概要
一般に図を参照すると、いくつかの実施形態による様々な極値探索制御(ESC)システムおよび方法が示されている。一般に、ESCは、ある特定の性能指数を最適化するためのシステムの未知のおよび/または時変入力を動的に探索することができる自己最適化制御戦略のクラスである。ESCは、ディザ信号の使用を通じた勾配探索の力学的実現と見なすことができる。システム入力uに対するシステム出力yの勾配は、システム動作にわずかに摂動を与え、復調手段を適用することによって得ることができる。
システム性能の最適化は、閉ループシステムのフィードバックループを使用することによって勾配をゼロに至らせることにより、得ることができる。ESCは、非モデルベースの制御戦略であり、それは、ESCにとって、システムを最適化するための制御システムのモデルは必要ではないことを意味する。ESCの様々な実装形態については、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)および(特許文献9)で詳細に説明されている。これらの特許および特許出願の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、極値探索コントローラは、プラントに提供される制御入力uに摂動を与えるために確率論的励起信号qを使用する。コントローラは、確率論的信号を生成するように構成された確率論的信号ジェネレータを含み得る。確率論的信号は、ランダム信号(例えば、ランダムウォーク信号、白色雑音信号など)、非周期的信号、予測不可能な信号、外乱信号、または、他の任意のタイプの非決定論的もしくは非反復信号であり得る。いくつかの実施形態では、確率論的信号は、非ゼロ平均を有する。確率論的信号は、励起信号qを生成するために積分することができる。
確率論的励起信号qは、制御入力uに対するプラント出力(すなわち、性能変数y)の勾配を推定するのに十分な制御入力uの変動を提供することができる。確率論的励起信号qは、従来の周期的ディザ信号vよりもいくつかの利点を有する。例えば、確率論的励起信号qは、従来の周期的ディザ信号vほど認知できない。従って、制御入力uに対する確率論的励起信号qの効果は、従来の周期的ディザ信号vによって生じる周期的振動ほど顕著ではない。確率論的励起信号qの別の利点は、ディザ周波数ωvがもはや必須パラメータではないため、コントローラの調整がより簡単であることである。それに従って、コントローラは、確率論的励起信号qを生成する際にプラントの固有周波数を知る必要も、推定する必要もない。
いくつかの実施形態では、極値探索コントローラは、制御入力uに対する性能変数yの勾配を推定するために、再帰的推定技法を使用する。例えば、コントローラは、勾配
の推定を生成するために、再帰的最小二乗(RLS)推定技法を使用することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、RLS推定技法の一部として指数忘却を使用する。例えば、コントローラは、再帰的推定技法で使用される性能変数y、制御入力uおよび/または他の変数の指数加重移動平均(EWMA)を計算するように構成することができる。指数忘却は、データ格納に必要な量を低減し(バッチ処理と比べて)、コントローラが最近のデータに対してより感度が高い状態ひいては最適点のシフトに対してより感応度が高い状態のままでいられるようにする。
いくつかの実施形態では、極値探索コントローラは、性能変数yを制御入力uと関連付ける正規化相関係数ρを推定する。相関係数ρは、性能勾配
と関連付ける(例えば、
に比例する)ことができるが、性能変数yの範囲に基づいてスケーリングすることができる。例えば、相関係数ρは、範囲−1≦ρ≦1にスケーリングされた性能勾配
の正規化尺度であり得る。正規化相関係数ρは、性能変数yと制御入力uとの間の共分散、性能変数yの分散および制御入力uの分散に基づいて推定することができる。いくつかの実施形態では、正規化相関係数ρは、再帰的推定プロセスを使用して推定することができる。
相関係数ρは、性能勾配
の代わりに、フィードバックコントローラによって使用することができる。例えば、フィードバックコントローラは、相関係数ρをゼロに至らせるために、制御入力uのDC値wを調整することができる。性能勾配
の代わりに相関係数ρを使用する利点の1つは、フィードバックコントローラによって使用される調整パラメータが、性能変数yのスケールに基づいてカスタマイズまたは調整する必要のない調整パラメータの一般集合であり得ることである。この利点により、フィードバックコントローラに対する制御ループ特有の調整を実行する必要性が排除され、フィードバックコントローラは、多くの異なる制御ループおよび/またはプラントにわたって適用可能な調整パラメータの一般集合を使用できるようになる。
極値探索コントローラの追加の特徴および利点については、以下でさらに詳細に説明する。
建物およびHVACシステム
ここで図1、2を参照すると、いくつかの実施形態による、極値探索制御システムを実装することができる建物10およびHVACシステム20が示されている。本開示のESCシステムおよび方法は主に建物のHVACシステムの文脈において説明されているが、ESCは一般に対象の変数を最適化または規制するいかなるタイプの制御システムにも適用できることを理解すべきである。例えば、本開示のESCシステムおよび方法は、様々なタイプのエネルギー生産システムまたはデバイス(例えば、パワープラント、蒸気または風力タービン、太陽電池パネル、燃焼システムなど)によって生産されるエネルギーの量を最適化するため、ならびに/あるいは、様々なタイプのエネルギー消費システムまたはデバイス(例えば、電子回路、機械設備、航空宇宙および陸上車両、建築設備、HVACデバイス、冷凍システムなど)によって消費されるエネルギーの量を最適化するために使用することができる。
様々な実装形態では、ESCは、対象の変数に対するセットポイントを達成するように(例えば、測定または計算された入力とセットポイントとの差を最小化することによって)および/または対象の変数を最適化する(例えば、出力変数を最大化または最小化する)ように機能するいかなるタイプのコントローラにおいても使用することができる。様々なタイプのコントローラ(例えば、モータコントローラ、電力コントローラ、流体コントローラ、HVACコントローラ、照明コントローラ、化学物質コントローラ、プロセスコントローラなど)および様々なタイプの制御システム(例えば、閉ループ制御システム、開ループ制御システム、フィードバック制御システム、フィードフォワード制御システムなど)において、ESCを容易に実装できることが企図される。そのような実装形態はすべて、本開示の範囲内であると見なすべきである。
特に図1を参照すると、建物10の斜視図が示されている。建物10は、HVACシステム20によって供給される。HVACシステム20は、冷凍機22、ボイラ24、屋上冷却ユニット26および複数の空気処理ユニット(AHU)36を含むように示されている。HVACシステム20は、流体循環システムを使用して、建物10に対する暖房および/または冷房を提供する。循環流体は、冷房が必要かまたは暖房が必要かに応じて、冷凍機22で冷却することも、ボイラ24で加熱することもできる。ボイラ24は、可燃性物質(例えば、天然ガス)を燃やすことによって循環流体に熱を追加することができる。冷凍機22は、循環流体と熱交換器(例えば、蒸発器)内の別の流体(例えば、冷媒)とを熱交換関係に置くことができる。冷媒は、蒸発プロセスの間に循環流体から熱を除去し、それにより、循環流体を冷却する。
冷凍機22またはボイラ24からの循環流体は、配管32を介してAHU 36に輸送することができる。AHU 36は、循環流体とAHU 36中を流れる気流とを熱交換関係に置くことができる。例えば、気流は、循環流体が流れるファンコイルユニットまたは他の空気調節端末ユニットの配管上を流れることができる。AHU 36は、気流に対する加熱または冷却を提供するために、気流と循環流体との間で熱を伝達することができる。加熱または冷却された空気は、給気ダクト38を含む空気分配システムを介して建物10に送達することができ、還気ダクト40を介してAHU 36に戻ることができる。図1では、HVACシステム20は、建物10の各フロアに別個のAHU 36を含むように示されている。他の実施形態では、単一のAHU(例えば、屋上AHU)が複数のフロアまたはゾーンに空気を供給することができる。AHU 36からの循環流体は、配管34を介して冷凍機22またはボイラ24に戻ることができる。
いくつかの実施形態では、冷凍機22の冷媒は、循環流体から吸熱次第、蒸発する。蒸気冷媒は、冷凍機22内の圧縮機に提供することができ、圧縮機では、冷媒の温度および圧力は増加する(例えば、回転羽根車、スクリュ圧縮機、スクロール圧縮機、往復圧縮機、遠心圧縮機などを使用して)。圧縮された冷媒は、冷凍機22内の凝縮器に放出することができる。いくつかの実施形態では、水(または、別の冷却流体)は、冷媒蒸気から吸熱するために冷凍機22の凝縮器の管中を流れ、それにより、冷媒は凝縮する。凝縮器の管中を流れる水は、配管28を介して冷凍機22から屋上冷却ユニット26に送り出すことができる。冷却ユニット26は、ファン駆動冷却またはファン駆動蒸発を使用して、水から熱を除去することができる。屋根ユニット26内の冷却水は、配管30を介して冷凍機22に戻すことができ、サイクルが繰り返される。
ここで図2を参照すると、いくつかの実施形態による、HVACシステム20の一部分を示すブロック図がさらに詳細に示されている。図2では、AHU 36は、エコノマイザタイプの空気処理ユニットとして示されている。エコノマイザタイプの空気処理ユニットは、加熱または冷却のために空気処理ユニットによって使用される外気および還気の量を変動させる。例えば、AHU 36は、還気ダクト40を介して建物10から還気82を受け取り、給気ダクト38を介して建物10に給気86を送達することができる。AHU 36は、給気86を形成するために組み合わせる外気80および還気82の量を制御するために、排気ダンパ60、混合ダンパ62および外気ダンパ64を操作するように構成することができる。混合ダンパ62を通過しない還気82は、AHU 36から排気ダンパ60を通じて排気84として排出することができる。
ダンパ60〜64の各々は、アクチュエータによって操作することができる。図2に示されるように、排気ダンパ60は、アクチュエータ54によって操作され、混合ダンパ62は、アクチュエータ56によって操作され、外気ダンパ64は、アクチュエータ58によって操作される。アクチュエータ54〜58は、通信リンク52を介してAHUコントローラ44と通信することができる。AHUコントローラ44は、1つまたは複数の制御アルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、ESCアルゴリズム、PID制御アルゴリズム、モデル予測制御アルゴリズムなど)を使用してアクチュエータ54〜58を制御するように構成されたエコノマイザコントローラであり得る。AHUコントローラ44によって使用することができるESC方法の例は、図8、9を参照してさらに詳細に説明する。
アクチュエータ54〜58は、AHUコントローラ44から制御信号を受信し、AHUコントローラ44にフィードバック信号を提供することができる。フィードバック信号は、例えば、現在のアクチュエータもしくはダンパ位置の表示、アクチュエータによって与えられたトルクもしくは力の量、診断情報(例えば、アクチュエータ54〜58によって実行された診断テストの結果)、ステータス情報、試運転情報、構成設定、較正データ、および/または、アクチュエータ54〜58によって収集、格納もしくは使用することができる他のタイプの情報もしくはデータを含み得る。
依然として図2を参照すると、AHU 36は、冷却コイル68、加熱コイル70およびファン66を含むように示されている。いくつかの実施形態では、冷却コイル68、加熱コイル70およびファン66は、給気ダクト38内に配置される。ファン66は、給気86が冷却コイル68および/または加熱コイル70中を流れることを強いるように構成することができる。AHUコントローラ44は、給気86の流量を制御するために、通信リンク78を介してファン66と通信することができる。冷却コイル68は、配管32を介して冷凍機22から冷却流体を受け取り、配管34を介して冷凍機22に冷却流体を戻すことができる。弁92は、冷却コイル68に提供される冷却流体の量を制御するために、配管32または配管34に沿って配置することができる。加熱コイル70は、配管32を介してボイラ24から加熱流体を受け取り、配管34を介してボイラ24に加熱流体を戻すことができる。弁94は、加熱コイル70に提供される加熱流体の量を制御するために、配管32または配管34に沿って配置することができる。
弁92、94の各々は、アクチュエータによって制御することができる。図2に示されるように、弁92は、アクチュエータ88によって制御され、弁94は、アクチュエータ90によって制御される。アクチュエータ88、90は、通信リンク96、98を介してAHUコントローラ44と通信することができる。アクチュエータ88、90は、AHUコントローラ44から制御信号を受信し、コントローラ44にフィードバック信号を提供することができる。いくつかの実施形態では、AHUコントローラ44は、給気ダクト38(例えば、冷却コイル68および加熱コイル70の下流)に配置された温度センサ72から給気温度の測定値を受信する。しかし、温度センサ72は必須ではなく、いくつかの実施形態では、含めなくともよい。
AHUコントローラ44は、給気86に提供される加熱または冷却の量を調節するために(例えば、給気86に対するセットポイント温度を達成するためまたはセットポイント温度範囲内に給気86の温度を維持するために)、アクチュエータ88、90を介して弁92、94を操作することができる。弁92、94の位置は、冷却コイル68または加熱コイル70によって給気86に提供される冷却または加熱の量に影響を与え、所望の給気温度を達成するために消費されるエネルギーの量と相関させることができる。様々な実施形態では、弁92、94は、AHUコントローラ44またはHVACシステム20用の別個のコントローラによって操作することができる。
AHUコントローラ44は、通信リンク96、98を介して弁92、94の位置をモニタすることができる。AHUコントローラ44は、ESC制御技法を使用して最適化される変数として弁92、94の位置を使用することができる。AHUコントローラ44は、弁92、94の最適または目標位置を達成するために、ダンパ60〜64の位置を決定および/または設定することができる。弁92、94の最適または目標位置は、セットポイント給気温度を達成するためにHVACシステム20によって使用される機械式の加熱または冷却の最小量(例えば、弁92、94を通過する最小流体流量)に相当する位置であり得る。
依然として図2を参照すると、HVACシステム20は、監視コントローラ42およびクライアントデバイス46を含むように示されている。監視コントローラ42は、HVACシステム20用の企業レベルのコントローラ、アプリケーションもしくはデータサーバ、ヘッドノード、マスタコントローラまたはフィールドコントローラとして機能する1つまたは複数のコンピュータシステム(例えば、サーバ、BASコントローラなど)を含み得る。監視コントローラ42は、同様のまたは異種のプロトコル(例えば、LON、BACnetなど)に従って、通信リンク50を介して、複数の下流の建物システムまたはサブシステム(例えば、HVACシステム、セキュリティシステムなど)と通信することができる。
いくつかの実施形態では、AHUコントローラ44は、監視コントローラ42から情報(例えば、コマンド、セットポイント、動作境界など)を受信する。例えば、監視コントローラ42は、高いファン速度制限および低いファン速度制限をAHUコントローラ44に提供することができる。低い制限は、頻繁なコンポーネントおよび電力負荷が大きいファンの起動を回避することができる一方で、高い制限は、ファンシステムの機械または熱制限近くの動作を回避することができる。様々な実施形態では、AHUコントローラ44および監視コントローラ42は、分離することも(図2に示されるように)、統合することもできる。統合される実装形態では、AHUコントローラ44は、監視コントローラ42のプロセッサによって実行するように構成されたソフトウェアモジュールであり得る。
クライアントデバイス46は、HVACシステム20、そのサブシステムおよび/またはデバイスを制御、閲覧または別の方法で相互作用するための1つまたは複数のヒューマンマシンインタフェースまたはクライアントインタフェース(例えば、グラフィカルユーザインタフェース、報告用のインタフェース、テキストベースのコンピュータインタフェース、顧客に直接対応するウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバなど)を含み得る。クライアントデバイス46は、コンピュータワークステーション、クライアント端末、リモートもしくはローカルインタフェース、または、他の任意のタイプのユーザインタフェースデバイスであり得る。クライアントデバイス46は、据置型端末でも、モバイルデバイスでもよい。例えば、クライアントデバイス46は、デスクトップコンピュータ、ユーザインタフェースを有するコンピュータサーバ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、PDA、または、他の任意のタイプのモバイルもしくは非モバイルデバイスであり得る。
周期的ディザ信号を伴う極値探索制御システム
ここで図3を参照すると、いくつかの実施形態による、周期的ディザ信号を伴う極値探索制御(ESC)システム300のブロック図が示されている。ESCシステム300は、極値探索コントローラ302およびプラント304を含むように示されている。制御理論上のプラントは、プロセスと1つまたは複数の機械制御出力との組合せである。例えば、プラント304は、1つまたは複数の機械制御アクチュエータおよび/またはダンパを介して建物空間内の温度を制御するように構成された空気処理ユニットであり得る。様々な実施形態では、プラント304は、冷凍機操作プロセス、ダンパ調整プロセス、機械式冷却プロセス、換気プロセス、冷凍プロセス、または、プラント304への入力変数(すなわち、操作変数u)がプラント304からの出力(すなわち、性能変数y)に影響を与えるように調整される他の任意のプロセスを含み得る。
極値探索コントローラ302は、極値探索制御論理を使用して、操作変数uを調節する。例えば、コントローラ302は、性能勾配pを抽出するために、周期的(例えば、正弦波)摂動信号またはディザ信号を使用して、操作変数uの値に摂動を与えることができる。操作変数uは、フィードバック制御ループによって決定することができる性能変数uのDC値に周期的振動を加えることによって摂動を与えることができる。性能勾配pは、操作変数uに対する性能変数yの勾配または傾きを表す。コントローラ302は、極値探索制御論理を使用して、性能勾配pをゼロに至らせる操作変数uの値を決定する。
コントローラ302は、入力インタフェース310を介してプラント304からフィードバックとして受信された性能変数yの測定値または他の表示に基づいて、操作変数uのDC値を決定することができる。プラント304からの測定値は、これらに限定されないが、プラント304の状態についてセンサから受信された情報またはシステムの他のデバイスに送信された制御信号を含み得る。いくつかの実施形態では、性能変数yは、弁92、94のうちの1つの測定または観察された位置である。他の実施形態では、性能変数yは、測定もしくは計算された電力消費量、ファン速度、ダンパ位置、温度、または、プラント304によって測定もしくは計算することができる他の任意の変数である。性能変数yは、極値探索コントローラ302が極値探索制御技法を介して最適化しようと努める変数であり得る。性能変数yは、プラント304によって出力するかまたはプラント304において観察し(例えば、センサを介して)、入力インタフェース310において極値探索コントローラに提供することができる。
入力インタフェース310は、性能勾配314を検出するために、性能変数yを性能勾配プローブ312に提供する。性能勾配314は、関数y=f(u)の傾きを示すことができ、式中、yは、プラント304から受信される性能変数を表し、uは、プラント304に提供される操作変数を表す。性能勾配314がゼロの場合は、性能変数yは極値(例えば、最大または最小)を有する。従って、極値探索コントローラ302は、性能勾配314をゼロに至らせることによって性能変数yの値を最適化することができる。
操作変数アップデータ316は、性能勾配314に基づいて、更新済みの操作変数uを生成する。いくつかの実施形態では、操作変数アップデータ316は、性能勾配314をゼロに至らせるための積分器を含む。次いで、操作変数アップデータ316は、出力インタフェース318を介してプラント304に更新済みの操作変数uを提供する。いくつかの実施形態では、操作変数uは、出力インタフェース318を介してダンパ60〜64(図2)のうちの1つまたはダンパ60〜64に影響を与えるアクチュエータに制御信号として提供される。プラント304は、セットポイントとして操作変数uを使用して、ダンパ60〜64の位置を調整することができ、それにより、温度制御空間に提供される外気80と再循環気83の相対的比率を制御することができる。
ここで図4を参照すると、いくつかの実施形態による、周期的ディザ信号を伴う別のESCシステム400のブロック図が示されている。ESCシステム400は、プラント404および極値探索コントローラ402を含むように示されている。コントローラ402は、極値探索制御戦略を使用して、プラント404から出力として受信された性能変数yを最適化する。性能変数yを最適化することは、yを最小化すること、yを最大化すること、セットポイントを達成するようにyを制御することまたは性能変数yの値を別の方法で規制することを含み得る。
プラント404は、図3を参照して説明されるようなプラント304と同じものでも、プラント304と同様のものでもよい。例えば、プラント404は、プロセスと1つまたは複数の機械制御出力との組合せであり得る。いくつかの実施形態では、プラント404は、1つまたは複数の機械制御アクチュエータおよび/またはダンパを介して建物空間内の温度を制御するように構成された空気処理ユニットである。他の実施形態では、プラント404は、冷凍機操作プロセス、ダンパ調整プロセス、機械式冷却プロセス、換気プロセス、または、1つもしくは複数の制御入力に基づいて出力を生成する他の任意のプロセスを含み得る。
プラント404は、入力ダイナミクス422、性能マップ424、出力ダイナミクス426および外乱dの組合せとして数学的に表現することができる。いくつかの実施形態では、入力ダイナミクス422は、線形時不変(LTI)入力ダイナミクスであり、出力ダイナミクス426は、LTI出力ダイナミクスである。性能マップ424は、静的非線形性能マップであり得る。外乱dは、プロセス雑音、測定雑音またはその両方の組合せを含み得る。プラント404のコンポーネントが図4に示されているが、ESCを適用するためにプラント404の実際の数学的モデルを知っている必要はないことに留意すべきである。
プラント404は、出力インタフェース430を介して極値探索コントローラ402から制御入力u(例えば、制御信号、操作変数など)を受信する。入力ダイナミクス422は、制御入力に基づく関数信号xを生成するために、制御入力uを使用することができる(例えば、x=f(u))。関数信号xは、性能マップ424に送ることができ、性能マップ424は、関数信号の関数として出力信号zを生成する(すなわち、z=f(x))。出力信号zは、出力ダイナミクス426を通過して信号z’を生成することができ、信号z’は、外乱dによって修正され、性能変数yが生成される(例えば、y=z’+d)。性能変数yは、プラント404から出力として提供され、極値探索コントローラ402で受信される。極値探索コントローラ402は、性能マップ424の出力zおよび/または性能変数yを最適化するxおよび/またはuの値を見出すよう努めることができる。
依然として図4を参照すると、極値探索コントローラ402は、入力インタフェース432を介して性能変数yを受信し、コントローラ402内の制御ループ405に性能変数yを提供するように示されている。制御ループ405は、ハイパスフィルタ406、復調要素408、ローパスフィルタ410、積分器フィードバックコントローラ412およびディザ信号要素414を含むように示されている。制御ループ405は、ディザ復調技法を使用して性能変数yから性能勾配pを抽出するように構成することができる。積分器フィードバックコントローラ412は、性能勾配pを分析し、プラント入力のDC値(すなわち、変数w)を調整して性能勾配pをゼロに至らせる。
