JP6714135B2 - 生体電気刺激提示方法および電気刺激装置 - Google Patents
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Description
本発明は、生体に電気刺激を与える技術に係り、特に生体の複数箇所に同時に電気刺激を与えることが可能な生体電気刺激提示方法および電気刺激装置に関するものである。
電気刺激装置は、低周波治療装置や電気的筋肉刺激装置などの機能的電気刺激の分野だけでなく、感覚提示などの分野においても期待されている(非特許文献1参照)。このような各装置においては、生体を電気で刺激するための電極を備えており、治療効果の増大や、刺激位置の高精度化、感覚提示面積増大、感覚パターン増大等のために複数チャンネルを有することがある。複数チャンネルを有する電気刺激装置では、複数のチャンネル駆動パターンが考えられ、最もシンプルなものは複数チャンネルが同時に駆動し、電気信号が出力されるものである。
また、これらの電気刺激装置を小型化しウェアラブルな形態で実現すると、使用場所を選ばず日常生活の中で使用することが可能となる。
また、これらの電気刺激装置を小型化しウェアラブルな形態で実現すると、使用場所を選ばず日常生活の中で使用することが可能となる。
河崎俊彦、二見亮弘,"時間分解能を考慮したモールス皮膚電気刺激への歩行の影響",信学技報,pp.295−299,2015年
一方で、生体(人体)に電気刺激を与える手段を複数チャンネル有する電気刺激装置において、複数チャンネルの同時駆動を行う場合には、チャンネル間のアイソレーションが必要となる。各チャンネル間のアイソレーションの方法としては、図8(A)に示すように、チャンネル毎に信号源100−1,100−2と出力回路101−1,101−2とを設け、チャンネルごとに閉ループを形成する方法、もしくは、図8(B)に示すように、チャンネルごとにトランス103−1,103−2を挿入する方法がある。なお、図8(A)、図8(B)の例では、電極102−1a,102−1b間に電気信号を印加すると共に、電極102−2a,102−2b間に電気信号を印加するようになっている。
しかしながら、図8(A)、図8(B)に示したような方法でチャンネル間のアイソレーションを実現すると、実装面積の増大を招き、電気刺激装置の小型化が困難になるという課題があった。
また、従来の電気刺激装置では、生体への過度の刺激を避けるため、電気刺激を連続して生体に与え続けることはできない。このような制約は生体の複数箇所に同時に電気刺激を提示する場合に顕著となる。したがって、従来の電気刺激装置では、生体の複数箇所に同時に電気刺激を提示する場合に、所望の刺激時間の電気刺激を与えることができない場合があった。
本発明の目的は、生体の複数箇所に同時に電気刺激を提示することができ、かつチャンネル間のアイソレーションのための構成を減らすことで小型化が可能となる生体電気刺激提示方法および電気刺激装置を提供することである。
本発明は、皮膚覚提示のために使用者の体表面に接触するように配置された複数チャンネルの刺激提示手段を介して使用者の身体の複数箇所に刺激を与える生体電気刺激提示方法において、複数チャンネルの電気刺激信号を生成する生成ステップと、前記複数チャンネルの電気刺激信号を前記刺激提示手段を介して使用者に印加する出力ステップとを含み、各チャンネルの電気刺激信号は、1チャンネルあたりM個(Mは2以上の整数)の連続するパルスの組からなり、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTは、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定され、各チャンネルのパルスのタイミングは、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定され、各チャンネルのパルスの幅Twは、チャンネル数をN、先行する(i−1)番目のチャンネルのパルスの終了タイミングと直後のi番目のチャンネルのパルスの開始タイミングとの時間差をTi(i=2〜N)としたとき、
を満たすことを特徴とするものである。
