優先権の主張
本出願は、レンほかの権利であり2015年3月10日に出願された「複数荷電粒子ビームの装置」と題する米国仮出願第62/130,819号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
本発明は、複数の荷電粒子ビームを有する荷電粒子装置に関し、とくに、試料表面上の観察エリアの複数の走査領域の像を同時に取得するように複数の荷電粒子ビームを用いる装置に関する。故に、本装置は、半導体製造産業において高解像度かつ高スループットでウェーハ/マスク上の欠陥を検査及び/または調査するために使用することができる。
半導体ICチップの製造の際には、パターン欠陥及び/または招かれざるパーティクル(残留物)がウェーハ/マスクの表面上に製造工程の間に必然的に現れ、これは歩留まりを大きく低下させる。ますます進化するICチップの性能要件を満たすために、ますます小さいクリティカルフィーチャ寸法をもつパターンが採用されている。したがって、光学ビームを用いる従来の歩留まり管理ツールは回折効果により徐々に不適格となっており、電子ビームを用いる歩留まり管理ツールがますます多く用いられる。光子ビームに比べて電子ビームは波長が短いので優れた空間解像度を提供しうる。現在、電子ビームを用いる歩留まり管理ツールは単一の電子ビームを用いる走査電子顕微鏡(SEM)の原理を用いるので、高解像度を提供できるが大量生産に適するスループットを提供することはできない。スループットを高めるためにますます大きなビーム電流を使用することは可能であるが、優れた空間解像度がクーロン効果によって基本的に劣化してしまう。
スループットへの制約を緩和するために、大電流をもつ単一電子ビームを使用するのではない有望な解決策は、各々が小電流をもつ複数の電子ビームを使用することである。複数の電子ビームが試料のひとつの被検査または被観察表面上に複数のプローブスポットを形成する。試料表面では複数のプローブスポットがその試料表面上の大きな観察エリア内にある複数の小さい走査領域をそれぞれ同時に走査することができる。各プローブスポットの電子が試料表面の入射した場所から二次電子を生成する。二次電子は低速の二次電子(50eV以下のエネルギー)と後方散乱された電子(入射する電子のエネルギーに近いエネルギー)とを含む。複数の小さい走査領域からの二次電子は複数の電子検出器によってそれぞれ同時に回収されることができる。したがって、すべての小走査領域を含む大きな観察エリアの像を、単一のビームでその大きな観察エリアを走査するよりも、かなり速く取得することができる。
複数の電子ビームは、複数の電子ソースからそれぞれ、または単一の電子ソースから得られる。前者では、複数の電子ビームはたいてい複数のコラムによって複数の小走査領域へとそれぞれ収束されかつ走査し、各走査領域からの二次電子は対応するコラム内部にあるひとつの電子検出器によって検出される。したがって、この装置は一般にマルチコラム装置と呼ばれる。複数のコラムは、独立しているか、または、多軸の磁気または電磁複合対物レンズ(例えばUS8,294,095)を共有することができる。試料表面上での2つの隣接するビームのビーム間隔はたいてい30〜50mm程度の大きさである。
後者では、ソース変換ユニットが単一電子ソースを複数のサブソースへと仮想的に変化させるために使用される。ソース変換ユニットは、ひとつのビームレット形成手段とひとつの像形成手段を備える。ビームレット形成手段は、単一電子ソースによって生成された一次電子ビームを複数のサブビームまたはビームレットへとそれぞれ分割する複数のビーム制限開口を基本的に備える。像形成手段は、電子ソースの複数の平行な像を形成するように複数のビームレットにそれぞれ収束または偏向のいずれかを行う複数の電子光学素子を基本的に備える。複数の平行な像の各々がひとつの対応するビームレットを発するひとつのサブソースとみなされることができる。ビームレット間隔すなわちビーム制限開口間隔はマイクロメートルレベルであるため、より多くのビームレットを利用可能であり、故にソース変換ユニットは半導体製造工程またはMEMS(微小電気機械システム)工程によって製作することができる。当然、ひとつの単一コラム内にあるひとつの一次投影結像システムとひとつの偏向走査ユニットが複数の平行な像を複数の小走査領域にそれぞれ投影しかつ走査させるように使用され、そこから得られる複数の二次電子ビームが単一コラム内部にあるひとつの電子検出デバイスの複数の検出素子によってそれぞれ検出される。複数の検出素子は、並列に配置された複数の電子検出器、またはひとつの電子検出器の複数のピクセルであってもよい。したがって、この装置は一般にマルチビーム装置と呼ばれる。
図1Aのソース変換ユニット20−1においては、像形成手段22−1は、複数のレンズ(22_1L〜22_3L)からなる。ひとつの単一電子ソースからの実質的に平行な一次電子ビーム2はビームレット形成手段21の複数のビーム制限開口(21_1〜21_3)によって複数のビームレット(2_1〜2_3)へと分割され、複数のレンズは単一電子ソースの複数の平行な像(2_1r〜2_3r)を形成するように複数のビームレットをそれぞれ収束する。複数の平行な像は典型的には実像であるが、複数のレンズの各々が開口レンズである特定の条件では虚像でありうる。US7,244,949およびUS7,880,143はこの形式のひとつの像形成手段を有するマルチビーム装置を提案している。図1Bのソース変換ユニット20−2においては、像形成手段22−2は、複数のデフレクタ(22_2Dと22_3D)からなる。ひとつの単一電子ソースからの発散一次電子ビーム2はビームレット形成手段21の複数のビーム制限開口(21_2と21_3)によって複数のビームレット(2_2と2_3)へと分割され、複数のデフレクタは単一電子ソースの複数の平行な虚像(2_2vと2_3v)を形成するように複数のビームレットをそれぞれ偏向する。
電子ソースの虚像を形成するようにデフレクタを使用するという考えは、早くも1950年代には有名な二重スリット電子干渉実験に使用された。ここでは図2(「メルリ・ミシロリ・ポッジの二重スリット電子干渉実験」の図1、フィジックス・イン・パースペクティブ、14(2012)、178〜195に公開、ロドルフォ・ロサ著)に示されるように電子線バイプリズムが2つの虚像を形成するように用いられる。電子線バイプリズムは、接地電位にある二枚の平行プレートと、それらの間にある非常に細いワイヤFとを基本的に備える。接地電位に等しくない電位がワイヤFに印加されると、電子線バイプリズムは、互いに反対向きの偏向をもつ2つのデフレクタとなる。電子ソースSからの一次電子ビームがそれら2つのデフレクタを通過して、電子ソースSの虚像S1とS2を形成する2つの偏向されたビームレットとなる。電位が正の場合、2つのビームレットは互いに重なり、その重なり領域に干渉縞が現れる。
