JP6501349B2 - 微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、微粒子状物質(英語表記がParticulate Matterであり、略語は PMである)(以下単に「PM2.5」と称する)によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤をスクリーニングする方法、および、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤に関する。具体的には、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制することにより、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪を予防又は抑制することに関する。
アレルギー性鼻炎は1型アレルギー疾患の代表として、患者数は先進国を中心に増加の一途にあり、本邦では、国民の約40%がアレルギー性鼻炎に罹患している。しかし、アレルギー性鼻炎の発症機序は未だ不明な点が多く根本的な治療法は確立していない。このようなアレルギー性鼻炎の発症機序の解明および治療剤の開発のために、ヒトの症状と病態を良く反影したアレルギー性鼻炎モデルマウスが、本発明者らにより作製されている(特許文献1)。
アレルギー性鼻炎の原因物質である花粉やダニ等のアレルゲンに加え、大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質、特に直径が2.5μm以下のPM2.5のアレルギー性鼻炎への影響が社会的に問題視されている(非特許文献1〜4)。PM2.5は、燃焼による煤塵などからなり、ディーゼル排気微粒子がPM2.5の大部分を占めることが知られている。本邦では近年、中国大陸から高濃度のPM2.5が飛来した時期と春のスギ花粉飛散時期が一致し、以前に比較してアレルギー性鼻炎患者数が急激に増加するとともに、症状の悪化を訴える患者が増加した。スギ花粉の飛散時期以降も継続して、偏西風によりPM2.5が日本全国に影響を与え続けた結果、喘息やアレルギー性鼻炎患者はその症状の悪化に悩まされている。
しかしながら、PM2.5がアレルギー性鼻炎を悪化させるメカニズムは不明であり、治療・予防方法は全く確立されていないのが現状である。そのため、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪のメカニズムを明らかにし、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪に対する治療・予防薬を開発することが急務である。
特開2013-70653号公開公報
Corbo GM, Forastiere F, Dell'Orco V, Pistelli R, Agabiti N, De Stefanis B, et al., Journal of Allergy and Clinical Immunology 1993;92:616-623. Brauer M, Hoek G, Van Vliet P, Meliefste K, Fischer PH, Wijga A, et al., American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2002;166:1092-1098. Annesi-Maesano I, Rouve S, Desqueyroux H, Jankovski R, Klossek JM, Thibaudon M, et al., Int Arch Allergy Immunol 2012;158:397-404. Kraemer U, Koch T, Ranft U, Ring J, Behrendt H., Epidemiology 2000;11:64-70.
本発明は、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤のスクリーニング方法を提供すること、および、新規なPM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪のメカニズムを解明するべく鋭意研究を行った結果、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪が鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊によるものであることを見出した。更に研究を進めた結果、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制し得る物質が、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤となり得ることに着目し、本発明を完成した。
即ち本発明は、以下よりなる。
1. 微粒子状物質(Particulate Matter, PM; PM2.5)による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制し得る被検物質を選択することにより、微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤をスクリーニングする方法。
2. 以下の工程1)〜3)を含む、アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物を用いた、前項1に記載のスクリーニング方法:
1)微粒子状物質を投与し、被検物質を投与していないアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物について、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程;
2)微粒子状物質および被検物質を投与したアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物について、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程;
