以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
実施の形態では、DFTS−OFDMにより得られる低強度テール(Low Power Tail、以下、LPTと称す)を伴うOFDMベースの波形に、準サイクリックプレフィックス(quasi-Cyclic Prefix、以下、qCPと称す)とウインドウとを順次適用する。LPTを生成するためのパラメータはマルチパスによる遅延広がりがもたらすISI、同期ずれ、もしくは非同期通信によるISI、および帯域外輻射(Out-Of-Band radiation)に対する要件(以下、OOB要件と称す)に基づいて設定される。例えば、帯域外輻射が制限されるほど、より帯域外輻射を低減できるウインドウタイプ、およびそれに必要なLPT長のパラメータが設定される。その結果、LPT及びウインドウ処理の導入によりISIおよびサブキャリア間干渉を低く抑えつつ、OOB要件も満たすことができる。
LPTに関して本実施の形態では、入力シンボル系列に含まれるデータシンボルがテールに与える影響と、同じく入力シンボル系列に含まれるオーバーヘッド(OH)シンボルがテールに与える影響とが打ち消し合うように、OHシンボルを決定する。その結果、OHシンボルの値は「0」のような固定値ではなく、データシンボルもしくは変調部の構成により変化する値(例えば、複素数)となる。これにより、データシンボルによらずにテールの強度を低減でき、ISIおよびサブキャリア間干渉を十分に低く抑えることができる。
図1は、本実施の形態に係る無線通信システム100の構成例を示す模式図である。無線通信システム100は、それぞれが無線通信装置として動作する基地局装置101と端末102とを含む。なお、例示的に1つの基地局装置101と1つの端末102とが含まれるシステムを示しているが、これらの通信装置は複数存在し得る。また、無線通信システム100は、例えばロングタームエボリューション(LTE)等を採用するセルラ通信システムであるが、その後の世代のセルラ通信システムや、無線LANなどの無線通信システムであってもよい。すなわち、以下の技術は、2つの通信装置間において、OFDMベースの通信方式を用いる場合に適用できるものであり、その対象は、必ずしもセルラ通信システム等の特定のシステムに限定されない。
以下では、上りリンク(Uplink)すなわち端末102から基地局装置101への信号の送信における送信装置(端末102)の構成および受信装置(基地局装置101)の構成を説明する。しかしながら、OFDMベースの通信方式を用いて信号を送受信する任意の通信装置に本実施の形態に係る技術的思想を適用できることは、本明細書に触れた当業者には明らかである。
図2は、端末102のハードウエア構成例を示す図である。端末102は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、外部記憶装置204と、通信装置205と、を有する。端末102では、例えばROM202、RAM203及び外部記憶装置204のいずれかに記録された、端末102の各機能を実現するためのコンピュータプログラムがCPU201により実行される。そして、端末102は、例えばCPU201により通信装置205を制御して、基地局装置101と端末102との間の通信を行う。
なお、図2では、端末102は、1つの通信装置205を有するとしているが、例えば、端末102は、複数の周波数帯域のそれぞれに対応する複数の通信装置を有していてもよい。なお、端末102は、端末間の直接通信のために、上りリンクの信号を受信するための通信装置を有していてもよいし、下りリンクの信号を送信するための通信装置を有していてもよい。また、端末102は、各機能を実行する専用のハードウエアを備えてもよいし、一部をハードウエアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。あるいはまた、端末102は、その全機能をコンピュータとプログラムにより実行させてもよい。
図3は、図2の通信装置205の機能および構成を示すブロック図である。通信装置205は、ベースバンド信号処理部302と、送受信部304と、増幅部306と、アンテナ308と、を含む。
通信装置205の送信機能を説明する。ベースバンド信号処理部302は送信対象のユーザデータである送信データを取得する。ベースバンド信号処理部302は、取得された送信データに対して、プリコーディング処理や離散フーリエ変換(DFT)処理、IDFT処理、qCP付与、ウインドウ処理、連結処理などを行う。ベースバンド信号処理部302は、それらの処理の結果得られるベースバンド信号を送受信部304に転送する。送受信部304は、ベースバンド信号処理部302から出力されたベースバンド信号により搬送波を変調し、所望の無線周波数帯域を有する無線周波数信号を生成する。増幅部306は、送受信部304により生成された無線周波数信号を増幅してアンテナ308により送信する。