ディザ復調技法の第1のステップは、ディザ信号ジェネレータ416およびディザ信号要素414によって実行される。ディザ信号ジェネレータ416は、周期的ディザ信号vを生成し、周期的ディザ信号vは、通常、正弦波信号である。ディザ信号要素414は、ディザ信号ジェネレータ416からディザ信号vを受信し、コントローラ412からプラント入力wのDC値を受信する。ディザ信号要素414は、ディザ信号vをプラント入力wのDC値と組み合わせて、プラント404に提供される摂動制御入力uを生成する(例えば、u=w+v)。摂動制御入力uは、プラント404に提供され、以前に説明されるように性能変数yを生成するためにプラント404によって使用される。
ディザ復調技法の第2のステップは、ハイパスフィルタ406、復調要素408およびローパスフィルタ410によって実行される。ハイパスフィルタ406は、性能変数yをフィルタ処理し、フィルタ処理済みの出力を復調要素408に提供する。復調要素408は、位相シフト418を適用してフィルタ処理済みの出力にディザ信号vを乗じることによってハイパスフィルタ406の出力を復調する。この乗算のDC値は、制御入力uに対する性能変数yの性能勾配pに比例する。復調要素408の出力は、ローパスフィルタ410に提供され、ローパスフィルタ410は、性能勾配p(すなわち、復調済みの出力のDC値)を抽出する。次いで、性能勾配pの推定が積分器フィードバックコントローラ412に提供され、積分器フィードバックコントローラ412は、プラント入力uのDC値wを調整することによって性能勾配推定pをゼロに至らせる。
依然として図4を参照すると、極値探索コントローラ402は、増幅器420を含むように示されている。プラント出力yにおいてはっきりするようにディザ信号vの振幅がディザ信号vの効果に対して十分大きくなるように、ディザ信号vを増幅することが望ましい場合がある。ディザ信号vの大きな振幅は、制御入力uのDC値wが一定のままであっても、制御入力uの大きな変動をもたらすことができる。周期的ディザ信号vによって生じた周期的振動による制御入力uおよび性能変数yを示すグラフは、図6A、6Bに示されている(以下でさらに詳細に説明する)。ディザ信号vの周期的性質のため、プラント入力uの大きな変動(すなわち、ディザ信号vによって生じた振動)はプラントオペレータにとって顕著である場合が多い。
それに加えて、ESC戦略が効果的であることを保証するために、ディザ信号vの周波数を慎重に選択することが望ましい場合がある。例えば、性能変数yに対するディザ信号vの効果を高めるために、プラント304の固有周波数ωnに基づいてディザ信号周波数ωvを選択することが望ましい場合がある。プラント404のダイナミクスの知識なしでディザ周波数ωvを正しく選択することは難しく苦労を伴うものであり得る。これらの理由のため、周期的ディザ信号vの使用は、従来のESCの欠点の1つである。
ESCシステム400では、ハイパスフィルタ406の出力は、以下の方程式に示されるように、性能変数yの値と性能変数yの期待値との差として表現することができる。
ハイパスフィルタの出力:y−E[y]
式中、変数E[y]は、性能変数yの期待値である。復調要素408によって実行された相互相関の結果(すなわち、復調要素408の出力)は、以下の方程式に示されるように、ハイパスフィルタ出力と位相シフトされたディザ信号との積として表現することができる。
相互相関の結果:(y−E[y])(v−E[v])
式中、変数E[v]は、ディザ信号vの期待値である。ローパスフィルタ410の出力は、以下の方程式に示されるように、ディザ信号vと性能変数yの共分散として表現することができる。
ローパスフィルタの出力:E[(y−E[y])(v−E[u])]≡Cov(v,y)
式中、変数E[u]は、制御入力uの期待値である。
先行方程式は、ESCシステム400がディザ信号vとプラント出力(すなわち、性能変数y)との間の共分散Cov(v,y)の推定を生成することを示す。共分散Cov(v,y)は、ESCシステム400において、性能勾配pのプロキシとして使用することができる。例えば、共分散Cov(v,y)は、ハイパスフィルタ406、復調要素408およびローパスフィルタ410によって計算し、積分器フィードバックコントローラ412にフィードバック入力として提供することができる。積分器フィードバックコントローラ412は、フィードバック制御ループの一部として共分散Cov(v,y)を最小化するために、プラント入力uのDC値wを調整することができる。
確率論的励起信号を伴う極値探索制御システム
ここで図5を参照すると、いくつかの実施形態による、確率論的励起信号を伴うESCシステム500のブロック図が示されている。ESCシステム500は、プラント504および極値探索コントローラ502を含むように示されている。コントローラ502は、入力インタフェース526を介してプラント504からフィードバックとして性能変数yを受信し、出力インタフェース524を介してプラント504に制御入力uを提供するように示されている。コントローラ502は、図3、4を参照して説明されるようなコントローラ302および402と同様に操作することができる。例えば、コントローラ502は、極値探索制御(ESC)戦略を使用して、プラント504から出力として受信された性能変数yを最適化することができる。しかし、周期的ディザ信号を用いて制御入力uに摂動を与えるよりむしろ、コントローラ502は、確率論的励起信号qを用いて制御入力uに摂動を与えることができる。コントローラ502は、制御入力uを調整して性能変数yの勾配をゼロに至らせることができる。このように、コントローラ502は、性能変数yの最適値(例えば、最大または最小)を達成する制御入力uの値を識別する。
いくつかの実施形態では、コントローラ502によって実装されるESC論理は、受信された制御信号(例えば、セットポイント、動作モード信号など)に基づいて制御入力uの値を生成する。制御信号は、ユーザ制御(例えば、サーモスタット、ローカルユーザインタフェースなど)、クライアントデバイス536(例えば、コンピュータ端末、モバイルユーザデバイス、携帯電話、ラップトップ、タブレット、デスクトップコンピュータなど)、監視コントローラ532、または、他の任意の外部のシステムもしくはデバイスから受信することができる。様々な実施形態では、コントローラ502は、外部のシステムおよびデバイスと直接(例えば、NFC、Bluetooth(登録商標)、WiFiダイレクト、ケーブルなどを使用して)、または、有線もしくは無線電子データ通信を使用して通信ネットワーク534(例えば、BACnetネットワーク、LonWorksネットワーク、LAN、WAN、インターネット、セルラネットワークなど)を介して、通信することができる。
プラント504は、図4を参照して説明されるようなプラント404と同様のものであり得る。例えば、プラント504は、プロセスと1つまたは複数の機械制御出力との組合せであり得る。いくつかの実施形態では、プラント504は、1つまたは複数の機械制御アクチュエータおよび/またはダンパを介して建物空間内の温度を制御するように構成された空気処理ユニットである。他の実施形態では、プラント504は、冷凍機操作プロセス、ダンパ調整プロセス、機械式冷却プロセス、換気プロセス、または、1つもしくは複数の制御入力に基づいて出力を生成する他の任意のプロセスを含み得る。
プラント504は、動的コンポーネントと直列接続された静的非線形性として数学的に表現することができる。例えば、プラント504は、定利得ブロック518および伝達関数ブロック520と直列接続された静的非線形関数ブロック516を含むように示されている。プラント504のコンポーネントが図5に示されているが、ESCを適用するためにプラント504の実際の数学的モデルを知っている必要はないことに留意すべきである。プラント504は、出力インタフェース524を介して極値探索コントローラ502から制御入力u(例えば、制御信号、操作変数など)を受信する。非線形関数ブロック516は、制御入力に基づく関数信号xを生成するために、制御入力uを使用することができる(例えば、x=f(u))。関数信号xは、定利得ブロック518を送ることができ、定利得ブロック518は、関数信号xに定利得Kを乗じて、出力信号zを生成する(すなわち、z=Kx)。出力信号zは、伝達関数ブロック520を通過して信号z’を生成することができ、信号z’は、外乱dによって修正され、性能変数yが生成される(例えば、y=z’+d)。外乱dは、プロセス雑音、測定雑音またはその両方の組合せを含み得る。性能変数yは、プラント504から出力として提供され、極値探索コントローラ502で受信される。
依然として図5を参照すると、コントローラ502は、通信インタフェース530、入力インタフェース526および出力インタフェース524を含むように示されている。インタフェース530および524、526は、いかなる数のジャック、ワイヤ端子、ワイヤポート、無線アンテナ、あるいは、情報および/または制御信号を伝達するための他の通信インタフェースも含み得る。インタフェース530および524、526は、同じタイプのデバイスでも、異なるタイプのデバイスでもよい。例えば、入力インタフェース526は、プラント504からアナログフィードバック信号(例えば、出力変数、測定信号、センサ出力、制御変数)を受信するように構成することができ、通信インタフェース530は、ネットワーク534を介して監視コントローラ532からデジタルセットポイント信号を受信するように構成することができる。出力インタフェース524は、デジタル制御信号(例えば、操作変数、制御入力)をプラント504に提供するように構成されたデジタル出力(例えば、光デジタルインタフェース)であり得る。他の実施形態では、出力インタフェース524は、アナログ出力信号を提供するように構成される。
いくつかの実施形態では、インタフェース530および524、526は、3つの別個のインタフェースというよりむしろ、1つまたは2つのインタフェースとして接合することができる。例えば、通信インタフェース530および入力インタフェース526は、監視コントローラ532からネットワーク通信を受信するように構成された1つのイーサネット(登録商標)インタフェースとして組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、監視コントローラ532は、イーサネットネットワーク(例えば、ネットワーク534)を介してセットポイントとフィードバックの両方を提供する。そのような実施形態では、出力インタフェース524は、プラント504の制御コンポーネント専用であり得る。他の実施形態では、出力インタフェース524は、データまたは制御信号を伝達するための別の標準化された通信インタフェースであり得る。インタフェース530および524、526は、本明細書で説明される信号の通信を提供または促進するように構成された通信電子機器(例えば、受信機、送信機、トランシーバ、変調器、復調器、フィルタ、通信プロセッサ、通信論理モジュール、バッファ、デコーダ、エンコーダ、エンクリプタ、増幅器など)を含み得る。
依然として図5を参照すると、コントローラ502は、プロセッサ540とメモリ542とを有する処理回路538を含むように示されている。プロセッサ540は、一般用途もしくは特殊用途プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つもしくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理コンポーネントのグループ、または、他の適切な処理コンポーネントであり得る。プロセッサ540は、メモリ542に格納されているかまたは他のコンピュータ可読媒体(例えば、CDROM、ネットワークストレージ、リモートサーバなど)から受信されるコンピュータコードまたは命令を実行するように構成される。
メモリ542は、本開示で説明される様々なプロセスを完了および/または促進するためのデータおよび/またはコンピュータコードを格納するための1つまたは複数のデバイス(例えば、メモリユニット、メモリデバイス、記憶装置など)を含み得る。メモリ542は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブストレージ、一時記憶装置、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、光メモリ、あるいは、ソフトウェアオブジェクトおよび/またはコンピュータ命令を格納するための他の任意の適切なメモリを含み得る。メモリ542は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、または、他の任意のタイプの様々な活動をサポートするための情報構造および本開示で説明される情報構造を含み得る。メモリ542は、処理回路538を介してプロセッサ540に通信可能に接続することができ、本明細書で説明される1つまたは複数のプロセスを実行する(例えば、プロセッサ540によって)ためのコンピュータコードを含み得る。
依然として図5を参照すると、極値探索コントローラ502は、入力インタフェース526を介して性能変数yを受信し、コントローラ502内の制御ループ505に性能変数yを提供するように示されている。制御ループ505は、再帰的勾配推定器506、フィードバックコントローラ508および励起信号要素510を含むように示されている。制御ループ505は、制御入力uに対する性能変数yの勾配
を決定し、制御入力uのDC値(すなわち、変数w)を調整して勾配
をゼロに至らせるように構成することができる。
再帰的勾配推定
再帰的勾配推定器506は、制御入力uに対する性能変数yの勾配
を推定するように構成することができる。勾配
は、ESCシステム400において決定される性能勾配pと同様のものであり得る。しかし、ESCシステム500とESCシステム400の根本的な違いは、勾配
が得られる方法である。ESCシステム400では、性能勾配pは、共分散推定に類似した図4を参照して説明されるディザ復調技法を介して得られる。反対に、ESCシステム500における勾配
は、制御入力uに対する性能変数yの傾きを推定するための再帰的回帰技法を実行することによって得られる。再帰的推定技法は、再帰的勾配推定器506によって実行することができる。
再帰的勾配推定器506は、勾配
を推定するために、様々な再帰的推定技法のいずれも使用することができる。例えば、再帰的勾配推定器506は、再帰的最小二乗(RLS)推定技法を使用して、勾配
の推定を生成することができる。いくつかの実施形態では、再帰的勾配推定器506は、RLS推定技法の一部として指数忘却を使用する。指数忘却は、バッチ処理と比べてデータ格納に必要な量を低減する。また、指数忘却は、RLS推定技法が最近のデータに対してより感度が高い状態ひいては最適点のシフトに対してより感応度が高い状態のままでいられるようにすることもできる。再帰的勾配推定器506によって実行することができるRLS推定技法の例は、以下で詳細に説明する。
再帰的勾配推定器506は、プラント504から性能変数yを受信し、励起信号要素510から制御入力uを受信するように示されている。いくつかの実施形態では、再帰的勾配推定器506は、ある時間にわたって性能変数yおよび制御入力uの複数のサンプルまたは測定値を受信する。再帰的勾配推定器506は、以下の方程式に示されるように、時間kにおける制御入力uのサンプルを使用して、入力ベクトルx
kを構築することができる。
式中、u
kは、時間kにおける制御入力uの値である。同様に、再帰的勾配推定器506は、以下の方程式に示されるように、パラメータベクトル
を構築することができる。
式中、パラメータ
は、時間kにおける勾配
の推定である。
再帰的勾配推定器506は、以下の線形モデルを使用して、時間kにおける性能変数
を推定することができる。
このモデルの予測誤差は、以下の方程式に示されるように、時間kにおける性能変数の実際の値y
kと時間kにおける性能変数の推定値
との差である。
再帰的勾配推定器506は、RLS技法における推定誤差e
kを使用して、パラメータ値
を決定することができる。様々なRLS技法のいずれも、様々な実装形態において使用することができる。再帰的勾配推定器506によって実行することができるRLS技法の例は、以下の通りである。
式中、g
kは、利得ベクトルであり、P
kは、共分散行列であり、λは、忘却因子である(λ<1)。いくつかの実施形態では、忘却因子λは、以下の通り定義される。
式中、Δtは、サンプリング周期であり、τは、忘却時定数である。
再帰的勾配推定器506は、g
kの方程式を使用して、時間k−1における共分散行列の前値P
k−1、時間kにおける入力ベクトル
の値および忘却因子に基づいて、時間kにおける利得ベクトルg
kを計算することができる。再帰的勾配推定器506は、P
kの方程式を使用して、忘却因子λ、時間kにおける利得ベクトルg
kの値および時間kにおける入力ベクトル
の値に基づいて、時間kにおける共分散行列P
kを計算することができる。再帰的勾配推定器506は、
の方程式を使用して、時間kにおける誤差e
kおよび時間kにおける利得ベクトルg
kに基づいて、時間kにおけるパラメータベクトル
を計算することができる。パラメータベクトル
が計算された時点で、再帰的勾配推定器506は、以下の方程式に示されるように、
からパラメータ
の値を抽出することによって勾配
の値を決定することができる。
様々な実施形態では、再帰的勾配推定器506は、様々な他の再帰的推定技法のいずれかを使用して、
を推定することができる。例えば、再帰的勾配推定器506は、カルマンフィルタ、正規化勾配技法、非正規化勾配適応技法、再帰的ベイジアン推定技法、または、様々な線形もしくは非線形フィルタのいずれかを使用して、
を推定することができる。他の実施形態では、再帰的勾配推定器506は、再帰的推定技法というよりむしろ、バッチ推定技法を使用することができる。従って、勾配推定器506は、再帰的勾配推定器というよりむしろ、バッチ勾配推定器であり得る。バッチ推定技法では、勾配推定器506は、バッチ回帰アルゴリズムへの入力として制御入力uおよび性能変数yの前値のバッチ(例えば、前値または履歴値のベクトルまたは集合)を使用することができる。適切な回帰アルゴリズムは、例えば、最小二乗回帰、多項式回帰、部分最小二乗回帰、リッジ回帰、主成分回帰、または、様々な線形もしくは非線形回帰技法のいずれかを含み得る。
いくつかの実施形態では、再帰的勾配推定器506が、再帰的推定技法によって提供されるいくつかの利点により、バッチ推定技法というよりむしろ、再帰的推定技法を使用することが望ましい。例えば、上記で説明される再帰的推定技法(すなわち、指数忘却を伴うRLS)は、バッチ最小二乗と比べて勾配推定技法の性能を大いに改善することが示されている。バッチ処理よりもデータ格納に必要な量が少ないことに加えて、指数忘却を伴うRLS推定技法は、最近のデータに対してより感度が高い状態ひいては最適点のシフトに対してより感応度が高い状態のままでいられる。
いくつかの実施形態では、再帰的勾配推定器506は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散を使用して勾配
を推定する。例えば、最小二乗手法における傾き
の推定は、
と定義することができ、式中、Cov(u,y)は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散であり、Var(u)は、制御入力uの分散である。再帰的勾配推定器506は、以前の方程式を使用して、推定傾き
を計算し、勾配
のプロキシとして推定傾き
を使用することができる。とりわけ、推定傾き
は、制御入力uおよび性能変数yのみの関数である。これは、推定性能勾配pがディザ信号vと性能変数yとの間の共分散の関数である、図4を参照して説明される共分散微分技法とは異なる。ディザ信号vを制御入力uに置換することにより、コントローラ502は、ディザ信号v(図4に示される)または励起信号q(図5に示される)の知識なしで、傾き
の推定を生成することができる。
いくつかの実施形態では、再帰的勾配推定器506は、線形モデルというよりむしろ、高次モデル(例えば、二次曲線モデル、三次曲線モデルなど)を使用して、性能変数
を推定する。例えば、再帰的勾配推定器506は、以下の二次曲線モデルを使用して、時間kにおける性能変数
を推定することができる。
二次曲線モデルは、以下の通り、入力ベクトルx
kおよびパラメータベクトル
を更新することによって
の形態で記載することができる。
再帰的勾配推定器506は、様々な時間kにおける制御入力uおよび性能変数yの組合せによって定義されたデータポイントに二次曲線(直線というよりむしろ)を合わせるために、二次曲線モデルを使用することができる。二次曲線モデルは、線形モデルでは提供されない二次情報を提供し、フィードバックコントローラ508の収束を改善するために使用することができる。例えば、線形モデルでは、再帰的勾配推定器506は、曲線に沿った特定の場所における(すなわち、制御入力uの特定の値に対する)勾配
を計算し、フィードバック信号として勾配
を提供することができる。
を推定するために線形モデルを使用した実施形態の場合、勾配
(すなわち、uについての線形モデルの導関数)は、スカラ値である。コントローラ508がフィードバック信号として勾配
のスカラ値を受信すると、コントローラ508は、制御入力uの最適値(すなわち、勾配
をもたらす制御入力uの値)に達するまで、勾配
をゼロに至らせる方向に制御入力uの値を漸増調整することができる。
二次曲線モデルでは、再帰的勾配推定器506は、単純なスカラ値というよりむしろ勾配
の関数をフィードバックコントローラ508に提供することができる。
を推定するために二次曲線モデルを使用した実施形態の場合、勾配
(すなわち、uについての二次曲線モデルの導関数)は、制御入力uの線形関数であり、例えば、
である。コントローラ508がフィードバック信号として勾配
の線形関数を受信すると、コントローラ508は、勾配
をもたらす制御入力uの最適値、例えば、
を解析的に計算することができる。それに従って、コントローラ508は、勾配
がゼロに近づいているかどうかを判断するための漸増調整および実験に頼ることなく、最適値に急速に近づくスマートステップを使用して、制御入力uを調整することができる。
確率論的励起信号
依然として図5を参照すると、極値探索コントローラ502は、確率論的信号ジェネレータ512および積分器514を含むように示されている。勾配
を確実に推定するため、性能変数yを成し遂げる制御入力uの十分な変動を提供することが望ましい場合がある。コントローラ502は、確率論的信号ジェネレータ512および積分器514を使用して、持続的な励起信号qを生成することができる。励起信号qは、制御入力uを形成するために、励起信号要素510において制御入力uのDC値wに加えることができる(例えば、u=w+q)。
確率論的信号ジェネレータ512は、確率論的信号を生成するように構成することができる。様々な実施形態では、確率論的信号は、ランダム信号(例えば、ランダムウォーク信号、白色雑音信号など)、非周期的信号、予測不可能な信号、外乱信号、または、他の任意のタイプの非決定論的もしくは非反復信号であり得る。いくつかの実施形態では、確率論的信号は、非ゼロ平均を有する。確率論的信号は、励起信号qを生成するために積分器514によって積分することができる。
励起信号qは、再帰的勾配推定器506によって実行される勾配推定技法に対して十分な制御入力uの変動を提供することができる。いくつかの実例では、励起信号qの加算により、制御入力uは、その最適値から遠ざかってゆく。しかし、フィードバックコントローラ508は、制御入力uがその最適値に絶えず引き戻されるようにDC値wを調整することによって、そのようなドリフトを補償することができる。従来のESCと同様に、励起信号qの大きさは、性能変数yに見られる付加雑音(例えば、プロセス雑音、測定雑音など)を克服するように選択することができる(例えば、ユーザによって手動でまたはコントローラ502によって自動的に)。
極値探索コントローラ502によって生成される確率論的励起信号qは、コントローラ402によって生成される周期的ディザ信号vよりもいくつかの利点を有する。例えば、確率論的励起信号qは、従来の周期的ディザ信号vほど認知できない。従って、制御入力uに対する確率論的励起信号qの効果は、従来の周期的ディザ信号vによって生じる周期的振動ほど顕著ではない。確率論的励起信号qによって励起された制御入力uおよび結果として得られる性能変数yを示すグラフは、図7A、7Bに示されている(以下でさらに詳細に説明する)。
確率論的励起信号qの別の利点は、ディザ周波数ω
vがもはや必須パラメータではないため、コントローラ502の調整がより簡単であることである。それに従って、コントローラ502は、確率論的励起信号qを生成する際にプラント504の固有周波数を知る必要も、推定する必要もない。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、複数の制御入力uをプラント504に提供する。制御入力の各々は、別個の確率論的励起信号qによって励起することができる。確率論的励起信号qの各々はランダムであるため、確率論的励起信号qが互いに相関しないことを保証する必要はない。コントローラ502は、周波数特有のディザ復調技法を実行することなく、制御入力uの各々に対する性能変数yの勾配
を計算することができる。
相関係数
従来のESCにおける問題の1つは、性能勾配
