JP6569973B2 - ルイス塩基−ルイス酸錯体及びその製造方法 - Google Patents

ルイス塩基−ルイス酸錯体及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、新規な錯体、これを含む触媒、及び、錯体の製造方法に関する。
錯体は、配位結合を有する化合物であり、例えば電子の受容体であるルイス酸と電子の供与体であるルイス塩基とが錯形成して生じる。錯体が形成されると、通常、酸・塩基双方の性質は打ち消し合って消失する。
一方、ルイス酸及び/又はルイス塩基が、嵩高い置換基をもつ場合は、ルイス酸とルイス塩基とを共存させても、その立体障害ゆえに錯形成を行うことができない場合がある。このようなルイス酸−ルイス塩基のペアをFLP(frustrated Lewis pair)と呼ぶ。FLPは、酸・塩基双方の性質を有し、これにより、両者の協同的な作用を発揮することができる。例えば、FLPは分子状水素をヘテロリティクに開裂させることが可能であり、水素付加反応を促進する触媒としたり、水素貯蔵材料としたりすることができる。また、二酸化炭素や亜酸化窒素等の温室効果ガスをFLPにより分解可能である。更に、FLPは有機分子等を活性化する触媒として機能することも可能である。これらの特性ゆえ、FLPは、水素貯蔵材料、温室効果ガス等の分解用触媒、その他の各種反応の触媒として、大きな注目を集めている(例えば、非特許文献1参照。)。
このようなFLPについて、近年において種々の研究・開発がなされている。例えば、ルイス塩基としてN−ヘテロ環状カルベンを用いたFLP等が開示されている(例えば、非特許文献2〜6参照。)。
"気になる化学用語"[online]、Chem-Station、[平成26年7月9日検索]、インターネット〈URL:http://www.chem-station.com/chemglossary/2009/12/-frustrated-lewis-pair-1.html〉 D.W.Stephanら、Angew.Chem.Int.Ed.、2010年、第49号、第46頁−第76頁 Y.Zhangら、Angew.Chem.Int.Ed.、2010年、第49号、第10158頁−第10162頁 P.A.Chaseら、Dalton Trans.、2009年、第7179頁−第7188頁 E.L.Kolychevら、Chem.Eur.J.、2012年、第18号、第16938頁−第16946頁 Y.Zhangら、Dalton Trans.、2012年、第41号、第9119頁−第9134頁
しかしながら、FLPは、高活性であるため不安定であり、安定に単離、保存することが困難であり、取扱いの点で課題があった。一方、錯体として安定に単離、保存することが可能な化合物では、FLPを発生できるものは知られていなかった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、安定的に単離・保存でき、かつ酸・塩基双方の性質を発現できるFLP性能をもつ触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは、一般にルイス酸とルイス塩基のペアが錯体を形成したものは安定に存在できることに着目し、種々検討したところ、N−ヘテロ環状カルベン(NHC)の窒素原子に、立体的な嵩高さを有する端部及び立体的な嵩高さを有しない端部の両方を有する置換基が結合したルイス塩基と、ホウ素原子又はアルミニウム原子に水素原子又は炭素数1〜24の有機基が結合したルイス酸とを用いて錯体を形成することに想到した。この錯体は、エネルギーの低い状態では、立体的な嵩高さを有しない端部がルイス酸側を向くことでNHCとルイス酸とが安定な錯体を形成し、エネルギーを供与した際には、上記窒素原子と上記置換基との間の単結合の回転によって立体的な嵩高さを有する端部がルイス酸を配位圏から弾き出し、反応活性種を発生できるため、通常は安定な錯体として存在させ、触媒として機能させる場合には、錯体にエネルギーを供与することでFLP性能をもつ触媒とすることができることを見出した。また、本発明者らは、本発明の錯体から生じるFLPが、ハロゲン化アルキルを活性化することが可能であり、従来のFLPよりも高活性であることや、このFLPを触媒として用いて反応を行った後、温度を下げることでFLPを錯体として回収(再利用)できることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記一般式(1):
(式中、カルベンからAへの矢印は、カルベンがAへ配位していることを表す。Lは、窒素原子NとEとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Gは、立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部とをもつ炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有する。Eは、酸素原子、硫黄原子、又は、N−Gを表す。Gは、炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有していても良い。Aは、ホウ素原子又はアルミニウム原子を表す。R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、該炭素数1〜24の有機基は置換基を有していても良い。)で表されることを特徴とする錯体である。
また本発明は、本発明の錯体又は該錯体の解離物を含む触媒でもある。
更に、本発明は、下記一般式(2):
(式中、Lは、窒素原子NとEとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Gは、立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部とをもつ炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有する。Eは、酸素原子、硫黄原子、又は、N−Gを表す。Gは、炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有していても良い。)で表されるN−ヘテロ環状カルベンと、下記一般式(3):
AR (3)
