく、すなわち、WWC1は、乳房新生物及びアルツハイマー病のマーカーであることができる。
hippo経路では、「WWTR1」とは、GenBank受託番号NM_001168278.1(配列番号43)が付されており、GenPept受託番号NP_001161750.1(配列番号44)をコードする遺伝子を指す。WWTR1の別名には、PDZ結合モチーフを有する転写コアクチベーター、PDZ結合モチーフを有する転写コアクチベーター、WWドメイン含有転写レギュレータータンパク質1がある。この遺伝子の分子機能は、あまり明らかになっていない。WWTR1のマーカー遺伝子としての用途は、がんに関連してよく、すなわち、WWTR1は、乳房新生物、子宮内膜新生物、肺新生物及び卵巣新生物のマーカーであることができる。
hippo経路では、「YAP1」とは、GenBank受託番号NM_001282101.1(配列番号45)が付されており、GenPept受託番号NP_001269030.1(配列番号46)をコードする遺伝子を指す。YAP1の別名には、Yes関連タンパク質1(65kDa)、Yes関連タンパク質2、yorkieホモログ、65kDa Yes関連タンパク質、タンパク質yorkieホモログ、転写コアクチベーターYAP1及びyes関連タンパク質YAP65ホモログがある。この遺伝子は、発生、成長、修復及びホメオスタシスに関与するHippoシグナル伝達経路の下流核エフェクターをコードする。この遺伝子は、複数のがんの発生と進行において、このシグナル伝達経路の転写レギュレーターとして役割を果たすことが知られており、がん治療の潜在的な標的として機能し得る。選択的スプライシングにより、異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントが生成される。YAP1のマーカー遺伝子としての用途は、がんに関連してよく、すなわち、YAP1は、乳房新生物のマーカーであることができる。
本明細書で使用する場合、マーカーの「情報伝達的な」特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量とは、その差が予後または転帰に相関している特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量を指す。マーカーの情報伝達的な特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量は、マーカー遺伝子に対応する核酸、例えば、DNAもしくはRNA、またはタンパク質のいずれかを解析することによって、得ることができる。マーカー、例えば、患者から得た試料中のマーカーの特徴、例えば、サイズ(例えば、長さもしくは分子量)、配列(例えば、核酸配列もしくはタンパク質配列)、組成(例えば、塩基組成、アミノ酸組成、ペプチド消化パターンもしくは遺伝子断片パターン)、または量(例えば、コピー数及び/もしくは発現レベル)は、解析する物質の野生型またはアレルバリアントと異なる場合に、「情報伝達的」である。マーカーの量を測定する実施形態では、量は、発現を評価するのに用いるアッセイの標準誤差よりも大きい程度だけ、参照量よりも多いかまたは少ない場合に、「情報伝達的」である。マーカーの情報伝達的な発現レベルは、測定された発現レベルと、転帰、例えば、良好な応答、不良な応答、長い無憎悪期間、短い無憎悪期間、短い生存期間または長い生存期間との統計的な相関によって割り出すことができる。統計解析結果から、本明細書に記載されている方法で用いるためのマーカーを選択する際の閾値を定めることができる。あるいは、示差的な特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量を有するマーカー、例えば、染色体遺伝子座マーカーまたはマーカー遺伝子は、転帰を予測する典型的な範囲の量を有することになる。情報伝達的な特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量は、転帰に対して定められた特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量の範囲に入る特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量である。さらに、マーカーセットの特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量を組み合わせたものが、その組み合わせのマーカー、例えば、セット内の染色体遺伝子座マーカーまたはマーカー遺伝子に関する所定のスコア(本明細書に示されている方法に従って決定したようなもの)を満たすか、またはそのスコアを上回るかもしくは下回るかのいずれかの場合に、そのマーカーセットは、連動的に「情報伝達的」であってもよい。マーカー遺伝子(すなわち、DNA、RNAまたはタンパク質)の1つの特徴のみ、例えばマーカーの測定によって、予後を定める、すなわち、転帰を示すことができる。マーカー遺伝子の2つの特徴の情報伝達的な量が、互いに整合している、すなわち、それらの結果の生物学的特徴が矛盾しない場合に、マーカー遺伝子のその2つ以上の特徴、例えばマーカーの測定によって、予後を定めることができる。マーカー遺伝子の複数の特徴の測定から得られる整合結果の例は、DNAもしくはRNAにおけるナンセンス変異もしくは欠失と、コードされたタンパク質の少ない量もしくは低い分子量、またはタンパク質の結合ポケットもしくは活性部位をコードする領域における変異と、コードされたタンパク質の低い活性の同定であることができる。別の例は、タンパク質が、その活性レベルに基づき、その合成を制御するフィードバックループを有する経路内である場合に存在することができる。この例では、タンパク質の少ない量または低い活性は、その変異mRNAの量が多いことと関連し得る。マーカー遺伝子の変異により、組織では、そのタンパク質の活性が不足しており、タンパク質を産生させるためのシグナルを繰り返し送るからである。
本明細書で使用する場合、「遺伝子欠失」とは、2コピー未満のDNAコピー数の量を指し、「増幅」とは、2コピーを超えるDNAコピー数の量を指す。「2倍体」量とは、2コピーのコピー数を指す。「2倍体または増幅」という用語は、遺伝子コピーの「未欠失」として解釈できる。代わりの情報伝達的な量が遺伝子欠失であるマーカーでは、増幅は概ね見られない。反対に、「2倍体または欠失」という用語は、コピー数の「未増幅」として解釈できる。代わりの情報伝達的な量が増幅であるマーカーでは、遺伝子欠失は概ね見られない。明確にするために、配列の欠失は、マーカー遺伝子変異によって、遺伝子内に発生することができ、この欠失により、転写タンパク質が存在しなかったり、またはmRNAもしくはタンパク質が短縮したりし得る。このような欠失は、コピー数に影響を及ぼすとは限らない。
「長い生存期間」及び「短い生存期間」という用語は、がん患者が、1回目の治療を行ってから生存すると予測される時間の長さを指す。「長期生存者」とは、短期生存者と同定された患者よりも進行速度が遅いか、または腫瘍によって死亡するのが遅いと予測される患者を指す。「生存の促進」または「死亡速度の減速」とは、本明細書に記載されているマーカーのうちの1つ以上の特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量(例えば、参照標準物質と比べた場合)に基づき、例えば、その集団の70%、80%、90%またはそれを超える割合が、1回目の治療を行ってから十分な期間生存するように推定寿命が判定されたものである。「死亡速度の加速」または「生存期間の短縮」とは、本明細書に記載されているマーカーのうちの1つ以上の特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量(例えば、参照標準物質と比べた場合)に基づき、その集団の50%、40%、30%、20%、10%またはそれを下回る割合が、1回目の治療を行ってから十分な期間生存しないと推定寿命が判定されたものである。いくつかの実施形態では、この十分な期間は、がん療法を受けた初日から測定して、少なくとも6カ月、12カ月、18カ月、24カ月または30カ月である。
治療剤との接触により、がんの成長速度が、治療剤との接触のない場合のがんの成長と比べて阻害される場合には、そのがんは、治療剤に「応答する」か、治療に対する「良好な応答」が見られる。がんの成長は、様々な方法で測定でき、例えば、腫瘍の特徴、例えばサイズ、またはその腫瘍タイプに適当な腫瘍マーカーの発現を測定してよい。固形腫瘍では、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)というガイドライン(Eisenhauer et al.(2009)E.J.Canc.45:228−247)を用いて、固形腫瘍と関連するマーカーと、固形腫瘍のオーロラAキナーゼインヒビターに対する応答の同定を支援することができる。国際的なワーキンググループが、定期的に集まって、様々なタイプのがんの応答基準の設定、更新及び公表を行っている。このような公開されている報告書に従って、対象となる腫瘍のマーカーと、その腫瘍のオーロラAキナーゼインヒビターに対する応答の同定を支援することができる。例は、急性骨髄性白血病(AML、Cheson et al.(2003)J.Clin.Oncol.21:4642−4649)、リンパ腫、例えば非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫(Cheson et al.(2007)J.Clin.Oncol.25:579−596)の基準である。Remoce基準では、従来の方法(細胞組成(例えば、血液塗抹標本もしくは骨髄生検中の芽細胞計数、有糸分裂像の存在及び数)または組織構造(例えば、基底膜の組織構造もしくは細胞浸潤の異常)を同定するための組織学的方法など)に加えて、例えば、(例えば、腫瘍部位において)測定可能な代謝活性の変化のある部位を同定するため、またはインビボの腫瘍で特異的マーカーを追跡するためのポジトロン断層撮影法(PET)、例えば、特異的腫瘍マーカーに対する抗体の結合を検出することによって、腫瘍細胞を同定するための免疫組織化学、例えば、示差的なマーカーと蛍光染色によって細胞タイプを特徴付けるフローサイトメトリーのような解析方法を考慮する。がんによって、様々な条件下で所定の治療剤に対する「応答性」レベルが異なることから、オーロラAキナーゼインヒビター(アリセルチブなど)による療法に対する応答の質は、可変なものであり得る。いくつかの実施形態では、乳がん患者が、マーカー遺伝子のLEF1、MAP3K7、FZD2、LATS1及び/またはWWC1に変異を有する場合、乳がんは、オーロラAキナーゼの阻害、例えば、アリセルチブによる療法に応答する。いくつかの実施形態では、胃がん患者が、マーカー遺伝子のFZD2及び/またはLATS2に変異を有する場合、胃がんは、オーロラAキナーゼの阻害、例えばアリセルチブによる療法に応答する。いくつかの実施形態では、頭頸部がん患者が、マーカー遺伝子のMAP3K7、JUN、ROR2、CCND1、LATS1、MOB1B及び/またはNPHP4に変異を有する場合、頭頸部がんは、オーロラAキナーゼの阻害、例えば、アリセルチブによる療法に応答する。いくつかの実施形態では、非小細胞肺がん患者が、マーカー遺伝子のXPO1及び/またはTJP1に変異を有する場合、非小細胞肺がんは、オーロラAキナーゼの阻害、例えば、アリセルチブによる療法に応答する。いくつかの実施形態では、小細胞肺がん患者が、マーカー遺伝子のLEF1、APC、PRKCA、RORA、CAMK2G、CTNNB1、AMOT、DVL2、TJP1、TJP2、WWTR1及び/またはYAP1に変異を有する場合、小細胞肺がんは、オーロラAキナーゼの阻害、例えば、アリセルチブによる療法に応答する。さらに、患者のクオリティ・オブ・ライフ、転移の程度などを含め、腫瘍の成長サイズ以外の追加の基準を用いて、応答性の測定結果を評価できる。加えて、適用可能な状況においては、臨床予後マーカーと変数を評価できる(例えば、骨髄腫におけるMタンパク質、前立腺がんにおけるPSAレベル)。
治療剤との接触により、がんの成長速度が、治療剤との接触のない場合の成長と比べて阻害されないか、または非常に低い程度しか阻害されない場合には、そのがんは、治療剤に対して「応答しない」か、もしくは「応答が不良」であるか、または、治療に対する不良な応答が見られる。上述のように、がんの成長は、様々な方法で測定でき、例えば、腫瘍のサイズまたはその腫瘍タイプに適当な腫瘍マーカーの発現を測定してよい。例えば、腫瘍の治療剤に対する非応答性と関連付けられたマーカーの同定を支援するのに用いる応答性の定義、上記のようなガイドラインを用いることができる。がんによって、様々な条件において、所定の治療剤に対する「非応答性」レベルが異なることから、治療剤に対する非応答性の質は、変化の大きいものであり得る。さらに、患者のクオリティ・オブ・ライフ、転移の程度などを含め、腫瘍の成長サイズ以外の追加の基準を用いて、非応答性の測定結果を評価できる。加えて、適用可能な状況においては、臨床予後マーカーと変数を評価できる(例えば、骨髄腫におけるMタンパク質、前立腺がんにおけるPSAレベル)。
本明細書で使用する場合、「長い無憎悪期間」、「長いTTP」及び「短い無憎悪期間」、「短いTTP」とは、治療によって安定状態になった疾患が、活動性疾患に変わるまでの時間の量を指す。状況に応じて、治療の結果、応答が良好でも不良でもない安定状態(例えば、MR)の疾患となり、その疾患は、悪化しないに過ぎず、例えば、ある期間の間に、進行性疾患となる。この期間は、少なくとも4〜8週間、少なくとも3〜6カ月または6カ月超であることができる。
「治療」とは、さらなる腫瘍の成長を予防または阻害するため、腫瘍を収縮させるため、及び生存期間を延長するために、療法を用いることを意味するものとする。治療は、腫瘍の転移の予防を含むようにも意図されている。がんまたは腫瘍の少なくとも1つの症状(応答性/非応答性、無憎悪期間または当該技術分野において知られているとともに本明細書に記載されている指標によって判断)が緩和、消失、減速、最小化または予防された場合に、腫瘍は、「阻害」または「治療」される。ある治療レジメン(例えば、オーロラAキナーゼインヒビター(アリセルチブなど)によるレジメン)を用いた治療によって、腫瘍のいずれかの症状(物理的またはその他の症状)のいずれかを改善することは、本明細書にさらに説明されているように、本開示の範囲内である。
本明細書で使用する場合、「薬剤」という用語は広くは、治療プロトコールにおいて、がん細胞(腫瘍細胞を含む)に曝し得る薬剤として定義する。本開示の関連においては、このような薬剤としては、オーロラAキナーゼインヒビター(アリセルチブ剤など)と、当該技術分野において知られているとともに、本明細書にさらに詳細に説明されている化学療法剤が挙げられるが、これらに限らない。
「プローブ」という用語は、具体的に意図されている標的分子、例えば、本開示のマーカーに選択的に結合できるいずれかの分子を指す。プローブは、当業者が合成することも、適切な生物学的調製剤から得ることもできる。標的分子を検出する目的においては、プローブは、本明細書に記載されているように標識するように特別に設計してよい。プローブとして使用できる分子の例としては、RNA、DNA、タンパク質、抗体、酵素のレポーター試薬及び有機モノマーが挙げられるが、これらに限らない。
マーカーの「正常な」特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量とは、「参照試料」における特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量を指してよい。参照試料は、例えば体細胞変異を有する腫瘍を採取した同じ患者の、対応する正常な、例えば、生殖系列の試料であることができる。参照試料は、マーカー関連疾患ではない健常な対象、または参照特徴、例えば、数人の健常な対象における野生型マーカーの平均的な特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量であることができる。参照試料の特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量は、参照データベースから得た1つ以上のマーカーの特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量で構成させてもよい。あるいは、マーカーの「正常な」特徴、例えば、サイズ、配列、組成または発現レベルは、マーカー、例えば、腫瘍を採取した同じ患者の、類似の環境または応答状態にある非腫瘍細胞におけるマーカー遺伝子の特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量である。DNAコピー数の正常な量は、2または2倍体である。ただし、男性のX連鎖遺伝子は例外であり、正常なDNAコピー数は、1である。
マーカー遺伝子の「過剰発現」と「過少発現」とは、それぞれ、患者のマーカー遺伝子が、例えば、発現を評価するのに用いるアッセイの標準誤差よりも大きい、試験試料中のmRNAまたはタンパク質によって測定した場合に、そのマーカー遺伝子の正常な発現レベルよりも高いレベルまたは低いレベル(例えば、2分の3倍超、少なくとも2倍、少なくとも3倍高いかまたは低いレベルなど)で発現することを指す。「有意な」発現レベルとは、本明細書に示されている方法によって定めた場合に、マーカー遺伝子セットに関して設定した所定のスコアを満たすか、またはそのスコアを上回るかもしくは下回るレベルを指してよい。
「相補的」とは、2つの核酸鎖の領域間または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広範な概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、その第1の領域と逆平向である第2の核酸領域の残基がチミンまたはウラシルである場合、その残基と特異的な水素結合(「塩基対」)を形成できることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、その第1の鎖と逆平向である第2の核酸鎖の残基がグアニンである場合、その残基と塩基対を形成できることが知られている。核酸の第1の領域と、同じまたは異なる核酸の第2の領域を逆平行に配置したときに、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が、第2の領域の残基と塩基対を形成できる場合、核酸のその第1の領域は、その第2の領域と相補的である。一実施形態では、第1の領域は、第1の部分を含み、第2の領域は、第2の部分を含み、それにより、その第1の部分と第2の部分を逆平行に配置したときに、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%、またはすべてが、第2の部分におけるヌクレオチド残基と塩基対を形成できる。
「相同」とは、本明細書で使用する場合、同じ核酸鎖の2つの領域間または2つの異なる核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列類似性を指す。両方の領域におけるヌクレオチド残基の位置が同じヌクレオチド残基によって占められているときには、それらの領域は、その位置において相同である。第1の領域と第2の領域のそれぞれの少なくとも1つのヌクレオチド残基の位置が同じ残基によって占められているときには、第1の領域は、第2の領域と相同である。2つの領域間の相同性は、その2つの領域のヌクレオチド残基の位置のうち、同じヌクレオチド残基によって占められているヌクレオチド残基の位置の割合(すなわち、同一性%)で表される。例として、5’−ATTGCC−3’というヌクレオチド配列を持つ領域と、5’−TATGGC−3’というヌクレオチド配列を持つ領域の相同性は、50%同一性である。一実施形態では、第1の領域は、第1の部分を含み、第2の領域は、第2の部分を含み、それにより、これらの部分のそれぞれのヌクレオチド残基の位置の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%または少なくとも約95%が、同じヌクレオチド残基によって占められている。同一性が100%の実施形態では、それらの部分のそれぞれのヌクレオチド残基のすべての位置が、同じヌクレオチド残基によって占められている。
本明細書に別段の定めのない限り、「抗体」(単数または複数)という用語には、広くは、天然型の抗体、例えば、ポリクローナル抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)、モノクローナル抗体及び組み換え抗体(一本鎖抗体、二本鎖及び多重鎖タンパク質、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及び多特異性抗体など)、ならびに、これらのすべての断片及び誘導体(それらの断片(例えば、dAbs、scFv、Fab、F(ab)’2、Fab’)及び誘導体は、少なくとも抗原性結合部位を有する)が含まれる。抗体誘導体は、抗体にコンジュゲートしたタンパク質または化学部分を含んでよい。「抗体」という用語には、合成バリアントと遺伝子操作したバリアントも含まれる。
「キット」とは、少なくとも1つの試薬、例えば、本開示のマーカーまたはマーカーセットを特異的に検出するためのプローブを含むいずれかの製品(例えば、パッケージまたは容器)である。この製品は、例えばインビトロで、例えば、患者から得た試料に対して、本開示の方法を行うためのユニットとして、推進、流通、販売または販売用に提供してよい。このようなキットに含まれる試薬は、短い生存期間のマーカー及び長い生存期間のマーカーの発現を検出するのに用いるプローブ/プライマー及び/または抗体を含むことができる。加えて、本開示のキットは、好適な検出アッセイについて説明する説明書を含むことができる。このようなキットは、例えば、臨床現場または契約検査現場で、情報、例えば、がんの症状を示している患者、具体的には、オーロラAキナーゼ阻害療法で治療できるがん(例えば、血液がん、例えば骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫)、白血病(例えば急性骨髄性白血病)及び固形腫瘍(例えば乳がん、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胃がん、腎臓がん、膵臓がん、膀胱がんまたはメラノーマなど)を含む)の存在の可能性を示している患者の診断、評価または治療を可能にするために記録、保存、伝達または受領される1つ以上のマーカーの発現レベル、特徴、例えば、サイズ、配列または組成に関する情報を生成するのに利便的に使用することができる。
本発明の方法と組成物は、がんを罹患した患者の診断と治療で利用するように設計されている。本発明の方法に従って、がんまたは腫瘍を治療または診断する。「がん」または「腫瘍」には、初期腫瘍といずれかの転移を含め、患者におけるいずれかの新生物の成長が含まれるように意図されている。がんは、血液タイプまたは固形腫瘍タイプのがんであることができる。血液腫瘍としては、例えば、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、白血病(例えばワルデンストレーム症候群、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、その他の白血病)、リンパ腫(例えばB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)及び骨髄異形成症候群を含む血液由来の腫瘍が挙げられる。固形腫瘍は、器官に由来することができ、皮膚、肺、脳、乳房、前立腺、卵巣、大腸、腎臓、膵臓、肝臓、食道、胃、腸、膀胱、子宮、頸部、精巣、副腎などにおけるがんが挙げられる。がんは、マーカー遺伝子に変異がある細胞を含むことができる。本明細書で使用する場合、がん細胞(腫瘍細胞を含む)とは、異常な(速い)速度で分裂するか、またはその成長または生存の制御が、そのがん細胞の発生または生存する同じ組織における細胞と異なる細胞を指す。がん細胞としては、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、脂腺癌、腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支原性癌、メラノーマ、腎細胞癌、ヘパトーム−肝細胞癌、胆管癌、胆管癌、乳頭状癌、移行細胞癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、乳癌、消化管癌、大腸癌、膀胱癌、前立腺癌及び頭頸部領域の扁平上皮癌のような癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫及び中皮肉腫のような肉腫、骨髄腫、白血病(例えば急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ性白血病)及びリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫またはホジキン病)のような血液がん、ならびに神経膠腫、髄膜腫、髄芽腫、神経鞘腫または上衣腫を含む、神経系の腫瘍における細胞が挙げられるが、これらに限らない。
本明細書で使用する場合、「増殖性障害」または「増殖性疾患」という用語としては、がん性の超増殖性障害(例えば、脳腫瘍、肺がん、扁平上皮細胞がん、膀胱がん、胃がん、膵臓がん、乳がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸直腸がん、大腸がん、類表皮がん、食道がん、睾丸がん、婦人科がんまたは甲状腺がん、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、中皮腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、神経芽腫及び急性リンパ芽球性白血病(ALL))、非がん性の超増殖性障害(例えば、皮膚の良性肥厚(例えば、乾癬)、再狭窄及び良性前立腺肥大(BPH))、ならびに脈管形成または血管新生に関連する疾患(例えば、腫瘍性血管新生、血管腫、神経膠腫、メラノーマ、カポジ肉腫、卵巣がん、乳がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、大腸がん及び類表皮がん)が挙げられるが、これらに限らない。
本明細書で使用する場合、「非侵襲性」という用語は、対象に負わせる損傷が最小限である手順を指す。臨床用途のケースでは、非侵襲性試料採取手順は、例えば、予約なしの環境で、典型的には麻酔なしに及び/または外科的な器具または縫合なしに、迅速に行うことができる。非侵襲性試料の例としては、血液、血清、唾液、尿、口腔スワブ、咽喉培養液、便試料及び子宮頸部スミアが挙げられる。非侵襲性の診断解析としては、X線、核磁気共鳴画像法、ポジトロン断層撮影法などが挙げられる。
本明細書で使用する場合、「オーロラAキナーゼ」という用語は、有糸分裂の進行に関与するセリン/トレオニンキナーゼを指す。オーロラAキナーゼは、AIK、ARK1、AURA、BTAK、STK6、STK7、STK15、AURORA2、MGC34538及びAURKAとしても知られている。細胞分裂において役割を果たす様々な細胞タンパク質は、オーロラAキナーゼ酵素によるリン酸化の基質であり、その基質としては、p53、TPX−2、XIEg5(ゼノプス中)及びD−TACC(ショウジョウバエ中)が挙げられるが、これらに限らない。オーロラAキナーゼ酵素は、それ自体も、例えばThr288における自己リン酸化の基質である。好ましくは、オーロラAキナーゼは、ヒトオーロラAキナーゼである。
「オーロラAキナーゼのインヒビター」または「オーロラAキナーゼインヒビター」という用語は、オーロラAキナーゼと相互作用して、その酵素活性を阻害することができる化合物を示す目的で使用する。オーロラAキナーゼの酵素活性を阻害するとは、オーロラAキナーゼが基質のペプチドまたはタンパク質をリン酸化する能力を低下させることを意味する。様々な実施形態では、オーロラAキナーゼ活性のこのような低下率は、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%である。様々な実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度、例えば、IC50は、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満または約50nM未満である。一実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を阻害するのに必要な濃度は、オーロラBキナーゼの酵素活性を阻害するのに必要なインヒビターの濃度よりも低い。一実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、50nM〜100nMである。一実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、100nM〜500nMである。一実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、50nM〜500nMである。一実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、50nM〜1μMである。一実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、100nM〜1μMである。一実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、500nM〜1μMである。様々な実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、オーロラBキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なインヒビターの濃度よりも、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍または少なくとも約1000倍低い。他の実施形態では、オーロラAキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なオーロラAキナーゼインヒビターの濃度は、オーロラBキナーゼの酵素活性を低下させるのに必要なインヒビターの濃度よりも、2倍〜10倍、5倍〜50倍、10倍〜100倍、20倍〜200倍または50倍〜500倍低い。
