(発明の詳細な説明)
本発明により、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の部分が二次タンパク質の部分と結合している突然変異融合タンパク質をもたらす従来知られていない遺伝子の欠失及び転座が、ヒト固形腫瘍である非小細胞肺癌(NSCLC)中で同定された。発見されたALK融合に関わる二次タンパク質は微小管結合タンパク質様4(EML−4)及びTRK−融合遺伝子(TFG)を包含している。
EML4と染色体2上のALK遺伝子の間に生じる本開示の二つの欠失は、401のアミノ酸の微小管結合タンパク質であるEML−4のN−末端が、1620のアミノ酸の膜チロシンキナーゼであるキナーゼドメイン及びALKのC−末端と結合する融合タンパク質を産生する。それぞれ796のアミノ酸(短い変異体)及び1059のアミノ酸(長い変異体)であって、ALKキナーゼ活性を保持している、生じたEML4−ALK融合タンパク質が、NSCLCを包含するヒト固形腫瘍サブセットの増殖及び生存を促進すると考えられる。
染色体6上のTFG遺伝子と染色体2上のALK遺伝子の間に生じる本開示の転座は、400のアミノ酸タンパク質であるTFGのN−末端が、1620のアミノ酸の膜チロシンキナーゼであるキナーゼドメイン及びALKのC−末端と結合する融合タンパク質を産生する。得られるTFG−ALK融合タンパク質は、701のアミノ酸であり、非固形ヒトリンパ腫で以前に観察されている(Hernadez et al. (2002)、supra.)が、固形腫瘍については未だ記述されていない。TFG−ALK融合タンパク質はALKキナーゼ活性を保持しており、そしてNSCLCを包含するヒト固形腫瘍のサブセットの増殖及び生存を促進することが考えられる。
ノッチ3に関するt(15;19)転座(Dang et al., supra.)を含む、異常な融合タンパク質をもたらす幾つかの遺伝子転座又は欠失が、NSCLCにおいて述べられているが、本開示のEML4−ALKの欠失変異体及び融合タンパク質は新規である。同様に、TFG−ALKの転座変異体及び融合タンパク質は、リンパ腫のような非固形腫瘍においては知られているが、固形腫瘍であるNSCLにおいては新規である。EML−4は、殆どのヒト組織中で発現される微小管関連タンパク質である。現在まで、EML−4の発現及び/又は活性の欠陥については報告されていない。ALKは膜チロシンキナーゼであって、ヒトにおいては、脳及びCNS組織、さらに小腸及び睾丸においても発現されるが、正常なリンパ細胞では発現されない。これは神経系の正常な発達及び機能において重要な役割を果たしている(Iwahara et al., 1997)。
ALKの発現及び/又は活性の異常は大細胞型未分化リンパ腫及び神経芽細胞腫において見出されている(Morris et al., 1994, Osajima-Hakomori et al., 2005 を参照されたい)。モエシン、非筋ミオシン重鎖9、クラスリン重鎖、トロポミシン3(TPM3)、TRK融合遺伝子(TFG)、及び他の遺伝子へのALKの融合が記述されている。Tort et al.; Tourio et al., Hernadez et al., supra.を参照されたい。興味深いことに、開示されているEML−4のALK(短い変異体)への融合は、他のALK融合突然変異体について既に記載されているように、野生型ALK(アミノ酸1058個)と正確に同じ位置で生じる。
以下に更に詳細に述べるように、EML4−ALK欠失変異体及び発現された融合タンパク質が単離され、配列決定され、融合タンパク質を発現するcDNAが産生される。従って、本発明は、一つには、EML4−ALKの融合ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドへハイブリダイズする核酸プローブ、及び組み換えの突然変異ALKポリペプチドを産生するためのそのようなポリヌクレオチドを利用するための方法、ベクター及び宿主細胞を提供する。本発明は、一つには、EML4−ALKの融合ポリペプチドをコードするアミノ酸配列を含んでいる単離されたポリペプチド、組み換えの突然変異ポリペプチド、及びEML4−ALKの融合ポリペプチドと特異的に結合及び/又はこれを検出するが、野生型のEML−4又は野生型のALKの何れとも結合又はこれを検出しない単離された試薬も提供する。以下に更に詳細に述べている、本発明のこれらの態様は、とりわけ、突然変異ALKキナーゼの発現/活性によって促進される癌のメカニズムの更なる研究、固形腫瘍(例えば、肺癌を包含する癌腫及び肉腫)及び開示のALK欠失及び転座変異及び/又は融合タンパク質によって特徴付けられる他の癌の同定、及び以下に更に記載するような本発明の方法の実施において有用であろう。
新規なALKキナーゼの突然変異体及び遺伝子の欠失及び転座変異は、これらの融合タンパク質の1つ又はそれ以上により特徴付けられる、NSCLCのような、固形腫瘍の潜在的診断及び治療において重要な意味を有している。例えば、NSCLCは多くの場合に、それが転移した後にしか検出されないので、診断2年以内の死亡率は75%である。従って、NSCLCを引き起こす遺伝子突然変異を有している患者をできるだけ早く同定することが非常に望ましい。
従って、固形腫瘍(NSCLC)の増殖及び生存を促進すると考えられる、遺伝子欠失によってもたらされるEML4−ALK融合タンパク質(短い又は長い変異体)及び遺伝子転座によってもたらされるTFG−ALK融合タンパク質の発見は、肺癌(NSCLCのような)を含む哺乳類の固形腫瘍を、更にはALK融合タンパク質(EML4−ALK又はTFG−ALKのような)が発現される他の癌を的確に同定する重要な新規な方法を可能にする。これらの癌は、WHI−131又はWHI−154のような、突然変異ALKタンパク質のキナーゼ活性の阻害剤に応答する可能性が最も高い。突然変異ALKタンパク質キナーゼによって促進される癌をできるだけ早く同定することは、どの療法又は併用療法が特定の患者に対して最も適しているかを臨床的に判断するのに大いに役立ち、実際には癌を促進する主要なシグナル伝達分子ではない、他のキナーゼを標的とする阻害剤の処方を避けることに役立つであろう。
従って、本発明は、一つには、癌におけるALK突然変異ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチドの存在を、本発明の融合特異的及び突然変異体特異的な試薬を用いて検出する方法を提供する。そのような方法は、例えば、タンパク質のALKキナーゼ活性の阻害剤に応答すると思われる、NSCLCのような、固形腫瘍を同定するために実施することができる。本発明は、一つには、ある化合物がEML4−ALK融合ポリペプチドによって特徴付けられる癌の進展を阻害するか否かを判定する方法も提供する。更に、突然変異ポリペプチドの発現及び/又は活性を阻害することによって、EML4−ALK融合ポリペプチド又はTFG−ALK融合ポリペプチドを発現する固形腫瘍の進展を阻害する方法が本発明によって提供される。そのような方法を以下に詳細に記述する。
本発明の更なる態様、利益及び具体的態様は以下により詳細に記述されている。本明細書で引用する全ての文献はその全てを参照して本明細書に取り込まれる。
(定義)
本明細書では、以下の用語は表記の意味を有している。
「抗体」(複数を含む)は、Fab又はその抗原認識断片を包含し、キメラ、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を包含する、IgG、IgM、IgA、及びIgEを含んでいる全てのタイプの免疫グロブリンを示す。本明細書では、用語「ヒト化抗体」は、元の結合能力を保持しながら、ヒト抗体により酷似するように、非抗原結合領域のアミノ酸を置き換えた抗体を示す。
用語「生物学的に活性な」は、天然に存在する分子の構造的、調節的、又は生化学的機能を有しているタンパク質を示す。同様に、「免疫学的に活性な」は、天然、組み換え、又は合成のEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチド、又はそれらのオリゴペプチドの、しかるべき動物又は細胞に特異的な免疫応答を誘発して特異抗体と結合する能力を示す。
用語「生体試料」は、その広い意味で用いられて、ALK融合のポリヌクレオチド又はポリペプチド又はその断片(EML4−ALK及びTFG−ALKの融合ポリヌクレオチド及びポリペプチドを包含する)を含有していることが推測される何れかの生体試料を意味し、そして細胞、細胞から単離された染色体(例えば、分裂中期染色体の核酸)、ゲノムDNA(溶液中又はサウザン分析用のように固体支持体に結合して)、RNA(溶液中又はノーザン分析用のように固体支持体に結合して)、cDNA(溶液中又は固体支持体に結合して)、細胞からの抽出物、血液、尿、骨髄、又は組織などを含有していてよい。
癌及び突然変異ALKポリヌクレオチド及びポリペプチドに関する「によって特徴付けられる」は、遺伝子の欠失又は転座及び/又は発現されたALKに関するポリペプチドが、そのような遺伝子欠失及び/又は融合ポリペプチドが存在していない癌と比べて、存在している癌を示す。突然変異ポリペプチドの存在が、全部又は一部において、そのような癌の生育又は生存を促進する可能性がある。
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を削除するめに再配列されている、又はXL−PCR(登録商標、Perkin Elmer, Norwalk, Conn.)を用いて5’及び/又は3’方向に延伸されて再配列されている、又はGELVIEW(登録商標)のフラグメントアセンブリーシステム(GCG, Madison, Wis.)を用いて2つ以上のインサイトクローンの重複配列で構築されている、又は延伸され構築されている、核酸配列を示す。
「ALKキナーゼ阻害療法剤」は、野生型又は切断型のALKキナーゼの発現又は活性を、単独で及び/又は融合タンパク質(EML4−ALK融合タンパク質又はTFG−ALK融合タンパク質のような)の一部として、直接的又は間接的の何れかで阻害する、1つ又はそれ以上の化学的又は生物学的な化合物を含有している何れかの組成物を意味する。
「誘導体化」は、開示した融合ポリヌクレオチドをコードする核酸配列又はコードされたポリペプチド自体の化学修飾を示す。そのような修飾の例はアルキル基、アシル基、又はアミノ基による水素の置換であるだろう。核酸誘導体は天然の分子の必須の生物学的特性を保持しているポリペプチドをコードするであろう。
本明細書に開示されるポリペプチド、ポリヌクレオチド、又は試薬に関する「検出可能な標識」は、これに限定されないが、蛍光、質量、残基、染色、放射性同位体、標識、又はタグ修飾等を包含し、これによって目的の分子の存在を検出できる、化学的、生物学的又は他の修飾を意味する。
生体試料中のALK融合ポリペプチドに関する「発現」又は「発現された」は、この融合ポリペプチドが有意に発現されない対照試料と比べて、有意に発現されることを意味する。
「重同位体標識化ペプチド」(AQUAペプチドと同義語で用いられる)は、少なくとも1つの重同位体標識を含んでいるペプチドを意味し、これは、更に以下で検討する、国際公開WO第03/016861号公報、「多段階質量分析よるタンパク質及びその修飾形態の絶対的定量化」(Gygi et al.) に記載されているような、タンパク質の絶対的定量化又は検出に適している。そのようなAQUAペプチドに関する、用語「特異的に検出する」は、ペプチドが、AQUAペプチド配列を含有しているポリペプチド及びタンパク質のみを検出及び定量化して、AQUAペプチド配列を含有していないポリペプチド及びタンパク質を実質的に検出しないであろうことを意味する。
「単離された」(又は「実質的に精製された」)は、それらの天然環境から取り出され、単離又は分離された核酸又はアミノ酸配列を示す。これらは好ましくは、これらが天然で結合していた他の成分を、少なくとも60%、より好ましくは75%、そして最も好ましくは90%又はそれ以上含んでいない。
「模倣物質」は、その構造がALK融合ポリペプチド又はそのタンパク質の構造的認識から生じていて、タンパク質様分子に関する転座の作用の幾つか又は全てに影響を与え得るような、分子を示す。
「突然変異ALK]又は「融合」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、本明細書に記載されているような、ALK及び二次タンパク質(例えば、EML−4又はTFG)を含有している融合ポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。
「ポリヌクレオチド」(又は「ヌクレオチド配列」)は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド又はポリヌクレオチド、及びそれらの断片又は部分、及び一本鎖又は二本鎖で、センス又はアンチセンス鎖を表してもよい、ゲノム又は合成由来のDNA又はRNAを示す。
「ポリペプチド」(又は「アミノ酸配列」)は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列、及びそれらの断片又は部分を示し、そして天然の又は合成の分子を示す。ここで、「アミノ酸配列」が本明細書で天然のタンパク質分子のアミノ酸配列を示すように述べられているときは、「アミノ酸配列」及び、「ポリペプチド」又は「タンパク質」のような同様な用語は、アミノ酸配列を、述べられているタンパク質分子に関連する完全な、元のアミノ酸配列に限定することを意味していない。
「EML4−ALK融合ポリヌクレオチド」は、何れかの種、特に、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及び好ましくはヒトを包含する哺乳類から、天然、合成、半合成、又は組み換えか何れかの起源から得られる、本明細書に記載のような、実質的に精製されているEML4−ALK欠失変異遺伝子の産物又は融合ポリヌクレオチド(短い又は長い変異体)の核酸配列を示す。
「EML4−ALK融合ポリペプチド」は、何れかの種、特に、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及び好ましくはヒトを包含する哺乳類から、天然、合成、半合成、又は組み換えの何れかの起源から得られる、本明細書に記載の、実質的に精製されているEML4−ALK融合ポリペプチド(短い又は長い変異体)のアミノ酸配列を示す。
「TFG−ALK融合ポリヌクレオチド」は、何れかの種、特に、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及び好ましくはヒトを包含する哺乳類から、天然、合成、半合成、又は組み換えの何れかの起源から得られる、本明細書に記載のような、実質的に精製されているTFG−ALKの転座変異遺伝子の産物又は融合ポリヌクレオチドの核酸配列を示す。
「TFG−ALK融合ポリペプチド」は、何れかの種、特に、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及び好ましくはヒトを包含する哺乳類から、天然、合成、半合成、又は組み換えの何れかの起源から得られる、本明細書に記載の、実質的に精製されているTFG−ALK融合ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
抗体とタンパク質又はペプチドとの相互作用に関する用語「に特異的に結合する」(又は「特異的な結合」又は「特異結合」)は、相互作用がタンパク質上の特定な構造(すなわち、抗原決定基又はエピトープ)によって決まること;言い換えると、抗体は一般のタンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識して結合するということを意味している。特異的であるもの以外の配列又は抗原決定基への抗体の結合に関する用語「結合しない」は、抗体が特異的な抗原決定基又は配列への抗体の結合と比べて、実質的に反応しないことを意味する。
配列又はプローブのハイブリダイゼーション条件に関する用語「ストリンジェントな条件」は、約Tmマイナス5℃(プローブ又は配列の融解温度(Tm)より5℃低い)からTmより約20℃〜25℃低いまでの範囲以内を生ずる「厳しさ」である。典型的なストリンジェント条件は次の通りである;50%のホルムアミド、5倍のSSC(750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハーズ溶液(Denhardt's solution)、10%のデキストラン硫酸、及び20マイクログラム/mlの変性、せん断サケ精子DNAを含有する溶液中で42℃にて1晩培養してから、約65℃で濾液を0.1倍のSSC中で洗浄する。当業者によって理解されるように、ハイブリダイゼーションのストリンジェントな条件を、相同な又は関連するポリヌクレオチド配列を同定若しくは検出するために改変できる。
突然変異ALKポリペプチドの「変異体」は、1つ又はそれ以上のアミノ酸が改変されているアミノ酸配列を示す。変異体は「保存的な」変化を有していて、置換されたアミノ酸は同様な構造又は化学的な性質を有している(例えば、イソロイシンでロイシンを置換)。より希には、変異体は「非保存的な」変化、例えば、トリプトファンによるグリシンの置換、を有している。同様な軽微な変異は、アミノ酸の欠失又は挿入、又はその両方も包含している。生物学的又は免疫学的な活性を無くさずに、どのアミノ酸を置換、挿入又は欠失させるかを判定する指針は、当該技術分野で公知のコンピュータープログラム、例えばDNASTARソフトウェアを用いて見い出すことができるだろう。
A.ヒト固形腫瘍における突然変異ALKキナーゼの同定
染色体2上で生じて、EML−4のN末端をキナーゼドメイン及びALKのC末端と結合する2つの融合タンパク質変異体の発現をもたらす、本明細書に開示されている新規なヒト遺伝子欠失が、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株(H2228を含む)及び患者の固形腫瘍の抽出物における、広範囲のホスホペプチドプロファイルの実験中に、意外にも同定された。固形腫瘍である、NSCLCは肺癌の亜類型である。これら欠失融合に含まれるタンパク質は図1A−1Bの上の図に示されている。
H2228細胞株のリン酸化プロファイルを、最近記述された、複合混合物由来の修飾ペプチドの単離技術及び質量分析による特徴付け(Rush et al., の米国特許出願公開第20030044848号、「複合混合物由来の修飾ペプチドの免疫親和性単離(「IAP」技術)を参照されたい)を用いて、以下の実施例1に更に記載されるように、初めて明らかにした。ホスホチロシン特異抗体(CELL SIGNALING TECHNOLOGY, INC., Beverly, MA, 2003/04 Cat. #9411) を用いるIAP技術の適用は、H2228細胞株はALKキナーゼを発現するが、このタンパク質は明らかに切断されないことを明確にした。このスクリーニングでは細胞株中の、肺癌中で活性化されることが知られている幾つかを含む、多くの他の活性化キナーゼを同定した。5'RACEによるALKへの配列5’の分析は、次いでこのキナーゼがEML−4のN−末端に融合していることを明確にした(図6を参照されたい)。
同様の広範なホスホプロファイリング手段を用いる、NSCLC患者由来の154癌試料のその後の実験は、これらの患者集団中にEML4−ALK(短い変異体の)突然変異の存在を確認したばかりでなく、その他の患者集団中に第2のEML4−ALK(長い変異体)の存在及びTFG−ALK突然変異の存在も明らかにした(実施例1B及び1Cを参照されたい)。
突然変異ALKタンパク質がこれらのNSCLC癌において細胞の増殖及び生存を促進していることを、siRNAサイレンシングを用いて細胞を阻害することによって確認することができる(実施例3参照されたい)。
EML4−ALK融合遺伝子(短い及び長い変異体)及びTFG−ALK融合遺伝子をPCRで増幅し、単離して、配列を決定した(実施例3を参照されたい)。図1A−1Bの下の図から明らかなように、このEML4−ALKの欠失は、野生型EML−4のN−末端(短い変異体のアミノ酸1−123、又は長い変異体のアミノ酸1−495のどちらか)を、野生型ALKのキナーゼドメイン及びC−末端(アミノ酸1057−1620)と結合する(配列番号3及び5も参照されたい)。融合接合部はまさに野生型ALKのC−末端から膜貫通ドメインまでに生じる(図1A−1Bを参照されたい)。EML4−ALK融合ポリペプチドは、このタンパク質のコイルドコイルドメインを含む、EML−4のN−末端アミノ酸233又は495をそれぞれ保持している。796のアミノ酸(短い変異体)又は1059のアミノ酸(長い変異体)からなる、得られたEML4−ALK融合タンパク質は、ALKのキナーゼ活性を保持している。関連するエクソン及び融合接合部を図1A−1B下の図に示す。融合接合部は、エクソン6に続くEML−4のイントロン6(短い変異体)、又はEML−4のエクソン13(長い変異体)を包含している。
図1Cの下の図に示すように、TFG−ALK転座は、野生型TFGのN−末端(アミノ酸1−138)を、野生型ALKのキナーゼドメイン及びC−末端(アミノ酸1057−1620)と結合する(配列番号22及び5;及び図1Cの下の図及び図4C(配列番号20及び1)も参照されたい)。融合接合部はまさに野生型ALKのC−末端から膜貫通ドメインまでに生じ(図1Cを参照されたい)、そしてALKのキナーゼ活性を保持している。関連するエクソン及び融合接合部を図1C(下の図)に示す。融合接合部は、TFGのエクソン3及びALKのエクソン20を包含している。
FISHプローブを、パラフィン包埋ヒトNSCLC試料400個の群におけるEML4−ALK(短い変異体)融合タンパク質の存在を検出するために用いた(実施例6及び7;図6を参照されたい)。この試料サイズにおけるこの短い変異体の突然変異の出現率は非常に低かった。しかしながら、患者由来の凍結ヒトNSCLC癌試料154個の別の群においては、広範なリン酸化プロファイルを試験するIAP技術を用いて、TFG−ALK融合タンパク質をより高い発現率で検出した(実施例1Bを参照されたい)。
B.単離されたポリヌクレオチド。
本発明は、一つには、EML4−ALK融合ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチドプローブ、及び組み換えの融合ポリペプチドを産生するためにそのようなポリヌクレオチドを用いるための方法、ベクター、及び宿主細胞を提供する。
他に指示がない限り、本明細書におけるDNA分子の配列決定によって決定された全てのヌクレオチド配列は、自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems Inc. のモデル373のような)を用いて決定され、本明細書において決定されたDNA分子によってコードされるポリペプチドの全てのアミノ酸配列は、自動ペプチドシークエンサーを用いて決定された(実施例2を参照されたい)。この自動化手段によって決定されたDNA配列について当該技術分野で知られているように、本明細書で決定された何れかのヌクレオチド配列も幾つかの誤差を含んでいてもよい。自動化によって決定されたヌクレオチド配列は一般に、配列決定されたDNA分子の実際のヌクレオチド配列に対して、少なくとも約90%の相同性を有していて、より典型的には少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%の相同性を有する。実際の配列は、当該技術分野で公知のDNA配列決定方法のマニュアルを含む、他の手段によってより正確に決定することができる。当該技術分野でも知られているように、実際の配列に比べ、決定されたヌクレオチド配列における単一の挿入又は欠失は、決定されたヌクレオチド配列によってコードされる予測アミノ酸配列が、配列決定されたDNA分子によって実際にコードされるアミノ酸配列と完全に異なるように、ヌクレオチド配列の翻訳において、そのような挿入又は欠失位置から始まる、読み枠移動をもたらすであろう。
他に指示がない限り、本明細書に示されているそれぞれのヌクレオチド配列は、デオキシリボヌクレオチド(A、G、C、Tと省略)の配列として表されている。しかしながら、特定のデオキシリボヌクレオチド配列におけるそれぞれのチミジンデオキシリボヌクレオチド(T)がリボヌクレオチドウリジン(U)に置換されている場合には、DNA分子又はポリヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドの配列、及びRNA分子又はポリヌクレオチドに対する、核酸分子、又はポリヌクレオチドの「ヌクレオチド配列」は、リボヌクレオチド(A、G、C及びU)の対応する配列を意図している。例えば、デオキシリボヌクレオチドの略号を用いて示されている配列番号2の配列を有するRNA分子への参照は、配列番号2のそれぞれのデオキシリボヌクレオチドA、G又はCが、対応するリボヌクレオチドA、G又はCで置換されていて、それぞれのデオキシリボヌクレオチドTがリボヌクレオチドUによって置換されている配列を有するRNA分子を示すことを意図している。
一態様では、本発明は、
(a)配列番号1又は配列番号18のアミノ酸配列を含有している微小管結合タンパク質様4/未分化リンパ腫キナーゼ(Echnoderm Micrutubule-Associated Protein-LIke 4/Anaplastic Lymphoma Kinase; EML4−ALK)融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(b)EML4−ALK融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、そのヌクレオチド配列は配列番号2又は配列番号19のヌクレオチド配列を含有している;
(c)EML−4のN−末端アミノ酸配列(配列番号3の残基1−233又は配列番号19の残基1−495)及びALKのキナーゼドメイン(配列番号5の残基1116−1383)を含有しているEML4−ALK融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(d)EML−4のN−末端ヌクレオチド配列(配列番号4の1−700ヌクレオチド又は配列番号4の1−1486ヌクレオチド)及びALKのキナーゼドメインヌクレオチド配列(配列番号6の3348−4149ヌクレオチド)を含有しているヌクレオチド配列;
(e)EML4−ALK融合ポリヌクレオチドの融合接合部(配列番号2の700−701ヌクレオチド又は配列番号19の1486−1487ヌクレオチド)を包含するする少なくとも6つの隣接ヌクレオチドを含有しているヌクレオチド配列;
(f)EML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部(配列番号1の残基233−234又は配列番号18の残基495−496)を包含する少なくとも6つの隣接アミノ酸を含有しているポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び
(g)(a)〜(f)のヌクレオチド配列の何れかと相同性を有するヌクレオチド配列:
よりなる群から選ばれる配列に対して少なくとも95%の相同性を有するヌクレオチド配列を含有している単離されたポリヌクレオチドを提供する。
図2(配列番号2)のヌクレオチド配列のような、本明細書で提供されている情報を用いて、本発明の突然変異ALKポリペプチドをコードする本発明の核酸分子は、出発物質としてmRNAを用いるcDNAのクローニングのような、標準的なクローニング及びスクリーニング方法を用いて得ることができる。本発明の実例としては、図2(配列番号2)に記載されているEML4−ALK融合ポリヌクレオチド(短い変異体)は、ヒトNSCLC細胞株由来のゲノムDNAから単離した(以下の実施例2に更に記載されている)。融合遺伝子は、開示されるEML4−ALK遺伝子欠失(染色体2)が生ずる、固形腫瘍を包含する他の癌におけるゲノムDNA又はcDNAライブラリー中でも同定することができる。
