以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る手術支援器具、手術支援アセンブリ、手術支援器具の作成装置、手術支援器具の作成方法、及びプログラムを説明する。各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
手術支援器具は、処置対象の骨に対して骨片を適切な向きで位置決めするのを支援する器具である。本発明の骨片には、処置対象の骨から切り出された骨片に限られず、処置対象の骨とは異なる骨から切り出された骨片、ハイドロキシアパタイト(HAp)で形成された人工骨、インプラント、人工関節、その他の移植片が含まれる。手術支援器具は、特定の術式での使用に限定されていないが、本実施形態では、理解を容易にするために寛骨臼回転骨切り術を実施する場合を例にして説明する。
本実施形態においては、図1に示すように患者の骨盤を基準にして左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、脊椎が延びる上下方向をZ軸方向とする直交座標系を骨盤の座標系として使用する。より詳細には、左右上前腸骨棘と恥骨結節前方突出点を含む平面である前骨盤平面(APP)をXZ平面として設定する。そして、左右の上前腸骨棘を結ぶ軸をX軸、前骨盤平面上でX軸に垂直な軸をZ軸、X軸及びZ軸に垂直な軸をY軸とする。
(実施の形態1)
図2〜6を参照して実施の形態1に係る手術支援器具1の構成について説明する。図2に示すように、手術支援器具1は、ベース部10、軸部20、指標部30を備えている。ベース部10は、処置対象の骨の表面に設置される部材である。軸部20は、ベース部10に取り付けられ、ベース部10から離れる方向に延びる部材である。指標部30は、軸部20の先端部に設けられ、処置対象の骨の傾きに関する指標を術者に提供する部材である。
図3に示すように、手術支援器具1は、ベース部10が腸骨の所定の設置位置に設置されると、軸部20が骨盤の座標系をX軸方向に延び、指標部30が軸部20の先端部に配置されるように構成されている。
図4に示すように、ベース部10は、本体部11と、取付部12と、ワイヤ保持部13と、を備える。図4の(a)は、ベース部10を上方から見た平面図、(b)はベース部10を下方から見た底面図、(c)はベース部10を横方向から見た正面図である。本体部11は、腸骨の表面に当接する当接部11aと、当接部11aと反対側に配置される上面部11bと、当接部11aと上面部11bの間の側面に形成される側面部11cと、側面部11cから当接部11a側に突出するストッパ11dと、本体部11の一部を切り欠いた切欠き部11eと、を備える。
当接部11aは、ベース部10が設置される腸骨の設置部分の表面形状に合致するように形成されている当接面を備える。当接部11aは、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等の撮影装置により取得した骨盤の3次元画像データに基づいて形成されている。このため、術者がベース部10を腸骨の設置部分以外に設置しようとしても、ベース部10は腸骨上で簡単にずれてしまい、うまく設置できないが、ベース部10を腸骨の設置部分に設置した場合、ベース部10は腸骨上にずれることなく設置できる。
上面部11b及び側面部11cは、表面が平滑に構成され、エッジや引っ掛かり等が存在しないように構成されている。上面部11b及び側面部11cは、患部の周囲組織や術者の手に触れる可能性があるためである。
図4(c)に示すように、ストッパ11dは、側面部11cの端部から当接部11a側に突出し、図5に示すように、ベース部10が腸骨に設置されたときに腸骨の前方側にある凹んだ端部に引っ掛かるように構成されている。ストッパ11dの内面は、当接部11aと同様に、腸骨の前方側の端部の形状に合致するように形成されている。ストッパ11dは、ベース部10が腸骨に設置されたとき、本体部11が腸骨の後方にずれることを防止する。
再び図4に戻り、切欠き部11eは、本体部11のストッパ11dとは反対の後方側に形成されている。切欠き部11eは、腸骨の後方にある腸骨の膨らみを側方から覆うように形成されている。このため、切欠き部11eは、ベース部10を腸骨に設置するとき、ベース部10を適切な位置に案内し、ベース部10を腸骨に設置したとき、腸骨に対するベース部10のずれを防止する。
取付部12は、本体部11のほぼ中心部に設けられ、軸部20が着脱自在に取り付けられるように構成されている。取付部12は、本体部11の上面部11bから突出して形成されている。取付部12は、本体部11の当接部11aが腸骨に設置されたとき、軸部20が骨盤の座標系をX軸方向に延びるように設けられている。
取付部12は、上面部11bから突出する突出部12aと、突出部12aの上面から下方にある本体部11の当接部11aに向かって貫通している開口部12bと、を備えている。
突出部12aの上面は、同一平面上に配置される平面として形成されている。突出部12aの上面は、軸部20の基端部が開口部12bに挿入されたとき、後述する軸部20の肩部が当接するように構成されている。
開口部12bは、軸部20が開口部12bに挿入され、ベース部10が腸骨に設置されたとき、骨盤の座標系をX軸方向に延びるような向きで突出部12aに形成されている。また、開口部12bは、軸部20の挿入方向に垂直な断面が正方形となるように形成されている。そして、開口部12bは、軸部20の基端部を着脱自在に保持するように構成されている。さらに、開口部12bは、軸部20の基端部の挿入を容易にするために面取りされている。
ワイヤ保持部13は、腸骨に向けて穿刺される固定用のKワイヤ(キルシュナー銅線)を保持する。ワイヤ保持部13は、取付部12に隣接するように本体部11の上面部11bに設けられている。ワイヤ保持部13は、上面部11bから突出するように形成されている突出部13aと、突出部13aの上面から本体部11の当接部11aに向けて直線状に形成されている貫通孔13bと、を備えている。
