JP6497583B2 - プラントの漏洩検出システムとその方法 - Google Patents
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Description
その際には、システム配管やタンク等に設置された流量計、温度計、液位計等の計測器で採取された情報を用いており、その情報に基づいてポンプや弁の動作を制御している。
一方、プラント運転上問題となるのが、システム配管や弁、あるいはタンクからの流体漏洩であり、流体漏洩によるシステム配管や機器の破損のような物的被害はもちろんのこと、作業員の負傷等の人的被害も発生する可能性がある。
そこで、従来、プラントにおける漏洩を検知するために様々な発明がなされてきた。
このような演算回路を設けることによって、送水管に漏水があれば理論水位が実測水位を上回ることになり、漏水が発生していることを検知できる。
この発明では、漏洩検出を希望する箇所の上下流に流量検出装置を配置して、順方向、逆方向の流量を検出し、それぞれの流量検出装置における測定流量の差分を演算することで配管における流体の漏洩を検出することができる。
また、この装置では、漏れ検知回路の出力を用いて算出される流量対応値に基づく第1の漏れ検知と液位の時間変化率の大きさに基づく第2の漏れ検知とを行い、第2の漏れ検知において時間変化率の大きさが所定範囲内の時は第2の漏れ検知の結果を出力し、所定範囲の下限より小さい時は第1の漏れ検知の結果を出力し、所定範囲の上限を越える時は漏れに関する出力を停止して消費電力低減を可能としている。
さらに、ブロック毎に流量という1つの物理量を検出して漏洩を検知しているので、ブロック毎に2つの流量検出装置を必要としており、分岐や合流が存在した際にも、その分岐しているブロックや配管毎に2つの流量検出装置を設置する必要があり、この点でも煩雑であるという課題があった。
また、特許文献1乃至3共に、それぞれ漏洩検知を行うという目的の下に流量計や圧力センサを設けているものの、プラントに元々流体の制御や状態監視のために設けられている計測器の計測値を本来の目的を越えて、個々の情報を統合することで漏洩を検知するという観点からなされている発明は発見することができなかった。
従って、漏洩検出には基本的に漏洩量を測定可能なセンサが設けられていたり、漏洩を監視可能なカメラ等が設置されており、予め漏洩を検知するという目的の下に個別に検知することしかできないという課題があった。さらに、このような課題の環境下であるため、流体の濃度や熱量(温度)といった他の物理量に関する計測も併せることでシステム配管の分岐や合流のような複雑なシステムで連立方程式を解いて漏洩を検知するという発想もなく、プラントに多数の測定器が設置されているにも関わらず、単純な漏洩検知しかできないという課題があった。
上記構成の発明においては、プロセス量データベースが、流体を扱うプラントのシステム配管又は容器に設置されるプロセス量測定装置で計測されたプロセス量を入力部を介して読み出し可能に格納するように作用する。また、演算部がプロセス量測定装置間で計測されたプロセス量又はこのプロセス量から演算される他のプロセス量の変化量を演算し、複数箇所のプロセス量測定装置間で計測された前記プロセス量又は前記他のプロセス量の変化量が前記複数箇所のプロセス量測定装置間におけるプロセス量又は他のプロセス量の保存則を満足するか否かを判断するように作用する。
なお、プロセス量とは、圧力、流量、液位、濃度など工業プロセスの状態量をいい、また、プロセス量から演算される他のプロセス量とは、例えば流体の流量と温度から演算される流体のエンタルピーや流体の流量と溶質の濃度から演算される流体の物質量(溶質量)等を意味する。また、容器は一般的には、密閉容器であるタンクと開放容器であるプールがある。
上記構成の発明は、第1の発明と同じ作用に加えて、判断部が閾値を用いてプロセス量又は他のプロセス量の保存則を満足か否かを判断する場合に、閾値を用いて判断するように作用する。
上記構成の発明は、第1又は第2の発明と同様の作用に加え、判断部は、共通するプロセス量測定装置間で、異なる複数種類のプロセス量又は他のプロセス量の変化量が、それぞれの種類のプロセス量又は他のプロセス量毎に保存則を満足するか否かを判断するように作用する。
なお、本願でいうプロセス量測定装置は、単独のセンサのみならず、複数のセンサ(例えば温度計と濃度計)を備えていてもよいし、近傍に単独のプロセス量を計測可能なセンサが複数存在する場合もまとめてその領域における一つのプロセス量測定装置と概念してもよい。