決定されたEML4−ALK融合遺伝子のヌクレオチド配列は796のアミノ酸(短い変異体)及び1059のアミノ酸(長い変異体)のそれぞれのキナーゼ融合タンパク質をコードする(図2A−B(配列番号1及び18)及び図1A−Bを参照されたい)。EML4−ALK融合ポリヌクレオチドは、そのタンパク質のN−末端(アミノ酸1−233(短い変異体)又はアミノ酸1−495(長い変異体)をコードする野生型EML−4のヌクレオチド配列(図3(配列番号4)を参照されたい)の部分を、そのタンパク質のキナーゼドメイン及びC−末端をコードする野生型ALKのヌクレオチド配列(図4(配列番号6)を参照されたい)の部分とともに含有している。図1A−Bを参照されたい。キナーゼドメインは短い変異融合タンパク質(短い変異融合ポリヌクレオチドのヌクレオチド874−568によってコードされる)の残基292−568、又は長い変異融合タンパク質(長い変異融合ポリヌクレオチドのヌクレオチド1663−2494によってコードされる)の残基558−831から成っている。図2A−2Bを参照されたい。
示されるように、本発明は一つには、EML4−ALK融合タンパク質の成熟形態を提供する。シグナル仮説によれば、哺乳類の細胞によって分泌されるタンパク質は、増大するタンパク質鎖の粗面小胞体を越える移行が開始すると、成熟タンパク質から開裂されるシグナル又は分泌リーダー配列を有している。大部分の哺乳類の細胞及び昆虫の細胞でさえも、同様の特異性で、分泌タンパク質を開裂する。しかしながら、ある場合には、分泌タンパク質の開列は完全に均一ではなく、タンパク質に2つ又はそれ以上の成熟種をもたらす。更に、分泌タンパク質の開裂特異性は完全タンパク質の一次構造よって最終的に決定することが以前から知られている。すなわちそれはポリペプチドのアミノ酸配列に固有なものである。
例えば、寄託されているcDNAクローンによってコードされるアミノ酸配列を有している、成熟したEML4−ALKポリペプチドとは、哺乳類の細胞(例えば、以下に記載のような、3T3細胞)中で、寄託されているクローン又は成熟融合ポリペプチドをコードする他のクローンのヒトDNA配列によってコードされる完全読み込み枠の発現によって産生された融合タンパク質の成熟形態を意味する。
示されるように、本発明のポリヌクレオチドは、mRNAのようなRNAの形態で、又は例えばクローニングよって得られるか又は合成で産生されるcDNA及びゲノムDNAを包含するDNAの形態であってもよい。DNAは二本鎖又は一本鎖であってもよい。一本鎖のDNA又はRNAは、センス鎖としても知られている、コード鎖であってよく、又はアンチセンス鎖としても知られている、非コード鎖であってもよい。
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、それらの天然環境から取り出された、核酸分子、DNA又はRNAである。例えば、ベクター中に含まれている組み換えDNA分子は、本発明の目的のために単離されたものと考えられる。単離されたDNA分子の更なる例は、異種の宿主細胞中の組み換えDNA分子、又は溶液中の精製(部分的に又は実質的に)されたDNA分子を包含する。単離されたRNA分子は、本発明のDNA分子のインビボ又はインビトロでのRNA転写物を包含する。本発明による単離された核酸分子は、合成によって産生されるような分子を更に包含する。
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、図2A−B(配列番号2及び19)で示されるDNA分子、図1A−B(配列番号1及び18)で示される成熟EML4−ALK融合タンパク質をコードする配列を含有しているDNA分子、及び上記のようなものとは実質的に異なる配列を含有しているが、遺伝子コードの縮重によって、本発明のALK突然変異ポリペプチドを未だにコードするDNA分子を包含する。この遺伝子コードは当該技術分野で公知であり、従って、当業者にとってそのような縮重変異体を作成することは通常のことであろう。
別の態様では、本発明は上記の寄託されているcDNAクローンに含まれているEML4−ALK融合ヌクレオチド配列を含有しているEML4−ALK融合ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、そのような核酸分子は、上記の寄託されているcDNAクローン、又は本明細書に記載されるEML4−ALK融合タンパク質の全長を発現する別のクローンによって、コードされる成熟融合ポリペプチドをコードするであろう。
別の態様では、本発明は、EML−4のN−末端アミノ酸配列(配列番号3の残基1−233、又は配列番号3の残基1−495)及びALKのキナーゼドメイン(配列番号5の残基1116−1183)を含有しているEML4−ALK融合ポリペプチドをコードする単離されたヌクレオチド配列を提供する。
一態様では、ALKのキナーゼドメインを含有しているポリペプチドは配列番号5の残基1057−1620を含んでいる(図1Cの下の図を参照されたい)。
その他の態様では、上記EML−4のN−末端アミノ酸配列及びALKのキナーゼドメインは配列番号4のヌクレオチド1−700を含有しているヌクレオチド配列又は配列番号4の1−1486のヌクレオチド及び配列番号6の3171−4860のヌクレオチドによってそれぞれコードされる。
本発明は更に、本発明の突然変異ALKポリヌクレオチドの一つと相補的な配列を有するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。そのような単離された分子、特にDNA分子は、染色体での in situ ハイブリダイゼーションによる遺伝子マッピング用のプローブとして、そして例えば更に以下のF欄に記載されるているようなノーザンブロット分析による、ヒト組織におけるEML4−ALK融合タンパク質の発現を検出するために有用である。
本発明は更に、本明細書に記載される単離された核酸分子の断片に関する。本発明の単離されたEML4−ALKポリヌクレオチドの断片とは、本明細書で検討される診断用のプローブ及びプライマーとして有用である、長さが少なくとも約15のヌクレオチド、そしてより好ましくは少なくとも約20のヌクレオチド、更に好ましくは少なくとも約30のヌクレオチド、より一層好ましくは少なくとも約40のヌクレオチドの断片を意図している。もちろん、長さが約50〜1500のヌクレオチドのより大きい断片も、寄託されているcDNAか、又は図2(配列番号2)で示されるようなものか、又は図2A−B(配列番号2又は19)で示されるような融合ポリヌクレオチドを発現する他のクローンの全部ではないが、殆どの突然変異ALKヌクレオチド配列に対応する断片として、本発明により有用である。長さが少なくとも20のヌクレオチドである断片とは、例えば、断片が派生するそれぞれのヌクレオチド配列由来の、20又はそれ以上の連続した塩基を含有している断片を意図している。そのようなDNA断片の生成は当業者にとって通常のことであって、例を挙げると、制限エンドヌクレアーゼ切断、又は寄託されているcDNAクローンから入手可能な又は本明細書に開示される配列に従って合成されたDNAの超音波処理によるせん断によって、実施することができる。また、そのような断片を直接合成によって作り出すことができる。
本発明の好ましい核酸断片又はプローブは、EML4−ALKの融合遺伝子産物の融合接合部(図1A−B、下の図を参照されたい)をコードする核酸分子を包含する。例えば、ある好ましい態様では、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、EML4−ALK融合ポリヌクレオチドの融合接合部(配列番号2のヌクレオチド700−701、又は配列番号19のヌクレオチド1486−1487)を包含する少なくとも6つの隣接ヌクレオチドよりなるヌクレオチド配列/断片を含んでいる(図1A−B、下の図(配列番号8及び25)を参照されたい)。
その他の好ましい態様では、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、EML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部(配列番号1の残基233−234又は配列番号18の残基495−496)を包含する少なくとも6つの隣接アミノ酸を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列/断片を含んでいる(図1A−B、最下図(配列番号7及び24)を参照されたい)。
別の態様では、本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されるような本発明の突然変異ALKポリヌクレオチドの一部にハイブリダイズする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%のホルムアミド、5倍のSSC(750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍のデンハーズ溶液(Denhardt's solution)、10%のデキストラン硫酸、及び20マイクログラム/mlの変性、せん断サケ精子DNAを含有する溶液中で42℃で1晩培養してから、約65℃で濾液を0.1倍のSSC中で洗浄することを意図している。
ポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、参照ポリヌクレオチドの少なくとも約15のヌクレオチド(nt)に、そしてより好ましくは少なくとも約20のnt、更により好ましくは少なくとも約30のnt、そしてより一層好ましくは約30〜70のntにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNA又はRNAの何れか)を意図している。これらは上記そして以下で更に詳細に検討されるような診断用のプローブ又はプライマーとして有用である。
もちろん、参照ポリヌクレオチド(例えば、図2(配列番号2)に記載されている成熟EML4−ALK融合ポリヌクレオチド)のより大きい部分(例えば、長さが50〜750のnt、又は参照ポリヌクレオチドの全長に至るまで)にハイブリダイズするポリヌクレオチドも、寄託されているcDNAのヌクレオチド配列又は図2A−B(配列番号2又は19)又は図1A−B(下の図)(配列番号7及び24)に示されるヌクレオチド配列の全てでなくても、殆どに対応するポリヌクレオチドであるので、本発明によるプローブとして有用である。
「長さが少なくとも20」のポリヌクレオチドの一部とは、例えば、参照ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列由来の20又はそれ以上の隣接ヌクレオチドを意図している。示されるように、そのような部分は、例えば、 MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T., eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)(その開示の全てを参照して本明細書に取り込む)に記述のように、従来のDNAハイブリダイゼーション技術によるプローブか又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による標的配列を増幅するプライマーかのどちらかとして診断的に有用である。もちろん、ポリA配列(図2(配列番号2)に示されるEML−4−ALK配列の3'末端ポリ(A)トラクトのような)のみにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、そのようなポリヌクレオチドがポリ(A)延伸体又はそれらに相補的なもの(例えば、実質的に二本鎖のcDNAクローンの何れか)を含有している核酸分子のいずれかにハイブリダイズするであろうために、本発明の核酸の一部にハイブリダイズするために用いる本発明のポリヌクレオチドに含まれないであろう。
示されるように、本発明の突然変異ポリペプチドをコードする、本発明の核酸分子は、これに限定されないが、単独で成熟ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするようなもの;成熟ポリペプチドをコードする配列、及びプレ−、又はプロ−、プレ−プロ−タンパク質配列のようなリーダー又は分泌配列をコードするもののような、付加配列;成熟ポリペプチドのコード配列であって、例えばこれに限定されないが、スプライシング及びポリアデニル化シグナル、例えばリボソーム結合及びmRNAの安定化を含む、転写、mRNAプロセッシングとしての役割を果たす、転写、非翻訳配列のような、イントロン及び非コード5’及び3’配列を包含する、付加、非コード配列と共に、前記の付加コード配列を有しているか又は有していないないもの;付加機能を提供するような、付加アミノ酸をコードする付加コード配列を包含してもよい。
従って、ポリペプチドをコードする配列は、融合タンパク質の精製を容易にするペプチドをコードする配列ような、マーカー配列に融合していてもよい。
本発明のこの態様のある好ましい実施態様では、マーカーアミノ酸配列は、pQEベクター(Qiagen,Inc.)に備わっている標識のような、ヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、とりわけこれらの多くは市販されている。Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824 (1989) に記載されているように、例えばヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の簡便な精製を提供する。「HA」標識は、インフルエンザ血球凝集素タンパク質由来の抗原決定基に対応する、精製に有用な別のペプチドであり、Wilson et al., Cell 37:767 (1984) によって記載されている。以下で検討するように、他のそのような融合タンパク質は、自体がN−又はC−末端のFcと融合しているEML4−ALK融合ポリペプチドを包含する。
本発明は更に、本明細書に開示されているEML4−ALK融合ポリペプチドの一部、類縁体又は誘導体をコードする、本発明の核酸分子の変異体に関する。変異体は、自然の対立遺伝子変異体のように、自然に発生してもよい。「対立遺伝子変異体」とは、有機体の染色体上に所定の遺伝子配座を占有している遺伝子の幾つかの代替的形態の一つを意図している。例えば、GEENS II,Lewin, B., ed., John Wiley & Sons, New York (1985) を参照されたい。非天然の変異体を公知の突然変異生成技術を用いて産生することができる。
そのような変異体は、ヌクレオチドの置換、欠失又は付加によって産生されたものを包含する。この置換、欠失又は付加は、一つ又はそれ以上のヌクレオチドを含む。変異体はコード領域、非コード領域又はその両方を改変することができる。コード領域の改変は、保存的な又は非保存的なアミノ酸置換、欠失又は付加を産生することができる。これらのうちで特に好ましいのは、本発明で開示されている突然変異ALKポリペプチドの性質及び活性(例えば、キナーゼ活性)を変化させない、緩和な置換、付加及び欠失である。またこれに関して特に好ましいのは保存的置換である。
本発明の更なる態様は、本発明の突然変異ALKポリヌクレオチド(例えば、図2(配列番号1)で示される完全アミノ酸配列を有するEML4−ALK融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;又はEML−4のN-末端及びALKのキナーゼドメインをコードするヌクレオチド配列(図1A-B、下の図;及び図3及び4を参照されたい);又はそのような例示の配列と相補的なヌクレオチド)と、少なくとも90%の相同性を有していて、そしてより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有する。
突然変異ALKポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば95%「相同な」ヌクレオチド配列を有しているポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、突然変異ALKポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列の各々の100ヌクレオチド当たり、最大5箇所の突然変異を含んでいてもよいことを除いて、参照配列と相同であることを意図している。すなわち、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%相同なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中のヌクレオチドの最大5%を別のヌクレオチドで欠失又は置換させてもよい、又は参照配列中の総ヌクレオチドの最大5%のヌクレオチドの数を参照配列に挿入してもよい。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’−又は3’−末端位置で、又はこれらの末端の間の何処かで、参照配列中のヌクレオチドの間に個々に組み込むか、又は参照配列中に1つ又はそれ以上の連続群を組み込むかの何れかで、引き起こすことができる。
実際に、何れの特定の核酸分子が、例えば、図2A−B(配列番号2及び19)で示されるヌクレオチド配列、又は上記の寄託されているcDNAクローンのヌクレオチド配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有するか否かについては、ベストフィットプログラム(Bestfit program; Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711) のような、公知のコンピュータープログラムを用いて通常の方法で判定することができる。ベストフィットは、二つの配列間の最良の相同性部分を見出すために、Smith and Waterman の局所相同性アルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)) を用いる。特定の配列が、参照EML4−ALK融合ポリヌクレオチド配列又は本発明による切断されたALKポリヌクレオチド配列と、例えば、95%の相同性を有するか否かを判定するために、ベストフィット又は他の配列配置プログラムの何れかを用いるときは、もちろん、参照ヌクレオチド配列の全長に対しての相同性のパーセントが計算されるように、そして参照配列の総ヌクレオチド数の最大5%の相同性のずれが許容されるように、パラメーターがセットされる。
本発明はその範囲に、それらがALKキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするか否かに関わりなく、図2(配列番号2)で示される核酸配列又は寄託されているcDNAの核酸配列と、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有する核酸分子を包含している。これは特定の核酸分子がALKキナーゼ活性を有する融合ポリペプチドをコードしなくても、当業者はこの核酸分子を如何に用いるか、例えばハイブリダイゼーションプローブとして又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマーとして用いるかを既に知っているからである。キナーゼを有しているポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の用途は、とりわけ、(1)EML4−ALK欠失遺伝子、又は切断されたALK遺伝子、又はcDNAライブラリー中のその対立遺伝子変異体を単離すること;(2)Verma et al., の HUMAN CHROSOMES: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUES, Pergamon Press, New York (1988) に記載のように、分裂中期の染色体拡散を、in situハイブリダイゼーション(例えば「FISH」)してEML4−ALK欠失遺伝子又は切断されたALK遺伝子の正確な染色体位置を提供すること;及び特定組織での、EML4−ALK融合タンパク質又は切断されたALKキナーゼmRNAの発現を検出するためのノーザンブロット分析を包含する。
しかしながら、実際にALKキナーゼ活性を有する融合ポリペプチドをコードする、本発明の突然変異ALKポリペプチド又は寄託されているcDNAの核酸配列と少なくとも95%相同な配列を有する核酸分子が好ましい。そのような活性は、特定な生物学的アッセイで測定して、本明細書に開示されるEML4−ALK融合タンパク質(全長のタンパク質、成熟タンパク質、又はキナーゼ活性を保持しているタンパク質断片の何れか)と、同様であってよく、同一である必要はない。例えば、ALKのキナーゼ活性は、1つ又はそれ以上のチロシン含有ペプチド基質、例えば、ALKキナーゼの基質である、インシュリン受容体基質1又は2(IRS1、IRS2)をリン酸化する能力を判定するために試験することができる。
遺伝子コードを縮重すれば、寄託されているcDNAの核酸配列又は図2A-B(配列番号2及び19)に示される核酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%相同な配列を有する多くの核酸分子が、ALK活性を有する突然変異ポリペプチドをコードするであろうことを当業者は直ちに認識するであろう。実際に、これらのヌクレオチド配列の縮重変異体の全てが同様なペプチドをコードするので、このことは上記の比較アッセイを行わなくても、当業者に明確であろう。更に、縮重変異体ではないそのような核酸分子に関しては、相当数がALK活性を保持しているポリペプチドをコードするであろうことが、当該技術分野で認識されるだろう。それは、タンパク質機能に重要な影響を及ぼすことが殆ど無いか又は可能性がないアミノ酸置換(例えば、1つの脂肪族アミノ酸を第2の脂肪族アミノ酸で置換する)を、当業者が充分に認識しているからである。
例えば、表現型の上では軽微なアミノ酸置換を如何に行うかについての助言が、Bowie et al., 「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」, Science 247:1306-1310 (1990) に掲載されており、これは改変するアミノ酸配列の許容範囲を検討する2つの主要なアプローチを記載している。第一の方法は、突然変異は自然淘汰によって受け入れられるか又は拒絶されるかの何れかであるという、進化の過程に因っている。第2のアプローチは、クローン遺伝子の特定部位にアミノ酸変化を導入するための遺伝子組み換え技術、及び機能性を保持している配列を同定するための選択又はスクリーニングを利用している。これらの検討は、タンパク質がアミノ酸置換に意外に耐えるということを明確にした。そのような技術に精通している当業者は、タンパク質のある特定の位置においてどのアミノ酸変化が許容可能であるかも理解される。例えば、殆どの埋設アミノ酸残基は非極性の側鎖を必要としているのに対して、殆どの表面側鎖の特性は一般に保護されていない。他のそのような表現型の上での軽微な置換は、Bowie et al., supra.及びそこで引用されている引例に記載されている。
当該技術分野で公知かつ一般に利用可能な、DNA配列を決定する方法は、本発明のポリヌクレオチドの態様の何れかを実施するために用いることができる。この方法は、DNAポリメラーゼ1のクレノウ断片(Klenow fragement)、SEQUENASE(登録商標)(US Biochemical Corp, Cleveland, Ohio)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、熱安定T7ポリメラーゼ(Amersham, Chicago, IL)、又は組み換えポリメラーゼと、Gibco BRL(Gaithersburg, Md.) が市販しているELONGASE Amplification Systemのような校正エクソヌクレアーゼとの組合わせのような酵素を用いることができる。この工程は、Hamilton Micro Lab 2200 (Hamilton, Reno, Nev.)、Peltier Thermal Cycler (PTC200; MJ Research, Watertown, Mass.) 及び ABI 377 DNA sequencers (Perkin Elmer) のような器械を用いて自動化することが好ましい。
本発明の突然変異ALKポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の部分を用い、プロモーター及び制御エレメントのような上流配列を検出するための、当該技術分野で公知の多数の方法を利用して拡張することができる。例えば、利用できる一つの方法である、「制限部位」PCRは、公知の遺伝子座に隣接している未知の配列を検索するユニバーサルプライマーを用いる(Sarkar, G., PCR Methods Applic. 2:318-322(1993))。特に、ゲノムDNAは、リンカー配列に対するプライマー及び公知領域に特異的なプライマーの存在下で、最初に増幅される。典型的なプライマーは本明細書の実施例2に記載されるようなものである。増幅された配列は次いで、最初のDNA内部に同じリンカープライマー及び別の特異的プライマーを用いて、2回目のPCRを受ける。PCRの各回の産物を適切なRNAポリメラーゼを用いて転写して、逆転写酵素を用いて配列を決定する。
逆PCRも、公知領域に基づく分岐プライマーを用いて、配列を増幅又は拡張するために利用することができる(Triglia et al., Nucleic Acids Res. 16:8186 (1988))。プライマーは、OLIGO 4.06 Primer Analysis software (National Biosciences Inc., Plymouth, Minn.)、又は別の適切なプログラムを用いて、22−30のヌクレオチドの長さに、50%又はそれ以上のGC含量を有するように、そして約68〜72℃の温度で標的配列にアニールするように設計することができる。この方法は、遺伝子の公知領域に適切な断片を産生するために幾つかの制限酵素を用いる。この断片は次いで、分子内ライゲーションによって環化されてPCRテンプレートとして利用される。
使用可能な別の方法は、ヒト及び酵母の人工染色体DNAにおける公知配列に隣接するDNA断片のPCR増幅を含む捕捉PCRである(Lagerstrom et al., PCR Methods Applic. 1:111-119 (1991))。この方法では、PCRの実施前にDNA分子の未知部分へ改変二本鎖配列を挿入するために、多数の制限酵素による消化及びライゲーションを用いることもできる。未知の配列を検索するために用いることとができる別の方法は、Parker et al., Nucleic Acids Res. 19:3055-3060 (1991) に記載されているものである。更に、PCR、ネステッドプライマー(nested primers)、及びゲノムDNAを扱うPROMOTERFINDER(登録商標)ライブラリーを用いることができる(Clontech, Palo Alto, Calif.)。この処理はスクリーンライブラリーを必要とせず、イントロン/エクソン連結を検出するために有用である。
全長のcDNAをスクリーニングする場合には、より大きいcDNAを包含するためにサイズ選択されているライブラリーを用いることが好ましい。また、ランダムプライムライブラリーは、遺伝子の5’領域を含むより多くの配列を含有しているので好ましい。ランダムプライムライブラリーは特に、オリゴd(T)ライブラリーが全長のcDNAをもたらさない状況で有用であろう。ゲノムライブラリーは5’及び3’非転写制御領域への配列の拡張のために有用であろう。
市販されているキャピラリー電気泳動システムを、シーケンシング又はPCR産物のサイズを分析するために又はヌクレオチド配列を確認するために用いることができる。特に、キャピラリーシーケシングは、電気泳動分離のための流動性ポリマー、レーザーで活性化される4つの異なった蛍光染料(一つは各ヌクレオチド用)、及び電荷結合素子カメラによる放出波長の検出を利用する。光出力強度は適切なソフトウェア(例えば、GENOTYPER(登録商標)及びSEQUENCE NAVIGATOR(登録商標)、Perkin Elmer)を用いて電気信号に変換でき、試料の挿入からコンピュータ分析及び電気データの表示までの全ての過程をコンピュータ制御できる。キャピラリー電気泳動は、特定試料に限られた量で存在しているかもしれないDNAの小片の配列決定のために特に好ましい。
C.ベクター及び宿主細胞
本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、組み換えベクターで遺伝子操作された宿主細胞、及び組み換え技術による組み換えEML4−ALKポリペプチド又はその断片の産生も提供する。