3)工程1)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物と比較して、工程2)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物において鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊が抑制された場合に、当該被検物質を微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤として選択する工程。
3. 工程1)および工程2)において、微粒子状物質の投与の後、ならびに、微粒子状物質および被検物質の投与の後に、アレルゲンが投与される、前項2に記載のスクリーニング方法。
4. 工程1)および工程2)において、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度が、アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物のくしゃみ回数により測定される、前項3に記載のスクリーニング方法。
5. 工程2)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物が、微粒子状物質と被検物質とが同時に投与されたか、または、被検物質が微粒子状物質よりも前に投与されたものである、前項2〜4のいずれか1に記載のスクリーニング方法。
6. アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物が、アレルゲンとアジュバントとを投与し、その後アレルゲンを投与することによりアレルゲン感作した非ヒト動物であり、アレルゲン感作した後にアレルゲンを投与することにより鼻炎症状を呈する非ヒト動物である、前項2〜5のいずれか1に記載のスクリーニング方法。
7. 以下の工程i)〜iii)を含む、培養鼻粘膜上皮細胞を用いた前項1に記載のスクリーニング方法:
i)微粒子状物質を接触させ、被検物質を接触させていない培養鼻粘膜上皮細胞について、タイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程;
ii)微粒子状物質および被検物質を接触させた培養鼻粘膜上皮細胞について、タイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程;
iii)工程i)の培養鼻粘膜上皮細胞と比較して、工程ii)の培養鼻粘膜上皮細胞において、タイトジャンクションの破壊が抑制された場合に、被検物質を微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤として選択する工程。
8. 工程i)および工程ii)において、培養鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度が、以下のいずれかの手段により測定される、前項7に記載のスクリーニング方法:
a)培養鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションを構成するタンパク質の免疫染色;
b)培養鼻粘膜上皮細胞の細胞膜電気抵抗の測定;
c)培養鼻粘膜上皮細胞の細胞膜透過性の測定。
9. 有効成分として、微粒子状物質による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制する作用を有する抗酸化剤を含む、微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤。
10. 投与対象が微粒子状物質に曝露される前または同時に、前記予防又は抑制剤が投与される、前項9に記載の微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤。
11. 前記抗酸化剤が、N-アセチルシステインである、前項9または10に記載の微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤。
本発明のスクリーニング方法によれば、近年増加しつつあるPM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪を有効に予防又は抑制し得る物質を選択することができる。また本発明のPM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の新規予防または抑制剤によれば、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクション破壊を抑制することにより、アレルゲンの体内への侵入を抑制することができ、アレルギー性鼻炎の増悪を予防又は抑制することができる。
アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いた実験系の模式図を示す。(参考例1) アレルギー性鼻炎モデルマウスにブタクサ花粉(RW)とPM2.5とを同時点鼻した場合のくしゃみ回数を測定した結果を示す。図2aは実験系の模式図を示し、図2bは測定結果を示す。(実施例1) アレルギー性鼻炎モデルマウスにブタクサ花粉(RW)とPM2.5とを同時点鼻した場合の頚部リンパ節におけるTh2反応と、鼻粘膜組織の好酸球数とを確認した結果を示す。図3aは実験系の模式図を示し、図3bはTh2反応の結果、図3cは好酸球数の結果を示す。(実施例1) アレルギー性鼻炎モデルマウスにPM2.5を予め点鼻して前処理した後に、ブタクサ花粉(RW)を点鼻した場合の、くしゃみ回数を測定した結果を示す。図4aは実験系の模式図を示し、図4bは測定結果を示す。(実施例2) 培養鼻粘膜上皮細胞株を用いた実験系の模式図を示す。(実施例3) 培養鼻粘膜上皮細胞株にPM2.5を添加して培養した後、ZO-1(タイトジャンクションを構成するタンパク質)について免疫染色した結果を示す写真図(図6a)、細胞膜の電気抵抗を測定した結果を示す図(図6b)、細胞膜の透過性を確認した結果を示す図(図6c)である。図6a中のスケールバーの大きさは、10μmである。(実施例3) アレルギー性鼻炎モデルマウスにPM2.5を点鼻した場合の、鼻粘膜上皮細胞のZO-1を免疫染色した結果(図7a左)と、細胞膜透過性を示す図である(図7a右)。PM2.5の代わりにブタクサ花粉(RW)を点鼻した場合の結果を示す(図7b)。図中のスケールバーの大きさは、10μmである。(実施例4) アレルギー性鼻炎モデルマウスにPM2.5を予め1回点鼻して前処理した後に、ブタクサ花粉(RW)を点鼻した場合の、くしゃみ回数を測定した結果(図8b)と、鼻粘膜組織のZO-1発現量を示す図(図8c)である。図8aには実験系の模式図を示す。(実施例5) アレルギー性鼻炎モデルマウスに、PM2.5とN-アセチルシステインを点鼻した後、ブタクサ花粉(RW)を点鼻した場合の、くしゃみ回数の測定(図9b)と、鼻粘膜上皮細胞のZO-1発現量を示す図である(図9c)。なお、図9aには実験系の模式図を示す。(実施例6)
