JP6474547B2 - 細胞増殖性疾患の治療用または診断用薬剤 - Google Patents

細胞増殖性疾患の治療用または診断用薬剤 Download PDF

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Description

本発明は、ABCトランスポーター阻害剤を含む、細胞増殖性疾患細胞からの放射性治療薬または放射性診断薬の排出を阻害し得る、細胞増殖性疾患治療用薬剤または細胞増殖性疾患診断用薬剤に関する。
癌は、外科的治療、化学療法および放射線治療を併用して集学的に治療がなされている。化学療法は、外科的手術および放射線治療の適応とならない症例やリンパ節転移または全身に遠隔転移した症例に不可欠である。化学療法は抗癌剤を用いて癌細胞中のDNAを障害する等により、癌細胞を死滅させることを目的とする。抗癌剤は、静脈注射や内服により体内に投与され、血流によって全身に運ばれ癌細胞へ集積し、殺細胞効果を発揮する。しかしながら、抗癌剤の治療効果が多剤耐性により低減してしまうという問題が生じている。多剤耐性の原因の一つとして、薬物トランスポーターが癌細胞膜上に過剰発現し、抗癌剤が当該薬物トランスポーターにより癌細胞外へ排出されることにより、シスプラチン等の抗癌剤の治療効果が低下することが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。
多剤耐性には、アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解エネルギーを利用して薬物を輸送するATP binding cassetteトランスポーター(ABCトランスポーター)が関与していることが示唆されている。ABCトランスポーターは正常細胞において、生体内に投与された薬物やその代謝物を生体外へ排出する役割を果たしている(Glavinas H, Krajcsi P, Cserepes J, Sarkadi B. Curr. Drug. Deliv. 2004; 1(1): 27-42)。ABCトランスポーターとして、P-glycoprotein (P-gp)、multidrug resistance-associated protein 1、2、3、4 (MRP1、MRP2、MRP3、MRP4)、breast cancer resistance protein (BCRP) などが知られている(Nakanishi T. Cancer Genomics Proteomics.2007; 4(3): 241-254)。
癌治療に関して、例えば神経芽細胞腫は、初期治療抵抗性・再発症例において、十分に有効な治療法が確立されておらず、生命予後が極めて不良であることが知られている。神経芽細胞腫では、外科的切除、外部照射による放射線治療が適応とならない症例や、転移病巣・再発病巣がある症例を対象に、131I標識3-ヨードベンジルグアニジン(131I-MIBG)を用いた内用放射線治療の臨床応用がなされている。131I-MIBGの癌細胞からの排出に、ABCトランスポーターのP-gpが関与していないことが報告されている(非特許文献3)。癌の内用放射線治療における多剤耐性に関してはほとんど報告がなく、メカニズム等の解明はなされていない。
また癌治療においては、癌の早期発見が極めて重要である。癌の検査方法として、臨床ではCTやMRI検査等が用いられている。腫瘍核医学検査の主な検査方法として、PET検査や、99mTc標識2-メトキシイソブチルイソニトリル(99mTc-MIBI)や99mTc標識テトラホスミン (99mTc-TF)等を用いたSPECT検査がある。SPECT検査はPET検査に比べて設備や費用の点で簡便であり、抗癌剤の治療効果予測も行うことができる(Ballinger JR. Cancer Biother. Radiopharm. 2001; 16(1): 1-7; Kinuya S, Li XF, Yokoyama K, Mori H, Shiba K, Watanabe N, Shuke N, Bunko H, Michigishi T, Tonami N. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging. 2003; 30(11): 1529-1531; Zhonglin LT, Gail DS, Harrison HB, Lars RF, Donald WW, George AK, Michael B, James MW. Nucl. Med. Biol. 2005; 32(6):573-583)。99mTc-MIBIを用いたSPECT検査において、P-gpを阻害するブロモクリプチンにより、肝細胞癌患者における99mTc-MIBIの蓄積が促進されることが示唆されている(非特許文献4)。また、99mTc-MIBIと99mTc-TFを用いた画像検査では、癌に集積した99mTc標識放射性診断薬の減少率が大きい癌細胞がABCトランスポーターの発現量が高いと判断される(非特許文献5,6)。実際に、癌細胞についてP-gpあるいはMRP1の高発現が報告されているが(非特許文献7〜9)、MRP2、MRP3、MRP4等のその他のABCトランスポーターについての報告はない。
体内用放射性診断薬または体内用放射性治療薬と、腎臓トランスポーター阻害剤を併用することにより、腎臓における薬物の排出を制御し、血中の薬物濃度を増加させ得ることが開示されている(特許文献1)。また、放射性画像診断剤または放射性治療薬と、有機酸輸送系阻害剤または中性アミノ酸輸送系阻害剤を併用して、薬物の心臓への集積を向上させることが開示されている(特許文献2)。癌細胞における、ABCトランスポーターによる放射性治療薬または放射性診断薬の排出機構は解明されておらず、癌の治療または診断において放射性治療薬または放射性診断薬とABCトランスポーター阻害剤との併用の試みはない。
特開2005−112750号公報 特開2006−257041号公報