が性能変数yの範囲またはスケールの関数であることである。性能変数yの範囲またはスケールは、プラント504の静的および動的コンポーネントに依存し得る。例えば、プラント504は、定利得K(すなわち、定利得ブロック518)と直列接続された非線形関数f(u)(すなわち、関数ブロック516)を含むように示されている。この表現から、性能変数yの範囲またはスケールは定利得Kの関数であることが明白である。
性能勾配
の値は、非線形関数f(u)によって提供される非線形性により、制御入力uの値に基づいて異なり得る。しかし、性能勾配
のスケールは、定利得Kの値にも依存する。例えば、性能勾配
は、以下の方程式を使用して決定することができる。
式中、Kは、定利得であり、f’(u)は、関数f(u)の導関数である。一貫したフィードバック制御ループ性能を提供するために、性能勾配
をスケーリングまたは正規化することが望ましい場合がある(例えば、スケーリングパラメータκを乗じることによって)。しかし、性能変数yのスケールの知識なしでは(例えば、プラント504によって適用される定利得Kを知らなければ)、スケーリングパラメータκの適切な値を決定することは苦労を伴うものであり得る。
依然として図5を参照すると、極値探索コントローラ502は、相関係数推定器528を含むように示されている。相関係数推定器528は、相関係数ρを生成し、相関係数ρをフィードバックコントローラ508に提供するように構成することができる。相関係数ρは、性能勾配
と関連付ける(例えば、
に比例する)ことができるが、性能変数yの範囲に基づいてスケーリングされる。例えば、相関係数ρは、性能勾配
の正規化尺度であり得る(例えば、範囲0≦ρ≦1にスケーリングされる)。
相関係数推定器528は、制御入力uおよび性能変数yを入力として受信するように示されている。相関係数推定器528は、以下の方程式に示されるように、制御入力uおよび性能変数yの分散および共分散に基づいて相関係数ρを生成することができる。
式中、Cov(u,y)は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散であり、Var(u)は、制御入力uの分散であり、Var(y)は、性能変数yの分散である。以前の方程式は、制御入力uの標準偏差σ
uおよび性能変数yの標準偏差σ
yの観点から以下の通り記載しなおすことができる。
式中、
である。
いくつかの実施形態では、相関係数推定器528は、再帰的推定技法を使用して相関係数ρを推定する。例えば、相関係数推定器528は、以下の方程式を使用して、制御入力uおよび性能変数yの指数加重移動平均(EWMA)を計算することができる。
式中、
は、時間kにおける制御入力uおよび性能変数yのEWMAであり、
は、時間k−1における制御入力uおよび性能変数yの以前のEWMAであり、u
kおよびy
kは、時間kにおける制御入力uおよび性能変数yの現行値であり、kは、各変数の収集されたサンプルの総数であり、Wは、忘却窓の持続時間である。
同様に、相関係数推定器528は、以下の方程式を使用して、制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)および共分散Cov(u,y)のEWMAを計算することができる。
式中、V
u,k、V
y,kおよびc
kはそれぞれ、時間kにおける制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)および共分散Cov(u,y)のEWMAである。V
u,k−1、V
y,k−1およびc
k−1はそれぞれ、時間k−1における制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)および共分散Cov(u,y)のEWMAである。相関係数推定器528は、以下の方程式を使用して、これらの再帰的推定に基づいて相関係数ρの推定を生成することができる。
いくつかの実施形態では、相関係数推定器528は、推定傾き
に基づいて相関係数ρを生成する。以前に説明されるように、推定傾き
は、以下の方程式を使用して計算することができる。
式中、Cov(u,y)は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散であり、Var(u)は、制御入力uの分散であり、すなわち、
である。相関係数推定器528は、以下の方程式を使用して、傾き
から相関係数ρを計算することができる。
以前の方程式から、標準偏差σ
uとσ
yが等しい際(すなわち、σ
u=σ
yの際)は、相関係数ρと推定傾き
は等しいことが分かる。
相関係数推定器528は、再帰的勾配推定器506から推定傾き
を受信するか、または、制御入力uおよび性能変数yの値の集合を使用して推定傾き
を計算することができる。例えば、uおよびyの有限分散を想定すると、相関係数推定器528は、以下の最小二乗推定を使用して、傾き
を推定することができる。
制御入力uの小さな範囲の場合、推定傾き
は、以下の方程式に示されるように、性能勾配のプロキシとして使用することができる。
以前の方程式に示されるように、推定傾き
は定利得Kを含み、定利得Kは未知数であり得る。しかし、標準偏差σ
uおよびσ
yによって提供される正規化は、定利得Kの効果を無効にする。例えば、性能変数yの標準偏差σ
yは、以下の方程式に示されるように、制御入力uの標準偏差σ
uと関連付けられる。
相関係数ρを計算するために推定傾き
に比率
を乗じることは、定利得Kで除することに等しい。相関係数ρおよび推定傾き
は両方とも、制御入力uと性能変数yとの関係の強さを示す。しかし、相関係数ρは、正規化されているという利点を有し、それにより、フィードバック制御ループの調整がはるかに簡単になる。
いくつかの実施形態では、相関係数ρは、性能勾配
の代わりに、フィードバックコントローラ508によって使用される。例えば、フィードバックコントローラ508は、相関係数ρをゼロに至らせるために、制御入力uのDC値wを調整することができる。性能勾配
の代わりに相関係数ρを使用する利点の1つは、フィードバックコントローラ508によって使用される調整パラメータが、性能変数yのスケールに基づいてカスタマイズまたは調整する必要のない調整パラメータの一般集合であり得ることである。この利点により、フィードバックコントローラ508に対する制御ループ特有の調整を実行する必要性が排除され、フィードバックコントローラ508は、多くの異なる制御ループおよび/またはプラントにわたって適用可能な調整パラメータの一般集合を使用できるようになる。
グラフの例
ここで図6A〜7Bを参照すると、いくつかの実施形態による、極値探索コントローラ402と極値探索コントローラ502の性能を比較するいくつかのグラフ600〜750が示されている。コントローラ402および502は、最適な制御入力値u=2および最適な性能変数y=−10を有する動的システムを制御するために使用された。コントローラ402と502は両方とも、u=4の値で始まり、図4、5を参照して説明される極値探索制御技法を使用して制御入力uの値の調整が可能であった。コントローラ402は周期的ディザ信号vを使用し、コントローラ502は確率論的励起信号qを使用する。
特に図6A、6Bを参照すると、グラフ600および650は、図4を参照して説明されるように、極値探索コントローラ402の性能を示している。コントローラ402は、周期的ディザ信号vを使用して、制御入力uに摂動を与える。グラフ600は、様々なサンプル時間における制御入力uの値を示し、グラフ650は、対応する性能変数yの値を示す。制御入力uは、u=4の値で始まり、周期的(すなわち、正弦波)ディザ信号vを使用して摂動が与えられる。周期的ディザ信号vによって生じた振動摂動は、制御入力uと性能変数yの両方において見られる。
特に図7A、7Bを参照すると、グラフ700および750は、図5を参照して説明されるように、極値探索コントローラ502の性能を示している。コントローラ502は、確率論的励起信号qを使用して、制御入力uに摂動を与える。グラフ700は、様々なサンプル時間における制御入力uの値を示し、グラフ750は、対応する性能変数yの値を示す。制御入力uは、u=4の値で始まり、確率論的励起信号qを使用して摂動が与えられる。確率論的励起信号qは、ランダムウォークを制御入力uに適用する。しかし、確率論的励起信号qは非周期的な有効小振幅であるため、確率論的励起信号qによって生じる摂動は、グラフ700および750において辛うじて認識することができる。それに加えて、グラフ700の制御入力uは、グラフ600の制御入力より速く最適値に達している。
極値探索制御技法
ここで図8を参照すると、いくつかの実施形態による、極値探索制御(ESC)技法を示すフロー図800が示されている。フロー図800に示されるESC技法は、プラント(例えば、プラント504)をモニタして制御するために、フィードバックコントローラ(例えば、コントローラ502)の1つまたは複数のコンポーネントによって実行することができる。例えば、コントローラ502は、ESC技法を使用して、確率論的励起信号qを用いて制御入力uに摂動を与えることによって、プラント504に提供される制御入力uの最適値を決定することができる。
フロー図800は、プラントに制御入力uを提供すること(ブロック802)と、プラントからフィードバックとして性能変数yを受信すること(ブロック804)とを含むように示されている。制御入力uは、極値探索コントローラおよび/またはフィードバックコントローラによってプラントに提供することができる。コントローラは、以前に説明されるコントローラ(例えば、コントローラ302、コントローラ402、コントローラ502など)のいずれかでも、プラントに制御入力uを提供する他の任意のタイプのコントローラでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、制御入力uを調整することによって性能変数yの最適値を達成するように構成された極値探索コントローラである。最適値は、性能変数yの極値(例えば、最大または最小)であり得る。
制御理論上のプラントは、プロセスと1つまたは複数の機械制御出力との組合せである。プラントは、以前に説明されるプラント(例えば、プラント304、プラント404、プラント504など)のいずれかでも、他の任意の制御可能システムまたはプロセスでもよい。例えば、プラントは、1つまたは複数の機械制御アクチュエータおよび/またはダンパを介して建物空間内の温度を制御するように構成された空気処理ユニットであり得る。様々な実施形態では、プラントは、冷凍機操作プロセス、ダンパ調整プロセス、機械式冷却プロセス、換気プロセス、冷凍プロセス、または、プラントへの制御入力uが性能変数yに影響を与えるように調整される他の任意のプロセスを含み得る。性能変数yは、プラントの1つもしくは複数のセンサによって観察された測定変数(例えば、測定温度、測定電力消費量、測定流量など)、測定もしくは観察値に基づく計算変数(例えば、計算効率、計算電力消費量、計算コストなど)または制御入力uに応答したプラントの性能を示す他の任意のタイプの変数であり得る。
フロー図800は、制御入力uに対する性能変数yの勾配を推定すること(ブロック806)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、勾配は、図4を参照して説明される性能勾配pである。他の実施形態では、勾配は、図5を参照して説明される性能勾配
または推定傾き
であり得る。例えば、勾配は、曲線に沿った特定の場所における(例えば、uの特定の値における)関数y=f(u)によって定義された曲線の傾きまたは微分係数であり得る。勾配は、制御入力uおよび性能変数yの1対または複数対の値を使用して推定することができる。
いくつかの実施形態では、勾配は、再帰的勾配推定技法を実行することによって推定することができる。再帰的勾配推定技法は、制御入力uの関数として性能変数yのモデルを得ることを含み得る。例えば、勾配は、以下の線形モデルを使用して推定することができる。
式中、x
kは、入力ベクトルであり、
は、パラメータベクトルである。入力ベクトルx
kおよびパラメータベクトル
は、以下の通り定義することができる。
式中、u
kは、時間kにおける制御入力uの値であり、パラメータ
は、時間kにおける勾配
の推定である。
このモデルの予測誤差は、以下の方程式に示されるように、時間kにおける性能変数の実際の値y
kと時間kにおける性能変数の推定値
との差である。
推定誤差e
kは、パラメータ値
を決定するために、再帰的勾配推定技法において使用することができる。様々な回帰技法のいずれも、パラメータベクトル
の値を推定するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、線形モデルというよりむしろ、高次モデル(例えば、二次曲線モデル、三次曲線モデルなど)を使用して、勾配を推定することができる。例えば、以下の二次曲線モデルを使用して、モデルによって定義された曲線に沿った特定の場所における勾配
を推定することができる。
いくつかの実施形態では、勾配は、指数忘却を伴う再帰的最小二乗(RLS)推定技法を使用して推定される。様々なRLS技法のいずれも、様々な実装形態において使用することができる。勾配を推定するために実行することができるRLS技法の例は、以下の方程式に示されており、その方程式を解くことによってパラメータベクトル
の値を決定することができる。
式中、g
kは、利得ベクトルであり、P
kは、共分散行列であり、λは、忘却因子である(λ<1)。いくつかの実施形態では、忘却因子λは、以下の通り定義される。
式中、Δtは、サンプリング周期であり、τは、忘却時定数である。パラメータベクトル
を計算した時点で、
からパラメータ
の値を抽出することによって、勾配を推定することができる。
様々な実施形態では、勾配は、様々な他の再帰的推定技法のいずれかを使用して推定することができる。例えば、勾配は、カルマンフィルタ、正規化勾配技法、非正規化勾配適応技法、再帰的ベイジアン推定技法、または、様々な線形もしくは非線形フィルタのいずれかを使用して推定することができる。いくつかの実施形態では、勾配は、再帰的推定技法というよりむしろ、バッチ推定技法を使用して推定することができる。バッチ推定技法では、バッチ回帰アルゴリズムへの入力として制御入力uおよび性能変数yの前値のバッチ(例えば、前値または履歴値のベクトルまたは集合)を使用することができる。適切な回帰アルゴリズムは、例えば、最小二乗回帰、多項式回帰、部分最小二乗回帰、リッジ回帰、主成分回帰、または、様々な線形もしくは非線形回帰技法のいずれかを含み得る。
いくつかの実施形態では、勾配は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散を使用して推定することができる。例えば、最小二乗手法における傾き
の推定は、
と定義することができ、式中、Cov(u,y)は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散であり、Var(u)は、制御入力uの分散である。推定傾き
は、以前の方程式を使用して計算し、勾配
のプロキシとして使用することができる。
依然として図8を参照すると、フロー図800は、フィードバックコントローラの出力を調節することによって推定勾配をゼロに至らせること(ブロック808)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラは、図5に示されるフィードバックコントローラ508である。フィードバックコントローラは、入力として推定勾配を受信し、推定勾配をゼロに至らせるようにその出力(例えばDC出力w)を調節することができる。フィードバックコントローラは、DC出力wの最適値に達するまで、DC出力wの値を増加または減少させることができる。DC出力wの最適値は、性能変数yの最適値(例えば、最大または最小値)をもたらす値として定義することができる。性能変数yの最適値は、勾配がゼロになると生じる。それに従って、フィードバックコントローラは、勾配をゼロに至らせるようにその出力wを調節することによって性能変数yの最適値を達成することができる。
フロー図800は、確率論的励起信号qを生成すること(ブロック810)と、確率論的励起信号qを用いてフィードバックコントローラの出力wに摂動を与えることによって、新しい制御入力uを生成すること(ブロック812)とを含むように示されている。確率論的励起信号qは、図5を参照して説明されるような確率論的信号ジェネレータ512および/または積分器514によって生成することができる。様々な実施形態では、確率論的信号は、ランダム信号(例えば、ランダムウォーク信号、白色雑音信号など)、非周期的信号、予測不可能な信号、外乱信号、または、他の任意のタイプの非決定論的もしくは非反復信号であり得る。いくつかの実施形態では、確率論的信号は、非ゼロ平均を有する。確率論的信号は、励起信号qを生成するために積分することができる。
確率論的励起信号qは、新しい制御入力uを形成するためにフィードバックコントローラによって生成されたDC値wに加えることができる(例えば、u=w+q)。新しい制御入力uが生成された後、新しい制御入力uは、プラントに提供することができ(ブロック802)、ESC制御技法を繰り返すことができる。確率論的励起信号qは、ブロック806において性能勾配を推定するのに十分な制御入力uの変動を提供することができる。いくつかの実例では、励起信号qの加算により、制御入力uは、その最適値から遠ざかってゆく。しかし、フィードバックコントローラは、制御入力uがその最適値に絶えず引き戻されるようにDC値wを調整することによって、そのようなドリフトを補償することができる。従来のESCと同様に、励起信号qの大きさは、性能変数yに見られる付加雑音(例えば、プロセス雑音、測定雑音など)を克服するように選択することができる(例えば、ユーザによって手動でまたはコントローラによって自動的に)。
確率論的励起信号qは、周期的ディザ信号vよりもいくつかの利点を有する。例えば、確率論的励起信号qは、従来の周期的ディザ信号vほど認知できない。従って、制御入力uに対する確率論的励起信号qの効果は、従来の周期的ディザ信号vによって生じる周期的振動ほど顕著ではない。確率論的励起信号qの別の利点は、ディザ周波数ωvがもはや必須パラメータではないため、コントローラの調整がより簡単であることである。それに従って、コントローラは、確率論的励起信号qを生成する際にプラントの固有周波数を知る必要も、推定する必要もない。
ここで図9を参照すると、いくつかの実施形態による、別の極値探索制御(ESC)技法を示すフロー図900が示されている。フロー図900に示されるESC技法は、プラント(例えば、プラント504)をモニタして制御するために、フィードバックコントローラ(例えば、コントローラ502)の1つまたは複数のコンポーネントによって実行することができる。例えば、コントローラ502は、ESC技法を使用して、プラントの出力(例えば、性能変数y)をプラントに提供される制御入力uと関連付ける正規化相関係数ρを推定することができる。コントローラ502は、正規化相関係数ρをゼロに至らせることによって、制御入力uの最適値を決定することができる。
フロー図900は、プラントに制御入力uを提供すること(ブロック902)と、プラントからフィードバックとして性能変数yを受信すること(ブロック904)とを含むように示されている。制御入力uは、極値探索コントローラおよび/またはフィードバックコントローラによってプラントに提供することができる。コントローラは、以前に説明されるコントローラ(例えば、コントローラ302、コントローラ402、コントローラ502など)のいずれかでも、プラントに制御入力uを提供する他の任意のタイプのコントローラでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、制御入力uを調整することによって性能変数yの最適値を達成するように構成された極値探索コントローラである。最適値は、性能変数yの極値(例えば、最大または最小)であり得る。
制御理論上のプラントは、プロセスと1つまたは複数の機械制御出力との組合せである。プラントは、以前に説明されるプラント(例えば、プラント304、プラント404、プラント504など)のいずれかでも、他の任意の制御可能システムまたはプロセスでもよい。例えば、プラントは、1つまたは複数の機械制御アクチュエータおよび/またはダンパを介して建物空間内の温度を制御するように構成された空気処理ユニットであり得る。様々な実施形態では、プラントは、冷凍機操作プロセス、ダンパ調整プロセス、機械式冷却プロセス、換気プロセス、冷凍プロセス、または、プラントへの制御入力uが性能変数yに影響を与えるように調整される他の任意のプロセスを含み得る。性能変数yは、プラントの1つもしくは複数のセンサによって観察された測定変数(例えば、測定温度、測定電力消費量、測定流量など)、測定もしくは観察値に基づく計算変数(例えば、計算効率、計算電力消費量、計算コストなど)または制御入力uに応答したプラントの性能を示す他の任意のタイプの変数であり得る。
フロー図900は、性能変数yを制御入力uと関連付ける正規化相関係数ρを推定することを含むように示されている。相関係数ρは、性能勾配
と関連付ける(例えば、
に比例する)ことができるが、性能変数yの範囲に基づいてスケーリングされる。例えば、相関係数ρは、性能勾配
の正規化尺度であり得る(例えば、範囲0≦ρ≦1にスケーリングされる)。
いくつかの実施形態では、相関係数ρは、以下の方程式に示されるように、制御入力uおよび性能変数yの分散および共分散に基づいて推定することができる。
式中、Cov(u,y)は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散であり、Var(u)は、制御入力uの分散であり、Var(y)は、性能変数yの分散である。以前の方程式は、制御入力uの標準偏差σ
uおよび性能変数yの標準偏差σ
yの観点から以下の通り記載しなおすことができる。
式中、
である。
いくつかの実施形態では、相関係数ρは、再帰的推定技法を使用して推定される。再帰的推定技法は、制御入力uおよび性能変数yの指数加重移動平均(EWMA)を計算することを含み得る。例えば、制御入力uおよび性能変数yのEWMAは、以下の方程式を使用して計算することができる。
式中、
は、時間kにおける制御入力uおよび性能変数yのEWMAであり、
は、時間k−1における制御入力uおよび性能変数yの以前のEWMAであり、u
kおよびy
kは、時間kにおける制御入力uおよび性能変数yの現行値であり、kは、各変数の収集されたサンプルの総数であり、Wは、忘却窓の持続時間である。
また、EWMAは、以下の方程式を使用して、制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)および共分散Cov(u,y)に対して計算することもできる。
式中、V
u,k、V
y,kおよびc
kはそれぞれ、時間kにおける制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)および共分散Cov(u,y)のEWMAである。V
u,k−1、V
y,k−1およびc
k−1はそれぞれ、時間k−1における制御入力分散Var(u)、性能変数分散Var(y)および共分散Cov(u,y)のEWMAである。相関係数ρは、以下の方程式を使用して、これらの再帰的推定に基づいて推定することができる。
いくつかの実施形態では、相関係数ρは、推定傾き
に基づいて推定される。以前に説明されるように、推定傾き
は、以下の方程式を使用して計算することができる。
式中、Cov(u,y)は、制御入力uと性能変数yとの間の共分散であり、Var(u)は、制御入力uの分散であり、すなわち、
である。相関係数ρは、以下の方程式を使用して、傾き
から計算することができる。
以前の方程式から、標準偏差σ
uとσ
yが等しい際(すなわち、σ
u=σ
yの際)は、相関係数ρと推定傾き
は等しいことが分かる。
いくつかの実施形態では、推定傾き
は、制御入力uおよび性能変数yの値の集合を使用して計算することができる。例えば、uおよびyの有限分散を想定すると、傾き
は、以下の最小二乗推定を使用して推定することができる。
制御入力uの小さな範囲の場合、推定傾き
は、以下の方程式に示されるように、性能勾配のプロキシとして使用することができる。
以前の方程式に示されるように、推定傾き
は定利得Kを含み、定利得Kは未知数であり得る。しかし、標準偏差σ
uおよびσ
yによって提供される正規化は、定利得Kの効果を無効にする。例えば、性能変数yの標準偏差σ
yは、以下の方程式に示されるように、制御入力uの標準偏差σ
uと関連付けられる。
相関係数ρを計算するために推定傾き
に比率
を乗じることは、定利得Kで除することに等しい。相関係数ρおよび推定傾き
は両方とも、制御入力uと性能変数yとの関係の強さを示す。しかし、相関係数ρは、正規化されているという利点を有し、それにより、フィードバック制御ループの調整がはるかに簡単になる。