PM2.5とは、大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質のうち、粒子の直径が約2.5μm以下の環境微粒因子である。PM2.5は一般的に、粒子径2.5μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子を意味する。PM2.5は、燃焼による煤塵などからなり、ディーゼル排気微粒子(Diesel Exhaust Particles)(以下単に「DEP」と称する)がPM2.5の大部分を占めると考えられている。DEPは、ディーゼル車の排気ガスに含まれる微粒子である。PM2.5の標準物質として、国立環境衛生研究所にて、ディーゼルエンジンを燃焼し、排気ガスから精製調節した直径0.4μmのDEPが知られている(Nakamura R, Inoue K, Fujitani Y, Kiyono M, Hirano S, Takano H. J Toxicol Sci. 2011;36:823-7.)。
アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis:AR)は、発作性反復性のくしゃみ、水性鼻汁、鼻閉といった症状を呈する鼻粘膜のI型アレルギーとして知られている。アレルギー性鼻炎のアレルゲンとしては、ブタクサ花粉やスギ花粉等の花粉、ダニ、カビなどが知られている。疫学的研究により、アレルギー性鼻炎の患者数が、PM2.5などによる大気汚染が観察される地域において増加していること、また症状が増悪していることが報告されている(非特許文献1〜3)。本発明のアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤は、PM2.5によるアレルギー性鼻炎の症状の増悪を予防又は抑制することのできるものである。
本発明により、PM2.5が鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションを破壊することが初めて見出された。鼻粘膜上皮細胞は大気汚染物質やアレルゲンに対する最初のバリアである。タイトジャンクション(tight junaction:TJ)は、上皮細胞の頂短部の表面に存在する膜貫通タンパク質により構成される、隣接した上皮細胞を強固に接着するバリア構造である。タイトジャンクションを構成するタンパク質として、zonula occludens-1(ZO-1)、クローディンや、オクルディンなどが知られている。PM2.5は、タイトジャンクションを構成するタンパク質を破壊することにより、鼻粘膜上皮細胞のバリア機能を損なわせると考えられる。本発明のアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤は、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制することにより、アレルギー性鼻炎の症状の増悪を予防又は抑制することのできるものである。
本発明は、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制し得る被検物質を選択することにより、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤をスクリーニングする方法を包含する。本発明のスクリーニング方法において、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制し得る被検物質とは、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定することにより選択することができる。被検物質が存在しない場合に比べて被検物質が存在する場合に、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度が減少している物質を、被検物質として選択することができる。本発明のスクリーニング方法は、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定できる手段であればいかなる手段も利用することができる。具体的には、アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物を用いた手段や、培養鼻粘膜上皮細胞を用いた手段が挙げられる。
本発明のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物を用いたスクリーニング方法は、以下の工程1)〜3)を含むものである。
1)PM2.5を投与し、被検物質を投与していないアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物について、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程。
2)PM2.5および被検物質を投与したアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物について、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程。
3)工程1)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物と比較して、工程2)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物において鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊が抑制された場合に、当該被検物質をPM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤として選択する工程。
アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物とは、ヒト以外のモデル動物をアレルゲンで感作したモデル動物を用いることができる。アレルゲンに感作したアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物は、アレルゲンを追加投与することによりアレルギー性鼻炎の症状を呈する。アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物は、少なくともアレルゲンで感作したモデル動物であればよいが、その後アレルゲンを追加投与した後のモデル動物を用いてもよい。本発明において使用するモデル動物は、アレルゲンによってアレルギー性鼻炎を発症しうるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル等の哺乳動物を用いることができる。またモデル動物は、特許文献1で示した通り、少なくとも鼻粘膜上皮細胞核内に、IL-33を含有することが好ましい。なお、鼻粘膜上皮細胞核内のIL-33は、抗体を用いた免疫染色法によって存在を確認することができる。モデル動物としては、マウスを用いることが好ましい。
モデル動物のアレルゲンによる感作は、モデル動物の生体内に、アレルゲン特異的Th2免疫応答(アレルゲン特異的Th2細胞およびアレルゲン特異的IgE抗体)を誘導することを意味する。アレルゲンとしては、ブタクサ花粉(ragweed;RW)、スギ花粉、ダニ、カビ等の種々のものが使用でき、市販のものでも天然のものでも用いることができる。ブタクサ花粉やスギ花粉により感作されたモデル動物は、花粉特異的アレルギー性鼻炎モデルマウスと称することもできる。モデル動物のアレルゲンによる感作は、特許文献1に記載の方法に準じて行うことができる。モデル動物のアレルゲンによる感作は、例えば、Th2免疫応答を誘導するアジュバントである水酸化アルミニウムとアレルゲンとをモデル動物に投与し、その後(例えば1週間後)に再度アレルゲンを投与する方法により行うことができる。アレルゲンと水酸化アルミニウムの投与およびその後の再度のアレルゲンの投与の経路は、アレルゲンの感作が可能なものであれば、皮下注射、腹腔内投与等のいずれであってもよい。
上記感作に用いるアレルゲンの投与量は、モデル動物の種類や、体重、年齢等にあわせて、適宜設定すればよい。例えば、上記モデル動物がマウスであり、アレルゲンがブタクサ花粉である場合、投与量は体重1kgあたり4mg〜8mgであることが好ましい。
アレルゲンを感作したアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物に、アレルゲンを追加投与することにより鼻炎症状を呈する。追加投与するアレルゲンの投与経路は、鼻炎症状のパラメーターがくしゃみ回数である場合は、は鼻腔内投与(以下単に「点鼻」ともいう)であることが好ましい。アレルゲンの鼻腔内への投与量および投与方法は、アレルゲンの種類、上記モデル動物の種類や、体重、年齢等にあわせて、適宜設定することができる。本発明のスクリーニング方法においては、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞への影響を確認するため、追加のアレルゲン投与量は、アレルゲン単独で投与した場合には鼻炎症状を呈さないような少量であってもよい。例えば、通常の追加投与量の1/10程度であってもよい。上記モデル動物がマウスであり、ブタクサ花粉を点鼻する場合、体重1kgあたり4mg〜8mgを2回〜6回投与することが好ましい。2回点鼻であっても、鼻炎症状は十分観察できると考えられる。また、アレルゲンの感作終了後、アレルゲンの追加投与までの時間は、5日〜16日であることが好ましい。
アレルゲンを感作したアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物へのPM2.5の投与は、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションに影響を与え得るものであればいかなるものであってもよいが、点鼻投与が好ましい。PM2.5の鼻腔内への投与量および投与方法は、PM2.5の種類、上記モデル動物の種類や、体重、年齢等にあわせて、適宜設定することができる。例えば、上記モデル動物がマウスであり、DEPを点鼻投与する場合、体重1kgあたり0.05mg〜10mgを1回〜7回投与することが好ましい。PM2.5の投与時期は、アレルゲンの感作終了後であれば特に限定されないが、アレルゲンの追加投与と同時または追加投与の前であることが好ましい。PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊は、PM2.5への曝露後、時間の経過とともに修復すると考えられる。PM2.5の投与後、アレルゲンの追加投与まで時間は、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊が修復しないものであればよい。例えば、上記モデル動物がマウスである場合は、1日〜5日であることが好ましい。
アレルゲンを感作したアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物への被検物質は、PM2.5と同じ投与経路であることが好ましく、点鼻投与が好ましい。被検物質の投与時期は、アレルゲンの感作終了後であり、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞に対する作用を抑制し得る時期であればよい。例えば、PM2.5の投与と同時または投与の前であることが好ましい。PM2.5の投与前に被検物質を投与することにより、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクション破壊の被検物質による予防効果を確認することができる。PM2.5投与前に被検物質を投与する場合の被検物質投与とPM2.5投与までの時間は、上記モデル動物がマウスである場合は、5分間〜1日間程度であればよい。
