JP6762814B2 - コンクリート構造物内の空洞量推定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート構造物内の空洞量推定方法に関し、より詳しくは、コンクリート構造物であるPC構造物のシース管に存在するPCグラウト未充填部の空洞量を算出するPC構造物のグラウト未充填部の空洞量推定方法に関するものである。
PC鋼材等の緊張材でコンクリートにプレストレスを付与したポストテンション方式のPC構造物は、PC鋼材を腐食から保護し,構造物と一体化させる目的で,シース管内にPCグラウトが充填されている。しかし,古い構造物の一部には施工当時の材料性能や施工技術の未熟さから,十分にPCグラウトが充填されていない箇所が存在することが知られている。こうしたPCグラウトの充填不足箇所におけるPC鋼材の腐食・破断のおそれがあり、これらに起因するPC構造物の耐荷性能の低下が懸念されている。そして、このようなPC構造物の機能回復には、充填不足箇所にPCグラウトを再注入することが有効と考えられている。なお、PC構造物とは、橋梁(PC桁、PC床版、セグメント)、建築物の梁などのコンクリート構造物にテンションを加えた高強度鋼材(PC緊張材)を配置し,コンクリートにプレストレス(圧縮力)を与えることで,引張力に弱くひび割れ易いコンクリートの特性を改善した構造物を指している。
PC構造物にPCグラウトを再注入するには、構造物の表面からシース管までPC構造物のコンクリート部分を削孔するとともに、その削孔した孔にグラウトホースを接続してPCグラウトを注入する。PC構造物へのグラウト再注入の実施にあたっては、シース管内の空隙に対してどの程度再充填できたかを確認する必要があり、また端部や橋面からグラウトが漏出していないかなど施工の安全管理の側面からも、注入予定のPCグラウトの量を事前に把握しておくことが重要である。つまり、PC構造物に存在するPCグラウト未充填部の空洞量を事前に把握する必要がある。
このようなコンクリート構造物の空洞量推定方法として、例えば、特許文献1には、コンクリート構造物(PC構造物100)に穿孔し、この孔(調査孔130)から所定圧力で所定量の気体を流入又は流出させ、計測圧力を前記所定圧力で除した圧力比の時間変動により前記孔(調査孔130)に連通する空洞120の容量を計測するコンクリート構造物の空洞検査方法が記載されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0013]〜[0019]、図面の図1〜図4等参照)。
また、特許文献2には、コンクリート構造物(PC構造物100)に穿孔し、この孔(調査孔130)から一定の圧力及び流量に調整した気体を前記孔に連通する空洞120に流入又は流出させ、圧力変動を時間情報と共に計測し、流入開始後に計測圧力が増大し始めて一定値に集束する前の時間範囲において所定の基準圧力に到達する時間により空洞120の容量を求めるコンクリート構造物の空洞検査方法が記載されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1,4、明細書の段落[0020]〜[0025]、図面の図5〜図8等参照)。
しかし、特許文献1及び2に記載のコンクリート構造物の空洞検査方法は、室内実験結果で得られた検量線にもとづくため、計測条件の様々な実際のコンクリート構造物に適用した場合は、誤差が大きくなることがあり、実用的ではないという問題があった。
何故なら、特許文献1及び2に記載のコンクリート構造物の空洞検査方法の室内実験では、気体の通過経路(断面形状)が一定であるのに対し、実構造物では、グラウトが一部充填されたことで狭小区間が存在することがあり、この場合計測時の気体の流速が減少することで、圧力の時間変動はこれの影響を大きく受けるため、推定誤差が大きくなるからである。
また、大気圧が変化すれば、計測される圧力比の時間変動も異なるため、これを考慮しないと推定誤差を生じてしまうし、また外気と構造物内の気温差の影響で推定誤差を生む可能性がある。また、シール部30の気密性を短時間で確保することは困難であり、作業性に課題がある。このため、気密性を保つのが困難であり、誤差を生む原因となる。つまり、特許文献1及び2に記載の検量線に依存したコンクリート構造物の空洞検査方法では、圧力の時間変動は現場や構造物の環境によって大きく左右されるため、実構造物では、非常に誤差が過大となる場合があり、安定した良好な精度を満足できるものではないという問題があった。
