以下、下記の順序に従って本発明を説明する。
(1)第1の実施形態:
(2)第2の実施形態:
(3)第3の実施形態:
(4)第4の実施形態:
(1)第1の実施形態:
図1は、本実施形態に係る樹脂製手術器具の構造を説明する図である。本実施形態に係る樹脂製手術器具100は、ハサミ型開創器の構成を有する。
樹脂製手術器具100は、樹脂製の把持部10L、当該把持部10Lと一体的に形成された樹脂製の機能部20L、樹脂製の把持部10R、及び、当該把持部10Rと一体的に形成された樹脂製の機能部20Rを備える。本実施形態においては、把持部10L,10Rがインサート部材収容部を構成する。
なお、把持部10Lと把持部10R、及び、機能部20Lと機能部20Rは、それぞれ略線対称な形状であるため、以下では、把持部10Lと把持部10Rをまとめて説明する場合や、機能部20Lと機能部20Rをまとめて説明する場合等は、「L」,「R」の記号を省略して単に把持部10、機能部20等と記載する。また、把持部や機能部の構成要素を説明する場合にも、必要な場合を除き同様に「L」,「R」の記号を省略する。
機能部20Lは、「く」字状に屈曲した屈曲部21Lを有し、機能部20Rは、機能部20Lと線対称な「く」字状に屈曲した屈曲部21Rを有する。機能部20L,20Rにおいて、屈曲部21L,21Rは、把持部10に接続された基端と後述する屈曲部23との間の何れかの部位に設けられる。
屈曲部21Lと屈曲部21Rは、「く」字の角の外側同士が向かい合わせになるように重合され、重合部を軸22によって軸支して互いに相対的に回転可能に連結されている。このように軸支されていることにより、樹脂製手術器具100は、把持部10L,10Rを互いに近づけると、軸22を支点として屈曲部21L,21Rよりも先端側の機能部20L,20Rが互いに離間し(開き)、把持部10L,10Rを互いに遠ざけると、軸22を支点として屈曲部21L,21Rよりも先端側の機能部20L,20Rが互いに接近する(閉じる)。
機能部20は、その軸22よりも先端側に屈曲部23を有している。屈曲部23は、略直角に屈曲しており、機能部20Lの屈曲部23Lと機能部20Rの屈曲部23Rは、互いに略平行になるように略同じ方向に屈曲して延設されている。屈曲部23L,23Rの屈曲方向は、軸22から屈曲部23の手前まで延びる機能部20の延設方向に対して略直角な方向であり、機能部20Lと機能部20Rの並び方向に対して略直角な方向でもある。
把持部10L,10Rを互いに近づけて屈曲部23L,23Rより先端側の機能部20L,20Rが互いに遠ざかるように離間すると、屈曲部23L,23Rよりも先端側の部位は、屈曲部23L,23Rの動きに追随して離間するため、屈曲部23L,23Rよりも先端側の部位は全体としてほぼ同じ離間距離になる。これにより、屈曲部23L,23Rよりも先端側の部位は、開創部位の両側の組織(開創対象組織)に対して全体的に面で当接する。
屈曲部23の先端部には、鉤状部24が設けられている。鉤状部24は、軸22を支点とする機能部20の回動方向の外側に向けて屈曲するフック構造を有しており、開創部位の内側面両側の組織(押し広げる際に開創器が当接する開創対象組織)に引掛ける形状になっている。図1に示す例では、鉤状部24は、軸22を支点とする機能部20の回動方向の外側に向く面であり、鉤状部24の基部よりも先端部が回動方向の外側に突出した形状である。
図2は、機能部20の断面形状を示す図である。
機能部20は、軸22よりも先端寄りの部位が断面U字状になっており、U字の開口を外方(機能部20L,20Rの対面側と反対側)に向けた状態で形成されている。すなわち、機能部20L,20Rは、U字の外側曲面(凸曲面)を互いに対向した状態になっている。また、機能部20のU字の溝内には、U字の溝内底に沿って延びる凸条25が設けてある。凸条25をU字の溝内底に設けることにより、機能部20の強度が向上する。また、凸条25は、機能部20の基端から入射する光を先端まで導く導光路としても機能する。なお、機能部20の形状は断面U字状に限るものではなく、機能部20の強度を向上しつつ導光路としての機能を実現できれば、丸棒形状、四角柱形状、コの字形状、H型形状等、様々な形状を採用することができる。