上記アレルギー性鼻炎モデル動物における、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度は、例えば、上記アレルゲンの追加投与の終了後10分間に上記モデル動物がしたくしゃみの回数を測定したり、鼻粘膜上皮細胞を含む組織を採取してタイトジャンクションを構成するタンパク質を免疫染色することにより、評価することができる。本発明において、上記モデル動物におけるくしゃみ回数と、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度が相関することが示されていることから、くしゃみ回数を測定して評価することが簡便であり、好ましい。また、被検物質を投与していない上記モデル動物と比較して、被検物質を投与した上記モデル動物において、くしゃみ回数が減少していた場合に、被検物質により鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊が抑制されたと評価することができる。
本発明の培養鼻粘膜上皮細胞を用いたスクリーニング方法は、以下の工程i)〜iii)を含む。
i)PM2.5を接触させ、被検物質を接触させていない培養鼻粘膜上皮細胞について、タイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程。
ii)PM2.5および被検物質を接触させた培養鼻粘膜上皮細胞について、タイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程。
iii)工程i)の培養鼻粘膜上皮細胞と比較して、工程ii)の培養鼻粘膜上皮細胞において、タイトジャンクションの破壊が抑制された場合に、被検物質をPM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤として選択する工程。
培養鼻粘膜上皮細胞とは、培養により維持または増殖が可能な鼻粘膜上皮細胞であり、タイトジャンクションを構成し得るものであればいかなるものであってもよいが、例えば細胞株RPMI2650等を用いることができる。鼻粘膜上皮細胞の培養は、常法に従って行えばよい。培養液に、PM2.5を添加して培養することにより、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションが破壊される。培養液へのPM2.5の添加量は、タイトジャンクションを破壊し得る程度であればよいが、例えば培養液への添加後の濃度で15〜75μg/mLであればよい。PM2.5を添加後の培養期間は、特に限定されないが、12〜48時間であればよい。被検物質の添加は、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制可能な時期であればよい。例えば、PM2.5の添加と同時または添加の前であることが好ましい。
培養鼻粘膜上皮細胞における、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度は、例えば、a)培養鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションを構成するタンパク質の免疫染色、b)培養鼻粘膜上皮細胞の細胞膜電気抵抗の測定、c)培養鼻粘膜上皮細胞の細胞膜透過性の測定により、評価することができる。これらの手段は、常法により行うことができる。具体的には後述する実施例にて用いた方法が例示される。a)のタイトジャンクションを構成するタンパク質の免疫染色においては、当該タンパク質に特異的に結合する抗体を用いればよい。標識化された2次抗体を用いてもよい。b)の細胞膜電気抵抗の測定は、いわゆる経上皮/内皮電気抵抗(TER)を測定すればよく、緊密な細胞層は高い電気抵抗値を示すことが知られている。c)細胞膜透過性の測定は、細胞膜を透過し得ない物質(例えばデキストラン)に標識物質(例えばFITC)を結合させたものを用いて、透過性を測定することができる。タイトジャンクションが破壊された上皮細胞においては、細胞膜を透過し得ない物質が透過性を示すことが知られている。b)およびc)の測定は、トランスウェルを用いて行うことができる。
本発明は、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の新規予防又は抑制剤にも及ぶ。本発明の予防又は抑制剤は、有効成分として、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制する作用を有する抗酸化剤を含む。抗酸化剤としては、N-acetylcysteine(N-アセチルシステイン)、4-Aminobenzoic acid hydrazide(C7H9N3O)(Myeloperoxidase Inhibitor-I)、Nordihydroguaiaretic Acid(NDGA, Larrea divaricata抽出物)、Mn(III) 5,10,15,20-tetrakis(N-methylpyridinium-2-yl)porphyrin(例えば、MnTM-2-PyP)、Mn(III)tetrakis(1-methyl-4-pyridyl)porphyrin Pentachloride(例えば、MnTMPyP)、Mn(III)tetrakis(4-benzoic acid)porphyrin Chloride(例えば、MnTBAP)、Manganese complex of 7-hydroxyflavone(例えば、Mn-cpx 3)、4-[4-(((1,1-Dimethylethyl)oxidoimino)methyl)phenoxy]butyl}triphenylphosphonium bromide(例えば、MitoPBN)、3-Methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one(例えば、MCI-186、Edaravone、PMP)、3-Amino-1,2,4-triazole、Apocynin、Caffeic Acid(3,4-Dihydroxycinnamic Acid)等が例示される。
