以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(本発明の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る空間情報配信システムの概略構成の一例を示すブロック図である。本発明の実施形態に係る空間情報配信システムは、部分空間情報生成装置1と、複数の部分空間情報発信装置2と、移動端末(部分空間情報処理装置)3と、を備える。
部分空間情報生成装置1は、空間情報記憶部11と、保全情報記憶部12と、入出力インタフェース(入出力I/F)13と、情報取得部14と、部分空間情報生成部15と、部分空間情報配信部16とを備える。
部分空間情報発信装置2は、部分空間情報記憶部21と、部分空間情報更新部22と、部分空間情報発信部23とを備える。
移動端末3は、部分空間情報受信部(情報通信部)31と、部分空間情報更新部32と、部分空間情報記憶部33と、オブジェクト認識部34と、位置・向き補正部35と、移動経路設定部36と、計測情報取得部37と、位置・向き計算部38と、移動調整部39とを備える。
本実施形態の空間情報配信システムでは、移動端末3が所定の施設内を移動することを想定する。当該空間情報配信システムは、移動端末3が施設内を移動する際に用いられる情報を移動端末3に配信する。
部分空間情報生成装置1と、各部分空間情報発信装置2とは、通信ネットワーク4を介して通信接続されているとする。各部分空間情報発信装置2は、部分空間情報生成装置1から送信された情報を受信する。また、各部分空間情報発信装置2は、移動端末3が施設内を移動する際に用いられる情報を発信する。
なお、各部分空間情報発信装置2は、通信ネットワーク4を介して、相互に通信を行ってもよい。例えば、ある部分空間情報発信装置2が、他の部分空間情報発信装置2に対する疎通を確認することにより、他の部分空間情報発信装置2が稼働していることを確認してもよい。
移動端末3は、自律移動可能なロボットなど、移動することができる装置を想定する。例えば、設備の保守を行うロボットなどでもよい。但し、移動端末3は、ユーザの移動を支援する装置であってもよい。例えば、ユーザが携帯する情報処理端末であってもよい。この場合、移動端末3がユーザに対し移動する経路を示すことにより、ユーザの移動を支援する。なお、移動端末3は、施設内に複数存在してもよい。
移動端末3が移動する施設は、部屋を有する建物を想定しているが、所定の境界により領域が定められている屋外施設であってもよい。例えば、複数の競技場を有する総合競技場であってもよい。
移動端末3が施設内を移動するには、移動端末3の現在の位置(自己位置)、自己位置の周辺の空間、経路などを認識する必要がある。本実施形態に係る空間情報配信システムでは、これら移動端末3が必要とする情報を配信するが、移動端末3の処理負荷軽減、消費電力の抑制などのため、施設内の構造全体、目的地までの経路全体の情報を移動端末3に与えないものとする。
部分空間情報生成装置1は、移動端末3が施設を移動する際に用いられる部分空間情報を生成する。部分空間情報とは、空間情報の一部を意味する。空間情報とは、施設内に存在する空間および設備の位置に関する情報である。例えば、空間としては施設内の部屋、廊下などが該当する。設備としては、施設に設置されたベンチ、窓、照明など様々なものが該当する。以降、空間情報に含まれる空間および設備を、オブジェクトと記載する。特に、空間に係るオブジェクトを空間オブジェクトと記載する。空間情報は、これらのオブジェクトが施設内のいずれの位置にあるかを示す。
また、空間情報は、位置だけでなく、属性に関する情報なども含んでもよい。属性情報を有する空間情報を用いる場合、建物の企画および実施設計において活用されているBIM(Building Information Modeling)にて用いられる、建物情報モデルの一種であるBIMモデルを、空間情報として用いることができる。
BIMは、BIMモデルソフトウェアを用いて、コンピュータ上に3次元のBIMモデルを構築する。BIMモデルは、建物、設備といった物に対する人間の捉え方(オントロジー)にしたがった情報モデルであり、建物等の構成要素の3次元情報と、属性情報と、関係情報とを、規定の形式にしたがって一体的に表現するデータセットである。3次元情報は、構成要素、つまりオブジェクトの3次元での位置および形状を示す。属性情報は、構成要素の意味または性質を表す。例えば、属性情報には、室(部屋)の種類、名称、面積、材料、部材の仕様などが含まれる。関係情報は、構成要素間の関係性を示し、構造関係、構成関係、接続関係といった、建物として形作る上での関係を含む。BIMモデルにより、建物内の空間構造を物理的または概念的に解釈することができ、構成要素の位置関係も同様に解釈するこができる。空間情報としてBIMモデルを用いる場合、空間情報は、BIMモデルから生成された情報を含んでもよい。
このように空間情報には施設内の設備の様々な属性情報および関係情報が含まれるため、空間情報のデータ量は大きい。ゆえに、空間情報をそのまま移動端末3に提供すると、移動端末3の処理負荷の増加、消費電力の増加、内部の記憶部の容量の増加といった問題が生ずる。
ゆえに、部分空間情報生成装置1は、空間情報からその一部を抽出し、部分空間情報を生成する。この部分空間情報を移動端末3が用いることにより、移動端末3の処理負荷の低減、消費電力の抑制、移動端末3の小型化、通信リソースの圧迫の解消が図られる。
抽出される部分は、移動端末3が移動する際に用いられる部分であるが、移動端末3の用途、移動範囲、移動経路などにより、移動端末3が移動する際に必要とする情報は異なる。そこで、本実施形態では、移動端末3ではなく、部分空間情報発信装置2ごとの個別の部分空間情報を生成する。
部分空間情報とされる空間情報の一部は、部分空間情報発信装置2の位置に基づき、定められる。ゆえに、部分空間情報発信装置2の位置が異なれば、生成される部分空間情報は異なる可能性が高い。但し、部分空間情報発信装置2の位置が異なっても、結果的に生成される部分空間情報が同じの場合もあり得る。
なお、移動端末3の移動目的、移動端末3の周囲の状況、周囲のオブジェクトの属性等に基づき、部分空間情報が加工されてもよい。また、部分空間情報には、部分空間情報発信装置2の位置、識別ID、経路に関する情報など、その他の情報が含まれていてもよい。また、空間情報には、オブジェクト同士を結ぶことにより生成された経路に関する情報が含まれてもよい。例えば、経路は、オブジェクト間の関係情報を用いて、生成されてもよい。部分空間情報の生成方法については後述する。
