JP6512722B2 - 伝送システム - Google Patents

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Description

本発明は、電磁波を用いて、第1局と第2局との間で電力または通信信号を伝送する伝送システムに関する。
持続可能な社会の構築に向けて、化石資源や原子力に代わる再生可能エネルギーの導入拡大が急がれている。その一つとして、洋上の太陽光エネルギーや風力エネルギーを効率よく収集し、陸地へ運ぶ効果的な手段が求められる。
従来の海底ケーブルの多くの制約を回避可能な再生可能エネルギーの収集方策として、非特許文献1に示されるような洋上マイクロ波電力伝送システムが提案されている。
地上で大電力を扱うビーム型のマイクロ波電力伝送においては、生態系や既存の無線通信システムへの干渉を避けるため、伝送路以外へのエネルギー漏洩を抑えることが重要である。しかしながら、現実のビーム型電力伝送では、固定間の無線電力伝送の場合であっても風雨や気象条件によってアンテナの角度や伝送路の屈折率が時間的に変化することが予想される。このような摂動があった場合にも、目標の受電アンテナにビームを向けるための制御手段が必要である。
アクティブ・フェーズドアレー・アンテナは、電力伝送システムの構成手段として非常に有効であるが、例えば複雑な動きをするビームフォーミングやドップラー測定など、高い周波数制御や信号処理技術などが必要である。そのため、安定度の優れた原発振器の信号を全てのアンテナ素子に正確に分配・合成する電力分配装置が必要となる。そのために高い機械的工作精度や温度安定性が必要となる。更に、電子制御でビーム形成を行うため、素子単位でデジタル制御の可変位相器・可変抵抗器など高価な部品が大量に必要であって回路構成が複雑である。組立工数やメンテナンス性、大型化を考えると、コスト削減と機器の高性能化の両立は容易ではない。
送電アンテナから目標の受電アンテナへ電力波のビームを向けるための制御手段として、レトロディレクティブシステムが知られている(非特許文献2)。これは、アレーアンテナにおいて、到来した電波の方向へ折り返して電波を再放射する技術であり、各素子アンテナでの受信信号に対して位相共役の関係で送信信号を送信することにより、信号の到来方向にビームを向けるものである。
石川容平,"マイクロ波ミラー衛星と海洋インバースダムを中核としたグローバルスマートグリッド構想,"マイクロウェーブ展MWE2014基調講演,2014年12月10日 松本紘,篠原真毅,橋本弘藏"京都大学におけるSPS研究への取り組み"信学技報TECHNICAL REPORT OF IEICE SPS2002-07(2002-11) pp.9-13
レトロディレクティブシステムが有効に機能すると、送電アンテナから送信された電力波が受電アンテナの外側へ照射されるスピルオーバー電力が最小化されて、高い電力伝送効率が維持される。また、目標方向以外への不要放射波が抑圧される。更には、システムに必要な受電アンテナの面積が縮小化できる。
従来のハードウェア・レトロディレクティブでは、送電側アレーアンテナの素子アンテナ毎に、この素子アンテナに接続されるサーキュレータ、パイロット信号の周波数の2倍の周波数で発振する局部発振回路、この局部発振回路による局部発振信号とサーキュレータの受信信号出力ポートから出力されるパイロット信号とを混合するミキサー、およびミキサーの出力信号を電力増幅し、サーキュレータの送信信号入力ポートに入力する増幅器、が設けられる。
ところが、パイロット信号と電力波との電力差は極めて大きい(パイロット信号の電力は電力波の電力に比べて僅か1/1000程度またはそれ以下である)ため、上記サーキュレータには非常に高いアイソレーション特性が必要であり、現実的ではない。そこで、パイロット信号の周波数と電力波の周波数とを異ならせることによって、電力波による干渉を抑制する回路構成についても研究されている。しかし、パイロット信号の周波数と電力波の周波数とが異なっていると、パイロット信号の位相に基づいて正確な位相の電力波を生成することが困難となる。また、異なる2つの周波数帯域を必要とするこのようなシステムでは、電波の周波数資源の有効利用の観点からも問題がある。また、空間の伝送路には周波数依存性があるため、パイロット信号の周波数と電力波の周波数とが異なると、パイロット信号の伝搬経路と電力波の伝搬経路とは一致せず、レトロディレクティブが不正確となって、電力伝送効率は低下する。そのため、同一周波数を用いながらも、パイロット信号の信号処理系と電力波との干渉を抑制するようにシステムを構成することが望まれる。
ソフトウェア・レトロディレクティブでは、パイロット信号の到来方向を推定する技術と、送電アンテナから送電する電力波のビームを形成するとともに、そのビーム方向を補正する技術とが組み合わされる。しかし、信号処理に時間が掛かるため高速なビーム制御ができず、空間媒質の時間的変化に追従できない。また、パイロット信号の到来方向を推定するための回路およびソフトウェア、電力波のビームを制御するための回路およびソフトウェアがそれぞれ複雑であり、規模が大きく高コストな装置となる。
また、水平型の電力伝送においては、パイロット信号が地面や海面で反射し、受電アンテナに届くまでの経路にマルチパスが生じる。このようなマルチパスが生じると、本来のレトロディレクティブが不正確となって、電力伝送効率は低下する。
ここで、マルチパスの影響について示す。図34は、地表5mの高さに受電アレーアンテナと送電アレーアンテナを配置し、受電アレーアンテナの中央部分のみを用いて、ビームパイロット信号の伝送距離を敢えて2.5kmに設計したパイロット信号を送信した場合の、パイロット信号と電力波それぞれのビームの電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。この図34に示すように、拡散するパイロット信号を送信すると、地面や海面等での反射により生じるマルチパスの影響で、送電アレーアンテナから送波される電力は撒き散らされることになる。
また、長距離空間を電力伝送路として用いる場合、それを構成する媒質の時間的・位置的変化による誘電率分布の時間的揺らぎが問題となる。図35は、情報通信研究機構季報Vol.58 Nos. 1/2 2012 に示されている大気の揺らぎの周波数成分を示す図である。横軸は周波数、縦軸はパワーである。このように、例えば洋上の大気の屈折率は数Hzから数百Hz程度、すなわち数ms程度の時間間隔で変化(以下、このような伝送路の揺らぎを「伝送路揺らぎ」という。)する。
上述のマルチパスの影響および伝送路揺らぎの問題を避けるために、パイロット信号のビームを制御(補正)するとしても、ハードウェア・レトロディレクティブではハードウェアが複雑化し、大型化、高コスト化する。また、ソフトウェア・レトロディレクティブでは高速応答性が満足されない。
上述のレトロディレクティブシステムにおける解決すべき課題は、電力伝送に限らず、通信信号の伝送システムとして用いる場合にも同様に生じる。
本発明の目的は、上記パイロット信号のマルチパスの問題、伝送路揺らぎの問題を低コストで解消し、レトロディレクティブの高精度化によって伝送効率の低下を抑制した伝送システムを提供することにある。
本発明の特徴を列挙すると次のとおりである。
(A)互いに送受を行う第1局と第2局のアレーアンテナの素子アンテナまたはそのサブアレーに位相共役回路を設ける。
伝送路揺らぎまたは設備の機械的振動よるパイロット信号の摂動、電力伝送波の摂動は、第1局と第2局のそれぞれに備えた位相共役回路により最適な自己収束ビームを作り出す。ここには複雑な演算ロジックは不要である。第1局、第2局それぞれのアレーアンテナより後方へ漏洩した電力は捨て、受けた電力について、位相共役回路を用いて時間反転界を作り、相手側のアレーアンテナヘ送り返す。この動作を繰り返すことによって最適ビームを自動的に作り出す。
(B)システム全体で伝送空間結合型の同期発振器を構成する。
定常状態において、理想的な方向性と断面分布を持つパイロット信号が第1局のアレーアンテナの全面から第2局のアレーアンテナに向かう。第2局のアンテナ素子で受けた受信信号は、位相共役回路を通過して一様な利得を得て、時間反転界を放射する。従ってこの信号は第1局のアレーアンテナに正確に到達する。この第1局、第2局それぞれのアレーアンテナ間を往復する信号の一連の動作はループゲインが1のところで発振条件を満たす。そのため、第1局と第2局のアレーアンテナが、その間の伝送路を介して結合する、空間結合型の一つの同期発振器を構成する。送受信信号が第1局、第2局それぞれの位相共役回路を通過するため、発振周波数は第1局、第2局のアレーアンテナ間の距離に依存しない。つまり、伝送距離は発振周波数に原理的に影響を与えない。
(C)素子アンテナ単位またはそのサブアレー単位で独立した高周波回路を構成する。
上記空間結合型の一組の同期発振器を構成することで、基準信号や高周波電力の合分配装置が不要となり、従来のアクティブ・フェーズドアレー・アンテナに必要であったでデジタル可変位相器およびその周辺回路が不要となる。
(1)本発明の伝送システムは、
複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有する第1局と、複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有する第2局と、を備え、
前記第1局は、前記第2局から送信された電波を受信することによる、前記第1局の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記第1局の素子アンテナを駆動する、第1局素子アンテナ回路を備え、
前記第2局は、前記第1局から送信された電波を受信することによる、前記第2局の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記第2局の素子アンテナを駆動する、第2局素子アンテナ回路を備え、
前記第1局と前記第2局とが指向性をもって電波の送受を行うことを特徴とする。
上記伝送システムによれば、第1局は、第2局から送信された電波を受信し、その受信信号と位相共役関係にある時間反転された電波を第2局へ送信する。この信号は第2局に対するパイロット信号として作用する。一方、第2局は、第1局から送信された電波(パイロット信号)を受信し、その受信信号と位相共役関係にある時間反転された電波を第1局へ送信する。この信号は第1局に対するパイロット信号として作用する。したがって、第1局から第2局への電力または信号の伝送がレトロディレクティブ動作でなされ、且つ第2局から第1局への電力または信号の伝送が同様にレトロディレクティブ動作でなされる。
第1局、第2局のアレーアンテナと、その間の伝送路とで、空間結合型の一つの同期発振器が構成され、この発振動作と共に電波の送受がなされる。特に電力伝送を行う場合に、例えば、第2局から第1局への電力波の伝送と、第1局から第2局へのパイロット信号の伝送が上記発振動作と共に行われる。
このように第1局と第2局とで電波をキャッチボールやピンポンするが如く、双方向で高速のレトロディレクティブ動作が行われることにより、自動的に自己収束ビームが形成され、パイロット信号のマルチパスによる影響および伝送路揺らぎによる影響が抑制される。この「自己収束ビーム」に関しては後に詳述する。
