JP6749575B2 - 加熱履歴推定方法、加熱履歴推定装置、および、プログラム - Google Patents

加熱履歴推定方法、加熱履歴推定装置、および、プログラム Download PDF

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Description

本発明は、加熱履歴推定方法、加熱履歴推定装置、および、プログラムに関する。
アミノ化合物含有食品は製造過程では、殺菌、トリプシン阻害物質等の危害物質の不活性化、および/または、風味向上などを目的とした、加熱工程を経ている。しかしながら、過加熱は、機能特性の低下、風味の低下、または、凝集等を引き起こす。
従来の品質管理工程では、官能評価によって適切な加熱が行われているかどうかが調べられているため、定性的、パネル育成および維持のコスト、ならびに、評価のばらつき等の課題があるため、より客観的、且つ、迅速なモニタリング方法の開発が必要となっている。
また、従来の品質管理工程では、温度計による品温計測により適切な加熱が行われているかどうかが調べられていた。
ここで、実際の製造現場では、装置特性もしくは完全な制御が困難であるために温度計の表示と実際の温度とにずれがある、サンプルの濃度ムラにより部位による品温のムラがある、または、温度計へのタンパク質の付着により不正確な計測となり、衛生管理上の手間がかかる等の様々なトラブルがあった。
そこで、加熱処理された結果である試料の性状から、実際の品温を推定する方法の開発が必要となっている。
ここで、従来、食品の状態を判別する技術が開示されている。
例えば、非特許文献1記載の分析方法では、未加工の生乳と、加熱加工された牛乳と、に対する加熱の有無を分光分析により求める技術が開示されている。
また、非特許文献2記載の分析方法では、蛍光指紋計測を用いて、鮮魚の冷凍までの冷蔵保存期間の推定を行う技術が開示されている。
また、非特許文献3記載の分析方法では、利用波長も可視から近赤外の波長を用いた分光分析により、固形物である鶏肉のパテの加熱履歴を計算する技術が開示されている。
E Dufour and A Riaublanc, Potentiality of spectroscopie methods for the characterisation of dairy products. 1. Front−face fluorescence study of raw, heated and homogenised milks, Lait (1997) 77, 657−670 G ElMasry et al., Freshness estimation of intact frozen fish using fluorescence spectroscopy and chemometrics of excitation−emission matrix, Talanta 143 (2015) 145−156 H. CHEN and B.P. MARKS, Evaluating Previous Thermal Treatment of Chicken Patties by Visible/Near−Infrared Spectroscopy, Journal of Food Science Volume 62, Issue 4, pages 753−780, July 1997
しかしながら、従来の分析方法(非特許文献1等)においては、蛍光指紋を用いて、加熱加工されたアミノ化合物を含有する液体の加熱履歴を推定することについては考慮していないという問題点を有していた。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、アミノ化合物含有食品の加熱履歴を客観的かつ迅速に推定することが可能な加熱履歴推定方法、加熱履歴推定装置、および、プログラムを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加熱履歴推定方法は、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光強度を測定して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程と、前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に基づいて前記測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定する加熱履歴推定工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記加熱履歴推定工程では、アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルに前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行うことで前記推定モデルを作成する推定モデル作成工程、を更に含むことが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記推定モデル作成工程では、前記蛍光指紋情報に対して、前記多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)、重回帰分析、PLS(Partial Least Squares)回帰分析、PLS判別、SVM(Support Vector Machine)回帰、SVM判別、RF(Random Forest)回帰、および/または、RF判別行うことで、前記推定モデルとして検量線、および/または、判別式を作成し、前記加熱履歴推定工程では、前記検量線または前記判別式に前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の前記加熱履歴を推定することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程、を更に含むことが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記加熱履歴は、加熱温度、および/または、加熱時間であることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記アミノ化合物含有食品は、液状又は固体状であることが望ましい。