(式中、Aは、ホウ素原子又はアルミニウム原子を表す。R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜24の有機基を表し、該炭素数1〜24の有機基は置換基を有していても良い。)で表されるルイス酸性化合物とを反応させて下記一般式(4):
(式中、カルベンからAへの矢印は、カルベンがAへ配位していることを表す。L、G、及び、Eは、一般式(2)における各記号と同様であり、A、及び、R〜Rは、一般式(3)における各記号と同様である。)で表される錯体を得る工程を含むことを特徴とする錯体の製造方法でもある。このとき、一般式(2)で表されるN−ヘテロ環状カルベン及び/又は一般式(3)で表されるルイス酸性化合物を発生しうる前駆体を原料として使用することもできる。
そして、本発明は、本発明の製造方法により得られる錯体でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
<本発明の錯体>
本発明の錯体は、下記一般式(1):
(式中、カルベンからAへの矢印は、カルベンがAへ配位していることを表す。Lは、窒素原子NとEとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Gは、立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部とをもつ炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有する。Eは、酸素原子、硫黄原子、又は、N−Gを表す。Gは、炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有していても良い。Aは、ホウ素原子又はアルミニウム原子を表す。R〜Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜24の有機基を表し、該炭素数1〜24の有機基は置換基を有していても良い。)で表される錯体である。本発明の錯体は、安定に単離、保存することが可能なルイス塩基−ルイス酸錯体である。
一般式(1)中、記号「≡」の左右両側の一般式で表される化合物は、それぞれ同じ化合物である。本発明の錯体は、一般式(1)の左側の一般式で表されるものであればよいが、本発明の錯体を一般式(1)の右側の一般式で表される錯体で表すことも可能である。すなわち、本発明の錯体は、基本的に共鳴構造であり、一般式(1)の左側の一般式で示されるような中性構造で表して構わないが、そのルイス酸性化合物部分がボレートアニオンとしての傾向が強いことから、一般式(1)の右側の一般式で示されるツビッターイオン構造で表すことも可能である。以下では、一般式(1)とは、特に明示しない場合は、一般式(1)の左側の一般式又は一般式(1)の右側の一般式を意味する。後述する一般式(4)においても同様である。
一般式(1)の左側の一般式において、カルベンからAへの矢印は、カルベンがAへ配位していることを表す。ここで、カルベンがAへ配位しているとは、カルベンがAに対して配位子と同様に作用して化学的に影響していることを意味し、カルベンとAとの間に配位結合(共有結合)が形成されていてもよく、配位結合が形成されていなくてもよいが、配位結合が形成されていることが好ましい。
上記一般式(1)中、Gは、Gの構造中に立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部とをもつ炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有する。
上記立体的な嵩高さを有しない端部は、上記立体的な嵩高さを有する端部の構造中に含まれるものではなく、両者は互いに別個のものである。
本明細書中、立体的な嵩高さを有する端部とは、分岐構造を有する基を言う。分岐構造とは、本明細書中、水素原子やハロゲン原子等の一価の原子以外の原子から構成される結合鎖が分岐していることを意味し、例えば炭素原子、ケイ素原子、及び、窒素原子からなる群より選択される少なくとも1種から構成される結合鎖が分岐していることが好ましい。立体的な嵩高さを有する端部を構成する炭素原子、ケイ素原子、及び、窒素原子の合計数は、立体的な嵩高さを有する端部1つ当たり、例えば3以上が好ましい。また、該炭素数は、24以下が好ましく、12以下がより好ましい。立体的な嵩高さを有する端部としては、第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子を有する炭化水素基(例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−アミル基、テキシル基、2−エチルへキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基)、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基)、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基)、ビス(トリアルキルシリル)アミノ基(例えば、ビス(トリメチルシリル)アミノ基)等が好ましく、第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子を有する炭化水素基がより好ましく、第4級炭素原子を有する炭化水素基が更に好ましく、tert−ブチル基が特に好ましい。
上記立体的な嵩高さを有する端部は、1つ以上あればよいが、複数であることが好ましく、2つであることがより好ましい。立体的な嵩高さを有する端部が複数ある場合、立体的な嵩高さを有する端部は、それぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。
また立体的な嵩高さを有しない端部とは、分岐構造を有しない基を言う。立体的な嵩高さを有しない端部としては、例えば水素原子、窒素原子、酸素原子、フッ素原子、硫黄原子、セレン原子等のヘテロ原子、非共有電子対や、直鎖構造等が挙げられる。直鎖構造とは、本明細書中、水素原子やハロゲン原子等の一価の原子以外の原子から構成される結合鎖が分岐せず、直鎖構造であることを意味する。直鎖構造は、炭素原子、水素原子を有していても良く、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、セレン原子等のヘテロ原子を有していても良い。上記立体的な嵩高さを有しない端部は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は、=N−Rであることが好ましく、酸素原子、硫黄原子であることがより好ましく、酸素原子であることが特に好ましい。
