JP6766106B2 - 水素の製造方法 - Google Patents

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本発明は、水素の製造方法および製造装置に関する。
近年、化石燃料の枯渇や地球温暖化などの懸念から、石油由来の燃料の代替としてバイオマス由来の燃料生産が検討されている。現在検討されているバイオマスとしては、廃棄物由来のものとして、木材、紙類、食品廃材等が知られている。また、バイオマス燃料としては、クリーンな燃料として水素ガスも注目を浴びている。
有機系の廃棄物としては木材(木くず)や紙類も多く、そのような食物由来ではない非食料バイオマスの利用についても積極的な利用が検討されている。製材工場の残材や住宅解体材などの廃棄物をバイオマスエネルギーとして有効に活用できれば、廃棄物を減らしてクリーンなエネルギーを得ることが可能となるため期待が高まっている。さらには、野菜や穀物などの外皮といった、廃棄される不溶性食物繊維についてもエネルギーとしての利用可能性が模索されている。
これまでに行われている木材等のエネルギーへの転換は主として燃焼によるものが一般的である。燃焼の場合、燃焼させて水を沸騰させ、水蒸気でタービンを回して発電する方法が用いられている。直接燃焼方式は作り出せる温度が比較的低いので、大型の設備でないと効率が悪くなる。また、大型化するほど大量の木材を安定して調達する必要があるため、木材の品質や切り出し・運搬・加工などの条件が難しくなるという問題もある。その他の手段として、熱分解により燃焼ガスを取り出す方法があるが、熱分解には200℃以上の高温を人工的に作り出す必要がある。
さらに上記以外に、これまでにも、木材やセルロース基質から水素を生産する方法として、微生物を用いる手段は検討されている。例えば、水素を生成する電解槽の陽極に、微生物を固定化した固定化微生物電極を用いる、微生物電解槽が報告されている(特許文献1)。また、クロストリジウム属細菌の混合培養によるセルロース基質からの水素およびブタノール生産方法であって、セルロース資化能を有するクロストリジウム属細菌と、水素およびブタノール生産能を有するクロストリジウム属細菌を用いる方法も報告されている(特許文献2)。
しかしながら、前者は前処理として高温・高圧水処理が必要であり、後者は2種類の菌を混合培養する必要があるため、あまり効率的な方法であるとは言い難い。
一方、Thermococcus kodakarensisは、Thermococcus属の微生物であり、これまでに、ピルビン酸やでんぷん系多糖類を原料として水素を製造することが知られている(特許文献3)。
Thermococcus kodakarensisは鹿児島県小宝島の硫気孔より分離された、至適生育温度が80℃以上の始原菌(超好熱始原菌)である。Thermococcus kodakarensis KOD1菌株についてはゲノム解析も終了しており、ピルビン酸またはデンプンが添加された培養培地を用いた培養実験により、水素発生に関わるヒドロゲナーゼも特定されている(非特許文献1)。
しかしながら、Thermococcus kodakarensisにおいて、セルロース系多糖類を分解する酵素が含まれていることについてこれまでに報告はない。多糖類には、デンプン系とセルロース系の2種類に主に分けられるが、両者は同じ多糖類ながらその構造において大きく異なっている。性質もかなり相違しており、セルロース系多糖類は水には容易に溶けず、非常に安定な構造を有しているために分解もしにくい傾向がある。よって、デンプン系多糖類を分解して水素発生を行うことが知られていたからといって、Thermococcus kodakarensisが木材や紙類などのセルロース系多糖類をも分解できるとは言えない。むしろ、これまではThermococcus
kodakarensisにはセルロース系多糖類を分解する酵素は含まれていないと考えられていた。
特開2015−89945号公報 特開2012−213378号公報 特許3771475号公報
Journal of the Japan Petroleum Insitute,56,(5),267−279(2013年)
上述したように、食物由来のデンプンなどだけでなく、木材や紙類など、もしくは野菜や穀物の外皮等の廃棄物を利用できれば、循環型社会の形成にもより一層貢献することができる。しかし、前記従来技術では、木質バイオマス等のセルロース系原料から水素を得るために、煩雑で費用のかかる前処理や、2種以上の菌を用いた段階的処理が必要となっており、あまり効率的な水素の製造方法とは言えなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特定の微生物を用いて水素を効率よく製造する方法及び装置を提供することを目的とする。そして、本発明者らは、下記構成により、上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明の一態様に係る水素の製造方法は、木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つや、セルロース系多糖類を添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養することにより、菌体に水素を産生させること、および、前記の培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、元素硫黄の非存在下に、かつ温度60〜105℃で行うことを特徴とする。
