JP6769979B2 - マイクロrnaに基づく前立腺がん患者の予後評価方法 - Google Patents

マイクロrnaに基づく前立腺がん患者の予後評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、前立腺組織に存在する数個の特徴的なマイクロRNAバイオマーカーのレベルを測定することで処置(たとえば、積極的監視、手術、放射線照射)を決定するために前立腺がんの悪性度(予後)を診断時(または診断後)に予測することに関する。
前立腺がんは男性のがんでは最も多く診断されており、西洋諸国のがん関連死亡率の主な原因の第5位である(1)。前立腺がんは、一般に血清中の前立腺特異抗原(PSA)レベルの上昇に続いて針生検による組織病理学的検査に基づき、診断される。
しかし、前立腺がんの検出にPSAを利用すると偽陽性率が高くなり、低悪性度の腫瘍と高悪性度の腫瘍を十分に区別できない。この数十年の間、PSA試験やPSAに基づく検診の利用が増えた結果、前立腺がんのダウンステージングだけでなく発生率も上昇させている。
しかし、PSAも現在利用できる他の予後指標(主に、陽性生検体の数、臨床上のTNM病期分類およびグリーソンスコア)も、緊急に処置が必要な悪性度の高い前立腺がん患者を正確に予測できない。このことは著しい過剰処置につながり、多くの患者は不必要な根治的前立腺切除(RP)や放射線治療を受けているが、それによる副作用は非致死性の前立腺がんを処置せずに生きるよりも苦しいものである。
したがって、前立腺がんの診断には、積極的監視によって安全に管理できる低悪性度のがんと、早期介入が有益になる高悪性度のがんを正確に区別することによって予後の評価を改善できる方法を開発するという未達成の深刻な需要がある。
新たに出てきた、前立腺がんに関する新種の有望なバイオマーカーはマイクロRNAである。
マイクロRNAは、哺乳類などの多様な生物で遺伝子発現を転写後レベルで制御するある種の内在性の小さな非コード調節RNA(約22nt)を含む(2)。マイクロRNAは、RNAポリメラーゼIIによって、不完全に対形成された長いステムループ状の一次マイクロRNA転写物(pri−microRNA)として転写され、さらに核内のRNaseIIIエンドヌクレアーゼDroshaによるプロセシングを受けてヘアピン状の前駆体マイクロRNA(pre−microRNA)になる(3)。Exportin−5−Ran−GTPによって細胞質へと排出された後、pre−microRNAは別のRNaseIIIエンドヌクレアーゼDicerによって切断され、成熟マイクロRNAの二本鎖(約22nt)になる(3)。成熟マイクロRNAはマイクロRNA誘導サイレンシング複合体(miRISC)に取り込まれてその機能を媒介する。マイクロRNAは、この複合体を完全またはほぼ完全に相補的な標的mRNAへと誘導し、翻訳阻害またはmRNA分解をもたらす(4)。
マイクロRNAは遺伝子制御分子の中で最も豊富な種類の1つで、miRBase(バージョン21)の最新の公開内容には2588個の成熟ヒトマイクロRNA(1881個は前駆体)が含まれる(http://www.mirbase.org/)(5)。これらのマイクロRNAは全体ですべてのヒトmRNAの最大3分の2を制御すると推定されている。その結果、マイクロRNAは、細胞の分化、細胞周期の進行およびアポトーシスなど細胞内の多くの過程に影響し、マイクロRNAの制御解除はがんなどのヒトの疾患に関与する場合が多い(6)。さらに、いくつかのマイクロRNAは細胞型で疾患に特異的と考えられ、制御解除されたマイクロRNAの発現はがんの発症と進行の両方に関与するとされている(7)。したがって、がんの早期診断のための新規なバイオマーカーを得る有望な情報源となる可能性があるとしてマイクロRNA発現の異常が研究されている(7)。さらに、マイクロRNAは、マイクロRNAを利用したがん治療標的として使用できる可能性がある(8)。いくつかのマイクロRNAプロファイリング研究では、前立腺がんの発症および/または進行でもマイクロRNAの発現異常が報告されている(9)。しかし、これまでに発表されている前立腺がんでのマイクロRNAバイオマーカー研究の大部分は、患者試料の数が比較的少なく、同定されたマイクロRNA候補のバイオマーカー能力を確認するには厳密な独立した臨床検証が不十分である。
重要なことに、発明者らの知る限り、前立腺がんの再発リスクを予測できるマイクロRNAバイオマーカーに基づく予後予測方法は見出されていない。
ここで、発明者らは最も豊富なマイクロRNAのうち750個を超えるマイクロRNAのmiRnomeプロファイリングを行い、根治的前立腺切除(RP)後に生化学的再発(BCR)があった患者となかった患者の前立腺腫瘍組織のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料で、有意な制御異常が見られたマイクロRNAを確認した。コホート1では5個の予後分類因子を同定し、再発(前立腺切除(根治的前立腺切除(RP))後の生化学的再発(PSA)としてモニタリングした)までの時間の予測因子としてのそれらの予後予測精度を評価した(実施例1)。次に、根治的前立腺切除を受けた2つの独立したコホート(コホート2およびコホート3)でそれらの分類因子の予後予測精度を検証した(実施例2〜6)。コホート3の前立腺腫瘍試料は異なる国籍(米国)のもので、異なる方法(スナップ凍結)で採取され、異なるRNA抽出手順に供され、異なるマイクロRNA発現検出プラットフォームで分析され、コホートの特徴が異なっていた(コホート3はコホート1および2よりも全体的に悪性度が低く、再発の事象が少なかった)にもかかわらず、発明者らによるマイクロRNA予後分類因子のうち4個はこの外部コホートでも同等に良好に機能し、これらの分類因子が確実であることを強調している。
5個のマイクロRNA分類因子はいずれも、RP後のBCRまでの時間の予測に関して、通常の臨床病理学的変数に比べて有意な独立した予後予測値を示した。
前立腺特異抗原(PSA)法は、偽陰性率が高く、臨床的に低悪性度の腫瘍と高悪性度の腫瘍を十分に区別できないため、単独使用または既存のマーカーと併用できる新規な前立腺がんマーカーが必要である。本発明は一連のマーカーと、それらを予後(腫瘍の悪性度/再発リスク)の評価に使用する方法を提供する。
したがって、第一の側面では、本発明は前立腺がんの予後を生体外で予測する方法に関する。この方法は、前立腺がん患者の生検体から採取した細胞のRNA試料でmiR−106a−5p、miR−10b−5p、miR−133a−3p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−374b−5p、miR−615−3p、およびmiR−625−3pの13個からなるmiR群から選択される少なくとも2個のmiRの発現レベルを測定することを含む。ここで、基準発現プロファイルと比較した前記少なくとも2個のmiRの発現レベルの変化は前記患者の予後を示す。
本発明の第二の側面は前立腺がんの予後を生体外で評価するためのキットに関する。
本発明の第三の側面は、前立腺がんの処置を必要とする患者を処置するための方法に関する。この方法は、第一の側面の生体外での方法を実施することと、予後について患者を特性評価することと、この情報に基づき患者に適切な治療を選択することを含む。当然ながら、予後は患者のさらなる処置を計画するときに考慮すべき重要な因子である。というのも、予後評価が非常に悪いのであればストレスと苦痛を伴う方法は避けられると思われるからである。
図1は、2つの独立したコホートから得た根治的前立腺切除(RP)試料で8個のmiRNAからなる予後分類因子(表4)に基づき無再発生存(RFS)のカプラン・マイヤー生存分析を行った結果を示す。訓練コホート1(A)の患者をROC分析後に低リスク群と高リスク群に分けた。コホート1で定義されたカットオフ値(割合)に従い検証コホート3(B)の患者を低リスク群と高リスク群に分けた。両側ログランク検定では有意なp値が得られる。8個のmiRNAからなる予後分類因子によって定義される分子的リスクの高い状態はRP後の早期の生化学的再発と有意に関連していた。
図2は、3つの独立したコホートから得た根治的前立腺切除(RP)試料で上記8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子(miR−185−5p+miR−221−3p+miR−152−3p、表5)に基づき無再発生存(RFS)のカプラン・マイヤー生存分析を行った結果を示す。訓練コホート1(A)の患者をROC分析後に低リスク群と高リスク群に分けた。コホート1で定義されたカットオフ値(割合)に従い検証コホート2(B)の患者を低リスク群と高リスク群に分けた。これを外部検証コホート3にも同様に行った(Taylor et al.;およびHieronymus et al.;B)。両側ログランク検定では有意なp値が得られる。8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子によって定義される分子的リスクの高い状態は、3つの独立したコホートのRP後の早期の生化学的再発と有意に関連していた。
図3は、3つの独立したコホートから得た根治的前立腺切除(RP)試料で3個のmiRNAからなる予後分類因子(miR−185−5p+miR−221−3p+miR−326、表6)に基づき無再発生存(RFS)のカプラン・マイヤー生存分析を行った結果を示す。訓練コホート1(A)の患者をROC分析の後に低リスク群と高リスク群に分けた。コホート1で定義されたカットオフ値(割合)に従い検証コホート2(B)の患者を低リスク群と高リスク群に分けた。これを外部検証コホート3にも同様に行った(Taylor et al.;およびHieronymus et al.;C)。両側ログランク検定では有意なp値が得られる。3個のmiRNAからなる予後分類因子によって定義される分子的リスクの高い状態は、3つの独立したコホートのRP後の早期の生化学的再発と有意に関連していた。