上記Rは、直鎖構造を有する炭素数1〜12の有機基を表す。立体的な嵩高さを有しない端部は、1つ以上あればよいが、1つ、又は2つであることが好ましい。なお、立体的な嵩高さを有しない端部が複数ある場合、立体的な嵩高さを有しない端部は、それぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。
上記立体的な嵩高さを有する端部、及び、立体的な嵩高さを有しない端部は、それぞれ、Gにおける上記一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接に結合する原子と直接又は間接に結合するものであり、中でも、Gにおける上記一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子に直接結合し、該原子から分岐しているものであることが好ましい。立体的な嵩高さを有する端部が第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子を有する炭化水素基であり、該第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子が、上記一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子に直接結合することがより好ましい。なお、立体的な嵩高さを有する端部及び立体的な嵩高さを有しない端部がGにおける原子に直接又は間接に結合するとは、通常、単結合、及び、二重結合等の多重結合からなる群より選択される少なくとも1種を1つ又は2つ以上介して結合することを言う。
上記N−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子は、特に限定されないが、立体的な嵩高さを有する端部及び立体的な嵩高さを有しない端部の両方に直接に結合できるものが好ましく、窒素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、炭素原子のいずれかであることがより好ましく、リン原子、硫黄原子のいずれかであることが更に好ましく、リン原子であることが特に好ましい。例えば、Gにおける一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子がリン原子であり、立体的な嵩高さを有しない端部が酸素原子であって、Gにおける一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子であるリン原子と立体的な嵩高さを有しない端部とが−P=O基を形成していることが特に好ましい。
また例えば、Gにおける一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子が硫黄原子であり、立体的な嵩高さを有しない端部が酸素原子であって、一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子である硫黄原子と立体的な嵩高さを有しない端部とがスルホニル基(−SO)を形成していても良い。
本発明においては、上述したように、一般式(1)におけるGがヘテロ原子を有することを特徴とする。該ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、セレン原子等が挙げられ、中でも窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、セレン原子が好ましく、酸素原子、リン原子、硫黄原子がより好ましい。ヘテロ原子は、G中、立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部のいずれに含まれていても良く、上記一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子等の上述した各端部以外の部分に存在していても良いが、上述したように、立体的な嵩高さを有しない端部に含まれていたり、上記一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子として存在していたりすることが好ましい。
上記一般式(1)中、Lは、窒素原子NとEとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Lは、このように様々な構造を導入可能であるが、例えば、N−ヘテロ環状カルベンの最小員環に含まれる部分の原子数が2〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。
上記N−ヘテロ環状カルベンの最小員環に含まれる部分の原子は、特に限定されないが、炭素原子、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、炭素原子、窒素原子がより好ましく、炭素原子が特に好ましい。
Lは、単環構造を有していてもよい。言い換えれば、Lで表される架橋構造が環構造を含んでいても良い。
Lが単環構造を有する場合、単環構造と一般式(1)における窒素原子N及びEが直接結合するものであってもよく、単環構造と一般式(1)における窒素原子N及び/又はEとの間に2価の置換基が挟まれるものであってもよい。
上記2価の置換基としては、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルケニレン基、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子、又は、これらが直列に結合されたもの等が挙げられる。
Lは、縮環構造を有していてもよい。言い換えれば、Lで表される架橋構造が縮環構造を含んでいても良い。
Lが縮環構造を有する場合、縮環構造と一般式(1)における窒素原子N及びEが直接結合するものであってもよく、縮環構造と一般式(1)における窒素原子N及び/又はEとの間に2価の置換基が挟まれるものであってもよい。
上記2価の置換基としては、単環構造と一般式(1)における窒素原子N及び/又はEとの間に挟まれる2価の置換基として上述したものと同様である。
