JP6753723B2 - 漏水測定装置および漏水測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水中構造物における漏水を測定可能な漏水測定装置およびそれを用いた漏水測定方法に関する。
ダム、ため池、プールなどの貯水施設において、河川や降雨からの自然の水供給量、あるいは人工的な水供給量を上回る過大な漏水が発生すると、発電や農業用水・飲料水の供給などの、貯水施設本来の機能が損なわれてしまい、問題である。
特許文献1は、貯水施設における漏水位置を検知する装置を開示し、この漏水検知装置を、底面のみ開放の遮水容器と、遮水容器の底面以外の位置に開口した貫通孔と、貫通孔に取り付けた流速計とより構成する。水中に遮水容器を吊り下げて、遮水容器の底面を水底に載置して周囲の水の流れを遮断し、遮水容器の内部の水の流れを、流速計によって計測する(要約)。
特許文献2は、水中ロボットを用いた貯水構造物の漏水検知装置を開示し、電極による電気分解によって発生する電解沈澱物または水素気泡を漏水検知のトレーサとして用いる。
特開2012-42277号公報 実開平07-38938号公報
ダム等の水中構造物において、漏水の「出口」である浸出点を特定して対処する方法が考えられるが、水の湧き出る個所は、周辺の下流の沢、斜面、ダム堤体下部に設けた監査廊など広い範囲にわたって平面的に散らばっているから、漏水個所としての特定が困難である。また、特定できたとしても、多数の漏水個所に対応した対策を講じることは膨大な労力と費用を要することになる。このため、ダムやため池などの貯水施設における有効な漏水抑制対策としては、漏水の「入口」を特定することがなによりも必要となる。
潜水士が流速計を持ち単に漏水部に近づけた場合は、漏水量が小さい場合は周囲の流れで測定できないことが多い。また、特許文献1の漏水検知装置は、吊り具で遮水容器を吊り下げ、遮水容器の底面を水底に載置してから計測するため、漏水測定箇所は主に水平な底面のみとなり、曲面や比較的勾配のある傾斜面や直立面には対応できない。また、特許文献2の漏水検知装置は、漏水検知のみで漏水量は測定できない。
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、漏水箇所が水平面のみならず曲面や傾斜面や直立面であっても精度のよい漏水測定ができしかも漏水量を測定可能な漏水測定装置およびそれを用いた漏水測定方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための漏水測定装置は、水中構造物の測定対象面における漏水位置および/または漏水量を測定するための漏水測定装置であって、測定対象面に当接しかつ水が前記測定対象面へと流れるように装置本体内に延びる測定管と、前記測定管内に配置された流速計と、を有する漏水測定手段を備え、前記測定管は、前記測定対象面に当接する先端部と、前記流速計が配置される測定部と、前記測定部から前記先端部へと流れるように水が流入する水流入部と、を有
さらに、前記先端部の周囲において伸縮し測定時に伸びて測定対象面に当接する複数のロッドを備え、前記先端部は、測定対象面に向けて突き出し、測定時に測定対象面に当接するとともに、前記複数のロッドが測定対象面に当接する
この漏水測定装置によれば、測定管が測定対象面に当接し、測定管内に配置された流速計により測定管内の流速を測定するが、測定対象面に漏水箇所が存在すると、漏水箇所から水が流れるので、測定管内において、水流入部から水が流入し測定部へと流れ、先端部へと流れる。測定部の流速計により水の流速を測定した測定結果に基づいて漏水位置および漏水量を測定できる。このように測定管内に配置した流速計で測定を行うので、周辺の水流等の影響を遮断し、漏水に起因する流速を精度よく測定できる。また、測定管の先端部を測定対象面に当接させることで測定可能であるので、測定対象面は、水平面のみならず曲面や傾斜面や直立面であってよい。このように、精度のよい漏水測定ができしかも漏水量を測定可能である。
上記漏水測定装置において、前記測定部の管内径は前記先端部の管内径よりも小さいことが好ましい。測定部の管内径を小さくすることで、小さい流量でも測定が可能となり、漏水量の小さな漏水箇所でも検知できる。