貫通孔13bは、Kワイヤを挿通可能な円形断面の孔である。貫通孔13bは、当接部11aが腸骨の表面と当接した状態で、突出部13aの上面からKワイヤを挿通されるよう構成されている。貫通孔13bに挿通されたKワイヤが腸骨に穿刺されることで、ベース部10が腸骨に対してずれないように固定される。
ベース部10は、骨盤を撮影した3次元画像データに基づいて形成される。腸骨は複雑な表面形状を有しているため、ベース部10は、複雑な成形が容易な材料、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、シリコン樹脂、ポリ乳酸(PLA(Polylactic Acid))樹脂のような樹脂材料から形成される。ベース部10は、患者ごとに形成され、一度限りの使用で廃棄されるため、安価な樹脂材料から形成されることが好ましい。
ベース部10は、3Dプリンタのような積層造形技術を用いて製造される。ベース部10は、コンピュータで作成されたベース部10の形状を特定する形状特定データに基づいて、立体的に樹脂を積層することで成形される。積層造形法としては、ベース部10の複雑な形状を成形できさえすれば、光造形法、粉末焼結積層造形法、熱溶解積層法等を含むいかなる方法を用いてもよい。
軸部20は、指標部30をベース部10から離れたところに配置する長尺な軸部材である。図6に示すように、軸部20は、本体部21と、本体部21の基端側に設けられ、取付部12の開口部12bに挿入される基端部22と、指標部30が設けられる先端部23と、を備えている。軸部20の寸法は、長さが約140mm、外径が約10mmである。また、軸部20の基端部22の寸法は、長さが約20mm、軸方向に垂直な断面に形成された正方形の辺の長さが約7mmである。
本体部21及び先端部23は、円柱状に形成されている。先端部23の先端には面取りが施されている。また、基端部22の端部にも、基端部22の開口部12bへの挿入が容易となるように面取りが施されている。
基端部22は、開口部12bの断面形状と相補的な形状となるように軸方向に垂直な断面が正方形に形成されている。軸部20の基端部を開口部12bに差し込むと、正方形の開口部12bに断面正方形の基端部22が嵌め込まれるため、軸部20の軸周りの回転を防止できる。基端部22及び開口部12bは、軸部20がベース部10に対して軸周りに回転するのを防止する回転防止手段を構成する。
基端部22の軸方向に垂直な断面は、開口部12bの軸方向に垂直な断面と同一かわずかに大きくなるように形成されている。基端部22は、開口部12bへ挿入されるとき、樹脂材料で形成された開口部12bをわずかに弾性変形させつつ、開口部12b内に押し込まれる。このため、軸部20の基端部22がベース部10の開口部12bから意図せずに抜け出ることを防止できる。
軸部20の本体部21の基端側には、肩部24が形成されている。肩部24は、軸部20がベース部10に取り付けられたとき、取付部12の突出部12aの上面と当接するよう構成されている。このため、ベース部10の開口部12bに軸部20の基端部22が挿入されると、軸部20の肩部24がベース部10の突出部12aの上面に当接し、軸部20はベース部10の上面部11bから所定の長さだけ延びるように取り付けられる。
指標部30は、術者に腸骨の傾きを把握するための指標を提供する部材である。指標部30は、軸部20の先端部23に設けられ、互いに異なる向きに延びる第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33を備える。第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33は、いずれも先端のエッジに面取りが施された細長い円柱形状の軸部材である。第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33の寸法は、それぞれ長さが約60mm、外径が約2mmである。
第1の軸部31は、軸部20の先端部23から軸部20の軸方向に延びている。第2の軸部32は、軸部20の先端部23から第1の軸部31に対して垂直な向きに延びている。第3の軸部33は、軸部20の先端部23から第1の軸部31及び第2の軸部32のいずれにも垂直な向きに延びている。第2の軸部32及び第3の軸部33は、いずれも軸部20の先端から約10mm離れた位置に設けられている。
ベース部10と共に腸骨の所定の設置位置に設置されたとき、図6の座標系が示すように、第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33は、それぞれ骨盤の座標系におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を示す。このため、術者は、術中に第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33を確認することで、患者の腸骨の傾きを直感的に把握できる。
第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33には、その先端に視認性の高い色が付けられている。例えば、術中の視認性を向上させるために、第1の軸部31、第2の軸部32、第3の軸部33には赤色、金色といった色を付けることが経験上好ましい。
軸部20及び指標部30は、手術ごとに組み立てる必要がないように予め一体に形成されている。このため、患者の骨盤に合わせて成形しておいたベース部10に軸部20及び指標部30からなる一体物を取り付けるだけで、手術支援器具1の組み立てが終了する。
