JP6585869B1 - 将来の骨量を予測する方法、情報処理装置、及びコンピュータプログラム - Google Patents

将来の骨量を予測する方法、情報処理装置、及びコンピュータプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】閉経後女性についてBMD測定値の他は安価かつ簡便に得られる情報に基づき、将来のBMD又は将来までのBLRを予測する方法と、予測のための情報処理装置とプログラムを提供する。【課題を解決するための手段】ANNの教師データで、閉経後の第1時点でBMDを測定され5年以上経った第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、入力因子として第1時点のBMD測定値と年齢情報又は身体計測情報又は月経歴情報を入力し、出力因子として第2時点でのBMD測定値を入力し、入力因子と出力因子の関係を学習した学習済みモデルを準備し、閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について第3時点でのBMD測定値と年齢情報又は身体計測情報又は月経歴情報を学習済みモデルに適用してBMD予測値を得る予測方法である。さらに、出力因子に第1時点から第2時点のBLR計算値が含まれる場合に、BLR予測値を得る予測方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、閉経後の女性(以下「閉経後女性」という。)での将来の骨量を予測する方法、並びに、前記予測に用いられる情報処理装置およびコンピュータプログラムに関する。
骨では、破骨細胞により骨が壊されて吸収される骨吸収と、骨芽細胞により新たに骨が作られる骨形成と、で代謝回転が起こっている。閉経後女性では、骨吸収が亢進し、これに骨形成が追随しきれないために、骨量が急激に減少する場合が多い。このため、閉経後女性では、加齢に伴い骨密度(Bone Mineral Density:以下「BMD」という。)が低下して低骨量になる骨粗鬆症の病態を形成しやすく、骨に軽微な外力を加えられただけで受傷する脆弱性骨折を招きやすい。日本では、人口の高齢化に伴い、骨粗鬆症にかかる閉経後女性の患者が増え続けている。患者が椎体または大腿骨近位部を骨折すれば、QOL(quality of life)を著しく下げるだけでなく、入院治療に高額の医療費を要する。このための保険診療費の累積は、日本において医療経済に関する深刻な社会問題になっている。医師には、閉経後女性の健康を守るためだけでなく、この社会問題を解消するためにも、骨粗鬆症であると早期診断して早期予防することが求められている。
一人の患者が将来に骨折する確率を予測する方法として、特許文献1に記載された方法や、非特許文献1で公開されたFRAX(登録商標)が知られている。FRAXを用いる場合には、一人の患者について次の12の因子を入力することで、この患者が10年以内の将来に骨折する確率が算出される。非特許文献1によれば12の因子は、年齢、性別、体重、身長、骨折歴(既存骨折)の有無、両親での大腿骨頸部の骨折歴の有無、現在の喫煙の有無、糖質コルチコイドの経口投与の有無、関節リウマチの確定診断の有無、続発性骨粗鬆症と強い関連性がある疾患(例えば、I型糖尿病、甲状腺機能亢進症、等)の有無、1日に3単位以上のアルコール摂取の有無、及び大腿骨頸部のBMD測定値である。
特表2003−514641号公報
「FRAX 骨折リスク評価ツール」、[online]、[平成30年4月21日検索]、インターネット、<URL: https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?lang=jp> 「特集 骨粗鬆症治療の新たな展開 監修 宗圓 聰 氏」、[online]、2016年4月25日、株式会社ライフ・サイエンス、[平成30年5月7日検索]、インターネット<URL: http://www.lifesci.co.jp/special/%E7%89%B9%E9%9B%86%E3%80%80%E9%AA%A8%E7%B2%97%E9%AC%86%E7%97%87%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E5%B1%95%E9%96%8B%E3%80%80%E7%9B%A3%E4%BF%AE-%E5%AE%97%E5%9C%93%E3%80%80%E8%81%B0/> 笠松隆洋、他4名、「和歌山県下一漁村住民の骨密度調査(第1報)地域代表性のある集団での性・年齢別骨密度値」、日本衛生学雑誌、1996年、第50巻、第6号、p.1084-1092 吉村典子、他3名、「和歌山県下一漁村住民の骨密度調査(第2報)骨密度に影響を与える要因の分析」、日本衛生学雑誌、1996年、第51巻、第3号、p.677-684 N. Yoshimura、他5名、「Determinants of Bone Loss in a Rural Japanese Community: The Taiji Study」、Osteoporosis International、1998年11月、第8巻、第6号、p.604-610 Paul Deurenberg、他2名、「Body mass index as a measure of body fatness: age- and sex-specific prediction formulas」、British Journal of Nutrition、1991年、第65巻、第2号、p.105-114 William D. Leslie、他3名、「Why Does Rate of Bone Density Loss Not Predict Risk?」、The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism、2015年1月、第100巻、第2号、p.679-683
しかし、例えば、医師が診察で患者に「あなたが10年以内に骨折する確率は15%です。」と伝えても、この言葉は患者にとって分かりにくく実感がわきにくいものであった。このため、医師がこの言葉に続けて骨粗鬆症を早期予防しようと第二選択薬(例えば、ビスホスホネート製剤)を処方する提案をしても、患者の同意や協力を得られにくかった。その結果、長期にわたり第一選択薬(例えば、活性型ビタミンD製剤、又はカルシウム製剤など)を処方し続けることになり、結局のところ骨粗鬆症を早期予防できない場合が多かった。日本での骨粗鬆症治療率は、30%程度といわれている(非特許文献2を参照)。治療率が低い理由として、骨粗鬆症患者の大半は骨折しても痛みを感じにくいから継続的な服薬を安易に止めてしまうため、治療薬の効果が現れにくいものと考えられる。
一方、BMDは、脆弱性骨折をする要因の70%を占めるといわれ、患者にとって脆弱性骨折をする危険性の高さを表わす指標として分かりやすく実感を得やすい。医師が診察して、BMDが低値である旨を患者に伝えた場合には、第二選択薬を処方する提案が患者に受け入れられやすく、骨粗鬆症の治療に積極的に協力してもらえる場合が多かった。このような経験に基づいて、本願に係る発明者(以下「本発明者」という。)は次のように想起した。閉経後女性が骨粗鬆症に関して初めて診察を受けるときに、診察前にこの女性のBMDを測定して得られるBMD測定値に基づいて、医師が診察時にこの女性での将来のBMD予測値を伝えることができるのが、望ましいと考えられる。BMD予測値の精度が高ければ、受診者に、自身が将来にどの程度に骨粗鬆症にかかりやすい体質であるかを、従来よりも明確に知ってもらうことができる。ひいては、受診者自身に将来に脆弱性骨折をする危険性の高さや骨粗鬆症を早期予防する必要性を強く自覚してもらいやすいため、従来よりも受診者に早期予防するための処方に積極的に協力してもらいやすいと考えられる。同様に骨粗鬆症患者の将来のBMD予測値を高い精度で算出して診察時に伝えることができれば、この患者に将来のBMDが更に低値になる危険性をよく分かってもらい、骨粗鬆症を早期治療するための処方に積極的に協力してもらいやすいと考えられる。
他方、閉経後女性では、体質によって骨量が減少する程度や時期に個人差が大きい。例えば、迅速骨減少者(fast bone looser)といわれる体質の女性では、閉経から数年以内での骨量減少率(Bone Loss Rate:以下「BLR」という。)が年間3%以上に達する。対して、緩徐骨減少者(slow bone looser)といわれる体質の女性では、閉経から数年以内のBLRは年間1%未満に留まる。骨量が減少する前の時点ではどのような体質か分からないため、従来、閉経後女性での将来のBMDを高精度に予測するのは非常に困難であった。閉経後女性での将来までのBLRを予測することに至っては、ほとんど不可能と当業者に考えられてきた。本発明者が知り得る限り、従来、10年後程度の将来でのBMD減少量やBLRを予測することを論じた報告は見当たらず、このような予測は行われていなかった。あるいは、骨代謝マーカー(骨吸収マーカー、骨形成マーカー)を数多く測定して解析すれば、骨量が減少する前の時点でも将来のBMDやBLRを予測し得るとも考えられるが、このための検査費用の一部は保険診療費に累積される問題や、測定項目が増えるほど自己負担分の費用が高額になるから患者に積極的に協力してもらえない問題があった。
上記した諸問題に鑑み、本発明の課題は、医師が骨粗鬆症の早期予防または早期治療を図る診断や処方をするのを支援する観点から、BMDを測定する他はなるべく安価かつ簡便に済む方法で得られる情報に基づいて、閉経後女性での将来のBMDを高精度で予測可能であるか又は将来までのBLRを予測可能である方法、並びに、前記予測に用いられる情報処理装置およびコンピュータプログラムを提供することにある。
本発明者は、上記した課題を解決しようと鋭意検討する過程で、和歌山県太一町で行われている骨粗鬆症に関する疫学的研究(非特許文献3から非特許文献5を参照)に着目した。この疫学的研究では、地域住民についてBMD測定値や数多くの検査結果が研究データとして蓄積されてきた。本発明者は、この研究データから、閉経後女性について多数のデータを抽出して、BMD測定値のデータからBLRを算出した上で、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network:以下「ANN」という。)を用いて統計的解析を行った。ANNを用いる統計的解析では、どのデータをどの様にANNに学習させた場合に目的とする予測結果を高精度で得ることができるか、症例ごとに全く異なるため事前に予想するのが難しい。本発明者は試行錯誤を繰り返した結果、BMDを測定することを除けば、意外にも、身体計測や問診で得られるデータに基づいて、将来のBMDを比較的に高精度で予測可能であることや、将来までのBLRを予測可能であることを見出した。
すなわち、前述した課題を解決するために、本発明に係る予測方法は、閉経後女性における将来の骨量を予測する方法であって、入力層および1層以上の中間層および出力層を有する人工ニューラルネットワーク(ANN)での教師データとして、既に閉経後の第1時点で骨密度(BMD)を測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルを準備するか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBMD予測式を準備するステップと、閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を、前記学習済みモデルか又は前記BMD予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を得るステップと、を含む予測方法である。
または、本発明に係る予測方法は、閉経後女性における将来の骨量を予測する方法であって、入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNでの教師データとして、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、当該第1時点から前記第2時点までの骨量減少率(BLR)計算値情報および当該第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルを準備するか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBLR予測式を準備するステップと、閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を、前記学習済みモデルか又は前記BLR予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来までのBLR予測値を得るステップと、を含む予測方法である。
本発明に係る予測方法において、前記身体計測情報は、身長、体重、体格指数、体脂肪量、除脂肪体重、及び体脂肪率からなる群より選ばれた1種以上に関する情報であり、前記月経歴情報は、初経年齢、閉経年齢、及び閉経後経過年数からなる群より選ばれた1種以上に関する情報であり得る。