上記構成の発明は、第3の発明と同様の作用に加え、判断部は異なる複数種類のプロセス量又は他のプロセス量毎の保存則が満足されない場合に、これらを連立方程式として解くように作用し、さらに、その解によって、いずれのプロセス量測定装置間で漏洩が発生しているかを特定するように作用する。
なお、連立方程式は、異なる複数種類のプロセス量又は他のプロセス量毎の保存則が満足されない場合に、その変化量の保存則の式に、漏洩量を変数として代入しながら変化量を0とする連立方程式を立てるとよい。
上記構成の発明は、第3又は第4の発明と同様に作用するが、特に発電プラントにおいては、燃料の燃焼に基づいて発電していることから、流体の温度や圧力及び熱量を管理する場合が多く、エンタルピーは流量や流体の容積に次いで漏洩を検知する際には用いることが可能なプロセス量であると考えられる。また、発電プラントの他、化学プラントにおいては、何らかの溶質を溶かした溶液を用いるシステムも多く、濃度は流量や流体の容積に次いで漏洩を検知する際には用いることが可能なプロセス量であると考えられる。
上記構成の発明は、第1の発明であるシステム発明を方法発明として捉えたものであり、その作用は第1の発明と同様である。
上記構成の発明は、第3の発明であるシステム発明を方法発明として捉えたものであり、その作用は第3の発明と同様である。
上記構成の発明は、第4の発明であるシステム発明を方法発明として捉えたものであり、その作用は第4の発明と同様である。
また、元々システム配管や容器においてプロセス量測定装置が設けられていない場合に必要に応じて追加してもよいことは言うまでもない。
図1は本発明の実施の形態に係るプラントの漏洩検出システムのシステム構成図である。
図1において、漏洩検出システム1は、入力部2、データベース3、演算部4、判断部5及び出力部6から構成されている。
入力部2は、漏洩検出システム1のデータベース3に格納される液位データ21をはじめ、各データベースに格納されるプロセスデータ30が読み出し可能に入力されるものである。
入力部2の具体例としては、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読取装置あるいはコンピュータ等の解析装置や測定装置等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など単独あるいは複数種類の装置からなり目的に応じた使い分けが可能な装置が考えられる。また、漏洩検出システム1への入力に対するインターフェースのようなものであってもよい。
また、出力部6は漏洩検出システム1からの出力情報31が出力されるものであるが、出力情報の具体例としては、演算部4に含まれる各演算部で実行されたそれぞれの演算内容の演算結果や判断部5の漏洩検知部19によって発信される警報、さらには必要に応じて演算部4内で実行されるそれぞれの演算に必要なデータ入力を促すための入力画面(インターフェース画面)等の情報について、あるいは各データベースから読み出されたデータ等がある。また、出力部6そのものの具体例としては、CRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどによるディスプレイ装置、あるいはプリンタ装置などの出力装置、さらには外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置などが考えられる。もちろん、外部装置への伝送のための出力に対するインターフェースのようなものであってもよい。
これらの変化演算部14,15,16,18及びエンタルピー演算部17を備える演算部4は、それぞれのデータ21〜27を入力部2から直接あるいはそれぞれのデータベース7〜13から読み出して演算を行うものである。演算部4における「変化量」とは、本来保存則が維持されるならば同一であるはずのプロセス量に関するデータにおける変化量を意味するので、経時的な変化量のみならず、ある一時点におけるバランスからのかい離という意味での変化量も含むものである。もちろん、この変化量を演算する場合にもいずれのプロセス量測定装置間の変化量であるかを特定可能なデータはそのまま付帯情報として維持されている。
示量性とは系の大きさ、体積、質量に比例する性質であり、示強性とはそのような性質を備えていない場合を意味している。図1に示されるデータでは、液位データ21、流量データ22、エンタルピーデータ26が示量性を備えており、温度データ23、圧力データ24、差圧データ25が示強性を備えている。
本実施の形態では、複数箇所のプロセス量測定装置間における漏洩、すなわち系内から系外への漏洩を検出するためにそれらのプロセス量測定装置で計測されたプロセス量に関するデータの変化量を演算するため、示強性を備えたデータのままでは漏洩を検知することが難しい。