また、複雑な演算ロジックは不要であり、双方向レトロディレクティブを繰り返すことにより、最適ビームが自動的に形成され、このことにより、電力伝送に適用した場合にはアンテナのスピルオーバーによる漏洩が最小化されて、高い電力伝送効率が維持される。また、通信に適用した場合には、目標方向以外への不要放射波が抑圧されて通信システム相互の干渉障害が回避できる。更には、システムに必要なアンテナの面積が極小化できる。
また、パイロット信号と電力波とが実質的に同一周波数であるため、伝送路に大きな周波数依存性があっても、レトロディレクティブ動作が正確となって、高い伝送効率が維持できる。
また、電力分配、デジタル可変位相器等、従来のフェーズドアレーアンテナに使用されていた部品が不要であるので、装置の構成が簡素化され、このことにより低コスト化され、大型アンテナが軽量に作れる。特に、素子アンテナ単位またはそのサブアレー単位で独立した高周波回路をユニット化できる。そのことにより、ユニットの標準化ができ、量産が容易となって、低コスト化できる。更に、主にユニットの交換だけでメンテナンスできるので、メンテナンスコストが低減できる。
(2)前記第2局は、前記第2局のアレーアンテナから起動パイロット信号を送信する起動パイロット信号送信手段を備え、
前記第1局は、前記起動パイロット信号の受信による、前記第1局の素子アンテナの受信信号から基準信号を生成する基準信号生成手段を備え、
更に、前記第1局は、前記基準信号と前記第1局の素子アンテナの受信信号とに基づいて、受信信号と位相共役関係の信号を生成し、その信号で前記第1局の素子アンテナを駆動することによってパイロット信号を送信するパイロット信号制御手段を備える、ことが好ましい。
上記構成により、第1局の各素子アンテナは、第2局から送信された起動パイロット信号をほぼフラットな位相で受けるので、各素子アンテナの受信信号と上記基準信号とでパイロット信号を容易に形成できる。
(3)前記第1局は、前記第1局の前記複数の素子アンテナからの送信信号の振幅制御により分布ゲインをもたせることで、前記パイロット信号のビームを形成するビームパイロット信号形成手段を更に備えることが好ましい。
上記構成により、双方向レトロディレクティブが開始される最初のパイロット信号が第1局から第2局へビームとして送信されるので、上記空間結合型発振器の発振動作が速やかに起動される。
(4)前記ビームパイロット信号形成手段は、前記第2局から送信された電波を受信し始めた以降に、前記第1局の前記複数の素子アンテナの、前記受信信号の振幅をフラットにする、ことが好ましい。
上記構成により、発振の起動後、自己収束ビームが形成される。
(5)前記第1局のアレーアンテナは、前記第1局素子アンテナ回路により、第1偏波で受信して前記第1偏波とは直交関係にある第2偏波で送信し、前記第2局のアレーアンテナは、前記第2局素子アンテナ回路により、前記第2偏波で受信して前記第1偏波で送信することが好ましい。
上記構成により、同一周波数を用いながらも、送信波と受信波とが干渉しない伝送システムが構成できる。
(6)前記第1局の前記複数の素子アンテナ、および前記第2局の前記複数の素子アンテナのそれぞれは、
導体平面から半球状に突出し、且つ前記導体平面の平面視で十字型の誘電体と、当該誘電体内に設けられた、ループ面が第1面にある第1対の磁気結合プローブと、ループ面が前記第1面とは直交する第2面にある第2対の磁気結合プローブと、を備えた、直交二重モード誘電体共振器アンテナであることが好ましい。
上記構成により、送信波と受信波とは充分に高い偏波アイソレーションが得られ、同一周波数を用いながらも、送信波と受信波との干渉の無いシステムが構成できる。
(7)前記第1局の前記複数の素子アンテナ、および前記第2局の前記複数の素子アンテナのそれぞれは、導体平面から半球状に突出し、且つ前記導体平面の平面視で十字型の誘電体と、当該誘電体内に設けられ、ループ面が前記導体平面に直交する第1面にある第1磁気結合プローブと、ループ面が前記導体平面に直交し、且つ前記第1面に直交する第2面にあり、前記第1磁気結合プローブと交差する第2磁気結合プローブと、を備えた、直交二重モード誘電体共振器アンテナであることが好ましい。
上記構成により、送信波と受信波とは充分に高い偏波アイソレーションが得られ、同一周波数を用いながらも、送信波と受信波との干渉の無いシステムが構成できる。
本発明によれば、双方向レトロディレクティブ動作によって、パイロット信号のマルチパスの問題および伝送路揺らぎの問題が低コストで解消され、ビームの高精度化によって、低漏洩で且つ高い伝送効率が維持される伝送システムが構成できる。
図1Aは第1の実施形態に係る電力伝送システム1を含む洋上再生エネルギー電力収集用商用伝送システムの構成図である。 図1Bは第1の実施形態に係る送電局200の構成を示す図である。 図2(A)は本実施形態の電力伝送システムにおけるビームパイロット信号と電力波との関係を示す図であり、図2(B)は比較例の電力伝送システムにおけるパイロット信号と電力波との関係を示す図である。 図3はビームパイロット信号と電力波との偏波の関係について示す図である。 図4は、受電側アレーアンテナ111の一つの素子アンテナに接続される回路と、送電側アレーアンテナ221の一つの素子アンテナに接続される回路の構成について示す図である。 図5(A)(B)は、伝搬路におけるマイクロ波の屈折率勾配によるビームの歪曲について示す図である。 図6は、図5(B)に示した歪曲がある状況での、ビームパイロット信号と電力波について、それぞれのビームの電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。 図7は、受電側アレーアンテナ111から放射されたパイロット信号の位相共役信号を送電側アレーアンテナ221が送信することにより形成されるビームと、その照射位置に関する図である。 図8は海面反射がある状況での、ビームパイロット信号と電力波について、それぞれのビームの電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。 図9は、送電アンテナから起動パイロット信号を送信し、受電アンテナからビームパイロット信号を送信するための構成を含めて表した、電力伝送システムの等価回路的ブロック図である。 図10は、図9に示した各信号の、時間経過に伴う状態変化を示す図である。 図11は、電力伝送システムが、起動パイロット信号をトリガーにして発振を開始することをシミュレーションで確かめるための等価回路図である。 図12(A)は、図11における電圧Vinの波形図であり、図12(B)は、図11における電圧Voutの波形図である。 図13(A)は、一つの素子アンテナの斜視図であり、図13(B)はその内部を透視した斜視図である。 図14は素子アンテナの各部の寸法を示す図である。 図15(A)は第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)に接続される給電部の構成を示す図であり、図15(B)は第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)に接続される給電部の構成を示す図である。 図16(A)は、図15(A)に示した電流が流れるときに生じる磁束を示す図である。また、図16(B)は、図15(A)に示した電流が流れるときに生じる磁界強度の分布を示す図である。 図17(A)はX偏波ポートに給電した場合の放射パターンであり、図17(B)はY偏波ポートに給電した場合の放射パターンである。 図18(A)は、各ポートにおける反射電力および透過電力の周波数特性をそれぞれシミュレーションにより求めた結果を示す図である。図18(B)は、各ポートにおける反射電力および透過電力の周波数特性をそれぞれ実測により求めた結果を示す図である。 図19(A)は、本実施形態のTE11二重モード誘電体共振器の結合モードの一つを磁束の向きで表す図である。図19(B)はTE11 二重モード誘電体共振器の等価回路図である。 図20(A)は比較例としての半球状のTE11 二重モード誘電体共振器の結合モードの一つを磁束の向きで表す図であり、図20(B)はこのTE11 二重モード誘電体共振器の等価回路図である。 図21(A)は、一つの素子アンテナの誘電体内に設けられる磁気プローブの斜視図であり、図21(B)は一つの素子アンテナの平面図である。 図22は、図15(A)(B)に示した2つの180°ハイブリッド回路のX偏波ポートとY偏波ポートに接続される回路を示す図である。 図23は、X偏波ポートのプローブとY偏波ポートのプローブとが成す直交度に摂動δを与えた際のアイソレーションの変化を示す図である。 図24は、摂動φがアイソレーションに与える影響を示す図である。 図25は、隣接する2つの素子アンテナの関係を示す図である。 図26(A)は、素子アンテナ間の角度θに対するSパラメータの絶対値の変化を示す図であり、図26(B)は、角度θに対するSパラメータの位相角の変化を示す図である。 図27は、各象限と結合の極性との関係を示す図である。 図28(A)はアレーアンテナの平面図、図28(B)はアレーアンテナの正面図、図28(C)はアレーアンテナの下面図である。 図29は基準信号グリッド基板GBに形成された等振幅等位相グリッド回路の回路図である。 図30は、素子アンテナおよびRFユニットRFUを用いた電力伝送システムのブロック図である。 図31は信号伝送システムの各素子アンテナ回路の構成を示すブロック図である。 図32(A)は、図30に示した受電側RFユニットと直交二重モード誘電体共振器アンテナとで構成されるアンテナRFモジュールの構成を示す図である。図32(B)は従来のアクティブ・フェーズドアレー・アンテナにおける送受信モジュールと分配・合成装置の構成例を示す図である。 図33は送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナの配列の例を示す平面図である。 図34は、地表5mの高さに受電アレーアンテナと送電アレーアンテナを配置し、受電アレーアンテナの中央部分のみを用いて、ビームパイロット信号の伝送距離を敢えて2.5kmに設計したパイロット信号を送信した場合の、パイロット信号と電力波それぞれのビームの電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。 図35は、情報通信研究機構季報Vol.58Nos. 1/2 2012 に示されている大気の揺らぎの周波数成分を示す図である。 図36は、送電アンテナと受電アンテナとによるSマトリクスの一次元モデルを示す図である。
[電力伝送システム全体の構成]
図1Aは第1の実施形態に係る電力伝送システム1を含む洋上再生エネルギー電力収集用商用伝送システムの構成図である。図1Bは第1の実施形態に係る送電局200の構成を示す図である。
電力伝送システム1は、洋上に設けられた、マイクロ波帯の電力波を送電する送電局200と、陸上でその電力波を受電する受電局100とを備える。送電局200は、複数の素子アンテナが配列された送電側アレーアンテナ221とマイクロ波ミラー210とを備える。同様に、受電局100は、複数の素子アンテナが配列された受電側アレーアンテナ111とマイクロ波ミラー110とを備える。送電側アレーアンテナ221は鉛直方向に電力波を送出し、マイクロ波ミラー210はその電力波を90°反射して水平方向(海面に平行な方向)に導く。受電局のマイクロ波ミラー110は上記電力波を90°反射して受電側アレーアンテナ111に導く。