また、前記先端部の周囲において装置本体に対し伸縮し測定時に伸びて測定対象面に当接する複数のロッドを備え、前記先端部は、装置本体から突き出し、測定時に測定対象面に当接するとともに、前記複数のロッドが測定対象面に当接するように構成することにより、装置本体の測定時の姿勢が安定するとともに、先端部が測定対象面に安定して当接する。

また、前記測定管は前記先端部の前面に緩衝材を有することが好ましい。これにより、測定管の先端部の保護を図ることができる。
また、前記流速計が電磁流速計であり、前記測定管が非磁性材料からなることが好ましい。これにより、磁場に影響を与えないので、電磁流速計の測定が安定する。
なお、カメラを備えることで、水中の移動や測定中に周囲や測定対象面の様子を観察できる。
また、前記漏水測定装置を水中において3次元方向に移動させるための推進機構をさらに備え、前記推進機構により水中で移動可能な水中ロボットに構成されることが好ましい。推進機構を備えることで、ロボット本体が水中を自力で移動可能となり、省力化を図り、効率的な漏水測定ができる。また、潜水士が潜水できない深い水深位置での測定が可能となる。水中ロボットのロボット本体に漏水測定装置が含まれる。
この場合、前記水流入部は前記推進機構による水の流れの影響を排除するように曲がっているベント管から構成され、前記ベント管は前記測定部に対し回動可能に構成され、前記水流入部の曲がり方向を調整可能であることが好ましい。これにより、推進機構により水流が発生したとしても、測定管の水流入部が曲がっているので、その水流の影響を排除することができる。また、水流入部の曲がりを、推進機構による水流の影響をもっとも排除可能な方向に調整できる。
上記目的を達成するための漏水測定方法は、上述の漏水測定装置を用いて水中構造物の測定対象面における漏水位置および/または漏水量を測定するための漏水測定方法であって、前記漏水測定装置の装置本体を測定対象面に近づけるステップと、前記漏水測定装置を測定対象面に押し付け、前記測定管の前記先端部を測定対象面に当接させるステップと、前記流速計による測定および記録を行うステップと、を含む。
この漏水測定方法によれば、たとえば、潜水士が漏水測定装置を持って水中を移動し、漏水測定装置を測定対象面に押し付け、測定管の先端部を測定対象面に当接させることで、流速計による測定が可能であるので、測定対象面における漏水位置・漏水量を測定できる。
上記目的を達成するための別の漏水測定方法は、上述の推進機構を備える漏水測定装置を用いて水中構造物の測定対象面における漏水位置および/または漏水量を測定するための漏水測定方法であって、予備調査により測定対象面における漏水箇所を特定するステップと、前記漏水測定装置を含むロボット本体を水中に投入し、前記推進機構により前記漏水箇所へ移動するステップと、前記推進機構により装置本体を前記漏水箇所の周囲に押し付け、前記測定管の前記先端部を前記漏水箇所に当接させるステップと、前記流速計による測定および記録を行うステップと、を含む。
この漏水測定方法によれば、予め漏水箇所を特定し、その漏水箇所へ漏水測定装置を推進機構により移動させ、推進機構によりロボット本体を漏水箇所の周囲に押し付け、測定管の先端部を漏水箇所に当接させることで、流速計による測定が可能であるので、無人で測定ができ、省力化を図ることができる。また、潜水士が潜水できない深い水深位置での測定が可能である。
本発明によれば、漏水箇所が水平面のみならず曲面や傾斜面や直立面であっても精度のよい漏水測定ができしかも漏水量を測定可能な漏水測定装置およびそれを用いた漏水測定方法を提供することができる。
本実施形態による漏水測定装置を搭載した水中ロボットを概略的に示す側面図である。 図1の漏水測定装置11を先端が測定対象面に当接した状態で概略的に示す側面図(a)およびB-B線で切断して見た断面図(b)である。 測定対象面が直立面である場合の図1,図2の漏水測定装置11の先端とロッド13とを概略的に示す側面図(a)、測定対象面が傾斜面である場合の側面図(b)および測定対象面が曲面である場合の側面図(c)である。 水中構造物の測定対象面(直立)における図1の水中ロボット10による漏水測定の様子を概略的に示す斜視図である。 図1の水中ロボット10による漏水測定のステップS01〜S07を説明するためのフローチャートである。 別の実施形態による漏水測定装置を搭載した水中ロボットのロボット本体を示す斜視図である。 図6の漏水測定装置が傾斜した状態を示す斜視図である。 測定対象面が傾斜面である場合の図6,図7のロボット本体と漏水測定装置の先端とロッドとを概略的に示す側面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態による漏水測定装置を搭載した水中ロボットを概略的に示す側面図である。なお、図1には、水中ロボットの制御系をあわせて示す。