そして、実際のコンクリート構造物では、シース管などの空洞にひび割れや開孔が存在し、空洞の気密性が確保されていないことが多く、その発見も容易ではない。そのため、コンクリート構造物に存在する空洞が外気と連通した漏気状態で、且つ、その漏気が大きい(時間あたりの漏気量が多量)場合であっても、精度よく空洞量の推定が可能なコンクリート構造物の空洞量推定方法が切望されている。
特開2009−150734号公報 特許5286427号公報
そこで、本発明は、上述した問題を鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、コンクリート構造物の空洞からの漏気が大きい条件において、大気圧や気温の変化など現場の気象条件や空洞形状に左右されず、精度よくその空洞の容積を推定可能なコンクリート構造物の空洞量推定方法を提供することにある。
請求項1に記載のコンクリート構造物の空洞量推定方法は、コンクリート構造物の内部に存在する空洞の容積を当該空洞が外気と連通した漏気状態で推定して算出するコンクリート構造物内の空洞量推定方法であって、前記空洞と、所定の圧力まで減圧した容積既知の減圧容器と、を開放閉塞自在な開閉バルブを介して連通させ、前記減圧容器内の圧力と、前記空洞内と連通する空気の圧力を、前記開閉バルブの開放前後に亘り所定時間計測して複数の計測データを取得するとともに、前記開閉バルブの開放後に計測した混合気体の圧力の複数の計測データのなかから決定係数Rを用いて近似に使用する計測データを選択するステップを有し、選択した計測データから近似した時間を変数とする一次関数を基に混合気体の圧力P3を決定し、混合気体の圧力P3を理想気体の状態方程式から導出した次式に代入して前記空洞の容積を算出することを特徴とする。
ここで、P1:減圧容器内の気体の圧力、V1:減圧容器内の気体の容積、P2:空洞内の気体の圧力、V2:空洞内の気体の容積、P3:混合気体の圧力である。
請求項2に記載のコンクリート構造物の空洞量推定方法は、請求項1に記載のコンクリート構造物の空洞量推定方法において、前記計測データを選択するステップでは、決定係数R2が0.99以上となる連続する区間の計測データであり、且つ、計測データの個数が10以上となるように選択することを特徴とする。
請求項1又は2に記載の発明によれば、空洞に時間あたりの漏気量が多い条件において、大気圧や気温の変化など現場の気象条件や構造物内の空洞形状に左右されず、コンクリート構造物の空洞量を精度よく推定することができる。
また、請求項1又は2に記載の発明によれば、真空度が高い区間は大気圧付近の漏気速度変化の影響を受けず直線的に変化すると考えられるため、一次関数に直線近似することで、コンクリート構造物の空洞からの漏気が大きい条件における回帰モデルとして最適であり、さらに精度よくコンクリート構造物の空洞量を推定することができる。
特に、請求項2に記載の発明によれば、大気圧の影響を受ける区間のデータを排除できるので、さらに精度よくコンクリート構造物の空洞量を推定することができる。
本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法に用いる空洞量推定システムの構成を模式的に示した構成説明図である。 コンクリート構造物の空洞量推定方法において最小二乗法により直線近似する場合のデータ処理手順を説明する説明図である。 本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法における近似に使用する計測データを選択するステップの決定係数の値に基づきデータ使用範囲を少なくしていく工程を示すデータ処理手順の説明図である。 同上の計測データを選択するステップの決定係数の値に基づき近似線を引く工程を示すデータ処理手順の説明図である。
以下、本発明に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法を実施するための一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
[空洞量推定システム]
