以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る核融合炉用ブランケット、ブランケット支持構造、筐体壁内冷却水流路の形成方法、ブランケットモジュール組み立て方法およびブランケット支持構造組み立て方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る核融合炉の真空容器周りのコイルの概念的な構成を示す鳥瞰図である。
トカマク型の核融合炉10においては、ドーナツ状で、長手方向に垂直な断面の形状がほぼD字形の形状の真空容器11が設けられている。以下、真空容器11の長手方向に沿った円を大円、真空容器11のドーナツの中心軸CLを含む平面で切った真空容器11の断面まわりの想定上の円を小円と呼ぶこととする。
真空容器11の外側には、超電導コイルが設けられており、全体がクライオスタット(図示せず)内に収容され、超電導コイルは低温状態に維持される。超電導コイルとしては、真空容器11の外側の空間に、トロイダルコイル12、ポロイダルコイル(図示せず)およびセンターソレノイドコイル(図示せず)が設けられている。センターソレノイドコイルは、真空容器11のドーナツの中心の空間に設けられている。なお、これらのコイルは超電導コイルには限定されない。
トロイダルコイル12は、真空容器11の長手方向に沿って互いに間隔をあけて複数が配置されている。複数のトロイダルコイル12のそれぞれは、小円を囲むように配されている。それぞれのトロイダルコイル12においては、真空容器11の長手方向の一方向に関して、互いに同一方向の電流が流れるように構成されている。
また、ポロイダルコイルは、真空容器11の長手方向に沿って、すなわち大円と同心に、複数本が、小円まわりに互いに間隔をあけて配されている。プラズマ電流13bについては後述する。
図2は、第1の実施形態に係る核融合炉の真空容器内の磁場を説明する概念的な鳥瞰図であり、(a)はトロイダル磁場、(b)はポロイダル磁場、(c)は全体合成磁場を示す。
(a)に示すトロイダル磁場12aは、設置されている複数のトロイダルコイル12によって形成される磁場の合成磁場である。トロイダル磁場12aは、真空容器11内で真空容器11の長手方向すなわち、大円の方向に沿って形成される。このトロイダル磁場12aの方向を、以下、トロイダル方向と呼び、磁場の外側の領域についても使用することとする。
(b)に示すポロイダル磁場13aは、プラズマ内に誘導されるプラズマ電流13bによって形成される磁場の合成磁場である。ポロイダル磁場13aは、真空容器11内で真空容器11の小円の方向に沿って形成される。このポロイダル磁場13aの方向を、以下、ポロイダル方向と呼び、磁場の外側の領域についても使用することとする。
(c)に示す全体合成磁場14は、トロイダル磁場12a、およびポロイダル磁場13aの全体合成磁場である。この全体合成磁場14は、プラズマの中心軸に向かうような捻じれた磁場である。この結果、核融合プラズマの閉じ込めが可能となる。
図3は、第1の実施形態に係る核融合炉の構成を示す図4のIII−III線矢視部分立断面図である。また、図4は、図3のIV−IV線矢視水平断面図である。なお、核融合プラズマ18は、核融合炉10が運転状態の場合に、真空容器11内に存在する核融合プラズマを示している。なお、図3および図4では、真空容器11の外側に設けられているトロイダルコイル12、ポロイダルコイル13、およびこれらを収納するクライオスタット等の図示は省略している。
図3および図4に示す座標軸は、真空容器11のドーナツの中心軸CLの方向を座標軸Z、ドーナツの径方向を座標軸X、トロイダル方向を座標軸Yとしている。
核融合炉10では、重水素とトリチウムを含む混合燃料を真空容器11の内部でブラズマ化する。発生した高温の核融合プラズマ18は、前記のようにトロイダルコイル12およびポロイダルコイル13などによる全体合成磁場14によって、真空容器11の内部に保持される。核融合プラズマ18の内部では、重水素とトリチウムの核融合反応が発生し、ヘリウムと中性子が生成される。
ポロイダルコイル13の鉛直方向の下方には、図示しないダイバータコイルが設けられており、ダイバータコイルによる磁場とポロイダル磁場13aが重なった結果、ポロイダル磁場13aがゼロとなるヌル点およびヌル点を含む磁力面であるプラズマ境界が生成される。プラズマ境界の外側では、磁力線が内部にとどまることはなく、このため、プラズマ境界の外側の領域に存在するプラズマ粒子は、プラズマ境界に沿って流出する。この粒子および熱的エネルギーを真空容器11の内部で捕獲するために、ダイバータ16が設けられている。ダイバータ16は、核融合反応により生じたヘリウム等の排気を行うとともに、ダイバータ16に流れてきた熱エネルギーの排出・回収を行う。
真空容器11の内側には、ダイバータ16の他に、図示していないが、核融合プラズマ18にエネルギーを付与するための電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH:Electron Cyclotron Heating)装置や、プラズマ中に高エネルギー粒子を注入する中性粒子ビーム入射加熱(NBI:Neutral Beam Injection heating)装置などの一部も、設けられている。
真空容器11内のダイバータ16、ECH、およびNBIなどが設けられていない領域では、真空容器11の内面に沿って、核融合プラズマ18を囲むように核融合炉用ブランケット15が設けられている。核融合炉用ブランケット15は、複数のブランケットモジュール100およびこれらを支持するブランケット支持構造140を有する。ブランケットモジュール100は、後述するように、円柱状に延びた収納部110を有する(図6、図7)。ブランケット支持構造140は、真空容器11から、直接的にまたは間接的に支持構造(図示せず)を介して支持される。
図3および図4に示すように、それぞれのブランケットモジュール100は、収納部110の側面を核融合プラズマ18に対向させるように配列されている。具体的には、それぞれのブランケットモジュール100は、その収納部110の軸がポロイダル方向となるように、核融合プラズマ18の周囲を囲んで配置されている。
図5は、ブランケットモジュールの配置を説明する部分水平断面図であり、図4のA部の詳細を示している。それぞれのブランケットモジュール100の円筒状の収納部110は、核融合プラズマ18に対向するように列をなして配列されている。また、列は、図5に示すように、核融合プラズマ18に最も近い第1列、核融合プラズマ18から見て第1列より奥、すなわち、真空容器11に近い方向に、順に第2列および第3列と、複数の列が形成されている。
互いに隣接する列を形成するそれぞれのブランケットモジュール100の位置関係は、以下のように設定されている。
今、第1列内で、互いに隣接する2つのブランケットモジュール100をそれぞれ、M1およびM2とする。また、第1列に隣接する第2列のうち、M1とM2に最も近いブランケットモジュール100をM3とする。この場合、M1の内部およびM2の内部を通過せずに、M1とM2の間を通過する方向を方向D1とする。この方向D1は、核融合プラズマ18からみて、M1とM2の間から、その後ろすなわちM3が最も見える方向でもある。このとき、M3の位置は、D1の延長線がその内部を通過するような位置に配置されている。なお、M3は、その中心がD1の延長線上の近傍の位置にあるような場合が最も好ましい。第2列を構成するブランケットモジュール100と第3列を構成するブランケットモジュール100も同様の関係、すなわち、互いにそれぞれの列を構成するブランケットモジュール100の配置が、核融合プラズマ18からみて、塞いでいるように配置されている。
なお、列は、必ずしも複数列でなくともよい。但し、この場合は、真空容器11を核融合プラズマ18からの一次中性子を有効に利用し、放射線遮へいおよび熱的遮へいをするために必要な措置、たとえば、それぞれのブランケットモジュール100の筐体111(図6、7)の直径を大きくし、厚さを十分に確保するなどを行うものとする。
図6は、ブランケットモジュールの収納部の構成を示す図7のVI−VI線矢視断面図である。また、図7は、図6のVII−VII線矢視断面図である。
ブランケットモジュール100の収納部110は、円柱状の外形であり、円筒状で軸方向の両側が開放されている筐体111、および筐体111に内包される増殖材112および増倍材115を有する。