本発明に係る情報処理装置は、閉経後女性における将来の骨量を予測するために用いられる情報処理装置であって、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子、並びに、前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が記憶されたデータベースと、入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNに対する教師データとして、前記入力層に前記入力因子が入力されて前記出力層に前記出力因子が入力されて当該入力因子と当該出力因子との関係を学習させた学習済みモデルが記憶されるか、又は前記学習済みモデルにより出力される前記関係を規定するBMD予測式が記憶される記憶部と、閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BMD予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を出力する処理部と、を備える情報処理装置である。
または、本発明に係る情報処理装置は、閉経後女性における将来の骨量を予測するために用いられる情報処理装置であって、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子、並びに、当該第1時点から前記第2時点までのBLR計算値情報および当該第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が記憶されたデータベースと、入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNに対する教師データとして、前記入力層に前記入力因子が入力されて前記出力層に前記出力因子が入力されて当該入力因子と当該出力因子との関係を学習させた学習済みモデルが記憶されるか、又は前記学習済みモデルにより出力される前記関係を規定するBLR予測式が記憶される記憶部と、閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BLR予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBLR予測値を出力する処理部と、を備える情報処理装置である。
本発明に係るコンピュータプログラムは、閉経後女性における将来の骨量を予測するために用いられるコンピュータプログラムであって、入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNでの教師データとして、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルを含んで成るか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBMD予測式を含んで成り、閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、入力された当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BMD予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を出力するステップを情報処理装置に実行させるコンピュータプログラムである。
または、本発明に係るコンピュータプログラムは、閉経後女性における将来の骨量を予測するために用いられるコンピュータプログラムであって、入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNでの教師データとして、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、当該第1時点から前記第2時点までのBLR計算値情報および当該第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルを含んで成るか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBLR予測式を含んで成り、閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、入力された当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BLR予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来までのBLR予測値を出力するステップを情報処理装置に実行させるコンピュータプログラムである。
本発明に係る予測方法によれば、予測対象者(閉経後の第3時点でBMDを測定された女性)での将来のBMD予測値を得る場合には、複数人の被験者(既に閉経後の第1時点で骨密度(BMD)を測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性)について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の第1時点での情報と第1時点でのBMD測定値情報とを含む入力因子と、第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子と、を教師データとしてANNに学習させた学習済みモデルか又はこの学習済みモデルにより出力されたBMD予測式を用いることにより、予測対象者について第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を比較的に高精度で得やすくなっている。また、本発明に係る方法によれば、身体計測で得られる情報(例えば、身長、体重、等)や、問診で得られる年齢情報や月経歴情報(例えば、初経年齢、閉経年齢、等)を用いて予測をするため、予測に用いる情報はBMD測定値情報を除けば安価かつ簡便に取得可能な情報だけで済ませやすい。
本発明に係る予測方法によれば、予測対象者での将来までのBLR予測値を得る場合には、複数人の被験者について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の第1時点での情報と第1時点でのBMD測定値情報とを含む入力因子と、第1時点から第2時点までのBLR計算値情報および第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子と、を教師データとしてANNに学習させた学習済みモデルか又はこの学習済みモデルにより出力されたBLR予測式を用いることにより、予測対象者について第3時点から5年以上経過した将来までのBLR予測値を得ることが可能である。
本発明に係る情報処理装置によれば、本発明に係る予測方法と同様の理由により、BMD測定値情報を除けば安価かつ簡便に取得可能な情報に基づいて、予測対象者について将来のBMD予測値を比較的に高精度で得やすくなっているか、又は予測対象者について将来までのBLR予測値を得やすくなっている。このことは、本発明に係るコンピュータプログラムについても同様である。
本発明に係る予測方法の実施態様の一例を表すフローチャート。 本発明に係る予測方法でANNに学習させる際の処理を表すフローチャート。 本発明に係る予測方法で使用されるANNの構造の一例を表す模式図。 本発明に係る情報処理装置の実施形態の一例でのハードウェア構成図。 実施例1aと実施例1cで学習させるANNの構造を説明する模式図。 実施例1bと実施例1dで学習させるANNの構造を説明する模式図。 BMD測定値と、このBMD測定値に基づいて実施例で得られたBMD予測値との関連性を示すグラフ。(a)は実施例1aにおいて、第2腰椎から第4腰椎のBMD(LBMD)について前記関連性を示し、(b)は実施例1bにおいて、大腿骨近位部のBMD(FBMD)について前記関連性を示す。(a)と(b)で、縦軸は2003年でのBMD測定値(%YAM)を、横軸はBMD予測値(%YAM)を示す。 BLR計算値と、このBLR計算値に基づいて実施例で得られたBLR予測値との関連性を示すグラフ。(a)は実施例1cにおいて、第2腰椎から第4腰椎のBLR(LBLR)について前記関連性を示し、(b)は実施例1dにおいて、大腿骨近位部のBLR(FBLR)について前記関連性を示す。(a)と(b)で、縦軸は1993年から2003年までのBLR計算値(%YAM/年)を、横軸はBLR予測値(%YAM/年)を示す。 検証実験3において、第4時点でのLBMD測定値(第4LBMD測定値)と第3時点でのLBMD測定値(第3LBMD測定値)との差(ΔLBMD)と、LBMD予測値と第4LBMD測定値の差(LBMD実測予測差)との関連性を示すグラフ。縦軸はΔLBMD(%YAM)を、横軸はLBMD実測予測差(%YAM)を示す。 検証実験3において、LBMD予測値と第3LBMD測定値との関連性を示すグラフ。縦軸はLBMD予測値(%YAM)を、横軸は第3LBMD測定値(%YAM)を示す。 検証実験4において、BP投与期間、LBMD実測予測差、及びLBLR予測値の3因子に基づいて得られたΔLBMD予測値と、ΔLBMDとの関連性を示すグラフ。縦軸はΔLBMD(%YAM)を、横軸はΔLBMD予測値を示す。
<予測方法>
本発明に係る予測方法は、閉経後女性での将来の骨量を予測する方法である。本発明に係る予測方法の第1実施態様(以下「本予測法1」という。)は、閉経後女性のBMD測定値に基づいて、この女性で将来のBMDを予測する方法である。本予測法1は、図1に示すように、第1情報取得ステップS11、第2情報取得ステップS12、学習前処理ステップS13、学習ステップS14、選別ステップS15、第3情報取得ステップS21、予測前処理ステップS22、及び予測ステップS23を含む。
一旦、学習ステップS14を一部説明する。学習ステップS14では、ANNに将来の骨量を予測させるために、BMD測定値などを含む教師データをANNに学習させる。このために学習ステップS14は、図2に示すように、入力ステップS141、変換ステップS142、誤差計算ステップS143、及び誤差修正ステップS144を含む。
ANNは、ヒトの脳での神経学的処理を模した計算技術に基づく情報処理システムであり、独立変数(説明変数)と従属変数(目的変数)が存在するシステムのモデル化に用いられている。本予測法1で用いるANNは、例えば、パーセプトロンが層状につなぎ合わされた多層パーセプトロンであり、図3に例示するように入力層2、一層の中間層5、及び出力層8を有する三層型ANN1である。これら層(2、5、及び8)各々に人工ニューロン(artificial neuron:以下「AN」という。)が幾つか設けられている。ANは「ノード」ともいわれる。入力層2のAN(3aから3d)各々は、ネットワーク4を介して中間層5のAN(6aから6c)に接続されている。中間層5のAN(6aから6d)各々は、ネットワーク7を介して出力層8のAN(9a及び9b)に接続されている。
図2に示す入力ステップS141では、例えば図3に示す入力層2のAN(3aから3d)ごとに一項目の独立変数(説明変数)を入力し、出力層8のAN(9a及び9b)ごとに一項目の従属変数(目的変数)を入力する。図2に示す変換ステップS142では、例えば図3に示す入力層2のAN(3aから3d)各々に入力された独立変数が、中間層5へ向けて出力される。ネットワーク(4及び7)各々は、重みWijを有する。中間層5のAN(6aから6c)と出力層8のAN(9a及び9b)各々で、次の数式1で例示するように、前層からの入力値Sと重みWijの積和計算と、シグモイド関数を用いた変数変換がされ、出力層8で計算式が出力される。図2に示す誤差計算ステップS143では、例えば図3に示す出力層8で出力された計算式により算出される数値と、正解(事前に出力層8に入力された従属変数)との間の誤差Eが計算される。図2に示す誤差修正ステップS144では、誤差Eがゼロになるよう、しきい値hと重みWijが修正される。
Figure 0006585869
:ANが発火する確率
ij :前層のANと次層のAN間の重み(シナプス結合計数)
:前層のANからの入力値
:しきい値
T :シグモイド関数の傾き
図2に示す入力ステップS141から誤差修正ステップS144を経て学習させたANN(以下「学習済みモデル」という。)では、独立変数(説明変数)と従属変数(目的変数)の間に存在する関係が見つけ出されており、この関係を規定する計算式(以下「予測式」という。)を出力させることができる。このため、図2に示す入力ステップS141から誤差修正ステップS144までの組み合わせは、教師データをANNに学習させる学習ステップS14として機能させることができる。以下、ANNまたは学習済みモデルに入力されるデータにおいて、独立変数(説明変数)として用いられるデータを「入力因子」といい、従属変数(目的変数)として用いられるデータを「出力因子」という。
図1に示す第1情報取得ステップS11では、複数人の閉経後女性を被験者群とする。月経が来ない状態が数月(例えば12月以上)続いた場合に、振り返って最後の月経が来た時点を閉経時とする。後に入力因子として用いるために、被験者ごとに閉経後の任意の時点にBMDを測定して、BMD測定値情報を取得する。BMD測定値情報は、BMD測定値の数値データ又はこの数値を間接的に示す情報である。本予測法1において「数値を間接的に示す情報」とは、加工すれば目的とする数値を取得可能な情報である。BND測定値の数値を間接的に示す情報として、この数値を再現できる程度に加工して得られる情報、例えば、後述するように正規化されたデータが挙げられる。BMD測定値に表れたデータ傾向が損なわれるのを避ける観点から、BMD測定値情報は、好ましくはBMD測定値の数値データである。以下、第1情報取得ステップS11で被験者ごとにBMDを測定した任意の時点を「第1時点」といい、第1時点で取得したBMD測定値を「第1BMD測定値」ともいう。