図3は、機能部20L,20Rの開き角を調整する係止構造を説明する図である。
機能部20Lの軸22よりも基端寄りの部位に、機能部20L,20Rを所望の開き角で係止するラックギア状の係止部26が設けてある。係止部26は、機能部20Lの裏面に基部261を固定されており、機能部20Lの裏面及び機能部20Rの裏面に沿う面に沿って、軸22を中心とする円弧に沿って延びる円弧状部262を有する。
円弧状部262の表面(機能部20Rの裏面と対面する側の面)には、その円周方向に沿う方向に略等間隔で複数の歯合突起263が形成されている。歯合突起263は、機能部20Lに固定されている基部261に近い側の面が円弧状部262の表面に対して略垂直な立壁264となっており、基部261から遠い側の面が円弧状部262の表面に対して傾いたテーパー壁265となっている。
一方、機能部20Rは、その裏面(円弧状部262の表面に対向する面)に、円弧状部262の延びる方向に沿う方向に略等間隔で複数の歯合突起273が形成されている。歯合突起273は、機能部20Lから遠い側の面が機能部20Rの裏面に対して略垂直な立壁274となっており、機能部20Lから近い側の面が機能部20Rの裏面に対して傾いたテーパー壁275となっている。
円弧状部262の歯合突起263と機能部20Rの裏面の歯合突起273は、把持部10L,10Rを互いに離間させる方向に加えられた力に対しては、力の方向と略直交する面を有する立壁264と立壁274の面を押し付け合うため、互いに係合して把持部10L,10Rの離間を阻害する抗力し、把持部10L,10Rを互いに接近させる方向に力が加わられた力に対しては、力の方向に対して傾斜する面のテーパー壁265とテーパー壁275とを押し付け合うため、互いに摺動して把持部10L,10Rの接近を許容する。
すなわち、機能部20L,20Rを接近させる方向に加えられた力に対しては、歯合突起263,273が接近を阻害する抗力となって、現状の機能部20L,20Rの離間度を維持し、機能部20L,20Rを離間させる方向に加えられた力に対しては、歯合突起263,273は離間を阻害せず、ある一定の離間度になって歯合突起263,273の立壁264,274が対面する位置で、離間度を維持することができる。なお、機能部20L,20Rを接近させる場合は、円弧状部262を弾性屈曲させて機能部20Rの裏面から離間させ、歯合突起263,273が係合し合わない状態として行えば良い。
図4は、インサート部材収容部内に設けられてキャップ部材により開閉自在の密閉収容室11を説明する図である。
把持部10は中空筒状の柱体であり、筒内部の密閉収容室11内にインサート部材としてのインサート式光源部30をそれぞれ収容可能になっている。なお、図には、円形柱体の把持部10を例示してあり、把持部10内に設けられる密閉収容室11及びこの密閉収容室11に収容されるインサート式光源部30についても円形柱体のものを例示してある。
把持部10は、使用者が把持して良好なグリップ性を得られる外面形状とすることが望ましい。把持部10の表面には、例えば、防滑シートを付着させたり防滑加工を施したりして、グリップ性をさらに改善することもできる。
把持部10は、柱体の先端型底面において密閉収容室11を閉塞する閉塞部12、及び、柱体の尾端側底面に対して取付け/取外し自在のキャップ部材13、を有する。キャップ部材13が把持部10に取付けられると、密閉収容室11は液体が滲入しないように密閉される。これにより、密閉収容室11に収容されたインサート式光源部30は、樹脂製手術器具100の外面に付着する体液等に汚染されずに済む。