Lは、置換基を有していても良い。Lが単環構造及び縮環構造のいずれも有さない場合は、該置換基は、一般式(1)におけるL、N、カルベン、及び、Eを含んで構成される環構造中のLの部分の置換基である。Lが単環構造又は縮環構造を有する場合は、該置換基は、単環構造又は縮環構造の置換基、又は、その他の、一般式(1)におけるL、N、カルベン、及び、Eを含んで構成される環構造中のLの部分の置換基である。
該置換基は、例えば、ヘテロ原子を有するものであってもよく、その他の原子又は原子団であってもよい。該ヘテロ原子を有する置換基としては、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数7〜18のアリールアルコキシ基、炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数2〜18のアシル基、炭素数7〜18のアロイル基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。該その他の原子又は原子団としては、例えば、炭素数3〜18の芳香族基、炭素数1〜18のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。なお、該芳香族基としては、上述した芳香族構造を含むものが挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、中でもフッ素原子及び/又は塩素原子が特に好ましい。
Lの炭素数は、12以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましい。また、Lの炭素数は、1以上であることが好ましい。
Lが炭素原子2個からなる構造であることが特に好ましい。
上記一般式(1)中、Eは、酸素原子、硫黄原子、又は、N−Gを表し、中でもN−Gを表すことが好ましい。なお、EがN−Gを表す場合は、N−GにおけるNがL及びカルベンのそれぞれに直接結合する。Gは、ヘテロ原子を有していても良い炭素数1〜24の一価の有機基を表し、上記Gと同一であってもよい。
上記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子等が挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、例えば、炭素数3〜24の芳香族基、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数7〜24のアリールアルキル基、炭素数1〜24のアルキルスルホニル基、炭素数6〜24のアリールスルホニル基、炭素数7〜24のアリールアルキルスルホニル基、炭素数3〜24のトリアルキルシリル基、炭素数8〜24のジアルキルアリールシリル基、炭素数13〜24のアルキルジアリールシリル基、炭素数18〜24のトリアリールシリル基、炭素数4〜24のビス(ジアルキルアミノ)ホスファニル基、炭素数4〜24のビス(ジアルキルアミノ)ホスフィノイル基、炭素数2〜24のジアルキルホスファニル基、炭素数2〜24のジアルキルホスフィノイル基、炭素数12〜24のジアリールホスファニル基、炭素数12〜24のジアリールホスフィノイル基等が挙げられる。なお、該芳香族基としては、上述した芳香族構造を含むものが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、炭素数が20以下であることが好ましい。
上記ヘテロ原子を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、炭化水素基であることが好ましく、第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子を有する炭化水素基(例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−アミル基、テキシル基、2−エチルへキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基)であることがより好ましく、芳香族基及び/又は第4級炭素原子を有する炭化水素基であることが更に好ましい。例えば、tert−ブチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基が特に好適なものとして挙げられる。
上記一般式(1)中、Aは、ホウ素原子、又は、アルミニウム原子を表し、ホウ素原子、アルミニウム原子のどちらであっても好ましいが、中でもホウ素原子であることがより好ましい。
上記一般式(1)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、又は、置換基を有していても良い炭素数1〜24の有機基を表し、置換基を有していても良い炭素数1〜24の有機基を表すことが好ましい。
上記置換基を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、例えば、炭素数3〜24の芳香族基、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数7〜24のアリールアルキル基、炭素数6〜24のアリールオキシ基、炭素数7〜24のアリールアルコキシ基、炭素数1〜24のアルキルチオ基、炭素数6〜24のアリールチオ基、炭素数7〜24のアリールアルキルチオ基、炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基、炭素数7〜24のアリールアルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。なお、該芳香族基としては、上述した芳香族構造を含むものが挙げられる。
上記置換基を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、炭素数が2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが更に好ましい。また、該炭素数が20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
上記置換基を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子を有することが好ましく、置換基を有していても良い芳香族基を有することがより好ましく、置換基を有していても良いフェニル基を有することが更に好ましい。
