JP6479708B2 - 特徴量抽出装置、推定装置、それらの方法、およびプログラム - Google Patents
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[原理]
まず本形態の原理を説明する。各実施形態では、「第1時間区間」での眼の動的な変化に基づいて得られた「第1特徴量」と、「第2時間区間」での眼の動的な変化に基づいて得られた「第2特徴量の時系列情報」から推定した「第1時間区間」での特徴量と、の相違の度合いに応じた「第3特徴量」を得る。「第3特徴量」は、「第2特徴量の時系列情報」を用いて予測された「第1時間区間」での特徴量に対し、実際に「第1時間区間」での眼の動的な変化に基づいて得られた「第1特徴量」がどの程度異なっているかを表す。つまり「第3特徴量」は、「第2時間区間」から予測される特徴量の趨勢からみて「第1時間区間」がどれだけ突飛なものであるかを表す指標である。そのため、「第3特徴量」を用いることで、「第1時間区間」および「第2時間区間」の環境を人為的に設定することなく、任意の環境で得られた眼の動的な変化から対象者の心理状態を推定できる。例えば、「第3特徴量」を対象者の注意度合いおよび驚き度合いの少なくとも一方を表すため、少なくとも「第3特徴量」を含む特徴量から注意度合いおよび驚き度合いの少なくとも一方を推定できる。また「第3特徴量」は「第2時間区間」での「第2特徴量の時系列情報」から予測される特徴量の趨勢(例えば、増加傾向にある、減少傾向にある、定常状態にあるなど)からみた新奇性を表すため、単純に「第2時間区間」での特徴量の平均値などに対する「第1特徴量」の相違の度合いを評価する場合に比べ、高い精度で対象者の心理状態を推定できる。
次に図面を用いて第1実施形態を説明する。
<構成および処理>
図1に例示するように、本形態のシステムは特徴量抽出装置11、および、推定装置12を含む。特徴量抽出装置11は、眼球情報取得部111、特徴量抽出部112、および特徴量算出部113を含み、推定装置12は推定部121を含む。特徴量算出部113は、予測モデル生成部113aおよび予測誤差特徴量計算部113bを有する。特徴量抽出装置11および推定装置12のそれぞれは、例えば、CPU(central processing unit)等のプロセッサ(ハードウェア・プロセッサ)およびRAM(random-access memory)・ROM(read-only memory)等のメモリ等を備える汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。このコンピュータは1個のプロセッサやメモリを備えていてもよいし、複数個のプロセッサやメモリを備えていてもよい。このプログラムはコンピュータにインストールされてもよいし、予めROM等に記録されていてもよい。また、CPUのようにプログラムが読み込まれることで機能構成を実現する電子回路(circuitry)ではなく、プログラムを用いることなく処理機能を実現する電子回路を用いて一部またはすべての処理部が構成されてもよい。また、1個の装置を構成する電子回路が複数のCPUを含んでいてもよい。
眼球情報取得部111は、対象者100の各離散時刻の「眼の動的な変化」に関する時系列情報を取得し、取得した目の動的な変化に関する時系列情報を特徴量抽出部112へ出力する。取得される「眼の動的な変化」は、対象者100の眼球自体の動きであってもよいし、瞳孔の動きであってもよいし、それら両方であってもよい。眼球情報取得部111は、両眼の動的な変化に関する時系列情報を取得してもよいし、何れか一方の眼の動的な変化に関する時系列情報を取得してもよい。
