JP6583606B2 - Dna傷害抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、外的ストレスにより細胞内に発生する活性酸素からDNAを保護し、活性酸素によるDNA傷害を抑制することのできるタンパク質、それをコードする遺伝子、該遺伝子発現ベクター、及びそれらを有効成分とする医薬組成物及び化粧品に関する。
生物の生命活動において、呼吸により体内に取り込まれた酸素の一部は、ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝過程で強い酸化作用を持つ活性酸素に変化する。活性酸素には、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、及び一重項酸素が知られており、いずれも呼吸や光合成等の日常的な生体活動の他、紫外線照射、喫煙、激しい運動、又は高線量の放射線照射等の外的ストレスにより発生し得る。細胞内で発生した活性酸素は、細胞を構成する脂質、タンパク質、及び核酸を酸化することが知られている(非特許文献1)。
活性酸素は、適量であれば細菌やウイルス等の体外由来の異物に対する攻撃防御作用を有する。しかし、過剰に発生すると老化、発癌、及び生活習慣病の原因となるなど、細胞や生体に対して種々の障害をもたらす(非特許文献2及び3)。
生物は、細胞内で発生した過剰な活性酸素から細胞を保護するために、自ら生合成した抗酸化酵素により活性酸素を分解し、消去している。この抗酸化酵素には、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、及びグルタチオンペルオキシダーゼが知られている(非特許文献4)。また、スカベンジャーと呼ばれる抗酸化物質を生合成して、又は外界から摂取して、活性酸素から細胞を防御している。抗酸化物質は、自身が酸化されることによって活性酸素を消去する抗酸化作用を有する物質であり、ビタミンC、ビタミンE、尿酸、コエンザイムQ10、ポリフェノール、カロテノイド等が知られている(非特許文献5)。例えば、植物は紫外線照射や光合成によって発生する活性酸素から細胞を防御するためにポリフェノールやカロテノイドを生合成し、細胞内に蓄積している。
しかし、大過剰の活性酸素が細胞内で短期間に発生した場合には、細胞内の抗酸化酵素や抗酸化物質だけでは対応できず、細胞は深刻な障害を受けることになる。その代表的な例が、事故や災害による高線量の放射線被曝である。生体に照射された放射線エネルギーは、生体や細胞の主要構成成分である水分子に作用して多量の活性酸素を発生する。その活性酸素がDNAと化学反応を起こして、DNA切断等のDNA分子に対する傷害をもたらす。その結果、DNAの誤修復等が発生し、細胞死、骨髄損傷、腸管損傷等の急性障害や、突然変異を原因とする発癌、生殖細胞を介した遺伝的影響、及び寿命の短縮等の晩発障害を引き起こす。
細胞内に発生した大過剰の活性酸素からDNAや細胞を防御又は保護する効果的な薬剤や方法は知られていない。それ故に、高線量放射線照射をはじめとする様々な外的ストレスにより細胞内に発生する過剰な活性酸素からDNAを保護し、抗酸化物質よりも活性酸素の障害活性に対して、より強い抵抗性を細胞に付与することのできる新たな薬剤の開発が求められていた。
Yu,B.P.,1994,Physiological Reviews,74(1):139-162. 吉川敏一,谷川徹,1999,化学と生物,37(7): PP.475-481. 藤田直,2002,薬学雑誌,122(3):203-218. 江口裕伸 他,2009,生物試料分析,32(4):247-256
本発明は、細胞内で発生した活性酸素を原因とする細胞内障害を防御又は抑制することのできる新規薬剤の開発を課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らはクマムシ(water bear)に着目した。クマムシは、緩歩動物門(Tardigrada)に属する微小動物である。クリプトビオシス(乾眠)と呼ばれる休眠状態に入ったクマムシ個体は、極度の乾燥状態、ほぼ絶対零度に近い-273℃の超低温、151℃の高温、真空状態、及び75,000気圧の超高圧等の極限的環境ストレスに対して驚異的な耐性能を持つことが知られている(Rebecchi L., et al., 2007, Invertebrate Survival J., 4: 65-81; Ono F., et al., 2008, J. Phys. Chem. Solids, 69: 2297-2300; Jonsson KI., et al., 2008, Curr. Biol., 18: R729-R731)。
さらに、クマムシは、通常状態でも、ヒトの半致死量の1000倍にも及ぶ4000Gyもの放射線量に対して耐性を示す。本発明者らは、クマムシが有するこの高い放射線耐性能は、放射線照射によって生体内で多量に発生する活性酸素に対して、未知のDNA保護修復機構が働いているためではないかという仮説を立てた。そこで、クマムシのクロマチンを解析し、DNAの保護修復機構に関与し得る因子の探索を試みた。その結果、既知の、タンパク質、ドメイン、及びモチーフと全く相同性を示さない新規のDNA結合タンパク質Dsup及びそれをコードするDsup遺伝子を単離することに成功した。Dsup遺伝子を哺乳類動物の培養細胞中で発現させたところ、X線照射によるDNAの断片化や損傷が抑制され、対照区に対して細胞増殖率が向上することが明らかとなった。これにより、Dsupタンパク質は、活性酸素から細胞内のDNAを保護し得ることが示唆された。本発明は、当該新たな知見に基づくもので、以下を提供する。
(1)以下の(a)〜(c)で示すいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質。
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、及び
(c)配列番号1に示すアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(2)(1)に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
(3)以下の(a)〜(d)で示すいずれかの塩基配列からなる、(2)に記載の遺伝子。
(a)配列番号2に示す塩基配列、
(b)配列番号2に示す塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列、
(c)配列番号2に示す塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列、及び
(d)配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
(4)(2)又は(3)に記載の遺伝子を発現可能な状態で包含する遺伝子発現ベクター。
(5)(1)に記載のタンパク質からなるDNA傷害抑制剤。
(6)(4)に記載の遺伝子発現ベクターからなるDNA傷害抑制剤。
(7)(1)に記載のタンパク質、(2)又は(3)に記載の遺伝子、又は(4)に記載の遺伝子発現ベクターを有効成分とする医薬組成物。
(8)(1)に記載のタンパク質を有効成分とする化粧品。
(9)(4)に記載の遺伝子発現ベクターを包含する形質転換体。
本発明のDsupタンパク質、Dsup遺伝子又はDsup遺伝子発現ベクターを細胞内に導入することで、外的ストレスや呼吸により細胞内で発生する活性酸素の障害から核内のDNAを保護することができる。
本発明のDsupタンパク質又はそれを発現するDsup遺伝子若しくはDsup遺伝子発現ベクターを有効成分とする医薬組成物は、高線量の放射線により被曝した細胞の生存性を高めることができる。
本発明のDsupタンパク質を有効成分とする化粧品は、紫外線等の照射によって細胞内に発生する活性酸素を原因とする皮膚の老化を抑制することができる。
本発明のDsup遺伝子若しくはDsup遺伝子発現ベクターを導入した形質転換体は、放射線照射等の細胞内に活性酸素を発生させる外的ストレスに対して高い抵抗性を有する。