また、本発明は、皮膚覚提示のために使用者の体表面に接触するように配置された複数チャンネルの刺激提示手段を介して使用者の身体の複数箇所に刺激を与える生体電気刺激提示方法において、複数チャンネルの電気刺激信号を生成する生成ステップと、前記複数チャンネルの電気刺激信号を前記刺激提示手段を介して使用者に印加する出力ステップとを含み、各チャンネルの電気刺激信号は、1チャンネルあたりM個(Mは2以上の整数)の連続するパルスの組からなり、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTは、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定され、各チャンネルのパルスのタイミングは、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定され、さらに、前記パルス間隔ΔTの設定時に、前記パルス間隔ΔTを変えながら前記電気刺激信号を使用者に印加する測定ステップと、前記パルス間隔ΔTの設定時に、M個の連続するパルスの組からなる前記電気刺激信号を使用者が1回の皮膚覚刺激として認識したときの前記パルス間隔ΔTを、使用者に適したパルス間隔ΔTの値として確定するパルス間隔設定ステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明は、使用者の体表面に接触するように配置された複数チャンネルの刺激提示手段を介して使用者の身体の複数箇所に刺激を与える電気刺激装置において、複数チャンネルの電気刺激信号を出力する出力回路と、この複数チャンネルの電気刺激信号を使用者に印加する前記刺激提示手段と、前記複数チャンネルの電気刺激信号のパラメータを変更することが可能な設定手段とを備え、各チャンネルの電気刺激信号は、1チャンネルあたりM個(Mは2以上の整数)の連続するパルスの組からなり、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTは、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定され、各チャンネルのパルスのタイミングは、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定され、各チャンネルのパルスの幅Twは、チャンネル数をN、先行する(i−1)番目のチャンネルのパルスの終了タイミングと直後のi番目のチャンネルのパルスの開始タイミングとの時間差をTi(i=2〜N)としたとき、
を満たすことを特徴とするものである。
本発明によれば、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTを、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定し、かつ各チャンネルのパルスのタイミングを、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定することにより、チャンネル間のアイソレーションを実現しつつ、使用者の身体の複数箇所に電気刺激を同時に提示することが可能となる。本発明では、チャンネル間のアイソレーションのために従来の電気刺激装置で必要であった複数の電源やトランス等が不要となるので、電気刺激装置の構成を簡略化することができ、電気刺激装置の小型化が可能となる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明を実施するための形態について図を参照して説明する。図1(A)〜図1(D)は本実施の形態に係る電気刺激装置による生体電気刺激提示方法の概念図である。図1(A)、図1(B)に示した制御は、人体に電気刺激を与える手段を複数チャンネル分有する電気刺激装置において人体の複数箇所に同時刺激を行なう際に用いられる。ここでは、CH1とCH2の2チャンネルの場合を例として説明する。図1(A)、図1(B)のP1−1,P1−2,P2−1,P2−2は電気刺激信号である電圧パルスまたは電流パルスである。この例では、電気刺激信号P1−1,P1−2,P2−1,P2−2を1チャンネルあたり2パルス連続して与える場合を例として説明する。
以下、本発明を実施するための形態について図を参照して説明する。図1(A)〜図1(D)は本実施の形態に係る電気刺激装置による生体電気刺激提示方法の概念図である。図1(A)、図1(B)に示した制御は、人体に電気刺激を与える手段を複数チャンネル分有する電気刺激装置において人体の複数箇所に同時刺激を行なう際に用いられる。ここでは、CH1とCH2の2チャンネルの場合を例として説明する。図1(A)、図1(B)のP1−1,P1−2,P2−1,P2−2は電気刺激信号である電圧パルスまたは電流パルスである。この例では、電気刺激信号P1−1,P1−2,P2−1,P2−2を1チャンネルあたり2パルス連続して与える場合を例として説明する。
