好適には、前記切替時期変更部は、前記回転機の温度が前記所定値よりも低い第2所定値以下であり、且つ、前記模擬ギヤ段の切替えが実行される場合には、前記有段変速部のメカギヤ段の切替え時期を、前記回転機の温度が所定値を超えている場合での前記模擬ギヤ段の切替え時期よりも低車速側の前記模擬ギヤ段の切替え時期に対応させることにある。このようにすれば、所定値よりも低い第2所定値以下となったときにメカギヤ段の切替え時期が変更されるので、制御の切り替わりによる有段変速部のビジーシフトを抑制することができる。又、模擬ギヤ段の切替えが実行されるときにメカギヤ段の切替え時期が変更されるので、有段変速部の変速に伴うショックがあっても運転者に違和感を与え難くされる。
好適には、前記無段変速部は、前記エンジンが動力伝達可能に連結された差動機構と前記差動機構に動力伝達可能に連結された第1回転機(差動用回転機)とを有し前記第1回転機の運転状態が制御されることにより前記差動機構の差動状態が制御される電気式無段変速部であり、前記中間伝達部材に動力伝達可能に連結された前記回転機は、第2回転機(走行駆動用回転機)である。このようにすれば、電気式無段変速部と有段変速部とを直列に備えた車両において、第2回転機の発熱を抑制し易くすると共に有段変速部の変速に伴うショックによる違和感を運転者に与え難くすることができる。
好適には、複数の模擬ギヤ段は、それぞれの変速比を維持できるように出力回転速度に応じてエンジン回転速度を制御することによって成立させられるが、各変速比は必ずしも有段変速部のメカギヤ段のように一定値である必要はなく、所定範囲で変化させても良いし、各部の回転速度の上限や下限等によって制限が加えられても良い。模擬ギヤ段の変速条件は、例えば出力回転速度及びアクセル操作量等の車両の運転状態をパラメータとして予め定められたアップシフト線やダウンシフト線等の変速マップが適当であるが、その他の自動変速条件を定めることもできるし、シフトレバーやアップダウンスイッチ等による運転者の変速指示に従って変速するものでも良い。本発明は、アップシフト及びダウンシフトの両方に適用することが望ましいが、アップシフト及びダウンシフトの何れか一方に適用するだけでも良い。すなわち、何れか一方は模擬有段変速を行い、他方は従来と同じ無段変速を行なうようにしても良い。
好適には、模擬ギヤ段の段数はメカギヤ段の段数以上であれば良く、メカギヤ段の段数と同じであっても良いが、メカギヤ段の段数よりも多いことが望ましく、2倍以上が適当である。メカギヤ段の変速は、中間伝達部材やその中間伝達部材に連結される走行駆動用回転機の回転速度が所定の回転速度範囲内に保持されるように行なうものであり、又、模擬ギヤ段の変速は、エンジン回転速度が所定の回転速度範囲内に保持されるように行なうものであり、それら各々の段数は適宜定められるが、メカギヤ段の段数は例えば2速−6速程度の範囲内が適当であり、模擬ギヤ段の段数は例えば5速−12速程度の範囲内が適当である。
図1は、本発明が適用される車両10に備えられた車両用動力伝達装置12(以下、動力伝達装置12という)の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン14と第1回転機MG1と第2回転機MG2とを備えたハイブリッド車両である。動力伝達装置12は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース15(以下、ケース15という)内において共通の軸心上に配設された、エンジン14に直接或いは図示しないダンパーなどを介して間接的に連結された電気式無段変速部16と、電気式無段変速部16の出力回転部材である中間伝達部材18に連結された機械式有段変速部20とを直列に備えている。又、動力伝達装置12は、機械式有段変速部20の出力回転部材である出力軸22に連結された差動歯車装置24、差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等を備えている。動力伝達装置12は、例えば車両10において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものである。動力伝達装置12において、エンジン14や第2回転機MG2から出力される動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、機械式有段変速部20へ伝達され、その機械式有段変速部20から差動歯車装置24等を介して駆動輪28へ伝達される。
エンジン14は、車両10の走行用の主動力源であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。このエンジン14は、後述する電子制御装置70によってスロットル弁開度或いは吸入空気量、燃料供給量、点火時期等の運転状態が制御されることによりエンジントルクTeが制御される。本実施例では、エンジン14は、トルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく電気式無段変速部16に連結されている。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、駆動トルクを発生させる電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、車両10に備えられた、インバータ50を介して、車両10に備えられた蓄電装置としてのバッテリ52に接続されており、後述する電子制御装置70によってインバータ50が制御されることにより、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々の出力トルク(力行トルク又は回生トルク)であるMG1トルクTg及びMG2トルクTmが制御される。