図4は、3つの独立したコホートから得た根治的前立腺切除(RP)試料で4個のmiRNAの予後に関する比(miR−10b−5p×miR−23a−3p/miR−133a−3p×miR−374b−5pの比、表7)のモデルに基づき無再発生存(RFS)のカプラン・マイヤー生存分析を行った結果を示す。訓練コホート1(A)の患者をROC分析後に低リスク群と高リスク群に分けた。コホート1で定義された絶対的なカットオフ値に従い検証コホート2(B)の患者を低リスク群と高リスク群に分けた。これを外部検証コホート3にも同様に行った(Taylor et al.;およびHieronymus et al.;C)。両側ログランク検定のp値を求める。4個のmiRNAの予後に関する比のモデルによって定義される分子的リスクの高い状態は、RP後の早期の生化学的再発と有意に関連していた。
図5は、3つの独立したコホートから得た根治的前立腺切除(RP)試料で2個のmiRNAの予後に関する比(miR−10b−5p/miR−374b−5p、表8)のモデルに基づき無再発生存(RFS)のカプラン・マイヤー生存分析を行った結果を示す。訓練コホート1(A)の患者をROC分析後に低リスク群と高リスク群に分けた。コホート1で定義された絶対的なカットオフ値に従い検証コホート2(B)の患者を低リスク群と高リスク群に分けた。これを外部検証コホート3にも同様に行った(Taylor et al.;およびHieronymus et al;C)。両側ログランク検定のp値を求める。2個のmiRNAの予後に関する比のモデルによって定義される分子的リスクの高い状態は、3つの独立したコホートのRP後の早期の生化学的再発と有意に関連していた。
(定義)
ハレルの一致指数(C指数)は、打ち切り観察に関する一般化された受信者動作特性曲線下の面積(AUC)を指し、再発の予測確率が再発という結果と一致する確率に相当する(Harrell (2001) Regression modelling strategies: with applications to linear models, logistic regression, and survival analysis. New York: Springer-Verlag)。
「マイクロRNA」、「miRNA」、および「miR」という表現は同義で用いられ、内在性遺伝子に由来する約18〜25ヌクレオチド(nt)長の非コードRNAを指す。マイクロRNAよりも長い(約75nt)pre−miRと呼ばれるヘアピン様の前駆体がプロセシングを受けてマイクロRNAになる。マイクロRNAは集合してmiRISCと呼ばれる複合体となり、アンチセンスの相補性によって標的を認識する。マイクロRNAが標的と100%一致する場合、すなわち相補性が完全である場合、標的mRNAは切断され、miRはsiRNAのように作用する。完全には一致しない場合、すなわち相補性が部分的である場合、標的mRNAの翻訳は阻害される。
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、細胞または組織試料でのRNA分子の転写および/または蓄積を指す。
本文脈では、「miRの発現レベル」、「miR発現レベル」および「miRのレベル」という用語は、試料中で検出される「特定のmiRの量」の尺度として同義で用いられる。「特定のmiRの量」は、絶対的尺度、相対的尺度、または正規化された尺度のいずれかで表すことができ、定量的方法と定性的方法のいずれによって得られた値も指す。「特定のmiRの量」の特に好ましい1つの尺度は以下と実施例に記載のqRT−PCRによって得られた交点(Cp)値であるが、「量」はデジタルPCRまたは多様な次世代シーケンシング技術によっても定量できる。特定の状況、たとえばmiR発現レベルの比を用いて予後スコアを計算する場合、絶対的に決定されたmiR発現レベルで十分である。しかし、絶対的なmiR発現レベルの代わりに正規化されたmiR発現レベルに基づき決定を行ってもよい。
miRの発現を構成的またはほぼ構成的に発現する遺伝子の発現と比較して絶対的なmiR発現レベルを補正することで、発現レベルを正規化する。正規化によく利用される好適な遺伝子としては、アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子が挙げられる。本研究では、miR−151a−5pを正規化に利用する。
本明細書で使用する場合、miR−106a−5p、miR−10b−5p、miR−133a−3p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−374b−5p、miR−615−3p、miR−625−3p、およびmiR−151a−5pという用語は、miRNA登録データベースの公開内容12.0以降に登録されており英国のSanger Instituteによって提供されているヒトのmiR配列と、動物の同等の配列を指す。表9も参照のこと。
「予後予測」という用語は、本明細書では、個々または累積的に臨床状況に応じて、疾患状態の蓋然的な転帰を予測する工程、あるいは症例の性質や症状によって示される、疾患から回復する見込みを決定する工程を包含すると定義される。
本文脈では、「基準発現プロファイル」は、試料採取後5年以内に著しいがんの進行がなかった前立腺がん患者の細胞試料における、miR−106a−5p、miR−10b−5p、miR−133a−3p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−374b−5p、miR−615−3p、およびmiR−625−3pからなる13個のmiRの群より選択される2個以上のmiRの発現レベルを指す。
miR分類因子に関する「確実さ(robustness)」という用語は、本明細書では、試料の採取方法や定量方法が多少異なっていても前立腺がん患者の予後の評価に関して相対的に似た結果を出す分類因子を指すのに使用される。
「UniRT」は、Exiqon A/Sによって市販されているqRT−PCR法である。この方法とその性能については実施例1および7、ならびにデンマーク国特許出願PA 2009 00156、欧州特許第2391736号、およびMestdagh et al. Nat Methods. 2014 Aug;11(8):809-15に記載されている。
本発明の態様を以下に記載するが、これらは例示目的に過ぎない。
(本発明の詳細な開示)
本発明の根底にある技術的課題は、前立腺がん患者の予後を生体外で評価する代替的な方法を提供することである。特に、現在利用できる他の予後指標(主にPSA検査、陽性生検体の数、臨床上のTNM病期分類およびグリーソンスコア)の補足となるか、場合によってはそれらに代わる可能性もある方法を提供する。
実施例1では、2つの異なる統計的手法(1.一個抜き交差検証(LOOCV)、2.単変量コックス回帰分析で有意なマイクロRNAの組み合わせ)を応用して5個のmiR予後分類因子を得たことについて記載する(表1、表2、および表3を参照)。2つの手法を組み合わせることにより、合わせて13個のmiRからなる分類因子を得た。すなわち、miR−106a−5p、miR−10b−5p、miR−133a−3p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−374b−5p、miR−615−3p、およびmiR−625−3pである(表3)。
意外にも、発明者らは、この13個からなるmiR群から導き出されたわずか2個のmiRを用いて再発した症例と再発なしの症例を区別し、根治的前立腺切除後の生化学的再発(BCR)までの時間を予測できることを見出した(実施例1と実施例6、図5、表8を参照)。したがって、本発明の一側面は、前立腺がん患者の予後を生体外で評価する方法であって、前記患者から採取した前立腺細胞の試料のRNAでmiR−106a−5p、miR−10b−5p、miR−133a−3p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−374b−5p、miR−615−3p、およびmiR−625−3pからなるmiR群から選択される少なくとも2個のmiRの発現レベルを測定することを含み、ここで、基準発現プロファイルと比較して前記少なくとも2個のmiRの発現レベルの変化は前記患者の予後を示す、方法である。
一個抜き交差検証(LOOCV)による最尤分類法(実施例1参照)を用いた探索・検証の研究で得た、予後予測精度に最も大きな影響を与える8個のmiRNAが好適だと思われる。したがって、本発明の一態様では、前立腺がん患者の予後(すなわち、対象が高悪性度の前立腺がんを有しているリスク)を生体外で評価する方法であって、前記患者から採取した細胞試料でmiR−106a−5p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−374b−5p、およびmiR−615−3pからなるmiR群から選択される少なくとも2個のmiRの発現レベルを測定することを含む方法である。ここで、基準発現プロファイルと比較した前記少なくとも2個のmiRの発現レベルの変化は、予後があまりよくないことを示す。