オーロラAの阻害と、オーロラBの阻害により、大きく異なる細胞表現型が得られる。(Proc.Natl.Acad.Sci.(2007)104:4106、Mol Cancer Ther(2009)8(7),2046−56、Chem Biol.(2008)15(6)552−62)。例えば、オーロラBを阻害せずに、オーロラAを阻害すると、有糸分裂指数(セリン10上のリン酸化ヒストンH3(pHisH3)を定量することによって測定)が上昇する。pHisH3は、生理系(例えばインタクト細胞)におけるオーロラBの独自の基質である。対照的に、オーロラBを阻害するか、またはオーロラAとオーロラBを二重に阻害すると、pHisH3が減少する。したがって、本明細書で使用する場合、「オーロラAキナーゼの選択的インヒビター」または「選択的オーロラAキナーゼインヒビター」という用語は、有効な抗腫瘍濃度で、オーロラAキナーゼインヒビターの表現型を示すインヒビターを指す。いくつかの実施形態では、選択的オーロラAキナーゼインヒビターは、その血漿中遊離分調節濃度(Cave)が、最大耐用量(MTD)においてヒトの血漿で実現される遊離分調節濃度と等しくなる用量でマウスに投与すると、一過性の有糸分裂遅延を引き起こす(pHisH3の定量によって測定)。本明細書で使用する場合、「遊離分調節濃度」とは、遊離薬物(タンパク質に結合していない薬物)の血漿濃度を指す。
「約」という用語は、本明細書では、およそ、その辺り、ほぼまたは前後を意味する目的で使用する。「約」という用語が、数値範囲とともに用いられているときには、示されている数値を上回るか、または下回るように、その範囲の境界を広げることによって、その範囲を修正する。概して、「約」という用語は、本明細書では、示されている値を10%上回る及び下回る差異で数値を修正する目的で使用する。
本明細書で使用する場合、「含む」という用語は、「〜が挙げられるが、これらに限らない」を意味する。
「患者」という用語は、本明細書で使用する場合、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを意味する。いくつかの実施形態では、患者は、本開示の方法による治療の開始前に、薬剤、例えば、オーロラAキナーゼ選択的インヒビターで治療したことがある。いくつかの実施形態では、患者は、増殖性障害を発症するかまたは増殖性障害の再発を起こすリスクのある患者である。
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用する場合、置換または非置換の直鎖、分岐鎖または環状のC1〜12炭化水素であって、完全飽和であるか、または1つ以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない炭化水素を意味する。例えば、好適な脂肪族基としては、置換または非置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びこれらを組み合わせたもの((シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルなど)が挙げられる。
単独で、またはより大きい部分の一部として用いられている「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖脂肪族基を指す。本開示の目的においては、脂肪族基を分子の残部に結合する炭素原子が飽和炭素原子であるときには、「アルキル」という用語を用いることになる。しかしながら、アルキル基は、他の炭素原子に不飽和部を含んでもよい。したがって、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、アリル、プロパルギル、ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられるが、これらに限らない。
本開示の目的において、脂肪族基を分子の残部に結合する炭素原子が、炭素−炭素二重結合の一部を形成するときには、「アルケニル」という用語を用いることになる。アルケニル基としては、ビニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル及び1−ヘキセニルが挙げられるが、これらに限らない。
本開示の目的において、脂肪族基を分子の残部に結合する炭素原子が、炭素−炭素三重結合の一部を形成するときには、「アルキニル」という用語を用いることになる。アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−ペンチニル及び1−ヘキシニルが挙げられるが、これらに限らない。
単独で、またはより大きい部分の一部として用いられている「脂環式」という用語は、3〜約14員の飽和または一部不飽和の環状脂肪族環系であって、任意に応じて置換されている脂肪族環系を指す。いくつかの実施形態では、脂環式は、3〜8個または3〜6個の環炭素原子を有する単環式炭化水素である。非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル及びシクロオクタジエニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、脂環式は、6〜12個、6〜10個または6〜8個の環炭素原子を有する架橋または縮合二環式炭化水素であり、その二環式環系の個々の環のいずれも、3〜8員である。
いくつかの実施形態では、脂環式環における2つの隣接する置換基は、介在する環原子と一体となって、任意に応じて置換されている5〜6員の縮合芳香族または3〜8員の縮合非芳香族環であって、O、N及びSからなる群から選択されている0〜3個の環ヘテロ原子を有する環を形成する。したがって、「脂環式」という用語には、1つ以上のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環に縮合されている脂肪族環が含まれる。非限定的な例としては、インダニル、5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリニル、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルであって、そのラジカルまたは結合点が脂肪族環にあるものが挙げられる。「脂環式」という用語は、「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」または「炭素環式」という用語と同義的に使用してよい。
単独で、またはより大きい部分の一部として用いられている「アリール」及び「ar−」という用語、例えば、「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」は、1〜3個の環を含むC6〜C14芳香族炭化水素であって、それぞれの環が、任意に応じて置換されている芳香族炭化水素を指す。好ましくは、アリール基は、C6〜10アリール基である。アリール基としては、フェニル、ナフチル及びアントラセニルが挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、アリール環における2つの隣接する置換基は、介在する環原子と一体となって、任意に応じて置換されている5〜6員の縮合芳香族または4〜8員の縮合非芳香族環であって、O、N及びSからなる群から選択されている0〜3個の環ヘテロ原子を有する環を形成する。したがって、本明細書で使用する場合、「アリール」という用語には、芳香族環が1つ以上のヘテロアリール、脂環式またはヘテロシクリル環に縮合されている基であって、そのラジカルまたは結合点が芳香族環にある基が含まれる。このような縮合環系の非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、フルオレニル、インダニル、フェナントリジニル、テトラヒドロナフチル、インドリニル、フェノキサジニル、ベンゾジオキサニル及びベンゾジオキソリルが挙げられる。アリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式、好ましくは単環式、二環式または三環式、より好ましくは単環式または二環式であってよい。「アリール」という用語は、「アリール基」、「アリール部分」及び「アリール環」という用語と同義的に使用してよい。
「アラルキル」または「アリールアルキル」基は、アルキル基に共有結合しているアリール基であって、それらの基のいずれかが独立して任意に応じて置換されている基を含む。好ましくは、アラルキル基は、C6〜10アリール(C1〜6)アルキル、C6〜10アリール(C1〜4)アルキルまたはC6〜10アリール(C1〜3)アルキルであり、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが挙げられるが、これらに限らない。
単独で、またはより大きい部分の一部として用いられている「ヘテロアリール」及び「ヘテロar−」という用語、例えば、ヘテロアラルキルまたは「ヘテロアラルコキシ」は、5〜14個の環原子、好ましくは5個、6個、9個または10個の環原子を有し、環状配置に共有された6個、10個または14個の□電子を有し、炭素原子に加えて、1〜4個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素または硫黄を指し、窒素または硫黄のいずれの酸化態と、塩基性窒素のいずれの四級化物も含む。ヘテロアリール基としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル及びプテリジニルが挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールにおける2つの隣接する置換基は、介在する環原子と一体となって、任意に応じて置換されている5〜6員の縮合芳香族または4〜8員の縮合非芳香族環であって、O、N及びSからなる群から選択されている0〜3個の環ヘテロ原子を有する環を形成する。したがって、本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」及び「ヘテロar−」という用語には、ヘテロ芳香族環が1つ以上のアリール、脂環式またはヘテロシクリル環に縮合している基であって、そのラジカルまたは結合点がヘテロ芳香族環にある基も含まれる。非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル及びピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式、好ましくは単環式、二環式または三環式、より好ましくは単環式または二環式であってよい。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「ヘテロ芳香族」という用語と同義的に使用してよく、これらの用語のいずれにも、任意に応じて置換されている環が含まれる。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されているアルキル基であって、アルキル部分とヘテロアリール部分が独立して任意に応じて置換されている基を指す。
本明細書で使用する場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」及び「複素式環」という用語は、同義的に使用されており、安定した3〜7員の単環式複素環部分、または飽和または一部不飽和のいずれかである7〜10員の縮合二環式複素環部分もしくは6〜10員の架橋二環式複素環部分であって、炭素原子に加えて、1つ以上、好ましくは1〜4個のヘテロ原子(上で定義したようなもの)を有する部分を指す。複素環の環原子に関して使用するときには、「窒素」という用語には、置換窒素が含まれる。例として、酸素、硫黄または窒素から選択した1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロシクリル環においては、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおける場合など)、NH(ピロリジニルにおける場合など)または+NR(N−置換ピロリジニルにおける場合など)であってよい。複素環は、いずれかのヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合していることができ、それにより、安定した構造を得られ、また、環原子のいずれかは、任意に応じて置換されていることができる。このような飽和または一部不飽和の複素環式ラジカルの例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル及びキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限らない。
いくつかの実施形態では、複素環における2つの隣接する置換基は、介在する環原子と一体となって、任意に応じて置換されている5〜6員の縮合芳香族または3〜8員の縮合非芳香族環であって、O、N及びSからなる群から選択されている0〜3個の環ヘテロ原子を有する環を形成する。したがって、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」及び「複素環式ラジカル」という用語は、本明細書では同義的に使用されており、これらの用語には、インドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロキノリニルなど、ヘテロシクリル環が1つ以上のアリール環、ヘテロアリール環または脂環式環に縮合されている基であって、そのラジカルまたは結合点がヘテロシクリル環にある基が含まれる。ヘテロシクリル基は、単環式、二環式、三環式または多環式、好ましくは単環式、二環式または三環式、より好ましくは単環式または二環式であってよい。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されているアルキル基であって、アルキル部分とヘテロシクリル部分が独立して任意に応じて置換されている基を指す。
本明細書で使用する場合、「一部不飽和」という用語は、環原子間に少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分を指す。「一部不飽和」という用語は、複数の不飽和部位を有する環を含むように意図されているが、本明細書で定義されているようなアリールまたはヘテロアリール部分を含むようには意図されていない。
「ハロ脂肪族」、「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」及び「ハロアルコキシ」という用語は、場合に応じて、1つ以上のハロゲン原子で置換されている脂肪族基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を指す。本明細書で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。「フルオロ脂肪族」という用語は、ハロゲンがフルオロであるハロ脂肪族を指す。
「アルキレン」という用語は、2価のアルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、−(CH2)n−を指し、このnは、好ましくは1〜6、1〜4、1〜3、1〜2または2〜3の正の整数である。置換アルキレン鎖は、1つ以上のメチレン水素原子が置換基で置き換えられているポリメチレン基である。好適な置換基としては、置換脂肪族基に関して後述されているものが挙げられる。アルキレン鎖も、1つ以上の位置で、脂肪族基または置換脂肪族基で置換されていてよい。
「置換されている」という用語は、本明細書で使用する場合、定められている部分の水素ラジカルが、所定の置換基のラジカルで置き換えられていることを意味し、ただし、その置換によって、安定した化合物または化学的に実現可能な化合物が得られることを条件とする。「1つ以上の置換基」という語句は、本明細書で使用する場合、1個から、利用可能な結合部位に基づき考え得る置換基の最大数に等しい置換基の数を指し、ただし、安定性及び化学的な実現可能性の上記条件を満たすことを条件とする。別段の定めのない限り、任意に応じて置換されている基は、その基の置換可能な各位置に置換基を有してよく、それらの置換基は、同じであっても異なってもよい。
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどのアリール部分を含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキル及びヘテロアラルコキシなどのヘテロアリール部分を含む)は、1つ以上の置換基を含んでよい。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子における好適な置換基の例としては、−ハロ、−NO2、−CN、−R*、−C(R*)=C(R*)2、−C≡C−R*、−OR*、−SR°、−S(O)R°、−SO2R°、−SO3R°、−SO2N(R+)2、−N(R+)2、−NR+C(O)R*、−NR+C(O)N(R+)2、−NR+CO2R°、−O−CO2R*、−OC(O)N(R+)2、−O−C(O)R*、−CO2R*、−C(O)−C(O)R*、−C(O)R*、−C(O)N(R+)2、−C(O)N(R+)C(=NR+)−N(R+)2、−N(R+)C(=NR+)−N(R+)−C(O)R*、−C(=NR+)−N(R+)2、−C(=NR+)−OR*、−N(R+)−N(R+)2、−N(R+)C(=NR+)−N(R+)2、−NR+SO2R°、−NR+SO2N(R+)2、−P(O)(R*)2、−P(O)(OR*)2、−O−P(O)−OR*及び−P(O)(NR+)−N(R+)2が挙げられ、または2つの隣接する置換基は、介在する原子と一体となって、N、O及びSからなる群から選択されている0〜3個の環原子を有する5〜6員の不飽和もしくは一部不飽和の環を形成する。
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどのアリール部分を含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキル及びヘテロアラルコキシなどのヘテロアリール部分を含む)は、1つ以上の置換基を含んでよい。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子における好適な置換基の例としては、−ハロ、−NO2、−CN、−R*、−C(R*)=C(R*)2、−C≡C−R*、−OR*、−SR°、−S(O)R°、−SO2R°、−SO3R°、−SO2N(R+)2、−N(R+)2、−NR+C(O)R*、−NR+C(O)N(R+)2、−NR+CO2R°、−O−CO2R*、−OC(O)N(R+)2、−O−C(O)R*、−CO2R*、−C(O)−C(O)R*、−C(O)R*、−C(O)N(R+)2、−C(O)N(R+)C(=NR+)−N(R+)2、−N(R+)C(=NR+)−N(R+)−C(O)R*、−C(=NR+)−N(R+)2、−C(=NR+)−OR*、−N(R+)−N(R+)2、−N(R+)C(=NR+)−N(R+)2、−NR+SO2R°、−NR+SO2N(R+)2、−P(O)(R*)2、−P(O)(OR*)2、−O−P(O)−OR*及び−P(O)(NR+)−N(R+)2が挙げられ、または2つの隣接する置換基は、介在する原子と一体となって、N、O及びSからなる群から選択されている0〜3個の環原子を有する5〜6員の不飽和もしくは一部不飽和の環を形成する。
各R+は独立して、水素または、任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか、同じ窒素原子上の2つのR+が、その窒素原子と一体となって、その窒素原子に加えて、N、O及びSから選択されている0〜2個の環ヘテロ原子を有する5〜8員の芳香族環または非芳香族環を形成する。各R*は独立して、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基である。各R°は、任意に応じて置換されている脂肪族基またはアリール基である。
脂肪族基または非芳香族複素環は、1つ以上の置換基で置換されていてよい。脂肪族基または非芳香族複素環の飽和炭素上の好適な置換基の例としては、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素に関して上で列挙したものと、=O、=S、=C(R*)2、=N−N(R*)2、=N−OR*、=N−NHC(O)R*、=N−NHCO2R°、=N−NHSO2R°または=N−R*が挙げられるが、これらに限らず、この各R*及びR°は、上で定義したとおりである。
非芳香族複素環の窒素原子上の好適な置換基としては、−R*、−N(R*)2、−C(O)R*、−CO2R*、−C(O)−C(O)R*、−C(O)CH2C(O)R*、−SO2R*、−SO2N(R*)2、−C(=S)N(R*)2、−C(=NH)−N(R*)2及び−NR*SO2R*が挙げられ、この各R*は、上で定義したとおりである。
別段の定めのない限り、本明細書に示されている構造には、同位体に富む原子が1つ以上存在する点のみが異なる化合物が含まれるように意図されている。例えば、水素原子が重水素もしくは三重水素によって置き換えられているか、または炭素原子が13Cまたは14C濃縮炭素によって置き換えられている点以外は、本発明の構造を有する化合物は、本開示の範囲内である。
本明細書に記載されている特定の化合物は、互変異性型で存在してよく、その化合物のこのような互変異性型はいずれも、本開示の範囲内であることは当業者には明らかであろう。別段の定めのない限り、本明細書に示されている構造には、その構造のすべての立体化学型、すなわち、各不斉中心に関するR配置とS配置が含まれるように意図されている。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体と、エナンチオマー及びジアステレオマー混合物は、本開示の範囲内である。
本開示の方法、医薬組成物及びキットにおいては、オーロラAキナーゼの酵素活性を選択的に阻害できるいずれかの分子を用いてよい。いくつかの実施形態では、この選択的オーロラAキナーゼインヒビターは、低分子量化合物である。具体的には、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターとしては、本明細書に記載されている化合物と、例えば、米国特許出願公開第2008/0045501号、米国特許第7,572,784号、WO05/111039、WO08/021038、米国特許第7,718,648号、WO08/063525、米国特許出願公開第2008/0167292号、米国特許第8,026,246号、WO10/134965、米国特許出願公開第2010/0310651号、WO11/014248、米国特許出願公開第2011/0039826号及び米国特許出願公開第2011/0245234号(これらの特許はそれぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される)に開示されている化合物と、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンザゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート、KW−2449(Kyowa)、ENMD−2076(EntreMed)及びMK−5108(Vertex/Merck)という化合物が挙げられる。これらの化合物のいずれの溶媒和形態と水和形態も、本開示の方法、医薬組成物及びキットでの使用に適している。これらの化合物のいずれの製薬学的に許容可能な塩、ならびにこのような塩の溶媒和形態及び水和形態も、本開示の方法、医薬組成物及びキットでの使用に適している。これらの選択的オーロラAキナーゼインヒビターは、有機合成分野の当業者に周知の数多くの方法で調製でき、その方法としては、本明細書で参照されている参照文献に詳細に記載されている合成方法が挙げられるが、これらに限らない。
オーロラAキナーゼインヒビターは、オーロラAキナーゼに選択的に結合したり及び/またはオーロラAキナーゼを選択的に阻害したりする能力について、インビトロまたはインビボでアッセイできる。インビトロアッセイとしては、オーロラAキナーゼが基質タンパク質またはペプチドをリン酸化する能力の選択的阻害を割り出すアッセイが挙げられる。別のインビトロアッセイでは、その化合物がオーロラAキナーゼに選択的に結合する能力を定量する。インヒビターの選択的結合は、結合前にそのインヒビターを放射性標識し、インヒビター/オーロラAキナーゼ複合体を単離し、結合した放射性標識の量を割り出すことによって測定してよい。あるいは、インヒビターの選択的結合は、既知の放射性リガンドに結合させたオーロラAキナーゼと新規インヒビターをインキュベートする競合実験を行うことによって割り出してよい。本開示の化合物は、オーロラAキナーゼ活性によって媒介される細胞機能または生理機能に影響を及ぼす能力についてアッセイすることもできる。オーロラBキナーゼよりもオーロラAキナーゼに対する選択性の方が上回ることを評価するために、インヒビターは、オーロラAキナーゼに関して上記した方法と同様のアッセイを用いて、オーロラBキナーゼに選択的に結合したり及び/またはオーロラBキナーゼを阻害したりする能力についても、インビトロ及びインビボでアッセイできる。インヒビターは、pHisH3の免疫蛍光検出によって、オーロラBキナーゼの阻害なしに、オーロラAキナーゼを阻害する能力について、インビトロ及びインビボでアッセイできる。(Proc.Natl.Acad.Sci.(2007)104,4106)。これらの活性をそれぞれアッセイすることは、当該技術分野において既知である。
いくつかの実施形態では、選択的オーロラAキナーゼインヒビターは、下記の式(I)によって表される化合物
またはその製薬学的に許容可能な塩であり、
上記の式中、
環Aは、置換または非置換の5または6員のアリール環、ヘテロアリール環、脂環式環またはヘテロシクリル環であり、
環Bは、置換または非置換のアリール環、ヘテロアリール環、脂環族式またはヘテロシクリル環であり、
環Cは、置換または非置換のアリール環、ヘテロアリール環、ヘテロシクリル環または脂環式環であり、
Reは、水素、−OR5、−N(R4)2、−SR5、または任意に応じてR3またはR7で置換されているC1−3脂肪族であり、
RxとRyはそれぞれ独立して、水素、フルオロ、または任意に応じて置換されているC1〜6脂肪族であるか、またはRxとRyは、それらが結合している炭素原子と一体となって、任意に応じて置換されている3〜6員の脂環式環を形成し、
各R3は独立して、−ハロ、−OH、−O(C1〜3アルキル)、−CN、−N(R4)2、−C(O)(C1〜3アルキル)、−CO2H、−CO2(C1〜3アルキル)、−C(O)NH2及び−C(O)NH(C1〜3アルキル)からなる群から選択されており、
各R4は独立して、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか、同じ窒素原子上の2つのR4は、その窒素原子と一体となって、任意に応じて置換されている5〜6員のヘテロアリール環または4〜8員のヘテロシクリル環であって、窒素原子に加えて、N、O及びSから選択されている0〜2個の環ヘテロ原子を有する環を形成し、
各R5は独立して、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であり、
各R7は独立して、任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基である。
環Aは、置換または非置換の5〜6員のアリール環、ヘテロアリール環、脂環式環またはヘテロシクリル環である。環Aの例としては、フラノ、ジヒドロフラノ、チエノ、ジヒドロチエノ、シクロペンテノ、シクロヘキセノ、2H−ピロロ、ピロロ、ピロリノ、ピロリジノ、オキサゾロ、チアゾロ、イミダゾロ、イミダゾリノ、イミダゾリジノ、ピラゾロ、ピラゾリノ、ピラゾリジノ、イソオキサゾロ、イソチアゾロ、オキサジアゾロ、トリアゾロ、チアジアゾロ、2H−ピラノ、4H−ピラノ、ベンゾ、ピリジノ、ピペリジノ、ジオキサノ、モルホリノ、ジチアノ、チオモルホリノ、ピリダジノ、ピリミジノ、ピラジノ、ピペラジノ及びトリアジノが挙げられ、これらの基のいずれも、置換されていても、置換されていなくてもよい。環Aの好ましい基としては、フラノ、チエノ、ピロロ、オキサゾロ、チアゾロ、イミダゾロ、ピラゾロ、イソオキサゾロ、イソチアゾロ、トリアゾロ、ベンゾ、ピリジノ、ピリダジノ、ピリミジノ及びピラジノからなる群から選択した置換または非置換の環が挙げられるが、これらに限らない。
環Aは、置換されていても、置換されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、環Aにおける置換可能な飽和環炭素原子はそれぞれ、置換されていないか、または=O、=S、=C(R5)2、=N−N(R4)2、=N−OR5、=N−NHC(O)R5、=N−NHCO2R6、=N−NHSO2R6、=N−R5もしくは−Rbで置換されており、このRb、R4、R5及びR6は、下に定義されているとおりである。環Aにおける置換可能な不飽和環炭素原子はそれぞれ、置換されていないか、または−Rbで置換されている。環Aにおける置換可能な環窒素原子はそれぞれ、置換されていないか、または−R9bで置換されており、環Aにおける1つの環窒素原子は、任意に応じて酸化されている。各R9bは独立して、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−CO2R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2または任意に応じてR3もしくはR7で置換されているC1〜4脂肪族である。
各Rbは独立して、R2b、任意に応じて置換されている脂肪族、または任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロシクリル基もしくはヘテロアリール基であるか、2つの隣接するRbが、介在する環原子と一体となって、任意に応じて置換されている4〜8員の縮合芳香族環または縮合非芳香族環であって、O、N及びSからなる群から選択されている0〜3個の環ヘテロ原子を有する環を形成する。