特徴量抽出部112は、取得された「眼の動的な変化」に関する時系列情報から、所定の時間区間Ft(部分時間区間)での「眼の動的な変化」に基づく特徴量(yt,1,…,yt,d)(第1特徴量)、および、所定の時間区間Ft-1,…,Ft-pのそれぞれでの「眼の動的な変化」に基づく特徴量(yt-1,1,…,yt-1,d),…,(yt-p,1,…,yt-p,d)(第2特徴量)を抽出して出力する。ただし、i=t,t-1,…,t-pは時間区間Fiに対応する離散時間を表すインデックスであり、tは離散時間を表すインデックスであり、dは特徴量の要素数、すなわち次元を表す正の整数であり、pは1以上の整数であるが2以上であることが望ましい。iやtは値の大きさが大きいほど、新しい離散時間に対応する。pは定数であってもよいし、変数であってもよい。図6に例示するように、時間区間Ftが第1時間区間T1であり、p個の時間区間Ft-1,…,Ft-pからなる区間が第2時間区間T2である。特徴量がスカラである場合にはd=1であり、特徴量がベクトルである場合にはdは2以上の整数である。例えば、特徴量抽出部112は、各tにおいて、対象者100の「眼球自体の動き」「瞳孔の動き」の少なくとも何れかに基づく特徴量を要素としたスカラまたはベクトルを特徴量(yi,1,…,yi,d)(ただし、i=t,t-1,…,t-p)として抽出する。
「眼球自体の動き」に基づく特徴量としては、例えば「マイクロサッカード」や「ラージサッカード」の特徴量を例示できる。「マイクロサッカード」および「ラージサッカード」の特徴量を用いる場合は、時間区間Fiはそれぞれ必ず一つだけのマイクロサッカードを含むか、あるいは一つだけのラージサッカードを含むように設定する。このとき、モデルの精度を上げるためには、なるべくマイクロサッカードやラージサッカードの誤検出や検出漏れのないことが望ましい。
「マイクロサッカード」とは、眼球の動きに表れる微細な跳躍性眼球運動をいう。人間がある一点を注視しているとき、眼球は完全に動きを止めているわけではなく、固視微動と呼ばれる三種類の眼球運動であるドリフト(drift、trendといってもよい)、トレマ、マイクロサッカード(フリックといってもよい)を行っている。ドリフトは小さな滑らかな動き、トレマは非常に小さな高周波の振動、マイクロサッカードは小さな跳ぶような動きである。図3を用いてマイクロサッカードを例示する。図3ではマイクロサッカードMS1〜MS3を太線で強調して示す。マイクロサッカードはある一点を注視している状態において、1〜2秒の間に1回程度、個人の意思とは関係なく(不随意に)表れる眼球の動きであって、小さな跳ぶような動きのことである。マイクロサッカードは、動きの水平方向の成分、垂直方向の成分のどちらからでも取得することができる。本実施形態では、マイクロサッカードが水平方向に偏向する性質に基づき、簡単のため水平方向の成分のみを用いる。しかし、本発明で用いることができるマイクロサッカードの方向成分は水平方向に限定されない。なお、「水平方向」とは、地面と平行な方向に限定する意味ではなく、対象者100の顔に対しての水平方向(眼球の配列方向であり、横方向、幅方向といってもよい)や眼球情報取得部111において水平方向と定義された方向を含む概念である。
(1)基準振幅A:マイクロサッカードによる眼球の動きが収束したときの移動量である。
(2)最大速度Vmax:基準振幅A+オーバーシュートの振幅Aoに達するまでの最大の速度である。
(3)持続時間Dm:マイクロサッカードが起きている時間区間の長さである。マイクロサッカードの開始時刻は1次階差系列の絶対値が所定の閾値を上回る時刻で、マイクロサッカードの終了時刻は、オーバーシュートの振幅に達したあとに初めて基準振幅Aに戻る時刻である。
(4)オーバーシュート(overshoot)の振幅Ao:マイクロサッカードによって基準振幅Aを超過した(行き過ぎた)部分の量である。オーバーシュートとは、波形の立ち上がり部分で、波形が基準振幅Aを超えて突出する現象、または、その突出した波形である。言い換えると、オーバーシュートの振幅とは、突出した部分の量である。