上記置換基を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、電子吸引性置換基を有していることが好ましい。これにより、本発明の錯体におけるルイス酸性化合物部分のルイス酸性を向上することができ、本発明の錯体から発生したFLPの触媒としての性能をより高めることができる。電子吸引性基としては、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられ、中でもハロゲン原子が好ましい。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、中でもフッ素原子及び/又は塩素原子が特に好ましい。
上記置換基を有していても良い炭素数1〜24の有機基は、芳香族基であることが好ましく、アリール基、ヘテロアリール基であることがより好ましく、4−ピリジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ピリジル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタフルオロフェニル基であることが更に好ましく、ペンタフルオロフェニル基であることが最も好ましい。
本発明の錯体は、通常、20℃以下の温度において、錯体として存在する。20℃以下の温度において錯体として存在するとは、少なくとも20℃以下の温度において錯体として存在する限り、20℃以上の温度を上限とする温度領域で錯体として存在するものであってもよいことを意味する。冷却保存する必要性の観点からは、30℃以下の温度において錯体として存在することが好ましく、40℃以下の温度において錯体として存在することがより好ましく、50℃以下の温度において錯体として存在することが更に好ましい。これにより、本発明の錯体を安定に単離、保存することができ、取り扱い性に極めて優れたものとなる。また、本発明の錯体を触媒として反応に使用した後、例えば20℃以下の温度に冷却して回収することにより、触媒として再利用することが可能である。
本発明の錯体は、通常、20℃を超える温度において、解離が生じる。解離が生じるとは、本発明の錯体の少なくとも一部が、FLPの性能を発現できる程度に、N−ヘテロ環状カルベン部分とルイス酸性化合物部分とに解離することを意味する。20℃を超える温度において解離が生じるとは、20℃を超えるいずれかの温度で解離が生じるものであればよく、例えば30℃で解離が生じるものであってもよい。解離が生じる温度は、30℃を超える温度であることが好ましく、40℃を超える温度であることがより好ましく、50℃を超える温度であることが更に好ましい。
<本発明の触媒>
本発明は、本発明の錯体又は該錯体の解離物を含む触媒でもある。
該錯体の解離物とは、本発明の錯体が、FLPの性能を発現できる程度に、N−ヘテロ環状カルベン部分とルイス酸性化合物部分とに解離したものを言う。
本発明の触媒は、例えば20℃を超える温度において錯体の解離が生じてFLPの性質を発現できるものであるが、反応に用いる場合は、例えば40℃以上の反応温度とすることが好ましく、60℃以上の反応温度とすることがより好ましい。該反応温度の上限は、特に限定されないが、例えば200℃であることが好ましい。
本発明の触媒を用いた反応の反応時間は、適宜設定することができるが、例えば5分以上とすることが好ましく、15分以上とすることがより好ましく、30分以上とすることが更に好ましい。該反応時間は、例えば100時間以下とすることが好ましい。
本発明の触媒を用いた反応で用いる反応溶媒は、適宜採用することができるが、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル化合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。該反応溶媒は、芳香族又は脂肪族炭化水素、環状エーテル化合物、鎖状エーテル化合物、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、尿素類が好ましく、芳香族又は脂肪族炭化水素、環状エーテル化合物、鎖状エーテル化合物、ハロゲン化炭化水素類がより好ましい。
本発明の触媒を水素付加反応等に用いる場合は、該反応は、通常は水素加圧下で行う。反応速度の観点から、該水素の圧力は、0.1atm以上とすることが好ましく、0.5atm以上とすることがより好ましく、1atm以上とすることが更に好ましい。また、該圧力は、50atm以下とすることが好ましい。
本発明の触媒は、低温条件下で安定的に単離・貯蔵でき、かつ高温条件とすることで酸・塩基双方の性質を発現する。これにより、低温時には錯体として容易に取り扱うことができ、加熱することによりFLPの性質を発現できるため、触媒として、水素貯蔵材料、温室ガス分解用触媒、その他の水素付加等の各種反応用触媒等の種々の用途に好適に使用できる。
<本発明の錯体の製造方法>
本発明は更に、下記一般式(2):
(式中、Lは、窒素原子NとEとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Gは、立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部とをもつ炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有する。Eは、酸素原子、硫黄原子、又は、N−Gを表す。Gは、炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有していても良い。)で表されるN−ヘテロ環状カルベンと、下記一般式(3):
AR (3)
(式中、Aは、ホウ素原子又はアルミニウム原子を表す。R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1〜24の有機基を表し、該炭素数1〜24の有機基は置換基を有していても良い。)で表されるルイス酸性化合物とを反応させて下記一般式(4):
(式中、カルベンからAへの矢印は、カルベンがAへ配位していることを表す。L、G、及び、Eは、一般式(2)における各記号と同様であり、A、及び、R〜Rは、一般式(3)における各記号と同様である。)で表される錯体を得る工程を含む錯体の製造方法でもある。このとき、一般式(2)で表されるN−ヘテロ環状カルベン及び/又は一般式(3)で表されるルイス酸性化合物を発生しうる前駆体を原料として使用することもできる。
