JP6716407B2 - 重金属の固定化方法および植物への重金属移行抑制方法 - Google Patents
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Description
また、例えば特許文献2には、シュベルトマナイトの構造内に存在する硫酸イオンをケイ酸イオンに置換し、シュベルトマナイトの構造を安定化することにより、安定化したヒ素収着能を有するシュベルトマナイトが提案されている。
Fe8O8(OH)8−2x(SO4)x(但し、xは1≦x≦1.75である。)の構造を示すシュベルトマナイトへ炭酸カルシウムを反応させて成る中和シュベルトマナイトを用いて、重金属を固定化することを特徴とする重金属の固定化方法である。
第2の発明は、
重金属を含む土壌へ第1の発明に記載の中和シュベルトマナイトを添加し、前記重金属を固定化することを特徴とする重金属の固定化方法である。
第3の発明は、
前記重金属を含む土壌への、中和シュベルトマナイトの添加濃度を0.1質量%以上とすることを特徴とする第2の発明に記載の重金属の固定化方法である。
第4の発明は、
前記重金属がヒ素であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の重金属の固定化方法である。
第5の発明は、
第1から第4の発明のいずれかに記載の重金属の固定化方法を用いて、土壌から植物への重金属の移行を抑制することを特徴とする植物への重金属移行抑制方法である。
第6の発明は、
前記植物がイネ科植物であることを特徴とする第5の発明に記載の植物への重金属移行抑制方法である。
第7の発明は、
前記植物の種子または果実への重金属移行を抑制することを特徴とする第5の発明に記載の植物への重金属移行抑制方法である。
本発明に係る中和シュベルトマナイトは、Fe8O8(OH)8−2x(SO4)x(但し、xは1≦x≦1.75である。)構造を示すシュベルトマナイトへ、炭酸カルシウムを反応させて、当該シュベルトマナイトの分子構造中に存在する硫酸イオンの少なくとも一部をカルシウムイオンに置換したものである。
硫化鉄鉱床の鉱山から得られる排水へ第二鉄塩を添加し、さらにアルカリを添加してpHを3〜4の範囲とする。そして水酸化第二鉄の沈殿を形成させた後、当該排水を殿物スラリーと上澄水とに分離する(除去工程)。
前記除去工程で得られた上澄水へ鉄酸化細菌を添加し、前記上澄水に含まれる2価鉄を3価鉄へ酸化して処理液を得る(酸化工程)。
前記酸化工程後の処理液をバクテリア酸化殿物スラリーと上澄水とに分離し、得られた酸化工程後の上澄水へ炭酸カルシウムを添加して中和し、pHを4〜5の範囲とする(第一の中和工程)。そして、前記第一の中和工程後の液へ消石灰を添加して中和し、pHを7〜9の範囲とすることで(第二の中和工程)、中和シュベルトマナイトが得られる。
しかしながら本発明者らの検討によると、シュベルトマナイト中に存在する硫酸イオンの少なくとも一部をケイ酸イオンに置換することは、当該シュベルトマナイトへのケイ酸塩の添加工程、生成物回収のための固液分離等の工程が必要となる。そして、ケイ酸塩の添加工程においては添加条件調整が求められ、固液分離工程は大量合成に不向きでる。この結果、シュベルトマナイト中に存在する硫酸イオンの少なくとも一部をケイ酸イオンに置換することは、生産効率面、コスト面といった観点から実施が困難であると考えられた。さらに、シュベルトマナイトは、たとえ一部ケイ酸化しても酸性物質である。この結果、環境保全資材、特に農業用資材としての使用は、土壌酸性化の懸念も有り使い難いと考えられた。
本発明に係る中和シュベルトマナイトは、重金属を十分に固定化、不溶化出来るものであった。
ここで、当該土壌に含まれる重金属としては、ヒ素(As)を初めとして、鉛、水銀、カドミウム、クロム、スズ、亜鉛、バリウム、ビスマス、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、さらに、セシウム、ストロンチウム、ウラニウム、等が挙げられる。
そして、当該カルシウム塩を得るためのカルシウム化合物としては、CaO、Ca(OH)2、CaCO3およびCaSO4から選択されるいずれか1種以上であることが好ましい。
重金属を含む土壌中へ、中和シュベルトマナイトを施工する際の添加量は、当該土壌量に対する中和シュベルトマナイト量を0.1質量%以上とすることが好ましい。