各種タンパク質と混合したDNA(直鎖状pBluescriptII)のゲルシフトアッセイを示す図である。混合したタンパク質名を写真図の上に示す。Mはマーカーである。矢頭はDNA本来のサイズの位置を、矢印はタンパク質との結合によって本来のサイズの位置よりも上方にシフトしたDNAバンドを、それぞれ示している。 各Dsupタンパク質欠失変異体の模式図を示す図である。 各Dsupタンパク質の細胞内局在を示す図である。上段のGFPはDsupタンパク質又はDsupタンパク質欠失変異体の細胞内局在位置を、下段のHoechstは核内DNAの位置を、それぞれ示している。図中のスケールバーは10μmを示す。 各種タンパク質と混合したDNA(直鎖状pBluescriptII)のゲルシフトアッセイを示す図である。混合したタンパク質名を写真図の上に示す。「-」は、DNAのみでタンパク質無添加を示す。Mはマーカーである。矢頭はDNA本来のサイズの位置を、矢印はタンパク質との結合によって本来のサイズの位置よりも上方にシフトしたDNAバンドを、それぞれ示している。下段は使用した各Dsupタンパク質欠失変異体の模式図を示す図である。模式図中の各領域の表示は、図2に準ずる。 中性コメットアッセイによる断片化されたDNAの検出結果を示す図である。この図では、Dsup定常発現HEK293細胞(Dsup)又はDsupタンパク質を発現しないHEK293細胞(Cont.)に対して、X線照射又は非照射したときのコメットテール中に含まれる断片化されたDNAの%を示している。 Dsup mRNAの定量的RT-PCRの結果を示す図である。Dsup cell/shDsup=+/-は、Dsup定常発現HEK293細胞を、Dsup cell/shDsup=+/+は、shDsupを定常発現するDsup定常発現HEK293細胞を、それぞれ示している。 γ-H2AXのFoci数の定量結果を示す図である。Cont.はHEK293細胞を、DsupはDsup定常発現HEK293細胞を、Dsup + shDsupはshDsupを定常発現するDsup定常発現HEK293細胞を、それぞれ示している。 X線照射後の細胞の代謝活性を示す図である。AはX線非照射(OGy)の結果を、またBはX線照射(4Gy)の結果を示す。各図、Dsup定常発現HEK293細胞(Dsup)を白丸で、Dsupタンパク質を発現しないHEK293細胞(Cont.)を黒丸で示している。X線照射は細胞播種1日目(1 dps)で行った。RFUは相対的蛍光単位(Relative Fluorescence Unit)を示す。 放射線照射後の細胞増殖率を示す図である。Cont.はDsupタンパク質を発現しないHEK293細胞、DsupはDsup定常発現HEK293細胞、Dsup+shDsupはDsup定常発現HEK293細胞にshDsupを発現させた細胞を示す。X線照射は細胞播種1日目(1 dps)で行った。各値は、8 dpsの総細胞数を1としたときの10 dpsの総細胞数を増殖率とした。
1.Dsupタンパク質
1−1.概要
本発明の第1の態様は、Dsup(Damage suppressor)タンパク質である。このタンパク質は、既知タンパク質とのアミノ酸相同性が全くない新規DNA結合タンパク質であり、細胞内に導入することで、放射線照射等により生じる活性酸素の障害から細胞内のDNAを保護することができる。
1−2.構成
本発明のDsupタンパク質は、図2に示すように、中央部にαへリックス構造を、そしてC末端側には本願実施例で明らかとなったDNA結合領域を有するDNA結合タンパク質である。既知のいかなるタンパク質とも相同性がなく、核内に局在してゲノムDNAに結合し、活性酸素等によるDNA切断等の傷害活性からDNAを保護する機能を有する。
Dsupタンパク質の具体例として、全長445アミノ酸で、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるヨコヅナクマムシ(Ramazzottius varieornatus)由来のタンパク質が挙げられる。具体的には以下のアミノ酸配列を有するDsupタンパク質である。
Figure 0006583606
また、配列番号1で示されるDsupタンパク質と機能的に同等の活性を有するDsupタンパク質変異体やクマムシ門の他種Dsupタンパク質オルソログも該当する。具体的には、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、あるいは配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するタンパク質が包含される。
本明細書において「複数個」とは、例えば、2〜20個、2〜15個、2〜10個、2〜7個、2〜5個、2〜4個又は2〜3個をいう。また、前記アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質の類似するアミノ酸間の置換をいう。性質の類似するアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)等に分類することができる。
本明細書において「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときに、配列番号1で示されるアミノ酸配列の全アミノ酸残基に対する前記二つのアミノ酸配列間で同一のアミノ酸残基の割合(%)をいう。アミノ酸同一性は、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて算出することができる。
1−3.効果
本発明のDsupタンパク質は、高線量の放射線照射等の外的ストレスによって細胞内で発生する活性酸素から核内DNA、すなわちゲノムDNAを保護し、DNA切断や塩基への傷害を抑制することができる。したがって、本発明のDsupタンパク質を動物細胞、植物細胞又は真菌細胞に導入することで、その細胞に対して活性酸素に対するDNA傷害耐性能を付与することができる。また、DNA傷害を原因とする細胞死、染色体異常、遺伝子突然変異による発癌や腸管及び骨髄損傷を抑制することができる。
2.Dsup遺伝子
2−1.概要
本発明の第2の態様は、Dsup遺伝子である。本発明のDsup遺伝子は、宿主細胞内に導入して、発現させることによって、その宿主細胞のDNAを放射線や活性酸素による障害から保護することができる。
2−2.構成
本発明のDsup遺伝子は、第1態様に記載のDsupタンパク質をコードする。Dsup遺伝子の具体例として、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるヨコヅナクマムシのDsupタンパク質をコードする遺伝子(ヨコヅナクマムシDsup遺伝子)が挙げられる。より具体的には、配列番号2で示される塩基配列からなる遺伝子である。本明細書においてもヨコヅナクマムシDsup遺伝子の塩基配列を以下で示しておく。
Figure 0006583606
また、配列番号2で示されるDsup遺伝子がコードするDsupと機能的に同等の活性を有するDsup遺伝子バリアントやクマムシ門の他種Dsupタンパク質オルソログをコードする遺伝子も包含する。具体的には、配列番号2で示される塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列、あるいは配列番号2で示される塩基配列に対して95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の塩基同一性を有する遺伝子が包含される。あるいは、配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列の一部からなる核酸断片と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなる遺伝子が包含される。例えば、「遺伝子バリアント」が有する変異には、縮重変異、SNPs等の遺伝子多型、スプライス変異等が含まれる。
本明細書において「塩基同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者の塩基一致度が最も高くなるようにしたときに、配列番号2で示される塩基配列からなるDsup遺伝子の全塩基に対する前記二つの塩基配列間で同一の塩基の割合(%)をいう。
本明細書において「高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ(する)」とは、低塩濃度及び/又は高温の条件下でハイブリダイゼーションと洗浄を行うことをいう。高ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件については、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載されているので参考にすればよい。
2−3.効果
本発明のDsup遺伝子を動物細胞、植物細胞内又は真菌細胞に導入し、発現を誘導させることによって、第1態様のDsupタンパク質と同様の効果を得ることができる。すなわち、導入した細胞に対して活性酸素に対するDNA傷害耐性を付与し、またDNA傷害を原因とする細胞死、染色体異常、遺伝子突然変異による発癌、腸管損傷及び骨髄損傷を予防又は抑制することができる。
3.Dsup遺伝子発現ベクター
3−1.概要
本発明の第3の態様は、Dsup遺伝子発現ベクターである。本発明のDsup遺伝子発現ベクターは、宿主細胞内においてDsup遺伝子の発現制御を容易に行うことができる。
3−2.構成
本発明の「Dsup遺伝子発現ベクター」は、第2態様に記載のDsup遺伝子を包含する遺伝子発現ベクターである。
本明細書において「遺伝子発現ベクター」とは、対象とする遺伝子を発現可能な状態で包含し、宿主細胞内で対象遺伝子の発現を制御できる遺伝子発現単位をいう。本明細書において「発現可能な状態」とは、プロモーターの制御下に配置された対象遺伝子が、そのプロモーターの活性に応じて発現できる状態にあることをいう。