Fojo A, Hamilton TC, Young RC, Ozols RF., Cancer. 1987;60(8 Suppl): 2075-2080 Walker J, Martin C, Callaghan R., Eur. J. Cancer. 2004; 40(4): 594-605 Kiyono Y, Yamashita T, Doi H, Kuge Y, Katsura T, Inui K, Saji H. Eur. J Nucl. Med Mol. Imaging. 2007; 34(4): 448-452 Chai X, Liu Q, Shao W, Zhang F, Wang X, Wang H., J. Biomed. Res. 2012; 26(3):165-169 Burak Z, Moretti JL, Ersoy O, Sanli U, Kantar M, Tamgac F, Basdemir G., J. Nucl. Med. 2003; 44(9):1394-1401 Yapar Z, Kibar M, Yapar AF, Uguz A, Ozbarlas S, Gonlusen G., Ann. Nucl. Med. 2003; 17(6): 443-449 Gomes CM, Abrunhosa AJ, Pauwels EK, Botelho MF., Cancer Biother. Radiopharm. 2009; 24(2): 215-227 Le JN, Perek N, Denoyer D, Dubois F., Cancer Biother. Radiopharm. 2005;20(3): 249-259 Perek N, Koumanov F, Denoyer D, Boudard D, Dubois F., Cancer Biother. Radiopharm. 2002; 17(3): 291-302
本発明は、細胞増殖性疾患の治療または診断において、放射性治療薬の薬効を増強する、もしくは放射性診断薬による病変の検出をより正確に行うための手段を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、ABCトランスポーターが癌細胞に発現しており、当該ACトランスポーターが放射性治療薬または放射性診断薬に高い親和性を有していることを見出し、ABCトランスポーター阻害剤を細胞増殖性疾患治療用薬剤または細胞増殖性疾患診断用薬剤として使用し得ることに着目し、本発明を達成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.ABCトランスポーター阻害剤を含む、細胞増殖性疾患細胞からの放射性治療薬または放射性診断薬の排出を阻害し得る、細胞増殖性疾患治療用薬剤または細胞増殖性疾患診断用薬剤。
2.ABCトランスポーター阻害剤と、放射性治療薬を含む、細胞増殖性疾患の治療用のキット。
3.ABCトランスポーター阻害剤がmultidrug resistance-associated protein(MRP)阻害剤である、前項2に記載の細胞増殖性疾患治療用キット。
4.MRP阻害剤が、multidrug resistance-associated protein 1(MRP1)およびmultidrug resistance-associated protein 4 (MRP4)の少なくともいずれか1つのトランスポーターを阻害する薬剤であり、放射性治療薬が放射性元素により標識された3-ヨードベンジルグアニジン(MIBG)、その塩およびそれらの誘導体から選択される化合物である、前項3に記載の細胞増殖性疾患治療用キット。
5.MRP阻害剤が、MK-571またはプロベネシド(PBC)である、前項3または4に記載の細胞増殖性疾患治療用キット。
6.ABCトランスポーター阻害剤と、放射性診断薬とを含む、細胞増殖性疾患の診断用のキット。
7.ABCトランスポーター阻害剤が、multidrug resistance-associated protein(MRP)阻害剤であり、放射性診断薬が放射性元素により標識されたテトロホスミン(TF)、2-メトキシイソブチルイソニトリル(MIBI)、それらの塩およびそれらの誘導体から選択される化合物である、前項6に記載の細胞増殖性疾患診断用キット。
8.MRP阻害剤が、multidrug resistance-associated protein 1(MRP1)、multidrug resistance-associated protein 2(MRP2)およびmultidrug resistance-associated protein 3 (MRP3)の少なくともいずれか1つのトランスポーターを阻害する薬剤であり、放射性診断薬が放射性元素により標識されたTF、その塩およびそれらの誘導体から選択される化合物である、前項7に記載の細胞増殖性疾患診断用キット。
本発明の細胞増殖性疾患治療用薬剤または細胞増殖性疾患診断用薬剤は、細胞増殖性疾患細胞からの放射性治療薬または放射性診断薬の排出を阻害することができるため、放射性治療薬の薬効を増強し得、また周辺組織との集積比、すなわち画像上のコントラストが向上することから従来検出し得なかったような小さい病変であっても正確に検出することができ、早期発見に寄与し得るものである。さらに、投与後早期より細胞増殖性疾患細胞への滞留性が達成できることから、検査時間の短縮や投与量の軽減効果も期待できる。放射性治療薬による内用放射性治療は、外科療法等の他の治療方法が適用できない疾患に対して用いられ得るため、本発明はより幅広く細胞増殖性疾患の治療効果を増強することができ、有用である。
ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性診断薬の排出を確認した結果を示す図である(参考例1)。 ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性診断薬の排出に対する、ABCトランスポーター阻害剤負荷の影響を確認した結果を示す図である(参考例1)。 ヒト由来癌細胞における放射性診断薬の排出に対するABCトランスポーター阻害剤負荷の影響を確認した結果を示す図である(実施例1)。 ヒト由来癌細胞における放射性診断薬の排出に対するABCトランスポーター阻害剤負荷の経時的な影響を確認した結果を示す図である(実施例1)。 ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性治療薬の排出を確認した結果を示す図である(参考例3)。 ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性治療薬の排出に対する、ABCトランスポーター阻害剤負荷の影響を確認した結果を示す図である(参考例3)。 ヒト由来癌細胞における放射性治療薬の排出に対するABCトランスポーター阻害剤負荷の影響を確認した結果を示す図である(実施例2)。 ヒト由来癌細胞における放射性治療薬の排出に対するABCトランスポーター阻害剤負荷の経時的な影響を確認した結果を示す図である(実施例2)。
本発明は、ABCトランスポーター阻害剤により、細胞増殖性疾患細胞からの放射性治療薬または放射性診断薬の排出を阻害し得ることを新たに見出し、達成されたものである。
ABCトランスポーターは、ATP結合カセットトランスポーター (ATP-binding cassette transporters)と称されるものであり、分子内にATP結合部位を持つ膜糖蛋白質である。ABCトランスポーターは、ATP加水分解のエネルギーによって構造を変化させ、細胞内から細胞外へ種々の化合物を輸送する。ABCトランスポーターは、多剤耐性 (multi-drug resistance; MDR) に関与することが知られており、ABCトランスポーターの増加による細胞内からの薬剤の排出の増加が、多剤耐性の原因の1つとして知られている。ヒトにおいて、40種以上のABCトランスポーターのアイソザイム(isozyme)が同定されており、配列や構造上の特徴からいくつかのサブファミリーに分類されている。ATPトランスポーターには、P-glycoprotein (P-gp) 、multidrug resistance-associated protein 1, 2, 3, 4 (MRP1, MRP2, MRP3, MRP4)、breast cancer resistance protein (BCRP)などが含まれ、MRP1, MRP2, MRP3, MRP4は、サブファミリーのmultidrug resistance-associated protein (MRP)に含まれる。
本発明は、ABCトランスポーター阻害剤を含む、細胞増殖性疾患治療用薬剤または細胞増殖性疾患診断用薬剤(以下、各々単に「治療用薬剤」または「診断用薬剤」と称する)を対象とする。本発明の治療用薬剤または診断用薬剤は、細胞増殖性疾患細胞からの放射性治療薬または放射性診断薬の排出を阻害して、細胞内への集積性を向上させる作用を有するものであり、治療および診断の補助剤として用いられる。本発明の治療用薬剤は、細胞増殖性疾患の内用放射線治療において、放射性治療薬を細胞内に集積させることにより、放射性治療薬から放出されるβ線量を増大させ、殺細胞効果を増強することにより、放射性治療薬の薬効を増強し得るものである。また本発明の診断用薬剤は、細胞増殖性疾患の検査において、放射性治療薬を細胞内に集積させることにより、従来の方法では検出し得ないような小さな病変であっても正確に検出し得るものである。
本発明において放射性治療薬は、放射線を放出して殺細胞効果を発揮し得るものであればいかなるものであってもよい。また放射性診断薬は、体内に投与されて細胞増殖性疾患の病変を検出し得るものであればいかなるものであってもよい。放射性治療薬または放射性診断薬は、放射性元素が化合物に結合してなるものであり、放射性元素としては、11-炭素(11C)、15-酸素(15O)、18-フッ素(18F)、32-リン(32P)、59-鉄(59Fe)、67-銅(67Cu)、67-ガリウム(67Ga)、81m-クリプトン(81mKr)、81-ルビジウム(81Rb)、89-ストロンチウム(89Sr)、90-イットリウム(90Y)、99m-テクネチウム(99mTc)、111-インジウム(111In)、123-ヨウ素(123I)、125-ヨウ素(125I)、131-ヨウ素(131I)、133-キセノン(133Xe)、117m-サマリウム(117mSm)、153-サマリウム(153Sm)、186-レニウム(186Re)、188-レニウム(188Re)、201-タリウム(201Tl)、212-ビスマス(212Bi)、213-ビスマス(212Bi)および211-アスタチン(211At)等が挙げられる。
放射性治療薬は、具体的には、放射性元素の結合した3-ヨードベンジルグアニジン(MIBG)、その塩およびそれらの誘導体などが挙げられる。放射性診断薬は、具体的には、放射性元素の結合したテトロホスミン(TF)、2-メトキシイソブチルイソニトリル(MIBI)、それらの塩およびそれらの誘導体などが挙げられる。放射性元素の結合したMIBG、TF、MIBIが、ABCトランスポーター、特にMRPにより癌細胞から排出されることは、本発明にて初めて確認された。
本発明の治療用薬剤または診断用薬剤に含まれるABCトランスポーター阻害剤は、ABCトランスポーターの機能を阻害して細胞増殖性疾患細胞からの放射性治療薬または放射性診断薬の排出を抑制する作用を有する薬剤であれば、いかなるものであってもよい。ABCトランスポーターの阻害剤としては、公知のものや今後開発されるものを使用可能である。ABCトランスポーター阻害剤としては、例えば、P-gp 阻害剤であるベラパミル (verapamil:VER)およびその塩、誘導体、水和物、MRP阻害剤であるMK571、プロベネシド(PBC)およびそれらの塩、誘導体、水和物が挙げられる。