本発明に係る中和シュベルトマナイトの施工による、土壌から植物へのヒ素を初めとする重金属移行抑制方法は、上述した重金属の固定化方法を、イネ科植物等に代表される植物が栽培されている土壌で用いることが出来る。当該施工により、土壌中の重金属がイネ科を初めとする植物、その種子、その果実へ取り込まれることを抑制し、安全な栽培が実現できる。即ち、イネ科を初めとする植物の種子または果実への重金属移行を抑制することを実現したものである。
尚、農作物サンプルにおけるヒ素の定量分析は、一般社団法人・日本食品分析センターにおける原子吸光スペクトル測定により、分析下限値は0.1mg/kgである。また、土壌のヒ素濃度分析は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES)を用い、分析下限値は0.1mg/kgで測定した。
まず、中和シュベルトマナイトの製造方法の具体的一例を説明する。
硫化鉄鉱床の鉱山から得られる排水を28℃とし、当該排水へ第二鉄塩としてのポリ硫酸第二鉄(卯根倉鉱業株式会社製 バイオフェリック)を、添加濃度が7g/Lとなるよう添加する。そして、当該ポリ硫酸第二鉄を含む排水を撹拌し、次いで24質量%の苛性ソーダ溶液を添加してpHを3.6とした。
当該排水のpHとして3.6の状態を保持しながら、水酸化第二鉄の沈殿を形成させた。そして、シックナーを用いて、当該排水を殿物スラリーと上澄水とに分離した(除去工程)。尚、排水のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、HORIBA 9625−10D)を用いて測定した。
得られた、酸化工程後の上澄水を炭酸カルシウムで中和し、pHを4.0〜4.5の範囲とした(第一の中和工程)。この後、第一の中和工程後の液へ消石灰を添加して中和し、pHを7.3〜8.3の範囲とした(第二の中和工程)。そこで、シックナーを用いて、第二の中和工程後の液を固液分離し固形物を得た。
得られた固形物をフィルタープレスに通し、含水率60%以下で、水酸化鉄と硫酸塩を含有する固形分を含む中和シュベルトマナイトが得られた。
面積0.75m2、深さ0.5mのポットへ、土壌90kgとヒ酸ナトリウムとを加えて混合し、土壌ヒ素濃度を50mg/kgとした。当該ポットを6個用意した。
上述の製造方法により製造した中和シュベルトマナイト(本実施例において「NS」と記載する場合がある。)を準備した。
上述したポット内へNSを0.9kg添加し耕耘し、土壌(比重約1)中におけるNSが1質量%となるように調製した。
次に、ポットにイネ(品種:ヒノヒカリ)を12束(稲苗3本を1束)ずつ、束は0.2m間隔で2列となるように播苗し、栽培した。適宜施肥を行ない、約4カ月後に稲刈りを行い、2週間程度乾燥させ、脱穀、籾摺りを経た後、実施例1に係る玄米のサンプルを得た。
玄米収量は0.33kg/m2であった。当該玄米のサンプルに含有されるヒ素濃度を図1に示す。
実施例1にて説明した脱穀、籾摺りを経た後、もみ殻のサンプルを得た以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係るもみ殻のサンプルを得た。当該もみ殻のサンプルに含有されるヒ素濃度を図2に示す。
実施例1にて説明した脱穀、籾摺りを経た後、稲わらのサンプルを得た以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る稲わらのサンプルを得た。当該稲わらのサンプルに含有されるヒ素濃度を図3に示す。
上述したポット内へNSを2.7kg添加し耕耘し、土壌(比重約1)中におけるNSが3質量%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る玄米のサンプルを得た。
玄米収量は0.30kg/m2であった。当該玄米のサンプルに含有されるヒ素濃度を図1に示す。
上述したポット内へNSを2.7kg添加し耕耘し、土壌(比重約1)中におけるNSが3質量%となるように調製した以外は、実施例2と同様の操作を行って、実施例5に係るもみ殻のサンプルを得た。当該もみ殻のサンプルに含有されるヒ素濃度を図2に示す。
上述したポット内へNSを2.7kg添加し耕耘し、土壌(比重約1)中におけるNSが3質量%となるように調製した以外は、実施例3と同様の操作を行って、実施例6に係る稲わらのサンプルを得た。当該稲わらのサンプルに含有されるヒ素濃度を図3に示す。