上記受電局100は本発明に係る「第1局」の一例であり、送電局200は本発明に係る「第2局」の一例である。また、上記電力伝送システム1は本発明に係る「伝送システム」に相当する。
図1Bに表れているように、送電側アレーアンテナ221は、配列された複数の素子アンテナ21を備えている。同様に、受電側アレーアンテナ111も、配列された複数の素子アンテナを備えている。
後に詳述するように、受電局100は、受電側アレーアンテナ111の複数の素子アンテナの受信信号の振幅および位相を制御することでビーム形成されたパイロット信号(ビームパイロット信号)を受電側アレーアンテナ111から送信する手段と、送電側アレーアンテナ221から送電された電力波を受電する回路と、を備える。また、送電局200は、送電側アレーアンテナ221の複数の素子アンテナが上記ビームパイロット信号を受信することによる受信信号から、その位相共役関係にある位相共役信号を生成し、この位相共役信号を増幅し、素子アンテナを駆動することで、電力波を送電する送電側素子アンテナ回路を備える。
なお、後述するように、定常状態ではビームパイロット信号は専用の信号ではなく、受電側アレーアンテナ111から送信された信号である。順次説明する都合上、先ずは、受電側アレーアンテナ111からビームパイロット信号が送信され、このビームパイロット信号を基にして、送電側アレーアンテナ221から電力波が送電されるものとする。
浮体式洋上風力発電施設300は、洋上で風力発電を行い、送電局200はその電力を、電力波を介して受電局100へ伝送する。受電局100に比較的近い場所に、電力伝送システム1用の管理棟410および変電施設420が設けられている。変電施設420は受電局で受電された電力を昇圧して送電線を介して電力系統へ送電する。
図2(A)は本実施形態の電力伝送システムにおけるビームパイロット信号と電力波との関係を示す図であり、図2(B)は比較例の電力伝送システムにおけるパイロット信号と電力波との関係を示す図である。
図2(B)に示す比較例の電力伝送システムでは、受電アンテナの中央部の極一部にパイロット信号送信用のアレーアンテナ111Cが設けられ、その周囲の大部分に電力波受電用のアレーアンテナ111Pが設けられている。また、送電アンテナの中央部の極一部にパイロット信号受信用のアレーアンテナ221Cが設けられ、その周囲の大部分に電力波送電用のアレーアンテナ221Pが設けられている。受電局は受電アンテナのパイロット信号送信用のアレーアンテナ111Cを用いてパイロット信号を送信し、送電局では、送電アンテナのパイロット信号受信用のアレーアンテナ221Cを用いてパイロット信号を受信することで、そのパイロット信号の到来方向を検知し、その方向に、電力波送電用のアレーアンテナ221Pを用いてビーム形成された電力波を送電する。
このように、比較例の受電アンテナは、アレーアンテナの大部分(大面積)を電力伝送に利用するために、アレーアンテナの残りの一部の領域をパイロット信号の送受用に用いるので、受電局は言わば拡散パイロット信号を送信することになる。そのため、この比較例の電力伝送システムでは、海面や散乱体でパイロット信号が反射して、送電局のパイロット信号受信用アレーアンテナ221Cに対するマルチパスが生じる。その結果、レトロディレクティブが不正確となって、電力伝送効率は大きく低下する。また、例えば宇宙太陽発電所(Solar Power Satellite/Station)に適用した場合に、拡散されたパイロット信号を他の衛星が受信してしまって、通信におけるノイズが増大する原因ともなる。
これに対し、図2(A)に示す、本実施形態の電力伝送システムでは、先ず、受電側アレーアンテナ111の全面の素子アンテナを用いて、ビームパイロット信号を受電側アレーアンテナ111から送電側アレーアンテナ221へ送信する。送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナは上記ビームパイロット信号の受信による受信信号から、この受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、この位相共役信号で素子アンテナを駆動することで、結果的にビーム形成された電力波を送電する。すなわち、本発明においては、受電側アレーアンテナの全部または大部分の素子アンテナを用いてビームパイロット信号が送信され、送電側アレーアンテナの全部または大部分の素子アンテナを用いてビームパイロット信号の受信および電力波の送電が行われる。上記「大部分」とは、必ずしも全部の素子アンテナを用いてビームパイロット信号を生成することに限らないことを表すものであり、例えば90%以上の素子アンテナを用いてビームパイロット信号を生成する場合も本発明に含まれる。
本実施形態によれば、パイロット信号を、送電側アレーアンテナ221に鋭く指向するビーム(後述の自己収束ビーム)で送信するので、海面などでの反射が少なく、マルチパスの殆ど無い状態でビームパイロット信号が送電側アレーアンテナ221へ送信される。そのため、パイロット信号のマルチパスによる上述の問題が解消される。
なお、パイロット信号の送受信と電力波の送受電を、アレーアンテナの全面を利用するという意味では、パイロット信号用の素子アンテナと電力波用の素子アンテナとを交互に、例えば市松模様状に混在配置することも考えられる。しかし、その構造では、それぞれの素子アンテナの配列ピッチが広くなるので、パイロット信号、電力波のいずれもサイドローブが大きくなる。そのため、パイロット信号のマルチパスを低減する効果は少なく、電力伝送効率を高める効果も少ない。
図3は上記ビームパイロット信号と電力波との偏波の関係について示す図である。受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナは水平偏波用の素子と、垂直偏波用の素子とを備え、同様に、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナも水平偏波用の素子と、垂直偏波用の素子とを備える。この例では、受電側アレーアンテナ111は、ビームパイロット信号を垂直偏波で送信し、送電側アレーアンテナ221は、電力波を水平偏波で送電する。
このようにビームパイロット信号と電力波とは偏波面が直交していて互いに独立しているので、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナに接続されているパイロット信号給電用の回路が電力波に影響を受けることはない。また、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナに接続されるパイロット信号受信用の回路が、自身の素子アンテナが送電する電力波の影響を受けることもない。
図4は、受電側アレーアンテナ111の一つの素子アンテナに接続される回路と、送電側アレーアンテナ221の一つの素子アンテナに接続される回路の構成について示す図である。受電側アレーアンテナ111は複数の素子アンテナ11を備え、送電側アレーアンテナ221は複数の素子アンテナ21を備える。各素子アンテナ11は垂直偏波用の素子11Vと水平偏波用の素子11Hとで構成され、各素子アンテナ21は垂直偏波用の素子21Vと水平偏波用の素子21Hとで構成される。各素子アンテナ11,21の構成については後に詳述する。
受電側アレーアンテナの素子アンテナ11には受電側素子アンテナ回路10が接続されている。定常状態において、受電局の位相共役回路14から出力される信号は電力増幅器17で増幅され、垂直偏波用の素子11Vへ供給される。
各素子アンテナ11の素子11Vに対して、このように信号が供給されることによって、受電側アレーアンテナ111からビームパイロット信号が送信される。ビームパイロット信号の送信電力は例えば1kWである。
送電側アレーアンテナ221の素子アンテナ21には送電側素子アンテナ回路20が接続されている。素子アンテナ21のうち素子21Vは上記パイロット信号を受信することで受信パイロット信号を出力する。位相共役回路24は、受信パイロット信号に対して位相共役関係の信号を出力する。そのため、電力波の周波数はパイロット信号の周波数と同一周波数である。
なお、本発明において、「同一周波数」とは、周波数が完全に同一であることに限らない。回路各部には特性の誤差があり、また伝搬経路での揺らぎもある。
上記位相共役回路24の出力信号は電力増幅器27で増幅され、水平偏波用の素子21Hへ供給される。
送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21が上記動作を行うことにより、ビーム形成された電力波が送電側アレーアンテナ221から送電される。この電力波の送電電力は例えば1MWである。
素子アンテナ11のうち素子11Hは送電側アレーアンテナ221から送信された信号を受信する。この信号は分配器12で分配され、大部分の電力は整流器13で整流されて電力として取り出される。分配された残りの信号は位相共役回路14へ与えられる。位相共役回路14は送電側アレーアンテナ221から受けた信号に対して位相共役関係の信号を出力する。
ここで、ビームパイロット信号のアンプ増幅率を30dBとし、ノイズレベルとして30dBのマージンを仮定すれば、アイソレーションレベルとして−60dB以下を達成することが重要である。したがって、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21の垂直偏波用素子21Vと水平偏波用素子21Hとの入出力間は−60dB以下のアイソレーションを確保する。受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナ11の垂直偏波用素子11Vと水平偏波用素子11Hとの入出力間についても同様に、−60dB以下のアイソレーションを確保する。
以上に示したように、受電側アレーアンテナ111から送電側アレーアンテナ221へ送信された信号は送電局200に対するビームパイロット信号として用いられ、送電側アレーアンテナ221から受電側アレーアンテナ111へ送信された電力波は受電局100に対するビームパイロット信号として用いられる。このようにして、双方向レトロディレクティブシステムが構成される。
そして、上記電力波からビームパイロット信号を生成することで、受電局の素子アンテナ11の素子11V→伝搬路→送電局の素子アンテナ21の素子21V→送電側素子アンテナ回路20→送電局の素子アンテナ21の素子21H→伝搬路→受電局の素子アンテナ11の素子11H→受電側素子アンテナ回路10→受電局の素子アンテナ11の素子11V、の経路による閉ループが構成される。この閉ループが一つの発振回路系を構成する。したがって、パイロット信号を生成するための専用の複雑な回路が不要であるので、装置の構成が簡素化され、低コスト化される。
受電側アレーアンテナ111および送電側アレーアンテナ221には、それら自体に、定常動作のためのビームフォーミング制御回路を備えていない。しかし、後に説明するように、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21および送電側素子アンテナ回路20の動作によって、送電側アレーアンテナ221は結果的にフェーズドアレーアンテナとして作用する。同様に、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナ11および受電側素子アンテナ回路10の動作によって、受電側アレーアンテナ111は結果的にフェーズドアレーアンテナとして作用する。