依然として図9を参照すると、フロー図900は、フィードバックコントローラの出力を調節することによって推定相関係数ρをゼロに至らせること(ブロック908)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラは、図5に示されるフィードバックコントローラ508である。フィードバックコントローラは、入力として推定相関係数ρを受信し、推定相関係数ρをゼロに至らせるようにその出力(例えばDC出力w)を調節することができる。フィードバックコントローラは、DC出力wの最適値に達するまで、DC出力wの値を増加または減少させることができる。DC出力wの最適値は、性能変数yの最適値(例えば、最大または最小値)をもたらす値として定義することができる。性能変数yの最適値は、勾配がゼロになると生じる。それに従って、フィードバックコントローラは、推定相関係数ρをゼロに至らせるようにその出力wを調節することによって性能変数yの最適値を達成することができる。
フロー図900は、励起信号を生成すること(ブロック910)と、励起信号を用いてフィードバックコントローラの出力wに摂動を与えることによって、新しい制御入力uを生成すること(ブロック912)とを含むように示されている。様々な実施形態では、励起信号は、図3、4を参照して説明されるような周期的ディザ信号v、または、図5を参照して説明されるような確率論的励起信号qであり得る。励起信号は、新しい制御入力uを形成するためにフィードバックコントローラによって生成されたDC値wに加えることができる(例えば、u=w+qまたはu=w+v)。新しい制御入力uが生成された後、新しい制御入力uは、プラントに提供することができ(ブロック902)、ESC制御技法を繰り返すことができる。
励起信号は、ブロック906において相関係数ρを推定するのに十分な制御入力uの変動を提供することができる。いくつかの実例では、励起信号の加算により、制御入力uは、その最適値から遠ざかってゆく。しかし、フィードバックコントローラは、制御入力uがその最適値に絶えず引き戻されるようにDC値wを調整することによって、そのようなドリフトを補償することができる。励起信号の大きさは、性能変数yに見られる付加雑音(例えば、プロセス雑音、測定雑音など)を克服するように選択することができる(例えば、ユーザによって手動でまたはコントローラによって自動的に)。
実装形態の例
ここで図10A〜16Cを参照すると、本開示の極値探索制御システムおよび方法のいくつかの実装形態の例が示されている。図10A〜16Cに示される実装形態は、極値探索コントローラ502によって制御することができるプラント504、極値探索コントローラ502によってプラント504に提供することができる制御入力u、および、極値探索コントローラ502によってプラント504からフィードバックとして受信することができる性能変数yの様々な実施形態を示す。
冷却水プラント1000
特に図10Aを参照すると、いくつかの実施形態による冷却水プラント1000が示されている。冷却水プラント1000は、冷凍機1002、冷却塔1004および空気処理ユニット(AHU)1006を含むように示されている。冷凍機1002は、凝縮器1018、蒸発器1020および圧縮機1034を含む。圧縮機1034は、冷媒ループ1026を介して凝縮器1018と蒸発器1020との間で冷媒を循環させるように構成される。また、冷凍機1002は、冷媒ループ1026上の凝縮器1018と蒸発器1020との間の少なくとも1つの膨張弁も含む。冷凍機1002は、蒸気圧縮冷凍サイクルを使用して動作し、蒸気圧縮冷凍サイクルでは、冷媒ループ1026の冷媒は、蒸発器1020で吸熱し、凝縮器1018で排熱する。冷凍機1002は、冷凍機1002の冷凍サイクル動作を補助するいかなる数のセンサ、制御弁および/または他のコンポーネントも含み得る。
冷凍機1002は、凝縮器送水ループ1022によって冷却塔1004に接続される。凝縮器送水ループ1022に沿って位置する凝縮器送水ポンプ1014は、冷却塔1004と冷凍機1002との間の凝縮器送水ループ1022を介して凝縮器水を循環させる。凝縮器送水ポンプ1014は、固定速度ポンプまたは可変速度ポンプであり得る。凝縮器送水ループ1022は、凝縮器1018を通じて凝縮器水を循環させ、凝縮器1018では、凝縮器水は冷凍ループ1026内の冷媒から吸熱する。次いで、加熱された凝縮器水は、冷却塔1004に送達され、冷却塔1004では、凝縮器水は周囲環境に排熱する。冷却塔ファンシステム1036は、冷却塔1004内の凝縮器水の冷却を容易にするために、冷却塔1004中を流れる気流を提供する。次いで、冷却された凝縮器水は、凝縮器送水ポンプ1014によって冷凍機1002に送り返される。
冷凍機1002は、冷却流体ループ1024を介してAHU 1006と接続される。冷却流体ループ1024に沿って位置する冷却流体ポンプ1016は、冷凍機1002とAHU 1006との間で冷却流体を循環させる。ポンプ1016は、固定速度ポンプまたは可変速度ポンプであり得る。冷却流体ループ1024は、蒸発器1020を通じて冷却流体を循環させ、蒸発器1020では、冷却流体は、冷凍ループ1026内の冷媒に排熱する。次いで、冷却流体は、AHU 1006に送達され、AHU 1006では、冷却流体はAHU 1006中を流れる給気から吸熱し、それにより、給気に対する冷却を提供する。次いで、加熱された流体は、ポンプ1016によって冷凍機1002に送り返される。
図10Aに示される実施形態では、AHU 1006は、エコノマイザタイプの空気処理ユニットとして示されている。エコノマイザタイプのAHUは、冷却のためにAHUによって使用される外気および還気の量を変動させる。AHU 1006は、AHU 1006のアクチュエータおよびダンパまたはファンに影響を与えるために、1つまたは複数のアルゴリズム(例えば、状態ベースアルゴリズム、極値探索制御アルゴリズムなど)を利用するエコノマイザコントローラ1032を含むように示されている。AHU 1006に供給される冷却流体の流量は、可変的に制御することもできる。例えば、PI制御1008は、AHU 1006への冷却流体の流量を規制する弁1038を制御するように示されている。PI制御1008は、セットポイント給気温度を達成するために、AHU 1006への冷却流体の流量を制御することができる。エコノマイザコントローラ1032、冷凍機1002用のコントローラおよびPI制御1008は、1つまたは複数の建物管理システム(BMS)コントローラ1010によって監視することができる。
BMSコントローラは、一般に、建物もしくは建物エリア内または建物もしくは建物エリアの周りの機器の制御、モニタおよび管理を行うように構成されたコンピュータベースシステムである。BMSコントローラは、Johnson Controls,Inc.によって販売されるMETASYS(登録商標)ブランドの建物コントローラまたは他のデバイスを含み得る。BMSコントローラ1010は、BMS、そのサブシステムおよびデバイスを制御、閲覧または別の方法で相互作用するための1つまたは複数のヒューマンマシンインタフェースまたはクライアントインタフェース(例えば、グラフィカルユーザインタフェース、報告用のインタフェース、テキストベースのコンピュータインタフェース、顧客に直接対応するウェブサービス、ウェブクライアントにページを提供するウェブサーバなど)を提供することができる。例えば、BMSコントローラ1010は、ユーザが建物空間に対する所望のセットポイント温度を設定できるようにするウェブベースのグラフィカルユーザインタフェースを提供することができる。BMSコントローラ1010は、建物空間に対するセットポイント温度が達成されているかどうかを判断するために、BMSセンサ1012(有線もしくは無線BMSまたはITネットワークを介してBMSコントローラ1010に接続される)を使用することができる。BMSコントローラ1010は、そのような判断を使用して、PI制御1008、冷凍機1002、エコノマイザコントローラ1032、または、建物のHVACシステムの他のコンポーネントにコマンドを提供することができる。
いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、BMSコントローラ1010から制御コマンドを受信することも、BMSコントローラ1010からの入力に基づいてその出力計算を行うこともしない。他の実施形態では、極値探索コントローラ502は、BMSコントローラ1010から情報(例えば、コマンド、セットポイント、動作境界など)を受信する。例えば、BMSコントローラ1010は、高いファン速度制限および低いファン速度制限を極値探索コントローラ502に提供することができる。低い制限は、頻繁なコンポーネントおよび電力負荷が大きいファンの起動を回避することができる一方で、高い制限は、ファンシステムの機械または熱制限近くの動作を回避することができる。
極値探索コントローラ502は、冷却塔ファンシステム1036 Ptower、凝縮器送水ポンプ1014 Ppumpおよび冷凍機1002の圧縮機1034 Pchillerによって消費された総電力を表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Ptower+Ppump+Pchiller)を受信するように示されている。図10Aに示されるように、電力入力Ptower、PpumpおよびPchillerは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、極値探索コントローラ502の外部の総和ブロック1040で総和することができる。他の実施形態では、極値探索コントローラ502は、個々の電力入力Ptower、PpumpおよびPchillerを受信し、総和ブロック1040の総和を実施する。いずれの事例でも、極値探索コントローラ502は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力Ptower、PpumpおよびPchillerを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、極値探索コントローラ502が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、冷却水プラント1000の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図10Aに示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、Ptower、PpumpおよびPchillerを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、AHU 1006内のファンの電力消費量、冷却流体ポンプ1016の電力消費量および/または冷却水プラント1000内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
極値探索コントローラ502は、フィードバックコントローラ1028に温度セットポイントTspを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、温度セットポイントTspは、極値探索コントローラ502が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。温度セットポイントTspは、冷却塔1004から冷凍機1002に提供される凝縮器水の温度Tcwに対するセットポイントである。凝縮器水温度Tcwは、冷却塔1004と冷凍機1002との間の凝縮器送水ループ1022に沿って(例えば、凝縮器送水ポンプ1014の上流または下流)位置する温度センサ1030によって測定することができる。フィードバックコントローラ1028は、フィードバック信号として凝縮器水温度Tcwを受信するように示されている。
フィードバックコントローラ1028は、極値探索コントローラ502によって提供される温度セットポイントTspを達成するように冷却塔ファンシステム1036および/または凝縮器送水ポンプ1014を操作することができる。例えば、フィードバックコントローラ1028は、凝縮器1018内の冷媒から除去される熱の量を増加させるために凝縮器送水ポンプ1014の速度を上げることも、凝縮器1018内の冷媒から除去される熱の量を減少させるために凝縮器送水ポンプ1014の速度を下げることもできる。同様に、フィードバックコントローラ1028は、冷却塔1004によって凝縮器水から除去される熱の量を増加させるために冷却塔ファンシステム1036の速度を上げることも、冷却塔1004によって凝縮器水から除去される熱の量を減少させるために冷却塔ファンシステム1036の速度を下げることもできる。
極値探索コントローラ502は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な凝縮器水温度セットポイントTsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。フィードバックコントローラ1028および極値探索コントローラ502は別個のデバイスとして示されているが、いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ1028および極値探索コントローラ502を組み合わせて単一のデバイス(例えば、極値探索コントローラ502およびフィードバックコントローラ1028の両方の機能を実行する単一のコントローラ)にできることが企図される。例えば、極値探索コントローラ502は、中間フィードバックコントローラ1028を必要とすることなく、冷却塔ファンシステム1036および凝縮器送水ポンプ1014を直接制御するように構成することができる。
ここで図10Bおよび10Cを参照すると、いくつかの実施形態による、冷却水プラント1000の極値探索コントローラ502の動作を示す1対のフロー図1050および1070が示されている。両方のフロー図1050および1070では、極値探索コントローラ502は、冷却水プラント1000の凝縮器水温度Tcwを制御するように動作するフィードバックコントローラ1028に温度セットポイントTspを提供する(ブロック1052および1072)。極値探索コントローラ502は、フィードバック信号として冷却水プラント1000の総電力消費量Ptotalを受信することができる(ブロック1054および1074)。
フロー図1050では、極値探索コントローラ502は、凝縮器水温度セットポイントTspに対する総電力消費量Ptotalの勾配を推定する(ブロック1056)。極値探索コントローラ502は、温度セットポイントTspを調節することによって得られた勾配をゼロに至らせることにより、冷却水プラント1000上の制御を提供することができる(ブロック1058)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1060)、確率論的励起信号を使用して新しい凝縮器水温度セットポイントTspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を用いて凝縮器水温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい温度セットポイントTspを生成することができる(ブロック1062)。
フロー図1070では、極値探索コントローラ502は、総電力消費量Ptotalを凝縮器水温度セットポイントTspと関係付ける正規化相関係数を推定する(ブロック1076)。極値探索コントローラ502は、温度セットポイントTspを調節することによって推定相関係数をゼロに至らせることにより、冷却水プラント1000上の制御を提供することができる(ブロック1078)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、励起信号を生成し(ブロック1080)、励起信号を使用して新しい凝縮器水温度セットポイントTspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、励起信号を用いて凝縮器水温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい温度セットポイントTspを生成することができる(ブロック1082)。
冷却水プラント1100
ここで図11Aを参照すると、いくつかの実施形態による別の冷却水プラント1100が示されている。冷却水プラント1100は、図10Aを参照して説明されるような冷却水プラント1000のコンポーネントのいくつかまたはすべてを含み得る。例えば、冷却水プラント1100は、冷凍機1102、冷却塔1104および空気処理ユニット(AHU)1106を含むように示されている。冷凍機1102は、凝縮器送水ループ1122によって冷却塔1104と接続される。凝縮器送水ループ1122に沿って位置する凝縮器送水ポンプ1114は、冷却塔1104と冷凍機1102との間で凝縮器水を循環させる。冷却塔ファンシステム1136は、冷却塔1104内の凝縮器水の冷却を容易にするために、冷却塔1104中を流れる気流を提供する。冷凍機1102は、冷却流体ループ1124を介してAHU 1106とも接続される。冷却流体ループ1124に沿って位置する冷却流体ポンプ1116は、冷凍機1102とAHU 1106との間で冷却流体を循環させる。
極値探索コントローラ502は、冷却塔ファンシステム1136 Ptower、凝縮器送水ポンプ1114 Ppumpおよび冷凍機1102の圧縮機1134 Pchillerによって消費された総電力を表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Ptower+Ppump+Pchiller)を受信するように示されている。いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、極値探索コントローラ502が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。図11Aに示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、Ptower、PpumpおよびPchillerを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、AHU 1106内のファンの電力消費量、冷却流体ポンプ1116の電力消費量および/または冷却水プラント1100内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
極値探索コントローラ502は、冷却塔ファンシステム1136のファン速度Fanspを規制する第1の制御信号と、凝縮器送水ポンプ1114のポンプ速度Pumpspを規制する第2の制御信号とを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、ファン速度Fanspおよびポンプ速度Pumpspは、極値探索コントローラ502が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。例えば、極値探索コントローラ502は、凝縮器1118内の冷媒から除去される熱の量を増加させるためにポンプ速度Pumpspを上げることも、凝縮器1118内の冷媒から除去される熱の量を減少させるためにポンプ速度Pumpspを下げることもできる。同様に、極値探索コントローラ502は、冷却塔1104によって凝縮器水から除去される熱の量を増加させるためにファン速度Fanspを上げることも、冷却塔1104によって凝縮器水から除去される熱の量を減少させるためにファン速度Fanspを下げることもできる。
ここで図11Bおよび11Cを参照すると、いくつかの実施形態による、冷却水プラント1100の極値探索コントローラ502の動作を示す1対のフロー図1150および1170が示されている。両方のフロー図1150および1170では、極値探索コントローラ502は、冷却塔ファンシステムにファン速度制御信号Fanspを提供し、凝縮器送水ポンプにポンプ速度制御信号Pumpspを提供する(ブロック1152および1172)。極値探索コントローラ502は、フィードバック信号として冷却水プラント1100の総電力消費量Ptotalを受信することができる(ブロック1154および1174)。
フロー図1150では、極値探索コントローラ502は、ファン速度Fanspに対する総電力消費量Ptotalの第1の勾配と、凝縮器送水ポンプ速度Pumpspに対する総電力消費量Ptotalの第2の勾配とを推定する(ブロック1156)。極値探索コントローラ502は、ファン速度Fanspおよび凝縮器送水ポンプ速度Pumpspを調節することによって得られた勾配をゼロに至らせることにより、冷却水プラント1100上の制御を提供することができる(ブロック1158)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、速度制御信号の各々に対する確率論的励起信号を生成し(ブロック1160)、確率論的励起信号を使用して新しい速度制御信号を生成する(ブロック1162)。例えば、極値探索コントローラ502は、第1の確率論的励起信号を用いてファン速度制御信号Fanspに摂動を与えることによって、新しいファン速度制御信号Fanspを生成することができる。極値探索コントローラ502は、第2の確率論的励起信号を用いてポンプ速度制御信号Pumpspに摂動を与えることによって、新しいポンプ速度制御信号Pumpspを生成することができる。
フロー図1170では、極値探索コントローラ502は、総電力消費量Ptotalをファン速度Fanspと関係付ける第1の正規化相関係数と、総電力消費量Ptotalを凝縮器送水ポンプ速度Pumpspと関係付ける第2の正規化相関係数とを推定する(ブロック1176)。極値探索コントローラ502は、ファン速度Fanspおよびポンプ速度Pumpspを調節することによって推定相関係数をゼロに至らせることにより、冷却水プラント1100上の制御を提供することができる(ブロック1178)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、速度制御信号の各々に対する励起信号を生成し(ブロック1180)、励起信号を使用して新しいファンおよびポンプ速度を生成する(ブロック1182)。例えば、極値探索コントローラ502は、第1の励起信号を用いてファン速度制御信号Fanspに摂動を与えることによって、新しいファン速度制御信号Fanspを生成することができる。極値探索コントローラ502は、第2の励起信号を用いてポンプ速度制御信号Pumpspに摂動を与えることによって、新しいポンプ速度制御信号Pumpspを生成することができる。
可変冷媒流量システム1200
ここで図12Aを参照すると、いくつかの実施形態による可変冷媒流量(VRF)システム1200が示されている。VRFシステム1200は、屋外ユニット1202、いくつかの熱回収ユニット1204およびいくつかの屋内ユニット1206を含むように示されている。いくつかの実施形態では、屋外ユニット1202は、建物の外側(例えば、屋上)に位置し、屋内ユニット1206は、建物全体にわたって(例えば、建物の様々な部屋またはゾーンに)分配される。いくつかの実施形態では、VRFシステム1200は、いくつかの熱回収ユニット1204を含む。熱回収ユニット1204は、屋外ユニット1202と屋内ユニット1206との間の冷媒の流量を制御し(例えば、弁の開閉によって)、屋外ユニット1202によって供給される加熱または冷却負荷を最小化することができる。
屋外ユニット1202は、圧縮機1214および熱交換器1220を含むように示されている。圧縮機1214は、熱交換器1220と屋内ユニット1206との間で冷媒を循環させる。熱交換器1220は、VRFシステム1200が冷却モードで動作する際には凝縮器(冷媒が外気に排熱することを可能にする)として機能することも、VRFシステム1200が加熱モードで動作する際には蒸発器(冷媒が外気から吸熱することを可能にする)として機能することもできる。ファン1218は、熱交換器1220中を流れる気流を提供する。ファン1218の速度は、熱交換器1220内の冷媒内または冷媒外への熱伝達率を調節するために調整することができる。
各屋内ユニット1206は、熱交換器1226および膨脹弁1224を含むように示されている。熱交換器1226の各々は、屋内ユニット1206が加熱モードで動作する際には凝縮器(冷媒が部屋またはゾーン内の空気に排熱することを可能にする)として機能することも、屋内ユニット1206が冷却モードで動作する際には蒸発器(冷媒が部屋またはゾーン内の空気から吸熱することを可能にする)として機能することもできる。ファン1222は、熱交換器1226中を流れる気流を提供する。ファン1222の速度は、熱交換器1226内の冷媒内または冷媒外への熱伝達率を調節するために調整することができる。温度センサ1228は、屋内ユニット1206内の冷媒の温度を測定するために使用することができる。
図12Aでは、屋内ユニット1206は、冷却モードで動作するように示されている。冷却モードでは、冷媒は、冷却管1212を介して屋内ユニット1206に提供される。冷媒は、膨脹弁1224によって低温低圧状態に膨張され、建物内の部屋またはゾーンから吸熱するために熱交換器1226(蒸発器として機能する)中を流れる。次いで、加熱された冷媒は、還流管1210を介して屋外ユニット1202に還流し、圧縮機1214によって高温高圧状態に圧縮される。圧縮された冷媒は、熱交換器1220(凝縮器として機能する)中を流れ、外気に排熱する。次いで、冷却された冷媒は、冷却管1212を介して屋内ユニット1206に提供することができる。冷却モードでは、流量制御弁1236を閉鎖し、膨脹弁1234を完全に開放することができる。