電気式無段変速部16は、エンジン14が動力伝達可能に連結された差動機構30と差動機構30に動力伝達可能に連結された第1回転機MG1とを有し第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構30の差動状態が制御される電気式無段変速機である。電気式無段変速部16は、エンジン14の動力を中間伝達部材18へ伝達する無段変速部に相当する。又、第1回転機MG1は、差動用回転機に相当する。電気式無段変速部16の中間伝達部材18には、第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。第2回転機MG2は、走行駆動用回転機であって、中間伝達部材18に動力伝達可能に連結された回転機に相当する。
差動機構30は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0を備えている。キャリアCA0は連結軸32を介してエンジン14に連結されている第1回転要素であり、サンギヤS0は第1回転機MG1に連結されている第2回転要素であり、リングギヤR0は中間伝達部材18に連結されている第3回転要素である。換言すれば、差動機構30では、キャリアCA0にエンジン(ENG)14が連結され、サンギヤS0に差動用の第1回転機MG1が連結され、リングギヤR0に走行駆動用の第2回転機MG2が連結されている(後述する図7の左側に示す電気式無段変速部16の共線図参照)。これらのサンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0は互いに相対回転可能で、エンジン14の出力が第1回転機MG1と中間伝達部材18に分割され、第1回転機MG1が回生制御(発電制御ともいう)されることによって得られた電気エネルギーで第2回転機MG2が回転駆動され、或いはインバータ50を介してバッテリー52が充電される。第1回転機MG1の回生制御や力行制御で、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng(すなわちサンギヤS0の回転速度)を制御することにより、差動機構30の差動状態を適宜変更することが可能であり、連結軸32の回転速度(すなわちエンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Ne)と中間伝達部材18の回転速度である中間伝達部材回転速度Nmとの変速比γ1(=Ne/Nm)を無段階(連続的)に変化させることができる。中間伝達部材回転速度Nmは、第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度と同じである為、両者を同じ記号Nmで表記する。中間伝達部材18は、電気式無段変速部16の出力回転部材として機能する。
機械式有段変速部20は、エンジン14と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成しており、何れもシングルピニオン型の第1遊星歯車装置34及び第2遊星歯車装置36を有する遊星歯車式の多段変速機である。第1遊星歯車装置34はサンギヤS1、キャリアCA1、及びリングギヤR1を備えており、第2遊星歯車装置36はサンギヤS2、キャリアCA2、及びリングギヤR2を備えている。サンギヤS1は、第1ブレーキB1を介してケース15に選択的に連結される。サンギヤS2は、第1クラッチC1を介して中間伝達部材18に選択的に連結される。キャリアCA1及びリングギヤR2は、互いに一体的に連結されており、第2クラッチC2を介して中間伝達部材18に選択的に連結されると共に、第2ブレーキB2を介してケース15に選択的に連結される。これらのキャリアCA1及びリングギヤR2は、一方向クラッチF1を介してケース15に連結され、エンジン14と同方向の回転が許容される一方、逆方向の回転が阻止されるようになっている。リングギヤR1及びキャリアCA2は、互いに一体的に連結されて出力軸22に一体的に連結されている。
このように構成された機械式有段変速部20は、クラッチC1,C2、ブレーキB1,B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)が選択的に係合させられることにより、中間伝達部材回転速度Nmと出力軸22の回転速度である出力回転速度Noutとの変速比γ2(=Nm/Nout)が異なる複数の前進ギヤ段が成立させられる。この複数の前進ギヤ段は、機械的に成立させられるメカギヤ段に相当する。機械式有段変速部20は、中間伝達部材18と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成すると共に変速比γ2が異なる複数のメカギヤ段を選択的に成立させる有段変速部に相当する。中間伝達部材18は、機械式有段変速部20の入力回転部材としても機能する。