各R2bは独立して、−ハロ、−NO2、−CN、−C(R5)=C(R5)2、−C(R5)=C(R5)(R10)、−C≡C−R5、−C≡C−R10、−OR5、−SR6、−S(O)R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2、−N(R4)2、−NR4C(O)R5、−NR4C(O)N(R4)2、−NR4CO2R6、−O−CO2R5、−OC(O)N(R4)2、−O−C(O)R5、−CO2R5、−C(O)−C(O)R5、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−C(=NR4)−N(R4)2、−C(=NR4)−OR5、−N(R4)−N(R4)2、N(R4)C(=NR4)−N(R4)2、−N(R4)SO2R6、−N(R4)SO2N(R4)2、−P(O)(R5)2または−P(O)(OR5)2であり、可変基のR4、R5及びR7は、上記の意味を有し、各R6は独立して、任意に応じて置換されている脂肪族基またはアリール基であり、各R10は独立して、−CO2R5または−C(O)N(R4)2である。
いくつかの実施形態では、環Aは、0〜2個の置換基Rbによって置換されている。いくつかのこのような実施形態では、各Rbは独立して、C1〜3脂肪族またはR2bであり、各R2bは独立して、−ハロ、−NO2、−C(R5)=C(R5)2、−C≡C−R5、−OR5及び−N(R4)2からなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、各Rbは独立して、−ハロ、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族及び−OR5からなる群から選択されており、このR5は水素またはC1〜3脂肪族である。特定の好ましい実施形態では、環Aは、独立してクロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、トリフルオロメチル及びメトキシからなる群から選択されている0、1または2個の置換基、好ましくは0または1個の置換基で置換されている。
いくつかの実施形態では、環Bは、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、フェニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びプテリジニルからなる群から選択した置換または非置換の単環式または二環式アリール環またはヘテロアリール環である。
環Bにおける置換可能な飽和環炭素原子はそれぞれ、置換されていないか、または=O、=S、=C(R5)2、=N−N(R4)2、=N−OR5、=N−NHC(O)R5、=N−NHCO2R6、=N−NHSO2R6、=N−R5もしくは−Rcで置換されている。環Bにおける置換可能な不飽和環炭素原子はそれぞれ、置換されていないか、または−Rcで置換されている。環Bにおける置換可能な環窒素原子はそれぞれ、置換されていないか、または−R9cで置換されており、環Bにおける1つの環窒素原子は、任意に応じて酸化されている。各R9cは独立して、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−CO2R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2または任意に応じてR3もしくはR7で置換されているC1〜4脂肪族である。環Bは、置換されていなくてもよく、またはその構成環のいずれかの1つ以上で置換されていてもよく、この場合、置換基は、同じであっても異なってもよい。いくつかの実施形態では、環Bは、0〜2個の独立して選択されたRc、0〜3個の独立して選択されたR2cまたはC1〜6脂肪族基で置換されている。可変基のR3、R4、R5、R6及びR7は、環Aに関して上で定義したとおりであり、Rc及びR2cは、下に定義されているとおりである。
各Rcは独立して、R2c、任意に応じて置換されているC1〜6脂肪族、または任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基である。
各R2cは独立して、−ハロ、−NO2、−CN、−C(R5)=C(R5)2、−C(R5)=C(R5)(R10)、−C≡C−R5、−C≡C−R10、−OR5、−SR6、−S(O)R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2、−N(R4)2、−NR4C(O)R5、−NR4C(O)N(R4)2、−NR4CO2R6、−O−CO2R5、−OC(O)N(R4)2、−O−C(O)R5、−CO2R5、−C(O)−C(O)R5、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−C(=NR4)−N(R4)2、−C(=NR4)−OR5、−N(R4)−N(R4)2、−N(R4)C(=NR4)−N(R4)2、−N(R4)SO2R6、−N(R4)SO2N(R4)2、−P(O)(R5)2または−P(O)(OR5)2である。
いくつかの実施形態では、環Bは、0〜2個の独立して選択されたRc及び0〜2個の独立して選択されたR2cまたはC1〜6脂肪族基で置換されている単環式の5または6員のアリール環またはヘテロアリール環である。特定のこのような実施形態では、環Bは、置換または非置換のフェニル環またはピリジル環である。
いくつかの実施形態では、環Bは、0〜2個の置換基Rcで置換されている。いくつかのこのような実施形態では、各Rcは独立して、C1〜3脂肪族またはR2cであり、各R2cは独立して、−ハロ、−NO2、−C(R5)=C(R5)2、−C≡C−R5、−OR5及び−N(R4)2からなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、各Rcは独立して、−ハロ、C1〜3脂肪族、C1〜3ハロ脂肪族及び−OR5からなる群から選択されており、このR5は、水素またはC1〜3脂肪族である。特定の好ましい実施形態では、環Bは、独立してクロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、トリフルオロメチル及びメトキシからなる群から選択した0、1または2個の置換基で置換されている。
環Cにおける置換可能な飽和環炭素原子はそれぞれ、置換されていないか、または=O、=S、=C(R5)2、=N−N(R4)2、=N−OR5、=N−NHC(O)R5、=N−NHCO2R6、=N−NHSO2R6、=N−R5または−Rdで置換されている。環Cにおける置換可能な不飽和環炭素原子はそれぞれ、置換されていないか、または−Rdで置換されている。環Cにおける置換可能な環窒素原子はそれぞれ、置換されていないか、または−R9dで置換されており、環Cにおける1つの環窒素原子は、任意に応じて酸化されている。各R9dは独立して、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−CO2R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2または任意に応じてR3もしくはR7で置換されているC1〜4脂肪族である。環Cは、置換されていなくてもよく、またはその構成環のいずれかの1つ以上で置換されていてもよく、その置換基は、同じであっても異なってもよい。いくつかの実施形態では、環Cは、0〜2個の独立して選択されたRd及び0〜3個の独立して選択されたR2dまたはC1〜6脂肪族基で置換されている。可変基のR3、R4、R5、R6及びR7は、環A及びBに関して上で説明したとおりである。可変基のRd及びR2dは、下に説明されているとおりである。
各Rdは独立して、R2d、任意に応じて置換されている脂肪族、または任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基である。
各R2dは独立して、−ハロ、−NO2、−CN、−C(R5)=C(R5)2、−C(R5)=C(R5)2(R10)、−C≡C−R5、−C≡C−R10、−OR5、−SR6、−S(O)R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2、−N(R4)2、−NR4C(O)R5、−NR4C(O)N(R4)2、−NR4CO2R6、−O−CO2R5、−OC(O)N(R4)2、−O−C(O)R5、−CO2R5、−C(O)−C(O)R5、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−C(=NR4)−N(R4)2、−C(=NR4)−OR5、−N(R4)−N(R4)2、−N(R4)C(=NR4)−N(R4)2、−N(R4)SO2R6、−N(R4)SO2N(R4)2、−P(O)(R5)2または−P(O)(OR5)2である。加えて、R2dは、−SO3R5、−C(O)N(R4)C(=NR4)−N(R4)2または−N(R4)C(=NR4)−N(R4)−C(O)R5であることができる。
いくつかの実施形態では、環Cは、0〜2個の独立して選択された置換基Rd及び0〜2個の独立して選択されたR2dまたはC1〜6脂肪族基で置換されている単環式の5または6員のアリールまたはヘテロアリール環である。いくつかのこのような実施形態では、環Cは、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピラゾリル及びオキサゾリルからなる群から選択した任意に応じて置換されているヘテロアリール環である。いくつかの他の実施形態では、環Cは、置換または非置換のフェニル環である。いくつかの実施形態では、環Cは、0、1または2個の置換基Rd(上で定義したとおりである)で置換されている単環式の5または6員のアリールまたはヘテロアリール環である。
いくつかの他の実施形態では、環Cは、0〜2個の独立して選択された置換基Rd及び0〜2個の独立して選択されたR2dまたはC1〜6脂肪族基で置換されている単環式の5または6員のヘテロシクリルまたは脂環式環である。
いくつかの実施形態では、選択的オーロラAキナーゼインヒビターは、下記の式(II)によって表される化合物、
またはその製薬学的に許容可能な塩であり、
上記の式中、
Reは、水素、またはR3もしくはR7で任意に応じて置換されているC1〜3脂肪族であり、
環Aは、0〜3個のRbで置換されており、
各Rbは独立して、C1〜6脂肪族、R2b、R7b、−T1−R2b及び−T1−R7bからなる群から選択されており、
各R2bは独立して、−ハロ、−NO2、−CN、−C(R5)=C(R5)2、−C≡C−R5、−OR5、−SR6、−S(O)R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2、−N(R4)2、−NR4C(O)R5、−NR4C(O)N(R4)2、−NR4CO2R6、−O−CO2R5、−OC(O)N(R4)2、−O−C(O)R5、−CO2R5、−C(O)−C(O)R5、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−C(=NR4)−N(R4)2、−C(=NR4)−OR5、−N(R4)−N(R4)2、−N(R4)C(=NR4)−N(R4)2、−N(R4)SO2R6、−N(R4)SO2N(R4)2、−P(O)(R5)2または−P(O)(OR5)2であり、
各R7bは独立して、任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基であり、
環Bは、0〜2個の独立して選択されたRc及び0〜2個の独立して選択されたR2cまたはC1〜6脂肪族基で置換されており、
各Rcは独立して、C1〜6脂肪族、R2c、R7c、−T1−R2c及び−T1−R7cからなる群から選択されており、
各R2cは独立して、−ハロ、−NO2、−CN、−C(R5)=C(R5)2、−C≡C−R5、−OR5、−SR6、−S(O)R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2、−N(R4)2、−NR4C(O)R5、−NR4C(O)N(R4)2、−NR4CO2R6、−O−CO2R5、−OC(O)N(R4)2、−O−C(O)R5、−CO2R5、−C(O)−C(O)R5、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−C(=NR4)−N(R4)2、−C(=NR4)−OR5、−N(R4)−N(R4)2、−N(R4)C(=NR4)−N(R4)2、−N(R4)SO2R6、−N(R4)SO2N(R4)2、−P(O)(R5)2または−P(O)(OR5)2であり、
各R7cは独立して、任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基であり、
T1は、任意に応じてR3またはR3bで置換されているC1〜6アルキレン鎖であり、この場合、T1またはその一部は任意に応じて、3〜7員環の一部を形成し、
環Cは、0〜2個の独立して選択されたRd及び0〜3個の独立して選択されたR2dまたはC1〜6脂肪族基で置換されており、
各Rdは独立して、C1〜6脂肪族、R2d、R7d、−T2−R2d、−T2−R7d、−V−T3−R2d及び−V−T3−R7dからなる群から選択されており、
T2は、任意に応じてR3またはR3bで置換されているC1〜6アルキレン鎖であり、このアルキレン鎖は任意に応じて、−C(R5)=C(R5)−、−C≡C−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−SO2N(R4)−、−N(R4)−、−N(R4)C(O)−、−NR4C(O)N(R4)−、−N(R4)CO2−、−C(O)N(R4)−、−C(O)−、−C(O)−C(O)−、−CO2−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(R4)−、−N(R4)−N(R4)−、−N(R4)SO2−または−SO2N(R4)−を介しており、T2またはその一部は任意に応じて、3〜7員環の一部を形成し、
T3は、任意に応じてR3またはR3bで置換されているC1〜6アルキレン鎖であり、このアルキレン鎖は任意に応じて、−C(R5)=C(R5)−、−C≡C−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−SO2N(R4)−、−N(R4)−、−N(R4)C(O)−、−NR4C(O)N(R4)−、−N(R4)CO2−、−C(O)N(R4)−、−C(O)−、−C(O)−C(O)−、−CO2−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(R4)−、−N(R4)−N(R4)−、−N(R4)SO2−または−SO2N(R4)−を介しており、T3またはその一部は任意に応じて、3〜7員環の一部を形成し、
Vは、−C(R5)=C(R5)−、−C≡C−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−SO2N(R4)−、−N(R4)−、−N(R4)C(O)−、−NR4C(O)N(R4)−、−N(R4)CO2−、−C(O)N(R4)−、−C(O)−、−C(O)−C(O)−、−CO2−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(R4)−、−C(NR4)=N−、−C(OR5)=N−、−N(R4)−N(R4)−、−N(R4)SO2−、−N(R4)SO2N(R4)−、−P(O)(R5)−、−P(O)(OR5)−O−、−P(O)−O−または−P(O)(NR5)−N(R5)−であり、
R2dは、−ハロ、−NO2、−CN、−C(R5)=C(R5)2、−C≡C−R5、−OR5、−SR6、−S(O)R6、−SO2R6、−SO2N(R4)2、−N(R4)2、−NR4C(O)R5、−NR4C(O)N(R4)2、−NR4CO2R6、−O−CO2R5、−OC(O)N(R4)2、−O−C(O)R5、−CO2R5、−C(O)−C(O)R5、−C(O)R5、−C(O)N(R4)2、−C(=NR4)−N(R4)2、−C(=NR4)−OR5、−N(R4)−N(R4)2、−N(R4)C(=NR4)−N(R4)2、−N(R4)SO2R6、−N(R4)SO2N(R4)2、−P(O)(R5)2または−P(O)(OR5)2であり、
各R7dは独立して、任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基であり、
各R3は独立して、−ハロ、−OH、−O(C1〜3アルキル)、−CN、−N(R4)2、−C(O)(C1〜3アルキル)、−CO2H、−CO2(C1〜3アルキル)、−C(O)NH2及び−C(O)NH(C1〜3アルキル)からなる群から選択されており、
各R3bは独立して、任意に応じてR3もしくはR7で置換されているC1〜3脂肪族であるか、または同じ炭素原子上の2つの置換基R3bは、それらが結合している炭素原子と一体となって、3〜6員の炭素環式環を形成しており、
各R4は独立して、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか、同じ窒素原子上の2つのR4は、その窒素原子と一体となって、任意に応じて置換されている5〜8員のヘテロアリール環またはヘテロシクリル環であって、窒素原子に加えて、N、O及びSから選択した0〜2個の環ヘテロ原子を有する環を形成し、
各R5は独立して、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であり、
各R6は独立して、任意に応じて置換されている脂肪族基またはアリール基であり、
各R7は独立して、任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基である。
表1には、式(II)の化合物の具体例の化学名が示されている。
いくつかの実施形態では、選択的オーロラAキナーゼインヒビターは、下記の式(III)によって表されるか、
またはその製薬学的に許容可能な塩であり、
上記の式中、
Raは、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−R1、−T−R1、−R2及び−T−R2からなる群から選択されており、
Tは、任意に応じてフルオロで置換されているC1〜3アルキレン鎖であり、
R1は、任意に応じて置換されているアリール基、ヘテロアリール基またはヘテロシクリル基であり、
R2は、ハロ、−C≡C−R3、−CH=CH−R3、−N(R4)2及び−OR5からなる群から選択されており、
R3は、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であり、
各R4は独立して、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか、同じ窒素原子上の2つのR4は、その窒素原子と一体となって、任意に応じて置換されている5〜6員のヘテロアリール環または4〜8員のヘテロシクリル環であって、その窒素原子に加えて、N、O及びSから選択した0〜2個の環ヘテロ原子を有する環を形成し、
R5は、水素、または任意に応じて置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロシクリル基であり、
Rbは、フルオロ、クロロ、−CH3、−CF3、−OH、−OCH3、−OCF3、−OCH2CH3及び−OCH2CF3からなる群から選択されている。
いくつかの実施形態では、R1は、ハロ、C1〜3脂肪族及びC1〜3フルオロ脂肪族からなる群から独立して選択した1つまたは2つの置換基で任意に応じて置換されている5または6員のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環である。特定の実施形態では、R1は、ハロ、C1〜3脂肪族及びC1〜3フルオロ脂肪族からなる群から独立して選択した1つまたは2つの置換基で任意に応じて置換されているフェニル環、フリル環、ピロリジニル環またはチエニル環である。
いくつかの実施形態では、R3は、水素、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族または−CH2−OCH3である。
いくつかの実施形態では、R5は、水素、C1〜3脂肪族またはC1〜3フルオロ脂肪族である。
特定の実施形態では、Raは、ハロ、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−OH、−O(C1〜3脂肪族)、−O(C1〜3フルオロ脂肪族)、−C≡C−R3、−CH=CH−R3または任意に応じて置換されているピロリジニル環、チエニル環、フリル環もしくはフェニル環であり、このR3は、水素、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族または−CH2−OCH3である。特定の具体的な実施形態では、Raは、クロロ、フルオロ、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−OCH3、−OCF3、−C≡C−H、−C≡C−CH3、−C≡C−CH2OCH3、−CH=CH2、−CH=CHCH3、N−メチルピロリジニル、チエニル、メチルチエニル、フリル、メチルフリル、フェニル、フルオロフェニル及びトリルからなる群から選択されている。
表2には、式(III)の化合物の具体例の化学名が示されている。
一実施形態では、式(III)の化合物は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンザゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(アリセルチブ(MLN8237))またはその製薬学的に許容可能な塩である。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンザゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートである。別の実施形態では、式(III)の化合物は、ナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンザゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエート一水和物である。別の実施形態では、式(III)の化合物は、米国特許出願公開第2008/0167292号、米国特許第8,026,246号及び米国特許出願公開第2011/0245234号(参照により、それらの全体は本明細書に援用される)に記載されているようなナトリウム4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンザゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシベンゾエートまたはその結晶体である。
本開示は、がんの治療方法であって、がんの治療の必要な患者に、式(I)、(II)もしくは(III)の化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩のいずれか1つを治療上有効な量投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、がんの治療で使用する式(I)、(II)もしくは(III)の化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩のいずれか1つを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、がんを治療するための医薬組成物(本明細書に記載されているようなもの)の調製に、式(II)、(II)もしくは(III)の化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩のいずれか1つを用いることを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、がんの治療に、式(I)、(II)もしくは(III)の化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩のいずれか1つを治療上有効な量用いることを提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、がん患者の細胞試料(複数可)における変異の存在に基づき、治療上有効な量の式(I)、(II)もしくは(III)の化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩のいずれか1つによる治療に応答する可能性の高い患者として、その患者を同定することに基づき、治療上有効な量の式(I)、(II)もしくは(III)の化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩のいずれか1つで、がん患者を治療するか判断する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、がん患者の細胞試料(複数可)における変異の存在に基づき、治療上有効な量のオーロラAキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブ、またはその製薬学的に許容可能な塩による治療に応答する可能性の高い患者として、その患者を同定することに基づき、治療上有効な量のオーロラAキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブ、またはその製薬学的に許容可能な塩で、がん患者を治療するか判断する方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者の細胞試料における変異は、Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路またはHippoシグナル伝達経路における遺伝子の変異である。
いくつかの実施形態では、本開示は、がんの治療方法であって、LEF1、MAP3K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWTR1及びYAP1からなる群から選択した遺伝子における変異を有することによってその腫瘍試料が特徴付けられるがん患者に、オーロラAキナーゼインヒビター、例えばアリセルチブ、またはその製薬学的に許容可能な塩もしくは医薬組成物を治療上有効な量投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、LEF1、MAP3K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWTR1及びYAP1からなる群から選択した遺伝子に変異を持つ患者のがんの治療に用いる式(I)、(II)もしくは(III)のいずれか1つの化合物、またはその製薬学的に許容可能な塩もしくは医薬組成物を提供する。
本明細書には、薬理ゲノム学的マーカーの量の測定を通じて、腫瘍の治療の転帰を評価することが説明されている。本明細書には、利便的または低コストな非侵襲性の手段、例えば、血液試料から得られる手段によって、治療転帰を評価することも説明されている。本開示は、腫瘍を治療するかまたは患者の疾患を管理するのに適切な療法レジメンを判断、評価、通告または提供する方法を提供する。本明細書に開示されているキットと方法を用いて治療をモニタリングすると、転帰が不良となる可能性を特定して、転帰不良を予防できるので、治療レジメンの調節、療法の中止または代わりの療法の利用を通じて、罹患率、死亡率及び治療コストの低減が可能になる。
「生体試料」という用語には、患者試料、例えば、対象から単離した組織、細胞、体液及びそれらの単離物、ならびに対象に存在する組織、細胞及び流体が含まれるように意図されており、生体試料は、患者または正常な対象から得ることができる。骨髄の血液腫瘍、例えば骨髄腫腫瘍では、骨髄試料で腫瘍の一次解析を行うことができる。しかしながら、いくつかの腫瘍細胞(例えば、クロノタイプ腫瘍細胞、循環内皮細胞)は、全血中におけるある割合の細胞集団である。また、これらの細胞は、骨髄移植(血液腫瘍、例えば、白血病、リンパ腫及び骨髄腫に対する標準的な治療)に備えて、患者を顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)で治療中に、血液に動員し得る。多発性骨髄腫における循環腫瘍細胞の例は、例えば、Pilarski et al.(2000)Blood 95:1056−65及びRigolin et al.(2006)Blood 107:2531−5によって研究されている。すなわち、非侵襲性試料、例えば、治療の転帰を判断するためのマーカーのインビトロ測定用の非侵襲性試料としては、末梢血液試料を挙げることができる。したがって、末梢血液中の細胞のマーカー量を検査することができる。血液腫瘍患者では、その患者の皮膚または口腔スワブから、正常な特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量の対照参照試料を得ることができる。固形腫瘍では、典型的な腫瘍試料は、腫瘍の生検標本である。固形腫瘍では、正常な特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量の対照参照試料は、患者の血液から得ることができる。