加熱モードでは、冷媒は、加熱管1208を介して高温状態で屋内ユニット1206に提供される。高温冷媒は、熱交換器1226(凝縮器として機能する)中を流れ、建物の部屋またはゾーン内の空気に排熱する。次いで、冷媒は、冷却管1212を介して屋外ユニットに還流する(図12Aに示される流れ方向とは反対に)。冷媒は、膨脹弁1234によって低温低圧状態に膨張することができる。膨張された冷媒は、熱交換器1220(蒸発器として機能する)中を流れ、外気から吸熱する。加熱された冷媒は、圧縮機1214によって圧縮し、高温圧縮状態で加熱管1208を介して屋内ユニット1206に提供することができる。加熱モードでは、流量制御弁1236は、圧縮機1214からの冷媒が加熱管1208に流れ込むことができるように、完全に開放することができる。
極値探索コントローラ502は、屋外ユニット1202によって消費された総電力Poutdoorおよび各屋内ユニット1206によって消費された総電力Pindoorを表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Poutdoor+Pindoor)を受信するように示されている。屋外ユニット電力Poutdoorは、圧縮機1214および/またはファン1218の電力消費量を含み得る。屋内ユニット電力Pindoorは、屋内ユニット1206内のファン1222および/または他の任意の電力消費デバイスあるいは熱回収ユニット1204(例えば、電子弁、ポンプ、ファンなど)の電力消費量を含み得る。図12Aに示されるように、電力入力PoutdoorおよびPindoorは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、極値探索コントローラ502の外部の総和ブロック1230で総和することができる。他の実施形態では、極値探索コントローラ502は、個々の電力入力PoutdoorおよびPindoorを受信し、総和ブロック1230の総和を実施する。いずれの事例でも、極値探索コントローラ502は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力PoutdoorおよびPindoorを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、極値探索コントローラ502が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、VRFシステム1200の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図12Aに示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、PoutdoorおよびPindoorを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、回収ユニット1204、屋内ユニット1206、屋外ユニット1202、ポンプの電力消費量および/またはVRFシステム1200内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
極値探索コントローラ502は、屋外ユニットコントローラ1232に圧力セットポイントPspを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、圧力セットポイントPspは、極値探索コントローラ502が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。圧力セットポイントPspは、圧縮機1214の吸入または吐出における冷媒の圧力Prに対するセットポイントである。冷媒圧力Prは、圧縮機1214の吸入側(例えば、圧縮機1214の上流)または圧縮機1214の吐出側(例えば、圧縮機1214の下流)に位置する圧力センサ1216によって測定することができる。屋外ユニットコントローラ1232は、フィードバック信号として冷媒圧力Prを受信するように示されている。
屋外ユニットコントローラ1232は、極値探索コントローラ502によって提供される圧力セットポイントPspを達成するように屋外ユニット1202を操作することができる。屋外ユニット1202を操作することは、圧縮機1214の速度および/またはファン1218の速度を調整することを含み得る。例えば、屋外ユニットコントローラ1232は、圧縮機吐出圧力を増加させるかまたは圧縮機吸入圧力を減少させるために圧縮機1214の速度を上げることができる。屋外ユニットコントローラ1232は、熱交換器1220内の熱伝達を増加させるためにファン1218の速度を上げることも、熱交換器1220内の熱伝達を減少させるためにファン1218の速度を下げることもできる。
極値探索コントローラ502は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、圧力セットポイントPsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。屋外ユニットコントローラ1232および極値探索コントローラ502は別個のデバイスとして示されているが、いくつかの実施形態では、屋外ユニットコントローラ1232および極値探索コントローラ502を組み合わせて単一のデバイス(例えば、極値探索コントローラ502および屋外ユニットコントローラ1232の両方の機能を実行する単一のコントローラ)にできることが企図される。例えば、極値探索コントローラ502は、中間屋外ユニットコントローラ1232を必要とすることなく、圧縮機1214および/またはファン1218を直接操作するように構成することができる。
ここで図12Bおよび12Cを参照すると、いくつかの実施形態による、VRFシステム1200の極値探索コントローラ502の動作を示す1対のフロー図1250および1270が示されている。両方のフロー図1250および1270では、極値探索コントローラ502は、VRFシステム1200の屋外ユニット1202の冷媒圧力を制御するように動作するコントローラ(例えば、屋外ユニットコントローラ1232)に圧力セットポイントPspを提供する(ブロック1252および1272)。冷媒圧力は、圧縮機吸入圧力または圧縮機吐出圧力であり得る。極値探索コントローラ502は、フィードバック信号としてVRFシステム1200の総電力消費量Ptotalを受信することができる(ブロック1254および1274)。
フロー図1250では、極値探索コントローラ502は、冷媒圧力セットポイントPspに対する総電力消費量Ptotalの勾配を推定する(ブロック1256)。極値探索コントローラ502は、圧力セットポイントPspを調節することによって得られた勾配をゼロに至らせることにより、VRFシステム1200上の制御を提供することができる(ブロック1258)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1260)、確率論的励起信号を使用して新しい冷媒圧力セットポイントPspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を用いて冷媒圧力セットポイントPspに摂動を与えることによって、新しい圧力セットポイントPspを生成することができる(ブロック1262)。
フロー図1270では、極値探索コントローラ502は、総電力消費量Ptotalを冷媒圧力セットポイントPspと関係付ける正規化相関係数を推定する(ブロック1276)。極値探索コントローラ502は、冷媒圧力セットポイントPspを調節することによって推定相関係数をゼロに至らせることにより、VRFシステム1200上の制御を提供することができる(ブロック1278)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、励起信号を生成し(ブロック1280)、励起信号を使用して新しい冷媒圧力セットポイントPspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、励起信号を用いて冷媒圧力セットポイントPspに摂動を与えることによって、新しい圧力セットポイントPspを生成することができる(ブロック1282)。
可変冷媒流量システム1300
ここで図13Aを参照すると、いくつかの実施形態による別の可変冷媒流量(VRF)システム1300が示されている。VRFシステム1300は、図12Aを参照して説明されるようなVRFシステム1200のコンポーネントのいくつかまたはすべてを含み得る。例えば、VRFシステム1300は、屋外ユニット1302、いくつかの熱回収ユニット1304およびいくつかの屋内ユニット1306を含むように示されている。
屋外ユニット1302は、圧縮機1314および熱交換器1320を含むように示されている。圧縮機1314は、熱交換器1320と屋内ユニット1306との間で冷媒を循環させる。熱交換器1320は、VRFシステム1300が冷却モードで動作する際には凝縮器(冷媒が外気に排熱することを可能にする)として機能することも、VRFシステム1300が加熱モードで動作する際には蒸発器(冷媒が外気から吸熱することを可能にする)として機能することもできる。ファン1318は、熱交換器1320中を流れる気流を提供する。ファン1318の速度は、熱交換器1320内の冷媒内または冷媒外への熱伝達率を調節するために調整することができる。
各屋内ユニット1306は、熱交換器1326および膨脹弁1324を含むように示されている。熱交換器1326の各々は、屋内ユニット1306が加熱モードで動作する際には凝縮器(冷媒が部屋またはゾーン内の空気に排熱することを可能にする)として機能することも、屋内ユニット1306が冷却モードで動作する際には蒸発器(冷媒が部屋またはゾーン内の空気から吸熱することを可能にする)として機能することもできる。ファン1322は、熱交換器1326中を流れる気流を提供する。ファン1322の速度は、熱交換器1326内の冷媒内または冷媒外への熱伝達率を調節するために調整することができる。温度センサ1328は、屋内ユニット1306内の冷媒の温度Trを測定するために使用することができる。
極値探索コントローラ502は、屋外ユニット1302によって消費された総電力Poutdoorおよび各屋内ユニット1306によって消費された総電力Pindoorを表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Poutdoor+Pindoor)を受信するように示されている。屋外ユニット電力Poutdoorは、圧縮機1314および/またはファン1318の電力消費量を含み得る。屋内ユニット電力Pindoorは、屋内ユニット1306内のファン1322および/または他の任意の電力消費デバイスあるいは熱回収ユニット1304(例えば、電子弁、ポンプ、ファンなど)の電力消費量を含み得る。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、極値探索コントローラ502が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、VRFシステム1300の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図13Aに示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、PoutdoorおよびPindoorを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、回収ユニット1304、屋内ユニット1306、屋外ユニット1302、ポンプの電力消費量および/またはVRFシステム1300内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
極値探索コントローラ502は、屋外ユニットコントローラ1332に圧力セットポイントPspを提供し、屋内ユニットコントローラ1338に過熱温度セットポイントTspを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、圧力セットポイントPspおよび過熱温度セットポイントTspは、極値探索コントローラ502が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。圧力セットポイントPspは、圧縮機1314の吸入または吐出における冷媒の圧力Prに対するセットポイントである。過熱温度セットポイントTspは、熱交換器1326の排出口における冷媒の過熱の量(すなわち、冷媒の温度Tr−冷媒飽和温度)に対するセットポイントである。
冷媒圧力Prは、圧縮機1314の吸入側(例えば、圧縮機1314の上流)または圧縮機1314の吐出側(例えば、圧縮機1314の下流)に位置する圧力センサ1316によって測定することができる。屋外ユニットコントローラ1332は、フィードバック信号として冷媒圧力Prを受信するように示されている。屋外ユニットコントローラ1332は、極値探索コントローラ502によって提供される圧力セットポイントPspを達成するように屋外ユニット1302を操作することができる。屋外ユニット1302を操作することは、圧縮機1314の速度および/またはファン1318の速度を調整することを含み得る。例えば、屋外ユニットコントローラ1332は、圧縮機吐出圧力を増加させるかまたは圧縮機吸入圧力を減少させるために圧縮機1314の速度を上げることができる。屋外ユニットコントローラ1332は、熱交換器1320内の熱伝達を増加させるためにファン1318の速度を上げることも、熱交換器1320内の熱伝達を減少させるためにファン1318の速度を下げることもできる。
冷媒の過熱Tsuperは、冷媒の温度Trから冷媒飽和温度Tsatを減ずること(すなわち、Tsuper=Tr−Tsat)によって計算することができる(屋内ユニットコントローラ1338によって)。冷媒温度Trは、熱交換器1326の排出口に位置する温度センサ1328によって測定することができる。屋内ユニットコントローラ1338は、フィードバック信号として冷媒圧力Trを受信するように示されている。屋内ユニットコントローラ1338は、極値探索コントローラ502によって提供される過熱温度セットポイントTspを達成するように屋内ユニット1306を操作することができる。屋内ユニット1306を操作することは、ファン1322の速度を調整することおよび/または膨脹弁1324の位置を調整することを含み得る。例えば、屋内ユニットコントローラ1338は、熱交換器1326内の熱伝達を増加させるためにファン1322の速度を上げることも、熱交換器1326内の熱伝達を減少させるためにファン1322の速度を下げることもできる。同様に、屋内ユニットコントローラ1338は、屋内ユニット1306中を流れる冷媒を増加させるために弁1324を開位置に近づけることも、屋内ユニット1306中を流れる冷媒を減少させるために弁1324を閉位置に近づけることもできる。
極値探索コントローラ502は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、圧力セットポイントPspおよび/または過熱温度セットポイントTsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。屋外ユニットコントローラ1332、屋内ユニットコントローラ1338および極値探索コントローラ502は別個のデバイスとして示されているが、いくつかの実施形態では、屋外ユニットコントローラ1332、屋内ユニットコントローラ1338および極値探索コントローラ502を組み合わせて単一のデバイス(例えば、極値探索コントローラ502、屋外ユニットコントローラ1332および屋内ユニットコントローラ1338の機能を実行する単一のコントローラ)にできることが企図される。例えば、極値探索コントローラ502は、中間屋外ユニットコントローラ1332または屋内ユニットコントローラ1338を必要とすることなく、圧縮機1314、ファン1318、ファン1322および/または弁1324を直接操作するように構成することができる。
ここで図13Bおよび13Cを参照すると、いくつかの実施形態による、VRFシステム1300の極値探索コントローラ502の動作を示す1対のフロー図1350および1370が示されている。両方のフロー図1350および1370では、極値探索コントローラ502は、VRFシステム1300の屋外ユニット1302の冷媒圧力を制御するように動作するコントローラ(例えば、屋外ユニットコントローラ1332)に圧力セットポイントPspを提供する(ブロック1352および1372)。冷媒圧力は、圧縮機吸入圧力または圧縮機吐出圧力であり得る。また、極値探索コントローラ502は、VRFシステム1300の屋内ユニットの冷媒温度を制御するように動作するコントローラ(例えば、屋内ユニットコントローラ1338)に過熱温度セットポイントを提供する(ブロック1353および1373)。極値探索コントローラ502は、フィードバック信号としてVRFシステム1300の総電力消費量Ptotalを受信することができる(ブロック1354および1374)。
フロー図1350では、極値探索コントローラ502は、冷媒圧力セットポイントPspに対する総電力消費量Ptotalの第1の勾配と、冷媒過熱温度セットポイントTspに対する総電力消費量Ptotalの第2の勾配とを推定する(ブロック1356)。極値探索コントローラ502は、圧力セットポイントPspおよび過熱温度セットポイントTspを調節することによって得られた勾配をゼロに至らせることにより、VRFシステム1300上の制御を提供することができる(ブロック1358)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1360)、確率論的励起信号を使用して新しい冷媒圧力セットポイントPspおよび新しい冷媒過熱温度セットポイントTspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、第1の確率論的励起信号を用いて冷媒圧力セットポイントPspに摂動を与えることによって、新しい圧力セットポイントPspを生成することができ、第2の確率論的励起信号を用いて温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい過熱温度セットポイントTspを生成することができる(ブロック1362)。
フロー図1370では、極値探索コントローラ502は、総電力消費量Ptotalを冷媒圧力セットポイントPspと関係付ける第1の正規化相関係数と、総電力消費量Ptotalを冷媒過熱温度セットポイントTspと関係付ける第2の正規化相関係数とを推定する(ブロック1376)。極値探索コントローラ502は、冷媒圧力セットポイントPspおよび冷媒過熱温度セットポイントTspを調節することによって推定相関係数をゼロに至らせることにより、VRFシステム1300上の制御を提供することができる(ブロック1378)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、励起信号を生成し(ブロック1380)、励起信号を使用して新しい冷媒圧力セットポイントPspおよび新しい冷媒過熱温度セットポイントTspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、第1の励起信号を用いて冷媒圧力セットポイントPspに摂動を与えることによって、新しい圧力セットポイントPspを生成することができ、第2の励起信号を用いて温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい過熱温度セットポイントTspを生成することができる(ブロック1382)。
蒸気圧縮システム1400
ここで図14Aを参照すると、いくつかの実施形態による蒸気圧縮空調システム1400が示されている。システム1400は、冷媒回路1410を含むように示されている。冷媒回路1410は、凝縮器1412、蒸発器1414、膨脹弁1424および圧縮機1406を含む。圧縮機1406は、蒸発器1414と凝縮器1412との間で冷媒を循環させるように構成される。冷媒回路1410は、蒸気圧縮サイクルを使用して動作する。例えば、圧縮機1406は、冷媒を高温高圧状態に圧縮する。圧縮された冷媒は、凝縮器1412中を流れ、凝縮器1412では、冷媒は排熱する。凝縮器ファン1432は、凝縮器1412内の熱伝達率を調節するために使用することができる。冷却された冷媒は、膨脹弁1424によって低圧低温状態に膨張される。膨張された冷媒は、蒸発器1414中を流れ、蒸発器1414では、冷媒は吸熱する。蒸発器ファン1416は、蒸発器1414内の熱伝達率を調節するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、冷媒回路1410は、図14Aに示されるように、屋上ユニット1402(例えば、屋上空気処理ユニット)内に位置する。屋上ユニット1402は、エアダクト1422中を流れる給気1420に対する冷却を提供するように構成することができる。例えば、蒸発器1414は、エアダクト1422内に位置し、その結果、給気1420は、蒸発器1414中を流れ、蒸発器1414内の膨張された冷媒に熱を伝達することによって冷却することができる。次いで、冷却された気流は、建物の部屋またはゾーンに冷房を提供するために、建物に送ることができる。給気1420の温度は、蒸発器1414の下流(例えば、ダクト1422内)に位置する温度センサ1418によって測定することができる。他の実施形態では、冷媒回路1410は、蒸気圧縮サイクルを使用して熱を伝達する様々な他のシステムまたはデバイス(例えば、冷凍機、ヒートポンプ、熱回収冷凍機、冷凍デバイスなど)のいずれかで使用することができる。
極値探索コントローラ502は、圧縮機1406 Pcomp、蒸発器ファン1416 Pfan,evapおよび凝縮器ファン1432 Pfan,condによって消費された総電力を表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Pcomp+Pfan,evap+Pfan,cond)を受信するように示されている。図14Aに示されるように、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、極値探索コントローラ502の外部の総和ブロック1408で総和することができる。他の実施形態では、極値探索コントローラ502は、個々の電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信し、総和ブロック1408の総和を実施する。いずれの事例でも、極値探索コントローラ502は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、極値探索コントローラ502が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、蒸気圧縮システム1400の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図14Aに示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、屋上ユニット1402内の様々な他のファンの電力消費量、流体ポンプの電力消費量および/または蒸気圧縮システム1400内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
極値探索コントローラ502は、フィードバックコントローラ1404に温度セットポイントTspを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、温度セットポイントTspは、極値探索コントローラ502が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。温度セットポイントTspは、蒸発器1414を出る給気1420の温度に対するセットポイントである。給気温度Tsaは、蒸発器1414の下流に位置する温度センサ1418によって測定することができる。フィードバックコントローラ1404は、フィードバック信号として給気温度Tsaを受信するように示されている。
フィードバックコントローラ1404は、極値探索コントローラ502によって提供される温度セットポイントTspを達成するように蒸発器ファン1416、凝縮器ファン1432および/または圧縮機1406を操作することができる。例えば、フィードバックコントローラ1404は、蒸発器1414内の給気1420から除去される熱の量を増加させるために蒸発器ファン1416の速度を上げることも、蒸発器1414内の給気1420から除去される熱の量を減少させるために蒸発器ファン1416の速度を下げることもできる。同様に、フィードバックコントローラ1404は、凝縮器1412内の冷媒から除去される熱の量を増加させるために凝縮器ファン1432の速度を上げることも、凝縮器1412内の冷媒から除去される熱の量を減少させるために凝縮器ファン1432の速度を下げることもできる。
