JP6596624B2 - 抗腫瘍剤 - Google Patents

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Description

本発明は、抗腫瘍剤に関する。
がんの局所では、がん細胞から分泌される様々な免疫抑制因子(TGF-β,PGE2等)が複雑に絡み合い免疫抑制環境が形成されている。近年、このことが、がん治療、とりわけ、がん免疫療法の治療効果を低下させる要因となっていることが分かってきた。そのため、治療効果の向上には免疫抑制因子の作用を効果的に阻止する薬剤が必要とされている。本研究では上記課題を解決するため、「免疫抑制因子」の働きを解除(阻止)する物質の探索研究に着手した。
免疫抑制に対する解除作用を示す化合物を見出すため、本発明者らは先にTGF-βあるはPGE2により抑制されたマウスNK細胞のがん細胞傷害活性を指標に約800種の天然物をスクリーニングした。その結果、白樺成分のベツリンに目的とする有効性を見出した。ベツリンは既知化合物であったが、免疫抑制解除作用については報告がなされておらず、新しい作用機序に基づくがん治療薬になる可能性があると考え特許を出願した(平成26年5月30日 特許登録、特許文献1)。
特許第5548874号
ところで、ベツリンは水に非常に溶けにくい性質であるため、マウス体内では消化管からの吸収や血液への移行性が極めて低く、その血中濃度が有効域に到達しないことが懸念された。実際、LC/MS/MSを用いた分析から、経口投与されたベツリンは消化管からほとんど吸収されないこと、静脈内に投与しても血液中にはほとんど検出されないこと、さらに、がん移植マウスモデルでの抗腫瘍効果は50%程度しか認められないこと等を明らかにしてきた。このため、動物実験においてより高い有効性を得るには、水に溶けやすく血液移行性が良好な誘導体を開発する必要があった。
そこで、本発明の目的は、ベツリンよりも高い水溶性と抗腫瘍効果を有するベツリン誘導体を見出し、優れた抗腫瘍剤を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべくベツリン誘導体82種を合成し、主要な誘導体53種についてがん移植マウスモデルを用いて有効性を比較検討した。より具体的には、ベツリンよりも水溶性を向上させた各種のベツリン誘導体を合成し、がん移植マウスモデルにおけるがん抑制効果、及び、試験管内でのがん細胞に対する細胞毒性を比較評価した。その結果、3種のベツリン誘導体(ベツリンの3位にアミノ酸のセリンを付加したBD-24、ベツリンの3位に2-アミノエチル基をカルバメート付加したBD-23、ならびに、ベツリンの3位及び28位にアミノ酸のセリンを付加したTPU-22)に顕著な抑制作用を認め、本発明を完成させた。
本発明によれば、ベツリンよりも水溶性が向上したベツリン誘導体であって、がん移植マウスモデルにおけるがん抑制効果及び試験管内でのがん細胞に対する細胞毒性に優れたベツリン誘導体を提供することができる。
ベツリン及びベツリン誘導体(BD-24、BD-23及びTPU-22)の抗腫瘍効果を示す。 ベツリン誘導体BD-24と5-FUの抗腫瘍効果の比較検討結果を示す。 癌細胞の増殖能に与えるベツリン、ベツリン誘導体(BD-24、BD-23及びTPU-22)又は5-FUの影響を示す。 ベツリン誘導体(BD-24、BD-23及びTPU-22)の投与部位(マウス)における炎症様症状を示す。 ベツリン誘導体(BD-24、BD-23)の投与部位に集積した白血球の数を示す。 ベツリン誘導体BD-24の投与部位に集積した白血球の解析結果を示す。 好中球を除去したマウスにおけるベツリン誘導体BD-24の抗腫瘍効果を示す。 ベツリン誘導体BD-24の投与部位に集積した白血球のがん細胞傷害活性測定結果を示す。
本発明は、下記いずれかの化学式で示されるベツリン誘導体を有効成分として含有する抗腫瘍剤に関する。
化合物BD-24、BD-23及びTPU-22の合成方法は、実施例に記載する。
本発明の抗腫瘍剤は、BD-24、BD-23又はTPU-22に加えて薬学的に許容可能なキャリアを含有することができる。本発明の抗腫瘍剤に使用され得る薬学的に許容可能なキャリアとして、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の抗腫瘍剤は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、直腸内、経鼻的、頬側的、膣内にまたはインプラントされたリザーバを介して投与することができる。本明細書で使用する「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注入または輸注技術を含む。好ましくは、組成物は、経口的、腹腔内または静脈内に投与される。
本発明の抗腫瘍剤は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的な許容可能な剤形で経口的に投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用されるキャリアとして、乳糖およびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態の経口投与のための有用な希釈剤として、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。経口用途に水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化および懸濁剤と組み合わせられる。所望であれば、所定の甘味、風味付け、または着色剤もまた添加することができる。
あるいは、本発明の抗腫瘍剤は、直腸内投与のための坐剤の形態で投与することもできる。これらは、薬剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って、直腸内では融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。そのような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤は、特に、処置の標的が眼、皮膚、もしくは下部腸管の疾患を含む局所投与によって容易にアクセス可能な領域または器官を含む場合、局所的に投与することができる。適切な局所処方は、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。