筐体111は、核融合プラズマ18から直視できる範囲のものは、第一壁、すなわち、核融合プラズマ18に直接対向する最初の壁となるため、少なくともこの範囲のものは、中性子照射を受ける第一壁であることを考慮した材料を使用する。第一壁の材料としては、たとえば、特別に成分調整された低放射化フェライト鋼(例えば、F82H)、バナジウム合金、あるいはSiC/SiC複合材などがある。
筐体111の壁内には、収納部内冷却水流路として、互いに周方向に間隔をあけて配され軸方向に貫通する複数の筐体壁内冷却水流路111aが形成されている。筐体壁内冷却水流路111aの断面の形状は、たとえば図6に示すように円形であるが、これ以外の、たとえば、楕円形状あるいは多角形の形状等であってもよい。
増殖材112は、核融合反応の燃料であるトリチウムを生成するための原料であり、リチウムを用いる。リチウムからトリチウム(3H)を生成する主たる核反応は、以下の式(1)で表される。
6Li + 1n → 3H + 4He + 4.8MeV ・・・(1)
式(1)の反応は、熱中性子領域で反応断面積が大きくなる。
リチウムは、たとえば、チタン酸リチウム(Li2TiO3)あるいは酸化リチウム(Li2O)などを用いることができる。また、リチウムは、天然には、6Liと7Liとがあるので、6Liを濃縮したものを使用してもよい。
増倍材115は、トリチウム生成の反応に必要な中性子の量を確保するために、核融合反応により生成される1次中性子から核反応により2次中性子を生成する、すなわち中性子を増倍するための原料である。材料としては、(n,2n)反応の反応断面積が起きく、融点が高くかつ熱伝導率が大きなベリリウム(Be)を用いる。Beの主な反応は以下の式(2)で表される。
9Be + 1n → 24He + 21n − 2.5MeV ・・・(2)
式(2)の反応は、高速中性子領域で反応断面積が大きくなる。
ベリリウムとしては、たとえば、ベリリウム金属あるいはベリチタン(Be12Ti)などを用いることができる。
式(1)ないし式(2)に示すように、リチウムからトリチウム(3H)を生成する主たる核反応、およびベリリウムを用いて中性子を増倍する反応のいずれにおいても、ヘリウムが生成される。ヘリウムガスにより材料の膨張が生ずるため、増殖材112および増倍材115は、ペブルとよばれる直径1ないし2mmの小球の形態で使用する。ペブルは、多孔体であり、前記の反応により内部で発生したヘリウムおよびトリチウムは、たとえば、ヘリウムなどの搬送ガスを流すことにより、流出させ、トリチウムを回収することができる。
筐体111の内部には、それぞれベプル状にした増殖材112および増倍材115を混合して収納する。
図8は、第1の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールのヘッダの構成を示す鳥瞰図である。それぞれのブランケットモジュール100において、円柱状の収納部110の軸方向の両端のそれぞれには、両端を閉止するように第1ヘッダユニット120aおよび第2ヘッダユニット120bが設けられている。第1ヘッダユニット120aと第2ヘッダユニット120bは、それぞれ主要部は基本的に互いに同一の構成および形状である。ただし、入口側、出口側のそれぞれの条件に基づいて、部分的には互いに異なる構造としてもよい。また、主要部の寸法も互いに異なるものでもよい。以降、第1ヘッダユニット120aと第2ヘッダユニット120bを総称してヘッダと呼ぶこととする。
ヘッダは、図8に示すように、内側ヘッダ121と外側ヘッダ125とを有する。内側ヘッダ121と外側ヘッダ125は、それぞれ外形が円筒状であり、互いに同一の外径を有する。
内側ヘッダ121は、内側ヘッダ外胴121a、内側ヘッダ内胴121bおよび内側ヘッダ端板121cを有する。内側ヘッダ内胴121bと内側ヘッダ外胴121aとは、互いに同心に配され、内側ヘッダ内胴121bと内側ヘッダ外胴121aとに挟まれたアニュラス領域の一方の端部は、内側ヘッダ端板121cによって閉止されている。また、内側ヘッダ内胴121bと内側ヘッダ外胴121aそれぞれの他方の端部は、軸方向に同一の位置、すなわち、仮想的な同一平面上にあり、アニュラス領域のこの位置において内側開口121eを形成する。
内側ヘッダ外胴121aには、2つの外側開口121dが形成されている。なお、外側開口121dの数は、1つあるいは3つ以上でもよい。また、外側開口121dの形状は、円形、楕円形あるいは多角形でもよい。内側ヘッダ121内の内部空間121fは、外側開口121dと内側開口121eのみを開口部としている。
外側ヘッダ125は、円筒状の外側ヘッダ外胴125aと、円筒の一方の端部を閉止するように設けられた外側ヘッダ端板125bとを有する。外側ヘッダ外胴125aには、2つの外側開口125cが形成されている。なお、外側開口125cの数は、1つあるいは3つ以上でもよい。また、外側開口125cの形状は、円形、楕円形あるいは多角形でもよい。円筒の他方の端部は、内側開口125dを形成する。外側ヘッダ125内の内部空間125eは、外側開口125cと内側開口125dのみを開口部としている。
図9は、第1の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの収納部とヘッダとの組立て手順の各ステップの状態を示す状態移行図であり、(a)は組立前、(b)は収納部と内側ヘッダとの接続後、(c)は内側ヘッダと外側ヘッダとの接続後の状態を示す。
まず、図9(a)に示すように、壁内に筐体壁内冷却水流路111aが形成された円筒状の筐体111を有する収納部110の軸方向の片側に、内側ヘッダ121を収納部110に軸中心を合わせて軸方向に配列する。
内側ヘッダ121は、リング状であって、周辺部には、外側開口121dおよび筐体壁内冷却水流路111aに対応する内側開口121eが形成され、中央部には、軸方向の両側に開放された中央空間121gを有する。詳細には、内側ヘッダ121を、内側ヘッダ121の内側開口121eが収納部110の側を向くように配列する。
また、円筒形であって外側開口125cおよび軸方向の片側が開放された内側開口125dを有する外側ヘッダ125を、その内側開口125dが内側ヘッダ121の内側ヘッダ端板121c側に向くような向きに設定する。なお、外側ヘッダ125の設定は、その内側ヘッダ121への接合直前でもよい。
次に、図9(b)に示すように、内側ヘッダ121を収納部110と接続する。具体的には、収納部110の一方の軸方向の端部に内側ヘッダ121を隣接させる。ここで、隣接させるとは、両者を密着させるか、あるいは、溶接あるいはロー付のための所定の間隙を確保する位置関係に設定することをいうものとする。収納部110に内側ヘッダ121を隣接させた後に、筐体111の径方向外側と内側ヘッダ121の対向部分が隣接するW1部を外側から密に接合する。ここで密に接合とは、溶接あるいはロー付けによりシール性能を確保するように接合することをいうものとする。また、筐体111の径方向内側と内側ヘッダ121の対向部分が隣接するW2部を内側から密に接合する。
この結果、内側ヘッダ121の内部空間121fは、収納部110の筐体壁内冷却水流路111aと連通する。また、内側ヘッダ121の中央空間121gは、収納部110の収納空間111bと連通する。
次に、図9(c)に示すように、外側ヘッダ125を内側ヘッダ121に隣接させ、内側ヘッダ121の径方向外側と外側ヘッダ125の径方向外側が隣接するW3部を外側から密に接合する。この結果、外側ヘッダ125の内部空間125eは、内側ヘッダ121の中央空間121gと連通する。
図9では、収納部110の軸方向の片側のみの接続の手順の状態を示したが、これと軸方向に反対側の収納部110の端部についても、同様の手順で、ヘッダと結合することができる。
この結果、収納部110の筐体壁内冷却水流路111aは、両端のヘッダの内部空間121fと連通し、外側開口121dのみで外部と連通する密閉空間となる。また、収納部110の収納空間111bは、内側ヘッダ121の中央空間121gおよび外側ヘッダ125の内部空間125eと連通し、外側開口125cのみで外部と連通する密閉空間となる。