通信装置205の受信機能を説明する。アンテナ308で受信された無線周波数信号が増幅部306で増幅され、送受信部304で復調されてベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号処理部302は、ベースバンド信号にDFT処理や、誤り訂正復号などを行う。
図4は、図3のベースバンド信号処理部302の送信に係る機能および構成を示すブロック図である。ベースバンド信号処理部302は、第1端子402と、入力系列生成部404と、OHパラメータ決定部408と、OHパラメータ保持部410と、DFT部412と、周波数領域処理部414と、IDFT部416と、qCP付加部422と、ウインドウ処理部424と、連結部426と、P/S変換部428と、要件取得部430と、OOBパラメータ決定部432と、コードブック保持部434と、第2端子420と、を有する。
DFT部412と周波数領域処理部414とIDFT部416とは信号変換部406を構成する。信号変換部406は、入力系列生成部404によって生成された入力シンボル系列を周波数領域の周波数データに変換する。信号変換部406は、その変換により得られた周波数データを所望の周波数帯域を有する時間領域の信号に変換し、qCP付加部422に出力する。この時間領域の信号は、入力シンボル系列に対応するマルチキャリアシンボル(以下、MCシンボルと称す)であり、MCシンボルのテールの強度は他の部分の強度よりも小さい。
入力系列生成部404は第1端子402から、送信データを表すシンボルである送信データシンボルを受信する。入力系列生成部404は、OHパラメータ保持部410からOHパラメータを取得する。入力系列生成部404は、取得されたOHパラメータと受信した送信データシンボルとに基づき、前置OHシンボルと後置OHシンボルとを含むOHシンボルを決定する。入力系列生成部404は、受信した送信データシンボルに決定されたOHシンボルを付加することで入力シンボル系列を生成する。入力シンボル系列は時間領域の系列であり、特にM個(Mは自然数)のシンボルの時系列である。入力シンボル系列はシンボルを要素とするベクトルで表現される。このベクトルを入力シンボルベクトルSと表記する。入力シンボルベクトルSにおいてM個の要素は時間軸に沿って並んでいる。
DFT部412は、入力系列生成部404によって生成された入力シンボル系列を直列/並列変換し、DFT処理することで時間領域の系列を周波数領域の周波数データに変換し、周波数領域処理部414に出力する。当該DFTのサイズ(この場合、M)は、送受信部304で生成される無線周波数信号の帯域幅に相当する。
周波数領域処理部414は、DFT部412における変換の結果得られる周波数データに対して周波数領域における所定の処理を施す。例えば、周波数領域処理部414は、DFT処理後の周波数データを所望の周波数帯域または割り当てられている周波数帯域にマッピングし、それ以外の周波数帯域に無信号(0信号)をマッピングした周波数領域の系列を生成して、IDFT部416に出力する。
IDFT部416は、周波数領域処理部414が出力した系列に対してIDFT処理を行い、MCシンボルを生成して、qCP付加部422に出力する。当該IDFTのサイズ(この場合、Mよりも大きな自然数F)は、基地局装置101の全受信信号帯域幅に相当する。特にFは基地局装置101で利用可能なサブキャリアの数であってもよい。
図5は、図4の入力系列生成部404の機能および構成を示すブロック図である。入力系列生成部404は、データシンボル取得部502と、入出力特性保持部504と、OHシンボル演算部506と、合成部508と、を有する。
入力系列生成部404から出力されるサイズMの入力シンボルベクトルSは、
S=(hNh T、dM−Nh−Nt T、tNt T)T
と表される。ここで、hNhはNh(Nhは0以上の整数)個の前置OHシンボルを要素とする前置OHベクトルであり、tNtはNt(Ntは自然数)個の後置OHシンボルを要素とする後置OHベクトルである。dM−Nh−NtはM−Nh−Nt個の送信データシンボルからなる送信データベクトルである。なお、NhおよびNtはM>Nh+Ntを満たす。このように本実施の形態では、送信データシンボルにそれとは異なるシンボルを付加することで入力シンボル系列を生成するプリコーディングが行われる。
入力シンボルベクトルSにおいて、送信データシンボルは前置OHシンボルと後置OHシンボルとに挟まれるように配置される。後置OHシンボルは、送信データシンボルの時間に比して後の時間に対応する要素として入力シンボルベクトルSに含められる。前置OHシンボルは、送信データシンボルの時間に比して前の時間に対応する要素として入力シンボルベクトルSに含められる。
入力系列生成部404において、Nh個の前置OHシンボルおよびNt個の後置OHシンボルは、入力シンボルベクトルSに対応して信号変換部406から出力されるMCシンボルの後端部すなわちテールに送信データベクトルdM−Nh−Ntが与える影響と、当該テールに前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtが与える影響と、が打ち消し合うように決定される。