本発明の予防又は抑制剤は、通常、それ自体公知の薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、その他の添加剤、具体的には水、植物油、エタノール又はベンジルアルコールのようなアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアゼテートゼラチン、ラクトース、デンプン等のような炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ワセリン等と混合して製剤化することができる。本発明の予防又は抑制剤は、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、注射剤、液剤、懸濁剤等の形態であり得る。また、本発明の予防又は抑制剤の投与経路は、経口又は非経口であり得るが、点鼻であることが好ましい。本発明の予防又は抑制剤は、乾燥粉末の形態、エアロゾルスプレー又は点鼻剤として、鼻腔内又は吸入によって投与されることが好ましい。
本発明の予防又は抑制剤は、ヒト用医薬としての使用は勿論、他の哺乳動物用医薬としても使用可能である。投与量は疾患の程度、投与する有効成分並びに投与経路、患者の年齢、性別、体重等により変わりうるが、点鼻投与の場合、通常、成人1回当たり、約1μg〜1000mg/kg、好ましくは約1mg〜100mg/kgを投与する。投与回数は1日1回でも、複数回でもよい。また、本発明の予防又は抑制剤は、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制のために単独で投与する以外に、各種アレルギー性鼻炎の予防、治療に有用な別の薬剤と併用することもできる。
なお、本発明の予防又は抑制剤は、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制のために、投与対象がPM2.5に曝露される前または同時に投与対象に投与することが好ましい。
本発明について理解を深めるために、以下に参考例および実施例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。参考例および実施例に記載の実験は、兵庫医科大学動物実験委員会の動物実験ガイドラインに沿って行った。
(参考例1)アレルギー性鼻炎モデル動物の作製
特許文献1(特開2013-070653号公報)を参考にして、アレルギー性鼻炎モデル動物を作製した(図1)。具体的には、6〜8週齢のBalb/cマウス(オリエンタル酵母工業株式会社)にブタクサ花粉(0.1mg/200μL/回)と水酸化アルミニウム(1mg/200μL/回)(RW+Alum)をday0に、ブタクサ花粉(0.1mg/200μL/回)のみ(RW)をday7に腹腔内投与して、ブタクサ花粉に感作したアレルギー性鼻炎モデルマウスを作製した。
以下の各実施例では種々の条件下で、アレルギー性鼻炎モデルマウスに、ブタクサ花粉およびPM2.5を点鼻投与し、最終点鼻後10分間のくしゃみ回数(早期相)と、24時間後の鼻粘膜の組織染色、血清IgE値、頸部リンパ節細胞からのTh2サイトカイン産生(遅発相)を検討した。また以下の各実施例おいては、各群3〜5匹のマウスを使用し、2〜3回繰り返して実験を行った。結果は、平均値±SEMで示しており、統計学的有意差はt検定(two tailed Student's t-test)により確認した。
(実施例1)アレルギー性鼻炎モデル動物におけるPM2.5の影響の確認
PM2.5として、国立環境衛生研究所にて、ディーゼルエンジンを燃焼し、排気ガスから精製調節した直径0.4μmのDEPを用いた。かかるDEPは、8-Lディーゼルエンジン(Jo8C, 日野自動車)をDEPの発生源として使用し、エンジンを一定の状態(速度:2,000 rpm、eエンジントルク:0 Nm、ディーゼル燃料:JIS No.2)で、5時間作動させて、回収したものである。DEPを0.05% Tween 80に懸濁して、実験に使用した。
参考例1にて花粉に感作した花粉特異的アレルギー性鼻炎モデルマウスに、ブタクサ花粉とPM2.5とを、day14〜day17の1〜4日間(1回/day)同時に点鼻した(RW+PM2.5)。またコントロールとして、ブタクサ花粉とPM2.5に代えて、Vehicle(0.05%Tween80をPBSに混合した溶液)を20μL/回、ブタクサ花粉単独(RW)、またはPM2.5単独(PM2.5)を点鼻した(図2a、図3a)。その後、鼻炎症状の早期相と遅発相のパラメーターを測定した。
なお、環境省の定めたPM2.5の環境基準(35μg/m3)、および、成人が1日の呼吸で体内へ取り込む空気量(14m3)を考慮し、マウスへのPM2.5点鼻量を10μg/20μL/回とした。またday14以後のマウスへのブタクサ花粉点鼻量は、鼻炎症状を発症できない通常の1/10量の0.1mg/20μL/回とした。
(1)鼻炎症状の早期相のパラメーターとして、PM2.5の鼻粘膜上皮細胞に対する影響を検討した。最終点鼻後10分間のくしゃみ回数を確認した。
その結果を図2bに示す。図2bの横軸には、最終点鼻の日を示す。ブタクサ花粉単独点鼻ではくしゃみ回数が経時的に増加しなかったのに対し、ブタクサ花粉とPM2.5を4日間同時点鼻すると、経時的にくしゃみ回数は著明に上昇した(図2b)。
(2)鼻炎症状の遅発相のパラメーターとして、最終点鼻から24時間後の鼻粘膜組織(好酸球数)、頸部リンパ節細胞からのTh2サイトカイン産生に対する影響を検討した。
鼻粘膜組織を、4% (w/v)ホルムアルデヒドに固定し、パラフィンに包埋した。パラフィン包埋切片(4μm厚)を、脱パラフィン化し、ヘマトキシリン・エオジン染色または過ヨウ素酸シッフ染色を行い、好酸球数を確認した。
マウスから採取した頸部リンパ節細胞(2×105 cells/well)と、野生型マウス由来の抗原提示細胞(T細胞を除いたBALB/c脾臓細胞)(1×105cells/well)とを、96穴プレートにて5日間共培養した。RPMI 1640(10% FBS、2-ME (50 μM)、L-グルタミン(2 mM)、ペニリシン(100 U/mL)、ストレプトマイシン(100 μg/mL)添加)を培地として使用し、IL-2およびブタクサ花粉抽出物を添加して培養した。IL-2による刺激後、培地上清中のIL-4、IL-5、IL-13量を、ELISA kit(R&D Systems)により測定した。