図10は、核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの構成およびブランケットモジュール内の流体の流れを示す軸方向に沿った断面図である。ブランケットモジュール100は、収納部110と、その入口側に設けられた入口側ヘッダユニット130aと、出口側に設けられた出口側ヘッダユニット130bとを有する。入口側ヘッダユニット130aと出口側ヘッダユニット130bはそれぞれ、図8で説明したヘッダユニットと同一の構造を有するが、入口側と出口側を区別し、流体の流れを明確にするために、以下、必要に応じて、それぞれに固有の名称および符号を付している。具体的には、以下のとおりである。
入口側ヘッダユニット130aは、第1ヘッダユニット120aに対応し、第1ヘッダユニット120aの内側ヘッダ121に対応する冷却水入口ヘッダ131、外側ヘッダ125に対応するガス入口ヘッダ132を有する。
冷却水入口ヘッダ131は、外側開口121cに対応する冷却水入口外部開口131aを有し、また、冷却水入口内部開口131bで、収納部110の筐体111に形成された複数の筐体壁内冷却水流路111aと連通している。ガス入口ヘッダ132は、外側開口121cに対応するガス入口外部開口132aを有し、ガス入口内部開口132bで、冷却水入口ヘッダ131の中央空間を介して、収納部110の収納空間111bと連通している。
また、冷却水入口ヘッダ131の中央空間121gおよびガス入口ヘッダ132の内部空間125eにも、増殖材112および増倍材115のペブルが充填されている。冷却水出口ヘッダ133およびガス出口ヘッダ134についても同様である。前記のぺブルは、外側開口125cから充填を行い、充填後はメッシュ等で開口を仕切ることにより保持することができる。
出口側ヘッダユニット130bは、第2ヘッダユニット120bに対応し、第2ヘッダユニット120bの内側ヘッダ121に対応する冷却水出口ヘッダ133、外側ヘッダ125に対応するガス出口ヘッダ134を有する。
冷却水出口ヘッダ133は、外側開口125cに対応する冷却水出口外部開口133bを有し、また、冷却水出口内部開口133aで、収納部110の筐体111に形成された複数の筐体壁内冷却水流路111aと連通している。ガス出口ヘッダ134は、外側開口125cに対応するガス出口外部開口134bを有し、ガス出口内部開口134aで、冷却水出口ヘッダ133の中央空間を介して、収納部110の収納空間111bと連通している。
以上のように、第1ヘッダユニット120aに対応する入口側ヘッダユニット130aおよび第2ヘッダユニット120bに対応する出口側ヘッダユニット130bにおいて、冷却水用ヘッダ、すなわち冷却水入口ヘッダ131および冷却水出口ヘッダ133のそれぞれが、収納部110内の収納部内冷却水流路である筐体壁内冷却水流路111aと連通することにより、ヘッダ内冷却水流路が形成される。また、入口側ヘッダユニット130aおよび出口側ヘッダユニット130bはそれぞれ、外部との冷却水連通口である冷却水入口外部開口131aおよび冷却水出口外部開口133bを有している。
また、以上のように、ガス用ヘッダ、すなわちガス入口ヘッダ132およびガス出口ヘッダ134のそれぞれは、収納部110の増殖材112および増倍材115が配されている収納空間111bと連通する。またガス用ヘッダには、ヘッダ内ガス流路が形成され、外部とのガス連通口であるガス入口外部開口132aあるいはガス出口外部開口134bを有している。
収納部110の収納空間111b内には、増殖材112および増倍材115が充填されている。また、冷却水入口ヘッダ131および冷却水出口ヘッダ133の中央空間121gと、ガス入口ヘッダ132およびガス出口ヘッダ134の内部空間125eにも、増殖材112および増倍材115が充填されている。これら収納空間等の空間は、前記のように、連通しており、搬送ガスおよび生成したトリチウムが通過可能に形成されている。なお、ペブルの保持は、たとえば、ガス入口外部開口132a、ガス出口外部開口134bをメッシュあるいは多孔板等で仕切ることにより可能である。
前述の式(1)で表される増殖材112と中性子との反応により生じたトリチウムおよびヘリウムと、前述の式(2)で表される増倍材115と中性子との反応により生じたヘリウムを回収あるいは除去するために、収納空間111b等の空間内に搬送ガスを流す。搬送ガスはたとえばヘリウムガスである。
ここで、ブランケットモジュール100のそれぞれが設置されている位置における核融合中性子の照射量およびエネルギースペクトルに応じて、円筒形状の筐体の板厚、筐体の直径、増殖材と増倍材の重量比の少なくともいずれかを変化させてもよい。
搬送ガスは、入口側ヘッダユニット130aのガス入口ヘッダ132に形成されたガス入口外部開口132aからガス入口ヘッダ132に流入し、冷却水入口ヘッダ131の中央空間を通過して、収納部110の収納空間111bに流入する。収納空間111bに流入した搬送ガスは、増殖材112および増倍材115それぞれのペブルを通過しながら、ペブル内で発生したトリチウムおよびヘリウムを伴い、収納空間111bから、冷却水出口ヘッダ133の中央空間に流入する。冷却水出口ヘッダ133の中央空間に流入した搬送ガスは、中央空間を通過して、ガス出口ヘッダ134に流入し、ガス出口ヘッダ134に形成されたガス出口外部開口134bから流出する。
一方、冷却水は、入口側ヘッダユニット130aの冷却水入口ヘッダ131に形成された冷却水入口外部開口131aから冷却水入口ヘッダ131の内部空間に流入し、冷却水入口ヘッダ131から、収納部110の筐体111に形成された複数の筐体壁内冷却水流路111aに流入する。筐体壁内冷却水流路111aに流入した冷却水は、冷却水出口ヘッダ133の内部空間に流入する。冷却水出口ヘッダ133の内部空間に流入した冷却水は、冷却水出口ヘッダ133に形成された冷却水出口外部開口133bから流出する。
図11は、第1の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの変形例の構成およびブランケットモジュール内の流体の流れを示す軸方向に沿った断面図である。この変形例は、収納部110の内部に冷却水配管を配置して冷却性能を高めた構成である。具体的には、ガス入口ヘッダ132の軸方向外側に別の冷却水入口ヘッダ135を設け、また、ガス出口ヘッダ134の軸方向外側に別の冷却水出口ヘッダ136を設ける。冷却水入口ヘッダ135には冷却水入口外部ヘッダ135aが形成され、冷却水出口ヘッダ136には冷却水出口外部開口136bが形成されている。また、増殖材112および増倍材115が充填されている領域を、軸方向に貫通し、冷却水入口ヘッダ135および冷却水出口ヘッダ136に連通する複数の冷却水配管137が設けられている。
いま、増殖材112および増倍材115として用いる材料の望ましい上限温度は、おおよそ、増殖材112としてのチタン酸リチウム(Li2TiO3)は900℃程度、酸化リチウム(Li2O)は800℃程度、増倍材としてのベリリウム金属は600℃程度である。このため、収納部110での発熱に対する冷却が重要である。本変形例においては、収納部110の筐体111の壁内部の筐体壁内冷却水流路111aへの冷却水の流路のみでは、内部の発熱の冷却が十分に確保できない場合でも、増殖材112および増倍材115を、上限温度を超えない状態に保持することができる。
図12は、ブランケット支持構造のブランケットユニットとの接続部を示す鳥瞰図である。
ブランケットモジュール100の入口側ヘッダユニット130aを支持する入口側支持ブロックユニット140aと、出口側ヘッダユニット130bを支持する出口側支持ブロックユニット140bとは、互いに同様の構成を有する構造体である。以下、入口側支持ブロックユニット140aと出口側支持ブロックユニット140bとを総称して、ブランケット支持構造140と呼ぶこととする。ブランケット支持構造140は、複数のブランケットモジュール100を支持する。
入口側支持ブロックユニット140aと出口側支持ブロックユニット140bはそれぞれ、内側ブロック141、外側ブロック142および中性子反射部材143を有する。
組立て状態では、内側ブロック141および外側ブロック142はそれぞれ、内部に内部空間141gおよび内部空間142dを有し、外形は平板状である。また、内側ブロック141のブランケットモジュール100側の面である内側平板141a(図13)の外側には、中性子反射部材143が設けられている。中性子反射部材143は、内側ブロック141の拡がり方向に平面状に拡がっており、ブランケットモジュール100との接続部分には、開口143aが形成されている。