さらにMRP阻害剤には、MRP1の阻害剤である4-ヒドロキシノネナール-GS(4-Hydroxynonenol-GS)、2,4-ジニトロフェニル-GS(2,4-Dinitrophenyl-GS)、NNAL-O-グルクロニド (+GSH)(NNAL-O-glucuronide (+GSH))、メトラコール-GS(Metolachlor-GS)、メトトレキサート(Methotrexate)、エトポシド-グルクロニド(Etoposide-glucuronide)、ドキソルビシン-DS(Doxorubicin-GS (WP813))、クロラムブチル-GS(Chlorambucil-GS)、メルファラン-GS(Melphalan-GS)、GSSG、エストロン 3-硫酸(+GSH)(Estrone 3-sulphate (+GSH))、およびそれらの塩、誘導体、水和物、MRP2の阻害剤である、タウロリトコール酸(taurolithocholic acid)、イベルメシン(ivermecin)、ロピナビル(lopinaviir)、ランソプラゾール(lansoprazole)、バイカリン(baicalin)、アステミゾール(astemizole)、レセルピン(reserpine)、GF120918、ケルセチン(quercetin)、シクロスポリンA(cyclosporinA)、ジルチアゼム(diltiazem)、サキナビル(saquinavir)、ジピリダモール(dipyridamole)、ケレリトリン(chelerythrine)、リシノプリル(lisinopril)、サンギナリンクロリド(sanguinarine chloride)、フルペンチキソール(fluoentixol)、 p-アミノ馬尿酸(p-aminohippurid acid)、ロペラミド(loperamide)、 フェノフィブレート(fenofibrate)、イスラジピン(isradipine)、セレコキシブ(celecoxib)、エルロチニブ(erlotinib)、リトナビル(ritonavir)、モリン(morin)、およびそれらの塩、誘導体、水和物、MRP4の阻害剤である、コール酸(cholate)、グリココール酸(glycocholate)、タウロコール酸(taurocholate)、タウロデオキシコール酸(taurodeoxycholate)、タウロケノデオキシコール酸(taurochenodeoxycholate)、タウロリトコール酸(taurolithocholate)、タウロリトコール酸硫酸(taurolithocholic acid sulphate)、グリコリトコール酸硫酸(glycolithocholic acid sulphate)、リトコール酸硫酸(lithocholic acid sulphate)、DHEAS、DHEAS 3-グルクロニド(DHEAS 3-glucuronide)、エストロン3-硫酸(Oestrone 3-sulphate)、エストラジオール 3-硫酸(Oestradiol 3-sulphate)、エストラジオール 3-グルクロニド(Oestradiol 3-glucuronide)、エストラジオール 3,17-二硫酸(Oestrasiol 3,17-disulphate)、E217G、DHEA 3-グルクロニド(DHEA 3-glucronide)、およびそれらの塩、誘導体、水和物が含まれる。好ましくは、ABCトランスポーター阻害剤はMRP阻害剤である。例えば放射性治療薬として、放射性元素の結合したMIBGを用いる場合は、MRP1およびMRP4の少なくともいずれか1つのトランスポーターを阻害する薬剤をABCトランスポーター阻害剤として用いることが好ましく、具体的にはMK571またはPBCを用いることが好ましい。また放射性診断薬として、放射性元素の結合したTFまたはMIBIを用いる場合は、MRP1、MRP2およびMRP3の少なくともいずれか1つのトランスポーターを阻害する薬剤をABCトランスポーターとして用いることが好ましく、具体的にはMK571またはPBCを用いることが好ましい。
本発明の治療用薬剤または診断用薬剤では、ABCトランスポーター阻害剤が、放射性治療薬または放射性診断薬の細胞増殖性疾患細胞からの排出を阻害し得る量で含まれていればよい。本発明の治療用薬剤または診断用薬剤におけるABCトランスポーター阻害剤の含有量は、例えば、1回分の体重あたり投与量に換算して、0.1mg/kg〜100mg/kgである。
本発明の治療用薬剤または診断用薬剤は、ABCトランスポーター阻害剤以外に、医薬的に許容し得る担体を含んでいてもよい。医薬的に許容し得る担体とは、液体または固体の賦形剤、希釈液、潤滑剤、または物質をカプセル化する溶媒のような、医薬的に許容し得る物質、組成物または媒体を意味する。各担体は、前記製剤の他の成分との適合性があり、また投与対象に対して傷害性でないという意味において「許容し得る」ものでなければならない。医薬的に許容し得る担体の具体的な例としては、例えば、ラクトース、グルコース、ショ糖などの糖;コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、セルロース酢酸塩などのセルロース;トラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオバター、坐薬ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;アルギン酸;生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;ポリエステル、ポリカーボネートなどのポリ無水物類、などが挙げられるが、特に限定されない。当業者であれば、適宜これらの担体を選択することが可能である。
本発明の治療用薬剤または診断用薬剤を、細胞増殖性疾患の治療または診断を目的として対象に投与する場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤などとして経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等として非経口的に投与することができる。このような投与剤型の選択および製造は、当業者であれば自体公知の方法を利用して適宜行うことができる。
本発明の治療用薬剤または診断用薬剤は、放射性治療薬または放射性診断薬と併用されるものであるが、放射性治療薬または放射性診断薬と混合して同時に対象に投与されてもよいし、各々別個に投与されてもよい。別個に投与する場合は、好ましくは本発明のABCトランスポーターを含む治療用薬剤または診断用薬剤が先に投与され、その後放射性治療薬または放射性診断薬が投与されるが、対象の状態、治療や診断の状況によって、適宜投与のタイミングを決定することができる。