部分空間情報発信装置2は、部分空間情報を発信する装置である。部分空間情報発信装置2は、施設内に予め複数存在することを想定する。部分空間情報生成装置1は、各部分空間情報発信装置2の位置に基づき、各部分空間情報発信装置2用の部分空間情報を生成する。そして、部分空間情報発信装置2は、自身と対応づけられた部分空間情報を、部分空間情報生成装置1から取得した上で、発信する。
図2は、部分空間情報発信装置2の一例を示す図である。図2では、部分空間情報発信装置2が非常灯5に設置されている。部分空間情報発信装置2は、プッシュ型の通信方式により部分空間情報を発信していることを想定する。つまり、当該発信は一方的なものであり、移動端末3は、特定の範囲内にいなければ、各部分空間情報発信装置2が発信した情報を受信することができない。図2では、プッシュ型の通信方式の一例として、部分空間情報発信装置2は可視光線6を用いている。移動端末3は、可視光線6の届く範囲、つまり部分空間情報の提供範囲に進入して初めて部分空間情報を取得することができるため、移動端末3は、空間情報を受信したときに、自身が部分空間情報発信装置2の部分空間情報の提供範囲内に存在すると推定することができる。また、可視光線6を用いることにより、部分空間情報の提供範囲を制限でき、セキュリティが向上する。
なお、セキュリティの観点から、部分空間情報発信装置2は自身の識別IDを発信し、識別IDを受信した移動端末3の応答に応じて、部分空間情報を発信してもよい。可視光線6により部分空間情報を発信した場合、可視光線6の範囲内を通過する他の情報処理装置が部分空間情報を取得する恐れが生じる。ゆえに、部分空間情報発信装置2は2段階の送信処理を行ってもよい。もしくは、部分空間情報が暗号化されてもよい。暗号化された部分空間情報により、移動端末3以外の情報処理装置が部分空間情報を取得することを防ぐようにしてもよい。
なお、移動端末3が可視光線6の届く範囲に進入したことを認識または予測することができる場合は、部分空間情報の送受信は、部分空間情報発信装置2へ部分空間情報を要求するプル型の通信方式により行われてもよい。例えば、移動端末3をユーザが保持している場合は、ユーザの操作により、部分空間情報発信装置2へ部分空間情報が要求されてもよい。また、移動ロボットが距離または周辺の画像に基づき、部分空間情報発信装置2の近傍であると予測した場合に、部分空間情報発信装置2へ部分空間情報が要求されてもよい。但し、プル型の通信方式では、移動端末3側が能動的に要求を送る必要があるため、移動端末3の処理負荷は増加する。また、部分空間情報発信装置2は、プッシュ型およびプル型両方の通信方式に対応してもよい。
図2のように、既に施設内に設置されている機器を用いることにより、部分空間情報発信装置2の配備のコストを抑えてもよい。なお、非常灯は、停電時に室内、廊下等を照らす機能を有する避難誘導のための電灯である。非常灯は、施設内の電力供給システムが停止した場合に電力を供給する電池を非常時用電源として内蔵する。部分空間情報発信装置2が当該非常時用電源と接続されていれば、施設の停電時でも、部分空間情報発信装置2が部分空間情報を発信し、移動端末3に対し指示を与えることができる。
移動端末3は、部分空間情報発信装置2により発信された部分空間情報を受信することにより、自己位置の推定を行う。また、部分空間情報に含まれる経路を用いて移動する。
移動端末3は、取得した部分空間情報に基づき、予め与えられた基準座標を修正し、施設における現在の自己位置と、取得した部分空間情報を発信した部分空間情報発信装置2近傍の範囲を認識する。そして、部分空間情報に含まれる経路に基づき、取得した部分空間情報に対応する部分空間情報発信装置から、部分空間情報に含まれる他の部分空間情報発信装置までの経路を設定する。これにより、移動端末3は、部分空間情報発信装置2から次の部分空間情報発信装置2へ移動することができる。このように、移動端末3は、目的地までの経路全体を認識していなくとも、部分空間情報発信装置2を経由して移動することにより、目的地まで辿りつくことができる。
図3は、部分空間情報発信装置2の配置について説明する図である。移動端末3が移動する建物内のあるフロアが示されている。当該フロアにおいて、複数の部分空間情報発信装置2と、各部分空間情報発信装置2が存在する部屋および廊下が示されている。記号Rは部屋を、記号Cは廊下を示す。RおよびCの後の数字は識別番号を示す。図3の部分空間情報発信装置2の白色が部屋への開口部を示す。
図3では、部分空間情報発信装置2が、これらの部屋に出入りすることができる開口部と対応して配置されている。つまり、部分空間情報発信装置2が示されている箇所に、部屋の出入り口が存在する。すなわち、部分空間情報発信装置2は、空間オブジェクト同士の境界に存在する。移動端末3が移動する経路は、部分空間情報発信装置2同士の配置に基づいて決定されるため、部分空間情報発信装置2が開口部と対応して配置されることにより、移動端末3が部屋に入る経路を開口部ごとに生成することができ、経路を移動する移動端末3が、空間オブジェクトをまたいで移動することができる。なお、開口部は、部屋と廊下とを結ぶ開口部でもよいし、異なる部屋同士を結ぶ開口部でもよい。また、開口部は、施設の出入口に設けられていてもよい。言い換えると、開口部は、外と部屋を結ぶ開口部でもよいし、外と廊下を結ぶ開口部でもよい。
図4は、部屋を複数の仮想的な空間に分割した場合について説明する図である。図4では、1つの部屋が複数の仮想的な空間に分けられている。ここでは、仮想的な空間を部分領域と記載する。記号Zが部分領域を示す。Zの後ろの数字は識別番号を示す。
例えば、移動端末3が部屋の状況を確認する監視装置の場合、部屋の中央を通過させても、部屋の隅、部屋内の設備等による死角を確認できない場合もあり得る。そこで、図4のように、1つの部屋を複数の部分領域に分割し、部分領域を通過させるようにしてもよい。これにより、移動端末3の通過地点を調整することができる。
部分領域の生成方法は特に限られるものではない。例えば、部屋の領域を分割して部分領域を作成する場合において、分割の向き、分割する数などは、任意に定めてよい。