従って、演算部4では、示量性を備えたデータに対して変化量を演算するものである。なお、示強性のデータを用いても組合せ方で示量性のデータを求めることができることから、データベース3に格納されるプロセス量測定装置のデータとしては示強性、示量性の両方のデータを取得してもよい。具体例としては、流体が液体で熱膨張を無視できる場合には、示強性データである温度データ23を示量性データである流量データ22と組み合わせることでエンタルピーデータ26を演算することが可能である。
この演算を行っているのが、演算部4のエンタルピー演算部17である。エンタルピー演算部17は、データベース3の流量データベース8及び温度データベース9から流量データ22と温度データ23をそれぞれ読み出し、式(1)に示されるような積を取ることでエンタルピーデータ26を演算し、読み出し可能にエンタルピーデータベース12に格納している。その際には、流量データ22と温度データ23が同一のプロセス量測定装置で計測されたものであることが必要であり、それぞれのデータに付されているプロセス量測定装置を特定可能なデータもそのまま演算後のエンタルピーデータ26に含まれている。
なお、既に説明した通り、プロセス量測定装置は1つのセンサのみならず、複数のセンサ(例えば温度計と濃度計)を備えていてもよいし、近傍に単独の物理量を計測可能なセンサが複数存在する場合もまとめてプロセス量測定装置としてもよい。従って、同一のプロセス量測定装置とは、それぞれ近傍にあってプロセス量を測定している系が同一である複数の異なる測定装置をも含む概念である。
タンク等の容器間で流体を移動させ、その間で漏洩を検知するような場合には異なるタンクのそれぞれの液位計で計測された液位データを用いることができる。
液位変化演算部14は、液位データベース7から異なるタンクの液位計で計測された液位データ21を読み出し、液位のままでは漏洩を検知することができないので、そのタンクの底面積との積を取り容積に換算して式(2)で示される容積の単位時間当たりの変化量の差として演算する。添え字の1,2はそれぞれ異なるプロセス量測定装置(液位計)で計測されたことを意味しているが、それぞれのデータが取得されたプロセス量測定装置を特定可能な付帯情報も含まれることが理解できる。
また、この式(2)では複数点での経時変化を演算しているが、これを単点で演算して経時変化を求めてもよい。すなわち、液位に関しては液位データベース7から同一のタンクやプールの液位計で計測された液位データ21を読み出し、経時変化を求めることで、そのタンクの液位の変化量を求めることができる。この場合は底面積が当然に同一であることから液位のままでも漏洩を検知することが可能である。この場合の式(2)は、添え字の1又は2のいずれかのみで成立することになる。
この流量変化演算部15は、流量データベース8から異なる流量計で計測された流量データ22を読み出し、式(4)で示される流量の変化量として演算する。
なお、流量(m3/s)ではなく流速(m/s)を測定しているような場合には、流路断面積(m2)との積を取って流量に換算すればよい。
この物質量変化演算部16は、プロセス流体が溶質を溶媒に溶かした溶液である場合に、この溶質量の変化量を演算するものである。従って、タンクの液位計による液位の変化量及びシステム配管の流量計による流量の変化量に基づく2つのパターンが考えられる。
第1のパターンでは、同一のプロセス量測定装置で計測された液位データ21と濃度データ27を読み出し、さらに、それとは異なるプロセス量測定装置で計測された液位データ21と濃度データ27を読み出して、式(6)で示される溶質の変化量として演算する。添え字の1,2はそれぞれ異なるプロセス量測定装置(液位計、濃度計)で計測されたことを意味している。
このエンタルピー変化演算部18は、エンタルピーデータベース12から異なる地点で計測・演算されたエンタルピーデータ26を読み出し、式(8)で示されるエンタルピーの変化量として演算する。添え字の1,2はそれぞれ異なるプロセス量測定装置(流量計、温度計)で計測されたことを意味している。
この漏洩検知を行うのが判断部5の漏洩検知部19である。
漏洩検知部19は、演算部4の各変化演算部から式(2)〜(8)で求められる変化量の入力を受けて、その変化量が存在した場合に漏洩が生じていると判断して警報信号を出力部6を介して出力する。
具体的には、式(2)〜(8)の添え字の1が流体の上流側、2が下流側の場合に、漏洩しているとすれば、添え字2の量が添え字1の量に比較して少なくなることから負値となることがわかる。従って、負値となった場合に漏洩が発生していると判断して警報信号を出力するのである。