先ず、図1を用いて、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法に用いる空洞量推定システムについて説明する。本実施形態に係る空洞量推定システム1は、所定の真空圧力まで減圧する真空ポンプ2と、この真空ポンプ2とパイプ等で連通する容積(本実施形態では約10L)既知の減圧容器3と、この減圧容器3内の圧力を計測する圧力センサ4と、前記減圧容器3内の温度を計測する温度センサ5と、これらの圧力センサ4と温度センサ5で計測した計測値を記録するデータロガー6と、このデータロガー6と電気的に接続され、所定のプログラムにより後述の空洞量推定方法を実行して計算するパソコン7などから構成されている。
この空洞量推定システム1は、その減圧容器3が、例えば、コンクリート構造物として例示するPC構造物101のコンクリート内に埋設されたシース管102に連通する孔である削孔部103に、開閉バルブ9を介して接続パイプ104によりに接続され、この接続パイプ104内の圧力と温度を計測するため、前述の圧力センサ4、温度センサ5と同構成の圧力センサ4’と温度センサ5’が設置され、これらの圧力センサ4’と温度センサ5’がデータロガー6に接続される。
そして、開閉バルブ8を開いて真空ポンプ2で減圧容器3内を所定の真空度まで減圧して開閉バルブ8を閉じたうえ、開閉バルブ9を開放して、2つの圧力センサ4、4’と2つの温度センサ5,5’で計測した計測値がデータロガー6を介してパソコン7に取り込こまれ、パソコン7によりシース管102に存在するグラウト未充填部である空洞Xの空洞量が推定計算される。なお、具体的な推定方法は、後で詳述する。
[推定原理]
次に、図1を用いて、本発明のコンクリート構造物の空洞量推定方法の推定原理について説明する。本発明のコンクリート構造物の空洞量推定方法の推定原理としては、理想気体の状態方程式(ボイル・シャルルの法則とアボガドロの法則を組み合わせた式:PV=nRT)を用いてコンクリート構造物の未知の空洞容積である空洞量を推定して算出する。
但し、圧力等の計測対象となる気体には、空気を用いる。勿論、空気は、窒素、酸素、水蒸気、二酸化炭素、その他微量気体からなる実在混合気体であり、理想気体ではない。理想気体の状態方程式は、分子自身の大きさと分子間力の影響を無視しているため、理想気体の状態方程式を実在気体に適用すると高圧条件になるほど誤差が大きくなってしまう。しかし、理想気体ではなく実在気体であっても低圧条件では理想気体に近い挙動を示すため、本発明のコンクリート構造物の空洞量推定方法では、計測対象気体である空気を減圧環境で計測することで誤差なく理想気体の状態方程式を適用できるようにしている。減圧環境であれば、混合気体であっても、物質量の変化(化学反応や結露などの状態変化)がなければ、単一気体として理想気体の状態方程式を適用できると考えられる。
このような考え方により、減圧容器3内の気体について(1)式が成立すると仮定する。ここで、P1:減圧容器内の気体の圧力、V1:減圧容器内の気体の容積、n1:減圧容器内の気体のモル数、R:気体定数、T1:減圧容器内の気体の温度である。
容積の推定対象である空洞X内の気体について(2)式が成立すると仮定する。ここで、P2:空洞内の気体の圧力、V2:空洞内の気体の容積、n2:空洞内の気体のモル数、R:気体定数、T2:空洞内の気体の温度である。
これらの減圧容器3内の気体と空洞X内の気体を開閉バルブ9を開放して混合させた後の混合気体について(3)式が成立すると仮定する。ここで、P3:混合気体の圧力、V3:混合気体の容積、n3:混合気体のモル数、R:気体定数、T3:混合気体の温度である。
また、圧力変化による容器の変形は微小として無視すれば、(4)式が成立する。
そして、気体の混合後に物質量の変化がないと仮定すれば、(5)式が成立する。
(1)式、(2)式、(3)式をモル数nについて整理して(5)式に代入すると(6)式となる。
この(6)式から(4)式を用いてV3を消去して、V2について整理すると、空洞Xの空洞量の推定式である(7)式が得られる。ここで、V1は既知のため、P1,P2,P3,T1,T2,T3を計測することにより、未知数の空洞Xの容積(空洞量)であるV2を算出できることになる。