組み換え構築物を、感染、形質導入、トランスフェクション、トランスベクション、電気穿孔法及び形質転換のような周知の技術を用いて宿主細胞に導入することができる。ベクターは例えば、ファージ、プラスミド、ウィルス又はレトロウィルスのベクターであってよい。レトロウィルスベクターは複製可能又は複製欠損であってもよい。後者の場合は、ウィルスの増殖は一般に、相補宿主細胞中のみで起こるであろう。
ポリヌクレオチドを、宿主における増殖を選択可能なマーカーを含有しているベクターに結合することができる。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物、又は荷電脂質との錯体に導入される。ベクターがウィルスの場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでパッケージングし、次いで宿主細胞に形質導入することができる。
目的のポリヌクレオチドに対してシス作用制御領域を含有しているベクターが好ましい。適切なトランス作用因子を、宿主によって供給、相補ベクターによって供給、又は宿主に導入することによりベクター自身によって供給できる。これに関するある好ましい態様では、ベクターは、誘導可能な及び/又は細胞型固有の、特定な発現を行う。そのようなベクターのうち特に好ましいものは、温度及び栄養素添加物のような、容易に操作できる環境因子によって誘導可能なものである。
本発明で有用な発現ベクターは、染色体、エピソーム、及びウィルス由来のベクター、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素、バキュロウィルス、パポバウィルス、ワクシナウィルス、アデノウィルス、家禽ジフテリアウィルス、仮性狂犬病ウィルス及びレトロウィルス、及びコスミド及びファージミドのような、これらの組合わせ由来のベクターを包含する。
EML4−ALKポリヌクレオチド又は本発明のポリヌクレオチドを含むDNAの挿入物は、数例を挙げると、ラムダファージPLプロモーター、大腸菌lac、trp及びtacプロモーター、SV40早期及び後期プロモーター及びレトロウィルスLTRsのプロモーターのような、適切なプロモーターと操作可能に結合しなければならない。他の適切なプロモーターは当業者に公知である。発現構築物は更に、転写を開始、終了するための部位、及び転写領域に翻訳のためのリボソーム結合部位を含有しているであろう。この構築物によって発現された成熟転写物のコード部分は、翻訳されるポリペプチドの末端に正確に位置している開始及び終止コドン(UAA、UGA又はUAG)に翻訳開始部位を包含していることが好ましいだろう。
示されるように、発現ベクターは少なくとも1つの選択可能なマーカーを包含していることが好ましいだろう。そのようなマーカーは、真核細胞の培養のためのジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシン耐性、及び大腸菌及び他の細菌培養におけるテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子を包含する。適切な宿主の代表的な例は、これに限定されないが、大腸菌、ストレプトミセス及びネズミチフス菌細胞のような細菌細胞;酵母細胞のような、真菌細胞;ショウジョウバエS2及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞のような昆虫細胞;CHO、COS及びボーズ(Bowes)メラノーマ細胞のような動物細胞;及び植物細胞を包含する。上記宿主細胞のための適切な培養培地及び条件は当該技術分野で公知である。
細菌において用いられるベクターで好ましいものは、Quiagen から入手できる、pQE70、pQE60及びpQE−9;Stratagene から入手できるpBSベクター、ファージスクリプト(Phagescript) ベクター、ブルースクリプト (Bluescript) ベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;及び Pharmacia から入手できるptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5を包含する。真核ベクターのうち好ましいものは、Stratagene から入手できるpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1及びpSG;及び Pharmacia から入手できるpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLである。他の適切なベクターは当業者にとって明白であろう。
公知の細菌プロモーターのうち本発明で用いるのに適しているものは、大腸菌lac1及びlacZプロモーター、T3及びT7プロモーター、gptプロモーター、ラムダPR及びPLプロモーター及びtrpプロモーターを包含する。適切な真核プロモーターはCMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、後期及び前期SV40プロモーター、ラウス肉腫ウィルス(RSV)のような、レトロウィルスLTRsのプロモーター、及びマウスメタロチオネイン−1プロモーターのような、メタロチオネインプロモーターを包含する。
酵母、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)においては、アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、及びPGHのような、構成的又は誘導性のプロモーターを含む多くのベクターを用いることができる。総説については、Ausubel et al. (1989) CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, N.Y. 及び Grant et al., Methods Enzymol. 153:516-544 (1997) を参照されたい。
この構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン介在トランスフェクション、陽イオン性脂質介在トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、感染又は他の方法によって達成できる。そのような方法は、Davis et al., BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY (1986) のような、多くの標準的な実験用マニュアルに記載されている。
高等真核生物による、本発明のEML4−ALK融合ポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって増進させることができる。エンハンサーは、所定の宿主細胞においてプロモーターの転写活性を増大するように働く通常約10〜300bpである、DNAのシス作用性要素である。エンハンサーの例は、塩基対100〜270の複写起点の後期部位に位置しているSV40エンハンサー、サイトメガロウィルス前期プロモーターエンハンサー、複写起点の後期部位にあるポリオーマエンハンサー、及びアデノウィルスエンハンサーを包含する。
翻訳されたタンパク質の、小胞体の内腔への、細胞膜周辺腔への、又は細胞外環境への分泌のために、適切な分泌シグナルを発現されたポリペプチド中に組み入れることができる。このシグナルはポリペプチドに対して内因性であってよく、又はこれらは異種シグナルであってもよい。
ポリペプチドを、融合タンパク質(例えば、GST−融合)のような改変形態で発現してよく、そして分泌シグナルだけではなく、更なる異種の機能領域を含んでいてもよい。例えば、追加のアミノ酸、特に荷電したアミノ酸の領域を、精製中、又はその後の処理又は貯蔵中に、安定性及び宿主細胞への残存を改善するために、ポリペプチドのN−末端に付加することができる。また、精製を促進するために、ペプチド残基をこのポリペプチドに付加してもよい。そのような領域はポリペプチドの最終調製の前に除去することができる。とりわけ、分泌又は排出を引き起こすための、安定性を改善するための、そして精製を促進するための、ペプチド残基のポリペプチドへの付加は当該技術分野でよく知られていて通常の手法である。好ましい融合タンパク質はタンパク質を可溶化するのに有用な免疫グロブリン由来の異種領域を含有している。
EML4−ALK融合ポリペプチドを、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸による抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを包含する、公知の方法で組み換え細胞培養物から回収及び精製することができる。高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を精製に用いることが最も好ましい。本発明のポリペプチドは、天然精製産物、化学合成過程の産物、及び例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫及び哺乳類の細胞を含む、原核及び真核宿主から組み換え技術によって産生された産物を包含する。組み換え産生過程で用いられる宿主によって、本発明のポリペプチドはグリコシル化されていても、又はグリコシル化されていなくてもよい。更に、本発明のポリペプチドは、ある場合は宿主介在過程の結果、初期改変メチオニン残基を含有していてもよい。
従って、ある態様では、本発明は、組み換え宿主細胞(上記のような)を融合ポリペプチドの発現に適している条件下で培養して、ポリペプチドを回収することによって組み換えEML4−ALK融合ポリペプチドを産生する方法を提供する。宿主細胞の生育及びそのような細胞からの組み換えポリペプチドの発現に適している培養条件は、当業者にとって公知である。例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausbel FM et al., eds., Volume 2, Chapter 16, Wiley Interscience を参照されたい。
D.単離されたポリペプチド。
本発明は、ある部分では、単離された突然変異ALKキナーゼポリペプチド及びその断片を提供する。一態様では、本発明は、
(a)配列番号1又は配列番号18のアミノ酸配列を含有しているEML4−ALK融合ポリペプチドをコードするアミノ酸配列;
(b)EML−4のN−末端アミノ酸配列(配列番号3の残基1−123、又は配列番号3の残基1−495)及びALKのキナーゼドメイン(配列番号5の残基1116−1383)を含有しているEML4−ALK融合ポリペプチドをコードするアミノ酸配列;及び
(c)EML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部(配列番号1の残基233−234、又は配列番号18の残基495−496)を包含する少なくとも6つの隣接アミノ酸を含有しているポリペプチドをコードするアミノ酸配列:
よりなる群から選ばれる配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する単離されたポリペプチドを提供する。
一つの好ましい態様では、上記のような組み換えベクター又は組み換え宿主細胞を用いて産生できる、本発明の組み換え突然変異ALKポリペプチドを提供する。
EML4−ALK融合ポリペプチド又は切断された活性ALKキナーゼポリペプチドのアミノ酸配列の幾つかを、突然変異タンパク質の構造又は機能に有意な影響をもたらさずに、改変できるということは当該技術分野で認識されるであろう。配列中のそのような相違を検討する場合は、タンパク質に活性を決める重要な部位(例えばALKのキナーゼドメイン)があるようにすることを配慮すべきである。一般に、同じような機能を示す残基を用いれば、三次構造を形成する残基を置き換えることが可能である。他の例では、改変をタンパク質の重要ではない領域で行う場合は、残基のタイプは全く重要でなくてよい。
従って、本発明は更に、実質的なALKキナーゼ活性を保持しているか、又は以下で検討するようなタンパク質部分のような、EML−4又はALKタンパク質の他の領域を含有している、EML4−ALK融合ポリペプチドの変異体を包含している。そのような突然変異体は、欠失、挿入、反転、反復、及びタイプ置換(例えば、一つの親水性残基を別のものと置換するが、一般に親水性の強いものを疎水性の強いものとは置換しない)を包含する。小さな改変又は「中性」アミノ酸置換のようなものは、一般に活性に殆ど影響がないであろう。
保存的置換として典型的に見られるものは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの間での互いの置換;ヒドロキシ残基SerとThrの交換、酸性残基ASpとGluの交換、アミド残基AsnとGlnの間での置換、塩基残基LysとArgの交換、及び芳香族残基Phe、Tyr間の置き換えである。当業者に知られている保存的アミノ酸置換の例は;芳香族:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン;疎水性:ロイシン、イソロイシン、バリン;極性:グルタミン、アスパラギン;塩基性:アルギニン、リジン、ヒスチジン;酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;小分子:アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン、グリシン;である。上で詳細に示したように、どのアミノ酸交換が表現型的に軽微であると思われるか(すなわち、機能に対して有意な悪影響をおよばさないと思われるか)についての更なる手引きをBowie et al., Science 247, supra に見出すことができる。
本発明のポリペプチドは単離された形態、好ましくは実質的に精製された形態で、提供されることが好ましい。本発明のEML4−ALK融合ポリペプチドの組み換え産生物は、Smith and Johnson, Gene 67:31-40 (1988) に記載されている一工程方法で実質的に精製することができる。
本発明のポリペプチドは、図2A−B(配列番号1及び18)(リーダー配列を含んでいてもいなくても)のEML4−ALK融合ポリペプチド、EML−4のN−末端アミノ酸配列(配列番号3の残基1−123、又は配列番号3の残基1−495)及びALKのキナーゼドメイン(配列番号5の残基1116−1383)を含有しているEML4−ALK融合ポリペプチドをコードするアミノ酸配列、及びEML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部(配列番号1の残基233−234、又は配列番号18の残基495−496)を包含する少なくとも6つの隣接アミノ酸を含有しているポリペプチドをコードするアミノ酸配列(図1A−B、最下図も参照されたい)を、更に、上記のものと少なくとも90%の相同性、好ましくは少なくとも95%の相同性、そして更に好ましくは少なくとも96%、97%、98%又は99%の相同性を有するポリペプチドも包含する。
二つのポリペプチドに対する「%」の相同性とは、ベストフィットプログラム(Bestfit program; Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711) 及び相同性を判定するためのデフォルト設定を用いて二つのポリペプチドのアミノ酸配列を比較して作成した相同性スコアーを意図している。ベストフィットは、二つの配列間の相同性の最良の部分を見出すために、Smith and Waterman の局所相同性アルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)) を用いる。
ポリペプチドが、本発明のEML4−ALK融合ポリペプチドの参照アミノ酸配列と、例えば少なくとも95%「相同な」アミノ酸配列を有しているとは、このポリペプチドのアミノ酸配列が、突然変異ALKポリペプチドの参照アミノ酸配列の各々の100のアミノ酸当たり5個までのアミノ酸改変をアミノ酸配列が含有していてもよいことを除いて、参照配列と相同であることを意図している。すなわち、参照アミノ酸配列と少なくとも95%相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、参照配列の5%までのアミノ酸残基を欠失又は他のアミノ酸と置換させてもよい、又は参照配列中の総アミノ酸残基の5%までのアミノ酸の数を、参照配列に挿入してもよい。参照配列のこれらの改変は、参照アミノ酸配列のアミノ末端又はカルボキシ末端位置、又はこれら末端位置の間の何れかの位置に、参照配列中の残基間に個々に、又は参照配列内の1つ又はそれ以上の隣接基に散在させて、生じさせることができる。
特定の配列が、本発明による参照配列と、例えば、95%の相同性を有するか否かを判定するために、ベストフィット又は他の配列配置プログラムの何れかを用いるときは、もちろん、参照アミノ酸配列の全長に対して相同性のパーセントが計算されるように、そして参照配列のアミノ酸残基の総数の最大5%の相同性のずれが許容されるように、パラメーターがセットされる。
本発明のEML4−ALK融合ポリペプチドは、例えば当業者に公知の方法を用いる、SDS−PAGEゲル、モレキュラーシーブゲルろ過カラム上で分子量マーカーとして使用できる。
以下に更に詳細に記載されるように、本発明のポリペプチドは、以下に記載するような突然変異ALKポリペプチドの発現を検出するアッセイに、又は突然変異ALKタンパク質の機能/活性を増強又は阻害することが可能な作動薬又は拮抗薬として有用な、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のような融合ポリペプチドに特異的な試薬、又は切断されたポリペプチドに特異的な試薬を作成するためにも用いることができる。更に、そのようなポリペプチドは、EML4−ALK融合ポリペプチド、又は本発明による候補作動薬及び拮抗薬でもある断片ALKキナーゼポリペプチド結合タンパク質を「捕捉」するための、酵母2ハイブリッドシステムで使用することができる。酵母2ハイブリッドシステムは、Fields and Song, Nature 340:245-246 (1989) に記載されている。
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドのエピトープを含む部分、例えばEML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部(図1A−B、最下図を参照されたい)を含有するエピトープ、を含むペプチド又はポリペプチドを提供する。このポリペプチドのエピトープ部分は、本発明のポリペプチドの免疫原性又は抗原性エピトープである。「免疫原性エピトープ」は、全タンパク質が免疫源であるときに抗体応答を誘発するタンパク質の一部分として定義されている。これらの免疫原性エピトープは分子上の幾つかの遺伝子座に閉じこめられると考えられている。一方、抗体が結合できるタンパク質分子の領域は、「抗原エピトープ」と定義されている。タンパク質の免疫原性エピトープの数は一般に抗原エピトープの数より少ない。例えば、Geysen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002 (1983) を参照されたい。本発明の融合ポリペプチドに特異的な抗体の産生は以下に更に詳細に記載されている。
抗原エピトープを含むペプチド又はポリペプチドを用いて産生された抗体は模倣タンパク質の検出に有用であり、そして異なったペプチドに対する抗体は、翻訳後処理を受けているタンパク質前駆体の各種領域の運命を追跡するために用いることができる。ペプチド及び抗ペプチド抗体は、例えば、免疫沈降アッセイにおいて、短いペプチド(例えば、約9のアミノ酸)であっても、より大きいペプチドに結合して置き換え得ることが示されているので、模倣タンパク質についての定性及び定量アッセイ、例えば競合アッセイに用いることができる。例えば、Wilson et al., Cell 37:767-778 (1984) at 777 を参照されたい。本発明の抗ペプチド抗体は、例えば、当該技術分野で公知の方法を用いる吸着クロマトグラフィーによる、模倣タンパク質の精製に関して有用である。免疫アッセイの方式は以下により詳細に記載されている。
組み換え突然変異ALKポリペプチドも本発明の範囲内であって、上記B欄に記載されるようにして、本発明のポリヌクレオチドを用いて産生することができる。例えば、本発明はある部分では、組み換え宿主細胞(上記のような)を融合ポリペプチドを発現させるのに適した条件下で培養し、そしてポリペプチドを回収することによる、組み換えEML4−ALK融合ポリペプチドを産生する方法を提供する。宿主細胞の生育及びそのような細胞から組み換えポリペプチドを発現するのに適している条件は当業者にとって公知である。
E.突然変異体に特異的な試薬
開示される方法の実施に有用な突然変異ALKポリペプチドに特異的な試薬は、とりわけ、融合ポリペプチドに特異的な抗体及び対応するAQUAペプチド(重同位体標識化ペプチド)を包含し、そして哺乳類の固形肉腫又は癌腫瘍のような、癌由来の生体試料におけるEML4−ALK融合ポリペプチドの発現を検出及び定量化するのに適している。本発明の切断されたALKキナーゼポリヌクレオチド又はポリペプチドの存在又は非存在を検出するのに適している、抗体、AQUAペプチド又は核酸プローブのような、切断片に特異的な試薬も有用である。融合ポリペプチドに特異的な試薬は、生体試料中に発現されたEML4−ALK融合ポリペプチドに特異的に結合して、その存在/レベルを検出及び/又は定量化できる、生物学的又は化学的試薬の何れかである。この用語は、これに限定されないが、以下で検討する好ましい抗体及びAQUAペプチド試薬を包含し、均等な試薬は本発明の範囲内である。
抗体
本発明方法の実施で用いるのに適している試薬は、EML4−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体及びTFG−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体を包含する。本発明の融合体に特異的な抗体は、本発明のEML4−ALK融合ポリペプチド(例えば、配列番号1)に特異的に結合するが野生型のEML−4又は野生型のALKの何れとも実質的に結合しない、又は本明細書に記載されるTFG−ALK融合ポリペプチド(例えば、配列番号20)に特異的に結合するが野生型のTFG又は野生型のALKの何れとも実質的に結合しない、単離された抗体(複数を含む)である。他の適切な試薬は、野生型ALKタンパク質配列の細胞外ドメイン(このドメインは本明細書に開示される切断された活性ALKキナーゼ中に存在していない)中のエピトープに特異的に結合するので、試料中の野生型ALKの存在(又は非存在)を検出できる、エピトープに特異的な抗体を包含する。
ヒトEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体は、他の哺乳類種、例えばネズミ又はウサギ中の高度に相同性かつ均等性を有するエピトープペプチド配列に結合してもよく、その逆も同様である。本発明の方法を実施するのに有用な抗体は、(a)モノクローナル抗体、(b)標的のポリペプチド(例えば、EML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部(図1A−B、最下図を参照されたい)又はTFG−ALK融合ポリペプチド(図1C、最下図を参照されたい)の融合接合部)に特異的に結合する精製されたポリクローナル抗体、(c)他の非ヒト種(例えば、マウス、ラット)における均等で高度に相同性を有するエピトープか、又はリン酸化部位に結合する、上の(a)〜(b)に記載されているような抗体、及び(d)本明細書に開示される典型的な抗体が結合する抗原(又は、より好ましくはエピトープ)に結合する上記(a)〜(c)の断片を包含する。
本明細書で用いられる用語「抗体(複数を含む)」は、IgG、IgA、IgD、及びIgEを含む、全てのタイプの免疫グロブリンを示す。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであってもよく、(例えば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ又はヒトを含む、何れかの種を起源としていてもよく、又はキメラ抗体であってもよい。例えば、M. Walker et al., Molec. Immunol. 26:403-11 (1989); Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851 (1984); Neuberger et al., Nature 312:604 (1984) を参照されたい。抗体は、米国特許第4,474,893号(Reading)又は米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.) に開示されている方法によって製造される組み換えモノクローナル抗体であってもよい。抗体は米国特許第4,676,980号(Segel et al.) に開示されている方法によって作成される化学的に構築された特異抗体であってもよい。
本発明のEML4−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体の好ましいエピトープ部位は、本質的にヒトEML4−ALK融合ポリペプチド配列(配列番号1及び18)の約11〜17のアミノ酸から成っているペプチド断片であって、この断片は融合接合部(短い変異融合タンパク質の残基233−234、及び長い変異融合タンパク質の残基495−496に起こる(図1A−B(最下図)を参照されたい)を包含している。EML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部を包含するより短い又はより長いペプチド/エピトープに特異的に結合する抗体が本発明の範囲内であるということは理解されるであろう。
同様に、開示される方法の実施に有用なTFG−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体の好ましいエピトープ部位は、本質的にヒトTFG−ALK融合ポリペプチド配列(配列番号20)の約11〜17のアミノ酸から成っているペプチド断片であって、この断片は融合接合部(残基137−138に起こる(図1C(最下図)を参照されたい)を包含している。
本発明は抗体の使用に限定されず、本発明の方法で有用なEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体が結合するエピトープと本質的に同じエピトープに、融合タンパク質又は切断されたタンパク質に特異的な方法で結合する、タンパク質結合ドメイン又は核酸アプトマーのような、均等な分子の使用も包含する。例えば、Neuberger et al., Nature 312:604 (1984) を参照されたい。そのような均等な非抗体試薬は、以下に更に記載する本発明の方法において適切に利用することができる。
本発明の方法を実施するのに有用なポリクローナル抗体は、公知の手法に従って、適当な動物(例えば、ウサギ、ヒツジなど)を、望ましい融合タンパク質に特異的なエピトープ(例えば、本明細書に記載されるALK融合タンパク質の融合接合部)を包含する抗原で免疫し、動物から免疫血清を集めて、及び免疫血清からポリクロナール抗体を分離して、並びに所望の特異性を有するポリクローナル抗体を精製することによる標準的な技術に従って産生することができる。抗原は、公知の技術に従って選択されて構築された、所望のエピトープ配列を含有している合成ペプチド抗原であってもよい。例えば、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Chapter 5, p.75-76, Harlow & Lane Eds., Cold Spring Harbor Laboratory (1988); Czernik, Methods in Enzymology, 201:264-283 (1991); Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:21-49 (1962) を参照されたい。本明細書に記載のようにして産生したポリクローナル抗体は、以下に更に記載されるようにして、スクリーニング及び単離することができる。