極値探索コントローラ502は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な給気温度セットポイントTsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。フィードバックコントローラ1404および極値探索コントローラ502は別個のデバイスとして示されているが、いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ1404および極値探索コントローラ502を組み合わせて単一のデバイス(例えば、極値探索コントローラ502およびフィードバックコントローラ1404の両方の機能を実行する単一のコントローラ)にできることが企図される。例えば、極値探索コントローラ502は、中間フィードバックコントローラ1404を必要とすることなく、蒸発器ファン1416、凝縮器ファン1432および/または圧縮機1406を直接制御するように構成することができる。
ここで図14Bおよび14Cを参照すると、いくつかの実施形態による、蒸気圧縮システム1400の極値探索コントローラ502の動作を示す1対のフロー図1450および1470が示されている。両方のフロー図1450および1470では、極値探索コントローラ502は、蒸気圧縮システム1400の給気温度Tsaを制御するように動作するフィードバックコントローラ1404に温度セットポイントTspを提供する(ブロック1452および1472)。極値探索コントローラ502は、フィードバック信号として蒸気圧縮システム1400の総電力消費量Ptotalを受信することができる(ブロック1454および1474)。
フロー図1450では、極値探索コントローラ502は、給気温度セットポイントTspに対する総電力消費量Ptotalの勾配を推定する(ブロック1456)。極値探索コントローラ502は、温度セットポイントTspを調節することによって得られた勾配をゼロに至らせることにより、蒸気圧縮システム1400上の制御を提供することができる(ブロック1458)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1460)、確率論的励起信号を使用して新しい給気温度セットポイントTspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を用いて給気温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい温度セットポイントTspを生成することができる(ブロック1462)。
フロー図1470では、極値探索コントローラ502は、総電力消費量Ptotalを給気温度セットポイントTspと関係付ける正規化相関係数を推定する(ブロック1476)。極値探索コントローラ502は、温度セットポイントTspを調節することによって推定相関係数をゼロに至らせることにより、蒸気圧縮システム1400上の制御を提供することができる(ブロック1478)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、励起信号を生成し(ブロック1480)、励起信号を使用して新しい給気温度セットポイントTspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、励起信号を用いて給気温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい温度セットポイントTspを生成することができる(ブロック1482)。
蒸気圧縮システム1500
ここで図15Aを参照すると、いくつかの実施形態による別の蒸気圧縮空調システム1500が示されている。システム1500は、図14Aを参照して説明されるような蒸気圧縮システム1400のコンポーネントのいくつかまたはすべてを含み得る。例えば、システム1500は、冷媒回路1510を含むように示されている。冷媒回路1510は、凝縮器1512、蒸発器1514、膨脹弁1524および圧縮機1506を含む。圧縮機1506は、蒸発器1514と凝縮器1512との間で冷媒を循環させるように構成される。冷媒回路1510は、蒸気圧縮サイクルを使用して動作する。例えば、圧縮機1506は、冷媒を高温高圧状態に圧縮する。圧縮された冷媒は、凝縮器1512中を流れ、凝縮器1512では、冷媒は排熱する。凝縮器ファン1532は、凝縮器1512内の熱伝達率を調節するために使用することができる。冷却された冷媒は、膨脹弁1524によって低圧低温状態に膨張される。膨張された冷媒は、蒸発器1514中を流れ、蒸発器1514では、冷媒は吸熱する。蒸発器ファン1516は、蒸発器1514内の熱伝達率を調節するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、冷媒回路1510は、図15Aに示されるように、屋上ユニット1502(例えば、屋上空気処理ユニット)内に位置する。屋上ユニット1502は、エアダクト1522中を流れる給気1520に対する冷却を提供するように構成することができる。例えば、蒸発器1514は、エアダクト1522内に位置し、その結果、給気1520は、蒸発器1514中を流れ、蒸発器1514内の膨張された冷媒に熱を伝達することによって冷却することができる。次いで、冷却された気流は、建物の部屋またはゾーンに冷房を提供するために、建物に送ることができる。給気1520の温度は、蒸発器1514の下流(例えば、ダクト1522内)に位置する温度センサ1518によって測定することができる。他の実施形態では、冷媒回路1510は、蒸気圧縮サイクルを使用して熱を伝達する様々な他のシステムまたはデバイス(例えば、冷凍機、ヒートポンプ、熱回収冷凍機、冷凍デバイスなど)のいずれかで使用することができる。
極値探索コントローラ502は、圧縮機1506 Pcomp、蒸発器ファン1516 Pfan,evapおよび凝縮器ファン1532 Pfan,condによって消費された総電力を表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Pcomp+Pfan,evap+Pfan,cond)を受信するように示されている。図15Aに示されるように、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、極値探索コントローラ502の外部の総和ブロック1508で総和することができる。他の実施形態では、極値探索コントローラ502は、個々の電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信し、総和ブロック1508の総和を実施する。いずれの事例でも、極値探索コントローラ502は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、極値探索コントローラ502が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、蒸気圧縮システム1500の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図15Aに示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、屋上ユニット1502内の様々な他のファンの電力消費量、流体ポンプの電力消費量および/または蒸気圧縮システム1500内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
極値探索コントローラ502は、ファン速度Sspを規制する制御信号を蒸発器ファン1516に提供するように示されている。いくつかの実施形態では、ファン速度Sspは、極値探索コントローラ502が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。ファン速度Sspを上げると、蒸発器1514内の給気1520から除去される熱の量が増加し、総システム電力消費量Ptotalを増加させることができる。同様に、ファン速度Sspを下げると、蒸発器1514内の給気1520から除去される熱の量が減少し、総システム電力消費量Ptotalを減少させることができる。極値探索コントローラ502は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な蒸発器ファン速度Ssp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。
ここで図15Bおよび15Cを参照すると、いくつかの実施形態による、蒸気圧縮システム1500の極値探索コントローラ502の動作を示す1対のフロー図1550および1570が示されている。両方のフロー図1550および1570では、極値探索コントローラ502は、蒸気圧縮システム1500の蒸発器ファン1516にファン速度Sspを規制する制御信号を提供する(ブロック1552および1572)。極値探索コントローラ502は、フィードバック信号として蒸気圧縮システム1500の総電力消費量Ptotalを受信することができる(ブロック1554および1574)。
フロー図1550では、極値探索コントローラ502は、蒸発器ファン速度Sspに対する総電力消費量Ptotalの勾配を推定する(ブロック1556)。極値探索コントローラ502は、蒸発器ファン速度Sspを調節することによって得られた勾配をゼロに至らせることにより、蒸気圧縮システム1500上の制御を提供することができる(ブロック1558)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1560)、確率論的励起信号を使用して新しい蒸発器ファン速度Sspを生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を用いて蒸発器ファン速度Sspに摂動を与えることによって、新しい蒸発器ファン速度Sspを生成することができる(ブロック1562)。
フロー図1570では、極値探索コントローラ502は、総電力消費量Ptotalを蒸発器ファン速度Sspと関係付ける正規化相関係数を推定する(ブロック1576)。極値探索コントローラ502は、蒸発器ファン速度Sspを調節することによって推定相関係数をゼロに至らせることにより、蒸気圧縮システム1500上の制御を提供することができる(ブロック1578)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、励起信号を生成し(ブロック1580)、励起信号を使用して蒸発器ファンに対する新しい制御信号を生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、励起信号を用いて蒸発器ファン速度Sspに摂動を与えることによって、新しい速度制御信号を生成することができる(ブロック1582)。
蒸気圧縮システム1600
ここで図16Aを参照すると、いくつかの実施形態による蒸気圧縮空調システム1600が示されている。システム1600は、冷媒回路1610を含むように示されている。冷媒回路1610は、凝縮器1612、蒸発器1614、膨脹弁1624および圧縮機1606を含む。圧縮機1606は、蒸発器1614と凝縮器1612との間で冷媒を循環させるように構成される。冷媒回路1610は、蒸気圧縮サイクルを使用して動作する。例えば、圧縮機1606は、冷媒を高温高圧状態に圧縮する。圧縮された冷媒は、凝縮器1612中を流れ、凝縮器1612では、冷媒は排熱する。凝縮器ファン1632は、凝縮器1612内の熱伝達率を調節するために使用することができる。冷却された冷媒は、膨脹弁1624によって低圧低温状態に膨張される。膨張された冷媒は、蒸発器1614中を流れ、蒸発器1614では、冷媒は吸熱する。蒸発器ファン1616は、蒸発器1614内の熱伝達率を調節するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、冷媒回路1610は、図16Aに示されるように、屋上ユニット1602(例えば、屋上空気処理ユニット)内に位置する。屋上ユニット1602は、エアダクト1622中を流れる給気1620に対する冷却を提供するように構成することができる。例えば、蒸発器1614は、エアダクト1622内に位置し、その結果、給気1620は、蒸発器1614中を流れ、蒸発器1614内の膨張された冷媒に熱を伝達することによって冷却することができる。次いで、冷却された気流は、建物の部屋またはゾーンに冷房を提供するために、建物に送ることができる。給気1620の温度は、蒸発器1614の下流(例えば、ダクト1622内)に位置する温度センサ1618によって測定することができる。他の実施形態では、冷媒回路1610は、蒸気圧縮サイクルを使用して熱を伝達する様々な他のシステムまたはデバイス(例えば、冷凍機、ヒートポンプ、熱回収冷凍機、冷凍デバイスなど)のいずれかで使用することができる。
極値探索コントローラ502は、圧縮機1606 Pcomp、蒸発器ファン1616 Pfan,evapおよび凝縮器ファン1632 Pfan,condによって消費された総電力を表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Pcomp+Pfan,evap+Pfan,cond)を受信するように示されている。図16Aに示されるように、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、極値探索コントローラ502の外部の総和ブロック1608で総和することができる。他の実施形態では、極値探索コントローラ502は、個々の電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信し、総和ブロック1608の総和を実施する。いずれの事例でも、極値探索コントローラ502は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、極値探索コントローラ502が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、蒸気圧縮システム1600の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図16Aに示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、屋上ユニット1602内の様々な他のファンの電力消費量、流体ポンプの電力消費量および/または蒸気圧縮システム1600内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
極値探索コントローラ502は、フィードバックコントローラ1604に温度セットポイントTspを提供し、ファン速度Sspを規制する制御信号を凝縮器ファン1632に提供するように示されている。いくつかの実施形態では、温度セットポイントTspおよび凝縮器ファン速度Sspは、極値探索コントローラ502が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。温度セットポイントTspは、蒸発器1614を出る給気1620の温度に対するセットポイントである。給気温度Tsaは、蒸発器1614の下流に位置する温度センサ1618によって測定することができる。フィードバックコントローラ1604は、フィードバック信号として給気温度Tsaを受信するように示されている。ファン速度Sspは、凝縮器ファン1632の速度である。
フィードバックコントローラ1604は、極値探索コントローラ502によって提供される温度セットポイントTspを達成するように蒸発器ファン1616および/または圧縮機1606を操作することができる。例えば、フィードバックコントローラ1604は、蒸発器1614内の給気1620から除去される熱の量を増加させるために蒸発器ファン1616の速度を上げることも、蒸発器1614内の給気1620から除去される熱の量を減少させるために蒸発器ファン1616の速度を下げることもできる。同様に、極値探索コントローラ502は、凝縮器ファン速度Sspを調節して、凝縮器1612内の冷媒から除去される熱の量を増加させる(例えば、凝縮器ファン速度Sspを上げることによって)ことも、凝縮器1612内の冷媒から除去される熱の量を減少させる(例えば、凝縮器ファン速度Sspを下げることによって)こともできる。
極値探索コントローラ502は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な給気温度セットポイントTspおよび/または最適な凝縮器ファン速度Ssp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。フィードバックコントローラ1604および極値探索コントローラ502は別個のデバイスとして示されているが、いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ1604および極値探索コントローラ502を組み合わせて単一のデバイス(例えば、極値探索コントローラ502およびフィードバックコントローラ1604の両方の機能を実行する単一のコントローラ)にできることが企図される。例えば、極値探索コントローラ502は、中間フィードバックコントローラ1604を必要とすることなく、蒸発器ファン1616、凝縮器ファン1632および/または圧縮機1606を直接制御するように構成することができる。
ここで図16Bおよび16Cを参照すると、いくつかの実施形態による、蒸気圧縮システム1600の極値探索コントローラ502の動作を示す1対のフロー図1650および1670が示されている。両方のフロー図1650および1670では、極値探索コントローラ502は、蒸気圧縮システム1600の給気温度Tsaを制御するように動作するフィードバックコントローラ1604に温度セットポイントTspを提供する(ブロック1652および1672)。また、極値探索コントローラ502は、蒸気圧縮システム1600の凝縮器ファン1632にファン速度を規制する制御信号を提供する(ブロック1653および1674)。極値探索コントローラ502は、フィードバック信号として蒸気圧縮システム1600の総電力消費量Ptotalを受信することができる(ブロック1654および1674)。
フロー図1650では、極値探索コントローラ502は、給気温度セットポイントTspに対する総電力消費量Ptotalの第1の勾配と、凝縮器ファン速度Sspに対する総電力消費量Ptotalの第2の勾配とを推定する(ブロック1656)。極値探索コントローラ502は、温度セットポイントTspおよび/または凝縮器ファン速度Sspを調節することによって得られた勾配をゼロに至らせることにより、蒸気圧縮システム1600上の制御を提供することができる(ブロック1658)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、確率論的励起信号を生成し(ブロック1660)、確率論的励起信号を使用して新しい給気温度セットポイントTspおよび凝縮器ファン速度Sspを規制する新しい制御信号を生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、第1の確率論的励起信号を用いて給気温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい温度セットポイントTspを生成し、第2の確率論的励起信号を用いて凝縮器ファン速度Sspに摂動を与えることによって、凝縮器ファン1632に対する新しい制御信号を生成することができる(ブロック1662)。
フロー図1670では、極値探索コントローラ502は、総電力消費量Ptotalを給気温度セットポイントTspと関係付ける第1の正規化相関係数と、総電力消費量Ptotalを凝縮器ファン速度Sspと関係付ける第2の正規化相関係数とを推定する(ブロック1676)。極値探索コントローラ502は、温度セットポイントTspおよび/または凝縮器ファン速度Sspを調節することによって推定相関係数をゼロに至らせることにより、蒸気圧縮システム1600上の制御を提供することができる(ブロック1678)。いくつかの実施形態では、極値探索コントローラ502は、励起信号を生成し(ブロック1680)、励起信号を使用して新しい給気温度セットポイントTspおよび凝縮器ファン速度Sspを規制する新しい制御信号を生成する。例えば、極値探索コントローラ502は、第1の励起信号を用いて給気温度セットポイントTspに摂動を与えることによって、新しい温度セットポイントTspを生成し、第2の励起信号を用いて凝縮器ファン速度Sspに摂動を与えることによって、凝縮器ファン1632に対する新しい制御信号を生成することができる(ブロック1682)。
多変数最適化を伴う極値探索制御システム
ここで図17を参照すると、例示的な実施形態による別の極値探索制御システム1700が示されている。システム1700は、多重入力単一出力(MISO)システム1702および多変数極値探索コントローラ(ESC)1704を含むように示されている。MISOシステム1702は、単一の性能変数yに影響を与えるために複数の操作変数u1…uNを使用したいかなるシステムまたはデバイスでもあり得る。MISOシステム1702は、図3〜5を参照して説明されるようなプラント304、404もしくは504、図10、11を参照して説明されるような冷却水プラント1000もしくは1100、図12、13を参照して説明されるような可変冷媒流量システム1200もしくは1300、および/または、図14〜16を参照して説明されるような蒸気圧縮システム1400、1500もしくは1600のいずれかと同じものでも、同様のものでもよい。
いくつかの実施形態では、MISOシステム1702は、プロセスと1つまたは複数の機械制御出力との組合せである。例えば、MISOシステム1702は、1つまたは複数の機械制御アクチュエータおよび/またはダンパを介して建物空間内の温度を制御するように構成された空気処理ユニットであり得る。様々な実施形態では、MISOシステム1702は、冷凍機操作プロセス、ダンパ調整プロセス、機械式冷却プロセス、換気プロセス、冷凍プロセス、または、MISOシステム1702への複数の入力(例えば、操作変数u1…uN)がMISOシステム1702からの出力(すなわち、性能変数y)に影響を与えるように調整される他の任意のプロセスを含み得る。MISOシステム1702として使用することができる制御システムのいくつかの例は、図26〜28を参照して詳細に説明する。
多変数ESC 1704は、極値探索制御技法を使用して、操作変数u
1…u
Nの最適値を決定する。いくつかの実施形態では、多変数ESC 1704は、異なる励起信号(例えば、周期的ディザ信号または確率論的励起信号)を用いて各操作変数u
1…u
Nに摂動を与え、性能変数yに対する励起信号の効果を観察する。多変数ESC 1704は、各操作変数u
1…u
Nに対する性能変数yの勾配を決定するために、各操作変数u
1…u
Nに対してディザ復調プロセスを実行することができる(図4を参照して説明されるように)。いくつかの実施形態では、各勾配は、操作変数u
1…u
Nのうちの1つに対する性能変数yの偏導関数である。例えば、多変数ESC 1704は、操作変数u
1に対する性能変数yの偏導関数
を決定することができる。同様に、多変数ESC 1704は、残りの操作変数u
2…u
Nに対する性能変数yの偏導関数
を決定することができる。いくつかの実施形態では、多変数ESC 1704は、以下の方程式に示されるように、偏導関数のベクトルDを生成する。
式中、ベクトルDの各要素は、操作変数u
1…u
Nのうちの1つに対する性能変数yの勾配である。多変数ESC 1704は、ベクトルDをゼロに至らせるために、操作変数u
1…u
NのDC値を調整することができる。
いくつかの実施形態では、多変数ESC 1704は、偏導関数のヘッセ行列Hを使用して、操作変数u
1…u
Nを調整する。ヘッセ行列Hは、複数の操作変数u
1…u
Nの関数としての性能変数yの局所曲率を説明する(すなわち、y=f(u
1,u
2,…u
N))。いくつかの実施形態では、ヘッセ行列Hは、以下の方程式に示されるように、二階偏導関数の正方行列である。
多変数ESC 1704は、ヘッセ行列Hを使用して、ヘッセ行列Hが正定値(極大)であるかまたは負定値(極小)であるかを判断することによって、局所的極値を識別することができる。ベクトルDをゼロに至らせることおよび/またはヘッセ行列Hを評価することにより、多変数ESC 1704は、性能変数yの極値(すなわち、最大または最小)を達成することができる。
多変数ESC 1704は、多次元領域における極値探索制御を実装するために、上記で概説されるベクトルおよび行列ベースの計算を使用することができる。この手法は多変数問題の最も洗練された数学的解決法であるが、多次元領域で動作するコントローラの構成およびデバッギングが困難であるため、実践で取り入れる上で問題になり得る。例えば、各操作変数u1…uN(すなわち、各制御チャネル)に対するフィードバック利得Kを調整することは、変数相互作用が原因で複雑であり得る。いくつかの実施形態では、変数相互作用により、各制御チャネルに対するフィードバック利得Kは、他のすべての制御チャネルに対する他のすべてのフィードバック利得Kに依存するようになる。また、操作変数間の相互依存は、多変数ESC 1704のトラブルシューティングをも複雑にし得る。例えば、操作変数u1…uN間の相互作用は、性能変数yの観測された挙動の原因である制御チャネルの識別を試みる際に、曖昧性をもたらし得る。