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加熱履歴推定装置は、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光強度を測定して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得手段と、前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報に基づいて前記測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定する加熱履歴推定手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記加熱履歴推定手段は、アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルに前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行うことで前記推定モデルを作成する推定モデル作成手段、を更に備えたことが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記推定モデル作成手段は、前記蛍光指紋情報に対して、前記多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、および/または、RF判別を行うことで、前記推定モデルとして検量線、および/または、判別式を作成し、前記加熱履歴推定手段は、前記検量線または前記判別式に前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の前記加熱履歴を推定することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理手段、を更に備えたことが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記加熱履歴は、加熱温度、および/または、加熱時間であることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記アミノ化合物含有食品は、液状、または、固体状であることが望ましい。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のプログラムは、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光強度を測定して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程と、前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に基づいて前記測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定する加熱履歴推定工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記加熱履歴推定工程では、アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルに前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行うことで前記推定モデルを作成する推定モデル作成工程、を更にコンピュータに実行させることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記推定モデル作成工程では、前記蛍光指紋情報に対して、前記多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、および/または、RF判別を行うことで、前記推定モデルとして検量線、および/または、判別式を作成し、前記加熱履歴推定工程では、前記検量線または判別式に前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象のアミノ化合物含有食品の前記加熱履歴を推定することが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程、を更にコンピュータに実行させることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記加熱履歴は、加熱温度、および/または、加熱時間であることが望ましい。
また、本発明の好ましい態様によれば、前記アミノ化合物含有食品は、液状又は固体状であることが望ましい。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のアミノ化合物含有食品の製造方法は、前記加熱履歴推定方法における工程を含むことが望ましい。
この発明によれば、蛍光指紋を使うことで、アミノ化合物含有食品の加熱の度合いを非破壊で推定することができる。
また、この発明によれば、常に同じ基準で定量評価が可能であるため、ロット(バッチ)間または加熱処理間の違いを比較可能である。それにより、この発明によれば、従来よりも評価値の安定化および定量化が容易となる。
また、この発明によれば、一度検量線ができれば、一点につき数分の計測で加熱度合が推定可能であるため、従来よりも時間の短縮ができる。また、この発明によれば、ランニングコストがほとんどかからないため、従来よりもコストを減らすことができる。
また、この発明によれば、液体および粉末等の様々な形状の試料に適用可能であるため、従来よりもサンプル調製の手間がかからない。
図1は、本発明の概略を説明するための説明図である。 図2は、測定対象物に励起光を照射した場合に、測定対象物から発せられる蛍光を説明するための図である。 図3は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。 図4は、図3の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。 図5は、本実施の形態に係るアミノ化合物含有食品の加熱履歴推定方法を説明するためのフローチャートである。 図6は、測定対象の液状のアミノ化合物含有食品の準備の一例を説明するための図である。 図7は、測定対象の固体状のアミノ化合物含有食品の準備の一例を説明するための図である。 図8は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第1段階を説明するための図である。 図9は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階(中心化)を説明するための図である。 図10は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階(規格化)を説明するための図である。 図11は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階(標準化)を説明するための図である。 図12は、本実施の形態に係る加熱履歴推定装置の構成の一例を示すブロック図である。 図13は、蛍光指紋取得装置の一例を示すブロック図である。 