以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1乃至図24を参照して、本発明の第1の実施の形態における歩行データ取得装置および歩行データ取得システムについて説明する。
図1に示すように、本実施の形態における歩行データ取得装置1は、被験者の足Fに装着可能な装身具10と、曲げ計測部20と、圧力計測部30と、データ処理部50と、を備えている。本実施の形態では、装身具10が靴下11である例について説明する。曲げ計測部20および圧力計測部30は、靴下11に取り付けられている。曲げ計測部20は、被験者の足FのMP関節軸100(図2参照)の周りの屈曲度、足首部Aの屈曲度および土踏まず部101(図2参照)の屈曲度を計測する。圧力計測部30は、被験者の足裏圧力を計測する。
図1乃至図6に示すように、靴下11は、被験者の足指部102を覆う靴下爪先部11aと、足裏を覆う靴下足底部11bと、足甲を覆う靴下足甲部11cと、踵部103を覆う靴下踵部11dと、足首部Aから下腿部Lに延びる靴下脚部11eと、を有している。靴下爪先部11a、靴下足底部11b、靴下足甲部11c、靴下踵部11dおよび靴下脚部11eは、別々に形成された布地が縫い合わされていてもよく、あるいは、一体に形成された布地からなっていてもよく、靴下11の構成は任意である。また、靴下11のサイズは、靴下11に取り付けられた各曲げセンサ21〜24(後述)および各圧力センサ31〜33(後述)が被験者の足Fと足首部Aの変形を精度良く計測することが可能なように、被験者の足Fのサイズに応じたサイズとすることが好ましい。
曲げ計測部20は、MP曲げセンサ21と、距腿曲げセンサ22と、土踏まず曲げセンサ23と、距骨曲げセンサ24と、を有している。
MP曲げセンサ21は、図2に示すように、被験者の足FのMP関節軸100の周りの屈曲度を計測する。より具体的には、MP曲げセンサ21は、足Fの裏側において足Fの第二趾104と踵点105との間の部分におけるMP関節軸100の周りの屈曲度を計測する。MP曲げセンサ21により計測される屈曲度は、足長軸106を含む矢状面内におけるMP関節軸100の周りの屈曲度であることが好ましい。この場合、MP関節軸100のうち、比較的屈曲度の変化が大きく現れる部分における屈曲度の変化を捉えることが可能になる。ここで、MP関節軸100とは、脛側中足点107と腓側中足点108とを結ぶ直線を意味する。このうち脛側中足点107とは、第1中足骨109の最も内側(脛骨110の側)に突出した点であり、腓側中足点108とは、足指部102の側において第5中足骨111の遠位端の最も外側(腓骨112の側)に突出した点である。足長軸106とは、足Fを裏側から見たときの、踵点105と第二趾104の先端とを結ぶ直線を意味する。矢状面とは、左右相称な被験者の体の正中に対し平行に体を左右に分ける面であって、足Fが床面に接地した場合には、この床面に垂直になる面を意味する。
MP曲げセンサ21は、細長状に形成され、靴下11の靴下足底部11bの内面に配置される。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを裏側から見たときに、MP曲げセンサ21は、足長軸106上に配置されるとともに、MP曲げセンサ21の長手方向中心がMP関節軸100上に配置されることが好ましい。このことにより、足長軸106を含む矢状面内におけるMP関節軸100の周りの屈曲度を精度良く計測することができる。
距腿曲げセンサ22は、図3に示すように、被験者の足首部Aの距腿関節軸113の周りの屈曲度を計測する。より具体的には、距腿曲げセンサ22は、被験者の足Fの内踝点114と外踝点115との中間位置における距腿関節軸113の周りの屈曲度を計測する。この場合、距腿関節軸113のうち、比較的屈曲度の変化が大きく現れる部分における屈曲度の変化を捉えることが可能になる。ここで、距腿関節軸113とは、図3、図6および図7に示すように、足首部Aにおいて背屈底屈方向(前後方向)の回転を可能にする距腿関節の軸である。ここで、内踝点114とは、内踝116のうち最も内側に突出した点を意味し、外踝点115とは、外踝117のうち最も外側に突出した点を意味する。
距腿曲げセンサ22は、細長状に形成され、靴下11の靴下足甲部11cの内面から靴下脚部11eの内面にわたって延びるように配置される。より好適には、靴下足甲部11cの内面から靴下脚部11eの内面に延びる第1ポケット12が設けられており、この第1ポケット12の靴下脚部11eの側の端部に開口12aが設けられ、この開口12aから、第1ポケット12内に距腿曲げセンサ22が挿入されて収容されている。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを前側(足指部102の側)から見たときに、距腿曲げセンサ22は、被験者の足Fの内踝点114と外踝点115との中間位置に配置されるとともに、当該中間位置と第二趾104の先端とを結ぶ線X1上に配置されることが好ましい。また、距腿曲げセンサ22の長手方向中心が、前脛骨下点118上に配置されることが好ましい。このことにより、内踝点114と外踝点115との中間位置における距腿関節軸113の周りの屈曲度を精度良く計測することができる。ここで、前脛骨下点118とは、脛骨110の前下端の点であって、足根骨と接する点を意味する。足根骨とは、足首部Aの足関節に続く短骨(後述の舟状骨121等)の総称である。
土踏まず曲げセンサ23は、図2に示すように、被験者の足Fの土踏まず部101の屈曲度を計測する。より具体的には、土踏まず曲げセンサ23は、足Fの裏側において、足Fの母趾119の先端と踵点105とを結ぶ線X2よりも足Fの内側の位置における土踏まず部101の屈曲度を計測する。この場合、土踏まず部101のうち、比較的屈曲度の変化が大きく現れる部分における屈曲度の変化を捉えることが可能になる。
土踏まず曲げセンサ23は、細長状に形成され、靴下11の靴下足底部11bの内面に配置される。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを裏側から見たときに、土踏まず曲げセンサ23は、母趾119の先端と踵点105とを結ぶ線X2に沿って(略平行に)、当該線X2よりも足Fの内側に配置されることが好ましい。また、土踏まず曲げセンサ23は、土踏まず曲げセンサ23の長手方向中心が、土踏まず部101の最大高さ位置(例えば、舟状骨粗面120の前端から前方に約15mmの位置)に配置されることが好ましい。このことにより、被験者の母趾119の先端と踵点105とを結ぶ線X2よりも内側の位置における土踏まず部101の屈曲度を精度良く計測することができる。ここで舟状骨粗面120とは、舟状骨121の最も内側に突出した点を意味する。
距骨曲げセンサ24は、図4乃至図6に示すように、被験者の足首部Aの距骨下関節軸122の周りの屈曲度を計測する。より具体的には、距骨曲げセンサ24は、足首部Aの内側において距骨下関節軸122の周りの屈曲度を計測する内側距骨曲げセンサ24aと、足首部Aの外側において距骨下関節軸122の周りの屈曲度を計測する外側距骨曲げセンサ24bと、を含んでいる。内側距骨曲げセンサ24aは、足首部Aの内側において距骨下関節軸122の周りの屈曲度を計測し、外側距骨曲げセンサ24bは、足首部Aの外側において距骨下関節軸122の周りの屈曲度を計測する。この場合、距骨下関節軸122のうち、比較的屈曲度の変化が大きく現れる部分における屈曲度の変化を、足首部Aの内側と外側から捉えることができる。ここで、距骨下関節軸122とは、図4、図6および図7に示すように、足首部Aにおいて左右方向の回転(回内、回外)を可能にする距骨下関節の軸である。