採血容器には、血液の一体性を保つための添加剤(デキストロースもしくはアルブミンまたはバッファー、例えばフォスフェートなど)とともに、抗凝固剤、例えば、ヘパリンまたはエチレン−ジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ナトリウムシトレートまたはシトレート溶液を入れることができる。試料中のマーカーのDNAのレベルを測定することによって、マーカーの量を測定する場合には、DNA安定剤、例えば、DNAseを阻害する薬剤を試料に加えることができる。試料中のマーカーのRNAのレベルを測定することによって、マーカーの量を測定する場合、RNA安定剤、例えば、RNAseを阻害する薬剤を試料に加えることができる。試料中のタンパク質のレベルを測定することによって、マーカーの量を測定する場合、タンパク質安定剤、例えば、プロテアーゼを阻害する薬剤を試料に加えることができる。採血容器の例は、採血時にRNAを安定化するのに有用なPAXGENE(登録商標)の採血管(カリフォルニア州バレンシアのPREANALYTIX)である。末梢血液試料は、(例えば、腫瘍を豊富に含む試料、または腫瘍を枯渇させた試料(例えば参照試料)を得るために)改変、例えば、分画、ソーティングまたは濃縮することができる。改変試料の例としては、クロノタイプ骨髄腫細胞が挙げられ、この細胞は、例えば陰性選択、例えば、赤血球からの白血球の分離(例えば、高濃度糖またはポリマー溶液(例えば、FICOLL(登録商標)液(ニュージャージー州ピスカタウェイのGE healthcareのAmersham Biosciences部門)もしくはミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich Biotechnology LP and Sigma−Aldrich Co.のHISTOPAQUE(登録商標)−1077液))による分別遠心)、ならびに/あるいは直接単離するために、B細胞を選択剤(例えば、腫瘍細胞もしくは骨髄系前駆細胞マーカー(CD34、CD38、CD138もしくはCD133など)に結合する試薬)に結合させること(例えば、B細胞マーカーに結合する磁気ビーズ(例えば、カリフォルニア州オーバーンのMiltenyi Biotec製)を含む細胞の溶液への磁場の印加)または蛍光活性化細胞選別による陽性選択によって採取できる。
あるいは、腫瘍細胞株、例えば、OCI−Ly3、OCI−Ly10細胞(Alizadeh et al.(2000)Nature 403:503−511)、RPMI6666細胞、SUP−B15細胞、KG−1細胞、CCRF−SB細胞、8ES細胞、Kasumi−1細胞、Kasumi−3細胞、BDCM細胞、HL−60細胞、Mo−B細胞、JM1細胞、GA−10細胞もしくはB細胞リンパ腫(例えばBC−3)または細胞株もしくは腫瘍細胞株群(例えば、McDermott et al.(2007)PNAS104:19936−19941もしくは抗がん腫瘍細胞プロファイリングスクリーンのONCOPANEL(商標)(ワシントン州ボセルのRicerca Biosciences)を参照されたい)をアッセイすることができる。当業者であれば、本発明の方法で使用する適切な細胞を(例えば、バージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collection(ATCC(登録商標))から)容易に選択及び入手できる。本開示の組成物または方法を用いて、患者における治療転帰を予測するか、または治療プロトコールの有効性をモニタリングする場合には、治療する患者から得た組織または血液試料が、アッセイのための細胞、マーカー遺伝子または遺伝子産物の有用な供給源である。
試料、例えば、腫瘍(例えば生検標本)、骨髄、血液もしくは改変血液(例えば、腫瘍細胞を含むもの)及び/または参照試料、例えば対応する対照試料(例えば生殖系列試料)に対して、採取後における様々な周知の事前処理及び保存処理(例えば、核酸及び/またはタンパク質の抽出、固定、保存、凍結、限外ろ過、濃縮、蒸発、遠心分離など)を、試料中のマーカーの量の評価前に行うことができる。
一実施形態では、マーカーにおける変異は、そのマーカー遺伝子と相関する核酸、例えばDNA、RNA、cDNAまたはタンパク質をシーケンシングすることによって同定できる。核酸をシーケンシングするものとして当該技術分野において知られているシーケンシング方法がいくつか存在する。潜在的変異部位を含む領域に結合するように、プライマーを設計することも、野生型配列ではなく変異配列と相補するようにプライマーを設計することもできる。マーカー遺伝子における潜在的変異部を含む領域を挟むように、プライマー対を設計することができる。マーカー遺伝子に対応するDNAの1つまたは両方の鎖をシーケンシングするのに、プライマーまたはプライマー対を用いることができる。プライマーは、シーケンシング前に、目的の領域を増幅するためのプローブと併せて用いて、マーカー遺伝子における変異を検出するための配列量を増やすことができる。シーケンシングできる領域の例としては、全遺伝子、遺伝子の転写物及び遺伝子または転写物の断片、例えば、エキソンまたは非翻訳領域の1つ以上が挙げられる。プライマー選択と、配列もしくは組成解析のための標的とする変異の例は、変異情報を収集している公開データベース(COSMIC及びdbGaPなど)で見出すことができる。LEF1、MAP2K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWC1、WWTR1及びYAP1などのようなマーカー遺伝子のいくつかの変異は、オーロラAキナーゼの阻害、例えばアリセルチブによる阻害に対する感受性と関連し得る変異の例として、実施例の表9〜10に列挙されている。
シーケンシング方法は、当業者に知られている。この方法の例としては、サンガー法、SEQUENOM(商標)法及び次世代シーケンシング(NGS)法が挙げられる。電気泳動、例えばキャピラリー電気泳動を用いて、プライマーで伸長した標識DNA断片を分離することを含むサンガー法は、ハイスループットな用途用に自動化できる。目的の領域をPCRで増幅後、プライマー伸長シーケンシングを行うことができる。ソフトウェアによって、配列のベースコールと変異の同定を補助することができる。SEQUENOM(商標)MASSARRAY(登録商標)シーケンシング解析(カリフォルニア州サンディエゴ)は、実際の質量を目的の特定断片の予測質量と比較して、変異を同定する質量分析法である。概してNGS技術(「超並列シーケンシング」及び「第2世代シーケンシング」ともいう)は、それ以前の方法よりもスループットがかなり高く、様々なアプローチを使用する(Zhang et al.(2011)J.Genet.Genomics38:95−109及びShendure and Hanlee(2008)Nature Biotech.26:1135−1145で概説されている)。NGS法は、試料中のマーカーにおける低頻度変異を同定できる。いくつかのNGS法(例えば、GS−FLX GenomeSequencer(コネチカット州ブランフォードのRoche Applied Science)、ゲノムアナライザー(カリフォルニア州サンディエゴのIllumina,Inc.)、SOLID(商標)アナライザー(カリフォルニア州カールスバッドのApplied Biosystems)、Polonator G.007(ニューハンプシャー州セーレムのDover Systems)、HELISCOPE(商標)(マサチューセッツ州ケンブリッジのHelicos Biosciences Corp.)を参照されたい)は、フローセルにおいて空間的に離れているPCR産物のクローン増幅と、シーケンシング酵素(例えば、ポリメラーゼまたはリガーゼ)によって導入される標識改変ヌクレオチドを検出する様々なスキームとともに、またはこれらなしに、サイクリックアレイシーケンシングを使用する。NGS法の1つでは、プライマー対をPCR反応において使用して、目的の領域を増幅できる。増幅された領域は、ライゲーションして、連結体にできる。フローセルにおいて、PCRまたはライゲーション産物からクローンライブラリーを作り、シングルエンドシーケンシングのためにさらに増幅し(「ブリッジ」または「クラスター」PCR)、可逆的に終止される標識塩基であって、標識塩基の同一性に応じて4つのチャネルのうちの1つに画像化される塩基をポリメラーゼが付加し、その後、次のサイクルのために除去される。ソフトウェアによって、ゲノム配列との比較を補助して、変異を同定できる。
タンパク質と核酸の組成は、当該技術分野において知られている多くの方法によって、例えば、タンパク質と核酸を切断、分解または消化する方法で、タンパク質と核酸を処理してから、それらの成分を解析することなどによって割り出すことができる。質量分析法、電気泳動及びクロマトグラフィーによって、比較のために、これらの成分を分離して明確にすることができる。欠失または挿入を引き起こす変異は、これらの方法において、サイズまたは電荷の差によって同定することができる。タンパク質の消化または制限酵素による核酸の消化によって、いくつかの変異後の異なる断片パターンを明らかにすることができる。構造的状況における特定の変異体アミノ酸を認識する抗体によって、試料におけるこれらの変異を同定及び検出できる(下記を参照されたい)。
一実施形態では、野生型または変異したマーカーに対応するDNA、例えばゲノムDNAは、当該技術分野において知られている方法を用いて、生体試料において、インサイチュの形式及びインビトロの形式の両方によって解析できる。DNAは、試料から直接単離することも、別の細胞成分、例えばRNAまたはタンパク質を単離した後に、単離することもできる。DNA単離用のキット、例えば、QIAAMP(登録商標)DNA Micro Kit(カリフォルニア州バレンシアのQiagen)が利用可能である。このようなキットを用いて、DNAを増幅することもできる。
別の実施形態では、当該技術分野において知られている方法を用いて、インサイチュ及びインビトロの形式によって、生体試料において、マーカーに対応するmRNAを解析できる。多くの発現検出方法において、単離RNAが使用されている。インビトロの方法では、腫瘍細胞からRNAを精製するために、mRNAの単離に対して選択しないいずれかのRNA単離技法を用いることができる(例えば、Ausubel et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York 1987−1999を参照されたい)。加えて、例えば、Chomczynskiの一段階RNA単離プロセス(1989年、米国特許第4,843,155号)のような、当業者に周知の技法を用いて、多数の組織試料を容易に処理できる。RNAは、標準的な手順(例えば、Chomczynski and Sacchi(1987)Anal.Biochem.162:156−159を参照されたい)、溶液(例えば、トリゾール、TRI REAGENT(登録商標)(オハイオ州シンシナティのMolecular Research Center,Inc.、米国特許第5,346,994号を参照されたい)またはキット(例えば、Qiagen(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(カリフォルニア州バレンシア)もしくはLEUKOLOCK(商標)Total RNA Isolation System、テキサス州オースティンのApplied BiosystemsのAmbion部門)を用いて単離できる。
追加のステップを用いて、DNAをRNA試料から取り出してもよい。非イオン性界面活性剤を用いて細胞の溶解を行ってから、微量遠心分離によって核、すなわち、細胞DNAの大部分を除去することができる。続いて、DNAの解析のために、DNAを核から単離できる。一実施形態では、グアニジニウムチオシアネート溶解を用いた後に、CsCl遠心分離によって、RNAをDNAから分離して、目的の様々なタイプの細胞からRNAを抽出する。(Chirgwin et al.(1979)Biochemistry 18:5294−99)。ポリ(A)+RNAは、オリゴdTセルロースによる選択によって選択する(Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(2nd ed.),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。あるいは、DNAからのRNAの分離は、有機抽出によって、例えば、熱フェノールまたはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを用いて行うことができる。所望に応じて、RNAseインヒビターを溶解バッファーに加えてもよい。同様に、特定の細胞タイプにおいては、タンパク質の変性/消化ステップをプロトコールに加えるのが望ましい場合がある。多くの用途において、トランスファーRNA(tRNA)及びリボソームRNA(rRNA)のような他の細胞RNAに対して、mRNAを富化するのが望ましい。大半のmRNAは、その3’末端にポリ(A)テールを含む。これにより、mRNAは、例えば、固体支持体(セルロースまたはSEPHADEX.R(商標)媒体など)に結合したオリゴ(dT)またはポリ(U)を用いて、アフィニティークロマトグラフィーによって濃縮可能になる(Ausubel et al.(1994)Current Protocols In Molecular Biology,vol.2,Current Protocols Publishing,New Yorkを参照されたい)。結合したら、2mM EDTA/0.1%SDSを用いて、ポリ(A)+mRNAをアフィニティーカラムから溶出させる。
生体試料中の本開示のマーカーの特徴は、生体試料(例えば、骨髄試料、腫瘍生検標本または参照試料)を被験対象から得ることを含み、特徴、例えば核酸(例えば、RNA、mRNA、ゲノムDNAもしくはcDNA)及び/または翻訳済みタンパク質の特徴を検出または測定するための広範な周知の方法のうちのいずれかによって評価してよい。このような方法の非限定的な例としては、分泌された細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質または核タンパク質を検出するための免疫学的方法、タンパク質精製方法、タンパク質の機能または活性のアッセイ、核酸ハイブリダイゼーション方法、核酸逆転写方法及び核酸増幅方法が挙げられる。これらの方法には、例えば、GLPで認められた実験室条件下の遺伝子アレイ/チップ技術、RT−PCR、TAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(カリフォルニア州フォスターシティのApplied Biosystems)、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫組織化学、イムノブロッティング、FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)、FACS解析、ノーザンブロット、サザンブロット、INFINIUM(登録商標)DNA解析ビーズチップ(カリフォルニア州サンディエゴのIllumina,Inc.)、定量PCR、細菌人工染色体アレイ、一塩基多型(SNP)アレイ(カリフォルニア州サンタクララのAffymetrix)または細胞遺伝学的解析が含まれる。したがって、本開示の検出方法を用いて、例えば、生体試料中のRNA、mRNA、タンパク質、cDNAまたはゲノムDNAをインビトロ及びインビボで検出できる。さらに、本開示のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸を検出するためのインビボ技法は、バイオマーカーを検出するための標識プローブ、例えば、バイオマーカーの転写物と相補的である核酸、標識抗体、Fcレセプターまたはポリペプチド、例えば、野生型または変異体マーカーに対する抗原を対象に導入することを含む。例えば、抗体は、対象における存在及び位置を標準的なイメージング技法によって検出できる放射性同位体で標識できる。これらのアッセイは、様々な方法で行うことができる。当業者であれば、マーカー(複数可)、組織試料及び問題の変異の性質に基づき、上記またはその他の適切かつ利用可能な方法から選択できる。いくつかの方法について、下の項でさらに詳しく説明する。異なるケース、例えば、異なるタイプの腫瘍または患者集団においては、異なる方法または方法の組み合わせが適切な場合もある。
本開示のマーカーに対応するポリペプチドを検出するためのインビトロ技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、タンパク質アレイ、免疫沈降法及び免疫蛍光法が挙げられる。このような例では、マーカータンパク質またはその断片、例えば、変異し得る領域か、またはその構造的状況において変異配列もしくは変異残基を含む部分を含むタンパク質もしくは断片(正常な翻訳後修飾の全部または一部が行われたマーカータンパク質を含む)と特異的に結合する抗体(例えば、放射性物質標識抗体、発色団標識抗体、フルオロフォア標識抗体または酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質またはタンパク質もしくはタンパク質−リガンドのペア(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)のリガンドとコンジュゲートした抗体)、または抗体断片(例えば、一本鎖抗体、単離抗体超可変ドメインなど)を用いて、マーカーの発現を評価する。抗体は、本明細書の表9及び10内のGenPept受託番号によって開示されているタンパク質の群から選択したアミノ酸配列を有するタンパク質を検出できる。あるいは、抗体は、本明細書の表9及び10内のGenPept受託番号によって開示されているタンパク質の群から選択したバリアントアミノ酸配列を有する変異タンパク質を検出できる。変異したものとして公開データベース(COSMICまたはdbGaPなど)に列挙されている残基は、変異体残基を特異的に認識して結合する抗体を生成させるための免疫原性組成物において調製できる。別の方法では、抗体ペアを用いることができ、そのペアのうちの1つは、マーカータンパク質と、予測される変異、例えば、ナンセンス変異または欠失変異の領域の上流で、すなわち、N末端側で結合し、ペアのもう一方は、タンパク質と下流で結合する。野生型タンパク質は、抗体ペアの両方の抗体と結合するが、ナンセンス変異または欠失変異を有するタンパク質は、抗体ペアのうちのN末端側の抗体のみと結合する。サンドイッチELISAアッセイのようなアッセイは、例えば参照試料と比較して、腫瘍試料中の野生型タンパク質の量の喪失を検出でき、あるいは、標準的なELISAは、抗体の結合レベルを比較して、腫瘍試料に変異が存在するか推測するものである。
タンパク質マーカーの量または機能性を割り出す間接的な方法には、そのタンパク質の活性の測定も含まれる。例えば、試料、試料から単離したタンパク質、または試料から単離、クローニングもしくは増幅した核酸から発現させたタンパク質をマーカータンパク質活性について評価できる。バイオマーカー活性は、例えば、無細胞アッセイまたは細胞ベースのアッセイで、結合パートナーと結合する能力によって測定できる。あるいは、バイオマーカー活性は、例えば、無細胞アッセイまたは細胞ベースのアッセイで、シグナル伝達における活性によって測定できる。
一実施形態では、マーカーの発現は、患者試料中の細胞由来のmRNA//cDNA(すなわち、転写ポリヌクレオチド)を調製し、そのmRNA/cDNAを、マーカー核酸またはその断片の相補体である対照ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることによって評価する。cDNAは任意に応じて、参照ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの前に、様々なポリメラーゼ連鎖反応法のいずれかを用いて増幅できる。1つ以上のマーカーの発現は、同様に、マーカー(複数可)の発現レベルを評価する定量PCRを用いて検出できる。mRNAレベルを測定する用途の例は、マーカー遺伝子における不活化変異によって、細胞中のmRNAの変化レベルを得ることができることである。非機能的なタンパク質または欠如したタンパク質に鑑みると、このレベルは、フィードバックシグナル伝達タンパク質の産生により、アップレギュレートでき、あるいは、変化したmRNA配列の不安定性により、ダウンレギュレートできる。あるいは、本開示のマーカーの変異またはバリアント(例えば、上で論じたような一塩基多型、欠失など)を検出する多くの既知の方法のいずれかを用いて、患者のマーカー遺伝子における変異の発生を検出してよい。
直接的な測定の例は、転写物の定量である。本明細書で使用する場合、発現のレベルまたは量とは、マーカーによってコードされるmRNAの発現の絶対量またはマーカーによってコードされるタンパク質の発現の絶対量を指す。選択したマーカーの絶対発現量に基づき判断を行う代替策として、標準化発現量に基づいて判断してもよい。発現量は、例えば、構成的に発現するハウスキーピングな役割において、マーカーではない対照マーカーの発現とマーカーの発現を比較して、マーカーの絶対発現レベルを補正することによって標準化できる。また、標準化に好適なマーカーとしては、アクチン遺伝子またはβ−2ミクログロブリンのようなハウスキーピング遺伝子が挙げられる。データの標準化目的の参照マーカーとしては、ユビキタスに発現したり、及び/またはその発現ががん遺伝子によって調節されたりしないマーカーが挙げられる。構成的に発現する遺伝子は、当該技術分野において知られており、患者の関連する組織及び/または状態、ならびに解析方法に従って同定及び選択できる。上記のような標準化によって、1つの試料における発現レベルを別の試料と、例えば、異なる時間または異なる対象から得た試料間を比較可能になる。さらに、発現レベルは、相対的な発現レベルとして示すことができる。ゲノムDNA試料のベースライン、例えば2倍体コピー数は、腫瘍のない対象から得た細胞または患者から得た非腫瘍細胞における量を測定することによって割り出すことができる。マーカーまたはマーカーセットの相対量を割り出すには、ベースラインを定めるために、問題の試料の発現レベルを割り出す前に、少なくとも1個、または2個、3個、4個、5個もしくはそれを上回る数の試料、例えば、7個、10個、15個、20個、50個またはそれを上回る数の試料において、マーカーまたはマーカーセットの量を割り出す。ベースラインの測定を行うには、多数の試料においてアッセイしたマーカーまたはマーカーセットのそれぞれの平均量または平均レベルを割り出し、それを、問題のバイオマーカーまたはバイオマーカーセットに対するベースライン発現レベルとして使用する。続いて、そのマーカーまたはマーカーセットにおいて得たベースライン値で、試験試料において割り出した、マーカーまたはマーカーセットの量(例えば、発現の絶対レベル)を除す。これによって、相対量が得られ、異常なレベルのマーカータンパク質活性を同定するのを補助する。
本開示の核酸分子の配列に基づくプローブを用いて、本開示の1つ以上のマーカーに対応する転写物またはゲノム配列を検出できる。このプローブは、そのプローブに結合した標識基、例えば、放射線同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子を含むことができる。このようなプローブは、対象から得た細胞試料中のタンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定するなどによって、例えば、mRNAレベルを検出するか、またはタンパク質をコードする遺伝子が変異または欠失しているか割り出すことによって、タンパク質を発現する細胞または組織を同定するための診断検査キットの一部として使用できる。
本明細書に記載されているデータベース記録に記載されているヌクレオチド配列に加えて、アミノ酸配列の変化を導くDNA配列多型が、ある集団(例えばヒトの集団)に存在し得ることは当業者であれば分かるであろう。このような遺伝子多型は、天然のアレル多様性により、集団内の個体間に存在し得る。アレルは、所定の遺伝子座に選択的に生じる遺伝子群の遺伝子である。加えて、RNAの発現レベルに影響を及ぼすとともに、(例えば、調節または分解に影響を及ぼすことによって、)その遺伝子の全体的な発現レベルに影響を及ぼし得るDNA多型が存在し得ることは分かるであろう。
プライマーまたは核酸プローブは、特異的マーカーまたはその変異領域と相補的なヌクレオチド配列を含み、マーカー遺伝子またはマーカー遺伝子と関連する核酸と選択的にハイブリダイズするのに十分な長さのものである。プライマーとプローブを用いて、マーカー核酸の単離とシーケンシングを補助できる。一実施形態では、そのプライマーまたは核酸プローブ、例えば、十分に精製されたオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、マーカー遺伝子の約6個、8個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、75個、100個、またはそれを超える数の連続するヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する領域を含む。別の実施形態では、プライマーまたは核酸プローブは、本明細書の表9及び10内のGenBank受託番号によって開示されているヌクレオチド配列を含むマーカー核酸または上記のいずれかの相補体とハイブリダイズできる。例えば、本明細書の表9及び10内のGenBank受託番号に示されているヌクレオチド配列のいずれかに開示されている少なくとも約15個の連続するヌクレオチド、少なくとも約25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むか、もしくは約15〜約20個のヌクレオチド、10〜50個の連続するヌクレオチド、12〜35個の連続するヌクレオチド、15〜50個の連続するヌクレオチド、20〜100個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むか、または上記のいずれかの相補体を有するプライマーもしくは核酸プローブ、を本開示によって提供する。約25個超のヌクレオチドの配列を有するプライマーまたは核酸プローブも、本開示の範囲内である。別の実施形態では、プライマーまたは核酸プローブは、本明細書の表9及び10内のGenBank受託番号によって開示されているいずれかのヌクレオチド配列のヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、80%もしくは85%、または少なくとも90%、95%もしくは97%同一の配列、または上記のいずれかの相補体を有することができる。核酸アナログをハイブリダイゼーションの結合部位として使用できる。好適な核酸アナログの例は、ペプチド核酸である(例えば、Egholm et al.,Nature363:566 568(1993)、米国特許第5,539,083号を参照されたい)。
プライマーまたは核酸プローブは、結合エネルギー、塩基組成、配列複雑性、クロスハイブリダイゼーション結合エネルギー及び二次構造を考慮するアルゴリズムを用いて選択できる(Friendらの国際公開第01/05935号(2001年1月25日公開)、Hughes et al.,Nat.Biotech.19:342−7(2001)を参照されたい)。本開示の有用なプライマーまたは核酸プローブは、各転写物に特有の配列、例えば、標的の変異領域と結合し、その特定の核酸、例えば、転写物または変異転写物のみを増幅、検出及びシーケンシングするPCRで使用できる。マーカー遺伝子のいくつかの変異の例、例えば、LEF1、MAP2K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWC1、WWTR1及びYAP1などは、実施例の表(表9〜10)に見ることができる。他の変異は、本明細書に引用されている参照文献と、本明細書に記載されている公開データベースに記載されている。当業者であれば、当該分野の技術、例えば、プライマーまたは核酸プローブにおける縮重またはGC含有率を操作することによって、プライマーまたは核酸プローブが標準配列、変異体またはアレルバリアントに結合する潜在能力を調節することを用いて、本明細書に開示されているマーカーまたは類似の特徴を持つ関連するマーカー、例えば、染色体座位上のマーカー、本明細書に記載されている同じマーカー遺伝子の異なる領域内の変異に対するプライマー及び核酸プローブを設計できる。当該技術分野において周知であるコンピュータープログラム(Oligoバージョン5.0(ミネソタ州プリマスのNational Biosciences)など)は、所要の特異性と最適な増幅特性を有するプライマーの設計に有用である。本明細書に記載されているマーカーと、その変異体、多型またはアレルを検出するのに、完全に相補的な核酸プローブとプライマーを使用できる一方で、完全な相補性からの逸脱も考えられ、その場合、このような逸脱によって、その分子が、標的領域に特異的にハイブリダイズすることは妨げられない。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、5’末端に非相補的な断片を有するとともに、プライマーの残部は、標的領域と相補的であってよい。あるいは、得られるプローブまたはプライマーが、標的領域に特異的にハイブリダイズできる限りは、非相補的なヌクレオチドが、核酸プローブまたはプライマーに散在していてもよい。
1つのマーカー、2つのマーカー、3つのマーカー、4つのマーカー、もしくはそれを超えるマーカー、例えば、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個もしくは25個のマーカー、またはその変異部分、例えば、WNT/β−カテニンシグナル伝達経路に関与するか、WNT/β−カテニンシグナル伝達経路と相互作用するマーカー遺伝子、Hippo経路に関与するか、Hippo経路と相互作用するマーカー遺伝子、または腫瘍サプレッサーに関与するか、腫瘍サプレッサーと相互作用するマーカー遺伝子の量を調べることによって、治療転帰の指標を評価できる。マーカーは、治療転帰の別の尺度、例えば、生化学的なマーカー(例えば、Mタンパク質、タンパク尿)または組織学的マーカー(例えば、芽細胞数、単位面積当たりの有糸分裂像の数)と組み合わせて調べることができる。
本開示の組成物、キット及び方法では、いずれかのマーカー、例えば、マーカー遺伝子またはマーカーの組み合わせ、例えば、本開示のマーカー遺伝子またはその変異体、及びマーカー、例えば、本開示のマーカー遺伝子と組み合わせたいずれかの既知のマーカーを用いてよい。概して、マーカーは、腫瘍細胞を含む試料中のマーカーの特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量と、対照細胞中の同じマーカーの特徴、例えば、サイズ、配列、組成物または量との差が可能な限り大きくなるように選択する。この差は、マーカー量の評価方法の検出限界ほどまで小さくできるが、別の実施形態では、この差は、評価方法の標準誤差よりも少なくとも大きくすることができる。RNA量またはタンパク質量のケースでは、差は、少なくとも1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上であることができる。「低い」RNA量またはタンパク質量は、腫瘍試料(例えば血液腫瘍、例えば骨髄腫)における全体平均に対する発現が低いことであることができる。DNAの量、例えばコピー数のケースでは、その量は、0コピー、1コピー、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、またはそれを超えるコピーである。欠失により、コピー数は、0または1コピーとなり、増幅により、コピー数は、2コピーを超えることになる。この差は、信頼レベル、例えば、p<0.05、p<0.02、p<0.01またはそれよりも低いp値によって検定できる。