なお、気体混合前後の温度変化が僅かの場合、これを無視しても推定値に与える影響は殆ど無い。よって、温度を無視した簡易推定式を以下に示す。V1は既知のため、この(8)式によりP1,P2,P3を現場で計測することで、未知数のV2を算出できることになる。
なお、物質量の変化がないと仮定して(7)式及び(8)式を導出したが、実際のコンクリート構造物では、空洞Xの気密性が確保されていないことが多く、漏気して物質量が増加する場合がある。また、空洞内に水が浸水している場合は、減圧後水が水蒸気として気化することで、混合後の気体の物質量が増加する。しかし、後述の使用する計測データの選択及びそのデータからの混合気体の圧力の近似による補正方法を導入することにより、これら物質量の変化の影響を排除することができる。
次に、図1を用いて、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法について具体的に説明する。
(コンクリート構造物の削孔)
先ず、削孔機などを用いて、コンクリート構造物として例示するPC構造物101のコンクリート部分を削孔し、PC構造物101の外表面からシース管102まで到達する孔である削孔部103を穿孔して設ける。
(シース管の開削)
次に、シース管102内に挿通されている図示しないPC鋼材などの緊張材を傷つけないように注意しながらシース管102の削孔部103と接する部分を切り開いて開削する。
(空洞の確認)
次に、削孔した削孔部103に内視鏡等を挿入してシース管102内を目視により、空洞Xの有無を確認する。空洞Xが確認された場合は、空洞量の推定を行う。
(接続パイプの設置)
次に、削孔部103に減圧容器3と連通するホースと接続するための接続パイプ104を取り付けて固定し、削孔部103、接続パイプ104を介して減圧容器3と空洞Xを連通する。但し、ホース先端に吸盤式のパッドを取り付けてPC構造物101の表面に直接接続する場合は、この接続パイプ104は不要である。
(減圧容器内の減圧)
次に、開閉バルブ8を開いて真空ポンプ2で減圧容器3内を所定の真空度まで減圧する。本実施形態では、95%の真空度、即ち、−95[kPa]まで減圧し、開閉バルブ8を閉じる。勿論、所定の真空度は、真空ポンプ2の排気能力やPC構造物101の規模や空洞の状況に応じて適宜定められるものであって、95%の真空度に限られないのは云うまでもない。
(圧力、温度変化の計測)
次に、2つの圧力センサ4、4’と2つの温度センサ5,5’により所定の制御時間毎にインターバル計測(本実施形態では、0.2秒のインターバル計測)を開始する。この計測では、中間弁である開閉バルブ9を開栓・解放し、減圧容器3内の空気と空洞X内の空気とを混合させ、時間情報とともに減圧容器3内の空気の圧力、温度と空洞X内の空気の圧力、温度に相当する開閉バルブ9外の削孔部103側の圧力、温度を計測する。各圧力、温度の計測は、圧力センサ4、4’と温度センサ5,5により計測し、計測データをデータロガー6により記録する。このデータロガー6を介してパソコン7に計測データが取り込まれて空洞量計算に用いられる。
開閉バルブ9の開栓後、各所の空気の圧力は瞬時に変化するが、圧力センサ4、4’と温度センサ5,5による計測は、その後10秒程度、計測を継続する。開閉バルブ9の開栓直後の数秒(1.5秒)間は、圧力振動の影響が大きいと考えらえるうえ、後述のように、漏気の影響を受けずに直線的に変化する区間を選別して計測データを使用するためである。
(空洞量の計算)
次に、取り込んだ計測データを用いてパソコン7により空洞Xの容積である空洞量を算出する。算出式は、前述の(8)式を用い、空洞Xの容積(空洞量)V2を算出する。これにより、温度センサ5,5による計測が不要となり、温度センサ5,5を設置する必要がなくなる。
本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法では、空洞量の計算に際して、圧力センサ4、4’で計測した圧力の計測データをそのまま、(8)式に代入するのではなく、一旦、計測データを直線となる1次関数に線形近似し、近似した値を用いて混合気体の圧力P3を決定し、(8)式に代入して空洞Xの容積(空洞量)V2を算出する。空洞Xからの漏気や空洞Xに溜まった水などの影響による気体の物質量変化の影響と、開閉バルブ9の弁開放直後の圧力振動による圧力センサ4、4’の計測誤差の影響を排除することができるからである。