内側ブロック141は、内側平板141aおよびこれに対向する外側平板141b(図13)とこれらを接続する側板141cを有する図12において上下、左右に拡がった箱状である。内側ブロック141は、さらに、内部空間141gと外部とを連通する外部ノズル141dおよび複数の内胴141eを有する。ただし、図12では1つのみを図示している(図14参照)。それぞれの内胴141eは、内側平板141aおよび外側平板141bの広がり方向の同じ位置に形成された開口間を接続している。内胴141eには、内側開口141fが形成されている。なお、内側平板141aおよび外側平板141b間にスペーサを設ける等の考慮をすれば、内胴141eは必ずしも設けなくともよい。
外側ブロック142は、外側平板142a(図13)と、外側平板142aの縁に接続する側板142bを有する図12において上下、左右に広がる受け皿状である。外側ブロック142は、さらに、内部空間142dと外部とを連通する外部ノズル142cを有する。
内側ブロック141の内側平板141aの外側に設けられた中性子反射部材143の材料は、たとえば、タングステン、あるいは黒鉛などを用いることができる。
図13は、ブランケットモジュールとブランケット支持構造の組立て手順の各ステップの状態を示す状態移行図である。
まず、図13の(a)に示すように、ブランケットモジュール100、中性子反射部材143、内側ブロック141および外側ブロック142を、仮置きする。内側ブロック141は、中空の矩形板状であって内側平板141aおよび外側平板141bそれぞれの中央に、ブランケットモジュール100のガス入口ヘッダ132(外側ヘッダ125に対応)および冷却水入口ヘッダ131(内側ヘッダ121に対応)が貫通する開口が形成されており、その内側ブロック141の内側平板141aをブランケットモジュール100方向に向けて配する。また、外側ブロック142は、その外側ブロック142の外側平板142aをブランケットモジュール100と反対方向に向けて配する。
次に、中性子反射部材143を、内側ブロック141の内側平板141aに接合する。なお、中性子反射部材143は、あらかじめ内側平板141aに接合されていてもよい。
次に、図13の(b)に示すように、中性子反射部材143が接合された内側ブロック141に、ブランケットモジュール100を挿入し、ブランケットモジュール100の冷却水入口ヘッダ131と内側ブロック141が軸方向に同じ位置になるように設定する。この状態で、冷却水入口ヘッダ131と内側ブロック141のそれぞれの収納部110側の対向する部分である溶接部W11における溶接を収納部110に近い外側から実施する。また、同様に、冷却水入口ヘッダ131と内側ブロック141のそれぞれの収納部110と逆側の対向する部分である溶接部W12において径方向の外側から密に接合を実施する。
次に、図(b)の状態で、円筒状の側板142bと外側平板142aを有し外側平板142aの反対側には内部開口が形成されている外側ブロック142を、図13の(c)に示すように、内側ブロック141に隣接、すなわち密着あるいは所定の間隙を設けた相対位置に配し、外側ブロック142の側板142bと内側ブロック141の側板141cが対向する部分である溶接部W13において外側から密に接合を実施する。
以上が、ブランケット支持構造140とブランケットモジュール100の入口側との接合の手順であり、ブランケットモジュール100の出口側とブランケット支持構造140との接合も同様の手順で実施できる。
なお、ブランケットモジュール100は、入口側ヘッダユニット130aと出口側ヘッダユニット130bは互いに同様の構成であり、また、入口側支持ブロックユニット140aと出口側支持ブロックユニット140bも互いに同様の構成を有することから、入口側と出口側の区別なく、組み立てることが可能であり、区別を要する場合に比べて、管理の負担が軽減され、また、人的ミスの生ずることがない。
図14は、第1の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケット支持構造を含むブランケットユニットの構成を示す鳥瞰図である。
ブランケットユニット200は、複数のブランケットモジュール100と、これらを支持するブランケット支持構造140を有する。ブランケット支持構造140は、入口側支持ブロックユニット140aおよび出口側支持ブロックユニット140bを有する。なお、図14では、3本のブランケットモジュール100が、1列に配列されている場合を示しているが、1列の本数は、さらに多くてもよい。また、2列、あるいは3列以上のブランケットモジュール100が、同一の入口側支持ブロックユニット140aおよび出口側支持ブロックユニット140bに支持されている場合でもよい。
入口側支持ブロックユニット140aは、内側ブロック141に対応する冷却水入口ブロック151、外側ブロック142に対応するガス入口ブロック152、および中性子反射部材143に対応する中性子反射部材153を有する。冷却水入口ブロック151は、外部ノズル141dに対応する冷却水入口ノズル151aを有し、またブランケットモジュール100が挿入される位置には冷却水入口内部開口151bが形成されている。なお、中性子反射部材153には、図示しない冷却配管が取り付けられている。ガス入口ブロック152は、外部ノズル142cに対応するガス入口ノズル152aを有する。
出口側支持ブロックユニット140bは、内側ブロック141に対応する冷却水出口ブロック154、外側ブロック142に対応するガス出口ブロック155、および中性子反射部材143に対応する中性子反射部材156を有する。冷却水出口ブロック154は、外部ノズル141dに対応する冷却水出口ノズル154bを有し、またブランケットモジュール100が挿入される位置には冷却水出口内部開口154aが形成されている。なお、中性子反射部材156には、図示しない冷却配管が取り付けられている。ガス出口ブロック155は、外部ノズル142cに対応するガス出口ノズル155aを有する。
搬送ガスは、ガス入口ブロック152のガス入口ノズル152aからガス入口ブロック152の内部空間に流入し、ガス入口ブロック152内に配されたそれぞれのブランケットモジュール100のガス入口ヘッダ132に形成されたガス入口外部開口132aから、ブランケットモジュール100のガス空間内を流れる。搬送ガスは、増殖材112および増倍材115それぞれのペブルを通過し、ペブル内で発生したトリチウムおよびヘリウムを伴いながら、ブランケットモジュール100のガス出口ヘッダ134に形成されたガス出口外部開口134bから流出する。ガス出口外部開口134bから流出した搬送ガスは、ガス出口ブロック155内に流入し、ガス出口ノズル155bから流出する。
冷却水は、冷却水入口ブロック151の冷却水入口ノズル151aから冷却水入口ブロック151の内部空間に流入し、冷却水入口ブロック151内に配されたそれぞれのブランケットモジュール100の冷却水入口ヘッダ131に形成された冷却水入口外部開口131aから、ブランケットモジュール100の冷却水流路内を流れる。冷却水は、さらに、ブランケットモジュール100の冷却水出口ヘッダ133に形成された冷却水出口外部開口133bから流出する。冷却水出口外部開口133bから流出した冷却水は、冷却水出口ブロック154内に流入し、冷却水出口ノズル154bから流出する。
なお、ここでは、それぞれのブランケットモジュール100が、入口側支持ブロックユニット140aおよび出口側支持ブロックユニット140bのそれぞれの広がり方向に対して垂直な方向で配列され、支持されている場合を例にとって説明したが、これに限定されない。たとえば、入口側支持ブロックユニット140aおよび出口側支持ブロックユニット140bの一方あるいは両方と、斜めに結合する場合でもよい。斜めに結合する場合は、さらに、それぞれのブランケットモジュール100において、収納部110が、入口側ヘッダユニット130aあるいは/または出口側ヘッダユニット130bと斜めに結合するようにしてもよい。
図15は、第1の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールとブランケット支持構造の組立て手順の変形例の各ステップの状態を示す状態移行図である。この変形例は、1つの入口側支持ブロックユニット140aあるいは出口側支持ブロックユニット140bが、その両側で、それぞれ複数のブランケットモジュール100を支持する場合の例を示している。