上述したポット内へNSを添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る玄米のサンプルを得た。
玄米収量は0.30kg/m2であった。当該玄米のサンプルに含有されるヒ素濃度を図1に示す。
上述したポット内へNSを添加しなかった以外は、実施例2と同様の操作を行って、比較例2に係るもみ殻のサンプルを得た。当該もみ殻のサンプルに含有されるヒ素濃度を図2に示す。
上述したポット内へNSを添加しなかった以外は、実施例3と同様の操作を行って、比較例3に係る稲わらのサンプルを得た。当該稲わらのサンプルに含有されるヒ素濃度を図3に示す。
図1−3のグラフに示された、玄米、もみ殻、稲わら中のヒ素含有量のデータより、NS無施用の場合と、NS1質量%、3質量%施用との間に統計的有意差が認められた。
特に、玄米においてはNS1質量%、3質量%施用により、NS無施用の場合に比較して、ヒ素移行を80%程度抑制するデータが得られた。
一方、玄米収量においては、NS1質量%施用で0.33kg/m2、NS3質量%施用、無施用で0.30kg/m2であり、NS1質量%施用が高収量という結果も得られた。
(実施例7)
面積約14m2の試験圃場を準備した。当該試験圃場の土壌中のヒ素濃度は、10mg/kgであった。当該試験圃場において、NSを1m2当たり2kg施用し、深さ0.2mで耕耘し、土壌(比重約1)中におけるNS1質量%の施用区を調製した。
田植前のそれぞれの圃場に、肥料である登録商標「ツバメコート」(サンアグロ社)と、登録商標「SRコート」(住友化学社)との混合肥料を0.4kg散布した。
栽培した米の品種は「あきたこまち」とした。
田植機による田植えを行い、田植直後のそれぞれの圃場に、除草剤である登録商標「忍」(住友化学社)を約7ml滴下した。そして田植えから2ヶ月後、2.5ヶ月後に、除草剤である登録商標「スミチオン」(住友化学社)を適量散布した。
田植えから5ヶ月に区画ごと(それぞれn=3)に収穫を行い、3週間程度自然乾燥させた後、脱穀、籾摺りを実施し、玄米および稲わらのサンプルを採取した。
当該玄米のサンプルに含有されるヒ素濃度を図4に、稲わらのサンプルに含有されるヒ素濃度を図5に示す。
NSを施用しなかった以外は、実施例7と同様の操作を行って玄米および稲わらのサンプルを採取した。
当該玄米のサンプルに含有されるヒ素濃度を図4に、稲わらのサンプルに含有されるヒ素濃度を図5に示す。
図4のグラフに示された玄米のサンプルにおけるヒ素含有量の結果より、NS1質量%の施用により、ヒ素移行を20%程度抑制するデータが得られた。
玄米の収量においては、NS施用区と非施用区で顕著な差は見られなかった。
図5のグラフに示された稲わらのサンプルにおけるヒ素含有量の結果より、NS1質量%施用区の稲わらは基準値以下のヒ素濃度に低減された。一方、無施用区のものは基準値を超え、飼料として適さないことが判明した。
Claims (7)
- Fe8O8(OH)8−2x(SO4)x(但し、xは1≦x≦1.75である。)の構造を示すシュベルトマナイトへ炭酸カルシウムを反応させて成る中和シュベルトマナイトを用いて、重金属を固定化することを特徴とする重金属の固定化方法。
- 重金属を含む土壌へ請求項1に記載の中和シュベルトマナイトを添加し、前記重金属を固定化することを特徴とする重金属の固定化方法。
- 前記重金属を含む土壌への、中和シュベルトマナイトの添加濃度を0.1質量%以上とすることを特徴とする請求項2に記載の重金属の固定化方法。
- 前記重金属がヒ素であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の重金属の固定化方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の重金属の固定化方法を用いて、土壌から植物への重金属の移行を抑制することを特徴とする植物への重金属移行抑制方法。
- 前記植物がイネ科植物であることを特徴とする請求項5に記載の植物への重金属移行抑制方法。
- 前記植物の種子または果実への重金属移行を抑制することを特徴とする請求項5に記載の植物への重金属移行抑制方法。
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