本明細書中「細胞増殖性疾患」とは、生体内の細胞の異常増殖に起因する疾患全般であり、このような疾患としては、前立腺増生症、子宮内膜増生症(嚢胞性腺増生症・子宮腺筋症・子宮筋腫)、卵巣腫瘍(嚢胞腺腫)、乳腺(乳腺症・乳腺繊維腺腫)、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、甲状腺腺腫、副腎皮質腺腫・クロム親和性細胞腫などの良性腫瘍;悪性リンパ腫(ホジキン病・非ホジキンリンパ腫)、咽頭癌、肺癌、肺腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、肝癌、膵臓癌、腎臓腫瘍(腎臓癌・腎芽細胞腫)、膀胱腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、卵巣癌、乳癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、脳腫瘍(原発性脳腫瘍・転移性脳腫瘍)、横紋筋肉腫、骨腫瘍(骨肉種・転移性骨腫瘍)、カポジ肉腫、悪性黒色腫などの悪性腫瘍;単純ヘルペスウイルスやヒト免疫不全ウイルスなどによるウイルス感染症;あるいは、乾癬等の増殖性皮膚疾患などが挙げられるが、特に好ましくは癌であり、より好ましくは神経芽細胞腫、肺腺癌、前立腺癌、結腸癌である。
本発明は、ABCトランスポーター阻害剤と、放射性治療薬を含む、細胞増殖性疾患の治療用のキット、または、ABCトランスポーター阻害剤と、放射性診断薬とを含む、細胞増殖性疾患の診断用のキットも包含する。ABCトランスポーター阻害剤は、上述の治療用薬剤または診断用薬剤としてキットに含まれていてもよい。キットにおいて、ABCトランスポーター阻害剤と、放射性治療薬または放射性診断薬は、別個の容器に入った状態でキットに包含されてもよいし、両者が混合されて1つの容器に入った状態でキットに包含されていてもよい。別個の容器に入った状態である場合は、ABCトランスポーター阻害剤と、放射性治療薬または放射性診断薬を、使用直前に混合して投与してもよいし、混合せずに別個に投与してもよい。
以下の実施例および参考例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例および参考例によって限定されるものではない。
(参考例1)ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性診断薬の排出
放射性診断薬としてカーディオライト(R)第一(富士フイルムRIファーマ株式会社)及びマイオビュー(R)「注射用」(日本メジフィジックス)を用いた。それぞれの添付マニュアルに記載されている方法に従い、99mTc注射液(370 MBq、2 mL)を用いて標識を行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)により、各診断薬の純度が95 %以上あることを確認した。
ABCトランスポーター単一発現ベシクルおよびベシクル専用試薬キットはGenoMembrane 社から購入したものを用いた。一晩、ニトロセルロースフィルタ(MILLIPORE) をMops-Tris 緩衝液に浸した。6種類のABCトランスポーター単一発現ベシクル (P-gp、MRP1、MRP2、MRP3、MRP4およびBCRP) と、controlベシクルの各々について、0.05 mg/10 μLの溶液を調製し、1.5 mL チューブ (WATSON)に10 μL分注した。Control ベシクルとは、ABCトランスポーターを発現させていないベシクルである。
各薬液をキットの添付マニュアルに従って調整した。阻害剤無負荷時の各ベシクルの1サンプル当たりの薬液の調整として、ATPとAMP溶液をそれぞれ20 μLチューブに注入し、約37 kBqの99mTc標識放射性診断薬を更に10 μL加えた。更に、MRP系を発現するベシクルに用いる薬液には、グルタチオン溶液とMops-Tris緩衝液をそれぞれ0.5 μL 加え、MRP系以外を発現するベシクルに用いる薬液には、Mops-Tris 緩衝液を1 μL 注入し、1サンプル当たり加える薬液の全量を31 μLとした。阻害剤負荷時の薬液調整では、P-gp阻害剤としてverapamil hydrate (VER,Sigma) 、MRP阻害剤としてMK571 sodium salt (MK571,Cayman Chemical)を使用した。両阻害剤ともMops-Tris緩衝液で溶解し、1サンプル当たりに加える阻害剤の最終濃度がそれぞれ50 μMとなるように調整した後、阻害剤無負荷時の薬液調整においてMops-Tris 緩衝液を0.5 μLを注入した代わりに、この阻害剤の溶液を0.5 μL加えた。
ベシクルを用いた実験にはフィルタ濾過法を使用した。チューブに分注したベシクル溶液にMops-Tris緩衝液を9 μL加え、37度で5分間のプレインキュベーションを行った。その後、ATPあるいはAMP溶液を加えた上記薬液を31 μL加え、撹拌した後、37度で5分間インキュベーションした。反応を停止するため、Mops-Tris緩衝液を1 mL加え、その反応液をフィルタに添加して、Mops-Tris緩衝液で2回洗浄した。そのフィルタを試験管に入れ、オートウェルカウンタ (AccuFLEX.7000,Aloka) で測定した。また、解析結果は各ベシクル内の蛋白量1 mgあたりに換算した集積薬剤の薬液量で表した。統計解析はStudent’s t-test により行い、有意差の判定はP < 0.05 またはP < 0.01 とした。