それ以来、前述の考えはマルチビーム装置に多くの方法で用いられている。JP−A−10−339711とUS8,378,299は、2つのプローブスポットを試料表面に形成するためにひとつの従来の電子線バイプリズムを直接的に使用している。US6,943,349は、2つよりも多くのプローブスポットを試料表面に形成するためにひとつの環状デフレクタ(同文献の図5)またはひとつの対応するデフレクタアレイ(同文献の図12)を使用し、それにより高スループットを提供することができる。環状デフレクタは、内側環状電極と外側環状電極を含む。2つの環状電極の電位が互いに等しくない場合、局所的な径方向においてひとつの電場が環状ギャップ内に現れ、従って、環状デフレクタは、2つよりも多くのビームレットを共に様々な方向に偏向することができる。さらに、環状デフレクタの偏向機能は、環状ギャップに沿って配列された複数の多極型デフレクタを有するひとつの対応するデフレクタアレイによって実行することもできる。
図1Bの従来のソース変換ユニット20−2においては、一次電子ビーム2の発散に起因して複数のビームレットが複数のビーム制限開口を様々な入射角度で通過し、それにより強度の様々な電子散乱に悩まされる。各ビームレットにおける散乱電子は、プローブスポットを拡大させ、及び/またはバックグラウンドノイズとなり、したがって、対応する走査領域の像解像度を劣化させる。
US6,943,349においては、複数のビームレットの電流が、単一電子ソースの放出量またはビーム制限開口のサイズのいずれかを変化させることによってのみ偏向可能であるにすぎない。単一電子ソースはその放出量を変化させたとき安定状態となるのに長い時間がかかる。ビームレット形成手段は、開口のグループを複数有するとともに、ひとつのグループの開口のサイズを他のグループとは異ならせる必要がある。グループを使用時に変更するのは非常に時間がかかる。加えて、二次電子ビームは対物レンズのいくつかの特定の動作条件においてレンズ内検出器の多数の検出素子に収束可能であるにすぎない。そのため、利用可能な応用分野が限定される。
したがって、高解像度かつ高スループットで試料表面上の大きな観察エリア内の複数の小さい走査領域の像を同時に取得することのできるマルチビーム装置を提供することが必要である。とくに、高解像度かつ高スループットでウェーハ/マスク上の欠陥を検査及び/または調査することのできるマルチビーム装置が半導体製造産業のロードマップに適合するために必要とされる。
この発明の目的は、試料を観察するために高解像度と高スループットの両方を提供することができ、とくに、半導体製造産業においてウェーハ/マスク上の欠陥を検査及び/または調査する歩留まり管理ツールとして機能する新規なマルチビーム装置を提供することにある。マルチビーム装置は、最初に、単一電子ソースの複数の平行な虚像を形成し、次に、対応する複数のビームレットの電流を制限する新たなソース変換ユニットと、複数のビームレットの電流を調整するコンデンサレンズと、試料の被観察表面に複数のプローブスポットを形成するように複数の平行な虚像を投影する一次投影結像システムと、該表面からの複数の二次電子ビームを複数のビームレットの経路から外すように偏向するビームセパレータと、電子検出デバイスの複数の検出素子によってそれぞれ検出されるように複数の二次電子ビームを収束する二次投影結像システムと、を採用する。
そこで、本発明は、ソース変換ユニットを提供し、これは、複数の上部4極構造を有する上部層と複数の下部4極構造を有する下部層とを備える像形成手段と、像形成手段の下方にあり、複数のビーム制限開口を備えるビームレット制限手段と、を備える。各上部4極構造がひとつの対応する下部4極構造の上方にありそれと整列され、両者は方位角が45°異なるとともに4極構造の組を形成する。したがって、複数の上部4極構造と複数の下部4極構造は複数の4極構造の組を形成する。複数のビーム制限開口は、複数の4極構造の組とそれぞれ整列されている。ひとつの4極構造の組が、電子ソースによって生成された電子ビームのひとつのビームレットを電子ソースの虚像を形成するように偏向するマイクロデフレクタ、ひとつのビームレットを所望の程度収束するマイクロレンズ、及び/または、ひとつのビームレットに所望量の非点収差を付加するマイクロスティグメータとして機能する。
また、本発明は、試料の表面を観察するためのマルチビーム装置を提供し、これは、電子ソースと、電子ソースの下方にあるコンデンサレンズと、コンデンサレンズの下方にあるソース変換ユニットと、ソース変換ユニットの下方にあり、対物レンズを備える一次投影結像システムと、一次投影結像システムの内部にある偏向走査ユニットと、一次投影結像システムの下方にある試料ステージと、対物レンズの上方にあるビームセパレータと、ビームセパレータの上方にある二次投影結像システムと、複数の検出素子を有する電子検出デバイスと、を備える。ソース変換ユニットは、複数のマイクロデフレクタを有する像形成手段と、複数のビーム制限開口を有するビームレット制限手段と、を備え、像形成手段は、ビームレット制限手段の上方にある。電子ソース、コンデンサレンズ、ソース変換ユニット、一次投影結像システム、偏向走査ユニット、およびビームセパレータは、この装置の一次光軸に整列されている。試料ステージは、表面が対物レンズを向くように試料を支持する。二次投影結像システムおよび電子検出デバイスは、装置の二次光軸に整列され、二次光軸は、一次光軸と非平行である。電子ソースは、一次光軸に沿って一次電子ビームを生成し、複数のマイクロデフレクタは、電子ソースの複数の平行な虚像を形成するように一次電子ビームを偏向する。それにより仮想的マルチソースアレイが電子ソースから変換され、仮想的マルチソースアレイを含む複数のビームレットが複数のビーム制限開口をそれぞれ通過する。それにより各ビームレットの電流がひとつの対応するビーム制限開口によって制限され、複数のビームレットの電流がコンデンサレンズを調整することによって変更可能である。一次投影結像システムは、仮想的マルチソースアレイを表面上に結像し、それにより複数のプローブスポットが該表面上に形成される。偏向走査ユニットは、表面上の観察エリア内の複数の走査領域を複数のプローブスポットにそれぞれ走査させるように複数のビームレットを偏向する。複数の二次電子ビームが、複数のプローブスポットによって複数の走査領域からそれぞれ生成され、かつ対物レンズを通過する際に収束される。ビームセパレータは、複数の二次電子ビームを二次投影結像システムへと偏向し、二次投影結像システムは、複数の二次電子ビームを複数の検出素子によってそれぞれ検出されるように収束しかつ維持する。それにより各検出素子がひとつの対応する走査領域の像信号を提供する。