BMD測定方法として、超音波骨密度測定法(QUS)、定量的CT測定法(QCT)、MD(Microdensitometry)法などが例示される。BMD測定方法は、このための標準方法と重視されている観点と、測定時間が短く誤差や放射線の被爆量が比較的に少ない観点から、二重エネルギーX線吸収測定法(dual-energy X-ray absorptiometry:以下「DXA」という。)が好ましい。DXAでは、骨に2種類のX線を当てて、この骨を他の組織と区別しつつ、単位面積(cm)あたりの骨量(g)、つまりBMD(g/cm)を測定する。第1BMD測定値の単位は、g/cm又はg/cmでも良いが、後に医師が将来の骨粗鬆症を早期予防する必要性を患者に説明しやすい観点から、好ましくは若年成人比較%(percent of Young Adult Mean:以下「%YAM」という。)である。%YAMは、若年齢のBMD平均値(基準値)を100%として比較したBMD測定値の大きさを示す単位であり、骨粗鬆症診断基準で用いられている。この診断基準によれば、BMD測定値が70%YAM以下であると骨粗鬆症であると診断される。
BMD測定方法の精度の問題により、第1BMD測定値に幾らか測定誤差が含まれる場合が多い。このことを考慮すると、十分な教師データ数を確保してANNに適切に学習させる観点と、予測精度を更に高める観点から、被験者の人数は、好ましくは50人以上、さらに好ましくは100人以上、100人を超えて多くなる程さらにより好ましい。また、40代以下の女性は閉経前でありBMDが高骨量に維持される場合が多いのに対して、50代や60代の女性では閉経によりそのBMDが急激に減少する場合が多い。骨粗鬆症の早期予防と早期治療を図るのを支援するためにANNにデータを学習させる対象として好適である観点から、第1時点での被験者は、好ましくは50歳以上の閉経後女性である。同様の観点から、第1時点での被験者は、好ましくは70歳未満の閉経後女性である。
第1情報取得ステップS11では、骨粗鬆症により将来に脆弱性骨折をする可能性がある特定部位でのBMD測定値情報を取得するのが好ましい。このような特定部位として、上腕骨、肋骨、骨盤、腓骨、脛骨、又は中足骨などが例示される。医師が脆弱性骨折の早期予防を図る診断をするのを支援する観点から、ここでの特定部位は、脊椎椎体、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の脆弱性骨折をしやすい部位であるのが好ましい。同様の観点に加え、骨折するとQOLが著しく下がる部位について骨粗鬆症や脆弱性骨折を医師が早期予防または早期治療する診断を支援する観点から、ここでの特定部位は、頸椎、胸椎、腰椎、及び大腿骨近位部からなる群より選ばれた1箇所または2箇所以上の部位であるのがさらにより好ましい。
第1BMD測定値情報の他にも後に入力因子として用いるために、第1情報取得ステップS11では、被験者ごとに第1時点での、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の情報も取得する。年齢情報は、年齢の数値データ又はこの数値を間接的に示す情報であり、例えば被験者に問診すれば取得できる。年齢の数値を間接的に示す情報として、生年月日、又は月齢などが例示される。分かりやすい観点から、年齢情報は、好ましくは年齢の数値データである。身体計測情報は、身体計測により取得可能な数値データ又はこの数値を間接的に示す情報である。月経歴情報は、月経に関する数値データ又はこの数値を間接的に示す情報であり、例えば被験者に問診すれば取得できる。年齢情報、身体計測情報、又は月経歴情報を間接的に示す情報として、いずれかの情報の数値データを再現できる程度に加工して得られる情報、例えば、後述するように正規化されたデータが挙げられる。入力因子として用いるデータの項目数が多いほど本予測法1での予測精度が更に高まる観点から、第1情報取得ステップS11では、第1BMD測定値情報の他にも、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた、好ましくは2種以上の情報、さらに好ましくは3種の情報を取得する。
身体計測情報として、例えば、身長、体重、体格指数(Body mass index:以下「BMI」という。)、体脂肪量、除脂肪体重、及び体脂肪率からなる群より選ばれた1種以上の数値データ又はこの数値を間接的に示す情報が挙げられる。身体計測情報は、本発明の目的に反しない限り、この群の他にも身体計測により取得可能な情報を1項目以上含んで良く、例えば、ポンデラル指数、ベルベック指数、ピネー指数、又はボルハルト指数などを含んでも良い。簡便に効率良く取得する観点から、被験者ごとにBMD測定の直前または直後に身体計測をするのが好ましい。本予測法1とは別に被験者が第1時点の直近の時期に身体計測を受ける場合には、その身体計測情報を問診などにより取得可能であれば、第1情報取得ステップS11で身体検査を行うのは省略しても良い。
身体計測情報のデータ項目数が多いほど予測精度が更に高まる観点から、身体計測情報は、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、及び体脂肪率からなる群より選ばれた数値データ又はこの数値を間接的に示す情報を、好ましくは2種以上、さらに好ましくは3種以上、さらにより好ましくは4種以上含む。この群の情報2種以上を取得した場合には、実際には計測していない項目の情報を後に算出可能である。例えば、身長と体重の数値データを取得すれば、BMIを算出可能である。あるいは、体重と体脂肪率の数値データを取得すれば、体脂肪量や除脂肪体重を算出可能である。体脂肪率は、例えば、水中体重秤量法、空気置換法、皮下脂肪厚法(キャリバー法)、生体インピーダンス法、又はDXAにより計測可能である。測定誤差を小さく抑える観点や、計測機器の数が少なくて済む観点から、DXAによりBMDを測定するだけでなく、体脂肪率も測定するのが好ましい。あるいは、体脂肪率の測定機器を準備する手間やその費用を削減する観点から、次の数式2により体脂肪率を算出するのが好ましい(非特許文献6を参照)。
Figure 0006585869
月経歴情報として、例えば、初経年齢、閉経年齢、及び閉経後経過年数からなる群より選ばれた1種以上の数値データ又はこの数値を間接的に示す情報が挙げられる。閉経後経過年数は、閉経から第1時点までの経過年数である。予測精度を更に高める観点から、月経歴情報は、この群から選ばれた数値データ又はこの数値を間接的に示す情報を、好ましくは2種以上、さらに好ましくは3種を含む。同様の観点から、月経歴情報は、本発明の目的に反しない限り、この群の他にも月経に関する数値データ又はこの数値を間接的に示す情報を含んでも良く、例えば、初経から閉経までの経過年数(月経継続年数)の情報が挙げられる。月経歴情報は、月齢、日齢、又は年月日で表わされても良いが、分かりやすい観点から、年齢または年数の数値データであるのが好ましい。なお、閉経年齢と閉経後経過年数の和は、第1時点での年齢に等しい。このため、閉経年齢と閉経後経過年数の組み合わせは、第1時点での年齢の数値を間接的に示す情報である。また、閉経の初期には年間のBMD減少量が多いが、この初期を過ぎると年間のBMD減少量は小さくなることが知られている。これらの理由により、本予測法1において閉経年齢と閉経後経過年数の組み合わせは、年齢情報と月経歴情報の組み合わせとして好ましく扱う。同様の観点から、年齢情報と月経歴情報の組み合わせとして、初経年齢と、月経継続年数と、閉経後経過年数の組み合わせも挙げられる。
本予測法1での予測精度を更に高める観点から、本発明の目的に反しない限り、第1情報取得ステップS11では、後に入力因子として用いるために「BMD測定値情報、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報」以外にも加齢に伴う骨量減少との関連性を有する情報を、被験者ごとに問診して取得しても良い。例えば、本予測法1とは別に被験者が第1情報取得ステップS11に近い時期に骨代謝マーカー測定の検査を受ける場合には、この検査結果の情報を問診により取得しても良い。骨代謝マーカーは、骨形成マーカーと骨吸収マーカーに大別される。骨形成マーカーとして、骨型アルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、I型プロコラーゲンC−プロペプチド、及びI型プロコラーゲンN−プロペプチドからなる群より選ばれた1種以上のマーカーが例示される。骨吸収マーカーとして、遊離型デオキシピリジノリン、I型コラーゲン架橋N−テロペプチド、I型コラーゲンC−テロペプチド、及びI型コラーゲン架橋C−テロペプチドからなる群より選ばれた1種以上のマーカーが例示される。あるいは、加齢に伴う骨量減少との関連性を有する情報として、例えば、日常生活での運動量、日常生活でのカルシウム摂取量、BMDを測定された特定部位での骨折歴の有無、第1時点での喫煙の有無、糖質コルチコイドの経口投与の有無、関節リウマチの確定診断の有無、続発性骨粗鬆症と強い関連性がある疾患の有無、等に関する情報が挙げられる。
なるべく簡便かつ容易に取得可能な情報に基づいて将来の骨量を予測する観点から、本予測法1で後に入力因子として用いるために第1情報取得ステップS11で第1BMD測定値情報の他に取得する情報は、年齢、身長、体重、BMI、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、体脂肪率、除脂肪体重、及び体脂肪量からなる群より選ばれた1種以上の情報から実質的になるのが好ましく、この群より選ばれた1種または2種の情報から実質的になるのがさらに好ましい。あるいは、同様の観点に加えてなるべく高精度の予測値を得る観点から、第1情報取得ステップS11で第1BMD測定値情報の他に取得する情報は、この群から選ばれた5種以上かつ11種以下から実質的になるのがさらに好ましく、この群から選ばれた8種以上かつ11種以下からなるのがさらにより好ましい。
第2情報取得ステップS12では、前述した第1情報取得ステップS11と同じ複数人の閉経後女性を被験者群とする。その上で、後に出力因子として用いるために、被験者ごとに第1時点から5年以上経過した時点(以下「第2時点」という。)でBMDを測定して、第2時点でのBMD測定値情報(以下「第2BMD測定値情報」ともいう。)を取得する。第2BMD測定値情報の他にも骨量減少との関連性を有する情報があれば、後に出力因子として用いるために、身体計測や問診により更にその情報を取得しても良い。なお、第1時点から第2時点までの期間の長さが5年未満である場合には、第1時点と第2時点でのBMD測定値の差が十分に大きくない場合が多く、BMD測定値の減少傾向が教師データに反映されにくいから、後でANNを適切に学習させることができないため、将来の骨量を予測するのが困難である(非特許文献7を参照)。予測精度を更に高める観点により、第1時点から第2時点までの期間の長さは、8年以上であるのが好ましく、10年以上であるのがさらに好ましい。被験者が老衰または死去して第2時点での情報を取得できない事態を避ける観点により、第1時点から第2時点までの期間の長さは、好ましくは20年以下、さらに好ましくは15年以下である。
第1情報取得ステップS11及び第2情報取得ステップS12で、第1時点にあたる年月日や第2時点にあたる年月日が、被験者ごとに大きく異なっても良い。この場合、「第1時点から第2時点までの期間の長さ」が被験者ごとに大きく異なるために予測精度が下がるのを避ける観点から、さらに、被験者ごとにこの期間の長さの情報を取得して入力因子に含めるのが好ましい。あるいは、予測精度が下がるのを避ける観点と、入力因子に含まれるデータ項目数がいたずらに増えるのを避ける観点から、被験者ごとにBMD測定値情報を取得する年月日が大きく異なったとしても、被験者ごとに第1時点から第2時点までの期間の長さがほとんど同じになる時期に第2BMD測定値情報を取得するのが好ましい。または、被験者ごとに異なる第2時点を管理する手間を省く観点から、全ての被験者について第1時点および第2時点の年月日を統一して、BMD測定値情報などをまとめて取得するのがさらに好ましい。
学習前処理ステップS13では、先の第1情報取得ステップS11と第2情報取得ステップS12で所得した情報を記憶させたデータベースを作成する。このデータベースには、後に入力因子として用いるために、被験者ごとに第1時点での、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の情報と、第1BMD測定値情報と、を記憶させる。また、このデータベースには、後に出力因子として用いるために、被験者ごとに少なくとも第2BMD測定値情報を記憶させる。後の学習効率や予測精度を更に高める観点から、学習前処理ステップS13では、さらに、データベースに記憶させた各種情報を、ANNで処理されやすい数値に正規化して記憶させるのが好ましい。この際、例えば、被験者の生年月日などの数値でない情報については、年齢などに数値化させるのが好ましい。例えば、骨折歴ありとの情報は1に数値化し、骨折歴なしとの情報は0に数値化するのが好ましい。数値でない情報に限らず、年齢や体重のような数値情報についても、ANNで処理されやすい観点から、次の数式3により0以上かつ1以下の範囲内に正規化するのがさらに好ましい。なお、次の数式3において「最小値」は「正規化される前の値」を含むデータ項目での最小値であり、「最大値」は「正規化される前の値」を含むデータ項目での最大値である。
