JP6489867B2 - 薄膜積層構造体及び太陽電池 - Google Patents
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Description
前記第1のSiOx層の上に設けられた第1の高誘電体層と、
前記第1の高誘電体層の上に設けられた第2の高誘電体層と、
前記第2の高誘電体層の上に設けられた第2のSiOx層と、
を備え、
前記第1のSiOx層と前記第1の高誘電体層との界面において形成される第1の界面双極子を有し、
前記第2の高誘電体層と前記第2のSiOx層との界面において形成される第2の界面双極子を有し、
前記第1の界面双極子による双極子モーメントと前記第2の界面双極子による双極子モーメントとの総和としてゼロでない双極子モーメントを有する。
前記第1のSiOx層の上に設けられた第1の高誘電体層と、
前記第1の高誘電体層の上に設けられた第2の高誘電体層と、
前記第2の高誘電体層の上に設けられた第2のSiOx層と、
を備え、
前記第1のSiOx層と前記第1の高誘電体層との界面において形成される第1の界面双極子を有し、
前記第2の高誘電体層と前記第2のSiOx層との界面において形成される第2の界面双極子を有し、
前記第1の界面双極子による双極子モーメントと前記第2の界面双極子による双極子モーメントとの総和としてゼロでない双極子モーメントを有する。
図1は、実施の形態1に係る薄膜積層構造体10の構成を示す概略断面図である。図2は、実施の形態1の別例に係る薄膜積層構造体10aの構成を示す概略断面図である。
実施の形態1に係る薄膜積層構造体10は、図1に示すように、SiOx層1(第1のSiOx層)と、SiOx層1の上に設けられた高誘電体層(Hk+/−)2(第1の高誘電体層)と、高誘電体層(Hk+/−)2の上に設けられた高誘電体層(Hk−/+)3(第2の高誘電体層)と、高誘電体層(Hk−/+)3の上に設けられたSiOx層4(第2のSiOx層)と、を備える。SiOx層1と高誘電体層(Hk+/−)2との界面において正方向の界面双極子5が形成される。一方、高誘電体層(Hk−/+)3とSiOx層4との界面において正方向の界面双極子6が形成される。界面双極子5による双極子モーメントと界面双極子6による双極子モーメントとの総和としてゼロでない双極子モーメント(正方向)7を有する。
SiOx層1と高誘電体層2、3との間では、面内の酸素イオン密度が異なっているため、その界面において酸素イオンが移動する。図3(a)の場合には、SiOx層1より高誘電体(Hk+/−)層2のほうが酸素イオン密度が高いため、酸素イオンが高誘電体(Hk+/−)層2からSiOx層1に移動する。その結果、高誘電体(Hk+/−)層2では酸素イオン空孔によるプラス電荷が生じ、SiOx層1では酸素イオンによるマイナス電荷が生じ、界面にSiOx層1から高誘電体(Hk+/−)層2へ向かう界面双極子(+/−双極子)5が形成される。
一方、図3(b)の場合には、SiOx層1より高誘電体(Hk−/+)層3のほうが酸素イオン密度が低いため、酸素イオンがSiOx層1から高誘電体(Hk−/+)層3に移動する。その結果、SiOx層1では酸素イオン空孔によるプラス電荷が生じ、高誘電体(Hk−/+)層3では酸素イオンによるマイナス電荷が生じ、界面に高誘電体(Hk+/−)層2からSiOx層1へ向かう界面双極子(−/+双極子)6が形成される。
なお、図3(c)に示すように、高誘電体(Hk+/−)層2と高誘電体(Hk−/+)層3とを積層しても界面双極子を生じないか上記界面双極子5、6と比べてより小さい界面双極子しか形成されない。この理由について確かなことはわからないが、2つの高誘電体層2、3がイオン結合性であることが原因ではないかと推測されている。
SiOx層は、酸化シリコン層である。なお、xは、2に限られず、2以下あるいは2以上であってもよい。また、SiOx層と同様に、高誘電体層との界面に界面双極子を形成することができれば、SiOx層に代えて、例えば、GeOx層であってもよい。また、SiOx層、GeOx層に限られず、高誘電体層との界面に界面双極子を形成することができる共有結合性の酸化物層であれば使用できる。
図8(a)に示すように、SiOx層22とAl2O3層23との界面に形成される界面双極子5による電界によってSi基板21上に固定電荷が生じる。また、図8(b)に示すように、SiOx層22の厚さが厚くなるにつれて、界面双極子5とSi基板21との距離が離れるので、Si基板21上に生じる固定電荷は減少してしまう。その結果、Si基板21の表面でのバンドベンディングが小さくなり、フラットバンド電圧シフト(VFB−Φms)が減少する。