さらに、示量性を備えたデータの種類や計測される位置、あるいは測定対象となっている流体によって漏洩を検知する精度が異なるとも考えられるため、それぞれのプロセス量測定装置の設置箇所及びプロセス量の種類等によって予め漏洩と判断するための閾値を設定しておき、これを閾値データベース20に閾値データ28として格納しておくことが望ましい。
従って、漏洩検知部19は式(2)〜(8)で求められる変化量が存在した場合に、閾値データ28を閾値データベース20から読み出して、その変化量と閾値データ28を比較して、変化量が閾値データ28を上回る変化量である場合に漏洩であると検知するのである。
このように閾値データ28を設けておくことで、プラント運転中に軽微な流体変動等が生じた場合には漏洩として検知することなく、個別に精度の高い漏洩検知を行うことが可能である。
なお、漏洩検知部19は警報信号を出力すると同時に漏洩検知に関わるプロセス量測定装置として特定されたものあるいはそれらのプロセス量測定装置が設置されているタンクやシステム配管を漏洩箇所として表示する信号を出力することが望ましい。この表示するための信号の出力を受けることでプラントの運転員が現場を特定することができ、その場所で処置や対応策の立案等を行うことができるためである。
図2に示されるプラントシステムは、原液Aタンク40aから供給される原液Aを撹拌タンク41で撹拌し、その後に原液Bタンク40bから供給される原液Bと合流点55で合流し、それを注入点42a,42bから他のシステムやタンク等へ注入するというものである。
原液Aタンク40a及び原液Bタンク40bには液位計46a,46b、濃度計47a,47b及び温度計48a,48bがそれぞれ設けられており、それぞれ原液A,Bについて計測している。また、原液Aタンク40aには圧力計52aも備えられており、液位に応じた液圧を計測可能となっている。原液A,Bは、溶質A,Bをある溶媒に溶解させて得られる原液であり、濃度計46a,47bはその溶質A,Bの濃度をそれぞれ計測するものである。
原液Aタンク40aから撹拌タンク41までのシステム配管43には、原液Aタンク40aの出口に流量計49a、その下流にポンプ50aが配置され、さらにバイパス配管54aを備えた電動弁51aが設けられている。また、これらの機器の近傍には適宜止め弁56が設置されている。
撹拌タンク41には液位計46cと圧力計52bが設置されており、圧力計52bは液位に応じた液圧を計測可能となっている。また、撹拌タンク41から注入点42a,42bまでのシステム配管45には、撹拌タンク41側から温度計48c,ストレーナー53とその差圧を測定する差圧計52c、バイパス配管54cを備えた電動弁51c、温度計48d、濃度計47c、流量計49c、ポンプ50cが設けられている。また、これらの機器の近傍には適宜止め弁56が設置されている。
さらに、原液Bタンク40bからシステム配管45への合流点55までのシステム配管44には、原液Bタンク40bの出口に流量計49b、その下流にポンプ50bが配置され、さらにバイパス配管54bを備えた電動弁51bが設けられている。また、これらの機器の近傍にも適宜止め弁56が設置されている。
この場合、漏洩検出システム1は液位計46aから液位データ21を入力部2を介して液位データベース7に格納し、液位変化演算部14で式(2)に係る経時変化を演算する。同一の液位計46aからの液位データ21であるので、式(2)の添え字はいずれか一方となる。原液Aタンク40aの漏洩であるので、電動弁51aや止め弁56が閉止していることが条件となるが、液位の減少することによる変化量があれば、その入力を受けた漏洩検知部19は漏洩があると判断し警報信号を発する。また、その際には判断の条件として閾値データベース20に格納された閾値データ28を参照してもよい。
次に、原液Aタンク40aから撹拌タンク41の間のシステム配管43の漏洩を監視する場合には、液位計46aに加えて液位計46cに着目する。この場合、漏洩検出システム1は液位計46aと液位計46cからの液位データ21を液位データベース7に格納し、液位変化演算部14で式(2)で示される変化量の差に関する演算を行う。そして、下流側となる撹拌タンク41の液位計46cの変化量が小さい場合には、漏洩検知部19は漏洩があると判断し警報信号を発する。但し、システム配管45への流出がないという条件が必要であることは言うまでもない。また、その際には同様に判断の条件として閾値データベース20に格納された閾値データ28を参照してもよい。