(近似に使用する計測データを選択するステップ)
次に、本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法における、近似に使用する計測データを選択するステップについて説明する。
図2に示すように、前述の線形近似した値を用いて混合気体の圧力P3を決定する手法としては、圧力振動の影響が大きいと考えられる開閉バルブの開栓直後の1.5秒分のデータを棄却した後、前後10秒分のデータ(50データ)をそれぞれ最小二乗法により直線近似する。しかし、この手法は、コンクリート構造物の空洞からの漏気が小さい場合には有用であるが、漏気が大きくなると短時間で真空度が大気圧迄開放され、大気圧付近では内外の圧力差が小さくなることで漏気速度が低下することによる影響などを受け推定値に大きな誤差が生まれるおそれがある。
但し、漏気の穴の大きさなどコンクリート構造物の空洞からの漏気経路の全断面積が経時的に変化しないのであれば、大気圧に対して十分な負圧が保たれている区間においては漏気による真空度の低下は時間に比例すると考えられる。そのため、その区間の計測データを用いて線形近似した場合は、回帰分析により導かれた直線の相関性を評価すると、その直線は強い相関を示すはずである。本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法では、この点に着目し、相関の強い区間のデータのみで回帰分析を用いて近似線の関数を決定する。
よって、本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法では、開閉バルブの開放後に計測した混合気体の圧力の複数の計測データのなかから決定係数R2を用いて近似に使用する計測データを選択し、選択した計測データから近似した一次関数を基に混合気体の圧力P3を決定する。
決定係数R2の定義は、複数存在するが、一般的な定義としては、変動のうち回帰式によって説明できる割合を表わし、次式による。寄与率とも呼ばれ、決定係数R2が1に近いと、残差変動が小さくよい回帰モデルであると評価できる。
ここで、(xi,yi)が計測した圧力の計測データであり、xiが経過時間(秒)でyiが圧力センサで計測した圧力[kPa]、μYがyiの平均、f(xi)が線形近似する回帰モデルである。
本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法における計測データの選択手法は、開閉バルブ開放後のデータについて直線区間のデータのみを用いるため、経過時間が長いデータから削除するように使用する計測データを選定する。これは、真空度が高い区間は大気圧付近の漏気速度変化の影響を受けず、直線的に変化するためである。具体的には、図3に示すように、大気圧の影響を受ける区間のデータを使用しないように、決定係数の値を見ながらデータ使用範囲を絞り込む。また、データの使用範囲は必要以上に狭めると近似線が漏気の影響だけでなく、計測器のノイズによる影響を受けるため、データの個数は、出来る限り多い方が良い。
このため、本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法では、図4に示すように、使用するデータは原則として−20kPa付近の所定圧力以下の区間、且つ、データ使用範囲は10データ(2秒)以上とする。これは過去の計測結果より、−20kPaより真空度の低い区間では大気圧との圧力差の影響を大きく受け、またデータ使用範囲を10データ未満とすると計測データが計測器のノイズによる影響を大きく受け、計測結果に誤差をもたらすためである。但し、計測システムを変更する場合はデータ使用範囲については使用する計測器の精度、ノイズによる影響、データの取得間隔等から適切に判断する必要がある。
具体的には、図4に示すように、決定係数R2が0.99以上となる連続する区間の計測データであり、且つ、計測データの個数が10以上となる最も強い相関性を示す範囲のデータを選択する。
なお、本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法における、近似に使用する計測データを選択するステップの適用範囲は、漏気による影響を持つときに限られる。これは、コンクリート構造物の空洞が、完全に密閉された空間では、開閉バルブの開放後の圧力変動のグラフは横這いになり、データの変化は計測機器のノイズが支配的となる。すると、本来真空度が一定になる区間でデータがノイズによって変動することとなるため、グラフの相関性が非常に弱くなり、強い相関を示すデータを得ることが出来ないためである。