また、図3のR103のように、部屋、廊下などの物理的な空間内に、複数の部分空間情報発信装置2がある場合、それぞれの部分空間情報発信装置2が管轄する部分領域を決定してもよい。部分領域の決定方法は適切に定めればよい。図5は、部分領域の一例を示す図である。ボロノイ分割に基づき分割された、白色で示された部分領域Z103−Aと、灰色で示された部分領域Z103−Bが示されている。ボロノイ分割とは、平面上に複数の母点が存在する場合に、平面上の点がそれらの母点のいずれかに最も近いかに基づき、平面を複数の領域に分割する方法である。
次に、空間情報配信システムの構成装置の内部構造を説明する。まずは、部分空間情報生成装置1について説明する。
空間情報記憶部11は、対象施設の空間情報を記憶する。空間情報は、入出力I/F13等を介して、空間情報記憶部11に送られる。なお、空間情報記憶部11は、生成済みの部分空間情報を記憶してもよい。
保全情報記憶部12は、保全情報を記憶する。保全情報は、入出力I/F13等を介して、保全情報記憶部12に送られる。保全情報とは、オブジェクトに対する制限事項を示す情報である。例えば、施設内には、移動端末3の立ち入りが禁止されている部屋があることが想像される。また、室内の機器の検査作業が行われる必要はあるが、清掃作業は不要な部屋があってもよい。ゆえに、このような制限を保全情報として記憶しておく。この保全情報に基づき、部分空間情報を作成することにより、部分空間情報を取得した移動端末3が制限を破ることを防ぐ。
なお、保全情報は、入室可能か否かの2値で表されてもよいし、空間オブジェクトに対応付けられたセキュリティレベルなどの数値で表されてもよい。部分空間情報が生成される際に、数値の大小に基づき、部分空間情報から除外されるかが決定されてもよい。
入出力I/F13は、各記憶部に記録される空間情報および保全情報を受け付ける。また、入出力I/F13は、部分空間情報生成装置1の処理に関する入力を受け付ける。例えば、空間情報に含まれている設備の属性の変更命令といった、空間情報または保存情報の追加、更新、および削除の命令が入力される。
また、入出力I/F13は、入力された命令に関する処理結果を出力してもよい。例えば、生成された部分空間情報を出力してもよい。または、抽出命令により抽出された空間情報を出力してもよい。
情報取得部14は、空間情報および保全情報を、それぞれ空間情報記憶部11および保全情報記憶部12から取得する。情報取得部14は、入出力I/F13または部分空間情報成部により指定された条件に当てはまる情報を抽出してもよい。
部分空間情報生成部15は、部分空間情報発信装置2ごとに、部分空間情報を生成する。初めに、部分空間情報生成部15は、部分空間情報発信装置の位置に基づき、部分空間情報に含める空間オブジェクトを決定する。次に、部分空間情報に含まれる空間オブジェクトに基づき、部分空間情報に含める経路を決定する。そして、決定された空間オブジェクトと、決定された経路とを合わして部分空間情報を生成する。つまり、部分空間情報生成部15は、空間オブジェクトと経路とを含む部分空間情報を生成する。
部分空間情報生成部15は、生成される部分空間情報に対応する部分空間情報発信装置2と、部分空間情報に含まれる空間オブジェクト内に存在する他の部分空間情報発信装置とに係る経路を、部分空間情報に含めると決定する。
なお、部分空間情報発信装置2をノードとみなすと、部分空間情報に含まれる経路は、1つのノードが複数のノードとパスでつながれた経路グラフで表される。複数のノードとパスでつながれたノード、つまりハブノードは、生成される部分空間情報に対応する部分空間情報発信装置2である。
なお、その他の経路が部分空間情報に含まれていてもよい。また、部分空間情報に含まれる経路に関する情報が部分空間情報に含まれる。当該経路に関する情報を経路情報と記載する。つまり、部分空間情報生成部15は、経路情報を含む部分空間情報を生成する。
経路情報には、ノードおよびパスに関する属性情報が含まれる。ノードの属性情報として、部分空間情報発信装置2のIDと、位置座標とが含まれることが考えられる。また、パスの属性情報として、経路ID、パスの種別、パスの端点に存在する部分空間情報発信装置2のID、パスの通過点の位置座標リストなどが含まれることが考えられる。
部分空間情報配信部16は、各部分空間情報発信装置2と通信を行い、部分空間情報を各部分空間情報発信装置2に配信する。部分空間情報配信部16は、その他の通信を行ってもよいし、要求があった場合に、直接、移動端末3に部分空間情報を発信してもよい。
次に、部分空間情報が生成される処理の流れについて説明する。図6は、部分空間情報生成処理のフローチャートの一例を示す図である。
なお、部分空間情報生成処理が行われるタイミングは任意に定めてよい。入出力I/F13により指示が与えられた後に行われてもよいし、部分空間情報発信装置2等からの要求に基づいて行われてもよいし、定期的に行われてもよい。
情報取得部14は、部分空間情報発信装置2の位置座標などに基づき、空間情報記憶部11に記憶されている空間情報から、部分空間情報発信装置2の存在位置が含まれる空間オブジェクトを取得する(S101)。取得対象の空間オブジェクトは、壁などの構造物により囲まれた物理的な閉鎖空間でもよいし、物理的な閉鎖空間を分割することにより生成された部分領域でもよい。また。部分空間情報発信装置2の位置座標は、空間情報から抽出してもよいし、部分空間情報発信装置2に問い合わせてもよいし、入出力I/F13から入力されてもよい。
次に、情報取得部14は、S101で取得された空間オブジェクトに基づき、空間情報記憶部11に記憶されている空間情報から、当該空間オブジェクトと隣接距離n(nは所定の正の整数)以内に存在する空間オブジェクトを取得する(S102)。隣接距離n以内に存在する空間オブジェクトを、隣接オブジェクトと記載する。空間オブジェクトと、隣接オブジェクトとの距離を、隣接距離と記載する。
空間オブジェクトと、隣接オブジェクトとの距離は、空間オブジェクトと、隣接オブジェクトの間に存在する空間オブジェクトの数に基づき定められる。隣接オブジェクトが空間オブジェクトの隣に位置する場合、つまり空間オブジェクトと隣接オブジェクトとの間に存在する空間オブジェクトの数が0の場合、隣接距離は1とする。隣接オブジェクトが空間オブジェクトの隣の隣に位置する場合、つまり空間オブジェクトと隣接オブジェクトとの間に存在する空間オブジェクトの数が1の場合、隣接距離は2とする。空間オブジェクトが隣に位置する関係とは、空間の境界を共有する関係としてもよいし、開口部を通じて行き来することができる関係としてもよい。
