JP6479447B2 - 歩行状態判定方法、歩行状態判定装置、プログラム及び記憶媒体 - Google Patents
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Description
歩行状態を計測するための既存技術としては、加速度センサやジャイロセンサを内蔵した小型装置を歩行者が携行するもの(例えば特許文献1)や、床に圧力センサを設置するもの(例えば特許文献2)が一般的である。
マイクを用いて歩行音(足音)を計測する技術も既に報告されている。歩行状態を直接観測した情報ではなく、歩行に付随して生じる音響情報から間接的に推定する技術の開発が必要となるが、プライバシーや設置コストなどの面で利点が多い。
足音から歩行周期を抽出する公知例として、例えば特許文献6では、周期性を予め仮定した統計モデルを適用しているため、左右のバランスや周期性のずれを検出するには不向きと考えられるが、左右のバランスや周期性のずれも想定した周期抽出方法を提案することを課題とする。
さらに、歩行器官の関節の悪化等の健康管理や、歩行中の躓きなどの生活上の事故の防止などの観点からは、左右の歩行バランスのくずれを検出することが、それらの指標として重要である。
既存研究事例としては、例えば非特許文献2があるが、ジャイロセンサを用いて足の動きを着地のしかたなども含めて詳細に分析するものであり、実装の簡便さや実用性の面で課題がある。
これらの課題は、足音のような音響情報から歩行状態を推定するために掲げた課題であるが、その解決のための手法は、加速度センサや距離センサなどから得られるような、音響以外の情報に対しても共通性があって、他のセンサへ適用範囲を広げられる方法となるならばさらによい。
歩行者の歩行時に生じる足音などの音響情報をマイクロフォンなどのセンサにより電気信号として入力し、
前記電気信号を解析して歩行に関連する特徴量の時間変化量に変換する特徴抽出処理と、
前記時間変化量を解析して該歩行周期(1歩分および2歩分)とその確からしさを推定する歩行周期抽出処理と、
を適用して得られた該歩行周期とその確からしさの推定値から、歩行者の歩行状態に関する情報を生成する歩行状態解析処理を適用することにより、
前記歩行者の歩行状態に関する情報を出力することを可能とする歩行状態判定方法を提供する。
前記特徴抽出処理は、前記電気信号の8kHz以上の周波数帯域の成分のパワー(平均エネルギー)の時間変化量に変換することにより、足音以外の生活音や人の音声などの影響を低減可能な、特徴抽出方法を提供する。
前記歩行周期抽出処理は、前記特徴抽出処理で得られる時間変化量を入力として、それを自己相関、ケプストラム、平均振幅誤差のいずれかの量に変換した上で、さらにそれを正規化する周期性抽出関数を適用することにより、歩行周期を推定しその確からしさを出力することを特徴とする、歩行周期推定方法を提供する。
前記歩行状態解析処理は、前記歩行周期抽出処理で得られる歩行周期と確からしさの値に基づいて、判定データベース(判定DB)において適切に設定された或る特定の基準値と比較することにより、入力された電気信号に該当する時間区間において歩行が為されているか否かを判定する歩行行為判定方法を提供する。
前記判定DBにおける基準値は、前記歩行周期抽出処理で得られる歩行周期と確からしさの値を蓄積し、それを予め若しくは逐次的に統計処理して得られる統計分布に基づいて適切に設定された関数値に対応して適切に設定された閾値として得られる。
前記歩行状態解析処理は、前記歩行周期抽出処理で得られる歩行周期と確からしさの値に基づいて、1歩ごとの周期に対応した確からしさと、2歩(左右足の組)分の周期に対応した確からしさとを抽出した上で、両者を比較する相対値に変換することにより、歩行時の左右のバランスの良し悪しを表す推定値を出力する歩行状態推定方法を提供する。
前記歩行状態解析処理で得られる推定値を一定期間以上にわたって保存し、その統計量を判定データベースにある基準値と比較して異常値を検出することにより、歩行の異常を検出する歩行異常検出方法を提供する。
(7)
例えば、距離センサを用いて歩行者の脚を観測した情報を電気信号に変換したものを入力信号とし、前記特徴抽出処理において、脚について得られた距離情報から歩行者の脚の関節の位置を推定し、推定された脚の関節の位置情報に基づいて脚の関節の運動距離の時間変化量に変換する、ことにより歩行状態を検出する方法を提供する。