4日間連続してブタクサ花粉とPM2.5を同時点鼻した場合の結果を示す(図3b)。鼻粘膜好酸球数、頸部リンパ節細胞からのTh2サイトカイン産生は、ブタクサ花粉とPM2.5の同時点鼻の場合と、ブタクサ花粉単独点鼻の場合とで差が認められなかった。よってPM2.5は、Th2免疫応答には影響しないと考えられた。
(実施例2)アレルギー性鼻炎モデル動物におけるPM2.5の前処置による影響の確認
参考例1にて花粉に感作したアレルギー性鼻炎モデルマウスに、PM2.5をday9〜day12の4日間単独点鼻した後、ブタクサ花粉をday14〜day17の1〜4日間単独点鼻した以外は、実施例1と同様にしてマウスにブタクサ花粉とPM2.5を点鼻した(図4a)。コントロールとして、PM2.5に代えてVehicleを点鼻し、ブタクサ花粉に代えてPBSを点鼻した。またVehicleをday9〜day12の4日間単独点鼻した後、day14〜day17の1〜4日間PM2.5およびブタクサ花粉の同時点鼻を行った。鼻炎症状の早期相のパラメーターとして、最終点鼻後10分間のくしゃみ回数を確認した。
その結果を図4bに示す。図4bの横軸には、花粉を点鼻した日を示す。PM2.5を予め単独点鼻した場合では、PM2.5を点鼻しなかった場合に比較して、くしゃみ回数が上昇した(図4b)。
(実施例3)鼻粘膜上皮細胞のバリア機能に対するPM2.5のin vitroでの影響の確認
ヒト鼻粘膜上皮細胞株(RPMI2650)(American Type Culture Collectionから購入)を用いて、鼻粘膜上皮細胞のバリア機能に対するPM2.5の影響を、以下の手段により確認した(図5)。PM2.5は、実施例1と同様のものを用いた。
ヒト鼻粘膜上皮細胞株はイーグル最小必須培地(DS Pharmingen)に、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%非必須アミノ酸、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 μg/ml)、L-グルタミン(2 mmol/l)を添加した培地により培養した。細胞(5×104 cells/cm2)を、24ウェルプレートに設置したトランスウェル内の0.4μm孔フィルター(Millipore)上に播種した。培地は、2〜3日毎に交換した。播種後、12〜14日後に、細胞の単層が得られた。
ヒト鼻粘膜上皮細胞株にPM2.5を添加して24時間培養後、細胞間接着構造であるタイトジャンクション(tight junction)を構成するタンパク質であるzonula occludens-1(ZO-1)を、抗マウスZO-1ウサギIgG抗体とAlexa 488抗ウサギIgG(Invitrogen)を用いて免疫染色し、ZO-1の発現を確認した。まず、細胞を4%パラホルムアルデヒドにより10分間固定し、0.05%Triton X-100で15分間浸透処理を行った。2%スキムミルクで30分間ブロッキングを行った後、細胞を抗マウスZO-1抗体と反応させ、その後2次抗体により染色した。
また、トランスウェルのフィルター上で培養したヒト鼻粘膜上皮細胞株に、PM2.5(50μg/ml)を添加し、24時間後の経上皮電気抵抗(細胞膜の電気抵抗)と、FITC標識したデキストラン(2mg/ml)の上皮細胞透過性(細胞膜の透過性)を測定した。経上皮電気抵抗はMillicell ERS-2 epithelial voltohmmeter (Millipore)を用いて測定し、上皮細胞透過性は通過したFITC標識したデキストランをanalyzed by a multi-mode microplate reader (Infinite M200 Pro, TECAN)を用いて測定した。
ヒト鼻粘膜上皮細胞株に、PM2.5を添加すると濃度依存性にZO-1の発現が減少し、タイトジャンクションが破壊されることがわかった(図6a)。また、PM2.5を添加した場合は、添加しない場合と比較して、鼻粘膜上皮細胞の細胞膜の電気抵抗は著明に低下し、FITC標識したデキストランの鼻粘膜上皮細胞透過性は著明に亢進した(図6b、c)。
これらの結果から、PM2.5がタイトジャンクションを破壊し、鼻粘膜上皮細胞のバリア機能を損なわせることがわかった。
(実施例4)鼻粘膜上皮細胞のバリア機能に対するPM2.5のin vivoでの影響の確認
実施例2と同様にして、PM2.5を4日間アレルギー性鼻炎モデルマウスに点鼻した後、マウスの鼻粘膜を採取し、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションを構成するZO-1の発現を確認した。ZO-1の発現の確認は、実施例3と同様にして行った。
マウスから採取した鼻粘膜組織を、4% (w/v)ホルムアルデヒドに固定し、パラフィンに包埋した。パラフィン包埋切片(4μm厚)を脱パラフィン化し、クエン酸緩衝液により抗原を賦活化させた。 実施例3と同様にして、ブロッキング、抗体による染色をおこなった。切片を、Prolong Antifade Gold with 4',6-diamidino-2-phenylindole (DAPI)(Invitrogen)を用いて染色し、顕微鏡(Zeiss LSM 510, Carl Zeiss)を用いて観察および解析を行った。
結果を図7に示す。PM2.5を点鼻したマウスでは鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションが破壊された(図7a)。一方、コントロールとしてPM2.5の代わりに、ブタクサ花粉を4日間単独点鼻したアレルギー性鼻炎モデルマウスではタイトジャンクションに何ら影響を及ぼさなかった(図7b)。
(実施例5)PM2.5による鼻粘膜上皮細胞タイトジャンクション破壊と鼻炎症状の関係の検討
実施例2と同様にして、花粉感作したアレルギー性鼻炎モデルマウスにPM2.5をday8、day10、day12、day14のいずれか1回点鼻し、その後ブタクサ花粉をday16に点鼻した(図8a)。その後、鼻炎症状の早期相のパラメーターとして最終点鼻後10分間のくしゃみ回数を測定し、遅発相のパラメーターとして、実施例3と同様にして鼻粘膜上皮細胞のZO-1の発現を免疫染色により確認した。