一般の診療の要件を満たすため、予後予測方法は、試料採取や定量の方法が多少異なっても、患者の予後が良好か不良かの区別について比較的似た結果を提供しなければならない。この方法は確実であるべきである。有望なことに、コホート3の腫瘍試料は異なる国籍(米国)のもので、異なる方法(スナップ凍結)で採取され、異なるRNA抽出手順に供され、異なるマイクロRNA発現検出プラットフォーム(Agilent Human miRNA Microarray 2.0)で分析され、コホートの特徴が異なっていた(コホート3はコホート1よりも全体的に悪性度が低く、再発の事象が少なかった)にもかかわらず、発明者らによる8個のマイクロRNAからなる予後分類因子はこのコホートでも同等に良好に機能し、この8個のマイクロRNAからなる予後分類因子の確実さを強調している。実施例2と表4を参照のこと。
13個または8個のmiRNAを測定するのは一般の診療に意図される予後予測試験には非実用的だと思われるかもしれない。実施例1および実施例3〜6、表5〜8では、この13個のmiRNAのリスト(表3)から絞り込んで導き出された、予後予測値のある複数のmiRNA分類因子を示す。
意外にも、これらの絞り込まれたmiRNA分類因子は、8個のマイクロRNAからなる予後分類因子よりもさらに確実だと思われる。したがって、本発明の他の側面は、前立腺がん患者の予後を生体外で評価するための方法であって、前記患者から採取した細胞の試料でmiR10b−5p、miR−133a−3p、miR−23a−3p、およびmiR−374b−5pの発現レベル;またはmiR−185−5p、miR−221−3p、およびmiR−326のレベル;またはmiR−152−3p、miR−185−5p、およびmiR−221−3pのレベル;またはmiR−10b−5pおよびmiR−374b−5pのみのレベルを測定することを含み、ここで、基準発現プロファイルと比較して前記少なくとも2個のmiRの発現レベルの変化は前記患者の予後を示す、方法である。
「特定のmiRの量」は、絶対的尺度、相対的尺度、または正規化された尺度のいずれかで表すことができ、定量的方法と定性的方法のいずれによって得られた値も指す。
絶対的なmiR発現レベルの代わりに正規化されたmiR発現レベルに基づき決定を行ってもよい。miRの発現を構成的またはほぼ構成的に発現する遺伝子の発現と比較することで絶対的なmiR発現レベルを補正することにより、発現レベルを正規化する。アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子が正規化によく利用される。しかし、miRなどの短いRNAの場合、特定の不変のmiRNAが正規化群として好ましい。
したがって、本発明の一態様では、発現レベルは正規化された発現レベルである。本研究では、miRを正規化に用いる。NormFinderアルゴリズム(10)を用いて、miR−151a−5pを探索研究で最も安定に発現したmiRNAと確認した。2つの正規化方法(全体平均とmiR−151−5p)を比較したところ、最も特異的に発現されたmiRNAに関してもmiRNA全体のランク付けに関しても非常によく似た結果が得られた。したがって、本発明の一態様では、発現レベルをmiR−151a−5pの発現レベルに対して正規化する。
予後予測試験を実用すると、試験値を用いて予後スコア(P)を計算することによってカットオフ値を定義し、その予後スコアに基づいて前立腺がん患者の予後を評価することができ、有利である。したがって、本発明の一態様は、がん患者の予後の評価は前記試料中の前記少なくとも2個のmiRのレベルを検出し、少なくとも2個のmiRの発現レベルデータを含むデータセットに基づき予後スコア(P)を計算することを含む、方法である。
miRのレベルは、逆転写酵素を用いた定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法(qRT−PCR)で有利に定量できる(17)。したがって、本発明の一態様では、前記miRの発現レベルをRT−QPCR、RT−qPCR、またはqRT−PCR(これらは同義である)の方法で決定する。
「特定のmiRの量」に関する特に好ましい1つの尺度は、qRT−PCRによって得られた交点(Cp)値である。「特定のmiRの量」に関する別の好ましい尺度は、実施例に記載の同じくqRT−PCRで得られる「サイクル閾値(Ct)」である。「特定のmiRの量」の尺度CpおよびCtではほぼ同様の測定値が得られる((12)を参照のこと)。CpとCtのいずれを選択するかは、主に試験と関連し試験が実行される機械の選択の問題である。LightCycler(登録商標)480 Real-Time PCR SystemでRoche LCのソフトウェアを使用して増幅を実行する場合、特定のmiRの量はCpで表される。Applied BiosystemsのABI Prism 7900HTの384ウェルの機器で機器と共に提供されるソフトウェアを用いて増幅を実行する場合、特定のmiRの量はCtで表される。以下ではCp値を示すが、Ct値および「定量サイクル」(Cq)値にも当てはまる。
Cp値は、たとえば特定のmiRのレベルと以下の関係式の関係にある:
Figure 0006769979
(式中、Cp(miRx)は、ある特定のmiR(miRxと呼ぶ)を特異的に検出するリアルタイムqRT−PCR機器からのCp読み取りを示す。実施例1はそのような試験について詳細に記載する。
比に基づくマーカーはデータの正規化から独立しているため、好適な分類因子モデルを提供する。発明者らは、13個のmiR(または「コックス回帰」で得た11個のmiR)から導き出した比による分類因子が、前立腺がんの再発までの時間を予測するための独立した予後バイオマーカーとして利用できることを見出した(実施例5を参照のこと)。
したがって、Cp値をmiRのレベルの定量因子として使用する場合、たとえば、以下の式:
Figure 0006769979
は、以下の式:
Figure 0006769979
に等しい。
したがって、本発明の一態様では、4個のmiR(miR10b−5p、miR−133a−3p、miR−23a−3p、およびmiR−374b−5p)からなる分類因子に関する診断予後スコア(P)を以下のように計算する:
Figure 0006769979
(式中、係数X、Y、Z、Wは、特定の設定に従って回帰分析によって決定され、Cはサイクル閾値(Ct)、または交点値(Cp)、または「定量サイクル」(Cq)値、あるいはそれらに似た任意の値である)。
意外にも、発明者らは、13個のmiRの群から導き出された4個のmiRNAのうちの2個のみからなる比に基づく分類因子を、前立腺がんの再発の予測のための独立した予後バイオマーカーとして使用できることを見出した(実施例6参照)。
したがって、本発明のさらなる一態様は、miR−374b−5pおよびmiR−10b−5pの2つのmiRの発現レベルを測定することを含む、前立腺がん患者の予後を生体外で評価する方法である。
miRがqRT−PCRによって定量され、miRレベルの定量因子としてCp値が使用される場合、以下の式:
Figure 0006769979
は以下の式:
Figure 0006769979
に等しい。
同様に、本発明の一態様では、2個のmiRからなる分類因子に関する診断予後スコア(P)は以下のとおりである:
Figure 0006769979
(式中、係数XおよびYは回帰分析によって決定され、Cは、サイクル閾値(Ct)、または交点値(Cp)、または「定量サイクル」(Cq)値、あるいはそれらに似た任意の値である)。
直線回帰および他の種類の回帰が意図される。
「機械学習」は、経験を通じて自動的に改善するコンピュータアルゴリズムを利用した過程に関連し、当技術分野ではアルゴリズムを改善するこの過程を「訓練」ということが多い。機械学習は大きなデータセットにおける一般的な規則を発見するのに使用でき、たとえば、前立腺のがん試料とがんではない試料のmiR発現を含むデータセットから臨床情報データを抽出するのに使用できる。機械学習の概念に関する一般的な論文は、(Tom Mitchell, Machine Learning, McGraw Hill, 1997)で読むことができる。したがって、本発明の一態様では、機械学習を応用し、診断予後スコア(P)を計算するアルゴリズムを得た。
逆転写酵素を用いる定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法(qRT−PCR)は好ましい定量方法であるが、実施例2、3、4、および6は、本発明がマイクロアレイに基づく定量に適合していることを示しており、したがって本発明の一態様は、前記miRの発現レベルをマイクロアレイによって測定する方法である。
ノーザンブロット、定量デジタルPCR、および様々な定量的次世代シーケンシング技術などのその他の定量方法も意図され、本発明の態様もそのように意図される。
本発明のさらなる側面は、前立腺がん患者の予後を生体外で評価するためのキットであって、評価は、前記患者から採取した前立腺細胞から得たRNA試料でmiR−106a−5p、miR−10b−5p、miR−133a−3p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−374b−5p、miR−615−3p、およびmiR−625−3pからなる13個のmiRの群から選択される少なくとも2個のmiRの発現レベルを測定することを含み、ここで、基準発現プロファイルと比較して前記少なくとも2個のmiRの発現レベルの変化は前記患者の予後を示す、キットである。
以下の非限定的な実施例、表、および図で本発明をさらに説明する。
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(実施例1)
ゲノム規模のマイクロRNAプロファイリングによって確認された前立腺がん再発の予測のための新規な予後分類因子
研究の目的
前立腺がんの予後バイオマーカーとしてのマイクロRNA発現の能力を調査しリスク層別化のための分類因子を構築する