(5)オーバーシュートの速度Vo:基準振幅A+オーバーシュートの振幅Aoから基準振幅Aに収束しようとする際の最大の速度である。
(6)立ち上がり時間K:基準振幅A+オーバーシュートの振幅Aoに達する(立ち上がる)までにかかる時間である。なお、基準振幅A+オーバーシュートの振幅Aoに達するまでにかかる時間は、最大速度Vmaxからオーバーシュートの速度Voに達するまでにかかる時間と同じ値となる。
(7)減衰率λ:基準振幅Aに対するオーバーシュートの振幅Aoの比である。最大速度Vmaxに対するオーバーシュートの速度Voの比としてもよく、
と表される。
と表される。固有角振動数ωnはマイクロサッカードの応答の速さを表す指標に相当し、減衰係数ζはマイクロサッカードの応答の収束性を表す指標に相当する。
「ラージサッカード」とは、マイクロサッカードよりも振幅の大きな跳躍性眼球運動をいい、一般に振幅が視野角2度以上の場合をラージサッカード、2度未満のものをマイクロサッカードとする。特徴量抽出部112は、前述の基準振幅Aが所定の閾値以上となった時刻を、ラージサッカードの起きた開始時刻として検出すればよい。ラージサッカードの特徴量の例は、ラージサッカードの発生タイミングに基づく値Z、運動方向に応じた値D、基準振幅A、最大速度Vmax、持続時間Dm、オーバーシュートの振幅Ao、オーバーシュートの速度Vo、立ち上がり時間K、減衰率λ、減衰係数ζ、固有角振動数ωn、単位時間あたりの発生回数Rm、発生回数などである。これらの具体例は、前述したマイクロサッカードの特徴量の例の「マイクロサッカード」を「ラージサッカード」に置換したものである。時間区間Fiで発生したラージサッカードの特徴量の少なくとも何れかを特徴量(yi,1,…,yi,d)の何れかの要素としてもよい。前述した理由より、特にラージサッカードの発生タイミングに基づく値Z、運動方向に応じた値D、基準振幅Aの絶対値|A|、減衰係数ζを用いることが望ましい。
図5に例示したように、瞳孔の大きさは一定ではなく、変化している。瞳孔の大きさは交感神経系の支配を受けた瞳孔散大筋によって拡大(散瞳)し、副交感神経系の支配を受けた瞳孔括約筋によって収縮(縮瞳)する。瞳孔の大きさの変化は主に対光反射、輻輳反射、感情による変化の3つに区別される。対光反射は、網膜に入射する光量を制御するために瞳孔の大きさが変化する反応のことで、強い光に対しては縮瞳、暗所では散瞳が生じる。輻輳反射は、焦点を合わせる際に両眼が内転あるいは外転する運動(輻輳運動)に伴って瞳孔径が変化する反応のことで、近くを見るときには縮瞳、遠くを見るときには散瞳が生じる。感情による変化は、上記のいずれにもよらず外界のストレスに対して生じる反応のことで、怒りや驚き、活発な活動に伴って交感神経が優位となる際には散瞳が生じ、リラックスして副交感神経が優位となる際には縮瞳が生じる。「瞳孔の動き」に基づく特徴量としては、縮瞳の特徴量や散瞳の特徴量を用いることができる。
縮瞳の開始する時刻(以下、縮瞳開始点)は、瞳孔の大きさの時系列から極大点を抽出することによって検出する。縮瞳の終了する時刻(以下、縮瞳終了点)は、縮瞳開始以降初めて散瞳が開始した点、または縮瞳開始以降初めて瞬目が開始した点のうち、時間が早い方とする。縮瞳の振幅Acは、縮瞳開始点から縮瞳終了点までの瞳孔径の差である。縮瞳の持続時間Dcは、縮瞳開始点から縮瞳終了点までの時間差である。平均縮瞳の速度Vcは、(振幅Ac)/(持続時間Dc)である。時間区間Fiで発生した縮瞳の振幅Ac、縮瞳の持続時間Dc、平均縮瞳の速度Vc、縮瞳の発生回数などを時間区間Fiでの「瞳孔の動き」に基づく特徴量として用いることができる。特徴量抽出部112は、時間区間Fiで発生した縮瞳の振幅Ac、縮瞳の持続時間Dc、平均縮瞳の速度Vc、縮瞳の発生回数の少なくとも何れかを特徴量(yi,1,…,yi,d)の何れかの要素としてもよい。時間区間Fiにおいて縮瞳が複数検出された場合、一つ一つの縮瞳について求めた縮瞳の振幅Ac、縮瞳の持続時間Dc、平均縮瞳の速度Vcのそれぞれの代表値の何れかを特徴量(yi,1,…,yi,d)の何れかの要素としてもよい。なお、ノイズによる誤検出を防ぐために、縮瞳の持続時間が所定の閾値(例えば、10ms)以下の場合、あるいは縮瞳の振幅が所定の閾値以下の場合は、その縮瞳を検出から除外してもよい。