モノクローナル抗体も本発明の方法で便利に利用することができ、Kohler and Milstein の公知技術に従ってハイブリドーマ細胞株中に産生することができる。Nature 265:495-97 (1975); Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol. 6:511 (1976); CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausbel et al. Eds. (1989) も参照されたい。このようにして産生したモノクローナル抗体は高度に特異的で、本発明で提供されるアッセイ方法の選択性及び特異性を増強する。例えば、適切な抗原(例えば、EML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部を含有している合成ペプチド)を含有している溶液をマウスに注射して、十分な時間の後(通常の技術で保持して)、マウスをと殺して、脾臓細胞を得ることができる。次いでこの脾臓細胞を、一般にポリエチレングリコールの存在下で、骨髄腫細胞と融合して不死化してハイブリドーマ細胞を産生する。ウサギ融合ハイブリドーマは、例えば、1997年10月7日登録の米国特許第5,675,063号(K.Knight)に記載されているようにして産生できる。次いでハイブリドーマ細胞を、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)のような、適切な選択培地中で生育して、上澄液を、以下に記載するような、所望の特異性を有するモノクローナル抗体についてスクリーニングする。分泌された抗体を、沈殿、イオン交換、親和性クロマトグラフィーなどのような通常の方法で組織培養上澄液から回収することができる。
モノクローナルFab断片も、当該技術分野で公知の組み換え技術によって大腸菌中に産生することができる。例えば、W. Huse, Science 246:1275-81 (1989); Mullinax et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 87:8095 (1990) を参照されたい。1つのイソタイプのモノクローナル抗体が特定の適用に関して好ましい場合は、特定のイソタイプを最初の融合体から選択して直接的に作成するか、又はクラススイッチ変異体を単離するための同胞選択技術(Steplewski, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 82:8653 (1985); Spira et al., J. Immunol. Methods, 74:307 (1984))を用いて、異なるイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に作成することができる。モノクローナル抗体の抗原結合部位を、PCR及びファージディスプレー組み換え抗体又は大腸菌可溶性抗体のように産生させた単鎖抗体によってクローン化できる(例えば、ANTIBODY ENGINEERING PROTOCOLS, 1995, Humana Press, Sudhir Paul editor を参照されたい)。
更に、米国特許第5,194,392号(Geysen, 1990)は、目的の抗体の特定パラトープ(抗原結合部位)と相補的なエピトープ(すなわち、「ミモトープ」)の位相同型であるモノマー(アミノ酸又は他の化合物)の配列を検出又は決定する一般的な方法を記載している。より一般的には、この方法は、目的の特定の受容体のリガンド結合部位と相補的であるリガンドの局所的同型であるモノマーの配列の検出又は決定を含む。同様に、米国特許第5,480,971号(Houghten et al., 1996)は、直鎖C1−C−アルキル過アルキル化オリゴペプチド及びセット及びそのようなペプチドのライブラリーを、更にそのようなペプチドセット及びライブラリーを用いて、目的の受容体分子に優先的に結合する過アルキル化オリゴペプチドの配列を決定する方法も開示している。本発明のエピトープを含むペプチドの非ペプチド類縁体も、これらの方法で普通に作成することができる。
本発明の方法において有用な抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであろうと、標準的な技術によって、エピトープ及び融合タンパク質特異性についてスクリーニングすることができる。例えば、Czernik et al., Methods in Enzymology, 201:264-283 (1991) を参照されたい。例えば、抗体を、所望の抗体に対する特異性及び、所望により、例えば本発明のEML4−ALK融合ポリペプチドとのみ反応して野生型のEML−4又は野生型のALKとは反応しないという特異性の両方を確証するために、ELISAによってペプチドライブラリーに対してスクリーニングすることができる。抗体を、所望の標的のみとの反応性を確認するために、そしてALKを含む他の融合タンパク質と感知可能程度に結合しないことを確証するために、標的タンパク質を含有する細胞調製物に対してウエスタンブロッティングで試験することもできる。融合タンパク質に特異的な抗体の産生、スクリーニング、及び使用は、当業者に公知であり、記載されている。例えば、米国特許出願公開第20050214301号(Wetzel et al., September 29, 2005) を参照されたい。
本発明の方法で有用な融合ポリペプチドに特異的な抗体は、他の融合タンパク質の同様な融合エピトープと又は融合接合部を形成する野生型EML−4、野生型TFG、及び野生型ALKのエピトープといくらかの限られた交差反応性を示す可能性がある。殆んどの抗体がある程度の交差反応性を示し、抗ペプチド抗体が免疫ペプチドと高い相同性又は同一性を有しているエピトープとしばしば交差反応するであろうことから、このことは予想外というわけではない。例えば、Czernic, supra を参照されたい。他の融合タンパク質との交差反応性は、分子量が知られているマーカーと並行して行うウェスタンブロッティングによって容易に明らかにすることができる。交差反応するタンパク質のアミノ酸配列を、抗体が結合するEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチド配列と高い相同性又は同一性を有する部位を同定するために試験することができる。望ましくない交差反応性を、ペプチドカラム上での抗体精製を用いる陰性選択(例えば、野生型EML−4及び/又は野生型ALKの何れかと結合する抗体を選び出すこと)によって除くことができる。
本明細書に開示される方法を実施するために有用である本発明のEML4−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体(及びTFG−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体)は、理想的にはヒト融合ポリペプチドに特異的であるが、ヒトの種自体にだけに結合するようには限定されない。本発明は、他の哺乳類の種(例えばマウス、ラット、サル)にある保存されそして高い相同性又は同一性を有するエピトープにも結合する抗体の産生及び使用を包含する。他の種にある高い相同性又は同一性を有する配列は、本明細書で開示されるヒトEML4−ALK融合ポリペプチド配列(配列番号1及び18)又は本明細書で開示されるヒトTFG−ALK融合ポリペプチド配列(配列番号20)との、BLASTを用いるような、標準的な配列比較によって容易に同定できる。
本発明の方法で用いられる抗体は更に、特定のアッセイ形式、例えばフローサイトメリー(FC)、免疫組織化学(IHC)、及び/又は免疫細胞化学(ICC)での使用、により特徴付けられて及び、これらに対して有効化することができる。そのような方法でのALK融合ポリペプチドに特異的な抗体の使用は、以下のF欄に更に記載されている。更にF欄に記載されるような、他のシグナル変換(ホスホ−AKT、ホスホ−Erk 1/2)及び/又は細胞マーカー(サイトケラチン)抗体と一緒に行う多重パラメータ解析で用いるために、蛍光染料(例えば、Alexa488、PE)、又は量子ドットのような標識と有利に結合させることもできる。
本発明方法の実施において、所定の生体試料中での野生型EML−4、野生型TFG、及び/又は野生型ALKの発現及び/又は活性も、これらの野生型タンパク質に対する抗体(リン酸特異的又は全てに特異的の何れか)を用いて有利に試験することができる。例えば、ALK全て及びリン酸化部位に特異的な抗体は市販されている(CELL SIGNALING TECHNOLOGY, INC., Beverly MA. 2005/06 Catalogue, #s 3341, 3342 を参照されたい)。そのような抗体も上記のような、標準的な方法によって産生できる。ヒトEML−4、TFG、及びALKのアミノ酸配列は、他の種由来のこれらタンパク質の配列と同様に、公表されている(図3A及び4A−4C、及びSwissProt Accession Nos. を参照されたい)
生体試料(例えば、腫瘍の試料)における、EML4−ALK及び/又はTFG−ALK融合ポリペプチドの発現と共に、野生型EML−4、TFG、及び野生型ALKの発現及び/又は活性を検出することは、融合タンパク質のみが腫瘍を促進するのか否か、又は野生型ALKも腫瘍を活性化して促進するのか否かについての情報を提供する。そのような情報は、融合タンパク質又は野生型タンパク質、又は両方を標的にするか否かを評価するのに臨床的に有用であり、又は腫瘍の進展の阻害に、そして適切な治療法又はその組合わせを選択するのに最も有益である。本明細書に開示される切断された活性ALKキナーゼに存在していない、野生型ALKキナーゼ細胞外ドメインに特異的な抗体は、突然変異ALKキナーゼの存在/非存在を判定するために特に有用である。
1つ以上の抗体を上記の方法の実施に用いることができるということは理解されるであろう。例えば、一つ又はそれ以上のEML4−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体を、別のキナーゼ、受容体、又はEML4−ALK融合ポリペプチドを発現する癌の中で活性化されることが疑われているか、潜在的に活性化される、キナーゼ基質に特異的な1つ又はそれ以上の抗体と同時に用いて、そのような癌由来の細胞を含有している生体試料中のそのような他のシグナル伝達分子の活性を検出することができる。
本発明のEML4−ALK融合ポリペプチド及び上記の融合接合部エピトープを含むそれらの断片を、キメラポリペプチドをもたらすように、免疫グロブリン(IgG)の構築ドメインの部分と組み合わせることができることを当業者は理解されるであろう。これらの融合タンパク質は精製を促進してインビボでの増大した半減期を示す。このことは、例えばヒトCD4−ポリペプチドの最初の2つのドメイン及び哺乳類の免疫グルブリンの重鎖又は軽鎖の構築領域の多数のドメインを含有しているキメラタンパク質に関して、示されている(EPA 394,827;Traunecker et al., Nature 331:84-86 (1988))。IgG部分によるジスルフィド結合二量体構造を有している融合タンパク質は、他の分子との結合及び中和を、単量体のEML4−ALK融合ポリペプチド単独よりも、より有効にすることができる(Fountoulakis et al., J. Biochem 270:3958-3964 (1995))。
重同位体標識化ペプチド(AQUAペプチド)。
開示される方法の実施に有用なEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドに特異的な試薬は、生体試料中の発現されたALK融合ポリペプチド又は切断されたALKキナーゼポリペプチドの絶対的定量化に適している重同位体標識化ペプチドを含有していてもよい。複合混合物中のタンパク質(AQUA)の絶対的定量化用のAQUAペプチド産生及び使用は記述されている。国際公開WO第03/016861号公報、"Absolute Quantification of Proteins and Modified Forms Thereof by Multistage Mass Spectrometry", Gygi et al. 及び Gerber et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100:6940-5 (2003) も参照されたい;これらの教示はその全てを参照して本明細書に組み入れる)。
AQUA手順は、少なくとも1つの重同位体標識化ペプチド標準品の既知量(これはLC−SRMクロマトグラフィーで検出可能な固有の符号を有している)を検出するために消化した生体試料への導入、及びペプチド標準品と比較することによる、生体試料中の同じ配列及びタンパク質改変を持つペプチドの絶対的定量化を利用する。すなわち、AQUA手順は2つの段階:ペプチド内部標準品の選択及び検証及び方法の作成;及び検証されたペプチド内部標準品を用いて試料中の標的タンパク質を検出及び定量化するための実施:を有している。この方法は、細胞溶解物のような、複合生体混合物中の所定のペプチド/タンパク質を検出及び定量化するための強力な手法であって、例えば、薬物治療の結果としてのタンパク質リン酸化の変化を定量化するため、又は異なった生物学的状態におけるタンパク質濃度の違いを定量化するために、利用することができる。
一般に、適切な内部標準品を作成するために、標的のタンパク質配列中の特定のペプチド(又は改変ペプチド)を、そのアミノ酸配列及び消化に用いられる特定のプロテアーゼに基づいて選択する。次いで1つの残基を安定な同位体(13C、15N)を含有している同じ残基で置き換えるように、固相ペプチド合成によってペプチドを生成する。得られたものは、タンパク質分解によって形成されるその天然の対応物と化学的に同定されるが、7−Da質量シフトを通してMSにより容易に区別できるペプチドである。次いで、新たに合成されたAQUA内部標準ペプチドをLC−MS/MSで評価する。この過程は、逆相クロマトグラフィーによるペプチドの保持率、イオン化効率、及び衝突誘起解離による断片化についての定量的情報をもたらす。天然及び内部標準ペプチドのセットについての有益且つ豊富な断片イオンを選択し、次いでペプチド標準品の固有なプロファイルに基づいて、選択された反応モニタリング(LC−SRM)方法を形成するクロマトグラフ保持の機能として連続的に測定される。
AQUA手法の第2段階は、複合混合物からのタンパク質又は改変タンパク質の量を測定するためのその実施である。全細胞溶解物は典型的にSDS−PAGEゲル電気泳動で分画されて、タンパク質移動と一致するゲルの領域を取り出す。この工程に続いて、AQUAペプチドの存在下でインゲルタンパク質分解及びLC−SRM分析を行う。(Gerber et al. supra を参照されたい)。AQUAペプチドを、全細胞分解物をタンパク分解酵素で消化して得られた複合ペプチド混合物に入れて、上記のような免疫親和性の精製を行う。消化(例えば、トリプシン処理)によって形成される天然ペプチドの保持時間及び断片化パターンは、先に測定したAQUA内部標準ペプチドのそれと一致しているので、SRM実験を用いるLC−MS/MS分析は、内部標準品及び非常に複雑なペプチド混合物に直接由来する検体の両方について高い特異性及び感度を有する測定をもたらす。
AQUAペプチドの絶対量を添加するので(例えば、250fモル)、曲線下の面積比を、タンパク質又は元の細胞分解物中のタンパク質のリン酸化形態の正確な発現レベルを判定するのに用いることができる。また、ゲル切片からのペプチド抽出効率、試料の処理(真空遠心分離を含む)中の絶対損失、及びLC−MSシステムへの導入中のばらつきが、天然及びAQUAペプチドの存在量の比に影響を与えないように、天然のペプチドを形成するようにインゲル消化の間に内部標準を存在させる。
AQUAペプチド標準品を、IAP−LC−MS/MSによって先に同定されている標的タンパク質中の既知配列に対して作成する。その部位が改変されている場合は、その部位内の特定残基の改変形態を包含する1つのAQUAペプチドを作成してもよく、改変されていない形態の残基を含有している第2のAQUAペプチドを作成する。このようにして、2つの標準品を、生体試料中の部位が改変されている形態及び改変されていない形態の両方を検出及び定量化するために用いることができる。
ペプチド内部標準品は、タンパク質の第一次アミノ酸配列を試験して、プロテアーゼで切断して生成したペプチドの境界を判定することによっても生成することができる。あるいは、タンパク質を実際にプロテアーゼで消化することができ、次いで産生された特定のペプチド断片を配列決定することができる。適切なプロテアーゼは、これに限定されないが、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、ヘプシン)、メタロプロテアーゼ(例えば、PUMP1)、キモトリプシン、カテプシン、ペプシン、サーモリシン、カルボキシペプチダーゼなどを包含する。
標的タンパク質内のペプチド配列は、内部標準品としてのペプチドの使用を最適化する1つ又はそれ以上の基準に従って選択される。ペプチド配列が標的ではない他のタンパク質の何処かで複写されるであろう機会を最小にするようにペプチドの大きさを選択することが好ましい。従って少なくとも約6のアミノ酸であるペプチドが好ましい。ペプチドの大きさは、電離周波数を最大にするようにも最適化される。従って、約20のアミノ酸より長いペプチドは好ましくない。好ましい範囲は約7〜15のアミノ酸である。ペプチド配列は質量分析中に化学反応性が高くならないようにも選択されるので、システイン、トリプトファン、又はメチオニンを含有する配列は避けられる。
タンパク質の全ての形態を定量化するために、ペプチド内部標準品を用いることができるように、標的領域の改変領域を含んでいないペプチド配列を選択することができる。もしくは、改変アミノ酸を包含しているペプチド内部標準品は、標的タンパク質の改変形態のみを検出及び定量化するために望ましいであろう。改変及び非改変領域の両方のためののペプチド標準品を、特定の試料中の改変の範囲を検出する(すなわち、タンパク質の総量のどの程度が改変形態によって表されているかを判定する)ために、一緒に用いることができる。例えば、特定部位でリン酸化されることが知られているタンパク質のリン酸化及び非リン酸化形態の両方のためのペプチド標準品は試料中のリン酸化形態の量を定量化するために用いることができる。
1つ又はそれ以上の標識化アミノ酸を用いてペプチドを標識化する(すなわち、標識はペプチドの実際の部分である)か、又はあまり好ましくはないが、標準的な方法に従って合成した後に標識を付加することもできる。好ましくは、標識は以下の検討に基づいて選ばれた質量を変える標識である:質量はMS分析で産生される、低バックグランドを有するスペクトル領域へシフトする断片質量に特有でなければならない;イオン質量の特徴的成分は、MS分析において好ましくは特有なイオン質量の特徴を示す、標識部位の部分である;標識の構成原子の総質量は、全ての可能なアミノ酸の断片と一意的に異なることが好ましい。結果として、標識化アミノ酸及びペプチドは、得られる質量分析のイオン/質量パターンによって、標識化されていないものと容易に識別される。イオン質量の特徴的成分が、20の天然アミノ酸の何れかについての残留質量に相当しないタンパク質断片に質量を与えることが好ましい。
標識は、MSの断片化条件下に耐えることができて、好ましくない断片化を受けてはならない。標識化の化学反応は、条件、特に変性条件の範囲内で効率的であって、標識タグはMSでの選ばれた緩衝液系に好ましくは可溶性を保持していなければならない。標識が、タンパク質のイオン化効果を抑制せず化学的に反応性でないことが好ましい。それぞれの標識化された断片位置で特有な質量分析パターンを生じるように、標識が2つ又はそれ以上の同位体的に識別できる種の混合物を含むことができる。2H、13C、15N、17O、18O、又は34Sのような安定な同位体が、とりわけ好ましい標識である。異なった同位体標識を取り込んでいるペプチド内部標準品の対も作成できる。重同位元素標識を組み入れられる好ましいアミノ酸残基は、ロイシン、プロリン、バリン及びフェニルアラニンを包含する。
ペプチド内部標準品は、その質量対電荷比(m/z)によって、及び好ましくは、クロマトグラフィーカラム(例えばHPLCカラム)上の保持時間によって特徴付けられる。相同性を有する配列の非標識化ペプチドと一緒に溶出する内部標準品が、最適な内部標準品として選択される。次いで内部標準品を、何れかの適切な方法、例えばアルゴン又はヘリウムを衝突ガスとして用いる、例えば衝突誘起解離(CID)によって、ペプチドを断片化して分析する。次いで断片を、例えば、フラグメントイオンスペクトルを得るための多段階質量分析(MSn)によって、分析してペプチド断片化の特徴を得る。ペプチド断片が、それぞれの断片に対応するピークを良好に分離できるように有意に異なっているm/z比を有していて、標的タンパク質に特有の特徴を得ることが好ましい。第1段階で適切な断片の特徴が得られない場合は、特有の特徴が得られるまでMSの追加段階を実施する。
MS/MS及びMS3スペクトルにおける断片イオンは、目的のペプチドに対して一般に非常に特異的であって、LC方法を併用すると、数千又は幾万ものタンパク質を含有している、細胞溶解物のような、複雑なタンパク質混合物中の標的ペプチド/タンパク質を検出及び定量化する高い選択性のある方法を可能にする。標的タンパク質/ペプチドを潜在的に含有している生体試料の何れもアッセイすることができる。粗製の又は部分的に精製した細胞抽出物を用いることが好ましい。一般に、試料は少なくとも0.01mgの、典型的には0.1〜10mg/mLの濃度のタンパク質を有していて、所望の緩衝剤濃度及びpHに調節することができる。
次いで、検出/定量化される標的タンパク質に対応する、標識化ペプチド内部標準品の既知量、好ましくは約10フェムトモルを、細胞溶解物のような、生体試料に添加する。次いで、添加した試料が消化されるまでの適切な時間、1つ又はそれ以上のプロテアーゼで消化する。次いで、試料中の他のペプチドから標識化内部標準品及び対応する標的ペプチドを単離するために分離を行う(例えば、HPLC、逆相HPLC、キャピラリー電気泳動、イオン交換クロマトグラフィーなどで)。マイクロキャピラリーLCが好ましい方法である。
次いで、それぞれの単離したペプチドをMSにおける選択反応のモニタリングで試験する。これは、ペプチド内部標準品の特徴付けによって得られた予備知識を用いること、及び次いで目的のペプチド及び内部標準品の両方についてのMS/MS又はMSnスペクトル中の特異イオンを連続的に観察するためのMSの必要性を包含している。溶出後に、ペプチド標準品及び標的ペプチドの両方のピークの曲線下の面積(AUC)を計算する。2つの面積の比が、分析で用いられた細胞の数及びタンパク質の分子量を標準化できる絶対的定量化を提供して、細胞当たりのタンパク質の複写の正確な数をもたらす。AQUA手法の更なる詳細は、Gygi et al., 及び Gerber et al. supra に記載されている。
AQUQ内部ペプチド標準品(重同位元素標識ペプチド)を、本発明の突然変異ALKポリペプチド内の何れかの特有の部位(例えば、開示されるEML4−ALK融合ポリペプチド内の融合接合部)を検出及び定量化するために、上記のように、望ましく産生することができる。例えば、EML4−ALK融合ポリペプチドの融合接合部配列(図1A−B(最下図)を参照されたい)に対応するか又はEML4、TFG、又はALKの何れかの切断位置に対応するAQUAホスホペプチドを作成することができる。EML4−ALK又はTFG−ALK融合接合部のためにペプチド標準品を産生することができ、そしてそのような標準品を生体試料中の融合接合部(すなわち、EML4−ALK融合ポリペプチドの存在)の検出及び定量化のためにAQUA方法で利用することができる。
例えば、本発明の代表的なAQUAペプチドは、アミノ酸配列INQVYR(図1A-C、最下図を参照されたい)を含有し、これはEML4−ALK融合ポリペプチド内の融合接合部(配列番号7を参照されたい)の各部位の直接側面に位置している3つのアミノ酸に対応している。融合接合部配列(及びその下流又は上流の更なる残基)を含有している、より大きいAQUAペプチドも構築できることは理解されるであろう。同様に、そのような配列の全ての残基より小さい残基を含有している(しかし融合接合部自体を未だ含有している)より小さいAQUAペプチドもまた構築されてもよい。そのようなより大きい又はより小さいAQUAペプチドは本発明の範囲内であり、そして好ましいAQUAペプチドの選択及び産生は上記のようにして実施することができる(Gygi et al., Gerber et al. supraを参照されたい)。
核酸プローブ
本発明により提供される融合に特異的な試薬は、上記B欄に詳細に述べたように、EML4−ALK融合ポリペプチド又は切断されたALKキナーゼポリヌクレオチドの検出に適している核酸プローブ及びプライマーも包含している。そのようなプローブはとりわけ、融合を産生する野生型のEML4及び/又は野生型ALK遺伝子における切断点の両側に対応する切断点プローブを望ましく包含する。蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のようなアッセイ中でのそのようなプローブの特異的な使用は、以下のF欄に記載されている。同様な切断点プローブを、TFG−ALK融合ポリヌクレオチド(図1C(配列番号21)を参照されたい)の存在を検出するために作成することができる。
F.診断的適用及びアッセイの形式
本発明の方法は当該技術分野で公知の多種の異なったアッセイで実施することができる。
免疫アッセイ
本発明の方法の実施に有用な免疫アッセイは、同種免疫アッセイ又は異種免疫アッセイであってもよい。同種アッセイにおいては、免疫学的反応は一般に、突然変異ALK−キナーゼポリペプチドに特異的な試薬(例えば、EML4−ALK融合ポリペプチドに特異的な抗体)、標識化した検体、及び目的となる生体試料を包含している。抗体が標識化検体と結合すると、標識からのシグナル発生は、直接的に又は間接的に修飾される。免疫学的反応及びその程度の検出の両方は、同種溶液中で実施される。利用することのできる免疫化学的標識は、フリーラジカル、放射性同位元素、蛍光染料、酵素、バクテリオファージ、補酵素、などを包含する。半導体ナノ結晶標識、又は「量子ドット」も有利に使用でき、それらの作成及び使用は十分に記載されている。一般に、K. Barovsky, Nanotech. Law & Bus. 1(2): Article 14 (2004) 及びそこで引用されている特許を参照されたい。
異種アッセイ手法では、試薬は通常、生体試料、突然変異ALKキナーゼポリペプチドに特異的な試薬(例えば、EML4−ALK融合に特異的な抗体)、及び検出可能なシグナルを産生するための適切な手段である。以下に更に記載されるような生体試料を用いることができる。抗体は一般に、ビーズ、プレート又はスライドのような支持体に固定されていて、抗原を含有していると思われる試料と液相で接触させる。支持体を液相から分離して、支持体相又は液相のどちらかをそのようなシグナルを発生させるための手段を用いて検出可能なシグナルについて試験する。このシグナルは生体試料における検体の存在に関連している。検出可能なシグナルの発生方法は、放射性標識、蛍光標識、酵素標識、量子ドット、などの使用を包含する。例えば、検出すべき抗原が第2結合部位を含有している場合は、その部位に結合する抗体を検出可能な基に結合させて分離段階の前に液相反応溶液に添加することができる。固体支持体上に検出可能な基が存在していることは試験試料中に抗原が存在していることを示している。適切な免疫アッセイの例は、放射免疫アッセイ、免疫蛍光法、酵素結合免疫アッセイなどである。