機械式有段変速部20は、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が最も大きいメカ1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合によりメカ1速ギヤ段よりも変速比γ2が小さいメカ2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により変速比γ2が「1」のメカ3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により変速比γ2が1より小さいメカ4速ギヤ段が成立させられる。尚、第2ブレーキB2と並列に一方向クラッチF1が設けられている為、第2ブレーキB2は被駆動時にメカ1速ギヤ段でエンジンブレーキを効かせる場合に係合させれば良く、発進時等の駆動時には解放状態のままで良い。
クラッチC及びブレーキBは、油圧によって摩擦係合させられる多板式或いは単板式の油圧式摩擦係合装置である。図3は、車両10に備えられた油圧制御回路40(図1も参照)の要部を示す回路図である。油圧制御回路40は、これらのクラッチC及びブレーキBを係合解放制御するリニアソレノイドバルブSL1−SL4、マニュアルバルブ42、及び油圧供給装置44の一部を構成するライン圧コントロールバルブ等を備えており、油圧供給装置44から供給されるライン圧を元圧として、マニュアルバルブ42からDレンジ圧(前進レンジ圧)PDを供給する。油圧供給装置44は、車両10に設けられた、エンジン14によって回転駆動される機械式のオイルポンプや電動モータによって駆動される電動式のオイルポンプ等を油圧源として備えており、ライン圧コントロールバルブ等により調圧してライン圧を出力する。マニュアルバルブ42は、前進走行用のDレンジや後進走行用のRレンジ、或いは動力伝達を遮断するNレンジ等を選択できる、車両10に設けられたシフトレバー46の操作に応じて機械的に或いは電気的に油路を切り替えるものであり、Dレンジが選択された場合にDレンジ圧PDを出力する。
クラッチC、及びブレーキBの各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)には、それぞれ油圧制御装置であるリニアソレノイドバルブSL1−SL4が配設されている。リニアソレノイドバルブSL1−SL4は、電子制御装置70によって独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータの油圧が独立に調圧制御されてクラッチC、及びブレーキBが個別に係合解放制御されることにより、メカ1速ギヤ段−メカ4速ギヤ段が成立させられる。又、機械式有段変速部20の変速制御においては、変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時期に制御される所謂クラッチツークラッチ変速が実行される。例えば、メカ3速ギヤ段からメカ2速ギヤ段への3→2ダウンシフトでは、図2の係合作動表に示すように第2クラッチC2が解放されると共に第1ブレーキB1が係合させられる。この際、変速ショックを抑制する為に、第2クラッチC2の解放過渡油圧や第2ブレーキB1の係合過渡油圧が予め定められた変化パターンなどに従って調圧制御される。機械式有段変速部20の複数の係合装置(クラッチC、ブレーキB)の油圧に応じたトルク容量は、リニアソレノイドバルブSL1−SL4によって各々独立に且つ連続的に制御され得る。
図1に戻り、車両10は、更に、エンジン14、電気式無段変速部16、及び機械式有段変速部20などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置70を備えている。よって、図1は、電子制御装置70の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置70による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。電子制御装置70は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置70は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等に分けて構成される。