本発明のDsup遺伝子発現ベクターは、Dsup遺伝子、母核ベクター、プロモーターを必須の構成要素として含む。また、必要に応じて標識遺伝子、ターミネーター、エンハンサー、5’UTR、3’UTR、及びポリAシグナル等の選択的構成要素を含むこともできる。以下、本発明のDsup遺伝子発現ベクターにおける各構成要素について具体的に説明をする。
(1)Dsup遺伝子
Dsup遺伝子の構成は、第2態様で詳述した通りである。本発明のDsup遺伝子発現ベクターにおいて、Dsup遺伝子は、原則として1ベクターあたりに1遺伝子を包含するが、2以上の同一の又は異なるDsup遺伝子を含んでいてもよい。その場合、各Dsup遺伝子は、単一のプロモーター制御下に配置されていてもよいし、それぞれが異なるプロモーター制御下に配置されていてもよい。
(2)母核ベクター
「母核ベクター」は、本発明のDsup遺伝子発現ベクターのベース部分であって、本発明のDsup遺伝子発現ベクターがベクターとして機能する上で必要な構成を有する。ベクターの種類は、特に限定はしない。プラスミドベクター、ウイルスベクター(ファージベクターを含む)、コスミド、バクミド、フォスミド、BAC、YAC等が挙げられる。プラスミドベクター又はウイルスベクターが好ましい。
母核ベクターは、Dsup遺伝子発現ベクターを導入する宿主に応じて適宜選択すればよい。例えば、Dsup遺伝子発現ベクターを導入する宿主が大腸菌の場合には、pBI系、pPZP系、pSMA系、pUC系、pBR系、及びpBluescript系(Agilent technologies)等の大腸菌由来のプラスミドベクターやλgt11及びλZAP等のλファージベクターを利用することができる。Dsup遺伝子発現ベクターを導入する宿主が枯草菌の場合には、pUB110、pTP5等のプラスミドベクターを利用することができる。Dsup遺伝子発現ベクターを導入する宿主が酵母の場合には、YEp13、YEp24、及びYCp50等のプラスミドベクターを利用することができる。Dsup遺伝子発現ベクターを導入する宿主が昆虫細胞の場合には、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクターを用いることができる。Dsup遺伝子発現ベクターを導入する宿主がヒト等の哺乳類動物の場合には、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルスベクター、あるいは非ウイルスベクターを母核とする公知の発現ベクターを使用することができる。また、導入する宿主が植物の場合には、pBI系若しくはpRI系のバイナリーベクター等のプラスミドベクターやカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメゴールデンモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等のウイルスベクターを利用することができる。さらに、大腸菌、枯草菌又は酵母内でも複製可能なシャトルベクター、染色体中に相同又は非相同組換え可能なベクター、又は各メーカーから市販されている様々な宿主専用発現ベクターを利用してもよい。
(3)プロモーター
「プロモーター」は、遺伝子発現ベクターを導入した細胞において、下流(3’末端側)に配置された遺伝子の発現を制御することのできる遺伝子発現調節領域である。
プロモーターは、制御下の遺伝子(以下「対象遺伝子」と表記する)の発現場所に基づいて、ユビキタスプロモーター(全身性プロモーター)と部位特異的プロモーターに分類することができる。ユビキタスプロモーターは、宿主個体全体で対象遺伝子の発現を制御するプロモーターである。また、部位特異的プロモーターは、宿主の特定の細胞又は組織で対象遺伝子の発現を制御するプロモーターである。発現場所に関して、本発明のDsup遺伝子発現ベクターにおけるプロモーターは特に限定はされない。用途に合わせて適宜選択すればよい。
また、プロモーターには、発現の時期に基づいて構成的活性型プロモーター、発現誘導型プロモーター又は時期特異的活性型プロモーターに分類される。構成的活性型プロモーターは、宿主細胞内で対象遺伝子を恒常的に発現させることができる。発現誘導型プロモーターは、宿主細胞内で対象遺伝子の発現を任意の時期に誘導することができる。また、時期特異的活性型プロモーターは、宿主細胞内で対象遺伝子を発生段階の特定の時期にのみに発現誘導することができる。いずれのプロモーターも、宿主細胞内で対象遺伝子の過剰な発現をもたらし得ることから過剰発現型プロモーターと解することができる。発現時期に関しても、本発明のDsup遺伝子発現ベクターにおけるプロモーターは特に限定はされない。導入する細胞内において所望の発現時期に合わせて、適宜選択すればよい。
本発明のDsup遺伝子発現ベクターにおけるプロモーターは、Dsup遺伝子発現ベクターが導入される宿主細胞内で作動可能でなければならない。ここでいう「作動可能」とは、プロモーターとしての機能を発揮し、対象遺伝子を発現できることをいう。つまり、Dsup遺伝子発現ベクターにおけるプロモーターは、導入すべき宿主細胞によって決定される。例えば、ヒトの細胞に導入するのであれば、使用するプロモーターは、ヒト由来又はその近縁種由来のプロモーターであることが好ましい。
プロモーターの種類は、特に限定はしない。当該分野で公知のプロモーターを用いればよい。例えば、宿主が大腸菌であれば、作動可能なプロモーターとして、lac、trp若しくはtacプロモーター、又はファージ由来のT7、T3、SP6、PR若しくはPLプロモーター等が挙げられる。宿主が酵母であれば、作動可能なプロモーターとして、例えば、酵母解糖系遺伝子のプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、TPI1プロモーター、ADH2-4cプロモーター等が挙げられる。宿主が昆虫細胞であれば、作動可能なプロモーターとして、例えば、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモーター、バキュロウイルス即時型初期遺伝子1プロモーター、バキュロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモーター等が挙げられる。宿主がヒトをはじめとする動物細胞であれば、作動可能なプロモーターとして、RNAポリメラーゼII(PolII)系遺伝子プロモーター、RNAポリメラーゼIII(Pol III)系遺伝子プロモーター、U6snRNA遺伝子及びH1遺伝子のプロモーター等が挙げられる。宿主が植物細胞であれば、作動可能なプロモーターとして、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。
(4)標識遺伝子
「標識遺伝子」は、選抜マーカー又はレポータータンパク質とも呼ばれる標識タンパク質をコードする遺伝子である。「標識タンパク質」とは、その活性に基づいて標識遺伝子の発現の有無を判別することのできるポリペプチドをいう。活性の検出は、標識タンパク質の活性そのものを直接的に検出するものであってもよいし、色素のような標識タンパク質の活性によって発生する代謝物を介して間接的に検出するものであってもよい。検出は、生物学的検出(抗体、アプタマー等のペプチドや核酸の結合による検出を含む)、化学的検出(酵素反応的検出を含む)、物理的検出(行動分析的検出を含む)、又は検出者の感覚的検出(視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚による検出を含む)のいずれであってもよい。標識遺伝子は、Dsup遺伝子発現ベクターを保有する宿主細胞又は形質転換体を判別する目的、及び/又はDsupタンパク質等をモニタリングする目的で用いられる。
標識遺伝子がコードする標識タンパク質の種類は、当該分野で公知の方法によりその活性を検出可能な限り、特に限定はしない。好ましくは検出に際して形質転換体に対する侵襲性の低い標識タンパク質である。例えば、タグペプチド、薬剤耐性タンパク質、色素タンパク質、蛍光タンパク質、発光タンパク質等が挙げられる。
「タグペプチド」は、タンパク質を標識化することのできる十数アミノ酸〜数十アミノ酸からなる短ペプチドであって、タンパク質の検出用、精製用として用いられる。通常は、標識すべきタンパク質をコードする遺伝子の5’末端側又は3’末端側にタグペプチドをコードする塩基配列を連結し、タグペプチドとの融合タンパク質として発現させることで標識化する。タグペプチドは、当該分野で様々な種類が開発されているが、いずれのタグペプチドを使用してもよい。タグペプチドの具体例として、FLAG、HA、His、及びmyc等が挙げられる。