本実施形態による水中ロボット10は、遠隔操作により無人で潜水するROV(Remotely Operated Vehicle)で、漏水測定装置を搭載している。すなわち、図1のように、水中ロボット10は、流速計12を含み漏水を測定するための漏水測定装置11と、ロボット本体10aから突き出た漏水測定装置11の先端側の周囲に配置され電動アクチュエータ14により伸縮自在に作動する複数のロッド13と、光学カメラ15と、LED光源からなる照明部16と、上部に配置された浮力体17と、水中で3次元方向に推進力を得るスラスタ24,25,26(図4)と、を備え、これらが下部の横フレーム21と、上部の横フレーム23と、フレーム21,22を連結する縦フレーム22とから構成されるフレーム体に組み込まれてロボット本体10aが構成されている。
漏水測定装置11は、図1のように、先端側から先端部11bと測定部11cと曲がり部11dとが順に配置されて構成される測定管を備え、測定部11c内に流速計12が配置されている。先端部11bの前面の管端にはリング状の先端保護部11aが配置されている。測定管内の水流が先端保護部11aを通過するようになっている。流速計12は、電磁流速計であるが、プロペラ式流速計を用いてもよい。電磁流速計は、ファラデーの電磁誘導の法則により、磁界の中を導電性流体である水が動くと、その流体には流速に比例した起電力が発生し、その起電力と流速は1次式の関係となることを測定原理とし、発生した起電力を外部に取りだすために電極が設けられている。
測定管の測定部11cの内径は、先端部11bの内径よりも小さく構成され、これにより、流量が少ない場合でも測定が可能で、少量の漏水量でも検知できる。内径の小さい測定部11cは、両端側にテーパ部11f、11gを有し、測定管内の水流の抵抗を軽減している。また、測定部11cと曲がり部11dとの間には回動部11eが配置され、曲がり部11dは、測定部11cに対し、回動部11eで手動により回動可能で、その水流入位置を調整できるようになっている。
また、先端保護部11aは、ゴム材料や発泡材料等の弾性材料からなり、先端部11bの前面の管端に接着剤等で貼り付けられている。先端保護部11aを配置することで、漏水測定時に漏水測定装置11の先端部11bを測定対象面に押し付ける際に、先端部11bを保護し、損傷を防止する。
漏水測定装置11の先端部11bと測定部11cと曲がり部11dは、アクリル管または塩ビ管からなる。アクリル管または塩ビ管は、非磁性体であるので、鉄鋼材料等の場合と異なり磁場に影響を与えないので、電磁流量計を用いた場合、測定が安定する。また、漏水測定装置11の軽量化を図ることができる。また、先端部11bと測定部11cは、管の外形を確保するために、管厚を厚く構成されることが好ましい。なお、先端部11bと測定部11cを、図2のように、2重管構造で外径を確保するように構成してもよい。
図1のように、水中ロボット10は、制御系として、流速計12からの出力測定信号を増幅するためのアンプ基盤32と、カメラ15やアンプ基盤32からの出力信号が入力し、また、電動アクチュエータ14,光学カメラ15,照明部16,スラスタ24,25,26(図4)を作動させ制御するための制御装置31と、をロボット本体10a内に備える。
さらに、水中ロボット10は、各部分へ電源を供給する電源ユニット33と、電源ユニット33のための発電機34と、モニタ画面を有し装置全体を制御し制御装置31からの画像データを含む流速測定データを記録するためのパーソナルコンピュータ(PC)35と、スラスタ24,25,26(図4)を操作しロボット本体10aを無人運転するための操作部36と、を備え、これらは、ロボット本体10aと離れて陸上に設置可能なように、ロボット本体10aの制御装置31と電気ケーブル30によって接続される。スラスタ24,25,26(図4)は、操作部36での操作によりそれぞれの回転羽根の回転速度・回転方向を調整することで、水中において無人でロボット本体10aを任意の方向へ推進させ移動させることができる。