Figure 0006585869
同様の観点に加えて、前述した数式1のようにシグモイド形の関数が使われるANNで入力値に0又は1に近い数値が含まれると学習効率が悪くなるため、これを避ける観点により、データベースに含まれる各種情報を、0.10以上かつ0.90以下の範囲で正規化させるのがさらに好ましい。この際、数値でない情報については、例えば、骨折歴ありとの情報は0.90に数値化し、骨折歴なしとの情報は0.10に数値化するのがさらに好ましい。数値情報については、次の数式4により0.10以上かつ0.90以下の範囲で正規化させるのがさらにより好ましい。なお、次の数式4での「最小値」と「最大値」は、それぞれ数式3での「最小値」や「最大値」と同様である。
Figure 0006585869
ただし、BMD測定値の数値については、正規化により数値に表れた骨量減少の傾向が損なわれるのを避ける観点から、正規化を行わないのが好ましい。このことは、後述するBLR計算値での数値についても同様である。
図1及び図2に示す学習ステップS14では、先の学習前処理ステップS13で作成したデータベースに記憶された情報を、教師データとして入力してANNに学習させる。学習ステップS14に含まれる入力ステップS141(図2)では、入力因子として被験者ごとに少なくとも、第1BMD測定値情報と、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の情報と、を入力層に入力する。出力因子として、被験者ごとに少なくとも第2BMD測定値情報を出力層に入力する。入力後に、図2で前述した変換ステップS142から誤差修正ステップS144までの処理を情報処理装置に実施させて、本発明に係る学習済みモデルを得ることができる。この学習済みモデルには、BMD予測式を出力させることが可能である。
学習ステップS14では、予測精度を更に高める観点から、入力因子として、身体計測情報1種以上と月経歴情報1種以上の両方を入力層に入力するのが好ましい。同様の観点から、ここで入力される身体計測情報は、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、及び体脂肪率からなる群より選ばれた情報を、2種以上含むのが好ましく、3種以上含むのがさらに好ましく、4種以上含むのがさらにより好ましい。同様の観点から、ここで入力される月経歴情報は、初経年齢、閉経年齢、及び閉経後経過年数からなる群より選ばれた情報を2種以上含むのが好ましく、3種を含むのがさらに好ましい。同様の観点から、「第1BMD測定値情報、年齢情報、身体検査情報、及び月経歴情報」以外でも、加齢に伴う骨量減少との関連性を有する情報であれば、入力因子として入力層に入力されるデータ項目数が多いほど予測精度が高まり好ましい。あるいは、ANNの学習時間を短時間で済ませる観点から、入力因子として入力層に入力されるデータ項目数は25項目以下であるのが好ましく、20項目以下であるのがさらに好ましく、15項目以下であるのがさらにより好ましい。先の学習前処理ステップS13で正規化を行った場合には、正規化後の数値データを入力因子として入力層に入力するのが好ましい。また、学習ステップS14では、本発明の目的に反しない限り、第2BMD測定値情報の他に、加齢に伴う骨量減少との関連性を有する情報であれば、出力因子として出力層に入力しても良い。このような情報として、例えば、後述するBLR計算値情報が挙げられる。その一方、学習時間を短時間で済ませる観点から、出力因子として出力層に入力するデータ項目数は、なるべく少ないのが好ましい。
前述した図3では一層の中間層5を有する三層型のANN1を例示したが、入力因子または出力因子として入力されるデータ項目数が多い場合に、図1に示す学習ステップS14で中間層を二層以上有する階層型のANNに学習させても良い。中間層の数が多いほどANNでのパターン分類能力が向上するため、被験者の人数が非常に多い場合や、入力因子または出力因子として入力されるデータ項目数が非常に多い場合でも、ANNにより入力因子と出力因子の関係が見つけ出されやすくなる。その反面、中間層の数が多くなるほど過学習に陥りやすくなるため、学習済みモデルが不自然な予測をする可能性が増す。過学習は、学習済みモデルが教師データに対して学習できているが、未知データに対して適合することができない、汎化できていない状態である。過学習を避ける観点から、学習ステップS14で用いられるANNが有する中間層の数は、四層以下であるのが好ましく、一層以上かつ三層以下の範囲内で中間層の数が少ないほどさらに好ましい。学習ステップS14では、本発明の目的に反しない限り、入力層、一層以上の中間層、及び出力層を有する階層型のANN同士を2つ以上組み合わせて用いて学習させても良い。また、学習ステップS14で用いるANNでの中間層のANの数は、入力因子として入力される項目数が少なければ少なく済み、この項目数が多ければ多くするように、適宜調整すれば良い。このANNのANで用いられる動作関数は、例えば、動径基底関数またはヘビ関数であっても良いが、ANNの学習に用いられており信頼性が高い観点から、前述した数式1のようにシグモイド関数であるのが好ましい。
従来、医学的研究での統計的解析には、重回帰分析(Multiple regression analysis:以下「MRA」という。)が用いられてきた。しかし、MRAでは、線形分離可能な条件の問題しか高精度で解くことができない。一方、閉経後女性での骨量減少は、多数の要因が複雑に関連しあった結果として起こる事象である。閉経後女性での将来の骨量を予測することは、線形分離不可能な条件の問題であるため、MRAでは高精度で予測値を得ることができない。これに対して、本予測法1では、一層以上の中間層を有する階層型のANNに学習させることにより、将来の骨量を予測するという線形分離不可能な条件の問題を、MRAよりも高精度で解くことができる。この理由により、学習ステップS14で中間層を一層も有しない階層型のANN(つまり、入力層と出力層の二層から成る単純パーセプトロン)のみを用いて学習させるのは、このようなANNのみでは線形分離可能な問題しか解くことができず、将来の骨量を高精度で予測するのが難しいから、本予測法1では避けるべきである。
ANNの学習方法は、例えば、共役勾配降下法、準ニュートン法、又はレーベンバーグ・マーカート法などでも良い。図1及び図2に示す学習ステップS14でのANNの学習方法としては、初学者でも市販の統計解析用ソフトウェアを用いて行いやすい観点から、正則化させて行ったり又は誤差逆伝搬法を行ったりするのが好ましい。学習時間を短縮させる観点から、誤差伝搬法と補修学習法を併用するのがさらに好ましい。教師データに隠れている法則性を抽出しやすい観点から、誤差伝搬法と成長抑制学習法を併用するのがさらに好ましい。
学習ステップS14では、予測精度が更に高い学習済みモデルを得るために、図2に示す入力ステップS141から誤差修正ステップS144までを繰り返し行って、見つけ出された入力因子と出力因子の関係が各々異なる複数種類の学習済みモデルを得るのが好ましい。例えば、入力ステップS141から誤差修正ステップS144までを50回以上行って、複数種類の学習済みモデルを得るのが好ましい。
図1に示す選別ステップS15は、先の学習ステップS14で複数種類の学習済みモデルを得た場合に、本予測法1による予測精度を更に高めるために、学習済みモデルごとに予測精度の高さを検証して、比較的に予測精度が高い1つの学習済みモデルを選定する。このためには、例えば、市販の統計解析ソフトウェアを用いて、学習済みモデルごとに単純交差検証法またはK分割交差検証法(例えば5分割交差検証法)を行って、学習済みモデルごとに決定係数Rを算出して、最もR値が大きい学習済みモデルを1つ選定するのが好ましい。このR値は、独立変数(説明変数)が従属変数(目的変数)をどのぐらい説明することができるか表す尺度の値であり、0に近い値であるほど説明できないことを意味し、1に近い値であるほど説明できることを意味する。
選別ステップS15では、なるべく構造が複雑でなく出力誤差が小さい学習済みモデルを選出する観点から、学習済みモデルごとに、赤池情報量基準(Akaike's information criterion、以下「AIC」という。)、及びシュワルツのベイジアン情報量基準(Schwartz's Bayesian information criterion、以下「BIC」という。)を検証して、AIC又はBICで比較的に高い値を示した学習済みモデルを選定から除外するのが好ましい。このためには、市販の統計ソフトウェアを用いてAICやBICを検証すれば良い。AICやBICは、統計モデルの良さを評価するための指標であり、AICとBICの両方で小さい値を示すほどに学習済みモデルが統計モデルとして好ましいと考えられる。
本予測法1では、先の学習ステップS14でデータベースを用いることなく教師データを入力層や出力層に入力する場合に、学習前処理ステップS13を省略可能である。また本予測法1では、学習ステップS14で学習済みモデルを1つしか得ていない場合に、選定の必要がないため選別ステップS15を省略可能である。これらを考慮すると、本予測法1での第1情報取得ステップS11、第2情報取得ステップS12、学習前処理ステップS13、学習ステップS14、及び選別ステップS15の組み合わせは、入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNでの教師データとして、複数人の被験者(既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性)について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の第1時点での情報と第1BMD測定値情報を含む入力因子が入力層に入力され、並びに、第2BMD測定値情報を含む出力因子が出力層に入力されたことにより、入力因子と出力因子との関係を学習させた学習済みモデルを準備するか又は学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBMD予測式を準備するステップS10として機能させることができる。このステップS10では、学習済みモデルにBMD予測式を出力させても良い。
第3情報取得ステップS21では、閉経後女性を、将来の骨量を予測される予測対象者とする。その上で、後の予測に用いるために、予測対象者について閉経後の任意の第3時点でBMDを測定して、この第3時点でのBMD測定値情報(以下「第3BMD測定値情報」ともいう。)を取得する。ここでのBMD測定方法、及びBMDを測定する部位、及びBMD測定値情報については、先の第1情報取得ステップS11で前述したのと同様である。本予測法1では前述したステップS10と第3情報取得ステップS21を済ませた後に将来の骨量を予測するため、第3情報取得ステップS21後に直ちに予測できるようにする観点から、ステップS10以後に第3情報取得ステップS21を行うのが好ましい。
第3情報取得ステップS21では、予測に用いるために第3時点での予測対象者について第3BMD測定値情報の他に少なくとも、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の情報も取得する。年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報は、先の第1情報取得ステップS11で前述したのと同様である。ただし、第3時点で取得し得る月経歴情報のうちで閉経後経過年数は、予測対象者について閉経から第3時点までの経過年数の数値データ又はこの数値を間接的に示す情報である。医師が多数の閉経後女性に対して骨粗鬆症の早期予防または早期治療を図る診断や処方をするのを本予測法1により支援する観点から、予測対象者は、前述した被験者とは別人であるのが好ましい。予測精度を更に高める観点から、第1情報取得ステップS11で前述した被験者と同様に、予測対象者は50歳以上かつ70歳未満であるのが好ましい。予測対象者は前述した被験者と同一人でも良いが、同様の観点から、この場合の予測対象者は、第1時点および第2時点を経た後の第3時点で70歳未満であるのが好ましい。予測精度を高める観点から、予測に用いるために第3時点での予測対象者について第3BMD測定値情報の他に、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた2種または3種以上の情報を取得するのが好ましい。例えば、身体計測情報1種以上と月経歴情報1種以上を取得するのが好ましい。予測精度を更に高める観点から、予測対象者から取得する情報の項目は、先の学習ステップS14で入力因子として入力層に入力したデータ項目と同じであるのが好ましい。
予測前処理ステップS22では、予測精度を更に高める観点から、さらに、予測対象者について第3BMD測定値情報以外の各種情報を、学習済みモデルか又は学習済みモデルに出力させた予測式に適用しやすくなるように、必要に応じて正規化する。正規化については、前述した学習前処理ステップS13で説明したのと同様である。