さらに他の例として、入力される信号として、歩行者に装着した加速度センサを用いて歩行者の動きの情報を電気信号に変換し、前記特徴抽出処理としては、加速度を時間ごとに集計した総量の時間変化量に変換することにより、歩行状態を検出する方法を提供する。
(9)
(1)乃至(8)の歩行状態判定方法を実行することを特徴とする歩行状態判定プログラム、および該プログラムを記録した記憶媒体を提供する事ができる。
(10)
少なくともセンサ機器(マイクロフォン、距離センサ、加速度センサなど)、情報処理装置(表示装置を含む)を備え、(1)乃至(8)の歩行状態判定方法を実行することを特徴とする歩行状態判定装置として提供する事ができる。
また、(2)において、センサとしてマイクを利用する形態において、音響データのうちでも一部の子音を除き音声情報をほとんど含まない8kHz以上の高周波成分のみを用い、さらにそのうちでも音波波形を直接用いず、数ミリ秒程度ごとのパワー情報のみに変換したデータを用いるため、プライバシー上の問題がほぼ解消する効果がある。特許文献4において提案されている、100Hz以下の低周波成分を利用する方法と比べても、そこに含まれる音声情報は大幅に少なくなるとともに、床の振動や生活騒音の影響による精度の低下も少ない。
また、(3)において、歩行周期抽出に最適化された正規化手法を含む周期性抽出関数を適用することにより、実際の生活環境においても頑健で精度の高い歩行周期が推定可能になるとともに、推定の確からしさの情報も同時に得られる効果がある。
また、(4)において、歩行周期とその確からしさの値を指標として、観測しているデータの中から歩行している期間とそれ以外の期間とが高精度に判定でき、生活状況や運動量などの安全や健康に関する指標となる情報が得られる効果がある。
また、(5)及び(6)において、左右の歩行バランスの判定が得られ、高齢者の加齢に伴う足関節の衰えなどのような、歩行器官の悪化を検知可能となり、さらには、歩行中のつまずきなど、歩行の際の事故等の検知も可能となる効果がある。
また、(7)及び(8)において、音響データの代わりに、加速度情報や関節位置情報を利用する形態においても、ほぼ共通した方法が適用可能であるため、プライバシーや実用性を考慮して目的に適した実装方法を選択して、歩行状態判定方法を利用できる効果がある。
処理の概略は次のようになる。入力された信号が特徴抽出部において特徴量に変換され、そこから歩行周期を抽出した後、その結果を利用して歩行状態を解析する。
これらの処理は、個々の処理を個々の装置で順次実行してもよいし、少なくとも入力装置(電気信号変換装置を含む)、処理装置あるいは演算処理装置、出力装置あるいは表示装置と記憶装置を備えた情報処理装置においてプログラム的に実行してもよいし、組み込みシステムに組み込んでもよい。
そのような実施形態の例として、以下に2種類を取上げその詳細を説明する。
図2を用いてその全体構成を説明する。
部屋に設置したマイクロフォンにより音響情報を電気信号に変換する。
その信号は、歩行状態分析処理装置に送られ処理される。
その出力信号を有線または無線で接続された表示装置等に送り、判定結果を知らせる。
この信号は、実際の高齢者が住宅内で歩行した際に収録したもので、足音だけでなく家具の衝突音や人の音声も含んでいる。
信号は、標本化周波数48kHzで24bitに量子化して収録した。
その波形を図3(a)に示す。
ここでは、特徴量として,次の式(1)のように高周波数帯域の対数パワーに変換した。
分析結果として得られる周波数の範囲はナイキスト周波数である24kHzまでであり、それが図3(b)の縦軸に表示された範囲となるが、人間の音声の周波数成分は一部の子音を除きほとんどが4kHz程度までであり、高くても8kHz以上の帯域にはほとんど含まれないのに対して、足音の周波数成分が、図3(b)の上半分以上の高い周波数の範囲にまで広く分布していることがわかる。
そこで、ここではFlとして12kHzを採用し、Fhとしては24kHzを採用した。
この周波数範囲には人間の音声帯域がほとんど含まれないため、プライバシー上の問題が低減される。
さらに、それを式(1)のように積分した量に変換することにより、そこからの音声情報の抽出はほぼ不可能となる。
特徴量に用いる周波数の範囲は、この例のように歩行者がスリッパを履いている場合では比較的高い帯域に分布するが、履物や床の状態などが異なる場合は、対象となる足音に応じて適した範囲を選択することにより精度が改善できる。