一方、図1(C)、図1(D)は、それぞれ図1(A)、図1(B)のように電気刺激信号P1−1,P1−2,P2−1,P2−2を人体に印加したときに人間が感じる皮膚覚刺激S1−1,S1−2,S2−1,S2−2,S3−1,S3−2を示している。なお、図1(A)、図1(B)の縦軸は電圧または電流、図1(C)、図1(D)の縦軸は任意単位、図1(A)〜図1(D)の横軸は時間である。
上記のとおり、チャンネル毎の電気刺激提示は、連続する2つのパルスによって実施される。図1(A)の例では、最初のパルスP1−1(P1−2)の終了タイミングから次のパルスP2−1(P2−2)の開始タイミングまでの時間間隔をパルス間隔ΔTとしたとき、このパルス間隔ΔTを人間の電気刺激に対する弁別分解能T(時間分解能)よりも長い時間としている(ΔT>T)。この弁別分解能Tは、連続する2回の皮膚覚刺激として人間が弁別可能な最小のパルス間隔である。弁別分解能の詳細については後述する。
このようにパルス間隔ΔTを弁別分解能Tよりも長い時間とすると、人間は、2回の皮膚覚刺激S1−1,S2−1を感じ取る。図1(A)の例のようにCH1とCH2の2チャンネルで電気刺激を与えると、人間は、図1(C)に示すように計4回の皮膚覚刺激S1−1,S1−2,S2−1,S2−2を感じ取る。
ただし、この図1(A)、図1(C)に示した方法では、人体への過度の刺激を避けるため、1回あたりの刺激時間(パルス幅)を長くすることはできない。
ただし、この図1(A)、図1(C)に示した方法では、人体への過度の刺激を避けるため、1回あたりの刺激時間(パルス幅)を長くすることはできない。
そこで、本実施の形態では、図1(B)に示すようにパルス間隔ΔTを上記の弁別分解能Tよりも短い時間とする(ΔT<T)。人間は、最初のパルスP1−1(P1−2)と2番目のパルスP2−1(P2−2)を弁別することができないため、最初のパルスP1−1(P1−2)から2番目のパルスP2−1(P2−2)までを1つの皮膚覚刺激S3−1(S3−2)として感じ取る。したがって、最初のパルスP1−1(P1−2)の始まりから2番目のパルスP2−1(P2−2)の終わりまでの刺激時間STを有する皮膚覚刺激を人に与えることが可能となる。
また、本実施の形態では、人体の複数箇所に同時刺激を行なうにあたって、異なるチャンネルのパルスに、先行するパルスの幅以上の時間差を設けることで、異なるチャンネルのパルスを時間的にずらして互いに重複しないようにしている。
図2は本実施の形態の電気刺激装置の構成例を示すブロック図である。電気刺激装置は、装置の各部に電源電圧を供給する電源1と、複数チャンネルの信号パターンを生成することが可能な信号源2(設定手段)と、チャンネル毎に設けられ、信号源2からの信号パターンに応じて電気刺激信号を出力する出力回路3−1,3−2と、電気刺激装置の使用者の皮膚表面に接触するように配置される電極4−1a,4−1b,4−2a,4−2bとから構成される。
電極4−1a,4−1bはチャンネルCH1の刺激提示手段を構成し、電極4−2a,4−2bはチャンネルCH2の刺激提示手段を構成している。
これら電極4−1a,4−1b,4−2a,4−2bを、チャンネル毎に使用者の皮膚表面の異なる箇所に接触するように、使用者が着用する衣服に取り付けてもよいし、別の手段で使用者の皮膚に直接貼り付けるようにしてもよい。本発明は、様々なタイプの電極に適用することが可能である。
図2の例では、2チャンネルの構成としているが、後述の説明から明らかなように3チャンネル以上としてもよい。
これら電極4−1a,4−1b,4−2a,4−2bを、チャンネル毎に使用者の皮膚表面の異なる箇所に接触するように、使用者が着用する衣服に取り付けてもよいし、別の手段で使用者の皮膚に直接貼り付けるようにしてもよい。本発明は、様々なタイプの電極に適用することが可能である。
図2の例では、2チャンネルの構成としているが、後述の説明から明らかなように3チャンネル以上としてもよい。
本実施の形態の信号源2は、複数チャンネルの信号パターンを独立に生成することが可能である。具体的には、パルス信号の開始タイミング、パルス信号の振幅、パルス幅、パルス間隔をチャンネル毎に独立に変えることが可能である。ただし、本実施の形態では、パルス信号の開始タイミング以外のパラメータ(振幅、パルス幅、パルス間隔)を各チャンネルで同一の値としている。信号源2の例としては、図示しないメモリに格納されたプログラムに従って処理を実行するマイクロコンピュータがある。この場合、信号源2は、プログラムに従って信号パターンを発生することになる。
