JP6777310B2 - チャンバーアレイの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チャンバーアレイの製造方法に関する。
近年、生物学、材料学その他の研究分野では、細胞、生体分子、その他の微小粒子等に生じる現象または反応を観察したり、所定のパラメータの測定を行ったりすることが一般的に行われている。そのような細胞、生体分子、その他の微小粒子等を観測したり、細胞、生体分子、その他の微小粒子等を反応させたりするための試料ホルダーとして、基板に複数の凹部(チャンバー)が形成されたチャンバーアレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、基板の上面にサブミクロンオーダーのチャンバーが複数形成されたマイクロチャンバーチップが開示されている。マイクロチャンバーチップは、例えばマイクロチャンバーの形状に対応する凸部を有する金型を用いて形成する方法、シリコーン樹脂などを用いて射出成型する方法、または、リソグラフィによる微細加工により熱可塑性樹脂等のポリマー、金属またはガラスなどからなる基板に凹部を直接加工する方法などにより形成される。
国際公開第2014/007191号
サブミクロンオーダーのチャンバーを有するチャンバーアレイの製造方法は、これまで多く提案されているが、高度な製造装置を必要としたり、危険な薬品を多用したり、予め専用の金型を用意しなければならない方法であり、簡便にチャンバーアレイを製造することができないという問題があった。そのため、上述した方法では、大面積で高密度のチャンバーアレイを簡便に得ることは難しかった。したがって、上述した方法で製造されたチャンバーアレイは、高価であり、入手することはできても日常的に使用することは難しいという問題があった。
上記課題に鑑み、本発明は、大面積で高密度のチャンバーアレイを簡便に製造することができるチャンバーアレイの製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様にかかるチャンバーアレイの製造方法は、基板上に複数のビーズを配置するビーズ配置工程と、前記基板および前記複数のビーズ上に液状の前記樹脂を配置し、硬化させるコンタクトインプリンティング工程と、硬化後の前記樹脂を前記基板から剥離する剥離工程と、前記基板から剥離した前記樹脂から前記複数のビーズを除去する除去工程とを含む。
これにより、高度な製造装置を必要としたり、危険な薬品を多用したり、予め専用の金型を用意する必要がないため、大面積で高密度のチャンバーアレイを簡便に製造することができる。
また、前記ビーズ配置工程において、前記複数のビーズを、それぞれ独立して前記基板上に配置させてもよい。
これにより、複数のビーズが塊となって基板上に配置されることがないので、複数のビーズそれぞれの大きさに対応したチャンバーを基板上に形成することができる。
また、前記基板は、基板表面に第1の官能基を有し、前記複数のビーズのそれぞれは、ビーズ表面に第2の官能基を有し、前記第1の官能基と前記第2の官能基とが化学架橋することにより、前記複数のビーズは前記基板上に配置されてもよい。
これにより、複数のビーズそれぞれの表面に配置された第2の官能基と基板表面の第1の官能基とが化学架橋するので、複数のビーズをそれぞれ独立して基板上に配置することができる。
また、前記除去工程において、前記樹脂および前記複数のビーズに超音波を印加することにより、前記複数のビーズを前記樹脂から除去してもよい。
これにより、超音波振動により、複数のビーズを樹脂から容易に剥離することができる。
また、前記除去工程において、有機溶剤により前記複数のビーズを前記樹脂から除去してもよい。
これにより、複数のビーズが有機溶剤に溶融する材料である場合、有機溶剤により複数のビーズを溶かして除去することができるので、樹脂に機械的な力を与えることなく複数のビーズを除去することができる。
また、前記第2の官能基は、アミノ基であってもよい。
また、前記第2の官能基は、カルボキシル基であってもよい。
また、前記樹脂は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)であってもよい。
本発明により、大面積で高密度のチャンバーアレイを簡便に製造することができるチャンバーアレイの製造方法を提供することができる。