花粉点鼻の2日前および4日前にPM2.5により前処置した場合(図8bの2d、4d)には、前処置のない場合と比較して、くしゃみ回数が増加したが、花粉点鼻の6日前および8日前にPM2.5により前処置した場合(図8bの6d、8d)には、くしゃみ回数に有意差は認められなかった。また、PM2.5点鼻から4日間経過後までは(図8cの2d、4d)、PM2.5点鼻のない場合と比較して、ZO-1の発現が低下したままであったが、PM2.5点鼻から8日間経過後にはZO-1の発現が完全に回復していた。PM2.5の1回単独点鼻によるタイトジャンクションの破壊は点鼻後経時的に修復し、点鼻8日後には元の状態となることがわかった。またPM2.5によるタイトジャンクションの破壊の程度と鼻炎症状の増悪とは相関しており、PM2.5による鼻炎症状の悪化は、鼻粘膜上皮細胞の破壊が原因であることが示唆された。
(実施例6)PM2.5による鼻粘膜上皮細胞タイトジャンクション破壊に対する抗酸化剤の抑制効果の確認
実施例2と同様にして、花粉感作したアレルギー性鼻炎モデルマウスに、PM2.5(10μg/20μL)と抗酸化剤であるN-アセチルシステイン(Sigma-Aldrich Japan)(10mmol)(NAC)を、day14に同時点鼻し、2日後のday18にブタクサ花粉を点鼻した(図9a)。その後、鼻炎症状の早期相のパラメーターとして最終点鼻後10分間のくしゃみ回数を測定し、遅発相のパラメーターとして、鼻粘膜上皮細胞のZO-1の発現を免疫染色により確認した。
PM2.5とNACを同時点鼻にて前処置すると、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションは破壊されず、花粉を点鼻してもくしゃみ回数は全く上昇しなかった(図9b,c)。
本発明のスクリーニング方法によれば、PM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防または抑制剤としての作用を有する物質を、簡便かつ効果的に選択することができる。また本発明のPM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の新規予防または抑制剤によれば、PM2.5による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクション破壊を抑制することにより、アレルゲンの鼻粘膜上皮細胞を経由した侵入を抑制することができ、鼻炎の増悪を予防又は抑制することができる。PM2.5の健康被害は、アレルギー性鼻炎の増悪のみならず、呼吸器疾患(喘息や慢性閉塞性肺炎疾患など)、皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など)、神経疾患や循環器疾患等多岐にわたる。本発明によりPM2.5によるアレルギー性鼻炎増悪の予防または抑制剤が、これらの疾患におけるPM2.5による増悪に対しても、効果が期待されることから、本発明は有用である。

Claims (4)

  1. 微粒子状物質による鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊を抑制し得る被検物質を選択することにより、微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤をスクリーニングする方法であって、
    以下の工程1)〜3)を含む、アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物を用いた、スクリーニング方法:
    1)微粒子状物質を投与し、その後アレルゲンが投与された、被検物質を投与していないアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物について、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程;
    2)微粒子状物質および被検物質を投与し、その後アレルゲンが投与された、アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物について、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度を測定する工程;
    3)工程1)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物と比較して、工程2)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物において鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊が抑制された場合に、当該被検物質を微粒子状物質によるアレルギー性鼻炎増悪の予防又は抑制剤として選択する工程。
  2. 工程1)および工程2)において、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションの破壊の程度が、アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物のくしゃみ回数により測定される、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 工程2)のアレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物が、微粒子状物質と被検物質とが同時に投与されたか、または、被検物質が微粒子状物質よりも前に投与されたものである、請求項1又は2に記載のスクリーニング方法。
  4. アレルギー性鼻炎非ヒトモデル動物が、アレルゲンとアジュバントとを投与し、その後アレルゲンを投与することによりアレルゲン感作した非ヒト動物であり、アレルゲン感作した後にアレルゲンを投与することにより鼻炎症状を呈する非ヒト動物である、請求項1〜3のいずれか1に記載のスクリーニング方法。
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