本発明の錯体の製造方法において、上記一般式(2)におけるL、G、E、Gの好ましい形態、上記一般式(3)におけるA、R〜Rの好ましい形態は、それぞれ、上述した上記一般式(1)におけるL、G、E、G、A、R〜Rの好ましい形態と同様である。
本発明の錯体の製造方法において、上記錯体を得る工程は、一般式(2)で表されるN−ヘテロ環状カルベンと、前記一般式(3)で表されるルイス酸性化合物とを混合する工程を含むことが好ましい。
混合方法としては、特に限定されず、例えば、マグネティックスターラー、モーター式撹拌機等を用いて行うことができる。
上記錯体を得る工程における反応温度は、錯体が分解しない温度であれば特に限定されず、例えば80℃以下とすることが好ましく、60℃以下とすることがより好ましい。該反応温度の下限は、特に限定されないが、例えば−20℃とすることが好ましく、0℃とすることがより好ましい。反応後に反応液を冷却して錯体を析出させ、回収する処方は好ましい形態の一つである。
上記錯体を得る工程における反応時間は、適宜設定することができるが、例えば1時間以上とすることが好ましく、2時間以上とすることがより好ましい。該反応時間は、例えば20時間以下とすることが好ましく、10時間以下とすることがより好ましい。
上記錯体を得る工程における反応溶媒は、適宜採用することができるが、本発明の触媒を用いた反応で用いる反応溶媒として上述したものと同様のものを用いることができる。該反応溶媒は、エーテル化合物、ハロゲン化炭化水素、芳香族又は脂肪族炭化水素が好ましく、中でも、トルエンがより好ましい。
上記錯体を得る工程における原料である、一般式(2)で表されるN−ヘテロ環状カルベンと、前記一般式(3)で表されるルイス酸性化合物とのモル比は、1/10〜10/1が好ましく、3/10〜10/3がより好ましく、1/2〜2/1が更に好ましく、1/1.5〜1.5/1が一層好ましく、1/1が特に好ましい。
上記錯体を得る工程は、窒素等の不活性気体雰囲気下でおこなうことが好ましい。該工程は、例えば、グローブボックスにより窒素等の不活性気体置換した環境下で行うことが好ましい。
また本発明は、本発明の錯体の製造方法により得られる錯体でもある。
上記錯体の好ましい形態は、上述した本発明の錯体の好ましい形態と同様である。
本発明の錯体は、取り扱いが容易な触媒として種々の用途、すなわち、FLPが実際に利用されているか、又は、利用されることが期待される、水素貯蔵材料、温室ガス分解用触媒、その他の水素付加等の各種反応用触媒等の用途に好適に使用できる。
本発明の錯体は、上述の構成よりなり、低温条件下で安定的に単離・貯蔵でき、かつ高温条件とすることで酸・塩基双方の性質を発現するため、取り扱いが容易な触媒として種々の用途に好適に使用できる。また、本発明の錯体は、既存のFLPと比較した以下の(1)〜(3)の性能的特長(反応活性、触媒寿命等)を有する。(1)これまでFLPでは知られていなかったCHCl等のハロゲン化アルキルを活性化することが可能である。本発明の錯体は、加熱によりFLPを発生するものであるが、発生したFLPは、従来のFLPよりも高活性である。(2)水素化反応等において、反応後に触媒を回収(再利用)することが可能である(回収される触媒は、水素を開裂した塩である。)。(3)ルイス塩基側の構造改良が可能になったことで、不斉反応等の立体選択的反応に展開できる。
実施例1で合成された錯体2の、H−NMRスペクトル図である(溶媒:CDCl)。 実施例1で合成された錯体2の、11B−NMRスペクトル図である(溶媒:CDCl)。 実施例1で合成された錯体2の、19F−NMRスペクトル図である(溶媒:CDCl)。 実施例1で合成された錯体2の、31P−NMRスペクトル図である(溶媒:CDCl)。 実施例1で合成された錯体2のX線結晶構造解析図である。 実施例1で合成された錯体2のX線結晶構造解析図である。 実施例2で合成された錯体の解離物3の、H−NMRスペクトル図である(溶媒:CDCl)。 実施例2で合成された錯体の解離物3の、19F−NMRスペクトル図である(溶媒:CDCl)。 実施例2で合成された錯体の解離物3の、31P−NMRスペクトル図である(溶媒:CDCl)。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
各種測定及び評価は以下の方法により行った。
X線結晶構造解析は、SHELXEを使用した。X線の測定はRIGAKU RAXIS−RAPID imaging Plate diffractometerを用いて行った。液体NMR(H−NMR、11B−NMR、19F−NMR、及び、31P−NMR)測定は、Bruker DPX 400、又は、Bruker AVANCE IIIを用いて行った。
H−NMRは、400MHzで測定した。11B−NMRは、128.3MHzで測定した。19F−NMRは、376.3MHzで測定した。31P−NMRは、161.9MHzで測定した。
実施例1
[本発明の錯体の合成例]
窒素雰囲気下、化合物1(77.7mg,0.2mmol)、B(C(102.4mg,0.2mmol)、トルエン(10mL)を混合し、2時間撹拌すると白色沈殿が生じた。溶媒を減圧留去し、ヘキサン洗浄した後に乾燥させると錯体2の白色固体(170.3mg,0.189mmol,95%)が得られた。H−NMR、11B−NMR、19F−NMR、及び、31P−NMRを測定し、錯体2の精製を確認した。NMR測定の結果を図1〜4及び以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ7.44(t,1H,CH−Im),7.30(t,H,H=7.6Hz,1H,p−CH−Ar),7.20(d,H,H=6.4Hz,1H,m−CH−Ar),7.12(d,1H,CH−Im),6.90(d,1H,m−CH−Ar),2.94(s,br,1H,CH−Pr),2.47(m,1H,CH−Pr),1.45(d,H,P=15.9Hz,9H,CHBu),1.29(d,H,H=6.2Hz,3H,CHPr),1.09(d,H,P=15.5Hz,9H,CHBu),1.09(d,H,H=6.8Hz,3H,CHPr),0.98(d,H,H=6.7Hz,3H,CHPr),0.90(d,H,H=6.8Hz,3H,CHPr).