電子制御装置70には、車両10に備えられた各種センサ(例えばエンジン回転速度センサ60、MG1回転速度センサ62、MG2回転速度センサ64、出力回転速度センサ66、アクセル操作量センサ68、MG2温度センサ69など)により検出された検出信号に基づく各種実際値(例えばエンジン回転速度Ne、MG1回転速度Ng、MG2回転速度Nm、車速Vに対応する出力回転速度Nout、アルセルペダルの操作量であるアクセル操作量θacc、第2回転機MG2の温度であるMG2温度THmなど)が、それぞれ供給される。又、電子制御装置70からは、車両10に設けられた各装置(例えばスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置54、インバータ50、油圧制御回路40など)に各種指令信号(例えばエンジン14の出力制御の為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を制御する為の回転機制御指令信号Smg、機械式有段変速部20の変速に関連するクラッチCやブレーキBを制御する為の油圧制御指令信号Satなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置70は、車両10における各種制御の為の制御機能を実現する為に、メカ有段変速制御手段すなわちメカ有段変速制御部72、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部74、模擬有段変速制御手段すなわち模擬有段変速制御部76、及びデータ記憶手段すなわちデータ記憶部78を機能的に備えている。
メカ有段変速制御部72は、出力回転速度Nout及びアクセル操作量θaccをパラメータとして予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係であるメカギヤ段変速マップに従って機械式有段変速部20の変速判断を行い、必要に応じてリニアソレノイドバルブSL1−SL4によりクラッチC及びブレーキBの係合解放状態を切り替えることにより、機械式有段変速部20のメカギヤ段を自動的に切り替える。メカギヤ段変速マップは、中間伝達部材18や第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nmが所定の回転速度範囲内に保持されるように定められる。
ハイブリッド制御部74は、エンジン14を燃費効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン14と第2回転機MG2との駆動力の配分や第1回転機MG1の発電による反力を制御して電気式無段変速部16の変速比γ1を無段階に変化させる無段変速制御を実行する。例えば、ハイブリッド制御部74は、運転者の出力要求量としてのアクセル操作量θaccや車速Vから車両10の目標(要求)出力を算出すると共に、その車両10の目標出力と充電要求値とから必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように、機械式有段変速部20のメカギヤ段の変速比γ2等に応じて、その機械式有段変速部20の必要AT入力トルクTinを求め、更に第2回転機MG2のアシストトルク等を考慮して、その必要AT入力トルクTinが得られる目標エンジン出力(要求エンジン出力)を算出する。そして、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン14を制御すると共に第1回転機MG1の発電量(回生トルク)を制御する。エンジン14の出力制御は、エンジン制御装置54を介して行なわれる。又、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の力行制御及び回生制御は、インバータ50を介してバッテリ52の充放電制御を行いつつ実行される。
模擬有段変速制御部76は、出力回転速度Noutに対するエンジン回転速度Neの変速比γ0(=Ne/Nout)が異なる複数の模擬ギヤ段を選択的に成立させるように電気式無段変速部16を制御するものであり、その複数の模擬ギヤ段を予め定められた関係である模擬ギヤ段変速マップに従って変速制御する。変速比γ0は、直列に配置された、電気式無段変速部16と機械式有段変速部20とで形成される変速比であって、電気式無段変速部16の変速比γ1と機械式有段変速部20の変速比γ2とを乗算した値(γ0=γ1×γ2)となる。複数の模擬ギヤ段は、例えば図4に示すように、それぞれの変速比γ0を維持できるように出力回転速度Noutに応じて第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを制御することによって成立させることができる。各模擬ギヤ段の変速比γ0は、必ずしも一定値(図4において原点0を通る直線)である必要はなく、所定範囲で変化させても良いし、各部の回転速度の上限や下限等によって制限が加えられても良い。図4は、複数の模擬ギヤ段として模擬1速ギヤ段−模擬10速ギヤ段を有する10段変速が可能な場合を例示した。この図4から明らかなように、複数の模擬ギヤ段は、出力回転速度Noutに応じてエンジン回転速度Neを制御するだけで良く、機械式有段変速部20のメカギヤ段の種類とは関係なく所定の模擬ギヤ段を成立させることができる。