図1の漏水測定装置11,流速計12について図2(a)(b)を参照して説明する。図2は、図1の漏水測定装置11を先端が測定対象面に当接した状態で概略的に示す側面図(a)およびB-B線で切断して見た断面図(b)である。
図2(a)の漏水測定装置11は、テーパ部11f、11gを含む測定部11cが一体に構成された内部管19から構成され、内部管19が外部管18内に収容されることで、二重管構造となっている。外部管18は先端部11bを構成する。
図2(a)のように、漏水測定装置11の測定部11c内を流れる水を横切るように電磁流速計12が配置される。電磁流速計12には、電磁の影響範囲があるため、測定部11cの管径が小さい場合、管外の影響を受けてしまう。図2(b)のように、磁場の影響範囲は、電磁流速計12の直径をΦとすると、直径Φの約7倍程度であるため、外部管18の外径d1をΦ×7以上とすることが好ましい。測定部11cの内径d2は、本発明者等の実験によれば、水の流れを阻害しないように、Φ×3以上とすることが好ましいことが判明した。また、電磁流速計12を中心にした測定部11cの長さについては、測定部11cにおける水の流れの安定性を確保するため、前後5cm以上確保することが好ましい。
なお、本発明者等の実験によれば、図1の測定部11cの内径d2が4cmで2リットル/分程度、10cmで10リットル/分程度の漏水量を検知することができた。
図2(a)のように、ダム等の水中構造物Aの測定対象面Bに矢印方向eに流れる漏水箇所Cが存在すると、曲がり部11dの外端から矢印方向aに水が流入し、矢印方向bに曲がって流れ、測定部11cを矢印方向cにまっすぐに流れ、先端部11bを矢印方向dに流れ、漏水箇所Cから矢印方向eに流れ出し、漏水する。このとき、測定部11cに配置された流速計12により測定部11c内を流れる水の流速を測定することで、漏水位置が判明し、また、その漏水量がわかり、漏水の程度を把握できる。
図2(a)のように、漏水測定装置11に対し、たとえば、スラスタ24(図1)が作動することで横方向Xに水流が生じた場合、この水流が測定部11cへと流れ込むと、漏水測定の精度が低下してしまうので、横方向Xへの水流が流れ込まないように曲がり部11dを回転させて、水の流入位置を調整する。
次に、測定対象面における漏水測定時の図1,図2の漏水測定装置11の先端とロッド13との関係について図3(a)〜(c)を参照して説明する。図3は、測定対象面が直立面である場合の図1,図2の漏水測定装置11の先端とロッド13とを概略的に示す側面図(a)、測定対象面が傾斜面である場合の側面図(b)および測定対象面が曲面である場合の側面図(c)である。
図3(a)のように、測定対象面Bが直立面である場合、スラスタ24,25,26(図4)を操作部36(図1)での操作により作動させロボット本体10aを方向m1に向けて水中の所定位置まで移動させ、複数のロッド13を伸ばし測定対象面Bに当接させると、漏水測定装置11の先端保護部11aが測定対象面Bに当接し、これにより、流速計12による測定が可能になる。このとき、ロッド13の伸び長さを、電動アクチュエータ14の制御により漏水測定装置11の先端保護部11aまでの長さよりも若干短くしておくことで、先端保護部11aが測定対象面Bに当接したとき、弾性変形により圧縮されるので、測定対象面Bに密着することができ、先端部11bの外部から水が流入することがない。なお、測定対象面Bが水平面である場合も同様に先端保護部11aを密着できることはもちろんである。
図3(b)のように、測定対象面Bが傾斜面である場合も、図3(a)と同様に、ロボット本体10aを方向m2に向けて移動させることで、複数のロッド13を測定対象面Bに当接させると、漏水測定装置11の先端保護部11aが測定対象面Bに当接し、流速計12による測定が可能になる。ロッド13の突き出し長さと、漏水測定装置11の先端保護部11aまでの長さとの関係も図3(a)と同様である。
図3(c)のように、測定対象面Bが曲面である場合も、図3(a)と同様に、ロボット本体10aを方向m3に向けて移動させることで、複数のロッド13を測定対象面Bに当接させると、漏水測定装置11の先端保護部11aが測定対象面Bに当接し、流速計12による測定が可能になる。ロッド13の突き出し長さと、漏水測定装置11の先端保護部11aまでの長さとの関係も図3(a)と同様であるが、曲面であることを考慮に入れてロッド13の突き出し長さを制御する。なお、図3(c)の場合は、曲面が凸面であるが、凹面の場合も同様である。