本変形例における手順は、図13で示した手順の(b)の状態、すなわち、内側ブロック141にそれぞれのブランケットモジュール100を挿入した状態までは同様である。本変形例においては、その後、外側ブロック142を別個に形成するのではなく、2つの内側ブロック141のそれぞれと、共通側板144とを、対向する部分W21およびW22でそれぞれ接合し、共通の外側ブロック142を形成する方式である。このように形成することにより、ブランケット支持構造140を隙間なく設置することができる。
図16は、第1の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの筐体の孔開け加工を示す概念的な説明図である。
まず、筐体111の一方の端部をドリル170にセットする(第1ステップ)。次に、ドリル170を用いて穿孔し、筐体壁内冷却水流路111aの半分強の長さの穴を形成する(第2ステップ)。次に反対側の端部をドリル170にセットし(第3ステップ)、ドリル170を用いて穿孔し(第4ステップ)、反対端からの半分強の長さの冷媒流路と連結させ、筐体111の壁内を貫通する筐体壁内冷却水流路111aを形成する(第5ステップ)。
ドリル170としてガンドリルを用いて約30cm程度の穿孔を行った場合、穿孔後のドリル先端部と入口部の孔中心の径方向位置の差を数mm以下に抑えることができる。したがって、長さ60cm程度までの筐体111はこの方法を用いて筐体壁内冷却水流路111aを形成することができる。
筐体壁内冷却水流路111aを筐体111の側壁内に形成する際、HIP(熱間等方圧加圧)、EB(電子ビーム溶接)などを用いる方法もあるが、中性子照射により接合面の材料特性が母材と比較して特異的に変化することも想定されることから、できるだけ接合プロセスを用いずに、前記のような方法を用いることが望ましい。
以上のように、本実施形態によれば、核融合炉用ブランケットおよびその支持構造について、構造的な健全性を維持しつつトリチウム増殖性能を確保することができる。
[第2の実施形態]
図17は、第2の実施形態に係る核融合炉用ブランケットを含む真空容器内の構成を示す図18のXVII−XVII線矢視部分立断面図である。また、図18は、図17のXVIII−XVIII線矢視水平断面図である。
本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態においては、核融合炉用ブランケット15のそれぞれのブランケットモジュール100が、それぞれの軸方向がトロイダル方向に向くように配列されている。
図19は、第2の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの配置を説明する部分立断面図である。それぞれのブランケットモジュール100の円筒状の収納部110は、核融合プラズマ18に対向するように列をなして配列されている。また、列は、図19に示すように、核融合プラズマ18に最も近い第1列、核融合プラズマから見て第1列より奥、すなわち、真空容器11に近い方向に、順に第2列および第3列と複数列が形成されている。
互いに隣接する列を形成するそれぞれのブランケットモジュール100の位置関係は、以下のように設定されている。今、第1列内で、互いに隣接する2つのブランケットモジュール100をそれぞれ、M11およびM12とする。この場合、M11の内部およびM12の内部を通過せずに、M1とM2の間を通過する方向D2が存在する。第1列に隣接する第2列のうち、M11とM12に最も近いブランケットモジュール100をM13とすると、M13の位置は、D2の延長線が、その内部を通過する位置に配置されている。なお、M13は、その中心がD2の延長線上の近傍の位置にあるような場合が最も好ましい。第2列を構成するブランケットモジュール100と第3列を構成するブランケットモジュール100も同様の関係にあるように配置されている。
なお、真空容器11を核融合プラズマ18からの一次中性子を有効に利用し、放射線遮へいおよび熱的遮へいをするために必要な措置がなされれば、必ずしも複数列でなくともよい。
以上のように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を有する配列が実現できる。また、第1の実施形態におけるポロイダル方向での配列と、本実施形態におけるトロイダル方向での配列を、真空容器内の場所によって使い分けてもよい。この結果、ブランケットモジュール100の配列を計画する際の自由度が増える。
[第3の実施形態]
図20は、第3の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの収納部の構成を示す図21のXX−XX線矢視断面図である。また、図21は、図20のXXI−XXI線矢視断面図である。
本第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態の変形である。本実施形態においては、ブランケットモジュール100の収納部110aが、収納空間111b(図9)内に配された増殖管113および増倍管116を有する。なお、この結果、後述(図26)するが第1ヘッダユニット120aおよび第2ヘッダユニット120bの構成要素が一部追加されている。
図20および図21では、増殖材112および増倍材115のいずれかのペブルが配されている収納空間111b内に配された複数の増殖管113および増倍管116のそれぞれは、両端が開放され、筐体111の軸方向に収納空間111b内を延びている。
図22は、増殖管の構成を示す軸方向に垂直な断面図である。増殖管113は、同心に配された増殖管外管113aおよび増殖管内管113bを有する二重管である。増殖管内管113b内の内側領域113dには、ペブル状の増殖材112が充填されている。増殖管内管113bと増殖管外管113aに挟まれたアニュラス領域113cは、収納部内冷却水流路の一部として、筐体壁内冷却水流路111aとともに冷却材の流路を形成している。ペブル状の増殖材112は、たとえば、軸方向の両端にメッシュを設けることによって保持することができる。
図23は、増倍管の構成を示す軸方向に垂直な断面図である。増倍管116は、同心に配された増倍管外管116aおよび増倍管内管116bを有する二重管である。増倍管内管116b内の内側領域116dには、ペブル状の増倍材115が充填されている。増倍管内管116bと増倍管外管116aに挟まれたアニュラス領域116cは、収納部内冷却水流路の一部として、筐体壁内冷却水流路111aとともに冷却材の流路を形成している。ペブル状の増倍材115は、たとえば、軸方向の両端にメッシュを設けることによって保持することができる。
図24は、増殖管の変形例の構成を示す軸方向に垂直な断面図である。増殖管内管113b内は、収納部内冷却水流路の一部として、筐体壁内冷却水流路111aとともに冷却材の流路を形成している。また、増殖管内管113bと増殖管外管113aに挟まれたアニュラス領域113cには、ペブル状の増殖材112が充填されている。
図25は、増倍管の変形例の構成を示す軸方向に垂直な断面図である。増倍管内管116b内は、収納部内冷却水流路の一部として、筐体壁内冷却水流路111aとともに冷却材の流路を形成している。また、増倍管内管116bと増倍管外管116aに挟まれたアニュラス領域116cには、ペブル状の増倍材115が充填されている。
図26は、本実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの構成およびブランケットモジュール内の流体の流れを示す軸方向に沿った断面図である。具体的には、冷却水入口ヘッダ131の軸方向外側に別のガス入口ヘッダ132を設け、また、冷却水出口ヘッダ133の軸方向外側に別のガス出口ヘッダ134を設ける。また、増殖材112または増倍材115が充填されている領域を、軸方向に貫通し、冷却水入口ヘッダ131および冷却水出口ヘッダ133、ガス入口ヘッダ132、ガス出口ヘッダ134に連通する増殖管113または増倍管116が設けられている。
この変形例としては、収納部110aに内管と外管を同軸状に組み合わせた増殖管113および増倍管116を設けて双方の管に挟まれたアニュラス領域に冷却水を供給し、内管に増殖材112または増倍材115を充填する構成がある。例えば増殖材112を充填した増殖管113を収納部110aに設置し、収納空間111bに増倍材を充填する場合のように収納部110a内部の冷却性能を高め、且つ、増殖材112と増倍材115の共存性の問題が生じることがある場合において双方を混合しないで充填することができる点が第1の実施形態と異なる部分である。なお、図26では、増殖管113および増倍管116を概念的に1本のみ示している。