送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナ21の垂直偏波用素子21Vがパイロット信号を受信することにより、その受信信号から、この受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号が生成され、この位相共役信号が増幅され、当該素子アンテナの水平偏波用素子21Hが駆動される。このことにより、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナは、パイロット信号と位相共役の関係にある電力波を送信する。したがって、相反定理によって、電力波はビームパイロット信号の伝搬経路を逆戻りするように伝搬する。すなわち、ビームパイロット信号と同じ経路で、電力波が受電側アレーアンテナ111へ伝搬する。
同様に、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナ11の水平偏波用素子11Hが電力波を受電(受信)することにより、その受信信号から、この受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号が生成され、この位相共役信号が増幅され、当該素子アンテナの垂直偏波用素子11Vが駆動される。このことにより、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナは、電力波の位相共役の関係にあるパイロット信号を送信する。したがって、相反定理によって、ビームパイロット信号は電力波の伝搬経路を逆戻りするように伝搬する。すなわち、電力波と同じ経路で、ビームパイロット信号が送電側アレーアンテナ221へ伝搬する。
ビームパイロット信号と電力波は同じ周波数であるので、伝搬路が周波数依存性を有する場合でも、正確な相反性を期待できる。
[屈折率による影響]
図5(A)(B)は、伝搬路におけるマイクロ波の屈折率勾配によるビームの歪曲について示す図である。
シミュレーション条件として送電側アレーアンテナおよび受電側アレーアンテナの直径をそれぞれ50mとし、伝送距離は10kmとした。アンテナ中心の海面からの高度hは75mとした。送電周波数は5.8GHz(λ≒51.7mm)を用いた。ビームの分布は、送受電アンテナ間の中心に12.8mのビームウェストを持つガウス状ビームの断面分布とした。このとき、エッジテーパーの値は-33dBである。
大気屈折率n は通常1.0003 程度である。このため、海面からの高さ変化による大気の屈折率の変化は次のように表現される。
n = 1 + N(h) × 10-6
ここでN(h) は地表からの高さh における屈折指数である。N(h) は、通常の大気では地表からの高さh に応じて減少する。このとき、標準の大気は指数関数を用いた実験式で表されることが知られているが、本電力伝送システムは狭い高度範囲を扱うため、屈折率は高度に比例して減少するものとして扱える。屈折指数の変化率は以下の式で表される。地表における屈折指数の値は、1 気圧、気温15℃、湿度55%の気象条件から計算される屈折指数315 を用いた。
N(h) = 315 - ( ∂N / ∂h) h
このとき、∂N / ∂h を0.00 m-1 から0.50 m-1まで変化させた場合のビームの伝搬方向の変化をシミュレーションにより調べた。
図5(A)は、∂N / ∂h = 0.0m-1
としたときの、ビームパイロット信号の電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。また、図5(B)は、∂N / ∂h = 0.3m-1
としたときの、ビームパイロット信号の電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。
図5(A)に示す状況では、ビームの伝送効率は99.91%である。一方、伝搬路の高さ方向で屈折率が傾斜していると、図5(B)に表れているように、ビームパイロット信号のビームは歪曲する。
このように、水平伝搬においては、伝搬路の高さ方向で屈折率が傾斜していることの影響を受けて、ビームパイロット信号のビームは歪曲する。図5(B)に示した例では、送電側アレーアンテナ221の位置で、ビームパイロット信号の中心位置は高さ方向に14.96m下方にずれ、ビームパイロット信号の伝送効率は91.97%に低下する。
[自己収束ビームの形成]
図6は、図5(B)に示した歪曲がある状況での、ビームパイロット信号と電力波について、それぞれのビームの電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。既に述べたとおり、送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナの垂直偏波用素子21Vがパイロット信号の受信による受信信号と位相共役関係にある位相共役信号を増幅し、当該素子アンテナの水平偏波用素子21Hを駆動することで電力波を送電するので、電力波はビームパイロット信号の伝搬経路を逆戻りするように伝搬する。すなわち、ビームパイロット信号と同じ経路で、電力波が受電側アレーアンテナ111へ伝搬する。したがって、ビームパイロット信号が歪曲しても、図6に表れているように、電力波は受電側アレーアンテナ111の全面で受電できる。この状況での、電力波の伝送効率は97.01%である。つまり、電力波の伝送効率はビームパイロット信号の伝送効率より約5ポイント改善される。
その後、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナの水平偏波用素子11Hが電力波の受電(受信)による受信信号と位相共役関係にある位相共役信号を増幅し、当該素子アンテナの垂直偏波用素子11Vを駆動することでビームパイロット信号を送信する。これにより、ビームパイロット信号は電力波の伝搬経路を逆戻りするように伝搬する。この状況での、ビームパイロット信号の伝送効率は99.91%である。つまり、ビームパイロット信号の伝送効率は電力波の伝送効率より更に約2.9ポイント改善される。
ここで、上記伝送効率の改善の理由について、図7を基に説明する。図7は、受電側アレーアンテナ111から放射されたパイロット信号の位相共役信号を送電側アレーアンテナ221が送信することにより形成されるビームと、その照射位置に関する図である。図7の左の図は、受電側アレーアンテナ111から放射されたビームパイロット信号を受けて、その位相共役信号により作られるビームを示す図である。図7の中央の図は、送電側アレーアンテナ221の開口が大きくて、受電側アレーアンテナ111から放射されたビームパイロット信号をすべて受けたと仮定したときの、その位相共役信号によるビームを示す図である。図7の右の図は、図7の中央の図に示すビームから図7の左の図に示すビームを差し引いたビームである。すなわち、受電側アレーアンテナ111から放射されたビームパイロット信号のうち、送電側アレーアンテナから外れた部分の信号に対する位相共役信号により形成される仮想的なビームを示す図である。
上記外れた部分の電磁波が、図7の中央に示す主ビームに対して逆相干渉するものとすると、その逆相干渉させる電磁波は主ビームと同じパスを戻るとき、逆相干渉は最大となる。しかし、実際には小さな面積(図7に示す三日月状の部分)から拡散放射されるため、この外れた部分の電磁波は主ビームに大きな干渉を与えない。結果的に、伝送効率の劣化は小さい。
ここで、様々な屈折指数の変化率 ∂N / ∂h におけるビームパイロット信号と送電マイクロ波の伝送効率の例を表1に示す。
表1に表れているように、屈折指数の変化率に比例してビームパイロット信号または電力波の強度中心が下方にシフトし、伝送効率は低下する。しかしながら、ビームパイロット信号または電力波の伝送効率と比較して、電力波またはビームパイロット信号の伝送効率が改善されることがわかる。これは、ビームパイロット信号に対して位相共役関係の電力波を送電することによる、または電力波に対して位相共役関係のビームパイロット信号を送信することによる効果の一つである。
このように、最初のビームの中心がターゲットの中心から外れても、戻りのビームの伝送効率は回復する。そして、再放射ビームは、その断面分布と方向性が改善され、伝送効率が更に向上する。この繰り返しにより、高い伝送効率が維持される。つまり、パイロット信号のビーム方向を能動的に制御することなく、自動的に制御される。
なお、上記ビームのターゲットの外れ方がある程度以上大きい場合は、上述の再放射ビームの断面分布と方向性の改善効果が小さいので、ビームが絞られ過ぎない方が好ましい場合がある。その場合には、アレーアンテナの周辺に配置されている素子アンテナまたは後述するサブアレーのゲインを小さくして、実質的なアンテナ径を小さくすることでビームを拡げることも有効である。更に、伝送路の屈折率分布の時間的変化を考慮して、上述のゲインを小さくする素子アンテナまたはサブアレーの数を変動させて、実質的なアンテナ径を摂動させてもよい。例えば、この摂動周期は、受電アンテナと送電アンテナとの間を電波が往復する周期の数倍とする。
[マルチパスによる影響]
次に、海上マルチパスの影響について示す。図8は海面反射がある状況での、ビームパイロット信号と電力波について、それぞれのビームの電界強度(デシベル値)を濃淡で示す図である。
これまでに説明した範囲では、先ず受電局からビームパイロット信号が送信されるかのように述べたが、本実施形態では、このビームパイロット信号を生成するために、受電局は送電局から送信された起動パイロット信号をトリガーにしてビームパイロット信号を送信する。図8に示すとおり、送電局に起動パイロット信号源がある。その起動パイロット信号を、送電アンテナの中央の直径3mの領域から、例えば強度が中心で100、外周で約10となるガウス分布で、開き角約2.9度で送信する場合、10km先の受電アンテナで直径500m、面積で約27,778倍となり、電力密度比は -44.4dB となる。
受電局は、受電側アレーアンテナ111の各素子アンテナの水平偏波素子11Hによる受信信号の位相共役信号を生成し、各素子アンテナの駆動信号をゲインに分布をもたせる。(この分布については後述する。)このことにより、ビームパイロット信号を送信する。送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナの垂直偏波用素子21Vはビームパイロット信号を受信し、この受信信号から、位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、この位相共役信号を増幅し、当該素子アンテナの水平偏波用素子21Hを駆動することで電力波を送電するので、電力波はビームパイロット信号の伝搬経路を逆戻りするように伝搬する。このとき、海面反射が生じるが、海面での反射係数は1未満であるので、双方向レトロディレクティブの繰り返しにより、海面反射による影響は次第に抑制される。
以上に示した実施形態の電力伝送システムは次のような効果を奏する。
(a1)水平型であっても、ビームパイロット信号および電力波のマルチパスが大幅に軽減され、レトロディレクティブが正確となって、ビームパイロット信号および電力波の伝送効率が増大する。