キャップ部材13は、略円筒状のキャップ本体131の尾端側から、ゴム等の変形自在の弾性材で形成された突出部132が突出している。突出部132は、把持部10L,10Rの軸方向に沿って切断した形状が断面ハット型であり、断面ハット型の鍔状部がキャップ本体131の尾端側開口から内側に張り出している庇状部133の内側に係止されている。突出部132のキャップ本体131から突出した部位の内部は中空になっており、キャップ部材13を把持部10L,10Rに装着した状態で把持部10L,10Rの内部の密閉収容室11に連通している。インサート式光源部30を密閉収容室11内に収容してキャップ部材13を把持部10L,10Rに装着すると、スイッチ部34の操作部341が突出部132の内部に位置する。この状態で、突出部132を把持部10L,10Rの軸方向に沿って先端側に押圧すると、突出部132が変形して内部の操作部341を押す等の操作を行うことができる。
把持部10には、指を係止できる指掛け構造を設けてある。把持部10Lでは、把持部10Lの左側に環状の指挿入穴14Lを設けてある。同様に、把持部10Rにも、把持部10Rの右側に環状の指挿入穴14Rを設けてある。把持部10に指掛け構造を設けることにより、把持部10L,10Rの把持容易性が向上する。これにより、機能部20L,20Rを互いに離間させて開創対象部位を押し広げる際に、医師や補助者が把持部10L,10Rを握り締めるように把持して把持部10L,10Rを互いに近づけることになるが、指挿入穴14L,14Rを設けてあるため、把持位置がずれにくくなる。
機能部20は、透明樹脂で一体形成されており、機能部20の基端部から入射される光を機能部20の先端付近に形成された屈曲部23まで導く導光路(上述したU字の溝内底に設けた凸条25を含む)をその内部に有する。把持部10の閉塞部12も機能部20にそれぞれ一体化されており、導光路の一部を構成している。
インサート式光源部30は、発光面を閉塞部12に向けて密閉収容室11に配設される。このため、密閉収容室11に収容されたインサート式光源部30の発光は、閉塞部12と機能部20を透過して機能部20の先端近くに形成された屈曲部23及び鉤状部24まで導かれる。
図5は、インサート式光源部30を説明する図である。
インサート式光源部30は、電池保持凹部31、電池保持凹部31に保持された電池32、光源としてのLED(Light Emitting Diode)を搭載された回路基板33、回路基板33への電池32からの電源電圧供給を切り替えるスイッチ部34、を有している。なお、LEDに代えて小型の半導体レーザーを採用してもよい。
インサート式光源部30は、中空筒状であり、筒側面に電池32を電池保持凹部31に出し入れするための開口35が形成されている。電池32は、電池保持凹部31に収容可能な各種の電池を採用可能である。従って、単三型乾電池/単四型乾電池/ボタン型電池等の形状の別、充電式/非充電式の充電可否の別、マンガン/リチウムイオン/水素等の電極材料の別、等については、特に制限されず、様々なものを採用可能である。
電池32として例えば単三型乾電池や単四型乾電池等の円筒筒状の電池を採用した場合、インサート式光源部30の筒軸に沿う方向に長手方向を配向させて電池保持凹部31に配設される。電池保持凹部31の先端側壁及び尾端側壁には、電池32の正極用端子及び負極用端子がそれぞれ設けられており、スイッチ部34及び回路基板33を介して電気的に接続されている。
回路基板33は、インサート式光源部30の筒内において、電池保持凹部31よりも先端寄りであって閉塞部36の内側に配設されている。閉塞部36にはLEDの発光を略平行光に収束させるレンズを設けてもよい。インサート式光源部30の筒内において、回路基板33は、LEDの発光方向が閉塞部36の内側面に向くように配設されている。このため、LEDが点灯すると、その発光が閉塞部36に入射して、機能部20の閉塞部212及び導光路を通って機能部20の先端近くまで導かれる。
スイッチ部34は、インサート式光源部30の尾端に取付固定されており、スイッチのオン/オフを切り替える操作部341をインサート式光源部30外に露出している。スイッチ部34には、公知の各種のスイッチ方式のスイッチを採用可能であり、例えば、押しボタン式やセンサー式のスイッチを採用できる。スイッチ部34は、操作部341側から通電部側へ水分が侵入しない防水構造となっている。