さらに、前記水素の製造方法において、Thermococcus kodakarensisが、Thermococcus kodakarensis KOD1(寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、受託番号:FERM P−15007号)であることが好ましい。
本発明の他の態様に係る水素の製造装置は、木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つや、セルロース系多糖類を添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養する培養槽と、前記培養槽を嫌気性雰囲気下に保持する雰囲気保持手段と、前記培養槽を60〜105℃に保つ加熱手段と、前記培養槽にて発生した水素が含まれるガスを導出するガス導出手段とを少なくとも備えていること、および、前記の培養を、光照射することなく、元素硫黄の非存在下で行うことを特徴とする。
本発明によれば、原料を化石に依存することなく、効率良くクリーンなエネルギーである水素を発生させることができる。本発明における微生物の培養温度(最適生育温度)が85℃前後であるため、他の菌の繁殖による汚染を回避することができ、目的の微生物(好熱菌)のみを増殖することができる。加えて、高温(たとえば300℃以上)を必要としないので、加熱に要するエネルギーコストが削減できる上に、反応装置の材質として当該温度領域で常用されている、安価でかつ腐食しにくい樹脂等を選択することが可能となる。また、光照射を要しないので照射部に有機物等が付着するなどの光照射に伴う種々の問題を生ずることもない。
図1は、本実施形態に係る水素製造装置の一例を示す概略図である。 図2は、実施例で使用した水素製造装置の概略図である。 図3は、実施例における水素量測定方法を示す概略図である。
本発明者らは、鋭意努力の結果、Thermococcus属のThermococcus kodakarensisの種に属する微生物、具体的にはその中のKOD1の菌株が、多糖類の中でも分解しにくいとされている木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つや、セルロース系多糖類から、光を必要とせず水素を発生する能力があることを見い出し、さらに研究を重ねて本発明を達成した。
一般に微生物は、高温の温泉等の噴出口などから単離される特殊な菌を除き、60℃以上の高温では死滅するかまたは生育しえない場合が多い。従って、本発明の微生物のように60〜150℃の高温で生育できることは、培養時に他の菌の繁殖による汚染を回避することができ、容易に目的の好熱菌のみを増殖させることができる利点がある。
しかも本発明によれば、光合成細菌を利用して水素を発生する場合には不可欠である光照射を必要としないので、光照射に必要な設備を削減し簡素化できる。さらに、光照射部に発生付着する有機物等によって光が吸収されたり遮断されたりして、著しく水素の発生効率が低下する危険性を回避できる利点がある。
以下、本発明の好適な実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定はされない。
本実施形態の水素の製造方法は、木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つや、セルロース系多糖類を添加した培養液を用いてThermococcus属の微生物を培養することにより、菌体に水素を産生させる。
本実施形態では、前記Thermococcus属の微生物として、Thermococcus kodakarensisに属する菌である、Thermococcus kodakarensis KOD1を用いる。この菌株KOD1は、公的機関である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、受託番号:FERM P−15007号として寄託されており、当業者は容易に入手することができる。上記寄託は、Pyrococcus sp.KOD1またはPyrococcus kodakarensis KOD1で登録されているが、正確にはThermococcus kodakarensis KOD1である(Journal of Bacteriology,Vol.182,No.22,Nov.2000,p.6424−6433等参照)。
本実施形態の培養液としては、種々の培地組成を有するものが用いられる。代表的な一例としては、人工海水塩を加えた培地(MA培地)等が挙げられる。さらに酵母エキスやトリプトン等を加えてもよい。