2つ以上のマーカー、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個またはそれを超えるマーカーからなるセットの測定によって、治療転帰を示す発現プロファイルまたは傾向をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、マーカーセットは、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下、12個以下、15個以下、20個以下または25個以下のマーカーを含む。いくつかの実施形態では、マーカーセットは、1〜5個、1〜10個、1〜15個、1〜20個、1〜25個、2〜5個、2〜10個、2〜15個、2〜20個、2〜25個、3〜5個、3〜10個、3〜15個、3〜20個、3〜25個、4〜10個、4〜15個、4〜20個、4〜25個、5〜10個、5〜15個、5〜20個、5〜25個、6〜10個、6〜15個、6〜20個、6〜25個、7〜10個、7〜15個、7〜20個、7〜25個、8〜10個、8〜15個、8〜20個、8〜25個、9〜15個、9〜20個、9〜25個、10〜15個、10〜20個、10〜25個、11〜15個、11〜20個、11〜25個、12〜15個、12〜20個、12〜25個、13〜15個、13〜20個、13〜20個、14〜20個、14〜25個、15〜20個、15〜25個、16〜20個、16〜25個、17〜20個、17〜25個、18〜20個、18〜25個、19〜25個、20〜25個、21〜25個、22〜25個、23〜25個または24〜25個のマーカーを含む。いくつかの実施形態では、マーカーセットは、複数の染色体座位、複数のマーカー遺伝子または1つ以上のマーカー遺伝子の複数のマーカー(例えば、核酸及びタンパク質、ゲノムDNA及びmRNA、または本明細書に記載されているマーカーの様々な組み合わせ)を含む。あるセットにおけるマーカーの量を評価することを通じて、治療転帰を解析することは、統計的方法、例えば、治療転帰の部類または傾向に対する、そのセットにおけるマーカーの量の寄与度に影響を及ぼし得る変動要素を考慮する重み付き多数決解析、例えば、各マーカーにおける測定またはハイブリダイゼーション効率のシグナル−ノイズ比によって行うことができる。マーカーセット、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、またはそれを超えるマーカーのセットは、本明細書に記載されている少なくとも1つのマーカーDNAまたはRNA、例えば、LEF1、MAP3K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWTR1及び/もしくはYAP1、または上記のいずれかの相補体を解析するために、プライマー、プローブまたはプライマーを含むことができる。マーカーセット、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、またはそれを超えるマーカーのセットは、少なくとも1つもしくは少なくとも2つ以上のマーカー、またはマーカー、例えば、LEF1、MAP3K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWTR1及び/またはYAP1上の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、もしくはそれを超える変異を検出するために、プライマー、プローブまたはプライマーを含むことができる。別の実施形態では、マーカーセットは、LEF1、MAP3K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWTR1及び/またはYAP1を含むことができる。一実施形態では、乳がんのマーカーセットは、LEF1、MAP3K7、FZD2、LATS1及び/またはWWC1を含む。一実施形態では、胃がんのマーカーセットは、FZD2及び/またはLATS2を含む。一実施形態では、頭頸部がんのマーカーセットは、MAP3K7、JUN、ROR2、CCND1、LATS1、MOB1B及び/またはNPHP4を含む。一実施形態では、非小細胞肺がんのマーカーセットは、XPO1及び/またはTJP1を含む。一実施形態では、小細胞肺がんのマーカーセットは、LEF1、APC、PRKCA、RORA、CAMK2G、CTNNB1、AMOT、DVL2、TJP1、TJP2、WWTR1及び/またはYAP1を含む。選択したマーカーセットは、本明細書に示されているマーカーからアセンブルすることも、本明細書に示されている方法と、当該技術分野において知られている類似の方法を用いて、マーカーの中から選択することもできる。本開示のアッセイで使用する新たなマーカーを検定する方法は、腫瘍細胞を含む試料中のDNAコピー数を、マーカー、例えばマーカー遺伝子の発現の差(例えば、ベースラインからの倍数変化)と相関させることである。この関係を判断する有用な方法は、ピアソンの積率相関係数rについて解いた後に、決定係数r2を算出すること、及び/または標準的な統計的方法を用いて、最小二乗プロットを作成することである。相関によって、DNAコピー数と、マーカー、例えばマーカー遺伝子の発現レベルとの比較を解析できる。相関の結果(r2、例えば、この解析におけるデータの直線的な傾き)が、少なくとも0.1〜0.2、少なくとも0.3〜0.5または少なくとも0.6〜0.8以上である場合に、遺伝子産物をマーカーとして選択できる。マーカーは、応答、TTPまたは生存率と正の相関によって変化し得る(すなわち、コピー数と同じように、発現レベルが変化する。例えば、コピー数が減少すると、発現レベルが減少する)。コピー数と負の相関で変化するマーカー(すなわち、コピー数レベルとは反対の形で、発現レベルが変化する。例えば、コピー数が減少すると、発現レベルが上昇する)によっては、転帰の不整合判定が行われる。
アッセイで使用する新たなマーカーを検定する別の方法は、試験薬剤による治療前と治療後に、多くの対象における多数のマーカーの発現をアッセイすることであろう。発現結果から、治療後に、治療前の試料と比べて、所定の方向に大きな変化を示すマーカーを同定できる。統計的に有意な変化または差を示す遺伝子を同定するための反復測定線形回帰モデルを構築できる。そして、これらの有意な遺伝子をランク付けするために、例えばベースライン対時間曲線から得られる変化量下面積を算出できる。これにより、統計的に有意な変化が最も大きくなると見られる遺伝子のリストを得ることができる。そして、主成分分析、クラスタリング方法(例えば、k平均、階層)、多変量分散分析(MANOVA)または線形回帰技法のような方法を用いることによって、いくつかのマーカーをセットにおいて組み合わせることができる。このような遺伝子(または遺伝子群)をマーカーとして使用するには、ベースラインとの発現差が2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、7倍、10倍、またはそれ以上である遺伝子をマーカーセットに含めることになる。発現プロファイル、例えば、ベースラインまたは集約マーカーセットの参照値との発現レベル差の合成数は、例えば、大半のマーカーが、特定の結果、例えば、ベースラインもしくは参照値との有意差、例えば、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超える割合のマーカー、またはより多くのマーカー、例えば、10%多い、20%多い、30%多い、40%多いマーカーを示す場合、ある傾向にあることを示し、他の方向よりもある方向の有意な結果を示すことになる。
一実施形態では、プローブセットは、LEF1、MAP3K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWTR1及びYAP1からなる群から選択したマーカーの特徴を評価するためのプローブを含むことができる。一実施形態では、乳がん用のプローブセットは、LEF1、MAP3K7、FZD2、LATS1及び/またはWWC1の特徴を評価するためのプローブを含む。一実施形態では、胃がん用のプローブセットは、FZD2及び/またはLATS2の特徴を評価するためのプローブを含む。一実施形態では、頭頸部がん用のプローブセットは、MAP3K7、JUN、ROR2、CCND1、LATS1、MOB1B及び/またはNPHP4の特徴を評価するためのプローブを含む。一実施形態では、非小細胞肺がん用のプローブセットは、XPO1及び/またはTJP1の特徴を評価するためのプローブを含む。一実施形態では、小細胞肺がん用のプローブセットは、LEF1、APC、PRKCA、RORA、CAMK2G、CTNNB1、AMOT、DVL2、TJP1、TJP2、WWTR1及び/またはYAP1の特徴を評価するためのプローブを含む。
患者の治療転帰を特徴付ける目的で、本開示の組成物、キット及び方法を用いる一実施形態では、試験薬剤で治療した患者の少なくとも約20%、少なくとも約40%、60%もしくは80%、または実質的に全員において有意な結果が得られるように、本開示のマーカーまたはマーカーセットを選択する。一般人口において、約10%を超える陽性適中率(PPV)が得られるように、本開示のマーカーまたはマーカーセットを選択でき、このPPVが、80%超のアッセイ特異性と組み合わさると、マーカーの信頼性をさらに高めることができる。
検出方法
予後アッセイの一般的な原理は、適切な条件かつ、マーカーとプローブを相互作用及び結合させるのに十分な時間で、マーカー及びプローブを含み得る試料または反応混合物を調製し、その結果、その反応混合物において、除去及び/または検出できる複合体を形成させることを含む。これらのアッセイは、様々な方法で行うことができる。
例えば、このようなアッセイ行う方法の1つは、マーカーまたはプローブを固相支持体(基板ともいう)に固定することと、固相に固定した標的のマーカー/プローブ複合体を反応の終了時に検出することを含むことになる。このような方法の一実施形態では、対象から得た試料であって、マーカーの存在及び/または濃度についてアッセイする試料を担体または固相支持体に固定できる。別の実施形態では、プローブを固相に固定でき、対象から得た試料を、アッセイの非固定成分として反応させることができる逆の状況が可能である。このような実施形態の一例は、試料の発現解析のために固定した予測マーカーまたはマーカーセットを含むアレイまたはチップを使用することを含む。
アッセイ成分を固相に固定するための確立された方法は、多数存在する。これらの成分としては、ビオチンとストレプトアビジンのコンジュゲートを通じて固定化するマーカーまたはプローブ分子が挙げられるが、これらに限らない。このようなビオチン化アッセイ成分は、当該技術分野において知られている技法(例えば、イリノイ州ロックフォードのPierce Chemicalsのビオチン化キット)を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製して、ストレプトアビジンをコートした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化できる。特定の実施形態では、固定化したアッセイ成分を有する表面を予め調製して、保存することができる。
このようなアッセイに適する他の担体または固相支持体としては、マーカーまたはプローブが属する部類の分子に結合できるいずれかの材料が挙げられる。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロース及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩及びマグネタイトが挙げられるが、これらに限らない。当業者であれば、抗体または抗原と結合する多くの他の好適な担体が分かるとともに、本開示とともに用いるこのような支持体を適合させることができるであろう。例えば、細胞から単離したタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけて、ニトロセルロースのような固相支持体に固定化することができる。続いて、その支持体を好適なバッファーで洗浄してから、検出可能に標識した抗体で処理できる。そして、固相支持体に2回目の洗浄をバッファーで行い、未結合の抗体を除去できる。次に、固体支持体上の結合した標識の量を従来の手段によって検出できる。
上記のアプローチを用いてアッセイを行うために、第2の成分が固定されている固相に、非固定化成分を加える。反応が完結した後、形成されたいずれの複合体も固相に固定化したままになる条件下で、複合体にならなかった成分を(例えば洗浄によって)除去してよい。固相に固定されているマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書に概説されている多くの方法で行うことができる。
一実施形態では、プローブは、非固定アッセイ成分であるときには、アッセイの検出と読み出しを行うために、本明細書に論じられているとともに、当業者に周知である検出可能な標識で、直接または間接的に標識できる。プローブ(例えば核酸または抗体)に関しては、「標識された」という用語には、検出可能な物質をプローブに結合する(すなわち、物理的に連結する)ことによって、プローブを直接標識することと、直接標識されている別の試薬との反応性によって、プローブを間接的に標識することが含まれるように意図されている。間接標識の例としては、蛍光標識した二次抗体を用いて一次抗体を検出することが挙げられる。いずれの成分(マーカーまたはプローブ)もさらに操作または標識せずに、例えば、蛍光エネルギー移動(FET、例えば、Lakowiczらの米国特許第5,631,169号、Stavrianopoulosらの米国特許第4,868,103号を参照されたい)の技法を用いることによって、マーカー/プローブ複合体の形成を直接検出することも可能である。第1の「ドナー」分子上のフルオロフォア標識は、適切な波長の入射光で励起したときに、その分子から放出される蛍光エネルギーが、第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識に吸収され、そして、その吸収エネルギーによって、蛍光を発することができるように選択する。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用するだけであってもよい。「アクセプター」分子標識を「ドナー」の標識と区別できるように、異なる波長の光を発する標識を選択する。標識間のエネルギー移動の効率は、分子を隔てる距離と関連するので、分子間の空間的関係を評価できる。分子間で結合が生じる状況では、アッセイにおける「アクセプター」分子標識の蛍光の放出は、最大になるはずである。FET結合イベントは、当該技術分野において周知の標準的な蛍光定量検出手段を通じて(例えば蛍光光度計を用いて)、利便的に測定できる。
別の実施形態では、プローブがマーカーを認識する能力の判断は、いずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)も標識せずに、リアルタイム生体分子相互作用解析(BIA)のような技術を用いることによって行うことができる(例えば、Sjolander,S.and Urbaniczky,C.(1991)Anal.Chem.63:2338−2345及びSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705を参照されたい)。本明細書で使用する場合、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」は、相互作用物質のいずれも標識せずに、生体特異的相互作用をリアルタイムで調べる技術である(例えばBIACORE(商標))。結合表面における質量の変化(結合イベントを示す)によって、表面近くの光の屈折率が変化し(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、その結果、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用できる検出可能なシグナルが得られる。
あるいは、別の実施形態では、マーカーとプローブを液相中の溶質として用いて、類似の診断及び予後アッセイを行うことができる。このようなアッセイでは、複合体を形成しなかった成分から、複合体を形成したマーカーとプローブを、多くの標準的な技法(分別遠心、クロマトグラフィー、電気泳動及び免疫沈降法が挙げられるが、これらに限らない)のいずれかによって分離する。分別遠心においては、マーカー/プローブ複合体の異なるサイズと異なる密度に基づき、マーカー/プローブ複合体の沈降平衡が異なることにより、一連の遠心分離ステップを通じて、複合体を形成しなかったアッセイ成分から、マーカー/プローブ複合体を分離してよい(例えば、Rivas,G.,and Minton,A.P.(1993)Trends Biochem Sci.18:284−7を参照されたい)。標準的なクロマトグラフィー技法を用いて、複合体を形成しなかった分子から、複合体を形成した分子を分離することもできる。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは、サイズに基づき、分子を分離し、例えば、カラム形式で適切なゲルろ過樹脂を使用することによって、複合体を形成しなかった比較的小さい成分から、比較的大きい複合体を分離してよい。同様に、複合体を形成しなかった成分と比べて、マーカー/プローブ複合体の比較的異なる電荷特性を利用して、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂を使用することによって、複合体を形成しなかった成分から、複合体を区別してよい。このような樹脂とクロマトグラフィー技法は、当業者に周知である(例えば、Heegaard,N.H.(1998)J.Mol.Recognit.11:141−8、Hage,D.S.,and Tweed,S.A.(1997)J.Chromatogr.B.Biomed.Sci.Appl.699:499−525を参照されたい)。Sci.ゲル電気泳動を用いて、未結合の成分から、複合体を形成したアッセイ成分を分離してもよい。(例えば、Ausubel et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1987−1999を参照されたい)。この技法では、タンパク質または核酸複合体は、例えば、サイズまたは電荷に基づき分離する。いくつかの実施形態では、電気泳動プロセス中に結合相互作用を維持するために、非変性ゲルマトリックス材と、還元剤を用いない条件を使用する。特定のアッセイとその成分に対する適切な条件は、当業者には周知であろう。
ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイ(サザン解析、ノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応及びTAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(カリフォルニア州フォスターシティのApplied Biosystems)、ならびにプローブアレイが挙げられるが、これらに限らない)では、単離mRNAを使用できる。mRNAレベルを検出するための診断方法の1つには、検出対象の遺伝子によってコードされるmRNAとハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と単離mRNAを接触させることが含まれる。マーカー遺伝子の変異を含む核酸をプローブまたはプライマーとして使用できる。本開示の核酸プローブまたはプライマーは、一本鎖DNA(例えばオリゴヌクレオチド)、二本鎖DNA(例えば二本鎖オリゴヌクレオチド)またはRNAであることができる。本開示のプライマーは、目的の領域に隣接するとともに、延びているか、または目的の領域を覆っている核酸配列とハイブリダイズする核酸を指す。核酸プローブは、例えば、マーカーの完全長cDNAまたはその一部、例えば、10〜50個の連続するヌクレオチド、15〜45個の連続するヌクレオチド、15〜75個の連続するヌクレオチド、20〜100個の連続するヌクレオチド、25〜250個の連続するヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド、または少なくとも7個、15個、20個、25個、30個、50個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、250個、500個もしくはそれを超える連続するヌクレオチドであるとともに、ストリンジェントな条件下で、本開示のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするのに十分であることができる。核酸プローブの正確な長さは、当業者によって通常考慮及び実践される多くの要因に左右されることになる。本開示の核酸プローブは、当該技術分野において知られているいずれかの好適な手法を用いて、化学合成によって調製したり、組み換え技術によって生成したり、または例えば制限消化処理によって、生体試料から得たりしてよい。本開示の診断アッセイで用いる他の好適なプローブは、本明細書に記載されている。本開示のプローブは、そのプローブに結合した標識基、例えば、放射線同位体、蛍光化合物、酵素、酵素補因子、ハプテン、配列タグ、タンパク質または抗体を含むことができる。核酸は、塩基部分、糖部分またはフォスフェート骨格において改変できる。核酸標識の例は、SUPER(商標)Modified Base Technology(ワシントン州ボセルのNanogen、米国特許第7,045,610号を参照されたい)を用いて導入する。発現のレベルは、(例えば、DNAインターカレーティング色素、例えばSYBRグリーン色素(カリフォルニア州バレンシアのQiagen Inc.)を用いて、)例えば、増幅DNAレベルを測定した後の大まかな核酸レベルとして、または特異的核酸として、例えば、プローブベースの設計を用いて、そのプローブを標識した状態で測定することができる。TAQMAN(登録商標)アッセイ形式では、プローブベースの設計を使用して、特異性とシグナル−ノイズ比を高めることができる。
このようなプライマーまたはプローブは、対象から得た細胞の試料において転写された核酸分子の量を測定することなどによって、例えば、転写物、mRNAレベルを検出するか、または当該タンパク質をコードする遺伝子が変異または欠失しているかを判断することによって、そのタンパク質を発現する細胞または組織を同定するための診断検査キットの一部として使用できる。RNAまたはcDNAと核酸プローブとのハイブリダイゼーションによって、問題のマーカーが発現していることを示すことができる。本開示はさらに、遺伝暗号の縮重により、マーカータンパク質(例えば、本明細書の表9及び10内のGenPept受託番号によって開示されている配列を有するタンパク質)をコードする核酸のヌクレオチド配列と異なる核酸分子、すなわち、同じタンパク質をコードする核酸分子を検出することを含む。アミノ酸配列を変化させるDNA配列多型が、集団(例えばヒト集団)に存在し得ることは、当業者であれば分かるであろう。このような遺伝子多型は、天然のアレル多様性により、集団内の個体間に存在し得る。アレルは、所定の遺伝子座に選択的に生じる遺伝子群の遺伝子である。このような天然のアレル多様性によって、典型的には、所定の遺伝子のヌクレオチド配列が1〜5%変化し得る。多くの異なる個体、例えば、個体から得た正常な試料における目的の遺伝子をシーケンシングすることによって、代替的なアレルを同定できる。この作業は、様々な個体における同じ遺伝子座を同定するためのハイブリダイゼーションプローブを用いることによって、容易に行うことができる。このようなすべてのヌクレオチド多様性と、得られるアミノ酸の多型または多様性(天然のアレル多様性によるものであり、機能的活性を変化させない)を検出することは、本開示の範囲内であるように意図されている。加えて、RNAの発現レベルに影響を及ぼすDNA多型も存在し得、(例えば、調節または分解に影響を及ぼすことによって)その遺伝子の全体的な発現レベルに影響を及ぼし得ることは分かるであろう。
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイズする」という用語は、互いと有意に同一または相同であるヌクレオチド配列が、互いにハイブリダイズしたままになるハイブリダイゼーション及び洗浄条件を説明するように意図されている。いくつかの実施形態では、この条件は、後に増幅及び/または検出を行うのに備えて、互いに対する同一性が少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、90%または95%である配列が、互いにハイブリダイズしたままになるような条件である。ストリンジェントな条件は、対象となるヌクレオチド配列の長さによって変化するが、当業者には知られており、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.(1995)の第2項、第4項及び第6項の教示に基づき、見出したりまたは判断したりできる。このような条件を定めるためのさらなるストリンジェントな条件と式は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)の第7章、第9章及び第11章に見出すことができる。少なくとも10塩基対の長さのハイブリッド体のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、4×塩化ナトリウム/ナトリウムシトレート(SSC)中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(または4×SSC+50%ホルムアミド中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)後、1×SSCにおいて約65〜70℃で1回以上洗浄することが挙げられる。上記のようなハイブリッド体を得るための高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、1×SSC中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(または1×SSC+50%ホルムアミド中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)後、0.3×SSCにおいて、約65〜70℃で1回以上洗浄することが挙げられる。上記のようなハイブリッド体を得るための低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例としては、4×SSC中、約50〜60℃でのハイブリダイゼーション(あるいは、6×SSC+50%ホルムアミド中、約40〜45℃でのハイブリダイゼーション)後、2×SSCにおいて、約50〜60℃で1回以上洗浄することが挙げられる。上で示した値、例えば、65〜70℃または42〜50℃の間の範囲も、本開示に含まれるように意図されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、6×塩化ナトリウム/ナトリウムシトレート(SSC)中、約45℃でハイブリダイゼーション後、0.2×SSC、0.1%SDSにおいて、50〜65℃で1回以上洗浄するものである。ストリンジェントなハイブリダイゼーションバッファーのさらなる例は、1MのNaCl、50mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファー(pH6.5)、0.5%ナトリウムサルコシン及び30%ホルムアミドでのハイブリダイゼーションである。ハイブリダイゼーション及び洗浄バッファーにおけるSSC(1×SSCは、0.15MのNaClと15mMのナトリウムシトレートである)を、SSPE(1×SSPEは、0.15MのNaCl、10mMのNaH2PO4及び1.25mMのEDTA(pH7.4))に置き換えることができ、ハイブリダイゼーションが完了した後、洗浄を各回15分行う。50塩基対未満の長さを見込むハイブリッド体を得るためのハイブリダイゼーション温度は、そのハイブリッド体の融解温度(Tm)よりも5〜10℃低くする必要があり、そのTmは、下記の式に従って定める。18塩基対未満の長さのハイブリッド体では、Tm(℃)=2(塩基AとTの総数)+4(塩基GとCの総数)である。18〜49塩基対の長さのハイブリッド体では、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であり、式中、Nは、ハイブリッド体における塩基の数であり、[Na+]は、ハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCにおける[Na+]=0.165Mである)。熟練の専門家であれば、核酸分子と膜、例えばニトロセルロース膜またはナイロン膜との非特異的ハイブリダイゼーションを低減するために、ハイブリダイゼーション及び/または洗浄バッファーに、追加の試薬(ブロッキング剤(例えば、BSA、またはサケもしくはニシンの精子担体DNA)、界面活性剤(例えばSDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、フィコール、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられるが、これらに限らない)を加えてよいことを認識するであろう。ナイロン膜を使用するときには、特には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる非限定的な例は、0.25〜0.5MのNaH2PO4、7%SDS中、約65℃でハイブリダイゼーション後、0.02MのNaH2PO4、1%SDSで65℃において1回以上洗浄することであり、例えば、Church and Gilbert(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1991−1995を参照されたい(あるいは、0.2×SSC、1%SDSである)。プライマーまたは核酸プローブは、検出方法において、単独で用いることも、または、検出方法において、プライマーを少なくとも1つの他のプライマーもしくは核酸プローブとともに用いることもできる。プライマーを用いて、核酸の少なくとも一部を増幅することもできる。本開示の核酸プローブは、目的の領域とハイブリダイズし、それ以上伸長しない核酸を指す。例えば、核酸プローブは、バイオマーカーの変異体領域と特異的にハイブリダイズする核酸であって、患者のDNAまたは形成されるハイブリッド体のタイプとのハイブリダイゼーションによって、または患者のDNAまたは形成されるハイブリッド体のタイプとハイブリダイゼーションしないことによって、バイオマーカーの変異の存在もしくは内容、またはマーカー活性の量を示すことができる核酸である。