実施の形態にかかるチャンバーアレイの外観を示す概略図 実施の形態にかかるチャンバーアレイの製造工程を示す概略図 実施の形態にかかるチャンバーアレイにおいてビーズの大きさを変更した場合のチャンバーアレイの形成状態を示す概略図 実施の形態にかかるチャンバーアレイに紫膜を形成した場合の外観図 実施の形態にかかるチャンバーアレイの形成状態を観測した観測図 実施の形態にかかるチャンバーアレイの形成状態を観測した観測図 実施の形態にかかるチャンバーアレイの形成状態を観測した観測図
以下、図面を用いて、本発明にかかる実施の形態について説明する。なお、図面において、同一の符号が付された構成要素は、同一または同種の構成要素を示す。
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の好ましい一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、接続形態、ステップおよびステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より望ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
(実施の形態)
[チャンバーアレイの構成]
はじめに、チャンバーアレイの構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態にかかるチャンバーアレイの外観を示す概略図である。
図1に示すように、チャンバーアレイ1は、板状の樹脂10で構成されている。樹脂10は、片面側に凹状に形成されたチャンバー12を複数有している。チャンバー12の直径および深さは、例えば50nm〜数μm程度である。
ここで、チャンバーとは、細胞、分子または微小粒子等を収容することができる凹状の穴をいう。チャンバーアレイは、複数のチャンバーが形成された板状の試料ホルダーのことをいう。チャンバーアレイ1は、例えば、チャンバー12内に複数の細胞、生体分子または微小粒子等を収容して観測するために用いられる。また、チャンバー12内に複数の細胞・分子または微小粒子等を収容した後、チャンバー12の開口を塞ぐようにチャンバーアレイ1の表面に保護膜が設けられてもよい。
[チャンバーアレイの製造方法]
次に、チャンバーアレイの製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態にかかるチャンバーアレイの製造工程を示す概略図である。
はじめに、図2の(a)に示すように、基板20を用意する。基板20は、例えばガラス基板である。基板20は、洗浄等を行うことにより基板表面を清浄にしておくことが好ましい。
次に、図2の(b)に示すように、基板20の上に、ビーズ22を配置する。
ビーズ22は、直径が50nm〜数μm程度の球状の物体であり、例えば直径100nmの球状のシリカで構成されている。ビーズ22は、表面に、官能基としてアミノ基を有している。なお、本実施の形態において、ビーズ22の表面に修飾されたアミノ基は第2の官能基に相当する。
なお、ビーズ22は、シリカに限らず、ポリスチレン、ガラスなど他の材料で構成されていてもよい。また、ビーズ22の表面に設けられた官能基は、アミノ基に限らずカルボキシル基、ヒドロキシル基など他の官能基であってもよいし、単一の官能基に限らず複数の官能基であってもよい。また、複数のビーズ22を単一の材料で構成してもよいし、異なる材料で構成される複数のビーズを混合したものであってもよい。さらに、ビーズ22の大きさは、直径100nmに限らず、200nm、500nm、1μmなど適宜変更してもよい。また、基板20上に配置されるビーズ22は、複数のビーズ22について均一の大きさであってもよいし、異なる大きさの複数のビーズ22を混合して使用してもよい。
ビーズ22の基板20への配置は、所定の溶液中で行われる。所定の溶液としては、例えばシランを含む化学架橋剤(シランカップリング剤)を水に溶解したシラン水溶液を用いる。当該化学科溶剤は、アミノ基を有している。
はじめに、基板20をシラン水溶液中に浸漬させる。基板20の表面にはヒドロキシル基が露出しているため、アミノ基を有するシランカップリング剤がヒドロキシル基に結合する。これにより、基板20の表面にはアミノ基が露出する。
続けて、アミノ基が露出した基板20の表面に、バイファンクショナルな、すなわち2つの反応基を有する化学架橋剤を塗布する。バイファンクショナルな化学架橋剤として、例えばグルタルアルデヒドを用いる。グルタルアルデヒドは、2つのアルデヒド基を有している。グルタルアルデヒドの2つのアルデヒド基のうち、一方のアルデヒド基は基板側のアミノ基と反応し、他方のアルデヒド基は基板20の表面から露出する。これにより、基板20の表面には、官能基としてアルデヒド基が修飾されたこととなる。これにより、基板20の表面は、樹脂との濡れ性が高い、または樹脂と反応性のある表面となる。なお、本実施の形態において、基板20の表面に修飾されたアルデヒド基は第1の官能基に相当する。