図4および図6に示す内側距骨曲げセンサ24aは、細長状に形成され、足首部Aの内側において、靴下11の靴下足甲部11cの内面から靴下足底部11bの内面にわたって延びるように配置される。より好適には、靴下足甲部11cの内面から靴下足底部11bの内面に延びる第2ポケット13が設けられており、この第2ポケット13の靴下脚部11eの側の端部に開口13aが設けられ、この開口13aから、第2ポケット13内に内側距骨曲げセンサ24aが挿入されて収容されている。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを内側から見たときに、内側距骨曲げセンサ24aは、内踝点114と舟状骨粗面120とを結ぶ線X3上に配置されるとともに、内側距骨曲げセンサ24aの前端が、舟状骨粗面120上若しくはその近傍に配置されることが好ましい。また、内側距骨曲げセンサ24aの長手方向中心は、距骨下関節軸122を矢状面に投影した投影線と線X3との交点上に配置されることが好ましい。このことにより、足首部Aの内側において距骨下関節軸122の周りの屈曲度を精度良く計測することができる。
図5および図6に示す外側距骨曲げセンサ24bは、細長状に形成され、足首部Aの外側において、靴下11の靴下足甲部11cの内面から靴下足底部11bの内面にわたって延びるように配置される。より好適には、靴下足甲部11cの内面から靴下足底部11bの内面に延びる第3ポケット14が設けられており、この第3ポケット14の靴下脚部11eの側の端部に開口14aが設けられ、この開口14aから、第3ポケット14内に外側距骨曲げセンサ24bが挿入されて収容されている。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを外側から見たときに、外側距骨曲げセンサ24bは、外踝点115と第5中足骨粗面124とを結ぶ線X4上に配置されるとともに、外側距骨曲げセンサ24bの前端が、第5中足骨粗面124上若しくはその近傍に配置されることが好ましい。また、外側距骨曲げセンサ24bの長手方向中心は、距骨下関節軸122を矢状面に投影した投影線と線X4との交点上に配置されることが好ましい。このことにより、足首部Aの外側において距骨下関節軸122の周りの屈曲度を精度良く計測することができる。ここで、第5中足骨粗面124とは、踵側において第5中足骨111の近位端の最も外側に突出した点を意味する。
ここで、各曲げセンサ21〜24は、計測部位の屈曲度を計測可能であれば任意の構成とすることができるが、例えば、弾力性を有する細長状の導電体を有する構成とすることができる。この場合、この細長状の導電体の抵抗値が屈曲度に応じて変化することを利用して、ゼロ点(0点)に対する相対的な屈曲度を計測することができる。ゼロ点は、任意に設定することができるが、静止立位で計測した値をゼロ点としてもよい。この姿勢では両足接地となるため足部Fの変形が少ない状態でゼロ点を設定することができる。あるいは、座位で膝および足関節を90度にした状態をゼロ点としてもよい。この場合、足部Fに荷重がかかることを防止するとともに距骨下関節の中間位をゼロ点に設定することができる。なお、曲げセンサの一例としては、Spectra symbol社製のフレックスセンサ(Flex Sensor)が挙げられる。
各曲げセンサ21〜24の好適な長さについて説明する。
被験者の足FのMP関節軸100の周りの屈曲度を、MP曲げセンサ21の前端の位置を変えながら(MP曲げセンサ21の長手方向中心をMP関節軸100上に配置した状態で)計測し、屈曲度の変化を明瞭に捉えることができるMP曲げセンサ21の前端の位置を調べた。この際、MP曲げセンサ21は、足長軸106上に配置させ、MP曲げセンサ21の前端をMP関節軸100よりも前側に配置させた。すると、MP関節軸100からMP曲げセンサ21の前端までの距離が、20mm〜40mmの位置に配置される場合に、屈曲度の変化が比較的明瞭に現れることが確認できた。このときの被験者の足長が256mmであることから、当該距離を、日本人の60歳代の女性の5パーセンタイル値と30歳代の男性の95パーセンタイル値の足長範囲(222.9mm〜266mm)(出典:日本人の人体計測データベース1992-1994)に比例換算すると、当該距離の好適な範囲は、17.4mm〜41.6mmとなる。この距離を満たすようなMP曲げセンサ21の長さは、MP曲げセンサ21の長手方向中心をMP関節軸100上に配置する場合には34.8mm〜83.2mmとなり、この場合に、MP関節軸100の周りの屈曲度の変化を明瞭に現わすことができると考えられる。この長さの範囲から、足Fのサイズに応じて適宜選択することが好ましい。
これと同様にして、距腿関節軸113の周りの屈曲度の変化についても調べたところ、当該屈曲度の変化が明瞭に計測できる範囲は、距腿曲げセンサ22の前端が、前脛骨下点118から前側に10mm〜40mmの位置に配置される場合であることが確認できた。このため、前述の足長範囲に比例換算すると、前脛骨下点118から距腿曲げセンサ22の前端までの好適な距離は8.7mm〜41.6mmとなる。この距離を満たすような距腿曲げセンサ22の長さは、距腿曲げセンサ22の長手方向中心を前脛骨下点118上に配置する場合には17.4mm〜83.2mmとなる。この場合に、距腿関節軸113の周りの屈曲度の変化を明瞭に現わすことができると考えられる。この長さの範囲から、足Fのサイズに応じて適宜選択することが好ましい。
土踏まず部101の屈曲度については、当該屈曲度の変化が明瞭に計測できる範囲は、土踏まず曲げセンサ23の前端が、土踏まず部101の最大高さ位置から前側に20〜50mmの位置に配置される場合であることが確認できた。このため、前述の足長範囲に比例換算すると、土踏まず部101の最大高さ位置から土踏まず曲げセンサ23の前端までの距離は17.4mm〜52.0mmとなる。この距離を満たすような土踏まず曲げセンサ23の長さは、土踏まず曲げセンサ23の長手方向中心を土踏まず部101の最大高さ位置上に配置する場合には.34.5mm〜104mmとなる。この場合に、土踏まず部101の屈曲度の変化を明瞭に現わすことができると考えられる。この長さの範囲から、足Fのサイズに応じて適宜選択することが好ましい。
距骨下関節軸122の周りの屈曲度については、足首部Fの内側において当該屈曲度の変化が明瞭に計測できる範囲は、内側距骨曲げセンサ24aの前端が、所定の点(距骨下関節軸122を矢状面に投影した投影線と、内踝点114と舟状骨粗面120とを結ぶ線X3との交点)から前側に20〜40mmの位置に配置される場合であることが確認できた。このため、前述の足長範囲に比例換算すると、当該交点から内側距骨曲げセンサ24aの前端までの距離は17.4mm〜41.6mmとなる。この距離を満たすような内側距骨曲げセンサ24aの長さは、内側距骨曲げセンサ24aの長手方向中心を当該交点上に配置する場合には34.8〜83.2mmとなる。この場合に、距骨下関節軸122の周りの屈曲度の変化を明瞭に現わすことができると考えられる。この長さの範囲から、足Fのサイズに応じて適宜選択することが好ましい。なお、外側距骨曲げセンサ24bについては、内側距骨曲げセンサ24aと同様とすることができ、ここでは詳細な説明は省略する。
なお、各曲げセンサ21〜24は、上述したように細長状に形成されているが、センサ21〜24の長手方向両端を靴下11に固定して(例えば、テープ等で貼り付けて)もよく、あるいは当該長手方向の両端のうちの一端を靴下11に固定して、他端を靴下11に固定しないようにしてもよい。後者の場合、曲げセンサ21〜24を被験者の足Fと足首部Aの変形にスムースに追従させることができ、取得される歩行データの精度を向上させることができる。
図1および図2に示すように、圧力計測部30は、踵圧力センサ31と、MP圧力センサ32と、足指圧力センサ33と、を有している。