インサート式光源部30は、電池32及び回路基板33を含む全体又は要部を樹脂で密封保持する構造としてもよい。この場合、電池32として非充電式のものを採用する場合は電池32を含むインサート式光源部30をディスポーザブルとし、電池32として充電式のものを採用する場合は電池32に充電するための充電用端子を外部に露出させ、充電式のインサート式光源部30として使用する。充電式のインサート式光源部30は、例えば図12に示す充電器を用いて電池32を充電可能であり、同じ1つのインサート式光源部30を長期間にわたって利用可能である。
図6は、インサート式光源部30を樹脂で密封保持したインサート式光源部30’の構造の一例を示す図である。この例で示すインサート式光源部30’は、例えばダイスライドインジェクション(DSI)成形により作製することができる。なお、インサート式光源部30を樹脂で密封保持したインサート式光源部30’は、インサート式光源部30に比べて太くなるため、細身のインサート式光源部30を密閉収容室11に収容する場合に比べて、密閉収容室11を拡径するか、インサート式光源部30を予め細身に形成する。
DSI成形では、内部構造の複雑な中空体を正確迅速に成形可能である。すなわち、一次射出で第1部材と第2部材をそれぞれ作製し、第1部材と第2部材の間に必要に応じて他の部材(例えば、上述したインサート式光源部30)を収容配設した状態で第1部材と第2部材とを二次樹脂の射出で接合する。これにより、インサート式光源部30の全部又は要部が第1部材と第2部材を合体して形成した内部空洞に配設した状態となり、インサート式光源部30の全部又は要部を樹脂で密封保持できる。
図6に示す例では、第1部材としての第1カバー体40は中空筒を筒軸方向に沿って分割して樋状に形成した一方の樋状部41を有し、第2部材としての第2カバー体50は中空筒を筒軸方向に沿って分割して樋状に形成した一方の樋状部51を有する。すなわち、樋状部41の凹部42と樋状部51の凹部52とを互いに対面させると中空筒の構造となる。第1カバー体40と第2カバー体50とを合体して形成される中空筒は、インサート式光源部30の光が出射される閉塞部12に対応する側を閉塞した形状である。
樋状部41の凹部42と樋状部51の凹部52の内形は、インサート式光源部30の外形と略一致する。このため、樋状部41の凹部42と樋状部51の凹部52とを互いに対面させて所定の中空筒形状にインサート式光源部30を配置した状態において、樋状部41の凹部42と樋状部51の凹部52の内側面が、インサート式光源部30の外面全周にわたって当接した状態となる。すなわち、インサート式光源部30は、樋状部41の凹部42と樋状部51の凹部52とを互いに対面させて所定の中空筒形状にインサート式光源部30を配置した状態において、樋状部41の凹部42と樋状部51の凹部52とにより挟持固定された状態となる。
樋状部41と樋状部51は、互いに当接する縁に沿って樹脂を流し込む溝43,53を有し、樋状部41の凹部42と樋状部51の凹部52とを互いに対面させて所定の中空筒形状にインサート式光源部30を配置した状態で、この溝43,53に流し込んだ樹脂によって互いに接合される。また、樋状部41と樋状部51は、電池保持凹部31よりスイッチ部34よりの部位で、インサート式光源部30の外側面に樹脂で接合される。これにより、樋状部41と樋状部51の内部に形成される閉塞空間内には、電池32や回路基板33等の通電構成要素が配設されており、防水構造のスイッチ部34の操作部341については、閉塞空間の外に露出した状態となる。
また、樋状部41と樋状部51は、インサート式光源部30の充電端子に対応する部位を内外に貫通する端子金属44を埋め込み形成されており、インサート式光源部30が樋状部41と樋状部51間に挟持固定された状態で、インサート式光源部30’の外部に露出した端子金属44を介して、インサート式光源部30の充電端子に電力供給することができる。