下部腸管のための局所適用は、直腸用坐剤処方(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方で行うことができる。局所用経皮パッチも使用することができる。
局所適用のために、組成物は、1つもしくはそれ以上のキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切な軟膏において処方してもよい。本発明の化合物BD-24、BD-23及びTPU-22の局所投与のためのキャリアとして、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つもしくはそれ以上の薬学的に許容されたキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切なローションまたはクリームにおいて処方することができる。適切なキャリアとして、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベイト60(polysorbate60)、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
眼科用途のために、組成物を、等張性、pH調整した滅菌食塩水中の微粉化懸濁液、または好ましくは、等張性、pH調整した食塩水中の溶液として、塩化ベンザルコニウムのような保存剤を伴うもしくは伴わずに、処方してもよい。あるいは、眼科用途として、組成物を、ワセリン(petropatum)のような軟膏において処方してもよい。
本発明の抗腫瘍剤はまた、経鼻エアゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、薬学的処方の分野に周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化もしくは分散剤を用いる食塩水中の溶液として調製してもよい。
本発明の抗腫瘍剤についての投与レジメン(即ち、処方および/または用量および/または投与プロトコル)は適宜選択できる。例えば、本発明の抗腫瘍剤の投与のためのスケジュールおよび用量は、患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度、投与経路などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、例えば、100mg(10mL)または500mg(50mL)の単回使用のバイアルのいずれかにおいて10mg/mLの濃度で供給することができる。生成物は、等張化剤、pH調整剤、および可溶化剤として、一般的に用いられるものであれば制限はないが、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびポリソルベイト(polysorbate)80を用いて、注射用滅菌水により静脈内投与のために処方される。pHは3〜8に調整される。本発明の抗腫瘍剤における化合物BD-24、BD-23及びTPU-22のための例示的に適切な用量範囲は、約10mg/m2〜500mg/m2、好ましくは約20mg/m2〜300mg/m2であり得る。これを1日1回または数回に分けて投与する。しかし、これらのスケジュールは例示的であること、至適スケジュールおよびレジメンは、臨床治験において決定されなければならない。24時間、48時間、72時間または1週間もしくは1箇月間、NK細胞、T細胞、またはその他免疫治療薬の薬効発現に関わるあらゆる免疫細胞を飽和する本発明の抗腫瘍剤における化合物BD-24、BD-23及びTPU-22の注入の量およびスケジュールは、適宜決定される。それ故、前記の好適な用量範囲、処方およびスケジュールはいかなる意味でも本発明を限定する意図を示すものではない。
例えば、多くの治療剤が癌の処置のために利用可能である。本発明の抗腫瘍剤および方法は、特定の疾患、特定の腫瘍、癌疾患、または患者が示す他の疾患もしくは他の障害の処置において一般に用いられる他の任意の方法と併用してもよい。特定の治療アプローチが、患者の状態自体に有害であることが知られておらず、本発明の薬学的組成物における化合物BD-24、BD-23及びTPU-22の活性を有意に妨げない限り、本発明との併用が考慮される。
固形腫瘍の処置に関連して、本発明の抗腫瘍剤は、手術、放射線療法、化学療法などのような古典的なアプローチと組み合わせて使用してもよい。従って、本発明は、本発明の薬学的組成物が手術または放射性処置と同時、前、または後に使用されるか;あるいは従来の化学療法、放射線治療剤もしくは抗血管新生剤または標的化された免疫毒素もしくはコアギュリガンド(coaguligand)と共に、前または後に患者に投与される併用療法を提供する。
1つもしくはそれ以上の薬剤を、治療レジメンにおいて本発明の抗腫瘍剤と組み合わせて使用する場合、組み合わされた結果が、それぞれの処置を個別に行う場合に観察される効果の相加を求める要件は存在しない。少なくとも相加的効果は一般に所望されるが、単回治療のうちの1つを超える増加した抗癌効果は、有益であり得る。また、併用処置が相乗効果を示すことを求める特定の要件は存在しないが、このことは間違いなく可能であり、有利である。
併用抗癌治療を実践するためには、患者に本発明の抗腫瘍剤を、患者内において併用抗癌作用が生じる有効な様式で、別の抗癌剤と併用して、簡単に投与する。従って、薬剤は、腫瘍の脈管構造内においてそれらが組み合わされた形で存在し、腫瘍環境においてそれらが組み合わされて作用するのに有効な量ならびに有効な期間、提供される。この目的を達成するために、本発明の抗癌剤は、単一の組み合わされた組成物、または異なる投与経路を使用する2つの異なる組成物としてのいずれか一方で、患者に同時に投与することができる。
手術について、任意の外科的介入は、本発明の抗腫瘍剤と組み合わせて実践することができる。放射線療法に関して、γ線照射、X線、UV照射、マイクロ波および電子放射などのように、癌細胞内で局所的にDNA損傷を誘発する任意の機構が考慮される。放射性同位元素の癌細胞への指令された送達もまた考慮され、これは、標的化抗体または他の標的化手段とあわせて使用され得る。
がんの治療は、これまで手術、放射線療法、抗癌剤療法の三大療法を中心になされてきた。とくに、高用量の抗癌剤を用いてがん細胞を殺すことのみに主眼を置いた治療法は、効果が期待される一方で、重篤な副作用を伴い患者の生活の質(QOL)を大きく低下させることからしばしば問題視されてきた。