軸部20及び指標部30は、繰り返し使用することを想定しているため、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)に耐え得る金属材料から形成される。例えば、軸部20及び指標部30は、生体親和性があるチタン又はチタン合金のような金属材料から形成される。
次に、軸部20及び指標部30の作成方法について説明する。まず、軸部20を構成するチタン合金製の円柱部材を準備する。次いで、この円柱部材の基端側をフライス盤により切削し、軸方向に垂直な断面を正方形に形成し、面取りを施す。また、円筒部材の先端部をフライス盤により研削し、先端部にも面取りを施す。そして、軸部20の先端部23の先端面に軸方向の細孔を設けると共に、軸部20の円周面にも軸方向に垂直であって互いに角度が90°ずれている2つの細孔を設ける。これら3つの細孔は、第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33の軸径よりもわずかに小さな孔径となるように形成する。その後、それぞれの細孔に先端のエッジが面取りされた第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33を圧入する。最後に、第1の軸部31、第2の軸部32、及び第3の軸部33の先端部に術中の視認性を高める色の塗料を塗布する。以上の工程により軸部20及び指標部30からなる一体物の作成が終了する。
図7に示すように、手術支援器具1は、切断された寛骨臼に穿刺可能なピン2と共に使用され、ピン2と共に手術支援アセンブリを構成する。図7は、腸骨及び寛骨臼に取り付けられた手術支援アセンブリを骨盤の座標系のY軸方向に観察した様子を示す図であり、(a)は、くり抜かれた寛骨臼を腸骨の元の位置に戻した状態を、(b)は、腸骨に対して寛骨臼を術前計画どおりに位置決めした状態を示す。なお、図7において、第2の軸部32は、軸部20からY軸方向(紙面に垂直な方向)に延びているが、軸部20の背後に隠れているため、図示されていない。
ピン2は、約2〜2.4mmの外径を有する直線状の円柱部材である。切断された寛骨臼に穿刺されたピン2は、術中に寛骨臼の傾きを示す指標を提供する。術者は、骨盤の座標系を示す指標部30に対するピン2の傾きを確認することにより、寛骨臼を術前計画どおりに位置決めする。例えば、術者は、図7(a)に示す状態から、骨盤の座標系のX軸方向に延びる第1の軸部31に対するピン2の傾きを確認しつつ、図7(b)に示すように寛骨臼を骨盤の座標系のY軸周りに角度θyだけ回転させる。このように、術者は、手術支援アセンブリを用いて腸骨に対して寛骨臼をどの軸周りにどの角度で位置決めすべきかを容易に判断できる。
次に、図8に示すブロック図を参照して、ベース部10を作成する作成装置50を説明する。
作成装置50は、設計装置100、撮影装置200、製造装置300を備える。設計装置100、撮影装置200、製造装置300は、有線又は無線の通信回線を介して相互に通信可能に接続されている。
撮影装置200は、骨盤の3次元画像を撮影する撮影装置であり、例えばCT、MRI等である。
製造装置300は、例えば、積層造形技術を用いた3Dプリンタのような複雑な造形物を製造できる装置である。
設計装置100は、撮影装置200で取得された骨盤の3次元画像データに基づいて、ベース部10を設計する装置である。設計装置100は、機能的には、指示受付部110、画像取得部120、出力部130、表示部140、記憶部150、制御部160を備える。指示受付部110、画像取得部120、出力部130、表示部140、記憶部150、制御部160は、それぞれ内部バス(図示せず)により相互に接続されている。
指示受付部110は、キーボード、マウス等から構成され、ユーザからの指示を受け付ける。例えば、指示受付部110は、腸骨においてベース部10が設置される設置部分、ベース部10の形状及び寸法などに関する指示を受け付ける。また、指示受付部110は、製造装置300によってベース部10を製造する指示を受け付ける。
画像取得部120は、CT、MRI等の撮影装置200で撮影された骨盤の3次元画像のデータを取得する。
出力部130は、製造装置300、外部メモリ、その他の情報処理装置にデータを出力する。例えば、出力部130は、指示受付部110がユーザから特定の患者用のベース部10を作成するように指示を受け付けると、記憶部150に記憶された特定の患者に関する形状特定データを製造装置300へ出力する。
表示部140は、液晶ディスプレイ等から構成され、種々の情報を表示する。例えば、表示部140は、撮影装置200で撮影された骨盤の3次元画像、骨盤の3次元画像に基づいて作成された骨モデルの画像、形状が決定されたベース部10の画像、ユーザへの各種案内等を表示する。
記憶部150は、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置、フラッシュメモリ等から構成され、制御部160により実行され、図9、図10の処理を実行させる、あるいは制御部160により実行され、モデル作成部161、座標系設定部162、設置部分特定部163、形状決定部164として機能させるプログラムや各種データを保存する共に、動作領域として機能する。記憶部150は、画像データベース151、骨モデルデータベース152、形状特定データベース153を備えている。画像データベース151は、各患者の骨盤の3次元画像データを保存する。骨モデルデータベース152は、各患者の骨盤の3次元画像データに基づいて作成された骨モデルを保存する。形状特定データベース153は、各患者の骨モデルに基づいて決定されたベース部10の形状を特定する形状特定データを保存する。
制御部160は、CPU(Central Processing Unit)を含むプロセッサから構成される。制御部160は、記憶部150に記憶されたプログラムに基づいて動作し、ベース部10の形状を決定する処理を行う。