以上のように、本実施形態の水中ロボット10によれば、漏水測定装置11の先端保護部11aが測定対象面Bに当接し、測定部11c内に配置された流速計12により測定部11c内の流速を測定する。測定対象面Bに漏水箇所が存在すると、漏水箇所から水が流れ出すので、水流入部である曲がり部11dから水が流入し測定部11cへと流れ、先端部11bへと流れるが、測定部11c内の流速計12により水の流速を測定した測定結果に基づいて漏水位置および漏水量を測定できる。このように測定部11c内に配置した流速計12で測定を行うので、周辺の水流等の影響を遮断し、漏水に起因する流速のみを精度よく測定できる。このように、精度のよい漏水測定ができしかも漏水量を測定可能である。
また、図3(a)〜(c)のように、漏水測定装置11の先端保護部11aが測定対象面Bに当接したとき、複数のロッド13が漏水測定装置11の周囲で測定対象面Bに当接するので、漏水測定時におけるロボット本体10aの姿勢が安定し、精度のよい漏水測定が可能になる。
また、測定対象面Bが直立面や傾斜面や曲面であっても、必要に応じてロッド13の長さを調整でき、漏水測定装置11の先端保護部11aを弾性変形させて測定対象面Bに密着させることができるので精度のよい漏水測定ができる。このように、測定面を自由に設定でき、測定面の方向や形状に限定されない。
次に、本実施形態による漏水測定装置11を搭載した水中ロボット10を用いて水中構造物の測定対象面における漏水位置・漏水量を測定するための漏水測定方法について図4,図5を参照して説明する。図4は、水中構造物の測定対象面(直立)における図1の水中ロボット10による漏水測定の様子を概略的に示す斜視図である。図5は、図1の水中ロボット10による漏水測定のステップS01〜S07を説明するためのフローチャートである。
まず、予備調査により図4の水中構造物Aの測定対象面Bにおける漏水箇所を特定する(S01)。かかる予備調査は、色水等を流すことで行うことができるが、これに限定されるものではない。
次に、水中ロボット10のロボット本体10aを水中に投入し(S02)、図4のスラスタ24,25,26を操作部36で遠隔操作することでロボット本体10aを測定対象面Bの目的の漏水箇所に向けて水中移動させる(S03)。このときの遠隔操作は、必要に応じて照明部16からの光で周囲を照明し、光学カメラ15による画像をPC35のモニタ画面で確認しながら行うことができる。
次に、図4のように、ロボット本体10aの複数のロッド13を、電動アクチュエータ14により伸ばすとともにスラスタ24,25,26により測定対象面Bの漏水箇所の周囲に押し付けることで、漏水測定装置11の先端保護部11a(図3)を測定対象面Bの漏水箇所に当接させる(S04)。
次に、流速計12による測定を行い、PC35のモニタ画面で測定された漏水量を確認しながらPC35にその測定位置とともに記録する(S05)。
次に、測定対象面Bの別の位置で漏水測定を行う場合は(S06)、ステップS03に戻り、同様のステップS03〜S05を繰り返す。終了する場合は(S06)、ロボット本体10aをスラスタ24,25,26により水中移動させ、回収する(S07)。
図5の漏水測定方法によれば、予め漏水箇所を特定し、その漏水箇所へ水中ロボット10のロボット本体10aを、スラスタ24,25,26により、水中移動させるとともに、漏水箇所の周囲に押し付け、漏水測定装置11の先端保護部11aを漏水箇所に当接させることで、流速計12による測定が可能であるので、無人で測定ができ、省力化を図ることができる。また、潜水士が潜水できない深い水深位置での測定が可能である。
図5の水中ロボット10による漏水測定方法は、ロボット本体10aを遠隔操作により無人で水中移動させるものであるが、潜水士による漏水測定を行ってもよい。かかる漏水測定について説明すると、漏水測定装置11はロボット本体10aから脱着可能であるため、潜水士は漏水測定装置11を持って移動し、漏水測定装置11を漏水箇所に押し付け、漏水測定装置11の流速計12により測定を行い、陸上でPC35により記録を行う。なお、耐水加工した携帯可能なモニタを潜水士が保持し、このモニタで確認しながら測定・記録を行うようにしてもよい。