この場合、漏洩検出システム1は流量計49cからの流量データ22を流量データベース8に格納し、差圧計52cからの差圧データ25を差圧データベース11に格納する。そして、液位変化演算部14でこれらのデータを読み出して、差圧データ25については式(5)を用いて流速を演算し、流路断面積との積をとり、さらに、流量データ22と共に式(4)を用いることで流量の変化量の演算を行う。
漏洩検知部19は式(4)による演算によって変化量が生じれば、ストレーナー53と流量計49cの間で漏洩が生じていると判断し、警報信号を出力部6を介して外部に発信する。また、原液Aタンク40aの場合と同様に閾値データ28を用いて判断してもよい。
このように液位データ21、流量データ22及び差圧データ25はそれぞれ流量の単位(m3/sec)を用いることでの互換性があるため、式(2)〜(5)を用いることで様々なプロセス量測定装置間での漏洩検知を行うことが可能である。
このようなデータの互換性を利用することによれば、一般的なプラントではプロセス量の計測を随時行っていることから、これらをデータベースに読み出し可能に格納し、それぞれのプロセス量に関するデータをデータベースから読み出して変化量の演算を行うことで、プラントのシステムの広い範囲で漏洩検知を行うことが可能である。なお、プロセス量測定装置から直接漏洩検出用にデータを取り出せる場合には、データベースに格納されたデータを用いる必要はないものと考えられるが、回路等が煩雑となるため、一旦データベースにデータを格納し、データベースに保存されているデータを読み出して変化演算部に入力することが望ましいと考えられる。さらに、予め設置されているプロセス量測定装置だけで漏洩検知を行うにはカバーできない箇所もあると考えられるが、その際には既設のプロセス量測定装置をなるべく利用しながら不足する測定装置を新規に設置するとよい。
また、互換性を利用することで複数の異なるプロセス量について漏洩検知を行うことも可能であり、このような漏洩検知を行うことで精度を向上させることが可能である。
この場合、合流点55が存在することから流量計49a、流量計49b及び流量計49cで得られる流量データ22のみに着目しても正確な漏洩検知ができない場合がある。例えば、流量計49cの流量データ22が流量計49aと流量計49bの流量データ22の和よりも小さい場合に、システム配管43及びシステム配管45の合流点55までの間で原液A側が漏洩しているのか、システム配管44で原液Bが漏洩しているのか、あるいはシステム配管45の合流点55から流量計49cまでで原液A及び原液Bの混合したものが漏洩しているのかは不明である。
そこで、3つの流量計の近傍に存在して、1つのプロセス量測定装置と同視できる温度計48a、温度計48b及び温度計48dで計測された温度データ23を用いてエンタルピー演算部17によって演算されたそれぞれのエンタルピーデータ26からエンタルピー変化演算部18が演算する式(10)に示されるような変化量に着目する。
なお、ΔU1が正値でΔU2が0の場合には原液Aがシステム配管43、撹拌タンク41あるいはシステム配管45の合流点55までのいずれかで漏洩していると判断され、ΔU1が0でΔU2が正値の場合には原液Bがシステム配管44のいずれかで漏洩していると判断され、ΔU1が正値でΔU2も正値の場合には、そのΔU1とΔU2の流量比(ΔU1/ΔU2)がU1とU2の流量比(U1/U2)に等しい場合には合流点55以降の漏洩の可能性が高く、流量比が等しくない場合には、合流点55より上流側の両方のシステム配管での漏洩が疑われる。
このような判断は、式(9)及び(10)の演算結果と連立方程式の式(11)及び式(12)の演算結果の入力を受けた漏洩検知部19で判断される。このような場合でも漏洩検知部19は、予め設定された閾値データ28を読み出して、演算結果と比較して判断してもよい。
原液Aタンク40aに貯留される原液Aの溶質Aと原液Bタンク40bに貯留される原液Bの溶質Bが互いに異なる物質であれば、合流点が存在する場合でもそれぞれの溶質についての保存則を考えることで足り、連立方程式を考える必要はない。
すなわち、物質量変化演算部16は、濃度計47aと濃度計47cで計測される濃度データ27及び流量計49aと流量計49cで計測される流量データ22を式(7)に代入して溶質Aの変化量を演算することができるので、その変化量が存在すれば、あるいは閾値データ28を用いた上で変化量が存在すれば、流量計49a〜流量計49c間で漏洩があることが検知される。
同様に、溶質Bについて、流量計49b〜合流点55間でも濃度計47bと濃度計47cで計測される濃度データ27及び流量計49bと流量計49cで計測される流量データ22を式(7)に代入して溶質Bの変化量を演算することで漏洩検知を行うことが可能である。