図14は、液状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図15は、豆乳の凍結乾燥粉末の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図16は、液状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図17は、液状の牛乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図18は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図19は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図20は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図21は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図22は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。 図23は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
以下に、本発明に係る加熱履歴推定方法、加熱履歴推定装置、プログラム、および、製造方法の好適な実施の形態の例を、図1から図23を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
[本発明の概略]
本発明で言うアミノ化合物とは、タンパク質、ペプチド、および、アミノ酸の総称である。本発明では、これらを含む食品の加熱履歴を推定することが出来る。
まず、図1を参照して、本発明の概略を説明する。図1は、本発明の概略を説明するための説明図である。
本発明では、アミノ化合物含有食品の加熱履歴を客観的かつ迅速に推定するために、測定対象の加熱したアミノ化合物含有食品の蛍光指紋を測定し、測定した蛍光指紋に基づいて、アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定している。
本発明は、蛍光指紋から加熱履歴を推定するための推定モデルを作成する推定モデル作成工程(S1)と、測定対象物の蛍光指紋を測定し、測定した蛍光指紋を推定モデルに適用して加熱履歴(加熱度合)を推定する簡易計測工程(S2)とを備える。
推定モデル作成工程(S1)では、生豆乳を異なる温度および/または時間で加熱した豆乳の蛍光指紋を測定して、測定した蛍光指紋を多変量解析してアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルを作成する。
そして、測定した蛍光指紋情報に対しては必要によりデータ前処理を行う。ここで、多変量解析には、教師ありの手法および教師なしの手法がある。
また、教師ありの手法では、加熱履歴が既知の豆乳に対して蛍光指紋を測定し、測定した蛍光指紋に対して多変量解析を行うことで推定モデルを作成する。
一方、教師なしの手法では、豆乳の蛍光指紋を測定し、測定した蛍光指紋に対して多変量解析を行うことで推定モデルを作成する。
蛍光指紋の簡易計測工程(S2)では、加熱履歴を推定したい豆乳製品の蛍光指紋の計測を行って蛍光指紋を取得する。取得した蛍光指紋に対しては、必要によりデータ前処理を行う。
そして、取得した蛍光指紋を推定モデルに適用して、加熱履歴を推定する。このように、一旦、推定モデルを作成すると、測定対象物の蛍光指紋を取得するだけで、客観的かつ迅速に加熱履歴を推定することが可能となる。
[蛍光指紋]
図2から図4を参照し、蛍光指紋について説明する。図2は、測定対象物に励起光を照射した場合に、測定対象物から発せられる蛍光を説明するための図である。図3は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。図4は、図3の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。
図2に示すように、測定対象物に励起光(様々な波長の光)を照射し、測定対象物から発せられた蛍光を検出する。「蛍光指紋」とは、図3に示すように、測定対象物に照射する励起波長、測定対象物から発する蛍光波長、測定対象物の蛍光強度の3軸からなる3次元データの等高線状のグラフである。
また、図4に示すように、「蛍光指紋」は、横軸を蛍光波長、縦軸を励起波長として各ポイントの蛍光強度を等高線プロットすることにより平面的に表すことができる。
蛍光指紋は、測定対象物に対し蛍光染色等の前処理をせずにキャラクタリゼーションが可能であること、操作が容易で短時間で測定できること、さらに吸光法に比べ感度が高いこと、非破壊で測定が可能であることなどの長所を有することから、食品等の内部構造の分析や、大気中の浮遊物の測定や、染料の原料特定などに利用されている手法である。
このように、「蛍光指紋」は、3次元の膨大な情報を有する成分固有の蛍光情報であるため、測定者は、蛍光指紋を利用することで、成分の識別が可能であり、かつ、非破壊での計測が可能である。
[アミノ化合物含有食品の加熱履歴推定方法]
図5から図11を参照し、本実施の形態に係るアミノ化合物含有食品の加熱履歴推定方法について説明する。図5は、本実施の形態に係るアミノ化合物含有食品の加熱履歴推定方法を説明するためのフローチャートである。
図5に示すように、本実施の形態に係るアミノ化合物含有食品の加熱履歴推定方法は、アミノ化合物含有食品の蛍光指紋を多変量解析して、加熱履歴を推定するための推定モデルを作成する推定モデル作成工程と、アミノ化合物含有食品の蛍光指紋を測定し、測定した蛍光指紋を推定モデルに適用して加熱履歴を推定する加熱履歴推定工程とに大別される。
多変量解析には、(1)教師なし(パターン認識)と、(2)教師ありと、がある。(1)教師なしには、主成分分析、クラスター分析等がある。(2)教師ありには、(2−1)判別分析、(2−2)回帰分析等がある。
(2−1)判別分析は、いくつかのグループにデータを分けるものであり、PLS(Partial least squares)判別分析、SIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)、および、SVM(Support Vector Machine)判別分析等がある。
(2−2)回帰分析は、特定の数値を推定する回帰式(検量線)を作成するものであり、加熱履歴の数値を推定するのに使用することができる。回帰分析には、重回帰分析、PLS回帰分析、主成分回帰分析、RF回帰、および、SVM回帰がある。
より望ましくはRF回帰、PLS回帰であり、さらに望ましくはPLS回帰である。望ましいとされる分析手法を採用することで、より正確な加熱履歴を推定することが出来る。
測定対象のアミノ化合物含有食品としては、液状食品としては、豆乳、または、牛乳を挙げることが出来る。また、固体状食品としては、これら液状食品を乾燥したものを挙げることが出来る。特に液状食品では、加熱履歴の痕跡をとどめにくい場合が多い中、本発明を適用することで、その加熱履歴を推定する事が出来、好ましい測定対象と言える。