踵圧力センサ31は、図2に示すように、被験者の足Fの裏側において踵部103の圧力を計測する。より具体的には、踵圧力センサ31は、靴下11の靴下踵部11dの内面に取り付けられる(例えば、テープ等で貼り付けられる)。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを裏側から見たときに、踵圧力センサ31は、踵部103のうち床面に接地する位置に配置される。このことにより、被験者の足Fの裏側において踵部103の圧力を精度良く計測することができ、後述する踵接地時点T1および踵離地時点T3を精度良く特定することができる。
MP圧力センサ32は、被験者の足Fの裏側においてMP関節部123の圧力を計測する。より具体的には、MP圧力センサ32は、足Fの裏側において、足長軸106よりも足Fの外側におけるMP関節部123の圧力を計測する。このようなMP圧力センサ32は、靴下11の靴下足底部11bの内面に取り付けられる(例えば、テープ等で貼り付けられる)。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを裏側から見たときに、MP圧力センサ32は、MP関節軸100上であって、足長軸106よりも足Fの外側に配置されることが好ましい。このことにより、足Fの裏側において足長軸106よりも足Fの外側におけるMP関節部123の圧力を精度良く計測することができ、後述するMP接地時点T2を精度良く特定することができる。
足指圧力センサ33は、被験者の足Fの裏側において母趾119(足指部102の一例)の圧力を計測する。より具体的には、足指圧力センサ33は、靴下11の靴下爪先部11aの内面に取り付けられる(例えば、テープ等で貼り付けられる)。歩行データ取得装置1が装着された被験者の足Fを裏側から見たときに、足指圧力センサ33は、母趾119のうち床面に接地する位置に配置されることが好ましい。このことにより、被験者の足Fの裏側において母趾119の圧力を精度良く計測することができ、後述する足指離地時点T4を精度良く特定することができる。なお、足指圧力センサ33は、母趾119の圧力に限られることはなく、第二趾104などの他の足指の圧力を計測するようにしてもよい。
ここで各圧力センサ31〜33は、計測部位の圧力を計測可能であれば任意の構成とすることができるが、例えば、圧電素子により構成することができる。圧力センサの一例としては、Interlink Electronics社製のFSRセンサが挙げられる。
図1に示すように、本実施の形態における歩行データ取得装置1は、被験者の下腿部Lの加速度を計測する加速度センサ40(加速度計測部)を更に備えている。本実施の形態においては、加速度センサ40は、後述するボックス63内に収容されて、靴下11の靴下脚部11eにベルト64によって取り付けられている。この加速度センサ40は、3軸方向の加速度を計測可能に構成されており、下腿部Lの上下方向加速度、前後方向加速度および左右方向(足Fの内外方向)加速度を計測する。なお、加速度センサ40は、被験者の下腿部Lに取り付けられることに限られることはなく、被験者の足Fに取り付けられるようにしてもよい。
ここで加速度センサ40は、計測部位の加速度を計測可能であれば任意の構成とすることができるが、例えば、加速度センサには、Kionix社製のKXSD9−2050を好適に用いることができる。
次に、図1および図8を用いて、データ処理部50について説明する。データ処理部50は、曲げ計測部20から受信した屈曲度信号を計測時間と関連付けて曲げデータを作成して出力するとともに、圧力計測部30から受信した圧力信号を計測時間と関連付けて圧力データを作成して出力する。本実施の形態におけるデータ処理部50は、図8に示すように、マイクロコンピュータ51と、データ出力部52と、を有している。
マイクロコンピュータ51には、MP曲げセンサ21、距腿曲げセンサ22、土踏まず曲げセンサ23、距骨曲げセンサ24(内側距骨曲げセンサ24aおよび外側距骨曲げセンサ24b)、踵圧力センサ31、MP圧力センサ32、足指圧力センサ33および加速度センサ40が、センサ配線60を介して接続されている。そして、これらのセンサから、マイクロコンピュータ51に計測値が信号として送信される。マイクロコンピュータ51は、各センサから受信した信号を計測時間と関連付けてデータを作成し、作成したデータをデータ出力部52に送信する。
より具体的には、マイクロコンピュータ51は、MP曲げセンサ21から受信した屈曲度信号を計測時間と関連付けてMP曲げデータを作成する。すなわち、マイクロコンピュータ51は、MP曲げセンサ21から連続的に屈曲度信号を受信し、受信した屈曲度信号から所定の時間間隔で計測値を抽出し、抽出された計測値を、当該計測値が計測された計測時間(計測開始からの経過時間)と関連付けて、MP曲げデータを作成する。
同様にして、マイクロコンピュータ51は、距腿曲げセンサ22から受信した屈曲度信号を計測時間と関連付けて距腿曲げデータを作成し、土踏まず曲げセンサ23から受信した屈曲度信号を計測時間と関連付けて土踏まず曲げデータを作成し、距骨曲げセンサ24から受信した屈曲度信号を計測時間と関連付けて距骨曲げデータ(内側距骨曲げデータおよび外側距骨曲げデータ)を作成する。また、マイクロコンピュータ51は、踵圧力センサ31から受信した圧力信号を計測時間と関連付けて踵圧力データを作成し、MP圧力センサ32から受信した圧力信号を計測時間と関連付けてMP圧力データを作成し、足指圧力センサ33から受信した圧力信号を計測時間と関連付けて足指圧力データを作成する。さらに、マイクロコンピュータ51は、加速度センサ40から受信した各方向の加速度信号を計測時間と関連付けて上下方向加速度データ、前後方向加速度データおよび左右方向加速度データを作成する。
データ出力部52は、マイクロコンピュータにより作成されたデータを出力する。本実施の形態では、データ出力部52は、データ記録部52aと、データ送信部52bと、を含んでいる。このうちデータ記録部52aは、マイクロコンピュータ51により作成されたデータを記録して保存する。このようなデータ記録部52aとしては、任意の構成とすることができるが、例えば、固定式のメモリであってもよい。あるいは、データ記録部52aは、記録媒体と、記録媒体を抜き差し可能に保持してデータを書き込む書込部(いずれも図示せず)と、を含むように構成されていてもよい。ここで、記録媒体の例としては、メモリカード(例えば、SDカードなど)、USBメモリ等を挙げることができる。
データ送信部52bは、データ記録部52aに記録されている、上述のMP曲げデータと、距腿曲げデータと、土踏まず曲げデータと、内側距骨曲げデータと、外側距骨曲げデータと、踵圧力データと、MP圧力データと、足指圧力データと、各方向の加速度データを送信して出力する。本実施の形態では、データ送信部52bは、データ記録部52aに記録された各データを、後述する表示装置71に送信(出力)する。
ところで、データ処理部50のマイクロコンピュータ51には、電源部61が接続されている。この電源部61は、乾電池や充電池などを用いてマイクロコンピュータ51に電力を供給するように構成されている。このことにより、外部電源を用いることなく、被験者が歩行している間であってもマイクロコンピュータ51に電力を供給することができる。電力が不所望のときにマイクロコンピュータ51に電力が供給されることを防止するために、電源部61とマイクロコンピュータ51との間に入切スイッチ62が設けられていることが好適である。例えば、入切スイッチ62は、図示しないが、後述するボックス63の表面に取り付けられる。
