JP6498487B2 - 高温超伝導線材を用いた医療用多連発磁気刺激コイル - Google Patents

高温超伝導線材を用いた医療用多連発磁気刺激コイル Download PDF

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Description

本発明は、脳や末梢神経を連続磁気パルスで刺激する医療用多連発磁気刺激コイルに関する。
大脳皮質の神経や末梢神経を電気的に刺激する方法のひとつとしてパルス磁気刺激法がある。これは、神経の近くに置いたコイルにパルス電流を流し、その際に生じる磁気パルスにより神経内に誘導電流を誘起し、神経を刺激する方法である。パルス磁気刺激法は、直接神経に電圧を印加する電気刺激法と比較して、感電のようなビリビリする電気ショックや痛みが小さく、電極を貼り付ける、埋め込むなどの工程が不要となるメリットがある。
近年、パルス磁気刺激法が、片麻痺や脊髄損傷による四肢麻痺のリハビリテーションに有効であるとする研究報告がなされており、非特許文献1には、パルス磁気刺激による誘発筋運動によって中枢神経系が再構築されること、非特許文献2には、パルス磁気刺激が脳血管障害によって生じた片麻痺の治療に効果があることが報告されている。
パルス磁気刺激法は電極の使用に伴う不快感などの問題はないが、コイルに大きなパルス電流を流すので、パルス電流によるコイルの発熱の問題があり、連続的に使用した場合、熱傷のリスクを生じかねない温度まで短時間でコイル表面温度が上昇する。一方、パルス磁気刺激の効果は累積磁気パルス数とともに向上することが知られており、治療効果を上げるには多くの磁気パルスを対象部位に与えることが望ましい。しかしながら、コイルの発熱による温度上昇の制約から、使用可能な磁気パルス数が制限されてしまっている。そのため、冷却等の手段により昇温を抑制した磁気パルス発生コイルの開発が急務となっている。
磁気パルス発生コイルの冷却のために特許文献1では水冷によってコイル温度上昇を防止している。水冷式は装置が大がかりであり、手で持って使用できるようなコイルの小型化は困難である。また、高電圧を使用する磁気パルス発生コイルを水冷する場合は漏水や結露による絶縁不良の問題が懸念される。
一般的なパルス磁気刺激装置では、高電圧でコンデンサを充電し、サイリスタ等のスイッチング半導体を用いて充電した電荷を瞬間的に磁気刺激コイルに放電することにより大きな磁界を得る方式となっている。この方式によれば、再度パルス磁界を発生させるには、放電によって失われたエネルギーを再びコンデンサに蓄える必要がある。単位時間あたりのパルス発生数が多くなればなるほど、コイルでジュール熱として失われるエネルギーは増加し、パルスの発生に多くの電力が消費されることとなる。医療現場からの要請に応える形で、パルス磁気刺激装置のパルス発生頻度は、現在毎秒50回を超えており、商用電源では十分な電力が供給できない状態にあり、装置のサイズも大型化の一途をたどっている。
特開平9−276418
医歯薬出版(株)「磁気刺激法の基礎と応用」、真野著、中枢神経の再構築、P.127 医歯薬出版(株)「磁気刺激法の基礎と応用」、出江著、脳血管障害、P.198
多連発磁気刺激コイルは、強力な磁界を発生させるために大電流を流す必要があるが、この大電流によるジュール熱がコイルの温度上昇を引き起こし問題となっている。現在は導体断面積を拡大し発熱を抑制しているが、結果としてコイル重量が増大し治療者の負担を大きくしている。また、断面積の拡大だけでは発熱の抑制は十分であるとは言い難く、連続的に使用できる時間は数十秒程度である。加えて、この発生した熱を除熱するためのクールダウン時間が10分から20分程度必要となるため、連続的に使用することができず、対応できる患者数が限られてしまう問題がある。
また、磁気パルスの連発数の増大によりパルス磁場を発生するパルス電源自体も大電力化、大型化の一途をたどっており、特殊な電源環境を整えなければ使用できない状態になっている。
