以下、本願発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本願発明の第1の実施の形態に係る信号処理装置100の構成を概念的に示すブロック図である。尚、後述する第2乃至第6の実施形態に係る信号処理装置においては、「判定部」の構成が異なるだけなので、説明の便宜上、これらの実施形態においても、図1を改めて参照することとする。信号処理装置100は、第一信号(注目すべき所望の音声信号)と第二信号(雑音(ノイズ))とを含む混在信号(入力信号)から、第二信号を抑圧することによって第一信号を強調した出力信号を生成する装置である。本実施形態に係る信号処理装置100は、例えば、デジタルカメラ、ノートパソコン、携帯電話等の装置の一部として機能する。
本実施形態に係る信号処理装置100は、変換部101、判定部102、推定部103、初期化部104、抑圧部105、及び、逆変換部106を備えている。以下、これらの各構成について詳細に説明する。
(変換部101)
図2は、本実施形態に係る変換部101の構成を概念的に示すブロック図である。図2に示す通り、変換部101は、フレーム分割部1011、窓関数乗算部1012、及び、フーリエ変換部1013を含む。
フレーム分割部1011には、混在信号が、サンプル値系列として入力される。フレーム分割部1011は、混在信号サンプル(サンプル値系列)を、K/2サンプル(Kは2以上の任意の偶数、「/」は除算を表す(以下同様))ごとに分割することによって複数のフレームを構成(生成)する。フレーム分割部1011は、フレームに分割された混在信号サンプルを、窓関数乗算部1012に入力する。
窓関数乗算部1012は、フレーム分割部1011から入力された混在信号サンプルと、窓関数(window function)であるw(t)(tは時間を示す変数)との乗算を行う。第nフレーム(nは任意の自然数)の混在信号x(t,n)(t=0, 1, …, K-1)に対してw(t)と乗算された(窓がけ(windowing)された)信号x-(t,n)(「-」はxの上部に記載されていることとする)は、数1が示す数式により表される。
窓関数乗算部1012は、連続する2つのフレームの一部を重ね合わせた(オーバラップした)状態で窓がけしてもよい。例えば、重ね合わせる長さが、フレーム長の50%とする場合、窓関数乗算部1012は、t=0, 1, …, K/2-1に対して、数2が示す信号x-(t,n)を出力する。
窓関数乗算部1012は、実数信号に対しては、左右対称窓関数を使用する。また、窓関数は、変換部101からの出力が逆変換部106に直接入力された場合に、混在信号と出力信号とが計算誤差を除いて一致するように設計される。このことは、「w2(t)+w2(t+K/2)=1」となることを意味する。
以後、連続する2フレームについて、フレーム長の50%を重ね合わせた状態で窓がけする場合を例として説明する。窓関数w(t)(t=0, 1, …, K-1)としては、例えば、数3が示すハニング窓を用いることができる。
窓関数としては、このほかにも、ハミング窓、三角窓など、様々な関数が知られており、これらの関数を採用してもよい。窓関数乗算部1012は、フレーム分割部1011から入力された混在信号サンプルと、窓関数とを乗算した結果を、フーリエ変換部1013に入力する。
フーリエ変換部1013は、窓関数乗算部1012から入力された信号に対してフーリエ変換を施すことによって、当該信号を複数の異なる周波数成分に分割する。すなわち、フーリエ変換部1013は、当該信号を、混在信号スペクトルX(k,n)に変換する。フーリエ変換部1013は、混在信号スペクトルX(k,n)を、位相成分である混在信号位相スペクトルargX(k,n)と、振幅成分である混在信号振幅スペクトル|X(k,n)|とに分離する。フーリエ変換部1013は、混在信号位相スペクトルargX(k,n)を逆変換部106へ入力し、混在信号振幅スペクトル|X(k,n)|を、判定部102、推定部103、及び、抑圧部105へ入力する。フーリエ変換部1013は、振幅スペクトル|X(k,n)|の代わりに、その2乗に相当するパワースペクトル|X(k,n)|2を利用してもよい。
(逆変換部106)
図3は、本実施形態に係る逆変換部106の構成を概念的に示すブロック図である。図3に示す通り、逆変換部106は、逆フーリエ変換部1061、窓関数乗算部1062、及び、フレーム合成部1063を含む。
逆フーリエ変換部1061は、抑圧部105から入力された出力信号振幅スペクトル|Y(k,n)|と、変換部101から入力された混在信号位相スペクトルargX(k,n)とを用いて、数4が示す通り、出力信号スペクトルY(k,n)を求める。数4におけるjは、虚数を表す符号である。また、本願において、「||」は絶対値を表すこととする。
逆フーリエ変換部1061は、求めた出力信号スペクトルY(k,n)に対して逆フーリエ変換を行うことによって、1フレームがK個のサンプルを含む時間領域のサンプル値系列y(t,n)(t=0, 1, …, K-1)を生成し、生成したサンプル値系列y(t,n)を、窓関数乗算部1062へ入力する。
窓関数乗算部1062は、逆フーリエ変換部1061から入力されたサンプル値系列y(t,n)と、窓関数w(t)との乗算を行う。窓関数乗算部1062は、フレーム合成部1063に対して、数5が示す信号y-(t,n)(「-」はyの上部に記載されていることとする)を入力する。
フレーム合成部1063は、窓関数乗算部1062から出力された隣接する2つのフレームを、K/2サンプルずつ取り出して重ね合わせ、数6に示す通り、t=0, 1, …, K/2-1における出力信号y^(t,n)(「^」はyの上部に記載されていることとする)を得る。フレーム合成部1063は、得られた出力信号y^(t,n)を外部へ出力する。
尚、変換部101及び逆変換部106が行う変換処理は、フーリエ変換(逆フーリエ変換)に限定されない。変換部101及び逆変換部106は、フーリエ変換に代えて、例えば、アダマール変換、ハール変換、ウェーブレット変換等、他の変換処理を行ってもよい。信号処理装置100は、ハール変換を用いることによって、乗算が不要となるので、必要な計算資源の量を削減することができる。また、信号処理装置100は、ウェーブレット変換を用いることによって、周波数によって時間解像度が異なるようにできるので、第二信号の抑圧効率を向上することができる。
また、図1に示す信号処理装置100は、変換部101と逆変換部106とを備えるが、信号処理装置100は、変換部101及び逆変換部106を備えない場合もある。その場合は、判定部102、推定部103、及び、抑圧部105に対して、外部から混在信号が直接入力される。そして、抑圧部105は、出力信号を直接外部に出力する。この場合、信号処理装置100は、必要な計算資源の量を削減することができる。
(推定部103)
図1に示す推定部103は、変換部101から入力された混在信号振幅スペクトルと、初期化部104から入力された初期化を指示する情報に基づいて、混在信号に含まれる第二信号のパワースペクトルを推定する。推定部103によって推定された第二信号のパワースペクトルを、以降、「推定第二信号パワースペクトル」と称する。推定部103は、一般的に、現在までに入力された混在信号の状態を示す情報に基づいて、第二信号パワースペクトルを推定する。推定部103による第二信号パワースペクトルを推定する方法としては、例えば、非特許文献1乃至4に記載の方法など、様々な推定方法が利用できる。非特許文献1乃至4に記載の方法では、混在信号振幅スペクトルを2乗することにより得られる混在信号パワースペクトルを用いて、第二信号パワースペクトルを推定する。
ところで、非特許文献1には、推定第二信号パワースペクトルを、混在信号振幅スペクトルが入力され始めた(推定処理が開始された)ときの混在信号パワースペクトルを平均化した値とする方法が示されている。この場合、推定処理が開始された直後には、第一信号(目的音)が含まれないという条件を満たす必要がある。
また、非特許文献3には、推定第二信号パワースペクトルを、第一信号が存在していないフレームの混在信号パワースペクトルの平均値とする方法が示されている。この方法では第一信号の存在を検出する必要がある。第一信号が存在する区間(第一信号区間)は、例えば出力信号のパワー(大きさ)により検知される。