出力回路3−1は、信号源2の第1の出力ポートから出力されるチャンネルCH1の信号パターンに応じて、チャンネルCH1の電極4−1a,4−1b間に実際に印加する電気刺激信号(電圧パルスまたは電流パルス)を生成する。同様に、出力回路3−2は、信号源2の第2の出力ポートから出力されるチャンネルCH2の信号パターンに応じて、チャンネルCH2の電極4−2a,4−2b間に実際に印加する電気刺激信号(電圧パルスまたは電流パルス)を生成する。
電気刺激信号は、正負どちらかの極性を用いた片極性であっても、両極性であってもよい。正極性の電気刺激信号の場合、パルス幅Twは図3(A)に示すように信号の立ち上がりから立ち下がりまでの時間を表し、負極性の電気刺激信号の場合、パルス幅Twは図3(B)に示すように信号の立ち下がりから立ち上がりまでの時間を表す。また、正極パルスと負極パルスの組からなる両極性の電気刺激信号の場合、パルス幅Twは、図3(C)に示すように正極パルスの立ち上がりから負極パルスの立ち上がりまでの時間、または図3(D)に示すように負極パルスの立ち下がりから正極パルスの立ち下がりまでの時間を表す。
出力回路3−1,3−2は、信号源2から出力される信号パターンに応じて電気刺激信号を出力するため、電気刺激信号の開始タイミング、振幅、パルス幅、パルス間隔は信号パターンによって決定される。
なお、本実施の形態では、電圧波形が図1(B)、図3のような波形となる電気刺激信号を用いて定電圧刺激を行ってもよいし、電流波形が図1(B)、図3のような波形となる電気刺激信号を用いて定電流刺激を行ってもよいが、定電圧刺激の方がより好ましい。電極4−1a,4−1b,4−2a,4−2bを使用者の皮膚表面と接触させるウェアラブル環境下では、電極4−1a,4−1b,4−2a,4−2bと皮膚との接触インピーダンスは状況によって大きく変動する。
使用者の動きが安定している状況の接触インピーダンスは例えば200kΩ程度であるが、使用者の体動が大きくなると、接触インピーダンスがMΩを超えて、ほぼ絶縁状態、場合によっては電極4−1a,4−1b,4−2a,4−2bが完全に皮膚から離れてしまう場合も有り得る。一方で、使用者の動きが安定している状況でも接触インピーダンスが例えば10kΩ以下の低い値になることはない。
このように、接触インピーダンスは増大する方向に変動する可能性が高い。定電流刺激を行う場合、接触インピーダンスが増大すると、使用者に印加される電圧が上昇することになる。上記のとおり、接触インピーダンスは著しく増大することがあるので、使用者に印加される電圧も大きく上昇することになり、使用者に激しい痛みを引き起こす。以上のような理由から、安全性の観点で定電圧刺激を採用することが好ましい。
以下、電気刺激信号のパルス間隔ΔTの設定方法に関して説明する。人間の感覚器の能力には個人差があり、一様ではないため、人間の電気刺激に対する弁別分解能にも個人差がある。そのため、弁別分解能を実験により測定し、弁別分解能に対して余裕を設けたパルス間隔ΔTを設定する(弁別分解能に対して十分に短いΔTを設定する)ことで、個人差の影響を排除し、電気刺激装置の動作を設定する発信者側の意図する刺激が多くの人に確実に伝わるようにすることができる。
図4(A)は人間の電気刺激に対する弁別分解能(時間分解能)の実験結果の1例を示している。この実験結果は、非特許文献1に記載されているものである。図4(A)によると、最も感度の高い、すなわち弁別分解能が最も小さい箇所は指の付け根となっており、弁別分解能は27.1msである。
図4(B)は発明者が、被験者A,B,Cの前腕部にパルス幅50μsの電気パルスを与えたときの弁別分解能(時間分解能)の実験結果を示している。図4(B)は、図4(A)の結果と同様の結果を示しており、平均分解能は29msである。
よって、例えばパルス間隔ΔTを20ms以下に設定すれば、少なくとも一部の人間は、連続する2回のパルスを独立したパルスとして弁別することができない。さらに、パルス間隔ΔTを5msに設定した場合は、より多くの人間がパルスを弁別できなくなるので、確実に個人差の影響を排除したパルス間隔となる。
一方で、本実施の形態では、異なるチャンネルの電気刺激信号のパルスを時間的にずらしているため、パルス間隔ΔTが小さくなると、パルス間隔ΔT内に各チャンネルのパルスを配置することが難しくなり、多チャンネルを実現することが難しくなる。パルス間隔ΔTが大きい方が、チャンネル数を増やすことができ、個人差の影響の排除とチャンネル数とがトレードオフの関係となるので、このような関係を考慮してパルス間隔ΔTを設定することが好ましい。
次に、複数チャンネル間の駆動方法について、図5のタイミングチャートを用いて説明する。図5の例では、Nチャンネル(Nは2以上の整数)の場合について記載している。図5の縦軸は電圧または電流、横軸は時間である。