入力シンボルベクトルSに対応して信号変換部406から出力されるMCシンボルのK個の時間サンプルを要素とするベクトルを出力ベクトルXと表記する。出力ベクトルXの要素のうちテールに対応する要素、すなわち後ろから数えてP(PはKより小さい自然数)番目の要素から最後の要素までの要素からなるベクトルを出力テールベクトルXPと表記する。出力テールベクトルXPは出力ベクトルXの一部である。より具体的には、
X=(x1、x2、…、xK−1、xK)T
と表記するとき、
XP=(xK−P+1、xK−P+2、…、xK)T
である。出力テールベクトルXPはLPTに対応し、出力テールベクトルXPの要素の数PはLPTの長さである。
信号変換部406は線形システムであるから、出力テールベクトルXPの各要素は入力シンボルベクトルSの要素の線形結合として表される。すなわち、
XP=A・dM−Nh−Nt+B・(hNh T、tNt T)T …(式1)
が成立する。ここで「・」は行列積を表す。Aは、送信データベクトルdM−Nh−Ntを入力とし出力テールベクトルXPを出力とする信号変換部406の入出力特性を表す行列、すなわち信号変換部406への送信データベクトルdM−Nh−Ntの入力が出力テールベクトルXPにどのような影響を与えるかを規定する行列である。Bは、前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtを入力とし出力テールベクトルXPを出力とする信号変換部406の入出力特性を表す行列、すなわち信号変換部406への前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtの入力が出力テールベクトルXPにどのような影響を与えるかを規定する行列である。出力ベクトルXのテールにおける信号エネルギを極小化または最小化するために、
XP=0
を課す。これは式1の右辺第1項と第2項とが打ち消し合う条件と同値である。すると、
(hNh T、tNt T)T=(BH・B)−1・BH・(−A)・dM−Nh−Nt …(式2)
が得られる。ここでBHはBの随伴行列を表す。
式2は、送信データシンボルを表す送信データベクトルdM−Nh−Ntと、信号変換部406の入出力特性を表す行列A、Bと、に基づいて前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtを決定することができることを示している。入力系列生成部404は、予めP、Nh、Ntの組に対応するA、Bを求めておき、送信データベクトルdM−Nh−Ntを取得したらそれにA、Bを作用させて前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtを取得し、入力シンボルベクトルSを構成する。
データシンボル取得部502は、第1端子402から送信データシンボルを受信する。データシンボル取得部502は、OHパラメータ保持部410を参照し、使用すべきNhおよびNtを特定する。NhおよびNtはいずれもOHパラメータである。データシンボル取得部502は、受信した送信データシンボルをM−Nh−Nt個ずつまとめて送信データベクトルdM−Nh−Ntを生成する。データシンボル取得部502は、生成された送信データベクトルdM−Nh−Ntを合成部508およびOHシンボル演算部506に出力する。
OHシンボル演算部506は、データシンボル取得部502から出力された送信データベクトルdM−Nh−Ntと、(P、Nh、Nt)の組に対応する行列A、Bと、に基づいて、前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtを決定する。OHシンボル演算部506は、データシンボル取得部502から送信データベクトルdM−Nh−Ntを受ける。OHシンボル演算部506は、OHパラメータ保持部410を参照し、使用すべき(P、Nh、Nt)の組を特定する。
OHシンボル演算部506は、入出力特性保持部504を参照し、特定された(P、Nh、Nt)の組に対応する行列A、Bを取得する。図6は、入出力特性保持部504の一例を示すデータ構造図である。行列A、BはいずれもP、Nh、Ntに依存する。特に行列AはP行(M−Nh−Nt)列の行列であり、行列BはP行(Nh+Nt)列の行列である。入出力特性保持部504は、(P、Nh、Nt)の組と行列Aと行列Bとを対応付けて保持する。入出力特性保持部504に登録されるデータは、信号変換部406に対する出荷前のテストやシミュレーション結果等に基づき出荷時に登録されてもよい。行列A、行列B自体は、無線チャネルの状況によらない装置固有の値を要素とする行列である。なお、行列A、Bは保持部に保持される代わりに、演算により直接求められてもよい。