そして本実施形態においては、この培養液に、木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つや、セルロース系多糖類を基質として添加する。これらは単独で培養液に添加してもよいが、これらの複数を培養液に添加してもよい。例えば、木材及び紙類とを併用することも可能であるし、さらに不溶性食物繊維を添加したり、その他のセルロース系多糖類を添加して使用することも可能である。
本実施形態の培養液における基質は、木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つやセルロース系多糖類であれば特に限定はない。例えば、木材や紙類であれば、製材工場の残材や住宅解体材などの廃棄物、木屑(チップ化された木質廃材)、木質ペレット、枯れ葉・枯れ枝、紙屑などの紙材等、木質系および紙類の廃棄有機物を広く使用することができる。不溶性食物繊維としては、じゃがいも等の芋類、穀物、豆類、木の実、果実、野菜等、およびそれらの外皮などが例示として挙げられる。不溶性食物繊維を含む廃棄物としては、外皮以外にも、例えば、数量調整や品質等を理由に廃棄された前記食品等、売れ残り、消費期限切れや食べ残し等の理由で廃棄された食料品などを利用することも可能である。不溶性食物繊維には、セルロース、ヘミセルロースといったセルロース系多糖類の他に、リグニンなどが含まれる。一方、セルロース系多糖類は、植物の細胞壁の主成分として知られており、野菜や穀物類の外皮や芋類の外皮に多く含まれる。
実際の培養操作にあたっては、上述したような基質を添加した培養液に、別途、Thermococcus kodakarensis KOD1を前培養したものを植菌し、ついで本培養を開始することが望ましい。
培養温度は、温度60〜105℃に設定される。好ましくは、65〜100℃、より好ましくは70〜95℃、さらには80〜90℃に設定することが望ましい。60℃未満では水素の発生量が不足し、一方105℃を越えると、水素の発生量がかえって低下する傾向がある。Thermococcus kodakarensis KOD1の最適生育温度は、一般の微生物にしては極めて高い85℃前後であるので、この温度から極端に乖離することは好ましくない。
さらに、培養に際しての留意事項は、培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、かつ元素硫黄(単体硫黄)の非存在下に行うことである。なお、本発明の趣旨を損なわない範囲において、雰囲気中に微量の酸素が含まれていたり、培養中に微量の光が入り込んだり、培養液に微量の元素硫黄が添加されていたりしても、それらが単に名目的なものであって本発明の趣旨を損なわないものであるときは、本発明の技術的範囲から外れることにはならない。
なお、Thermococcus kodakarensis KOD1は、増殖過程で水素を生成する一方、酢酸をも生成する。酢酸は、KOD1の増殖の阻害要因になるため、ある程度の水素を生成した後は水素生産が止まる。そこで、ある程度酢酸が生成された後は、培地を一部入れ替えたり、酢酸を除去又は分解する等して酢酸濃度を低下させることで、繰り返し水素生成を行うことができる。例えば、連続的に培地を新鮮な培地に置き換える連続培養を行うことにより、より効率的に連続して水素生成を行うことができる。
〈水素の製造装置〉
上記の方法を実施するための水素の製造装置としては、図1に示すように、
・上述したような基質(木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つ、及び/又はセルロース系多糖類)を添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensis KOD1を培養する培養槽(1)と、
・その培養槽(1)を嫌気性雰囲気下に保持する任意手段としての不活性ガス供給手段(2)と、
・その培養槽(1)を所定の温度に保つ加熱手段(3)と、
・その培養槽(1)にて発生した水素を含むガスを導出するガス導出手段(4)
とを備えたものが好適に用いられる。
なお、嫌気性とガス撹拌とを効率的かつ確実に維持するための不活性ガスの供給手段(2)を省略し、密閉式の培養槽(1)を用いて機械的撹拌手段により撹拌する機械撹拌方式を採用したり、培養槽(1)から発生するガスの一部を培養槽(1)内の培養液中に戻して撹拌を図る自己ガス撹拌方式を採用したりすることもできる。そのほか、必要に応じ、水素ガスの濃縮分離のための種々の手段、各種制御手段、種々の除害手段などを付設することができる。
なお、「水素の製造法」の個所で述べたのと同様に、上記のThermococcus属の微生物としてはThermococcus kodakarensisを用い、また培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、かつ元素硫黄(単体硫黄)の非存在下に行うようにする。
培養槽(1)は、単槽でもよいが、複数の槽を用いることもできる。槽の形状は、特に制限はないものの、円筒形とすることが望ましい。