マルチビーム装置は、電子ソースの下方にあり、一次光軸に整列された主開口を有し、一次電子ビーム用のビーム制限アパチャーとして機能する主アパチャープレートをさらに備えてもよい。一次投影結像システムは、対物レンズの上方にあり、表面に垂直に入射するように複数のビームレットを収束するトランスファーレンズを備えてもよい。複数のマイクロデフレクタの各々は、偏向場を任意の径方向に生成可能な4極構造を有する。マルチビーム装置は、ビームセパレータの上方にあり、単一ビームモードにおいて使用可能な単一ビーム電子検出器をさらに備えてもよい。マルチビーム装置は、一次光軸に整列されたビームレット通過穴を有し、ビームセパレータの下方にあり、単一ビームモードにおいて使用可能なレンズ内電子検出器をさらに備えてもよい。
また、本発明は、試料の表面を観察するためのマルチビーム装置を提供し、これは、電子ソースと、電子ソースの下方にあるコンデンサレンズと、コンデンサレンズの下方にあるソース変換ユニットと、ソース変換ユニットの下方にあり、対物レンズを備える一次投影結像システムと、一次投影結像システムの内部にある偏向走査ユニットと、一次投影結像システムの下方にある試料ステージと、対物レンズの上方にあるビームセパレータと、ビームセパレータの上方にある二次投影結像システムと、複数の検出素子を有する電子検出デバイスと、を備える。ソース変換ユニットは、複数のマイクロデフレクタ補償器要素を有する像形成手段と、複数のビーム制限開口を有するビームレット制限手段と、を備え、各マイクロデフレクタ補償器要素は、ひとつのマイクロデフレクタと、ひとつのマイクロレンズとひとつのマイクロスティグメータとを有するひとつのマイクロ補償器とを備える。像形成手段は、ビームレット制限手段の上方にある。電子ソース、コンデンサレンズ、ソース変換ユニット、一次投影結像システム、偏向走査ユニット、およびビームセパレータは、装置の一次光軸に整列されている。試料ステージは、表面が対物レンズを向くように試料を支持する。二次投影結像システムおよび電子検出デバイスは、装置の二次光軸に整列され、二次光軸は、一次光軸と非平行である。電子ソースは、一次光軸に沿って一次電子ビームを生成し、複数のマイクロデフレクタは、電子ソースの複数の平行な虚像を形成するように一次電子ビームを偏向する。それにより仮想的マルチソースアレイが電子ソースから変換される。仮想的マルチソースアレイを含む複数のビームレットが複数のビーム制限開口をそれぞれ通過し、それにより各ビームレットの電流がひとつの対応するビーム制限開口によって制限される。複数のビームレットの電流がコンデンサレンズを調整することによって変更可能である。一次投影結像システムは、仮想的マルチソースアレイを表面上に結像し、それにより複数のプローブスポットが該表面上に形成される。ひとつのマイクロ補償器のひとつのマイクロレンズおよびひとつのマイクロスティグメータがひとつの対応するプローブスポットの像面湾曲および非点収差をそれぞれ補償し、偏向走査ユニットは、表面上の観察エリア内の複数の走査領域を複数のプローブスポットにそれぞれ走査させるように複数のビームレットを偏向する。複数の二次電子ビームが、複数のプローブスポットによって複数の走査領域からそれぞれ生成され、かつ対物レンズを通過する際に収束され、ビームセパレータは、二次投影結像システムへと入射するように複数の二次電子ビームを偏向する。二次投影結像システムは、複数の二次電子ビームを複数の検出素子によってそれぞれ検出されるように収束しかつ維持し、それにより各検出素子がひとつの対応する走査領域の像信号を提供する。
マルチビーム装置は、電子ソースの下方にあり、一次光軸に整列された主開口を有し、一次電子ビーム用のビーム制限アパチャーとして機能する主アパチャープレートをさらに備えてもよい。複数のマイクロデフレクタ補償器要素の各々は、所望の偏向場を生成することによってひとつのマイクロデフレクタとして、かつ所望の四重極場および所望の円形レンズ場を生成することによってひとつのマイクロ補償器として機能する8極構造を有してもよい。複数のマイクロデフレクタ補償器要素の各々は、上部4極構造を上部層に、かつ下部4極構造を下部層に有し、上部層は下部層の上方にあり、上部4極構造と下部4極構造は、互いに整列されかつ方位角が45°異なる。上部4極構造および下部4極構造は、所望の偏向場を生成することによってひとつのマイクロデフレクタとして、かつ所望の四重極場および所望の円形レンズ場を生成することによってひとつのマイクロ補償器として機能してもよい。一次投影結像システムは、対物レンズの上方にあり、表面に垂直に入射するように複数のビームレットを収束するトランスファーレンズを備えてもよい。マルチビーム装置は、ビームセパレータの上方にあり、単一ビームモードにおいて使用可能な単一ビーム電子検出器をさらに備えてもよい。マルチビーム装置は、一次光軸に整列されたビームレット通過穴を有し、ビームセパレータの下方にあり、単一ビームモードにおいて使用可能なレンズ内電子検出器をさらに備えてもよい。
また、本発明は、電子ソースから仮想的マルチソースアレイを形成するためのソース変換ユニットを構成する方法を提供し、これは、複数の上部4極構造を有する上部層と複数の下部4極構造を有する下部層とを備える像形成手段を設けるステップと、像形成手段の下方にあり複数のビーム制限開口を備えるビームレット制限手段を設けるステップと、を備える。各上部4極構造は、ひとつの対応する下部4極構造の上方にありそれと整列され、両者は方位角が45°異なるとともに4極構造の組を形成する。それにより複数の上部4極構造と複数の下部4極構造が複数の4極構造の組を形成する。複数のビーム制限開口は、複数の4極構造の組とそれぞれ整列されている。ひとつの4極構造の組が、電子ソースによって生成された電子ビームのひとつのビームレットを、電子ソースの虚像を形成するように偏向するマイクロデフレクタ、当該ひとつのビームレットを所望の程度収束するマイクロレンズ、及び/または、当該ひとつのビームレットに所望量の非点収差を付加するマイクロスティグメータとして機能する。