以上の問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、高温超伝導線材を用いて医療用多連発磁気刺激コイルを製作することにより、実質的ゼロ発熱および消費電力の大幅な低減を実現した。本発明の構成を以下に示す。
請求項1に記載の発明は、高温超伝導体の薄体とその外側を包む金属シースにより構成される高温超伝導線材を巻きまわしたコイルと、そのコイルの両端に設けられた金属製の電流端子と、内部に液体窒素を蓄えた非金属性のコイルケースより構成され、コイルはコイルケースの内面近傍に固定され、コイルおよび電流端子は液体窒素に浸され冷却されており、電流端子に接続された電流ケーブルよりパルス状の電流がコイルに供給されることによりパルス状磁界を発生することを特徴とする医療用多連発磁気刺激コイルである。
請求項1に記載の発明によれば、コイルが超伝導状態にあるため磁気パルスの発生時にコイルにほぼジュール熱が生じない。そのためコイル温度の上昇の問題がなく、連続的に磁気パルスを発生することができる。また、磁気パルス発生時にコイルでは、ほとんどエネルギーが消費されないため、大幅な省電力化をすることができる。
請求項2に記載の発明では、コイルは並行した複数の高温超伝導線材を重ね合わせた状態で巻きまわした構造となっていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、コイルのインダクタンスを小さくするとともに、コイルに流れる1ターンあたりの電流を大きくとることができるため、磁気刺激に有効なより急峻な磁界を発生することができる。
請求項3に記載の発明では、コイルケースは凹部構造または貫通構造をもち、該凹部構造または貫通構造がコイルケース内部にてコイル内径を貫いていることにより、コイル内径の内側に常温空間を確保することを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、コイル内部のより強い磁界の発生しているエリアに磁気刺激部位を近づけることが可能となる。
請求項4に記載の発明では、コイルケースは外側ケースと内側ケースよりなる二重構造となっており、内側ケースと外側ケースの間隙とつながる真空ポートを外側ケース表面に備え、真空ポートより真空引きすることにより内側ケースと外側ケースの間隙を真空状態とし、内側ケースと外側ケース間を断熱することを特徴としている。
請求項5に記載の発明では、上記内側ケースの外壁と上記外側ケースの内壁を、鏡面研磨することにより、内側ケースと外側ケースの輻射熱による熱交換を抑制したことを特徴としている。
請求項4,5に記載の発明によれば、液体窒素の入ったケース内面と大気に触れているケース外面との間の断熱性能を向上することができるため、液体窒素の揮発速度の抑制およびケース外面の温度低下の抑制を行うことができる。
請求項6に記載の発明は、上記医療用多連発磁気刺激コイルと、電荷が充電された充放電用コンデンサと、充放電用コンデンサからの放電電流を磁気刺激コイルに供給するスイッチング半導体素子とを環状に直列接続した放電回路を備えた医療用磁気パルス発生装置であって、スイッチング半導体素子を導通することで充放電用コンデンサの電荷がコイルに放電され、放電された電荷による電流がコイル内を通電することにより医療用多連発磁気刺激コイルより磁気パルスを発生し、その後放電した電荷が再びコンデンサに回生されることを特徴としている。
請求項6に記載の発明によれば、コイルが超伝導体であるため磁気パルス発生時のコイルの温度上昇に伴う問題がない。そのため連続的な磁気パルスの発生が可能である。また放電した電荷の大半が放電後に再び充放電用コンデンサに回生されるため、充放電用コンデンサに再度充電するために必要なエネルギーはわずかとなり、磁気パルス発生に伴う消費電力を大幅に低減可能である。