模擬ギヤ段を切り替える模擬ギヤ段変速マップは、メカギヤ段変速マップと同様に出力回転速度Nout及びアクセル操作量θaccをパラメータとして予め定められている。図5は、模擬ギヤ段変速マップの一例であって、実線はアップシフト線であり、破線はダウンシフト線である。模擬ギヤ段変速マップは、エンジン回転速度Neが所定の回転速度範囲内に保持されるように定められる。この模擬ギヤ段変速マップは、模擬ギヤ段変速条件に相当する。模擬ギヤ段変速マップに従って模擬ギヤ段が切り替えられることにより、電気式無段変速部16と機械式有段変速部20とが直列に配置された動力伝達装置12全体として有段変速機と同様の変速フィーリングが得られる。この模擬有段変速は、例えば運転者によってスポーツ走行モード等の走行性能重視の走行モードが選択された場合に、ハイブリッド制御部74によって実行される無段変速制御に優先して実行するだけでも良いが、所定の実行制限時を除いて基本的に模擬有段変速が実行されても良い。図5の模擬ギヤ段変速マップ及び図4の各模擬ギヤ段のエンジン回転速度マップ(模擬ギヤ段Neマップ)は、データ記憶部78に予め記憶されている。
ここで、模擬有段変速制御部76による模擬有段変速制御と、メカ有段変速制御部72によるメカ有段変速制御とは、協調して制御される。すなわち、複数の模擬ギヤ段の段数は10で、複数のメカギヤ段の段数4よりも多く、各メカギヤ段に対してそれぞれ1又は複数種類の模擬ギヤ段を成立させるように割り当てられている。図6は、ギヤ段割当(ギヤ段割付)テーブルの一例であり、通常時はメカ1速ギヤ段に対して模擬1速ギヤ段−模擬3速ギヤ段が成立させられ、メカ2速ギヤ段に対して模擬4速ギヤ段−模擬6速ギヤ段が成立させられ、メカ3速ギヤ段に対して模擬7速ギヤ段−模擬9速ギヤ段が成立させられ、メカ4速ギヤ段に対して模擬10速ギヤ段が成立させられるように予め定められている。又、後述するように、回転機MG1,MG2の高温時(特には、第2回転機MG2の高温時)など一定の条件下では、メカ1速ギヤ段に対して模擬1速ギヤ段−模擬4速ギヤ段を割り当て、又、メカ2速ギヤ段に対して模擬5速ギヤ段−模擬7速ギヤ段を割り当て、又、メカ3速ギヤ段に対して模擬8速ギヤ段−模擬10速ギヤ段を割り当てたMG高温時のギヤ段割当テーブルが用意されている。これらのギヤ段割当テーブルもデータ記憶部78に予め記憶されている。
図7は、電気式無段変速部16及び機械式有段変速部20の各部の回転速度を直線で結ぶことができる共線図の一例である。この図7は、機械式有段変速部20のメカギヤ段が2速(メカ2速)の場合に、模擬4速ギヤ段−模擬6速ギヤが成立させられる通常時の場合を例示したものであり、出力回転速度Noutに対して所定の変速比γ0となるようにエンジン回転速度Neが制御されることによって、各模擬ギヤ段が成立させられる。
このように複数のメカギヤ段に対して複数の模擬ギヤ段が割り当てられることにより、通常時には、模擬ギヤ段の3⇔4変速が行われるときにメカギヤ段の1⇔2変速が行なわれ、又、模擬ギヤ段の6⇔7変速が行われるときにメカギヤ段の2⇔3変速が行なわれ、又、模擬ギヤ段の9⇔10変速が行われるときにメカギヤ段の3⇔4変速が行なわれる。その為、模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでメカギヤ段の変速が行なわれるように、メカギヤ段変速マップが定められている。具体的には、通常時には、図5における「3→4」、「6→7」、「9→10」の各アップシフト線は、メカギヤ段変速マップの「1→2」、「2→3」、「3→4」の各アップシフト線と一致しており、図5における「3←4」、「6←7」、「9←10」の各ダウンシフト線は、メカギヤ段変速マップの「1←2」、「2←3」、「3←4」の各ダウンシフト線と一致している。又は、図5の模擬ギヤ段変速マップによる模擬ギヤ段の変速判断に基づいて、メカギヤ段の変速指令をメカ有段変速制御部72に対して出力するようにしても良い。このように、メカ有段変速制御部72は、機械式有段変速部20のメカギヤ段の切替えを、模擬ギヤ段が切り替えられるときに行う。模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでメカギヤ段の変速が行なわれる為、エンジン回転速度Neの変化を伴って機械式有段変速部20の変速が行なわれるようになり、その機械式有段変速部20の変速に伴うショックがあっても運転者に違和感を与え難くされる。
ところで、一般的に、回転機は、低回転高負荷領域での運転では、高回転低負荷領域での運転と比べて効率が悪い。その為、登坂路走行時など継続的に高負荷を要求される場面では、回転機(特には第2回転機MG2)が発熱し易く、熱保護の為に回転機の出力制限が必要になる可能性がある。これに対して、模擬ギヤ段をダウンシフトして駆動トルクを確保することで、第2回転機MG2の負荷を低下させて、第2回転機MG2を比較的効率の良い動作点にて運転させることが考えられる。この場合、運転者の駆動要求とは関係なしに模擬ギヤ段のダウンシフトが実行される為、そのダウンシフトに伴うエンジン回転速度Neの上昇によって運転者に違和感を生じさせるおそれがある。
電子制御装置70は、第2回転機MG2の発熱を適切に抑制し易くする制御機能を実現する為に、更に、車両状態判定手段すなわち車両状態判定部80、及び切替時期変更手段すなわち切替時期変更部82を備えている。