ソース変換ユニットは、複数の4極構造の組とそれぞれ整列された複数の上部貫通穴を有する上部電気伝導プレートを備えてもよい。ソース変換ユニットは、複数の4極構造の組とそれぞれ整列された複数の下部貫通穴を有する下部電気伝導プレートをさらに備えてもよい。
また、本発明は、電子ソースから仮想的マルチソースアレイを形成するための方法を提供し、これは、複数の上部4極構造を有する上部層および複数の下部4極構造を有する下部層を使用することによって、電子ソースからの電子ビームを複数のビームレットへと偏向するステップと、複数の開口を使用することによって複数のビームレットを制限するステップと、を備える。各上部4極構造がひとつの対応する下部4極構造の上方にありそれと整列され、両者は方位角が45°異なるとともに4極構造の組を形成する。
また、本発明は、荷電粒子ビーム装置を提供し、これは、一次ビームを提供する単一荷電粒子ソースと、一次ビームを複数のビームレットへと変換する手段と、複数のビームレットから標本上に複数のプローブスポットを形成する第1投影システムと、標本上の複数のプローブスポットを走査する偏向走査ユニットと、複数の信号電子ビームを複数のビームレットから分離する手段と、複数の信号電子ビームを受ける検出デバイスと、複数の信号電子ビームから複数の信号スポットを検出デバイスの複数の電子検出素子上にそれぞれ形成する第2投影システムと、を備える。変換手段は、複数のビームレットを偏向する複数のデフレクタと、複数のデフレクタの下方にある複数のビーム制限開口とを備える。複数の信号電子ビームは、標本への複数のビームレットの衝突によりそれぞれ生成される。
荷電粒子ビーム装置は、複数のプローブスポットの電流を調整するコンデンサレンズをさらに備えてもよい。変換手段は、複数のプローブスポットの収差をそれぞれ補償する複数の補償器を備える。
本発明のその他の利点は、例示を目的とする本発明のいくつかの実施の形態を説明する付属の図面および以下の記述から明らかとなるであろう。
本発明は、付属の図面および以下の詳細な説明により容易に理解されるであろう。各図面において同様の参照符号は同様の構造的要素を指し示す。
従来のソース変換ユニットの概略図である。
従来のソース変換ユニットの概略図である。
電子線バイプリズムを用いた電子干渉実験の概略図である。
本発明のひとつの実施の形態に係る新たなマルチビーム装置の一構成の概略図である。
図3Aの新たなマルチビーム装置の動作モードの概略図である。
図3Aの新たなマルチビーム装置の動作モードの概略図である。
図3Aの新たなマルチビーム装置の動作モードの概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る新たなマルチビーム装置の他の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図3Aの像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図3Aの像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図3Aの像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図3Aの像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図3Aの像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図3Aの像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図3Aの像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図4の進歩した像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図4の進歩した像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図4の進歩した像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図4の進歩した像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る図4の進歩した像形成手段の構成の概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る新たなマルチビーム装置の他の構成の概略図である。
図9Aの新たなマルチビーム装置の動作モードの概略図である。
図9Aの新たなマルチビーム装置の動作モードの概略図である。
図4の新たなマルチビーム装置のひとつの動作モードの概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る新たなマルチビーム装置の他の構成およびそのひとつの動作モードの概略図である。
本発明の他の実施の形態に係る新たなマルチビーム装置の他の構成およびそのひとつの動作モードの概略図である。
以下、本発明の種々の例示的な実施の形態が、本発明のいくつかの例示的な実施の形態を示す付属の図面を参照して、より完全に説明される。本発明の保護範囲を限定することなく、それら実施の形態の説明および図面のすべては例示として電子ビームに言及するが、それら実施の形態は本発明を特定の荷電粒子に限定すべく使用されるべきではない。
図面において、各構成要素および構成要素間の相対的な寸法は、明確化のために誇張される場合がある。図面についての後述の説明では、同一または類似の参照番号は同一または類似の構成要素または存在物を参照し、個々の実施の形態に関する相違点のみが記述される。明確化のために、図面においては3つのビームレットのみが利用可能であるが、ビームレットの数はいくつであってもよい。
したがって、本発明の例示的な実施の形態は、種々の変形および代替の形態が可能であるところ、実施の形態は図面において例示の目的で示されるとともに本書に詳細に説明される。しかしながら、開示される特定の形態に本発明の例示的な実施の形態を限定する意図は無く、対照的に、本発明の例示的な実施の形態は、本発明の範囲内に含まれるあらゆる変形、均等物、および代替物に及ぶものである。
この発明において、「軸方向」とは、「レンズ(円形または多極)、結像システム、または装置の光軸方向」をいい、「径方向」とは、「光軸に垂直な方向」をいい、「軸上」とは、「光軸上にあるかまたは光軸に整列されている」ことをいい、「軸外」とは、「光軸上にないかまたは光軸に整列されていない」ことをいう。