信号処理装置100が理想的に動作する場合、出力信号は第一信号と一致する。また、第一信号や第二信号のレベル(大きさ)は、通常、隣接フレーム間において大きく変化しない。これらのことから、推定部103は、1フレーム分過去の出力信号レベルに基づき、第一信号区間であるか否かの判定を行う。推定部103は、1フレーム分過去の出力信号の大きさが閾値以上の場合、現在のフレームを第一信号区間と判定する。第二信号パワースペクトルは、第一信号区間と判定されなかったフレームにおける混在信号パワースペクトルを平均化することによって推定することができる。
また、非特許文献4には、推定第二信号パワースペクトルを、混在信号パワースペクトルの最小値(最小統計量)から求める方法が示されている。この方法では、推定部103は、一定時間内における混在信号パワースペクトルの最小値を保持し、その最小値に基づいて、第二信号パワースペクトルを推定する。混在信号パワースペクトルの最小値は、一般的に第二信号のスペクトル形状と類似するので、第二信号パワースペクトルの推定値として用いることができる。しかしながらこの場合、その最小値は、本来の第二信号の大きさより小さくなる。したがって、推定部103は、その最小値を適切に増幅させた値を、推定第二信号パワースペクトルとする。
これらの非特許文献に記載された方法の他、推定部103は、メジアンフィルタを用いて、推定第二信号パワースペクトルを求めてもよい。また、推定部103は、非特許文献2に記載されている通り、第二信号がゆっくり変動するという性質を利用することによって、推定第二信号パワースペクトルを求めてもよい。変動する第二信号に追従するこの方法では、先ず「第一信号」対「第二信号」の大きさの比の推定値を得るために、推定部103は、混在信号パワースペクトルを、1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトルにより除算する。推定部103は、次に、得られた商が大きいほど小さな値をとる関数を用いることによって重みを計算し、混在信号パワースペクトルに重み付けする。そして、推定部103は、過去に同様の方法によって重み付けされた混在信号パワースペクトルを複数用いて平均化し、その平均値を推定第二信号パワースペクトルとする。この場合、第一信号成分が多く含まれた混在信号パワースペクトルに対しては小さな重みづけがなされるので、推定部103は、第一信号の影響をほとんど受けることなく、第二信号パワースペクトルの推定を継続的に行うことができる。
推定部103は、また、変換部101において得られる周波数成分を複数統合したのち、第二信号の推定を行うこともできる。この場合、統合後の周波数成分の数は、統合前の周波数成分の数よりも少なくなる。より具体的には、推定部103は、周波数成分の統合によって得られる統合周波数成分に対して、共通の推定第二信号を求め、その共通の推定第二信号を、同じ統合周波数成分に属する個々の周波数成分に対して共通に用いればよい。このように、推定部103は、複数の周波数成分を統合してから第二信号を推定した場合、適用する周波数成分の数が少なくなるので、推定処理に要する演算量を削減することができる。
(判定部102)
図4は、本実施形態に係る判定部102の構成を概念的に示すブロック図である。図4に示す通り、判定部102は、判定実行部1021を含む。
判定実行部1021は、変換部101から入力された混在信号振幅スペクトルと、推定部103から入力された過去の推定第二信号パワースペクトルとを用いて、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たすか否か(過小か否か)を判定する。この判定結果は、推定部103が推定第二信号パワースペクトルを求める際に使用される。従って、この判定結果を求めるために用いられる推定第二信号パワースペクトルは、過去に推定された結果が利用される。本実施形態では、一例として、過去の推定第二信号パワースペクトルとして代表的な値である、1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2を用いて判定する場合について説明する。
判定実行部1021は、1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2と、混在信号振幅スペクトルを2乗した混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2を変数とする線形写像関数により算出した閾値とを比較する。本実施形態では、混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2を、代表的な線形写像関数である定数倍(すなわちα1(k,n)倍)することによって当該閾値を算出する場合について説明する。α1(k,n)は0以上の実数である。判定実行部1021は、1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2がα1(k,n)|X(k,n)|2よりも小さい場合、推定第二信号パワースペクトルは基準を満たさない(過小推定である)と判定する。
1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2との比較に用いる閾値の計算方法は、混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2の線形写像関数を用いた方法に限定されない。例えば、α1(k,n)|X(k,n)|2+C(k,n)のような一次関数を採用することも可能である。その場合、α1(k,n)とC(k,n)の値を小さくすれば、基準を満たさないと判定される可能性が高くなるので、推定第二信号の大きさが基準を満たさない(過小推定である)状態にあることを見逃しにくくなる。その他にも、高次の多項式関数や非線形関数などを、上述した閾値の計算に用いることも可能である。
判定実行部1021が用いる過去の推定第二信号パワースペクトルは、1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2に限定されない。例えば、判定実行部1021は、過去の推定第二信号パワースペクトルとして、過去数フレーム分の平均値を用いることも可能である。判定実行部1021は、このように平均化することによって、推定第二信号パワースペクトルの時間変動を抑えられるので、判定精度を向上できる。混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2についても同様であり、判定実行部1021は、過去数フレーム分の平均値を用いることによって、混在信号パワースペクトルの時間変動を抑えられるので、判定精度を向上できる。平均値を求める方法としては、上述した移動平均のほか、一次リーク積分も有効な方法である。また、判定実行部1021は、平均では無く、過去数フレーム分から最小値を選択する方法を用いることも可能である。
判定実行部1021は、判定精度を改善するために、上述した推定第二信号パワースペクトルと混在信号パワースペクトルとの関係を確認することに加えて、それぞれの値もふまえて判定することも有効である。判定実行部1021は、例えば、1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2が所定の閾値よりも小さい場合、基準を満たさないと判定する。これにより、判定実行部1021は、推定第二信号パワースペクトルと混在信号パワースペクトルの両方の値が、偶然にも小さいことによって、相対的な関係だけでは基準を満たさないと判定できない場合にも、正しく判定することができる。
(初期化部104)
図1に示す初期化部104は、判定部102によって推定第二信号パワースペクトルの大きさが基準を満たさないと判定された場合に、推定部103における混在信号の状態を示す情報を、推定部103が推定処理を開始した直後の状態に戻す(変更する)処理(以降、「初期化処理」と称する)を行う。例えば、推定部103が上述した非特許文献4に記載された方法により推定処理を行う場合、初期化部104は、初期化処理として、上述した最小値を予め設定された値に変更する。また、推定部103が上述した非特許文献2に記載された方法により推定処理を行う場合、初期化部104は、初期化処理として、推定部103が、過去の推定値を用いた更新を行わずに、入力された混在信号振幅スペクトルを2乗した値である混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2を推定値とするように制御する。