このように、部分空間情報生成装置1は、隣接距離に基づき、空間情報に含まれる各空間オブジェクトに対し、生成する部分空間情報に対応付けられた部分空間情報発信装置2との論理的な距離が近いかを判断する。そして、部分空間情報生成装置1は、論理的な距離が近いと判断された空間オブジェクトを、部分空間情報に含める。これにより、部分空間情報のデータ量が空間情報のデータ量よりも小さくなる。なお、隣接距離nが大きいと、生成される部分空間情報のデータ量は大きくなる。ゆえに、隣接距離nの大きさは、部分空間情報のデータ量を考慮して、適切に定められる。
図7は、隣接オブジェクトを説明する図である。図7の灰色で示された空間オブジェクトは、情報取得部14が廊下C1に基づき取得する空間オブジェクトを示す。なお、情報取得部14は、隣接距離が1の隣接オブジェクトを取得することを想定する。図7では、取得対象の空間オブジェクトを部分領域としている。ゆえに、廊下C1と隣接している部屋内の部分領域であっても、廊下C1と隣接していない部分領域は取得されない。例えば、廊下C1と隣接している部屋R111に係る部分領域であっても、部分領域Z111−01は情報取得部14により取得されるが、部分領域Z111−11は情報取得部14により取得されない。
なお、上記では、論理的な距離に基づいて取得する空間オブジェクトを定めたが、上記以外の方法により、取得する空間オブジェクトを定めてもよい。例えば、予め各部分空間情報発信装置2が管轄する空間オブジェクトを定めておき、取得する空間オブジェクトは各部分空間情報発信装置2が管轄する空間オブジェクトとしてもよい。
図6のフローチャートの説明に戻る。次に、情報取得部14は、取得された空間オブジェクトおよび隣接オブジェクトに関する保全情報を、保全情報記憶部12から取得する(S103)。そして、部分空間情報成部は、不要な空間オブジェクトを除外する(S104)。
例えば、図7に示すように、部分空間情報発信装置2R113と部分空間情報発信装置2C2とは、廊下C1に係る空間オブジェクトに対する隣接オブジェクト内に存在する。しかし、部分空間情報発信装置2C1と部分空間情報発信装置2R113との物理的な距離は、部分空間情報発信装置2C1と部分空間情報発信装置2C2との物理的な距離に比べて非常に長い。このように、隣接オブジェクトに基づいて、部分空間情報を生成すると、生成された部分空間情報に不要な部分に係る空間情報が含まれる場合もあり得る。ゆえに、部分空間情報成部は、不要な空間オブジェクトを除外する。
不要な空間オブジェクトを除外する方法は、様々の方法が考えられる。例えば、基準点からの物理的な距離が閾値以上にある空間オブジェクトは、遠いと判断されて除外されてもよい。図8は、不要な空間オブジェクトを除外する方法について説明する図である。図8には、基準点である部分空間情報発信装置2C1を中心とした円および正方形が示されている。部分空間情報成部は、このような円または正方形に基づき、空間オブジェクトが不要であるかを判断してもよい。図8では、部分領域Z104−11、Z104−12、およびZ113−01は、円および正方形と一部も重ならないため、部分空間情報から除外されている。このように、部分空間情報生成部15は、基準点からの物理的な距離が遠いと判断された空間オブジェクトを、部分空間情報から除外してもよい。なお、基準点は部分空間情報発信装置2でもよいし、部分空間情報発信装置2近傍のオブジェクトでもよい。なお、遠いと判断する方法は、上記に限られるものではない。例えば、図8では、円または正正方形により範囲を決定したが、範囲を決定する形状は、特に限られるものではなく、円または正正方形でなくともよい。また、上記のように、範囲を決定する円等と一部が重なる空間オブジェクトは必要と判断されてもよい。または、範囲を決定する円等と全て重なる空間オブジェクトは必要と判断されてもよい。
また、部分空間情報成部は、保全情報に基づき、不要と判断されたオブジェクトに関する情報を、部分空間情報から除外してもよい。例えば、保全情報に移動端末3の立ち入りが制限されている空間オブジェクトを抽出し、抽出された空間オブジェクトを除外してもよい。
また、部分空間情報成部は、オブジェクトの属性に基づき、不要と判断されたオブジェクトに関する情報を、部分空間情報から除外してもよい。例えば、属性に未使用と設定されている空間オブジェクトに、清掃作業を行う移動端末3が立ち入る必要はないため、当該空間オブジェクトを除外するといったことが考えられる。
図9は、不要な空間オブジェクトを除外した後の空間オブジェクトの一例を示す図である。斜線模様の空間オブジェクトは保全情報に基づき除外された空間オブジェクトを示す。ドット模様の空間オブジェクトは属性に基づき除外された空間オブジェクトを示す。このように、取得された空間オブジェクトから不要なオブジェクトが除外され、残された空間オブジェクトに対して処理が行われる。
また、部分空間情報は、部分空間情報発信装置2ごとに作成されるが、移動端末3の種類、役割、目的などに応じて、除外される空間オブジェクトが異なる場合もあり得る。ゆえに、1つの部分空間情報発信装置2に対し、複数の部分空間情報が作成されてもよい。例えば、移動端末3の役割によって入室できるか否かが異なる場合もあり得る。そのような場合、移動端末3の役割により空間オブジェクトの保全情報が異なるので、移動端末3の役割ごとに部分空間情報が作成されてもよい。
図6のフローチャートの説明に戻る。部分空間情報成部は、情報取得部14により取得された空間オブジェクトと隣接オブジェクトに基づき、経路情報を生成する(S105)。なお、経路の通過点は、経路の生成方法により異なる。例えば、部分空間情報発信装置2を直線で結ぶことにより経路が生成されてもよい。または、空間オブジェクトまたは部分領域の中心から各部分空間情報発信装置2を結ぶ線分により、経路が生成されてもよい。このように、空間オブジェクトまたは部分領域の特定の位置に基づいて、経路が形成されることにより、移動端末3が特定の位置を通過する経路を生成することができる。
部分空間情報生成部15は、空間オブジェクトおよび隣接オブジェクトと、経路情報とを合わせて、部分空間情報を生成する(S106)。ゆえに、部分空間情報は、隣接距離n内の空間オブジェクトと、隣接距離n内の空間オブジェクト内の経路情報とが含まれる。なお、保全情報に基づき、制限されている隣接オブジェクトは除外される。
図10は、部分空間情報が生成されなかった場合の空間情報の一例を示す図である。図10は、図4に示されたあるフロアにおける空間オブジェクトと、経路グラフが示されている。なお、経路グラフは、全てではなく一部が示されているとする。なお、生成される経路グラフのパスは、空間オブジェクトの中央を通るように生成されたとする。