この発明において、「結像システムが光軸に整列されている」とは、「すべての電子光学素子(円形レンズ、多極レンズなど)が光軸に整列されている」ことをいう。
この発明において、X軸、Y軸、およびZ軸はデカルト座標系を形成する。一次投影結像システムの光軸はZ軸上にあり、一次電子ビームはZ軸に沿って進む。
この発明において、「一次電子」とは、「電子ソースから発せられ、試料の被観察または被検査表面に入射する電子」をいい、「二次電子」とは、「当該表面から「一次電子」によって生成された電子」をいう。
この発明において、「信号電子」とは、「試料の被観察または被検査表面から一次荷電粒子ビームによって生成された電子」をいう。
この発明において、「単一ビームモード」とは、ひとつのビームレットのみが使用されることをいう。
この発明において、貫通穴、開口、およびオリフィスに関連するすべての用語は、ひとつのプレートを貫通している開口または穴をいう。
続いて、本発明は、新たなマルチビーム装置のいくつかの実施の形態を提供する。マルチビーム装置は、マルチビーム装置は、最初に、単一電子ソースの複数の平行な虚像を形成し、次に、複数のビームレットの電流を制限する新たなソース変換ユニットと、複数のビームレットの電流を調整するコンデンサレンズと、複数の平行な虚像を、試料の被観察表面に複数のプローブスポットを形成するように投影する一次投影結像システムと、該表面からの複数の二次電子ビームを複数のビームレットの経路から外すように偏向するビームセパレータと、電子検出デバイスの複数の検出素子によってそれぞれ検出されるように複数の二次電子ビームを収束する二次投影結像システムと、を採用する。
この新たなソース変換ユニットは、複数のマイクロデフレクタを有する像形成手段と、複数のビーム制限開口を有するビームレット制限手段と、を備え、像形成手段は、ビームレット制限手段の上流にある。単一電子ソースからの一次電子ビームは、最初に、単一電子ソースの複数の平行な虚像を形成するように複数のマイクロデフレクタによって偏向され、そして、複数の平行な虚像を形成する複数のビームレットが複数のビーム制限を垂直にまたは実質的に垂直に通過する。このようにして、複数のビーム制限開口は、従来技術に比べて低散乱の電子を生成するだけでなく、上流で生成された散乱電子を遮断し、よって、電子散乱に起因する像解像度の劣化がなくなる。像形成手段は、複数のプローブスポットの軸外収差(像面湾曲および非点収差)をそれぞれ補償する複数のマイクロ補償器をさらに備え、よって、被観察表面の像解像度がさらに改善される。
図3Aには、新たなマルチビーム装置のひとつの実施の形態100Aが示されている。単一電子ソース101は、一次光軸100_1上にある。共通のコンデンサレンズ110、主アパチャープレート171、新たなソース変換ユニット120、一次投影結像システム130、偏向走査ユニット132、およびビームセパレータ160は、一次光軸100_1に沿って配置されるとともに一次光軸100_1に整列されている。二次投影結像システム150および電子検出デバイス140は、二次光軸150_1に沿って配置されるとともに二次光軸150_1に整列されている。
主アパチャープレート171は、共通コンデンサレンズ9の上方、または図示されるように新たなソース変換ユニット120の直上に配置されることができる。新たなソース変換ユニット120は、2つのマイクロデフレクタ122_2,122_3を有するマイクロデフレクタアレイ122と、3つのビーム制限開口121_1,121_2,121−3を有するビームレット制限プレート121と、を備え、ビーム制限開口121_1が一次光軸100_1に整列されている。ビーム制限開口121_1が一次光軸100_1に整列されていない場合には、(図5Cに示されるように)もう1つのマイクロデフレクタ122_1があってもよい。一次投影結像システム130は、トランスファーレンズ133と対物レンズ131とを備える。偏向走査ユニット132は、少なくとも1つのデフレクタを備える。ビームセパレータ160は、ひとつのウィーンフィルタである。二次投影結像システム150は、逆走査デフレクタ151、ズームレンズ152(少なくとも2つのレンズ152_1,152_2を備える)、および逆回転磁気レンズ154を備える。電子検出デバイス140は、3つの検出素子140_1,140_2,140_3を備える。上述のレンズの各々は、静電レンズ、磁気レンズ、または電磁複合レンズであってもよい。
図3B〜3Dは、新たなマルチビーム装置100Aの3つの動作モードを示す。単一電子ソース101は、カソード、引出部、及び/またはアノードを備え、一次電子が、カソードから発せられて、高いエネルギー(例えば8〜20keV)、高い角度強度(例えば0.5〜5mA/sr)、および(虚または実の)クロスオーバー101s(軸上の楕円記号により図示される)を有する一次電子ビーム102を形成するように引き出され及び/または加速され、したがって、一次電子ビーム102がクロスオーバー101sから発せられ、単一電子ソース101がクロスオーバー101sであると単純化されると考えることが便利である。
図3Bにおいては、コンデンサレンズ110はオフである。一次電子ビーム102は、収束の影響なくコンデンサレンズ110を通過し、その周縁の電子は主アパチャープレート171の主開口によって遮断される。マイクロデフレクタ122_2,122_3は、一次電子ビーム102のビームレット102_2,102_3をそれぞれ偏向する。偏向されたビームレット102_2,102_3は、単一電子ソース101のクロスオーバー101sの軸外虚像102_2v,102_3vをそれぞれ形成する。偏向されたビームレット102_2,102_3は、一次光軸100_1と平行または実質的に平行であり、したがって、ビームレット制限プレート121に垂直に入射する。ビーム制限開口121_1,121_2,121_3は、一次電子ビーム102の中心部102_1および偏向されたビームレット102_2,102_3の周縁の電子をそれぞれ遮断する。その結果、ひとつの仮想的マルチソースアレイ101vが形成され、これは、クロスオーバー101sとその2つの平行な軸外虚像102_2v,102_3vを含む。ひとつの虚像は、図1におけるひとつの実像でのクーロン効果を回避することができる。クーロン効果をさらに低減するために、主アパチャープレート171は、周縁の電子を可能な限り早期に遮断するようにコンデンサレンズ110の上方に配置されてもよい。