方法
検体
試料はすべてデンマークにあるAarhus University Hospitalの泌尿器科で採取され、同病院のInstitute of Pathologyから入手した(1997〜2005年)。訓練コホート(コホート1)は、組織学的に確認され臨床的に位置特定された前立腺がんのRP127例で構成されていた。熟練した病理学者がすべての組織検体を評価した。(Haldrup 2013)に記載の通り、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した切片で腫瘍の90%より多くを含む代表的な領域を標識し、RNA抽出のために対応するFFPEブロックからパンチ生検体を採取した。miRNeasy FFPE Kit(Qiagen)を用いて、製造者の取扱い説明に従い1.5mmのパンチ生検体から全RNAを単離した。260/280nmの吸光度比(最適比:2.0)をRNA試料の品質保証に用いた。比が1.75未満のRNA試料はさらなる分析から除外した。精製したRNAを−80℃で保存した。
マイクロRNA発現プロファイリング
miRCURY LNA(商標)Universal RT microRNA PCRプラットフォームを用いて、Exiqon A/S(デンマーク、ベドベーク)でマイクロRNA発現プロファイリング(試薬はすべてExiqon製)を実施した。簡潔に述べれば、miRCURY LNA(商標)micro RNA PCR, Polyadenylation and cDNA synthesis kit IIを用いて、40ngの全RNAを40μlの反応で逆転写した。cDNAを100倍に希釈し、10μlのPCR反応で分析した。コホート1(訓練)については、microRNA Ready-to-Use PCR, Human panel I+II, V3Rを用いて384ウェルPCRプレートで752個のmiRNAの相対発現レベルを分析した。陰性対照(鋳型なしの逆転写反応)を並行して行った。LightCycler(登録商標)480 Real-Time PCR System(Roche)およびExiLENT SYBR(登録商標)Greenマスターミックスを用いて増幅を行った。Roche LCのソフトウェアを用いて増幅曲線を分析し、定量サイクル(Cq)値を決定し(二階微分法(Livak, 2001)による)、融解曲線分析を行った。陰性対照よりも小さいCq値で検出されたのが3回未満のマイクロRNA、またはすべての試料ですべてのCq値が37を超えたマイクロRNA(コホート1では97個、コホート2では0個のmiRNA)はさらなる分析から除外した。
コホート1(訓練)について、多数の試験を含むqRT−PCRデータを正規化する最良の方法として以前に報告されている、全体平均(すなわち、全試料で検出されたすべてのmiRNAでの平均(ここで、n=61)、表10を参照のこと)に対してデータを正規化した(15)。NormFinderアルゴリズム(10)を用いて、発明者らは、miR−151a−5pがコホート1で最適で安定な単一の正規化遺伝子であることを見出した。2つの正規化方法(miR−151a−5pおよび全体平均による正規化)では、コホート1で最も特異的に発現したマイクロRNAに関してもマイクロRNA全体のランク付けに関しても非常によく似た結果が得られ、後に行われるより少ないmiRNAを試験する検証研究でmiR−151a−5pを正規化遺伝子とすることの有効性が裏付けられた。正規化は式ΔCq=Cq正規化因子−CqmiRNAに従い行われた。発現レベルの差異をΔΔCq=ΔCq第1群−ΔCq第2群として計算し、これを倍数変化に換算するために式2−ΔΔCqを用いた。下方制御されたmiRNAについては、逆数に係数−1を掛けたものを用いた。
統計分析
他に記載がない限り、統計分析はSTATAバージョン11(StataCorp(米国テキサス州))で行った。すべての分析について、P値<0.05を統計的に有意とみなした。
発現分析
シャピロ・ウィルク検定を用いて、データが正常に分布しているか評価した。マイクロRNAのうちいくつかは正常に分布していなかったため、ノンパラメトリック統計学のウィルコクソン符号順位検定を用いて異なる群でのマイクロRNA発現を対比較した。ベンジャミーニ・ホッホベルク法(11)を用いて多重検定に対しP値を補正した。
分類因子の構築
過去に記述されている方法で、一個抜き交差検証(LOOCV)最尤分類法をソフトウェア「R」のバージョン3.0.0(Bell Laboratories, Lucent Technologies, http://www.cran.r-project.org/)とBioconductorで訓練し、試験した(13)。127個のRP試料(うち70例は生化学的再発なし、57例は生化学的再発あり)から得た正規化されたマイクロRNA発現レベルを用いて、前立腺がんの再発を分類するために構築された複数のマイクロRNAからなる予後分類因子を得た。少なくとも70%の試料で発現したマイクロRNAのみを分析対象とした(n=236個のmiRNA)。分類因子の性能をχ検定と感度および特異度の計算によって試験した(表1)。8個のマイクロRNAからなる予後分類因子(後述)の8個のmiRNAを含む統合モデルを作成してRFS分析を行うために、各miRNAを多変量比例ハザードモデルの推定回帰係数で加重し、miRNA分類因子について、それらを結合した加重和を計算した。
さらに、2つの異なる手法を用いて、訓練コホート(n=126;RPを受けた127人の患者のうち1人は術後の内分泌治療のため、RFS分析から除外された;表2を参照のこと)の単変量コックス回帰分析で有意であった11個のmiRNAから得たmiRNA予後分類因子を訓練した。1つの手法では、前記分類因子に含まれる各miRNAを多変量コックス比例ハザードモデルの推定回帰係数で加重し、miRNA分類因子について、それらを結合した加重和を計算した。第2の手法では、モデルに含まれる各miRNAの生のCq値に基づき、比に基づくmiRNA分類因子を作成した。
予後予測値:無再発生存(RFS)を分析するため、生化学的再発(BCR;現地の臨床実務に基づきPSAカットオフ値は0.2ng/ml以上であった)をエンドポイントとした。BCRを経験していない患者については最後の正常なPSA測定時で打ち切りとした。マイクロRNA発現の予後予測値およびマイクロRNAに基づく分類因子の加重和を、カプラン・マイヤー分析および両側ログランク検定、さらには単変量および多変量コックス回帰分析によって、連続変数および二分変数として評価した。マイクロRNA発現およびマイクロRNAに基づく分類因子を二分変数として分析するため、コホート1の患者を、無再発か再発の状態をROC分析した後に決定したカットオフ値によって高発現群と低発現群に分けた。単変量解析で有意なすべての臨床病理学的パラメータを多変量解析の対象とした。多変量解析で基準を満たさなかった変数を段階的な後退的選択法により最終多変量モデルから除外した。すべての変数についてlog(−log)生存分布関数によって比例ハザード仮定を検証した。マイクロRNAおよび分類因子の予後予測の精度を、単変量および多変量コックス回帰分析によって確立したハレルの一致指数(C指数;予測と結果が一致したすべての患者ペアの比率と定義される)で評価する。
結果
前立腺がんでのマイクロRNA発現の予後予測能力を調べるため、発明者らはまず、コホート1のpT2対pT3−4、グリーソンスコアの高低、および/または再発腫瘍対非再発腫瘍の対比較(データの提示なし)で有意に制御解除されていると判明した45個の候補miRNAについて生化学的無再発生存(RFS)を分析した。単変量コックス回帰分析により、これらのmiRNAのうち11個はコホート1(n=126)のRFS期間と有意に関連づけられた(表2)。より具体的には、miR−10b−5p、miR−23a−3p、miR−185−5p、miR−615−3p、およびmiR−625−3pの高発現とmiR−30d−3p、miR−133a−3p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−326、およびmiR−374b−5pの低発現は、このコホートの早期の生化学的再発(BCR)と関連していた。しかし、これらの11個のmiRNAのいずれも、通常の臨床病理学的因子(PSA、pT病期、グリーソンスコア、および周縁の状態;データの提示なし)を含む多変量モデルでは有意でなく、コホート1の単変量解析で見られたそれらの予後予測値は、別個のコホート2およびコホート3(n=99)(表2;これらのコホートについては実施例2および3に記載する)では全体的に確認できなかった。
代わりに、数個のマイクロRNAを組み合わせて予後分類因子とすることによって単一のマイクロRNAに比べてRFS期間の予測が改善するかどうかを調べた。2つの統計的手法、すなわち1)一個抜き交差検証(LOOCV;表1)および2)コホート1の単変量コックス回帰分析で有意であった11個のマイクロRNAの組合せ(加重モデルおよび比に基づくモデル)で並行してデータを分析した(表2)(いずれの方法についても方法の項で説明する)。この2つの方法を用いて、予後予測能力を有する13個のマイクロRNA候補のリストを見出した(表3)。
LOOCVによる分類因子の構築
方法1):数個のマイクロRNAを組み合わせることによってRP後のBCRリスクの予測精度が上がるかどうかを調べた。したがって、発明者らは、コホート1で70%を超える試料で検出された236個のマイクロRNAに関する正規化された発現データを使用した。再発のない患者70人と再発のあった患者57人を区別するため、最尤法によるマイクロRNA予後分類因子を構築する。8個のマイクロRNAを含む分類因子が最も正確にRP試料を無再発群と再発群に分類した(表1)。そこで、miR−615−3p、miR−185−5p、miR−23a−3p、miR−374b−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−106a−5p、およびmiR−152−3pを交差検証ループの少なくとも70%で用いて最終的な8個のマイクロRNAからなる予後分類因子を構成した。