11B−NMR(128.3MHz,CDCl):δ−14.5(s).
19F−NMR(376.3MHz,CDCl):δ−115.7(m,1F),−126.6(m,1F),−131.2(m,1F),−131.4(m,1F),−133.8(m,1F),−138.5(m,1F),−162.9(m,1F),−163.7(t,F,F=20.5Hz,1F),−165.3(t,1F),−167.7(m,1F),−169.0(t,1F),−169.4(m,1F),−171.0(m,1F),−172.5(m,1F),−172.7(m,1F).
31P−NMR(161.9MHz,CDCl):δ76.0(s).
X線結晶構造解析のために、更に溶媒トルエン/ヘキサンを用いて−35度にて再結晶させ、無色の結晶を得た。各種構造解析の結果を図5、図6及び表1に示した。結晶系は単斜晶系(monoclinic)、空間群はP2/n(No.14)であった。なお、図5では水素原子を示しているが、図6では水素原子を示していない。
なお、上記錯体2の合成は窒素置換したグローブボックス中で行ったが、化合物1の前駆体である1・HOTf等のイミダゾリウム塩と塩基を用いればグローブボックス等が無くても、簡易置換したN反応容器(シュレンク管)等でも合成は可能である。
1・HOTfとは、N−ヘテロ環状カルベンのトリフルオロメタンスルホン酸塩を意味し、下記式で表される。
上記式中、Rは、2,6−ジイソプロピルフェニル基を表し、Rは、P=O(t−Bu)基を表す。
上記イミダゾリウム塩としては、特に限定されないが、N−ヘテロ環状カルベンのトリフルオロメタンスルホン酸塩、フルオロスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロりん酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロけい酸塩等を好適に用いることができる。中でも、トリフルオロメタンスルホン酸塩、フルオロスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸塩が特に好ましい。
上記塩基としては、強塩基を用いることができる。該強塩基としては、特に限定されないが、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等の金属アミド類、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド類、ジアザビシクロウンデセン、ビス(トリメチルシリル)アミド等のアミン強塩基、n−ブチルリチウム等のアルキル金属類、ホスファゼン類等が好ましい。中でも、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムtert−ブトキシドが特に好ましい。
実施例2
[適用例]
錯体2(9.0mg,0.01mmol)、CDCl(0.5mL)を耐圧チューブに加え、H(5atm)を加圧し40℃にて72時間加熱した後H−NMR、19F−NMR、及び、31P−NMRを測定し、錯体の解離物3の生成を確認した。NMR測定の結果を図7〜9及び以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ8.82(s,1H),7.77(s,1H),7.65(t,H,H=8.0Hz,1H,p−CH−Ar),7.62(s,1H),7.41(d,H,H=7.6Hz,2H,m−CH−Ar),3.44(q,br,HBAr,1H),2.12〜2.20(m,H,H=6.8Hz,2H,CH−Pr),1.42(d,H,P=16.8Hz,18H,CHBu),1.21(d,H,H=6.8Hz,6H,CHPr),1.16(d,H,H=6.8Hz,CHPr).
19F−NMR(376.3MHz,CDCl):δ−137.1(d),−167.7(t),−170.7(m).
31P−NMR(161.9MHz,CDCl):δ77.6(s).