「薬剤耐性タンパク質」は、培地等に添加された抗生物質等の薬剤に対する抵抗性を細胞に付与するタンパク質であり、多くは酵素である。例えば、アンピシリンに対して抵抗性を付与するβラクタマーゼ、カナマイシンに対して抵抗性を付与するアミノグリコシド3’ホスホトランスフェラーゼ、テトラサイクリンに対して抵抗性を付与するテトラサイクリン排出トランスポーター、クロラムフェニコールに対して抵抗性を付与するCAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)等が挙げられる。
「色素タンパク質」は、色素の生合成に関与するタンパク質、又は基質の付与により色素による形質転換体の化学的検出を可能にするタンパク質であり、通常は酵素である。ここでいう「色素」とは、形質転換体に色素を付与することができる低分子化合物又はペプチドで、その種類は問わない。例えば、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニターゼ(GUS)、メラニン系色素合成タンパク質、オモクローム系色素、又はプテリジン系色素が挙げられる。
「蛍光タンパク質」は、特定波長の励起光を照射したときに特定波長の蛍光を発するタンパク質をいう。天然型及び非天然型のいずれであってもよい。また、励起波長、蛍光波長も特に限定はしない。具体的には、例えば、CFP、RFP、DsRed(3xP3-DsRedのような派生物を含む)、YFP、PE、PerCP、APC、GFP(EGFP、3xP3-EGFP等の派生物を含む)等が挙げられる。
本明細書で「発光タンパク質」とは、励起光を必要とすることなく発光することのできる基質タンパク質又はその基質タンパク質の発光を触媒する酵素をいう。例えば、基質タンパク質としてのルシフェリン又はイクオリン、酵素としてのルシフェラーゼが挙げられる。
標識遺伝子は、Dsup遺伝子発現ベクターにおいて、Dsup遺伝子の上流又は下流に連結した状態で、又はDsup遺伝子とは独立して、発現可能な状態で配置される。
(5)ターミネーター
「ターミネーター」は、前記プロモーターにより発現したDsup遺伝子の転写を終結できる配列である。ターミネーターの種類は、特に限定はしない。好ましくはプロモーターと同一生物種由来のターミネーターである。例えば、大腸菌であれば、リポポリプロテインlppの3’ターミネーター、trpオペロンターミネーター、amyBターミネーター、ADH1遺伝子のターミネーター等が使用できる。カイコ等の昆虫であれば、hsp70ターミネーター、SV40ターミネーター等が使用できる。植物であれば、ノパリン合成酵素(NOS)ターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)ターミネーター、CaMV 35Sターミネーターが挙げられる。一遺伝子発現制御においてゲノム上で前記プロモーターと対になっているターミネーターは特に好ましい。
(6)エンハンサー
「エンハンサー」は、ベクター内の遺伝子又はその断片の発現効率を増強できるものであれば特に限定はされない。
3−3.効果
本発明のDsup遺伝子発現ベクターは、宿主細胞内でDsup遺伝子の発現場所や発現時期を制御すると共に、宿主細胞内での発現を容易に行うことができる。
4.医薬組成物
4−1.概要
本発明の第4の態様は医薬組成物である。本態様の医薬組成物は、細胞内に投与することで、その細胞に活性酸素による障害抵抗性を付与することができる。この薬効により、過度の活性酸素の発生により生体内で生じる障害、例えば、高線量の放射線被曝による細胞死やDNA損傷を抑制し、骨髄や腸管等の組織損傷や発癌を軽減又は阻止することができる。
4−2.構成
(1)有効成分
本態様の医薬組成物は、第1態様に記載のDsupタンパク質、第2態様に記載のDsup遺伝子、又は第3態様に記載のDsup遺伝子発現ベクターを有効成分として含有する。医薬組成物に含まれるこの有効成分は、複数種の組み合わせであってもよい。例えば、Dsupタンパク質とDsup遺伝子発現ベクターの2つを一つの医薬組成物に含むこともできる。
本態様の医薬組成物に配合される有効成分の含有量は、有効成分がDsupタンパク質、Dsup遺伝子、又はDsup遺伝子発現ベクターのいずれであるか、及び/又はその有効量、医薬組成物の剤形、並びに後述する担体の種類によって異なるため、それぞれの条件を勘案して適宜定めればよい。
本明細書において「有効量」とは、Dsupタンパク質、Dsup遺伝子、又はDsup遺伝子発現ベクター(本明細書では、しばしば「Dsupタンパク質等」と表記する)が有効成分としての機能を発揮する上で必要な量であって、かつそれを適用する生体に対して有害な副作用をほとんど又は全く付与しない量をいう。ここで「有効成分としての機能」とは、投与した細胞に作用し、放射線照射等により細胞内で発生した活性酸素からその細胞を保護する機能である。この有効量は、被験体の情報、投与経路、及び投与回数等の条件によって変化し得る。
「被験体」とは、本態様の医薬組成物又は第5態様に記載の化粧品の適用対象となる動物個体をいう。動物個体には、脊椎動物、好ましくは哺乳類動物、例えばヒトをはじめとする霊長類、イヌ、ネコ、フェレット及びウサギ等の愛玩動物、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ及びラクダ等の家畜(競走馬を含む)、マウス、ラット及びモルモット等の実験動物が該当する。特に好ましい被験体はヒトである。また、「被験体の情報」とは、医薬組成物又は化粧品を適用する被験体の様々な個体情報であって、例えば、被験体の年齢(月齢、週齢)、体重、性別、全身の健康状態、薬剤感受性、併用薬物の有無等を含む。有効量、及びそれに基づいて算出される適用量は、個々の被験体の情報等に応じて決定される。この決定は、通常、医師又は獣医師の診断により決定される。
(2)担体
本態様の医薬組成物は、前記有効成分に加えて、薬学的に許容可能な担体を包含することができる。「薬学的に許容可能な担体」とは、送達担体、溶媒及び賦形剤が該当する。
(2−1)送達担体
本明細書において「送達担体」とは、有効成分であるDsupタンパク質等を細胞内に送達するDDS粒子として機能する担体である。DDS(ドラッグデリバリーシステム:薬剤送達システム)は、薬剤投与経路の最適化を目的とする医薬品の効果をよりよく発揮させるために設計された投与形態で、体内の薬物分布を量的、空間的、時間的に制御し、コントロールすることができる。
送達担体の種類は問わない。有効成分が適切に機能し得るように細胞内に送達することができる担体であれば、当該分野で公知のDDS粒子を用いることができる。例えば、ミセル、リポソーム、インテリジェントゲル、抗体等が挙げられる。有効成分を安定状態で的確に目的の細胞に導入することのできる送達効率のよい送達担体が好ましい。
(2−2)溶媒
溶媒には、例えば、水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る水溶液、薬学的に許容される油又は薬学的に許容される有機溶剤が挙げられるが、そのいずれであってもよい。水溶液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助剤を含む等張液、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液が挙げられる。補助剤としては、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム、その他にも低濃度の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。薬学的に許容される油としては、小麦胚芽油、杏子油、オリーブオイル、椿油、イブニングプリムローズオイル、アロエベラオイル等の植物油が挙げられる。薬学的に許容される有機溶剤としては、エタノール等が挙げられる。
(2−3)賦形剤
賦形剤には、例えば、乳化剤、pH調整剤、充填剤、硬化調節剤、滑沢剤等が挙げられる
乳化剤としては、界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、酢酸グリセリル、イソステアラミド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル)が例として挙げられる。
pH調整剤には、アルカリ剤としての水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、また酸剤としての、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリコール酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
充填剤としては、ワセリン、糖及び/又はリン酸カルシウムが例として挙げられる。
流動添加調節剤及び滑沢剤としては、ケイ酸塩、タルク、ステアリン酸塩又はポリエチレングリコールが例として挙げられる。
上記の他にも、必要であれば可溶化剤、懸濁剤、希釈剤、分散剤、安定剤、吸収促進剤、付湿剤、保湿剤、吸着剤、コーティング剤、着色剤、保存剤、防腐剤、抗酸化剤、香料、緩衝剤、等張化剤、ビタミン剤等を適宜含むこともできる。