99mTc-MIBIおよび99mTc-TFのベシクルへの5分間のインキュベーション時の集積量を図1A、Bに示す。ABCトランスポーターはATPの加水分解エネルギーを利用して薬物を輸送する。ATP存在下における99mTc標識放射性診断薬のABCトランスポーター単一発現ベシクル内への集積量が、AMP存在下での集積量と比べて有意に増加した。つまりATP依存性が認められた場合に、そのベシクルに発現させたABCトランスポーターが99mTc標識放射性診断薬の排出機序に関与していることを示している。非特異的集積や吸着は、ABCトランスポーターを発現させていないcontrolベシクルにおけるATP存在下とAMP存在下の集積量の差で評価した。Controlベシクルへの集積量は両放射性診断薬において有意差はなかったため、両放射性診断薬のベシクルへの集積には非特異的集積や吸着はないものと判断した。99mTc-MIBIでは、P-gpおよびMRP1発現ベシクルにおいてATP依存性が認められた。一方、99mTc-TFでは、P-gp、MRP1に加えて、MRP2およびMRP3においてATP依存性が確認された。
各ベシクルに対してABCトランスポーター阻害剤負荷の検討を行った結果を、図2A、Bに示す。99mTc-MIBIでは、P-gp発現ベシクルにおいてP-gp阻害剤VERの負荷によりベシクル内への集積量が減少し、MRP1発現ベシクルにおいてMRP阻害剤MK571の負荷により、ベシクル内への集積量が減少した。99mTc-TFでは、P-gp発現ベシクルにおいてP-gp阻害剤VERの負荷により、ベシクル内への集積量が減少し、MRP1、MRP2、MRP3発現ベシクルにおいてMRP阻害剤MK571の負荷により、ベシクル内への集積量が減少した。
(参考例2) 各種ヒト由来癌細胞におけるABCトランスポーター発現量の解析
ヒト由来神経芽細胞腫培養細胞株SK-N-SH (Riken Cell Bank)、ヒト由来肺腺癌培養細胞株H441 (American Type Culture Collection,ATCC)、A549 (ATCC)、ヒト由来前立腺癌培養細胞株PC3 (ATCC) の4種の癌培養細胞株を使用した。SK-N-SHはFetal Bovine Serum (FBS,Gibco) 10 %を混合したMEM(Wako)、H441およびPC3はFBS10 %、sodium pyruvate (Sigma) 1 %を混合したRPMI-1640 Medium (Sigma)、A549はFBS 10%を混合したD-MEM High Glucose with L-Glutamine、Phenol Red、Pyruvate (DMEM,Wako) の培地を用いて培養した。
上記4種類のヒト由来癌培養細胞の各々から、RNeasy mini kit (Qiagen) を用いて添付マニュアルの方法に従って、Total RNAを抽出した。抽出後、2100 バイオアナライザー (Agilent Technologies) およびAgilent RNA6000 ナノキット (Agilent Technologies) を用いてtotal RNAの品質評価を行った。品質を確認したtotalRNAを用いて、AffinityScript QPCR cDNA Synthesis Kit (Agilent Technologies) により、キットのマニュアルに従って、cDNAを合成した。cDNAの合成反応には、Mx3005P (Agilent Technologies) を使用した。
ABCトランスポーターのP-gp (ABCB1遺伝子)、MRP1、2、3 (ABCC1、2、3遺伝子)について、RT-PCRにより発現を確認した。また、内部標準物質としてハウスキーピング遺伝子であるhypoxanthine phosphoribosyltransferase-1 (HPRT1)、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) およびbeta-actin (ACTB) の3種類を用いた。RT-PCR反応および検出にはMx3005Pを使用した。使用した各遺伝子のプライマー配列およびその濃度を以下に示す。
P-gp(ABCB1遺伝子) Forward:ggttcgcaaccccaagat (配列番号1)
Reverse:ggtggtccgaccttttctg(配列番号2)
MRP1(ABCC1遺伝子) Forward:gaccatgaatgtgcagaagg(配列番号3)
Reverse:gcctcatccaacacaaggat(配列番号4)
MRP2(ABCC2遺伝子) Forward:ctgcggctctcattcagtct(配列番号5)
Reverse:gccaagttggatagggtcaa(配列番号6)
MRP3(ABCC3遺伝子) Forward:catcaatccacagctgctca(配列番号7)
Reverse:tcatggagcacaggaacatc(配列番号8)
HPRT1(HPRT1遺伝子) Forward:gcagacttcttcttggacatca(配列番号9)
Reverse:cctgcttggaaggctctatg(配列番号10)
GAPDH(GAPDH遺伝子) Forward:agccacatcgctcagacac(配列番号11)
Reverse:gcccaatacgaccaaatcc(配列番号12)
ACTB(ACTB遺伝子)Forward:ccaaccgcgagaagatga(配列番号13)
Reverse:ccagaggcgtacagggatag(配列番号14)
定量的PCRには、Brilliant III FastSYBR Green QPCR Master Mix (Agilent Technologies) を用いた。反応溶液の組成は、12.5 μLの2×Brilliant III Fast SYBR Green QPCR Master Mix、至適濃度のプライマー、テンプレート(1 チューブ当たり10 ng cDNA(RNA 換算)もしくは検量線用人工合成プラスミド、RNase-free 水である(最終容量25μL)。RT-PCR により得られた結果はMxPro QPCR Software Version 4.10 (Agilent Technology) を用いて解析を行った。
各癌細胞のABCトランスポーターの発現量を表1に示す。
P-gpはSK-N-SHにおいて高く発現しており、MRP1は全ての細胞において高く発現していた。MRP2はA549において、極めて高く発現しており、MRP3はA549、PC3の順に高く発現していた。