インサート式光源部30及び樋状部41,51を形成する樹脂は、放熱性樹脂で作製する。例えば、熱伝導性炭素繊維等の熱伝導性フィラーをフィラー粒子として含む樹脂を用いるとよい。また、インサート式光源部30及び樋状部41,51を形成する樹脂は、少なくとも2〜3回以上のプラズマ滅菌耐性を有する。具体的には、ポリアセタール、エチルビニルアセテート(EVA)、液晶ポリマー、ナイロン(ポリアミド)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーンエラストマー、PTFE(テフロン(登録商標))等の樹脂が例示される。
このように、インサート式光源部30及び樋状部41,51をプラズマ滅菌可能な樹脂で作製することにより、樋状部41,51内に密閉収容されたインサート式光源部30を滅菌して再利用することができる。使用済みの樋状部41,51内に密閉収容されたインサート式光源部30は所定のプラズマ滅菌装置により滅菌された後、図11に示すような袋等に密封された状態で次の使用を待つ。従って、既に密閉収容室11にインサート式光源部30,30’をセットした後の手術中はもちろん、樹脂製手術器具100の密閉収容室11にインサート式光源部30,30’をセットする際にも、医師及び補助者が未滅菌の器具に触れる可能性を可及的に低減できる。なお、インサート式光源部30を袋から取り出して密閉収容室11に収容する際や、他の樹脂製手術器具の密閉収容室11からインサート式光源部30を移送する際には、医師や補助者がインサート式光源部30に触れないようにすることが望ましく、例えば、図11に示すような治具を用いてインサート式光源部30の移送を行ってもよい。
(2)第2の実施形態:
図7は、本実施形態に係る樹脂製手術器具の構造を説明する図である。本実施形態に係る樹脂製手術器具200は、把持部の延びる方向と略直交する方向に人体の孔を押し広げるタイプの開創器の構成を有する。
樹脂製手術器具200は、樹脂製の把持部210L、当該把持部210Lと一体的に形成された樹脂製の機能部220L、樹脂製の把持部210R、及び、当該把持部210Rと一体的に形成された樹脂製の機能部220Rを備える。
機能部220Lは、先端に近づくにつれて徐々に縮径する漏斗形状を軸方向に沿って切断した一方の形状(半漏斗状部221L)を有し、機能部220Rは、同じく漏斗形状を軸方向に沿って切断した他方の形状(半漏斗状部221R)を有する。把持部210Lと半漏斗状部221Lとは連結部222Lによって接続されており、把持部210Rと半漏斗状部221Rとは連結部222Rによって接続されている。
連結部222Lは、「く」字状に屈曲した屈曲部223Lを有し、連結部222Rは、連結部222Lと線対称な「く」字状に屈曲した屈曲部223Rを有する。連結部222Lにおいて、屈曲部223Lは、把持部210Lに接続された基端と半漏斗状部221Lに接続された先端との間の何れかの部位に設けられる。連結部222Rにおいて、屈曲部223Rは、把持部210Rに接続された基端と半漏斗状部221Rに接続された先端との間の何れかの部位に設けられる。
屈曲部223Lと屈曲部223Rは、「く」字の角の外側同士が向かい合わせになるように重合され、重合部を軸224によって軸支して互いに相対的に回転可能に連結されている。このように軸支されていることにより、樹脂製手術器具200は、把持部210L,210Rを互いに近づけると、軸224を支点として屈曲部223L,223Rよりも先端側の機能部220L,220Rが互いに離間し(開き)、把持部210L,210Rを互いに遠ざけると、軸224を支点として屈曲部223L,223Rよりも先端側の機能部220L,220Rが互いに接近する(閉じる)。
屈曲部223L,223Rを軸224により軸支した状態で、半漏斗状部221Lと半漏斗状部221Rの切断面は互いに対向している。このため、軸224を支点として屈曲部223L,223Rよりも先端側の機能部220L,220Rが互いに接近する(閉じる)と、半漏斗状部221Lと半漏斗状部221Rの切断面が互いに略当接し、半漏斗状部221Lと半漏斗状部221Rとで略漏斗形状を形成する。この略漏斗形状の先端を耳孔や鼻孔に挿入して把持部210L,210Rを互いに近づけると、軸224を支点として半漏斗状部221Lと半漏斗状部221Rが互いに離間し(開き)、鼻孔や耳孔を拡開することができる。