散瞳の開始する時刻(以下、散瞳開始点)は、瞳孔径の時系列から極小点を抽出することによって検出する。散瞳の終了する時刻(以下、散瞳終了点)は、散瞳開始以降初めて縮瞳が開始した点、または散瞳開始以降初めて瞬目が開始した点のうち、時間が早い方とする。散瞳の振幅Adは、散瞳開始点から散瞳終了点までの瞳孔径の差である。散瞳の持続時間Ddは、散瞳開始点から散瞳終了点までの時間差である。散瞳の平均速度Vdは、(振幅Ad)/(持続時間Dd)である。時間区間Fiで発生した散瞳の振幅Ad、散瞳の持続時間Dd、平均散瞳の速度Vd、散瞳の発生回数などを時間区間Fiでの「瞳孔の動き」に基づく特徴量として用いることができる。特徴量抽出部112は、時間区間Fiで発生した散瞳の振幅Ad、散瞳の持続時間Dd、平均散瞳の速度Vd、散瞳の発生回数の少なくとも何れかを特徴量(yi,1,…,yi,d)の何れかの要素としてもよい。時間区間Fiにおいて散瞳が複数検出された場合、一つ一つの散瞳について求めた散瞳の振幅Ad、散瞳の持続時間Dd、平均散瞳の速度Vdのそれぞれの代表値の何れかを特徴量(yi,1,…,yi,d)の何れかの要素としてもよい。なお、ノイズによる誤検出を防ぐために、散瞳の持続時間が所定の閾値(例えば、10ms)以下の場合、あるいは散瞳の振幅が所定の閾値以下の場合は、その散瞳を検出から除外してもよい。
特徴量(yi,1,…,yi,d)(ただし、i=t,t-1,…,t-p)は特徴量算出部113に送られる。例えば、d=5であり、マイクロサッカードの発生タイミングに基づく値Z、運動方向に応じた値D、基準振幅Aの絶対値|A|、減衰係数ζ、および固有角振動数ωnを特徴量の要素とする場合、特徴量(yi,1,…,yi,5)の要素は以下のようになる。このように第1特徴量(yt,1,…,yt,5)と第2特徴量(yt-1,1,…,yt-1,5),…,(yt-p,1,…,yt-p,5)とは同じ種別の特徴量である。
予測モデル生成部113aは、これまでの各t’で得られた(yt’,1,…,yt’,d),…,(yt’-p,1,…,yt’-p,d)を入力とし、以下のベクトル自己回帰モデルの係数c1,…,cd,φ1,1 (1),…,φd,d (1),…,φ1,1 (p),…,φd,d (p)を算出して出力する。ここでt≧t’である。例えばt’=t,t-1,t-2,...,t-wであり、wはw<tの整数である。例えば、t-wは時間インデックスの初期値(例えば、t-w=1)である。係数c1,…,cd,φ1,1 (1),…,φd,d (1),…,φ1,1 (p),…,φd,d (p)は、例えば、すべてのt’=t,t-1,t-2,...,t-wについての予測誤差(予測残差)εt’,1,…,εt’,dの大きさを最小化するように選択される。例えば、t’=t,t-1,t-2,...,t-wについてのεt’,1,…,εt’,dの合計やその関数値が最小となるように係数c1,…,cd,φ1,1 (1),…,φd,d (1),…,φ1,1 (p),…,φd,d (p)が設定される。
選択された係数c1,…,cd,φ1,1 (1),…,φd,d (1),…,φ1,1 (p),…,φd,d (p)は、予測誤差特徴量計算部113bに送られる。