図9に示すように、AlOxとHfOxとのいずれの高誘電体層の場合もSiOx層22が厚くなるにつれてフラットバンド電圧シフト(VFB−Φms)は小さくなる。図9によれば、SiOx層22は、フラットバンド電圧シフトの大きさを考慮すると、厚さの上限として、16nm以下、さらに12nm以下、また、8nm以下、さらにまた6nm以下が好ましい。厚さの下限としては、一定の膜厚として安定して形成できるものであればよく、例えば0.5nm以上、さらに1nm以上が好ましい。なお、上記下限値は成膜技術の向上によってさらに薄くなる可能性がある。
高誘電体層(Hk+/−)2は、SiOx層1より酸素イオン密度が高い。このような材料としては、例えば、Al2O3、TiO2、Ta2O5、MgO、HfO2、ZrO2、Sc2O3等がある。高誘電体層(Hk+/−)2は、SiOx層との界面に正電荷を生じるのでHk+/−層としている。
高誘電体層(Hk−/+)3は、SiOx層1より酸素イオン密度が低い。このような材料としては、例えば、Lu2O3、Y2O3、La2O3、SrO等がある。高誘電体層(Hk−/+)3は、界面に負電荷を生じるのでHk−/+層としている。
また、高誘電体層2、3についてもSiOx層1と同様に厚さの上限として、16nm以下、さらに12nm以下、また、8nm以下、さらにまた6nm以下が好ましい。厚さの下限としては、一定の膜厚として安定して形成できるものであればよく、例えば0.5nm以上、さらに1nm以上が好ましい。
なお、図9からわかるように、高誘電体層としてAlOx層の場合のほうがHfOx層の場合よりおよそ2.7倍のフラットバンド電圧シフトが得られる。
なお、ここで「高誘電体」とは、SiO2(比誘電率3.8)より比誘電率が高い誘電体を意味している。
薄膜積層構造体10、10aの製造方法について説明する。
薄膜積層構造体10、10aは、通常の薄膜作成方法である、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)等によって作成できる。
また、例えば、Si基板上にAlOx層等の第1の高誘電体層をパルスレーザ堆積法(Pulsed Laser Deposition: PLD)によって成膜し、その後、大気中での600℃〜900℃の範囲でポストアニール処理を行って、Si基板とAlOx層(第1の高誘電体層)との間にSiOx層を形成し、Si基板、SiOx層、AlOx層(第1の高誘電体層)の積層構造を形成してもよい。さらに、その上に第2の高誘電体層及びSiOx層を成膜して薄膜積層構造を形成してもよい。
図4は、実施の形態2に係る薄膜積層構造体10bの構成を示す概略断面図である。図5は、実施の形態2の別例に係る薄膜積層構造体10cの構成を示す概略断面図である。
実施の形態2に係る薄膜積層構造体10bは、図4に示すように、2つの高誘電体層2a、2bをいずれもSiOx層1、4との界面において、正電荷を生じるHk+/−層としている。高誘電体層2aと高誘電体層2bとは、界面双極子5a、5bの方向が互いに逆であって、その大きさが異なる。具体的には、界面双極子5aの双極子モーメント7aのほうが界面双極子5bの双極子モーメント7bより大きい。そのため、薄膜積層構造体10bは、全体として正方向の双極子モーメント7を持つ。
実施の形態2の別例に係る薄膜積層構造体10cは、図5に示すように、2つの高誘電体層2a、2bをいずれもSiOx層1、4との界面において、正電荷を生じるHk+/−層としている。高誘電体層2aと高誘電体層2bとは、界面双極子5a、5bの方向が互いに逆であって、その大きさが異なる。具体的には、界面双極子5aの双極子モーメント7aのほうが界面双極子5bの双極子モーメント7bより大きい。なお、図5では、図4と比べて高誘電体層2aと高誘電体層2bの積層順序を逆にしている。そのため、薄膜積層構造体10cは、全体として負方向の双極子モーメント8を持つ。
このように、大小関係のある界面双極子をもつ高誘電体層2、3を組み合せることによって、薄膜積層構造体10b、10cの全体としての双極子モーメントをゼロとしないようにできる。
図6は、実施の形態3に係る薄膜積層構造体10dの構成を示す概略断面図である。図7は、実施の形態3の別例に係る薄膜積層構造体10eの構成を示す概略断面図である。
実施の形態3に係る薄膜積層構造体10dは、図6に示すように、図1の薄膜積層構造体10が3回繰り返して積層されている。その結果、薄膜積層構造体10dは、全体として図1の薄膜積層構造体10の双極子モーメント7の3倍の双極子モーメント17を有する。また、別例に係る薄膜積層構造体10eは、図7に示すように、図2の薄膜積層構造体10aが3回繰り返して積層されている。その結果、薄膜積層構造体10eは、全体として図2の薄膜積層構造体10aの双極子モーメント8の3倍の双極子モーメント18を有する。