図5に戻り、OHシンボル演算部506は、取得された行列A、Bと受信した送信データベクトルdM−Nh−Ntとを使用して式2を演算することにより、前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtを決定する。OHシンボル演算部506は、決定された前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtを合成部508に出力する。
合成部508は、データシンボル取得部502から受けた送信データベクトルdM−Nh−Ntと、OHシンボル演算部506から受けた前置OHベクトルhNhおよび後置OHベクトルtNtと、から、入力シンボルベクトルSを合成する。合成部508は、生成された入力シンボルベクトルSを信号変換部406に出力する。
図4に戻り、OHパラメータ決定部408は、通信装置205によって送信される無線周波数信号に係るシンボルの時間的な重なりの大きさに基づいて使用されるべきOHパラメータを決定し、決定されたOHパラメータをOHパラメータ保持部410に登録する。OHパラメータはPとNhとNtとを含む。OHパラメータ決定部408は、タイミングオフセットやマルチパスによる遅延の想定値または統計値もしくはその両方に基づいてPの値を決定する。OHパラメータ決定部408は、決定されたPの値に基づいて、NhおよびNtの値を決定する。
一例では、OHパラメータ決定部408は、基地局装置の通信可能範囲に基づいてPの初期値を設定してもよい。通信可能範囲の最大半径をRmaxと表記し、光速をcと表記すると、該通信可能範囲内における最大遅延Dmaxは
Dmax=Rmax/c
で与えられる。サンプリング間隔をTsと表記すると、Pの初期値Piは、
PiTs>Dmax
を満たす最小の整数として与えられる。すなわち、[]をガウスの記号とするとき、
Pi=[Rmax/cTs]+1
により初期値Piが与えられる。
OHパラメータ決定部408は、タイミングオフセットやマルチパスによる遅延の実測値に対して統計処理を施し、その処理の結果に基づきPの値を調整してもよい。例えば最大遅延Dmaxを超える遅延が多数観測された場合は、OHパラメータ決定部408はPを初期値Piから増やしてもよい。遅延の実測値は、例えば、基地局装置と端末との間の閉ループ型同期(Closed Loop Synchronization、CLS)プロセスにおいて得られる。閉ループ型同期プロセスが繰り返されることで、遅延の実測値が蓄積される。
OHパラメータ決定部408は、決定されたPの値が大きいほど(Nh+Nt)も大きくなるよう、かつNh<NtとなるようNhおよびNtを決定してもよい。Nh<Ntは、入力シンボルベクトルSにおいて後ろに配置された要素ほど出力テールベクトルXPへの影響が強いという本発明者の知見に基づく。また、信号変換部406におけるIDFT処理の周期性のため、入力シンボルベクトルSの先頭に配置された要素も出力テールベクトルXPに影響する場合がある。したがって、Nhの値は1以上に設定されてもよい。一例ではOHパラメータ決定部408は、Pの値と、予め定められたNhおよびNtの値の組とを対応付けて保持するテーブルを有し、決定されたPの値に対応するNh、Ntの組を該テーブルから特定することにより、Nh、Ntを決定してもよい。該テーブルに登録されたデータは、予め経験的にまたは理論的に得られたものであってもよい。
あるはまた、OHパラメータ決定部408は、BCCH(Broadcast Control CHannel)やPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)やPUCCH(Physical Uplink Control CHannel)などの制御チャネルを介して受けた制御信号からOHパラメータを抽出することにより該OHパラメータを決定してもよい。
要件取得部430は、OOB要件を取得する。要件取得部430は、端末102が無線環境の測定に基づいて適宜定めた要件を取得してもよいし、制御チャネルや制御メッセージを介して基地局装置101から要件を取得してもよい。OOB要件は、上りリンクにおける干渉の度合いに基づいてもよい。例えば、上りリンクにおいて、CFO(Carrier Frequency Offset)などによる端末間の干渉が比較的強い場合、帯域外輻射をさらに抑えるように要件が設定されてもよい。
OOBパラメータ決定部432は、要件取得部430によって取得されたOOB要件に基づいて、使用されるべきOOBパラメータを決定する。OOBパラメータは、ウインドウ処理部424におけるウインドウのランプ長NW(単位:時間サンプルの数)と、LPTの長さPの最小値Pminと、を含む。OOBパラメータ決定部432は、許される帯域外輻射が大きい場合はランプ長NWを短く設定し、最小値Pminを小さく設定する。OOBパラメータ決定部432は、許される帯域外輻射が小さい場合はランプ長NWを長く設定し、最小値Pminを大きく設定する。具体的には、OOBパラメータ決定部432は、コードブック保持部434を参照し、要件取得部430によって取得されたOOB要件に対応するOOBパラメータを特定する。