続けて、アミノ基を有するビーズ22をシラン水溶液中に撒くことにより、基板20の表面に露出したアルデヒド基に、ビーズ22の表面に存在するアミノ基を反応させる。ビーズ22の表面に存在するアミノ基は、基板20の表面に存在するアルデヒド基と化学架橋を生じる。これにより、複数のビーズ22は、それぞれ独立して基板20の表面に配置される(ビーズ配置工程)。このとき、ビーズ22は、ほぼ均一に基板20の表面に配置される。
なお、化学架橋剤は、グルタルアルデヒドに限らず他の化学架橋剤であってもよい。例えば、化学架橋剤としてN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)基を有するビーズを使えば、アミノシランが露出した基板20の上に、直接化学架橋を行うことができる。この場合、SH基(スルフヒドリル基)を有するシランとマレイミド基を有するビーズとを反応させるとしてもよい。
なお、ビーズ22を溶液中に撒いてからの時間が経過するほどビーズ22は溶液中に分散するので、ビーズ22をより高密度で均一に基板20の表面に配置することができる。
次に、図2の(c)に示すように、基板20のビーズ22が配置された側の面に、ビーズ22を覆うように液状の樹脂10aを塗布する。これにより、後に詳述するように硬化された樹脂10には、ビーズ22の形状を有する凹部であるチャンバー12が形成される。樹脂10は、例えば熱硬化性樹脂であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いる。なお、樹脂10は、PDMSに限らず、アクリル樹脂(PMMA)、ポリメチルメタクリエイトなど他の材料であってもよい。また、樹脂10は、熱硬化性を有する樹脂に限らず、紫外線硬化性を有する樹脂など、他の硬化特性を持つ樹脂であってもよい。樹脂10が紫外線硬化性を有する樹脂で構成されている場合、基板20が熱に弱い材料で構成されている場合でも基板20上に配置された液状の樹脂10aを硬化することができる。
その後、液状の樹脂10aが塗布された基板20を加熱することにより、液状の樹脂10aを硬化する(コンタクトインプリンティング工程)。液状の樹脂10aの硬化は、例えば90以上100℃の空気雰囲気中で30分加熱することにより行う。なお、室温で48時間程度放置することにより硬化してもよい。硬化後の樹脂10の厚さは、例えば1mm程度である。なお、樹脂10の厚さは、1mm以下であってもよい。
次に、図2の(d)に示すように、硬化後の樹脂10を基板20から剥離させる(剥離工程)。樹脂10の基板20の剥離は、例えば、樹脂10をピンセット等で挟持しながら、剥離させることにより行う。なお、基板20をピンセット等で挟持しながら樹脂10から剥離させてもよい。
このとき、基板20上に配置されていたビーズ22は、樹脂10側または基板20側に密着している。特に、樹脂10側では、ビーズ22はチャンバー12内に残ったままとなる。そこで、次に、チャンバー12内に残ったビーズ22を、樹脂10から除去する(除去工程)。例えば、樹脂10を水中に配置して樹脂10に超音波振動を印加することにより、ビーズ22を樹脂10から剥離させる。これにより、図2の(e)に示すように、樹脂10に形成されたチャンバー12内は空洞となり、チャンバー12が形成された樹脂10を、計測試料などを収容するチャンバーアレイ1として使用することができる。完成したチャンバーアレイ1の大きさは、例えば、22mm×36mm×1mmである。
また、基板20については、樹脂10と同様、基板20を水中に配置して超音波振動を印加することによりビーズ22を除去してもよいし、ビーズ22を基板20から除去しないこととしてもよい。ビーズ22を基板20から除去した場合には、基板20は次のチャンバーアレイの製造時に再度基板として利用することができる。
なお、樹脂10からビーズ22を除去する方法は、上記したように超音波振動を用いる方法に限らず他の方法であってもよい。例えば、ビーズ22がポリスチレンで構成されている場合には、有機溶剤によりビーズ22を溶かすことにより除去してもよい。有機溶剤として、例えばアセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエンなどを用いてもよい。