なお、加熱履歴は、加熱温度、および/または、加熱時間として評価される。
本発明に係る方法で推定される加熱履歴において、その温度幅と加熱時間は理論上、特に限定されない。温度幅としては、少なくとも、一般的な食品の加熱工程で用いられる温度域である、20〜200℃においては、適用が可能である。
この温度幅は、より望ましくは50〜150℃である。また、加熱時間は、0.1秒間から10時間について適用が可能であり、より望ましくは0.5秒間から8時間、さらに望ましくは0.5秒間から1時間について適用が可能である。
本発明に係る方法を用いることで、このような、食品の加熱条件として採用されやすい上記温度域及び加熱時間における加熱履歴を、精度よく推定することが出来る。
推定モデル作成工程では、まず、推定モデルを作成するために、測定対象のアミノ化合物含有食品を準備する(ステップS11)。
ここで、図6は、測定対象の液状のアミノ化合物含有食品の準備の一例を説明するための図である。
図6に示すように、測定対象の液状のアミノ化合物含有食品を、液体用石英セルに入れて、計測装置にセットする。
また、図7は、測定対象の固体状のアミノ化合物含有食品の準備の一例を説明するための図である。
図7に示すように、測定対象の固体状のアミノ化合物含有食品(例えば、液状のアミノ化合物含有食品の凍結乾燥粉末等)を、粒度を均一にするためにマルチビーズショッカー等の粉砕機を用いて微粉砕し、粉体用石英セルに入れて、計測装置にセットする。
図5に戻り、測定対象の液状のアミノ化合物含有食品、または、固体状のアミノ化合物含有食品に対して蛍光指紋計測を行って蛍光指紋情報を取得する(ステップS12)。
例えば、既存の分光蛍光光度計(例えば、日立ハイテクノロジーズ製のF−7000型蛍光分光光度計、または、日本分光製のFP−8500蛍光分光光度計等)により、励起波長(例えば、200から700nmの計測波長範囲内で5nmのデータ取得間隔ごとのm個の波長)と、蛍光波長(例えば、200から900nmの計測波長範囲で5nmのデータ取得間隔ごとのn個の波長)と、の組み合わせを変えながら、合計m×n通りの波長条件で、測定対象物の蛍光強度を取得してもよい。
ここで、測定者は、計測回数(例えば、各試料につき3回)を調整してもよい。図8(A)は、測定対象物の蛍光指紋の一例を示す図である。
図8(A)に示すように、測定対象物について、照射する励起波長および観測する蛍光波長の組み合わせが異なるm×n波長条件で蛍光強度を取得し、測定対象物の蛍光指紋情報を取得する。
図5に戻り、取得した蛍光指紋情報に対して、必要によりデータ前処理を実行する(ステップS13)。
以下、図8から図11を参照して、多変量解析前に蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理について説明する。
図8は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第1段階を説明するための図である。図9から図11は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階を説明するための図である。
データ前処理は、例えば、1.蛍光指紋の散乱光の除去と2次元データへの展開との第1段階、2.2次元の蛍光指紋情報に対する信号処理演算(例えば、中心化、標準化、規格化、2次微分、ベースライン補正、および、平滑化等)の第2段階の処理がある。
<1.蛍光指紋の散乱光の除去と2次元データへの展開(第1段階の処理)>
図8(A)に示すように、取得された蛍光指紋情報は、合計m×nの波長条件(=励起波長と蛍光波長の組み合わせ)のパラメータからなる高次元の蛍光強度データを含んでおり、更に、蛍光の定義から外れる光学的データ(例えば、励起光の散乱光、その2次光、3次光等:本発明では便宜的にノイズ情報と表記する)を含んでいる。
ここで、散乱光は、蛍光波長と励起波長が一致する波長条件で、または、散乱光の二次光、三次光はそれぞれ蛍光波長が励起波長の2倍、3倍となる波長条件で現れる。
そのため、ノイズ情報を除去するとともに、取得した高次元の蛍光強度データから、目的とする蛍光指紋以外の情報を除去した低次元の蛍光強度データにすることが望ましい。
そこで、図8(B)に示すように、ノイズ情報となる励起光の散乱光、ならびに、その2次光および3次光のデータ(例えば、図8(B)の(i)が示すデータ)を削除する。
ここで、散乱光・2次光・3次光ともにある程度の幅をもって現れるため、例えば、前後30から40nmの範囲のデータを除くことにしてもよい。
更に、蛍光波長が励起波長よりも短い範囲のデータ(例えば、図8(B)の(ii)が示すデータ)を除去する。
これは、測定対象物が発する蛍光波長は励起波長より長波長であるので、励起波長より長波長の蛍光波長の蛍光強度データのみを解析するための処理である。
このように、散乱光および蛍光波長が励起波長よりも短い範囲のデータを除去して、図8(C)に示すように、測定対象物の特徴を表す蛍光指紋情報を抽出する。
蛍光指紋情報は、上述したように、励起波長、蛍光波長、および、蛍光強度からなる3次元データである。多くの解析手法は2次元データを対象に開発されているため、それらを用いるためには3次元データを2次元に展開する必要がある。
たとえば、図8(C)に示すように、励起波長200から700nm、および、蛍光波長200から700nm、励起波長、蛍光波長ともに5nm間隔で取得した蛍光指紋の場合、励起波長200nmの蛍光スペクトルの後に励起波長205nmの蛍光スペクトル、その後に励起波長210nmの蛍光スペクトル・・・というように蛍光スペクトルを一列につなげていく。
このようにして展開した2次元データの一例を図8(D)に示す。図8(D)は、3つの蛍光スペクトルを示しており、横軸は波長条件(励起波長と蛍光波長の組み合わせ)、縦軸は蛍光強度となる。
なお、本実施形態においては、第一段階の処理を行わず、3次元データのまま多変量解析を行ってもよい。
<2.2次元の蛍光指紋情報に対する信号処理演算(第2段階の処理)>
2次元に展開した蛍光指紋情報に対して、中心化(mean centering)、規格化(normalization)、標準化(autoscale)、2次微分(2nd derivative)、ベースライン補正(baseline correction)、および、平滑化(smoothing)のうちの1つまたは組み合わせて信号処理演算を行う。
第2段階のデータ前処理を行うことにより、蛍光スペクトルに含まれている情報の強調、異なるサンプルの蛍光スペクトルの尺度を合わせることができる等の効果がある。
図9は、図8(D)の蛍光指紋情報を中心化した例を示す図である。「中心化」では、波長条件毎に、全サンプルの蛍光強度の平均を求め、平均が「0」となるように蛍光強度から差し引く処理を行う。