ある1つの形式では、RNAを固体表面に固定化し、例えば、単離RNAをアガロースゲルに流し、RNAをそのゲルから膜(ニトロセルロースなど)に転写することによって、プローブと接触させる。代替的な形式では、核酸プローブ(複数可)を固体表面に固定化し、治療転帰を示す少なくとも1つのマーカーを含むマーカーセットを用いて、例えば、AFFYMETRIX(登録商標)遺伝子チップアレイもしくはSNPチップ(カリフォルニア州サンタクララ)、またはカスタマイズアレイにおいて、RNAをプローブ(複数可)と接触させる。当業者であれば、本開示のマーカーの量の検出で使用するように、既知のRNA及びDNA検出方法を容易に適合させることができる。例えば、高密度マイクロアレイまたは分岐DNAアッセイは、前の項で説明したように、腫瘍細胞を単離するように改変した試料のように、試料中の腫瘍細胞の濃度が高いほど、恩恵を受けることができる。関連する実施形態では、マーカー核酸の少なくとも一部(例えば、少なくとも7個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、100個、500個またはそれを超えるヌクレオチド残基)と相補的であるかまたは相同であるポリヌクレオチドを固定した基板と、試料から得た転写ポリヌクレオチドの混合物を接触させる。マーカーと相補的であるかまたは相同であるポリヌクレオチドが、基板上で示差的に検出可能である場合(例えば、異なる発色団もしくはフルオロフォアを用いて、または異なる選択位置に固定して検出可能である場合)、1つの基板(例えば、選択した位置に固定したポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を用いて、複数のマーカーの発現レベルを同時に評価できる。1つの核酸を別の核酸とハイブリダイゼーションさせることを含むマーカー発現評価法を使用する実施形態では、ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で行うことができる。
試料中の本開示のマーカーに対応するRNAの量を割り出す代替的な方法は、例えば、RT−PCR(Mullisの1987年の米国特許第4,683,202号に示されている実験実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:189−193)、自己指示配列複製(Guatelli et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Qベータレプリカーゼ(Lizardi et al.,1988,Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardiらの米国特許第5,854,033号)、またはいずれかの他の核酸増幅方法による核酸増幅プロセスの後、当業者に周知の技法を用いて、増幅した分子を検出することを含む。核酸分子が非常に少ない数で存在する場合、これらの検出スキームは、核酸分子の検出に特に有用である。本明細書で使用する場合、増幅プライマーは、遺伝子の5’領域または3’領域(それぞれ+鎖及び−鎖、または−鎖及び+鎖)にアニールし、間に短い領域を含むことができる1対の核酸分子として定義する。概して、増幅プライマーは、約10〜約30ヌクレオチド長であり、約50〜約200ヌクレオチド長さの領域に隣接する。適切な条件下で、適切な試薬を用いると、このようなプライマーによって、プライマーが隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子を増幅可能になる。
インサイチュの方法では、検出前に、RNAを細胞から単離する必要がない。このような方法では、既知の組織学的方法を用いて、細胞または組織試料を調製/処理する。続いて、試料を支持体、典型的にはスライドガラスに固定化してから、マーカーをコードするRNAにハイブリダイズできるプローブと接触させる。
本開示の別の実施形態では、マーカーに対応するポリペプチドを検出する。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドを検出するための薬剤は、本開示のマーカーに対応するポリペプチドに結合できる抗体である。関連する実施形態では、この抗体は、検出可能な標識を有する。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであることができる。インタクト抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)を用いることができる。
様々な方式を用いて、試料が、所定の抗体に結合するタンパク質を含むか判断できる。このような方式の例としては、酵素免疫アッセイ(EIA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、ウエスタンブロット解析及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が挙げられるが、これらに限らない。当業者であれば、B細胞が、本開示のマーカーを発現するか判断するのに使用するために、既知のタンパク質/抗体検出方法を容易に適合させることができる。
マーカーに対応するポリペプチドのレベルを割り出す別の方法は、質量分析法である。例えば、1つ以上のポリペプチドマーカーを含む試料、例えば、血液試料、リンパ試料またはその他の試料から得たインタクトなタンパク質またはペプチド、例えば、トリプシンペプチドを解析できる。この方法は、試料を処理して、豊富なタンパク質、例えば血清アルブミンの量を減少させて、方法の感受性を高めることをさらに含むことができる。例えば、液体クロマトグラフィーを用いて、試料を分画して、試料の一部を質量分析法によって別々に解析できるようにできる。これらのステップは、別々のシステムまたは液体クロマトグラフィー/質量分析法を組み合わせたシステムで行うことができる(LC/MS、例えば、Liao,et al.(2004)Arthritis Rheum.50:3792−3803を参照されたい)。質量分析システムは、タンデム(MS/MS)モードであることもできる。1回または複数回のスキャンで、タンパク質またはペプチド混合物の電荷状態分布を得て、統計的方法によって、例えば、LC/MSシステムにおける保持時間と質量電荷比(m/z)を用いて解析して、オーロラAキナーゼの阻害による療法に応答するかまたは応答しない患者の試料において、統計的に有意なレベルで示差的に発現したタンパク質を同定することができる。使用できる質量分析計の例は、イオントラップシステム(カリフォルニア州サンノゼのThermoFinnigan)または四重極型飛行時間型質量分析計(カリフォルニア州フォスターシティのApplied Biosystems)である。本開示の方法は、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法におけるペプチドマスフィンガープリンティングのステップをさらに含むことができる。本開示の方法は、トリプシンペプチドの1つ以上をシーケンシングするステップをさらに含むことができる。この方法の結果を用いて、例えばメリーランド州ベセスダのNational Center for Biotechnology InformationまたはスイスのジュネーブのSwiss Institute for Bioinformaticsが維持している一次配列データベースから、質量分析のトリプシンペプチドのm/z基準ピークに基づき、タンパク質を同定できる。
電子装置可読アレイ
本開示の少なくとも1つの予測マーカーを含む可読アレイを含め、電子装置も、本開示の方法と併せて使用することが想定されている。本明細書で使用する場合、「電子装置可読媒体」とは、電子装置によって直接読み出し及びアクセスできるデータまたは情報を保存、保持または収容するためのいずれかの好適な媒体を指す。本明細書で使用する場合、「電子装置」という用語には、いずれかの好適な演算もしくは処理装置、またはデータもしくは情報を格納するように構成もしくは適合されているその他の装置が含まれるように意図されている。本開示とともに用いて、記録情報をモニタリングするのに適する電子装置の例としては、スタンドアロン演算装置、ネットワーク(ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)インターネット、イントラネット及びエクストラネットを含む)、電子機器(パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ページャーなど)、ならびにローカル及び分散処理システムが挙げられる。本明細書で使用する場合、「記録」とは、電子装置可読媒体上の情報を格納または符号化するプロセスを指す。当業者であれば、既知の媒体上の情報を記録するための現在知られている方法のいずれかを容易に用いて、本開示のマーカーを含む製品を作ることができる。
例えば、遺伝子発現の評価(例えば、DNAの検出、RNAの検出、タンパク質の検出)または例えば、代謝産物の産生によって、試料を評価する分野においては、マイクロアレイシステムが周知であるとともに、使用されている。本開示に従って用いるマイクロアレイには、本明細書に記載されているような治療レジメンに対する応答及び/または非応答の特徴を示す本開示の予測マーカー(複数可)の1つ以上のプローブが含まれる。一実施形態では、このマイクロアレイは、短期生存者において発現の増大を示すマーカーと、患者における長期生存者における発現の増大を示す遺伝子からなる群から選択したマーカーの1つ以上に対応する1つ以上のプローブを含む。多種多様なマイクロアレイ構成とその作製方法は、当業者に知られており、例えば、米国特許第5,242,974号、同第5,384,261号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,445,934号、同第5,556,752号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,472,672号、同第5,527,681号、同第5,529,756号、同第5,545,531号、同第5,554,501号、同第5,561,071号、同第5,571,639号、同第5,593,839号、同第5,624,711号、同第5,700,637号、同第5,744,305号、同第5,770,456号、同第5,770,722号、同第5,837,832号、同第5,856,101号、同第5,874,219号、同第5,885,837号、同第5,919,523号、同第5981185号、同第6,022,963号、同第6,077,674号、同第6,156,501号、同第6261776号、同第6346413号、同第6440677号、同第6451536号、同第6576424号、同第6610482号、同第5,143,854号、同第5,288,644号、同第5,324,633号、同第5,432,049号、同第5,470,710号、同第5,492,806号、同第5,503,980号、同第5,510,270号、同第5,525,464号、同第5,547,839号、同第5,580,732号、同第5,661,028号、同第5,848,659号及び同第5,874,219号、Shena,et al.(1998),Tibtech 16:301、Duggan et al.(1999)Nat.Genet.21:10、Bowtell et al.(1999)Nat.Genet.21:25、Lipshutz et al.(1999)Nature Genet.21:20−24,1999、Blanchard,et al.(1996)Biosensors and Bioelectronics,11:687−90、Maskos,et al.,(1993)Nucleic Acids Res.21:4663−69、Hughes,et al.(2001)Nat.Biotechol.19:342,2001に開示されており、これらはそれぞれ、参照により、本明細書に援用される。,タンパク質の同定には、組織マイクロアレイを用いることができる(Hans et al.(2004)Blood 103:275−282を参照されたい)。ファージ−エピトープマイクロアレイを用いて、1つのタンパク質または複数のタンパク質が患者において自己抗体を誘導するかに基づき、試料中の1つ以上のタンパク質を同定できる(Bradford et al.(2006)Urol.Oncol.24:237−242)。
したがって、マイクロアレイは、本明細書に定められている1つ以上のマーカー、例えば、治療転帰を示すマーカー、例えば、野生型マーカー遺伝子、正常なアレルバリアント及びマーカー遺伝子の変異を同定するためのマーカーに対応する1つ以上のプローブを含む。このマイクロアレイは、例えば、治療転帰を示す少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも75個もしくは少なくとも100個のバイオマーカー及び/またはそれらの変異に対応するプローブを含むことができる。マイクロアレイは、本明細書に定められているような1つ以上のバイオマーカーに対応するプローブを含むことができる。さらに、マイクロアレイは、本明細書に示されているような完全なマーカーセットを含んでよく、そのマーカーセットは、本明細書に定められている方法に従って選択及び作成してよい。このマイクロアレイを用いて、アレイにおける1つ以上の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現をアッセイできる。一例では、このアレイを用いて、試料中の2つ以上の予測マーカーまたはマーカーセットの発現をアッセイして、アレイにおけるマーカーの発現プロファイルを確認できる。このようにして、最大で約44,000個のマーカーの発現について、同時にアッセイできる。これにより、1つ以上の試料において特異的に発現している一連のマーカーを示す発現プロファイルを作成できる。さらに、これにより、治療転帰を評価するための発現プロファイルを作成できる。
このアレイは、正常な細胞と異常な(例えば試料、例えば腫瘍)細胞における1つ以上のマーカーの示差的な発現パターンを確認するのにも有用である。これにより、患者の治療転帰を容易に同定するためのツールとしての役割を果たし得る一連のマーカーが得られる。さらに、上記のアレイは、参照発現レベルを得るための参照マーカーの発現を確かめるのに有用である。別の例では、上記のアレイを用いて、アレイにおける1つ以上のマーカーの発現の経時変化をモニタリングできる。
このような定性的判定に加えて、本開示によって、マーカーの発現を定量できる。すなわち、試料中のマーカーの量によって、マーカーセットまたは転帰指標に基づき、予測マーカーをグループ化できる。これは、本明細書に示されている方法に従って、量をスコア化することによって、例えば、試料の転帰を確認するのに有用である。
上記のアレイは、マーカーの発現が、同じ細胞または異なる細胞における他の予測マーカーの発現に及ぼす作用を確認するのにも有用である。これにより、患者の転帰が不良と予測される場合に、例えば、治療行為の対象となる代替的な分子標的を選択する。
治療剤
本開示のマーカー及びマーカーセットは、がん患者の良好な転帰の可能性を評価する。この予測を用いて、がん療法を評価して、いずれかのカテゴリーの患者にとって最も好適な療法レジメンを設計できる。
本開示の方法で用いる治療剤としては、本明細書に記載されているようなオーロラAキナーゼインヒビターとして知られている部類の治療剤が挙げられる。
本明細書に開示されている薬剤は、皮内、皮下、経口、動脈内または静脈内を含むいずれかの経路によって投与してよい。一実施形態では、投与は、静脈内経路によって行うことになる。ボーラスまたは注入によって非経口投与を行うことができる。
開示されている化合物の製薬学的に許容可能な混合物中における濃度は、投与する化合物の投与量、用いる化合物(複数可)の薬物動態学的特徴及び投与経路を含むいくつかの要因に応じて変化することになる。薬剤は、1回投与または反復投与を行ってよい。治療剤は、患者の全体的な健康状態、ならびに選択した化合物(複数可)の配合及び投与経路を含む多くの要因に応じて、1日に1回またはそれよりも高い頻度で投与してよい。
オーロラAキナーゼの製薬学的に許容可能な塩をこれらの組成物において使用する場合、その塩は好ましくは、無機または有機の酸または塩基に由来するものである。好適な塩の概説については、例えば、Berge et al,J.Pharm.Sci.66:1−19(1977)及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed.A.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000を参照されたい。
好適な酸付加塩の非限定的な例としては、アセテート、アジペート、アルギネート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、バイサルフェート、ブチレート、シトレート、カンフォレート、カンファースルホネート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホネート、フマレート、ルコヘプタノエート、グリセロフォスフェート、ヘミサルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロクロライド、ヒドロブロマイド、ヒドロヨーダイド、2−ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレエート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、オキサレート、パモエート、ペクチネート、ペルサルフェート、3−フェニル−プロピオネート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、サクシネート、タートレート、チオシアネート、トシレート及びウンデカノエートが挙げられる。
好適な塩基付加塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩など)、有機塩基との塩(ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン及びコリンなど)、ならびにアミノ酸との塩(アルギニン、リジンなど)が挙げられるが、これらに限らない。
また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド(メチルクロライド、エチルクロライド、プロピルクロライド、ブチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、プロピルブロマイド、ブチルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、プロピルヨーダイド、ブチルヨーダイドなど)、ジアルキルサルフェート(ジメチルサルフェート、ジエチルサルフェート、ジブチルサルフェート及びジアミルサルフェートなど)、長鎖ハライド(デシルクロライド、ラウリルクロライド、ミリスチルクロライド、ステアリルクロライド、デシルブロマイド、ラウリルブロマイド、ミリスチルブロマイド、ステアリルブロマイド、デシルヨーダイド、ラウリルヨーダイド、ミリスチルヨーダイド、ステアリルヨーダイドなど)、アラルキルハライド(ベンジルブロマイド及びフェネチルブロマイドなど)などのような物質で四級化されていてよい。これによって、水溶性、油溶性、水分散性、または油分散性の生成物が得られる。
「製薬学的に許容可能な担体」という用語は、本明細書では、被投与者の対象、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトと適合するとともに、活性剤の活性を喪失させずに、活性剤を標的部位に送達するのに適する物質を指す目的で使用する。担体と関連する毒性または副作用がある場合には、好ましくは、その毒性または副作用は、活性剤の意図する用途のために、合理的なリスク/効果比と釣り合っている。
「担体」、「アジュバント」または「ビヒクル」という用語は、本明細書では同義的に用いられており、これらの用語には、所望の具体的剤形に適するようなあらゆる溶媒、希釈剤及びその他の液体のビヒクル、分散補助剤、懸濁補助剤、表面活性剤、等張化剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが含まれる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed.A.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000には、製薬学的に許容可能な組成物を調合する際に用いる様々な担体と、それらを調製するための既知の技法が開示されている。いずれかの従来の担体媒体が、いずれかの望ましくない生体作用をもたらすか、または別段に、製薬学的に許容可能な組成物のいずれかの他の成分(複数可)と、有害な形で相互作用することなどによって、本開示の化合物と適合しない場合を除き、その担体媒体の使用は、本開示の範囲内であると想定される。製薬学的に許容可能な担体として機能できる物質のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、バッファー物質(ジナトリウム水素フォスフェート、カリウム水素フォスフェート、ナトリウムカーボネート、ナトリウムバイカーボネート、カリウムカーボネート、カリウムバイカーボネート、マグネシウムヒドロキシド及びアルミニウムヒドロキシドなど)、グリシン、ソルビン酸またはカリウムソルベート、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、パイロジェンフリー水、塩または電解質(プロタミンサルフェート、ジナトリウム水素フォスフェート、カリウム水素フォスフェート、ナトリウムクロライド及び亜鉛塩など)、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖(ラクトース、グルコース、スクロース、デンプン(コーンスターチ及びバレイショデンプンなど)など)、セルロース及びその誘導体(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセテートなど)、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(ココアバター及び座薬ワックスなど)、油(ラッカセイ油、綿実油、べに花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油など)、グリコール(プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなど)、エステル(エチルオレエート及びエチルラウレートなど)、寒天、アルギン酸、等張食塩水、リンゲル液、アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール及びグリセロールなど)、シクロデキストリン、滑沢剤(ナトリウムラウリルサルフェート及びマグネシウムステアレートなど)、石油系炭化水素(鉱油及びワセリンなど)が挙げられるが、これらに限らない。調合者の判断に従って、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、保存剤及び抗酸化剤も組成物に存在することができる。
本開示の医薬組成物は、従来の造粒プロセス、混合プロセス、溶解プロセス、内包プロセス、凍結乾燥プロセスまたは乳化プロセスなどのような、当該技術分野において周知の方法によって製造できる。組成物は、顆粒、沈殿物、微粒子、粉末(凍結乾燥、回転乾燥または噴霧乾燥した粉末を含む)、非晶質粉末、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、座剤、注射剤、乳剤、エリキシル剤、懸濁剤または液剤を含む様々な形態で生成してよい。調合剤は、任意に応じて、所望の具体的剤形に適するような溶媒、希釈剤及びその他の液体ビヒクル、分散補助剤、懸濁補助剤、表面活性剤、pH調整剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、安定剤及び保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを含んでよい。
好ましい実施形態によれば、本開示の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトに医薬投与を行うために調合されている。本開示のこのような医薬組成物は、経口投与、非経口投与、吸入噴霧による投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、口腔内投与、膣内投与または移植リザーバーによる投与を行ってよい。本明細書で使用する場合、「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内への注射または注入技法が含まれる。好ましくは、本開示の組成物は、経口、静脈内または皮下投与する。本開示の製剤は、短時間作用型、速い放出型、長時間作用型に設計してよい。さらに、化合物は、全身的な手段ではなく、腫瘍部位での投与(例えば注射による投与)のような局所的な手段で投与できる。
経口投与用の液体剤形としては、製薬学的に許容可能な乳剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられるが、これらに限らない。液体剤形は、活性化合物に加えて、当該技術分野において広く使われている不活性希釈剤(例えば、水またはその他の溶媒など)、可溶化剤及び乳化剤(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、シクロデキストリン、ジメチルホルムアミド、油(具体的には、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物など)を含んでよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、アジュバント(湿潤剤、乳化補助剤、懸濁補助剤、甘味剤、矯味剤及び矯臭剤など)を含むことができる。
注射用調製剤、例えば、滅菌注射用水性懸濁剤または滅菌注射用油脂性懸濁剤は、既知の技術に従って、好適な分散剤または湿潤剤と懸濁化剤を用いて調合してよい。滅菌注射用調製剤は、非経口的に許容可能な非毒性の希釈剤または溶媒中(例えば1,3−ブタンジオール溶液として)の滅菌注射用液剤、懸濁剤または乳剤であってもよい。用いてよい許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.及び等張ナトリウムクロライド溶液がある。加えて、溶媒または懸濁媒体として、滅菌固定油が利便的に用いられている。この目的においては、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含め、いずれかの無味無臭の固定油を使用できる。加えて、注射剤の調製には、オレイン酸などの脂肪酸を使用する。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターでろ過するか、または使用前に、滅菌水もしくはその他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌できる。非経口投与用に調合した組成物は、ボーラス注射または時限放出によって注射しても、持続注入によって投与してもよい。
本開示の化合物の作用を引き延ばすために、皮下または筋内注射からの化合物の吸収を遅くするのが望ましい場合が多い。これは、水難溶性の結晶質または非晶質物質の液体懸濁液を用いることによって行ってよい。したがって、化合物の吸収速度は、その化合物の溶解速度に左右され、そして、この溶解速度は、結晶のサイズと結晶形に左右され得る。あるいは、非経口投与する化合物剤形の吸収を遅くするのは、その化合物を油のビヒクルに溶解または懸濁させることによって行う。注射用デポー剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマーで化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製する。化合物のポリマーに対する比率と、用いる具体的なポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(アンハイドライド)が挙げられる。デポー注射用製剤は、生体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに化合物を封入することによっても調製する。
直腸または膣内投与用の組成物は好ましくは、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、すなわち、直腸または膣腔で融解して、活性化合物を放出する好適な非刺激性賦形剤または担体(ココアバター、ポリエチレングリコールまたは座薬ワックスなど)と本開示の化合物を混合することによって調製できる座剤である。