槽の材質は、100℃前後の温度に耐えるものであることが要求される。そして、培地に高濃度の塩を使用すること、また培養時に硫化水素が発生する場合があることから、耐腐食性の高いものが用いられる。たとえば、アルミニウム、各種ステンレス鋼、ハステロイなどの耐酸性金属が用いられ、殊にステンレス鋼の場合はオーステナイト系ステンレス鋼が望ましく、特にSUS316L、SUS304等が最も望ましい。しかしながら、これらの金属は、耐腐食性に関しては完全ではない。耐腐食性を考慮した場合、樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどでもよいが、耐熱性が高いフッ素樹脂が望ましく、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが最も好ましい。ここで嫌気性菌の特性を考えた場合、培養時に極力酸素に接触させない方が望ましいことから、酸素透過性は小さいものほどよい。しかしながら、これらの樹脂は、金属に比しては酸素の透過性が高いという欠点があり、また樹脂を用いた場合、強度的に充分な形状を維持するためには、槽の肉厚を厚くする必要があり、コストも高くなるという欠点がある。また耐腐食性、酸素遮断性を考慮した場合には、各種ガラスでもよいが、破損しやすいという欠点がある。故に、耐腐食性が高く、酸素透過性が低く、かつ強度が大であるという観点から、SUS316L、SUS304等の金属に上記のようなフッ素樹脂をコーティングまたはライニングしたものが最適であるということができる。
不活性ガス供給手段(2)としては、窒素ガスなどの不活性ガスを供給する手段が採用される。不活性ガスの純度はできるだけ高い方が望ましく、特に酸素混入量の少ないものが望ましい。不活性ガスとしては、たとえば、半導体製造用に使用される半導体用材料窒素(純度99.9999%以上、含有酸素量0.1ppm(v/v)未満、大陽東洋酸素株式会社製)や超高純度窒素(USグレード窒素、純度99.99995%以上、酸素含有量0.1ppm(v/v)未満、大陽東洋酸素株式会社製)などが好適に用いられる。
なお、不活性ガスの供給は、培養中必ずしも必要としないが、培養前に予め培養液中の溶存酸素を系外に排出する必要があり、また培養中に発生する水素を培養液中からすみやかに系外移動させる目的の点でも、供給する方が望ましい。
加熱手段(3)としては、ジャケットタイプ、電熱タイプをはじめとする種々の加熱機構が採用される。特に加熱方法に関しては、培養槽内を撹拌装置により撹拌する場合があるので、下部に加熱部(ヒータ)を具備したマグネチックスターラを装備し、また効率良くヒートアップするために槽の胴部を保温または加熱するためのマントルヒータを装備して、加熱するようにすることが望ましい。
ガス導出手段(4)は、単なる配管で充分である。材質は、基本的に培養槽に適合するものと同様であることが望ましい。また自由度が高いという点で、各種ゴムを使用してもよく、特にガス透過性が小さいエチレン・プロピレンゴムやフッ素ゴム(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体等)などは、耐酸性や耐熱性の点で、好ましい材質の例である。
なお、光照射することなく培養を行うためには、本実施形態の水素製造装置は遮光手段を備えていることが好ましい(図示せず)。さらに、上述したように、本実施形態の微生物により酢酸が生成されるため、培養槽中の酢酸濃度を低下する手段をさらに備えていてもよい(図示せず)。
本実施形態の方法または装置により得られた水素は、油脂工業における水添反応、酸素・水素炎による溶接、金属の還元処理、ガラスの溶融、半導体工業における還元処理、ロケット燃料(液体水素)をはじめとする従来型の用途や、自動車用燃料電池燃料、家庭用燃料電池燃料をはじめとする新規用途に用いることができる。
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下にまとめる。
本発明の一態様に係る水素の製造方法は、木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つを添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養することにより、菌体に水素を産生させること、および、
前記の培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、元素硫黄の非存在下に、かつ温度60〜105℃で行うこと、を特徴とする。
本発明の別の態様に係る水素の製造方法は、セルロース系多糖類を添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養することにより、菌体に水素を産生させること、および、
前記の培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、元素硫黄の非存在下に、かつ温度60〜105℃で行うこと、を特徴とする。