なお、図6及び図7では、図1及び図2の薄膜積層構造体を複数回繰り返して積層していたが、これに限られず、図4又は図5の薄膜積層構造体を複数回繰り返して積層してもよい。
このように、図1、図2、図4、図5の薄膜積層構造体を複数回繰り返して積層することによって、繰り返した回数分について双極子モーメントを蓄積させることができる。
なお、上記薄膜積層構造体を太陽電池の電界効果パッシベーション膜として使用する場合の太陽電池のその他の構成としては通常使用できるものであれば使用できる。pn接合型の太陽電池としては、例えば、n型シリコン半導体層、n型シリコン半導体層と界面を有するp型シリコン半導体層と、n型シリコン半導体層と接続された第1電極と、p型シリコン半導体層と接続された第2電極と、を備えていてもよい。さらに、n型シリコン半導体層の表面、又は、p型シリコン半導体層の表面の少なくともいずれかに界面安定化膜を設けてもよい。また、pin接合型の薄膜シリコン太陽電池(アモルファスシリコン型、微結晶シリコン型、ハイブリッド型)の電界効果パッシベーション膜としても使用することができる。
また、本発明に係る薄膜積層構造体は、蓄積された双極子モーメントによる電界効果を発揮することができる。そこで、電界効果を利用する電気・電子デバイスの電気的特性(スイッチ特性、省電力特性、動作安定性、劣化耐性、等)を改善する効果を発揮することができる。
また、シリコン型太陽電池の電界効果パッシベーション膜では、通常正の固定電荷をもつ膜と負の固定電荷をもつ膜との2つの材料が必要になり、それぞれの膜に専用の作製条件や後処理プロセスが必要になっていた。特に、これらの膜の性質が大きく異なる場合(例えば窒化物と酸化物など)は、プロセスが複雑化し易かった。
図10(a)は、実施例1に係る薄膜積層構造体10fの構成を示す概略断面図である。図10(b)は、図10(a)の薄膜積層構造体10fをスパッタリングしながらXPS分析を行って得られた膜組成の深さ方向分布を示すグラフである。
実施例1に係る薄膜積層構造体10fは、図10(a)に示すように、第1の高誘電体層としてHfO2層、第2の高誘電体層としてY2O3層を用いている。また、図1の薄膜積層構造体を3回繰り返して積層している。
図10(b)に示すように、一定のスパッタリングレートで深さ方向にスパッタリングしながら、Siの2p電子、Yの3d電子、Hfの4f電子、Oの1s電子についてのXPS分析を行うと、Si、Y、Hfの各元素の検出される周期が同じであって、それぞれのピークがシフトしていることがわかる。また、Oは、スパッタリング時間で30分程度からほとんど観測されなくなっており、最下層のSi基板がスパッタリングされていることがわかる。これによって、最下層のSi基板から順にSiOx層、HfO2層、Y2O3層が3回繰り返して積層されていることがわかる。
図11(a)は、実施例2に係る薄膜積層構造体10gの構成を示す概略断面図である。図12(a)は、図11(a)の実施例2に係る薄膜積層構造体10gの繰り返し回数nによる容量−電圧特性の測定結果である。図12(b)は、フラットバンド電圧シフト(VFB−Φms)と繰り返し回数nとの関係を示す棒グラフである。図12(c)は、実効固定電荷量(Qeff)と繰り返し回数nとの関係を示す棒グラフである。
実施例2に係る薄膜積層構造体10gは、図11(a)に示すように、第1の高誘電体層がAl2O3層であり、第2の高誘電体層がY2O3層である。また、図1の薄膜積層構造体を3回繰り返して積層している(n=3)。
図12(a)に示すように、繰り返し回数が増えるにつれて容量−電圧の変化点の電圧が正電圧側にシフトしていることがわかる。具体的には、図12(b)に示すように、繰り返し回数nが増えるにつれてフラットバンド電圧シフト(VFB−Φms)が増加していた。また、実効固定電荷Qeffは、図12(c)に示すように繰り返し回数2回でピークとなり、繰り返し回数3回ではQeffが減少していた。
図11(b)は、実施例3に係る薄膜積層構造体10hの構成を示す概略断面図である。図13(a)は、図11(b)の実施例3に係る薄膜積層構造体10hの繰り返し回数nによる容量−電圧特性の測定結果である。図13(b)は、フラットバンド電圧シフト(VFB−Φms)と繰り返し回数nとの関係を示す棒グラフである。図13(c)は、実効固定電荷量(Qeff)と繰り返し回数nとの関係を示す棒グラフである。