本明細書に開示される方法を実施するのに有用な、免疫アッセイ形式及びその変法は当該技術分野で公知である。一般に、E. Maggio, Enzyme-Immunoassay, (1980)(CRC Press, Inc., Boca Raton, Fla.) を参照されたい。例えば、米国特許第4,727,022号(Skold et al., "Methods for Modulating Ligand-Receptor Interactions and their Application");米国特許第4,659,678号(Forrest et al., "Immunoassay of Antigens");米国特許第4,376,110号(David et al., "Immunometric Assays Using Monoclonal Antibodies")も参照されたい。試薬−抗体複合体の形成に適している条件は当業者にとって公知である。同文献を参照されたい。EML4−ALK融合ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体は「2サイト」又は「サンドイッチ」アッセイで用いることができ、標識化モノクローナル抗体及び結合モノクローナル抗体の両方の供給源として役立つ単一のハイブリドーマ細胞株を有している。そのようなアッセイは米国特許第4,376,110号に記載されている。検出可能な試薬の濃度は、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの結合がバックグラウンドと比較して検出可能になるのに十分でなければならない。
本明細書に開示される方法の実施に有用な抗体は、沈殿法のような公知技術によって、診断アッセイに適している固体の支持体(例えば、ラテックス又はポリスチレンのような材料から作られるビーズ、プレート、スライド又はウェル)に結合させることができる。抗体又は他のALK融合ポリペプチドに又は切断されたALKキナーゼポリペプチドに結合する試薬はさらに、公知技術によって、放射標識(例えば、35S、125I、131I)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)及び蛍光標識(例えば、フルオレセイン)のような検出可能な基に結合させることができる。
フローサイトメトリー(FC)、免疫組織化学法(IHC)、又は免疫蛍光法(IF)のような、細胞に基づいたアッセイは、そのようなアッセイが臨床的に適しており、インビボでの突然変異ALKキナーゼポリペプチドの発現の検出を可能とし、そして抽出物を得るために例えば腫瘍試料から得られる細胞の操作をもたらす人為的な活性改変のリスクを回避するので、本発明の方法の実施に特に望ましい。従って、幾らかの好ましい態様では、本発明の方法は、フローサイトメトリー(FC)、免疫組織化学法(IHC)、又は免疫蛍光法(IF)のアッセイ形式で実施される。
フローサイトメトリー(FC)を、ALKキナーゼ活性の阻害を標的とする薬剤による処置の前、その間、及びその後の、哺乳類腫瘍における突然変異ALKキナーゼポリペプチドの発現を判定するために使用することができる。例えば、骨髄試料由来の腫瘍細胞をフローサイトメトリーにより、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの発現及び/又は活性について、更に所望により、癌細胞のタイプなどを同定するマーカーについても分析することができる。フローサイトメトリーは標準的な方法によって実施することができる。例えば、Chow et al., Cytometry (Communications in Clinical Cytometry) 46:72-78 (2001) を参照されたい。つまり、例を挙げると、サイトメトリー分析についての以下のプロトコルを利用することができる;37℃で10分間2%のパラホルムアルデヒドで細胞の固定化、次いで氷上で30分間90%のメタノール中で透過化。次いで細胞をEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドに特異的な一次抗体で染色し、洗浄して蛍光標識化二次抗体で標識化する。次いで、細胞はフローサイトメーター(例えば、Beckman Counter FC500) 上で、用いる器械の特定のプロトコルに従って分析されるだろう。そのような分析は、腫瘍中で発現されたEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドのレベルを同定することができるだろう。腫瘍のALK阻害治療剤による処置後の同様な分析は、ALK融合ポリペプチドを発現する腫瘍のALKキナーゼの標的阻害剤に対する応答性を明らかにするだろう。
免疫組織化学(IHC)染色法も、ALKキナーゼ活性の阻害を標的とする薬剤による治療の前、その間、及びその後の、哺乳類の癌(例えば、NSCLCのような固形腫瘍)における突然変異ALKキナーゼポリペプチドの発現及び/又は活性の状態を判定するために使用することができる。IHCは公知の技術に従って実施することができる。例えば、ANTIBODIES: A LABOLATORY MANUAL, Chapter 10, Harlow & Lane Eds., Cold Spring Harbor Laboratory (1988) を参照されたい。つまり、例を挙げると、パラフィン包埋組織(例えば、生検で採取した腫瘍組織)をキシレン、次いでエタノールで組織切片を脱パラフィン化する;水、次いでPBS中で水和化する;クエン酸緩衝液中でスライドを加熱して抗原を脱マスキング化する;切片を過酸化水素中で培養する;ブロッキング溶液中でブロッキング化する;抗EML4−ALK又は抗TFG−ALK融合ポリペプチド一次抗体及び二次抗体中でスライドを培養する;そして最後に製造会社の使用説明書に従い、ABCアビジン/ビオチンを用いて検出することにより免疫組織化学染色用に調製される。
免疫蛍光法(IF)アッセイも、ALKキナーゼ活性の阻害を標的とする薬剤による処置の前、その間、及びその後の、哺乳類の癌における突然変異ALKキナーゼポリペプチドの発現及び/又は活性の状態を判定するために使用することができる。IFは公知の技術に従って実施することができる。例えば、J.M. Polak and S. Van Noorden (1997) INTRODUCTION TO IMMUNOCYTOCHEMISTRY, 2nd Ed.; ROYAL MICROSCOPY SOCIETY MICROSCOPY HANDBOOK 37, BioScientific/Springer-Verlag を参照されたい。つまり、例を挙げると、患者の試料をパラホルムアルデヒド中で、次いでメタノールで固定化し、ウマ血清のようなブロッキング溶液でブロッキング化し、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドに対する一次抗体と次いでAlexa488のような蛍光染料で標識化した第二抗体と培養して、落射蛍光顕微鏡法で分析する。
上記のアッセイで用いられる抗体は、他のシグナル変換(例えば、EGFR,ホスホ−AKT、ホスホ−Erk1/2)及び/又は細胞マーカー(例えば、サイトケラチン)抗体を併用する多重パラメーター分析で用いるために、蛍光染料(例えば、Alexa488、PE)、又は量子ドットのような他の標識と有利に結合させることができる。
突然変異ALKキナーゼポリペプチドを測定するための、酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射性免疫アッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)を包含する、多種の他のプロトコルは、当該技術分野で公知であって、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの発現の変化及び異常なレベルを診断するための基礎を提供する。これらの融合ポリペプチド発現の正常値又は標準値は、正常な哺乳類対象、好ましくはヒト由来の体液又は細胞抽出物を、複合体形成に適している条件下で、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドに対する抗体と結合させることによって確定される。標準的な複合体形成の量は、多種の方法で定量化することができるが、光度測定法が好ましい。生検組織由来の対象、コントロール、及び病人の試料中で発現するEML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの量を標準値と比較する。標準値と対象者の値の間の偏差が疾患を診断するためのパラメーターを確立する。
ペプチド及び核酸アッセイ
同様に、腫瘍由来細胞を含有する生体試料中で発現する突然変異ALKキナーゼポリペプチドを検出/定量化するためのAQUAペプチドは、上のE欄で詳細に記載されるように作成されて、標準的なAQUAアッセイで使用することができる。従って、本発明方法のいくつかの好ましい態様では、ALK融合ポリペプチドに特異的な試薬は、上のE欄に記載されるように、EML4−ALK融合ポリペプチド又はTFG−ALK融合ポリペプチドの融合接合部よりなるペプチド配列に対応している重同位元素標識化ホスホペプチド(AQUAペプチド)を含有している。
本発明の方法を実施するのに有用な突然変異ALKポリペプチドに特異的な試薬は、生体試料中で融合又は切断されたポリペプチドが発現する転写物に直接ハイブリダイズして検出できる、mRNA、オリゴヌクレオチド又はDNAプローブであってもよい。そのようなプローブは上のB欄で詳細に検討されている。つまり、例を挙げると、ホルマリンで固定化してパラフィンに包埋した患者の試料は、蛍光標識化RNAプローブで検索した後、ホルムアミド、SSC及びPBSで洗浄して、蛍光顕微鏡で分析することができる。染色体2上でのEML4−ALK欠失変異のような、遺伝子再配列の蛍光検出が可能な、切断点プローブを含有するFISHプローブも好ましい(実施例6を参照されたい)。
突然変異ALKキナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも、診断の目的で使用することができる。使用できるポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド配列、アンチセンスRNA及びDNA分子、及びPNAを包含する。このポリヌクレオチドは、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチド又は切断された活性ALKキナーゼポリペプチドの発現が疾患と関連性があると思われる、生検で採取した固形腫瘍組織における遺伝子の発現を検出及び定量化するために用いることができる。例えば、この診断アッセイは、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの存在、非存在、及び過剰発現を識別するために、及び治療的介入中のALK融合ポリペプチドのレベルの制御を観察するために用いることができる。
ある好ましい態様では、ゲノム配列を含み、ALK融合ポリペプチド又は切断されたALKキナーゼポリペプチド又はそれに近似する分子をコードする、ポリヌクレオチド配列を検出できるPCRプローブとのハイブリダイゼーションは、突然変異ALKポリペプチドをコードする核酸配列を同定するために用いることができる。そのようなプローブの構築及び使用は上のB欄に記載されている。プローブの特異性、すなわち、それが、特異性が高い領域、例えば融合接合部の10の特有のヌクレオチド、又は特異性が低い領域、例えば3’コード領域、から作成されたかどうか、及びハイブリダイゼーション又は増幅の厳密性(最高、高度、中程度又は低度)により、このプローブが突然変異ALKポリペプチドをコードする天然の配列、対立遺伝子、又は関連する配列のみを同定するか否かが判定されるであろう。
プローブは関連する配列を検出するためにも用いるこができ、そして配列をコードする突然変異ALKポリペプチドの何れか由来のヌクレオチドの少なくとも50%を含有していることが好ましい。本発明のハイブリダイゼーションプローブは、DNA又はRNA、及び配列番号2、19、及び21のヌクレオチド配列由来であってよく、もっとも好ましくは、融合接合部(図1A−C、最下図及び配列番号7、24、及び26を参照されたい)、又は上のB欄に更に記載されるような、天然のEML−4、TFG、及びALKポリペプチドのプロモーター、エンハンサー構成要素、及びイントロンを包含するゲノム配列由来のものを包含している。
例えば、本発明のEML4−ALK融合ポリヌクレオチドは、改変したALKポリペプチドの発現を検出するために、患者の生検から採取した体液又は組織を用いる、サウザン又はノーザン分析、ドットブロット、又は他の膜を基にした技術において;PCR技術において;又はディップスティック、ピン、ELISA又はチップアッセイにおいて使用することができる。そのような定性的又は定量的な方法は当該技術分野において公知である。特定の態様では、本発明の突然変異ALKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、肺癌を含む多種の癌の活性化及び誘発を検出するアッセイにおいて有用であろう。突然変異ALKポリヌクレオチドを、標準的な方法で標識化して、ハイブリダイゼーション複合体の形成に適している条件下で、患者由来の体液又は組織に添加することができる。適切な培養期間後に、試料を洗浄し、シグナルを計量して、標準値と比較する。生検由来又は抽出した試料中のシグナルの量が比較可能なコントロール試料のそれから有意に変化していたら、このヌクレオチド配列は試料中のヌクレオチド配列とハイブリダイズしたこと、及び試料中のEML4−ALK融合ポリペプチド又は切断されたALKキナーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の変化したレベルが存在していることが、関連疾患の存在を示している。そのようなアッセイは、動物実験、臨床試験、又は個々の患者の治療の観察おける特定の治療処置計画の効果を評価するためにも使用できる。
突然変異ALKキナーゼポリペプチドの発現によって特徴付けられる疾患の診断の基礎を提供するために、発現に関する正常又は標準のプロファイルを確立する。これは、動物又はヒトの何れかの、正常な対象由来の体液又は細胞抽出物を、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドをコードする配列、又はその断片と、ハイブリダイゼーション又は増幅に適している条件下で、混合することによって遂行することができる。標準的なハイブリダイゼーションは、正常な対象から得られた値を、実質的に精製されたポリヌクレオチドの既知量を用いる実験で得られたそれと比較して定量化することができる。正常者の試料から得られた標準値を、病状を示している患者の試料から得られる値と比較することができる。標準値と対象者の値の間の偏差が疾患の存在を立証するために用いられる。
疾患が立証されて治療プロトコルが開始されたら、患者における発現のレベルが正常患者から得られるレベルに近づき始めたかどうかを評価するために、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返すことができる。一連のアッセイから得られる結果を、数日〜数ヶ月の範囲の期間に渡る治療の効果を示すために用いることができる。
本発明の突然変異ALKポリヌクレオチドの更なる診断的用途は、当業者にとって標準的な、好ましいアッセイ形式である、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用に関していてもよい。例えば、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, 2nd edition, Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T., eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989) を参照されたい。PCRオリゴマーは化学的に合成、酵素的に生成、又は組み換えの供給源から産生することができる。オリゴマーは、一方がセンス方向(5’から3’)にあり、他方がアンチセンス方向(3’から5’)にある、2つのヌクレオチド配列からなり、特定の遺伝子又は条件を同定するのに最適化されている条件下で用いられることが好ましいであろう。2つの同じオリゴマー、オリゴマーの入れ子集合、又はオリゴマーの縮重プールでさえも、ストリンジェントでない条件下で、近似するDNA又はRNA配列の検出及び/又は定量化に用いることができる。
ALK融合ポリペプチド又は切断されたALKキナーゼポリペプチドの発現を定量化するためにも用いることができる方法は、放射性標識化又はビオチン化ヌクレオチド、コントロール核酸の共増幅、及び実験結果を挿入する標準曲線を包含する(Melby et al., J. Immunol. Methods, 159:235-244 (1993); Duplaa et al. Anal.Biochem. 229-236 (1993))。複数の試料の定量の速度を、目的のオリゴマーを各種希釈度で存在させるELISA形式でアッセイを行うことによって加速することができ、そして分光光度又は比色分析応答は速い定量をもたらす。
本発明の別の態様では、本発明の突然変異ALKポリヌクレオチドを、更にそれらの近位及び遠位にある隣接ゲノム領域をも、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを生成するために用いることができる。この配列を、公知の技術を用いて、特定の遺伝子又は遺伝子の特異的な領域に対してマッピングすることができる。そのような技術は、Price, C.M., Blood Rev. 7:127-134 (1993) 及び Trask, B.J., Trends Genet. 7:149-154 (1991) で概説されているように、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、FACS、又は酵母人工染色体、細菌人工染色体、細菌P1構築物又は単一染色体cDNAライブラリーのような人工染色体構築物を包含する。
1つの好ましい態様では、FISH法が用いられて(Verma et al. HUMAN CHROMOSOMES: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUES, Pergamon Press, New York, N.Y. (1988) に記載のように)、他の物理的な染色体マッピング技術及び遺伝子地図データと関連付けることができる。遺伝子地図データの例は、1994 Genome Issue of Science (265:1981f) 中に見出すことができる。EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチド又は切断された活性ALKキナーゼポリペプチドをコードする遺伝子の、物理的染色体地図上の位置と、特定の疾患又は特定の疾患に罹りやすい体質との相関関係は、遺伝疾患と関わりを持つDNAの領域を区別するのに役立つであろう。本発明のそのようなヌクレオチド配列を、正常者、キャリアー、又は罹患者の間の遺伝子配列の相違を検出するために用いることができる。二色切断点FISHプローブを、例えば、試料中に突然変異EML−4、TFG、及び/又はALK遺伝子が存在しているか否かを検出するために用いることができる。
染色体調製物のin situハイブリダイゼーション、及び確立された染色体マーカーを用いる連鎖解析のような物理的マッピング技術を、遺伝子地図を拡張するために用いることができる。多くの場合、マウスのような、別の哺乳類種の染色体上の遺伝子の置換により、たとえ特定のヒト染色体の数及び腕が未知であっても、関連マーカーを明らかにすることができる。新しい配列を、物理的マッピングによって、染色体の腕、又はその部分に割り当てることができる。これはポジショナルクローニング又は他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を検討している研究者に価値ある情報を提供する。疾患又は症候群が遺伝子連鎖によって特定の遺伝子領域、例えば、ATから11q22−23(Gatti et al., Nature 336:577-580 (1988))へ大まかに局限化されると、その領域にマッピングされる何れの配列も、更なる検討のための関連の又は制御の遺伝子を示すことができる。本発明のヌクレオチド配列を、正常者、キャリアー、又は罹患者の間の、転座、反転などによる染色体位置の相違を検出するために用いることもできる。
副溝結合共役オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、米国特許第6,951,930号、"Hybridization-Triggered Fluorescent Detection of Nucleic Acids" を参照されたい)のような、核酸の検出に適している他の方法は、当業者にとって公知である。
生体試料
本発明の方法の実施において有用な生体試料は、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの発現によって特徴付けられる癌が存在又は進展している哺乳類の何れかから得ることができる。ある態様では、哺乳類はヒトであって、そのヒトは癌、例えば、NSCLCの治療のためにALK阻害療法の候補者であってよい。ヒト候補者はWHI−131及び/又はWHI−154のようなALKキナーゼ阻害剤で最近治療されている患者か又はそれで治療することが考えられている患者であってよい。別の態様では、哺乳類は、ウマ又はウシのような、大動物であり、一方他の態様では、哺乳類は、イヌ又はネコのような小動物であり、それらの全ては、肺癌を含む癌を発現することが知られている。
哺乳類の癌由来の細胞(又は細胞の抽出物)を含有する何れの生体試料も本発明の方法での使用に適している。EML4−ALK融合ポリペプチドの場合では、固形又は非固形に関わらず、何れの癌も適しているであろう。TFG−ALKの場合は、固形腫瘍が本発明の方法の範囲内である。例えば、生体試料は、胸水のような浸出液から得られた細胞を含有していてもよい。胸水(腹腔内で肺の外に形成される液体であって癌細胞を含有している)は、進行性の肺癌(NSCLCを包含する)を有する多くの患者において形成されることが知られていて、そのような浸出液の存在が不良な転帰及び短い生存期間の前兆となる。胸水試料を得る標準的な技術は記述されていて、当該技術分野において公知である(Sahn, Clin Chest Med. 3(2):443-52 (1982) を参照されたい)。循環している腫瘍細胞も、腫瘍マーカー、サイトケラチンタンパク質マーカー又は記述されているような陰性選択の他の方法(Ma et al., Anticancer Res. 23(1A):49-62 (2003) を参照されたい)を用いて血清から得ることができる。血清及び骨髄試料は、白血病患者にとっては特に好ましい。肉腫及び癌腫のような、固形腫瘍を含む癌については、生体試料は標準的な臨床技術によって得ることができる、腫瘍生検から得られる細胞を含有することができる。例えば、神経芽細胞腫及び神経外胚葉性の癌を含む多種の癌においてALKの異常な発現が観察される。例えば、Pulford et al., supra を参照されたい。しかしながら、TFG−ALK転座突然変異体はリンパ腫中のみにあることが記述されていて、今までに固形腫瘍中では観察されていない。
生体試料は、ALK融合ポリペプチドを発現及び/又は活性化するが野生型のALKキナーゼを発現及び/又は活性化しない癌由来の細胞(又は細胞抽出物)を含有することができる。また、試料は、突然変異ALKポリペプチド及び野生型のALKキナーゼの両方を発現及び/又は活性化するか、又は野生型のALKキナーゼ及び/又はEML−4及び/又はTFGを発現及び/又は活性化するが、突然変異ALKポリペプチドを発現及び/又は活性化しない癌由来の細胞を含有することもできる。
前述の生体試料の細胞抽出物を、標準的な技術に従って、粗製の又は部分的に(又は完全に)精製したものの何れかに調製して、本発明の方法に用いることができる。また、全細胞を含有している生体試料は、上記のような、免疫組織化学法(IHC)、フローサイトメトリー法(FC)、免疫蛍光法(IF)及び蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)のような好ましいアッセイ形式において使用できる。そのような全細胞アッセイは、腫瘍細胞試料を処理する操作を最小にして、それによりインビボでの細胞のシグナル伝達/活性化状態の変化、及び/又は人為的なシグナルの導入に対するリスクを減少させるという点で有利である。全細胞アッセイは、腫瘍細胞と正常細胞の混合物にではなく、腫瘍細胞中にのみ発現及びシグナル伝達して特徴付けるという点でも有利である。
EML4−ALK又はTFG−ALK融合遺伝子及び/又は融合ポリペプチドによって特徴付けられる腫瘍の進行を化合物が阻害するか否かを判定するための開示の方法の実施において、哺乳類の骨髄移植モデル又は異種移植片由来の細胞を含む生体試料も、有利に用いることができる。好ましい異種移植片(又は移植レシピエント)は、突然変異ALKキナーゼポリペプチドを発現するヒト腫瘍を移植された、マウスのような、小哺乳類のものである。ヒトの腫瘍を移植された異種移植片については当該技術分野で公知であって(Kal, Cancer Treat Res. 72:155-69 (1995) を参照されたい)、ヒトの腫瘍を移植された異種移植片の産生に関しては十分に記述されている(Winograd et al., In Vivo. 1(1)1-13 (1987) を参照されたい)。同様に、骨髄移植モデルの生成及び使用に関しても十分に記述されている(例えば、Schwaller, et al., EMBO J. 17:5321-333 (1998); Kelly et al., Blood 99:310-318 (2002) を参照されたい)。EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチド「によって特徴付けられる癌」とは、そのような融合遺伝子及び/又は融合ポリペプチドが存在していない癌と比較して、そのような突然変異ALK遺伝子及び/又は発現されたポリペプチドが存在している癌を示す。
哺乳類の癌腫瘍由来の細胞を含む生体試料中のALKポリヌクレオチドの存在又はポリペプチドの発現の評価において、そのような転座及び/又は融合タンパク質を生じない細胞を示すコントロール試料を、比較の目的で望ましく用いることができる。理想的には、コントロール試料は、突然変異(例えば、EML4−ALK欠失変異)が発生せず、そして/又は融合ポリペプチドが発現されないサブセットの象徴である特定の癌(例えば、NSCLC)のサブセットに由来する細胞を含んでいる。コントロール試料中と試験生体試料中のレベルを比較することによって、突然変異ALKポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドが存在しているか否かを同定する。あるいは、EML4−ALK及び/又はTFG−ALK融合ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは大部分の癌に存在していないので、同様にそのような突然変異ALKポリペプチドを発現(又は突然変異ポリヌクレオチドを担持)しない組織の何れかをコントロールとして用いることができる。
下記の方法は、突然変異ALKポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドによって特徴付けられる癌、及びそれに関する治療方法の決定について、価値ある診断的用途を有するであろう。例えば、生体試料は、以前にEML4−ALK欠失変異及び/又は融合ポリペプチドによって特徴付けられる癌を有していると診断されたことがなく、そのような癌の治療を受けたこともない対象から得ることができ、そして方法は、EML4−ALK融合ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドが存在及び/又は発現している腫瘍(例えば、NSCLC)のサブセットと見なされる、対象の腫瘍を診断的に同定するために用いられる。本発明の方法は、対象をALKキナーゼを阻害する治療薬又は治療薬の組合わせを含有する組成物で治療した後に、突然変異ALKキナーゼポリペプチドを発現する癌の進行又は阻止を観察するためにも用いることができる。
そのような診断アッセイは、予備的評価又は外科的診断手順の後又は前に実施することができる。本発明の同定方法は、EML4−ALK及び/又はTFG−ALK融合タンパク質又は切断されたALKキナーゼによって促進される、NSCLCのような、癌を有している患者を同定するための診断に有利に用いることができ、そのような患者は、WHIー131及び/又はWHI−154又はそれらの類縁体のような、ALKキナーゼ活性を阻害することを標的とする治療薬に応答する可能性が最も高いだろう。そのような患者を選択する能力は、次世代のALKを標的とする薬剤の効果を臨床的に評価するために、さらに将来のそのような薬剤の患者への処方においても有用であろう。