本発明によれば、磁気刺激コイルの線材として超伝導体を使用しているため、その原理上、発熱は実質的にゼロであり、単位断面積あたりに流すことができる電流量も大幅に増えるため、連続使用可能かつ軽量な磁気刺激コイルとすることができる。また、コイルに送られたエネルギーはジュール熱として消費されることなく、そのほとんどが充放電コンデンサに回生されるため大幅な省電力化および医療用磁気パルス発生装置全体の小型化も見込まれる。加えて、コイルの発熱が無く、従来コイルでは必須であったクールダウン時間を必要としないため、連続的な治療が可能となり、治療時間の大幅な短縮が見込まれる。
高温超伝導線材を用いた磁気刺激コイルの形態 ケースに凹部を設けた磁気刺激コイルの形態 ケースに貫通部を設けた磁気刺激コイルの形態 複数超伝導線材の並行積層コイル 医療用磁気パルス発生装置の電気回路 従来技術を用いた医療用磁気パルス発生装置内充放電コンデンサの充電電圧と、本発明を用いた医療用磁気パルス発生装置内充放電コンデンサの充電電圧 従来技術を用いた医療用磁気パルス発生装置の磁気パルス波形と、本発明を用いた医療用磁気パルス発生装置の磁気パルス波形
本発明の形態の一例を図1に示す。1は高温超伝導線材を巻きまわしたコイルである。高温超伝導線材は、高温超伝導体の薄体が金属性のシースで覆われた構造のものを使用する(なお、本願において高温超伝導体とは液体窒素温度77K以上の温度にて超伝導状態をとりうる材料と定義する)。コイル1はコイルケース(3,4)内に固定されている。コイルの固定位置は、その発生磁界がコイルケースの外側に届きやすい様、できるだけコイルケース内面に近づける必要がある。コイルの両端には金属製の電流端子6が溶接または圧接されており、この電流端子には、外部から電流を供給する電流ケーブル7が接続される。コイルと電流端子は、コイルケース内部に蓄えられた液体窒素5に浸されて液体窒素温度まで冷却される。コイル線材内の高温超伝導体は液体窒素温度まで冷却されることで超伝導状態となり、その直流抵抗はゼロとなっている。電流端子に接続された電流ケーブルよりパルス状の電流が超伝導状態のコイルに供給されることで、コイルよりパルス状磁界が発生する。このパルス状の磁界にて生体の刺激部位2を磁気刺激すると、刺激部位内に誘導電流が発生し誘発反応を生じる。
一般的な超伝導コイルではコイルケースはステンレス等の非磁性金属で製作されるが、その場合、コイルより急峻な磁界が発生するとコイルケース内に生じる渦電流の効果によりコイルケースが発熱し、加えて磁界が減衰してしまう。またコイルケースとコイル間に大きな反発力が発生し、コイルに衝撃力が加わってしまう問題がある。この問題をさけるため、コイルケースは導電性のない非金属性の材料で製作する必要がある。
また、一般的な超伝導コイルではニオブスズ、ニオブチタンなどの液体ヘリウム温度近くで超伝導状態となる超伝導線を使用するが、超伝導状態における温度が低く比熱がきわめて小さいため急峻な磁気パルス発生時に生じる交流損失により、容易に超伝導状態が破れやすい。また、絶対零度近くまで温度を冷却するためには、液体ヘリウムや冷凍機を用いる必要があるが、その場合、コイルの周辺に金属を使用しない冷却の機構とすることがきわめて難しい。そのため、急峻な磁気パルスの発生用途としては、液体窒素温度程度で超伝導状態を得ることが出来る高温超伝導線材を使用することが好ましい。また表皮効果の影響を低減するため線材内の超伝導体は薄体とすることが好ましい。高温超伝導線材の液体窒素温度における臨界磁界は0.4〜0.6T程度であるが、末梢神経の磁気刺激に最低限必要とされる磁界は0.2T程度であるため、高温超伝導線材を用いたコイルでも十分に磁気刺激を行うことが可能である。
また、液体窒素の揮発速度の抑制およびコイルケース外面の温度低下を抑制するためコイルケースには優れた断熱性能が求められる。そのためコイルケースは、図1、2、3に示すような内側コイルケース4、外側コイルケース3よりなる二重構造とすることが望ましい。コイルケースの間隙9は外側コイルケースに設けられた真空ポート8より真空引きすることにより真空状態となり、内側コイルケース外面と外側コイルケース内面との熱の授受を抑制される。また、この内側コイルケース外面と外側コイルケース内面をそれぞれ鏡面研磨することにより、輻射による熱の授受を抑制することが可能である。