図10の空間情報には、フロアの空間オブジェクト全てが含まれている。また、経路グラフも、複数の空間オブジェクトをまたぐ経路が含まれている。
図11は、部分空間情報の一例を示す図である。図11の部分空間情報は、部分空間情報発信装置2C1に特化したものである。図10の空間情報と比べると、不要とされた空間オブジェクトが存在しない。また、経路グラフも、図10に示された経路グラフの一部となっている。例えば、部分領域Z103−11に係る空間オブジェクトは、部分空間情報に含まれているが、部分領域Z103−12に係る空間オブジェクトは、保全情報に基づき不要と判断されたため、部分空間情報に含まれていない。そのため、部分領域Z103−11に進入するための経路が存在しないため、部屋R103内の経路グラフが部分空間情報から除外されている。
このように、個別に生成された各部分空間情報は、発信する部分空間情報発信装置2に対して特化しており、いずれも空間情報と比べてデータ量が少なくなる。これにより、部分空間情報発信装置2の容量の抑制、移動端末3の処理負荷および消費電力の抑制を図ることができる。
また、部分空間情報に移動経路周辺のオブジェクトが含まれるため、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)方法のように、移動中に経路に対する連続的なマーキングを行い、周辺地図を作成する必要はない。これにより、移動端末3が内蔵するセンサを簡素化でき、導入および運用コストを抑制することができる。
なお、上記フローは一例であり、生成される結果が変わらなければ、処理の順番等は異なっていてもよい。例えば、上記では、部分空間情報発信装置2ごとに処理が行われることを想定して説明したが、情報取得部14が部分空間情報発信装置2全てに対し、S101からS103の処理を行った上で、部分空間情報生成部15が、各部分空間情報発信装置2に対して、S104とS105の処理を行ってもよい。また、保全情報を考慮しない場合は、S103など、保全情報に関する処理は省略される。
次に、部分空間情報発信装置2について説明する。
部分空間情報記憶部21は、部分空間情報生成装置1から送信された部分空間情報を格納する。なお、送信された部分空間情報は、部分空間情報発信装置2自身に対応する部分空間情報であることを想定するが、他の部分空間情報発信装置2の部分空間情報が記憶されてもよい。
部分空間情報更新部22は、部分空間情報生成装置1から、自身に対応する部分空間情報を取得し、部分空間情報記憶部21に記憶されている部分空間情報を更新する。なお、部分空間情報記憶部21は、最新の部分空間情報を管理できればよく、古い部分空間情報を記憶し続けてもよいし、削除してもよい。
なお、部分空間情報更新部22は、移動端末3からの要求を取得し、当該要求に基づき、部分空間情報生成装置1に対し、部分空間情報の配信を要求してもよい。例えば、ユーザが移動端末3を所持しており、直近の部分空間情報を要求した場合などが考えられる。その場合、当該要求は、部分空間情報生成装置1の部分空間情報配信部16を介して、部分空間情報生成部15に伝えられる。部分空間情報生成部15は、図6に示した部分空間情報生成処理を実行した上で、新たに生成された部分空間情報を、要求を行った部分空間情報発信装置2に送信する。なお、要求を行った部分空間情報発信装置2に関する部分空間情報の生成が行われればよい。
部分空間情報発信部23は、部分空間情報記憶部21から、部分空間情報発信装置2自身に対応する部分空間情報を発信する。部分空間情報の発信は、常に行われていてもよいし、移動端末3が移動を行う時間帯または期間に行われてもよい。例えば、移動端末3が夜間に保守作業を行うならば、部分空間情報の発信が日中に行われなくともよい。
また、部分空間情報発信装置2は、他の部分空間情報発信装置2と、情報を共有してもよいし、連携を取ってもよい。例えば、部分空間情報更新部22が、他の部分空間情報発信装置2の稼働状態を定期的に確認してもよい。他の部分空間情報発信装置2が稼働しているか否かは、ICMP(Internet Control Message program)、SNMP(Simple Network Management Protocol)といった公知のネットワーク管理手段を用いればよい。
例えば、部分空間情報発信装置2の1つである部分空間情報発信装置2Bが故障した場合に、部分空間情報発信装置2の1つである部分空間情報発信装置2Aが、部分空間情報発信装置2Bへの経路を含む部分空間情報を提供し続けた場合を考える。部分空間情報発信装置2Aからの部分空間情報を取得した移動端末3が、部分空間情報発信装置2Bに向かうこともあり得る。移動端末3が部分空間情報発信装置2Bに辿り着いたとしても、移動端末3は部分空間情報発信装置2B近傍の部分空間情報を取得できないため、移動端末3は移動ができなくなる。このような事態を防ぐために、部分空間情報発信装置2Aが、部分空間情報発信装置2Bの障害を検知した場合に、部分空間情報から部分空間情報発信装置2Bへの経路情報が除外されることが望ましい。
ゆえに、稼働していない部分空間情報発信装置2が検知された場合は、部分空間情報更新部22が、部分空間情報記憶部21に記憶されている部分空間情報を更新してもよい。例えば、部分空間情報更新部22は、稼働していない部分空間情報発信装置2に係る空間オブジェクトを、部分空間情報から除外しもよい。また、部分空間情報更新部22は、稼働していない部分空間情報発信装置2に係る経路を、部分空間情報から除外してもよい。
なお、部分空間情報更新部22は、部分空間情報に含まれる他の部分空間情報発信装置2が稼働していないと判断した場合、部分空間情報生成装置1に部分空間情報の再生成を要求してもよい。その場合は、部分空間情報生成装置1は、部分空間情報発信装置2の稼働状態を管理しておき、生成する部分空間情報に、稼働していない部分空間情報発信装置2に係る部分空間情報を含まないようにする。
但し、部分空間情報生成装置1が、多数の部分空間情報発信装置2を管理すると、管理負荷が高まる。また、地震等により、施設の停電といった不測の事態が発生した場合に、部分空間情報生成装置1への多量の問い合わせによる過剰な負荷が、部分空間情報発信装置2を停止させる危険性もある。一方、部分空間情報発信装置2が他の部分空間情報発信装置2の一部と連携できるようにすると、負荷が分散し、空間情報配信システムの可用性が高まる。
次に、部分空間情報発信装置2の処理の流れについて説明する。図12は、部分空間情報発信装置2の概略処理のフローチャートの一例を示す図である。