診断
EML4−ALK及び/又はTFG-ALK融合ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチドが存在している癌を選択的に同定する能力は、診断目的でそのような癌を的確に同定するための重要な新規な方法を、更にまたそのような癌がALKを阻害する治療薬組成物に応答しそうであるか、又は癌を治療するために単剤として投与したときに、異なるキナーゼを標的にしている阻害剤に部分的に又は全く応答しそうもないかを判定するのに有用な情報を得ることも可能にする。
従って、ある態様では、本発明は哺乳類の癌由来の生体試料における突然変異ALKポリヌクレオチド及び/又はそれがコードする突然変異ALKポリペプチドの存在を検出する方法を提供し、当該方法は工程:
(a)哺乳類の癌から生体試料を得ること;及び
(b)融合ポリヌクレオチド、又はALKの部分と二次タンパク質の部分を含有しており、それをコードする融合ポリペプチドを検出する少なくとも1つの試薬を用いて、ALK突然変異ポリヌクレオチド及び/又はそれをコードする突然変異ALKポリペプチドが当該生体試料中に存在するか否かを判定すること:
を含んでいる。
ある好ましい態様では、癌は固形肉腫又は癌腫であり、一態様では、癌腫は、NSCLCのような、肺癌である。別の好ましい態様では、突然変異ALKポリペプチドはALK(配列番号5)の残基1116−1383を当該二次タンパク質の部分とともに含んでいる融合ポリペプチドである。別の好ましい態様では、二次タンパク質は、EML−4(配列番号3)及びTRK−融合遺伝子(TFG)タンパク質(配列番号22)よりなる群から選ばれる。更に別の好ましい態様では、融合ポリペプチドは、EML−4(配列番号3)の残基1−233若しくは残基1−495又はTFG(配列番号22)の残基1−138を含んでいる。
他の好ましい態様では、融合ポリヌクレオチドは、EML4−ALK融合ポリヌクレオチド(配列番号2又は19)又はTFG−ALK融合ポリヌクレオチド(配列番号21)を含んでいて、更なる別の態様では、融合ポリペプチドはEML4−ALK融合ポリペプチド(配列番号1又は18)又はTFG−ALK融合ポリペプチド(配列番号20)を含んでいる。更に別の好ましい態様では、融合ポリヌクレオチドは前記のEML4−ALK融合ポリヌクレオチド又はポリペプチドである。
より好ましい態様では、方法は、上記のような、EML4−ALK融合ポリヌクレオチド及び/又は少なくとも1つのEML4−ALK融合ポリペプチドに特異的な試薬(抗体又はAQUAペプチド)を含む試薬を用いる。いくつかの好ましい態様では、この試薬はTFG−ALK融合ポリペプチド(配列番号20)又はTFG−ALK融合ポリヌクレオチド(配列番号21)に特異的に結合するか又はこれを検出するが、野生型のTFG又は野生型のALKの何れかと結合せずこれを検出しない、単離された試薬を含む。その他の好ましい態様では、この試薬はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プローブ又は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)プローブである。ある好ましい態様は、TFG−ALK融合ポリペプチドの融合接合部又は野生型ALK内の切断点のアミノ酸配列を含む重同位体標識化(AQUA)ペプチドを用いる。
いくつかの好ましい態様では、本発明の診断方法は、上記のように、フローサイトメトリー(FC)、免疫組織化学法(IHC)、又は免疫蛍光法(IF)のアッセイ形式に組み入れられる。別の好ましい態様では、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの活性を検出する。他の好ましい態様では。本発明の診断方法は、上記のように、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ形式に組み入れられる。
本発明は更に、化合物が、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチドによって特徴付けられる癌の進行を阻害するか否かを判定する方法を提供し、この方法は、当該化合物が、当該癌における当該EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチドの発現及び/又は活性を阻害するか否かを判定する段階を含んでいる。ある好ましい態様では、ALK融合ポリペプチドの発現及び/又は活性の阻害は、本発明のEML4−ALK融合ポリヌクレオチド又はポリペプチド、及び/又は本明細書に記載されるTFG−ALK融合ポリヌクレオチド又はポリペプチドを検出する少なくとも1つの試薬を用いて判定する。ALKキナーゼ活性の阻害に適している化合物は、以下のG欄でより詳細に検討されている。
本発明方法の実施に有用な突然変異ALKポリヌクレオチドプローブ及びポリペプチドに特異的な試薬は、上のB欄及びD欄により詳細に記載されている。ある好ましい態様では、ALK融合ポリペプチドに特異的な試薬は、融合ポリペプチドに特異的な抗体を含んでいる。別の好ましい態様では、融合ポリペプチドに特異的な試薬は、ALK融合ポリペプチドの融合接合部(図1A−C(最下図)を参照されたい)に対応する、重同位体標識化ホスホペプチド(AQUAペプチド)を含んでいる。さらにその他の好ましい態様では、融合ポリヌクレオチドに特異的な試薬は、ALK融合遺伝子の融合接合部及び/又は野生型EML4、TFG、又はALK遺伝子の切断点に対応する、FISHプローブを含んでいる。
上記の本発明方法は、当該生体試料中の、野生型ALK及びEGFRのような他のキナーゼ、又は他の下流にあるシグナル伝達分子の発現又は活性化のレベルを判定する段階を任意に含んでいてもよい。所定の生体試料中の、ALK融合ポリペプチドの発現/活性化及び他のキナーゼ及び経路の発現/活性化の解明は、どのキナーゼ及び経路がこの疾患を促進するのか、及びどの治療計画が最も有益な可能性があるのかについての価値ある情報をもたらすことができる。
化合物のスクリーニング
本明細書に記載の新規なEML4−ALK融合ポリペプチドの発見も、この突然変異ALKタンパク質の活性、特にそのALKキナーゼ活性を阻害する新規な化合物の開発を可能にする。従って、本発明は、ある側面で、化合物が、EML4−ALK融合ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチドによって特徴付けられる癌の進行を阻害するか否かを判定する方法を提供し、その方法は当該化合物が当該癌において当該EML4−ALK融合ポリペプチドの発現及び/又は活性を阻害するか否かを判定する段階を含んでいる。ある好ましい態様では、EML4−ALK融合ポリペプチドの発現及び/又は活性の阻害は、本発明の融合ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチドを検出する少なくとも1つの試薬を用いて判定する。本発明の好ましい試薬は上記されている。ALKキナーゼ活性を阻害するのに適している化合物は以下のG欄により詳細に記述されている。
化合物は、例えば、小分子又は抗体阻害剤のような、キナーゼ阻害剤であってよい。これはいくつかの異なったキナーゼに対する活性を持っている、総キナーゼ(pan-kinase)、又はキナーゼに特異的な阻害剤であってよい。ALKキナーゼを阻害する化合物は以下のG欄により詳細に記述されている。阻害剤による治療の前後に患者の生体試料を採取し、次いで、上記の方法を用いて、下流の基質タンパク質のリン酸化を含む、ALKキナーゼ活性に対する阻害剤の生物学的効果を分析する。そのような薬力学的アッセイは、最大許容用量として好ましい、薬剤の生物学的活性用量を決定するのに有用であろう。そのような情報は、薬物作用のメカニズムを明らかにして、医薬品許可を申請する際にも有用であろう。そのような望ましい阻害特性を有する化合物の同定については、以下のG欄に更に記述されている。
G.癌の治療的阻害
本発明によって、そこでEML4−ALK融合タンパク質が発現されるような哺乳類の固形癌腫瘍(NSCLC)の進行を、インビボでそのような癌にあるALKキナーゼの活性を阻害することによって、阻止できるということが示された。同様に、本明細書に記載のように、インビボでそのような癌にあるALKキナーゼの活性を阻害することによって、TFG−ALK融合タンパク質が発現される哺乳類の固形癌腫瘍の活性も、同様に阻害できる。癌(例えば、腫瘍)を、WHI−131又はWHI−154様の小分子キナーゼ阻害剤のようなALKキナーゼを阻害する治療薬と接触させることによって、突然変異ALKポリペプチドの発現によって特徴付けられる癌におけるALK活性を阻害することができる。以下の実施例2に更に記述されるように、ALK融合タンパク質を発現する腫瘍の生育阻害は、例えば、典型的なALKを阻害する治療薬である、siRNAを用いて融合キナーゼを阻害することによって達成することができる。従って、本発明は、ある側面で、癌にある突然変異ALKキナーゼの発現及び/又は活性を阻害することによって、EML4−ALK融合ポリペプチドを発現する癌又はTFG−ALK融合ポリペプチドを発現する固形腫瘍の進行を阻害する方法を提供する。
ALKキナーゼを阻害する治療薬は、インビボでALKキナーゼの発現及び/又は活性を、直接的に又は間接的に、阻害するもので、下記の例示的な化合物群を包含する、生物学的又は化学的な化合物の少なくとも1つを含んでいる組成物の何れかであってよい。そのような化合物は、ALKキナーゼ自体、またはALKの活性を改変するタンパク質又は分子上で直接作用するか、又はALKの発現を阻害して間接的に作用する、治療薬を包含する。そのような組成物は、単一のALKキナーゼ阻害化合物のみを含む組成物を包含し、更には複数の治療薬(他のRTKsに対するものを含む)を含む組成物も包含していて、これは化学療法剤又は一般の転写阻害剤のような、非特異的な治療薬剤を含有していてもよい。
小分子阻害剤
いくつかの好ましい態様では、本発明方法を実施するのに有用なALKを阻害する治療薬は、WHI−131及びWHI−154、又はその類縁体のような、小分子阻害剤を標的にしている。WHI−131及びWHI−154は、ALKの阻害剤を標的にしているキナゾリンタイプの小分子であって、その性質については記述されている。Marzec et al., Lab. Invest. 85(12):1544-54 (2005)を参照されたい。これらの化合物がリンパ腫細胞のアポトーシスを誘発して、増殖を抑制することが示されている。キナーゼの阻害剤を標的としている他の小分子は当該技術分野において公知である。例えば、BCR−ABL融合キナーゼ(他のキナーゼも)のATP−結合部位に特異的に結合してブロックし、それによってこの酵素のリン酸化及び活性化を阻害する、Gleevec(登録商標;STI−571、Imatinib)は市販されていて、その性質はよく知られている。例えば、Dewar et al., Blood 105(8):3127-32(2005) を参照されたい。他のALKの小分子阻害剤は、Novartis, Inc. 及び Cephalon Inc. で現在開発中である。
小分子を標的としている阻害剤は、特異的に、及びしばしば不可逆的にその酵素の触媒部位に結合して、及び/又はその活性に必要な配座由来の酵素を阻害する、酵素内のATP−結合裂隙又は他の結合部位に結合して、主としてそれが標的とする酵素の活性を阻害する分子の類である。小分子阻害剤は、ALKキナーゼの三次元構造のX線結晶解析又はコンピューターモデリングを用いて合理的に設計するか、又はALKの阻害に関する化合物ライブラリーの高速大量処理スクリーニングによって見出すことができる。そのような方法は、当該技術分野において公知であって、既に記述されている。ALK阻害の特異性は、例えば、ALK活性を阻害するが、キナーゼ群の他のキナーゼ活性を阻害しないそのような化合物の能力を試験することによって、及び/又は上記のように、肺腫瘍細胞を含有する生体試料中のALK活性の阻害を試験することによって、確認することができる。そのようなスクリーニング方法は更に以下に記述されている。
抗体阻害剤
本発明の方法において有用なALKキナーゼを阻害する治療薬は、ALK活性に必要な臨界的触媒部位又はドメインに特異的に結合して、リガンド、基質又はALKに対する二次タンパク質の接近を妨害することにより、及び/又はその活性に必要な配座由来の酵素を阻害することによりキナーゼを阻害する、抗体を標的とすることもできる。ヒト化された標的に特異的な抗体の産生、スクリーニング及び治療的使用は、十分に記述されている。Merluzzi et al., Adv. Clin. Path. 4(2):77-85 (2000) を参照されたい。ヒト化された標的を特異的に阻害する抗体を高速大量処理で生成及びスクリーニングするための、Morphosys, Inc. の Human Combinatorial Antibody Library (HuCAL(登録商標))のような、市販されている技術及びシステムが入手可能である。
多種の抗−受容体キナーゼ標的抗体の産生及び、標的受容体の活性を阻害するためのそれらの使用について記述されている。例えば、2004年10月14日公開の米国特許出願公開第20040202655号、"Antibodies to IGF-I Receptor for the Treatment of Cancers", Morton et al.;2004年4月15日公開の米国特許出願公開第20040086503号、"Human anti-Epidermal Growth Factor Receptor Single-Chain Antibodies", Raisch et al. ; 2004年2月19日公開の米国特許出願公開第20040033543号、"Treatment of Renal Carcinoma Using Antibodies Against the EGFr", Schwab et al. を参照されたい。受容体チロシンキナーゼ活性を阻害する抗体の産生及び使用のための標準化された方法は、当該技術分野において公知である。例えば、2004年6月2日登録のヨーロッパ特許第1423428号、"Antibodies that Block Receptor Tyrosine KInase Activation, Methods of Screening for and Uses Thereof", Borges et al. を参照されたい。
ファージ提示方法も、ALKに特異的な抗体阻害剤を生成するために利用することができ、バクテリオファージライブラリー構築物についてのプロトコル及び組み換え抗体の選択については、周知の参考文献である、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, Colligan et al. (Eds.), John Wiley & Sons, Inc. (1992-2000), Chapter 17, Section 17.1. に記述されている。2001年11月20日登録の米国特許第6,319,690号、Little et al.; 2001年10月9日登録の米国特許第6,300,064号、Knappik et al.; 1998年11月24日登録の米国特許第5,840,479号、、Little et al.; 2003年11月27日公開の米国特許出願公開第20030219839号、Bowdish et al. も参照されたい。
バクテリオファージの表面に表示される抗体断片のライブラリーを産生することができ(例えば、2001年10月9日登録の米国特許第6,300,064号、Knappik et al. を参照されたい)、受容体タンパク質チロシンキナーゼ(ALKのような)の可溶性二量体形態との結合についてスクリーニングすることができる。スクリーニングに用いられるRTKの可溶性二量体形態に結合する抗体断片は、細胞中の標的RTKの構造的活性化を妨害する候補分子として同定される。ヨーロッパ特許第1423428号、Borges et al., supra を参照されたい。
上記のように抗体ライブラリーのスクリーニングで同定されたALK結合を標的とする抗体は、インビトロでのキナーゼアッセイ及びインビボでの細胞株及び/又は腫瘍中の両方で、ALKの活性を阻害する能力について更にスクリーニングすることができる。ALKの阻害は、例えば、そのような抗体治療薬のALKキナーゼ活性を阻害するが、キナーゼ群の他のキナーゼ活性を阻害しない能力を試験して、及び/又は上記のように、癌細胞を含んでいる生体試料中のALK活性の阻害を試験して確認することができる。そのような化合物をALKキナーゼ阻害についてスクリーニングするための方法は上記されている。
間接阻害剤
開示される方法の実施に有用なALKを阻害する化合物は、ALKキナーゼそれ自体以外の他のタンパク質又は分子の活性を阻害することによって、ALK活性を間接的に阻害する化合物であってもよい。そのような阻害治療薬は、ALK自体をリン酸化又は脱リン酸化する(そして活性化又は非活性化する)主要な制御キナーゼの活性を調節する、若しくはリガンドの結合を妨げるような阻害剤を標的にすることができる。他の受容体チロシンキナーゼと同様に、ALKは、アダプタータンパク質のネットワークを経て下流のシグナル伝達を、及びSTAT5及びAKTを包含する下流のキナーゼを、制御する。その結果、ALK活性による細胞の生育及び生存の誘発を、これらの相互作用又は下流タンパク質を標的にすることによって、阻害することができる。この方法で使用できるように現在開発中の薬剤に、Wartmaninが含まれる。
ALKキナーゼ活性は、ALKをその活性立体配座にするのに必要な活性化分子の結合を阻害する化合物を用いることにより、間接的に阻害することもできる。同様に、例えば、PDGF受容体チロシンキナーゼを下方制御する抗−PDGF抗体の産生及び使用について記述されている。米国特許出願公開第20030219839号、"Anti-PDF Antibodies and Methods for Producing Engineered Antibodies", Bowdish et al. を参照されたい。
ALK活性の間接阻害剤は、ALKの三次元構造のX線結晶解析又はコンピューターモデリングを用いて合理的に設計することができ、若しくはALKキナーゼの阻害をもたらす、主要な上流の制御酵素及び/又は必要な結合分子の阻害に関する化合物ライブラリーの高速大量処理のスクリーニングによって見い出すことができる。そのような手段は当該技術分野で公知であって、既に記述されている。そのような治療薬によるALK阻害は、例えば、ALK活性を阻害するが、キナーゼ群の他のキナーゼ活性を阻害しない化合物の能力を試験して、及び/又は上記のように、癌細胞、例えばNSCLC細胞を含んでいる生体試料中のALK活性の阻害を試験して確認することができる。EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチドによって特徴付けられる癌を阻害する化合物を同定する方法は、更に以下に記述されている。
アンチセンス及び/又は転写阻害剤
ALKを阻害する治療薬は、ALK及び/又はEML4−ALK若しくはTFG−ALK融合遺伝子又は切断されたALK遺伝子をコードする遺伝子の転写を阻害することによってALKキナーゼ活性を阻害する、アンチセンス及び/又は転写の阻害化合物を含んでいてもよい。例えば、癌の治療のためのアンチセンス治療薬による、VEGFER、EGFR、及びIGFR、及びFGFRを包含する、多種の受容体キナーゼの阻害については、既に記述されている。例えば、米国特許第6,734,017号、同第6,710,174号、同第6,617,162号、同第6,340,674号、同第5,783,683号、同第5,610,288号を参照されたい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドを公知の技術に従って、標的遺伝子に対する治療薬として、設計し、構築し、そして用いることができる。例えば、Cohen J., Trends in Pharmacol. Sci. 10(11):435-437 (1989); Marcus-Sekura, Anal. Biochem. 172:289-295 (1988); Weintraub, H., Sci. AM. pp.40-46 (1990); Van Der Krol et al., Bio Techniques 6(10):958-976 (1988); Skorski et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91:4504-4508 を参照されたい。EGERのアンチセンスRNA阻害剤を用いて、ヒト癌腫の生育をインビボで阻害することが最近記述された。2004年3月11日公開の米国特許出願公開第20040047847号、"Inhibition of Human Squamous Cell Carcinoma Growth in vivo by Epidermal Growth Factor Receptor Antisense RNA Transcribed from Pol III Promoter", He et al. を参照されたい。同様に、哺乳類ALK遺伝子(図4(配列番号6)を参照されたい)又はEML4−ALK若しくはTFG−ALK融合ポリヌクレオチド又は切断されたALKポリヌクレオチド(図2A−C(配列番号2、19及び21)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含んでいるALKを阻害する治療薬を、上記の方法に従って製造することができる。ALKを阻害するアンチセンス化合物を含んでいる医薬組成物を製造して、以下に更に記述するように投与することができる。
低分子干渉RNA
RNA干渉過程を経て翻訳を阻害し、それによってALKの活性を阻害する、低分子干渉RNA分子(siRNA)も、望ましく本発明の方法に使用することができる。RNA干渉、及び標的タンパク質をコードするmRNAに相補的な配列を含有する外来性の低分子二本鎖RNAの導入による、標的遺伝子の選択的サイレンシングについては、十分に記述されている。例えば、2004年2月26日公開の米国特許出願公開第20040038921号、"Composition and Method for Inhibiting Expression of a Target Gene", Kreutzer et al.; 2003年6月12日公開の米国特許出願公開第20020086356号、"RNA Sequence-Specific Mediators of RNA Interference", Tuschl et al.; 2004年11月18日公開の米国特許出願公開第20040229266号、"RNA Interference Mediating Small RNA Molecules", Tuschl et al. を参照されたい。
例えば、ここに示されているように(実施例2を参照されたい)、融合タンパク質を発現するヒトNSCLC細胞株におけるEML4−ALK融合タンパク質の発現のsiRNA−介在サイレンシングは、これらの細胞において疾患の進行を選択的に阻害したが、突然変異ALKタンパク質を発現しないコントロール細胞では疾患の進行を阻害しなかった。
二本鎖RNA分子(dsRNA)が、RNA干渉(RNAi)として知られている、高度に保存された制御機構における遺伝子発現を阻害することが示されている。すなわち、RNAse III Dicerが、dsRNAを処理して約22ヌクレオチドの低分子干渉RNA(siRNA)にして、これはRNA誘発サイレンシング複合体RISCによる標的に特異的なmRNAの切断を誘発するガイド配列として働く(Hammond et al., Nature (2000) 404:293-296 を参照されたい)。RNAiは、より長いdsRNAの連続的な切断によって新規なsiRNAが生成される触媒型反応に関与している。従って、アンチセンスとは異なって、RNAiは非化学量論的方法で標的RNAを分解する。細胞又は臓器に投与すると、外来性dsRNAが、RNAiを介して外来性メッセンジャーRNA(mRNA)の配列特異的な分解を促進するこが示されている。
それを発現するため及び哺乳類細胞で使用するためのベクター及びシステムを包含する、多種類の標的に特異的なsiRNA産物は現在入手可能であり、哺乳類細胞に使用することができる。例えば、Promega, Inc. (promega.com); Dharmacon, Inc. (dharmacon.com.) を参照されたい。RNAiに関するdsRNAの設計、構造及び使用の詳細な技術マニュアルは入手可能である。例えば、 Dharmacon's "RNAi Thechnical Reference & Application Guide"; Promega's "RNAi: A Guide to Gene Silencing." を参照されたい。ALKを阻害するsiRNA産物も市販されていて、本発明の方法で使用するのに適している。例えば、Dharmacon, Inc., Lafayette, CO (Cat Nos. M-003162-03, MU-003162-03, D-003162-07 thru -10; siGENOME(登録商標)SMARTselection and SMARTpool(登録商標)siRNAs)を参照されたい。
そのdsRNAが最適にはその末端に1〜4ヌクレオチド突出部を少なくとも1つ有している、標的mRNA配列の部分と実質的に相同性を有する配列を少なくとも1つ含んでいる、長さが49ヌクレオチドより短い、好ましくは19〜25のヌクレオチドの小さいdsRNAが、哺乳類においてRNAiを介在するのに最も効果があるということが最近立証された。米国特許出願公開第20040038921号、Kreutzer et al., supra; 米国特許出願公開第20040229266号、Tuschl et al., supra を参照されたい。そのようなdsRNAの構築物、及びインビボでの標的タンパク質の発現を消去するための医薬製剤でのそれらの用途は、上の文献に詳細に記述されている。
哺乳類において標的とする遺伝子の配列が知られている場合は、21〜23ntRNAは、例えば、それらを産生して、ヒト又は他の霊長類の細胞のような哺乳類の細胞におけるRNAiを介在するそれらの能力について試験することができる。RNAiを介在することが示されているそれらの21〜23ntRNA分子は、所望により、適切な動物モデルにおいてそれらのインビボでの効果を更に評価するために試験することができる。既知の標的部位、例えば、他の核酸分子、例えばリボザイム又はアンチセンスでの検討に基づいて有効な標的部位であることが判定されている部位は、若しくは突然変異又は欠失を含んでいる部位のような、病気又は疾患に関連していることが知られているこれらの標的は、これらの部位を標的にするsiRNAを設計するために同様に用いることができる。
あるいは、有効なdsRNAの配列は、標的部位について目的となる標的mRNAを、例えばコンピューター組み込みアルゴリズムを用いて、合理的に設計/予測スクリーニングを行うことができる。標的配列は、カスタムPerlスクリプト又は Oligo、MacVector、又はGCG Wisconsin Packageのような市販の配列解析プログラムを用いて、コンピューター内で解析して、全断片の又は特定の長さの部分列、例えば23ヌクレオチド断片のリストにすることができる。
標的RNA配列中のどの部位が最も適した標的部位であるかを判定するために多種のパラメーターを用いることができる。これらのパラメーターは、これらに限定されないが、二次又は三次RNA構造、標的配列のヌクレオチド塩基組成、標的配列の多種領域間の相同性の程度、又はRNA複写物中の標的配列の相対位置を包含する。これらの測定に基づいて、RNA複写物中のいずれの数の標的部位も、例えばインビトロRNA切断アッセイ、細胞培養、又は動物モデルを用いて、siRNA分子の有効性についてスクリーニングするために選択することができる。例えば、2003年9月11日公開の米国特許出願公開第20030170891号、McSwiggen J を参照されたい。RNAi標的部位を同定及び選択するアルゴリズムについても最近記述されている。2004年11月25日公開の米国特許出願公開第20040236517号、"Selection of Target Sites for Antisense Attack of RNA", Drlica et al. を参照されたい。