この初期化処理の方法としては、初期化が行われる直前の推定値を考慮した方法も有効である。例えば、初期化部104は、初期化処理として、初期化用に予め設定された値の代わりに、初期化用の設定値と初期化が行われる直前の推定値を混合した値に変更する。この場合、初期化部104は、初期化直後に推定値が急変することを回避できるので、第二信号を抑圧する度合いが急変することに伴い発生する音質低下を回避することができる。また、推定部103が、初期化される前の推定値を複数フレーム分記憶しておき、初期化部104は、初期化処理として、推定部103が、記憶したフレームの平均値や最小値などの統計量を初期値に用いるように制御してもよい。初期化部104は、これにより、信号処理装置100の出力信号の品質が急変することを回避できる。尚、初期化部104は、推定部103に内包されてもよい。
(抑圧部105)
図5は、本実施形態に係る抑圧部105の構成を概念的に示すブロック図である。図5に示す通り、抑圧部105は、ゲイン計算部1051、及び、乗算部1052を含む。
ゲイン計算部1051は、既存の技術を用いて、第二信号を抑圧する際に使用する値であるゲインG(k,n)を求めることができる。ゲイン計算部1051は、例えば非特許文献5に記載されている通り、第一信号との平均2乗誤差を最小にする最適推定値をゲインとして求めてもよい。この場合、ゲイン計算部1051は、ゲインG(k,n)を、数7に示す通り算出する。
ゲイン計算部1051は、また、非特許文献6に記載された方法を用いて、ゲインG(k,n)を求めても良い。この場合、ゲイン計算部1051は、ゲインG(k,n)を、数8に示す通り算出する。数8において、α0、β0、γ1、γ2は、いずれも実数であり、α0とβ0は、それぞれα0>1、0<β0<1を満たすこととする。
ゲイン計算部1051は、あるいは、非特許文献1や非特許文献7に記載された方法を用いて、ゲインG(k,n)を計算してもよい。
図5に示す乗算部1052は、ゲイン計算部1051によって求めたゲインG(k,n)を、混在信号振幅スペクトル|X(k,n)|と乗算したG(k,n)|X(k,n)|を、出力信号振幅スペクトルとして求める。乗算部1052は、求めた出力信号振幅スペクトルを逆変換部106へ入力する。
次に図6のフローチャートを参照して、本実施形態に係る信号処理装置100の動作(処理)について詳細に説明する。
変換部101は、第一信号と第二信号とを含む混在信号から、混在信号の振幅スペクトル及び位相スペクトルを生成する(ステップS101)。推定部103は、変換部101により生成された混在信号の振幅スペクトルから第二信号を推定し、その推定結果として、推定第二信号を生成する(ステップS102)。判定部102は、混在信号の振幅スペクトルと推定第二信号とに基づき、推定第二信号の大きさが基準を満たすか否か(過小推定か否か)を判定する(ステップS103)。
推定第二信号の大きさが基準を満たす場合(ステップS104でYes)、抑圧部105は、推定第二信号を使用して第二信号を抑圧することにより、出力信号の振幅スペクトルを生成する(ステップS106)。推定第二信号の大きさが基準を満たさない場合(ステップS104でNo)、初期化部104は、推定部103における現在までに入力された混在信号の状態を示す情報を、第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に変更する初期化処理を行い(ステップS105)、処理はステップS106へ進む。
逆変換部106は、抑圧部105により生成された出力信号の振幅スペクトルと、変換部101により生成された混在信号の位相スペクトルとを使用して出力信号を生成して、生成した出力信号を外部に出力し(ステップS107)、処理はステップS101へ戻る。
本実施形態に係る信号処理装置100は、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定できる。その理由は、信号処理装置100は、推定第二信号の大きさが基準を満たすか否かを判定し、基準を満たさない場合は、第二信号の推定に使用する混在信号の状態を示す情報を、推定処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に変更する初期化処理を行うからである。
以下に、本実施形態に係る信号処理装置100によって実現される効果について、詳細に説明する。
携帯電話など様々な音声端末において使用されている第二信号推定技術は、一般的に、例えば雑音などの非所望信号である第二信号の大きさが突然大きくなることを想定していない。このため、混在信号に含まれる第二信号の大きさが突然大きくなった場合、第二信号の推定を正確に行うことができず、出力信号の品質が低下するという問題がある。
このような問題に対して、本実施形態に係る信号処理装置100では、推定部103は、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号における、第二信号を現在までに入力された混在信号の状態を示す情報に基づいて推定し、推定結果として、推定第二信号を生成する。判定部102は、混在信号及び推定第二信号に基づいて、推定第二信号の大きさが、基準を満たすか否か(過小か否か)を判定する。初期化部104は、判定部102によって、推定第二信号の大きさが基準を満たさないと判定された場合に、当該混在信号の状態を示す情報を、第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に変更する初期化処理を行う。抑圧部105は、混在信号に含まれる第二信号を、推定第二信号を使用して抑圧することによって出力信号を生成する。
すなわち、本実施形態に係る信号処理装置100は、大きさが突然大きくなった第二信号に追随できるように、第二信号を推定する際に使用する混在信号の状態を示す情報を、第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に戻す(変更する)。これにより、本実施形態に係る信号処理装置100は、混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することによって、雑音抑圧処理後の出力信号の品質を向上することができる。
<第2の実施形態>
次に、本願発明の第2の実施形態に係る信号処理装置100Aについて説明する。本実施形態に係る信号処理装置100Aは、図1に示す通り、変換部101、判定部202、推定部103、初期化部104、抑圧部105、及び、逆変換部106を備えている。本実施形態に係る信号処理装置100Aは、判定部202を除く構成については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る判定部202の構成を概念的に示すブロック図である。図7に示す通り、判定部102は、判定実行部2021と、相対関係計算部2022と、を含む。
本実施形態に係る判定部202は、第1実施形態に係る判定部102と同様に、推定部103によって過去に推定された推定第二信号パワースペクトルを、判定処理を行う際に用いる。したがって、本実施形態においても、第1実施形態に係る判定部102につて説明したときと同様に、判定部202が、1フレーム分過去の推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2を用いて判定する場合について説明する。
相対関係計算部2022は、変換部101から入力された混在信号振幅スペクトルの2乗に相当する混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2と、推定部103から入力された推定第二信号パワースペクトル|N(k,n-1)|2との相対関係を示す値を算出する。ここで相対関係とは、単純な大小関係のほか、両者の差分あるいは比のことである。例えば、相対関係を大小関係により示す場合、相対関係計算部2022は、相対関係D(k,n)を、数9に示す通り算出する。