本実施の形態では、チャンネルCH1の1番目のパルスP1−1の出力後に、チャンネルCH2の1番目のパルスP1−2を出力し、続けてチャンネルCH3の1番目のパルスP1−3を出力するというように、各チャンネルCH1〜CHNの電気刺激信号のパルスを時間的にずらして重複しないようにしている。そして、チャンネルCH1の2番目のパルスP2−1は1番目のパルスP1−1からΔT後に出力され、チャンネルCH2の2番目のパルスP2−2は1番目のパルスP1−2からΔT後に出力され、チャンネルCH3の2番目のパルスP2−3は1番目のパルスP1−3からΔT後に出力されるというように、各チャンネルCH1〜CHNのパルスが連続して出力される。
ここで、本実施の形態では、使用者の身体の複数箇所に同時に電気刺激を提示する場合を想定している。上記のとおり、各チャンネルのパルスには時間的なずれがあるが、使用者には同時の電気刺激として認識させる必要があるため、最後のチャンネルCHNのパルスP1−Nは、最初のチャンネルCH1のパルスP1−1の出力後ΔT/2以内に出力されることが、同時刺激の提示には好ましい。よって、パルス間隔ΔTとチャンネル数Nとから、パルス幅Twは以下の式を満たすことが望ましい。
Tw<ΔT/(2(N−2)) ・・・(1)
Tw<ΔT/(2(N−2)) ・・・(1)
また、先行する(i−1)番目のチャンネルのパルスの開始タイミングと直後のi番目(i=2〜N)のチャンネルのパルスの開始タイミングとの時間差は、先行するチャンネルのパルスの幅以上であればよい。つまり、先行する(i−1)番目のチャンネルのパルスの終了タイミングと直後のi番目のチャンネルのパルスの開始タイミングとの時間差Tiは0以上であればよい。この時間差Tiを含めて式(1)を記載し直すと式(2)のようになる。
こうして、本実施の形態では、チャンネル間のアイソレーションを実現しつつ、使用者の身体の複数箇所に電気刺激を同時に提示することが可能となる。つまり、異なるチャンネルのパルスを時間的にずらすことでチャンネル間のアイソレーションを実現しただけでは、複数箇所の同時刺激は実現できない。この場合はパルス幅分の時間のずれ(500μs程度)を人間が感じてしまうからである。そこで、本実施の形態では、各チャンネルの電気刺激信号を、1チャンネルあたり2つ以上の連続するパルスの組とし、パルス間隔ΔTを人間の電気刺激に対する弁別分解能よりも短い時間とすることにより、刺激の継続時間を最大で20ms程度まで拡大することができる。これにより、異なるチャンネルのパルスを時間的にずらすと、単パルス時には感じられるパルス幅分の時間差もその後の刺激継続時間が長いため感じ取ることができないので、使用者の身体の複数箇所に例えば20ms程度の継続時間の電気刺激を同時に提示することが可能となる。本実施の形態では、チャンネル間のアイソレーションのために従来の電気刺激装置で必要であった複数の電源やトランス等が不要となるので、電気刺激装置の構成を簡略化することができ、電気刺激装置の小型化が可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、個人差の影響を排除するため、電気刺激装置の使用者個人毎に測定を行い、適切なパルス間隔ΔTを設定する。第1の実施の形態においては、多数の測定結果から大多数の人の弁別分解能に対して余裕を設けたパルス間隔ΔTを設定していたが、弁別分解能は与える電気刺激信号によっても変化するため、使用者に実際に印加する予定の電気刺激信号を用いて個人毎に測定を行うことによって、より適切なパルス間隔ΔTを設定可能とする。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、個人差の影響を排除するため、電気刺激装置の使用者個人毎に測定を行い、適切なパルス間隔ΔTを設定する。第1の実施の形態においては、多数の測定結果から大多数の人の弁別分解能に対して余裕を設けたパルス間隔ΔTを設定していたが、弁別分解能は与える電気刺激信号によっても変化するため、使用者に実際に印加する予定の電気刺激信号を用いて個人毎に測定を行うことによって、より適切なパルス間隔ΔTを設定可能とする。
図6は本実施の形態の電気刺激装置の構成例を示すブロック図であり、図2と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電気刺激装置は、電源1と、信号源2と、出力回路3−1,3−2と、電極4−1a,4−1b,4−2a,4−2bと、使用者が電気刺激装置を操作するための入力装置5とを備えている。