図1に示すように、加速度センサ40、データ処理部50および電源部61は、靴下11の靴下脚部11eに配置される。本実施の形態では、加速度センサ40、データ処理部50および電源部61は、ボックス63内に収容されており、このボックス63がベルト64に取り付けられている。歩行データ取得装置1が被験者に装着される際には、このベルト64が靴下脚部11eを介して下腿部Lに巻き付けられ、ボックス63が被験者の下腿部Lに取り付けられる。なお、加速度センサ40、データ処理部50および電源部61の取付け構造は、このような構成に限られることはなく、ベルト64を用いることなく、靴下脚部11eに直接的に取り付けられるようにしてもよい。また、加速度センサ40、データ処理部50および電源部61は、被験者の下腿部Lに取付可能であれば、ボックス63に収容されることに限られない。
次に、本実施の形態における歩行データ取得システム70について説明する。
図8に示すように、本実施の形態による歩行データ取得システム70は、上述した歩行データ取得装置1と、歩行データ取得装置1のデータ出力部52のデータ送信部52bに接続される表示装置71と、を備えている。表示装置71の例としては、パーソナルコンピュータや、携帯情報端末(携帯電話、スマートホン、タブレット端末などを含む)を挙げることができる。この表示装置71とデータ送信部52bは、無線接続されることが好適である、なお、表示装置71とデータ送信部52bは、有線接続されるようにしてもよい。
表示装置71は、データ送信部52bから送信された各データを受信して表示する。より具体的には、表示装置71は、データ送信部52bから複数周期のデータが送信される場合には、後述する図9のような全周期のデータを表示するように構成されていてもよく、あるいは、全周期のうちの任意の一つの、あるいは複数の歩行周期のデータを選択的に表示可能に構成されていてもよい。任意の1歩行周期のデータを表示する場合、例えば、後述する図15のようにMP曲げデータを表示するとともに、図16のように距腿曲げデータを表示する。また、表示装置71は、後述する図18のように土踏まず曲げデータを表示し、図19のように内側距骨曲げデータを表示し、図20のように外側距骨曲げデータを表示する。また、表示装置71は、後述する図12乃至図14のように、踵圧力データ、MP圧力データおよび足指圧力データを表示する。さらに、表示装置71は、後述する図21乃至図23のように、上下方向加速度データ、前後方向加速度データおよび左右方向加速度データを表示する。
なお、表示装置71は、基準となる正常波形のグラフと、被験者のグラフとを同時に表示するように構成してもよく、あるいは、被験者のグラフだけを表示するように構成してもよい。また、表示装置71は、各種データを選択的に表示するように構成してもよく、あるいは、複数種のデータを同時に表示するように構成してもよい。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、被験者の歩行データを取得する方法について説明する。
まず、図1に示す歩行データ取得装置1が、被験者に装着される。この場合、被験者の少なくとも一方の足Fに歩行データ取得装置1の靴下11が装着される。このことにより、各センサは、被験者の足Fまたは下腿部Lの所望の位置に配置される。すなわち、MP曲げセンサ21は、足Fを裏側から見たときに、足長軸106上に配置されるとともに、MP曲げセンサ21の長手方向中心がMP関節軸100上に配置される。距腿曲げセンサ22は、内踝点114と外踝点115との中間位置に配置されるとともに、当該中間位置と第二趾104の先端とを結ぶ線X1(図3参照)上に配置される。土踏まず曲げセンサ23は、母趾119の先端と踵点105とを結ぶ線X2(図2参照)に沿って、当該線X2よりも内側に配置されるとともに、土踏まず曲げセンサ23の長手方向中心が土踏まず部101の最大高さ位置に配置される。内側距骨曲げセンサ24aは、内踝点114と舟状骨粗面120とを結ぶ線X3(図4参照)上に配置されるとともに、内側距骨曲げセンサ24aの前端が、舟状骨粗面120上若しくはその近傍に配置される。外側距骨曲げセンサ24bは、外踝点115と第5中足骨粗面124とを結ぶ線X4(図5参照)上に配置されるとともに、外側距骨曲げセンサ24bの前端が、第5中足骨粗面124上若しくはその近傍に配置される。踵圧力センサ31は、踵部103のうち床面に接地する位置に配置され、MP圧力センサ32は、MP関節軸100上であって、足長軸106よりも足Fの外側に配置され、足指圧力センサ33は、母趾119のうち床面に接地する位置に配置される。
また、上述したボックス63が取り付けられたベルト64が、被験者の靴下11の靴下脚部11eを介して下腿部Lに巻き付けられ、加速度センサ40は下腿部Lに配置される。
被験者の歩行データを取得する際、まず、入切スイッチ62が入れられる。このことにより、電源部61からマイクロコンピュータ51に電力が供給され、マイクロコンピュータ51が作動し、各センサによる計測が開始する。
続いて、被験者が歩行を行う。この間、各センサにより計測された計測値が信号としてマイクロコンピュータ51に送信され、マイクロコンピュータ51は、各信号を計測時間に関連付けてデータを作成する。作成されたデータはデータ記録部52aに記録される。
計測終了後、表示装置71がデータ送信部52bに無線接続される。このことにより、データ記録部52aに記録された歩行データがデータ送信部52bから送信(出力)される。このようにして、被験者の歩行データを取得することができる。データ送信部52bから送信された歩行データは、表示装置71に送信される。
その後、表示装置71において、受信した各データが表示される。表示装置71に送信された各データは、被験者が複数周期の歩行を行った場合には、図9に示すようなデータになっている。なお、図9では、一例として、(a)踵圧力データ、(b)MP圧力データ、(c)足指圧力データ、(d)MP曲げデータ、(e)距腿曲げデータ、(f)上下方向加速度データ、(g)前後方向加速度データおよび(h)左右方向加速度データを示す。図9における各グラフの横軸は無次元時間を示し、(a)〜(c)の縦軸は圧力を示し、(d)および(e)の縦軸は屈曲度を示し、(f)〜(h)の縦軸は加速度を示している。
本実施の形態では、表示装置71では、この複数周期のデータから任意の1周期のデータが表示される。より具体的には、後述する図121乃至図16、図18乃至図24に示すような波形のグラフが表示される。このようにして、理学療法士などのリハビリ専門家は、被験者の歩行データを見ることができる。ここで、図12乃至図16、図18乃至図24に示すグラフの横軸は、1歩行周期を100としたときの無次元時間を示し、図12乃至図14に示すグラフの縦軸は無次元圧力を示している。図15、図16、図18、図19、および図20に示すグラフの縦軸は屈曲度を示し、図21乃至図24に示すグラフの縦軸は無次元加速度を示している。
ここで、図9、図12乃至図14に示す圧力データのグラフは、後述する第3の実施の形態におけるインソール90に各圧力センサ31〜33を取り付けて歩行試験を行った結果取得されたデータの一例である。図9および図15に示すMP曲げデータのグラフは、インソール90にMP曲げセンサ21を取り付けて歩行試験を行った結果取得されたデータの一例である。図9および図16に示す距腿曲げデータのグラフは、後述する第2の実施の形態における靴80に距腿曲げセンサ22を取り付けて歩行試験を行った結果取得されたデータの一例である。図18に示す土踏まず曲げデータのグラフは、上述した靴下11に土踏まず曲げセンサ23を取り付けて歩行試験を行った結果取得されたデータの一例であり、図19に示す内側距骨曲げデータのグラフは、靴80に内側距骨曲げセンサ24aを取り付けて歩行試験を行った結果取得されたデータの一例であり、図20に示す外側距骨曲げデータのグラフは、靴80に外側距骨曲げセンサ24bを取り付けて歩行試験を行った結果取得されたデータの一例である。これらの各圧力センサ31〜33および各曲げセンサ21〜24は、インソール90が入れられた靴80を装着して歩行を行った結果得られたデータである。この際に使用した靴80は、後述する商品名「レイトアップ」の靴であり、インソール90は、工作部材−EVAシートNo.1(株式会社大創産業製、デュロメータ硬さ約20)をインソール形にカットしたものである。