この点において、本研究において見出したベツリン誘導体(BD-24、BD-23及びTPU-22)は、細胞毒性に加えて好中球誘導作用を有することで効果的に抗腫瘍効果を発揮していることから、細胞毒性のみを作用機序とする抗癌剤よりも高い有効性が期待できる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
実施例1
ベツリン誘導体(BD-23)の合成
2. 合成方法
100 mLのナスフラスコにベツリン(1.00 g)、ジクロロメタン(20 mL)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP, 0.0552 g)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA, 0.260 mL)を加えた。反応容器を水冷し、安息香酸無水物(0.561 g)を加え、室温で約40時間撹拌し、ジクロロメタン(20 mL)および安息香酸(0.255 g)を加えてさらに23時間室温で撹拌した。反応液に飽和重曹水(30 mL)を加え、酢酸エチル(20 mL×2回)で抽出した。有機層を飽和食塩水(20 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、微黄色固体(1.33 g)を得た。これをシリカゲルカラム(関東化学, 球状, 中性, 63-210μM, 50 g)で精製し(n-ヘキサン100 %→n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1→5/1→1/1)、化合物1を得た(700 mg, 収率56.6 %)。
中間体化合物1
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.05(m, 2H), 7.56(m, 1H), 7.45(m, 2H), 4.72(br s, 1H), 4.61(br s, 1H), 4.52(br d, J=12.0 Hz, 1H), 4.10(br d, J=12.0 Hz, 1H), 3.19(m, 1H), 2.53(m, 1H), 2.11-1.88(m, 3H), 1.82-1.48(m, 9H), 1.71(s, 3H), 1.48-1.08(m, 11H), 1.07(s, 3H), 1.01(s, 3H), 0.968(s, 3H), 0.920(m, 1H), 0.835(s, 3H), 0.762(s, 3H), 0.690(br d, 1H)
(1回目)
15 mLの試験管に化合物1(200 mg)、テトラヒドロフラン(THF, 2 mL)、トリホスゲン(145 mg)および活性炭(16 mg)を加えた。反応容器を室温で約17時間撹拌した後、フィルターろ過して活性炭を除き、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物にトルエンを少量加えて濃縮を2回繰り返した後、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF, 2 mL)に溶解した。この半量にN-Boc-エチレンジアミン(35 mg)のDMF(1 mL)溶液およびトリエチルアミン(33.1μL)を加えて約17時間撹拌した。再度N-Boc-エチレンジアミン(15 mg)を加えて4時間撹拌した後、反応液に5 %クエン酸水溶液(7 mL)を加え、酢酸エチル(2 mL×3回)で抽出した。有機層を飽和食塩水(1 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、化合物2の粗体を得た。これをシリカゲルカラム(関東化学, 球状, 中性, 63-210μm, 5 g)で精製し(n-ヘキサン100 %→n-ヘキサン/酢酸エチル=5/1→3/1→1/1)、化合物2を得た(123 mg)。
(2回目)
15 mLの試験管に化合物1(150 mg)、THF(2 mL)、トリホスゲン(108 mg)および活性炭(8 mg)を加えた。反応容器を室温で約16時間撹拌した後、フィルターろ過して活性炭を除き、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物にトルエンを少量加えて濃縮を2回繰り返した後、DMF(0.5 mL)に溶解した。そこにN-Boc-エチレンジアミン(62 mg)のDMF(1.5 mL)溶液およびトリエチルアミン(0.154 mL)を加えて約16時間撹拌した。反応液に5 %クエン酸水溶液(8 mL)を加え、酢酸エチル(2 mL×3回)で抽出した。有機層を飽和食塩水(2 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、化合物2の粗体を得た(179 mg, 化合物1を含有していたが、そのまま次工程の反応に用いた)。
中間体化合物2
H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.05(m, 2H), 7.56(m, 1H), 7.45(m, 2H), 4.95(br s, 1H), 4.83(br s, 1H), 4.72(br s, 1H), 4.61(br s, 1H), 4.52(br d, J=11.0 Hz, 1H), 4.34(m, 1H), 4.09(br d, J=11.0 Hz, 1H), 3.35-3.18(m, 4H), 2.52(m, 1H), 2.10-1.88(m, 3H), 1.81-1.53(m, 9H), 1.71(s, 3H), 1.44(s, 9H), 1.53-1.08(m, 11H), 1.06(s, 3H), 1.00(s, 3H), 0.875(br s, 3H), 0.848(s, 3H), 0.792(m, 4H)
(1回目)
15 mLの試験管に化合物2(121 mg)、1,4-ジオキサン(0.5 mL)、メタノール(0.5 mL)および2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.165 mL)を加え、50℃で約3時間撹拌した。反応液に水(1 mL)を加えた後、減圧濃縮して1,4-ジオキサンおよびメタノールを留去し、酢酸エチル(2 mL×2回)で抽出した。有機層を飽和重曹水(1 mL×2回)、水(1 mL)次いで飽和食塩水(1 mL)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮し、無色油状物を得た(97 mg)。これをシリカゲルカラム(関東化学, 球状, 中性, 63-210μm, 5 g)で精製し(n-ヘキサン100 %→n-ヘキサン/酢酸エチル=3/1→2/1→1/1)、無色油状の化合物3を得た(100 mg)。