(a2)ビームパイロット信号および電力波の漏洩が抑制されるため、ビームパイロット信号および電力波が他のシステムに悪影響を与えない。
(b1)伝送路の屈折率の揺らぎ等があっても、相反定理によって、ビームパイロット信号および電力波の伝搬経路を逆に辿るように電力波およびビームパイロット信号が正確に伝搬し、ビームパイロット信号および電力波の高い伝送効率が維持される。
(b2)受電側アレーアンテナおよび送電側アレーアンテナには、フェーズドアレー制御のための分配器や移相器が不要であるため、回路構成が簡素化される。また、分配器や移相器での電力損失の問題が生じない。
(b3)受電側の低電力回路でビーム形成すればよいので、ビーム形成が容易となる。
(c)パイロット信号と電力波とが同一周波数であるため、伝送路に大きな周波数依存性があっても、レトロディレクティブが正確となって、高い電力伝送効率が維持できる。
(d)伝送路に、例えば海面や地面からの高さ方向に屈折率勾配があっても、その屈折率勾配に応じて屈折する伝送路に沿って電力波およびビームパイロット信号が送信されて、送電側アレーアンテナおよび受電側アレーアンテナの面積が高効率で利用され、システムとしての伝送効率を高く維持できる。
(e)偏波面が互いに直交する2つの偏波を用いるため、同一周波数を用いながらも、パイロット信号と電力波とが干渉しない電力伝送システムが構成できる。
(f)ビーム形成のために複雑な回路を必要とするのは受電側だけであり、送電側にはソフトウェア・レトロディレクティブのためのビーム到来方向の検知および電力波のビーム形成のための制御や、ハードウェア・レトロディレクティブのための局部発振器等も不要であるので、送電局に要する回路は単純となり、故障率を下げられる。そのため、送電局は無人化でき、電力伝送システム全体のメンテナンスコストが大幅に削減できる。
[発振起動時の制御]
次に、双方向レトロディレクティブの、特に発振起動時の動作について示す。上述のとおり、ビームパイロット信号を生成するために、受電局は送電局から送信された起動パイロット信号をトリガーにしてビームパイロット信号を送信する。
一般的に、ビーム形成のためには、基準信号発信源と、この基準信号を各素子アンテナの駆動回路へ分配する回路が必要である。しかし、例えば直径50mのアンテナの場合、基準信号発信源をアンテナの中央に配置しても、半径25mであるので、83ns、波長数にして500波長分の長いRFケーブルか無線を用いて、各素子アンテナの駆動回路へ基準信号を分配するハードウェアが必要となる。しかも、素子アンテナ毎に振幅調整、位相調整用のデバイスおよび周辺回路が必要である。このような構成であると、アンテナ素子間のハードウェアの独立性は失われ、メンテナンスコストの面で不利な構造となる。
そこで、既に図8に示したように、受電アンテナからみて遠方(5〜10km先)にある送電アンテナの中央から起動パイロット信号を送信し、受電側で起動パイロット信号を用いることにより、受電アンテナの各素子アンテナは、ある程度位相フラットな起動パイロット信号を受けるようにする。そして、この各素子アンテナが受けた起動パイロット信号の位相共役信号を最初の正規のパイロット信号として受電アンテナから送波する。
但し、上記起動パイロット信号の位相共役信号の位相はある程度揃っているが、振幅は殆ど一様であるため、大きなサイドローブが生じるおそれがある。そこで、受電アンテナ側の素子アンテナ毎のアンプゲインに、中央で大きく、周辺で小さくなるような傾斜を設ける。ここでは、このことを「分布ゲイン」と言う。こうすることによって、ある程度のガウシアンビームに近い最初のビームパイロット信号を受電アンテナから発射させる。分布ゲインの制御については後述する。
図9は、上述の、送電アンテナから起動パイロット信号を送信し、受電アンテナからビームパイロット信号を送信するための構成を含めて表した電力伝送システムの等価回路的ブロック図である。この図9に示すように、電力伝送システムは、受電側回路、送電側回路、およびその間の伝送路で表される。
送電側回路は、起動パイロット信号源を有し、伝送システムの起動時に起動パイロット信号を受電側回路へ送信する。この図9では、伝送線路に結合する方向性結合器を介して起動パイロット信号を出力する等価回路として表している。
受電側回路では、上記起動パイロット信号を受信して、位相共役回路で位相共役信号が生成され、バンドパスフィルタBPFで所定周波数以外の周波数成分が除去され、パイロットAMPで電力増幅されて送電側回路へ送波される。このパイロットAMPは位相とゲインの制御が可能な回路である。このゲイン制御によって、複数の素子アンテナに上述の分布ゲインをもたせる。このことにより、ガウシアンビーム状のビームパイロット信号が送電側へ送信される。なお、分配器からは大部分(例えば99%)の電力が分配されて直流電力に変換される。
送電側回路では、位相共役回路でパイロット信号の位相共役信号が生成され、電力増幅器で電力増幅されて受電側へ送波される。
図9に示す受電側回路、送電側回路および伝送路によって閉ループが構成される。
図10は、図9に示した各信号の、時間経過に伴う状態変化を示す図である。図10において、0μsで起動が開始される。この起動開始前に受電側回路のパイロットAMPに上述の分布ゲインをもたせる。一方、送電側回路の電力増幅器にはゲインの分布をもたせない。つまりフラットゲインとする。
起動開始(0μs)から起動パイロット信号を送信すると、受電側は33μs後から上記起動パイロット信号を基にしてビームパイロット信号の送信を開始する。更に33μs後(起動開始から66μs経過後)送電側回路は上記ビームパイロット信号を基にして電力波を送波する。
ビームパイロット信号および電力波の電力は、上記パイロット信号と電力波とのやり取り毎に、上記閉ループのループゲインずつ増大していく。パイロット信号の電力はパイロットAMPの出力が飽和するまで増大し、電力波の電力は電力増幅器の出力が飽和するまで増大する。
図10に示す例では、起動開始後、送電側回路から送波された電力波が受電側へ到達し始める時点(A点)以降に起動パイロット信号の送信を終了する。また、この時点以降にパイロットAMPはフラットゲインに切り替える。
次に、等価回路による発振動作について、図11、図12(A)(B)を参照して説明する。
図11は、電力伝送システムが、起動パイロット信号をトリガーにして発振を開始することをシミュレーションで確かめるための等価回路図である。図11において、伝送線路TL1,TL2はパイロット信号と電力波の伝送路に相当する。シミュレーションのため、この例では、伝送路の長さを、5.8GHzの10波長分、と短くしている。
図11において、ローカルオシレータLo1は11.6GHzの発振器、ミキサーMIX1はローカルオシレータLo1の出力信号と伝送線路TL1からの入力信号とを混合する。ローパスフィルタLPF1は、ミキサーMIX1の出力信号のうち5.8GHzより高い周波数成分を除去する。このローパスフィルタLPF1とローカルオシレータLo1およびミキサーMIX1によって位相共役回路が構成されている。
また、ローカルオシレータLo2は11.6GHzの発振器、ミキサーMIX2はローカルオシレータLo2出力信号と伝送線路TL2からの入力信号とを混合する。ローパスフィルタLPF2は、ミキサーMIX2の出力信号のうち5.8GHzより高い周波数成分を除去する。このローパスフィルタLPF2とローカルオシレータLo2およびミキサーMIX2によって位相共役回路が構成されている。ローパスフィルタLPF1,LPF2それぞれは、遮断周波数6.0GHzのチェビシェフ型フィルタであり、遮断周波数での挿入損失は-30dBである。
AMP1はループゲインを定める増幅器である。ローカルオシレータLo3は起動パイロット信号源に相当する。カプラCOUP1の第1ポートに伝送線路TL1が接続されていて、第2ポートに増幅器AMP1が接続されていて、第3ポートに終端抵抗が接続されていて、第4ポートにローカルオシレータLo3が接続されている。カプラCOUP1は増幅器AMP1からの出力信号に対して-30dBの起動パイロット信号を伝送線路TL1へ出力する。
図12(A)は、図11における電圧Vinの波形図であり、図12(B)は、図11における電圧Voutの波形図である。この例では、起動パイロット信号を起動時の極短時間(8ns)のみ発生するように構成していて、起動開始から約130ns経過した後、発振が開始することが分かる。
[発振条件]
ここで、発振条件と伝送路との関係について示す。
入力信号とその二逓倍波とを基にして位相共役関係の信号を生成する際、入力信号RF、ローカル信号LO、中間周波信号IFを添え字として付して表すと、
VIF = VRF cos(ωRF t + θn) VLO cos(2ωRF t)
= ( 1 / 2 ) { VRF VLO cos( -ωRF t - θn)} + cos(3ωRF t + θn)
の関係にある。上式において、 cos(3ωRF t + θn) の周波数成分はフィルタで除去されることにより、位相共役関係の信号が得られる。
上式において、θn は伝送路の伝搬時間によって変化する位相分である。
このように、送電側と受電側でそれぞれ位相共役回路を用いて、受信信号からパイロット信号を生成しているので、行きの伝搬と帰りの伝搬とで伝搬路の距離による位相変化分θnは相殺される。このため、伝搬路の距離による固有の発振周波数は持たない。
このように、送電側と受電側とで、受信信号に対する位相共役関係の信号をパイロット信号として送信するので、伝搬路の距離、つまり伝搬路の電磁波伝搬時間に関わらず、位相に関する発振条件は満たされる。したがって発振条件はループゲインが1に達することである。
ここで、単一の発振器として扱って、一つのループゲインで発振条件が定まる理由について示す。
図36は、送電アンテナと受電アンテナとによるSマトリクスの一次元モデルを示す図である。Si,j のiは受電側の素子アンテナの番号であり、jは送電側の素子アンテナの番号である。白丸はアレーアンテナの素子アンテナ、黒丸はアレーアンテナの範囲外に無限に広がる領域に仮想的に配置された素子アンテナである。
受電アンテナを入力端、送電アンテナを出力端としたときのSマトリクスをSj,i で表す。各端子は負荷と完全に整合しているものと仮定する。送電側で受けた第N波のパイロット信号は、次式のように、ゲインGj Tx で増幅され、基準信号で位相共役操作を受ける。
そして、送電アンテナから再放射された電力を受電アンテナが受け取り、位相共役をとり、更に、増幅することにより、次式で示す第N+1波のパイロット信号となる。
ここで、もしGj Tx が一定値Gconst Tx とすると、第N波のパイロット信号の振幅の平均値と第N+1波のパイロット信号の振幅の平均値は次式で表される。ここでδm,i はクロネッカーのデルタ(単位行列)である。
送電側と受電側の増幅器で電磁界強度が維持されるなら、発振が持続することになる。したがって、発振条件は次式で表される。
このように、送電局、受電局のアレーアンテナと、その間の伝送路とで、構成される空間結合型の発振器を単一の発振器として扱って、一つのループゲインで発振条件が定まるものと見なせる。
送電局のアレーアンテナと受電局のアレーアンテナが有限である場合に、この有限のアンテナからの放射波を、無限大のアンテナからの時間反転界の放射と仮想アンテナ領域からの逆相時間反転界とを組み合わせることで表現することができる。これは次式の関係で表される。