分類因子1:8個のマイクロRNAからなる分類因子(一個抜き交差検証に基づく)
方法1)で確認された8個のマイクロRNA、すなわちmiR−615−3p、miR−185−5p、miR−23a−3p、miR−374b−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−106a−5p、およびmiR−152−3p(表1)からなる予後分類因子は、コホート1の再発のあった試料と無再発の試料の74.6%を正しく分類した(P<0.0001、χ検定)。
8個のマイクロRNAからなる予後分類因子のBCRまでの時間(BCR状態ではない)の予測に関する性能を評価するため、発明者らは予後分類因子に含まれる8個すべてのマイクロRNAの発現の加重和を計算した。次に、8個のmiRNAからなる予後分類因子の予後予測値を評価するため、発明者らはPSAに基づくRFS分析を行った。コホート1では、予後分類因子(加重和の連続変数として分析された)は単変量コックス回帰分析で短いRFS期間と有意に関連していた(P<0.001;表4上段)。この8個のmiRNAからなる予後分類因子は、グリーソンスコア、切除縁の状態、および術前PSA値と組み合わせた多変量モデルでも有意であった(P<0.001、表4上段)。注目すべきことに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルに8個のmiRNAからなる予後分類因子を加えると、コホート1の予測精度は0.73から0.79に上昇し、この複合予後予測モデルが適度に改善された性能をもつことを示唆している。最後に、カプラン・マイヤー分析により、コホート1で8個のmiRNAからなる予後分類因子と短いRFSが有意に関連していることが実証された(図1A;P<0.0001、ログランク検定)。
結論として、発明者らは8個のmiRNAからなる予後分類因子を構築したが、これはコホート1のRP後のBCRの有意な独立した予後予測因子であった。
絞りこまれた分類因子の構築
分類因子2:3個のマイクロRNAからなる分類因子(上記8個のマイクロRNAからなる分類因子から得られた、8個から絞り込んだmiRNA予後分類因子)
表1の8個のマイクロRNAを段階的に除外し、miR−152−3p、miR−185−5p、およびmiR−221−3pという3個のマイクロRNAの組み合わせを確認した。これらの3個のマイクロRNAの結合された加重和は、単変量および多変量コックス回帰分析のいずれにおいても、8個のマイクロRNAからなる予後分類因子と同様に有意であった(表5上段)。8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子は、グリーソンスコアおよび切除縁の状態と組み合わせた多変量モデルでも有意であった(P<0.013;表5上段)。さらに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルに8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子を加えると、コホート1の予測精度は0.69から0.72に上昇し、この複合予後予測モデルが適度に改善された性能をもつことを示唆している。最後に、カプラン・マイヤー分析により、コホート1で8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子と短いRFSが有意に関連していることが実証された(図2A;P=0.0001、ログランク検定)。結論として、発明者らは8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子を構築したが、これはコホート1のRP後のBCRの有意な独立した予後予測因子であった。
単変量コックス回帰分析による分類因子の構築
方法2):コホート1(訓練コホート、n=126)のマイクロRNA発現(連続変数として分析)の単変量コックス回帰分析により、短いRFS期間は、試験した45個のマイクロRNAのうち11個の発現と統計学的に有意に(P値がP=0.049からP<0.001までの範囲)関連づけられた(表2)。したがって、miR−10b−5p、miR−23a−3p、miR−185−5p、miR−615−3p、およびmiR−625−3pの高発現とmiR−30d−3p、miR−133a−3p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−326、およびmiR−374b−5pの低発現は早期のBCRと有意に関連していた。さらに、確立されている通常の臨床病理学的予後因子、すなわちPSA値が高いこと、グリーソンスコアが高いこと、T病期が進んでいること、および切除縁の状態が陽性であることはRFSと有意に関連しており、発明者らのコホートが一般的であることを示す(表2)。次に、11個のマイクロRNAを組み合わせることによって単一のmiRNAに比べてRFS期間予測が改善するかどうかを調べた。2つの異なる手法で、訓練コホートの単変量コックス回帰分析で有意であった11個のmiRNAから得たmiRNA予後分類因子を訓練した。1つの手法では、分類因子に含まれる各miRNAを多変量コックス比例ハザードモデルの推定回帰係数で加重し、miRNA分類因子について、それらを結合した加重和を計算した。第2の方法では、モデルに含まれる各miRNAの生のCq値に基づき、比に基づくmiRNA分類因子を作成した。
分類因子3:3個のマイクロRNAからなる分類因子(単変量コックス回帰分析で有意なマイクロRNAの加重和に基づく分類因子)
段階的除外により、発明者らはmiR−185−5p、miR−221−3p、およびmiR−326の3個のマイクロRNAの組み合わせが(これらの3個のマイクロRNAの結合した加重和として分析した)コホート1の単変量コックス回帰分析で短いRFS期間と有意に関連しており(P<0.001)、pT病期、グリーソンスコア、切除縁の状態、および術前PSA値に関して調整された多変量モデルでも有意である(P=0.031)と確認した(表6上段)。注目すべきことに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルにこの3個のマイクロRNAからなる予後分類因子を加えると、コホート1での予測精度(ハレルのC指数により推定)は0.72から0.74に上昇し(表3上段)、適度に改善された性能を示唆している。さらに、カプラン・マイヤー分析により、3個のマイクロRNAからなる予後分類因子とコホート1でのRFSが有意に関連していることがわかった(P=0.0005、ログランク検定、図3A)。要約すると、発明者らはコホート1のRP後のBCRまでの時間を通常の臨床病理学的パラメータとは独立に予測する、3個のマイクロRNAからなる新規な予後分類因子(miR−185−5p+miR−221−3p+miR−326)の訓練と試験に成功している。
分類因子4:4個のマイクロRNAからなる分類因子(単変量コックス回帰分析で有意な11個のマイクロRNAのうち4個のマイクロRNAの比に基づく)
マイクロRNAの生のCq値の比に基づくバイオマーカー候補は正規化因子に依存しないため、臨床試験に好都合だと考えられる。コホート1の単変量解析で有意な11個のマイクロRNA(表2)を用いて、比に基づくマイクロRNAバイオマーカー候補を構築した。コホート1の単変量RFS分析で有意であった11個の候補miRNA(表2)のサブセットから、単純な2:2のmiRNA比に基づくモデルを構築することを目的とした。この比モデルの確実さを保証するため、コホート1(訓練)の126個のRP試料のうち少なくとも125個で発現され、最もCq値の低いmiRNAを優先した。さらに、ダイナミックレンジを拡大するため、上方に発現制御されたmiRNAおよび下方に発現制御されたmiRNAを分母と分子に分けた。
これらの基準を用いて、カプラン・マイヤー分析と単変量および多変量コックス回帰分析によってコホート1での早期のBCRと有意に関連づけられた(それぞれ、P<0.0001、図4A;P<0.001;P=0.001)4個のmiRNAからなる予後に関する比モデル(miR−10b−5p×miR−23a−3p)/(miR−133a−3p×miR−374b−5p)を開発した(表7上段)。さらに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルにこの4個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルを加えると、コホート1の予測精度は0.73から0.76に上昇し、この複合予後予測モデルが適度に改善された性能を有することを示唆している。
結論として、発明者らは4個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルを構築したが、これはコホート1でのRP後のBCRの有意な独立した予後予測因子であった。
絞り込んだ比モデルの構築
分類因子5:2個のマイクロRNAからなる分類因子(4個のマイクロRNAからなる上記分類因子から絞り込んだ2個のマイクロRNAのみの比に基づく)