周期の抽出方法としては、自己相関関数を用いる手法が一般的であり、式(2)のように時系列信号の自己相関関数を算出し、その極大値を抽出することにより、周期が推定される。
式(3)においてFはフーリエ変換を表す。
式(4)において、Mは算出する時間差の上限を、Lは時系列の長さを表している。
AMDFで得られる結果は自己相関関数と実質的に同じであるが、周期の位置がその極小値として得られる点と、計算効率とが異なる。
式(4)で絶対値をとる代わりに二乗値を用いる場合も実質は変わらない。
Ajが極小値をとる位置が周期として推定され、そのjの値をフレーム周期と乗算して時間量に変換することにより、推定周期が得られる。
時間軸方向、即ちjを0から増やす方向にたどって最初の極小値が片足1歩分に相当する周期(片足周期)として、2番目の極小値が左右2歩分に相当する周期(両足周期)として推定される。
さらに、極小値を強調して抽出精度を向上するための周期性抽出関数として、次の式(5)のように最大値に基づいて極小値を正規化する処理を適用した。
この正規化処理は、人間の音声の基本周波数(周期)を抽出する手法(非特許文献1)を基に歩行周期に対応させた。
Bjの極大値の位置が推定周期となる。図3の信号例における正規化極小値Bjを図3(e)に示す。
それらを抽出する具体的な手順の例を述べる。
まず次式(6)に従ってBjの最大値Uを得る。
そのような領域の各々において最大値を求め、それに対応するjの値を周期候補とする。
その際に最大値がThより小さい場合は候補から除く。得られた周期候補の値を時間量に変換したものが、値の小さい順に片足周期M1及び両足周期M2として得られる。
同時に、その各々の最大値の値が各々の推定周期の確からしさの値L1及びL2として得られる。
ここでは、Kh及びKlの値として0.5及び0.25を用いた。
このカテゴリは、片足周期として各々{400ミリ秒、450ミリ秒、500ミリ秒、550ミリ秒、600ミリ秒}に対応させており、人手で分類する際には、それぞれの周期で合成した合成足音を用意して、それを基準として比較聴取しながら行った。
誤差100ミリ秒以内での正解率は85.5%、平均誤差は59.7ミリ秒であった。
解析結果のひとつとして、対象としているデータが歩行中の際のものか否かの判定ができる。
そのための閾値決定処理として、例えば上記により得られた、片足周期、両足周期並びに各々の確からしさに相当する(M1, M2, L1, L2)の計4個の値を歩行周期パラメータとして、足音とその他の音を含む多数のサンプルに適用したパラメータを判定用DBに蓄積した上で、これらのデータに対して判別分析等の多変量統計解析手法を適用することにより、得られた判別関数の係数等を判定用DB内に保存する。この関数を足音とその他の音の各サンプルに適用して得られる各々の関数値に関して、両者を最適に分離できるように閾値を設定し判定用DBに保存する。判定する際には、入力データをこの判別関数に適用した関数値を、この閾値と比較することにより、歩行時か否かの判定結果が得られる。
これにより、加齢に伴う膝関節や股関節の障害などの健康上の問題の検知などが可能になる。
図5を用いてその実験事例を説明する。
実験では、健常者で歩行器官の異常を模擬するために、おもりの入ったベルトを片足の足首に巻き、2名の被験者が約10平米の範囲で左回り、右回り、往復の3通りの歩行パターンで各30秒程度歩行して、その際の歩行音を収録し、上記の方法で分析した。
歩行器官に異常のある足音と、異常のない足音のサンプルを集めてこのEの値を算出し、判別分析等で統計的に学習した結果を歩行異常判定閾値として判定用DBに組み込むことにより、歩行器官の異常の判定結果を出力することが可能になる。
さらに、この距離画像データから人間の主な関節の位置が推定され、3次元の座標値として得られる。
図6を用いてその例を説明する。実施例1と同様に、片足周期と両足周期の確からしさを比較することにより、左右バランスが判定可能であることがわかる。
また、この実施例における距離センサの代わりに、加速度センサ等他のセンサを用いる場合でも、例えば3次元の加速度ベクトルの大きさをPiとして用いることにより、同様の処理方法が適用可能である。
2 1歩分の周期に対応する確からしさの極大値とその位置
3 2歩分の周期に対応する確からしさの極大値とその位置
Claims (9)
- 歩行者の歩行時に生じる音響情報をセンサにより電気信号として入力し、