本発明の形態の他の1例を図2に示す。図2に示す例ではコイルケースは凹部構造をもち、この凹部構造がコイルケース内部にてコイル内径を貫いた構造となっている。この構造にすることにより、コイル内径の内側に常温の空間を確保することができる。コイル内径の内側は磁界が強い領域であるため、その空間に刺激部位を配置できることは大きなメリットとなる。
本発明の形態の他の例を図3に示す。図3に示す例ではコイルケースは貫通構造をもち、この貫通構造がコイルケース内部にてコイル内径を貫いている構造となっている。この構造にすることにより、図2の例と同様に、コイル内径の内側の磁界の強い領域に常温の空間を確保することができる。
磁気刺激においては、磁界の大きさとともに磁界の立ち上がりの強さも重要である。磁界の立ち上がりをよくするためには、コイルのターン数を減らしコイルのインダクタンスを小さくする必要があるが、その分大きな電流がコイルに流れ込むことになる。超伝導コイルの場合、臨界電流という制約があるため、単純にターン数を減らすだけでは、十分な電流を流すことができず。立ち上がりは早いが、磁界強度の小さいコイルとなってしまう。その問題を解消するため、より立ち上がりの早い磁界を発生したい場合は、図4のように並行した複数の高温超伝導線材を重ね合わせた状態で巻きまわした構造とすることが好ましい。このような構造とすることで、各電線に電流が分散し、実効的な臨界電流を数倍にすることが可能となる。
次に上記医療用多連発磁気刺激コイルにパルス電流を供給する手段について説明する。磁気刺激コイルにパルス電流を流す方法としては、磁気刺激コイルに直列に接続されたコンデンサより電荷を充放電する方法がもっとも容易である。以降、具体的に図5を用いて説明する。
上記までに示した医療用田連発磁気刺激コイル11と電荷を充放電する充放電用コンデンサ10と、充放電用コンデンサからの放電電流を磁気刺激コイルに供給するスイッチング半導体素子12とを環状に直列接続した回路を構成する。この回路が磁気刺激コイルのパルス電流放電の主体となる放電回路となる。スイッチング半導体素子としてはサイリスタ又は、サイリスタとダイオードを逆並列接続した回路を使用する。この放電回路の充放電用コンデンサに電荷を充電するためには充放電用コンデンサの両端より直流電源13にて電荷を充電すればよい。もっともシンプルな直流電源として、交流電圧をダイオード等で半波整流また全波整流した回路を使用することができる。また充電の制御のための充電スイッチ14を充放電コンデンサと直流電源の間に備えることが好ましい。
直流電源より充放電コンデンサに電荷を充電したのち、スイッチング半導体素子を導通することで充放電用コンデンサの電荷が放電され、放電された電荷による電流が磁気刺激コイル内を流れて磁気パルスが発生する。電流は時間の経過とともに大きくなり、充放電コンデンサ内の電荷が放電されるに従い充放電コンデンサ両端の電圧は小さくなる。やがて、充放電コンデンサ内の電荷が無くなり充放電コンデンサのエネルギーがゼロになるのとほぼ同時に、磁気刺激コイル内の電流の大きさはピークを迎える。この状態がコイル内の磁気エネルギーが最大となっている状態である。次に磁気刺激コイル内を流れる電流は、再び充放電コンデンサに戻り始め電流は小さくなっていき、充放電コンデンサに電荷が蓄えられるにつれて、充放電コンデンサの両端の電圧が徐々に増していく。やがて磁気刺激コイル内の電流がゼロになった状態、すなわち磁気刺激コイルの磁気エネルギーがゼロになった状態となり、エネルギーは充放電コンデンサに回生され、充放電コンデンサは放電開始前と逆向きの電圧で充電された状態となる。