上式のうち結論の式中の第2項は仮想アンテナ領域からの逆相戻り波成分であり、スピルオーバー損失に対応する。ビーム形成が速く、スピルオーバー損失が0と見なせる場合は、上記第2項は0であるので、[数5]は上記[数3]と同じ扱いができる。
アンテナが小さく、最適状態でもスピルオーバー損失が発生する場合は、まず上記第2項でパイロット信号の分布が最適化される。このことで、漏洩損失があっても、増幅器の増幅率の設定によって発振条件を満たすことができる。
このようにして、仮想アンテナ領域からの戻り波成分を消すように自己収束作用がはたらく。
[素子アンテナの構成]
次に、素子アンテナの構成について示す。受電側アレーアンテナの各素子アンテナも、送電側アレーアンテナの各素子アンテナも、基本的な構造は同じである。
図13(A)は、一つの素子アンテナの斜視図であり、図13(B)はその内部を透視した斜視図である。素子アンテナ11,21は、導体平面GPから突出する誘電体DHと、この誘電体DH内に設けられた2対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)(Py1,Py2)とを備える。
誘電体DHは、全体の概形は半球状であり、導体平面GPの平面視では十字型である。つまり、図13(A)に表れているように、半球状の誘電体の4箇所に切り欠きCOが形成されたような形状、または半月切り形状の2つの誘電体片が十字型に組み合わされたような形状である。図13(B)に示すように、誘電体DHの中心(導体平面GPに接する誘電体DHの面の中心)を直交x,y,z座標の原点とすると、上記2つの誘電体片の一方はx−z面に拡がり、他方はy−z面に拡がる。
第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)は、それらのループ面がx−z面内にあり、第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)は、それらのループ面がy−z面内にある。
図14は上記素子アンテナの各部の寸法を示す図である。この例では、誘電体DHの比誘電率εrは12.6であり、誘電体DHの直径dは16mm、磁気結合プローブPx1,Px2の半径rは1.75mm、磁気結合プローブPx1,Px2の半円状ループの中心高さhは1.35mm、中心から磁気結合プローブの給電点までのピッチPは6mmである。磁界結合プローブの高さhを調整することにより、入出力ポートとアンテナとの整合を調整することができる。磁気結合プローブPy1,Py2についても、各部の寸法は磁気結合プローブPx1,Px2と同様である。なお、素子アンテナ毎の導体平面GPは直径30mmの金属円板であり、例えば直径50mの金属板に所定間隔で二次元上に配列される。
図15(A)は第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)に接続される給電部の構成を示す図であり、図15(B)は第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)に接続される給電部の構成を示す図である。第1対の磁気結合プローブ(Px1,Px2)にはそれぞれ中心に近い端部が導体平面(グランド)に接続され、中心から離れた端部から給電される。磁気結合プローブPx1,Px2には、180°ハイブリッド回路から位相が180°異なる信号が給電されることにより、磁気結合プローブPx1,Px2は差動給電(平衡給電)され、矢印方向の電流が流れる。このことは第2対の磁気結合プローブ(Py1,Py2)についても同様である。
図16(A)は、図15(A)に示した電流が流れるときに生じる磁束を示す図である。また、図16(B)は、図15(A)に示した電流が流れるときに生じる磁界強度の分布を示す図である。このように、磁気結合プローブPx1,Px2を差動給電することによって、誘電体DHが磁気結合プローブPx1,Px2で励振されて、誘電体DHは(磁気ダイポールと等価な放射電磁界を持つ)TE11 Xモードの誘電体共振器として作用する。このTE11 Xモードの誘電体共振器がX偏波用の素子アンテナである。同様に、磁気結合プローブPy1,Py2を差動給電することによって、誘電体DHが磁気結合プローブ(Py1,Py2)で励振されて、誘電体DHは(磁気ダイポールと等価な放射電磁界を持つ)TE11 Yモードの誘電体共振器として作用する。このTE11 Yモードの誘電体共振器がY偏波用の素子アンテナである。TE11 XモードとTE11 Yモードとは互いに独立しているので、各素子アンテナはTE11 二重モード誘電体共振器として作用する。この例では、共振器の放射Q係数(Qrad)は約20である。このTE11 二重モード誘電体共振器は、本発明に係る「直交二重モード誘電体共振器アンテナ」の一例である。
図17(A)はX偏波ポートに給電した場合の放射パターンであり、図17(B)はY偏波ポートに給電した場合の放射パターンである。いずれも遠方界における放射パターンである。X偏波ポートはY軸に磁気ダイポールモーメントを持つTE11 X モードに結合し、Y偏波ポートはX軸に磁気ダイポールモーメントを持つTE11 Y モードに結合することがわかる。正面方向の指向性利得はどちらも5.58dBiであった。
図1Aに示したとおり、受電側アレーアンテナ111に入出力されるマイクロ波はマイクロ波ミラー110で反射され、送電側アレーアンテナ221に入出力されるマイクロ波はマイクロ波ミラー210で反射される。例えば、上記X偏波は例えば水平偏波、Y偏波は垂直偏波にそれぞれ対応する。
本実施形態によれば、十字型の半球誘電体共振器を用いることにより、誘電体の誘電率の不均一性によるモード間の結合を低減することができる。ここで、入出力ポートを4ポートとし、ポート間結合はないものとして、Mixed-mode S パラメータの変換式を用いて差動モードの特性を評価した結果を示す。ポートXをポート1およびポート2の差動モード、ポートYをポート3およびポート4の差動モードと定義すると、透過係数Syx は次の式で与えられる。
Syx = ( S31- S32 - S41 + S42 ) / 2
図18(A)は、各ポートにおける反射電力および透過電力の周波数特性をそれぞれシミュレーションにより求めた結果を示す図である。図18(B)は、各ポートにおける反射電力および透過電力の周波数特性をそれぞれ実測により求めた結果を示す図である。Sxx, Sxy, Syy は上式に示したSyx と同様に、4ポートのSパラメータを変換することにより求めた。5.8GHzにおけるSxx はシミュレーションで−33.2dB、実測では−16dBであり、Syy はシミュレーションで−32.6dB、実測では−20dBであり、良好な反射損失特性、良好な放射特性が得られた。また、5.8GHzにおけるSyx ,Sxyはシミュレーションで−85.91dB、実測では−62dBであり、モード間結合は極めて小さく、システムの実現に十分なアイソレーション特性が得られた。
[TE11 二重モード誘電体共振器]
次に、2つの共振モードのモード間結合の低減について示す。図19(A)は、本実施形態のTE11 二重モード誘電体共振器の結合モードの一つを磁束の向きで表す図である。図19(B)はTE11 二重モード誘電体共振器の等価回路図である。図20(A)は比較例としての半球状のTE11 二重モード誘電体共振器の結合モードの一つを磁束の向きで表す図であり、図20(B)はこのTE11 二重モード誘電体共振器の等価回路図である。
図20(A)(B)において、TE11二重モード誘電体共振器はTE11 X モード誘電体共振器とTE11 Yモード誘電体共振器だけでなく、図20(A)に示すθiが異なる幾つものTE11 モード誘電体共振器が存在し、TE11 Xモード誘電体共振器とTE11 Y モード誘電体共振器は、その間の無数のTE11 モード誘電体共振器を介して順次結合する。図20(B)において、TE11 Xモード誘電体共振器およびTE11 Yモード誘電体共振器の共振周波数はいずれもω0で等しいだけでなく、その間の上記無数のTE11モード誘電体共振器の共振周波数もω0である。そのため、半球誘電体共振器は無数の縮退した一次従属なモードが結合したものであり、完全対称であれば、モードの逆結合により直交性が維持される。
しかし、完全な対称性を保つことは製作的に困難である。本実施形態のTE11 二重モード誘電体共振器も、図19(A)に示すθiが異なる幾つものTE11モード誘電体共振器が存在するが、図19(A)に示すように、上記4箇所の切り欠きが形成されているため、TE11 X モード誘電体共振器とTE11 Yモード誘電体共振器との間の無数のTE11 モード誘電体共振器の共振周波数は次第に異なったものとなる。磁束が45°方向を向く共振器の共振周波数ωnは最も高い。したがって、隣り合う共振器同士は結合するものの、エネルギーは伝搬されない。
このようなTE11二重モード誘電体共振器を用いることによって、図18(A)、図18(B)に示したように、直交する2つの偏波間が−60dB以下である高いアイソレーションが確保できる。
[別の素子アンテナの構成]
次に、素子アンテナの別の構成について示す。図21(A)は、一つの素子アンテナの誘電体内に設けられる磁気プローブの斜視図であり、図21(B)は一つの素子アンテナの平面図である。この素子アンテナは、導体平面GPから突出する誘電体DHと、この誘電体DH内に設けられた2つの磁気結合プローブPx,Pyとを備える。
誘電体DHの形状は図13(A)(B)に示したものと同じである。磁気結合プローブPxは、そのループ面がx−z面内にあり、磁気結合プローブPyは、そのループ面がy−z面内にある。
磁気結合プローブPx,Pyそれぞれの中点は導体平面(グランド導体)GPに接続されている。磁気結合プローブPx、Pyそれぞれは両端から差動給電(平衡給電)される。
このようにクロスループ構造であっても、図16(A)(B)に示したと同様の磁束が生じ、磁気結合プローブPxはY軸に磁気ダイポールモーメントを持つTE11 X モードに結合し、磁気結合プローブPyはX軸に磁気ダイポールモーメントを持つTE11 Y モードに結合する。
以上に示した、直交二重モード誘電体共振器アンテナを用いることにより、パイロット信号と電力波とは充分に高い偏波アイソレーションが得られ、同一周波数を用いながらも、パイロット信号と電力波との干渉の無いシステムが構成できる。
[円偏波の利用]
次に、各素子アンテナが円偏波でパイロット信号の送受信および電力波の送受電を行う例を示す。
図22は、図15(A)(B)に示した2つの180°ハイブリッド回路のX偏波ポートとY偏波ポートに接続される回路を示す図である。図22に示す90°ハイブリッド回路のInput-portは右旋円偏波の入出力ポートであり、90°ハイブリッド回路のIsolated-portは左旋円偏波の入出力ポートである。90°ハイブリッド回路の0°-portと90°-portとの位相差は90°であるので、図15(A)(B)に示した2対の磁気結合プローブには90°位相差で給電される。この構成により、右旋円偏波でパイロット信号の送信または電力波の送電がなされ、左旋円偏波のパイロット信号の受信または電力波の受電がなされる。