ガス入口ヘッダ132に流入した搬送ガスの一部は、入口ガス連通管138aを通過して収納空間111b内に充填されたペブル状の増倍材115または増殖材112を通り抜ける。また一方、ガス入口ヘッダ132に流入した搬送ガスの一部は、増殖管内管113bの内側領域113d(図24)内に充填されたペブル状の増殖材112、または、増倍管116と接続している場合は、増倍管内管116bの内側領域116d(図25)内に充填されたペブル状の増倍材115を通り抜ける。
収納空間111b内に充填されたペブル状の増倍材115または増殖材112を通り抜け、出口ガス連通管138bを通過したトリチウムやヘリウムを含む搬送ガスと、増倍管内管116b内に充填された増殖材112または増倍材115を通り抜けたトリチウムやヘリウムを含む搬送ガスはガス出口ヘッダ134の内部空間に流入して合流し、ガス出口外部開口134bから流出する。
一方、冷却水入口ヘッダ131に流入した冷却水の一部は、筐体壁内冷却水流路111aを通過し、また、他の一部は冷却水入口内部開口131bから冷却水入口ヘッダ131の内部空間に流入し、増殖管内管113bと増殖管外管113aに挟まれたアニュラス領域113cまたは増倍管内管116bと増倍管外管116aに挟まれたアニュラス領域116cを通過して冷却水出口ヘッダ133の内部空間に流入した後、冷却水出口内部開口133aを通って合流し、冷却水出口外部開口133bから流出する。
なお、図24および図25に示した変形例の場合についても、同様の方法により構成可能である。
図27は、本実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの収納部とヘッダとの組立て手順の各ステップの状態を示す状態移行図であり、(a)は組立前、(b)は収納部の内側ヘッダ板の取り付け、および増殖管内管の挿入後、(c)は内側ヘッダ端部小径円板と内側ヘッダ端部大径円板の取り付け直前、(d)は外側ヘッダの端板の取り付け直前の状態を示す。
また、図28ないし図31は、それぞれ、連通管付きの状態の内側ヘッダ板、内側ヘッダ端部小径円板、内側ヘッダ内胴、および内側ヘッダ端部大径円板の斜視図である。
まず、(a)に示すように、筐体壁内冷却水流路111aが形成された筐体111の内部に、所定の本数の増殖管外管113aを設定する。なお、図27では増殖管113が設けられている例を示しているが、増倍管外管116が設けられている場合、あるいは両者が設けられている場合であってもよい。図33および図37においても同様である。
この状態で、軸方向の端部から、入口ガス連通管138aを有する内側ヘッダ板111cを設定する。内側ヘッダ板111cは、増殖管外管113aとペブルを保持する円板であって、内側ヘッダ板111cには、増殖管外管113aが貫通する開口が形成されている。
次に、(b)に示すように、端部に設定された内側ヘッダ板111cの径方向外側と筐体111の内側の溶接部W31、および内側ヘッダ板111cの開口と増殖管外管113aとの溶接部W32のそれぞれにおいて、溶接を行い、更に、開口を有する内側ヘッダ内胴121b、内側ヘッダ外胴121aを設定する。
次に、(c)に示すように、外部開口を有する内側ヘッダ内胴121b、内部開口を有する内側ヘッダ外胴121aを、それぞれ筐体111の内側、および外側と溶接する。増殖管外管113aの内部に、増殖管内管113bを挿入し、所定の位置に設定する。増殖管内管113bは、増殖管外管113aより長く、増殖管外管113aの両端部より軸方向外側に突出している。また、内側ヘッダ端部小径円板121hおよび内側ヘッダ端部大径円板121cを、軸方向端部に設定する。
内側ヘッダ端部小径円板121hは、内側ヘッダ板111cと同様の円板状であり、内側ヘッダ内胴121bに挿入可能な寸法に形成され、かつ、入口ガス連通管138aと増殖管内管113bが貫通する開口が形成されている。内側ヘッダ端部大径円板121cは、内側ヘッダ外胴121aと内側ヘッダ内胴121bとの間に挿入可能な寸法に形成されたリング状である。
次に、(d)に示すように、内側ヘッダ端部小径円板121hと内側ヘッダ内胴121bとの溶接部W33、および増殖管内管113bとの溶接部W34、および入口ガス連通管138aとの溶接部W37のそれぞれにおいて溶接を行う。また、内側ヘッダ端部大径円板121cと内側ヘッダ外胴121aとの溶接部W35、および増殖管内胴121bとの溶接部W36のそれぞれにおいて溶接を行う。
最後に、外側ヘッダ外胴125aおよび外側ヘッダ端板125bを取り付けて溶接する。
以上により、収納部110aの一方の端部とヘッダとの接続が可能である。収納部110aの他方の端部とヘッダとの接続も同様の手順で行うことができる。
筐体壁内冷却水流路111aと内側ヘッダ外胴121a、内側ヘッダ端部大径円板121c、内側ヘッダ内胴121bで区画される空間と内側ヘッダ内胴121b、内側ヘッダ端部小径円板121h、増殖管内管113b、増殖管外管113aで区画される空間は連通し、冷却水の流路を形成する。また、外側ヘッダ外胴125a、外側ヘッダ端板125b、内側ヘッダ端部小径円板121h、内側ヘッダ端部大径円板121c、増殖管内管113bで区画される空間は連通し、ガスの流路を形成する。
本実施形態および変形例においては、収納部110aの筐体111の壁内部の筐体壁内冷却水流路111aへの冷却水の流通のみでは、内部の発熱の冷却を十分には確保できない場合でも、増殖材112および増倍材115を、上限温度を超えない状態に保持することができる。
増殖材112のトリチウム生成反応は、熱中性子領域で反応断面積が大きく、一方、増倍材115の中性子の増倍反応は、高速中性子領域の方が大きな反応断面積を有する。核融合プラズマ18内の核融合反応で生じる14.1MeVの一次中性子が、ブランケットモジュール100の第1列に入射の後、第1列内を通過し、第2列、第3列と移行するうちに、減速し低エネルギー側にシフトし、中性子エネルギースペクトルが柔らかくなる。したがって、第1列から第3列のそれぞれのブランケットモジュール100内に収納される増殖材112と増倍材115の割合を、第1列から第3列になるに従い、増殖材112の割合が増えるように変化させることが望ましい。すなわち、核融合プラズマ18に遠い方の列のブランケットモジュール100内の増殖材の質量の増倍材の質量に対する比を、核融合プラズマ18に近い方の列のブランケットモジュール100内の増殖材の質量の増倍材の質量に対する比よりも大きくすることが望ましい。
本実施形態においては、1つのブランケットモジュール100の収納部110aの収納空間111b内に、増倍材115を収納するほかに、増殖管113あるいは増倍管116を収納できる。したがって、増殖管113のみを用いる場合、増倍管116のみを用いる場合、あるいは、両者を任意の本数ずつを用いる場合など、増殖材112および増倍材115それぞれの存在比を変えることができ、多様な選択が可能となる。
すなわち、増殖材112と増倍材115の混合物における両者の割合は変更することなしに、存在比を制御することができし、また両者の割合を変更することもできる。この結果、トリチウム生成および中性子の増倍の効率を高めることができる。
以上のように、本実施形態によれば、構造的な健全性を維持しつつトリチウム増殖性能を確保することができ、且つ、増殖材112と増倍材115の共存性の問題が生じることがある場合において双方を混合しないで充填することができるため、稼動中の核融合ブランケットの動作の信頼性向上を図ることができる。
図32は、本実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの変形例の構成およびブランケットモジュール内の流体の流れを示す軸方向に沿った断面図である。具体的には、冷却水入口ヘッダ131の軸方向外側に別のガス入口ヘッダ132を設け、冷却水出口ヘッダ133の軸方向外側に別のガス出口ヘッダ134を設ける。更に、ガス入口ヘッダ132の軸方向外側にさらに別のガス入口ヘッダ132cを設け、ガス出口ヘッダ134の軸方向外側にさらに別のガス出口ヘッダ134cを設ける。