続いて、クロスオーバー101sおよびその2つの平行な軸外虚像102_2v,102_3vは、トランスファーレンズ133および対物レンズ131によって、被観察表面7上に結像され、それらの像がそこに3つのプローブスポット102_1s,102_2s,102_3sを形成する。2つの軸外ビームレット102_2,102_3を被観察表面7に垂直に入射させるために、トランスファーレンズ133は、対物レンズ131の前側焦点を通過するようにそれらを収束する。対物レンズ131がひとつの磁気レンズを備える場合には、2つの軸外ビームレット102_2,102_3は、磁気的な回転の影響により前側焦点を正確に通過しなくてもよく、これはビームレットクロスオーバーCSでのクーロン効果を低減するのに大変役立つ。偏向走査ユニット132は、3つのビームレット102_1〜102_3を偏向し、その結果、3つのプローブスポット102_1s〜102_3sは被観察表面7上の3つの個別の領域を走査する。
3つの走査領域から発せられた二次電子ビーム102_1se,102_2se,102_3seは、対物レンズ131によって収束され、ビームセパレータ160によって、二次光軸150_1に沿って二次投影結像システム150に進入するように偏向される。レンズ152,153は、二次電子ビームを3つの検出素子140_1〜140_3上にそれぞれ収束する。それにより各検出素子は、ひとつの対応する走査領域の像信号を提供する。ひとつの走査領域からの二次電子ビームの一部の二次電子が隣接する検出素子に向かう場合には、隣接する検出素子の像信号は、当該走査領域からの無関係な情報を含み、その隣接する検出素子にとってその無関係な情報は当該走査領域からのクロストークである。検出素子間のクロストークを避けるために、ズームレンズ152は、各二次電子ビームのスポットサイズを対応する検出素子よりも小さくし、逆走査デフレクタ151は、偏向走査ユニット132がビームレット102_1〜102_3を偏向する間、対応する検出素子内に維持するように二次電子ビーム102_1se〜102_3seを同期して偏向する。
様々な試料は、ふつう、ビームレットの入射エネルギーや電流など様々な観察条件を要求する。これがとくに当てはまるのは、半導体製造産業におけるウェーハ/マスクの欠陥の検査及び/または調査である。対物レンズ131の収束力は入射エネルギーにより変化し、これは、電子検出デバイス140上での二次電子ビームの位置に影響し、クロストークを招く。この場合、ズームレンズ152は、二次電子ビームの径方向変位を除去するように調整される。対物レンズ131がひとつの磁気レンズを備える場合、逆回転磁気レンズ154は、二次電子ビームの回転を除去するように調整される。
2つの軸外プローブスポット102_2s,102_3sの各々は、対物レンズ131、トランスファーレンズ133、およびオンとされているときのコンデンサレンズによって生成された軸外収差を備える。各軸外プローブスポットの軸外収差は、対応するビームレットの軌道を個別に最適化することによって低減することができる。軸外収差の静的部分は、対応するマイクロデフレクタの偏向力を調整することによって低減することができる。軸外収差の動的部分は、偏向走査ユニット132の性能を最適化することによって低減することができる。そのため偏向走査ユニット132は複数のデフレクタを備えてもよい。
図3Bとは異なり、図3Cではコンデンサレンズ110がオンに切り替えられている。コンデンサレンズ110は、単一電子ソース101のクロスオーバー101sの軸上虚像101svを形成するように一次電子ビーム102を収束する。マイクロデフレクタ122_2,122_3は、収束された一次電子ビーム102のビームレット102_2,102_3をそれぞれ偏向し、クロスオーバー101sの軸外虚像102_2v,102_3vを形成する。偏向されたビームレット102_2,102_3は、一次光軸100_1と平行または実質的に平行であり、したがって、ビームレット制限プレート121に垂直に入射する。ビーム制限開口121_1,121_2,121_3は、収束された一次電子ビーム102の中心部102_1および偏向されたビームレット102_2,102_3の周縁の電子をそれぞれ遮断し、それによりそれらの電流を制限する。コンデンサレンズ110の収束機能は、収束された一次電子ビーム102の電流密度を増加させ、それにより、ビームレット102_1〜102_3の電流を図3Bよりも高く増加させる。故に、すべてのビームレットの電流をコンデンサレンズ110によって連続的に調整することができる。
従来のSEMと同様に、各プローブスポットのサイズは、幾何学的収差、回折収差、ガウス像サイズ、およびクーロン効果のバランスをとることによって、最小化される。コンデンサレンズ110の収束機能は、クロスオーバー101sから被観察表面7への結像倍率を変化させ、これは上記バランスに影響を及ぼすので、各プローブスポットのサイズを大きくしうる。ビームレットの電流を大きく変化させる際にプローブスポットのサイズが大きく拡大するのを避けるために、ビーム制限開口121_1〜121_3のサイズに相当の変化をさせてもよい。その結果として、ビームレット制限プレート121はビーム制限開口の多数のグループを有することが好ましい。あるグループにおけるビーム制限開口のサイズは、他のグループのそれとは異なる。あるいは、トランスファーレンズ133の収束力が結像倍率の変動を低減するように変化されてもよい。軸外ビームレット102_2,102_3の軌道は、トランスファーレンズ133の収束力変動により影響されるので、マイクロデフレクタ122_2,122_3の偏向力が軌道を維持するように相当の調整が偏向力になされてもよい。このようにして、ビームレット102_2,102_3は、図3Dに示されるように、一次光軸100_1とわずかに非平行であってもよい。