車両状態判定部80は、MG2温度THmが所定値を超えているか否かを判定する。この所定値は、例えば第2回転機MG2の出力制限が必要となるMG2温度THmの温度よりも低い値であって、出力制限が必要となる温度に近づいたことを判断する為の予め定められた判定閾値である。つまり、この所定値は、MG2温度THmが第2回転機MG2の出力制限が必要となる温度に到達してしまう前に、切替時期変更部82による制御によって第2回転機MG2が発熱し難くされることで、第2回転機MG2の出力制限が回避又は抑制されることを狙った値である。本実施例では、後述するように、MG2温度THmがこの所定値よりも低く設定された温度以下となったかを判断する為に、この所定値とは別の判定閾値を用いるので、この所定値を第1所定値とし、この所定値とは別の判定閾値を第2所定値とする。
切替時期変更部82は、車両状態判定部80によりMG2温度THmが第1所定値を超えていると判定された場合には、機械式有段変速部20のメカギヤ段の切替え時期を、MG2温度THmが第1所定値以下の場合での模擬ギヤ段の切替え時期よりも高車速側の模擬ギヤ段の切替え時期に対応させる。つまり、図6に示すように、通常時には、模擬ギヤ段の3⇔4変速が行われるときにメカギヤ段の1⇔2変速が行なわれ、又、模擬ギヤ段の6⇔7変速が行われるときにメカギヤ段の2⇔3変速が行なわれることに対して、MG2温度THmが第1所定値を超えていると判定されたMG高温時には、模擬ギヤ段の4⇔5変速が行われるときにメカギヤ段の1⇔2変速が行なわれ、又、模擬ギヤ段の7⇔8変速が行われるときにメカギヤ段の2⇔3変速が行なわれるように、模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでメカギヤ段の変速が行なわれるメカギヤ段変速マップが定められている。具体的には、メカギヤ段変速マップの「1→2」、「2→3」の各アップシフト線は、通常時には、図5における「3→4」、「6→7」の各アップシフト線と一致させられたが、MG2温度THmが第1所定値を超えていると判定されたMG高温時には、図5における「4→5」、「7→8」の各アップシフト線と一致させられる。又、メカギヤ段変速マップの「1←2」、「2←3」の各ダウンシフト線は、通常時には、図5における「3←4」、「6←7」の各ダウンシフト線と一致させられたが、MG高温時には、図5における「4←5」、「7←8」の各ダウンシフト線と一致させられる。又、MG高温時には、機械式有段変速部20のメカギヤ段はメカ4速には変速されない。このような実施態様を実現できるように、図6に示したMG高温時のギヤ段割当テーブルが予め定められている。このように、切替時期変更部82は、MG2温度THmが第1所定値を超えていると判定されたMG高温時には、MG2温度THmが第1所定値以下となる通常時と比較して、図6のギヤ段割当テーブルに示すように、模擬ギヤ段に割り付けられるメカギヤ段を低車速側とする。つまり、切替時期変更部82は、MG2温度THmが第1所定値を超えている場合には、MG高温時のメカギヤ段を模擬ギヤ段に割り付ける。
これにより、第2回転機MG2の出力制限が必要となるMG2温度THmの温度に近づいたときには、機械式有段変速部20がダウンシフトされ易くなり、第2回転機MG2が高回転低負荷領域で運転され易くなる。よって、第2回転機MG2の発熱が抑制され易くなり、第2回転機MG2の出力制限が回避又は抑制される。この際、模擬ギヤ段をダウンシフトするのではなく、模擬ギヤ段はそのままで機械式有段変速部20のみがダウンシフトされるので、そのダウンシフトに伴うエンジン回転速度Neの変化が防止又は抑制され、運転者に違和感を与えることが抑制される。又、MG高温時も通常時と同様に、模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでメカギヤ段の変速が行なわれる為、機械式有段変速部20の変速に伴うショックがあっても運転者に違和感を与え難くされる。
MG高温時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられているときに、MG2温度THmが第1所定値以下となったことで、即、通常時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられると、メカギヤ段の割付けをMG高温時と通常時とで切り替えることによるビジーシフトが生じる可能性がある。そこで、電子制御装置70は、MG高温時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられているときに、MG2温度THmが、第1所定値よりも低い第2所定値を超えている間は、メカギヤ段の割付けをMG高温時のまま維持する。一方で、電子制御装置70は、MG2温度THmが第2所定値以下となったら、メカギヤ段の割付けをMG高温時から通常時へ復帰させる。この際、模擬ギヤ段が変速されるタイミングで通常時へ復帰させると、機械式有段変速部20の変速に伴うショックが抑制され易い。