予測ステップS23では、予測対象者について先の第3情報取得ステップS21で取得したか又は先の予測前処理ステップS22で正規化した情報を、先のステップS10で得られた学習済みモデルに適用するか、又はこの学習済みモデルに出力させたBMD予測式に適用する。ここでの適用とは、学習済みモデルに適用する場合には、学習済みモデルの入力層に設けられたANごとに予測対象者についてBMD測定値情報などのデータ項目を1項目ずつ入力して、学習済みモデルを動作させて、出力層で出力値(将来のBMD予測値)を出力させることである。あるいは、BMD予測式に適用するとは、この予測式に予測対象者についてBMD測定値情報などのデータ項目を1項目ずつ代入可能な変数が複数設けられており、そのように適切に代入して将来のBMD予測値を算出することである。
予測ステップS23では、予測対象者について少なくとも、第3BMD測定値情報と、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の第3時点での情報と、を学習済みモデルに適用するか又はこの学習済みモデルにより出力されたBMD予測式に適用することにより、予測対象者について第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を高精度で得ることができる。予測精度を更に高める観点から、ここでの第3時点から将来までの期間の長さは、前述した被験者での第1時点から第2時点までの期間の長さと同じであるのが好ましい。被験者ごとにこの期間の長さが異なっていた場合には、先の学習ステップS14で被験者ごとのこの期間の長さを入力因子として入力してANNに学習させた上で、予測ステップS23で予測対象者について予測しようとする将来が第3時点から何年後であるかという情報も、学習済みモデル又はBMD予測式に適用させるのが好ましい。
本予測法1では、先の第3情報取得ステップS21で予測対象者から得られた数値情報を正規化しなくても、MRAを用いるよりも高精度で将来の骨量を予測可能である。このため、本予測法1において、ある程度に精度の高い予測値を得られれば充分である場合には、予測前処理ステップS22を省略可能である。このことを考慮すると、第3情報取得ステップS21、予測前処理ステップS22、及び予測ステップS23の組み合わせは、予測対象者(閉経後の第3時点でBMDを測定された女性)について、年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の第3時点での情報と第3BMD測定値情報を、前述したステップS10で準備された学習済みモデルか又はBMD予測式に適用することにより、第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を得るステップS20として機能させることができる。
以上に説明した本予測法1によれば、被験者および予測対象者について用いる情報は、BMD測定値を除けば、身体計測で得られる情報(例えば、身長、体重、等)や、問診で得られる年齢情報や月経歴情報(例えば、初経年齢、閉経年齢、等)で済ませることが可能であるため、安価かつ簡便に得ることが可能な情報である。また、一般的に骨粗鬆症の検診でBMDを測定する際には、測定対象者の年齢や性別の情報が取得され、更に身体計測により測定対象者の身長や体重の情報も取得される。このため、一旦、本予測法1のステップS10を行っておけば、閉経後女性が初めて骨粗鬆症について診察を受けるときに、本予測法1のステップS20を行うことにより、BMDを測定してBMD測定値を得ることを除けば、この女性での将来の骨量を安価かつ簡便に予測可能である。したがって、本予測法1によれば、医師が骨粗鬆症の早期予防または早期治療を図る診断や処方をするのを支援することができる。後述する情報処理装置を用いて本予測法1を行うのが、効率良いため好ましい。
本発明に係る予測方法の第2実施態様(以下「本予測法2」という。)は、閉経後女性のBMD測定値に基づいて、この女性で将来までのBLRを予測する方法である。前述した本予測法1と同様に、図1に示す流れで本予測法2を実施可能である。以下、本予測法2を説明するに際し、本予測法1と共通する事項の説明を概ね省略し、異なる事項を主に説明する。
本予測法2での第1情報取得ステップS11と第2情報取得ステップS12は、本予測法1で説明したのと概ね同様である。なお、本予測法2での予測精度を高める観点から、将来までの椎体(例えば腰椎)のBLRを予測する場合での第1情報取得ステップS11で被験者ごとに取得する情報には、椎体の第1BMD測定値情報だけでなく、体重、BMI、体脂肪率、及び体脂肪量からなる群より選ばれた1種以上の第1時点での身体計測情報が含まれているのが好ましい。同様の観点から、本予測法2での第1情報取得ステップS11では被験者ごとに、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた2種以上の第1時点での情報と、第1BMD測定値情報を取得するのがさらに好ましい。同様の観点から、本予測法2での第1情報取得ステップS11で取得する情報には、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた4種以上の第1時点での情報と、第1BMD測定値情報が含まれているのが好ましい。
本予測法2の学習前処理ステップS13では、後に出力因子として用いるために、次の数式5により被験者ごとに第1時点から第2時点までの期間でのBLRを算出して、BLR計算値情報をデータベースに記憶させる。BLR計算値情報は、BLR計算値の数値データ又はこの数値を間接的に示す情報である。BLR計算値の数値を間接的に示す情報として、この数値を再現できる程度に加工して得られる情報、例えば、前述した数式3や数式4で説明した正規化が挙げられる。BLR計算値に表れたデータの傾向が損なわれるのを避ける観点から、BLR計算値情報はBLR測定値の数値データであるのが好ましい。本予測法2での学習前処理ステップS13について、その他は本予測法1と同様である。
Figure 0006585869
本予測法2の学習ステップS14は、本予測法1と概ね同様であるが、出力因子として第2BMD測定値情報だけでなく、予測精度を高めるために第1時点から第2時点までのBLR計算値情報も出力層に入力してANNに学習させる点で異なる。これにより得られる学習済みモデルでは、入力因子と、BLR計算値情報を含む出力因子と、の間に存在する関係が見つけ出されているため、この関係を規定するBLR予測式を出力させることができる。その後、本予測法2での選別ステップS15、第3情報取得ステップS21、及び予測前処理ステップS22は、本予測法1と同様である。
本予測法2での予測ステップS23では、入力因子とBLR計算値情報を含む出力因子との関係を見つけ出した学習済みモデルか又はBLR予測式に、予測対象者の各種情報を適用させて、その結果として予測対象者について第3時点から5年以上経過した将来までのBLR予測値が算出される。本予測法2での予測ステップS23について、その他の点は本予測法1と同様である。
従来、将来までのBLRを予測するのは、ほとんど不可能に近いと考えられてきた。本予測法2では、前述した本予測法1と比べて更に出力因子に第1時点から第2時点までのBLR計算値情報を含ませてANNに学習させることにより、将来までのBLR予測値を得ることを可能にしている。なお、本予測法2で得られる学習済みモデルには、BLR予測式だけでなく、BMD予測式を出力させることもできる。このため、予測対象者の各種情報を、本予測法2で得られる学習済みモデルまたはBMD予測式に適用することにより、第3時点から5年以上経過した将来のBMD予測値を得ても良い。また、以下に説明する装置を用いて本予測法2を行うのが、効率良いため好ましい。
<情報処理装置>
本発明に係る情報処理装置(以下「本装置」という。)は、閉経後女性での将来の骨量を予測するために用いられる装置である。本装置の一実施形態として図4に例示する装置30は、入力部31、処理部32、データベース33、解析プログラム記憶部34、予測式記憶部35、及び表示部36を備える。
本装置30がパーソナルコンピュータにより構成される場合、入力部31はマウス、キーボード、テンキー等の各種入力インターフェースにより実現される。この場合の処理部32は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより実現される。この場合のデータベース33は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等に記憶されて実現される。この場合の解析プログラム記憶部34と予測式記憶部35は、例えばRAM(Random Access memory)等により実現される。この場合の表示部36は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)、等の各種出力デバイスにより実現される。解析プログラム記憶部34と予測式記憶部35の組み合わせを記憶部として扱っても良い。入力部31、処理部32、データベース33、解析プログラム記憶部34、予測式記憶部35、及び表示部36を実現するデバイスは、上述した例に限らず、以下に説明する各部の機能を実行可能なデバイスを適宜利用することができる。
解析プログラム記憶部34には、図2で前述した入力ステップS141から誤差修正ステップS144を実行するANNアルゴリズムが格納されている。本予測法1の説明で前述したように、予測対象者での将来のBMD予測値を得ようとする場合のデータベース33には、入力因子として第1時点での被験者ごとの、年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の情報と、第1BMD測定値情報と、がデータベース化されて記憶されており、並びに、出力因子として被験者ごとの第2BMD測定値情報がデータベース化して記憶されている。本予測法2の説明で前述したように、予測対象者での将来までのBLR予測値を得ようとする場合でのデータベース33には、さらに、出力因子として被験者ごとの第1時点から第2時点までのBLR計算値情報もデータベース化して記憶されている。データベース33に入力因子や出力因子を記憶させる際に、作業者が入力部31により入力操作した被験者についての各種情報は、処理部32により被験者ごとに対応して記憶される。
処理部32により、解析プログラム記憶部34に展開されたANNアルゴリズムを適用したコンピュータプログラムに基づいて、データベース33に記憶された複数人の被験者での入力因子と出力因子との間に存在する関係が見つけ出される。処理部32は、解析プログラム記憶部34に展開されたコンピュータプログラムを実行して、予測式を算出すると、この予測式を予測式記憶部35に記憶する。つまり、図2で前述した学習ステップS14は、データベース33に記憶された入力因子や出力因子を読み出し(入力ステップS141)、予測式を算出し(変換ステップS142から誤差修正ステップS144)、算出した予測式を予測式記憶部35に記憶するという一連の処理により実行される。
図1で前述した予測ステップS23では、学習ステップS14で予測式を算出する上で参照した入力因子と同一項目について予測対象者の各種情報を、入力部31を操作して入力する。処理部32は、予測式記憶部35に記憶された予測式に、入力部31により入力された各種情報を代入して予測値を算出して、算出された予測値を表示部36により出力する。
以上に説明した本装置によれば、前述した本予測法1と同様の理由により、BMD測定値を除けば簡便な検査で得ることが可能な情報に基づいて、予測対象者について将来のBMD予測値を高精度で得ることができる。また、本装置によれば、前述した本予測法2と同様の理由により、従来ほとんど予測不可能と考えられていた将来までのBLR予測値を得ることができる。このため、本装置は、例えば、骨粗鬆症診療での診断支援システムとして用いることができる。
本装置は、本発明の目的に反しない限り、図4に例示する装置30の形態に限られない。本装置は、例えば、医療関係者などが使用可能な各種の端末に通信ネットワークを介して接続されて、通信ネットワークを介して予測対象者(例えば、骨粗鬆症に関して医療機関で受診した閉経後女性)の年齢情報および身体計測情報および月経歴情報からなる群より選ばれた1種以上の第3時点での情報と第3時点でのBMD測定値情報とを含む情報を受信して入力されたときに、これら入力された情報を学習済みモデルか又は予測式に適用することにより第3時点から5年以上経過した将来のBMD予測値またはBLR予測値を出力して、出力した予測値を通信ネットワークを介して顧客端末に送信するように構成された情報処理装置でも良い。この場合での本装置と前記端末と通信ネットワークの組み合わせは、多数の医療関係者が利用しやすい、骨粗鬆症診療での診断支援システムを形成している。
<コンピュータプログラム>
本発明に係るコンピュータプログラム(以下「本プログラム」という。)は、コンピュータを前述した本装置として用いるためのプログラムである。換言すれば、本プログラムは、将来の骨量を予測するために用いられるコンピュータプログラムである。本プログラムについての詳細は、前述した本予測法1、本予測法2、及び本装置で説明したとおりである。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、いずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
<実施例1a>