制御部160は、モデル作成部161、座標系設定部162、設置部分特定部163、形状決定部164を備える。制御部160は、記憶部150に記憶されたプログラムにしたがって動作することにより、モデル作成部161、座標系設定部162、設置部分特定部163、形状決定部164として機能する。
モデル作成部161は、画像取得部120から取得した骨盤を含む3次元画像データから骨盤のみを抽出して、骨盤の骨モデルを作成する。
座標系設定部162は、骨盤の骨モデルにX軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系(骨盤の座標系)を設定する。
設置部分特定部163は、モデル作成部161で作成された骨モデルに基づいて、腸骨のうちベース部10が設置される設置部分を特定する。具体的には、指示受付部110がベース部10の設置部分についてユーザから指示を受け付けていない場合、設置部分特定部163は、図5に示すように、骨モデルから腸骨の前方側にある凹んだ端部とその後方に延びている領域を設置部分として特定する。指示受付部110がベース部10の設置部分についてユーザから指示を受け付けた場合、設置部分特定部163は、指示受付部110が受け付けた指示に基づいて、ベース部10の設置部分を特定する。
形状決定部164は、設置部分特定部163によって決定された骨の設置部分の形状に適合するように、ベース部10の形状を決定する。骨の設置部分の形状に適合したベース部10は、腸骨の設置部分以外に設置した場合、腸骨上で簡単にずれてしまい、うまく設置できないが、腸骨の設置部分に設置した場合、ベース部10は腸骨上にずれることなく設置できる。
具体的には、形状決定部164は、当接部11a、ストッパ11d、切欠き部11eを腸骨の設置部分の形状に合致するような形状に決定する。また、形状決定部164は、記憶部150に記憶されたデータに基づいて、上面部11b、側面部11cに関する形状特定データを設定する。
また、形状決定部164は、骨モデルに設定された骨盤の座標系に基づいて、ベース部10が腸骨の所定の設置部分に設置されたとき、取付部12の突出部12a及び開口部12bが骨盤の座標系のX軸方向に延びるように、突出部12a及び開口部12bの形状を決定する。また、形状決定部164は、ベース部10の腸骨への取り付け位置、軸部20及び第1の軸部31の長さに応じて、突出部12aのX軸方向の長さを調整する。
さらに、形状決定部164は、記憶部150に記憶されたデータに基づいて、ワイヤ保持部13の突出部13a及び貫通孔13bに関する形状特定データを設定する。指示受付部110がベース部10の形状等についてユーザから指示を受け付けた場合、形状決定部164は、指示受付部110が受け付けた指示に含まれる情報に基づいて、形状特定データを修正する。
設計装置100は、専用のシステムで実現してもよく、小型汎用コンピュータを用いて実現してもよい。設計装置100が実行する処理は、例えば、上述の物理的な構成を備える装置が、記憶部150に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
次に、図9のフローチャートを参照して、作成装置50が実行するベース部10の作成処理について説明する。作成装置50は、例えば記憶部150に記憶されたプログラム実行中に、ベース部10を作成する作成処理を実行する。
まず、画像取得部120は、撮影装置200により撮影された骨盤を含む3次元画像データを取得する(ステップS101)。患者ごとの骨盤の3次元画像データは画像データベース151に記憶され、表示部140にて表示される。
次に、モデル作成部161は、画像取得部120が取得した骨盤の3次元画像データに基づいて、骨盤の骨モデルを作成する(ステップS102)。モデル作成部161は、骨盤を含む3次元画像データから骨盤のみを抽出し、骨盤の骨モデルを作成する。例えば、CTを用いて骨盤の3次元画像データを取得した場合、通常、CT画像で骨は白く表されるため、撮影されたCT画像の画素値と予め決められた閾値とを比較し、比較した結果に基づいて白い部分を骨盤として抽出する。患者ごとに作成された骨盤の骨モデルデータは画像データベース151に記憶され、表示部140にて表示される。
次に、座標系設定部162は、骨盤の骨モデルにX軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を設定する(ステップS103)。具体的には、左右上前腸骨棘と恥骨結節前方突出点を含む平面である前骨盤平面(APP)をXZ平面として設定する。そして、左右の上前腸骨棘を結ぶ軸をX軸、前骨盤平面上でX軸に垂直な軸をZ軸、X軸及びZ軸に垂直な軸をY軸とする。
次に、設置部分特定部163は、モデル作成部161で作成した骨モデルに基づいて、ベース部10を設置する腸骨の設置部分を特定する(ステップS104)。具体的には、モデルから腸骨の前方側にある凹んだ端部とその後方に延びる領域を、ベース部10を設置する設置部分として特定する。腸骨の前方側にある凹んだ端部は、特に腸骨の前方側の端部のうち緩やかに湾曲した部分を設置部分として設定する。また、腸骨の前方側の端部から後方に延びる部分については、略円形状である寛骨臼の上部を緩やかな円弧を描いて避けるようにして設置部分を設定する。
指示受付部110がベース部10の設置部分についてユーザから指示を受け付けた場合、設置部分特定部163は、指示受付部110が受け付けた指示に基づいてベース部10の設置部分を特定する。表示部140は、特定された腸骨の設置部分を示すように、骨モデルの腸骨の設置部分に該当する部分を他の部分と区別できる色に変更して表示する。
形状決定部164は、骨モデルの形状に基づいて、ベース部10の形状を決定する(ステップS105)。形状決定部164は、ベース部10を構成する本体部11、取付部12、ワイヤ保持部13の形状を決定し、これらの形状を特定するための形状特定データを生成する。患者ごとに生成されたベース部10の形状特定データは形状特定データベース153に記憶される。