(2回目)
15 mLの試験管に化合物2の粗体(179 mg)、1,4-ジオキサン(0.5 mL)、メタノール(0.5 mL)および2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.274 mL)を加え、50℃で約3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水(4 mL)を加えて、酢酸エチル(2 mL×2回)で抽出した。有機層を飽和重曹水(1.5 mL×2回)、水(1 mL)次いで飽和食塩水(1 mL)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮し、化合物3を得た(179 mg, 精製は行わず、このまま次の反応に用いた)。
中間体化合物3
ESI MS m/z : [M+H]+ Calcd for C38H65N2O5 629.49 ; Found : 629.60
(1回目)
15 mLの試験管に化合物3(100 mg)、4mol/L塩酸/1,4-ジオキサン(2 mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタンを加えて3回濃縮を繰り返し、BD-023の粗体を得た(66 mg)。
(2回目)
15 mLの試験管に化合物3(179 mg)、4mol/L塩酸/1,4-ジオキサン(2 mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタンを加えて2回濃縮を繰り返し、BD-023の粗体を得た(129 mg)。
合計2回の合成で得られたBD-023の粗体(66mgおよび129mg)を混合し、逆相カラム(Waters Sun Fire Prep C8, 19×50 mm, 5μm)を備えたHPLCで分取精製し(0.05%TFA水/アセトニトリル=90/10→10/90, 210 nm, 25 mL/min)、高純度のフラクションを集めて凍結乾燥し、白色固体のBD-023のTFA塩を得た(106 mg)。
BD-023 (TFA salt)
H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ 7.73(br s, 3H), 7.10(br t, 1H), 4.67(br s, 1H), 4.54(br s, 1H), 4.22(br t, 2H), 3.52(br d, J=10.4 Hz, 1H), 3.20(m, 2H), 3.08(br d, J=10.4 Hz, 1H), 2.85(m, 2H), 2.38(m, 1H), 1.88(m, 3H), 1.75-0.86(m, 21H), 1.63(s, 3H), 0.986(s, 3H), 0.944(s, 3H), 0.828(s, 3H), 0.805(m, 3H), 0.786(s, 3H),
ESI MS m/z : [M+H]+ Calcd for C33H57N2O3 529.44 ; Found : 529.48
実施例2
ベツリン誘導体(BD-24)の合成
実施例2及び3においては、融点(m.p.)は、柳本融点測定器を用いて測定し、数値は未補正である。比旋光度([α])は、ナトリウムD線を用い、Atago製で測定した。1H及び13C NMRスペクトルは、Bruker Biospin製AVANCE II 400を用いて測定した。化学シフト値(ppm)は、tetramethylsilaneまたは測定溶媒の残留プロトンを内標準とし、スピン結合定数はJ値(Hz)で示した。IRスペクトル(ATR-IR)は、PerkinElmer製Spectrum 100を用いて測定した。LRMS及びHRMSは、Burker Dartonics製micrOTOF focusを用いて測定した。全ての反応は、Merck製silica gel 60F254を用いてモニタリングした。カラムクロマトグラフィーは、関東化学製silica gel 60N(63-210 mm)を用いた。
2. 合成方法
ベツリン(I, 1.00 g, 2.25 mmol)を無水THF(23.0 mL)に溶解し、imidazole(0.46 g, 6.78 mmol)及び4-(N,N-dimethylamino)pyridine(DMAP, 55 mg, 0.45 mmol)を加え、氷冷した。この溶液にtert-butyldimethylsilyl chloride (TBSCl, 1.68 g, 11.3 mmol)を加えたのち、室温で48時間攪拌した。原料の消失をTLCで確認したのち、水を加え、酢酸エチルで抽出した。全有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過により除き、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 11 : 1)を用いて精製 すると、目的化合物(4, 2.90 g, 93%)が白色粉末として得られた。
Rf = 0.38 (hexane : EtOAc = 5 : 1).1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 0.01 (3H, s, TBDMS), 0.05 (3H, s, TBDMS), 0.63-1.64 (27H, m), 0.72 (3H, s), 0.79 (3H, s), 1.85-1.94 (3H, m), 2.35 (1H, dt, J = 6.0 and 4.8 Hz), 3.15 (1H, dd, J = 6.0 and 5.2 Hz), 3.22 (1H, d, J - 9.6 Hz), 3.63 (1H, d, J = 10.0 Hz), 4.52 (1H, s, olefinic), 4.63 (1H, s, olefinic). 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ = -5. 5, -3.6, 14.8, 15.4, 15.9, 16.1, 17.9, 18.2(9), 18.3, 19.1, 20.9, 25.3, 25.7, 26.0, 27.1, 27.4, 28.0, 29.5, 30.0, 34.2, 34.3, 37.2, 37.4, 38.7, 38.9, 40.9, 42.7, 48.1, 48.4, 50.4, 55.3, 60.5, 79.0, 109.4, 151.0.