図10は、図8(D)の蛍光指紋データを規格化した例を示す図である。「規格化」ではサンプルごとに蛍光強度の積分(スペクトルの下の面積)を求め、全てのサンプルで積分が「1」となるようにサンプルごとに係数をかける処理を行う。
図11は、図8(D)の蛍光指紋データを標準化した例を示す図である。「標準化」では波長条件毎に、平均が「0」、および、標準偏差が「1」となるよう、平均を差し引いた後に標準偏差で割る処理を行う。
なお、本実施形態においては、第2段階のデータ前処理を行わずに多変量解析を行ってもよい。
図5に戻り、データ前処理が行われた蛍光指紋情報(データ前処理を行っていない蛍光指紋情報を使用してもよい)を多変量解析してアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルを作成し(ステップS14)、処理を終了する。
ここで、多変量解析を行う場合には、MATLAB(Mathworks Inc,USA)、Unscrambler(CAMO Software AS,Norway)、JMP(SAS Institute Inc,USA)、または、Excel(Microsoft Corporation,USA)等の汎用のソフトウェアや独自開発のソフトウェアを使用してもよい。
ここで、多変量解析として回帰分析を使用する場合は、例えば、蛍光指紋情報から加熱履歴を推定するための検量線(回帰式)を推定モデルとして作成する。
また、多変量解析として判別分析を使用する場合は、蛍光指紋情報から加熱履歴のどのグループに分類されるかを推定するための推定モデルを作成する。
つぎに、簡易計測工程では、加熱履歴を推定したい測定対象物を準備する(ステップS21)。測定対象物の準備は、ステップS11と同様であるので、詳細な説明は省略する。
そして、加熱履歴を推定したい測定対象物に対して蛍光指紋計測を行って蛍光指紋情報を取得する(ステップS22)。蛍光指紋情報の取得は、ステップS12と同様であるので、詳細な説明は省略する。
そして、取得した蛍光指紋情報に対して、必要によりデータ前処理を実行する(ステップS23)。データ前処理は、ステップS13と同様であるので、詳細な説明は省略する。
そして、測定した蛍光指紋情報を推定モデルに適用して加熱履歴を推定し(ステップS24)、処理を終了する。
[加熱履歴推定装置]
次に、本発明の加熱履歴推定装置の構成について図12および図13を参照し実施形態を例に挙げて説明する。
なお、本実施の形態に係る加熱履歴推定装置は、前述のアミノ化合物含有食品の加熱履歴推定方法に好適に使用できるものであるが、本実施の形態に係るアミノ化合物含有食品の加熱履歴推定方法に用いる装置はこれに限定されるものではない。
ここで、図12は、本実施の形態に係る加熱履歴推定装置の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
図12に示すように、加熱履歴推定装置20は、少なくとも蛍光指紋取得装置10を備えている。蛍光指紋取得装置10は、蛍光指紋情報を取得する装置であり、分光照明装置11および分光検出装置12を備えている。
また、加熱履歴推定装置20は、蛍光指紋取得装置10で取得した蛍光指紋情報から、測定対象物13の加熱履歴を検知する装置であり、メモリ21、制御部23、および、計算処理部24を備えており、測定者はキーボード・マウス22により、加熱履歴推定装置20に測定条件等を入力する。
ここで、図13は、蛍光指紋取得装置10の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
図13に示すように、蛍光指紋取得装置10は、光源110と分光装置112とを備えた分光照明装置11、および、分光装置122と蛍光指紋検出装置124とを備えた分光検出装置12を備えている。
分光照明装置11は、測定対象物13に、所定の波長の励起光を照射して測定対象物13の成分から蛍光を生じさせる装置である。分光照明装置11は、照射する励起波長を任意に変える励起波長可変手段を有する。
分光検出装置12は、所定の蛍光波長において、測定対象物13の蛍光強度を取得する。分光検出装置12は、測定対象物13が発した蛍光のうち、特定の蛍光波長を選択的に捕えて、蛍光強度を計測する。分光検出装置12は、観測する蛍光波長を任意に変える蛍光波長可変手段を有する。
ここで、図12に戻り、加熱履歴推定装置20について説明する。
加熱履歴推定装置20は、上述の加熱履歴推定方法を実行するための装置である。図12に示すように、加熱履歴推定装置20は、メモリ21、制御部23、および、計算処理部24を備えており、キーボード・マウス22、I/Oポート(例えば、USBポート等)26、および、ディスプレイ30等が接続されている。
メモリ21は、蛍光指紋検出装置124から加熱履歴推定装置20へ転送され、計算処理部24の蛍光指紋情報取得部24−1により取得された蛍光指紋情報、ならびに、計算処理部24の推定モデル作成部24−3で推定モデルを作成する際に使用するアミノ化合物含有食品の加熱履歴の実測値および作成した推定モデル27等を格納する。
推定モデル27を作成する際に使用するアミノ化合物含有食品の加熱履歴の実測値は、キーボード・マウス22またはI/Oポート26から入力することができる。
制御部23は、測定者が入力した励起波長範囲、蛍光波長範囲、波長ピッチで測定対象物13の蛍光指紋を取得するように、分光照明装置11が照射する励起波長、および、分光検出装置12が観測する蛍光波長を調整する指示を行い、また、計算処理部24に処理を行うよう命令する。
ここで、蛍光指紋取得装置10から転送された蛍光指紋情報は、加熱履歴推定装置20のメモリ21に格納される。
計算処理部24は、蛍光指紋情報取得部24−1、データ前処理部24−2、推定モデル作成部24−3、および、加熱履歴推定部24−4を備える。
ここで、蛍光指紋情報取得部24−1は、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光強度を測定して、測定対象のアミノ化合物含有食品の蛍光指紋情報を取得する。
データ前処理部24−2は、蛍光指紋情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行う。
推定モデル作成部24−3は、蛍光指紋情報取得部24−1により取得された蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行うことで推定モデルを作成する。ここで、推定モデル作成部24−3は、蛍光指紋情報に対して、多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、および/または、RF判別を行うことで、推定モデルとして検量線、および/または、判別式を作成してもよい。
加熱履歴推定部24−4は、蛍光指紋情報取得部24−1により取得された蛍光指紋情報に基づいて測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定する。