上記担体は、主として医薬組成物の剤形形成を容易にし、また剤形及び有効成分の薬効(活性)を維持するために用いられるものであって、必要に応じて適宜使用すればよい。
(3)剤形
本態様の医薬組成物の剤形は、有効成分であるDsupタンパク質等を不活化させず、投与後に細胞内でその薬理効果を発揮し得る形態であれば、特に限定しないが、通常、剤形は、医薬組成物の投与法や処方条件等に左右され得る。一般に医薬組成物の投与法は、経口投与と非経口投与に大別できるので、それぞれの投与法に適した剤形にすればよい。例えば、経口投与に適した剤形としては、固形剤(錠剤、丸剤、舌下剤、カプセル剤、ドロップ剤、トローチ剤を含む)、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤(内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤を含む)等が挙げられる。固形剤は、さらに、必要に応じて当該技術分野で公知の剤皮を施した剤形、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠にすることができる。また、非経口投与は、全身投与及び局所投与に細分され、局所投与は組織内投与、経表皮投与、経粘膜投与及び経直腸的投与にさらに細分されるので、それぞれの投与法に適した剤形にすればよい。例えば、全身又は組織内投与に適した剤形としては、液剤である注射剤が挙げられる。経表皮投与又は経粘膜投与に適した剤形としては、液剤(塗布剤、点眼剤、点鼻剤、吸引剤を含む)、懸濁剤(乳剤、クリーム剤を含む)、粉剤(点鼻剤、吸引剤を含む)、ペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、硬膏剤等を挙げることができる。経直腸的投与に適した剤形としては、坐剤等を挙げることができる。各剤形の形状、大きさについては、いずれも当該分野で公知の剤型の範囲内にあればよく、特に限定はしない。
本態様の医薬組成物の製剤化は、製薬分野で公知の方法を利用すればよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Merck Publishing Co., Easton, Pa.)に記載の方法を用いることができる。
本態様の医薬組成物における有効成分の含有量は、使用する有効成分の種類及び/又はその有効量(前述)、並びに医薬組成物の剤型(形態、大きさを含む)、添加する担体の種類によって異なり、それぞれの条件において適宜選択される。一例として、医薬組成物の剤形が錠剤であれば、1錠重量に対して通常0.1重量%〜30重量%の有効成分を含むことができる。
注射剤として調製する場合には、有効成分を導入担体に内包させる等の処理を行い、薬学的に許容可能な担体である溶媒で溶解し、好ましくは血液と等張にした希釈剤を用いて当該分野で慣用されている方法により製造すればよい。一投与単位の注射剤中に含有される有効成分の含有量は、一投与単位あたり通常0.1%(w/v)〜30%(w/v)である。
4−3.用途
本態様の医薬組成物は、細胞内の活性酸素障害による様々な症状を緩和又は改善させる目的で使用することができる。
4−4.効果
本態様の医薬組成物によれば、高線量の放射線被曝等の様々な外的ストレスにより細胞内に過度に発生する活性酸素から、細胞死やDNA損傷等の障害を抑制し、骨髄や腸管等の組織損傷や発癌を軽減又は阻止することができる。
5.化粧品
5−1.概要
本発明の第5の態様は化粧品である。本態様の化粧品は、皮膚表面に投与することで、活性酸素による障害抵抗性を皮膚細胞に付与することができる。この薬効により、過度の活性酸素の発生により皮膚で生じる障害、例えば、細胞死やDNA損傷を抑制し、皮膚の老化を軽減又は遅延させることができる。
5−2.構成
(1)有効成分
本態様の化粧品は、有効成分として第1態様で記載したDsupタンパク質を有効成分とする。有効成分の基本構成は、第4態様の有効成分の構成と同じであることから、ここではその説明を省略する。
(2)担体
本態様の化粧品は、前記有効成分に加えて、薬学的に許容可能な担体を包含することができる。「薬学的に許容可能な担体」とは、送達担体、溶媒及び賦形剤が該当する。これらの構成も第4態様で記載した担体の構成に準ずる。
本態様の化粧品は、皮膚表面への塗布を通して使用する。したがって、化粧品の剤形は、経表皮投与に適した剤形にすればよい。例えば、液剤、懸濁剤(乳剤、クリーム剤を含む)、ペースト剤(軟膏剤を含む)、ゲル剤、硬膏剤等が挙げられる。
本態様の化粧品は、過度の活性酸素による皮膚の老化防止又はその改善用として適用されることから、適用対象部位は原則皮膚表面(表皮表面)である。したがって、投与方法は、前述したように全身又は局所の皮膚への塗布を介した経表皮投与である。
5−3.用途
本態様の化粧品は、有効成分であるDsupタンパク質の活性酸素の障害活性抑制作用に基づき、紫外線が原因で生じる皮膚の老化抑制を目的としたアンチエイジングスキンケア化粧品として使用することができる。
5−4.効果
本態様の化粧品の有効成分であるDsupタンパク質は、活性酸素による細胞死を抑制し、細胞の代謝を活性化させることから、外的ストレスによる変性から皮膚を保護し、健康的な肌を保つ効果も有する。
6.形質転換体
6−1.概要
本発明の第6の態様は、第3態様のDsup遺伝子発現ベクターを宿主細胞内に導入した形質転換体である。本発明の形質転換体は、Dsup遺伝子の発現により、活性酸素の細胞障害活性に対して抵抗性を獲得している。それ故に、高線量の放射線被曝等の外的ストレスに対しても耐性を有し、細胞死やDNA障害を抑制することができる。
6−2.構成
本明細書において「形質転換体」とは、第3態様のDsup遺伝子発現ベクターを含む細胞である。具体的には、第3態様のDsup遺伝子発現ベクターの導入により形質転換された形質転換体の第1世代、及び第2世代以降の後代をいう。
本明細書において「宿主(細胞)」とは、第3態様のDsup遺伝子発現ベクターの導入体で、そのDsup遺伝子発現ベクターに含まれる第2態様のDsup遺伝子の発現を可能にし、第1態様のDsupタンパク質を生産する細胞、組織又は個体をいう。本態様の形質転換体の宿主は、導入されたDsup遺伝子発現ベクターの複製が可能で、かつその発現ベクターに含まれる第2態様のDsup遺伝子を発現することができれば、特に限定されず、細菌、真菌、動物(細胞)又は植物(細胞)のいずれであってもよい。例として、細菌であれば、大腸菌、バチルス属(Bacillus)菌等が挙げられる。真菌であれば、糸状菌、担子菌及び酵母が挙げられる。動物であれば、無脊椎動物(昆虫、甲殻類を含む)、脊椎動物(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類動物を含む)が挙げられる。また、植物であれば、コケ類、シダ類、被子植物及び裸子植物が挙げられる。
本明細書において「後代」とは、第1世代の形質転換体から無性生殖又は有性生殖を介して得られる第2世代以降の形質転換体であって、かつ第3態様のDsup遺伝子発現ベクターを保持している個体をいう。例えば、単細胞微生物であれば、第1世代以降の形質転換体から分裂又は出芽等によって新たに生じた細胞(クローン体)で、Dsup遺伝子発現ベクターを保持している細胞が該当する。また、有性生殖を行う生物であれば、第1世代以降の形質転換体どうしの配偶子の接合により新たに生じた個体で、Dsup遺伝子発現ベクターを保持している個体が該当する。
6−3.形質転換体の作製
第3態様のDsup遺伝子発現ベクターを宿主細胞内に導入して本発明の形質転換体を調製する方法は、当該分野で公知の形質転換方法に準じて行えばよい。
宿主が細菌の場合には、例えば、ヒートショック法、カルシウムイオン法(例えば、リン酸カルシウム法)、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
宿主が酵母の場合には、例えば、リチウム法、エレクトロポレーション法等を用いればよい。
宿主が糸状菌又は植物の場合で、かつ前記発現ベクターがプラスミドベクターである場合には、形質転換方法は、当該分野で公知の任意の適当な方法を用いればよい。好適な形質転換方法として、アグロバクテリウム(Agrobacterium)法、プロトプラスト法、又はパーティクルガン法等を用いることができる。また、発現ベクターがウイルス発現ベクター(例えば、前述のCaMV、BGMV、TMV等)の場合には、第3態様に記載のDsup遺伝子発現ベクターを宿主細胞に感染させることによって、形質転換細胞を得ることができる。
上記遺伝子導入技術は、いずれも当該分野で公知であり、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)をはじめ、様々な文献に記載されているのでそれらを参考にすることができる。例えば、ウイルス発現ベクターを用いた遺伝子導入方法の詳細については、Hohnらの方法(Molecular Biology of Plant Tumors, Academic Press, New York, 1982、pp549)を参照すればよい。