図7は、図4のコードブック保持部434の一例を示すデータ構造図である。コードブック保持部434は、OOB要件と、ランプ長NWと、LPTの長さPの最小値Pminと、を対応付けて保持する。値の大小関係は、A1>A2>A3であり、A4>A5>A6である。また、A4≧A1、A5≧A2、A6≧A3である。
図4に戻り、OOBパラメータ決定部432は、OHパラメータ保持部410に保持されている長さPと決定された最小値Pminとを比較する。OOBパラメータ決定部432は、前者が後者より小さい場合、OHパラメータ保持部410に保持される長さPを最小値Pminで置き換えることでOHパラメータ保持部410を更新する。このような更新が実行された場合、OHシンボル演算部506におけるOHシンボルの演算において、P(=Pmin)を通じてOOB要件が考慮されることとなる。
qCP付加部422は、IDFT部416によって生成されたMCシンボルを取得する。qCP付加部422は、OHパラメータ保持部410を参照しLPTの長さPを取得する。qCP付加部422は、OOBパラメータ決定部432によって決定されたウインドウのランプ長NWをqCPの長さNCP(単位:時間サンプルの数)として取得する。qCP付加部422は、取得されたLPTの長さPに基づいて、MCシンボルのなかのLPTを特定し、特定されたLPTに対応する信号部分であるqCPを生成する。qCPは例えば特定されたLPT全体の複製である(P=NCP=NWの場合)。あるいはまた、qCPは特定されたLPTの一部の複製であってもよい(P>NCP=NWの場合)。qCP付加部422は、生成されたqCPをMCシンボルの先端部に付加する。あるいはまた、qCP付加部422は、LPTの長さPを使用することなく、MCシンボルの後端から長さNCP分の信号を特定して複製することでqCPを生成してもよい。
ウインドウ処理部424は、qCP付加部422によってqCPが付加されたMCシンボルを取得し、取得された(MCシンボル+qCP)のLPTおよびqCPの両方を減衰させる。ウインドウ処理部424は、OOBパラメータ決定部432によって決定されたウインドウのランプ長NWを取得する。ウインドウ処理部424は、取得されたランプ長NWのランプを有するウインドウを、取得された(MCシンボル+qCP)に適用する。このウインドウ処理では、qCPの少なくとも一部に一方のランプが適用され、LPTの少なくとも一部に他方のランプが適用される。ランプ長NWが変わるとウインドウ処理におけるランプの適用対象も変わる。
連結部426は、ウインドウ処理された(MCシンボル+qCP)と、次にウインドウ処理された(MCシンボル+qCP)と、を連結し、時間領域で連続する2つのMCシンボルを生成する。連結部426は、ウインドウ処理部424から先に取得された(MCシンボル+qCP)をレジスタ等のバッファ(不図示)に格納する。連結部426は、ウインドウ処理部424から次の(MCシンボル+qCP)を取得すると、先に取得された(MCシンボル+qCP)のLPTと次の(MCシンボル+qCP)のqCPとを重ね合わせる。例えば、連結部426は先のLPTと次のqCPとを加算する。
P/S変換部428は、連結部426により生成された連続するMCシンボルをパラレル−シリアル変換し、シリアル化された信号を第2端子420に出力する。第2端子420は送受信部304と接続されている。
図8は、ベースバンド信号処理部302におけるMCシンボルの変化の様子を示す説明図である。図8における1〜4は図4における1〜4にそれぞれ対応する。図8に示す例ではP>NCP=NWとする。符号800で示される時間軸に沿った波形は、IDFT部416から出力されるn番目のMCシンボルの波形である。n番目のMCシンボルはLPTを有する。符号802で示される時間軸に沿った波形は、qCP付加部422から出力されるn番目のMCシンボルの波形である。qCP付加部422は、符号800の波形に含まれるLPTからqCPを生成し、生成したqCPを符号800の波形の先頭に付加する。符号804は、ウインドウ処理部424におけるウインドウ処理の特性を模式的に示す。この特性は、付加されたqCPに対応する長さNWの第1ランプ部分806と、LPTの一部に対応する長さNWの第2ランプ部分808と、を含む。本実施の形態では、図8に示されるように、LPTとqCPとの間の部分810にランプが適用されないように、ランプ長NWが決定される。
符号812で示される時間軸に沿った波形は、連結部426から出力される信号の波形である。n−1番目のMCシンボルとn番目のMCシンボルとに着目すると、連結部426は、n−1番目のMCシンボルの減衰したLPT814とn番目のMCシンボルの減衰したqCP816とを重ね合わせることでn−1番目のMCシンボルとn番目のMCシンボルとを連結する。重ね合わされる部分の長さはqCP816の長さNCPである。重ね合わせの結果、n−1番目のMCシンボルのテール818(破線で示される)の強度は十分に低いが、n番目のMCシンボルの先端部と連続的に接続される。すなわち、高周波成分が抑えられている。