ここで、加熱履歴推定部24−4は、アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルに蛍光指紋情報取得部24−1により取得された蛍光指紋情報を適用して、測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定してもよい。
また、加熱履歴推定部24−4は、検量線または判別式に蛍光指紋情報取得部24−1により取得された蛍光指紋情報を適用して、測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定してもよい。
例えば、測定者がキーボード・マウス22を通じて、計算処理部24に対して処理を行うよう命令すると、まず、計算処理部24の蛍光指紋情報取得部24−1が、メモリ21に格納された蛍光指紋情報を抽出する。
計算処理部24の推定モデル作成部24−3は、抽出された蛍光指紋情報に対して、(データ前処理部24−2による前処理の後)、多変量解析を行い、推定モデルを作成する。
本実施形態において、計算処理部24の推定モデル作成部24−3は、例えば、多変量解析としてPLS回帰分析で作成した検量線を推定モデルとして作成してもよい。
計算処理部24の推定モデル作成部24−3は、多変量解析の結果(推定モデル27)を、メモリ21に格納してもよく、ディスプレイ30上に出力してもよく、プリンタ(図示せず)を介して印刷してもよい。
計算処理部24の加熱履歴推定部24−4は、メモリ21に格納された推定モデル27に抽出された蛍光指紋情報を適用して、加熱履歴を推定する。なお、メモリ21には、複数の加熱履歴の推定モデル27を格納しておくことで、1回の蛍光指紋の測定で、複数の加熱履歴を同時に推定することが可能となる。
[実施例]
以下、図14から図23を参照して実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図14および図15を参照して実施例1を説明する。本実施例1は、豆乳の加熱温度の推定を行った結果である。図14は、液状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。図15は、豆乳の凍結乾燥粉末の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
図14に示すように、推定モデル作成工程にて、同一時間異なる温度で加熱した液状の豆乳(Calibration)を用いて、推定モデルとなる回帰直線(Regression line)を作成している。
そして、図14に示すように、簡易計測工程にて、回帰直線を用いて、液状の豆乳製品(Validation)について検証したところ、高精度で豆乳製品の加熱温度の推定ができることが実証された。
また、図15に示すように、推定モデル作成工程にて、同一時間異なる温度で加熱した豆乳の凍結乾燥粉末(Calibration)を用いて、推定モデルとなる回帰直線(Regression line)を作成している。
そして、図15に示すように、簡易計測工程にて、回帰直線を用いて、豆乳製品の凍結乾燥粉末(Validation)について検証したところ、高精度で豆乳製品の加熱温度の推定ができることが実証された。
[実施例2]
図16を参照して実施例2を説明する。本実施例2は、豆乳の加熱時間の推定を行った結果である。図16は、液状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
ここで、本実施例2においては、(加熱温度,加熱時間)が(80℃,5分間)、(80℃,10分間)、(80℃,15分間)、および、(80℃,30分間)の液状の豆乳を計測サンプルとして用いた。
そして、簡易計測工程にて、各計測サンプルを液体用石英セルに入れて蛍光指紋計測を行い、蛍光指紋情報から加熱時間の推定を行った。
図16に示すように、加熱時間が短時間の計測サンプルにおいて、推定値に若干のばらつきがあるが、全体的に推定モデルである検量線周辺に推定値がプロットされた。
このように、本実施例2においては、液状の豆乳を計測サンプルとする場合、特に、加熱時間が長い計測サンプルに対して、高精度で加熱時間の推定ができることが実証された。
[実施例3]
図17を参照して実施例3を説明する。本実施例3は、牛乳の殺菌温度の推定を行った結果である。図17は、液状の牛乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
ここで、本実施例3においては、(殺菌温度,加熱時間)が(140℃,3秒間)、(140℃,3秒間)、(130℃,2秒間)、(130℃,2秒間)、(130℃,2秒間)、(120℃,2秒間)、および、(66℃,30分間)の7種類の液状の成分無調整牛乳を計測サンプルとして用いた。
そして、簡易計測工程にて、各計測サンプルを液体用石英セルに入れて蛍光指紋計測を行い、蛍光指紋情報から加熱時間の推定をPLS回帰分析により行った。
図17に示すように、殺菌温度、および、加熱時間の違いに関係なく、全体的に実測値と推定値が一致する45度線周辺に推定値がプロットされた。
このように、本実施例3においては、液状の牛乳を計測サンプルとする場合、殺菌温度、および、加熱時間の違いに関係なく、高精度で殺菌温度の推定ができることが実証された。
[実施例4]
図18を参照して実施例4を説明する。本実施例4は、豆乳の凍結乾燥粉末の加熱温度の推定を行った結果である。図18は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
ここで、本実施例4においては、簡易計測工程にて、各計測サンプルを粉体用石英セルに入れて蛍光指紋計測を行い、蛍光指紋情報から加熱温度の推定をSVM回帰により行った。
図18に示すように、加熱温度の違いに関係なく、全体的に実測値と推定値が一致する45度線周辺に推定値がプロットされた。
このように、本実施例4においては、固体状の豆乳を計測サンプルとする場合、加熱温度の違いに関係なく、高精度で加熱温度の推定ができることが実証された。
[実施例5]
図19を参照して実施例5を説明する。本実施例5は、豆乳の凍結乾燥粉末の加熱温度の推定を行った結果である。図19は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
ここで、本実施例5においては、簡易計測工程にて、各計測サンプルを粉体用石英セルに入れて蛍光指紋計測を行い、蛍光指紋情報から加熱温度の推定をRF回帰により行った。
図19に示すように、加熱温度の違いに関係なく、全体的に実測値と推定値が一致する45度線周辺に推定値がプロットされた。
このように、本実施例5においては、固体状の豆乳を計測サンプルとする場合、加熱温度の違いに関係なく、高精度で加熱温度の推定ができることが実証された。
[実施例6]