また、宿主が動物細胞の場合には、リポフェクチン法(PNAS、1989、Vol.86、6077;PNAS、1987、Vol.84、7413)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(Virology、1973、Vol.52、456-467)、DEAE-Dextran法等が好適に用いられるが、この限りではない。
<実施例1:Dsupタンパク質の単離と同定>
(目的)
活動状態においても高線量の放射線に対して高い耐性能を有するヨコヅナクマムシから、活性酸素の障害活性からDNAを保護、修復する新規機構に関与するタンパク質を同定する。
(方法)
材料には、YOKOZUNA-1株を用いた。この株は、Horikawaら(Horikawa D.D., et al., 2008, Astrobiology, 8: 549-556)に記載のヨコヅナクマムシの単一個体に由来する株である。
クロマチン画分の単離は、基本的にMendez J.ら(Mendez J. et al., 2000, Mol Cell Biol, 20: 8602-8612)に記載の方法に準じた。まず500個体のYOKOZUNA-1株をバッファA(10mM HEPES-HCl pH 7.9, 10mM KCl, 1.5mM MgCl2, 0.34M sucrose, 10 % glycerol, 1 mM DTT, EDTAフリーのコンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル;Roche)中で氷冷しながらダウンス型ホモジナイザー(Radnoti, RD440910;クリアランス30〜40 μm)を用いてホモジナイズした。細胞膜を可溶化するために、Triton X-100(和光純薬;終濃度 0.1%)を添加し、氷中で8分間インキュベートした。次に、1,300×gの低速遠心で4℃にて4分間遠心し、核画分を沈殿物として分離した。続いて、その沈殿物をバッファAで2回洗浄した後、低張溶液であるバッファB(3mM EDTA, 0.2mM EGTA, 1mM DTT, EDTAフリーのコンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル;Roche)に移して低張ショックを与え、30分間氷冷しながら細胞を溶解した。1,700×gで4℃にて4分間遠心し、沈殿物として不溶性クロマチンを、また可溶性核画分を上清として得た。クロマチン画分は、バッファBで2回洗浄した後に回収した。各画分に含まれるタンパク質をSDS-PAGEで分離し、Silver Quest Staining Kit(Life technologies)を用いた銀染色法によって可視化した。
クロマチン画分に選択的なバンドをゲルから切り出し、トリプシン処理を行った後に、断片化したペプチドをnano LC-ESI-q-TOF MS/MSにより解析した。得られたMS/MSスペクトルを、MASCOT software (Matrix Science)を用いて、未公開のヨコヅナクマムシのゲノム配列から構築したアミノ酸配列データベースと照合し、一致するタンパク質の配列及び塩基配列を同定した。
(結果)
配列番号1で示すアミノ酸配列からなるDsupタンパク質を同定した。アミノ酸解析の結果、445個のアミノ酸残基からなるこのタンパク質には、既知のタンパク質やドメイン若しくはモチーフと相同性を示さないことが判明した。
<実施例2:Dsupタンパク質のDNA結合解析(1)>
(目的)
実施例1で同定されたDsupタンパク質がDNA結合タンパク質であることをゲルシフトアッセイにより検証する。
(方法)
Dsupリコンビナントタンパク質を作製するため、実施例1で同定した塩基配列をもとに配列番号3及び配列番号4で示す塩基配列からなるプライマーペアを設計し、ヨコヅナクマムシの成体から抽出したmRNAを逆転写して作製したcDNAを鋳型としてPCR(98℃ 30秒×1サイクル; 98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 30秒×30サイクル)でDsupのコード領域全長を増幅した。増幅産物をコールドショック発現ベクターpColdI(TaKaRa)のNdeIサイト及びXbaIサイト間にIn-Fusion HD Cloning Kitを用いて挿入し、N末端にHis6-タグの融合したDsupタンパク質の発現コンストラクト(pColdI-Dsup)を構築した。作製した発現コンストラクトを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、対数増殖期に終濃度0.1mMのIPTGを添加後、15℃で24時間振盪培養し、発現を誘導した。菌体を8M Urea buffer (8M Urea、250mM イミダゾール、100mM NaH2PO4、10mM Tris-Cl)にて溶解後、Ni-NTA HisBind Superflow Resin(Novagen)を用いたアフィニティクロマトグラフィにより、N末端にHis6-タグの融合したDsupタンパク質を精製した。250mMイミダゾールを含む8M Urea bufferで溶出した精製タンパク質は、微量透析器マイクロダイアライザー(日本ジェネティクス)を用いた透析法によりDNA結合バッファ (20mM HEPES pH 7.4、100mM KCl、10mM MgCl2、1mM DTT、4 % glycerol) に置換した。
ゲルシフトアッセイは、Chakraborteeら(Chakrabortee S., et al., 2010, Proc Natl Acad Sci USA, 107(37): 16084-16089)に記載の方法に準じた。Dsupリコンビナントタンパク質をDNA結合バッファ中で、直鎖状にしたpBluescriptII由来のDNAと共に室温で1時間インキュベートした。対照区として、Dsupタンパク質に代えてBSA又は大腸菌で発現させたGSTリコンビナントタンパク質を添加した。インキュベート後のサンプルをTBE中の0.8%アガロースゲルで電気泳動した。DNAをSYBR Green Iで染色して可視化した後、FMBIOIII (Hitachi Solutions)で検出した。
(結果)
図1に結果を示す。Dsupタンパク質を添加したレーン(Dsup)では、pBluescriptII由来の直鎖状DNAバンドは、予想される3kbpの位置には検出されず、著しく高い位置(矢印)で確認された。一方、対照区としてBSAタンパク質及びGSTタンパク質を添加したレーン(BSA及びGST)では、そのようなバンドシフトは確認されなかった(矢頭)。この結果から、Dsupタンパク質はDNA結合タンパク質であることが示唆された。
<実施例3:Dsupタンパク質のDNA結合に寄与する領域の探索>
(目的)
実施例2の結果からDsupタンパク質がDNA結合タンパク質であることが示唆された。そこで、Dsupタンパク質においてDNA結合に寄与する領域を、欠失変異体を用いた細胞内局在解析により確認する。
(方法)
Dsupタンパク質の欠失変異体を作製し、各変異体の細胞内局在性を検証した。図2で示すように、Dsupタンパク質は中央部に存在する両親媒性αへリックス領域を境として、それよりもN末端側の領域(N末端側領域)とC末端側の領域(C末端側領域)の3領域に分類した。まず、Dsup全長(Dsup-full)について、ヨコヅナクマムシ成体から抽出したRNAを逆転写して作製したcDNAを鋳型として、配列番号5及び配列番号6で示す塩基配列からなるプライマーペアを用いたPCR(98℃ 30秒×1サイクル;98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 8秒×30サイクル)でDsupのコード領域全長を増幅後、In-Fusion HD cloning kit(Takara)を用いてGFPのN末端側に融合するように発現ベクターpAcGFP1-N1 (Clontech)のAsp718サイト及びBamHIサイト間に挿入して作製した。得られた全長Dsupタンパク質とGFPのキメラタンパク質(Dsup-full-GFP)をコードする遺伝子発現コンストラクトを「pDsup-full-AcGFP1」とした。