符号812で示される波形を有する信号は、P/S変換、変調、増幅等を経てアンテナ308から基地局装置101へ送信される。基地局装置101は受信した信号を復調し、DFT部836に入力する。このとき、受信したMCシンボルの後端から長さNCP分のサンプルは、DFT部836の入力においてゼロまたは受信のないことを示す無信号に置き換えられる。これは、(1)当該部分はLPTに含まれており、ゼロまたは無信号に置き換えてもその後の処理に与える影響は小さいこと、(2)当該部分はウインドウのランプにより減衰され、さらに次のMCシンボルのqCPと重ね合わせられており、ほぼ意味のないデータとなっていること、による。したがって、ゼロまたは無信号に置き換えても影響は小さく、むしろ置き換えた方が復号結果が良好になる。
図9は、図1の基地局装置101の受信に係る機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
基地局装置101は、復調部830と、S/P変換部832と、置換部834と、DFT部836と、要件取得部838と、OOBパラメータ決定部840と、コードブック保持部842と、を備える。要件取得部838、OOBパラメータ決定部840、コードブック保持部842はそれぞれ、図4に示されるベースバンド信号処理部302の要件取得部430、OOBパラメータ決定部432、コードブック保持部434に対応する。基地局装置101のコードブック保持部842および端末102のコードブック保持部434は同じ情報を保持する。
復調部830は、端末102のアンテナ308から送信された無線周波数信号を取得し、復調する。S/P変換部832は、復調部830による復調の結果得られた信号をシリアル−パラレル変換し、パラレル化された信号を置換部834に出力する。S/P変換部832が出力する信号は、端末102の連結部426により生成された連続するMCシンボルに対応する。
置換部834は、S/P変換部832から出力された信号に含まれるMCシンボルのLPTのうちの少なくとも一部の強度を低減する。置換部834は、OOBパラメータ決定部840によって決定されたウインドウのランプ長NWをqCPの長さNCPとして取得する。置換部834は、MCシンボルの後端から長さNCP分のサンプルについては、値をゼロまたは無信号に置き換えてDFT部836に出力する。置換部834は、その他のサンプルについてはそのままDFT部836に出力する。DFT部836以降の処理は公知の信号処理と同様であるから説明を省略する。
以上の構成による無線通信システム100の動作を説明する。
図10は、無線通信システム100における一連の処理の流れを示すチャートである。基地局装置101は使用すべきOOB要件、P、Nh、Ntを決定する(S702)。基地局装置101は、BCCHやPDCCHなどの下りリンク制御チャネルや制御メッセージを介して、決定されたOOB要件、P、Nh、Ntを端末102に通知する(S704)。端末102において、ユーザ操作や物理量の測定等により送信すべき送信データが発生する(S706)。端末102は、送信データおよびOOB要件に基づいてOHシンボルを決定する(S708)。端末102は、送信データシンボルに決定されたOHシンボルを付加することで入力シンボル系列を合成する(S710)。端末102は、合成された入力シンボル系列を入力とする信号生成処理を行う(S712)。該信号生成処理のベースバンド処理において、端末102は、MCシンボルのLPTの一部を複製し、qCPとして該MCシンボルの先頭に付加する。端末102は、OOB要件に基づき決定されたランプ長NWのウインドウを使用して、qCPおよびLPTの両方を減衰させる。
基地局装置101は、生成された無線周波数信号を端末102から受信する(S714)。なお、端末102において遅延が測定され、測定された遅延に基づく新たなNh、Ntの値が使用された場合は、端末102はその新たなNh、Ntを上りリンク制御チャネルを介して基地局装置101に通知する(S716)。この場合、ステップS704において通知されたNh、Ntと、ステップS716において通知されたNh、Ntとは異なる。基地局装置101は、受信した無線周波数信号をベースバンド信号に変換する信号受信処理を行う(S718)。この際、基地局装置101は、MCシンボルのうち次のMCシンボルのqCPと重ね合わされた部分をゼロまたは無信号に置換する。基地局装置101は、NhおよびNtの値を使用して、受信したデータ系列から送信データを抽出する(S720)。
図10では上りリンクにおけるデータ伝送に本実施の形態に係る処理を適用する場合が説明される。下りリンクにおけるデータ伝送に本実施の形態に係る処理を適用する場合は図10と同様な処理の流れとなるので、図示による説明を省略する。