上述した方法により形成されたチャンバーアレイ1の形成状態について、以下SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscopy)およびAFM(原子間力顕微鏡:Atomic Force Microscopy)を用いて観測を行った。図3は、本実施の形態にかかるチャンバーアレイ1においてビーズ22の大きさを変更した場合のチャンバーアレイ1の形成状態を示す概略図である。図3において、(a)は基板20上にビーズ22を配置したときにSEM観測像、(b)はチャンバー12が形成された側の樹脂10の表面のSEM観測像、(c)はチャンバー12が形成された側の樹脂10の表面のAFM観測像である。各図に示す観測領域は、3μm×3μmである。
ここでは、図3の(a)に示すように、ビーズ22の大きさを100nm、200nm、500nm、1μmと変更した場合のチャンバーアレイ1について示している。なお、ビーズ22の直径が100nmおよび200nmの場合については、チャンバーアレイ1がチャージアップしたため、SEMによる観測像は得られなかった。また、ビーズ22の直径が1μmの場合については、樹脂10の表面とチャンバー12の内部との凹凸差が大きいためAFMによる観測像は得られなかった。
図3の(a)に示すように、ビーズ22の大きさが小さい場合の方が、単位面積当たりに分散されるビーズ22の密度は大きく、均一に分散されることがわかる。これにより、図3の(c)に示すように、ビーズ22の大きさが小さい場合の方が、単位面積当たりに形成されるチャンバー12の密度も大きく、均一に分散して形成されていることがわかる。
具体的には、図3の(a)および(c)に示すように、例えば、ビーズ22の直径が200nmのときよりも、ビーズ22の直径が100nmの時の方が、単位面積当たりに分散されるビーズ22の密度は大きく、均一に分散されていることがわかる。その結果、ビーズ22の大きさが小さい場合の方が、単位面積当たりに形成されるチャンバー12の密度も大きく、均一に分散して形成されている。
また、この製造方法であれば、基板20の大きさは製造装置等の大きさにより限定されないので、大面積で高密度のチャンバーアレイ1を製造することができる。
以上より、上述した製造方法により、直径が0.1μm以上1.0μm以下程度の大きさのチャンバー12を有するチャンバーアレイ1を形成することができることが確認できた。また、AFMを用いた観測を行う場合には、計測試料を保持する試料ホルダーとして、直径が0.1μm以上0.5μm以下程度の大きさのチャンバー12が形成されたチャンバーアレイ1を用いることができることがわかった。SEMを用いた観測を行う場合には、計測試料を保持する試料ホルダーとして、直径が0.5μm以上1.0μm以下程度の大きさのチャンバー12が形成されたチャンバーアレイ1を用いることができることがわかった。
なお、チャンバーアレイ1の使用方法として、チャンバー12の中に試料を収納した後、チャンバーアレイ1の上に生体膜を形成して実験等を行う場合がある。したがって、チャンバーアレイ1の上に生体膜を形成しても、生体膜の下のチャンバー12内には空洞が保たれていることが必要である。そこで、以下のように、チャンバーアレイ1の上に生体膜を形成した場合であっても、チャンバー12内に空洞が保たれていることを確認した。
[チャンバーアレイ上に生体膜を形成した場合のチャンバーの観測]
以下に、チャンバーアレイ1の上に生体膜を形成した場合のチャンバーの観測について説明する。ここでは、チャンバーアレイ1の上に、生体膜である紫膜を形成し、生体膜の下に配置されたチャンバー12を観測することができるかどうか、つまり、チャンバー12内に空洞が保たれているかどうかについて確認を行った。
図4は、本実施の形態にかかるチャンバーアレイ1を構成する樹脂10の上に紫膜を形成した場合の外観図である。図4に示すように、チャンバーアレイ1において、複数のチャンバー12が形成された樹脂10の、チャンバー12の開口が形成された側の面の上には、チャンバー12の開口を塞ぐように生体膜30が形成されている。チャンバー12の直径は、100nmである。
生体膜30は、例えばバクテリオドロプシンというタンパク質が組み込まれた紫膜であり、所定の試薬を輸送するチャンネル機能を有する生体膜である。生体膜30が形成されたチャンバーアレイ1は、例えば、チャンバー12内に輸送したい分子を有する試薬を収容し、所定の条件の場合に生体膜30を介してチャンバーアレイ1と反対側に試薬が輸送される構成である。
このように、生体膜30が形成されたチャンバーアレイ1について、AFMにより、探針で紫膜を剥がしながらチャンバー12の観測を行った。