前記電気信号を解析して歩行に関連する特徴量の時間変化量に変換する特徴抽出処理と、
前記時間変化量を入力として、前記時間変化量を平均振幅差関数の量に変換した上で、さらに前記量を最大値に基づいて極小値を正規化する周期性抽出関数を、適用することにより、片足周期と両足周期及び前記片足周期の確からしさと前記両足周期の確からしさを推定する歩行周期抽出処理と、
得られた前記片足周期と前記両足周期と前記片足周期の確からしさと前記両足周期の確からしさの推定値から、歩行者の歩行状態に関する情報を生成する歩行状態解析処理を適用することにより、
前記歩行者の歩行状態に関する情報を出力することを特徴とする歩行状態判定方法。 - 前記特徴抽出処理において、前記電気信号の8kHz以上の周波数帯域の成分のパワーの時間変化量に変換することにより、足音以外の生活音や人の音声の影響を低減させることを特徴とする請求項1に記載する歩行状態判定方法。
- 距離センサを用いて歩行者の脚を観測した情報を電気信号に変換して入力し、
前記電気信号を解析して歩行に関連する特徴量の時間変化量に変換する特徴抽出処理であって、脚について得られた距離情報から脚の関節の位置を推定し、推定された脚の関節の位置情報に基づいた該脚の関節の運動距離の時間変化量に変換する特徴抽出処理と、
前記時間変化量を入力として、前記時間変化量を平均振幅差関数の量に変換した上で、さらに前記量を最大値に基づいて極小値を正規化する周期性抽出関数を、適用することにより、片足周期と両足周期及び前記片足周期の確からしさと前記両足周期の確からしさを推定する歩行周期抽出処理と、
得られた前記片足周期と前記両足周期と前記片足周期の確からしさと前記両足周期の確からしさの推定値から、歩行者の歩行状態に関する情報を生成する歩行状態解析処理を適用することにより、
前記歩行者の歩行状態に関する情報を出力することを特徴とする歩行状態判定方法。 - 前記歩行状態解析処理において、前記歩行周期抽出処理で得られる、片足周期と両足周期、及び前記片足周期の確からしさと前記両足周期の確からしさの値に基づいて、判定データベースにおいて設定された特定の基準値と比較することにより、入力された電気信号に該当する時間区間において歩行が為されているか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載する歩行状態判定方法。
- 前記歩行状態解析処理において、前記歩行周期抽出処理で得られた片足周期の確からしさと、両足周期の確からしさとを比較する相対値に変換することにより、歩行時の左右のバランスの良し悪しを表す推定値を出力することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載する歩行状態判定方法。
- 前記歩行状態解析処理で得られる推定値を一定期間以上にわたって保存し、統計量を判定データベースにある基準値と比較して異常値を検出することにより、歩行の異常を検出することを特徴とする請求項5に記載する歩行状態判定方法。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の歩行状態判定方法を実行することを特徴とする歩行状態判定プログラム。
- 請求項7記載の歩行状態判定プログラムを記録した記憶媒体。
- 音響センサ又は距離センサのいずれかのセンサ機器と、特徴抽出部と歩行周期抽出部と歩行状態判定部を有する歩行状態分析処理装置とを備える、歩行者の歩行状態に関する情報を出力する歩行状態判定装置であって、
前記特徴抽出部は、前記音響センサ又は前記距離センサにより入力された電気信号を解析して歩行に関連する特徴量の時間変化量に変換する特徴抽出処理を実行し、
前記歩行周期抽出部は、前記時間変化量を入力として、前記時間変化量を平均振幅差関数の量に変換した上で、さらに前記量を最大値に基づいて極小値を正規化する周期性抽出関数を、適用することにより、片足周期と両足周期及び前記片足周期の確からしさと前記両足周期の確からしさを推定する歩行周期抽出処理を実行し、
前記歩行状態判定部は、得られた前記片足周期と前記両足周期と前記片足周期の確からしさと前記両足周期の確からしさの推定値から、歩行者の歩行状態に関する情報を生成する歩行状態解析処理を実行する、
ことを特徴とする歩行状態判定装置。
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