ここで、スイッチング半導体素子12が逆並列接続された半導体素子で構成されている場合、この充放電コンデンサ内の電荷は再び磁気刺激コイルに逆向きのパルス電流として流れ始め、先程とは逆の仮定を経て、再度充放電コンデンサに放電前と同じ極性の電圧で充電された状態に回生される。
放電開始から放電終了時の状態に至るまでの充放電コンデンサ両端の電圧波形の一例を図6に示す。放電終了時の充放電コンデンサの電圧は、従来技術による磁気刺激コイルを用いた場合、放電の仮定で磁気刺激コイルやその他回路内の電気抵抗によりジュール熱として大きなエネルギー損失が生じるため、放電開始前の充放電コンデンサの電圧と比較してかなり小さくなる。本願発明による磁気刺激コイルを用いれば、磁気刺激コイルの抵抗がほぼゼロであるためジュール熱損失を大幅に低減することが可能となり、エネルギーのかなりの割合を再び充放電コンデンサに回生することが可能である。また、磁気刺激コイルでのジュール熱損失が少なく電流の減衰も抑えられるため、逆向きのパルス電流による磁界の強度も大きくなる。放電開始から放電終了時の状態に至るまでの磁気刺激コイルから発生するパルス磁気波形の一例を図7に示す。従来技術による磁気刺激コイルを用いた場合、負側のパルス磁界の強度が正側のパルス磁界の強度に比較してかなり減衰しているが、本願発明による磁気刺激コイルを用いた場合、負側のパルス磁界はほとんど減衰しない。
次に本願発明の詳細を実施例に基づいて説明する。なおこの実施例は当業者の理解を容易にするためのものである。すなわち、本願発明は明細書の全体に記載される技術思想によってのみ限定されるものであり、本実施例によってのみ限定されるものではない。
高温超伝導線材を使用して実際に磁気刺激コイルの製作を行った。使用した線材は、ビスマス系の高温超伝導体の薄体を厚み50μmの銅合金シースで包んだ線材であり、仕上がり幅4.6mm、仕上がり厚み0.39mmの平角線形状であった。この線材の仕様書によれば、液体窒素温度における臨界電流は185Aであった。線材は厚み12.5μmのポリイミドテープをハーフラップで巻き付け絶縁した。絶縁した線材を直径75mmの塩ビ管にα巻にて巻き付け、33ターン×2層=66ターンのコイルとした。このときコイルの仕上がり外径は105mmとなった。巻いたコイルは、塩ビ管から抜き取ったのちその外周にポリイミドテープを巻き固定した。ネジ穴を設けた無酸素銅製の電流端子を、作成したコイルの両端にはんだ付けし、電流端子には、ネジ穴を利用してパルス電流を供給するための電流ケーブルを接続した。その後、図3に示した形状である二重構造、貫通型のコイルケース内部に、製作したコイルおよび電流端子を固定した。コイルケースのサイズは内径30mmφ、外径150mmφ、高さ150mmであった。次に真空ポートよりコイルケース二重構造部の真空引きを行い真空状態とし、その後、コイルおよび電流端子が浸る程度に液体窒素をコイルケース内に充填した。
製作したコイルを磁気刺激コイルとし、120μFの充放電コンデンサ、サイリスタおよびこれと逆並列接続したダイオードを図5に示すような回路となるように接続した。次に充放電コンデンサに直流電源を接続して電荷を供給し、充放電コンデンサの両端の電圧が420Vになるように充電した。その後、サイリスタにゲート電圧を与えて点弧したところ、磁気刺激コイルよりバイフェーズ型の磁気パルスが発生した。コイル中心の磁界をガウスメータにて測定したところ、磁気パルスのパルス幅は1.66ms、パルスの強度は正側は0.205T、負側は0.198Tであり、負側の磁気パルスは正側の磁気パルスと比較して、3.53%減衰していた。このとき磁気刺激コイルに流れたパルス電流のピーク値は195Aであった。また、パルス発生後の電圧は370Vであり、放電された電荷の88.1%が再度充放電コンデンサに回生されたことが確認できた。失われた11.9%の電荷に相当するエネルギーは、電流ケーブルやサイリスタ、充放電コンデンサなど磁気刺激コイル以外の回路要素の持つ抵抗によってジュール熱として失われたものと考えられる。その後、充放電コンデンサの充電電圧を480Vとして、この電流を超えたパルス電流を通電しようと試みたが、磁気刺激コイルの超伝導状態が破れてしまい正常なパルス磁界を発生することはできなかった。