数9において、a及びbは実数である。また、相対関係を差分により示す場合、相対関係計算部2022は、相対関係D(k,n)を、数10に示す通り算出する。
相対関係計算部2022は、また、相対関係D(k,n)を、数11に示す通り、対数の差分として算出してもよい。この場合、相対関係計算部2022により算出される値は、混在信号パワースペクトルと推定第二信号パワースペクトルとの比に相当する。
相対関係計算部2022は、混在信号パワースペクトルの瞬時的な急変に伴う誤判定を回避するために、混在信号パワースペクトル及び推定第二信号パワースペクトルを平滑化したのちに、相対関係を算出してもよい。この平滑化の方法の代表例としては、例えば、移動平均と一次リーク積分とが挙げられる。相対関係計算部2022は、平滑化の方法として、時間方向の移動平均を採用した場合、平滑化した混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2 barを、数12に示す通り算出する。数12において、M1は1以上の整数である。
相対関係計算部2022は、平滑化の方法として、一次リーク積分を採用した場合、平滑化した混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2 barを、数13に示す通り算出する。数13において、α1は0<α1<1を満足する実数である。
相対関係計算部2022は、また、ローパスフィルタ、あるいはメジアンフィルタ、あるいはεフィルタを用いて、混在信号パワースペクトル及び推定第二信号パワースペクトルを平滑化してもよい。相対関係計算部2022は、また、平滑化したのちに相対関係を算出するのではなく、相対関係を算出したのちに平滑化してもよい。この場合、相対関係計算部2022は、平滑化の回数を削減できるので、計算量を削減することができる。
判定実行部2021は、相対関係計算部2022により算出された相対関係を示す値を用いて、推定第二信号が基準を満たすか否かを判定する。判定実行部2021は、例えば、第1の実施形態に係る判定部102と同様に、推定第二信号パワースペクトルが混在信号パワースペクトルよりも小さい場合に、推定第二信号が基準を満たさないと判定する。したがって、例えば、相対関係計算部2022により算出される相対関係が、数9に示す通り単なる大小関係により示される場合、判定実行部2021は、相対関係を示す値が「a」となるときに、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たさないと判定する。判定実行部2021は、相対関係が数10あるいは数11に示す通りである場合、相対関係D(k,n)が予め定められた閾値を上回っているときに、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たさないと判定する。
本実施形態に係る信号処理装置100Aは、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することができる。その理由は、第1の実施形態について説明した通りである。
また、本実施形態に係る判定部202は、混在信号パワースペクトルと推定第二信号パワースペクトルとの相対関係を用いて判定する。すなわち、本実施形態に係る判定部202は、推定第二信号パワースペクトルの状態を参照するので、混在信号パワースペクトルのみをベースに判定を行う第1の実施形態よりも、判定精度を改善する。これにより、本実施形態に係る信号処理装置100Aは、出力信号の品質をさらに向上することができる。
<第3の実施形態>
次に、本願発明の第3の実施形態に係る信号処理装置100Bについて説明する。本実施形態に係る信号処理装置100Bは、図1に示す通り、変換部101、判定部302、推定部103、初期化部104、抑圧部105、及び、逆変換部106を備えている。本実施形態に係る信号処理装置100Bは、判定部302を除く構成については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る判定部302の構成を概念的に示すブロック図である。図8に示す通り、判定部302は、判定実行部3021と、相対関係計算部2022と、存在確率計算部3023と、を含む。相対関係計算部2022の動作については、第2の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
存在確率計算部3023は、変換部101から入力された混在信号振幅スペクトルの2乗に相当する混在信号パワースペクトルを用いて、第一信号の存在確率(第一信号存在確率:第一の確率)を算出する。第一信号と第二信号とを含む混在信号において、第一信号が存在する確率を示す代表的な例として、混在信号パワースペクトルの分散を強調信号存在確率とする方法について説明する。
混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2の期待値をE[|X(k,n)|2]とすると、存在確率計算部3023は、分散の定義に従い、第一信号存在確率p(k,n)を、数14に示す通り算出する。
期待値は平均値により近似できる。したがって本実施形態に係る存在確率計算部3023は、第2の実施形態に係る判定部202が行う平滑化において用いられた、移動平均あるいは一次リーク積分により平均値を算出する。存在確率計算部3023は、例えば、移動平均を用いる場合は、期待値E[|X(k,n)|2]を、数15に示す通り算出する。数15において、M2は1以上の整数である。
存在確率計算部3023は、また、一次リーク積分を用いる場合は、期待値E[|X(k,n)|2]を、数16に示す通り算出する。数16において、α2は0<α2<1を満足する実数である。
存在確率計算部3023は、上述した分散の代わりに、分散の平方根である標準偏差を用いて第一信号存在確率を算出してもよい。
存在確率計算部3023は、あるいは、第一信号存在確率として、非特許文献8に記載されている「Speech Presence Likelihood」を用いることもできる。存在確率計算部3023は、この場合、1フレーム分の混在信号パワースペクトルに基づいて、第一信号存在確率を算出する。存在確率計算部3023は、これにより、算出に複数フレームのパワースペクトルが必要な分散を用いる方法と比べて、短時間で第一信号存在確率を求めることができる。
判定実行部3021は、相対関係計算部2022により算出された相対関係を示す値と、存在確率計算部3023により算出された第一信号存在確率とを用いて、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たすか否かを判定する。本実施形態に係る判定実行部3021は、第一信号存在確率も使用して判定を行うという構成において、第2の実施形態に係る判定実行部2021と異なる。判定実行部3021は、相対関係D(k,n)が閾値Th_Dよりも大きく、かつ、第一信号存在確率p(k,n)が閾値Th_pよりも小さい場合に、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たさない(過小推定である)と判定する。
また、判定実行部3021は、相対関係D(k,n)と第一信号存在確率p(k,n)とを変数とする線型写像関数を使用して算出した値を、閾値と比較することにより判定してもよい。その一例として、判定実行部3021が、代表的な線形写像関数である重み付き和を使用する場合について説明する。この場合、相対関係D(k,n)に対する重みをβ1(k,n)、第一信号存在確率p(k,n)に対する重みをβ2(k,n)とした場合、判定実行部3021は、「β1(k,n)D(k,n)−β2(k,n)p(k,n)」が示す値が閾値よりも大きければ、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たさない(過小推定である)と判定する。尚、β1(k,n)及びβ2(k,n)は、正の実数である。「β1(k,n)D(k,n)−β2(k,n)p(k,n)」が示す値は、D(k,n)が大きいほど、かつp(k,n)が小さいほど、大きくなる。