なお、マルチパスによる遅延を測定し、測定された遅延に基づきプリコーディングを実施するか否かを決定してもよい。この場合、図10においてステップS702の前に、(1)基地局装置101が上りリンクにおけるマルチパス遅延を測定し、(2)測定されたマルチパス遅延に基づき基地局装置101が上りリンクにおいてプリコーディングを行うか否かを決定する。下りリンクに関しては、まず(1)基地局装置101から端末102に下りリンクにおけるマルチパス遅延を測定する指示が送信され、(2)該指示に応答して測定されたマルチパス遅延が端末102から基地局装置101に送信され、(3)受信したマルチパス遅延の測定値に基づき基地局装置101がプリコーディングを行うか否かを決定する。ここで上りリンクにおけるNh、Ntと下りリンクにおけるNh、Ntとは異なっていてもよい。
本実施の形態に係る無線通信システム100によると、LPTを導入することによりISIおよびサブキャリア間干渉を低く抑えることができる。加えて、qCP付加、ウインドウ処理および連結処理により、ベースバンド信号のMCシンボル間の不連続性を低減できる。これにより、ベースバンド信号の高周波成分が低減されるので、帯域外輻射を抑えることができる。
また、フィルタリング処理によっても帯域外輻射を低減できるが、一般にウインドウ処理のほうがより容易な構成で実現可能である。したがって、本実施の形態によると、低干渉・低帯域外輻射でありながら比較的廉価な通信装置を提供できる。
また、本実施の形態に係る無線通信システム100では、P≧NW、NCP≧NWであるから、ウインドウ処理が有用なデータに及ぼす影響を低減または除去できる。また、NCP=NWの場合は、受信側でゼロまたは無信号に置換するサンプルの数を最小化できるので、スループットの向上に寄与する。
また、本実施の形態に係る無線通信システム100によると、入力シンボル系列に対する出力信号のテールの信号強度を抑制できるので、端末間のタイミングのずれによる端末間のISIやマルチパス遅延によるISIを低減できる。その結果、大きなセルにも小さなセルにも共通のフレーム構成を適用したより効率的な通信システムの構築が可能となる。
図11(a)、(b)は、端末間のISI低減効果を説明する説明図である。図11(a)には、基地局装置101と、それぞれが端末102と同様の構成を有する第1、第2ユーザ端末UE1、UE2と、を含む無線通信システムが示される。第1ユーザ端末UE1は開ループ型同期(Open−Loop Synchronization、OLS)を使用し、したがって基地局装置101への送信(上りリンク)に関して伝搬遅延の補償は行わない。第2ユーザ端末UE2はCLSを使用し、タイミングアドバンス等を使用して伝搬遅延の補償を行う。
図11(b)は、基地局装置101における上りリンクの信号の受信状況を示す図である。第1ユーザ端末UE1から送信された信号SUE1は伝搬遅延のため基地局装置101に遅れて届く。これは図11(b)において「UE1」で示される矩形領域が受信機窓RWからはみ出すことで表現されている。第2ユーザ端末UE2から次の受信機窓に届くよう送信された信号SUE2(「UE2」で示される矩形領域)は、伝搬遅延の補償があるので次の受信機窓に嵌まる。その結果、第1ユーザ端末UE1から送信された信号のテールと第2ユーザ端末UE2から送信された信号の先頭とが、第1ユーザ端末UE1の伝搬遅延に応じた長さの期間IUDにおいて重なり合う。しかしながら、本実施の形態では第1ユーザ端末UE1から送信された信号SUE1のテールの強度は小さいので、期間IUDにおけるISIは小さくなる。また、第1ユーザ端末UE1から送信された信号SUE1のうち強度の比較的大きい重要な部分は受信機窓RWに入り、その受信機窓RWから外れたテール部分の強度は小さいので、基地局装置101は第1ユーザ端末UE1から送信された信号SUE1をより正確に復号できる。
マルチパス遅延によるISIの場合、基地局装置101において、端末102からの信号の後端部と次の信号の先端部とがマルチパスの影響で重なり合うことによりISIが生じる。本実施の形態に係る無線通信システム100では信号のテールの強度が抑えられるので、そのようなISIが低減される。
本実施の形態に係るプリコーディングはOLSを使用する端末に適用可能である。IOT(Internet Of Things)などのマシン型通信(Machine−type Communication)では、マシン側の通信装置のコストを低減しかつ電力消費を抑えて電池を長持ちさせるため、データ送信の前の同期処理を省略するOLSが多く採用される。このような場合に本実施の形態に係るプリコーディングを適用すると、通信品質を良好に維持できる。
また、本実施の形態に係る無線通信システム100では、OHシンボルは送信データシンボルが信号変換部406の出力信号のテールに与える影響を該OHシンボルが該テールに与える影響で相殺するように決定される。したがって、例えばOHシンボルの代わりに単なる数値「0」を使用する場合と比較して、テールの強度をより低減できる。