図10のフローチャートを参照して、形状決定処理(ステップS105)について説明する。
まず、形状決定部164は、本体部11の形状を決定する(ステップS201)。形状決定部164は、骨モデルに設定されたベース部10の設置位置の形状に合致するように、当接部11a、ストッパ11d、切欠き部11eの形状を決定する。また、形状決定部164は、記憶部150に予め記憶されたデータに基づいて、上面部11b、側面部11cに関する形状特定データを設定する。
次に、形状決定部164は、取付部12の形状を決定する(ステップS202)。形状決定部164は、骨盤の骨モデルに設定された骨盤の座標系に基づいて、ベース部10が腸骨の設置位置に設置されたとき、取付部12の突出部12a及び開口部12bがX軸方向に延びるように、突出部12a及び開口部12bの形状を決定する。また、形状決定部164は、ベース部10の腸骨への取り付け位置、軸部20及び第1の軸部31の長さに応じて、突出部12aのX軸方向の長さを設定する。
次に、形状決定部164は、ワイヤ保持部13の形状を決定する(ステップS203)。形状決定部164は、記憶部150に予め記憶されたデータに基づいて、突出部13a及び貫通孔13bに関する形状特定データを設定する。
次に、形状決定部164は、指示受付部110がベース部10の形状等についてユーザから指示を受け付けたかどうかを判定する(ステップS204)。指示受付部110がベース部10の形状等についてユーザから指示を受け付けた場合(ステップS204;YES)、形状決定部164は、指示受付部110が受け付けた指示に含まれる情報に基づいて、ステップS201〜S203で決定された形状特定データを修正する(ステップS205)。記憶部150は、形状特定データベース153に修正された形状特定データを記憶し(ステップS206)、形状決定処理(ステップS105)を終了し、図9のステップS106に進む。
指示受付部110がベース部10の形状等についてユーザから指示を受け付けていない場合(ステップS204;NO)、記憶部150は、形状特定データベース153にステップS201〜S203で決定された形状特定データを記憶し(ステップS206)、形状決定処理(ステップS105)を終了し、図9のステップS106に進む。
ステップS106で、制御部160は、指示受付部110がユーザからベース部10を製造する指示を受け付けたか否かを判定する。
ベース部10を製造する指示を受け付けていないと判定した場合(ステップS106;NO)、指示を受け付けるまで待機する。
一方、ベース部10を製造する指示を受け付けたと判定した場合(ステップS106;YES)、出力部130は、製造装置300へ形状特定データを出力する(ステップS107)。以上のステップによりベース部10の作成処理が終了する。
製造装置300は、出力部130から形状特定データを取得し、形状特定データに基づいてベース部10を製造する。製造装置300は、3Dプリンタであり、ステップS105で生成された形状特定データに基づいて樹脂材料を次々に積層することで、患者の腸骨の設置箇所に適合したベース部10を製造する。
次に、図11のフローチャートを参照して、手術支援器具1を用いた寛骨臼回転骨切り術に係る一連の処置について説明する。
まず、術者は、腸骨の表面形状に合致するように形成されたベース部10を準備し、軸部20と指標部30からなる一体物をベース部10の取付部12に取り付けることにより、手術支援器具1を組み立てる(ステップS301)。
次に、術者は、腸骨及びその寛骨臼を外部から視認可能に露出させるように患者の大腿部を切開する(ステップS302)。
次に、術者は、術前計画で決定したとおりに、例えば手術用ノミのような切断器具を用いて腸骨から寛骨臼をくり抜く(ステップS303)。ステップS303は、術者の技量と経験にもよるが、手術用ノミのみを用いて寛骨臼を切断してもよいし、切断器具による切断方向をガイドするガイド手段やナビゲーションシステムなどを用いて寛骨臼を切断してもよい。
次に、術者は、予め決定された腸骨の設置位置にベース部10を設置する(ステップS304)。ベース部10の当接部11aは、予め腸骨の表面形状に合致し、ストッパ11dが腸骨の前方側の端部に当接し、切欠き部11eが腸骨の膨らみを覆うように当接するように形成されているため、術者は、ベース部10を腸骨の設置位置に確実に設置できる。
次に、術者は、腸骨に設置されたベース部10の貫通孔13bにKワイヤを挿通し、腸骨にKワイヤを穿刺する(ステップS305)。腸骨に向けてKワイヤを穿刺する前に、手術用ドリル等を用いて貫通孔をガイドとして腸骨に下孔を空けておくことが望ましい。Kワイヤが貫通孔13bに挿通され、さらに腸骨に穿刺されると、ベース部10は、貫通孔13bを挿通しているKワイヤにより固定される。このため、術者は、ベース部10を腸骨に軽く押さえるだけで、ベース部10を腸骨の設置箇所に保持できる。
次に、術者は、腸骨からくり抜いた寛骨臼にピン2を穿刺する(ステップS306)。具体的には、術者は、図7(a)に示すように、くり抜いた寛骨臼を腸骨の元の位置に戻したとき、第1の軸部31と平行となるように、すなわち骨盤の座標系のX軸方向を向くように、寛骨臼にピン2を穿刺する。ピン2は、術者が指標部30に対する寛骨臼の傾きを把握するための指標を提供する。腸骨にKワイヤを穿刺する場合と同様に、寛骨臼にピン2を穿刺する前に、手術用ドリル等を用いて寛骨臼に下孔を空けておくことが望ましい。
次に、術者は、ピン2が固定された寛骨臼を寛骨臼のくり抜きにより腸骨に形成された空間に戻し、指標部30に対する寛骨臼に固定されたピン2の傾きを確認しながら、腸骨に対する寛骨臼の傾きが術前計画どおりとなるように寛骨臼を位置決めする(ステップS307)。指標部30はX軸、Y軸、Z軸からなる骨盤の座標系を指標として術者に提供するため、術者は指標部30を確認することで腸骨の傾きを客観的に把握できる。このため、術者は、腸骨を基準にして寛骨臼をどの向きにどの程度傾けるべきか、術中であっても容易に判断できる。