判定実行部3021は、相対関係を示す値及び第一信号存在確率の両方を変数とする関数を使用して算出した値に基づいて判定するので、相対関係を示す値及び第一信号存在確率に関して、別々に判定した結果を統合して判定する場合と比べて、過小推定を見逃しにくくなる。判定実行部3021は、また、高次の多項式関数や非線形関数など、他の形により表される関数を、上述した重み付き和の代わりに用いてもよい。
本実施形態に係る信号処理装置100Bは、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することができる。その理由は、第1の実施形態について説明した通りである。
また、本実施形態に係る判定部302は、混在信号パワースペクトルと推定第二信号パワースペクトルの相対関係だけでなく、第一信号存在確率も併せて用いることにより判定する。判定実行部3021が第一信号存在確率を参照することにより、推定第二信号パワースペクトルと混在信号パワースペクトルとの関係が明確になる。例えば、第一信号存在確率が高ければ第一信号のパワー(大きさ)は大きいので、判定部302は、推定第二信号パワースペクトルが混在信号パワースペクトルよりも小さい場合に、それが過小推定では無いと判定する。従って、本実施形態に係る判定部302は、第一信号が大きい場合も含めて、推定第二信号パワースペクトルが混在信号パワースペクトルよりも小さければ過小推定と判定する第2の実施形態に係る判定部202よりも、より正確な判定を行うことができる。これにより、本実施形態に係る信号処理装置100Bは、出力信号の品質をさらに向上することができる。
<第4の実施形態>
次に、本願発明の第4の実施形態に係る信号処理装置100Cについて説明する。本実施形態に係る信号処理装置100Cは、図1に示す通り、変換部101、判定部402、推定部103、初期化部104、抑圧部105、及び、逆変換部106を備えている。本実施形態に係る信号処理装置100Cは、判定部402を除く構成については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図9は、本実施形態に係る判定部402の構成を概念的に示すブロック図である。図9に示す通り、判定部402は、判定実行部3021と、相対関係計算部2022と、存在確率計算部4023と、を含む。相対関係計算部2022の動作については、第2の実施形態と同様であり、判定実行部3021の動作については、第3の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
存在確率計算部4023は、相対関係計算部2022から入力された相対関係を示す値を用いて、第一信号存在確率(第二の確率)を算出する。存在確率計算部4023は、混在信号パワースペクトルでは無く、相対関係を示す値を用いて、第一信号存在確率を算出するという構成において、第3の実施形態に係る存在確率計算部3023と異なる。存在確率計算部4023は、算出に用いる情報については、第3の実施形態に係る存在確率計算部3023と異なるが、計算式などの算出方法については、存在確率計算部3023と同様な方法を用いることが可能である。存在確率計算部4023は、第一信号存在確率p(k,n)を、数17に示す通り算出する。数17において、E[D(k,n)]は、相対関係D(k,n)の期待値である。
期待値E[D(k,n)]は、第3実施形態と同様に、移動平均あるいは一次リーク積分により近似される。存在確率計算部4023は、例えば移動平均を用いて期待値E[D(k,n)]を近似する場合、期待値E[D(k,n)]を数18に示す通り算出する。数18において、M3は1以上の整数である。
存在確率計算部4023は、例えば一次リーク積分を用いて期待値E[D(k,n)]を近似する場合、期待値E[D(k,n)]を数19に示す通り算出する。数19において、α3は0<α3<1を満足する実数である。
存在確率計算部4023は、上述した分散の代わりに、分散の平方根である標準偏差を用いて第一信号存在確率を算出してもよい。
本実施形態に係る判定実行部3021は、相対関係計算部2022により算出された相対関係を示す値と、存在確率計算部4023により算出された第一信号存在確率とを用いて、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たすか否かを判定する。
本実施形態に係る信号処理装置100Cは、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号が突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することができる。その理由は、第1の実施形態について説明した通りである。
また、本実施形態に係る判定部402は、混在信号パワースペクトルと推定第二信号パワースペクトルとの相対関係を用いて第一信号存在確率を算出する。本実施形態に係る判定部402は、混在信号パワースペクトルだけなく、推定第二信号パワースペクトルも用いて第一信号存在確率を算出するので、混在信号パワースペクトルにより第一信号存在確率を算出する第3の実施形態に係る判定部302よりも、さらに正確に第一信号存在確率を算出できる。例えば、判定部402は、混在信号パワースペクトルが大きくなったときに、推定第二信号パワースペクトルを参照することにより、第一信号と第二信号のどちらが大きくなったのかを判定できる。従って、本実施形態に係る判定部402は、より正確な判定を行うことができる。これにより、本実施形態にかかる信号処理装置100Cは、出力信号の品質をさらに向上することができる。
<第5の実施形態>
次に、本願発明の第5の実施形態に係る信号処理装置100Dについて説明する。本実施形態に係る信号処理装置100Dは、図1に示す通り、変換部101、判定部502、推定部103、初期化部104、抑圧部105、及び、逆変換部106を備えている。本実施形態に係る信号処理装置100Dは、判定部502を除く構成については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図10は、本実施形態に係る判定部502の構成を概念的に示すブロック図である。図10に示す通り、判定部502は、判定実行部3021と、相対関係計算部2022と、存在確率計算部5023及び5024と、を含む。相対関係計算部2022の動作については、第2の実施形態と同様であり、判定実行部3021の動作については、第3の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
本実施形態にかかる存在確率計算部5024は、変換部101から入力された混在信号振幅スペクトルを2乗した値である混在信号パワースペクトルを用いて、第1の第一信号存在確率(第一の確率)を算出する。存在確率計算部5024は、第1の第一信号存在確率の算出において、第3の実施形態に係る存在確率計算部3024と同様の方法を用いる。存在確率計算部5024は、第1の第一信号存在確率p1(k,n)を、数20に示す通り算出する。
数20において、混在信号パワースペクトルの期待値E[|X(k,n)|2]は、第3の実施形態と同様に、移動平均あるいは一次リーク積分により近似される。
存在確率計算部5023は、相対関係計算部2022から入力された相対関係を示す値と、存在確率計算部5024から入力された第1の第一信号存在確率とを用いて、第2の第一信号存在確率(第三の確率)を算出する。本実施形態に係る存在確率計算部5023は、相対関係を示す値に加えて、第1の第一信号存在確率を用いるという構成において、第4の実施形態に係る存在確率計算部4023と異なる。
本実施形態でも、第2及び第3の実施形態と同様に、混在信号パワースペクトルの分散を強調信号存在確率とする場合について説明する。存在確率計算部5023は、第2の第一信号存在確率p2(k,n)を、数21に示す通り算出する。
数21において、期待値は平均値により近似される。存在確率計算部5023は、第1の第一信号存在確率p1(k,n)を用いて、移動平均あるいは一次リーク積分により、平均値を算出する。存在確率計算部5023は、例えば移動平均を用いる場合、期待値E[D(k,n)]を、数22に示す通り算出する。数22において、M4は0以上の整数である。
存在確率計算部5023は、例えば一次リーク積分を用いる場合、期待値E[D(k,n)]を、数23に示す通り算出する。数23において、α4は0<α4<1を満足する実数である。