医療、安全、緊急等の高信頼性が求められる通信アプリケーションにおいて、端末が自己のサービング基地局以外の基地局にもデータの受信を求めるような場合にも、本実施の形態に係るプリコーディングを適用できる。この場合、端末はサービング基地局とCLSにより同期しているが、他の基地局とは同期していない。このような他の基地局と端末との間の通信に、本実施の形態に係るプリコーディングを適用することで、ISIを低減してより良好な通信品質を実現できる。
以上、実施の形態に係る無線通信システムの構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解される。
実施の形態では、コードブック保持部434、842はOOB要件とランプ長NWと最小値Pminとを対応付けて保持する場合について説明したが、これに限られず、例えばコードブック保持部はさらにqCPの長さNCPを保持していもよい。これにより、NCPとNWとが等しくない場合でも、送信側のウインドウ処理部や受信側の置換部はコードブック保持部を参照することでNCPを特定できる。
実施の形態では、LPTを得るために、送信データシンボルが信号変換部406の出力信号のテールに与える影響をOHシンボルが該テールに与える影響で相殺するようにOHシンボルを決定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、LPTを得るために非特許文献1に記載されるゼロテール(Zero-tail)DFTS−OFDM技術が使用されてもよい。
実施の形態では、図10に関連して基地局装置101がOOB要件を決定し、決定されたOOB要件を端末102に通知する場合について説明したが、これに限られず、端末がOOB要件を決定し、決定されたOOB要件を基地局装置に通知してもよい。例えば、端末がOLSを採用する端末である場合、該端末は送信する最初のシンボルにOOB要件を含めて基地局装置に送信することができる。
実施の形態では、信号変換部406から出力されるMCシンボルの後端部に対する送信データシンボルの影響が該後端部に対するOHシンボルの影響と相殺される場合について説明したが、これに限られない。信号変換部406から出力されるMCシンボルの端部の信号強度が抑制されればよく、例えば先端部に対する影響が相殺されるようにOHシンボルが決定されてもよい。この場合、MCシンボルは低強度ヘッド(Low Power Head、以下、LPHと称す)を有し、LPHの少なくとも一部を模した準巡回サフィックス(quasi-Cyclic Suffix、以下、qCSと称す)が生成され、生成されたqCSがMCシンボルの後端に付加される。そしてウインドウ処理により、LPHおよびqCSの両方が減衰される。あるいはまた、MCシンボルはLPTおよびLPHの両方を有し、qCPおよびqCSの両方がMCシンボルに付加されてもよい。
実施の形態では、入力シンボルベクトルSにおいてOHシンボルを送信データシンボルの前後に配置する場合について説明したが、これに限られない。より一般的にはOHシンボルの数、位置および値は以下のように決定されてもよい。
信号変換部406の入出力特性を表すK行M列の行列Vについて、
X=V・S
が成立する。Xは出力ベクトルである。入力シンボルベクトルSの要素のインデクス(入力シンボルベクトルSにおいて要素を特定する識別子、i番目の要素の「i」のこと)の集合(1、2、…、M)をT、NOH(=Nh+Nt)個のOHシンボルのインデクスの集合をJ、それ以外すなわちM−NOH個の送信データシンボルのインデクスの集合をD、とそれぞれ表記する。J、DはそれぞれTの部分集合であり、DはTを全体集合とするときのJの補集合である。
mがTの元であるとき、入力シンボルベクトルSのm番目の要素からの出力テールベクトルX
Pへの寄与w
mを以下のように定義する。
ここでp(n)はISIエネルギの分布を表し、経験的にまたは実測値の統計処理により得られる。特にp(n)はタイミングオフセットおよびマルチパス遅延の確率分布により決定される。概略的には、p(n)が大きい場合、それは出力テールベクトルX
Pにおけるn番目の要素が統計的に大きくなる傾向にあることを示す。V(K−n+1:K、m)は、Vの第m列のなかの第(K−n+1)行目から第K行目までの要素からなるベクトルを表す。なお、同様にX
P=X(K−P+1:K)と表される。
w1、w2、…、wMを計算し、それらの中で大きいものから順にNOH個選び、選ばれたもののインデクスの集合をJとする。これにより、入力シンボルベクトルSのなかから出力テールベクトルXPへの影響が大きいNOH個のインデクス(=要素の位置)の集合をJとして選んだこととなる。
DおよびJについて以下の行列を定義する。
OHシンボルからなるベクトルS(J)と送信データシンボルからなるベクトルS(D)とについて、X
P=0を課すので、
これをS(J)について解くと、
となる。