このモデルを将来考えられる臨床使用のため単純化すべく、上記の4個のマイクロRNAの比に基づく分類因子をさらに絞り込んで2個のmiRNAの比モデル(miR−10b−5p/miR−374b−5p)を得た。コホート1では、この2個のmiRNAの予後に関する比モデルは、単変量コックス回帰分析でも通常の臨床病理学的変数を含む多変量解析でも、BCRまでの時間の有意な予測因子であった(それぞれ、P=0.001;P<0.001)(表8上段)。注目すべきことに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルにこの2個のmiRNAの予後に関する比モデルを加えると、コホート1の予測精度(ハレルのC指数で推定)は0.73から0.77に上昇し、改善された性能を示唆している。最後に、カプラン・マイヤー分析によっても、コホート1での2個のmiRNAの予後に関する比モデルとRFS期間との有意な関連性が実証された(P=0.0259;ログランク検定;図5A)。
結論として、発明者らは2個のmiRNAの予後に関する比モデルを構築したが、これはコホート1でRP後のBCRまでの時間の有意な独立した予測因子であった。
結論
発明者らは、大きな前立腺がんコホートでRP後のBCRまでの時間を通常の臨床病理学的変数とは独立に予測する、2〜8個のマイクロRNAを含む予後分類因子を構築している。
(実施例2)
外部検証コホートでの再発リスク予測に関する、8個のマイクロRNAからなる予後分類因子の検証
研究の目的
実施例1に記載の8個のマイクロRNAからなる分類因子を独立したRP患者コホートで検証する
方法
検体およびmiRNA発現データ
発明者らは、上記8個のマイクロRNAからなる予後分類因子の予後予測能力の性能を、GEOウェブサイトで利用できるTaylorらの外部GSE21036マイクロRNA発現データセットで調査した(14 および Hieronymus H, Schultz N, Gopalan A, Carver BS, Chang MT, Xiao Y, et al. Copy number alteration burden predicts prostate cancer relapse. Proc Natl Acad Sci USA 2014;111:11139-44)。このデータセットはスナップ凍結された99個のRP組織試料を含んでいた(コホート3)。368個のマイクロRNAの発現をAgilent Human microRNA Microarray 2.0で測定した(14 および Hieronymus H, Schultz N, Gopalan A, Carver BS, Chang MT, Xiao Y, et al. Copy number alteration burden predicts prostate cancer relapse. Proc Natl Acad Sci USA 2014;111:11139-44)。
統計分析
統計分析は、STATAバージョン11(StataCorp(米国、テキサス州))で実施した。すべての分析について、P値<0.05を統計的に有意とみなした。
予後予測精度
生化学的再発(BCR;現地の臨床実務に基づきPSAカットオフ値は0.2ng/ml以上であった)をエンドポイントとした。BCRを経験していない患者については最後の正常なPSA測定時で打ち切りとした。8個のマイクロRNAからなる分類因子のマイクロRNA発現の予後予測値を、カプラン・マイヤー分析および両側ログランク検定、さらには単変量および多変量コックス回帰分析によって連続変数および二分変数として評価した。8個のマイクロRNAからなる分類因子を検証するため、コホート3の患者を、コホート1で定義したカットオフ値(割合)を用いて2つの群に分けた(無再発または再発の状態に関するROC分析の後に決定されたカットオフ値)。すべての変数についてlog(−log)生存分布関数によって比例ハザード仮定を検証した。多変量試験については単変量解析で有意な臨床病理学的パラメータをすべて対象とした。多変量解析で基準を満たさなかった変数を段階的な後退的選択法により最終多変量モデルから除外した。病理学的なT病期は、局在性(T2)と局所的進行性疾患(T3〜4)に二分化した。グリーソンスコアは、それぞれ5〜6点(低)および7〜10(高)を含む2つのカテゴリに分類した。切除縁の状態は、陰性の周縁と陽性の周縁に二分化した。術前のPSAレベルは連続変数として分析した。ハレルの一致指数を用いて予後予測の精度を推定した。
結果
コホート3の腫瘍試料は異なる国籍(米国)のもので、異なる方法(スナップ凍結)で採取され、異なるRNA抽出手順に供され、異なるマイクロRNA発現検出プラットフォームで分析され、コホートの特徴が異なっていた(コホート3はコホート1よりも全体的に悪性度が低く、再発の事象が少なかった)にもかかわらず、発明者らによる8個のマイクロRNAからなる予後分類因子はこの外部コホートでも同等に良好に機能し、この8個のマイクロRNAからなる予後分類因子の確実さを強調している。
コホート3では、8個のmiRNAからなる予後分類因子によって定義される分子的リスクの高い状態は、単変量および多変量コックス回帰分析のいずれにおいてもRP後の早期のBCRと有意に関連していた(それぞれ、P=0.003、P=0.006)(表4下段)。このコホートでは、病理学的なT病期は有意な独立した予後予測値を有さず、グリーソンスコアは一方の群では事象がないため分析から除外された。
さらに、多変量モデルの予測精度をハレルのC指数によって推定した。注目すべきことに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルに8個のマイクロRNAからなる予後分類因子を加えると、コホート3の予測精度は0.73から0.80に上昇し(表4下段)、この複合予後予測モデルが適度に改善された性能をもつことが裏付けられている。最後に、カプラン・マイヤー分析により、コホート3で8個のマイクロRNAからなる予後分類因子と短いRFSが有意に関連していることが実証された(図1下段;P<0.019、ログランク検定)。
結論
結論として、発明者らは8個のマイクロRNAからなる予後分類因子を構築したが、これは2つの独立した患者コホートでRP後のBCRの有意な独立した予後予測因子であった(実施例1および2)。この8個のマイクロRNAからなる予後分類因子(コホート1でのRP後のBCRの有意な独立した予後予測因子)の性能は、まったく異なる患者コホート3で検証され、前立腺がんに関する予後予測手段としての分類因子の強さが証明された。
(実施例3)
2つの独立した検証コホートでの再発リスクの予測に関する、8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子の検証
研究の目的
実施例1および2に記載の8個のマイクロRNAからなる分類因子を絞り込んで得た3個のマイクロRNAからなる分類因子(miR−152−3p×miR−185−5p×miR−221−3p)を2つの独立したRP患者コホート(コホート2およびコホート3)で検証する
方法
検体
2つのコホートを検証に用いた。コホート2:RT−qPCRによるmiRNAプロファイリングのため、発明者らはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)前立腺組織試料を使用した。試料はすべてデンマークのAarhus University Hospitalの泌尿器科で採取され、同病院のInstitute of Pathologyから入手した(1997〜2005年)。がん試料について、(Haldrup 2013)に記載の通り、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した切片で腫瘍の90%より多くを含む代表的な領域を標識し、RNA抽出のために対応するFFPEブロックからパンチ生検体を採取した。miRNeasy FFPEキット(Qiagen)を用いて、製造者の取扱い説明に従い1.5mmのパンチ生検体から全RNAを単離した。260/280nmの吸光度比(最適比:2.0)をRNA試料の品質保証に用いた。比が1.75未満のRNA試料はさらなる分析から除外した。精製したRNAを−80℃で保存した。この検証コホート(コホート2)は、組織学的に確認され臨床的に位置特定された前立腺がんのRP112例で構成されていた(RFS分析についてはn=110;RPを受けた112人の患者のうち2人は術後の内分泌治療のため、RFS分析から除外された)。コホート3:GEOウェブサイトで利用できるTaylorらの外部GSE21036マイクロRNA発現データセットで構成されている(14、およびHieronymus H, Schultz N, Gopalan A, Carver BS, Chang MT, Xiao Y, et al. Copy number alternation burden predicts prostate cancer relapse. Proc Natl Acad Sci USA. 2014;111:11139-44.)。このデータセットはスナップ凍結された99個のRP組織試料を含んでいた。Agilent Human microRNA Microarray 2.0で368個のマイクロRNAの発現を測定した。
マイクロRNA発現プロファイリング