予測誤差特徴量計算部113bは、係数c1,…,cd,φ1,1 (1),…,φd,d (1),…,φ1,1 (p),…,φd,d (p)、および、特徴量(yi,1,…,yi,d)(ただし、i=t,t-1,…,t-p)を入力とし、以下のようにtに対応する特徴量St(第3特徴量)を得て出力する。
ただし、
であり、
であり、[・]Tは[・]の転置である。Σtはy^tの分散共分散行列であり、Σtのi行j列の要素Σijは以下の通りである。
ただし、E[・]は[・]の期待値を表す。
ここで、μはytの平均ベクトルであり、Σt’はytの分散共分散行列である。特徴量Stは、第2特徴量から推定された確率分布における第1特徴量の出現確率が0に近いほど大きくなって1に近づき、出現確率が1に近いほど小さくなって0に近づく。つまり、特徴量Stは、新奇な状態であって対象者100の注意度合いや驚き度合いが高いほど大きな値となり、逆に、対象者100の注意度合いや驚き度合いが低いほど小さな値をとる。
特徴量Stは推定装置の推定部121に送られる。推定部121は、少なくとも特徴量Stを用い、注意度合いおよび/または驚き度合いといった対象者100の心理状態を推定し、その推定結果を出力する。
第1実施形態では、予測モデル生成部113aがリアルタイムに係数c1,…,cd,φ1,1 (1),…,φd,d (1),…,φ1,1 (p),…,φd,d (p)を更新した。しかしながら、事前に係数c1,…,cd,φ1,1 (1),…,φd,d (1),…,φ1,1 (p),…,φd,d (p)を計算しておき、これらの更新しないことにしてもよい。以下ではこれまで説明した事項との相違点を中心に説明し、既に説明した事項については同じ参照番号を引用して説明を簡略化する。
本形態は第1または2実施形態の変形例である。本形態では、少なくとも特徴量Stを事前に学習された予測モデルに適用し、注意度合いおよび/または驚き度合いといった対象者100の心理状態を推定する。
次に、式(1)を用い、実際の実験で測定されたマイクロサッカードから特徴量St(サプライズ値:surprise)を計算し、心理物理実験に基づく評価を行った例を紹介する。実験例においては、特徴量Stの心理物理評価として、音列消失の検知にかかる反応時間を計測した。
健常成人6名(平均年齢27.6±1.2歳,女性2名)が実験に参加した。実験では、規則的(図7Aの上図)あるいは不規則(図7Aの下図)な間隔で1000Hzの純音(持続時間200ms)がランダムな回数呈示された。被験者には、「音列の呈示が終了した」と感じたタイミングで、なるべく早くボタン押しを行うよう教示した。純音の呈示回数には、8回,10回,12回の3条件を用い、試行毎にランダムに切り替えた。純音同士の呈示時間隔(呈示開始時間の間隔)は、すべて500msの条件(図7Aの上図:規則呈示条件),500±50ms,500±100ms,500±150ms,500±200msの条件(図7Aの下図:不規則呈示条件)の計5条件を試行毎にランダムに切り替えた。不規則呈示条件では、呈示時間隔は上記の幅の中で一様分布に従うものとし、一つの試行の中に同じ時間隔は存在しないように設定した。ただし、反応に際する条件の統一のため、各試行の最後の音とその一つ前の音の呈示時間隔はすべて500msとした。呈示時間隔及び呈示回数の条件毎に10回の繰り返しを行い、被験者毎に計150試行を行った。
音列消失検知にかかる反応時間は、規則的な音列ほど早かった。規則的な間隔で呈示される音列は、消失のタイミングがはっきりとしており、不規則的な間隔で呈示される音列に比べて消失の検知にかかる反応時間が早くなるものと考えられる。また、音列消失検知にかかる反応時間は、消失までの呈示回数が多いほど早かった。これは試行の繰り返しによる効果を反映しているものと考えられる。すなわち、呈示回数が少ないほど音列が消失する確率は経験的には低くなるため、判断に遅れが生じるものと考えられる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、式(1)に代えて、以下の式によって特徴量St(第3特徴量)が得られてもよい。