部分空間情報更新部22が部分空間情報生成装置1から部分空間情報を取得し(S201)、部分空間情報記憶部21が取得された部分空間情報を記憶する(S202)。そして、部分空間情報更新部22が、記憶された部分空間情報に含まれる他の部分空間情報発信装置2の稼働状況を確認し、稼働していると判断した場合(S203のYES)は、S205の処理に移る。稼働していないと判断した場合(S203のYES)は、部分空間情報更新部22が稼働していないと判断された部分空間情報発信装置2に係る情報を除外して、部分空間情報を更新する(S204)。そして、部分空間情報発信部23が、新たな部分空間情報を発信し始める(S205)。以上が、部分空間情報発信装置2の概略処理のフローである。
なお、本フローでは部分空間情報に含まれる他の部分空間情報発信装置2の稼働状態を確認したが、稼働状態を確認しない場合は、S203とS204の処理はなくともよい。また、S205の処理にて、部分空間情報発信部23が部分空間情報を発信しているが、部分空間情報発信部23は、S201からS204までの処理の間も、更新される前の部分空間情報を発信し続けていてもよい。
次に、移動端末3について説明する。ここでは、移動端末3が自律移動する場合の構造を説明する。
部分空間情報受信部(情報通信部)31は、部分空間情報発信装置2が発信した部分空間情報を受信する。なお、部分空間情報受信部31は、部分空間情報の受信だけを行ってもよいが、部分空間情報発信装置2に対し、部分空間情報等の要求等を行ってもよい。
部分空間情報更新部32は、受信した部分空間情報に基づき、部分空間情報記憶部33を更新する。
部分空間情報記憶部33は、部分空間情報を記憶する。記憶された部分空間情報は、移動端末3の各構成要素から参照される。また、部分空間情報記憶部33は、移動端末3が移動した経路などの情報も記憶してもよい。
オブジェクト認識部34は、部分空間情報に含まれる空間オブジェクトおよび部分空間情報発信装置の位置に基づき、移動端末3が存在する空間オブジェクトを認識する。また、オブジェクト認識部34は、部分空間情報に含まれるオブジェクトを識別するための識別情報に基づき、空間オブジェクト内のオブジェクトも認識する。識別情報は、例えば、部分空間情報発信装置のID、外観に関する情報などが考えられる。
位置・向き補正部35は、推定される現在の自己位置および向きと、実際の自己位置および向きとの誤差を認識し、移動端末3の位置および向きを補正する。移動端末3は、移動のため現在位置および向きを推定するが、移動、通信、計測の過程において、推定値と実際の値との間に必然的に誤差が生じる。位置・向き補正部35は、移動端末3周囲のオブジェクトに基づき、誤差を認識する。
具体的には、位置・向き補正部35は、オブジェクト認識部34により認識されたオブジェクトの外面までの距離および方向(角度)を、移動端末3周囲の画像に基づき算出する。例えば、オブジェクトの外面の形状の歪み量に基づき、距離および方向が算出されてもよい。そして、算出された距離および方向と、オブジェクトの位置に基づき、自己位置および向きを推定する。なお、移動端末3周囲の画像は、移動端末3に内蔵されるセンサにより取得され、移動端末の各構成要素が取得できるものとする。また、位置・向き補正部35が補正をするときの対象となるオブジェクトは部分空間情報発信装置が想定されるが、特に限られるものではない。
移動経路設定部36は、部分空間情報に含まれる部分空間情報発信装置2のうちから、1つの部分空間情報発信装置2を移動先として選択する。選択方法は、移動端末3の目的地、移動端末3の役割、部分空間情報発信装置2が選択される優先度などに基づき判断されればよい。そして、移動経路設定部36は、複数の経路のうちから、移動元が部分空間情報を取得した部分空間情報発信装置2であり、移動先が選択された部分空間情報発信装置2である経路を選択する。経路が複数ある場合は、移動距離、通過地点、周囲の設備などに基づき選択すればよい。
計測情報取得部37は、移動端末3に内蔵されたセンサにより計測されたデータを取得する。計測情報取得部37自体がセンサであってもよいし、計測情報取得部37がセンサと通信または電気的に接続されていてもよい。センサの種類は特に限られる物ではない。加速度センサでもよいし、角速度センサでもよい。また、計測されるデータは、数値でもよいし、画像でもよい。異なる種類のセンサが搭載されていてもよい。
位置・向き算出部は、計測情報取得部37が取得した計測データに基づき、移動端末3の位置と向きを算出する。なお、実際には、加速度センサ、角速度センサの計測結果で算出される位置および向きは、前回の計測結果に対しての相対的な位置と向きである。ゆえに、位置・向き算出部は、移動開始から今までに算出された位置および向きを累積することにより、現在の位置および向きを算出する。
移動調整部39は、位置・向き算出部により算出された現在の位置および向きと、移動中の経路に係る経路情報とに基づき、移動端末3の移動を調整し、移動端末3を経路上に移動させる。例えば、現時点において存在する予定の位置に移動してもよいし、進行方向上にある経路の一地点に移動するように、移動端末3の向きを変えてもよい。これにより、移動端末3は、経路から外れた位置に移動していても元に戻ることができる。なお、実際の移動端末3の位置の調整は、移動端末3が備える車輪等を、公知の移動制御手法にて制御すればよい。
次に、移動端末3の処理について説明する。移動端末3が移動を開始する前に行われる処理と、移動端末3が移動を開始してからの処理とに分けて、説明する。
図13は、移動開始前の移動端末3の概略処理のフローチャートの一例を示す図である。まず、移動端末3の部分空間情報受信部31は、移動開始前に近傍の部分空間情報発信装置2から部分空間情報を取得し(S301)、部分空間情報更新部32が部分空間情報記憶部33内の部分空間情報を更新する(S302)。なお、ここでは、移動端末3の収容場所が、部分空間情報発信装置2の提供範囲内であることを想定する。つまり、移動端末3が移動を開始する前に、部分空間情報受信部31が部分空間情報を取得できることを想定する。なお、移動端末3は、移動開始前にランダムに動くなどして、部分空間情報発信装置2を探索するようにしてもよい。
オブジェクト認識部34は、更新された部分空間情報に基づき、移動端末3が存在する空間オブジェクトを認識する(S303)。また、位置・向き補正部35が、認識された空間オブジェクトにおける移動端末3の自己位置および向きを補正して設定する(S304)。なお、地磁気方式を用いて当該誤差を補正する場合、磁場を乱す設備の周辺では補正することはできないという制約があるが、本方式では、磁場を乱す設備の周辺でも補正することができる。