ステップS307に関連して、手術支援システム及びタブレット端末にインストールされた分度器アプリを用いて、腸骨に対して寛骨臼を位置決めする具体的な方法について説明する。
まず、術者は、タブレット端末にインストールされた分度器アプリを起動する。分度器アプリは、タブレット端末の表示部にカメラの撮影画像と共に分度器の画像を重畳させることにより、ユーザによる撮影対象物の角度の測定を可能にするアプリケーションソフトウェアである。次いで、術者は、タブレット端末の表示部を確認しながら、図7(a)に示すように、タブレット端末のカメラが骨盤の座標系のY軸方向、すなわち第2の軸部32の長軸方向を撮影するようにタブレット端末の姿勢を調整する。そして、術者は、分度器アプリを起動したタブレット端末の表示部を確認しながら、図7(b)に示すように、骨盤の座標系のX軸方向に延びる第1の軸部31に対するピン2の角度が術前計画どおり角度θyとなるように、骨盤の座標系のY軸周りに寛骨臼を回転させる。
同様にして、術者は、タブレット端末の表示部を確認しながら、タブレット端末のカメラが下肢側から骨盤の座標系のZ軸方向、すなわち第3の軸部33の長軸方向を撮影するようにタブレット端末の姿勢を調整する。次いで、術者は、分度器アプリを起動したタブレット端末の表示部を確認しながら、第1の軸部31に対するピン2の角度が術前計画どおりの角度となるように、骨盤の座標系のZ軸周りに寛骨臼を回転させる。
このようにして、術者は、指標部30に対するピン2の傾きを確認することにより、腸骨に対して寛骨臼を術前計画どおりに位置決めできる。
再び図11に戻り、術者は、腸骨に術前計画どおりに位置決めされた寛骨臼を固定する(ステップS308)。具体的には、術者は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸(PGA(Polyglycolic Acid))のような生体吸収性ポリマーで形成されたスクリューを用いて寛骨臼を腸骨に固定する。
最後に、術者は、大腿部の切開部を縫合する(ステップS309)。これにより手術支援器具1を用いた寛骨臼回転骨切り術に係る一連の処置が終了する。
次に、寛骨臼回転骨切り術における腸骨に対する寛骨臼の適切な位置決めに本発明の手術支援器具1がどの程度寄与しているかを、以下に示す方法を用いて検証した。
本実施例では、12名の寛骨臼形成不全の患者について寛骨臼回転骨切り術を実施し、骨盤の座標系のX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのそれぞれについて、術後の寛骨臼の角度が術前計画の角度からどの程度ずれているかを測定した。12名の患者のうち6名の患者については、手術支援器具1を使用して寛骨臼回転骨切り術を実施し、他の6名の患者については、手術支援器具1を使用せずに寛骨臼回転骨切り術を行った。以下、本実施例において前者を「使用群」、後者を「非使用群」と称する。
図1に示す骨盤の座標系のX軸周り、Y軸周り、Z軸周りについて、術後の寛骨臼の角度が術前計画の角度からどの程度ずれているかは、以下のように測定した。すなわち、患者に対して寛骨臼回転骨切り術を実施した後、術後1−2週で骨盤のCT撮影を行い、撮影したCT画像を3次元構築した。この3次元構築画像を術前の3次元構築画像と重ね合わせ、骨盤の座標系のX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのそれぞれについて寛骨臼の角度を測定した。そして、X軸周り、Y軸周り、Z軸周りの寛骨臼の術後の角度と、術前計画の角度との差分を計算した。これらの手順を12名の患者ごとに繰り返して、患者ごとに寛骨臼に関する角度の差分を算出した。
本実施例の結果を図12のグラフに示す。(a)はX軸周り、(b)はY軸周り、(c)はZ軸周りの角度のずれを示す。図12のグラフにおける棒グラフは、未使用群、使用群ごとの角度のずれの平均値を示す。また、棒グラフに重ねて表示されるバーは、未使用群、使用群ごとの角度のずれの分布を示す。
使用群は、未使用群と比較してX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのいずれについても、角度のずれの平均値が小さい。また、使用群は、未使用群と比較してX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのいずれについても、角度のずれの最大値が小さい。このことは、寛骨臼回転骨切り術において手術支援器具1を用いることにより、寛骨臼の角度のずれを効果的に抑制できることを示している。
とりわけ、図12(c)に示すように、Z軸周りの角度のずれは、未使用群の場合、平均15°程度であるのに対し、使用群の場合、平均5°以下である。このことは、寛骨臼回転骨切り術において本発明の手術支援器具1を用いることにより、Z軸周りの角度のずれを大幅に抑制できることを示している。骨盤の座標系のZ軸は、概ね脊椎が延びる方向を向いているため、術者にとってZ軸周りの角度は確認しづらいと推察される。寛骨臼回転骨切り術においては、手術支援器具1を用いることにより骨盤の座標系のZ軸周りの角度を容易に把握できる。
本実施例から理解できるように、手術支援器具1を用いて寛骨臼回転骨切り術を実施することにより、従来の術式を採用したとしても腸骨に対する寛骨臼の正確な位置決めを実現でき、とりわけ骨盤の座標系におけるZ軸方向の角度のずれを効果的に抑制できる。
以上説明したとおり、実施の形態1に係る手術支援器具1は、患部から離れた位置に骨盤の座標系を把握するための指標を術者に提供する指標部30を備えている。このため、既存の手技に変更を加えることなく、寛骨臼回転骨切り術において腸骨に対する寛骨臼の適切な位置決めを実現できる。