また、図9および図21乃至図23に示す加速度データのグラフは、加速度センサ40を下腿部Lに取り付けて歩行試験を行った結果取得されたデータの一例である。
圧力センサ31〜33、MP曲げセンサ21を靴下11や靴80に取り付けた場合にこれらのセンサ31〜33、21から取得されるデータの図示は省略しているが、これらのグラフと同様のデータを靴下11や靴80に取り付けられたセンサ31〜33、21からも取得することができる。また、距腿曲げセンサ22および距骨曲げセンサ24(内側距骨曲げセンサ24aおよび外側距骨曲げセンサ24b)を靴下11に取り付けた場合に取得されるデータの図示も省略しているが、この場合であっても同様のデータを取得することができる。なお、図12乃至図16および図18乃至図24においては、一例として正常者の波形と被験者の波形を表示しているが、図9においては、図面を明瞭にするために、正常者の波形の表示を省略し、被験者の波形を示している。
次に、上述のようにして取得された歩行データを用いて、被験者の歩行診断を行う方法について説明する。すなわち、リハビリ専門家は、表示装置71において表示された各データを見て、被験者の足運びを確認する。本実施の形態による歩行データ取得装置1から取得されたデータからは、ロッカー機能が正常に働いているか否かの評価と、回内・回外運動が適切に行われているか否かの評価を行うことができる。
まず、ロッカー機能について説明する。
1歩行周期は、足Fが床面に接地している立脚期と、足Fが床面から離れている遊脚期と、に区分けされる。このうち立脚期は、図10に示すように、ヒールロッカー期間(立脚初期)と、アンクルロッカー期間(立脚中期)と、フォアフットロッカー期間(立脚終期)とに区分けされる。
ヒールロッカー期間は、図10および図11に示すように、床面に踵部103が接地してから、MP関節部123が床面に接地するまでの期間である。より具体的には、ヒールロッカー期間は、踵部103の圧力が正の値になった時点(踵接地時点T1)から、MP関節部123の圧力が正の値になった時点(MP接地時点T2)までの期間となる。通常、MP接地時点T2では、母趾119は接地しておらず、母趾119の圧力はゼロである。ヒールロッカー期間では、図10に示すように、主として踵部103を軸にして、足Fの全体が床面に接地する方向に足Fおよび下腿部Lが回転するように変形する。
アンクルロッカー期間は、MP関節部123が床面に接地してから、踵部103が床面から離れるまでの期間である。より具体的には、アンクルロッカー期間は、MP関節部123の圧力が正の値になった時点(MP接地時点T2)から、踵部103の圧力がゼロになった時点(踵離地時点T3)までの期間となる。通常、踵離地時点T3では、MP関節部123は接地し、MP関節部123の圧力は正の値になる。アンクルロッカー期間では、図10に示すように、主として足首部Aの距腿関節軸113を中心にして、足Fの全体が床面に接地されながら、下腿部Lが前側に回転するように足首部Aが変形する。
フォアフットロッカー期間は、踵部103が床面から離れてから、母趾119が床面から離れるまでの期間である。より具体的には、フォアフットロッカー期間は、踵部103の圧力がゼロになった時点(踵離地時点T3)から、母趾119の圧力がゼロになった時点(足指離地時点T4)までの期間となる。通常、足指離地時点T4では、MP関節部123が離地し、MP関節部123の圧力はゼロになる。フォアフットロッカー期間では、図10に示すように、主としてMP関節軸100を中心にして、足指部102が床面に接地されながら、踵部103が持ち上げられる方向に足Fが回転するように変形する。
このようなロッカー機能が正常に働いているか否かは、例えば、図15に示すMP曲げデータおよび図16に示す距腿曲げデータを見ることにより評価することができる。
まず、MP曲げデータおよび距腿曲げデータを見る前に、踵圧力データ、MP圧力データおよび足指圧力データから、ヒールロッカー期間、アンクルロッカー期間およびフォアフットロッカー期間が定められる。この場合、図12に示す踵圧力データのグラフから、踵部103の圧力がゼロから正の値になる踵接地時点T1が特定される。また、図13に示すMP圧力データのグラフから、MP関節部123の圧力がゼロから正の値になるMP接地時点T2が特定される。そして、図12に示す踵圧力データのグラフから、踵部103の圧力が正の値からゼロになる踵離地時点T3が特定され、図14に示す足指圧力データのグラフから、母趾119(足指部102)の圧力が正の値からゼロになる足指離地時点T4が特定される。これらの特定された時点T1〜T4により、ヒールロッカー期間、アンクルロッカー期間およびフォアフットロッカー期間を定めることができる。なお、図12乃至図16、図18乃至図24には、便宜上、各時点T1〜T4が表示されている(図19および図20においては、正常者のT2と被験者のT2は重なっている)。T1〜T4は、表示装置71において演算処理を行ってこれらの図のように表示させるようにしてもよいが、ロッカー機能または回内・回外運動の評価を行うことができれば、T1〜T4の表示は省略してもよい。
各圧力データは、各ロッカー期間の特定以外にも、足Fの左右のバランス能力や、荷重バランスなどを評価するために用いることもできる。また、複数周期の圧力データから、ヒールロッカー期間、アンクルロッカー期間およびフォアフットロッカー期間の量的、時間的変動を評価することもできる。例えば、ヒールロッカー期間やアンクルロッカー期間が長くなる場合には、床面にそろりと足Fを接地させるような歩き方をしていると判断することができる。また、各ロッカー期間が短い若しくは消失されている場合には、足Fに荷重がかかるときに痛みを感じていると判断することも可能である。
続いて、ロッカー機能の評価が行われる。
例えば、MP関節曲げデータから、フォアフットロッカー期間におけるロッカー機能の評価が行われる。すなわち、ロッカー機能が正常に働いている場合には、図10に示すように、MP関節軸100の周りを、母趾119(足指部102)が床面に接地されながら踵部103が持ち上げられる方向に足Fが回転するように変形する。このことが、図15の実線に示されている。すなわち、フォアフットロッカー期間においてMP関節軸100の周りの屈曲度が増大し、MP関節軸100の周りで足Fが回転するように変形していることがわかる。
しかしながら、ロッカー機能が正常に働いていない場合には、このような足Fの変形が小さくなる。例えば、被験者の歩行がすり足である場合には、ロッカー機能が正常に働くことができない傾向にある。この場合、図15において破線で示すように、フォアフットロッカー期間におけるMP関節軸100の周りの屈曲度がそれほど増大しなくなる。このことにより、リハビリ専門家は、このMP曲げデータから、フォアフットロッカー期間における足Fの変形が不十分であることを認識することができ、被験者のロッカー機能が正常に働いていない、と評価することができる。
また、ロッカー機能の評価の他の例として、距腿曲げデータから、アンクルロッカー期間におけるロッカー機能の評価が行われる。すなわち、ロッカー機能が正常に働いている場合には、図10に示すように、距腿関節軸113の周りを、足裏が全体的に床面に接地されながら、下腿部Lが前側に回転するように足首部Aが変形する。このことが、図16の実線に示されている。すなわち、アンクルロッカー期間において距腿関節軸113の周りの屈曲度が増大し、下腿部Lが前側に回転するように足首部Aが変形していることがわかる。