上述の潜水士による漏水測定は、図1のロボット本体10aから取り外した漏水測定装置11により行うが、曲がり部11dは省略してもよい。また、潜水士による漏水測定専用に漏水測定装置11を構成してもよい。
次に、別の実施形態による水中ロボットを図6〜図8を参照して説明する。図6は、別の実施形態による漏水測定装置を搭載した水中ロボットのロボット本体の具体例を示す斜視図である。図7は、図6の漏水測定装置が傾斜した状態を示す斜視図である。図8は、測定対象面が傾斜面である場合の図6,図7のロボット本体と漏水測定装置の先端とロッドとを概略的に示す側面図である。
図6のように、水中ロボットのロボット本体50は、横フレーム52aで互いに連結された左右一対の枠体52と、一対の枠体52内に配置されアクチュエータ(図示省略)により前後移動および傾斜動可能に構成された漏水測定装置51と、漏水測定装置51の周囲から突き出して伸縮可能で先端にキャスタ61aを有する複数のロッド61と、漏水測定装置51の上部に配置された操縦用カメラ53と、その左右に配置されたLED光源等からなる複数の操縦用照明部54と、一対の枠体52の上部に配置された浮力体60と、水中で3次元方向に推進力を得るスラスタ57,58,59と、を備える。
本例の水中ロボットは、制御系が図1と同様に構成され、ロボット本体50が電気ケーブルで地上に設置されるパソコンや操作部等に接続され、遠隔操作により無人でロボット本体50を水中移動させることができ、また、各種制御や測定データの記録等を行うようになっている。
漏水測定装置51は、図1,図2と同様に構成され、流速計(図示省略)を内部に備え、その先端部は、ゴム材料や軟質樹脂材料等からなり弾性変形可能な先端保護部51aを有する。
漏水測定装置51は、ロボット本体50の一対の枠体52の内側において横フレーム64aで互いに連結され左右に配置された一対の枠体64と、この枠体64内で前後に配置されたプレート62,63等とから構成されたユニット70としてロボット本体50に組み込まれている。漏水測定装置51の図1,図2の先端部11bと測定部11cと曲がり部11dとから構成される測定管がプレート62,63に取り付けられるとともに、前側のプレート62には、漏水測定時に測定箇所を撮影するためのカメラ55と、その周囲に配置され測定箇所を照明するためのLED光源等からなる複数の照明部56とが配置されている。複数のロッド61が漏水測定装置51のユニット70を構成する横フレーム64aに取り付けられている。
漏水測定装置51はユニット70とともに電動アクチュエータ(図示省略)により前後に移動可能になっており、測定時に前面に突き出るように移動し、また、必要に応じて上下に傾斜動し、たとえば図7のように下向きに傾斜し所定角度で固定されるように構成される。複数のロッド61はユニット70とともに移動する。なお、漏水測定装置51だけがユニット70に対し電動アクチュエータにより前後に移動可能になるように構成してもよい。
また、図6の水中ロボットは、ロボット本体50の水中位置および測定対象面における測定位置を特定するために、水中位置測定装置を有し、この水中位置測定装置は、水中の所定位置に設置された基準となる送受波器(図示省略)によりロボット本体50の応答器65からの超音波信号の伝搬時間を計測し、距離換算情報より座標計算を行い、ロボット本体50の水中位置をほぼリアルタイムに測定するように構成されている。
図6のロボット本体50は、図3(a)〜(c)と同様にして、ロッド61のキャスタ61aを測定対象面に当接させるとともに、漏水測定装置51を電動アクチュエータ(図示省略)により前面に突き出るように移動させて、先端保護部51aを測定対象面に若干弾性変形するようにして当接させることで、測定対象面が直立面、傾斜面、曲面のいずれであっても、漏水測定を確実に精度よく行うことができる。この場合、ロボット本体50の漏水測定装置51は、図7のように傾斜することができるので、図8のように、測定対象面Bが傾斜している場合、ロボット本体50を水平に保った状態でユニット70を傾斜させると、漏水測定装置51,ロッド61が傾斜して測定対象面Bに当接し漏水測定を行うことができる。このとき、漏水測定装置51と複数のロッド61は、互いに平行を保って、傾斜した測定対象面Bに垂直に当接する。