実施の形態1に係る手術支援器具1は、ベース部10、軸部20、指標部30からなる単純な構成であるため、安価なコストで製造できる。また、実施の形態1に係る手術支援器具1は、指標部30が腸骨の寛骨臼から離れた部分に設置されるよう構成されるため、術者の手技の邪魔になることがなく、既存の手技に影響を及ぼすものでない。このように実施の形態1に係る手術支援器具1は、各医療機関において心理的、経済的負担を伴うことなく容易に導入できる。
実施の形態1に係る手術支援器具1は、腸骨の設置部分の表面形状に合致するように形成された当接部11aを有するベース部10を備えている。このため、術者は、ベース部10を腸骨の設置部分に正確に位置決めすることができ、指標部30は骨盤の座標系に関する正確な指標を術者に提供できる。
実施の形態1に係る手術支援アセンブリは、手術支援器具1と、構成の単純なピン2との組み合わせから構成されている。このため、実施の形態1に係る手術支援アセンブリは、大腿部の切開部に配置されたときの占有空間を最小限に留めることができ、術者の手技の邪魔にならない。
実施の形態1に係る手術支援器具1の作成装置、手術支援器具1の作成方法、及びプログラムは、骨盤の3次元画像データを取得し、骨盤の3次元画像データに基づいてベース部10を設置する腸骨の設置部分を特定し、腸骨の設置部分の形状に合致するようにベース部10の形状を決定している。このため、実施の形態1に係る手術支援器具1の作成装置、手術支援器具1の作成方法、及びプログラムは、患者ごとの腸骨の表面形状に合致するようなベース部10の形状を容易に決定できる。
(実施の形態2)
図13を参照して、本発明の実施の形態2に係る手術支援器具1’について説明する。実施の形態1においては、ベース部10と軸部20は異なる部材として構成していたが、ベース部10、軸部20、及び指標部30は一体となるように構成してもよい。実施の形態2に係る手術支援器具1’の基本的な構成は、実施の形態1に係る手術支援器具1と同一であるが、ベース部10、軸部20、及び指標部30の全てを一体に形成している点で実施の形態1とは異なる。以下、両者の異なる部分を中心に説明する。
軸部20は、ベース部10の上面部11bに直接固定されており、上面部11bから直線状に延びている。ベース部10、軸部20、及び指標部30は、樹脂材料により形成された一体物である。手術支援器具1’は、例えば3Dプリンタを用いて患者ごとにオーダーメードで作成され、寛骨臼回転骨切り術で使用された後、再使用されることなく廃棄される。
以上説明したとおり、実施の形態2に係る手術支援器具1’は、ベース部10、軸部20、及び指標部30が樹脂材料により一体に形成されている。このため、実施の形態1に係る手術支援器具1とは異なり、手術前にベース部10と軸部20とを組み立てる必要がなく、再使用のための滅菌処理を施す必要もない。
(変形例)
上記実施の形態においては、ベース部10の本体部11の側面部11cから延出するストッパ11dを設けて、腸骨上でのベース部10の滑りを防止していたが、本発明はこれに限定されない。必ずしもベース部10にストッパ11dを設ける必要はなく、例えば、ベース部10の当接部11aの表面に微少な凹凸処理を施すことにより、腸骨上でのベース部10の滑りを防止してもよい。
上記実施の形態においては、ベース部10の開口部12bは貫通孔として構成されていたが、本発明はこれに限定されない。開口部12bは、軸部20の基端部22を収容可能であればよく、例えば、底部を有する開口として形成してもよい。
上記実施の形態においては、ベース部10の本体部11から突出する突出部12aに開口部12bを設けていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ベース部10の本体部11に直接、取付部12を構成する開口部12bを設けてもよい。この場合、ベース部10の本体部11の上面部11bの表面のうち開口部12bの周囲は平滑な同一平面とし、軸部20の肩部24が当接できるように構成する。
上記実施の形態においては、ワイヤ保持部13の突出部13aにKワイヤが挿通される貫通孔13bを設けていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ベース部10の本体部11に直接、Kワイヤが挿通される貫通孔13bを設けてもよい。
上記実施の形態においては、ベース部10に1つの貫通孔13bが設けられていたが、本発明はこれに限定されず、ベース部10に2つ以上の貫通孔13bが設けられていてもよい。ベース部10に設けられる複数の貫通孔13bは、同一方向に設けられていてもよく、互いに異なる向きに設けられていてもよい。複数の貫通孔13bを異なる向きに設けた場合、それぞれ貫通孔13bにKワイヤを挿通して骨に穿刺したとき、ベース部10を腸骨から外れることなく固定できる。
上記実施の形態においては、ベース部10は樹脂材料から形成されているが、本発明はこれに限定されない。ベース部10を形成する材料は、当接部11aとストッパ11dを患者の腸骨の表面形状に合致できさえすれば、いかなる材料であってもよく、例えば、セラミックや、チタン、チタン合金、ステンレスのような金属であってもよい。
上記実施の形態においては、軸部20は直線状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸部20は、手術台における患者の姿勢、ベース部10が腸骨に設置される部分などに応じて、基端部22と先端部23が互いに平行にずれているクランク形状となるように2つの湾曲部又は屈曲部を備えていてもよい。