しかしながら、図2の原液Bタンク40bも原液Aタンクである場合、すなわち同一の溶質Aを溶解して得られる原液Aのタンクが2系統ありそれぞれの濃度が異なる場合には、式(9)の演算値が負値で漏洩があると考えられても、式(7)をそのまま用いることはできない。
そこで、前述のエンタルピーと同様に、3つの流量計の近傍に存在して、それぞれの流量計と1つのプロセス量測定装置と同視できる濃度計47a、濃度計47b及び濃度計47cで計測された濃度データ27を用いて物質量変化演算部16が演算する式(14)に示されるような変化量に着目する。ここでの濃度は溶質Aの濃度ということになる。
このように複数のプロセス量に着目することで、それぞれのプロセス量毎に保存則の連立方程式を立てることが可能となり、それを解くことで、合流や分岐が存在するシステム配管においても、いずれのプロセス量測定装置間で漏洩が発生しているかを定量的に特定することができる。
また、閾値データ28とその変化量を比較することで、データベース3に格納されるデータの種類やプロセス量測定装置の設置場所によって異なる精度を校正することが可能であり、漏洩検知の確度を高めることが可能となる。
さらに、プロセス量に関するデータを複数組み合わせることで、システム配管が分岐したり合流したりするようなシステム配管の構成であっても、プロセス量の保存則に関する連立方程式を解くことで漏洩検知とその領域について検知することが可能となり、より精度が高く、また汎用性の高いプラントの漏洩検出システムや方法を実現することができる。
Claims (5)
- 流体を扱うプラントのシステム配管又は容器に設置されるプロセス量測定装置で計測されたプロセス量を入力部を介して読み出し可能に格納するプロセス量データベースと、このプロセス量データベース又は前記入力部から複数箇所の前記プロセス量測定装置で計測された前記プロセス量を読み出してそれぞれの前記プロセス量測定装置間での前記プロセス量又はこのプロセス量から演算される他のプロセス量の変化量を演算する演算部と、前記複数箇所のプロセス量測定装置間で計測された前記プロセス量又は前記他のプロセス量の変化量が前記複数箇所のプロセス量測定装置間におけるプロセス量又は他のプロセス量の保存則を満足するか否かを判断し、満足しない場合には警報を出力部を介して発信する判断部と、を有し、
前記判断部は、前記複数箇所のプロセス量測定装置間のうち共通する前記プロセス量測定装置間で、異なる複数種類の前記プロセス量又は前記他のプロセス量の変化量が、それぞれの種類の前記プロセス量又は前記他のプロセス量毎に保存則を満足するか否かを判断し、満足しない場合には、これらを連立方程式として解くことで、いずれのプロセス量測定装置間で漏洩が発生しているかの判断を行い、前記プロセス量は前記流体の流量であり、前記他のプロセス量は前記流体のエンタルピーであることを特徴とするプラントの漏洩検出システム。 - 前記判断部は、誤警報を防止するための閾値を格納するデータベースを備え、前記プロセス量又は前記他のプロセス量の保存則を満足するか否かの判断の際に、前記プロセス量又は前記他のプロセス量の変化量と前記閾値とを比較して、前記変化量が前記閾値を上回った場合に前記警報を出力部を介して発信することを特徴とする請求項1記載のプラントの漏洩検出システム。
- 前記他のプロセス量は前記流体のエンタルピーに代えて前記流体の溶質量であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のプラントの漏洩検出システム。
- 流体を扱うプラントのシステム配管又は容器に設置される複数箇所のプロセス量測定装置で計測されたプロセス量又はこのプロセス量から演算される他のプロセス量のそれぞれの前記プロセス量測定装置間の変化量を演算し、前記変化量が前記複数箇所のプロセス量測定装置間における前記プロセス量又は前記他のプロセス量の保存則を満足するか否かを判断し、満足しない場合には警報を出力し、前記複数箇所のプロセス量測定装置間のうち共通する前記プロセス量測定装置間で、異なる複数種類の前記プロセス量又は前記他のプロセス量の変化量が、それぞれの種類の前記プロセス量又は前記他のプロセス量毎に保存則を満足するか否かを判断し、満足しない場合には、これらを連立方程式として解くことで、いずれのプロセス量測定装置間で漏洩が発生しているかの判断を行い、前記プロセス量は前記流体の流量であり、前記他のプロセス量は前記流体のエンタルピーであることを特徴とするプラントの漏洩検出方法。
- 前記他のプロセス量は前記流体のエンタルピーに代えて前記流体の溶質量であることを特徴とする請求項4記載のプラントの漏洩検出方法。
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