Dsupの各領域を欠失させた発現コンストラクトは、pDsup-full-AcGFP1を鋳型としたインバース PCR法を用いて作製した。具体的には、配列番号7及び配列番号8(DsupΔN)、配列番号9及び配列番号10(DsupΔαH)、配列番号11及び配列番号12(DsupΔC)で示す塩基配列からなる各プライマーペアを用いたインバースPCR(98℃ 30秒×1サイクル;98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 30秒×30サイクル)を行い、一部領域を欠失したDNA断片を得た。制限酵素DpnI(New England Biolabs)を加えて鋳型プラスミドを消化した後、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)を用いてリン酸化し、T4リガーゼ(Takara)を用いてPCR産物をセルフライゲーションさせた。形質転換した大腸菌を培養後、FastGene Plasmid mini kit(日本ジェネティクス)を用いてプラスミドを抽出した。得られたN末端側領域欠失Dsupタンパク質とGFPのキメラタンパク質(DsupΔN-GFP)をコードする遺伝子発現コンストラクトを「pDsupΔN-AcGFP1」、αへリックス領域欠失Dsupタンパク質とGFPのキメラタンパク質(DsupΔαH-GFP)をコードする遺伝子発現ベクターを「pDsupΔαH-AcGFP1」、そしてC末端側領域欠失Dsupタンパク質とGFPのキメラタンパク質(DsupΔC-GFP)をコードする遺伝子発現ベクターを「pDsupΔC-AcGFP1」とした。
続いて、各遺伝子発現ベクターをX-tremeGENE 9 reagent(Roche)を用いて、添付のプロトコルに従ってHEK293T細胞にトランスフェクトした。ウシ胎仔血清(Corning)を10%含むDMEM(Dulbecco's modified essential medium;nacalai tesque)中で37℃、5%CO2下にて24時間インキュベートした後、Hoechst 33342 (Lonza)で核DNAを染色、可視化した。GFPの蛍光シグナルは共焦点顕微鏡LSM710 (Carl Zeiss)で観察した。
(結果)
図3に結果を示す。Dsup-full-GFP、DsupΔN-GFP、及びDsupΔαH-GFPでは、いずれもGFP蛍光シグナルが核ゲノムDNAと一致した。これは、Dsupタンパク質がDNA結合タンパク質であるという実施例2の結果を支持している。一方、DsupΔC-GFPは、GFP蛍光シグナルが核内ではなく細胞質で検出された。この結果から、Dsupタンパク質が核内でDNAと結合するためにはC末端側領域が必要であることが示唆された。
<実施例4:Dsupタンパク質のDNA結合解析(2)>
(目的)
Dsupタンパク質のDNA結合に寄与する領域がC末端側領域であることをゲルシフトアッセイにより確認する。
(方法)
Dsupタンパク質のC末端側領域のみ(Dsup-C)のリコンビナントタンパク質と、C末端側領域全体を欠失したDsupタンパク質(DsupΔCA)のリコンビナントタンパク質を作製するために、実施例2で使用したDsup全長の発現コンストラクトである「pColdI-Dsup」を鋳型として、一部領域を欠失した発現コンストラクトを実施例3に記載のインバースPCR法に準じて構築した。Dsup-C発現コンストラクト「pColdI-Dsup-C」は配列番号13及び配列番号14で示すプライマーを用いて、DsupΔCA発現コンストラクト「pColdI-DsupΔCA」は配列番号15及び配列番号12で示す塩基配列からなるプライマーペアを用いて作製した。
それぞれの欠失リコンビナントタンパク質の発現、精製、及びゲルシフトアッセイは、実施例2に記載の方法に準じて行った。対照区として実施例2で用いた全長Dsupタンパク質を添加したサンプル、及びタンパク質未添加のサンプルを調製した。
(結果)
図4に結果を示す。全長Dsupタンパク質を添加したレーン(Dsup-full)では、pBluescriptII由来の直鎖状DNAのバンドは、実施例2と同様に、矢印で示す位置にシフトし、ほとんど移動していないことが確認された。また、C末端側領域のみからなるDsup変異体タンパク質変異体(Dsup-C)においても全長Dsupタンパク質と同様のバンドシフトが確認された。
一方、C末端側領域が欠失したDsup変異体タンパク質変異体(DsupΔCA)では、バンドは予想される本来のDNAサイズである3kbpの位置(矢頭)で検出され、バンドシフトは起こらなかった。この結果は、Dsupタンパク質がC末端側領域にDNA結合領域を含むという実施例3の結果を支持している。以上の結果から、Dsupタンパク質は、C末端側領域にDNA結合領域を含むDNA結合タンパク質であることが立証された。
<実施例5:Dsupタンパク質によるDNA保護活性>
(目的)
Dsupタンパク質のDNA保護機能について検証する。
(方法)
まず、Dsupタンパク質を定常的に発現するHEK293細胞を作出した。具体的には、pCAGGS(Niwa H, et al., 1991, Gene, 108: 193-200)を改変したpCXN2KSのKpnIサイト及びNotIサイト間にDsupタンパク質の全長をコードする塩基配列(Dsup遺伝子)を挿入してDsup遺伝子発現コンストラクト(pCXN2-Dsup)を構築した。構築に使用したDsup遺伝子の全長DNAは、実施例2で作製したpColdI-Dsupを鋳型として配列番号16及び配列番号17で示す塩基配列からなるプライマーペアを用いたPCRによって増幅して得た。
Dsup遺伝子発現コンストラクトpCXN2-DsupをX-tremeGENE 9 DNA Transfection Reagent(Roche)を用いて実施例3と同様にHEK293細胞にトランスフェクトした。形質転換体を700 μg/mLのG418を添加したDMEM培地で3週間培養し、安定して生育する形質転換体を選択した。限界希釈法によってクローン化した細胞を得た後、ウェスタンブロッティング解析と免疫組織化学によってDsupタンパク質の発現を確認し、核内に局在し最も高い発現レベルのクローンを選択した。このクローンを「Dsup定常発現細胞」とし、以降の実施例で使用した。
放射線照射後のDNAに対するDsupタンパク質の効果を、中性コメットアッセイ(単一細胞電気泳動法)を用いて検証した。コメットアッセイは、CometAssay Kit(Trevigen)を用いて行った。
照射する高線量放射線は、X線とした。X線発生装置Pantak HF 350(島津製作所)を用いて、200 kV-20 mAで、0.5mmの銅及び1mm厚アルミニウムのフィルターを介して1.73 Gy/分の固定線量にて氷上で5GyのX線をDsup定常発現HEK293細胞及びHEK293細胞(対照用)に照射した(X線照射区)。対照区は、X線非照射区とした。次に、X線照射後の両実験区の細胞をトリプシン処理によって直ちに細胞懸濁液として回収し、溶解したアガロースと混合した後、スライドグラス上に薄層として固化させた。固化後、スライドグラスをTBEバッファに浸漬し、DNAを25V、4℃で電気泳動した。泳動されたDNAは、SYBR Green Iで染色して可視化し、Imager Z1(Carl Zeiss)で検出した。断片化DNA(コメット)は、“CASP”ソフトウェア(Konca K., et al., 2003, Mutation Research, 534: 15-20)を用いて定量した。
(結果)
図5に結果を示す。X線照射区において、Dsup定常発現HEK293細胞(Dsup)では、HEK293細胞(Cont.)と比較してDNAの断片化が有意に抑制された。この結果は、Dsupタンパク質がDNAに結合し、X線等の高線量放射線による障害からDNAを保護していることを示唆している。
<実施例6:Dsupタンパク質のDNA損傷抑制作用>
(目的)
Dsupタンパク質が高線量の放射線照射によるDNA損傷からDNAを保護していることを確認する。
(方法)
実施例5に記載のDsup定常発現HEK293細胞にX線を照射した後、DNA損傷箇所を反映するγ-H2AXを免疫染色法により検出して、細胞当たりのFoci数(γ-H2AXの集積箇所数)を定量した。まず、X線発生装置Pantak HF 350(島津製作所)を用いて、1GyのX線をDsup定常発現HEK293細胞と対照用HEK293細胞に照射した。照射1時間後の細胞を、4%ホルムアルデヒドを含むPBSで15分間固定した。固定後に細胞を0.5% Triton X-100を含むPBSで15分間膜透過処理し、10%のヤギ血清を含むPBSで1時間ブロッキングした。その後、細胞を1次抗体である抗リン酸化ヒストンH2A.X(Ser139)モノクローナル抗体JBW301(Merck Millipore)と1時間反応させ、続いて、PBSで3回洗浄した後、2次抗体のAlexa Fluor 488標識抗マウスIgG抗体(Molecular Probes, A-11001)と45分間反応させた。核DNAは、DAPI(Life technologies)で対比染色した。全ての工程は、基本的に室温で行った。蛍光シグナルは、共焦点顕微鏡LSM710 (Carl Zeiss)を用いて観察し、各細胞につき1.00 μm間隔のZ軸光学切片画像10枚を撮影した。ImageJ version 1.47を用いて、10枚の画像を重ねあわせた後2値化した。γ-H2AXのfoci数は、Caiら(Cai, Z., et al., 2009, Int. J. Radiat. Biol., 85: 262-271)に記載の方法に準じて2値化画像をもとにカウントした。各群につき少なくとも70個の核について評価した。