上記実施の形態においては、基端部22及び開口部12bは、いずれも軸方向の断面が正方形に形成され、軸部20がベース部10に対して軸周りに回転するのを防止する回転防止手段を構成していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、基端部22及び開口部12bは、それぞれの軸方向の断面が正方形以外の多角形、星形であってもよい。さらに、基端部22及び開口部12bは、軸方向の断面形状以外の方法を用いて回転防止手段を構成してもよい。例えば、基端部22及び開口部12bの表面に微小な凹凸処理を施すことで回転防止手段を構成してもよい。
上記実施の形態においては、ベース部10の突出部12aと軸部20の基端部22には、取り付けを補助する目印、マーク等が設けられていないが、本発明はこれに限定されない。ベース部10の突出部12aと軸部20の基端部22は、開口部12bに基端部22を正しい向きに取り付けたときに互いに向かい合うようなマークを備えていてもよい。
上記実施の形態においては、軸部20の基端部22がベース部10の開口部12bから意図せずに抜け出ることを防止するために、基端部22の軸方向に垂直な断面は、開口部12bの軸方向に垂直な断面と同一かわずかに大きくなるように形成されているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、軸部20の基端部22にその周面を連続的に囲む円周状の凸部を設けると共に、ベース部10の開口部12bの内面を連続的に囲む円周状の凹部を設けておき、軸部20の基端部22を開口部12bに挿入して肩部24が突出部12aの上面に当接したとき、軸部20の基端部22の凸部がベース部10の開口部12bの凹部に係合するように構成してもよい。
また、軸部20の基端部22に径方向に弾性変形可能なツメ部を設けると共に、開口部12bに当該ツメ部を係止する凹状の係止部を設けておき、基端部22を開口部12bに挿入しているとき、ツメ部が開口部12bの周面により径方向に圧縮され、肩部24が突出部12aの上面に当接したとき、開口部12bの周面により圧縮されたツメ部が解放され、ツメ部が開口部12bの係止部にはまり込むよう構成してもよい。
上記実施の形態においては、指標部30は骨盤の直交座標系(ロール・ピッチ・ヨー角)を把握するための指標を術者に提供していたが、本発明はこれに限定されない。骨盤の傾きを術者が把握できさえすれば、指標部30はいかなる指標を術者に提供してもよく、例えば、オイラー角を用いた指標を術者に提供するように構成してもよい。
上記実施の形態においては、軸部20及び指標部30の寸法が規定されていたが、本発明はこれに限定されない。術者の手技の邪魔にならず、指標部30の確認が容易であれば、軸部20及び指標部30はいかなる寸法であってもよい。
上記実施の形態においては、軸部20及び指標部30のチタン又はチタン合金から形成されていたが、本発明はこれに限定されない。軸部20及び指標部30は、滅菌処理を施すことができさえすれば、いかなる材料から形成されてもよく、例えば、ステンレス、アルミナのような金属から形成されてもよい。
上記実施の形態においては、ベース部10の製造のために3Dプリンタを用いていたが、本発明はこれに限定されない。腸骨の表面形状に合致したベース部10の複雑な造形を実現できさえすれば、いかなる製造装置を採用してもよい。例えば、骨盤の3次元画像データに基づいてベース部10の型を作成し、当該型に光硬化性樹脂を流し込み、硬化させることで、ベース部10を製造してもよい。また、術中に露出された腸骨に型取り材を押し当て、ベース部10の型を作成し、この型を用いてベース部10を製造してもよい。
上記実施の形態においては、骨盤を撮影する撮影装置200としてCT、MRIを用いていたが、本発明はこれに限定されない。撮影装置200としては、最終的に骨の3次元モデルを作成可能な画像を撮影できる限り、いかなる撮影装置を用いてもよい。例えば、撮影装置200として、光学カメラ、X線撮影装置、超音波撮影装置などを用いてもよい。
上記実施の形態においては、設計装置100は記憶部150に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
上記実施の形態においては、画像データベース151、骨モデルデータベース152、形状特定データベース153は、設計装置100の内部に設けられた記憶部150に記憶されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像データベース151、骨モデルデータベース152、形状特定データベース153は、その全部又は一部がLAN(Local Area Network)等を介して外部のサーバ、コンピュータ等に記憶されてもよい。
上記実施の形態においては、タブレット端末にインストールされた分度器アプリを用いて指標部30に対するピン2の角度を測定することにより、腸骨に対する寛骨臼の傾きを位置決めしていたが、本発明はこれに限定されない。指標部30に対するピン2の角度を測定できさえすれば、いかなる測定手段を採用してもよい。例えば、分度器を用いて指標部30に対するピン2の角度を測定してもよい。
上記実施の形態においては、本発明の手術支援器具1、1’を患者に適用していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の手術支援器具1、1’を例えば、犬、猫、牛、馬のような動物に適用してもよい。
上記実施の形態においては、本発明の手術支援器具1、1’を寛骨臼回転骨切り術において用いる例を説明したが、本発明の手術支援器具1、1’は、処置対象の骨の傾きに関する指標を術者に提供するよう構成されているため、処置対象の骨の形状、術式等に依存せず、寛骨臼回転骨切り術の用途に限定されない。本発明の手術支援器具1、1’は、あらゆる整形外科的処置に適用することができ、例えば、大腿骨、脛骨の骨切り術等に用いることもできる。
なお、上記の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。