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形では、活性化合物は、少なくとも1つの製薬学的に許容可能な不活性賦形剤または担体(ナトリウムシトレートもしくはジカルシウムフォスフェートなど)、ならびに/またはa)充填剤もしくは増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸など)と、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアカシアなど)と、c)湿潤剤(グリセロールなど)と、d)崩壊剤(寒天、カルシウムカーボネート、バレイショデンプン、タピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート及びナトリウムカーボネートなど)と、e)溶解遅延化剤(パラフィンなど)と、f)吸収促進剤(四級アンモニウム化合物など)と、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレートなど)と、h)吸収剤(カオリン及びベントナイト粘土など)と、i)滑沢剤(タルク、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、固体ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリルサルフェート及びこれらの混合物など)と混合されている。カプセル剤、錠剤及び丸剤のケースでは、剤形は、フォスフェートまたはカーボネートのような緩衝剤も含んでよい。
類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤と、高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、軟及び硬充填ゼラチンカプセル剤において、充填剤としても用いてよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング及び製薬分野において周知のその他のコーティングのようなコーティング及び剤皮によって調製できる。これらの固体剤形は任意に応じて、不透明化剤を含んでよく、活性成分(複数可)のみを放出するか、または腸管の特定の部分に優先的に、任意に応じて遅延様式で放出する組成物の固体剤形であることもできる。使用できる包理組成物の例としては、ポリマー物質とろうが挙げられる。類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤と、高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、軟及び硬充填ゼラチンカプセル剤において、充填剤としても用いてよい。
活性化合物は、上述したような1つ以上の賦形剤とともに、マイクロカプセル化した形態であることができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング、放出制御コーティング及び製薬分野において周知のその他のコーティングのようなコーティング及び剤皮によって調製できる。このような固体剤形では、活性化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と添加混合してよい。このような剤形は、通常実施されるように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、錠剤化滑沢剤及びその他の錠剤化補助剤(マグネシウムステアレート及び微結晶性セルロースなど)も含んでよい。カプセル剤、錠剤及び丸剤のケースでは、その剤形は、緩衝剤も含んでよい。これらの固体剤形は任意に応じて、不透明化剤を含んでよく、活性成分(複数可)のみを放出するか、または腸管の特定の部分に優先的に、任意に応じて遅延様式で放出する組成物の固体剤形であることもできる。使用できる包理組成物の例としては、ポリマー物質とろうが挙げられる。
本開示の化合物の局所または経皮投与用の剤形としては、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分は、必要に応じて、滅菌条件下で、製薬学的に許容可能な担体と、いずれかの必要な保存剤またはバッファーと添加混合する。眼科用製剤、点耳薬及び点眼薬も、本開示の範囲内であることが想定されている。加えて、本開示では、化合物を体に制御送達するというさらなる利点がある経皮パッチを用いることも想定されている。このような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または分散させることによって作製できる。吸収促進剤を用いて、皮膚を通過する化合物の流量も増加させることもできる。この速度は、速度制御膜を設けること、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることのいずれかによって制御できる。
オーロラAキナーゼの選択的インヒビターは、当業者に知られているいずれかの方法によって投与できる。例えば、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターは、組成物の形態で、一実施形態では、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターと製薬学的に許容可能な担体(本明細書に記載されているようなもの)との医薬組成物の形態で投与できる。好ましくは、医薬組成物は、経口投与に適する。いくつかの実施形態では、この医薬組成物は、経口投与用の錠剤(腸溶性被覆錠など)である。このような錠剤は、米国特許出願公開第2010/0310651号に記載されており、この特許は、参照により、その全体が本明細書に援用される。いくつかの他の実施形態では、この医薬組成物は、経口投与用の液体剤形である。このような液体剤形は、米国特許出願公開第2011/0039826号に記載されており、この特許は、参照により、本明細書に援用される。特定の実施形態では、これらの組成物は任意に応じて、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。
「治療上有効な」及び「治療効果」という表現は、本明細書で論じられている増殖性障害の症状の治療、予防または改善を含む(ただし、これらに限らない)利点を指す。治療上有効な量または治療効果をもたらすのに必要な薬剤量は、意図する用途(インビトロもしくはインビボ)、または治療する対象と疾患の状態(例えば、治療する状態の重症度の性質、具体的なインヒビター、投与経路、ならびに個々の患者の年齢、体重、全身の健康状態及び応答)に応じて変化することになるのは分かるであろうし、この量は、当業者であれば、容易に割り出すことができる。例えば、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターの量は、本明細書に論じられている増殖性障害の症状の治療、予防または改善を実現するのに十分である場合、治療上有効である。
本開示の方法で用いる組成物は、投与のしやすさと、投与量の均一化のために、単位剤形で調合してよい。「単位剤形」という表現は、本明細書で使用する場合、治療する患者に適する物理的に別個の薬剤単位を指す。しかしながら、本開示の化合物と組成物の1日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医が判断することは分かるであろう。非経口投与用の単位剤形は、アンプルまたは多投与量容器に入ったものであってよい。
いくつかの実施形態では、薬剤を投与している治療期間の後には、特定の期間の非治療期間を設け、その期間中には、治療剤を患者に投与しない。そして、この非治療期間の後に、同じまたは異なる頻度の次の一連の治療期間と非治療期間を同じまたは異なる長さの時間で設ける。いくつかの実施形態では、治療期間と非治療期間を交互に設ける。サイクル療法における治療期間は、患者が完全な応答または部分的な応答を得るまで継続してよく、完全な応答または部分的な応答を得た時点で、治療をやめてよいことが分かるであろう。あるいは、サイクル療法における治療期間は、患者が完全な応答または部分的な応答を得るまで継続してよく、完全な応答または部分的な応答を得た時点でも、治療期間を特定のサイクル数継続してもよい。いくつかの実施形態では、治療期間の長さは、患者の応答にかかわらず、特定のサイクル数であってよい。いくつかの他の実施形態では、治療期間の長さは、患者が再発するまで継続してもよい。
上記の治療剤のいずれかを投与できる頻度は、約2日に1回もしくは2回以上、約3日に1回もしくは2回以上、約4日に1回もしくは2回以上、約5日に1回もしくは2回以上、約6日に1回もしくは2回以上、約7日に1回もしくは2回以上、約8日に1回もしくは2回以上、約9日に1回もしくは2回以上、約10日に1回もしくは2回以上、約20日に1回もしくは2回以上、約28日に1回もしくは2回以上、約1週間に1回もしくは2回以上、約2週間に1回もしくは2回以上、約3週間に1回もしくは2回以上、約4週間に1回もしくは2回以上、約1カ月に1回もしくは2回以上、約2カ月に1回、約3カ月に1回、約4カ月に1回、約5カ月に1回、約6カ月に1回、約7カ月に1回、約8カ月に1回、約9カ月に1回、約10カ月に1回、約11カ月に1回、約1年に1回、約2年に1回、約3年に1回、約4年に1回または約5年に1回であり得ることが分かるであろう。
例えば、薬剤は、特定の期間にわたり、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回または1カ月に1回投与してよい。薬剤は、14日の期間にわたって1日に1回、または7日の期間にわたって2日に1回投与してよい。いくつかの実施形態では、特定の量の選択的オーロラAキナーゼを7日間、1日に1回投与できる。あるいは、薬剤は、特定の期間にわたって、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回または1カ月に1回投与してから、特定の非治療期間を設けてよい。いくつかの実施形態では、特定の量のオーロラAキナーゼインヒビターを14日間、1日に1回投与してから、7日間の非治療期間を設け、14日間、1日1回投与してから、7日間の非治療期間を設けるサイクルさらに2回繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、特定の量の選択的オーロラAキナーゼインヒビターを7日間、1日に2回投与してから、14日間の非治療期間を設けることができ、7日間、1日2回投与してから、14日間の非治療期間を設けるサイクルをさらに1回または2回繰り返してよい。
一実施形態では、特定の量の選択的オーロラAキナーゼインヒビターを7日の期間にわたって、1日に1回投与する。別の実施形態では、特定の量のオーロラAインヒビターを6日、5日、4日または3日の期間にわたって、1日に1回投与する。別の実施形態では、特定の量の選択的オーロラAキナーゼインヒビターを7日の期間にわたって、1日に2回投与してから、7日、14日または21日の非治療期間を設ける。別の実施形態では、21日のサイクルで、アリセルチブを7日間、1日に2回、50mgの用量で投与してから、14日の非治療期間を設ける。
オーロラAキナーゼの選択的インヒビターの1日当たりの好適な投与量は概して、1回投与、分割投与または多回投与において、単剤としての最大耐用量の約10%〜約120%の範囲であることができる。特定の実施形態では、好適な投与量は、単剤としての最大耐用量の約20%〜約100%である。いくつかの他の実施形態では、好適な投与量は、単剤としての最大耐用量の約25%〜約90%である。いくつかの他の実施形態では、好適な投与量は、単剤としての最大耐用量の約30%〜約80%である。いくつかの他の実施形態では、好適な投与量は、単剤としての最大耐用量の約40%〜約75%である。いくつかの他の実施形態では、好適な投与量は、単剤としての最大耐用量の約45%〜約60%である。他の実施形態では、好適な投与量は、単剤としての最大耐用量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約105%、約110%、約115%または約120%である。
アリセルチブの1日当たりの好適な投与量は概して、1回投与、分割投与または多回投与において、1日当たり約20mg〜約120mgの範囲であることができる。アリセルチブの他の1日当たりの好適な投与量は概して、1回投与、分割投与または多回投与において、1日当たり約30mg〜約90mgの範囲であることができる。アリセルチブの他の1日当たりの好適な投与量は概して、1回投与、分割投与または多回投与において、1日当たり約40mg〜約80mgの範囲であることができる。いくつかの実施形態では、好適な投与量は、約10mgを1日に2回〜約50mgを1日に2回である。いくつかの他の実施形態では、好適な投与量は、約15mgを1日に2回〜約45mgを1日に2回である。いくつかの他の実施形態では、好適な投与量は、約20mgを1日に2回〜約40mgを1日に2回である。いくつかの他の実施形態では、好適な投与量は、約25mgを1日に2回〜約40mgを1日に2回である。いくつかの実施形態では、好適な投与量は、1日当たり約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mgまたは約120mgである。特定の他の実施形態では、好適な投与量は、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mgまたは約60mgを1日に2回である。いくつかの実施形態では、アリセルチブの好適な投与量は、約30mgを1日に2回である。いくつかの実施形態では、アリセルチブの好適な投与量は、約35mgを1日に2回である。いくつかの実施形態では、アリセルチブの好適な投与量は、約40mgを1日に2回である。いくつかの実施形態では、アリセルチブの好適な投与量は、約50mgを1日に2回である。
オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを好適な投与量、日中または夜間のいずれかの時間に服用してよいことは分かるであろう。いくつかの実施形態では、朝に、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを好適な用量服用する。いくつかの他の実施形態では、晩に、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを好適な用量服用する。いくつかの他の実施形態では、朝晩両方に、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを好適な用量服用する。食物摂取の有無にかかわらず、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを好適な用量服用してよいことは分かるであろう。いくつかの実施形態では、食事を取りながら、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを好適な用量服用する。いくつかの実施形態では、絶食しながら、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを好適な用量服用する。
いくつかの実施形態では、オーロラAキナーゼの選択的インヒビターを第1の量で投与する第1の治療期間の後に、同じまたは異なるオーロラAキナーゼの選択的インヒビターを同じまたは異なる量で投与する別の治療期間を設けることができる。広範な治療剤は、本開示のオーロラAキナーゼと組み合わせると、治療上関連する追加の利点がある場合がある。1つ以上の他の治療剤とともに、本開示のオーロラAキナーゼを含む併用療法を用いて、例えば、1)本開示の方法及び/もしくは1つ以上の他の治療剤の治療効果(複数可)を高めたり、2)本開示の方法及び/もしくは1つ以上の他の治療剤が引き起こす副作用を軽減したり、ならびに/または3)本開示のオーロラAキナーゼ及び/もしくは1つ以上の他の治療剤の有効な用量を低減したりできる。例えば、このような治療剤を本開示のオーロラAキナーゼと組み合わせて、望ましくない良性な状態または腫瘍の成長をもたらす細胞の望ましくない成長(細胞の不適当な成長など)を阻害してよい。
試薬及びキット
本開示は、生体試料(例えば、骨髄試料、腫瘍生検標本または参照試料)中の本開示のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するキットも含む。このようなキットを用いて、治療転帰を評価でき、例えば、対象の転帰が、例えばオーロラAキナーゼインヒビターによる治療後に良好であり得るかを判断できる。例えば、このキットは、生体試料中の本開示のマーカーまたはマーカー遺伝子の変異に対応するゲノムDNAのセグメント、ポリペプチドまたは転写RNAを検出できる標識した化合物または薬剤と、試料中のそのゲノムDNAのセグメント、ポリペプチドまたはRNAの量を割り出す手段を含むことができる。マーカータンパク質と結合させるのに適する試薬としては、抗体、抗体誘導体、抗体断片などが挙げられる。マーカー核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、スプライシングmRNA、cDNAなど)と結合させるのに適する試薬としては、相補的な核酸が挙げられる。このキットは、アッセイして検査試料と比較できる対照もしくは参照試料、または一連の対照もしくは参照試料も含むことができる。例えば、このキットは、例えば、本明細書に記載されている1つ以上のマーカーもしくは変異、または参照マーカー、例えば、試料もしくは時点間においてアッセイを標準化するハウスキーピングマーカー、または参照ゲノム、例えば、2倍体コピー数のベースラインもしくはマーカーの参照発現レベルを定めるために、例えば腫瘍のない対象から得た対照ゲノムを含め、陽性対照試料を有してよい。一例として、このキットは、相補的な核酸をアニーリングするか、またはその抗体が特異的に結合するタンパク質と抗体を結合させるのに適する流体(例えばバッファー)と1つ以上の試料区画を含んでよい。本開示のキットは、任意に応じて、本開示の方法を行うのに有用な追加の要素、例えば試料回収容器、例えばチューブと、任意に応じて、例えば、試料採取時点と解析時点との間に時間があったり、または有害な保存及び取扱い条件があったりし得る場合に、検出するマーカーの量を最適化する手段を含んでよい。例えば、このキットは、上記のように、試料中の腫瘍細胞の数を増加させるための手段、細胞物質を調製するための緩衝剤、保存剤、安定化剤もしくは追加の試薬、または示されている方法で使用するプローブと、単独であるか、もしくは提供されているプローブ(複数可)にコンジュゲートしているか組み込まれている検出可能な標識を含むことができる。例示的な一実施形態では、試料回収容器を含むキットは、例えば、上記されているかまたは当業者に知られているような抗凝固剤及び/または安定剤の入ったチューブを含むことができる。このキットは、検出可能な標識を検出するのに必要な要素(例えば、酵素または基質)をさらに含むことができる。マーカーセットに関しては、キットは、バイオマーカーを検出するのに用いるマーカーセットアレイまたはチップを含むことができる。キットは、キットを用いて得た結果を解釈するための説明書も含むことができる。このキットは、1つ以上のバイオマーカー、例えば、本明細書に記載されている2個、3個、4個、5個、またはそれを超えるバイオマーカーを検出するための試薬を含むことができる。
一実施形態では、このキットは、少なくとも1つのバイオマーカー、例えば、治療転帰(例えば、オーロラAキナーゼインヒビターによる治療後の転帰)を示すマーカーを検出するためのプローブを含む。例示的な実施形態では、本開示のキットは、本明細書の表9及び10に開示されているマーカー遺伝子からなる群から選択したマーカー遺伝子を検出するための核酸プローブを含む。いくつかの実施形態では、本開示のキットは、LEF1、MAP2K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWC1、WWTR1及びYAP1からなる群から選択したマーカーを検出するためのプローブを含む。一実施形態では、キットは、LEF1、MAP2K7,APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1、AMOT、DVL2、LATS1、LATS2、MOB1B、NPHP4、TJP1、TJP2、WWC1、WWC1、WWTR1及びYAP1からなる群からの2つ以上のマーカーを含むマーカーセットを検出するためのプローブを含む。関連する実施形態では、本開示のキットは、本明細書の表9及び10においてGenBank受託番号によって開示されているヌクレオチド配列からなる群から選択した核酸配列(例えば、その断片、変異体またはバリアント(例えば、相同または相補的なもの))を含むかまたはそれに由来する核酸プローブを含む。核酸プローブを含むキット、例えばオリゴヌクレオチドベースのキットでは、そのキットは例えば、本開示のマーカーに対応する核酸配列とハイブリダイズする1つ以上のオリゴヌクレオチドのような核酸試薬(標識してあるかまたは非標識のもの)であって、任意に応じて基板に固定されている核酸試薬、基板と結合していない標識オリゴヌクレオチド、本開示のマーカーに対応する核酸分子を増幅するのに有用な1対のPCRプライマー、モレキュラービーコンプローブ、本開示のマーカーに対応する少なくとも2つの核酸配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマーカーセットなどを含むことができる。本開示のキットは、RNA安定化剤を含むことができる。
タンパク質プローブを含むキット、例えば抗体ベースのキットでは、そのキットは、例えば、(1)本開示のマーカーに対応するポリペプチドに結合する第1の抗体(例えば、固体支持体に結合させた抗体)と、任意に応じて(2)上記のポリペプチドまたは第1の抗体のいずれかに結合するとともに、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の異なる抗体を含むことができる。このキットは、タンパク質安定化剤を含むことができる。このキットは、試料由来の非バイオマーカー物質がプローブに非特異的に結合する量を低減する試薬を含むことができる。試薬の例としては、非イオン性界面活性剤、非特異的タンパク質含有溶液(アルブミンもしくはカゼインを含む溶液など)または当業者に知られているその他の物質が挙げられる。
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を調製するための標準的な技法を用いて抗体を生成するために、本開示の予測マーカーに対応する単離ポリペプチド、またはその断片もしくは変異体を免疫原として使用できる。例えば、典型的には、免疫原を用いて、好適な(すなわち、免疫応答性の)対象(ウサギ、ヤギ、マウスまたはその他の哺乳動物もしくは脊椎動物など)を免疫することによって、抗体を調製する。さらなる態様では、本開示は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、本開示のアミノ酸配列、本開示のcDNAによってコードされるアミノ酸配列、本開示のアミノ酸配列の少なくとも8個、10個、12個、15個、20個または25個のアミノ酸残基からなる断片、本開示のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列(この同一性%は、PAM120残基重量表を使用し、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4でGCGソフトウェアパッケージのALIGNプログラムを用いて割り出す)、ならびに6×SSCで45℃においてハイブリダイゼーションし、0.2×SSC、0.1%SDSで65℃において洗浄するという条件で、本開示の核酸分子からなる核酸分子またはその相補体とハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体または断片を提供する。このモノクローナル抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体及び/またはヒト以外の抗体であることができる。適切な免疫原性調製物は、例えば、組み換え発現させたポリペプチドまたは化学合成したポリペプチドを含むことができる。この調製物は、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバントまたは類似の免疫刺激剤のようなアジュバントをさらに含むことができる。
ヒト抗体を作製する方法は、当該技術分野において知られている。ヒト抗体を作製する方法の1つでは、トランスジェニックマウスのようなトランスジェニック動物の使用を採用する。これらのトランスジェニック動物は、その動物自身のゲノムに挿入されたヒト抗体産生ゲノムの相当部分を含み、抗体産生の際には、その動物自身の内因性の抗体産生は、行われないようになっている。このようなトランスジェニック動物を作製する方法は、当該技術分野において知られている。このようなトランスジェニック動物は、XENOMOUSE(商標)技術を用いて、または「ミニ遺伝子座」のアプローチを用いることによって作製できる。XENOMOUSE(商標)を作製する方法は、米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号及び同第6,075,181号に記載されており、これらの特許は、参照により、本明細書に援用される。「ミニ遺伝子座」のアプローチを用いてトランスジェニック動物を作製する方法は、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号及び同第5,625,825、ならびに国際公開第93/12227号に記載されており、これらの特許はそれぞれ、参照により、本明細書に援用される。
抗体には、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原(本開示のポリペプチド、例えば、本開示のポリペプチドのエピトープなど)と特異的に結合する抗原結合部位を含む分子が含まれる。本開示の所定のポリペプチドに特異的に結合する分子は、そのポリペプチドと結合するが、試料、例えば、天然においてそのポリペプチドを含む生体試料中の他の分子とは実質的に結合しない分子である。例えば、抗原結合断片と、上記の抗体に由来する完全長単量体、二量体または三量体ポリペプチドは、それ自体で有用である。このタイプの有用な抗体ホモログとしては、(i)Fab断片(VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる1価の断片)、(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域においてジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む2価の断片)、(iii)VHドメインとCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインとVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,Nature 341:544−546(1989))、(vii)VHHドメインからなる単一ドメイン機能性重鎖抗体(ナノボディとしても知られている)(例えば、Cortez−Retamozo,et al.,Cancer Res.64:2853−2857(2004)と、この文献で引用されている参照文献を参照されたい)、ならびに(vii)単離相補性決定領域(CDR)、例えば、抗原結合断片をもたらすのに十分なフレームワークを併せ持つ1つ以上の単離CDRが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン(VL及びVH)は、別の遺伝子によってコードされるが、組み換え法を用いて、これらのドメインを単一のタンパク質鎖にできる合成リンカーによって、これらのドメインを連結でき、そのタンパク質鎖において、VL領域とVH領域の対は、1価の分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として知られており、例えば、Bird et al.Science 242:423−426(1988)及びHuston et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988)を参照されたい。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に含まれるように意図されている。当業者に知られている従来の技法を用いて、これらの抗体断片を得て、インタクト抗体と同じ方式で、その断片の有用性をスクリーニングする。Fv、F(ab’)2及びFabなどの抗体断片は、インタクトなタンパク質を例えばプロテアーゼまたは化学的切断によって切断することによって調製してよい。本開示は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を提供する。上記のうちのいずれかの合成バリアント及び遺伝子操作したバリアント(米国特許第6,331,415号を参照されたい)も、本開示によって想定されている。ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体は、従来のマウスモノクローナル抗体の手法、例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al.,1983,Immunol.Today4:72を参照されたい)、EBVハイブリドーマ法(Cole et al.,pp.77−96 In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,1985を参照されたい)またはトリオーマ法を含む様々な技法によって生成できる。概して、Harlow,E.and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY及びCurrent Protocols in Immunology,Coligan et al.ed.,John Wiley & Sons,New York,1994を参照されたい。診断用途では、抗体は、モノクローナル抗体、例えば、マウス、ラットまたはウサギで産生させたモノクローナル抗体であることができる。加えて、インビボ用途での使用では、本開示の抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であることができる。本開示のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準的なELISAアッセイを用いて、ハイブリドーマ培養上清を、目的のポリペプチドと結合する抗体についてスクリーニングすることによって検出する。