また、増殖材112または増倍材115が充填されている領域を、軸方向に貫通し、冷却水入口ヘッダ131および冷却水出口ヘッダ133、ガス入口ヘッダ132c、ガス出口ヘッダ134cに連通する増殖管113または増倍管116が設けられている。増殖材112または増倍材115が充填されている領域は、入口ガス連通管138aを介してガス入口ヘッダ132と、出口ガス連通管138bを介してガス出口ヘッダ134と連通している。
このような構成とすることにより、例えば増殖材112を充填した増殖管113を収納部110aに設置し、収納空間111bに増倍材を充填する場合のように収納部110a内部の冷却性能を高め、且つ、増殖材112と増倍材115の共存性の問題が生じることがある場合において双方を混合しないで充填することができる点は図26に示す実施例と同様である。ただし、増殖材112に供給されるガスのガス入口ヘッダ132cと排出されるガスのガス出口ヘッダ134cが、増倍材115に供給されるガスのガス入口ヘッダ132、排出されるガスのガス出口ヘッダ134とは別に設けられている点が異なる部分であるので、この部分の流れを説明する。なお、図32では、増殖管113および増倍管116を概念的に1本示している。
ガス入口外部開口132aから増倍材115が充填されたガス入口ヘッダ132に流入した搬送ガスは、入口ガス連通管138aを通過して収納空間111b内に充填されたペブル状の増倍材115を通り抜け、ヘリウムを含む搬送ガスは出口ガス連通管138bを通過して増倍材115が充填されたガス出口ヘッダ134のガス出口外部開口134bから排出される。
また、ガス入口外部開口132dから増殖材112が充填されたガス入口ヘッダ132cに流入した搬送ガスは、ガス入口内部開口132bから増倍管内管116b(図25)内に流入する。流入した搬送ガスは、増倍管内管116b内に充填された増殖材112を通り抜け、トリチウムやヘリウムを含む搬送ガスは増殖材112が充填されたガス出口ヘッダ134cのガス出口外部開口134dから排出される。
増倍管116を設置する場合は、増倍管内管116bをガス入口ヘッダ132、及びガス出口ヘッダ134と接続し、増殖材112を通過する搬送ガスと増倍材115を通過する搬送ガスが混合しないようにすればよい。
なお、図24および図25に示した変形例の場合についても、同様の方法により構成可能である。
図33は、本実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの変形例の収納部とヘッダとの組立て手順の各ステップの状態を示す状態移行図であり、(a)は組立前、(b)は収納部の内側ヘッダ板の取り付けと増殖管内管の挿入後、且つ内側ヘッダ端部小径円板と内側ヘッダ端部大径円板の取り付け前(c)は内側ヘッダ端部小径円板と内側ヘッダ端部大径円板後、(d)は中間ヘッダの端板の取り付け直前、(e)は外側ヘッダ端板の取り付け直前、(f)は外側ヘッダの端板の取り付け後の状態を示す。
なお、中間ヘッダ126は、内側ヘッダ121と外側ヘッダ125の中間に設けられたヘッダであり、ガス入口外部開口132aおよびガス出口外部開口134bに対応し、内側ヘッダ121および外側ヘッダ125と同様に、入口側および出口側の総称である。
まず、(a)に示すように、筐体壁内冷却水流路111aが形成された筐体111の内部に、所定の本数の増殖管外管113aを設定する。なお、図33では増殖管113が設けられている例を示しているが、増倍管外管116が設けられている場合、あるいは両者が設けられている場合であってもよい。図37においても同様である。
この状態で、軸方向の端部から、入口ガス連通管138aを有する内側ヘッダ板111cを設定する。内側ヘッダ板111cは、増殖管外管113aとペブルを保持する円板であって、内側ヘッダ板111cには、増殖管外管113aが貫通する開口が形成されている。
次に、(b)に示すように、端部に設定された内側ヘッダ板111cの径方向外側と筐体111の内側の溶接部W31、および内側ヘッダ板111cの開口と増殖管外管113aとの溶接部W32のそれぞれにおいて、溶接を行い、更に、外部開口を有する内側ヘッダ内胴121b、内部開口を有する内側ヘッダ外胴121aをそれぞれ筐体111の内側、及び外側と溶接する。
次に、(c)に示すように、増殖管外管113aの内部に、増殖管内管113bを挿入し、所定の位置に設定する。増殖管内管113bは、増殖管外管113aより長く、増殖管外管113aの両端部より軸方向外側に突出している。また、内側ヘッダ端部小径円板121hおよび内側ヘッダ端部大径円板121cを、軸方向端部に設定する。内側ヘッダ端部小径円板121hは、内側ヘッダ板111cと同様の円板状であり、内側ヘッダ内胴121bに挿入可能な寸法に形成され、かつ、入口ガス連通管138aと増殖管内管113bが貫通する開口が形成されている。
内側ヘッダ端部大径円板121cは、内側ヘッダ外胴121aと内側ヘッダ内胴121bとの間に挿入可能な寸法に形成されたリング状である。内側ヘッダ端部小径円板121hと内側ヘッダ内胴121bとの溶接部W33、および増殖管内管113bとの溶接部W34、および入口ガス連通管138aとの溶接部W37のそれぞれにおいて溶接を行う。また、内側ヘッダ端部大径円板121cと内側ヘッダ外胴121aとの溶接部W35、および増殖管内胴121bとの溶接部W36のそれぞれにおいて溶接を行う。
次に、(d)に示すように、外部開口を有する中間ヘッダ外胴126aを設定して内側ヘッダ外胴121aと溶接し、次に増殖管内管113bが貫通する開口を有する中間ヘッダ端板126bを設定する。
次に、(e)に示すように、外部開口を有する外側ヘッダ外胴125aを設定して中間ヘッダ外胴126aと溶接し、次に外側ヘッダ端板125bを設定して外側ヘッダ外胴125aと溶接する。
以上により、(f)に示すように収納部110aの一方の端部とヘッダとの接続が可能である。収納部110aの他方の端部とヘッダとの接続も同様の手順で行うことができる。
筐体壁内冷却水流路111aと内側ヘッダ外胴121a、内側ヘッダ端部大径円板121c、内側ヘッダ内胴121bで区画される空間と内側ヘッダ内胴121b、内側ヘッダ端部小径板121h、増殖管内管113b、増殖管外管113aで区画される空間は連通し、冷却水の流路を形成する。また、中間ヘッダ外胴126aと中間ヘッダ端板126b、内側ヘッダ端部小径円板121h、内側ヘッダ端部大径円板121c、入口ガス連通管138aで区画される空間は連通し、第一のガス流路を形成する。更に外側ヘッダ外胴125a、外側ヘッダ端板125b、内側ヘッダ端部小径円板121h、内側ヘッダ端部大径円板121c、増殖管内管113bで区画される空間は連通し、第二のガス流路を形成する。
本実施形態および変形例においては、収納部110aの筐体111の壁内部の筐体壁内冷却水流路111aへの冷却水の流通のみでは、内部の発熱の冷却を十分には確保できない場合でも、増殖材112および増倍材115を、上限温度を超えない状態に保持することができる。
増殖材112のトリチウム生成反応は、熱中性子領域で反応断面積が大きく、一方、増倍材115の中性子の増倍反応は、高速中性子領域の方が大きな反応断面積を有する。核融合プラズマ18内の核融合反応で生じる14.1MeVの一次中性子が、ブランケットモジュール100の第1列に入射の後、第1列内を通過し、第2列、第3列と移行するうちに、減速し低エネルギー側にシフトし、中性子エネルギースペクトルが柔らかくなる。したがって、第1列から第3列のそれぞれのブランケットモジュール100内に収納される増殖材112と増倍材115の割合を、第1列から第3列になるに従い、増殖材112の割合が増えるように変化させることが望ましい。すなわち、核融合プラズマ18に遠い方の列のブランケットモジュール100内の増殖材の質量の増倍材の質量に対する比を、核融合プラズマ18に近い方の列のブランケットモジュール100内の増殖材の質量の増倍材の質量に対する比よりも大きくすることが望ましい。
本実施形態においては、1つのブランケットモジュール100の収納部110aの収納空間111b内に、増倍材115を収納するほかに、増殖管113あるいは増倍管116を収納できる。したがって、増殖管113のみを用いる場合、増倍管116のみを用いる場合、あるいは、両者を任意の本数ずつを用いる場合など、増殖材112および増倍材115それぞれの存在比を変えることができ、多様な選択が可能となる。