(実施例1)ヒト由来癌細胞からの99mTc標識放射性診断薬の排出に対するABCトランスポーター阻害剤の影響の確認
ABCトランスポーターが発現している癌培養細胞としてSK-N-SH、H441、A549およびPC3 の4種類のヒト由来癌培養細胞を用いて実験を行った。細胞培養用175 cm2セルカルチャーフラスコ (Falcon) において、参考例2と同様の方法で、各細胞を培養した。SK-N-SHは12ウェル細胞培養用マルチウェルプレート(IWAKI) に1 ウェルあたり2×105 cells/mL、その他の3種類の細胞は1 ウェルあたり1×105 cells/mL になるように播種した。SK-N-SH は播種から約48 時間後に、その他の癌培養細胞は約24時間後に実験を行った。インキュベーション用緩衝液としてModified Hanks’ balanced salt solution (MHBS) (0.952 mM CaCl2,5.36 mM KCl,0.441mM KH2PO4,0.812 mM MgSO4,136.7 mM NaCl,0.385 mM Na2HPO4,25 mM D-glucose)を用いた。各培養液をインキュベーション用緩衝液であるMHBSで置換し、10 分間のプレインキュベーションを行った。阻害剤無負荷時の実験として、1 ウェルあたり、約37 kBqの99mTc-MIBIまたは99mTc-TFを投与後、5、10、30、60分間のインキュベーションを行った。阻害剤負荷時には、P-gp阻害剤のVERとMRP阻害剤のMK571を用いた。VERとMK571の最終濃度はそれぞれ50 μMとなるように99mTc-MIBIまたは99mTc-TF溶液とMHBSを用いて調整し、阻害剤無負荷時の実験と同様の時間でインキュベーションを行った。阻害剤の有無に関わらず、インキュベーション後に、99mTc-MIBIまたは99mTc-TF溶液を含んだMHBSを除去し、氷冷したMHBSで細胞が入ったウェルを2回洗浄した。0.1N NaOHで細胞を溶解させオートウェルカウンタで放射能を測定した。また解析結果は各癌細胞内の蛋白量1 mgあたりの集積薬剤物質量で表した。蛋白の定量は、PierceR BCA Protein Assay Kit (ThermoScientific) を用いて行った。吸光度は、Multiskan FC 吸光マイクロプレートリーダ (Thermo Scientific)により測定し、SkanItTM Software 2.5.1 (Thermo Scientific) で解析を行った。統計解析には、Student’s t-testを用いた。また、有意差の判定はP < 0.05 またはP < 0.01 とした。
VERまたはMK571を用いて、P-gpおよびMRPをそれぞれ阻害することにより、癌細胞内への集積が増加した場合には、そのABCトランスポーターが放射性診断薬の癌細胞における排出機序に関与していることを示している。各癌細胞における両放射性診断薬投与後5分の集積量を図3に示す。SK-N-SHにおいて両放射性診断薬の集積量は、controlに比べて、VER負荷時に有意に増加した。同様に、H441において両放射性診断薬の集積量は、controlに比べてMK571負荷時に有意に増加した。A549およびPC3において、99mTc-TFの集積量は、controlに比べて、MK571負荷時に有意に増加した。
SK-N-SHにおける両放射性診断薬の集積量の経時変化を図4A,Bに示す。99mTc-MIBIの集積量は、controlでは投与後30 分まで経時的に増加したが、その後若干減少傾向を示した。P-gp阻害剤VER負荷時の集積量は、経時的に増加傾向を示し、全てのインキュベーション時間においてVER負荷時には、controlに比べて集積量が有意に増加した。99mTc-TFにおいては、controlでは経時的集積性を示し、VER負荷時にはcontrolに比べて集積量が有意に増加した。99mTc-MIBIと99mTc-TFの結果を比較すると、VER負荷時には、99mTc-MIBIが99mTc-TFに比べての集積量の増加が大きく、集積量の経時変化に両者の違いが見られた。また、投与後60 分におけるcontrolに対するVER負荷時の集積量は、99mTc-MIBIで約10.2倍、99mTc-TFで約1.7倍高くなった。
H441における両放射性診断薬の集積量の経時変化を図4C,Dに示す。99mTc-MIBIの集積量は、controlでは投与後30 分まで経時的に増加したが、その後若干減少傾向を示した。MK571負荷時には集積量が経時的に増加し、投与後10 分を除いてMK571負荷時はcontrolに比べて集積量が有意に増加した。99mTc-TFの集積量は、controlでは投与後30 分まで経時的に増加したが、その後若干減少傾向を示した。また、すべてのインキュベーション時間でVER負荷時にはcontrolに比べて、集積量が有意に増加した。99mTc-MIBIと99mTc-TFの結果を比較すると、SK-N-SHと同様に、MK571負荷時は99mTc-MIBIが99mTc-TFに比べて集積量の増加が大きく、集積量の経時変化において両者の違いが見られた。また、投与後60 分におけるcontrolに対するMK571負荷時の集積量は、99mTc-MIBIで約12.5 倍、99mTc-TFで約8.6 倍高くなった。
(参考例3)ヒト由来ABCトランスポーター単一発現ベシクルにおける放射性治療薬の排出
放射性治療薬として131I-MIBG (富士フイルムRIファーマ株式会社) を用いた。本参考例3は、参考例1と同様にして行った。MRP 阻害剤としてMK571、およびprobenecid (PBC,Invitrogen) を使用した。なお両阻害剤ともMops-Tris 緩衝液で溶解し、1 サンプル当たりに加える阻害剤の最終濃度がそれぞれ50 μMと1 mMとなるように調整した後、阻害剤無負荷時の薬液調整においてMops-Tris 緩衝液を0.5 μL を注入した代わりに、阻害剤の溶液を0.5 μL 加えた。