本実施形態に係る判定実行部3021は、相対関係計算部2022により算出された相対関係を示す値と、存在確率計算部5023により算出された第2の第一信号存在確率とを用いて、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たすか否かを判定する。
本実施形態に係る信号処理装置100Dは、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することができる。その理由は、第1の実施形態について説明した通りである。
また、本実施形態に係る判定部502は、相対関係を示す値を、第1の第一信号存在確率p1(k,n)によって重みづけすることにより、第一信号が含まれている確率が低いときの相対関係を、期待値算出において優先して用いる。これにより、本実施形態に係る判定部502は、第一信号区間において、第一信号成分の影響を受けて相対関係の期待値が大きくなり、第一信号区間の直後において、分散、すなわち、第一信号存在確率が誤って高くなる問題を回避できる。
すなわち、本実施形態に係る判定部502は、過小推定の判定に用いる第2の第一信号存在確率を算出する際に、相対関係を示す値に加えて、第1の第一信号存在確率も利用することにより、第一信号存在確率の精度を改善することを実現する。したがって、本実施形態に係る判定部502は、第一信号区間の直後に、第一信号存在確率をより正確に求めることができる。これにより、本実施形態に係る信号処理装置100Dは、出力信号の品質をさらに向上することができる。
<第6の実施形態>
次に、本願発明の第6の実施形態に係る信号処理装置100Eについて説明する。本実施形態に係る信号処理装置100Eは、図1に示す通り、変換部101、判定部602、推定部103、初期化部104、抑圧部105、及び、逆変換部106を備えている。本実施形態に係る信号処理装置100Eは、判定部602を除く構成については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図11は、本実施形態に係る判定部602の構成を概念的に示すブロック図である。図11に示す通り、判定部602は、判定実行部3021と、相対関係計算部2022と、存在確率計算部6023及び6024と、抑圧部6025とを含む。相対関係計算部2022の動作については、第2の実施形態と同様であり、判定実行部3021の動作については、第3の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
本実施形態に係る抑圧部6025は、変換部101から入力された混在信号振幅スペクトルと、推定部103から入力された推定第二信号パワースペクトルとを用いて、混在信号振幅スペクトルに含まれる第二信号成分を抑圧する。抑圧部6025は、抑圧した結果である出力信号振幅スペクトルを、存在確率計算部6024へ入力する。抑圧部6025は、抑圧部105と同様に、混在信号振幅スペクトルと推定第二信号パワースペクトルとを入力とすることから、抑圧部105と同様な方法を用いて、第二信号成分を抑圧することができる。従って、本実施形態に係る信号処理装置100Eは、抑圧部105から出力された信号を、存在確率計算部6024に入力する構成であってもよい。この場合、本実施形態に係る信号処理装置100Eが行う抑圧処理が減るので、信号処理装置100Eが行う計算量を削減できる。
本実施形態に係る存在確率計算部6024は、抑圧部6025から入力された出力信号振幅スペクトルを2乗した値である出力信号パワースペクトルを用いて、第1の第一信号存在確率(第四の確率)を計算する。本実施形態に係る存在確率計算部6024は、第5の実施形態に係る存在確率計算部5024と比較して、入力される信号は異なるものの、存在確率の算出方法については、同様の方法を用いることができる。
本実施形態に係る存在確率計算部6023は、相対関係計算部2022から入力された相対関係を示す値と、存在確率計算部6024から入力された第1の第一信号存在確率とを用いて、第2の第一信号存在確率(第五の確率)を算出する。本実施形態に係る存在確率計算部6023は、第5の実施形態に係る存在確率計算部5023と比較して、入力される信号は異なるものの、存在確率の算出方法については、同様の方法を用いることができる。
本実施形態に係る判定実行部3021は、相対関係計算部2022により算出された相対関係を示す値と、存在確率計算部6023により算出された第2の第一信号存在確率とを用いて、推定第二信号パワースペクトルが基準を満たすか否かを判定する。
本実施形態に係る信号処理装置100Eは、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することができる。その理由は、第1の実施形態について説明した通りである。
また、本実施形態に係る判定部602は、存在確率計算部6024において、混在信号パワースペクトルよりも、第二信号の成分が少ない出力信号パワースペクトルを用いて、第一信号存在確率を算出する。したがって、判定部602は、第二信号による影響を小さくすることにより、第一信号存在確率をより正確に算出し、正確な判定を行うことができる。これにより、本実施形態に係る信号処理装置100Eは、出力信号の品質をさらに向上することができる。
<第7の実施形態>
図12は、本願発明の第7の実施形態に係る信号処理装置700の構成を概念的に示すブロック図である。信号処理装置700は、第一信号(注目すべき所望の音声信号)と第二信号(雑音(ノイズ))とを含む混在信号から、第二信号を推定することによって、第一信号が存在するか否かを判定する装置である。
本実施形態に係る信号処理装置700は、変換部101、判定部102、推定部103、初期化部104、及び、第二判定部707を備えている。本実施形態に係る信号処理装置700は、第二判定部707を除く構成については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
図13は、本実施形態に係る第二判定部707の構成を概念的に示すブロック図である。第二判定部707は、相対関係計算部7071と、判定実行部7072と、を含む。
相対関係計算部7071は、変換部101から入力された混在信号振幅スペクトルの2乗に相当する混在信号パワースペクトル|X(k,n)|2と、推定部103から入力された推定第二信号パワースペクトル|N(k,n)|2との相対関係を示す値を算出する。ここで相対関係とは、単純な大小関係のほか、両者の差分あるいは比のことである。例えば、相対関係を大小関係により示す場合、相対関係計算部7071は、相対関係D2(n)を、数24に示す通り算出する。
数24において、a2及びb2は実数である。また、相対関係を差分により示す場合、相対関係計算部7071は、相対関係D2(n)を、数25に示す通り算出する。
相対関係計算部7071は、また、相対関係D2(n)を、数26に示す通り、対数の差分として算出してもよい。この場合、相対関係計算部7071により算出される値は、混在信号パワースペクトルと推定第二信号パワースペクトルとの比に相当する。
判定実行部7072は、相対関係計算部7071により算出された相対関係を示す値を用いて、第一信号が存在するか否かを判定し、その判定結果を出力する。判定実行部7072は、例えば、混在信号パワースペクトルが推定第二信号パワースペクトルよりも大きい場合に、第一信号が存在すると判定する。したがって、例えば、相対関係計算部7071により算出される相対関係が、数24に示す通り大小関係により示される場合、判定実行部7072は、相対関係を示す値が「a2」となるときに、第一信号が存在すると判定する。判定実行部7072は、相対関係が数25あるいは数26に示す通りである場合、相対関係D(k,n)が予め定められた閾値を上回っているときに、第一信号が存在すると判定する。
本実施形態に係る信号処理装置700は、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することができる。その理由は、第1の実施形態について説明した通りである。そして、本実施形態に係る信号処理装置700は、第二判定部707を備えることによって、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第一信号が存在するか否かを正確に判定できる。