具体的には、車両状態判定部80は、MG2温度THmが第1所定値以下であると判定した場合には、MG高温時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられているか否かを判定する。車両状態判定部80は、MG高温時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられていると判定した場合には、MG2温度THmが第2所定値を超えているか否かを判定する。車両状態判定部80は、MG2温度THmが第2所定値以下であると判定した場合には、模擬ギヤ段の切替えが実行されないか否か(すなわち模擬ギヤ段の変速が為されないか否か)を判定する。この第2所定値は、例えば第1所定値よりも低い値であって、第2回転機MG2の出力制限が必要となるMG2温度THmの温度よりも十分に低い値であり、メカギヤ段の割付けをMG高温時から通常時へ切り替えたとしてもビジーシフトが生じ難いと判断できる為の予め定められた判定閾値である。
切替時期変更部82は、車両状態判定部80によりMG2温度THmが第2所定値を超えていると判定された場合には、又は、車両状態判定部80によりMG2温度THmが第2所定値以下であると判定されたときでも車両状態判定部80により模擬ギヤ段の切替えが実行されないと判定された場合には、メカギヤ段の割付けをMG高温時のまま維持する。
一方で、切替時期変更部82は、車両状態判定部80によりMG2温度THmが第2所定値以下であると判定され、且つ、車両状態判定部80により模擬ギヤ段の切替えが実行されると判定された場合には、機械式有段変速部20のメカギヤ段の切替え時期を、MG2温度THmが第1所定値を超えている場合での模擬ギヤ段の切替え時期よりも低車速側の模擬ギヤ段の切替え時期に対応させる。つまり、切替時期変更部82は、MG2温度THmが第2所定値以下であり、且つ、模擬ギヤ段の切替えが実行される場合には、メカギヤ段の割付けをMG高温時から通常時へ切り替える。このようにすれば、MG2温度THmが第2所定値以下となったときにメカギヤ段の切替え時期が変更されるので、制御の切り替わりによる機械式有段変速部20のビジーシフトを抑制することができる。又、模擬ギヤ段の切替えが実行されるときにメカギヤ段の切替え時期が変更されるので、機械式有段変速部20の変速に伴うショックがあっても運転者に違和感を与え難くされる。
図8は、電子制御装置70の制御作動の要部すなわち第2回転機MG2の発熱を抑制し易くすると共に機械式有段変速部20の変速に伴うショックによる違和感を運転者に与え難くする為の制御作動を説明するフローチャートであり、繰り返し実行される。図9は、図8のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の一例を共線図上に示す図である。
図8において、先ず、模擬有段変速制御部76の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、模擬ギヤ段変速マップに従って切り替えるべき模擬ギヤ段が算出される。次いで、車両状態判定部80の機能に対応するS20において、MG2温度THmが第1所定値を超えているか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合には車両状態判定部80の機能に対応するS30において、MG高温時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられているか否かが判定される。このS30の判断が肯定される場合には車両状態判定部80の機能に対応するS40において、MG2温度THmが第2所定値を超えているか否かが判定される。このS40の判断が否定される場合には車両状態判定部80の機能に対応するS50において、模擬ギヤ段の切替えが実行されないか否か(すなわち模擬ギヤ段の変速が為されないか否か)が判定される。上記S20の判断が肯定される場合、又は、上記S40の判断が肯定される場合、又は、上記S50の判断が肯定される場合には、切替時期変更部82の機能に対応するS60において、MG高温時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられる。尚、MG高温時のメカギヤ段が既に模擬ギヤ段に割り付けられている場合には、メカギヤ段の割付けがMG高温時のまま維持される。一方で、上記S30の判断が否定される場合、又は、上記S50の判断が否定される場合には、切替時期変更部82の機能に対応するS70において、通常時のメカギヤ段が模擬ギヤ段に割り付けられる。尚、通常時のメカギヤ段が既に模擬ギヤ段に割り付けられている場合には、メカギヤ段の割付けが通常時のまま維持される。上記S60に次いで、又は、上記S70に次いで、メカ有段変速制御部72の機能に対応するS80において、模擬ギヤ段に割り付けられている通常時又はMG高温時のメカギヤ段が反映されたメカギヤ段変速マップに従って切り替えるべきメカギヤ段が算出される。