ここで図18を参照すると、例示的な実施形態による別の極値探索制御システム1800が示されている。制御システム1800は、MISOシステム1702ならびに複数の単一変数極値探索コントローラ(ESC)1804、1806および1808を含むように示されている。3つの単一変数ESC 1804〜1808しか示されていないが、いかなる数の単一変数ESCも制御システム1800に含めることができることを理解すべきである。各単一変数ESC 1804〜1808は、異なる操作変数u1…uNに割り当てて、極値探索制御技法を使用して割り当てられた操作変数の最適値を決定するように構成することができる。例えば、単一変数ESC 1804は、操作変数u1に割り当てて、u1をその最適値に至らせるように構成することができ、単一変数ESC 1806は、操作変数u2に割り当てて、u2をその最適値に至らせるように構成することができ、単一変数ESC 1808は、操作変数uNに割り当てて、uNをその最適値に至らせるように構成することができる。
各単一変数ESC 1804〜1808は、MISOシステム1702から入力として同じ性能変数yを受信することができる。しかし、各単一変数ESC 1804〜1808は、異なる制御チャネル(すなわち、異なる操作変数)に対応することができ、MISOシステム1702に出力として対応する操作変数の値を提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、各単一変数ESC 1804〜1808は、対応する操作変数出力に別個の無相関の摂動を適用する。摂動は、以前に説明されるように、周期的ディザ信号または確率論的励起信号であり得る。周期的ディザ信号が使用される場合は、各単一変数ESC 1804〜1808は、異なるディザ周波数を使用して、各操作変数u
1…u
Nの効果を性能変数yにおいて一意的に識別できるように構成することができる。確率論的励起信号が使用される場合は、確率論的信号の互いの相関性は自然となくなる。これにより、摂動信号を生成する際の単一変数ESC 1804〜1808間の通信または調整に対する要件が排除される。各単一変数ESC 1804〜1808は、対応する操作変数に対する性能変数yの勾配(例えば、
)を抽出することができ、極値探索制御技法を使用して、抽出した勾配をゼロに至らせることができる。
システム1800はMISOシステム1702を含むように示されているが、いくつかの実施形態では、MISOシステム1702の代わりに多重入力多重出力(MIMO)システムを使用できることを理解すべきである。MISOシステム1702の代わりにMIMOシステムが使用される際は、各単一変数ESC 1804〜1808は、MIMOシステムからフィードバック出力として同じ性能変数yまたは異なる性能変数y1…yMを受信することができる。各単一変数ESC 1804〜1808は、操作変数のうちの1つに対する性能変数のうちの1つの勾配を抽出することができ、極値探索制御技法を使用して、抽出した勾配をゼロに至らせることができる。
いくつかの実施形態では、各単一変数ESC 1804〜1808は、ESC 502の実例であり、図5を参照して説明されるようなESC 502のすべてのコンポーネントおよび機能を含み得る。各単一変数ESC 1804〜1808は、再帰的勾配推定器506およびフィードバックコントローラ508の実例を含み得る。再帰的勾配推定器506の各実例は、対応する操作変数u
1…u
Nに対する性能変数yの傾きを推定するために再帰的勾配推定プロセスを実行するように構成することができる。例えば、単一変数ESC 1804内の再帰的勾配推定器506の実例は、第1の操作変数u
1に対する性能変数yの勾配または傾き
を推定するように構成することができる。同様に、単一変数ESC 1806内の再帰的勾配推定器506の実例は、第2の操作変数u
2に対する性能変数yの勾配または傾き
を推定するように構成することができ、単一変数ESC 1808内の再帰的勾配推定器506の実例は、第Nの操作変数u
Nに対する性能変数yの勾配または傾き
を推定するように構成することができる。再帰的勾配推定器506の複数の実例は、互いに独立して動作することができ、そのそれぞれの再帰的勾配推定プロセスを実行するための通信または調整を必要としない。
フィードバックコントローラ508の各実例は、再帰的勾配推定器506の対応する実例から推定勾配(すなわち、
のうちの1つ)を受信することができる。フィードバックコントローラ508の各実例は、操作変数の最適値(すなわち、ゼロの勾配をもたらす操作変数の値)に達するまで、対応する勾配をゼロに至らせる方向に対応する操作変数(すなわち、u
1…u
Nのうちの1つ)の値を調整することができる。例えば、単一変数ESC 1804内のフィードバックコントローラ508の実例は、操作変数u
1のDC値w
1を調整することによって勾配
をゼロに至らせるように構成することができる。同様に、単一変数ESC 1806内のフィードバックコントローラ508の実例は、操作変数u
2のDC値w
2を調整することによって勾配
をゼロに至らせるように構成することができ、単一変数ESC 1808内のフィードバックコントローラ508の実例は、操作変数u
NのDC値w
Nを調整することによって勾配
をゼロに至らせるように構成することができる。フィードバックコントローラ508の複数の実例は、互いに独立して動作することができ、そのそれぞれの勾配をゼロに至らせるための操作変数u
1…u
N間の相互作用についてのいかなる情報も必要としない。
いくつかの実施形態では、各単一変数ESC 1804〜1808は、確率論的信号ジェネレータ512、積分器514および励起信号要素510の実例を含む。確率論的信号ジェネレータ512の各実例は、操作変数u1…uNのうちの1つに対する持続的な励起信号qを生成するように構成することができる。例えば、単一変数ESC 1804内の確率論的信号ジェネレータ512の実例は、第1の確率論的励起信号q1を生成することができ、単一変数ESC 1806内の確率論的信号ジェネレータ512の実例は、第2の確率論的励起信号q2を生成することができ、単一変数ESC 1808内の確率論的信号ジェネレータ512の実例は、第Nの確率論的励起信号qNを生成することができる。各確率論的励起信号q1…qNは、以下の方程式に示されるように、操作変数u1…uNを形成するために、励起信号要素510において対応する操作変数のDC値w1…wNに加えることができる。
u1=w1+q1
u2=w2+q2
…
uN=wN+qN
確率論的励起信号q1…qNの利点の1つは、ディザ周波数ωvがもはや必須パラメータではないため、単一変数ESC 1804〜1808の調整がより簡単であることである。ESC 1804〜1808は、確率論的励起信号q1…qNを生成する際にMISOシステム1702の固有周波数を知る必要も、推定する必要もない。それに加えて、確率論的励起信号q1…qNの各々はランダムであり得るため、確率論的励起信号q1…qNが互いに相関しないことを保証する必要はない。確率論的信号ジェネレータ512の複数の実例は、互いに独立して動作することができ、確率論的励起信号q1…qNが別個の無相関のものであることを保証するための通信または調整を必要としない。
いくつかの実施形態では、各単一変数ESC 1804〜1808は、相関係数推定器528の実例を含む。相関係数推定器528の各実例は、操作変数u
1…u
Nのうちの1つに対する相関係数ρを推定するように構成することができる。例えば、単一変数ESC 1804内の相関係数推定器528の実例は、第1の相関係数ρ
1を生成することができ、単一変数ESC 1806内の相関係数推定器528の実例は、第2の相関係数ρ
2を生成することができ、単一変数ESC 1808内の相関係数推定器528の実例は、第Nの相関係数ρ
Nを生成することができる。各相関係数ρ
1…ρ
Nは、対応する操作変数の性能勾配
と関連付ける(例えば、
に比例する)ことができるが、性能変数yの範囲に基づいてスケーリングされる。例えば、各相関係数ρ
1…ρ
Nは、対応する性能勾配
の正規化尺度であり得る(例えば、範囲0≦ρ≦1にスケーリングされる)。
いくつかの実施形態では、単一変数ESC 1804〜1808は、その極値探索制御プロセスを実行する際、性能勾配
の代わりに相関係数ρ
1…ρ
Nを使用する。例えば、単一変数ESC 1804は、操作変数u
1のDC値w
1を調整して相関係数ρ
1をゼロに至らせることができる。同様に、単一変数ESC 1806は、操作変数u
2のDC値w
2を調整して相関係数ρ
2をゼロに至らせることができ、単一変数ESC 1808は、操作変数u
NのDC値w
Nを調整して相関係数ρ
Nをゼロに至らせることができる。性能勾配
の代わりに相関係数ρ
1…ρ
Nを使用する利点の1つは、単一変数ESC 1804〜1808によって使用される調整パラメータが、性能変数yのスケールに基づいてカスタマイズまたは調整する必要のない調整パラメータの一般集合であり得ることである。この利点により、各単一変数ESC 1804〜1808に対する制御ループ特有の調整を実行する必要性が排除され、各ESC 1804〜1808は、多くの異なる制御ループおよび/またはプラントにわたって適用可能な調整パラメータの一般集合を使用できるようになる。
ここで図19を参照すると、例示的な実施形態による別の極値探索制御システム1900が示されている。制御システム1900は、MISOシステム1702および多変数コントローラ1902を含むように示されている。多変数コントローラ1902は、複数の単一変数極値探索コントローラ(ESC)1904、1906および1908を含むように示されている。いくつかの実施形態では、単一変数ESC 1904〜1908は、多変数コントローラ1902の別個の制御モジュールまたはコンポーネントとして実装される。3つの単一変数ESC 1904〜1908しか示されていないが、いかなる数の単一変数ESCも多変数コントローラ1902に含めることができることを理解すべきである。
単一変数ESC 1904〜1908は、図18を参照して説明されるような単一変数ESC 1804〜1808と同じ機能のいくつかまたはすべてを実行するように構成することができる。各単一変数ESC 1904〜1908は、異なる操作変数u1…uNに割り当てて、極値探索制御技法を使用して割り当てられた操作変数の最適値を決定するように構成することができる。例えば、単一変数ESC 1904は、操作変数u1に割り当てて、u1をその最適値に至らせるように構成することができ、単一変数ESC 1906は、操作変数u2に割り当てて、u2をその最適値に至らせるように構成することができ、単一変数ESC 1908は、操作変数uNに割り当てて、uNをその最適値に至らせるように構成することができる。いくつかの実施形態では、単一変数ESC 1904〜1908の各々は、再帰的勾配推定器506、フィードバックコントローラ508、相関係数推定器528、確率論的信号ジェネレータ512、積分器514および/または励起信号要素510の実例を含む。これらのコンポーネントは、図5を参照して説明されるように動作するよう構成することができる。
システム1900はMISOシステム1702を含むように示されているが、いくつかの実施形態では、MISOシステム1702の代わりに多重入力多重出力(MIMO)システムを使用できることを理解すべきである。MISOシステム1702の代わりにMIMOシステムが使用される際は、各単一変数ESC 1904〜1908は、MIMOシステムからフィードバック出力として同じ性能変数yまたは異なる性能変数y1…yMを受信することができる。各単一変数ESC 1904〜1908は、操作変数のうちの1つに対する性能変数のうちの1つの勾配を抽出することができ、極値探索制御技法を使用して、抽出した勾配をゼロに至らせることができる。
いくつかの実施形態では、多変数コントローラ1902は、複数の異なる動作モードで動作するように構成される。例えば、多変数コントローラ1902は、状態遷移条件を評価し、状態遷移条件が満たされた際に複数の異なる動作状態間で切り替えるように構成された有限状態機械またはハイブリッドコントローラとして動作することができる。そのようなハイブリッドコントローラの例は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる2016年8月9日に出願された(特許文献10)で詳細に説明されている。いくつかの実施形態では、多変数コントローラ1902の各動作モードは、操作変数u1…uNの異なる部分集合と関連付けられる。例えば、多変数コントローラ1902は、第1の動作モードで動作する際は、操作変数u1…uNの第1の部分集合S1={u1,u4,u5,u7}をMISOシステム1702に提供し、第2の動作モードで動作する際は、操作変数u1…uNの第2の部分集合S2={u1,u2,u3,u6}をMISOシステム1702に提供することができる。各操作変数u1…uNは、異なる単一変数ESC 1904〜1908によって制御することができる。
いくつかの実施形態では、多変数コントローラ1902は、多変数コントローラ1902の動作モードに基づいて、単一変数ESC 1904〜1908の複数の異なるセット間で切り替えるように構成される。多変数コントローラ1902は、各動作モードにおいてどの操作変数u1…uNがMISOシステム1702に提供されるかに基づいて、個々の単一変数ESC 1904〜1908を選択的に起動および解除することができる。例えば、多変数コントローラ1902は、第1の動作モードに遷移次第、部分集合S1の操作変数を制御するように構成された単一変数ESCを選択的に起動することができる。同様に、多変数コントローラ1902は、第2の動作モードに遷移次第、部分集合S2の操作変数を制御するように構成された単一変数ESCを選択的に起動することができる。多変数コントローラ1902は、現行動作モードにおいてMISOシステム1702に提供される操作変数を制御する必要のない単一変数ESC 1904〜1908のいずれも解除することができる。
テスト結果の例
ここで図20を参照すると、例示的な実施形態による、本明細書で説明される多変数最適化技法をテストするために使用された極値探索制御システム2000の例が示されている。システム2000は、2つの単一変数ESC 2002および2004ならびにMISOシステム2012を含むように示されている。単一変数ESC 2002、2004の各々は、図18、19を参照して説明されるような単一変数ESC 1804〜1808または1904〜1908のいずれかと同じものでも、同様のものでもよい。単一変数ESC 2002は、第1の操作変数u1をMISOシステム2012に提供し、単一変数ESC 2004は、第2の操作変数u2をMISOシステム2012に提供する。
MISOシステム2012は、図17を参照して説明されるようなMISOシステム1702と同じものでも、同様のものでもよい。MISOシステム2012は、入力ダイナミクス2006、2008および性能マップ2010を含むように示されている。入力ダイナミクス2006、2008は、以下の臨界的に減衰する二次形式を有するように選択された。
式中、ωは、
に設定された。入力ダイナミクス2006は、操作変数u
1を変数x
1に変換し、入力ダイナミクス2008は、操作変数u
2を変数x
2に変換する。
性能マップ2010は、以下の方程式に示されるように、連続の、微分可能な、分離不可能な、スケーリング不可能な、単一モードのAckley(2)関数タイプの2D非線形静的マップとして選択された。
性能マップ2010の出力は、性能変数y(すなわち、y=f(x))として単一変数ESC 2002、2004の両方に提供される。
ここで図21〜23を参照すると、システム2000上で実行されたテストからの結果が提示されている。単一変数ESC 2002、2004に対して、図5を参照して説明される極値探索制御技法が実行された。各操作変数u1およびu2の最適値は、u1=0およびu2=0であり、性能変数yの最適値は、y=−200である。各操作変数u1およびu2は、u1=5およびu2=5において初期値に設定された。いずれの制御ループに対しても調整は実行されなかった。図21は、性能変数yがy=−200の最適値に素早く収束することを示すグラフ2100である。図22、23は、操作変数u1およびu2がその最適値u1=0およびu2=0に素早く収束することを示すグラフ2200および2300である。
テストの結果は、難しい分離不可能な2D性能マップ2010にもかかわらず、複数の単一変数極値探索コントローラを使用したマルチループ極値探索制御技法は素早く収束することを示している。分離不可能な問題に個々のフィードバック制御ループを調整する必要なくこの技法を適用できることで、この手法は、実用的な実装形態にとってとりわけ魅力的なものになる。
多変数最適化プロセス
ここで図24を参照すると、例示的な実施形態による、複数の単一変数極値探索コントローラを使用した多変数最適化プロセス2400のフローチャートが示されている。プロセス2400は、図18、19を参照して説明されるような極値探索制御システム1800または1900の1つまたは複数のコンポーネントによって実行することができる。例えば、プロセス2400は、単一変数極値探索コントローラのセット(例えば、ESC 1804〜1808または1904〜1908)によって実行することができる。単一変数ESCは、別個のコントローラとして(図18に示されるように)または多変数コントローラのモジュールとして(図19に示されるように)実装することができる。
プロセス2400は、プラントに入力として複数の操作変数u1…uNを提供すること(ステップ2402)と、プラントからフィードバックとして性能変数yを受信すること(ステップ2404)とを含むように示されている。いくつかの実施形態では、プラントは、MISOシステム1702と同じものでも、同様のものでもよい。例えば、プラントは、入力として複数の操作変数u1…uNを受信し、出力として単一の性能変数yを提供することができる。他の実施形態では、プラントは、出力として複数の性能変数を提供する。例えば、プラントは、多重入力多重出力(MIMO)システムであり得る。操作変数u1…uNの各々は、別個の単一変数極値探索コントローラ(例えば、単一変数ESC 1804〜1808または1904〜1908のうちの1つ)によって独立して生成し、提供することができる。性能変数yは、プラントから受信し、入力として単一変数ESCの各々に提供することができる。言い換えれば、単一変数ESCの各々は、入力として同じ性能変数yを受信することができる。
プロセス2400は、操作変数u
1…u
Nの各々に対する性能変数yの勾配を独立して決定するために複数の異なる単一変数ESCを使用すること(ステップ2406)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、単一変数ESCの各々は、操作変数u
1…u
Nのうちの1つに対応する。各単一変数ESCは、対応する操作変数u
1…u
Nに対する性能変数yの傾きを推定することができる。例えば、第1の単一変数ESCは、第1の操作変数u
1に対する性能変数yの勾配または傾き
を推定するように構成することができ、第2の単一変数ESCは、第2の操作変数u
2に対する性能変数yの勾配または傾き
を推定するように構成することができ、第Nの単一変数ESCは、第Nの操作変数u
Nに対する性能変数yの勾配または傾き
を推定するように構成することができる。単一変数ESCは、互いに独立して動作することができ、そのそれぞれの勾配推定プロセスを実行するための通信または調整を必要としない。
プロセス2400は、各操作変数に対するフィードバックコントローラの出力を調節することによって推定勾配をゼロに至らせること(ブロック2408)を含むように示されている。各フィードバックコントローラは、単一変数ESCのうちの1つのコンポーネント(図5に示されるような)であり得る。各フィードバックコントローラは、操作変数の最適値(すなわち、ゼロの勾配をもたらす操作変数の値)に達するまで、対応する勾配をゼロに至らせる方向に対応する操作変数(すなわち、u
1…u
Nのうちの1つ)の値を調整することができる。例えば、第1の単一変数ESC内の第1のフィードバックコントローラは、操作変数u
1のDC値w
1を調整することによって勾配
をゼロに至らせるように構成することができる。同様に、第2の単一変数ESC内の第2のフィードバックコントローラは、操作変数u
2のDC値w
2を調整することによって勾配
をゼロに至らせるように構成することができ、第Nの単一変数ESC内の第Nのフィードバックコントローラは、操作変数u
NのDC値w
Nを調整することによって勾配
をゼロに至らせるように構成することができる。複数のフィードバックコントローラは、互いに独立して動作することができ、そのそれぞれの勾配をゼロに至らせるための操作変数u
1…u
N間の相互作用についてのいかなる情報も必要としない。
プロセス2400は、各操作変数に対する励起信号を生成すること(ステップ2410)を含むように示されている。各励起信号は、別個の励起信号ジェネレータによって生成することができ、励起信号ジェネレータは、単一変数ESCのうちの1つのコンポーネント(図5に示されるような)であり得る。いくつかの実施形態では、第1の単一変数ESC内の第1の励起信号ジェネレータは、第1の励起信号q1を生成し、第2の単一変数ESC内の第2の励起信号ジェネレータは、第2の励起信号q2を生成し、第Nの単一変数ESC内の第Nの励起信号ジェネレータは、第Nの励起信号qNを生成する。励起信号は、以前に説明されるように、周期的ディザ信号または確率論的励起信号であり得る。周期的ディザ信号が使用される場合は、各単一変数ESCは、異なるディザ周波数を使用して、各操作変数u1…uNの効果を性能変数yにおいて一意的に識別できるように構成することができる。確率論的励起信号が使用される場合は、確率論的信号の互いの相関性は自然となくなる。これにより、励起信号を生成する際の単一変数ESC間の通信または調整に対する要件が排除される。
プロセス2400は、対応する励起信号を用いて各フィードバックコントローラの出力に摂動を与えることによって各操作変数の新しい値を生成すること(ステップ2412)を含むように示されている。各励起信号q1…qNは、以下の方程式に示されるように、操作変数u1…uNを形成するために、対応する操作変数のDC値w1…wNに加えることができる。
u1=w1+q1
u2=w2+q2
…
uN=wN+qN
次いで、操作変数u1…uNの新しい値は、プラントに入力として提供することができ(ステップ2402)、プロセス2400を繰り返すことができる。
ここで図25を参照すると、例示的な実施形態による、複数の単一変数極値探索コントローラを使用した多変数最適化プロセス2500のフローチャートが示されている。プロセス2500は、図18、19を参照して説明されるように極値探索制御システム1800または1900の1つまたは複数のコンポーネントによって実行することができる。例えば、プロセス2500は、単一変数極値探索コントローラのセット(例えば、ESC 1804〜1808または1904〜1908)によって実行することができる。単一変数ESCは、別個のコントローラとして(図18に示されるように)または多変数コントローラのモジュールとして(図19に示されるように)実装することができる。
プロセス2500は、第1の動作モードで動作しながら、単一変数ESCの第1のセットを使用して操作変数の第1の集合をプラントに提供すること(ステップ2502)を含むように示されている。いくつかの実施形態では、各動作モードは、操作変数u1…uNの異なる部分集合と関連付けられる。例えば、操作変数u1…uNの第1の部分集合S1={u1,u4,u5,u7}は第1の動作モードであり得、操作変数u1…uNの第2の部分集合S2={u1,u2,u3,u6}は、第2の動作モードと関連付けることができる。各操作変数u1…uNは、異なる単一変数ESCによって制御することができる。
プロセス2500は、第1の動作モードから第2の動作モードに遷移すること(ステップ2504)と、第2の動作モードと関連付けられた操作変数の第2の集合を識別すること(ステップ2506)とを含むように示されている。いくつかの実施形態では、第1の動作モードからの遷移は、1つまたは複数の状態遷移条件を満たした結果として起こる。例えば、多変数コントローラは、状態遷移条件を評価し、状態遷移条件が満たされた際に複数の異なる動作状態間で切り替えるように構成された有限状態機械またはハイブリッドコントローラとして動作することができる。第2の動作モードと関連付けられた操作変数の集合を識別することは、データベースからそのような情報を回収すること、または、第2の動作モードにおいてプラントに必要な入力を自動的に識別することを含み得る。