図7は本実施の形態の電気刺激装置の動作を説明するフローチャートである。最初に、電気刺激装置が起動すると、信号源2は、パルス間隔ΔTを初期値(例えばΔT>35ms)に設定した信号パターンを出力する。これにより、第1の実施の形態で説明したように、1チャンネルあたり2パルスの電気刺激信号が使用者に印加される(図7ステップS11)。
使用者は、1チャンネルあたり2パルス連続して印加された電気刺激信号を1回の皮膚覚刺激として認識した場合には、正しい皮膚覚刺激が得られたことを示す操作(例えば「OK」ボタンの押下)を入力装置5に対して行い(図7ステップS12においてYES)、電気刺激信号を2回の皮膚覚刺激として認識した場合には、正しい皮膚覚刺激が得られなかったことを示す操作(例えば「NG」ボタンの押下)を入力装置5に対して行う(ステップS12においてNO)。
信号源2は、正しい皮膚覚刺激が得られなかったことを示す操作が行われた場合、ΔT=ΔT−1、すなわちパルス間隔ΔTを直前の値から所定時間幅分だけ減らした信号パターンを出力する(図7ステップS13)。これにより、1チャンネルあたり2パルスの電気刺激信号が使用者に再び印加される(ステップS11)。こうして、1チャンネルあたり2パルス連続して印加される電気刺激信号を1回の皮膚覚刺激として使用者が認識するまで、ステップS11〜S13の処理が繰り返し実行される。
信号源2は、正しい皮膚覚刺激が得られたことを示す操作が行われた場合、最後に設定したパルス間隔ΔTを、使用者にとって適切なパルス間隔ΔTであるとして確定する(図7ステップS14)。
以後、信号源2は、確定したパルス間隔ΔTを使用し、予め登録された皮膚覚提示アプリケーションプログラムに従って信号パターンを出力する。これにより、信号パターンに応じた電気刺激信号が使用者に印加される(図7ステップS15)。
以後、信号源2は、確定したパルス間隔ΔTを使用し、予め登録された皮膚覚提示アプリケーションプログラムに従って信号パターンを出力する。これにより、信号パターンに応じた電気刺激信号が使用者に印加される(図7ステップS15)。
信号源2は、使用者によって刺激出力を停止する操作が行われた場合(図7ステップS16においてNO)、皮膚覚提示アプリケーションを終了し、電気刺激信号の出力を停止する。
こうして、本実施の形態では、適切なパルス間隔ΔTを設定することができる。
こうして、本実施の形態では、適切なパルス間隔ΔTを設定することができる。
なお、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明は、第1、第2の実施の形態で説明した条件を満たすようにすれば、様々な皮膚覚提示アプリケーションに適用することが可能である。
また、第1、第2の実施の形態では、電気刺激信号を、1チャンネルあたり2パルス連続して発生させる場合を例に挙げて説明しているが、これに限るものではなく、1チャンネルあたり3パルス以上連続して発生させてもよい。ただし、この場合でも、(M−1)×ΔT(Mは1チャンネルあたりのパルスの連続数で、2以上の整数)が人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間になるように設定する必要がある。これにより、1チャンネルあたりMパルス連続して印加した電気刺激信号を1回の皮膚覚刺激として認識させることができる。
また、第1、第2の実施の形態では、パルスの開始タイミング以外のパラメータ(振幅、パルス幅、パルス間隔)を各チャンネルで同一の値としているが、これらのパラメータを各チャンネルで異なる値としてもよい。これにより、人体の複数箇所に異なる刺激を提示することが可能となる。ただし、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないようにずれていて、各チャンネルのパルス間隔が弁別分解能未満であることが必要となる。さらに、人体の複数箇所に同時に電気刺激を提示したい場合には、最初のチャンネルのパルスの出力後、このチャンネルのパルス間隔の1/2以内の時間で最後のチャンネルのパルスが出力されるようにすることが必要となる。
第1、第2の実施の形態で説明した信号源2は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。
本発明は、皮膚覚提示システムに適用することができる。
1…電源、2…信号源、3−1,3−2…出力回路、4−1a,4−1b,4−2a,4−2b…電極、5…入力装置。
Claims (4)
- 皮膚覚提示のために使用者の体表面に接触するように配置された複数チャンネルの刺激提示手段を介して使用者の身体の複数箇所に刺激を与える生体電気刺激提示方法において、
複数チャンネルの電気刺激信号を生成する生成ステップと、