把持部210Lと把持部210Rとは、紐状の弾性部材225で接続されている。樹脂製細帯で作製された弾性部材225は、把持部210L,210Rのそれぞれの対向面に両端部がそれぞれ固定されており、把持部210L,210Rを互いに遠ざける方向に弾性力を加えるように、弾性力が発生する屈曲状態で把持部210L,210Rのそれぞれの対向面に両端部が固定されている。これにより、把持部210Lと把持部210Rとを握り締めるように把持した後、把持力を緩和すると弾性部材225の弾性力で把持部210Lと把持部210Rと自動的に互いに離間する。すなわち、半漏斗状部221Lと半漏斗状部221Rが互いに接近して、鼻孔や耳孔を拡開していた力が自動的に緩和する。
本実施形態に係る樹脂製手術器具200は、把持部210Lが中空筒状の柱体であり、筒内部の密閉収容室211内にインサート式光源部30を収容可能になっている。すなわち、把持部210Lは、上述した第1の実施形態に係る把持部10L,10Rと同様の構造を有する。
一方、把持部210Rは、把持部210Lに比べて細身の棒状部材で構成されている。把持部210Lは、連結部222Lの延設方向と略同じ方向に沿って延びるように形成されており、把持部210Rは、連結部222Rの延設方向とは異なる把持部210Lから遠ざかる方向に延びるように形成されている。すなわち、把持部210Lの延設方向と把持部210Rの延設方向との間にはある程度の角度(鋭角)が形成されるようになっている。この角度は、把持部210L,220Rを把持した時に半漏斗状部221L,221Rを離間させたい距離に応じて選択される。
把持部210Lの密閉収容室211には、上述した第1の実施形態と同様のインサート式光源部30を収容して使用する。インサート式光源部30は、発光面を閉塞部212に向けて密閉収容室211に配設される。このため、密閉収容室211に収容されたインサート式光源部30の発光は、閉塞部212と機能部220を透過して機能部220の先端近くに形成された半漏斗状部221まで導かれる。
(3)第3の実施形態:
図8は、本実施形態に係る樹脂製手術器具の構造を説明する図である。本実施形態に係る樹脂製手術器具300は、把持部の延びる方向と略同じ方向に人体の孔部を押し広げるタイプの開創器の構成を有する。
樹脂製手術器具300は、樹脂製の把持部310U、当該把持部310Uと一体的に形成された樹脂製の機能部320F、樹脂製の把持部310L、及び、当該把持部310Lと一体的に形成された樹脂製の機能部320Bを備える。
機能部320Fは、先端に近づくにつれて徐々に縮径する漏斗形状を軸方向に沿って切断した一方の形状(半漏斗状部321F)を有し、機能部320Bは、同じく漏斗形状を軸方向に沿って切断した他方の形状(半漏斗状部321B)を有する。把持部310Uと半漏斗状部321Fとは連結部322Uによって接続されており、把持部310Lと半漏斗状部321Bとは連結部322Lによって接続されている。
把持部310Lは、半漏斗状部321Bの徐々に縮径する側面に対して連結部322Lを介して接続されており、把持部310Uは、半漏斗状部321Fの大径側縁部に対して略直交する方向に配向した状態で連結部322Uを介して接続されている。
連結部322Lは、半漏斗状部321Fの大径側縁部を把持部310Uに連結する部材であり、他方の半漏斗状部321Bの漏斗形状の開口の周外側に沿う枠状部材である。把持部310Uは、半漏斗状部321Fから最も離間した位置に先端を接続されている。
把持部310Uは、把持部310Lに比べて細身の棒状部材で構成されている。把持部310Uは、把持部310Lの延設方向とは異なる把持部310Lから遠ざかる方向に延びるように形成されている。すなわち、把持部310Uの延設方向と把持部310Lの延設方向との間にはある程度の角度(鋭角)が形成されるようになっている。この角度は、把持部310U,310Lを把持した時に半漏斗状部321F,321Bを離間させたい距離に応じて選択される。