通常用いられる遺伝子導入技術は、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション及びマイクロインジェクション及びウィルス法を包含する(Graham et al., (1973) Virol. 52:456; McCutchan et al., (1968), J. Natl. Cancer Inst. 41:351; Chu et al. (1987), Nucl. Acids Res. 15:1311; Fraley et al. (1980), J. Biol. Chem. 255:10431; Capecchi (1980), cell 22:479)。DNAも陽イオンリポソームを用いて細胞に導入することができる(Feigner et al. (1987), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413)。市販の陽イオン脂質製剤は、Tfx50(Promega)又はリポフェクタミン200(Lipofectamin 200; Life Technologies)を包含する。また、ウィルスベクターはdsRNAを細胞に送達してRNAiを介在させるために用いることができる。2004年2月4日公開の米国特許出願公開第20040023390号、"siRNA-mediated Gene Silencing with Viral Vectors", Davidson et al. を参照されたい。
哺乳類の細胞におけるRNAiのトランスフェクション及びベクター/発現システムは、市販されていて、十分に記述されている。例えば、Dharmacon, Inc., DharmaFECT(登録商標)system; Promega, Inc., siSTRIKE(登録商標)system を参照されたい。Gou et al. (2003) FEBS. 548, 113-118; Sui et al. A DNA vector-based RNAi technology to supress gene expression in mammalian cells (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. 99, 5515-5520; Yu et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. 99, 6047-6052; Paul, C. et al. (2002) Nature Biotechnology 19,505-508; McManus et al. (2002) RNA 8, 842-850 も参照されたい。
調製したdsRNA分子を用いる哺乳類におけるsiRNA干渉は、dsRNAを含有している医薬製剤を哺乳類に投与することによって達成される。医薬組成物は、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な用量で投与される。dsRNAは、通常、1日に体重キログラム当たり5mg未満の用量で投与され、この用量は、標的遺伝子の発現を阻害するのに又は完全に止めるのに十分である。一般にdsRNAの適切な用量は、1日に被投与者の体重キログラム当たり0.01〜2.5ミリグラムの範囲内、好ましくは1日に体重キログラム当たり0.1〜200マイクログラムの範囲内、より好ましくは1日に体重キログラム当たり0.1〜100マイクログラムの範囲内、更により好ましくは1日に体重キログラム当たり1.0〜50マイクログラムの範囲内、そして最も好ましくは1日に体重キログラム当たり1.0〜25マイクログラムの範囲内であろう。dsRNAを含有している医薬組成物は、1日1回、又は数回低用量で、例えば、当該技術分野で公知の徐放製剤を用いて、投与される。そのような医薬組成物の調製及び投与は、以下に更に記述するように、標準的な技術に従って実施することができる。
次いで、そのようなdsRNAは、上記のように、治療有効量のそのようなdsRNAを含有している医薬製剤を調製して、EML4−ALK又はTFG−ALK融合タンパク質又は切断された活性ALKキナーゼを発現する癌を有するヒト対象に、この製剤を、例えば腫瘍への直接注射によって投与することにより、癌におけるALKの発現及び活性を阻害するために用いることができる。siRNA阻害剤を用いて、VEGFR及びEGFRのような他の受容体チロシンキナーゼのそのような阻害について、最近記述されている。2004年10月21日公開の米国特許出願公開第20040209832号、McSwiggen et al.; 2003年9月11日公開の米国特許出願公開第20030170891号、McSwiggen; 2004年9月9日公開の米国特許出願公開第20040175703号、Kreutzer et al. を参照されたい。
治療用組成物、投与
本発明方法の実施に有用なALKキナーゼを阻害する治療用組成物は、経口又は腹腔経路に限定されず、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気管内(エアゾール)、直腸内、膣内及び局所(口腔内、及び舌下を含む)投与を包含する、当該技術分野で公知の何れかの手段で哺乳類に投与することができる。
経口投与のために、ALKを阻害する治療薬は一般に、粉末又は顆粒として、錠剤又はカプセル、又は水性溶液又は懸濁液の形態で提供されるであろう。経口用途の錠剤は、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、着香剤、着色剤、及び保存剤のような、薬学的に許容される賦形剤と混合した活性成分を含有してもよい。適切な不活性希釈剤は、炭酸ナトリウム及びカルシウム、リン酸ナトリウム及びカルシウム、及びラクトースを包含し、一方コーンスターチ及びアルギン酸は適切な崩壊剤である。結合剤はデンプン及びゼラチンを包含してもよく、滑沢剤は、加えるとすれば、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであろう。所望により、消化管で遅延吸収されるように、錠剤をモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルのような物質でコーティングしてもよい。
経口用のカプセルは、活性成分を固体の希釈剤と混合しているハードゼラチンカプセル、及び活性成分を水又は落花生油、流動パラフィン又はオリーブオイルのような油と混合しているソフトゼラチンカプセルを包含している。
筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内用途のために、本発明の医薬組成物は一般に、適切なpH及び等張性に緩衝化した、無菌の水性溶液又は懸濁液で提供されるであろう。適切な水性賦形剤は、リンゲル溶液及び生理食塩水を包含する。担体のみで水性緩衝液を構成させることができる(「のみ」とは、ALKを阻害する治療薬の吸収に影響を及ぼすか又は介在するかもしれない、補助剤又は封入剤が存在していないことを意味する)。そのような物質は、例えば、下記するように、リポソーム又はカプシドのような、ミセル構造を包含する。水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン及びトラガカントゴムのような懸濁化剤、及びレシチンのような湿潤剤を含有していてもよい。水性懸濁剤用の適切な保存剤は、p−ヒドロキシ安息香酸エチル及びn−プロピルを包含する。
ALKキナーゼを阻害する治療用組成物は、移植片及びマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤のような、身体からの早い排泄から治療薬(例えばdsRNA化合物)を保護するカプセル化製剤も包含することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、及びポリ乳酸のような、生物分解性、生体適合性のポリマーを用いることができる。そのような製剤の製造方法は当業者にとって明らかであろう。この物質も Alza Corporation 及び Nova Pharmaceuticals Inc, から市販されている。リポソーム懸濁液(ウィルス性抗原に対するモノクローナル抗体で感染した細胞を標的にするリポソームを含有している)も薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは、当業者にとって公知の方法、例えば米国特許第4,522,811号、PCT国際公開WO第91/06309号公報、及びヨーロッパ特許公開EP−A−43075に記述されている方法に従って製造することができる。カプセル製剤は、ウィルス外被タンパク質を含有することができる。ウィルス外被タンパク質は、ポリオーマウィルスのような、ウィルスから得るか又はこれに付随していてもよく、又は部分的に又は完全に人工的であってよい。例えば、被覆タンパク質はポリオーマウィルスのウィルスタンパク質1及び/又はウィルスタンパク質2、若しくはそれらの誘導体であってよい。
ALKを阻害する組成物は、対象に投与するための、リポソームを包含する送達賦形剤、担体、及び希釈剤及びその塩も含有することができ、そして/又は薬学的に許容される製剤中に存在させることができる。例えば、核酸分子を送達する方法は、Akhtar et al., 1992, Trends Cell Bio., 2, 139; DELIVERY STRATEGIES FOR ANTISENSE OLIGONUCLEOTIDE THERAPEUTICS, ed. Akbtar, 1995; Maurer et al., 1999, Mol. Membr. Biol., 16, 129-140; Hofland and Huang, 1999, Handb. Exp. Pharmacol., 137, 165-192; 及び Lee et al., 2000, ACS Symp. Ser., 752, 184-192 に記述されている。Beigelman et al. の米国特許第6,395,713号及び Sullivan et al. のPCT公開WO第94/02595号公報に核酸分子を送達する一般的な方法が更に記述されている。これらのプロトコルは事実上全ての核酸分子の送達に用いることができる。
ALKを阻害する治療薬は、これらに限定されないが、リポソーム中にカプセル化、イオン導入による、若しくはヒドロゲル、シクロデキストリン、生物分解性ナノカプセル及び生体接着性小粒体のような他の賦形剤中に取り込むことによる、若しくはタンパク性ベクターによる、を含む、当業者にとって公知の多くの方法によって哺乳類の癌に対して投与することができる(O'Hare amd Normand のPCT国際公開WO第00/53722号公報)。また、治療薬/賦形剤の混合物は、直接注射又は注入ポンプの使用によって、局所送達される。組成物の直接注射は、皮下、筋肉内、又は皮内であろうとも、標準的な針及び注射器の手法を用いて、又は Conry et al., 1999, Clin. Cancer Res., 5, 2330-2337 及び Barry et al. のPCT国際公開WO第99/31262号公報に記述されているように注射針を用いない技術によって行うことができる。
ALKキナーゼを阻害する治療薬の薬学的に許容される製剤は、上記化合物の塩、例えば、酸付加塩、例えば塩酸、臭化水素酸、酢酸及びベンゼンスルホン酸の塩を包含する。薬理学的組成物又は製剤とは、細胞又は例えばヒトを含む患者へ、投与、例えば全身投与するのに適している形態の組成物又は製剤を示す。適切な形態は、用途又は投与経路、例えば経口、経皮又は注射による、に一部において依存している。そのような形態は、組成物又は製剤が標的細胞に到達するのを妨げてはならない。例えば、血流に注射される薬理学的組成物は可溶性でなければならない。他の要素は当該技術分野で公知であり、毒性、及び組成物又は製剤がその効果に影響を及ぼさせない形態のような考慮すべき事柄を含んでいる。
全身吸収(すなわち、血流への薬剤の全身吸収又は蓄積、次いで全身への分布)をもたらす投与経路が好ましく、これらに限定されないが、静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内及び筋肉内を包含している。これらの投与経路のそれぞれが、ALKを阻害する治療薬を到達可能な病変組織又は腫瘍に触れさせる。薬剤の血液循環への流入速度は、分子量又はサイズの関数であることが示されている。本発明の化合物を含有しているリポソーム又は他の薬剤担体の使用が、例えば、網状網内系(RES)の組織のような、ある特定の組織型に、薬剤を潜在的に局在化させることを可能にする。リンパ球及びマクロファージのような、細胞表面と薬剤との結合を促進することができるリポソーム製剤も有用である。この手法は、癌細胞のような、異常細胞のマクロファージ及びリンパ球の免疫認識の特異性を駆使して、標的細胞への薬剤の増強された送達を可能にする。
「薬学的に許容される製剤」とは、本発明の核酸分子を、その望ましい活性に最も適している身体の部位へ効果的に分配できる組成物又は製剤を意味する。本発明の核酸分子を含んでいる製剤に適している薬剤の限定されない例は、薬剤のCNSへの流入を増強することができる、(Pluronic P85 のような)P−グリコプロテイン阻害剤(Jolliet-Riant and Tillement, 1999, Fundam. Clin. Pharmacol., 13, 16-26);大脳に移植した後の徐放送達用ポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)マイクロスフェア(Emerich et al., 1999, Cell Transplant, 8, 47-58; Alkermes, Inc. Cambridge, Mass.)のような、生物分解性ポリマー;薬剤を血液脳関門を通過して送達して、ニューロンへの取り込みメカニズムを変えることができる、ポリブチルシアノアクリレートでできているもののような、負荷ナノ粒子(Prog Neuro-Psychopharmacol Biol Psychiatry, 23, 941-949, 1999)を包含する。本発明の方法で有用なALKを阻害する化合物のための送達方策の限定されない他の例は、Boado et al., 1998, J. Pharm. Sci., 87, 1308-1315; Tyler et al., 1999, FEBS Lett., 421, 280-284; Pardridge et al., 1995, PNAS USA, 92, 5592-5596; Boado, 1995, Adv. Drug Delivery Rev. 15, 73-107; Aldrian-Herrada et al., 1998, Nucleic Acid Res., 26, 4910-4916; 及び Tyler et al., 1999, PNAS USA., 96, 7053-7058 に記載されている物質を包含している。
表面修飾リポソーム含有のポリ(エチレングリコール)脂質(PEG修飾、又は長期血中滞留型リポソーム又はステルスリポソーム)を含有する治療用組成物も、本発明の方法で適切に使用することができる。これらの製剤は、標的組織に薬剤の蓄積を増大させる方法を提供する。この種の薬剤担体は、単核食細胞系(MPS又はRES)によるオプソニン化及び排出に抵抗するので、カプセル化した薬剤の長期血中循環及び組織への暴露の増強が可能になる(Lasic et al., Chem. Rev. 1995, 95, 2601-2627; Ishiwata et al., Chem.Pharm. Bull. 1995, 43, 10005-1011)。そのようなリポソームは、恐らく管外遊出及び新血管形成された標的組織に捕捉されることによって、腫瘍に選択的に蓄積することが示されている(Lasic et al., Science 1995, 267, 1275-1276; Oku et al., 1995, Biochem. Biophys. Acta, 1238, 86-90)。長期血中循環リポソームは、特にMPSの組織に蓄積することが知られている従来の陽イオンリポソームと比べると、DNA及びRNAの薬物動態及び薬効を増強する(Liu et al., J. Biol. Chem. 1995, 42,24864-24870; Choi et al., PCT国際公開WO第96/10391号公報;Ansell et al.,PCT国際公開WO第96/10390号公報;Holland et al., 国際特許出願公開第WO96/10392号)。長期血中循環リポソームは、肝臓及び脾臓のような代謝的に活動的なMPS組織への蓄積を阻害する能力によって、陽イオンリポソームと比べて、より強くヌクレアーゼ分解から薬剤を保護するとも考えられる。
治療用組成物は、薬学的に許容される担体又は希釈剤中に、望ましい化合物の薬学的に有効な量を含有することができる。治療に用いる許容される担体又は希釈剤は薬学分野で公知であって、例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Mack Publishing Co. (A.R. Gennaro, Ed. 1985) に記載されている。例えば、保存剤、安定化剤、染料及び着香剤を提示することができる。これらは安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びP-ヒドロキシ安息香酸のエステル類を包含する。更に、抗酸化剤及び懸濁化剤を用いることができる。
薬学的に有効な用量は、病状の発生を防止、阻止、又は病状を治療する(症状をある程度、好ましくは症状の全てを軽減する)のに必要な用量のことである。薬学的に有効な用量は、疾患のタイプ、用いられる組成物、投与経路、治療する哺乳類のタイプ、考慮中の特定哺乳類の身体的特徴、併用する薬剤、及び医療分野の当業者が認識できる他の因子によって決まる。一般に、負の電荷を帯びたポリマーの効力に依存して、0.1mg/kg〜100mg/体重kg/日の活性成分を投与する。
1日に体重1kg当たり約0.1mg〜約140mg程度の用量レベルが上記の状態の治療に有用である(1日に患者当たり約0.5mg〜約7g)。単回用量形態を製造するために担体物質と混合することができる活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与方法によって変わる。用量単位形態は、一般に約1mg〜約500mgの活性成分を含有している。何れかの特定患者に対する特定な用量レベルは、用いる特定化合物の活性、年齢、体重、総体的な健康状態、性、食事、投与回数、投与経路、及び排泄速度、薬物の併用及び治療する特定疾患の重篤性を含む、多種の要因によって決まるということは理解されるだろう。
非ヒト動物に投与するために、組成物を動物の餌又は飲料水に添加することもできる。動物が処置に適した量の組成物を食事と一緒に摂取できるように、動物用の飼料又は飲料水組成物を便宜的に処方することができる。飼料又は飲料水に添加するように組成物を混合飼料としておくことも便利である。
本発明の実施に有用なALKを阻害する治療薬は、上記のように単一化合物を、又は複数化合物の組合わせを、同じ種の阻害剤(すなわち、抗体阻害剤)又は異なった種の(すなわち、抗体阻害剤と小分子阻害剤)の何れかに含有していてもよい。化合物のそのような組合わせは、融合タンパク質を発現する癌の進行の阻害において全体的な治療効果を増強させることができる。例えば、治療用組成物は、WHI−131及び/又はWHI−154のような小分子阻害剤、又はALK活性を標的とする他の阻害剤及び/又は他の小分子阻害剤の組合わせであってよい。治療用組成物は、1つ以上の標的阻害剤に加えて、非特異的な化学療法剤を含有していてもよい。そのような組合わせは、多くの癌において相乗的な殺腫瘍効果をもたらすことが最近示された。インビボにおける、そのようなALK活性及び腫瘍生育の阻害の組合わせの効果を、以下に記述するように評価することができる。
突然変異ALKキナーゼを阻害する化合物の同定
本発明は、ある側面において、化合物が癌におけるEML4−ALK又はTFG−ALK融合融合ポリペプチド又はALKキナーゼポリペプチドの活性を阻害するか否かを確認することによって、化合物がEML4−ALK又はTFG−ALK融合融合ポリヌクレオチド及び/又は融合ポリペプチドによって特徴付けられる癌の進行を阻害できるか否かを確認する方法を提供する。いくつかの好ましい態様では、ALKの活性の阻害は、骨髄、血液、胸水、又は腫瘍由来の細胞を含有する生体試料を試験することによって確認される。その他の好ましい態様では、ALKの活性の阻害は、本発明の突然変異ALKポリヌクレオチド又はポリペプチドに特異的な試薬を用いて確認される。
試験化合物は、上記の治療薬又は組成物の何れかのタイプのものであってよい。インビトロ及びインビボの両方における、化合物の有効性を評価する方法は、十分に確立されていて、当該技術分野で公知である。例えば、組成物は、ALKが活性化されている細胞又は細胞抽出物を用いてインビトロでALKを阻害する能力についての試験を行うことができる。化合物群は、ALKに対する化合物の特異性を(EGFR又はPDGFRのような、他の標的と対照的に)試験するために用いることができる。
使用可能な薬剤をスクリーニングするその他の技術は、PCT国際公開WO第84/03564号公報に記載されているような、目的のタンパク質に対して適切な結合親和性を有する高速大量処理のスクリーニングを提供する。この方法では、突然変異ALKポリペプチドに適用するために、多数の異なった小分子試験化合物が、プラスチックピン又は幾つか他の表面のような、固体基質上で合成される。この試験化合物を、突然変異ALKポリペプチド、又はその断片と反応させて、洗浄する。次いで、結合した突然変異ポリペプチド(例えば、EML4−ALK融合ポリペプチド)を当該技術分野で公知の方法で検出する。精製した突然変異ALKポリペプチドを、上記の薬剤スクリーニング技術で用いるために、直接プレート上に塗布することもできる。また、中和していない抗体は、ペプチドを捕捉して、それを固体の支持体に固定するために用いることができる。
インビトロでALK活性の有効な阻害剤であることが見出された化合物は、続いて、例えばNSCLCのような、ヒトの腫瘍を担持している哺乳動物の異種移植片を用いて、インビボで、EML4−ALK又はTFG−ALK融合ポリペプチド及び/又は切断されたALKキナーゼポリペプチドを発現する癌の進行を阻害するその能力についての試験を行うことができる。この方法では、患者に最も類似した生物学的環境で薬剤の効果を観察することができる。癌細胞又は周辺の間質細胞におけるシグナル伝達を変化させる薬剤の能力を、リン酸化に特異的な抗体を用いる分析で確認することができる。細胞死又は細胞増殖の阻害を誘発する薬剤の有効性も、切断されたカスパーゼ3及び切断されたPARPのようなアポトーシスに特異的なマーカーで分析して観察することができる。同様に、突然変異ALKタンパク質で促進されるヒト白血病を担持している哺乳類の骨髄移植体(例えば、マウス)を使用することができる。この手順では、突然変異ALKキナーゼによって促進されることが知られている骨髄細胞をマウスに移植する。癌腫細胞の生育を観察してもよい。次いでマウスを薬剤で処置して、癌表現型又は進行に対する薬剤処置の効果を外部から観察することができる。次いでマウスをと殺して、移植した骨髄を取り出して、IHC及びウェスタンブロットなどで分析する。
そのような化合物の毒性及び治療効果、例えばLD50(集団の50%に対する致死用量)及びED50(集団の50%における治療有効用量)の判定は、細胞培養物又は実験動物で標準的な薬学的手順によって確認することができる。毒性と治療効果の用量比が治療インデックスであって、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療インデックスを示す化合物が好ましい。
上記及び下記の引用された全ての引例の教示は、参照して本明細書に組み入れられる。以下の実施例は、本発明を更に説明するためにのみ提供されていて、本明細書に添付されている特許請求の範囲を除いて、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。本発明は本明細書で教示される方法の当業者にとって明瞭であろう修飾及び改変を包含している。
包括的なホスホペプチドのプロファイリングによる固形腫瘍におけるALKキナーゼ活性の検証
A.ヒトNSCLC細胞株のプロファイリング
H2228を含む、22のヒトNSCLC細胞株におけるキナーゼ活性の包括的なリン酸化プロファイルは、複合混合物由来の改変ペプチドの単離及び質量分析によって特徴付けるために、最近記述された有力な技術(「IAP」技術、Rush et al., supra を参照されたい)を用いて、試験を行った。ホスホチロシンに特異的な抗体(CELL SIGNALING TECHNOLOGY, INC., Beverly, MA, 2003/04 Cat. #9411) を用いてIAP技術を実施し、NSCLC細胞株の抽出物由来のホスホチロシンを含有するペプチドを単離し、次いで特徴付けを行った。
具体的には、IAP手法は、それぞれのNSCLC細胞株において、タンパク質のリン酸化に関与するチロシンキナーゼの同定を促進するために用いた。特に、特殊な若しくは異常なキナーゼ活性を考慮した。
細胞培養
全ての細胞培養試薬は Invitrogen, Inc. から入手した。全部で41のヒトNSCLC細胞株を試験した。ヒトNSCLC細胞株、H520、H838、H1437、H1563、H1568、H1792、H1944、H2170、H2172、H2228、H2347、A549、H441、H1703、H1373、及びH358を、American Type Culture Collection から得て、2mMのL−グルタミン、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、10mMのHEPES、10mMのピルビン酸ナトリウム、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するように調節した、10%FBSを含むRPMI1640培地中で培養した。さらに6つのヒトNSCLC細胞株、HCC78、Cal-12T、HCC366、HCC44及びLOU−NH91、をDSMZから入手して、10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI1640中で培養した。細胞を37℃で5%のCO2インキュベータ中に保持した。
免疫親和性沈降及びイムノブロット試験のために、細胞を80%のコンフルエンスまで生育させて、次いで採取の前に一晩FBSを含まないRPMI培地中で飢餓させた。
ホスホペプチドによる免疫沈降
100万個の細胞を尿素溶菌緩衝液(20mMのHepes(pH8.0)、9Mの尿素、1mMのバナジウム酸ナトリウム、2.5mMのピロリン酸ナトリウム、1mMのβ−グリセロリン酸エステル)中に溶解した。溶解物を超音波処理して、遠心分離で透明にした。透明にした溶解物をDTTで還元して、先に記述されているように、ヨードアセトアミドでアルキル化した(Rush et al., Nat. Biotechnol. 23(1):94-101 (2005) を参照されたい)。次いで試料を20mMのHepesで4倍に希釈して尿素の濃度を2Mに下げて、室温で静かに撹拌しながら1晩トリプシンで消化させた。
消化したペプチドを、先に記述されているように、Sep−Pak C18カラムで粗精製した(Rush et al., supra を参照されたい)。溶出液を凍結乾燥させて、乾燥したペプチドを1.4mlのMOPS IP緩衝液(50mMのMOPS/NaOH、pH7.2、10mMのNa2PO4、50mMのNaCl)に溶解して、不溶性物質を遠心分離で除去した。プロテインGアガロースビーズ(Roch) に結合したホスホチロシン100抗体(Cell Signaling Technology) 160μgを用いて4℃で1晩免疫沈降を行った。冷所で、ビーズを1mlのMOPS IP緩衝液で3回、1mlのHPLC grade dH20で2回洗浄した。60μlの0.1%TFAでホスホペプチドをビーズから溶出した後、40μlの0.1%TFAで2回目の溶出を行ってこの画分を集めた。溶出したペプチドをZipTipカラム(Millipore)を用いて濃縮して、LC−MS/MSで分析した。マススペクトルをLTQイオントラップ質量分析器(ThermoFinnigan)で集めた。