図20および図21を参照して実施例6を説明する。本実施例6は、豆乳の凍結乾燥粉末の加熱履歴の推定を行った結果である。図20および図21は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
ここで、本実施例6においては、簡易計測工程にて、各計測サンプルを粉体用石英セルに入れて蛍光指紋計測を行い、蛍光指紋情報から加熱履歴の推定をPLS判別により行った。
図20に示すように、加熱温度25℃以下を「クラス0」とし、26℃以上を「クラス1」としてPLS判別分析を実施した。
ここで、蛍光指紋情報に基づいて、判別境界以上をクラス1とし、判別境界未満をクラス0と判定する判別式を作成した。
図21に示すように、判別式に基づいて、各サンプルの所属クラスを判定したところ、100%の確率で正しく判別可能できることが実証された。
[実施例7]
図22を参照して実施例7を説明する。本実施例7は、豆乳の凍結乾燥粉末の加熱履歴の推定を行った結果である。図22は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
ここで、本実施例7においては、簡易計測工程にて、各計測サンプルを粉体用石英セルに入れて蛍光指紋計測を行い、蛍光指紋情報から加熱履歴の推定をSVM判別により行った。
図22に示すように、蛍光指紋情報に基づいて、判別式を作成し、判別式に基づいて、各サンプルの所属クラスを判定したところ、100%の確率で正しく判別可能できることが実証された。
[実施例8]
図23を参照して実施例8を説明する。本実施例8は、豆乳の凍結乾燥粉末の加熱履歴の推定を行った結果である。図23は、固体状の豆乳の加熱履歴推定結果の一例を示す図である。
ここで、本実施例8においては、簡易計測工程にて、各計測サンプルを粉体用石英セルに入れて蛍光指紋計測を行い、蛍光指紋情報から加熱履歴の推定をRF判別により行った。
図23に示すように、蛍光指紋情報に基づいて、判別式を作成し、判別式に基づいて、各サンプルの所属クラスを判定したところ、100%の確率で正しく判別可能できることが実証された。
なお、本実施形態において、多変量解析として実施する回帰分析としては、RF回帰またはPLS回帰がより望ましく、PLS回帰が更に望ましい。
また、本実施形態においては、蛍光指紋情報に対して、多変量解析として主成分分析、クラスター分析、正準判別分析、SIMCA、RF判別、および/または、SVM判別分析を行うことで、推定モデルとして判別式を作成し、判別式に取得された蛍光指紋情報を適用して、測定対象のアミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定することが望ましい。
また、本実施形態においては、多変量解析として実施する判別分析としては、RF判別、または、PLS判別がより望ましく、PLS判別が更に望ましい。
また、本実施形態においては、アミノ化合物含有食品は、より望ましくは、液状である。
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
また、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、加熱履歴推定装置20に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
例えば、加熱履歴推定装置20の各装置が備える処理機能、特に計算処理部24にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて加熱履歴推定装置20に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDなどのメモリ21などは、OS(Operating System)として協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
また、このコンピュータプログラムは、加熱履歴推定装置20に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD、および、Blu−ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
メモリ21に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラムやテーブルやデータベースやウェブページ用ファイル等を格納する。
また、加熱履歴推定装置20は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、加熱履歴推定装置20は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、非破壊、非接触での計測にも関わらず、加熱履歴を正確に推定することができるので、液状のアミノ化合物含有食品の加熱度合の検査などの様々な分野において広く使用することができる、非常に汎用性の高い手法である。
10 蛍光指紋取得装置
11 分光照明装置
110 光源
112 分光装置
12 分光検出装置
122 分光装置
124 蛍光指紋検出装置
13 測定対象物
20 加熱履歴推定装置
21 メモリ
22 キーボード・マウス
23 制御部
24 計算処理部
24−1 蛍光指紋情報取得部
24−2 データ前処理部
24−3 推定モデル作成部
24−4 加熱履歴推定部
26 I/Oポート
27 推定モデル
30 ディスプレイ

Claims (18)

  1. 照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象の豆乳または牛乳の蛍光強度を測定して、前記測定対象の豆乳または牛乳の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程と、
    前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に基づいて前記測定対象の豆乳または牛乳の加熱温度または加熱時間を推定する加熱履歴推定工程と、
    を含むことを特徴とする加熱履歴推定方法。
  2. 前記加熱履歴推定工程では、
    アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルに前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象の豆乳または牛乳の前記加熱温度または前記加熱時間を推定することを特徴とする請求項1に記載の加熱履歴推定方法。
  3. 前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行うことで前記推定モデルを作成する推定モデル作成工程、
    を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の加熱履歴推定方法。
  4. 前記推定モデル作成工程では、