すなわち、増殖材112と増倍材115の混合物における両者の割合は変更することなしに、存在比を制御することができるし、また両者の割合を変更することもできる。この結果、トリチウム生成および中性子の増倍の効率を高めることができる。
以上のように、本実施形態によれば、構造的な健全性を維持しつつトリチウム増殖性能を確保することができ、かつ増殖材112と増倍材115が相互に接触しないよう収納空間111bに保持され、双方の領域を流通するガスは入口側でも出口側でも混合することはなく、双方を充填したときに生ずることのある増殖材112と増倍材115の共存性の問題を回避することができることから、稼動中の核融合ブランケットの動作の信頼性向上を図ることができる。
[第4の実施形態]
図34は、第4の実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの収納部の構成を示す図35のXXXIV−XXXIV線矢視断面図である。また、図35は、収納部の構成を示す図34のXXXV−XXXV線矢視断面図である。本第4の実施形態は、第3の実施形態の変形である。本第4の実施形態においては、収納部110bは、仕切り管118をさらに有する。仕切り管118は、筐体111と同心で、軸方向に延びている。仕切り管118は、筐体111の径方向内側にあって、収納空間111bを径方向に分割するものである。ただし、強度メンバーすなわち構造強度を担う部材でなくともよい。
筐体111と仕切り管118に挟まれたアニュラス部118aには、ペブル状の増殖材112のみが充填されている。筐体111と仕切り管118に挟まれたアニュラス部118aに、ペブル状の増殖材112のみを充填し、収納空間111bにはペブル状の増倍材115が充填されている場合に特にトリチウム生成に有効である。軸方向の端部にメッシュ等を設けることにより、ペブルを保持できることは他の箇所と同様である。
図36は、本実施形態に係る別の核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの構成およびブランケットモジュール内の流体の流れを示す軸方向に沿った断面図である。
ガス供給管139aから流入した搬送ガスは分岐して、一部は筐体111と仕切り管118に挟まれたアニュラス部118aに供給され、また、他の一部は増殖管外管113aと増殖管内管113bに挟まれたアニュラス領域113c(図22)に供給され、いずれも充填されたペブル状の増殖材112を通り抜けた後に合流して、ガス排出管139bから流出する。
一方、冷却水入口外部開口131aから冷却水入口ヘッダ131の内部空間に流入した冷却水は分岐して、一部は、筐体壁内冷却水流路111aに供給され、また、他の一部は増殖管内管113bに供給され、冷却水出口ヘッダ133の内部空間に流入して合流し、冷却水出口外部開口133bから流出する。
更に、ガス入口外部開口132aからガス入口ヘッダ132の内部空間に流入した搬送ガスは、入口ガス連通管138aを通って収納空間111b(図9)内に供給され、充填されたペブル状の増倍材115を通り抜けた後、出口ガス連通管138からガス出口ヘッダ134の内部空間に流入して、ガス出口外部開口134bから排出される。
なお、図24および図25に示した変形例の場合についても、増殖材112と増倍材115を通過するガスが混合しないように分離して供給し、分離して排出するようヘッダ内の配管接続を行えば、同様の方法により構成可能である。
図37は、本実施形態に係る核融合炉用ブランケットのブランケットモジュールの収納部とヘッダとの組立て手順の各ステップの状態を示す状態移行図であり、(a)は組立前、(b)は収納部の内側ヘッダ板の取り付け後、かつ、内側ヘッダ端部小径円板と内側ヘッダ端部大径円板の取り付け前、(c)は内側ヘッダ端部小径円板と内側ヘッダ端部大径円板の取り付け後、かつ、中間ヘッダ端板の取り付け前、(d)は外側ヘッダ端板の取り付け前の状態を示す。
まず、(a)に示すように、筐体壁内冷却水流路111aが形成された筐体111の内部に、仕切り管118および所定の本数の増殖管外管113aを設定する。
この状態で、軸方向の端部から、入口ガス連通管138aを有する内側ヘッダ板111cを設定する。ただし、内側ヘッダ板111cの外径は、仕切り管118の内径寸法に対応している。
次に、(b)に示すように、内側ヘッダ外胴121a、内側ヘッダ内胴121bおよび仕切り管118の延長管118bをそれぞれ取り付ける。なお、内側ヘッダ外胴121aは、軸方向に内側ヘッダ内胴121bより長く、後述する中間ヘッダ端板126bと接続される。ガス供給管139aが内側ヘッダ外胴121aと内側ヘッダ内胴121bを貫通し、延長管118bと内側ヘッダ内胴121bの間に先端がくるように設定し、内側ヘッダ外胴121a、および内側ヘッダ内胴121bと溶接して接続する。
この状態で、内側ヘッダ端部小径円板121hおよび内側ヘッダ端部大径円板121cを設定する。内側ヘッダ端部小径円板121hは、仕切り管118に対応する外径を有する円板状であり、増殖管内管113bが貫通する開口が形成されている。内側ヘッダ端部大径円板121cも、リング状であり、内側ヘッダ内胴121bの内径に対応する外径と、仕切り管118の延長管118bの外径に対応する内径を有する。
次に、内側ヘッダ端部小径円板121hと仕切り管118の延長管118bとの溶接、および内側ヘッダ端部小径円板121hと増殖管内管113bとの溶接を行う。また、内側ヘッダ端部大径円板121cと内側ヘッダ内胴121bとの溶接、および内側ヘッダ端部大径円板121cと仕切り管118の延長管118bとの溶接を行う。
次に、(c)に示すように、内側ヘッダ外胴121aに、中間ヘッダ端板126bを取付け、内側ヘッダ外胴121aとの溶接、および入口ガス連通管138aとの溶接を行う。
最後に(d)に示すように内側ヘッダ外胴121aに外側ヘッダ外胴125aを取り付けて溶接し、外側ヘッダ端板125bを外側ヘッダ外胴125aに溶接する。
以上により、収納部110bの一方の端部とヘッダとの接続が可能である。収納部110bの他方の端部とヘッダとの接続も同様の手順で行うことができる。
本実施形態によれば、筐体111と仕切り管118間のアニュラス部118aに、増殖材112のみを充填し、増殖管外管113aと増殖管内管113bとの間に増殖材112のみを充填し、それ以外の収納空間111bに増倍材115のみを充填する場合、増殖材112と増倍材115が相互に接触しないよう収納空間111bに保持され、双方の領域を流通するガスは入口側でも出口側でも混合することはないため、双方を充填したときに生ずることのある増殖材112と増倍材115の共存性の問題を回避することができる。
以上のように、本実施形態によれば、構造的な健全性を維持しつつトリチウム増殖性能を確保することができ、かつ、信頼性の高い核融合ブランケットを構成することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、第1の実施形態においては、ブランケットモジュールがポロイダル方向に配列されている場合を、また、第2の実施形態においてはブランケットモジュールがトロイダル方向に配列されている場合を示したが、その筐体の側面を前記核融合プラズマに対向する方向に配置されていれば、これらの場合の方向と角度を有した方向であってもよい。
また、各実施形態においては、入口側ヘッダユニットが冷却水入口ヘッダとガス入口ヘッダとを、出口側ヘッダユニットが冷却水出口ヘッダとガス出口ヘッダとを、それぞれ有する場合を示したが、これに限定されない。すなわち、入口側ヘッダユニットが冷却水入口ヘッダとガス出口ヘッダとを、出口側ヘッダユニットが冷却水出口ヘッダとガス入口ヘッダとをそれぞれ有する場合、あるいはこの逆の場合であってもよい。
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。たとえば、核融合炉用ブランケットが、複数のブランケットユニットのグループから構成されており、それぞれのグループ内におけるブランケットモジュールの方向が、第1の実施形態における方向、第2の実施形態における方向あるいはこれらと角度を有する方向のいずれかである場合であってもよい。
また、第4の実施形態における収納部110が仕切り管118を有するという特徴を、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と組み合わせてもよい。
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。