以下に、本実施形態に係る信号処理装置700によって実現される効果について、詳細に説明する。
携帯電話など様々な音声端末において使用されている音声検出技術は、一般的に、雑音成分である第二信号の大きさが突然大きくなることを想定していない。このため、混在信号に含まれる第二信号の大きさが突然大きくなった場合、第二信号を正しく推定できず、判定結果を誤るという問題がある。その結果、音声符号化のビットレートが誤って高くなる、あるいは、音声認識結果が誤るといった問題が発生する。
このような問題に対して、本実施形態に係る信号処理装置700では、推定部103は、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号における、第二信号を現在までに入力された混在信号の状態を示す情報に基づいて推定し、推定結果として、推定第二信号を生成する。判定部102は、混在信号及び推定第二信号に基づいて、推定第二信号の大きさが、基準を満たすか否か(過小か否か)を判定する。初期化部104は、判定部102によって、推定第二信号の大きさが基準を満たさないと判定された場合に、当該混在信号の状態を示す情報を、第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に変更する初期化処理を行う。そして、第二判定部707は、推定第二信号を用いて、混在信号に第一信号が含まれるか否かを判定する。
すなわち、本実施形態に係る信号処理装置700は、大きさが突然大きくなった第二信号に追随できるように、第二信号を推定する際に使用する混在信号の状態を示す情報を、第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に戻す(変更する)。これにより、本実施形態に係る信号処理装置700は、混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第一信号が含まれているか否かを正確に判定することができる。
<第8の実施形態>
図14は、本願発明の第8の実施形態に係る信号処理装置800の構成を概念的に示すブロック図である。
本実施形態に係る信号処理装置800は、判定部802、及び、推定部803を備えている。
推定部803は、第一信号と第二信号とが混在した混在信号を用いて、その混在信号に混在する第二信号を推定し(推定処理)、推定第二信号として提供する。
判定部802は、混在信号と前記推定第二信号とを用いて、推定第二信号が過小であるか否かを判定する。
そして、推定部803は、判定部802での判定の結果に基づいて、推定処理を初期化する。
本実施形態に係る信号処理装置800は、第一信号と第二信号とが含まれる混在信号において、第二信号の大きさが突然大きくなった場合であっても、第二信号を正確に推定することができる。その理由は、信号処理装置800は、推定第二信号が過小であるか否かを判定し、その判定の結果に基づいて、推定処理を初期化するからである。
<ハードウェア構成例>
上述した各実施形態において図1乃至図5、及び、図7乃至図14に示した信号処理装置における各部は、専用のHW(HardWare)(電子回路)によって実現することができる。また、図1乃至図5、及び、図7乃至図14において、少なくとも、下記構成は、ソフトウェアプログラムの機能(処理)単位(ソフトウェアモジュール)と捉えることができる。
・判定部102、202、302、402、502、602、及び、802、
・推定部103及び803、
・初期化部104、
・第二判定部707
・抑圧部105。
但し、これらの図面に示した各部の区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。この場合のハードウェア環境の一例を、図15を参照して説明する。
図15は、本願発明の各実施形態に係る信号処理装置を実行可能な情報処理装置900(コンピュータ)の構成を例示的に説明する図である。即ち、図15は、図1乃至図5、及び、図7乃至図14に示した信号処理装置を実現可能なコンピュータ(情報処理装置)の構成であって、上述した実施形態における各機能を実現可能なハードウェア環境を表す。
図15に示した情報処理装置900は、構成要素として下記を備えている。
・CPU(Central_Processing_Unit)901、
・ROM(Read_Only_Memory)902、
・RAM(Random_Access_Memory)903、
・ハードディスク(記憶装置)904、
・外部装置との通信インタフェース905、
・バス906(通信線)、
・CD−ROM(Compact_Disc_Read_Only_Memory)等の記録媒体907に格納されたデータを読み書き可能なリーダライタ908、
・入出力インタフェース909。
即ち、上記構成要素を備える情報処理装置900は、これらの構成がバス906を介して接続された一般的なコンピュータである。情報処理装置900は、CPU901を複数備える場合もあれば、マルチコアにより構成されたCPU901を備える場合もある。
そして、上述した実施形態を例に説明した本願発明は、図15に示した情報処理装置900に対して、次の機能を実現可能なコンピュータプログラムを供給する。その機能とは、その実施形態の説明において参照したブロック構成図(図1乃至図5、及び、図7乃至図14)における上述した構成、或いはフローチャート(図6)の機能である。本願発明は、その後、そのコンピュータプログラムを、当該ハードウェアのCPU901に読み出して解釈し実行することによって達成される。また、当該装置内に供給されたコンピュータプログラムは、読み書き可能な揮発性のメモリ(RAM903)、または、ROM902やハードディスク904等の不揮発性の記憶デバイスに格納すれば良い。入出力インタフェース909は,A(Analog)/D(Digital)変換機能やD/A変換機能を備えてもよい。
また、前記の場合において、当該ハードウェア内へのコンピュータプログラムの供給方法は、現在では一般的な手順を採用することができる。その手順としては、例えば、CD−ROM等の各種記録媒体907を介して当該装置内にインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等がある。そして、このような場合において、本願発明は、係るコンピュータプログラムを構成するコード或いは、そのコードが格納された記録媒体907によって構成されると捉えることができる。
以上、上述した実施形態を模範的な例として本願発明を説明した。しかしながら、本願発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本願発明は、本願発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
尚、上述した各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。しかしながら、上述した各実施形態により例示的に説明した本発明は、以下には限られない。すなわち、
(付記1)
第一信号と第二信号とが混在した混在信号を用いて、前記混在信号に混在する第二信号を推定し、推定第二信号として提供する推定手段と、
前記混在信号と前記推定第二信号とを用いて、前記推定第二信号が過小であるか否かを判定する第一の判定手段と、
を備え、
前記推定手段は、前記第一の判定手段での判定の結果に基づいて、推定処理を初期化する
ことを特徴とする信号処理装置。
(付記2)
前記第一の判定手段は、前記第一信号と前記第二信号との相対関係を求めることによって、前記推定第二信号が過小か否かを判定する、
付記1に記載の信号処理装置。
(付記3)
前記第一の判定手段は、
前記混在信号に基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第一の確率を算出し、
前記第一の確率に基づいて、前記推定第二信号が過小か否かを判定する、
付記2に記載の信号処理装置。
(付記4)
前記第一の判定手段は、
前記相対関係に基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第二の確率を算出し、
前記第二の確率に基づいて、前記推定第二信号が過小か否かを判定する、
付記2に記載の信号処理装置。