前記複数チャンネルの電気刺激信号を前記刺激提示手段を介して使用者に印加する出力ステップとを含み、
各チャンネルの電気刺激信号は、1チャンネルあたりM個(Mは2以上の整数)の連続するパルスの組からなり、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTは、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定され、各チャンネルのパルスのタイミングは、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定され、
各チャンネルのパルスの幅Twは、チャンネル数をN、先行する(i−1)番目のチャンネルのパルスの終了タイミングと直後のi番目のチャンネルのパルスの開始タイミングとの時間差をTi(i=2〜N)としたとき、
- 皮膚覚提示のために使用者の体表面に接触するように配置された複数チャンネルの刺激提示手段を介して使用者の身体の複数箇所に刺激を与える生体電気刺激提示方法において、
複数チャンネルの電気刺激信号を生成する生成ステップと、
前記複数チャンネルの電気刺激信号を前記刺激提示手段を介して使用者に印加する出力ステップとを含み、
各チャンネルの電気刺激信号は、1チャンネルあたりM個(Mは2以上の整数)の連続するパルスの組からなり、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTは、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定され、各チャンネルのパルスのタイミングは、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定され、
さらに、前記パルス間隔ΔTの設定時に、前記パルス間隔ΔTを変えながら前記電気刺激信号を使用者に印加する測定ステップと、
前記パルス間隔ΔTの設定時に、M個の連続するパルスの組からなる前記電気刺激信号を使用者が1回の皮膚覚刺激として認識したときの前記パルス間隔ΔTを、使用者に適したパルス間隔ΔTの値として確定するパルス間隔設定ステップとを含むことを特徴とする生体電気刺激提示方法。 - 使用者の体表面に接触するように配置された複数チャンネルの刺激提示手段を介して使用者の身体の複数箇所に刺激を与える電気刺激装置において、
複数チャンネルの電気刺激信号を出力する出力回路と、
この複数チャンネルの電気刺激信号を使用者に印加する前記刺激提示手段と、
前記複数チャンネルの電気刺激信号のパラメータを変更することが可能な設定手段とを備え、
各チャンネルの電気刺激信号は、1チャンネルあたりM個(Mは2以上の整数)の連続するパルスの組からなり、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTは、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定され、各チャンネルのパルスのタイミングは、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定され、
各チャンネルのパルスの幅Twは、チャンネル数をN、先行する(i−1)番目のチャンネルのパルスの終了タイミングと直後のi番目のチャンネルのパルスの開始タイミングとの時間差をTi(i=2〜N)としたとき、
- 使用者の体表面に接触するように配置された複数チャンネルの刺激提示手段を介して使用者の身体の複数箇所に刺激を与える電気刺激装置において、
複数チャンネルの電気刺激信号を出力する出力回路と、
この複数チャンネルの電気刺激信号を使用者に印加する前記刺激提示手段と、
前記複数チャンネルの電気刺激信号のパラメータを変更することが可能な設定手段とを備え、
各チャンネルの電気刺激信号は、1チャンネルあたりM個(Mは2以上の整数)の連続するパルスの組からなり、各チャンネルにおける連続するパルスの間隔をΔTとしたとき、(M−1)×ΔTは、人間の電気刺激に対する弁別分解能未満の時間に設定され、各チャンネルのパルスのタイミングは、異なるチャンネルのパルスが時間的に重複しないように設定され、
前記設定手段は、前記パルス間隔ΔTの設定時に、前記パルス間隔ΔTを変えながら前記電気刺激信号を使用者に印加させ、M個の連続するパルスの組からなる前記電気刺激信号を使用者が1回の皮膚覚刺激として認識したときの前記パルス間隔ΔTを、使用者に適したパルス間隔ΔTの値として確定することを特徴とする電気刺激装置。
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