しかしながら、ロッカー機能が正常に働いていない場合には、このような足首部Aの変形が小さくなり得る。例えば、被験者の歩行がすり足である場合には、ロッカー機能が正常に働くことができない傾向にある。この場合、図16において破線で示すように、アンクルロッカー期間における距腿関節軸113の周りの屈曲度がそれほど増大しなくなる。このことにより、リハビリ専門家は、この距腿曲げデータから、アンクルロッカー期間における足首部Aの変形が不十分であることを認識することができ、被験者のロッカー機能が正常に働いていない、と評価することができる。
また、ロッカー機能が正常に働いていない場合には、図16の破線で示すように、アンクルロッカー期間における距腿関節軸113の周りの屈曲度の増大が遅延する傾向がある。この点においても、リハビリ専門家はアンクルロッカー期間における下腿部Lの前側への回転が困難になっていることを認識することができ、被験者のロッカー機能が正常に働いていない、と評価することができる。この屈曲度の増大の遅延は、図15の破線でも認識することができる。
次に、回内・回外運動について説明する。
回内・回外運動とは、図17に示すように、歩行時に距骨下関節軸122を中心とした左右方向の捻り運動を意味する。このうち、回内運動は、立脚期において下腿部Lが内側に回旋する運動であり、回外運動は、遊脚期において下腿部Lが外側に回旋する運動である。立脚期では、足Fと足首部Aの変形は回内位範囲であるが、歩行時点に応じて回内方向への変形の度合いが異なり、回外位範囲に近い変形状態になる場合がある。
より具体的には、図17に示すように、踵接地時点T1では、足Fと足首部Aは回外位にあり、そこから回内運動を開始する。踵接地時点T1からMP接地時点T2に向かって、回内方向への変形が強まり、MP接地時点T2では回内方向への変形が比較的大きくなる。MP接地時点T2から足指離地時点T4にわたって、回内方向への変形は弱まり、回外位範囲に近づいていき、足指離地時点T4では、足Fと足首部Aは回外位になる。このようにして、立脚期では踵接地時点T1および足指離地時点T4を除き回内位範囲内ではあるものの、足Fと足首部Aの変形は変化し、足Fおよび足首部Aが左右にねじられるように変形する。
このような回内・回外運動が正常に行われているか否かは、例えば、図18に示す土踏まず曲げデータ、図19に示す内側距骨曲げデータおよび図20に示す外側距骨曲げデータを見ることにより評価することができる。
まず、上述したロッカー機能の評価と同様にして、踵圧力データ、MP圧力データおよび足指圧力データから、踵接地時点T1、MP接地時点T2、踵離地時点T3および足指離地時点T4が特定される。
続いて、回内・回外運動の評価が行われる。
例えば、土踏まず曲げデータから、回内運動の評価が行われる。すなわち、回内運動が正常に行われている場合には、図18の実線に示すように、回内運動が行われている間であっても、土踏まず部101は、正の値の屈曲度を有しており、土踏まず部101のアーチ形状が、消失されることなく維持される。
しかしながら、回内運動が正常に行われない場合、例えば、回内運動が過剰に行われる場合には、土踏まず部101が平坦化され、アーチ形状が消失される。このことが、図18の破線で示されている。このことにより、リハビリ専門家は、この土踏まず曲げデータから、回内運動が過剰に行われていることを認識することができ、被験者の回内運動が正常に行われていない、と評価することができる。
また、ロッカー機能の評価の他の例として、内側距骨曲げデータおよび外側距骨曲げデータから、回内運動の評価が行われる。すなわち、回内運動が正常に行われている場合には、足首部Aの内側における距骨下関節軸122の周りの屈曲度は、図19の実線に示すような波形となり、足首部Aの外側における距骨下関節軸122の周りの屈曲度は、図20の実線に示すような波形となる。
しかしながら、回内運動が正常に行われない場合、例えば、回内運動が過剰に行われる場合には、足首部Aの内側における距骨下関節軸122の周りの回内方向への屈曲度は、図19の破線に示すように増大し、足首部Aの外側における距骨下関節軸122の周りの回内方向への屈曲度は、図20の破線に示すように増大する。このことにより、リハビリ専門家は、これらの距骨曲げデータから、回内運動が過剰に行われていることを認識することができ、被験者の回内運動が正常に行われていない、と評価することができる。
また、本実施の形態では、加速度センサ40により、歩行中の被験者の下腿部Lの3軸方向の加速度が計測され、上下方向加速度データ、前後方向加速度データおよび左右方向加速度データが表示装置71に表示される。これらの加速度データからは、遊脚期における足Fの速度変化を見ることができる。すなわち、リハビリ専門家は、各軸方向における足Fの振り出しの勢いを見ることができ、この点においても被験者の歩行診断を行うことができる。
例えば、上下方向加速度データから、上下方向における足Fの振り出しの勢いを評価することができる。すなわち、遊脚期において足Fの振り出しの勢いが十分である場合には、足Fの上方向の加速度が大きくなる。このことが、図21の実線に示されている。すなわち、遊脚期において足Fの上方向の加速度が大きくなり、足Fの振り出しの勢いが十分であることを認識することができる。
しかしながら、遊脚期において足Fの振り出しの勢いが不十分である場合には、図21の破線に示されているように、足Fの上方向の加速度が小さくなる。このことにより、リハビリ専門家は、この上下方向加速度データから、足Fの振り出しの勢いが不十分であることを認識することができる。
同様にして、図22および図23に示す加速度データから、遊脚期における各方向の足Fの加速度を確認して、足Fの振り出しの勢いが十分であるか否かを評価することができる。
また、図21に示す上下方向加速度と、図22に示す前後方向加速度とから上下前後方向RMS(二乗平均平方根)を算出して、足Fの振り出しの勢いの評価を行うこともできる。この場合、例えば、表示装置71において、上下方向加速度と、前後方向加速度とをそれぞれ二乗して得られた値の平均値を上下前後方向RMSとしてもよい。このようにして算出された上下前後方向RMS(図24参照)は、加速度の変化の絶対値を表すことができる。すなわち、歩行時には下腿部Lの動きにより加速度計の軸が絶対空間に対して変化するが、この上下前後方向RMSを用い足Fの振り出しの勢いを評価することにより、加速度計の軸の変化の影響を排除することができ、評価精度を向上させることができる。また、各方向の加速度データから、遊脚期における床面への躓き(床面への接触)や、立脚期におけるスリップなども評価することができる。
なお、図12乃至図16および図21乃至図24に示すように、実線で示された各時点T1〜T4よりも破線で示された各時点T1〜T4が遅延しており、実線のグラフよりも破線のグラフにおいて立脚期が長くなっている。このような現象も、各データを見たリハビリ専門家は認識することができ、被験者の歩行の安定性および安全性に問題がある、と評価することができる。
このように本実施の形態によれば、曲げ計測部20により計測された被験者の足FのMP関節軸100の周りの屈曲度、足首部Aの周りの屈曲度および土踏まず部101の屈曲度が、計測時間と関連付けられて曲げデータが作成されて、出力される。このことにより、ロッカー機能および回内・回外運動の評価を可能にする歩行データを取得することができる。すなわち、リハビリ専門家は、出力された曲げデータから、歩行中の被験者の足Fと足首部Aの変形を捉えることができる。このため、ロッカー機能が正常に働いているか否かの評価や、回内・回外運動が適切に行われているか否かの評価を行うことができる。この結果、ヒト(とりわけ、高齢者や歩行障害者など)の歩行診断精度を向上させることができるとともに診断を効率良く行うことができる。
また、本実施の形態によれば、曲げ計測部20および圧力計測部30が靴下11に取り付けられている。このことにより、曲げ計測部20および圧力計測部30を、予め靴下11の所望の位置に配置させておくことができ、この靴下11を被験者の足Fに履かせた場合に、所望の位置に容易に配置させることができる。このため、精度の良い曲げデータおよび圧力データを取得することができ、ロッカー機能および回内・回外運動の評価を精度良く行うことができる。