図4には、新たなマルチビーム装置の他の実施の形態110Aが示されている。実施の形態100Aと異なり、新たなソース変換ユニット120−1は、3つのマイクロデフレクタ補償器要素122_1dc,122_2dc,122_3dcを有するマイクロデフレクタ補償器アレイ122−1を備える。各マイクロデフレクタ補償器要素は、ひとつのマイクロデフレクタと、ひとつのマイクロレンズとひとつのマイクロスティグメータとを有するひとつのマイクロ補償器と、を備える。マイクロデフレクタは、図3B〜3Dに示されるマイクロデフレクタ122_2,122_3の機能と同じく、ひとつの仮想的マルチソースアレイを形成するように使用される。よく知られているように、コンデンサレンズ110、トランスファーレンズ133、および対物レンズ131は、軸外収差を生成する。上述のように、プローブスポットのサイズへの軸外収差の影響は、ビームレットの軌道を個別に最適化することによって低減することができる。そこで、マイクロレンズとマイクロスティグメータは、プローブスポットに残存する像面湾曲と非点収差をそれぞれ補償するように使用される。図3Aのマイクロデフレクタアレイ122と比べると、マイクロデフレクタ補償器アレイ122−1は、進歩した像形成手段である。
図3Aのマイクロデフレクタ122_2,122_3の各々は、単純に、図5Aに示されるように、対応するビームレットの必要とされる偏向方向に垂直な2つの平行電極を含んでもよい。たとえば、マイクロデフレクタ122_2は、X軸に垂直な2つの平行電極122_2_e1,122−2_e2を有し、それによりビームレット102_2をX軸方向に偏向する。図5Bは、8つのビームレットを偏向するマイクロデフレクタアレイ122のひとつの実施の形態を示す。各マイクロデフレクタが空間的姿勢を有するので、多数のマイクロデフレクタを備えるひとつのマイクロデフレクタアレイ122を作るのは困難である。製造上の観点から、すべてのマイクロデフレクタが幾何学的に同じ構成かつ同じ姿勢を有することが望まれる。故に、四重極または4極構成を有するマイクロデフレクタは、図5Cに示されるように、この要件を満たすことができる。各マイクロデフレクタの4つの電極がひとつのビームレットを任意の方向に偏向することができる2つのデフレクタを形成することができる。マイクロデフレクタ122_1は、対応するビーム制限開口121_1が一次光軸101に正確には整列されていない場合に使用されることができる。
ひとつのマイクロデフレクタを動作させるために、その各電極との接続を駆動回路は要する。駆動回路が一次電子ビーム102によって損傷されるのを防ぐために、図5A〜5Cのすべてのマイクロデフレクタの電極の上方にひとつの電気伝導プレートを配置することが好ましい。一例として図5Cを挙げると、図6には、多数の上部貫通穴を有する上部電気伝導プレート122−CL1と多数の上部オリフィスを有する上部絶縁体プレート122−IL1がマイクロデフレクタ122_1〜122_3の電極の上方に配置されている。マイクロデフレクタ122_1〜122_3の電極は、上部絶縁体プレート122−IL1に取り付けられることができる。上部貫通穴と上部オリフィスはマイクロデフレクタの光軸にそれぞれ整列され、たとえば、上部貫通穴CL1_2と上部オリフィスIL1_2はマイクロデフレクタ122_2の光軸122_2_1上にある。各上部貫通穴の径方向サイズは、駆動回路を保護するために対応するマイクロデフレクタの電極の内径寸法と等しいか、それより小さく、各上部オリフィスの径方向サイズは、内側の側壁の帯電を避けるべく、対応する上部貫通穴の径方向サイズより大きい。このようにして、すべてのマイクロデフレクタの偏向場はその上側で縁部の範囲が短くなるので、偏向収差が低減される。
図6Aに基づいて、図6Bのマイクロデフレクタアレイ122は、多数の下部貫通穴を有する下部電気伝導プレート122−CL2をさらに備える。各下部貫通穴はひとつのマイクロデフレクタの光軸に整列され、たとえば、下部貫通穴CL2_2はマイクロデフレクタ122_2の光軸122_2_1上にある。このようにして、すべてのマイクロデフレクタの偏向場はその上側および下側の両方で縁部の範囲が短くなるので、偏向収差が低減される。図6Bとは異なり、図6Cのマイクロデフレクタアレイ122は、マイクロデフレクタ122_1〜122_3の電極を支持するように多数の下部オリフィスを有する下部絶縁体プレート122−IL2を採用する。各下部オリフィスはひとつのマイクロデフレクタの光軸に整列され、たとえば、下部オリフィスIL2_2はマイクロデフレクタ122_2の光軸122_2_1上にある。各下部オリフィスの径方向サイズは、対応するマイクロデフレクタの電極の内径寸法より大きい。図6Dのマイクロデフレクタアレイ122は、図6Bと図6Cの組み合わせであり、より安定した構成となる。
図7は、図4のマイクロデフレクタ補償器アレイ122−1のマイクロデフレクタ補償器要素122_2dcのひとつの実施の形態を示し、これは8極構成を有する。8つの電極122_2dc_e1〜122_2dc_e8は、任意の方向に電子ソース1の虚像を生成する基本量および歪みを補正する付加量を有する双極場(偏向場)と、任意の方向に非点収差を補正する四重極場(非点収差場)と、像面湾曲を補正する円形レンズ場とを生成するように駆動されることができる。
図8Aは、図4のマイクロデフレクタ補償器アレイ122−1の他の実施の形態を示す。各マイクロデフレクタ補償器要素は、二層に配置され、互いに整列され、かつ方位角または姿勢が45°異なる4極レンズの組を備える。マイクロデフレクタ補償器要素122_1dc,122_2dc,122_3dcはそれぞれ、上部および下部の4極レンズ122_1dc−1,122_1dc−2の組と、上部および下部の4極レンズ122_2dc−1,122_2dc−2の組と、上部および下部の4極レンズ122_3dc−1,122_3dc−2の組とからなる。上部4極レンズ122_1dc−1,122_2dc−1,122_3dc−1は上部層122−1−1に配置され、下部4極レンズ122_1dc−2,122_2dc−2,122_3dc−2は下部層122−1−2に配置され、上部4極レンズ122_1dc−1,122_2dc−1,122_3dc−1とそれぞれ整列されている。一例として、X軸に関して、上部4極レンズ122_1dc−1,122_2dc−1,122_3dc−1の方位角は図8Bに示されるように0°であり、下部4極レンズ122_1dc−2,122_2dc−2,122_3dc−2の方位角は図8Cに示されるように45°である。図8Dにおいては図6Dと同様に、上部層と下部層が上部電気伝導プレート122−CL1と下部電気伝導プレート122_CL2とによって遮蔽され、上部絶縁体プレート122−IL1と下部絶縁体プレート122−IL2と多数の中間オリフィスを有する中間絶縁体プレート122−IL3とによって支持されている。各マイクロデフレクタ補償器要素には、任意の所望の方向の偏向場と円形レンズ場が上部4極レンズと下部4極レンズのいずれかまたは両方によって生成され、任意の方向の四重極場が上部4極レンズと下部4極レンズの両方によって生成されることができる。