車輌搭載型であるBMD測定装置として、QDR−1000(Hologic社製)が和歌山県太地町に運送された。この太地町に在住する40歳以上かつ79歳以下である全住人のうちから、各年代別にランダムに男女50人ずつ、計400人が被験者として選定された。1993年6月に、骨粗鬆症について疫学的研究の目的などが被験者らに説明されて、QDR−1000を用いたDXAにより被験者らの、第2腰椎から第4腰椎のBMD(BMD at lumbar site L2-L4:以下「LBMD」という。)と、大腿骨近位部のBMD(BMD at proximal femur site:以下「FBMD」という。)が測定された。身体計測や問診により、第1時点に該当する1993年6月での被験者らの年齢情報、身体計測情報、及び月経歴情報を含む研究データが大量に取得された(非特許文献3から非特許文献5を参照)。その後、第2時点に該当する2003年6月に、同じ被験者らについて同様にLBMDとFBMDが測定された。
本発明者は、上記した研究データをANNに学習させることにより、閉経後女性での10年後の将来のBMD予測値を高精度で算出可能であるか検証しようと考えた。このために本発明者は、この研究の責任者らの許諾を受けた上で、研究データのうちから、1993年6月に50歳以上であった閉経後女性135名分のデータを抽出したデータベースを作成した。なお、2003年以前の時点では、有望な骨粗鬆症治療薬(例えば、ビスホスホネート製剤)や治療方法がまだ実用化されていなかった。このため、この135名分のデータは、治療薬や治療方法の影響を受けていない貴重なデータといえる。また、本発明者は、ANN又はMRAによる統計的解析を行うことが可能なデータ分析ソフトウェアであるJMP(登録商標、SAS社製)のversion8.0(以下「JMP8」という。)をインストールしたパーソナルコンピュータを準備した。さらに、後にAICやBICを検証するために、このコンピュータにJMPのversion9.0(以下「JMP9」という。)をインストールした。
以下、p<0.05である場合に有意差があるものとする。135名分のデータにおいて、1993年6月でのLBMD測定値(以下「93LBMD測定値」という。)に対して、2003年6月でのLBMD測定値(以下「03LBMD測定値」という。)は、有意に減少していた。同様に、1993年6月でのFBMD測定値(以下「93FBMD測定値」という。)に対して、2003年6月でのFBMD測定値(以下「03FBMD測定値」という。)は、有意に減少していた。なお、FBMD測定値は、大腿骨近位部の頸部と大転子部とワード三角を含む、大腿骨近位部での全体的なBMD測定値である。135名のうちには、前述した迅速骨減少者と緩徐骨減少者が多数含まれていた。また、本発明者は、前述した数式5において、1993年6月を第1時点とし、2003年6月を第2時点とした上で、第1時点から第2時点までの期間において1年あたりの第2腰椎から第4腰椎のBLR計算値(以下「LBLR計算値」という。)を算出してデータベースに記憶させた。同様に、第1時点から第2時点までの期間において1年あたりの大腿骨近位部のBLR計算値(以下「FBLR計算値」という。)を算出してデータベースに記憶させた。前述した数式2により135名分の体脂肪率を算出してデータベースに記憶させた。この135名分の情報の概要を、次の表1に示す。
Figure 0006585869
本発明者は、ANNでの学習効率を高めるために、135名分の年齢、身長、体重、BMI、体脂肪率、除脂肪体重、体脂肪量、初経年齢、閉経年齢、及び閉経後経過年数(閉経から1993年6月までの経過年数)の情報を、前述した数式4により各々0.10以上かつ0.90以下の数値に正規化させてデータベースに記憶させた。以下、正規化後のデータ項目には「正規化」の文言を付して説明する。一方、BMD測定値およびBLR計算値については、データに表れた骨量の減少傾向が損なわれるのを避けるために、正規化しないままにした。このデータベース及びJMP8を用いて、図5に示すANNモデルを構築した。このANNモデルは、11のANが設けられた入力層、4つのAN(H1からH4)が設けられた1層の中間層、及び2つのANが設けられた出力層を有する三層型ANNである。
図5に示すANNモデルの入力層のANには入力因子として、93LBMD測定値、正規化年齢、正規化身長、正規化体重、正規化BMI、正規化体脂肪率、正規化除脂肪体重、正規化体脂肪量、正規化初経年齢、正規化閉経年齢、及び正規化閉経後経過年数の11項目について135名分の数値情報を入力した。出力層のANには出力因子として、03LBMD測定値、及びLBLR計算値の2項目について135名分の正規化していない数値を入力した。その上で、JMP8に次の学習条件を入力して、図5に示すANNモデルに学習させた。
・オーバーペナルティー:0.01、0.02、0.04
・中間層 :2、3、4
・ツアー数 : 8回
・反復回数 :75回
・収束基準 :0.00001
上記した学習条件により、中間層に設けられた3つのANごとに3種類の学習済みモデルが得られた。つまり、本発明者がJMP8を用いてANNに学習させる操作を1回行う度に、9種類の学習済みモデルが得られた。この操作を10回繰り返して、合計90種類の学習済みモデルが得られた。90種類の学習済みモデル各々について、JMP8を用いた単純交差検証法および5分割交差検証法により、03LBMD測定値と、2003年6月での第2腰椎から第4腰椎のBMD予測値(以下「03LBMD予測値」という。)との関連性の強さを示すR値を検証した。図7(a)及び次の表2に示すように、このR値が最も高い0.929を示したモデルを、実施例1aに係る学習済みモデルとした。つまり、実施例1aに係る学習済みモデルによりBMD予測式が出力され、このBMD予測式に設けられた11の変数に1項目ずつ合計11項目の入力因子の数値データを代入して、135名分の03LBMD予測値を算出した上で、この予測値と03LBMD測定値との関連性を調べるとR=0.929という高い数値が示された。また、JMP9により、実施例1aに係る学習済みモデルでのAIC及びBICを検証したところ、次の表2に示す結果であったため、この学習済みモデルは統計モデルとして好ましいと判断した。なお、本発明者が実施例1aを再試行したときにR=0.934という更に高い数値が示された。
Figure 0006585869
<実施例1b>
前述した実施例1aでは、図5に示すように、入力因子として93LBMD測定値を入力し、出力因子として03LBMD測定値とLBLR計算値を入力した。これに代えて、実施例1bでは、図6に示すように、入力因子として93FBMD測定値を入力し、出力因子として03FBMD測定値とFBLR計算値を入力した。その他は実施例1a同様にANNに学習させて、2003年6月での大腿骨近位部のBMD予測値(以下「03FBMD予測値」という。)を135名分算出して、単純交差検証法と5分割交差検証法を行って最もR値が高いものを実施例1bに係る学習済みモデルとして選定した。図7(b)及び上記した表2に示す検証結果から考えて、実施例1bに係る学習済みモデルでの予測精度は高く、統計モデルとして好ましいものであった。
<実施例1c>
前述した実施例1aでは、03LBMD測定値と03LBMD予測値との関連性を示すR値が最も高い学習済みモデルを選出した。これに代えて、実施例1cでは、LBLR計算値と、第1時点から第2時点までの期間において1年あたりの第2腰椎から第4腰椎のBLR予測値(以下「LBLR予測値」ともいう。)との関連性を示すR値が最も高いものを、実施例1cに係る学習済みモデルとして選出した。図8(a)及び前述した表2に示す検証結果から考えて、実施例1cに係る学習済みモデルでの予測精度は高く、統計モデルとして好ましいものであった。
<実施例1d>
前述した実施例1bでは、03FBMD測定値と03FBMD予測値との関連性を示すR値が最も高い学習済みモデルを選出した。これに代えて、実施例1dでは、FBLR計算値と、第1時点から第2時点までの期間において1年あたりの大腿骨近位部のBLR予測値(以下「FBLR予測値」ともいう。)との関連性を示すR値が最も高いものを、実施例1dに係る学習済みモデルとして選定した。図8(b)及び前述した表2に示す検証結果から考えて、実施例1dに係る学習済みモデルでの予測精度は高く、統計モデルとして好ましいものであった。
<比較例1a>
比較例1aでは、ANNを用いず、JMP8を用いてMRAにより03LBMD予測値を得ることとした。このために比較例1aでは、前述した実施例1aで入力因子として用いたのと同じ情報を独立変数とし、実施例1aで出力因子として用いたのと同じ情報を従属変数として、MRAを行った。その結果、前述した表2に示すように、比較例1aでの03LBMD測定値と03LBMD予測値との関連性を示すR値は0.803に留まり、実施例1aでのR値である0.929よりも大幅に低い値であった。また、比較例1aでのAICやBICの値は、実施例1aでのAICやBICの値よりも高かった。このため、実施例1aのようにANNに学習させる方が、比較例1aのようなMRAよりも、高精度でBMD予測値を得やすく、統計モデルとして好ましいことが明らかとなった。
<比較例1b>
比較例1bでは、前述した実施例1bで入力因子として用いたのと同じ情報を独立変数とし、実施例1bで出力因子として用いたのと同じ情報を従属変数として、MRAにより03FBMD予測値を得た。表2で前述したように、比較例1bでのR値は実施例1bでのR値よりも大幅に低く、比較例1bでのAICやBICの値は実施例1bでのAICやBICの値よりも高かった。この結果からも、ANNの方がMRAよりも高精度でBMD予測値を得やすく、統計モデルとして好ましいことが示された。
<比較例1c、及び比較例1d>
前述した比較例1aと概ね同様に、比較例1cではMRAによりLBLR予測値を得た。また、上記した比較例1bと概ね同様に、比較例1dではMRAによりFBLR予測値を得た。表2で前述したように、比較例1cでのR値は0.137であり、比較例1dでのR値は0.153であり、ほとんど関連性が認められなかったため、将来のBLRを予測するのはほとんど不可能という従来の当業者の技術常識が再確認された。これに対して、実施例1cでのR値は0.694であり、実施例1dでのR値は0.609であったため、実施例1cや実施例1dでは臨床応用可能な精度で将来のBLR予測値を得ることができたといえる。また、MRAによる比較例1cや比較例1dよりも、ANNによる実施例1cや実施例1dの方が、AICやBICの値が小さいため統計モデルとして好ましいことが示された。
<実施例2、及び参考例2>
前述した実施例1と比べて、次の表3に示すように出力因子を2003年6月でのBMD測定値の1項目に絞った他は、同様にANNに学習させて予測値を算出してR値を検証した。その結果、表3に示すように実施例2aと実施例2bでは、出力因子をBMD測定値の1項目に絞ることで、より高精度でBMD予測値を算出可能であることが示された。一方、参考例2cと参考例2dでは、出力因子をBLR計算値の1項目に絞ってBLR予測値を算出したが、R値が0.300未満という低値であったから臨床応用は難しいと考えられる。この結果から、ある程度に臨床応用し得る水準で将来までのBLRを予測するために、出力因子としてBMD測定値とBLR計算値の両方を要すると考えられる。
Figure 0006585869
<実施例3、及び比較例3>
前述した実施例1(比較例1)で11項目の入力因子(独立変数)を用いたのと比べて、入力因子(独立変数)を、1996年6月でのBMD測定値、正規化年齢、正規化身長、正規化体重、及び正規化BMIの5項目に絞った他は、同様にANNに学習させるか又はMRAにより予測値を算出させて、同様にR値を検証した。その結果、実施例1と比べて次の表4に示すようにR値が幾らか低下したが、ANNに学習させた実施例3aから実施例3dでは、MRAによる比較例3aから比較例3dよりも大幅に高いR値を示した。このため、入力因子をBMD測定値情報、年齢情報、及び身体計測情報3種(身長、体重、BMI)の5項目に絞っても、ANNに学習させることで、MRAよりも予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。BLR予測値について、入力因子が11項目である場合(実施例1c、実施例1d)の方が、5項目である場合(実施例3c、実施例3d)よりも明らかに高いR値が得られていた。
Figure 0006585869
<実施例4>
上記した実施例3で正規化させていないBMD測定値を入力したのに代えて、正規化させたBMD測定値を入力した。つまり、次の表5に示す実施例4a等では、正規化BMD測定値、正規化年齢、正規化身長、正規化体重、及び正規化BMIの5項目を入力因子として入力した他は、実施例3と同様にANNに学習させて予測値を算出して、同様にR値を検証した。その結果、BMD測定値を正規化させたことでR値が幾らか低下したが、前述した比較例3よりも大幅に高いR値を示した。この結果から、ANNに学習させて予測値を算出させるにあたり、正規化させたBMD測定値を入力するよりも、正規化させないままBMD測定値を入力する方が、高精度で予測値を算出可能であることが示唆された。また、正規化後のBMD測定値を入力してもANNに学習させると、MRAよりも予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。
Figure 0006585869
<実施例5、及び比較例5>