実施例1と同じ線材を用いて実施例1とは巻数の異なるコイルを製作した。内径が実施例1と同様になるよう直径75mmの塩ビ管にα巻にて巻き付け、33ターン×4層=132ターンのコイルとした。このときコイルの仕上がり外径は105mmとなった。巻いたコイルは、実施例1と同様にコイルケース内に固定し、コイルケースの真空引きおよび液体窒素の充填を行った。製作したコイルを、実施例1と同じ放電回路に接続し、直流電源にて充放電コンデンサの両端の電圧が610Vになるように充電した。その後、サイリスタにゲート電圧を与えて点弧したところ、磁気刺激コイルよりバイフェーズ型の磁気パルスが発生した。コイル中心の磁界をガウスメータにて測定したところ、磁気パルスのパルス幅は2.96ms、磁気パルスの強度は正側は0.275T、負側は0.265Tであり、負側の磁気パルスは正側の磁気パルスと比較して、3.65%の減衰となった。このとき磁気刺激コイルに流れたパルス電流のピーク値は140Aであった。また、パルス発生後の電圧は540Vであり、放電された電荷の88.5%が再度充放電コンデンサに回生されたことが確認できた。本実施例においては、ターン数が多くなったことにより小さなパルス電流にもかかわらず強い磁界を発生することが出来ているが、コイルのインダクタンスが大きくパルス幅が大きくなってしまっているため、磁気刺激強度としては、実施例1と比較して弱くなってしまっていた。
実施例1と同じ線材2本を並行させた状態で重ねあわせながら巻きまわしコイルを製作した。内径が実施例1と同様になるよう直径75mmの塩ビ管にα巻にて巻き付け、31ターン×2層=62ターンのコイルとした。このときコイルの仕上がり外径は127mmとなった。巻いたコイルは、実施例1と同様にコイルケース内に固定し、コイルケースの真空引きおよび液体窒素の充填を行った。製作したコイルを、実施例1と同じ放電回路に接続し、直流電源にて充放電コンデンサの両端の電圧が610Vになるように充電した。その後、サイリスタにゲート電圧を与えて点弧したところ、磁気刺激コイルよりバイフェーズ型の磁気パルスが発生した。コイル中心の磁界をガウスメータにて測定したところ、磁気パルスのパルス幅は1.60ms、磁気パルスの強度は正側は0.259T、負側は0.249Tであり、負側の磁気パルスは正側の磁気パルスと比較して、3.74%の減衰となった。このとき磁気刺激コイルに流れたパルス電流のピーク値は290Aであった。また、パルス発生後の電圧は550Vであり、放電された電荷の90.2%が再度充放電コンデンサに回生されたことが確認できた。本実施例においては、インダクタンスが小さいためパルス幅が小さく、また線材を2本並行させて巻いたことにより大きなパルス電流を流す事が可能となり磁界強度も確保できているため、今回製作した3種の高温超伝導線材を用いた磁気刺激コイルの中ではもっとも強い磁気刺激を得ることが出来ている。また、所有設備の性能上の理由により実際に確かめることはできていないが、理論上は実施例1で通電した電流の2倍にあたる390A近いパルス電流を流すことができるはずであり、その場合、発生する磁気パルスは0.30Tから0.35T程度となることが予想される。また本実施例のコイルを用いた場合、連続的にコンデンサを充電することで、毎秒50発の磁気パルス列を1.3秒間連続で発生することが可能であり、加えてこのパルス列を3秒周期で数十回繰り返し発生することも可能であった。