このような構成により、原料を化石に依存することなく、効率良くクリーンなエネルギーである水素を発生させることができる。また、微生物の培養温度(最適生育温度)が85℃前後であるため、他の菌の繁殖による汚染を回避することができ、目的の微生物(好熱菌)のみを増殖することができる。加えて、高温(たとえば300℃以上)を必要としないためコスト等も抑えることができる。また、光照射を要しないので照射部に有機物等が付着するなどの光照射に伴う種々の問題を生ずることもないという利点がある。
前記水素の製造方法において、Thermococcus kodakarensisが、Thermococcus kodakarensis KOD1(寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、受託番号:FERM P−15007号)であることが好ましい。それにより、上述したような効果をより確実に得ることができる。
本発明の他の態様に係る水素の製造装置は、木材、紙類及び不溶性食物繊維から選択される少なくとも一つを添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養する培養槽と、前記培養槽を嫌気性雰囲気下に保持する雰囲気保持手段と、前記培養槽を60〜105℃に保つ加熱手段と、前記培養槽にて発生した水素が含まれるガスを導出するガス導出手段とを少なくとも備えていること、および、前記の培養を、光照射することなく、元素硫黄の非存在下で行うこと、を特徴とする。
本発明のさらなる態様に係る水素の製造装置は、セルロース系多糖類を添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養する培養槽と、前記培養槽を嫌気性雰囲気下に保持する雰囲気保持手段と、前記培養槽を60〜105℃に保つ加熱手段と、前記培養槽にて発生した水素が含まれるガスを導出するガス導出手段とを少なくとも備えていること、および、前記の培養を、光照射することなく、元素硫黄の非存在下で行うこと、を特徴とする。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例では、図2にその概略を示すような水素製造装置(培養装置)を用いた。
〈培地の調製〉
人工海水塩を加えた培地(MA培地)を基本とする次の培地を調製した。マリンアートは、海水と同じ成分を含む塩類の混合物である。
(基礎培地)
・3%(w/v)マリンアートSF(千寿製薬株式会社製)
〈培養装置〉
図2に示すように、メジューム瓶(8)(柴田科学株式会社製、017200−10002A、内容積1L)に、ねじ口瓶用キャップ(6)を取り付けたものを恒温槽(5)(エスペック株式会社製、PU4KP)に入れ、95℃に保った。ねじ口瓶用キャップ(6)には、シリコンチューブ(10)を取り付け、ガスパック(11)(GLサイエンス製、アルミ製)につないだ。
〈培養操作〉
(準備)
上記基礎培地に示す培養液(7)を、図2の培養装置のメジューム瓶(8)に充填し、高温滅菌処理(95℃、8時間)を行った。
(前培養操作)
前培養は、内容積約100mlの密閉ガラス容器内に培地組成1aの培養液100mlを充填し、嫌気性超好熱菌 Thermococcus kodakarensis KOD1を波長660nmの吸光度(absorbance)がOD660=0.1になるように調整した本菌の懸濁水1mlを植菌し、85℃で、当初pH8の状態からpH4になるまで培養を行った(約4日間〜1週間)。
(本培養操作)
前記基礎培地の組成の培養液が900mL入ったメジューム瓶(8)に、枯葉・枯れ枝を粉砕した木材素材(9)20gを投入し、そこへKOD1を前培養した培養液100mlを全量植菌して、本培養を開始した。
本培養は、恒温槽(5)により槽内温度が95℃になるようにして、6日間行った。
その結果、0.9mLの水素を得ることができた。
なお、水素量の測定については、図3に示すような方法で行った。具体的には、まず、上記培養によって産生したバイオガスを、図2に示すようにシリコンチューブ(10)を介してガスパック(11)に捕集した後、図3に示すように、水をいっぱいに充填したメジューム瓶(12)に移し替えた。当該メジューム瓶(12)にはさらに水をいっぱいに充填したメジューム瓶(13)をつなげ、そこへダイヤフラムポンプ(14)(株式会社イワキ社製、EHN−B21PC1YT)を用いて、15mL/分の一定値で水を投入した。メジューム瓶(12)から一定量を一定速度(15mL/分)で押し出されたバイオガスを、燃料電池(15)(株式会社FC−R&D製、FC3050)に流し、発電電圧を記録計(16)で計測した。ここで、メジューム瓶(13)は、ダイヤフラムポンプ(14)の脈動がバイオガスの流れに伝わることを緩和するために設置した。また、燃料電池による水素濃度と発電電圧の関係は予め計測しておき、発電電圧の値から水素濃度を計算した。
その後、培養後の1.0Lから800mLを取り出し、残り200mLの培養液に、前記基礎培地の水溶液を再び800mL投入し、さらに同様の条件で6日間95℃で培養した。その結果、さらに3.6mLの水素を得ることができた。同様の処置をして再度4日間95℃で培養したところ、さらに3mLの水素が得られた。
(実施例2)