所望に応じて、抗体分子を対象から(例えば、対象の血液または血清から)回収または単離し、周知の技法(プロテインAクロマトグラフィーなど)によってさらに精製して、IgG分画を得ることができる。あるいは、本開示のタンパク質またはポリペプチドに対して特異的な抗体を選択するか、または精製(例えば部分精製)するか、もしくは例えばアフィニティークロマトグラフィーによって精製して、実質的に精製した抗体及び精製した抗体を得ることができる。実質的に精製した抗体組成物とは、この文脈においては、抗体試料が、本開示の所望のタンパク質またはポリペプチドのエピトープ以外のエピトープに対する夾雑抗体を最大でもわずか30%(乾燥重量基準)しか含まないとともに、試料の最大でも20%、最大でも10%または最大でも5%(乾燥重量基準)が夾雑抗体であることを意味する。精製した抗体組成物とは、組成物中の抗体の少なくとも99%が、本開示の所望のタンパク質またはポリペプチドに対するものであることを意味する。
本開示のマーカーの発現のレベルとパターンを評価するために、そのマーカーに対応するポリペプチドに対する抗体(例えばモノクローナル抗体)を用いて、(例えば、細胞試料中の)そのマーカーを検出できる。それらの抗体を診断的に用いて、例えば臨床試験の手順の一部として、組織または体液中(例えば血液サンプル中)のタンパク質レベルをモニタリングして、例えば、所定の治療レジメンの有効性を判断できる。抗体を検出可能な物質に結合させることによって、検出を促すことができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質及び放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族の複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライドまたはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられ、好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
したがって、一態様では、本開示は、実質的に精製した抗体またはその断片と、ヒト以外の抗体またはその断片であって、本明細書に定められているマーカーによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体または断片を提供する。本開示の実質的に精製した抗体またはその断片は、ヒト抗体、ヒト以外の抗体、キメラ抗体及び/またはヒト化抗体であることができる。
別の態様では、本開示は、ヒト以外の抗体またはその断片であって、本開示の予測マーカーの核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体または断片を提供する。ヒト以外のこのような抗体は、ヤギ抗体、マウス抗体、ヒツジ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ウサギ抗体またはラット抗体であることができる。あるいは、本開示のヒト以外の抗体は、キメラ抗体及び/またはヒト化抗体であることができる。加えて、本開示のヒト以外の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる。
実質的に精製した抗体またはその断片は、本開示のポリペプチドのシグナルペプチド、分泌配列、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメインまたは細胞質ループに特異的に結合してよい。本開示の実質的に精製した抗体もしくはその断片、ヒト以外の抗体もしくはその断片、及び/またはモノクローナル抗体もしくはその断片は、本開示のアミノ酸配列の分泌配列または細胞外ドメインに特異的に結合する。
本開示は、検出可能な物質にコンジュゲートした、本開示の抗体と、使用するための説明書とを含むキットも提供する。本開示のさらに別の態様は、本開示のプローブと、製薬学的に許容可能な担体とを含む診断用組成物である。一実施形態では、この診断用組成物は、本開示の抗体と、検出可能な部分と、製薬学的に許容可能な担体とを含む。
感受性アッセイ
がん細胞の試料を患者から得る。試料において、本明細書に記載されているマーカーのうちの少なくとも1つに対応するマーカーの発現レベルを測定する。本明細書に記載されている方法を用いて、本明細書に記載されているようなマーカーを含むマーカーセットを組み立てることができる。上記のような解析を用いて、患者の腫瘍の発現プロファイルを得る。続いて、発現プロファイルの評価を用いて、その患者が、良好な転帰を得られると予測されるかと、例えば、オーロラAキナーゼ阻害療法(例えば、オーロラAキナーゼインヒビター(例えばアリセルチブ)を単独でもしくは追加の薬剤と組み合わせて用いる治療))、または生存期間に対して同様の作用を有すると予測される別の薬剤による治療から恩恵を得られるかを判断する。発現プロファイルの評価を用いて、患者の転帰が不良となることが予測されるか、オーロラAキナーゼ阻害療法以外のがん療法から恩恵を得られるのか、または別のオーロラAキナーゼ阻害療法レジメンから恩恵を得られるのかを判断することもできる。評価には、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI、メリーランド州ベセスダ)のGene Expresion Omnibus(GEO)プログラムに寄託された発現値を用いて、示されている方法のいずれかまたは当該技術分野において知られているその他の類似のスコア付け法(例えば、重み付き多数決、しきい特性を組み合わせた方法(CTF)、コックス比例ハザード解析、主成分スコアリング法、線形予測スコア法、K近傍法など)を用いて調製した1つのマーカーセットを用いることを含めることができる。さらに、評価には、調製したマーカーセットを2つ以上用いることを含めることができる。評価結果によって、良好な転帰が示された場合には、オーロラAキナーゼ阻害療法が、がんを治療するのに適するものと同定し、あるいは、転帰が不良となると予測される患者には、より積極的な療法レジメンを同定する。
一態様では、本開示は、患者、例えば、がん患者、例えば、血液がんまたは固形腫瘍がんの患者の治療転帰について評価する方法を特徴とする。この方法は、i)患者試料においてマーカーセット中のマーカーの発現を評価することを含み、このマーカーセットには、a)転帰の同定された患者と、罹患していない対象との間で示差的にそれぞれ発現する複数の遺伝子を含むという特性と、b)対象におけるマーカーセット中の各マーカーの示差的な量(例えば、罹患していない参照試料におけるレベルと比較した場合)によって、偽陽性が約15%、約10%、約5%、約2.5%または約1%以下の状態で(この場合の偽陽性とは、患者が応答するかまたは応答しないかについて誤った予測がなされることを意味する)、治療転帰が予測されるように、示差的に発現されるマーカーを十分に多く含むという特性と、ii)患者から得られるマーカーセット中の各マーカーの量を参照値と比較することによって、患者を評価するという特性がある。
オーロラAキナーゼ阻害療法中に患者から得た腫瘍試料における、同定されたマーカーまたはマーカーセットのうちの1つ以上の量を調べることによって、その治療剤が引き続き機能するのか、またはそのがんが、その治療プロトコールに応答しなくなっている(不応になっている)のかを判断することも可能である。例えば、アリセルチブを含む治療レジメンを受けている患者から腫瘍細胞を除去して、マーカーまたはマーカーセットの発現についてモニタリングする。本明細書に開示されているような1つ以上のマーカーのプロファイルによって、薬剤、例えばオーロラAキナーゼインヒビター(アリセルチブ)の存在下で、転帰が良好であることが示された場合、その治療を継続することになる。しかしながら、本明細書で同定されている1つ以上のマーカーのプロファイルによって、薬剤の存在下で、転帰が不良であることが示された場合、そのがんは、療法、例えば、オーロラAキナーゼ阻害(アリセルチブ)療法に対する耐性を持つ可能性があり、患者を治療するには、別の治療プロトコールを開始する必要がある。
重要なことに、これらの判断は、患者ごとにまたは薬剤(または薬剤の組み合わせ)ごとに行うことができる。したがって、特定のオーロラAキナーゼ阻害療法が、特定の患者または患者のグループ/クラスにとって有益である可能性が高いか否か、または特定の治療を継続すべきかを判断できる。
情報の利用
方法の1つでは、情報、例えば、患者のマーカー(複数可)の特徴、例えば、サイズ、配列、組成もしくは量(例えば、本明細書に記載されているマーカーもしくはマーカーセットを評価した結果)に関する情報、または患者の転帰が良好になると予測されるかに関する情報を第三者、例えば、病院、診療所、行政機関、償還者または保険会社(例えば、生命保険会社)に提供する(例えば、伝達、例えば、電子的に伝達する)。例えば、この情報から、医療手段の選択、医療手段に対する支払い、償還者による支払いまたはサービスもしくは保険に対する費用を求めることができる。例えば、第三者は、この情報を受け取り、少なくとも部分的に、この情報に基づき判断を行い、任意に応じて、その情報を伝達するか、または情報に基づき、手段、支払い、支払いのレベル、補償範囲などを選択する。この方法では、表8から選択もしくは抽出したマーカーもしくはマーカーセット及び/または本明細書に記載されているマーカーもしくはマーカーセットの情報伝達的な発現レベルを判断する。
一実施形態では、1つ以上のマーカー、例えばマーカーもしくはマーカーセットの発現レベル、例えば、治療転帰と関連する発現レベル(例えば、情報伝達的な量)に関する情報に基づき、保険料(例えば、生命保険または医療保険)を評価する。例えば、本明細書に記載されている、患者のマーカー遺伝子または患者のマーカーセットが、補償対象の候補者(または保険による補償を求めている候補者)と参照値(例えば罹患していない人)もしくは参照試料、例えば対応する対照との間で異なる特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量を持つ場合、保険料を(例えば特定の割合)増やすことができる。本明細書に記載されているマーカーまたはマーカーセットの評価結果に応じて、保険料を減らすこともできる。例えば、マーカー、例えば、本明細書に記載されているマーカーまたはマーカーセットの評価結果に基づき、保険料を評価して、例えば、リスクを分散することができる。別の例では、治療転帰が既知である患者から得られる保険計理データに基づき、保険料を評価する。
マーカーの特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量、例えば、本明細書に記載されているマーカーまたはマーカーセットの評価結果(例えば、情報伝達的な量)に関する情報は、例えば、生命保険の引き受けプロセスで用いることができる。この情報は、患者に関するプロファイルに組み込むことができる。このプロファイル内の他の情報としては、例えば、生年月日、性別、配偶関係、銀行情報、クレジット情報、子供などを挙げることができる。プロファイルにおける情報の1つ以上の他の項目とともに、マーカーの特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量、例えば、本明細書に示されているマーカーまたはマーカーセットの評価結果に関する情報に基づき、保険契約を勧めることができる。マーカーまたはマーカーセットの情報に基づき、保険料またはリスク評価の評価も行うことができる。一実施態様では、予測される治療転帰に基づき、ポイントを割り当てる。
一実施形態では、資金の移動を認めて、対象に提供されたサービスまたは治療の支払いを行うか判断する(または本明細書で言及されている他の判断を行う)要素によって、マーカーの特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量、例えば、本明細書に記載されているマーカーまたはマーカーセットの評価結果に関する情報を解析する。例えば、本明細書に記載されているマーカーまたはマーカーセットの特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量の解析結果によって、対象が良好な転帰を得られると予測されることを示して、治療クールが必要であることを示唆し、それによって、対象に提供されたサービスまたは治療の支払いを行うことへの承認を示したり、または承認させたりする結果を促してよい。一例では、表9〜10から選択もしくは抽出したか、及び/または本明細書に記載されているマーカーまたはマーカーセットの情報伝達的な特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量を割り出し、その情報伝達的な量によって、良好な転帰が同定された場合、支払いを認める。例えば、医療費を支払うかまたは償還する事業体、例えば、病院、養護施設、行政機関もしくは保険会社、またはその他の事業体は、本明細書に記載されている方法の結果を利用して、ある当事者、例えば、対象の患者以外の当事者が、患者に提供されたサービス(例えば、特定の療法)または治療に対する支払いを行うかを判断できる。例えば、第1の事業体、例えば保険会社は、本明細書に記載されている方法の結果を利用して、患者に提供されたサービスまたは治療の対価について、患者にまたは患者の代わりに支払いを行うべきか、例えば、第三者、例えば、商品もしくはサービスの供給者、病院、医師またはその他の介護者に償還すべきか判断できる。例えば、第1の事業体、例えば保険会社は、本明細書に記載されている方法の結果を用いて、保険プランまたはプログラム、例えば、健康または生命保険プランまたはプログラムの継続、停止、加入を個人に行わせるべきかを判断できる。
一態様では、本開示は、データを提供する方法を特徴とする。この方法は、本明細書に記載されているデータ、例えば、本明細書に記載されている方法によって生成したデータを提供して、支払いを行うかを判断するための記録、例えば、本明細書に記載されている記録を提供することを含む。いくつかの実施形態では、データは、コンピューター、コンパクトディスク、電話、ファクシミリ、電子メールまたは手紙によって提供する。いくつかの実施形態では、データは、第1の当事者が第2の当事者に提供する。いくつかの実施形態では、第1の当事者は、対象、医療提供者、治療を行う医師、健康維持機構(HMO)、病院、行政機関または薬物を販売もしくは供給する機関から選択する。いくつかの実施形態では、第2の当事者は、第三者の支払者、保険会社、雇用者、雇用者が資金提供を行った健康プラン、HMOまたは行政機関である。いくつかの実施形態では、第1の当事者は、対象、医療提供者、治療を行う医師、HMO、病院、保険会社または薬物を販売もしくは供給する機関から選択し、第2の当事者は、行政機関である。いくつかの実施形態では、第1の当事者は、対象、医療提供者、治療を行う医師、HMO、病院、保険会社または薬物を販売もしくは供給する機関から選択し、第2の当事者は、保険会社である。
別の態様では、本開示は、患者のマーカーまたはマーカーセットに関する特徴、例えば、サイズ、配列、組成または量のリストと値を示す記録(例えば、コンピューター可読式の記録)を特徴とする。いくつかの実施形態では、この記録には、各マーカーについて、2つ以上の値が含まれる。
別段の定義がない限り、本明細書で用いられているすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本開示の実施または試験の際には、本明細書に記載されている方法及び材料と同様または同等のいずれかの方法及び材料を使用できるが、好ましい方法、装置及び材料が本明細書に記載されている。本明細書で言及されているいずれの文献も、本開示との関連で使用し得るその文献に報告されている材料と手法を説明及び開示する目的で、参照により、その全体が本明細書に援用される。
以下では、下記の実施例によって本開示を例示するが、それらの実施例は、いずれにおいても、限定するようには意図されていない。
臨床試験
5つの所定の進行タイプの固形腫瘍[再発/難治性乳がん(BC)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)及び胃食道接合部(GE)腺癌]を持つ患者における、アリセルチブ単剤の多施設第1/2相臨床試験では、アリセルチブは単剤によって、5つの固形腫瘍タイプ試験のうちの4つで、臨床的に有意義な抗腫瘍活性を示した(いずれもNSCLCを除く)(Melichar B.et al.,Safety and activity of alisertib,an investigational aurora kinase A inhibitor,in patients with breast cancer,small−cell lung cancer,non−small−cell lung cancer,head and neck squamous cell carcinoma,and gastro−oesophageal adenocarcinoma:a five−arm pase 2 study.Lancet Oncology Vol 16,pages 395−405,April 2015)。保存されている腫瘍生検標本と、正常な血液試料を今回の試験に登録した47人の患者から得た。下記の表3には、これらの47人の患者の腫瘍タイプの分布が示されている。
有効性評価項目と臨床的共変量:
患者の最大の腫瘍サイズ変化と無増悪生存期間(PFS)を有効性応答評価項目として用いた。腫瘍のタイプには、いくつかの臨床上の変量の間で、有効性評価項目と中程度の関連性が見られたので、腫瘍のタイプは、関連解析のための統計的モデルに共変量として含めて、その作用を補正した。
全エキソームシーケンシング:
QiagenのFFPEキット(ドイツのQiagen)を用いて、47人の患者から、厚さ5マイクロメートルのスライド2〜4枚によって、保存した腫瘍生検標本からゲノムDNAを単離した。血液DNAキット(ドイツのQiagen)を用いて、血液試料に由来するゲノムDNAを抽出した。Agilent SureSelect exome captureとIllumina Hi−Seq(商標)テクノロジーを用いた全エキソームDNAシーケンシングによって、腫瘍DNAと正常(血液)DNAのペアをシーケンシングした。この全エキソームシーケンシングの平均シーケンシングデプスは、塩基対当たり約100倍で実現された。
バイオインフォマティクス解析パイプライン
生の配列リードから変異を同定して、その変異と臨床応答との考え得る相関関係を評価するように、全エキソームシーケンシングの解析パイプラインを設計した。この目的においては、DNA配列データを処理するために、3つの主な解析ユニット、すなわち、上流モジュール、中流モジュール及び下流モジュールを考案した。上流解析モジュールでは、生の配列リード品質コントロール(QC)、リードのアラインメント/マッピング、ならびに患者の腫瘍及び生殖系列ゲノムからの生の体細胞変異コールを含め、DNA配列の前処理を行う。下流解析に備えて、信頼性の高い変異コールをもたらすために、中流解析では、品質統計と変異アノテーションに基づき、生の変異コールを評価する。下流解析では、アリセルチブに対する応答と有意に関連する個々の変異遺伝子または変異遺伝子群を同定するための取り組みが行われる。
上流解析
上流解析では、生のDNA配列ファイルの処理と生の変異コールに注力する。次世代シーケンシング(NGS)によって生成される75bpの短い配列リードは、FASTQまたはBAMのファイル形式で電子的に存在している。fastQC(バージョン0.10.1)を用いて、配列リードの品質を評価して、各試料の変異コールの品質が十分であるかを判断した。次に、BWA(バージョン0.6.2−r126)を用いて、生の配列リードをヒト参照ゲノム(hg19)にマッピングした。リードを参照ゲノムにマッピングした後、VarScan2(バージョン2.3.4)を用いて生の体細胞変異を、GATK(バージョン2.3.9)を用いて生の生殖系列バリアント(SNV及び小さなインデルを含む)をコールした。
中流解析:
中流解析では、信頼性の高い体細胞変異を同定するために、生の変異を処理した。生殖系列バリアントも同様に処理した。中流解析は、バリアントアノテーションと、そのアノテーション及びバリアントの質に基づくフィルタリングとから構成されている。表4に、アノテーションソースがまとめられている。RefSeq(hg19)、dbSNP、COSMIC、1000genome、The Cancer Genome Atlas(TCGA)及びThomson Reuters Genetic Variant Database(GVDB)を公開及び私有のアノテーションソースとして選択した。
表5に、フィルタリング条件がまとめられている。フィルタリングステップを通じて、コーディングを変化させる体細胞変異のみを保持し(表5、1行目)、対応する生殖系列ゲノムで見られる変異を除外した(表5、2行目)。シーケンスデプスは、1つのバリアント部位で蓄積された配列リード数を示している(表5、3行目)。シーケンスデプスが大きいほど、同定されたバリアントの裏付けが確かとなる。NGSは、エラー率が比較的高いことが知られているからである。例えば、多くのリードによって、同じ配列多様性が裏付けられている場合、そのバリアントは、シーケンシングアーチファクトではなく、実際のバリアントである可能性がさらに高くなる。同様に、マイナーアレル比(MAF)は、シーケンシングアーチファクトとサブクローナル変異を含める可能性を低下させるとみなした(表5、4行目)。次に、シーケンシング品質とマッピング品質に関するフィルターを生の変異に適用した(表5、5〜7行目)。潜在的な生殖系列バリアントを除外するために、dbSNPと1000genomeで重複しているバリアントを取り除いたが、TCGAによって報告されていた場合には保持した(表5、8行目)。最後に、タンパク質コーディングに対する機能的な影響を持つバリアントのみが残るように、任意のフィルタリングステップを加えた(表5、9行目)。公的に入手可能なバイオインフォマティクスツールのFATHMM(バージョン2.3)とMutationTasterによって、バリアントの機能的結果を予測し、各コーディング変異の機能的な影響を評価するための補足情報として、その結果を使用した。このフィルターを経路レベルの関連付け検定で使用した。このフィルターを使用することにより、各経路における潜在的なパッセンジャー遺伝子の影響が減少し得るからである。
単一遺伝子の下流解析:
中流解析から得た信頼性の高い変異を用いて、薬物応答を予測する潜在的なバイオマーカーを同定するように、下流解析を設計した。評価項目としての最大の腫瘍サイズ変化には線形回帰モデルを、評価項目としてのPFSにはコックス比例ハザードモデルを使用した。両方のモデルにおける共変量として腫瘍のタイプを考慮して、その交絡的作用を調節した。評価項目としての最大の腫瘍サイズ変化に対する線形回帰の場合には、ベースライン腫瘍サイズを追加の共変量として加えた。ベースライン腫瘍サイズは、この評価項目と弱い相関関係があるからである。
という線形回帰方程式では、c1、c2及びεは最大の腫瘍サイズ変化、単一遺伝子の変異状態、腫瘍のタイプ、ベースライン腫瘍サイズ、及びランダムエラーをそれぞれ表している。遺伝子が、信頼性の高い変異(複数可)を有するときには、xは1となり、有さないときには、0となる。5つの異なるタイプの腫瘍を表すように、第1の共変量c1は、5つの二値変数に変換されており、第2の共変量c2は、連続変数である。その結果、係数β1は、共変量の潜在的な交絡的作用を調節後の、アリセルチブによる治療に対する感受性または耐性への変異遺伝子の寄与度を示している。帰無仮説
を検定するために、p値を算出した。これらのモデルを用いて、複数の遺伝子を調べたので、偽発見率(FDR)を用いて、複数の仮説検定についてp値を補正した。
経路の下流解析:
経路の関連性解析においても、同様のアプローチを用いた。経路は、共通の生体機能のために相互作用することが知られている遺伝子群として定義できる。下記の表6で見てとれるように、経路の関連性解析では、6つの公的及び私的の経路データベースを組み合わせて、調査能力を最大限に高めた。経路レベルでの変異と、アリセルチブによる治療転帰、特には最大の腫瘍サイズ変化との関連度を検定するために、2種類の統計的検定を選択した。まず、経路に属する遺伝子のいずれかが、体細胞変異したことが明らかになった場合には、二値変数を1(変異)に定めた。この二値変数を独立変数として用いて、線形回帰モデルを構築し、遺伝子レベルの関連性に用いた方程式と同様に、腫瘍のタイプとベースライン腫瘍サイズを共変量として用いた。第2に、配列カーネル関連性検定(SKAT)を行って、経路内の個々の変異遺伝子が、異なる形で薬物感受性または薬物耐性に寄与するケースを考慮した。2つの検定によって、表6の各経路に対して、1対のp値が得られた。線形回帰とSKATという2つの方法は、経路とアリセルチブ応答との間の関連性に関して、異なる見地をもたらすので、小さい方のp値(2つの検定のうちの優れた方。以下、BOTという)を各経路における代表的なp値として選択した。統計的検定の第1種の過誤を制御するために、経路のp値に対して、多重性調整を行った。
変異遺伝子/経路と無増悪生存期間との関連性:
コックス比例ハザードモデルを用いて、変異遺伝子/経路と無増悪生存期間(PFS)との潜在的な関連性を調べた。この解析は補助的な調査として、上記の解析によって同定された遺伝子と経路が、変異体群とWT群との間で有意なPFS差も示していたことを確かめるために行った。
多重性調整:
単一遺伝子レベルの関連性に関しては、ベンジャミーニ&ホッホベルク(BH)法を用いて、FDR(q値としても知られている)を算出した。経路レベルの関連性に関しては、各経路に対して複数の統計的関連性解析(線形回帰、SKAT及びBOR)を行ったとともに、広く存在する遺伝子を通じて、経路が相関関係を持つことが多いので、多重性調整は、さらに複雑になる。これらの課題に対応するために、リサンプリングベースの多重性調整を行った。パラメトリックなブートストラップ法を用いて、経路の関連性検定から得たp値の帰無分布をシミュレートした。観察されたp値を、参照分布としてのシミュレート帰無分布と比較することによって、調整済みのp値を得た。
信頼性の高い体細胞変異:
中流解析後、合わせて6,410個の遺伝子は、47人の患者の全エキソームシーケンシングデータから得たコーディングエキソンに、信頼性の高い体細胞変異を有していた。表5の最後のフィルターも適用したところ、4,400個の変異遺伝子が、信頼性の高い遺伝子かつ機能的なバリアントとして残った。図2には、この調査における47人の患者(6,410個の遺伝子)の変異状況を視覚的に表したものが示されている。
単一遺伝子の関連性の結果:
共変量としての単一遺伝子の変異状態(x)、腫瘍のタイプ(c
1)及びベースライン腫瘍サイズ(c
2)の線形回帰モデルを実行して、アリセルチブによる治療に対する感受性または耐性と関連する変異遺伝子を同定した。6,410個の遺伝子を調べ、BHによる調整を用いて、それに付随するp値を補正した。オーロラAキナーゼの生物学的特性に基づき、p値が上位の遺伝子から、4つの遺伝子を選択した(表7)。生のp値カットオフを0.05としたところ、腫瘍の軽減と有意に関連するものとして、1つの遺伝子(FAT1)が同定された。他の3つの遺伝子(MLL3、EP300、FBXW7)は、上記よりも寛容なカットオフ(0.1)を用いたときに、腫瘍の軽減と関連すると判断された。MLL3は、最大の腫瘍サイズ変化とPFSの両方によって同定され、EP300は、PFSの延長のみと相関関係を示した。これらの2つの遺伝子は、クロマチン修飾と細胞分裂において重要な役割を果たすことが知られており、このクロマチン修飾と細胞分裂は、オーロラAキナーゼの重要な機能と密接に関わっている。興味深いことに、FBXW7は、腫瘍の進行と相関していた一方で、他の遺伝子は、腫瘍の軽減またはPFSの延長と関連している。
経路レベルの関連性の結果:
アリセルチブによる治療に対する応答性と関連する経路として、2つの経路を同定した(表8)。第1の経路は、Thomson ReutersのMetaCore(商標)におけるWNT/β−カテニンシグナル伝達経路である。WNT/β−カテニンシグナル伝達経路は、多発性骨髄腫及び神経膠腫を含む多くの疾患で、オーロラAキナーゼと相互作用することが知られている。また、オーロラAキナーゼのサイレンシングによって、WNT/β−カテニンシグナル伝達がダウンレギュレートされる。このWNT/β−カテニン経路は、23個の遺伝子(表8)から構成されており、そのうちの12個、すなわち、LEF1、MAP3K7、APC、FZD2、PRKCA、RORA、CAMK2G、JUN、XPO1、ROR2、CCND1、CTNNB1が、全エキソームシーケンシングデータにおいて、体細胞変異していることが同定された。これらの12個の遺伝子の変異パターンは、図3のヒートマップ(上側)に示されている。もう一方の経路は、REACTOMEにおけるHippoシグナル伝達経路である。Hippoシグナル伝達経路は、22個の遺伝子(表8)から構成されており、その22個の遺伝子うちの11個が、臨床試験の患者試料において変異していた。11個の変異遺伝子は、LOC646561、YWHAEP5、AMOTL1、SAV1、MOB1A、AMOTL2、YWHAE、YWHAB、STK4、STK3及びCASP3である。この経路は、細胞の増殖とアポトーシス、特に、4倍体により誘導される細胞周期の停止と関連することが知られている。これにより、アリセルチブとの機能的な結び付きが示唆されている。オーロラAキナーゼの阻害により、有糸分裂異常を起こして、異数状態となり、最後に細胞周期が停止することによって、細胞死に至る。Hippoシグナル伝達経路の変異パターンは、図3(下側)に示されている。図3及び4で見てとれるように、WNTまたはHippoシグナル伝達経路が変異している患者の方が、アリセルチブによる治療に対して良好に応答する傾向がある。