実施例3に係る薄膜積層構造体10hは、図11(b)に示すように、第1の高誘電体層がY2O3層であり、第2の高誘電体層がAl2O3層である。また、図2の薄膜積層構造体を3回繰り返して積層している(n=3)。
図13(a)に示すように、繰り返し回数が増えるにつれて容量−電圧の変化点の電圧が正電圧側にシフトしていることがわかる。具体的には、図13(b)に示すように、繰り返し回数nが増えるにつれてフラットバンド電圧シフト(VFB−Φms)が増加していた。また、実効固定電荷(Qeff)は、図13(c)に示すように繰り返し回数が増えるにつれて増加しているものの、繰り返し回数2回から繰り返し回数3回へのQeff増分は小さかった。
図14は、実施例4に係る薄膜積層構造体10iの界面双極子の分布の一例を示す概略断面図である。
実施例4に係る薄膜積層構造体10iは、図14に示すように、深さ方向にわたる界面双極子だけでなく、面内に分布する界面双極子を有する。界面双極子が深さ方向にわたって順に存在する場合、上下に隣接する界面双極子がそれぞれ相殺すると考えると、最下層の電荷と最上層の電荷とによる双極子のみが実効的な双極子となると考えられる。しかし、図14に示すように、各界面には面内にわたって界面双極子が複数形成される。その結果、上下の界面で相殺しない界面双極子、及び、界面双極子によって生じる固定電荷が存在し、薄膜積層構造体10iは、界面双極子の体積的な分布による電界効果を奏すると考えられる。
2 High−k層(Hk+/−)(第1の高誘電体層:第2の高誘電体層)
3 High−k層(Hk−/+)(第2の高誘電体層:第1の高誘電体層)
4 第2のSiOx層
5、5a、5b 界面双極子(+/−双極子)
6 界面双極子(−/+双極子)
7、7a、7b、17 双極子モーメント(正方向)
8、18 双極子モーメント(負方向)
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i 薄膜積層構造体
11 酸素イオン空孔
12 酸素イオン
21 Si基板
22 SiOx層
23 Al2O3層
Claims (7)
- 第1のSiOx層と、
前記第1のSiOx層の上に設けられた第1の高誘電体層と、
前記第1の高誘電体層の上に設けられた第2の高誘電体層と、
前記第2の高誘電体層の上に設けられた第2のSiOx層と、
を備え、
前記第1のSiOx層と前記第1の高誘電体層との界面において形成される第1の界面双極子を有し、
前記第2の高誘電体層と前記第2のSiOx層との界面において形成される第2の界面双極子を有し、
前記第1の界面双極子による双極子モーメントと前記第2の界面双極子による双極子モーメントとの総和としてゼロでない双極子モーメントを有する、薄膜積層構造体を複数回繰り返して積層した薄膜積層構造体。 - 前記第1の界面双極子と前記第2の界面双極子とは、互いに同じ方向の界面双極子である、請求項1に記載の薄膜積層構造体。
- 前記第1の界面双極子と前記第2の界面双極子とは、互いに逆方向の界面双極子であって、それぞれの大きさが異なる、請求項1に記載の薄膜積層構造体。
- 前記第1のSiOx層は、16nm以下の厚さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の薄膜積層構造体。
- 前記複数回繰り返された前記薄膜構造体の膜厚の合計が20nm以下である、請求項1に記載の薄膜積層構造体。
- Si層を有するシリコン型太陽電池であって、裏面側のSi層に、請求項1から5のいずれか一項に記載の前記薄膜積層構造体を電界効果パッシベーション膜として設けたシリコン型太陽電池。
- Si層を有するシリコン型太陽電池であって、裏面側のSi層に、薄膜積層構造体を電界効果パッシベーション膜として設けたシリコン型太陽電池であって、前記薄膜積層構造体は、
第1のSiOx層と、
前記第1のSiOx層の上に設けられた第1の高誘電体層と、
前記第1の高誘電体層の上に設けられた第2の高誘電体層と、
前記第2の高誘電体層の上に設けられた第2のSiOx層と、
を備え、
前記第1のSiOx層と前記第1の高誘電体層との界面において形成される第1の界面双極子を有し、
前記第2の高誘電体層と前記第2のSiOx層との界面において形成される第2の界面双極子を有し、
前記第1の界面双極子による双極子モーメントと前記第2の界面双極子による双極子モーメントとの総和としてゼロでない双極子モーメントを有する、Si層を有するシリコン型太陽電池。
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