N-Boc-L-serine(1.00 g, 4.88 mmol)及び2,2-dimethoxypropane(4.47 g, 42.9 mmol)をアセトン(20.0 mL)に溶解し氷冷した。この溶液に、borontrifluoride etherate(BF3・OEt2, 0.05 g, 0.43 mmol)を加えたのち、室温で2日間攪拌した。原料の消失をTLCを用いて確認したのち、triethylamine(Et3N, 0.1 mL)で反応を止め、反応液を減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチルと飽和NaHCO3水溶液に溶解したのち、1N塩酸を用いてpH3-4に調整した。得られた酸性溶液をCH2Cl2で抽出し、全有機層を無水Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除いたのち、ろ液を減圧下に濃縮すると目的のカルボン酸 5 (630 mg, 53%) が黄色油状物質として得られた。
Rf = 0.44 (EtOAc). 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 1.43 (27/5H, s, tBu), 1.51 (24/5H, s, tBu and acetonide), 1.54 (9/5H, s, acetonide), 1.63 (6/5H, s, acetonide), 1.67 (9/5H, s, acetonide), 4.08-4.2 2 (2H, m, H-5), 4.41 (3/5H, dd, J = 5.6 and 2.4 Hz, H-4), 4.53 (2/5H, dd, J = 4.8 and 2.4 Hz, H-4), 11.04 (1H, br). 13C NMR (125 MHz, CD Cl3) δ = (major rotamer) 24.7, 28.0, 53.3, 58.9, 66.0, 80.5, 151.1, 175.9; (minor rotamer) 24.1, 28.2, 53.6, 60.4, 65.7, 81.3, 94.5, 152.5, 175.1.
化合物4(453 mg, 0.81 mmol),化合物 5(597 mg, 2.44 mmol),DMAP(19.8 mg, 0.16 mmol)を無水CH2Cl2(25 mL)に溶解、氷冷下、N-(3-dimethylaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimide hydrochloride(EDC・HCl, 202 mg, 1.05 mmol)を加え、44時間還流した。TLCで原料の消失を確認したのち、室温まで冷却し、飽和NH4Cl水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。全有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除き、ろ液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 7 : 1)で精製すると、目的化合物IV (368 mg, 58%) が黄色油状物質として得られた。
Rf = 0.43(hexane : EtOAc = 3 : 1). 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 0.04 (6H, s, TBDMS), 0.89-1.68 (58H, m), 1.85-1.98 (3H, m), 2.40 (1H, dt, J = 6.0 and 4.8 Hz), 3.25 (1H, d, J = 9.6 Hz), 3.67 (1H, d, J = 10.0 Hz), 4.02-4.17 (2H, m), 4.37 (1/2H, dd, J = 6.8 and 2.0 Hz), 4.48 (1/2H, dd, J = 6.4 and 2.4 Hz), 4.53-4.56 (2H, m), 4.67 (1H, br s). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ = -5.5, 14.2, 14.7, 15.8, 16.1, 16.6, 17.6, 18.1, 18.3, 19.0, 20.8, 21.0, 22.6, 23.6, 23,7, 24.1, 25.1, 25.1(4), 25.5, 25.6, 25.9, 26.0, 27.0, 27.7, 28.1, 28.3, 28.4, 29.4, 29.9, 31.5, 34.0, 34.3, 37.0, 37.3, 37.8, 37.9, 38.3, 40.9, 42.6, 48.0, 48.3, 50.3, 55.3(4), 55.4, 59.6, 59.7, 60.3, 60.4, 66.3, 66.7, 80.3, 80.6, 82.2, 94.2, 95.0, 109.4, 150.8, 151.3, 151.8, 170.9, 171.0,
化合物6(1.50 g, 1.91 mmol)を4 M HClジオキサン溶液(24 mL)に溶解し、室温で3時間攪拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で塩基性にしたのち、酢酸エチルで抽出した。全有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除き、ろ液を濃縮し、残渣を酢酸エチルから再結晶すると、BD-24(873 mg、 86%)が白色粉末として得られた。
[α]D24 +28.8 (c 1.04, CHCl3). 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ = 14.5, 15.6, 15.8, 16.4, 17.7, 18.8, 20.4, 23.5, 24.8, 26.7, 27.6, 29.0, 29.3, 33.6, 33.8, 36.6, 36.7, 37.5, 37.7, 40.4, 42.2, 47.3, 47.4, 48.1, 49.5, 50.2, 54.6, 56.5, 57.9, 64.2, 80.0, 109.6, 150.4, 173.7. LRMS (ESI+) m/z = 530 ([M+H]+, 100). HRMS (ESI+) m/z = [M+H]+: calcd for C33H56NO4 530.4203; found 530.4219.