LC−MS/MS質量分析器による分析
IP溶出液(100μl)中のペプチドを濃縮して、Stop and Go 抽出チップ(Stage Tips)(Rappsilber et al., Anal. Chem., 75(3):663-70 (2003) を参照されたい)を用いて溶出した抗体から分離した。ペプチドを、7.6μlの0.4%酢酸/0.005%ヘプタフルオロ酪酸(HFBA)中の1μlの60%MeCN、0.1%TFAでマイクロカラムから溶出した。
それぞれのホスホペプチド試料は、2回、LC−MSで分析した。融合シリカマイクロキャピラルカラム(125μm×18cm)にC18逆相樹脂(Magic C18AQ、5μmの粒子、細孔経200Å、Michrom Bioresources, Auburn, CA)を充填した。試料(4μL)は、自動サンプラー(LC Packings Famos, San Francisico, CA) を用いてこのカラムに搭載させて、0.1%のギ酸中の7〜30%のアセトニトリルの55-分の直線濃度勾配法により質量分析器中に溶出させた。この勾配法を、インラインフロースプリッターを備えた二元HPLCポンプ(Agilent 1100, Palo Alto, CA)を用いて、おおよそabc nl/minで実施した。溶出するペプチドのイオンをハイブリッド線形イオントラップ−7テスラ・イオン・サイクロトロン反応・フーリエ変換装置(Tesla ion cyclotron responce Fourier transform instrument (LTQ-FT, Thermo Finnigan, San Jose, CA)) で質量分析した。
線形イオントラップ及びフーリエ変換装置の操作と同時に行って、ICR細胞で先に行ったMSサーベイスキャンの間になされた測定に基づいて、線状イオントラップでの7つのデータによるMS/MSスキャンを収集する、トップセブン法(top-seven method)を用いた。MSスキャンは、8×106の自動利得制御(automatic gain control(AGC))標的、及び105の質量分解能で、375〜1800m/zで行った。MS/MSに対するAGCは8×106、動体排出速度は25s、そしてわずかに帯電したイオンを荷電状態スクリーニングで排除した。
データーベース分析及び割り当て
ペプチド配列を、TurboSequest ソフトウェア(v.27、rev.12)(ThermoFinnigan)及び複合順方向/逆方向IPIヒトタンパク質データベースを用いて、MS/MSスペクトルにアサインした。探索パラメーターは:プロテアーゼとしてトリプシン;1.08Daの前躯体の質量トレーランス;システイン上で静的修正(+57.02146、カルボキサミドメチル化);及びセリン、スレオニン及びチロシン(+79.96633Da、リン酸化)、リジン(+8.01420、13C615N2)、アルギニン(+6.02013、13C6)及びメチオニン(+15.99491、酸化)上で動的修正。ターゲット/デコイデータベース手法を、概算の偽陽性割り当て比が<1%となる、適切なスコア選別基準を確立するために用いた。割り当てには、電荷依存性のXCorr閾値(z=1、XCorr≧1.5、z=2に対して、XCorr≧2.2、z=3に対して、XCorr≧3.3)を上回ることに加えて、ホスホチロシンを含有すること、−5〜+25ppmの質量精度を有すること、及び全て軽(all-light)又は全て重(all-heavy)の形態の何れかのリジン/アルギニン残基を含有することを必要とした。
これらの基準をパスした割り当てを、ピーク面積そして最終的にそれぞれのペプチドの重形態及び軽形態の相対存在量を計算するために、カスタム定量化プログラム、Vista(Bakalarsky et al., manuscript in preparatin)を用いて更に評価した。MSスキャンにおいて信号対ノイズが15未満の同定したペプチドは、定量化について考慮しなかった。1つの状態にのみ見出されたこれらのペプチドについては、信号対ノイズ比を代わりに用いた。
動的修飾として酸化メチオニン(M+16)及びリン酸化(Y+80)が可能な27,175のタンパク質を含有している、2004年8月24日に公開されたNCBIヒトデータベースに対して検索を行った。割り当てられた配列(本明細書では示していない)の最終リストを支持する全てのスペクトルを、信頼性を確立するために、少なくとも3人の科学者によって再検討した。
上記のIAP分析で、試験した細胞株から、その大部分が新規な、2000を超える重複しないホスホチロシンを含有するペプチド、1,500を超えるホスホチロシン部位、及び1,000より多いチロシンリン酸化タンパク質を同定した(データは示されていない)。NSCLCのシグナル伝達に関わっていることが知られている受容体チロシンキナーゼが、EGFR、Her2、Her3、EphA2及びMetのような、多くの細胞株中で、リン酸化されたチロシンとして観察された。増幅されたレベルのEGFRの遺伝的に活性化された形態を発現することが知られいる2つの細胞株、HCC827及びH3255を含む、幾つかの細胞株中に高いレベルのEGFRホスホペプチドが観察されて、この方法が、NSCLC細胞株中で活性化されることが知られている受容体チロシンキナーゼを同定することが確認された。
3つの細胞株が、他のNSCLC細胞株では観察されなかった受容体チロシンキナーゼを発現した。Ros、ALK、及びPDGFRα由来の大量のチロシンリン酸化ペプチドが、それぞれ、HCC78、H2228、及びH1703細胞株中に観察された。ALKを高度に発現する、NSCLC細胞株H2228を、更なる実験のために選択した。
B.ヒトNSCLC腫瘍試料のプロファイリング
上記のA欄に詳細に記述したように、IAP技術を引き続いてNSCLC患者由来の154のヒト腫瘍試料群の総括的リン-プロファイルを試験するために適用した。組織を、Second Xiangya Hospital,China から得た。
凍結した組織試料を小片に切断し、溶解緩衝液(20mMのHEPES(pH8.0)、9Mの尿素、1mNのバナジウム酸ナトリウム、2.5mMのピロリン酸ナトリウムで補完、1mMのβ−グリセリンリン酸、凍結組織100mg当たり溶解緩衝液1ml)中でポリトロンを用いて各回20秒で2回ホモジナイズした。次いで、ホモジネートを短時間超音波処理した。透明化した溶解物をDTTで還元して、既述のようにしてヨードアセトアミドでアルキル化した(Rush et al., Nat. Biotechnol. 23(1):94-101 (2005) を参照されたい)。次いで試料を20mMのHepesで4回希釈して尿素濃度を2Mに下げて、静かに撹拌しながら室温で1晩、トリプシンで消化させた。
消化したペプチドを既述のようにしてSep−Pak C18カラムで粗精製した(Rush et al., supra. を参照されたい)。溶出液を凍結乾燥させて、乾燥したペプチドを1.4mlのMOPS IP緩衝液(50mMのMOPS/NaOH、pH7.2、10mMのNa2PO4、50mMのNaCl)に溶解して、不溶性物質を遠心分離で除去した。プロテインGアガロースビーズ(Roch) に結合したホスホチロシン100抗体(Cell Signaling Technology) 160μgを用いて4℃で1晩免疫沈降を行った。冷所で、ビーズを1mlのMOPS IP緩衝液で3回、1mlのHPLC grade dH20で2回洗浄した。60μlの0.1%TFAでホスホペプチドをビーズから溶出した後、40μlの0.1%TFAで2回目の溶出を行ってこの画分を集めた。溶出したペプチドをZipTipカラム(Millipore)を用いて濃縮して、LC−MS/MSで分析した。マススペクトルをLTQイオントラップ質量分析器(ThermoFinnigan)で集めた。
ホスホペプチドの免疫沈降、続いてLC−MS/MS分光分析を上のA欄に記述のようにして実施した。データベース検索及び配列割り当ては、上のA欄に詳述したように実施したが、27,970のタンパク質を含有する2004年8月24日に公開されたNCBIヒトデータベースを用いた。
前記のIAP分析で、試験したヒト腫瘍試料由来の2000を超える重複しないホスホチロシンを含有するペプチド、1,500を超えるホスホチロシン部位、及び1,000より多いチロシンリン酸化タンパク質が同定された(データは示されていない)。NSCLCシグナル伝達に関わっていることが知られている受容体チロシンキナーゼが、EGFR、Her2、Her3、EphA2及びMetのような、多くの腫瘍中でリン酸化されたチロシンとして再度観察された。幾つかの腫瘍試料中で高いレベルのEGFRリン酸ポリペプチドが再度観察されて、この方法がNSCLC細胞株中で活性であることが知られている受容体チロシンキナーゼを同定することが確認された。
5つの患者試料が、他のNSCLC細胞株及び腫瘍中では観察されない受容体チロシンキナーゼを発現した。大量のALK由来チロシン−リン酸化ペプチドが、患者CS010/11、CS045、及びCS110中で観察された。ALKを高度に発現する、これらの3つの腫瘍を更なる実験のために選択した。
3つのALK融合遺伝子の単離及び配列決定
A.ヒトNSCLC細胞株中の配列決定
NSCLC細胞株H2228中でALKキナーゼの高いリン酸化レベルが検出されたことを考慮して、キメラALK転写物が存在するか否かを判定するために、ALKのキナーゼドメインをコードする配列のcDNA末端の5’迅速増幅を行った。
相補的DNA末端の迅速増幅
RNeasy Mini Kit(Quiagen)を、H2228細胞株からRNAを抽出するために用いた。DNAは DNeasy Tissue Kit(Quiagen)を用いて抽出した。cDNA末端の迅速増幅は、5’RACEシステム(Invitrogen)を、cDNA合成用のプライマーALK−GSP1及びネスト化PCR反応用のALK−GSP2及びALK−GSP3で用いて実施した。
5’RACE
図5Aは5’RACEによるEML4−ALK融合遺伝子(短い変異体)の検出及び第2ラウンド後のPCR増幅産物の検出を示している。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製して、ALK−GSP3及びABI3130キャピラリー自動DNAシーケンサー(Applied Biosystems)を用いて配列決定を行った。得られた産物の配列分析は、ALKのキナーゼドメイン及びC末端がEML−4遺伝子のN末端に融合したことを明らかにした(図1A-C、下の図を参照されたい)。EML4−ALK融合遺伝子(短い変異体)はフレーム単位であり、そしてEML−4の最初の233のアミノ酸をALKの終わりの562のアミノ酸と融合した(図1A-C、下の図を参照されたい)。EML−4及びALK遺伝子の両方は染色体2に位置しているので、融合遺伝子はこの2つの遺伝子座の間の遺伝子欠失によって創出された。
次のプライマーを用いた:
ALK−GSP1: 5’−GCAGTAGTTGGGGTTGTAGTC(配列番号9)
ALK−GSP2: 5’−GCGGAGCTTGCTCAGCTTGT(配列番号10)
ALK−GSP3: 5’−TGCAGCTCCTGGTGCTTCC(配列番号11)。
PCRアッセイ
EML−4のN末端が融合タンパク質中に無傷で存在しているかを確認するためにRT−PCR分析を実施した(図6を参照されたい)。cDNAの第1鎖を、SuperScript(登録商標)III 第1鎖合成システム(Invitrogen)をオリゴ(dT)20で用いて2.5mgの全RNAから合成した。次いで、EML4−ALK融合遺伝子をEML−AtgとALK−GSP3のプライマー対を用いて増幅した。EML−4−43とALK−GSP3、及びEML−4−94とALK−GSP3、及びEML−4−202とALK−GSP3のプライマー対を用いて相互融合を検出した。ゲノムPCRについて、Platinum Taq DNAポリメラーゼハイファイ(Invitrogen)を用いて、EML−4atgとALK−tgaのプライマー対で融合遺伝子の増幅を実施した。
次のプライマーを用いた:
ALK−GSP3: 5’−TGCAGCTCCTGGTGCTTCC(配列番号12)
EML4−Atg: 5’−CGCAAGATGGACGGTTTGGC(配列番号13)
EML4−43: 5’−TGTTCAAGATCGCCTGTCAGCTCT(配列番号14)
EML4−94: 5’−TGAAATCACTGTGCTAAAGGCGGC(配列番号15)
EML4−202: 5’−AAGCCCTCGAGCAGTTATTCCCAT(配列番号16)
ALK−Tga: 5’−GAATTCCGCCGAGCTCAGGGCCCAG(配列番号17)。
注目すべきことは、EML4−ALK融合体(短い変異体)において、ALCLで起こるNPM−ALK融合体のような、他のALK融合体で観察されているALKの全く同じ位置でALK部分がEML−4部分と融合するということである。H2228細胞株中のALKのキナーゼドメインは更にゲノムDNAから配列決定を行い、野生型であることを見いだした。従って、H2228中に見出した欠失変異は、ALKキナーゼドメインに影響を及ぼさないものである。更に、野生型のEML−4は、EML4−ALK融合タンパク質(短い変異体)に存在していない部位でのみチロシンがリン酸化されていて、融合タンパク質中で保存されているN末端コイルドコイルドメイン(図1Aを参照されたい)がALKを二量化及び活性化する機能を、更には野生型ALKとの相互作用を促進する機能を果たす可能性があることを示唆している。
B.ヒトNSCLC細胞株中の配列決定
同様に、患者CS010/11、CS045、及びCS110由来のヒトNSCLC腫瘍試料中で高いリン酸化レベルのALKキナーゼが検出されたことを考慮して、キメラALK転写物がこれらの腫瘍中に存在したか否かを判定するために、ALKのキナーゼドメインをコードする配列のcDNA末端の5’迅速増幅を行った。
相補的DNA末端及び5’RACEの迅速増幅を、上のA欄の詳述のように、cDNA合成用のプライマーALK−GSP1及びネスト化PCR反応用のALK−GSP2及びALK−GSP3を用いて実施した。
図5Cは、2つの患者試料中の5’RACEによるEML4−ALK融合遺伝子(短い変異体及び長い変異体の両方)の検出、及び1人の患者におけるTFG−ALK融合遺伝子の検出、及び第2ラウンド後のPCR増幅産物の検出を示している。PCR産物は、上のA欄に詳述するように、精製して配列決定を行った。得られた産物の配列分析は、ALKのキナーゼドメイン及びC末端が、2つの異なった変異体のEML−4遺伝子のN末端に融合したことを明らかにした(図1A−1B、下の図を参照されたい)。EML4−ALK融合遺伝子はフレーム単位であり、そしてEML−4の最初の233のアミノ酸(短い変異体)又は最初の495のアミノ酸(長い変異体)はALKの終わりの562のアミノ酸と融合した(図1A−1B、下の図を参照されたい)。EML−4及びALK遺伝子の両方は染色体2に位置しているので、融合遺伝子はこの2つの遺伝子座の間の遺伝子欠失によって創出された。患者CS045中での融合遺伝子(短い変異体)の観察は、ヒト細胞株H2228でこの突然変異遺伝子の発見を裏付けるものであった。
TFG−ALK融合遺伝子もフレーム単位であって、TFGの最初の138のアミノ酸がALKの終わりの562のアミノ酸と融合した(図1C、下の図を参照されたい)。TFG及びALK遺伝子は異なった染色体(それぞれ染色体6及び2)に位置しているので、融合遺伝子はこの2つの遺伝子座の間での遺伝子転座によって創出された。興味深いことに、TFGのALKとの融合が、2つのEML4−ALK変異体の融合について観察されたALKの全く同じ位置で生じていて、固形腫瘍中のこの位置でのALKの切断が頻繁に起きている可能性があることを示唆している。
上のA欄に記述のものと同じプライマーを用いた。RT−PCR分析を、上のA欄に詳述のように実施して、EML−4及びTFGのN末端が融合タンパク質中に無傷で存在していることを確認した(図6を参照されたい)。EML−4及びALK用のプライマー対は上のA欄に記述の通りであり、次のプライマー対をTFGに用いた。
TFG−F1:5’−TTTGTTAATGGCCAGCCAAGACCC−3(配列番号28)。
注目すべきことは、両方のEML4−ALK融合突然変異体において、ALCLで起こるNPM−ALK融合体のような、他のALK融合体で観察されているALKの全く同じ位置でALK部分がEML−4部分と融合するということである。更に、野生型のEML−4は、EML4−ALK融合タンパク質に存在していない部位でのみチロシンがリン酸化されていて、融合タンパク質中で保存されているN末端コイルドコイルドメイン(図1A−1Bを参照されたい)がALKを二量化及び活性化する機能を、更には野生型ALKとの相互作用を促進する機能を果たす可能性があることを示唆している。また注目すべきことには、TG部分のALKとの融合もALKの全く同じ位置で生じていて、確かにこの位置でのTFGのALKとの融合について、ヒトリンパ腫においては記述されている(Hernandez et al. (2002), Supra. を参照されたい)が、NSCLCのような、ヒト固形腫瘍においてはこれまで記述されていなかった。
siRNAを用いるALK融合体を発現する哺乳類固形腫瘍の生育阻害
ALKの切断/融合形態がNSCLC細胞株H2228、更に患者CS010/11、CS045、及びCA110由来のNSCLC腫瘍試料における、細胞の生育及び生存を促進していることを確認するために、これらの細胞及び腫瘍の生育を阻害するsiRNAの(ALKに対する)能力を試験することができる。
ALKのSMARTプールsiRNA二本鎖(優先的標的配列−データは示されていない)は例えば Dharmacon Research, Inc. (Lafayette, CO)から入手できる。非特異的なSMARTプールsiRNAをコントロールとして用いる。細胞を電気穿孔法によってsiRNAでトランスフェクトする。すなわち、2×107の細胞(H2228)に、方形波エレクトロポレーター(BTX Genetronics San Diego, CA)を用いて1回パルス(20ms;275V、K562 20ms;285V)を与え、室温で30分間培養して、30mlのRPMI−1640/10%FBSを用いてT150フラスコに移す。
生存している細胞の数を、CellTiter 96 AQueous One solution 細胞増殖アッセイ(Promega)で測定する。IC50を OriginPro 6.1 ソフトウェア(OriginLab) を用いて計算する。48時間におけるアポトーシス細胞の割合を Cleaved-Caspase-3 (Cell Signalling Technolgy) のフローサイトメトリー分析で測定できる。
イムノブロット分析は、H2228細胞又は患者CS010/11、CS045、及びCS110由来の腫瘍細胞へのsiRNAのトランスフェクション後72時間で、ALKの発現が特異的且つ有意に減少することを明らかにするだろう。ALKの発現低下が細胞の生育の強力な阻害をもたらすことが期待される。ALK siRNAによる処置も、これらの固形腫瘍細胞のアポトーシスの増加をもたらすことが期待される。これらの結果は更に、H2228細胞株及び患者の腫瘍にある、突然変異/融合ALKキナーゼがこれらのNSCLC細胞の増殖及び生育を促進していて、そのような生育及び増殖が、siRNAを用いてALKキナーゼの発現及び活性を阻害することによって阻止できるということを示唆するだろう。
WI−131及び/又はWI−154を用いるALK融合体を発現する哺乳類固形腫瘍の生育阻害
突然変異ALK融合タンパク質がNSCLC細胞株H2228及び患者CS010/11、CS045、及びCS110由来のNSCLC腫瘍株の生育及び生存を促進していることを更に確認するために、WI−131及び/又はWI−154のようなALKキナーゼの標的阻害剤で細胞を処理してもよい。WI−131及びWI−154はキナゾリンタイプのALKキナーゼの小分子阻害剤であって、T細胞リンパ腫においてNPM−ALK融合タンパク質に対するそれらの活性については記述されている。Marzec et al., supra. を参照されたい。
すなわち、NSCLC細胞を培養して、CellTiter 96 AQueous One solution 細胞増殖アッセイ(Promega)で、製造会社の提示に従って細胞生育阻害アッセイを実施する。すなわち、1000〜5000の細胞を平底96ウェルのプレート上に蒔種して、10%FBSを含む完全培地中で生育する。24時間後に、細胞の培地を各種濃度の薬剤を含有する10%のFBSを含む100μlの完全生育培地に換えて、細胞を更に72時間培養する。それぞれの薬剤濃度を3通りの細胞のウェルに適用させる。培養の終期に20μlのCellTiter 96 AQueous One solution を各ウェルに添加して、プレートを1〜4時間培養する。Titan Multiskan Ascentマイクロプレートリーダー (Titertek Instrument) を用いて、490nmで吸光度を読み取る。生育阻害を処置細胞対未処置細胞から読み取った吸光度のパーセントの平均±SD値で表すことができる。
このような分析により、ALK融合タンパク質(EML4−ALK(短い変異体及び長い変異体)、TFG−ALK)が、これらの突然変異タンパク質が発現しているヒトNSCLC腫瘍のサブセットの生育及び生存を促進していること、及びWI−131及び/又はWI−154のような、標的阻害剤を用いて融合ALKキナーゼの活性を阻害することによってそのような細胞を阻害できることを確認できると期待される。
ALK融合タンパク質は形質転換した哺乳類細胞株の生育及び生存を促進する
1つ又はそれ以上のALK融合タンパク質の発現が正常細胞を癌表現型に転換できるかを確認するために、3T#細胞を、EML4−ALK(短い変異体及び長い変異体)又はTFG−ALK融合タンパク質をそれぞれ発現する、上記(実施例2)のcDNA構築物で形質転換してもよい。
すなわち、細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)(Sigma) 及び1.0ng/mlのIL−3(R&D Systems)を含むRPMI−1640培地(Invitogen) 中に保持する。レトロウィルス上清の産生及び形質導入を既述のようにして実施する。Schwaller et al., Embo J. 17(18):5321-33 (1988) を参照されたい。3T3細胞をMSCV−Neo/EML4−ALK(又はTFG−ALK)ベクターを含有するレトロウィルス上清を用いて形質導入して、G418(1mg/ml)用に選択した。次いで、形質転換された細胞の軟寒天上での生育能力は、細胞をPBS中で3回洗浄した後、形質導入細胞をプレートに蒔いて評価した。所望により、用量反応曲線用に、上記(実施例3を参照されたい)のようにしてALKに対してsiRNAを用いて処理して、生存している細胞の数を、CellTiter 96 AQueous One solution 細胞増殖アッセイ(Promega)で測定する。IC50を OriginPro 6.1 ソフトウェア(OriginLab) を用いて計算することができる。48時間におけるアポトーシス細胞の割合を、この標的に対して特異的な抗体を用いて、Cleaved-Caspase-3 (Cell Signaling Technology) のフローサイトメトリー分析で測定できる。このような分析により、EML4−ALK融合タンパク質(短い変異体又は長い変異体)又はTFG−ALK融合タンパク質の発現が、3T3細胞を形質転換して、これらの細胞がこのALK融合タンパク質により促進される場合に軟寒天上での生存及び生育を確認できること、更に形質転換細胞におけるALK発現の阻害が生存能力を減少させ及びアポトーシスを増加させるということが示されるだろう。
FISHアッセイを用いる、ヒト固形腫瘍におけるEML4−ALK融合タンパク質発現の検出
ヒトNSCLC腫瘍試料中のEML4−ALK融合タンパク質(短い変異体)の存在を、既述のようにして、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイを用いて検出した。例えば、Verma et al. HUMAN CHROMOSOMES: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUES, Pergamon Press, New York, N.Y. (1988) を参照されたい。200を超えるパラフィン包埋ヒトNSCLC腫瘍試料を試験した。
ALKの2色分解再配列プローブ(dual color, break-apart rearrangement probe)を Vysis (Vysis, Dowers Grove, IL, USA)から入手して、以下の修飾を加えて製造会社の使用説明書に従って使用した。すなわち、パラフィン包埋組織切片を再水和して、0.01Mのクエン酸緩衝液(pH6.0)中で11分間、超音波による抗原回復を行った。切片をプロテアーゼ(4mg/mlのペプシン、2000〜3000U/mg)を用いて37℃で25分間消化し、脱水して、FISHプローブセットを用いて37℃で18時間ハイブリダイズした。洗浄後、ベクタシールド(Vectashield)封入培地中の4’,6−ジアミジノ−2−フェニルリンドール(DAPI;mg/ml)を核対比染色のために適用した。
ALKの再配列プローブは、野生型配列(配列番号6)中のALK遺伝子の切断点(ヌクレオチド3171での)の対側に2つの異なった標識化プローブを含有している。ハイブリダイズすると、元のALK領域は橙色/緑色の融合シグナルとして示され、一方この遺伝子座における再配列は(EML4−ALK欠失変異体中で起きる場合)分離した橙色と緑色のシグナルをもたらすであろう。図6を参照されたい。
このFISH分析により、検討した試料群におけるこの短い型のEML4−ALK突然変異の比較的低い発生率が明らかになった(229試料中の1つ)。しかしながら、世界規模のNSCLCの高い発生率(年間に米国だけで、151,000人を越える新症例)を考慮すると、この突然変異体ALKを担持している有意な数の患者がいることが見込まれ、この患者はALKを阻害する治療計画による恩恵を受けることができる。
PCRアッセイを用いる、ヒト固形腫瘍におけるALK融合タンパク質発現の検出
ヒト固形腫瘍試料中の1つ又はそれ以上のALK融合タンパク質の存在は、既述のように、ゲノム又は逆転写酵素(RT)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の何れかを用いても検出することができる。例えば、Cools et al., N. Engl. J. Med. 348:1201-12014 (2003) を参照されたい。つまり例を挙げると、標準的な技術を用いて、例えばNSCLCを有する患者から固形腫瘍試料を得てもよい。切断されたALKキナーゼ又はEML4−ALK融合タンパク質(短い変異体又は長い変異体)又はTFG−ALK融合タンパク質に対するPCRプローブを構築する。RNeasy Mini Kit(Qiagen)を、腫瘍試料からRNAを抽出するために用いてもよい。DNAは 、DNeasy Tissue Kit (Quiagen)を用いて抽出してもよい。RT−PCRについては、第1鎖は、例えば、SuperScript(登録商標)III 第1鎖合成システム(Invitrogen)をオリゴ(dT)20で用いて、例えば2.5μgの全RNAから合成される。
次いで、プライマー対、例えばEML4−202及びALK−GSP3(上の実施例2を参照されたい)を用いて、ALK融合遺伝子を増幅する。ゲノムPCRについては、融合遺伝子の増幅は、Platinum TaqDNAポリメラーゼハイファイ(Invitrogen)を用いて、プライマー対、例えばEML4−202とALK−GSP3(上の実施例2を参照されたい)で実施することができる。このような分析により、切断されたALKキナーゼ(及び/又はEML4−ALK融合タンパク質(複数も含む)又はTFG−ALK融合タンパク質)の発現によって特徴付けられる固形腫瘍を有する患者が同定されるであろう。この患者が、WHI−131及び/又はWHI−154のような、ALKを阻害する治療薬を用いる治療の候補者である。