プロセス2500は、操作変数の第2の集合を最適化するように構成された単一変数ESCの第2のセットを起動すること(ステップ2508)と、第2の動作モードで動作しながら、単一変数ESCの第2のセットを使用して操作変数の第2の集合をプラントに提供すること(ステップ2510)とを含むように示されている。操作変数の第2の集合の各々は、別個の単一変数ESCによって制御することができる。ステップ2508は、各動作モードにおいてどの操作変数u1…uNがプラントに提供されるかに基づいて、1つまたは複数の単一変数ESCを選択的に起動および/または解除することを含み得る。部分集合S1の操作変数を制御するように構成された単一変数ESCは、第1の動作モードに遷移次第、選択的に起動することができる。同様に、部分集合S2の操作変数を制御するように構成された単一変数ESCは、第2の動作モードに遷移次第、起動することができる。ステップ2508は、現行動作モードにおいてプラントに提供される操作変数を制御する必要のない単一変数ESCを解除することを含み得る。
実装形態の例
ここで図26〜28を参照すると、例示的な実施形態による、複数の単一変数ESCを使用した多変数最適化のいくつかの実装形態の例が示されている。図26〜28に示される実装形態は、複数の単一変数ESC、単一変数ESCによってMISOシステム1702に提供することができる操作変数u、および、MISOシステム1702からフィードバックとして受信することができる性能変数yを使用して制御することができるMISOシステム(例えば、MISOシステム1702)の様々な実施形態を示す。
冷却水プラント2600
特に図26を参照すると、いくつかの実施形態による冷却水プラント2600が示されている。冷却水プラント2600は、図10Aおよび11Aを参照して説明されるような冷却水プラント1000および/または冷却水プラント1100のコンポーネントのいくつかまたはすべてを含み得る。例えば、冷却水プラント2600は、冷凍機2602、冷却塔2604および空気処理ユニット(AHU)2606を含むように示されている。冷凍機2602は、凝縮器送水ループ2622によって冷却塔2604と接続される。凝縮器送水ループ2622に沿って位置する凝縮器送水ポンプ2614は、冷却塔2604と冷凍機2602との間で凝縮器水を循環させる。冷却塔ファンシステム2636は、冷却塔2604内の凝縮器水の冷却を容易にするために、冷却塔2604中を流れる気流を提供する。また、冷凍機2602は、冷却流体ループ2624を介してAHU 2606とも接続される。冷却流体ループ2624に沿って位置する冷却流体ポンプ2616は、冷凍機2602とAHU 2606との間で冷却流体を循環させる。
冷却水プラント2600は、第1の単一変数ESC 2642および第2の単一変数ESC 2644を含むように示されている。両方の単一変数ESC 2642、2644は、冷却塔ファンシステム2636 Ptower、凝縮器送水ポンプ2614 Ppumpおよび冷凍機2602の圧縮機2634 Pchillerによって消費された総電力を表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Ptower+Ppump+Pchiller)を受信するように示されている。図26に示されるように、電力入力Ptower、PpumpおよびPchillerは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、単一変数ESC 2642、2644の外部の総和ブロック2640で総和することができる。他の実施形態では、単一変数ESC 2642、2644は、個々の電力入力Ptower、PpumpおよびPchillerを受信し、総和ブロック2640の総和を実施する。いずれの事例でも、単一変数ESC 2642、2644は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力Ptower、PpumpおよびPchillerを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、単一変数ESC 2642、2644が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、冷却水プラント2600の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図26に示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、Ptower、PpumpおよびPchillerを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、AHU 2606内のファンの電力消費量、冷却流体ポンプ2616の電力消費量および/または冷却水プラント2600内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
単一変数ESC 2642は、冷却塔ファンシステム2636にファン速度制御信号を提供するように示されている。いくつかの実施形態では、冷却塔ファン速度Fanspは、単一変数ESC 2642が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。例えば、単一変数ESC 2642は、冷却塔2604によって凝縮器水から除去される熱の量を増加させるために冷却塔ファンシステム2636の速度を上げることも、冷却塔2604によって凝縮器水から除去される熱の量を減少させるために冷却塔ファンシステム2636の速度を下げることもできる。冷却塔ファン速度Fanspを下げることにより、冷却塔電力消費量Ptowerを低減することができるが、高温凝縮器水に熱を伝達するための追加の冷凍機電力が必要になるため、冷凍機電力消費量Pchillerを増加させる可能性がある。単一変数ESC 2642は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な冷却塔ファン速度Fansp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。
同様に、単一変数ESC 2644は、凝縮器送水ポンプ2614にポンプ電力制御信号を提供するように示されている。いくつかの実施形態では、ポンプ速度Pumpspは、単一変数ESC 2644が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。例えば、単一変数ESC 2644は、凝縮器2618内の冷媒から除去される熱の量を増加させるために凝縮器送水ポンプ2614の速度を上げることも、凝縮器2618内の冷媒から除去される熱の量を減少させるために凝縮器送水ポンプ2614の速度を下げることもできる。ポンプ速度Pumpspを下げることにより、ポンプ電力消費量Ppumpを低減することができるが、高温凝縮器水に熱を伝達するための追加の冷凍機電力が必要になるため、冷凍機電力消費量Pchillerを増加させる可能性がある。単一変数ESC 2644は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適なポンプ速度Pumpsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。
可変冷媒流量システム2700
ここで図27を参照すると、いくつかの実施形態による別の可変冷媒流量(VRF)システム2700が示されている。VRFシステム2700は、図12Aおよび13Aを参照して説明されるようなVRFシステム1200および/またはVRFシステム1300のコンポーネントのいくつかまたはすべてを含み得る。例えば、VRFシステム2700は、屋外ユニット2702、いくつかの熱回収ユニット2704およびいくつかの屋内ユニット2706を含むように示されている。
屋外ユニット2702は、圧縮機2714および熱交換器2720を含むように示されている。圧縮機2714は、熱交換器2720と屋内ユニット2706との間で冷媒を循環させる。熱交換器2720は、VRFシステム2700が冷却モードで動作する際には凝縮器(冷媒が外気に排熱することを可能にする)として機能することも、VRFシステム2700が加熱モードで動作する際には蒸発器(冷媒が外気から吸熱することを可能にする)として機能することもできる。ファン2718は、熱交換器2720中を流れる気流を提供する。ファン2718の速度は、熱交換器2720内の冷媒内または冷媒外への熱伝達率を調節するために調整することができる。
各屋内ユニット2706は、熱交換器2726および膨脹弁2724を含むように示されている。熱交換器2726の各々は、屋内ユニット2706が加熱モードで動作する際には凝縮器(冷媒が部屋またはゾーン内の空気に排熱することを可能にする)として機能することも、屋内ユニット2706が冷却モードで動作する際には蒸発器(冷媒が部屋またはゾーン内の空気から吸熱することを可能にする)として機能することもできる。ファン2722は、熱交換器2726中を流れる気流を提供する。ファン2722の速度は、熱交換器2726内の冷媒内または冷媒外への熱伝達率を調節するために調整することができる。温度センサは、屋内ユニット2706内の冷媒の温度Trを測定するために使用することができる。
VRFシステム2700は、第1の単一変数ESC 2732および第2の単一変数ESC 2738を含むように示されている。両方の単一変数ESC 2732および2738は、屋外ユニット2702によって消費された総電力Poutdoorおよび各屋内ユニット2703によって消費された総電力Pindoorを表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Poutdoor+Pindoor)を受信するように示されている。図27に示されるように、電力入力PoutdoorおよびPindoorは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、単一変数ESC 2732および2738の外部の総和ブロック2730で総和することができる。他の実施形態では、単一変数ESC 2732および2738は、個々の電力入力PoutdoorおよびPindoorを受信し、総和ブロック2730の総和を実施する。いずれの事例でも、単一変数ESC 2732および2738は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力PoutdoorおよびPindoorを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、単一変数ESC 2732および2738が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、VRFシステム2700の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図27に示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、PoutdoorおよびPindoorを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、屋外ユニット2702内のファン2718、屋内ユニット2706内のファン2722、熱回収ユニット2704の電力消費量および/またはVRFシステム2700内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
単一変数ESC 2732は、屋外ユニット2702に過熱セットポイントSHspを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、過熱セットポイントSHspは、単一変数ESC 2732が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。例えば、単一変数ESC 2732は、飽和温度に対して冷媒の温度を上昇させるために過熱セットポイントSHspを増やすことも、屋外ユニット2702内の冷媒の温度が飽和温度に近くなるようにするために過熱セットポイントSHspを減らすこともできる。過熱セットポイントSHspを減らすことにより、屋外ユニット電力消費量Poutdoorを低減することができるが、低温冷媒から熱を伝達するための追加のファン電力が必要になるため、屋内ユニット電力消費量Pindoorを増加させる可能性がある。単一変数ESC 2732は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な過熱セットポイントSHsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。
同様に、単一変数ESC 2738は、熱回収ユニット2704に弁セットポイントValvespを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、弁セットポイントValvespは、単一変数ESC 2738が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。例えば、弁セットポイントValvespは、熱回収ユニット2704内のバイパス弁の位置を制御するように調整することができる。単一変数ESC 2738は、バイパス弁を漸進的に開くために弁セットポイントValvespを増やすことも、バイパス弁を漸進的に閉じるために弁セットポイントValvespを減らすこともできる。単一変数ESC 2738は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な弁セットポイントValvesp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。
蒸気圧縮システム2800
ここで図28を参照すると、いくつかの実施形態による別の蒸気圧縮空調システム2800が示されている。システム2800は、図14A、15Aおよび16Aを参照して説明されるような蒸気圧縮システム1400、1500および/または1600のコンポーネントのいくつかまたはすべてを含み得る。例えば、システム2800は、冷媒回路2810を含むように示されている。冷媒回路2810は、凝縮器2812、蒸発器2814、膨脹弁2824および圧縮機2806を含む。圧縮機2806は、蒸発器2814と凝縮器2812の間で冷媒を循環させるように構成される。冷媒回路2810は、蒸気圧縮サイクルを使用して動作する。例えば、圧縮機2806は、冷媒を高温高圧状態に圧縮する。圧縮された冷媒は、凝縮器2812中を流れ、凝縮器2812では、冷媒は排熱する。凝縮器ファン2832は、凝縮器2812内の熱伝達率を調節するために使用することができる。冷却された冷媒は、膨脹弁2824によって低圧低温状態に膨張される。膨張された冷媒は、蒸発器2814中を流れ、蒸発器2814では、冷媒は吸熱する。蒸発器ファン2816は、蒸発器2814内の熱伝達率を調節するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、冷媒回路2810は、図28に示されるように、屋上ユニット2802(例えば、屋上空気処理ユニット)内に位置する。屋上ユニット2802は、エアダクト2822中を流れる給気2820に対する冷却を提供するように構成することができる。例えば、蒸発器2814は、エアダクト2822内に位置し、その結果、給気2820は、蒸発器2814中を流れ、蒸発器2814内の膨張された冷媒に熱を伝達することによって冷却することができる。次いで、冷却された気流は、建物の部屋またはゾーンに冷房を提供するために、建物に送ることができる。給気2820の温度は、蒸発器2814の下流(例えば、ダクト2822内)に位置する温度センサ2818によって測定することができる。他の実施形態では、冷媒回路2810は、蒸気圧縮サイクルを使用して熱を伝達する様々な他のシステムまたはデバイス(例えば、冷凍機、ヒートポンプ、熱回収冷凍機、冷凍デバイスなど)のいずれかで使用することができる。
蒸気圧縮システム2800は、第1の単一変数ESC 2826、第2の単一変数ESC 2828および第3の単一変数ESC 2830を含むように示されている。単一変数ESC 2826〜2830の各々は、圧縮機2806 Pcomp、蒸発器ファン2816 Pfan,evapおよび凝縮器ファン2832 Pfan,condによって消費された総電力を表す電力入力Ptotal(すなわち、Ptotal=Pcomp+Pfan,evap+Pfan,cond)を受信するように示されている。図28に示されるように、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condは、総電力Ptotalを表す組合せ信号を提供するために、単一変数ESC 2826〜2830の外部の総和ブロック2808で総和することができる。他の実施形態では、単一変数ESC 2826〜2830は、個々の電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信し、総和ブロック2808の総和を実施する。いずれの事例でも、単一変数ESC 2826〜2830は、総システム電力を表す単一の総和または組合せ信号Ptotalとして電力入力が提供される場合であっても、電力入力Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを受信することが言える。
いくつかの実施形態では、総システム電力Ptotalは、ESC 2826〜2830が最適化(例えば、最小化)しようと努める性能変数である。総システム電力Ptotalは、蒸気圧縮システム2800の1つまたは複数のコンポーネントの電力消費量を含み得る。図28に示される実施形態では、総システム電力Ptotalは、Pcomp、Pfan,evapおよびPfan,condを含む。しかし、様々な他の実施形態では、総システム電力Ptotalは、電力入力のいかなる組合せも含み得る。例えば、総システム電力Ptotalは、屋上ユニット2802内の様々な他のファンの電力消費量、流体ポンプの電力消費量および/または蒸気圧縮システム2800内で生じる他の任意の電力消費量を含み得る。
単一変数ESC 2830は、フィードバックコントローラ2804に温度セットポイントTspを提供するように示されている。いくつかの実施形態では、温度セットポイントTspは、単一変数ESC 2830が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。温度セットポイントTspは、蒸発器2814を出る給気2820の温度に対するセットポイントである。給気温度Tsaは、蒸発器2814の下流に位置する温度センサ2818によって測定することができる。フィードバックコントローラ2804は、フィードバック信号として給気温度Tsaを受信するように示されている。
フィードバックコントローラ2804は、単一変数ESC 2830によって提供される温度セットポイントTspを達成するように蒸発器ファン2816を操作することができる。例えば、フィードバックコントローラ2804は、蒸発器2814内の給気2820から除去される熱の量を増加させるために蒸発器ファン2816の速度を上げることも、蒸発器2814内の給気2820から除去される熱の量を減少させるために蒸発器ファン2816の速度を下げることもできる。
単一変数ESC 2830は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な給気温度セットポイントTsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。フィードバックコントローラ2804および単一変数ESC 2830は別個のデバイスとして示されているが、いくつかの実施形態では、フィードバックコントローラ2804および単一変数ESC 2830を組み合わせて単一のデバイス(例えば、単一変数ESC 2830およびフィードバックコントローラ2804の両方の機能を実行する単一のコントローラ)にできることが企図される。例えば、単一変数ESC 2830は、中間フィードバックコントローラ2804を必要とすることなく、蒸発器ファン2816を直接制御するように構成することができる。
依然として図28を参照すると、単一変数ESC 2826は、圧縮機2806に凝縮器圧力セットポイントPrspを提供するように示されている。凝縮器圧力セットポイントPrspは、圧縮機2806の排出口における冷媒圧力と同じであり得る凝縮器2812内の冷媒の圧力に対するセットポイントを定義する。いくつかの実施形態では、凝縮器圧力セットポイントPrspは、単一変数ESC 2826が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。単一変数ESC 2826は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適な凝縮器圧力セットポイントPrsp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。
同様に、単一変数ESC 2828は、凝縮器ファン2832にファン速度セットポイントFanspを提供するように示されている。ファン速度セットポイントFanspは、ファン2832の速度の目標値および/または凝縮器2812中を流れる気流の流量の目標値を示すことができる。いくつかの実施形態では、ファン速度セットポイントFanspは、単一変数ESC 2828が総システム電力Ptotalに影響を与えるように調整する操作変数である。単一変数ESC 2828は、最適値に近づく傾向を示すシステム性能(例えば、総電力消費量Ptotal)を得るために未知の入力(例えば、最適なファン速度セットポイントFansp)を動的に探索する極値探索制御戦略を実装する。
例示的な実施形態の構成
様々な例示的な実施形態で示されるようなシステムおよび方法の建築および構成は、単なる例示である。この開示ではほんの少数の実施形態について詳細に説明してきたが、多くの変更(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および比率、パラメータの値、取り付け方法、材料の使用、色、向きなどの変化)が可能である。例えば、要素の位置を逆にしたり、別の方法で変化させることや、個別の要素または位置の性質または数を変更したり、変化させたりすることができる。それに従って、そのような変更はすべて、本開示の範囲内に含まれることが意図される。いかなるプロセスまたは方法ステップの順番または順序も、代替の実施形態に従って変化させたり、並べ直すことができる。本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態の設計、動作条件および構成における他の置換、変更、変化および省略を行うこともできる。
本開示は、様々な動作を遂行するためのあらゆる機械可読媒体上の方法、システムおよびプログラム製品を企図する。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、または、この目的もしくは別の目的のために組み込まれた適切なシステム用の特殊用途コンピュータプロセッサによって、あるいは、配線システムによって、実装することができる。本開示の範囲内の実施形態は、機械実行可能命令またはデータ構造を保持するためまたはその上に格納するための機械可読媒体を含むプログラム製品を含む。そのような機械可読媒体は、プロセッサを備える一般用途または特殊用途コンピュータまたは他の機械によるアクセスが可能な、利用可能ないかなる媒体でもあり得る。例示として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROMもしくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、または、機械実行可能命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを保持するためもしくは格納するために使用することができ、プロセッサを備える一般用途もしくは特殊用途コンピュータもしくは他の機械によるアクセスが可能な他の任意の媒体を含み得る。また、上記の組合せも、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は、例えば、一般用途コンピュータ、特殊用途コンピュータまたは特殊用途処理機械にある特定の機能または機能グループを実行させる命令およびデータを含む。
図は方法ステップの特定の順番を示しているが、ステップの順番は、描写されているものとは異なり得る。また、2つ以上のステップを同時に実行することも、部分的に同時に実行することもできる。そのような変形形態は、選択されたソフトウェアおよびハードウェアシステムならびに設計者の選択に依存する。そのような変形形態はすべて、本開示の範囲内である。同様に、ソフトウェア実装は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップおよび決定ステップを遂行するために、規則に基づく論理および他の論理を有する標準プログラミング技法を用いて遂行することができる。