(付記5)
前記第一の判定手段は、
前記相対関係と、前記第一の確率とに基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第三の確率を算出し、
前記第三の確率に基づいて、前記推定第二信号が過小か否かを判定する、
付記3に記載の信号処理装置。
(付記6)
前記第一の判定手段は、
前記混在信号と前記推定第二信号とを使用して、前記混在信号に含まれる前記第二信号を抑圧することによって抑圧信号を生成し、
前記抑圧信号に基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第四の確率を算出し、
算出した前記第四の確率と前記相対関係とに基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第五の確率を算出し、
前記第五の確率に基づいて、前記推定第二信号が過小か否かを判定する、
付記2に記載の信号処理装置。
(付記7)
前記推定第二信号を使用して、前記混在信号に含まれる前記第二信号を抑圧する抑圧手段を更に備える、
付記1乃至6のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記8)
前記推定第二信号を使用して、前記混在信号に前記第一信号が含まれているか否かを判定する第二の判定手段を更に備える、
付記1乃至6のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記9)
情報処理装置によって、
第一信号と第二信号とが混在した混在信号を用いて、前記混在信号に混在する第二信号を推定し、推定第二信号として提供し、
前記混在信号と前記推定第二信号を用いて、前記推定第二信号が過小であるか否かを判定し、
その判定の結果に基づいて、推定処理を初期化する
信号処理方法。
(付記10)
第一信号と第二信号とが混在した混在信号を用いて、前記混在信号に混在する第二信号を推定し、推定第二信号として提供する推定処理と、
前記混在信号と前記推定第二信号を用いて、前記推定第二信号が過小であるか否かを判定する判定処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記推定処理は、前記第一の判定手段での判定の結果に基づいて、推定処理を初期化する
ことを特徴とする信号処理プログラム。
(付記11)
第一信号と第二信号とが含まれる混在信号における前記第二信号を、現在までに入力された前記混在信号の状態を示す情報に基づいて推定し、推定結果を表す推定第二信号を生成する推定手段と、
前記混在信号及び前記推定第二信号に基づいて、前記推定第二信号の大きさが基準を満たすか否かを判定する第一の判定手段と、
前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たさないと前記第一の判定手段によって判定された場合に、前記混在信号の状態を示す情報を、前記推定手段が前記第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に変更する初期化処理を行う初期化手段と、
を備える信号処理装置。
(付記12)
前記第一の判定手段は、前記第一信号の大きさと前記第二信号の大きさとの相対関係を示す値を求めることによって、前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たすか否かを判定する、
付記11に記載の信号処理装置。
(付記13)
前記第一の判定手段は、
前記混在信号に基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第一の確率を算出し、
前記第一の確率が閾値以下である場合に、前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たすか否かを判定する、
付記12に記載の信号処理装置。
(付記14)
前記第一の判定手段は、
前記相対関係を示す値に基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第二の確率を算出し、
前記第二の確率が閾値以下である場合に、前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たすか否かを判定する、
付記12に記載の信号処理装置。
(付記15)
前記第一の判定手段は、
前記相対関係を示す値と、前記第一の確率とに基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第三の確率を算出し、
前記第三の確率が閾値以下である場合に、前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たすか否かを判定する、
付記13に記載の信号処理装置。
(付記16)
前記第一の判定手段は、
前記混在信号と前記推定第二信号とを使用して、前記混在信号に含まれる前記第二信号を抑圧することによって抑圧結果信号を生成し、
生成した前記抑圧結果信号に基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第四の確率を算出し、
算出した前記第四の確率と前記相対関係を示す値とに基づいて、前記混在信号に前記第一信号が存在する第五の確率を算出し、
前記第五の確率が閾値以下である場合に、前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たすか否かを判定する、
付記12に記載の信号処理装置。
(付記17)
前記推定第二信号を使用して、前記混在信号に含まれる前記第二信号を抑圧する抑圧手段を更に備える、
付記11乃至16のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記18)
前記推定第二信号を使用して、前記混在信号に前記第一信号が含まれているか否かを判定する第二の判定手段を更に備える、
を特徴とする付記11乃至16のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記19)
前記判定手段は、現在までの所定の期間において生成された前記推定第二信号の大きさの平均値あるいは最小値が、現在の前記混在信号の大きさを示す値を所定の写像関数に入力することによって求めた値以上であるか否かを判定する、
付記11乃至18のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記20)
前記初期化手段は、初期化用の設定値と、初期化を行うまでの所定の期間において前記推定手段により生成された前記推定第二信号の状態を示す値との少なくともいずれかに基づいて、前記混在信号の状態を示す情報を初期化する、
付記11乃至19のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記21)
情報処理装置によって、
第一信号と第二信号とが含まれる混在信号における前記第二信号を、現在までに入力された前記混在信号の状態を示す情報に基づいて推定し、推定結果を表す推定第二信号を生成し、
前記混在信号及び前記推定第二信号に基づいて、前記推定第二信号の大きさが基準を満たすか否かを判定し、
前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たさないと判定した場合に、前記混在信号の状態を示す情報を、前記第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に変更する初期化処理を行う、
信号処理方法。
(付記22)
第一信号と第二信号とが含まれる混在信号における前記第二信号を、現在までに入力された前記混在信号の状態を示す情報に基づいて推定し、推定結果を表す推定第二信号を生成する推定処理と、
前記混在信号及び前記推定第二信号に基づいて、前記推定第二信号の大きさが基準を満たすか否かを判定する判定処理と、
前記推定第二信号の大きさが前記基準を満たさないと前記判定処理によって判定された場合に、前記混在信号の状態を示す情報を、前記推定処理が前記第二信号を推定する処理を開始するときの状態あるいはその状態に関連する状態に変更する初期化処理と、
をコンピュータに実行させるための信号処理プログラム。