miRCURY LNA(商標)Universal RT microRNA PCRプラットフォームを用いて、Exiqon A/S(デンマーク、ベドベーク)でマイクロRNA発現プロファイリング(試薬はすべてExiqon製)を実施した。簡潔に述べれば、miRCURY LNA(商標)micro RNA PCR, Polyadenylation and cDNA synthesis kit IIを用いて、40ngの全RNAを40μlの反応で逆転写した。cDNAを100倍に希釈し、10μlのPCR反応で分析した。コホート2(検証)については、miRCURY LNA(商標)Universal RT Pick-&-Mix microRNA PCR panel(4×96=384ウェル、使用準備済み)を用いて、選択した94個のmiRNA(正規化遺伝子miR−151a−5pを含む)を分析した。陰性対照(鋳型なしの逆転写反応)を並行して行った。LightCycler(登録商標)480 Real-Time PCR System(Roche)およびExiLENT SYBR(登録商標)Greenマスターミックスを用いて増幅を行った。Roche LCのソフトウェアを用いて増幅曲線を分析し、定量サイクル(Cq)値を決定し(二階微分法(Livak, 2001)による)融解曲線分析を行った。陰性対照よりも小さいCq値で検出されたのが3回未満のマイクロRNA、またはすべての試料ですべてのCq値が37を超えるマイクロRNA(コホート2では0個のmiRNA)はさらなる分析から除外した。
実施例1で最適で安定な単一の正規化遺伝子として確立され、NormFinderアルゴリズム(10)によってコホート1とコホート2の両方において最適で安定な単一の正規化遺伝子と確認された正規化遺伝子miR−151a−5pを用いて、正規化を行った。正規化は式ΔCq=Cq正規化因子−CqmiRNAに従い行われた。発現レベルの差異をΔΔCq=ΔCq第1群−ΔCq第2群として計算し、これを倍数変化に換算するために式2−ΔΔCqを用いる。発現が下方制御されたmiRNAについては、逆数に係数−1を掛けたものを用いた。
統計分析
統計分析はSTATAバージョン11(StataCorp(米国テキサス州))で行った。すべての分析について、P値<0.05を統計的に有意とみなした。
予後予測精度
生化学的再発(BCR;現地の臨床実務に基づきPSAカットオフ値は0.2ng/ml以上であった)をエンドポイントとした。BCRを経験していない患者については最後の正常なPSA測定時で打ち切りとした。分類因子の予後予測値を、カプラン・マイヤー分析および両側ログランク検定、さらには単変量および多変量コックス回帰分析によって連続変数および二分変数として評価した。分類因子を検証するため、コホート2および3の患者を、コホート1で定義したカットオフ値(割合)(無再発または再発の状態に関するROC分析の後に決定されたカットオフ値)を用いて2つの群に分けた。すべての変数についてlog(−log)生存分布関数によって比例ハザード仮定を検証した。多変量試験については単変量解析で有意な臨床病理学的パラメータをすべて対象とした。多変量解析で基準を満たさなかった変数を段階的な後退的選択法により最終多変量モデルから除外した。病理学的なT病期は、局在性(T2)と局所的進行性疾患(T3〜4)に二分化した。グリーソンスコアは、それぞれ5〜6点(低)および7〜10(高)を含む2つのカテゴリに分類した。切除縁の状態は、陰性の周縁と陽性の周縁に二分化した。術前のPSAレベルは連続変数として分析した。ハレルの一致指数を用いて予後予測の精度を推定した。
結果
表5からわかるように、コホート3では、8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子によって定義される分子的リスクの高い状態は、単変量および多変量コックス回帰分析のいずれにおいてもRP後の早期のBCRと有意に関連していた(それぞれ、P=0.001、P=0.003)(表5下段)。このコホートでは、術前のPSAレベルは有意な独立した予後予測値を有さず、グリーソンスコアは一方の群では事象がないため分析から除外した。さらに、コホート2では、8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子は、RP後の早期のBCRと単変量コックス回帰分析では有意に関連しており(P=0.047)、多変量コックス回帰分析では有意傾向(borderline significant)(P=0.091)であった(表5中段)。このコホートでは、病理学的なT病期およびグリーソンスコアはいずれも有意な独立した予後予測値を有さなかった。
さらに、多変量モデルのそれぞれの予測精度をハレルのC指数によって推定した。興味深いことに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルに8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子を加えると、予測精度はコホート3では0.74から0.78(表5下段)、コホート2では0.71から0.73(表5中段)に上昇し、この複合予後予測モデルが適度に改善された性能をもつことが裏付けられている。最後に、カプラン・マイヤー分析により、コホート2では8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子と短いRFSが有意に関連している(図2B;P=0.014、ログランク検定)ことが実証され、この関連性をコホート3でも検証できた(図2C;P=0.019、ログランク検定)。
コホート3の腫瘍試料は異なる国籍(米国)のもので、異なる方法(スナップ凍結)で採取され、異なるRNA抽出手順に供され、異なるマイクロRNA発現検出プラットフォームで分析され、コホートの特徴が異なっていた(コホート3はコホート1および2よりも全体的に悪性度が低く、再発の事象が少なかった)にもかかわらず、8個から絞り込んmiRNAからなる予後分類因子はこの外部コホートでも同等に良好に機能し、この8個から絞り込んだmiRNAからなる分類因子の確実さを強調している。
結論
発明者らは8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子を構築したが、これは3つの独立した患者コホートでRP後のBCRまでの時間の有意な予後予測因子であった(実施例1および3)。この8個から絞り込んだmiRNAからなる予後分類因子(すなわちコホート1でのRP後のBCRまでの時間の有意な独立の予後予測因子)の性能は、まったく異なる患者コホート3で検証され、前立腺がんに関する予後予測手段としてのこの分類因子の強さが証明された。
(実施例4)
2つの独立な検証コホートでの再発リスクの予測に関する、3個のマイクロRNAからなる予後分類因子の検証
研究の目的
3個のマイクロRNAからなる分類因子(実施例1に記載の、単変量コックス回帰分析で有意なmiRNAの加重和に基づくmiR−185−5p+miR−221−3p+miR−326)を2つの独立した患者コホート(コホート2およびコホート3)で検証する
方法
実施例3に記載
結果
表6からわかるように、コホート2およびコホート3では、単変量および多変量コックス回帰分析で3個のマイクロRNAからなる分類因子の予後予測値の検証に成功した。コホート2およびコホート3では、3個のmiRNAからなる予後分類因子によって定義される分子的リスクの高い状態は、単変量および多変量コックス回帰分析のいずれにおいてもRP後の早期のBCRと有意に関連していた(単変量解析ではそれぞれP=0.006およびP<0.001;多変量解析ではそれぞれP=0.048およびP=0.012)(表6中段および下段)。コホート2では、切除縁の状態とグリーソンスコアは有意な独立した予後予測値を有さず、コホート3では、病理学的なT病期は多変量モデルで有意ではなく、グリーソンスコアは一方の群では事象がないため分析から除外した。
さらに、多変量モデルのそれぞれの予測精度をハレルのC指数によって推定した。注目すべきことに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルに3個のマイクロRNAからなる予後分類因子を加えると、予測精度はコホート3では0.73から0.75(表6中段)、コホート3では0.74から0.80(表5下段)に上昇し、この複合予後予測モデルが改善された性能をもつことが裏付けられている。最後に、カプラン・マイヤー分析により、コホート2では3個のマイクロRNAからなる予後分類因子と短いRFSが有意に関連している(図3B;P=0.035、ログランク検定)ことが実証され、この関連性はコホート3でも検証できた(図3C;P=0.008、ログランク検定)。
コホート3の腫瘍試料は異なる国籍(米国)のもので、異なる方法(スナップ凍結)で採取され、異なるRNA抽出手順に供され、異なるマイクロRNA発現検出プラットフォームで分析され、コホートの特徴が異なっていた(コホート3はコホート1および2よりも全体的に悪性度が低く、再発の事象が少なかった)にもかかわらず、発明者らの3個のマイクロRNAからなる予後分類因子はこの外部コホートでも同等に良好に機能し、この3個のマイクロRNAからなる予後分類因子の確実さを強調している。
結論
発明者らは、3つの独立した患者コホートでRP後のBCRまでの時間の予測に関して有意な独立した予後予測値を有する、3個のマイクロRNAからなる予後分類因子を構築した(実施例1および4)。この3個のマイクロRNAからなる予後分類因子(すなわちコホート1でのRP後のBCRまでの時間の有意な独立した予後予測因子)の性能は、まったく異なる患者コホート3で検証され、前立腺がんに関する予後予測手段としてのこの分類因子の強さが証明された。
(実施例5)
独立した検証コホートでの再発リスクの予測に関する、4個のマイクロRNAからなる予後分類因子(比に基づく)の検証
研究の目的
比に基づく4個のマイクロRNAからなる分類因子(実施例1に記載のmiR−10b−5p×miR−23a−3p/miR−133a−3p×miR−374b−5p)を2つの独立した患者コホート(コホート2およびコホート3)で検証する
方法
実施例3に記載
結果