枠状部材である連結部322Uは、半漏斗状部321Fと半漏斗状部321Bの切断面を互いに略当接させて半漏斗状部321Fと半漏斗状部321Bとで略漏斗形状を形成した状態で、半漏斗状部321Fと半漏斗状部321Bの境界に近い半漏斗状部321Bの上縁の2か所で、連結部322Uと半漏斗状部321Bとを貫通する軸部材323L,323Rで軸支されている。
このため、半漏斗状部321F,321Bは、把持部の延びる方向に沿う方向に軸部材323L.323Rを支軸として互いに回動可能となる。このように軸支されていることにより、樹脂製手術器具300は、把持部310U,310Lを互いに近づけると、軸部材323L,323Rを支点として半漏斗状部321F,321Bが互いに離間し(開き)、把持部310U,310Lを互いに遠ざけると、軸部材323L,323Rを支点として半漏斗状部321F,321Bが互いに接近する(閉じる)。
すなわち、把持部310Uの延設方向と把持部310Lの延設方向との間にはある程度の角度(鋭角)が形成されるようになっている。この角度は、把持部310U,310Lを把持した時に半漏斗状部321F,321Bを離間させたい距離に応じて選択される。
把持部310Uと把持部310Lとは、紐状の弾性部材324で接続されている。樹脂製細帯で作製された弾性部材324は、把持部310U,310Lのそれぞれの対向面に両端部がそれぞれ固定されており、把持部310U,310Lを互いに遠ざける方向に弾性力を加えるように、弾性力が発生する屈曲状態で把持部310U,310Lのそれぞれの対向面に両端部が固定されている。これにより、把持部310Uと把持部310Lとを握り締めるように把持した後、把持力を緩和すると弾性部材324の弾性力で把持部310Uと把持部310Lと自動的に互いに離間する。すなわち、半漏斗状部321Fと半漏斗状部321Bが互いに接近して、鼻孔や耳孔を拡開していた力が自動的に緩和する。
本実施形態に係る樹脂製手術器具300は、把持部310Lが中空筒状の柱体であり、筒内部の密閉収容室311内にインサート式光源部30を収容可能になっている。すなわち、把持部310Lは、上述した第1の実施形態に係る把持部10L,10Rと同様の構造を有する。
把持部310Lの密閉収容室311には、上述した第1の実施形態と同様のインサート式光源部30を収容して使用する。インサート式光源部30は、発光面を閉塞部312に向けて密閉収容室311に配設される。このため、密閉収容室311に収容されたインサート式光源部30の発光は、閉塞部312と機能部320を透過して機能部320の先端近くに形成された半漏斗状部321Bまで導かれる。
(4)第4の実施形態:
図9は、本実施形態に係る樹脂製手術器具の構造を説明する図である。本実施形態に係る樹脂製手術器具400は、直線状の軸部を有し、当該軸部から略垂直に延設された2本の肢状部を有する開創器の構成を有する。2本の肢状部の少なくとも一方は、軸部に対して略垂直に配向した状態を維持しつつ摺動可能に構成されており、軸部上の任意の摺動位置で固定する固定機構を有する。
樹脂製手術器具400は、軸部としての樹脂製の摺動軸410、摺動軸410の一端に一体的に固定されて摺動軸410の軸方向と略垂直な方向に延設された固定肢420、及び、摺動軸410に対して摺動可能に係合し、固定肢420と略平行な方向(摺動軸410の軸方向と略垂直な方向)に延設された可動肢430、を有する。
摺動軸410には、固定肢420と一体的に形成される基台421と、可動肢430と一体的に形成される摺動部材431とが設けられる。摺動部材431の摺動孔432には、摺動軸410が摺動自在に挿通される。固定肢420は、摺動軸410の軸方向と略垂直な方向に長手方向を配向させた状態で基部が基台421に固定されている。可動肢430は、摺動軸410の軸方向と略垂直な方向に長手方向を配向させた状態で基部が摺動部材431に固定されている。
なお、固定肢420と可動肢430の先端部付近で固定肢420と可動肢430とを近づける方向に力が加わっている状態においては、摺動軸410は、挿通方向と異なる方向に応力が加わることから、摺動孔432の内面に強く当接するためほとんど摺動しない。この状態で固定肢420と可動肢430の間隔を調整する場合は、歯車状の駆動部材433を手指等で回転させて、駆動部材433が摺動軸410に当接しつつ回転することで、駆動部材433が発生する駆動力によって可動肢430を摺動軸410に対して摺動させることにより行う。