前述した実施例1(比較例1)と比べて、入力因子(独立変数)を、1993年6月でのBMD測定値、正規化年齢、及び正規化初経年齢の3項目に絞った他は、同様にANNに学習させるか又はMRAにより予測値を算出して、同様にR値を検証した。表4で前述した実施例3aから実施例3dと比べて、次の表6に示すように実施例5aから実施例5dではR値が幾らか低下したが、MRAによる比較例5aから比較例5dよりも大幅に高いR値を示した。このため、入力因子をBMD測定値情報、年齢情報、及び月経歴情報1種(初経年齢)の3項目に絞っても、ANNに学習させることにより、MRAよりも予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。BLR予測値について、入力因子が11項目である場合(実施例1c、実施例1d)の方が、3項目である場合(実施例5c、実施例5d)よりも明らかに高いR値が得られていた。
Figure 0006585869
<実施例6、及び比較例6>
前述した実施例1や比較例1と比べて、入力因子を、1993年6月でのBMD測定値、正規化閉経年齢、及び正規化閉経後経過年数の3項目に絞った他は、同様にANNに学習させるか又はMRAにより予測値を算出して、同様にR値を検証した。次の表7に示す結果から、入力因子をこの3項目に絞ってもANNに学習させることで、MRAよりも予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。BLR予測値について、入力因子が11項目である場合(実施例1c、実施例1d)の方が、3項目である場合(実施例6c、実施例6d)よりも明らかに高いR値が得られていた。
Figure 0006585869
<実施例7、及び比較例7>
前述した実施例1や比較例1と比べて、入力因子を、1993年6月でのBMD測定値、正規化年齢、及び正規化体重の3項目に絞った他は、同様にANNに学習させるか又はMRAにより予測値を算出して、同様にR値を検証した。次の表8に示す結果から、入力因子をこの3項目に絞っても、ANNに学習させることにより、MRAよりも予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。BLR予測値について、入力因子が11項目である場合(実施例1c、実施例1d)の方が、3項目である場合(実施例7c、実施例7d)よりも明らかに高いR値が得られていた。
Figure 0006585869
<実施例8及び比較例8、並びに、実施例9及び比較例9>
前述した実施例1や比較例1と比べて、入力因子を1993年6月でのBMD測定値と正規化体重を含む3項目に絞った他は、同様に予測値を算出してR値を検証した。実施例1と比べて、次の表9から表12に示すように実施例8や実施例9ではR値が幾らか低下したが、MRAによる比較例10や比較例11よりも高いR値を示した。このため、入力因子をBMD測定値と正規化体重を含む3項目に絞っても、ANNに学習させることにより、MRAよりも予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。BLR予測値について、入力因子が11項目である場合(実施例1c、実施例1d)の方が、3項目である場合(実施例9、参考例9)よりも明らかに高いR値が得られていた。表11と表12でR値を比べると明らかなように、大腿骨近位部よりも腰椎の方が比較的に精度の高いBLR予測値を得られやすかった。
Figure 0006585869
Figure 0006585869
Figure 0006585869
Figure 0006585869
<実施例10及び比較例10、並びに、実施例11及び比較例11>
前述した実施例1や比較例1と比べて、入力因子を1993年6月でのBMD測定値と正規化年齢を含む3項目に絞った他は、同様に予測値を算出してR値を検証した。前述した実施例1と比べて、次の表13から表16に示すように実施例10や実施例11ではR値が幾らか低下したが、MRAによる比較例10や比較例11よりも高いR値を示した。このため、入力因子をBMD測定値と正規化年齢を含む3項目に絞っても、ANNに学習させることにより、MRAよりも予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。BLR予測値について、入力因子が11項目である場合(実施例1c、実施例1d)の方が、3項目である場合(実施例11、参考例11)よりも明らかに高いR値が得られていた。表15と表16でR値を比べると明らかなように、実施例11iを除けば、大腿骨近位部よりも腰椎の方が比較的に精度の高いBLR予測値を得られやすかった。入力因子に正規化体重が含まれる場合(表9から表12)と、入力因子に正規化年齢が含まれる場合(表13から表16)とでR値を比べると明らかなように、入力因子に正規化体重が含まれる場合の方が比較的に精度の高い予測値を得られやすかった。
Figure 0006585869
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Figure 0006585869
<実施例12及び比較例12、並びに、実施例13、参考例13、及び比較例13>
前述した実施例1や比較例1と比べて、入力因子を1993年6月でのBMD測定値を含む2項目に絞った他は、同様に予測値を算出してR値を検証した。前述した実施例1と比べて、次の表17から表20で示すように実施例12や実施例13ではR値が幾らか低下したが、MRAによる比較例12や比較例13よりも高いR値を示した。このため、入力因子を少なくともBMD測定値を含む2項目に絞っても、ANNに学習させることにより、MRAよりもBMD予測値を高精度で算出可能であることが示唆された。BLR予測値について、入力因子が11項目である場合(実施例1c、実施例1d)の方が、2項目である場合(実施例13、参考例13)よりも明らかに高いR値が得られていた。表19と表20でR値を比べると明らかなように、大腿骨近位部よりも腰椎の方が比較的に精度の高いBLR予測値を得られやすかった。表19に示すように、LBLR予測値でのR値が0.30以上となった実施例で用いられた入力因子は、正規化体重、正規化BMI、正規化体脂肪率、又は正規化体脂量と、93LBMD測定値であった。表11と表19を考慮すると、LBLR予測値の精度を高めるためには、入力因子に体重が含まれていることが重要である可能性が示唆された。BMD測定値を除けば、腰椎などの椎体と大腿骨近位部とでは、予測値の精度を高めるために有用な入力因子のデータ項目が幾らか異なることが示唆された。
Figure 0006585869
Figure 0006585869
Figure 0006585869
Figure 0006585869
<検証実験1>
前述した実施例1から実施例13では、135名分の教師データに基づく学習済みモデルにより、この135名で将来の骨量を予測可能であることが示唆された。この135名は、骨粗鬆症に関する治療薬や治療法を実質的に施されなかった、和歌山県太一町に在住している閉経後女性らである。太一町は山がちな漁港の町であるため、この女性らは、日常的に坂道を歩いて足腰を鍛えられており、また魚介類を高頻度で摂取してきたものと考えられる。この135名分の教師データに基づく学習済みモデルを用いて、太一町とは生活環境などが異なる閉経後女性に対しても将来の骨量を予測可能であるか、次のように検証することとした。
箕面市立病院は大阪市の近郊にあるため、この病院の受診者らには比較的に都市型の生活をしている者が多いと考えられる。検証にあたり、骨粗鬆症について10年以上にわたり箕面市立病院で受診し続けた閉経後女性ら24名に着目した。この受診者らは、子宮や卵巣を切除されておらず、骨粗鬆症を除けば全身性疾患を患っておらず、車椅子を使っていない。検診データにおいて、受診者ごとに閉経後に任意にLBMDを測定された時点を第3時点とし、その10年後にLBMDを測定された時点を第4時点として、データベース化した。以下、第3時点でのLBMD測定値を「第3LBMD測定値」といい、第4時点でのLBMD測定値を「第4LBMD測定値」という。前述した実施例1aと同様に、LBLR計算値を算出してデータベースに記憶させた。受診者ら24名の情報の概要を、次の表21に示す。
Figure 0006585869
前述した実施例1aに係る学習済みモデルに、受診者ら24名分の第3LBMD測定値、正規化年齢、正規化身長、正規化体重、正規化BMI、正規化初経年齢、正規化閉経年齢、正規化閉経後経過年数、正規化体脂肪率、正規化除脂肪体重、正規化体脂肪量のデータ11項目を入力して、24名分のLBMD予測値を出力させた。JMP9を用いた直線回帰分析により、第4LBMD測定値とLBMD予測値の関連性の強さを示すR値を検証した。その結果、R=0.321、p=0.004であった。このため、第4LBMD測定値を予測可能であるが、高精度では予測できなかった。同様に、前述した実施例1cに係る学習済みモデルに同じデータ11項目を入力してLBLR予測値を出力させて、第4LBMD測定値とLBLR予測値の関連性を検証したところ、R=0.026、p=0.455であったため、関連性がほとんど示されなかった。
上記した検証実験1においてR値が高くなかった原因として、太一町の被験者群と異なり、表21で前述したように箕面市立病院の受診者らでは、第3時点よりも第4時点で腰椎の骨量が増加していることが挙げられる。この骨量増加は、第3時点と第4時点の間に、受診者らにビスホスホネート(bisphosphonate)が継続的に投与された期間(以下「BP投与期間」という。)があること、この薬への反応性に個人差があること、及び受診者ごとに何らかの運動療法や食事指導や栄養指導が行われたこと等に起因するものと考えられる。この考えに基づいて、本発明者は更に次の検証実験2を行った。
<検証実験2>
本発明者は、BP投与期間と、検証実験1で得られたLBMD予測値およびLBLR予測値を24名分、データベースに記憶させた。また、第4LBMD測定値と第3LBMD測定値の差(以下「ΔLBMD」という。)、および、LBMD予測値と第4LBMD測定値の差(以下「LBMD実測予測差」という。)を24名分算出してデータベースに記憶させた。なお、ΔLBMDは、将来の骨量を予測するにあたり、骨粗鬆症治療の効果指標として予測対象者が最も関心を示す事項である。JMP9を用いた直線回帰分析によりΔLBMDとBP投与期間の関連性を検証したところ、R=0.124、p=0.092であった。この検証結果は0.05<p<0.10の範囲内にあるため、統計的に有意といえないが、臨床的に意味のあるデータであり交絡変数を調整する等すれば有意な結果を得られるであろうと考えられる。一方、この検証と同様にしてΔLBMDとLBLR予測値の関連性を検証したが、R=0.022、p=0.488であったため、有意な関連性は示されなかった。症例ごとに治療薬やその投与量が異なることや、BLRはBMDよりも予測困難であること等の理由により、ΔLBMDとLBLR予測値の関連性が示されなかったものと考えられる。
<検証実験3>
ΔLBMPとLBMD実測予測差の関連性を検証したところ、図9に示すようにR=0.601、p<0.0001であったため、強い関連性と有意差が示された。なお、LBMD実測予測差は、仮に受診者らが第3時点から実質的に治療を受けなかったとした場合に減少したであろう第4時点でのLBMD予測値に対して、実際には受診者らが第3時点から第4時点にかけて骨粗鬆症治療(薬物治療や、運動療法または食事療法といった生活指導など)を受けて増加したLBMDの量を示す効果指標といえる。ΔLBMD(第4LBMD測定値と第3LBMD測定値の差)と、LBMD実測予測差と、の間に強い関連性が示されたという検証実験3の結果は、仮に骨粗鬆症治療を実質的に受けなかったとした場合でのLBMD予測値の予測精度が高いことを示唆していると考えられる。したがって、実施例1aに係る学習済みモデルは、太一町とは生活環境が異なる受診者らに対しても、将来での骨量を比較的に高精度で予測するために臨床応用可能であると考えられる。
同様にLBMD予測値と第3LBMD測定値との関連性を検証したところ、図10に示すようにR=0.641、p<0.0001であった。なお、骨粗鬆症に関する既報によれば、未治療の場合に、経過観察前のBMD測定値が高い閉経後女性では、経過観察後のBMD測定値も高いとされている。図10に示す実証結果は、既報での知見と矛盾しておらず、仮に骨粗鬆症治療を実質的に受けなかったとした場合でのLBMD予測値の予測精度が高いことを示唆していると考えられる。
<実証実験4>
本発明に係る予測方法を臨床応用するにあたり、第4時点でのBMD測定値と第3時点でのBMD測定値の差(ΔBMD)が重要である。また、受診者は、数年にわたり第二選択薬(例えばビスホスホネート)を投与される骨粗鬆症治療を受けるにあたり、種々の骨粗鬆症治療効果(BMD実測予測差)と、受診者自身が閉経後の早期にBMDを減少させやすい体質であるか否か(BLR予測値)に関心がある。そこで、ΔLBMDに関連する因子として、BP投与期間、LBMD実測予測差、及びLBLR予測値の3因子を選び、JMP9を用いて重回帰分析を行った。この際、JMP9により次の回帰式(数式6)が得られ、この回帰式により受診者24名分のΔLBMD予測値が算出された。
Figure 0006585869
回帰式(数式6)における各符号は、次のとおりである。
BP投与期間(年)
LBMD実測予測差(%YAM)
LBLR予測値(%YAM)