従来技術と比較するため、実施例3と同じ断面サイズの銅製の平角銅線を実施例3と同様に2本を並行させた状態で重ねあわせながら巻いてコイルを製作した。内径が実施例1と同様になるよう直径75mmの塩ビ管にα巻にて巻き付け、31ターン×2層=62ターンのコイルとした。このときコイルの仕上がり外径は127mmとなった。製作したコイルを、実施例1と同じ放電回路に接続し、直流電源にて充放電コンデンサの両端の電圧が610Vになるように充電した。その後、サイリスタにゲート電圧を与えて点弧したところ、磁気刺激コイルよりバイフェーズ型の磁気パルスが発生した。コイル中心の磁界をガウスメータにて測定したところ、磁気パルスのパルス幅は1.60ms、磁気パルスの強度は正側は0.230T、負側は0.175Tであり、負側の磁気パルスは正側の磁気パルスと比較して、24%の減衰となった。また、パルス発生後の電圧は387Vであり、回生された電荷は放電された電荷の63.4%であることが確認できた。コンデンサに蓄えられているエネルギーは電圧の二乗に比例するため、単純計算で、実施例3のコイルの3.2倍のエネルギーを消費していることになる。
実施例4におけるコイル中心部のパルス磁界波形と、実施例3におけるコイル中心部のパルス磁界波形を図6に示す。図6のグラフでは、磁界強度は実施例3における正側パルスのピーク値を100%として規格化して表示している。また、実施例4における充放電コンデンサの両端電圧と実施例3における充放電コンデンサの両端電圧の電圧波形を図7に示す。図7のグラフでは、コンデンサ電圧は放電前の実施例3におけるコンデンサ両端電圧を100%として規格化して表示している。
1:コイル
2:磁気刺激部位
3:コイルケース(外側ケース)
4:コイルケース(内側ケース)
5:液体窒素
6:電流端子
7:電流ケーブル
8:真空ポート
9:間隙(真空部)
10:充放電用コンデンサ
11:磁気刺激コイル
12:スイッチング半導体素子
13:直流電源
14:充電スイッチ
15:高温超伝導体
16:金属シース

Claims (6)

  1. 高温超伝導体の薄体とその外側を包む金属シースにより構成される高温超伝導線材を巻きまわしたコイルと、
    そのコイルの両端に設けられた金属製の電流端子と、
    内部に液体窒素を蓄えた非金属性のコイルケースより構成され、
    コイルはコイルケースの内面近傍に固定され、
    コイルおよび電流端子は液体窒素に浸され冷却されており、
    電流端子に接続された電流ケーブルよりパルス状の電流がコイルに供給されることによりパルス状磁界を発生することを特徴とする医療用多連発磁気刺激コイル。
  2. 上記コイルは並行した複数の高温超伝導線材を重ね合わせた状態で巻きまわした構造となっていることを特徴とする請求項1に記載の医療用多連発磁気刺激コイル。
  3. 上記コイルケースは凹部構造または貫通構造をもち、該凹部構造または貫通構造がコイルケース内部にてコイル内径を貫いていることにより、コイル内径の内側に常温空間を確保することを特徴とする請求項1、2に記載の医療用多連発磁気刺激コイル。
  4. 上記コイルケースは外側ケースと内側ケースよりなる二重構造となっており、内側ケースと外側ケースの間隙とつながる真空ポートを外側ケース表面に備え、真空ポートより真空引きすることにより内側ケースと外側ケースの間隙を真空状態とし、内側ケースと外側ケース間を断熱することを特徴とする請求項1〜3に記載の医療用多連発磁気刺激コイル。
  5. 上記内側ケースの外壁と上記外側ケースの内壁を、鏡面研磨することにより、内側ケースと外側ケースの輻射熱による熱交換を抑制したことを特徴とする請求項4に記載の医療用多連発磁気刺激コイル。
  6. 請求項1〜5に記載の医療用多連発磁気刺激コイルと、電荷が充電された充放電用コンデンサと、充放電用コンデンサからの放電電流を磁気刺激コイルに供給するスイッチング半導体素子とを環状に直列接続した放電回路を備えた医療用磁気パルス発生装置であって、スイッチング半導体素子を導通することで充放電コンデンサの電荷がコイルに放電され、放電された電荷による電流がコイル内を通電することにより医療用多連発磁気刺激コイルより磁気パルスを発生し、その後放電した電荷が再びコンデンサに回生されることを特徴とする医療用磁気パルス発生装置。
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