図5A〜図5Cは、実施の形態にかかるチャンバーアレイ1の形成状態を観測した観測図である。
図5Aでは、図5Aの(a)に示すように、チャンバーアレイ1の表面の一部が他の部分よりも高さが高いという結果が観測されている。図5Aの(b)に示すように、0nm以上250nm以下程度までの領域ではチャンバーアレイ1の表面の高さは一定であり、250nm以上300nm以下程度までの領域ではチャンバーアレイ1の表面の高さは、0nm以上250nm以下程度までの領域よりも低くなっている。これは、0nm以上250nm以下程度までの領域では樹脂10の上に生体膜30が形成されており、250nm以上300nm以下程度までの領域では樹脂10の上に生体膜30は形成されておらず樹脂10がむき出しとなっていることを示している。
この状態から、AFMの探針により生体膜30に圧力を加えながら探針の走査を行う。探針の走査により、チャンバーアレイ1では生体膜30が徐々に剥離され、チャンバーアレイ1の表面の高さは低くなる。したがって、図5Bの(a)および(b)に示すように、チャンバーアレイ1の0nm以上250nm以下程度までの領域での表面の高さは、図5Aに示した場合よりも低く観測されている。また、180nm程度の位置では、他の領域よりもチャンバーアレイ1の表面の高さが低い領域が観測されている。つまり、AFMの探針により生体膜30が徐々に剥離された結果、生体膜30の厚さが薄くなり、生体膜30の下に存在するチャンバー12の凹部に合わせて撓むことにより生体膜30の高さが低くなっているといえる。したがって、チャンバー12には空洞が存在しているといえる。
なお、250nm以上300nm以下程度までの領域では樹脂10の上に生体膜30は形成されておらず樹脂10がむき出しとなっている。したがって、250nm以上300nm以下程度までの領域ではチャンバーアレイ1の表面の高さは、図5Aの(a)および(b)に示した高さから変化していない。
さらに、AFMの探針により生体膜30に圧力を加えながら探針の走査を行うと、生体膜30はさらに剥離され、生体膜30の厚さはさらに薄くなり樹脂10上から完全に除去される。これにより、チャンバー12は樹脂10の表面にむき出しになるので、樹脂10の表面の高さとチャンバー12との高さの差がより明確に表れる。ここで、図5Cの(a)および(b)をみると、120nm程度の位置では、チャンバーアレイ1の表面の高さが他の領域よりも低く、また、他の領域では、チャンバーアレイ1の高さはほぼ一定となっている。これにより、樹脂10にはチャンバー12が形成されており、樹脂10の表面上に生体膜30が形成された場合であっても、チャンバー12の内部は空洞に保たれていることがわかる。したがって、このようなチャンバーアレイ1は、チャンバー12内に観測試料を収容して生体膜30により封止して観測を行う場合にも使用することができる。
[効果等]
以上、本実施の形態にかかるチャンバーアレイの製造方法によると、大面積で高密度のチャンバーアレイ1を製造することができる。
(変形例)
なお、上述した実施の形態では、基板20としてガラス基板を用い、基板20の表面に第1の官能基としてアルデヒド基を生成したが、第1の官能基はアルデヒド基に限らず、例えばカルボキシル基であってもよい。
この場合、第1の官能基とビーズ22の官能基とを化学架橋させる前に、基板20に以下のような処理を行う。
はじめに、官能基としてヒドロキシル基を有する基板20の表面に、カルボキシルシラン水溶液を塗布する。そして、カルボキシルシラン水溶液が塗布された基板20を水洗し、カルボキシルシラン水溶液を洗い流す。これにより、基板20は、表面にカルボキシル基を有する。その後、上述した実施の形態に示したのと同様、基板20の官能基とビーズ22の官能基とを化学架橋させる。これにより、ビーズ22を基板20の表面に配置することができる。
また、第1の官能基は、例えばアミノ基であってもよい。この場合、はじめに、官能基としてヒドロキシル基を有する基板20の表面に、アミノシラン水溶液を塗布する。そして、アミノシラン水溶液が塗布された基板20を水洗し、アミノシラン水溶液を洗い流す。これにより、基板20は、表面にアミノ基を有する。その後、上述した実施の形態に示したのと同様、基板20の官能基とビーズ22の官能基とを化学架橋させる。これにより、ビーズ22を基板20の表面に配置することができる。
(その他の実施の形態)