重回帰分析を行った結果、図11に示すように、ΔLBMDとΔLBMD予測値との関連性の強さついてR=0.933との高い値が得られた。このため、BP投与期間、BMD実測予測差、及びBLR予測値の3因子によりΔBMDを説明可能であることが示唆された。ΔLBMDを有意に増加させる因子としてBP投与期間(p=0.011)とLBMD実測予測差(p<0.0001)が示され、ΔLBMDを有意に減少させる因子としてLBLR予測値(p<0.0001)が示されたことは、骨粗鬆症に関する日常的な臨床経験と高度に合致している。したがって、実施例1aに係る学習済みモデルにより算出されたLBMD予測値や、実施例1cに係る学習済みモデルにより算出されたLBLR予測値は、仮に骨粗鬆症治療を実質的に受けなかったとした場合での将来の予測値として概ね正確であることが示唆された。
検証実験1から検証実験4での結果より、本発明に係る方法により得られたBMD予測値またはBLR予測値に基づいて、医師は次に例示するように診察するのが好ましい。第3時点において医師が受診者(閉経後女性)を診察する際に、未来の第4時点でのBMD測定値はまだ得られていないものの、将来の傾向として第4時点でのBMD予測値や第4時点までのBLR予測値を得ることにより、医師は受診者ごとに予測値に応じて骨粗鬆症の早期予防に適した早期診断をするのが好ましい。BLR予測値が大きい受診者ほど将来に骨粗鬆症の病態を形成しやすいため、比較的に大きいBLR予測値が算出された受診者に対しては、診察時に骨粗鬆症の症状が十分に現れていなくても、第二選択薬(例えばビスホスホネート)を処方する提案をして骨粗鬆症の早期予防を図る早期診断をするのが好ましい。第二選択薬の投与期間(例えば、BP投与期間)が長いほど骨粗鬆症の病態が緩和されやすいため、今後の治療方針を決定する際に予測値を参考にするのが好ましい。BMD予測値を算出する場合と比べて、BLR予測値を算出する場合には高精度の予測値を得るのが難しいため、実施例1cや実施例1dに係る学習済みモデル(図5及び図6)のように入力因子を多く用いるのがさらに好ましい。
本発明により、骨粗鬆症の早期予防や早期治療に関するオーダーメイド医療を発展させ得るものと期待される。例えば、本発明に係る予測法とFRAX(非特許文献1)を併用することにより、骨粗鬆症の早期診断や早期予防を効果的に支援可能と期待される。一方、どのような環境要因や遺伝的素因が将来の骨量減少に影響を及ぼすか、未だ十分に解明されていない。今後、諸外国での様々な環境で生活する閉経後女性について骨量減少に関するデータを収集することにより、骨量減少に影響を及ぼす環境要因や遺伝的素因を発見して、発見した要因や素因を組み込んで本予測法を改良発展させ得るものと期待される。

Claims (7)

  1. 閉経後女性において、腰椎、胸椎、頸椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の部位における将来の骨量を予測する方法であって、
    入力層および1層以上の中間層および出力層を有する人工ニューラルネットワーク(ANN)での教師データとして、既に閉経後の第1時点で骨密度(BMD)を測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢、身長、体重、体格指数(BMI)、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、当該部位の前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルを準備するか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBMD予測式を準備するステップと、
    閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と前記部位の当該第3時点でのBMD測定値情報を、前記学習済みモデルか又は前記BMD予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を得るステップと、
    を含むことを特徴とする予測方法。
  2. 閉経後女性において、腰椎、胸椎、頸椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の部位における将来の骨量を予測する方法であって
    入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNでの教師データとして、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、当該部位の当該第1時点から前記第2時点までの骨量減少率(BLR)計算値情報および当該部位の当該第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルを準備するか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBLR予測式を準備するステップと、
    閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と前記部位の当該第3時点でのBMD測定値情報を、前記学習済みモデルか又は前記BLR予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来までのBLR予測値を得るステップと、
    を含むことを特徴とする予測方法。
  3. 閉経後女性において、腰椎、胸椎、頸椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の部位における将来の骨量を予測するために、入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNに教師データを学習させた学習済みモデルの生成方法であって、
    前記教師データとして、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子を前記入力層に入力し、並びに、当該部位の前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子を前記出力層に入力することによるか、
    または、前記教師データとして、前記複数人の女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を前記入力層に入力し、並びに、当該部位の当該第1時点から前記第2時点までのBLR計算値情報および当該部位の当該第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子を前記出力層に入力することにより、
    前記ANNに前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させることを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
  4. 閉経後女性において、腰椎、胸椎、頸椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の部位における将来の骨量を予測するために用いられる情報処理装置であって、
    既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子、並びに、当該部位の前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が記憶されたデータベースと、
    入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNに対する教師データとして前記入力層に前記入力因子が入力されて前記出力層に前記出力因子が入力されて当該入力因子と当該出力因子との関係を学習させた学習済みモデルが記憶されるか、又は前記学習済みモデルにより出力される前記関係を規定するBMD予測式が記憶される記憶部と、
    閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と前記部位の当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BMD予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を出力する処理部と、
    を備えることを特徴とする情報処理装置。
  5. 閉経後女性において、腰椎、胸椎、頸椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の部位における将来の骨量を予測するために用いられる情報処理装置であって、
    既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子、並びに、当該部位の当該第1時点から前記第2時点までのBLR計算値情報および当該部位の前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が記憶されたデータベースと、
    入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNに対する教師データとして、前記入力層に前記入力因子が入力されて前記出力層に前記出力因子が入力されて当該入力因子と当該出力因子との関係を学習させた学習済みモデルが記憶されるか、又は前記学習済みモデルにより出力される前記関係を規定するBLR予測式が記憶される記憶部と、
    閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と前記部位の当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BLR予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBLR予測値を出力する処理部と、
    を備えることを特徴とする情報処理装置。
  6. 閉経後女性において、腰椎、胸椎、頸椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の部位における将来の骨量を予測するために用いられるコンピュータプログラムであって、
    入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNでの教師データとして、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、当該部位の前記第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBMD予測式に関して
    閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と前記部位の当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、入力された当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BMD予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来でのBMD予測値を出力する処理を情報処理装置に実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  7. 閉経後女性において、腰椎、胸椎、頸椎、大腿骨近位部、上腕骨近位部、及び橈骨遠位部からなる群より選ばれた1箇所以上の部位における将来の骨量を予測するために用いられるコンピュータプログラムであって、
    入力層および1層以上の中間層および出力層を有するANNでの教師データとして、既に閉経後の第1時点でBMDを測定されてから5年以上経過した第2時点でBMDを測定された複数人の女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第1時点での情報と前記部位の当該第1時点でのBMD測定値情報を含む入力因子が前記入力層に入力され、並びに、当該部位の当該第1時点から前記第2時点までのBLR計算値情報および当該部位の当該第2時点でのBMD測定値情報を含む出力因子が前記出力層に入力されたことにより、前記入力因子と前記出力因子との関係を学習させた学習済みモデルか又は前記学習済みモデルにより出力された前記関係を規定するBLR予測式に関して
    閉経後の第3時点でBMDを測定された女性について、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪量、除脂肪体重、体脂肪率、初経年齢、閉経年齢、閉経後経過年数、及びこれらの数値を間接的に示す情報からなる群より選ばれた1種以上の前記第3時点での情報と前記部位の当該第3時点でのBMD測定値情報が入力されたときに、入力された当該第3時点での情報と当該第3時点でのBMD測定値情報を前記学習済みモデルか又は前記BLR予測式に適用することにより、当該第3時点から5年以上経過した将来までのBLR予測値を出力する処理を情報処理装置に実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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