実施例3
[適用例]
窒素雰囲気下、イミン(49.1mg,0.20mmol)と錯体2(9.0mg,0.01mmol)をベンゼン0.50mL中にて混合し、水素を5atmで加圧した。その後、100℃にて38時間反応させたところ、アミンが定量的に生成したことをNMRにて確認した。
上記の実施例2、3は、上述したように、いずれもNMR測定にて反応の進行を確認した。実施例2では、本発明の錯体からFLPが生じ、水素分子を開裂・分解できることが分かった。また、実施例3では、本発明の錯体から生じたFLPが水素付加反応の触媒として機能することが分かった。
なお、上記実施例においては、特定の錯体を用いているが、窒素原子と直接結合した置換基中に立体的な嵩高さを有する端部及び立体的な嵩高さを有しない端部の両方が導入されたN−ヘテロ環状カルベン(NHC)であれば、低温条件下等のエネルギーの低い状態では嵩の小さい端部がルイス酸性化合物側を向くことでNHCとルイス酸性化合物とが安定な錯体を形成することができ、高温条件下等の大きなエネルギーが供与される状態では、N−ヘテロ環状カルベン(NHC)の構造中の窒素原子と該窒素原子と直接結合した置換基との間の単結合の回転によって立体的な嵩高さを有する端部がルイス酸性化合物部分を配位圏から弾き出し、反応活性種(FLP)を発生することができる機構、つまり、本発明の錯体を、通常は安定な錯体として存在させ、触媒として機能させる場合には、錯体にエネルギーを供与することでFLP性能をもつ触媒とすることができる機構は全て同様である。
したがって、上記一般式(1)で表される錯体であれば、本発明の有利な効果を発現することは確実であるといえ、上述した実施例で充分に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。少なくとも、Gにおける一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子がリン原子であり、該リン原子が、立体的な嵩高さを有する端部の第4級炭素原子、及び、立体的な嵩高さを有しない端部であるヘテロ原子にそれぞれ直接結合するN−ヘテロ環状カルベンを用いて得られる本発明の錯体においては、上述した実施例で充分に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1):
    (式中、カルベンからAへの矢印は、カルベンがAへ配位していることを表す。Lは、窒素原子NとEとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Gは、立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部とをもつ炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有する。立体的な嵩高さを有する端部は、第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子を有する炭化水素基であり、立体的な嵩高さを有しない端部は、水素原子、ヘテロ原子、非共有電子対、又は、ヘテロ原子を有していてもよい直鎖アルキル基であり、立体的な嵩高さを有する端部の第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子、並びに、立体的な嵩高さを有しない端部は、それぞれ、Gにおける上記一般式(1)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子に直接結合している。Eは、N−Gを表す。Gは、芳香族基、第3級炭素原子、及び、第4級炭素原子からなる群より選択される少なくとも1種を有する炭素数3〜24の炭化水素基を表す。Aは、ホウ素原子を表す。R〜Rは、同一又は異なって、電子吸引性基を有する炭素数1〜24の有機基を表し、電子吸引性基は、ニトロ基、シアノ基、又は、ハロゲン原子である。)
    で表されることを特徴とする錯体。
  2. 20℃以下の温度において、錯体として存在することを特徴とする請求項1に記載の錯体。
  3. 20℃を超える温度において、解離が生じることを特徴とする請求項1又は2に記載の錯体。
  4. 下記一般式(2):
    (式中、Lは、窒素原子NとEとの間を結ぶ炭素数1〜24の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Gは、立体的な嵩高さを有する端部と立体的な嵩高さを有しない端部とをもつ炭素数1〜24の有機基を表し、ヘテロ原子を有する。立体的な嵩高さを有する端部は、第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子を有する炭化水素基であり、立体的な嵩高さを有しない端部は、水素原子、ヘテロ原子、非共有電子対、又は、ヘテロ原子を有していてもよい直鎖アルキル基であり、立体的な嵩高さを有する端部の第3級炭素原子及び/又は第4級炭素原子、並びに、立体的な嵩高さを有しない端部は、それぞれ、Gにおける上記一般式(2)のN−ヘテロ環状カルベン部分の窒素原子に直接結合する原子に直接結合している。Eは、N−Gを表す。Gは、芳香族基、第3級炭素原子、及び、第4級炭素原子からなる群より選択される少なくとも1種を有する炭素数3〜24の炭化水素基を表す。)
    で表されるN−ヘテロ環状カルベンと、下記一般式(3):
    AR (3)
    (式中、Aは、ホウ素原子を表す。R〜Rは、同一又は異なって、電子吸引性基を有する炭素数1〜24の有機基を表し、電子吸引性基は、ニトロ基、シアノ基、又は、ハロゲン原子である。)
    で表されるルイス酸性化合物とを反応させて下記一般式(4):
    (式中、カルベンからAへの矢印は、カルベンがAへ配位していることを表す。L、G、及び、Eは、一般式(2)における各記号と同様であり、A、及び、R〜Rは、一般式(3)における各記号と同様である。)
    で表される錯体を得る工程を含むことを特徴とする錯体の製造方法。
  5. 前記錯体を得る工程は、前記一般式(2)で表されるN−ヘテロ環状カルベンと、前記一般式(3)で表されるルイス酸性化合物とを混合する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の錯体の製造方法。
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