以上、本発明にかかるチャンバーアレイの製造方法およびチャンバーアレイについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。実施の形態に対して当業者が思いつく変形を施して得られる形態、および、複数の実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される別の形態も本発明に含まれる。
例えば、上述した実施の形態では、チャンバーアレイを構成する基板をガラス基板としたが、ガラス基板に限らず、シリカ、ポリスチレン、金属など他の材料で構成されていてもよい。金属の場合には、特に、金を用いることで基板表面を原子レベルの平坦面とすることができるので、基板表面をSH基で修飾することができる。
また、上述した実施の形態では、ビーズを構成する材料としてシリカを用いたが、ビーズは、シリカに限らず、ポリスチレン、ガラスなど他の材料で構成されていてもよい。また、複数のビーズを単一の材料で構成してもよいし、異なる材料で構成される複数のビーズを混合したものであってもよい。
また、基板の表面に設けられた官能基は、上述したヒドロキシル基に限らず、カルボキシル基、アミノ基、SH基、エポキシ基など他の官能基であってもよいし、単一の官能基に限らず複数の官能基であってもよい。同様に、ビーズの表面に設けられた官能基は、アミノ基に限らずカルボキシル基、ヒドロキシル基、SH基、エポキシ基など他の官能基であってもよいし、単一の官能基に限らず複数の官能基であってもよい。
さらに、ビーズの大きさおよび形状は、上述した大きさおよび形状に限らず、適宜変更してもよい。また、基板上に配置される複数のビーズは、均一の大きさであってもよいし、異なる大きさの複数のビーズを混合して使用してもよい。
また、樹脂は、上述したPDMSに限らず、PMMA、ポリメチルメタクリエイトなど他の材料であってもよい。また、樹脂は、熱硬化性を有する樹脂に限らず、紫外線硬化性を有する樹脂など、他の硬化特性を持つ樹脂であってもよい。
また、化学架橋剤は、上述したようにシランを含む化学架橋剤であってもよいし、他の化学架橋剤であってもよい。
本発明にかかるプローブ走査機構は、プローブを試料に対して走査することにより、試料表面の物理情報または試料の化学的性質を信号として取得する走査型のプローブ顕微鏡に有用である。
1 チャンバーアレイ
10 樹脂
10a 液状の樹脂
12 チャンバー
20 基板
22 ビーズ
30 生体膜

Claims (8)

  1. 樹脂に複数のチャンバーが形成されたチャンバーアレイの製造方法であって、
    基板上に複数のビーズを配置するビーズ配置工程と、
    前記基板および前記複数のビーズ上に液状の前記樹脂を配置し、硬化させるコンタクトインプリンティング工程と、
    硬化後の前記樹脂を前記基板から剥離する剥離工程と、
    前記基板から剥離した前記樹脂から前記複数のビーズを除去する除去工程とを含む
    チャンバーアレイの製造方法。
  2. 前記ビーズ配置工程において、
    前記複数のビーズを、それぞれ独立して前記基板上に配置させる
    請求項1に記載のチャンバーアレイの製造方法。
  3. 前記基板は、基板表面に第1の官能基を有し、
    前記複数のビーズのそれぞれは、ビーズ表面に第2の官能基を有し、
    前記第1の官能基と前記第2の官能基とが化学架橋することにより、前記複数のビーズは前記基板上に配置される
    請求項2に記載のチャンバーアレイの製造方法。
  4. 前記除去工程において、
    前記樹脂および前記複数のビーズに超音波を印加することにより、前記複数のビーズを前記樹脂から除去する
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のチャンバーアレイの製造方法。
  5. 前記除去工程において、
    有機溶剤により前記複数のビーズを前記樹脂から除去する
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のチャンバーアレイの製造方法。
  6. 前記第2の官能基は、アミノ基である
    請求項3に記載のチャンバーアレイの製造方法。
  7. 前記第2の官能基は、カルボキシル基である
    請求項3に記載のチャンバーアレイの製造方法。
  8. 前記樹脂は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である
    請求項1〜7のいずれか1項に記載のチャンバーアレイの製造方法。
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