なお、上述した本実施の形態においては、装身具10の一例としての靴下11に、曲げ計測部20および圧力計測部30が取り付けられている例について説明した。しかしながら、装身具10は、足Fを覆うことができれば、靴下11に限られることはなく、足Fを覆うサポータや、ストッキングなどであってもよい。この場合であっても、サポータやストッキングに、曲げ計測部20および圧力計測部30を取り付けることができる。
また、上述した本実施の形態においては、歩行データ取得装置1が加速度センサ40を備えている例について説明した。しかしながら、ロッカー機能または回内・回外運動の評価を行うことができれば、歩行データ取得装置1は加速度センサ40を備えることなく、加速度の計測は省略してもよい。
また、上述した本実施の形態においては、圧力計測部30が、踵圧力センサ31と、MP圧力センサ32と、足指圧力センサ33と、を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、圧力計測部30は、MP圧力センサ32を有していなくてもよい。この場合においても、立脚期と遊脚期の特定を容易に行うことができる。さらに、圧力計測部30は、MP圧力センサ32だけでなく足指圧力センサ33を有していなくてもよい。この場合に、踵圧力センサ31から取得される踵圧力データのみによって、1歩行周期の特定を容易に行うことができる。
また、上述した本実施の形態においては、歩行データ取得装置1が圧力計測部30を備えている例について説明した。しかしながら、圧力計測部30は、備えられていなくてもよい。すなわち、図15、図16、図18、図19および図20に示す曲げデータを見る際に、踵接地時点T1、MP接地時点T2、踵離地時点T3および足指離地時点T4が特定されていない場合であっても、リハビリ専門家は、曲げデータを示すグラフから、ロッカー機能または回内・回外運動の評価を行うことができる。このため、時点T1〜T4の特定を省略することができ、圧力計測部30による足裏圧力の計測を省略することができる。
また、上述した本実施の形態においては、曲げ計測部20が、MP曲げセンサ21と、距腿曲げセンサ22と、土踏まず曲げセンサ23と、距骨曲げセンサ24と、を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、曲げ計測部20は、これらの曲げセンサ21〜24のうちの少なくとも一つを有していればよい。この場合であっても、リハビリ専門家は、MP曲げデータ、距腿曲げデータ、土踏まず曲げデータおよび距骨曲げデータのうちの少なくとも一つから、ロッカー機能または回内・回外運動の評価を行うことができる。
さらに、上述した本実施の形態においては、評価精度を向上させるために、距骨曲げセンサ24は、内側距骨曲げセンサ24aと外側距骨曲げセンサ24bの両方を含むように構成されている例について説明したが、このことに限られることはなく、いずれか一方のセンサだけを含むように構成されていてもよい。この場合であっても、当該一方のセンサによって取得される距骨曲げデータから、回内・回外運動の評価を行うことができる。
また、上述した本実施の形態においては、歩行データ取得装置1のデータ送信部52bに表示装置71が接続される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、データ記録部52aが、上述した記録媒体と、記録媒体を抜き差し可能に保持してデータを書き込む書込部とを含む場合には、データ送信部52bと表示装置71は接続されなくてもよい。この場合、マイクロコンピュータ51により作成されたデータは、書込部によって記録媒体に書き込まれて記録され、データを記録した記録媒体を、計測終了後に書込部から抜き出して表示装置71の読取部(図示せず)に挿入してもよい。このことにより、記録媒体のデータが表示装置71に読み取られ、各データを表示することができる。なお、この場合、記録媒体によってデータを表示装置71に読み込ませることができるため、データ出力部52は、データ送信部52bを含んでいなくてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、計測終了後に表示装置71がデータ送信部52bに接続されて、データ記録部52aに記録された各データが表示装置71に送信される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、計測中に表示装置71がデータ送信部52bに接続されて、データ記録部52aに記録されたデータが随時表示装置71に送信されるようにしてもよい。この場合、表示装置71に受信されたデータは、表示装置71内に集積されて表示されるようにしてもよい。なお、この場合、マイクロコンピュータ51により作成されたデータは、データ記録部52aに記録されることなくデータ送信部52bに送信されるようにしてもよいが、データ記録部52aにバックアップとしてデータを記録するようにしてもよい。
さらに、各曲げセンサ21〜24は、上述した位置に配置されることが好ましいが、各曲げセンサ21〜24の上述した位置は厳密で限定的な位置を示しているのではない。すなわち、被験者の足Fのサイズによって各曲げセンサ21〜24がある程度位置ずれした場合であっても、ロッカー機能および回内・回外運動の評価を可能にする歩行データを取得することは可能である。各圧力センサ31〜33についても同様である。
(第2の実施の形態)
次に、図25を用いて、第2の実施の形態における歩行データ取得装置および歩行データ取得システムについて説明する。
図25に示す第2の実施の形態においては、装身具が靴である点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図24に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図25において、図1乃至図24に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図25に示すように、本実施の形態における歩行データ取得装置1の装身具10は、靴80(履物)になっている。すなわち、図25に示す歩行データ取得装置1は、曲げ計測部20および圧力計測部30が取り付けられた靴80を備えている。図25に示す靴80は、靴底80aと、靴底80a上に設けられた靴本体部80bと、足首部Aを覆う靴脚部80cと、を有している。
靴80は、靴底80aを含めて、被験者の足Fや足首部Aの変形にスムースに追従可能に形成されていることが好適である。例えば、靴80は、ゴムなどの弾力性を有している靴底を備えた繊維素材の柔軟な靴(靴下のような靴)であることが好適であり、このような靴の例としては、ルナエピックフライニット(ナイキ社の商品名、「FLYKNIT」は登録商標)、チュブラードゥーム(アディダス社の商品名、「TUBULAR」はアディダス社の登録商標)、レイトアップ Rate Up(デバイスクリエイション株式会社の商品名)を挙げることができるが、これに限られることはない。また、靴80のサイズは、靴80に取り付けられた各曲げセンサ21〜24および各圧力センサ31〜33が被験者の足Fと足首部Aの変形を精度良く計測することが可能なように、被験者の足Fのサイズに応じたサイズとすることがよい。
各曲げセンサ21〜24および各圧力センサ31〜33は、図1乃至図6に示す靴下11が被験者の足Fに装着された場合に配置される位置と同様の位置で靴80に取り付けられている。より具体的には、MP曲げセンサ21および土踏まず曲げセンサ23は、靴底80aの上面(靴80の内面)の所望の位置に取り付けられている。踵圧力センサ31、MP圧力センサ32および足指圧力センサ33は、靴底80aの上面の所望の位置に取り付けられている。