そして、本実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法では、以上に説明した計測データを選択するステップで選択した計測データのみを用いて1次関数に線形近似し、近似した値から混合気体の圧力P3を決定し、(8)式に代入して空洞Xの容積(空洞量)V2を算出する。
以上説明した本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法によれば、大気圧の影響を受ける区間のデータを使用しないで、選択された計測データから線形近似し、空洞量を推定する。このため、空洞に時間あたりの漏気量が多い条件においても、大気圧や気温の変化など現場の気象条件と構造物内の空洞形状に左右されずに、極めて精度良くコンクリート構造物の空洞量を推定して算出することができる。
なお、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の空洞量推定方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、混合気体の圧力を決定する際に、一次関数に線形近似するものを例示して説明したが、近似する関数は、一次関数に限られず、その他の多項式関数、指数関数、対数関数、三角関数などの曲線や、曲線と直線とを組み合わせた回帰モデルであってもよい。
また、コンクリート構造物としてPC構造物を例示して説明したが、プレストレス等を加えない他のコンクリート構造物でも構わない。また、コンクリート構造物の空洞としてシース管内のグラウト未充填部を例示して説明したが、ジャンカなどコンクリート構造物にできた空洞と減圧容器とを何らかの方法により連通することができれば、本空洞量推定方法を適用することが可能である。
さらに、空洞に削孔して削孔部103を設け、減圧容器3と空洞Xを連通する場合を例示して説明したが、クラックなど初めからコンクリート構造物の内部の空洞と表面とを連通する孔等がある場合は、勿論、削孔して孔を設ける必要はないのは明らかである。
1 :空洞量推定システム
2 :真空ポンプ
3 :減圧容器
4,4’ :圧力センサ
5,5’ :温度センサ
6 :データロガー
7 :パソコン
8,9 :開閉バルブ
101 :PC構造物
102 :シース管
103 :削孔部
104 :接続パイプ
X :空洞

Claims (2)

  1. コンクリート構造物の内部に存在する空洞の容積を当該空洞が外気と連通した漏気状態で推定して算出するコンクリート構造物内の空洞量推定方法であって、
    前記空洞と、所定の圧力まで減圧した容積既知の減圧容器と、を開放閉塞自在な開閉バルブを介して連通させ、前記減圧容器内の圧力と、前記空洞内と連通する空気の圧力を、前記開閉バルブの開放前後に亘り所定時間計測して複数の計測データを取得するとともに、
    前記開閉バルブの開放後に計測した混合気体の圧力の複数の計測データのなかから決定係数Rを用いて近似に使用する計測データを選択するステップを有し、
    選択した計測データから近似した時間を変数とする一次関数を基に混合気体の圧力P3を決定し、混合気体の圧力P3を理想気体の状態方程式から導出した次式に代入して前記空洞の容積を算出すること
    を特徴とするコンクリート構造物内の空洞量推定方法。
    ここで、P1:減圧容器内の気体の圧力(kPa)、V1:減圧容器内の気体の容積(ml)、P2:空洞内の気体の圧力(kPa)、V2:空洞内の気体の容積(ml)、P3:混合気体の圧力(kPa)である。
  2. 前記計測データを選択するステップでは、決定係数Rが0.99以上となる連続する区間の計測データであり、且つ、計測データの個数が10以上となるように選択すること
    を特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物内の空洞量推定方法。
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