図9Aには、新たなマルチビーム装置の他の実施の形態が示されている。図4の実施の形態110Aと比べると、トランスファーレンズ133が一次投影結像システムから取り除かれている。図9Bは、ひとつの動作モードを示しており、軸外ビームレット102_2,102_3がマイクロデフレクタ補償器要素122_2dc,122_3dcによってそれぞれ一次光軸200_1と平行に偏向され、被観察表面7に斜めの角度で入射している。このモードは、ビームレットの入射状況に厳密な要件を有しないか、またはステレオ結像を必要とする観察分野に使用可能である。マイクロデフレクタ補償器要素122_2dc,122_3dcは、大きな径方向位置ずれを有して対物レンズ131を通過することによる2つの軸外ビームレット102_2,102_3の大きな軸外収差を補償することができる。図9Cは、別の動作モードを示しており、軸外ビームレット102_2,102_3がマイクロデフレクタ補償器要素102_2dc,102_3dcによってそれぞれ一次光軸200_1に向かうようにさらに偏向され、それに応じて、被観察表面7により小さい斜めの角度で入射している。マイクロデフレクタ補償器要素122_2dc,122_3dcが対物レンズ131の前側焦点を通過するように軸外ビームレット102_2,102_3をそれぞれ偏向する場合には、軸外ビームレット102_2,102_3は被観察表面7に垂直に入射する。軸外ビームレット102_2,102_3がビーム制限開口を大きな入射角度で通過するのを避けるために、対物レンズ131の前側焦点とマイクロデフレクタ補償器アレイ122−1との間に長い距離を保つことが好ましい。
よく知られているように、被観察表面7を走査するビームレットが多いほど、そこにより多くの帯電が起こりうる。故に、ある特定の観察分野では一部のビームレットを必要としないかもしれない。この場合、それらビームレットは、ビームレット制限プレートによって空白化されるように方向付けられてもよい。図10は、図4の実施の形態110Aのこうした動作モードを示しており、マイクロデフレクタ補償器要素122_2dcがオフであり、ビームレット102_2がビームレット制限プレート121によって遮断されている。マイクロデフレクタ補償器要素122_2dcは、ビームレット制限プレート121によって遮断されるビームレット102_2を方向付けるようにオンに切り替えられることが必要とされる場合もあるが、それはソース変換ユニット120−1の詳細構造に依存する。
図4の実施の形態110Aに基づいて、図11Aには、新たなマルチビーム装置の他の実施の形態111Aが提案されており、単一ビーム電子検出器141が追加されている。ある観察分野に最適な結像条件(入射エネルギーおよびプローブ電流)を探索するなど何らかの理由によりひとつのビームレットのみが必要とされる場合、本装置は単一ビームモードで作動する。この場合、ビームセパレータ160は、対応する二次電子ビームを単一ビーム電子検出器141へと偏向することができる。そのビームレットとしてここではビームレット102_1が使用されている。ビームレット102_1によって生成された二次電子ビーム102_1seは、単一ビーム電子検出器141によって検出されるように偏向されている。単一ビーム電子検出器141を使用することにより、対物レンズ131の収束力変動に関して二次投影結像システム150を調整する処理を避けることができる。上述のように、対物レンズ131の収束力は、使用されるビームレットの入射エネルギー及び/または電流が変化すれば変わる。さらに、図11Bは、新たなマルチビーム装置のもうひとつの実施の形態112Aを示しており、ビームレット通過穴を有するレンズ内電子検出器142がビームセパレータ160の下方に配置されている。本装置が単一ビームモードで作動するとき、使用されるビームレットに関する二次電子ビームのうち、放射角度が大きい二次電子はレンズ内電子検出器142によって検出され、放射角度が小さい二次電子はビームレット通過穴を通過して電子検出デバイス140の対応する検出素子によって検出されることができる。そのビームレットとしてここではビームレット102_1が使用されている。ビームレット102_1によって生成された二次電子ビーム102_1seのうち、放射角度が大きい二次電子102_1se_2はレンズ内電子検出器142に衝突し、放射角度が小さい二次電子102_1se_1は電子検出デバイス140によって検出されるように偏向されている。単一ビーム電子検出器141とレンズ内電子検出器142を組み合わせて使用することもできる。この場合、放射角度が大きい二次電子102_1se_2はレンズ内電子検出器142によって検出され、放射角度が小さい二次電子102_1se_1は単一ビーム電子検出器141によって検出されるようにビームセパレータ160によって偏向されることができる。ここに図示されていないが、レンズ内電子検出器142は、ビームセパレータ160の上方に配置されることもできる。この場合、レンズ内電子検出器142は、ビームセパレータがオフのとき二次電子ビーム102_1seの外側部分を検出することができる。
要約すると、この発明は、高解像度かつ高スループットで試料を観察するための新たなマルチビーム装置を提案する。この新たなマルチビーム装置は、半導体製造産業においてウェーハ/マスク上の欠陥を検査及び/または調査する歩留まり管理ツールとして機能することができる。マルチビーム装置は、単一電子ソースの複数の平行な虚像を形成する新たなソース変換ユニットと、複数のビームレットの電流を調整するコンデンサレンズと、試料の被観察表面に複数のプローブスポットを形成するように複数の平行な虚像を投影する一次投影結像システムと、該表面からの複数の二次電子ビームを複数のビームレットの経路から外すように偏向するビームセパレータと、電子検出デバイスの複数の検出素子によってそれぞれ検出されるように複数の二次電子ビームを収束する二次投影結像システムと、を採用する。この新たなソース変換ユニットにおいては、像形成手段がビームレット制限手段の上流にあり、したがって、電子散乱に起因する像解像度の劣化が緩和される。像形成手段は、複数の平行な虚像を形成するための複数のマイクロデフレクタ、または、複数の平行な虚像を形成するとともに複数のプローブスポットの軸外収差を補償するための複数のマイクロデフレクタ補償器要素を備える。
本発明がその好ましい実施の形態に関連して説明されているが、後記に請求される本発明の趣旨と範囲から逸脱することなくその他の修正および変形をなしうるものと理解されるべきである。