2. 合成方法
ベツリン(281 mg, 0.64 mmol)、保護したセリン誘導体(5, 234 mg, 0.95 mmol)、及びDMAP(16 mg, 0.13 mmol)をTHF(8 mL)に溶解し、氷冷下にEDC・HCl(159 mg, 0.83 mmol)を加え、室温で数時間攪拌した。TLCで原料の消失を確認し、飽和NH4Cl水溶液を加え反応を止めた。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、全有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除き、ろ液を減圧下に濃縮したのち、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 6 : 1)で精製すると28-モノエステル(7, 406 mg, 95%)が黄色油状物質として得られた。
Rf = 0.37 (hexane : EtOAc = 3 : 1). 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 0.74-2.00 (57H,m), 2.43 (1H, dt, J = 6,0 and 4.8 Hz), 3.18 (1H, dd, J = 10.8 and 4.8 Hz), 3.86 (2/5H, d, J = 11.2 Hz), 3.99 (3/5H, d, J = 11.2 Hz), 4.02-4.19 (2H, m), 4.32 (3/5H, d, J = 10.8 Hz), 4.40 (3/5H, dd, J = 6.8 and 2.0 Hz), 4.43 (2/5H, d, J = 10.8 Hz), 4.50 (2/5H, dd, J = 6.8 and 2.4 Hz), 4.59 (1H, s), 4.69 (1H, d, J = 4.0 Hz). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ = 14.1, 14.7, 15.3, 15.9(7), 16.0, 18.2, 19.1, 20.7, 21.0, 24.1, 25.0, 25.1, 26.1, 26.9, 27.1, 27.3, 27.9, 28.2(7), 28.3(1), 29.5, 29.6, 34.1, 34.2, 34.4, 34.5, 37.1, 37.5, 37.6, 38.7, 38.8, 40.8, 42.6, 46.4, 47.6, 48.8, 50.3, 55.2, 59.5, 60.3, 63.7, 66.2, 66.5, 78.8, 80.3, 80.7, 94.3, 95.0, 109.8, 109.9, 149.9, 150.0, 151.2, 151.8, 171.1, 171.3, 171.6. IR (neat, cm-1) ν = 3497 (92), 2940 (83), 2870 (88), 1746 (81), 1646 (93), 1497 (81), 1463 (82), 1388 (89), 1374 (88), 1361 (88), 1251 (73), 1189 (94), 1084 (69), 1043 (81), 1007 (83), 983 (87), 939 (90), 855 (49), 772 (47), 667 (70). LRMS (ESI+) m/z = 692 ([M+Na]+, 100). HRMS (ESI+) m/z = [M+Na]+: calcd for C41H67NO6Na 692.4861; found 692.4886.
28-セリン置換ベツリン(7, 129 mg, 0.19 mmol)、保護したセリン誘導体(5, 236 mg, 0.96 mmol)、及びDMAP (4.0 mg, 0.04 mmol)をCH2Cl2(3 mL)に溶解し、氷冷下、EDC・HCl (74 mg, 0.38 mmol) を加え、15時間還流した。TLCで原料の消失を確認したのち、室温まで冷却し飽和NH4Cl水溶液を加えた。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、全有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除き、ろ液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 6 : 1)で精製すると、化合物8(127 mg, 74%)が無色油状物質として得られた。
Rf = 0.39 (hexane : EtOAc = 5 : 1). 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 0.75-2.00 (79H, m), 2.43 (1H, qd, J = 11.2 and 6.0 Hz), 3.84 (2/5H, d, J = 10.8 Hz), 3.98 (3/5H, d, J = 10.8 Hz), 4.02-4.20 (2H, m), 4.32 (3/5H, d, J = 10.8 Hz), 4.36-4.41 (2H, m), 4.43 (2/5H, d, J = 10.8 Hz), 4.47-4.56 (2H, m), 4.60 (1H, m), 4.69 (1H, d, J = 4.4 Hz). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ = 14.7, 16.0, 16.1, 16.6, 18.1, 19.1, 20.8, 23.8, 24.1, 25.1, 26.0, 26.1, 27.0, 27.1, 27.8, 28.2, 28.4, 29.4, 29.5, 29.7, 34.1, 34.4, 37.0, 37.6, 37.9, 38.3, 40.9, 42.7, 46.5, 47.7, 48.8, 50.2, 55.4, 59.5, 63.7, 66.2, 66.4, 66.5, 66.7, 80.4, 82.2, 94.3, 95.1, 110.0, 171.0, 171.7. LRMS (ESI+) m/z = 919 ([M+Na]+, 12), 758 (100), 617 (23), 512 (56), 407 (17), 309 (59). HRMS (ESI+) m/z = [M+Na]+: calcd for C52H84N2O10Na 919.6018; found 919.6018.