このようにして、パイロット信号と電力波とで旋回方向を異ならせることによっても、受信信号と送信信号とは偏波が直交関係にあるので、同一周波数を用いながらも、パイロット信号と電力波とが干渉しない電力伝送システムが構成できる。
[アイソレーションの確保]
上述の直交二重モード誘電体共振器アンテナの-85.91dBという高いアイソレーションのシミュレーション値は、プローブの機械的直交精度に大きく依存する。図23は、X偏波ポートのプローブとY偏波ポートのプローブとが成す直交度に摂動δを与えた際のアイソレーションの変化を示す図である。アイソレーションを上述の目標値の-60dB以下に抑えるためには、δは±約0.1度以内に抑える必要があることがわかる。換言すれば、X偏波ポートのプローブとY偏波ポートのプローブとを±約0.1度の精度で直交させれば、-60dBのアイソレーションを確保できる。
また、上記−85.91dBという高いアイソレーションのシミュレーション値は、プローブに入力される差動信号の位相差の精度に大きく依存する。X偏波ポートおよびY偏波ポートに入力される差動信号の、逆相から位相φだけ摂動した場合の透過特性は、ポート2およびポート4の参照面を移動させることにより、以下の式で評価可能であると考えられる。
Syx′= ( S31 −S32 e − S41 e + S42 ej)/2
図24は、上記摂動φがアイソレーションに与える影響を示す図である。アイソレーションを上述の目標値の-60dB以下に抑えるためには、φは±約10度以内に抑える必要があることがわかる。換言すれば、X偏波ポートおよびポートY偏波ポートに入力される差動信号が±約10度以内の精度であれば、-60dBのアイソレーションを確保できる。
[素子アンテナ間の結合]
複数の素子アンテナをアレー化した場合に、隣接する素子間の相互結合に注意する必要がある。図25は、隣接する2つの素子アンテナの関係を示す図である。ここでは、素子アンテナAと素子アンテナBとの距離を一定にして、2つの素子アンテナ間の角度(x軸に対して成す角度)θを0度から360度まで変化させ、素子アンテナAのポートXから素子アンテナBのポートYに回り込む電力をSパラメータにより評価した。各素子アンテナの寸法は既に示したとおりである。導体平面GP(図13(A)(B)、図14参照)としては無限大グラウンドを仮定した。アンテナ素子間距離は36.2mm(5.8GHzにおける0.7波長)である。
図26(A)は、上記素子アンテナ間の角度θに対するSパラメータの絶対値の変化を示す図であり、図26(B)は、角度θに対するSパラメータの位相角の変化を示す図である。図26(A)より、0度、90度、180度、270度におけるアイソレーションは−60dBを下回ることがわかる。しかし、それ以外の角度においては結合が大きくなり、45度方向において最大−33.2dBとなる。一方、これらの位置関係での結合は、図26(B)に示すように、各象限で逆相の結合となる。
図27は、各象限と結合の極性との関係を示す図である。図27において、中央の素子アンテナは図25に示した素子アンテナAであり、その他の素子アンテナは素子アンテナBの位置を表している。この図27に示すように、素子アンテナを平面上に正方配列した場合、或る素子アンテナ(素子アンテナA)と、それを取り囲む周辺の素子アンテナ(素子アンテナB)との結合は、素子アンテナAを中心にして対向する象限にある素子アンテナBとの結合が互い逆極性の関係となる。したがって、素子アンテナAを取り囲む周辺の素子アンテナBから素子アンテナAに回り込む電力は相殺される。このため、パイロット信号と送電波との全体としての相互結合は小さなものとなり、素子アンテナ単体で十分に高いアイソレーションレベルが得られれば十分であることがわかる。
図28(A)、図28(B)、図28(C)は、小規模のモデルとしてのアレーアンテナの構造を示す図である。図28(A)はアレーアンテナの平面図、図28(B)はアレーアンテナの正面図、図28(C)はアレーアンテナの下面図である。このアレーアンテナは送電側アレーアンテナまたは受電側アレーアンテナとして用いられる。
複数の素子アンテナ11(21)は導体平面GPに配列されている。この例では、合計177個の素子アンテナが0.7λ(36mm)ピッチで縦横に配列されている。
図28(B)に表れているように、基準信号グリッド基板GBと導体平面GPとの間に多数のRFユニットRFUが配置されている。これらRFユニットRFUは素子アンテナ11(21)毎に設けられている。基準信号グリッド基板GBには配線パターンLPが形成されていて、この配線パターンLPを介して各RFユニットRFUに等振幅等位相の基準信号を供給する。
図29は上記基準信号グリッド基板GBに形成された等振幅等位相グリッド回路の回路図である。図29中の丸印で表すノードは上記RFユニットRFUの接続位置を示している。或るRFユニットRFUの接続位置とそれに隣接するRFユニットRFUの接続位置との間の電気長は2πの整数倍である。
図29において、互いに隣接するRFユニットRFUの接続位置の間に3dBまたは6dBの増幅器が設けられている。送電側アレーアンテナまたは受電側アレーアンテナの複数の素子アンテナ11(21)のうち、中心CPに配置された素子アンテナは基準信号の発生源として用いられる。つまり、この素子アンテナで受信された信号が基準信号源として用いられる。図29に示すように、4分配された信号は6dB増幅器で増幅され、2分配された信号は3dB増幅器で増幅される。
上記構成により、各ノードにおいて等振幅等位相の基準信号がRFユニットRFUに供給される。
図30は、上記素子アンテナおよび上記RFユニットRFUを用いた電力伝送システムのブロック図である。図30においては、TE11 Xモード共振器とTE11 Yモード共振器とを分離して表している。各共振器には図15(A)(B)に示した180°ハイブリッド回路等によるBalunを介して接続されている。
受電側において、二逓倍器19は、受電側アレーアンテナの中心に配置された共振器のうち、TE11 Xモード共振器からの信号を二逓倍し、受電側の基準信号グリッド基板GBへ供給する。図28(A)(B)(C)、図29に示したとおり、受電側の基準信号グリッド基板GBから各受信側RFユニットへ等振幅等位相の基準信号が供給される。
受電側RFユニットにおいて、分配器12は受信信号を電力分配する。ミキサー15は、この分配器12からの信号と上記基準信号とを混合する。ローパスフィルタ16は、ミキサー15の出力信号のうち3倍波の周波数成分を除去する。これにより、分配器12からの出力信号に対して位相共役関係の信号がローパスフィルタ16から出力される。このように、受電側の二逓倍器19と、ミキサー15と、ローパスフィルタ16とで受電側RFユニットの位相共役回路が構成されている。上記位相共役関係の信号は電力増幅器17で増幅される。これら電力増幅器17はバスラインを介してゲインコントロールユニットからゲイン制御信号を受ける。各電力増幅器17はゲイン制御信号に応じたゲインで増幅する。
送電側には、送電側アレーアンテナの中心に配置された共振器のうちTE11 Xモード共振器に対して起動パイロット信号を供給する起動パイロット信号源が設けられている。
また、送電側において、二逓倍器29は、送電側アレーアンテナの中心に配置された共振器のうち、TE11 Yモード共振器からの信号を二逓倍し、送電側の基準信号グリッド基板GBへ供給する。図28(A)(B)(C)、図29に示したとおり、送電側の基準信号グリッド基板GBから各送電側RFユニットへ等振幅等位相の基準信号が供給される。
送電側RFユニットにおいて、ミキサー25は、TE11 Yモード共振器からの信号と基準信号とを混合する。ローパスフィルタ26は、ミキサー25の出力信号のうち3倍波の周波数成分を除去する。これにより、TE11 Xモード共振器の受信信号に対して位相共役関係の信号がローパスフィルタ26から出力される。このように、送電側の二逓倍器29と、ミキサー25と、ローパスフィルタ26とで送電側RFユニットの位相共役回路が構成されている。上記位相共役関係の信号は電力増幅器27で増幅される。
受電側の各TE11 X モード共振器で受けた受信信号は個別にミキサー15に入力されるにも拘わらず、これらの受信信号は、送電側から送信された起動パイロット信号の受信信号であるので、送電側(点光源)と受電側の各TE11 Xモード共振器とで、従来のフェーズドアレーアンテナにおける分配器の役割を果たしていると見なせる。
送電側に要する上記起動パイロット信号源は、他の素子や回路から独立していので、送電側の構成が複雑化することはない。
なお、隣接する複数の素子アンテナ毎、例えば4個や7個の素子アンテナ毎に、サブアレーを構成し、複数のサブアレーを配置することでアレーアンテナを構成してもよい。そして、サブアレー単位で上記RFユニットRFUを設けてもよい。つまり、サブアレー毎に位相共役信号を生成し、サブアレー毎に位相共役信号で駆動されるようにしてもよい。
[信号伝送システム]
以上に示した例では、電力伝送システムに適用した場合の構成について示した。本発明は電力伝送システムに限らず、通信信号の伝送システムにも適用できる。次にその例を示す。
図31は信号伝送システムの各素子アンテナ回路の構成を示すブロック図である。この信号伝送システムは、複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有する第1局と、複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有する第2局と、を備える。第1局のアレーアンテナは複数の素子アンテナ51を備える。各素子アンテナ51は垂直偏波用の素子51Vと水平偏波用の素子51Hとで構成され、各素子アンテナ61は垂直偏波用の素子61Vと水平偏波用の素子61Hとで構成される。各素子アンテナ51,61の構成は、既に示した素子アンテナ11,21と同様である。
第1局側素子アンテナ回路50は、第1局側の素子アンテナ51毎に設けられた回路であり、第2局側素子アンテナ回路60は、第2局側の素子アンテナ61毎に設けられた回路である。
第1局側素子アンテナ回路50は、分配器52、位相共役回路54、前置増幅器55、変調器56、電力増幅器57、および復調器58を備える。同様に、第2局側素子アンテナ回路60は、分配器62、位相共役回路64、前置増幅器65、変調器66、電力増幅器67、および復調器68を備える。
第1局側素子アンテナ回路50の分配器52は水平偏波素子51Hの受信信号を分配する。位相共役回路54は分配器52で分配された信号の位相共役関係にある信号を生成する。前置増幅器55は位相共役回路54の出力信号を増幅する。変調器56は前置増幅器55の出力信号を大容量送信信号で変調する。電力増幅器57は変調器56の出力信号を電力増幅し、垂直偏波素子51Vを駆動する。
第2局側素子アンテナ回路60の分配器62は垂直偏波素子61Vの受信信号を分配する。位相共役回路64は分配器62で分配された信号の位相共役関係にある信号を生成する。前置増幅器65は位相共役回路64の出力信号を増幅する。変調器66は前置増幅器65の出力信号を大容量送信信号で変調する。電力増幅器67は変調器66の出力信号を電力増幅し、水平偏波素子61Hを駆動する。
第2局側素子アンテナ回路の復調器68は、分配器62で分配された信号から大容量受信信号を復調する。同様に、第1局側素子アンテナ回路の復調器58は、分配器52で分配された信号から大容量受信信号を復調する。