本培養において、木材素材を段ボール片30gに置き換えた以外は、実施例1と同様にして、95℃で11日間培養を行ったところ、検知管で水素発生が確認できた。
以上より、本発明の微生物を用いた製造方法によって、木材や紙類のようなセルロース系多糖類から水素を発生できることが確認できた。
(実施例3)
〈培地の調製〉
人工海水塩を加えた培地(MA培地)を基本とする次の培地を調製した。
(基礎培地)
・マリンアートSF−1(大阪薬研株式会社製) 3.12g
・トリプトン(ナカライテスク株式会社製) 0.5g
・酵母エキス(ナカライテスク株式会社製) 0.5g
・残部 dHO 合計100mL
(前培養操作)
前培養は、恒温恒湿器PL−3J(株式会社エスペック製)内85℃環境下で、前記培地組成を用いて、嫌気性超好熱菌 Thermococcus kodakarensis KOD1を波長660nmの吸光度(absorbance)がOD660=0.1になるように調整した本菌を植菌し、24時間培養し、その後、PL−3Jのプログラム運転を使用し4°C環境下で冷蔵保管した。約40時間後、本培養実験での植菌に用いるために、再びPL−3J内を85°C環境に変更し5時間程度培養を行った。
(本培養操作)
前記基礎培地の組成の培養液が500mL入ったメジューム瓶に、栄養源としてじゃがいもの皮を添加した。添加したじゃがいもの皮の量は、食物繊維量がおおよそ0.5gとなるよう14.2gである。
前記培地と栄養源をそれぞれに滅菌し、混ぜて本培養用の培地サンプルとした。培地作成と前培養培地内のKOD1株の増殖確認後、グローブボックス内で上記で得られたKOD1株培養液を5mL各培地サンプルへ添加して、植菌操作を行った。植菌操作を行った後、ガス捕集用のアルミバッグを、テフロン(登録商標)チューブを用いて培養ビンと接続し、恒温恒湿器PL−3J内にて85°C環境下で培養を開始した。本培養は、20時間行った。
水素量の測定は、アルミバッグ内の気体量の測定と目視による濁度の評価で行った。アルミバッグにシリンジを接続して中の気体をすべて吸引し、アルミバッグ内の気体量を測定した。さらにシリンジに吸引した気体を燃料電池に通し、電圧を測定することで気体内の水素の有無を確認した。
その結果、アルミバッグ内の気体量は514mLであった。これを0.7Vが上限の燃料電池にシリンジにて注入したところ、電圧が振り切れたため、この気体中の水素濃度が高いことが示唆された。そこで、捕集された気体について、特許文献3を参考に水素67%、二酸化炭素33%の割合であるとして計算すると、500mLの培地から20時間の培養で約340mLの水素が得られたと考えられる。
以上より、じゃがいもの皮等の不溶性食物繊維を成分として含むものについても、有効に利用して水素を製造できることが確認できた。
1 培養槽
2 不活性ガス供給手段
3 加熱手段
4 ガス導出手段
5 恒温槽
6 ねじ口瓶用キャップ
7 培養液
8、12、13 メジューム瓶
9 木材素材
10 シリコンチューブ
11 ガスパック
14 ダイヤフラムポンプ
15 燃料電池
16 記録計(電圧測定)

Claims (4)

  1. 木材及び紙類から選択される少なくとも一つを添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養することにより、菌体に水素を産生させること、および、
    前記の培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、元素硫黄の非存在下に、かつ温度60〜105℃で行うこと、
    を特徴とする水素の製造方法。
  2. 不溶性食物繊維を含む、芋類、穀物、豆類、木の実、果実、野菜及びそれらの外皮から選択される少なくとも一つを添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養することにより、菌体に水素を産生させること、および、
    前記の培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、元素硫黄の非存在下に、かつ温度60〜105℃で行うこと、
    を特徴とする水素の製造方法。
  3. セルロース系多糖類を含む野菜、穀物類及び芋類の外皮から選択される少なくとも一つを添加した培養液を用いてThermococcus kodakarensisを培養することにより、菌体に水素を産生させること、および、
    前記の培養を、嫌気性雰囲気下に、光照射することなく、元素硫黄の非存在下に、かつ温度60〜105℃で行うこと、
    を特徴とする水素の製造方法。
  4. Thermococcus kodakarensisが、Thermococcus kodakarensis KOD1(寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、受託番号:FERM P−15007号)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水素の製造方法。
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