図9において、実線は、模擬10速ギヤに通常時のメカギヤ段であるメカ4速が割り付けられている場合の一例であり、二点鎖線は、模擬10速ギヤにMG高温時のメカギヤ段であるメカ3速が割り付けられている場合の一例である。両者は同じ模擬10速ギヤであるが、MG高温時は通常時よりもメカギヤ段がローギヤであるのでMG2回転速度Nmが高くされる。又、両者は同じ模擬10速ギヤであるので、変速比γ0が同じであり、車速V(出力回転速度Nout)が同じであれば、エンジン回転速度Neは同じ値とされる。破線に示すように、模擬ギヤ段をローギヤ化してもMG2回転速度Nmを高くすることができるが、この場合には、エンジン回転速度Neも同時に高くされてしまう。
上述のように、本実施例によれば、メカギヤ段の各々に対して1又は複数種類が割り当てられた複数の模擬ギヤ段を選択的に成立させるように電気式無段変速部16が制御されるので、有段変速と同様の変速フィーリングが得られる。又、MG2温度THmが第1所定値を超えている場合には、メカギヤ段の切替え時期が、MG2温度THmが第1所定値以下の場合での模擬ギヤ段の切替え時期よりも高車速側の模擬ギヤ段の切替え時期に対応させられるので、メカギヤ段は低車速側のギヤ段が選択され易くされて(すなわちダウンシフトし易くされて)、MG2回転速度Nmの上昇により第2回転機MG2の発熱が抑制し易くされる。又、メカギヤ段の切替え自体は模擬ギヤ段が切り替えられるときに行われるので、運転者の駆動要求に応じた模擬ギヤ段の切替えによるエンジン回転速度Neの変動を伴う為、機械式有段変速部20の変速に伴うショックがあっても運転者に違和感を与え難くされる。見方を換えれば、模擬ギヤ段はそのままで、メカギヤ段だけローギヤ化にすることで、第2回転機MG2の発熱を抑制しつつ、ドライバビリティの悪化(例えば模擬ギヤ段をローギヤ化することに伴うエンジン回転速度Neの上昇)を抑制している。よって、第2回転機MG2の発熱を抑制し易くすると共に機械式有段変速部20の変速に伴うショックによる違和感を運転者に与え難くすることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、MG2温度THmが第2所定値以下であり、且つ、模擬ギヤ段の切替えが実行される場合に、メカギヤ段の割付けをMG高温時から通常時へ切り替えたが、この態様に限らない。例えば、模擬ギヤ段の切替えが実行されなくても、MG2温度THmが第2所定値以下となった場合に、メカギヤ段の割付けをMG高温時から通常時へ切り替えても良い。又は、MG2温度THmが第1所定値以下となった場合に、メカギヤ段の割付けをMG高温時から通常時へ切り替えても良い。このような場合、図8のフローチャートにおいて、S30−S50は備えられなくても良く、S20の判断が否定された場合にS70が実行されるようにすれば良い。このように図8のフローチャートにおける各ステップは適宜変更され得る。尚、ビジーシフトの発生を抑制する為に、MG2温度THmが第1所定値以下となってから所定時間が経過した場合に、メカギヤ段の割付けをMG高温時から通常時へ切り替えるようにしても良い。
また、前述の実施例では、エンジン14の動力を中間伝達部材18へ伝達する無段変速部として電気式無段変速部16を例示したが、この態様に限らない。この無段変速部は、例えば機械式無段変速部である公知のベルト式の無段変速機などであっても良い。要は、この無段変速部は電気式無段変速部であっても機械式無段変速部であっても良く、エンジンの動力を中間伝達部材へ伝達する無段変速部と、その中間伝達部材に動力伝達可能に連結された回転機とを備えた車両であれば、本発明を適用することができる。
また、前述の実施例では、機械式有段変速部20は、前進4段の各ギヤ段が形成されたが、この態様に限らない。例えば、機械式有段変速部20は、複数の係合装置の何れかが選択的に係合されることによりギヤ比が異なる複数のギヤ段が成立させられる遊星歯車式の多段変速機であれば良い。又は、機械式有段変速部20は、常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備える公知の同期噛合型平行2軸式変速機であってアクチュエータによりドグクラッチ(すなわち噛合式クラッチ)の係合と解放とが制御されてギヤ段が自動的に切り替えられる同期噛合型平行2軸式自動変速機、その同期噛合型平行2軸式自動変速機であって入力軸を2系統備える公知のDCT(Dual Clutch Transmission)などの自動変速機であっても良い。要は、機械式有段変速部20は、中間伝達部材18と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成すると共に変速比が異なる複数のメカギヤ段を選択的に成立させる有段変速部であれば良い。
また、前述の実施例では、差動機構30は、3つの回転要素を有するシングルピニオン型の遊星歯車装置の構成であったが、この態様に限らない。例えば、差動機構30は、複数の遊星歯車装置が相互に連結されることで4つ以上の回転要素を有する差動機構であっても良い。又、差動機構30は、ダブルプラネタリの遊星歯車装置であっても良い。又、差動機構30は、エンジン14によって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車に第1回転機MG1及び中間伝達部材18が各々連結された差動歯車装置であっても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。