伝送システム全体の構成および双方向レトロディレクティブの作用については、既に示したとおりである。
このように、電力伝送に限らず、双方向レトロディレクティブを行いつつ通信を行うことも可能である。
上記構成により、目標方向以外への不要放射波が抑圧されて通信システム相互の干渉障害が回避できる。
ここで、以上の実施形態で示した電力伝送システムまたは信号伝送システムに用いられるモジュールと従来技術による送受信モジュールとの違いについて示す。
図32(A)は、図30に示した受電側RFユニットと直交二重モード誘電体共振器アンテナとで構成されるアンテナRFモジュールの構成を示す図である。図32(B)は従来のアクティブ・フェーズドアレー・アンテナにおける送受信モジュールと分配・合成装置の構成例を示す図である。本実施形態によれば、多数のアンテナRFモジュールは全て同一仕様のモジュールとすることができる。また、基準信号グリッド基板GBは図28(A)(B)(C)、図29に示したとおり、単純な規則的パターンの回路や伝送線路で構成できる。そのため、素子アンテナの数を容易に増減できる。つまり、それぞれ一から再設計することなく、素子アンテナの数の異なるシステムを構成できる。
これに対し、従来のアクティブ・フェーズドアレー・アンテナでは、図32(B)に示すとおり、素子アンテナ毎に可変移相器およびその制御回路が必要である。また、大掛かりな信号の分配・合成装置も必要である。そのため、各送受信モジュールは同一構成にできるとしても、分配・合成装置や送受信モジュールの伝送線路には、空間的バランスが必要である。また、そのため、素子アンテナの数の異なるシステムを構成する場合、一から再設計する必要がある。
次に、図28(A)(B)(C)に示したアレーアンテナの各素子アンテナの配列とは異なるアレーアンテナの例を示す。
図33は送電側アレーアンテナ221の各素子アンテナの配列の例を示す平面図である。ここでは、各素子アンテナ21の位置を黒丸で表している。ここで、リング方向に配列された素子アンテナの数をN、中心から何周目のリングであるかの数をiで表すと、図33に示す例は(Ni+1 = Ni + 6)の関係のリング配列である。周方向と放射方向のそれぞれについてのアンテナ素子間距離を36.2mm(5.8GHzにおける0.7波長)とし、アレーアンテナの直径を単純に1mとすれば、リング数は14であり、素子アンテナの数は547個である。
このように、多重円形(リング)状配列することにより、次のような効果を奏する。
(1)リングごとに等しい振幅と位相で送受信されるので、回路をグループ化でき、設計パラメータが低減される。
(2)リングごとの測定・診断ができるので、回路調整が容易であり、高精度なビームが形成されやすい。
なお、このような多重円形状配列であっても、図27に示したような正方配列の場合と同様に、或る素子アンテナ(素子アンテナA)と、それを取り囲む周辺の素子アンテナ(素子アンテナB)との結合は、素子アンテナAを中心にして略対向する位置にある素子アンテナBとの結合が互い逆極性の関係となる。したがって、素子アンテナAを取り囲む周辺の素子アンテナBから素子アンテナAに回り込む電力は実質的に相殺される。
[分布ゲイン]
図10において、受電側に分布ゲインをもたせる期間では、図30に示した受電側の電力増幅器17のゲインを、素子アンテナ毎に設定する。このことで、受電側アレーアンテナから送信されるパイロット信号が送電側を向くビームパイロット信号として送信される。
図30に示した受電側の電力増幅器17は、制御信号によって利得が変わる可変利得の増幅器である。各電力増幅器17には各電力増幅器17に対して制御信号を供給するビーム制御回路が接続されている。
なお、図6等に示した例では、受電側アレーアンテナの中心を通る法線と、送電側アレーアンテナの中心を通る法線とが一致する例を示したが、必ずしも一致していなくてもよい。有効開口面積が極端に減少しない範囲で、受電側アレーアンテナの中心を通る法線と、送電側アレーアンテナの中心を通る法線とが平行関係であってもよい。
また、図6等に示した例では、受電側アレーアンテナの中心を通る法線と送電側アレーアンテナの中心を通る法線とが光学的に平行である例を示したが、有効開口面積が極端に減少しない範囲で、これら法線が非平行関係であってもよい。
また、本発明は宇宙太陽発電所(SolarPower Satellite/Station)にも適用できる。この場合、静止軌道上の宇宙太陽発電衛星に送電局を構成し、地上に受電局を構成する。既に述べたとおり、送電局に要する回路は単純化されるので、無人である静止軌道衛星の故障率を下げられ、電力伝送システム全体のメンテナンスコストが大幅に削減できる。仮に、送電局の相対位置やビームの方向が相対的に変動しても、ビームを最適状態に収束させることができ、送電局の位置やビーム方向の変動による問題は殆ど生じない。
図30等に示した例では、基準信号を二逓倍する二逓倍器と、二逓倍された信号と入力信号とを混合するミキサーと、ミキサーの出力信号のうち3倍波の成分を除去するローパスフィルタとで位相共役回路を構成する例を示したが、時間反転界を得るための回路はこれ以外の構成を採ることもできる。また、上記ローパスフィルタは所定の周波数帯のみを通過させるバンドパスフィルタであってもよい。
また、図30に示した例では、送電側アレーアンテナの中心に配置された素子アンテナを駆動することによって起動パイロット信号を送信するように構成したが、起動パイロット信号を送信する素子アンテナは単一である必要性は無く、ある程度の面積に分布する複数の素子アンテナから同位相で送信してもよい。
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
CO…切り欠き
CP…中心
DH…誘電体
GB…基準信号グリッド基板
GP…導体平面
Lo1,Lo2,Lo3…ローカルオシレータ
LP…配線パターン
LPF1,LPF2…ローパスフィルタ
MIX1,MIX2…ミキサー
Px,Py…磁気結合プローブ
Px1,Px2…磁気結合プローブ
Py1,Py2…磁気結合プローブ
RFU…RFユニット
SW1…スイッチ
TL1,TL2…伝送線路
1…電力伝送システム
10…受電側素子アンテナ回路
11,21…素子アンテナ
11H…水平偏波用素子
11V…垂直偏波用素子
12…分配器
13…整流器
14,24…位相共役回路
15,25…ミキサー
16,26…ローパスフィルタ
17,27…電力増幅器
19,29…二逓倍器
20…送電側素子アンテナ回路
21…素子アンテナ
21H…水平偏波用素子
21V…垂直偏波用素子
50…第1局側素子アンテナ回路
51,61…素子アンテナ
51H…水平偏波用素子
51V…垂直偏波用素子
52,62…分配器
54,64…位相共役回路
55,65…前置増幅器
56,66…変調器
57,67…電力増幅器
58,68…復調器
60…第2局側素子アンテナ回路
61H…水平偏波用素子
61V…垂直偏波用素子
100…受電局(第1局)
110,210…マイクロ波ミラー
111…受電側アレーアンテナ
111C…アレーアンテナ
111i…受電側アレーアンテナ
111P…アレーアンテナ
200…送電局(第2局)
210…マイクロ波ミラー
221…送電側アレーアンテナ
221C…パイロット信号受信用アレーアンテナ
221P…アレーアンテナ
300…浮体式洋上風力発電施設
410…管理棟
420…変電施設

Claims (7)

  1. 複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有する第1局と、複数の素子アンテナが配列されたアレーアンテナを有する第2局と、を備え、
    前記第1局は、前記第2局から送信された電波を受信することによる、前記第1局の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記第1局の素子アンテナを駆動することで、前記第2局から送信された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送信信号を前記第2局へ送信する、第1局素子アンテナ回路を備え、
    前記第2局は、前記第1局から送信された電波を受信することによる、前記第2局の素子アンテナの受信信号から、当該受信信号の位相共役の関係にある位相共役信号を生成し、当該位相共役信号で前記第2局の素子アンテナを駆動することで、前記第1局から送信された電波をパイロット信号とするレトロディレクティブ動作で送信信号を前記第1局へ送信する、第2局素子アンテナ回路を備え、
    前記第1局でのレトロディレクティブ動作と前記第2局でのレトロディレクティブ動作とが繰り返されることで、前記第1局から送信される電波および前記第2局から送信される電波のいずれも、漏洩エネルギーを常に最少状態に保つビームである自己収束ビームで送信されることを特徴とする伝送システム。
  2. 前記第2局は、前記第2局のアレーアンテナから起動パイロット信号を送信する起動パイロット信号送信手段を備え、
    前記第1局は、前記起動パイロット信号の受信による、前記第1局の素子アンテナの受信信号から基準信号を生成する基準信号生成手段を備え、
    更に、前記第1局は、前記基準信号と前記第1局の素子アンテナの受信信号とに基づいて、位相共役関係の信号で前記第1局の素子アンテナを駆動することによってパイロット信号を送信するパイロット信号制御手段を備える、請求項1に記載の伝送システム。
  3. 前記第1局は、前記第1局の前記複数の素子アンテナからの送信信号の振幅制御により分布ゲインをもたせることで、前記パイロット信号のビームを形成するビームパイロット信号形成手段を更に備える、請求項2に記載の伝送システム。
  4. 前記ビームパイロット信号形成手段は、前記第2局から送信された電波を受信し始めた以降に、前記第1局の前記複数の素子アンテナの、前記受信信号の振幅をフラットにする、請求項3に記載の伝送システム。
  5. 前記第1局のアレーアンテナは、前記第1局素子アンテナ回路により、第1偏波で受信して前記第1偏波とは直交関係にある第2偏波で送信し、
    前記第2局のアレーアンテナは、前記第2局素子アンテナ回路により、前記第2偏波で受信して前記第1偏波で送信する、
    請求項1から4のいずれかに記載の伝送システム。
  6. 前記第1局の前記複数の素子アンテナ、および前記第2局の前記複数の素子アンテナのそれぞれは、
    導体平面から半球状に突出し、且つ前記導体平面の平面視で十字型の誘電体と、当該誘電体内に設けられた、ループ面が第1面にある第1対の磁気結合プローブと、ループ面が前記第1面とは直交する第2面にある第2対の磁気結合プローブと、を備えた、直交二重モード誘電体共振器アンテナである、
    請求項5に記載の伝送システム。
  7. 前記第1局の前記複数の素子アンテナ、および前記第2局の前記複数の素子アンテナのそれぞれは、
    導体平面から半球状に突出し、且つ前記導体平面の平面視で十字型の誘電体と、当該誘電体内に設けられ、ループ面が前記導体平面に直交する第1面にある第1磁気結合プローブと、ループ面が前記導体平面に直交し、且つ前記第1面に直交する第2面にあり、前記第1磁気結合プローブと交差する第2磁気結合プローブと、を備えた、直交二重モード誘電体共振器アンテナである、
    請求項5に記載の伝送システム。
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