なお、複数のロッド61は、手動で伸縮可能に構成され、測定前の事前準備で測定対象面の状態にあわせて長さを調整可能であるが、図1のように、電動アクチュエータにより伸縮制御可能に構成してもよい。
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、図1の水中ロボット10は、図6と同様に、ロボット本体10aの水中位置および測定対象面における測定位置を特定するために、水中位置測定装置を有し、ロボット本体10aには図1のように応答器29を設け、ロボット本体10aの水中位置をほぼリアルタイムに測定するように構成してもよい。また、図1のロボット本体10aにおいて、カメラ15,照明部16とは別に、図6と同様に、操縦用カメラと操縦用照明部を追加してもよい。
本発明の漏水測定装置・漏水測定方法によれば、漏水箇所が水平面のみならず曲面や傾斜面や直立面であっても精度のよい漏水測定ができしかも漏水量を測定可能であるので、ダム等の水中構造物において漏水位置および漏水量を精度よく測定でき、適切で確実な漏水対策を施すことができる。
10 水中ロボット
10a,50 ロボット本体
11,51 漏水測定装置
11a,51a 先端保護部
11b 先端部
11c 測定部
11d 曲がり部(水流入部)
11e 回動部
12 流速計
13,61 ロッド
14 アクチュエータ
15 光学カメラ
16 照明部
24,25,26 スラスタ
57,58,59 スラスタ
A 水中構造物
B 測定対象面
C 漏水箇所

Claims (8)

  1. 水中構造物の測定対象面における漏水位置および/または漏水量を測定するための漏水測定装置であって、
    測定対象面に当接しかつ水が前記測定対象面へと流れるように装置本体内に延びる測定管と、前記測定管内に配置された流速計と、を有する漏水測定手段を備え、
    前記測定管は、前記測定対象面に当接する先端部と、前記流速計が配置される測定部と、前記測定部から前記先端部へと流れるように水が流入する水流入部と、を有
    さらに、前記先端部の周囲において伸縮し測定時に伸びて測定対象面に当接する複数のロッドを備え、
    前記先端部は、測定対象面に向けて突き出し、測定時に測定対象面に当接するとともに、前記複数のロッドが測定対象面に当接する、漏水測定装置。
  2. 前記測定部の管内径は前記先端部の管内径よりも小さい、請求項1に記載の漏水測定装置。
  3. 前記測定管は前記先端部の前面に緩衝材を有する、請求項1または2に記載の漏水測定装置。
  4. 前記流速計が電磁流速計であり、前記測定管が非磁性材料からなる請求項1乃至のいずれか1項に記載の漏水測定装置。
  5. 前記漏水測定装置を水中において3次元方向に移動させるための推進機構をさらに備え、前記推進機構により水中で移動可能な水中ロボットに構成される請求項1乃至のいずれか1項に記載の漏水測定装置。
  6. 前記水流入部は前記推進機構による水の流れの影響を排除するように曲がっているベント管から構成され、
    前記ベント管は前記測定部に対し回動可能に構成され、前記水流入部の曲がり方向を調整可能である、請求項に記載の漏水測定装置。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の漏水測定装置を用いて水中構造物の測定対象面における漏水位置および/または漏水量を測定するための漏水測定方法であって、
    前記漏水測定装置を測定対象面に近づけるステップと、
    前記漏水測定装置を測定対象面に押し付け、前記測定管の前記先端部を測定対象面に当接させるステップと、
    前記流速計による測定および記録を行うステップと、を含む漏水測定方法。
  8. 請求項またはに記載の漏水測定装置を用いて水中構造物の測定対象面における漏水位置および/または漏水量を測定するための漏水測定方法であって、
    予備調査により測定対象面における漏水箇所を特定するステップと、
    前記漏水測定装置を含むロボット本体を水中に投入し、前記推進機構により前記漏水箇所へ移動するステップと、
    前記推進機構により前記漏水測定装置を前記漏水箇所の周囲に押し付け、前記測定管の前記先端部を前記漏水箇所に当接させるステップと、
    前記流速計による測定および記録を行うステップと、を含む漏水測定方法。
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