距腿曲げセンサ22は、第1の実施の形態における距腿曲げセンサ22と同様に、靴本体部80bの内面に設けられた第1ポケット81内に収容されている。距骨曲げセンサ24(内側距骨曲げセンサ24aおよび外側距骨曲げセンサ24b)は、図示を省略するが、第1の実施の形態における距骨曲げセンサ24と同様に、靴本体部80bの内面に設けられた第2ポケットや第3ポケット(いずれも図示せず)に収容されている。
加速度センサ40、データ処理部50および電源部61は、第1の実施の形態と同様にボックス63に収容されており、このボックス63が取り付けられたベルト64が靴80の靴脚部80cを介して下腿部Lに巻き付けられることによって、ボックス63が被験者の下腿部Lに取り付けられる。
なお、図25に示す靴本体部80bには、靴80をスムースに着脱させるためのファスナーなどの締結具(図示せず)が設けられていることが好適である。この場合、着脱時に、靴80の開口を大きくすることができ、各曲げセンサ21〜24および各圧力センサ31〜33が位置ずれすることを防止できるとともに、これらのセンサ21〜24、31〜33に損傷を与えることを防止できる。このような締結具は、靴80の開口を大きくすることができれば、任意の位置に設けることができる。
このように本実施の形態によれば、曲げ計測部20および圧力計測部30が靴80に取り付けられている。このことにより、曲げ計測部20および圧力計測部30を、予め靴80の所望の位置に配置させておくことができ、この靴80を被験者の足Fに履かせた場合に、所望の位置に容易に配置させることができる。このため、精度の良い曲げデータおよび圧力データを取得することができ、ロッカー機能および回内・回外運動の評価を精度良く行うことができる。
なお、上述した本実施の形態においては、靴80が、靴脚部80cを有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、靴80は、靴脚部80cを有することなく、被験者の足首部A(より詳細には、内踝点114および外踝点115)が露出するように構成されていてもよい。この場合には、距腿曲げセンサ22は、靴80に取り付けられることなく、被験者の足Fにテープ等で貼り付けられるようにしてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、靴80に土踏まず曲げセンサ23が取り付けられている例について説明した。しかしながら、靴底80aが土踏まず部101の変形に追従が困難である場合には、土踏まず曲げセンサ23は靴80に取り付けられていなくてもよい。この場合には、例えば、土踏まず曲げセンサ23は、被験者の足Fの土踏まず部101にテープ等で貼り付けられるようにしてもよい。
(第3の実施の形態)
次に、図26および図27を用いて、第3の実施の形態における歩行データ取得装置および歩行データ取得システムについて説明する。
図26および図27に示す第3の実施の形態においては、曲げ計測部がインソールに取り付けられている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図24に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図26および図27において、図1乃至図24に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図26に示すように、本実施の形態における歩行データ取得装置1は、装身具10の代わりにインソール90(中敷き)を備えている。このインソール90に、曲げ計測部20および圧力計測部30が取り付けられている。インソール90は、被験者の足裏に面するソール本体90aと、ソール本体90aから突出するように延びる延長部90bと、を有している。インソール90は、被験者の足Fの変形にスムースに追従可能であれば特に限られることはないが、柔軟な材料から形成されていることが好適である。
MP曲げセンサ21および各圧力センサ31〜33は、図1乃至図6に示す靴下11が被験者の足Fに装着された場合に配置される位置と同様の位置でインソール90に取り付けられている。より具体的には、MP曲げセンサ21は、ソール本体90aの上面(足Fに面する面)の所定の位置に取り付けられている。踵圧力センサ31、MP圧力センサ32および足指圧力センサ33は、ソール本体90aの上面の所定の位置に取り付けられている。
距腿曲げセンサ22、土踏まず曲げセンサ23および距骨曲げセンサ24(内側距骨曲げセンサ24aおよび外側距骨曲げセンサ24b)は、インソール90に取り付けられていない。この場合、これらの曲げセンサ22〜24は、被験者の足Fにテープなどで貼り付けられることが好適である。この場合、距腿曲げセンサ22、土踏まず曲げセンサ23および距骨曲げセンサ24は、インソール90が入れられた靴95を被験者が履いた後に、被験者の足Fまたは足首部Aの所望の位置に貼り付けられる。なお、靴95は、第2の実施の形態における靴80のような柔軟な靴であることが好ましいが、これに限られることはなく、任意の靴80を用いることができる。
加速度センサ40、データ処理部50および電源部61は、第1の実施の形態と同様に、ボックス63に収容されており、このボックス63が取り付けられたベルト64(図1参照)が被験者の下腿部Lに巻き付けられることによって、ボックス63が被験者の下腿部Lに取り付けられる。なお、このボックス63は、インソール90の延長部90bに取り付けられるようにしてもよい。
本実施の形態におけるインソール90は、図27に示すように、靴95の靴底95aの側に配置される第1ソール層91と、第1ソール層91上に設けられ、靴95の靴本体部95bの側に配置される第2ソール層92とが積層された構造を有していることが好適である。このうち第2ソール層92が、足Fに面する側(図27における上側)に配置される。第1ソール層91は、第2ソール層92よりも硬い材料から形成されていることが好適である。この場合、接地時にかかる圧力によって各圧力センサ31〜33がインソール90の第2ソール層92内に沈み込んだ場合であっても、離地時に圧力から解放されると、圧力センサ31〜33が沈み込んだ状態を迅速に解消することができる。このため、離地直後の足裏圧力の計測精度を向上させることができる。
このように本実施の形態によれば、曲げ計測部20のMP曲げセンサ21および圧力計測部30の各圧力センサ31〜33がインソール90に取り付けられている。このことにより、曲げ計測部20および圧力計測部30を、予めインソール90の所望の位置に配置させておくことができ、このインソール90を入れた靴95を被験者の足Fに履かせた場合に、所望の位置に容易に配置させることができる。このため、精度の良い曲げデータおよび圧力データを取得することができ、ロッカー機能および回内・回外運動の評価を精度良く行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による歩行データ取得装置および歩行データ取得システムは、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
なお、上述した各実施の形態においては、曲げ計測部20および圧力計測部30が装身具10またはインソール90に取り付けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、曲げ計測部20および圧力計測部30は、装身具10にもインソール90にも取り付けられていなくてもよい。この場合、曲げ計測部20の各曲げセンサ21〜24と、圧力計測部30の各圧力センサ31〜33は、図1乃至図6に示す靴下11が被験者の足Fに装着された場合に配置される位置と同様の位置で、被験者の足Fまたは足首部Aにテープ等で貼り付けられるようにしてもよい。