ただしγは任意の定数である(例えば、0<γ≦1)。また、前述の式(2)は第1特徴量が多変量正規分布に従っていることを前提としている。しかし、これは本発明を限定するものではない。特徴量Stの計算にあたっては、第2特徴量の時系列情報に基づいて推定された分布における第1特徴量の確率Ptを計算した上で、一般に
とすることもできる。また、少なくとも特徴量Stを用い、注意度合いや驚き度合い以外の対象者100の心理状態を推定してもよい。例えば、少なくとも特徴量Stを用い、対象者100のリラックス度合いや緊張度合いなどの心理状態を推定してもよい。
12,32 推定装置
Claims (11)
- 第1時間区間での眼の動的な変化に基づいて得られた第1特徴量と、第2時間区間での眼の動的な変化に基づいて得られた第2特徴量の時系列情報から推定した前記第1時間区間での推定特徴量と、の相違の度合いに応じた第3特徴量を得、
前記第1特徴量と前記第2特徴量と前記推定特徴量とは同じ種別の特徴量である、特徴量抽出装置。 - 請求項1の特徴量抽出装置であって、
前記第1特徴量および前記第2特徴量は、眼球のサッカードに基づく特徴量を含む、特徴量抽出装置。 - 請求項2の特徴量抽出装置であって、
前記第1特徴量および前記第2特徴量は、眼球の運動方向および眼球運動の減衰係数の少なくとも一方に基づく特徴量を含む、特徴量抽出装置。 - 請求項2または3の特徴量抽出装置であって、
前記第1特徴量および前記第2特徴量は、眼球のサッカードの発生タイミングに基づく特徴量を含む、特徴量抽出装置。 - 請求項1から4の何れかの特徴量抽出装置であって、
前記第1特徴量および前記第2特徴量は、一方の眼の動的な変化に由来する値と他方の眼の動的な変化に由来する値との相対量に基づく特徴量を含む、特徴量抽出装置。 - 請求項1から5の何れかの特徴量抽出装置であって、
前記第1特徴量および前記第2特徴量は、一方の眼の瞳孔の動きに由来する値と他方の眼の瞳孔の動きに由来する値との相対量に基づく特徴量を含む、特徴量抽出装置。 - 請求項1から6の何れかの特徴量抽出装置であって、
前記第3特徴量は、注意度合いおよび驚き度合いの少なくとも一方を表す、特徴量抽出装置。 - 少なくとも、第1時間区間での眼の動的な変化に基づく第1特徴量と、第2時間区間での眼の動的な変化に基づく第2特徴量の時系列情報から推定した前記第1時間区間での推定特徴量と、の相違の度合いに応じた第3特徴量を用い、注意度合いおよび驚き度合いの少なくとも一方を推定し、
前記第1特徴量と前記第2特徴量と前記推定特徴量とは同じ種別の特徴量である、推定装置。 - 第1時間区間での眼の動的な変化に基づいて得られた第1特徴量と、第2時間区間での眼の動的な変化に基づいて得られた第2特徴量の時系列情報から推定した前記第1時間区間での推定特徴量と、の相違の度合いに応じた第3特徴量を得、
前記第1特徴量と前記第2特徴量と前記推定特徴量とは同じ種別の特徴量である、特徴量抽出方法。 - 少なくとも、第1時間区間での眼の動的な変化に基づく第1特徴量と、第2時間区間での眼の動的な変化に基づく第2特徴量の時系列情報から推定した前記第1時間区間での推定特徴量と、の相違の度合いに応じた第3特徴量を用い、注意度合いおよび驚き度合いの少なくとも一方を推定し、
前記第1特徴量と前記第2特徴量と前記推定特徴量とは同じ種別の特徴量である、推定方法。 - 請求項1から7の何れかの特徴量抽出装置または請求項8の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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