131I-MIBGのABCトランスポーター単一発現ベシクルへの5 分間のインキュベーション時の集積量を図5に示す。本参考例の系では、ATP存在下における131I-MIBGのベシクル内への集積量が、AMP存在下での集積量と比べて有意に増加した場合に、そのベシクルに発現させたABCトランスポーターが、131I-MIBGの排出機序に関与していることを示唆する。Control ベシクルへの集積量は、ATP存在下とAMP存在下で有意差がなかったため、131I-MIBGのベシクルへの集積には非特異的集積や吸着はないものと判断した。131I-MIBGでは、MRP1およびMRP4発現ベシクルにおいて、ATP依存的な集積量の増加が確認された。
MRP1とMRP4発現ベシクルに対して阻害剤負荷の検討を行った結果を、図6に示す。MRP1およびMRP4発現ベシクルにおいて、阻害剤負荷によってベシクル内へのATP依存的な集積量が減少した。
(参考例4) 各種ヒト癌由来細胞におけるABCトランスポーター発現量の解析
ヒト由来神経芽細胞腫培養細胞株SK-N-SH、ヒト由来肺腺癌培養細胞株H441、A549、ヒト由来前立腺癌培養細胞株PC3およびヒト由来結腸腺癌培養細胞株DLD-1 (大日本住友
製薬株式会社) の5種類の癌培養細胞株を使用し、参考例2で用いたプライマーに加えて以下のプライマーを使用した以外は、参考例2の手法と同様にして各ABCトランスポーターの発現を、RT-PCRを用いて行った。
MRP4(ABCC4遺伝子)Forward:ttattctcctaaacactgcagctc(配列番号15)
Reverse:tcctcctccatttacagtgaca(配列番号16)
BCRP(ABCG2遺伝子)Forward:cacagtcttcaaggagatcagcta(配列番号17)
Reverse:cccagtacgactgtgacaatg(配列番号18)
各癌細胞のABCトランスポーターの発現量を表2に示す。
P-gpはSK-N-SHで最も高く発現しており、MRP1は全ての細胞で総じて高く発現していた。MRP2はA549において極めて高く発現しており、MRP3はA549、PC3の順に高く発現していた。MRP4はDLD-1で最も高く発現しており、その他は中程度の発現であった。以上より、SK-N-SHではMRP1の発現が高く、DLD-1においてはMRP1およびMRP4の発現が高いことが分かった。
(実施例2) ヒト由来癌細胞における131I-MIBG 集積量に対するABCトランスポーター阻害剤による影響の確認
ABCトランスポーターが発現している癌細胞として、131I-MIBGによる治療対象となるヒト神経芽細胞腫由来細胞株SK-N-SHと、MRP1とMRP4の高発現モデル細胞であるヒト由来結腸腺癌細胞株DLD-1の2種類のヒト由来癌細胞を用い、実施例1と同様の方法で、実験を行った。阻害剤無負荷時の実験として、各細胞を播種したプレートの1 ウェルあたりに、約37 kBqの131I-MIBGを投与して、SK-N-SHにおいては1 分間から180 分間、DLD-1においては1 分間から5 分間のインキュベーションを行った。阻害剤負荷時の実験には、MRP阻害剤としてMK571およびPBCを用いた。MK571とPBCの最終濃度はそれぞれ50 μMと1 mMとなるように131I-MIBG 溶液とMHBSを用いて調製し、阻害剤無負荷時の実験と同様の時間でインキュベーションを行った。解析は実施例1と同様の方法で行った。
図7では、癌細胞内の蛋白量1 mg あたりに換算したヒト由来癌細胞における131I-MIBGの集積量が示されている。投与後1、3、5分のSK-N-SHにおける131I-MIBGの集積量は、DLD-1に比べて全体的に高かった 。MRP阻害剤を用いてMRP1とMRP4を阻害したことから、これらのトランスポーターが131I-MIBGの癌細胞における排出機序に関与していることがわかった。SK-N-SHおよびDLD-1共にcontrolの131I-MIBGの集積量に比べてMRP阻害剤であるMK571およびPBC負荷時の集積量が有意に増加した。更に、時間経過における集積の増加率もSK-N-SHがDLD-1よりも高い傾向を示した。
臨床で131I-MIBGの治療対象となっているSK-N-SH における131I-MIBGの滞留性を検討するため、長時間の阻害剤負荷による排出阻害実験を行った。投与後1分から180分までの131I-MIBG集積量の経時変化を図8に示した。controlおよび阻害剤負荷時の集積量は投与後120 分にピークに達した。また、controlとMK571負荷時の集積量を比較すると、ほとんどのインキュベーション時間において、MK571負荷時にはcontrolに比べて、集積量が有意に増加した 。さらにPBC負荷時の集積量は、投与後全ての時間でcontrolの集積量に比べて有意に増加した。また、MK571負荷時に比べPBC負荷時の集積量が高い傾向を示した。
本発明により、細胞増殖性疾患の治療または診断において、ABCトランスポーター阻害剤が細胞増殖性疾患細胞からの放射性治療薬または放射性診断薬の排出を阻害することができるため、放射性治療薬の薬効を増強する、もしくは放射性診断薬については、周辺組織との集積比、すなわち画像上のコントラストが向上することから従来検出し得なかったような小さい病変であっても正確に検出することができ、早期発見に寄与し得るものである。またさらに、投与後早期より細胞増殖性疾患細胞への滞留性が達成できることから、検査時間の短縮や投与量の軽減効果も期待できる。放射性治療薬による内用放射性治療は、外科療法等の他の治療方法が適用できない疾患に対して用いられるため、本発明はより幅広く細胞増殖性疾患を治療可能とし得るものであり、有用である。本発明は、癌、例えば神経芽細胞腫等の内用放射性治療、SPECT検査等に適用することができる。

Claims (1)

  1. 放射性治療薬として放射性元素により標識された3-ヨードベンジルグアニジンとABCトランスポーターの阻害剤としてMK-571又はプロベネシドを含む細胞増殖性疾患の治療用のキット。
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