移動経路設定部36は、部分空間情報に含まれる部分空間情報発信装置2のうちから、1つの部分空間情報発信装置2を移動先として選択し、経路を設定する(S305)。これにより、取得した部分空間情報に対応する部分空間情報発信装置から、部分空間情報に含まれる他の部分空間情報発信装置までの経路が設定される。部分空間情報に含まれる部分空間情報発信装置2がない場合など、次の経路が存在しない場合(S306のNO)は、処理は終了する。次の経路が存在する場合(S306のYES)は、移動端末3が移動を開始する(S307)。
図14は、移動開始後の移動端末3の概略処理のフローチャートの一例を示す図である。計測情報取得部37が、移動端末3に内蔵されたセンサ等による計測データを取得し(S401)、位置・向き算出部が、当該計測データに基づき、移動端末3の位置と向きを算出する(S402)。
移動調整部39は、位置・向き計算部38により算出された現在の位置および向きに基づき、移動を調整する(S403)。S401からS403の処理は、部分空間情報受信部31が、移動先である部分空間情報発信装置2の識別IDを取得するまで繰り返される(S404のNO)。部分空間情報受信部31が移動先である部分空間情報発信装置2の識別IDを取得した場合(S404のYES)は、部分空間情報更新部32が移動先である部分空間情報発信装置2からの部分空間情報により、部分空間情報を更新する(S405)。
また、部分空間情報受信部31は、部分空間情報の他に、部分空間情報発信装置2の特性情報を取得する(S406)。部分空間情報発信装置2の特性情報とは、部分空間情報発信装置2の属性、特徴などの特性を示す情報で有り、移動端末3が部分空間情報発信装置2の位置を認識するために用いられる。例えば、部分空間情報発信装置2が放出する可視光の波長、または部分空間情報発信装置2の外観に関する情報などがある。外観に関する情報とは、部分空間情報発信装置2の形状、模様、色彩といったものを含む形態に関する情報である。
オブジェクト認識部34は、移動端末3周囲の画像と部分空間情報発信装置2の特性情報とに基づき、行先の部分空間情報発信装置2を認識する(S407)。
位置・向き補正部35は、部分空間情報発信装置2の画像に基づき、部分空間情報発信装置2の外面までの距離と角度を算出する。そして、算出された距離および角度に基づき、移動端末3の現在位置および向きの補正を行う(S408)。
位置・向き補正部35または移動調整部39は、移動端末3が移動した実際の移動経路を移動履歴として記録する(S409)。移動履歴には、経路ID、通過した地点、補正された位置座標および向きの値などが記録されてもよい。また、移動履歴は、移動端末3の部分空間情報記憶部33に記憶されてもよいし、部分空間情報生成装置1および部分空間情報発信装置2に送信されてもよい。
そして、移動開始前の移動端末3の概略処理と同様に、移動経路設定部36が次の行先までの経路を設定し(S410)、次の経路が存在しない場合(S411のNO)は処理が終了する。次の経路が存在する場合(S412のYES)は、移動が開始される(S412)。そして、再びS401の処理が行われることとなる。このようにして、移動ロボットの自律移動を可能にする。以上が、移動開始後の移動端末3の概略処理のフローである。
図15は、移動端末3の移動の軌跡の一例を示す図である。移動端末3が、部分空間情報発信装置2Aから部分空間情報発信装置2Bまで移動することを想定する。点線は、経路を示す。部分空間情報発信装置2Aから部分空間情報発信装置2Bまでの経路は、廊下C3上にあるとする。廊下C3は、2つの曲がり角を有する。曲がり角には、通過点が定められており、移動端末3は当該通過点を通過するように設定される。また、部分空間情報発信装置2Aを中心とした円6Aと、部分空間情報発信装置2Bを中心とした円6Bは、各部分空間情報発信装置の部分空間情報の提供範囲を示す。
実線は、移動端末3の移動の軌跡を示す。軌跡が示すように、移動端末3は経路上を移動しようとするが、移動するにつれて、実際の自己位置と経路との間に位置ずれが生じる。ゆえに、図14に示すフローのS401からS403までの処理が必要となる。
移動端末3が位置の補正をしつつ移動することにより、移動端末3は部分空間情報発信装置2Bの部分空間情報の提供範囲6Bに到達することができる。逆に、移動端末3が位置の補正をしない場合、経路の長さと同じ距離を移動したにも関わらず、部分空間情報の提供範囲6Bに到達できず、移動端末3が停止するという事態も生じ得る。
そして、図14に示すフローのS405からS409までの処理が行われた上で、移動端末3は次の行先である部分空間情報発信装置2を決定し、新たな行先へ移動を開始する(S410からS412)。そして、移動端末3は、複数の部分空間情報発信装置2を経由することにより、目的とする行先に辿りつく。このように、部分空間情報発信装置2から取得した部分空間情報に目的地までの空間情報が含まれていなくとも、経由地である部分空間情報発信装置2までの空間情報が含まれていることにより、移動端末3が複数の部分空間情報発信装置2を経由して目的とする行先に辿りつくことができる。
なお、S408の処理において、位置・向き補正部35は、移動端末3の現在位置および向きの補正を行うが、当該補正は、自己位置の座標を更新するとしてもよい。または、移動端末3が本来予定されていた到着位置7に移動するようにしてもよい。このようにして、移動端末3の正確な移動を可能にする。
以上のように、本発明の一実施形態によれば、部分空間情報生成装置1は、部分空間情報発信装置2の位置に基づき、施設に係る空間情報の一部であって部分空間情報発信装置2個別の部分空間情報を、各部分空間情報発信装置2ごとに生成する。各部分空間情報発信装置2は、自身に対応する部分空間情報を発信する。これにより、各部分空間情報発信装置2が配信する部分空間情報は、空間情報よりデータ量が小さいながらも、部分空間情報処理装置にとって必要な空間情報が含まれている。ゆえに、部分空間情報処理装置の処理負荷および消費電力の低減が望まれる。
また、上記により、移動端末3の小型化、製造コストの削減等が見込まれる。移動端末3が施設内の保守を行うロボット等であれば、保守作業の自動化、効率化が実現できる。また、保全情報、オブジェクトの属性を用いることにより、施設のセキュリティを確保することができる。また、部分空間情報発信装置2も部分空間情報を記憶する記憶部の容量を抑えることができ、部分空間情報発信装置2を小型化できる。