3,28-二セリン置換ベツリン(8, 52 mg, 0.06 mmol)をHClジオキサン溶液(4 mol/L, 2 mL)に溶解し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を減圧下に濃縮し、残渣を飽和NH4Cl水溶液に溶解した。飽和NaHCO3を用いて塩基性にし、酢酸エチルで抽出した。全有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除き、ろ液を減圧下に濃縮するとTPU-22(25 mg, 70%)が白色粉末として得られた。生物実験には、再結晶を行ったものを用いた。
[α]D 27 -29.4 (c 0.34, CHCl3). Mp = >300℃ (EtOAc/MeOH). 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 0.76-2.00 (48H, m), 2.44 (1H, td, J = 10.8 and 6.0 Hz), 3.32-3.91 (8H, m), 4.42 (1H, d, J = 10.5 Hz), 4.55 (1H, t, J = 8.2 Hz), 4.53 (1H, s), 4.62 (1H, s). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ = 14.8, 16.0, 16.1, 16.6, 18.1, 19.1, 20.8, 23.8, 25.1, 27.0, 28.0, 29.4, 29.5, 29.7, 34.1, 34.5, 37.1, 37.6, 38.0, 38.3, 40.9, 42.7, 46.5, 47.7, 48.8, 50.3, 55.4, 55.9, 63.7, 64.2, 64.3, 82.1, 110.0, 149.9, 173.5, 174.2.IR (neat, cm-1) ν = 3357, 2939, 2870, 1732, 1639, 1591, 1454,1390, 1374, 1223, 1130, 1106, 1041, 1008, 974, 910, 879, 802, 744. LRMS (ESI+) m/z = 617 ([M+H]+, 65), 512 (100), 407 (37), 309 (73), 106 (86), 102 (42). HRMS (ESI+) m/z = [M+H]+: calcd for C36H61N2O6 617.4524; found 617.4533.
実施例4
がん移植マウスモデルを用いた評価
マウス悪性黒色腫細胞(B16F10)を2×105個/0.05mlPBSに調製し、C57BL/6マウス(8週令,雌,8-10匹/群)に1匹当たり0.05mlずつ下腹部皮下に接種した。化合物はがん接種後2日目から16日目まで1日1回、腫瘍内に投与した。対照群には溶媒(0.1% Tween 80を含む生理緩衝食塩水)を同様に投与した(50μl/マウス)。腫瘍径は2日あるいは3日ごとに測定し、見かけの腫瘍体積は、長径×短径×短径/2で算出した。好中球を除去したマウスを用いて評価を行う場合には、がん接種の翌日に抗Gr-1抗体(RB6-8C5)を腫瘍内及び尾静脈内にマウス1匹当たり各0.1mgずつ投与した。さらに、がん接種3日後、7日後、及び、11日後に同抗体を腫瘍内にマウス1匹当たり0.1mgずつ追加投与した。対照群にはコントロールIgG(ラット由来)を同様に投与した。化合物の投与及び腫瘍径の測定は上記と同様に行った。
細胞毒性の評価
10%FBSを含むDMEM培地(GIBCO)でB16F10細胞を4×104個/mlに調製し、96ウェルプレート(Corning)に各ウェル当たり4×103個を播種した。細胞がプレートに接着後、化合物を各濃度で添加し、インキュベーター内(37℃,5%CO2)で48時間培養した。コントロールにはジメチルスルホキシドを同様に添加した。培養終了後、各ウェルの培地を、WST-1(Wako)を5%含む10%FBS‐DMEM培地に交換し、さらに4時間培養した後、波長450 nmにおける吸光度を測定した。
がん組織に集積した免疫細胞の解析
マウス悪性黒色腫細胞(B16F10)を2×105個/0.05mlPBSに調製し、C57BL/6マウス(8週令,雌,3〜6匹/群)にマウス当たり0.05mlずつ下腹部皮下に接種した。がん接種後2日目から9日目まで1日1回、化合物をマウス当たり45nmolの用量で腫瘍内に投与した。対照群には溶媒(0.1% Tween 80を含む生理緩衝食塩水)を同様に投与した。がん組織は、がん接種後3日目、実験によっては6日目、あるいは、10日目に採取した。採取したがん組織を1mg/mlコラゲナーゼA(ロシュ)及び200U/ml DNaseI(Sigma)で処置(37℃,30分間)し、ハサミで細切後、ナイロンフィルター(70μmポアサイズ)(Falcon)を通してデブリスを除去した。遠心(1500rpm,10min)後、上清を除去し、得られた細胞を105個/mlとなるように調製した。細胞を抗CD16/32抗体(2.4G2)で処置(1.5μg/ml,4℃,15min)しFc受容体をブロックした後、各種の蛍光色素で標識された抗CD19抗体(1D3)、抗CD3e抗体(145-2C11)、抗NK1.1抗体(PK136)、抗CD11b抗体(M1/70)、抗Gr-1抗体(RB6-8C5)、抗CD11c抗体(HL3)、抗CD45抗体(30-F11)、抗siglec-F抗体(E50-2440)で処置(0.25-1.25μg/ml,4℃,0.5時間)した。細胞を洗浄後、7AADを添加してフローサイトメーター(FACSCantoII、日本BD)により測定した。