また、DNA損傷の抑制作用がDsupタンパク質に依存していることをRNAiによるDsupノックダウン実験により検証した。Dsup mRNAをノックダウンするための標的配列として配列番号18で示す塩基配列からなるsiDsupを決定し、当該配列をもつ2本鎖RNAを発現・形成させるためのshRNAとして配列番号19で示す塩基配列をもつ「shDsup」を設計した。上記配列siDsup及びshDsupの設計は、オンライン解析ソフトウェアsiDirect(Naito Y., et al., 2009, BMC Bioinformatics, 10: 392)及びBLOCK-iT RNAi Designer(Thermo Fisher Scientific)に基づいて行った。shRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖として配列番号20及び配列番号21で示す塩基配列からなる2種のオリゴヌクレオチドを合成し、混合して加熱冷却することで互いにアニールさせた。形成された2本鎖DNAをpLKO.1 puro(Stewart S., et al., 2003, RNA, 9: 493-501)のAge1サイト及びECoR1サイト間に挿入して、shDsup発現ベクター「pLKO.1-shDsup」を構築した。及びこの発現ベクターをDsup定常発現HEK293細胞にトランスフェクトして、2 μg/mLのピューロマイシン処理によって形質転換細胞を選択した後、限界希釈法によってクローン化した。なお、pLKO.1-shDsupは、細胞内で発現後、プロセシングされ、最終的に配列番号18で示す塩基配列からなるsiDsupを生じる。
shDsupの導入によるDsup mRNAの発現量の低下は、定量的RT-PCRにより確認した。shRNA発現ベクターを安定導入した細胞及び、対照としてDsup定常発現HEK293細胞からRNeasy mini kit(Qiagen)を用いて、付属のプロトコルに従いtotal RNAを抽出した。逆転写反応は、PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser(Perfect Real Time)(TaKaRa)を用いて付属のプロトコルに従い行った。Dsup遺伝子の発現量は、配列番号22で示す塩基配列からなるqPCR-Dsup_F及び配列番号23で示す塩基配列からなるqPCR-Dsup_Rのプライマーペア,を用いて、SYBR premix Ex Taq II(Takara)及びLightCycler 480 Instrument II(Roche)を用いて定量的リアルタイムPCRにより測定した。内部標準としてヒトのβ-actinを用い、配列番号24で示す塩基配列からなるqPCR-β-actin_F及び配列番号25で示す塩基配列からなるqPCR-β-actin_Rのプライマーペアにより定量した後、Dsup mRNAの相対発現量の補正を行い、ノックダウン効率を検証した。
(結果)
図6にDsup mRNAの定量的RT-PCRの結果を示す。shDsupを発現しているDsup定常発現HEK293細胞では、shDsup未処理のDsup定常発現HEK293細胞と比較して、細胞中のDsup mRNAの発現量が約25%にまで有意に低下しており、Dsupに対するRNAiが機能していることが示された。
また図7に、γ-H2AXのFoci数の定量結果を示す。Dsup定常発現HEK293細胞では、X線照射後のγ-H2AXのFoci数が対照用のHEK293細胞と比較して約50%減少したが、shDsupを発現しているDsup定常発現HEK293細胞では、HEK293細胞と同程度まで増加した。
上記の結果から、Dsup定常発現HEK293細胞における放射線照射による障害からのDNAの保護は、Dsupタンパク質に依存したものであることが確認された。
<実施例7:Dsupタンパク質存在下における放射線照射後の細胞の代謝活性>
(目的)
Dsup定常発現HEK293細胞における放射線照射後の細胞の代謝活性を検証する。
(方法)
細胞の代謝活性は、細胞の示す還元力を指標として測定した。Dsup定常発現HEK293細胞及び対照用のHEK293細胞をそれぞれPLLコート24ウェルプレート(Iwaki)に1ウェル当たり1000細胞を播種した。24時間インキュベーションした後(1dps: days post seeding)、X線発生装置Pantak HF 350(島津製作所)を用いて前述の条件で4GyのX線を照射した。放射線照射を行わない実験区(0Gy)を対照区とした。放射線照射後8dpsまでの期間、24時間ごとに代謝活性を測定した。代謝活性の測定は、PrestoBlue Cell Viability Reagent (Invitrogen)を用い、添付のプロトコルに従って同試薬を細胞に添加して2時間インキュベートした後に、Spectra max Gemini EM(Molecular Devices)を用いて、蛍光量として代謝活性を測定した。最初の2日間は、反応時間を24時間に延長し、少数の細胞による比較的弱い代謝活性を検出した。各条件について3つのウェルを用いて実験を行った。
(結果)
結果を図8に示す。図8は細胞の代謝活性を示す。AはOGy(X線非照射)、Bは4Gy(X線照射)の図である。A及びB共にDsup細胞(Dsup)では、HEK293細胞(Cont.)よりも有意に高い代謝活性を示した。特にBの4GyのX線を照射したHEK293細胞は代謝活性が顕著に減少したのに対して、Dsup定常発現HEK293細胞は、代謝活性がX線照射の時間経過と共に増加した。この結果は、Dsupタンパク質を発現している細胞では、放射線照射後も細胞群の総代謝活性が増加する能力を維持することを示唆している。
<実施例8:Dsupタンパク質による放射線照射後の細胞増殖能>
(目的)
Dsupタンパク質のDNA保護による放射線照射に対する細胞増殖能の維持について検証する。
(方法)
基本的な操作は、実施例7に準じて行った。8dps及び10dpsに、細胞をPBSで緩やかに洗浄した後、トリプシン処理によって懸濁して、回収した。各dpsの細胞数を自動細胞カウンターZ1 Particle Counter(Beckman Coulter)を用いてカウントし、8dpsの総細胞数を1としたときの10dpsの総細胞数から細胞増殖率を算出した。
(結果)
結果を図9に示す。放射線被照射細胞群において、Dsup定常発現HEK293細胞(Dsup)では、4GyのX線照射後も細胞の増殖が維持された。一方、Dsup定常発現HEK293細胞内でshDsupを発現する細胞株(shDsup)では細胞増殖率は減少し、HEK293細胞(Cont.)と大きな差が見られなかった。この結果は、Dsupタンパク質により細胞に放射線耐性が付与されたことを示している。

Claims (9)

  1. 以下の(a)〜(c)で示すいずれかのアミノ酸配列からなり、DNA傷害に対する抑制作用を有するタンパク質。
    (a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
    (b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、及び
    (c)配列番号1に示すアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列
  2. 請求項1に記載のDNA傷害に対する抑制作用を有するタンパク質をコードする遺伝子。
  3. 以下の(a)〜(d)で示すいずれかの塩基配列からなる請求項2に記載の遺伝子。
    (a)配列番号2に示す塩基配列、
    (b)配列番号2に示す塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列、
    (c)配列番号2に示す塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列、及び
    (d)配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
  4. 請求項2又は3に記載の遺伝子を発現可能な状態で包含する遺伝子発現ベクター。
  5. 請求項1に記載のDNA傷害に対する抑制作用を有するタンパク質からなるDNA傷害抑制剤。
  6. 請求項4に記載の遺伝子発現ベクターからなるDNA傷害抑制剤。
  7. 請求項1に記載のDNA傷害に対する抑制作用を有するタンパク質、請求項2又は3に記載の遺伝子、又は請求項4に記載の遺伝子発現ベクターを有効成分とする医薬組成物。
  8. 請求項1に記載のDNA傷害に対する抑制作用を有するタンパク質を有効成分とする化粧品。
  9. 請求項4に記載の遺伝子発現ベクターを包含する形質転換体。
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