    前記蛍光指紋情報に対して、前記多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、および/または、RF判別を行うことで、前記推定モデルとして検量線、および/または、判別式を作成し、
    前記加熱履歴推定工程では、
    前記検量線または前記判別式に前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象の豆乳または牛乳の前記加熱温度または前記加熱時間を推定することを特徴とする請求項3に記載の加熱履歴推定方法。
  5. 前記蛍光指紋情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程、
    を更に含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の加熱履歴推定方法。
  6. 前記豆乳または前記牛乳は、
    液状、または、前記液状を乾燥したものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の加熱履歴推定方法。
  7. 照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象の豆乳または牛乳の蛍光強度を測定して、前記測定対象の豆乳または牛乳の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得手段と、
    前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報に基づいて前記測定対象の豆乳または牛乳の加熱温度または加熱時間を推定する加熱履歴推定手段と、
    を備えたことを特徴とする加熱履歴推定装置。
  8. 前記加熱履歴推定手段は、
    アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルに前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象の豆乳または牛乳の前記加熱温度または前記加熱時間を推定することを特徴とする請求項7に記載の加熱履歴推定装置。
  9. 前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行うことで前記推定モデルを作成する推定モデル作成手段、
    を更に備えたことを特徴とする請求項8に記載の加熱履歴推定装置。
  10. 前記推定モデル作成手段は、
    前記蛍光指紋情報に対して、前記多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、および/または、RF判別を行うことで、前記推定モデルとして検量線、および/または、判別式を作成し、
    前記加熱履歴推定手段は、
    前記検量線または前記判別式に前記蛍光指紋情報取得手段により取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象の豆乳または牛乳の前記加熱温度または前記加熱時間を推定することを特徴とする請求項9に記載の加熱履歴推定装置。
  11. 前記蛍光指紋情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理手段、
    を更に備えたことを特徴とする請求項7から10のいずれか1つに記載の加熱履歴推定装置。
  12. 前記豆乳または前記牛乳は、
    液状、または、前記液状を乾燥したものであることを特徴とする請求項7から11のいずれか1つに記載の加熱履歴推定装置。
  13. 照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象の豆乳または牛乳の蛍光強度を測定して、前記測定対象の豆乳または牛乳の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程と、
    前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に基づいて前記測定対象の豆乳または牛乳の加熱温度または加熱時間を推定する加熱履歴推定工程と、
    をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータが実行可能なプログラム。
  14. 前記加熱履歴推定工程では、
    アミノ化合物含有食品の加熱履歴を推定するための推定モデルに前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象の豆乳または牛乳の前記加熱温度または前記加熱時間を推定することを特徴とする請求項13に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
  15. 前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行うことで前記推定モデルを作成する推定モデル作成工程、
    を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項14に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
  16. 前記推定モデル作成工程では、
    前記蛍光指紋情報に対して、前記多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、および/または、RF判別を行うことで、前記推定モデルとして検量線、および/または、判別式を作成し、
    前記加熱履歴推定工程では、
    前記検量線または前記判別式に前記蛍光指紋情報取得工程で取得された前記蛍光指紋情報を適用して、前記測定対象の豆乳または牛乳の前記加熱温度または前記加熱時間を推定することを特徴とする請求項15に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
  17. 前記蛍光指紋情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程、
    を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項13から16のいずれか1つに記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
  18. 前記豆乳または前記牛乳は、
    液状、または、前記液状を乾燥したものであることを特徴とする請求項13から17のいずれか1つに記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
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