また、部分空間情報発信装置2を非常灯に搭載し、部分空間情報発信装置2が非常時でも部分空間情報を発信することができれば、非常時において、移動端末3も当該施設から自動で避難することができる。例えば、移動端末3が震災発生を検知した場合は、移動端末3が自動で移動を開始するように設定されているとする。また、部分空間情報発信装置2は、図2に示したように、施設内の電力供給システムが停止しても、電力を供給する電池と接続されていることにより、部分空間情報を発信し続けるとする。また、部分空間情報発信装置2は、上述のように、稼働していない他の部分空間情報発信装置2への経路を削除して、部分空間情報を発信するものとする。そうすれば、移動端末3は震災により停止した部分空間情報発信装置2を避けて、稼働している部分空間情報発信装置2を経由して、外まで辿り着くことができる。
なお、上記に説明した実施形態における部分空間情報生成装置1、部分空間情報発信装置2、移動端末3の各処理は、ソフトウェア(プログラム)によって実現することが可能である。よって、上記に説明した実施形態は、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用い、コンピュータ装置に搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
図16は、本発明の一実施形態に係る空間情報配信システムの構成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。当該構成装置である、部分空間情報生成装置1、複数の部分空間情報発信装置2、および移動端末3(部分空間情報処理装置)3は、プロセッサ81と、主記憶装置82と、補助記憶装置83と、ネットワークインタフェース84と、デバイスインタフェース85と、入力装置86と、出力装置87とを備え、これらがバス88を介して接続されたコンピュータ装置8として実現できる。なお、ハードウェアの各構成要素は、図16のように1つでもよいし、複数でもよい。
本実施形態における部分空間情報生成装置1、部分空間情報発信装置2、または移動端末3は、各装置で実行されるプログラムをコンピュータ装置8に予めインストールすることで実現してもよいし、プログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶して、あるいはネットワークを介して配布して、コンピュータ装置8に適宜インストールすることで実現してもよい。
プロセッサ81は、コンピュータの制御装置及び演算装置を含む電子回路である。プロセッサ81は、コンピュータ装置8の内部構成の各装置などから入力されたデータやプログラムに基づいて演算処理を行い、演算結果や制御信号を各装置等に出力する。具体的には、プロセッサ81は、主記憶装置82または補助記憶装置83に記憶されたOS(オペレーティングシステム)およびアプリケーションを実行することにより、各装置の構成要素の処理を実現する。
なお、この「プロセッサ」という用語は広く解釈されるべきであり、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、マイクロプロセッサなどを包含するものとする。また、デジタル信号プロセッサ、グラフィックスプロセッサ、周辺装置用プロセッサなど、プロセッサを補助するためのプロセッサが含まれていてもよい。
主記憶装置82は、プロセッサ81が実行する命令、および各種データ等を一時的に記憶するメモリ装置であり、DRAM等の揮発性メモリでも、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。
補助記憶装置83は、プログラムやデータ等を永続的に記憶する記憶装置であり、例えば、ハードディスク、SAN(Storage area network)、光ディスク、フラッシュメモリ、および磁気テープなどがある。
ネットワークインタフェース84は、無線または有線により、通信ネットワーク4に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース84は、既存の通信規格に適合したものを用いればよい。各構成装置で通信を行う構成要素は、ネットワークインタフェース84により実現される。
デバイスインタフェース85は、外部記憶媒体9と接続するインタフェースである。接続する規格は特に限られるものではない。
外部記憶媒体9は、ネットワークインタフェース84とデバイスインタフェース85を介して、コンピュータ装置8に接続される。外部記憶媒体9は、HDD、CD−R、CD−RW、DVD−RAM、DVD−R、NAS(Network Attached Storage)等の任意の記録媒体でよい。
各装置の記憶部は、主記憶装置82、補助記憶装置83、外部記憶媒体9またはその組み合わせにより実現される。例えば、1つまたは複数の、主記憶装置82、補助記憶装置83、または外部記憶媒体9により、記憶部全体が実現されてもよい。また、記憶部に記憶されるデータの一部と他の一部とが異なる場所に記憶されてもよい。例えば、記憶部に記憶されるデータの一部は補助記憶装置83に記憶され、データの他の一部は外部記憶媒体9により記憶されてもよい。また、補助記憶装置83に記憶部が実現されている場合に、補助記憶装置83に記憶されたデータが主記憶装置82にコピーされることにより、主記憶装置82でも記憶部が実現されてもよい。
入力装置86は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスを備える。入力装置86からの入力デバイスの操作による操作信号はプロセッサ81に出力される。出力装置87は、例えば、画像を表示するための表示装置でもよいし、音声などを出力する装置などでもよい。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、スピーカなどがあるが、これらに限られるものではない。入力装置86および出力装置87により、部分空間情報生成装置1の入出力I/F13が実現される。
なお、入力装置86または出力装置87は、ネットワークインタフェース84またはデバイスインタフェース85を介して、コンピュータ装置8に接続されてもよい。
上記に、本発明の一実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。