表7からわかるように、コホート2では、4個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルによって定義される分子的リスクの高い状態は、単変量および多変量コックス回帰分析のいずれにおいてもRP後の早期のBCRと有意に関連していた(それぞれ、P=0.021、P=0.024)(表7中段)。このコホートでは、病理学的なT病期およびグリーソンスコアは有意な独立した予後予測値を有さなかった。さらに、コホート3では、4個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルは、RP後の早期のBCRと単変量コックス回帰分析では有意に関連しており(P=0.014)、多変量コックス回帰分析では有意傾向(P=0.115)であった(表7下段)。コホート3でも、病理学的Tな病期は有意な独立した予後予測値を有さず、グリーソンスコアは一方の群では事象がないため分析から除外した。
さらに、多変量モデルのそれぞれの予測精度をハレルのC指数によって推定した。臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルに4個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルを加えると、予測精度はコホート2では0.73から0.75(表7中段)、コホート2では0.73から0.78(表7下段)に上昇し、この複合予後予測モデルが適度に改善された性能をもつことが裏付けられている。最後に、カプラン・マイヤー分析により、コホート2では4個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルと短いRFSが有意に関連している(図4B;P=0.0355、ログランク検定)ことが実証され、この関連性はコホート3では有意傾向であった(図4C;P=0.1097、ログランク検定)。
結論
結論として、発明者らは4個のマイクロRNAの予後に関する比モデルを構築したが、これは3つの独立した患者コホートでRP後のBCRの有意な予後予測因子であり、かつ2つの独立した前立腺がん患者コホートで通常の臨床病理学的パラメータとは独立した予後予測値を有していた。(実施例1および5)。
(実施例6)
2つの独立した検証コホートでの再発リスクの予測に関する、2個のマイクロRNA(比に基づく)からなる予後分類因子の検証
研究の目的
比に基づく2個のマイクロRNAからなる分類因子(実施例1に記載のmiR10b−5p/miR−374b−5p)を2つの独立した患者コホート(コホート2およびコホート3)で検証する
方法
実施例3に記載
結果
表8からわかるように、コホート2および3では、単変量および多変量コックス回帰分析により、2個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルの予後予測値を検証できた。コホート2およびコホート3では、2個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルによって定義される分子的リスクの高い状態は、単変量および多変量コックス回帰分析のいずれにおいてもRP後の早期のBCRと有意に関連していた(単変量解析ではそれぞれP=0.047、P=0.023;多変量解析ではそれぞれP=0.047、P=0.015)(表8中段および下段)。コホート2では、切除部の病理学的なT病期およびグリーソンスコアは有意な独立した予後予測値を有さず、コホート3では、病理学的なT病期は多変量モデルでは有意でなく、グリーソンスコアは一方の群では事象がないため分析から除外した。
さらに、多変量モデルのそれぞれの予測精度をハレルのC指数によって推定した。注目すべきことに、臨床病理学的因子のみを含む多変量モデルに2個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルを加えると、予測精度はコホート2では0.73から0.74(表8中段)、コホート3では0.73から0.79(表8下段)に上昇し、この複合予後予測モデルが適度に改善された性能をもつことが裏付けられている。最後に、カプラン・マイヤー分析により、コホート2では2個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルと短いRFSが有意に関連している(図5B;P=0.0487、ログランク検定)ことが実証され、この関連性はコホート3でも検証できた(図5C;P=0.0005、ログランク検定)。
コホート3の腫瘍試料は異なる国籍(米国)のもので、異なる方法(スナップ凍結)で採取され、異なるRNA抽出手順に供され、異なるマイクロRNA発現検出プラットフォームで分析され、コホートの特徴が異なっていた(コホート3はコホート1および2よりも全体的に悪性度が低く、再発の事象が少なかった)にもかかわらず、発明者らの2個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルはこの外部コホートでも同等に良好に機能し、この2個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデルの確実さを強調している。
結論
発明者らは、3つの独立した患者コホートでRP後のBCRまでの時間の予測に関して有意な独立した値を有する、比に基づく2個のマイクロRNAからなる予後分類因子を構築した(実施例1および6)。この2個のマイクロRNAからなる予後に関する比モデル(すなわちコホート1でのRP後のBCRまでの時間の有意な独立した予後予測因子)の性能は、まったく異なる患者コホート3で検証され、前立腺がんに関する予後予測手段としてのこの分類因子の強さと確実さが証明された。
(表)
Figure 0006769979
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Claims (13)

  1. 前立腺がん患者の予後を生体外で評価する方法であって、前記患者から採取した前立腺細胞を含む試料において、miRとして少なくともmiR−10b−5p及びmiR−374b−5pの発現レベルを測定するとともに、任意によりmiR−133a−3p、miR−106a−5p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−615−3p、及びmiR−625−3pからなる群より選択される少なくとも1個の追加のmiRの発現レベルを測定することを含み、ここで、基準発現プロファイルと比較して前記miRの発現レベルの変化は前記患者の予後を示す、方法。
  2. 前記追加のmiRは、iR−133a−3p、及びmiR−23a−3pからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 発現レベルは正規化された発現レベルである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 発現レベルはmiR−151a−5pの発現レベルに対して正規化されている、請求項3に記載の方法。
  5. 前立腺がんが進行する確率の増加の評価は、前記試料で前記miRのレベルを検出することと、前記miRの発現レベルデータを含むデータセットに基づき予後スコア(P)を計算することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記予後スコア(P)は以下の発現レベルの比:
    Figure 0006769979
    として計算される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記予後スコア(P)は以下の発現レベルの比:
    Figure 0006769979
    として計算される、請求項5に記載の方法。
  8. 前記miRの発現レベルはqRT−PCRの方法により決定される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記miRの発現レベルはマイクロアレイによって測定される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記miRの発現レベルの測定に用いられるRNAは、FFPEブロックまたはスナップ凍結組織の切片の90%超の腫瘍を含むと評価された領域から得たパンチ生検体から抽出される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記miRの発現レベルの測定に用いられるRNAの260/280nmの吸光度比は1.75より大きい、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前立腺がん患者の予後を生体外で評価するためのキットであって、記患者から採取した前立腺細胞を含む試料において、miRとして少なくともmiR−10b−5p及びmiR−374b−5pの発現レベルを測定するための手段を含むとともに、任意により、miRとして更にmiR−133a−3p、miR−106a−5p、miR−152−3p、miR−185−5p、miR−193a−5p、miR−221−3p、miR−23a−3p、miR−30d−3p、miR−326、miR−615−3p、及びmiR−625−3pからなる群より選択される少なくとも1個の追加のmiRの発現レベルを測定するための手段を含み、ここで、基準発現プロファイルと比較して前記miRの発現レベルの変化は前記患者の予後を示す、キット。
  13. 前記追加のmiRは、iR−133a−3p、及びmiR−23a−3pからなる群より選択される、請求項12に記載のキット。
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