がん細胞傷害活性の測定
C57BL/6マウス(8週令,雌)の下腹部皮下に化合物をマウス当たり45nmol/50μl(0.1% Tween 80を含む生理緩衝食塩水)の用量で投与した。24時間後、投与部位の組織を採取して1mg/mlコラゲナーゼA(ロシュ)及び200U/ml DNaseI(Sigma)で処置(37℃,30分間)し、ハサミで細切後、ナイロンフィルター(70μmポアサイズ)(Falcon)を通してデブリスを除去した。遠心(1500rpm,10min)後、上清を除去し投与部位に集積した白血球を得た。この白血球を5×105個/mlから段階希釈で0.625×105個/mlとなるように調製し、96ウェルプレート(FALCON)に1ウェルあたり0.1mlずつ播種してエフェクター細胞とした。ターゲット細胞にはGFPを発現するB16F10マウス悪性黒色腫細胞を用い、105個/mlに調製して先と同じウェルに1ウェルあたり0.1mlずつ播種して混合した。インキュベーター内(5%CO2,37℃)で4時間処置後、7AADを添加して15分間処置し、7AAD陽性及び陰性の癌細胞の割合をフローサイトメーター(FACSCantoII、日本BD)により測定した。
〈結果〉
マウスB16F10悪性黒色腫細胞の皮下移植モデルを用いて、ベツリン及びベツリン誘導体(BD-23,BD-24,TPU-22)の抗腫瘍効果を検討した(図1)。17日目における抑制率は、ベツリン45nmolあるいは150nmol投与群ではそれぞれ31.5%あるいは47.7%であったのに対して、BD-23投与群では99.5%、BD-24投与群では94.0%、TPU-22投与群では74.4%であり、ベツリン投与群よりも明らかに強い抗腫瘍効果が認められた。また、BD-24の抗腫瘍効果を5-FUの抗腫瘍効果と比較検討したところ、BD-24により強い抗腫瘍効果が認められた(図2)。
これら誘導体の抗腫瘍効果に細胞毒性が関与しているかを明らかにするため、マウスB16F10悪性黒色腫細胞の増殖能に対する影響を試験管内においてベツリンあるいは5-FUと比較検討した。その結果、いずれの誘導体もベツリンあるいは5-FUよりも強い抑制作用を示し、50%阻害濃度は、それぞれ1.24μM(BD-23)、1.89μM(BD-24)、2.21μM(TPU-22)、13.0μM(ベツリン) 、2.96μM(5-FU)であった(図3)。このことから、これら誘導体の抗腫瘍効果に、がん細胞に対する直接的な細胞毒性が関与していることが明らかとなった。
一方、これらベツリン誘導体をマウスに投与すると、その投与部位(腫瘍組織)では明らかな炎症様の症状が観察された(図4)。この症状は、ベツリン、抗癌剤の5-FUやオキサリプラチン、あるいは、起炎物質であるLPSを投与しても認められなかった。
この炎症様症状がこれら誘導体の抗腫瘍効果に関与しているのかを明らかにするため、BD-23あるいはBD-24を投与した際に投与部位に集積した白血球(CD45陽性細胞)の数をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、いずれの誘導体を投与した場合も対照群に比較して明らかに白血球が増加した(図5)。
また、BD-24の投与により増加した白血球の種類について解析したところ、大部分が好中球であることが分かった(図6)。
そこで、増加した好中球が誘導体の抗腫瘍効果に関与しているかを明らかにするため、好中球を除去したマウス(抗Gr-1抗体処置マウス)を用いてBD-24の抗腫瘍効果を検討した。その結果、好中球を除去したマウスではその抗腫瘍効果が、ナイーブなマウスでの場合に比較して半分程度に減弱することが分かった(図7)。
さらに、増加した好中球ががん細胞に対して直接的に傷害を与えているかを明らかにするため、BD-24の投与により集積した白血球(主に好中球)のがん細胞傷害活性について検討した。その結果、がん細胞と共培養する白血球の比率を上げるにつれて、がん細胞傷害活性が上昇することが分かった(図8)。
これらのことから、これら誘導体の投与により集積する白血球(主に好中球)はそれらの抗腫瘍活性に大きく寄与していることが分かった。
以上から、本発明のベツリン誘導体は、がん細胞増殖阻害作用に加えて好中球誘導作用を有することで効果的に抗腫瘍効果を発揮していることが明らかとなった。
本発明は抗腫瘍薬剤の分野に有用である。

Claims (5)

  1. 下記いずれかの化学式で示されるベツリン誘導体を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
  2. ベツリン誘導体がBD-24である請求項1に記載の抗腫瘍剤。
  3. ベツリン誘導体がBD-23である請求項1に記載の抗腫瘍剤。
  4. ベツリン誘導体がTPU-22である請求項1に記載の抗腫瘍剤。
  5. 前記腫瘍が皮膚がんである請求項1〜4のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
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