このように構成された樹脂製手術器具400は、摺動軸410上において可動肢430を摺動させて任意の位置に固定すると、固定肢420と可動肢430とを任意の離間距離で固定することができる。すなわち、開創対照部位において開創孔に固定肢420と可動肢430とを挿入して任意の離間距離で固定することにより、開創孔を任意の開創幅で保持することができる。
可動肢430は、固定肢420に対向する側と反対側の面(開創孔において対象組織に当接する側の面)に、先端部に丸みを持った突起形状434が設けられている。固定肢420にも、可動肢430に対向する側と反対側の面(開創孔において対象組織に当接する側の面)に、先端部に丸みを持った突起形状422が設けられている。突起形状434,422を設けることにより、固定肢420や可動肢430が開創孔の組織に係止され、開創孔の開創幅を保持している際に樹脂製手術器具400が意図せずして外れることを防止できる。
図10は、固定肢420及び可動肢430の断面形状を示す図である。
固定肢420は、長手方向に略垂直な断面形状がU字状であり、U字の開口を外方(可動肢430に対向する側と反対側の面)に向けた状態で形成されている。同様に、可動肢430は、長手方向に略垂直な断面形状がU字状であり、U字の開口を外方(固定肢420に対向する側と反対側の面)に向けた状態で形成されている。すなわち、固定肢420と可動肢430は、U字の外側曲面(凸曲面)を互いに対向した状態になっている。
固定肢420のU字の溝内にはU字の溝内底に沿って延びる凸条424が設けてある。同様に、可動肢430のU字の溝内にもU字の溝内底に沿って延びる凸条435が設けてある。凸条424,435をU字の溝内底に設けることにより固定肢420及び可動肢430の強度が向上する。また、凸条424は固定肢420の基端から入射する光を先端まで導く導光路として機能し、凸条435は可動肢430の基端から入射する光を先端まで導く導光路として機能する。なお、固定肢420や可動肢430の形状は断面U字状に限るものではなく、固定肢420や可動肢430の強度を向上しつつ導光路としての機能を実現できれば、丸棒形状、四角柱形状、コの字形状、H型形状等、様々な形状を採用することができる。
基台421には、固定肢420が接続される側と反対側に、インサート式光源部30を収容可能な密閉収容室423を内部に形成された中空筒状の柱体が接続されている。同様に、摺動部材431には、可動肢430が接続される側と反対側に、インサート式光源部30を収容可能な密閉収容室436を内部に形成された中空筒状の柱体が設けられている。これら密閉収容室423,436内には、上述した第1の実施形態と同様のインサート式光源部30をそれぞれ収容可能になっている。
摺動軸410、摺動部材431、基台421、固定肢420、及び可動肢430は透明な樹脂で形成されている。
密閉収容室423に収容されたインサート式光源部30の発光は、基台421及び摺動軸410を透過して固定肢420の基端に入射し、より好ましくは、固定肢420のU字の溝内底に沿って延びる凸条424の基端に入射する。同様に、密閉収容室436に収容されたインサート式光源部30の発光は、摺動部材431及び摺動軸410を透過して可動肢430の基端に入射し、より好ましくは、可動肢430のU字の溝内底に沿って延びる凸条435の基端に入射する。これにより、固定肢420及び可動肢430の先端まで光が導光される。
なお、本発明は上述した各実施形態に限られず、上述した各実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した各実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また,本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。