JP6472960B2 - 魚体内での他家組織の継代維持法 - Google Patents

魚体内での他家組織の継代維持法 Download PDF

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Description

本発明は、魚体内で腫瘍組織等の他家組織を継代維持する方法及びこれを用いた薬物のスクリーニング法に関する。
免疫拒絶反応を回避できる移植実験法の確立は、免疫学研究のみならず、様々な分野の生物学研究において非常に有用な手法である。既に哺乳類では成熟T細胞やB細胞が形成されず移植片を拒絶しないヌードマウスやrag1/rag2ノックアウトマウスが作成され、様々な研究に用いられて来た。ゼブラフィッシュは大量飼育が容易で、稚魚期の魚体が透明であるというマウスとは異なる特徴を持ち、様々な遺伝学的手法が適用可能な事から近年注目を浴びているモデル脊椎動物である。すでに膨大な数の突然変異体やトランスジェニック個体が単離されており、この動物で免疫拒絶反応を回避できる細胞や器官の移植実験法が確立出来れば、免疫学研究や様々な器官形成の研究に有効な手法となり得る。水中で大量飼育が容易で、魚体が透明という特徴を活かすことでマウスと異なるアプローチが可能となり、新たな薬剤のスクリーニング系となる事も期待出来る。
ゼブラフィッシュではこれまでにも免疫拒絶反応を回避できる細胞の移植法が報告されてきた。最も簡単な手法は初期発生中の胚に注入する方法である(非特許文献1〜3)。初期発生中の胚では免疫系が十分に確立されておらず免疫拒絶反応を回避することができるが、胚が小さいため細胞の注入は可能であるが器官単位の移植は非常に困難である。成長した魚体に細胞を移植する方法としては、免疫抑制剤(dexamethazone)処理やγ線照射によって免疫系を抑制、破壊することによって移植片に対する免疫拒絶反応を回避する方法が報告されている(非特許文献4、5)。しかし、当然の事ながらこれらの方法では宿主の免疫系全体が抑制、破壊される事によって感染症等の病気に弱くなってしまい、宿主が死に易く安定した移植実験系とはいいがたい。また、組織適合性抗原が均一な近交系を用いて移植するという方法を本発明者は既に報告している(非特許文献6、7)。しかし、この方法では同じ近交系同士でなければ移植は成功しない。これまでに単離された突然変異体やトランスジェニック個体の殆どは近交系ではないため、これらの資源を活用する事が不可能であるという欠点を持っていた。
マウスでは、rag1ノックアウトマウスでは成熟T細胞やB細胞が形成されず移植片を拒絶しないが明らかにされている。ゼブラフィッシュにおいても、rag1遺伝子が機能としないrag1突然変異体が単離されており、成熟T細胞やB細胞が形成されない事が報告されている(非特許文献8)。
Haladi, et al., Angiogenesis 2006, 9: 139-151. Nicoli, et al., Canser Res 2007, 67: 2927-2931. Nicoli and Presta, Nat Protoc 2007, 2: 2918-2923. Stoletov et al., Proc Natl Acad Sci USA 2006, 104: 17406-17411. Zon Li, Methods Mol Biol 2009, 568: 1-5. Kawasaki et al., Biol Reprod 2010, 83: 533-539. Shinya and Sakai, G3 2011, 1: 377-386. Petrie-Hanson et al., BMC Immunol 2009, 10: 8.
しかしながら、rag1遺伝子が機能しないゼブラフィッシュに他家の組織を移植した場合に免疫拒絶反応がおこるかどうかは報告されていない。また、他の魚種においても報告はされていない。
従って、本発明の課題は、魚類において同種異系組織を移植しても免疫拒絶反応を生じず、稚魚本体、正常な器官や組織、腫瘍組織等を継代維持する方法及びこれを用いた薬物のスクリーニング方法を提供することにある。
そこで本発明者は、rag1遺伝子が機能しないゼブラフィッシュに異系統のゼブラフィッシュ組織、腫瘍組織及び個体を皮下移植したところ、これらの組織が拒絶されずに生着し、これを継代維持できることを見出した。またさらにrag1遺伝子に加えて、魚体の色素形成に関わるalb1遺伝子及びroy遺伝子も機能しないゼブラフィッシュを作製し、当該ゼブラフィッシュの皮下に他の組織を移植したところ、魚体表面が透明になり、宿主を生かしたまま移植片の生着、成長等が簡便に検出できることも見出した。さらに、これらの遺伝子が機能しないゼブラフィッシュを用いれば、移植した組織、例えば腫瘍組織の増殖に影響を及ぼす薬物のスクリーニングが多量かつ簡便にできることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔6〕を提供するものである。
〔1〕rag1遺伝子が機能しない、又はrag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない成魚皮下に他家組織を移植することを特徴とする他家組織の魚体内での継代維持法。
〔2〕魚が、ゼブラフィッシュである〔1〕記載の継代維持法。
〔3〕他家組織が、魚の他家組織である〔1〕又は〔2〕記載の継代維持法。
〔4〕他家組織が、他家腫瘍組織である〔1〕又は〔2〕記載の継代維持法。
〔5〕rag1遺伝子が機能しない、又はrag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない成魚皮下に他家組織を移植し、当該移植の前又は後に被検物質を投与し、当該他家組織に対する被検物質の作用を検出することを特徴とする当該他家組織に作用する薬物のスクリーニング法。
〔6〕rag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しないフィッシュ。
本発明により、ゼブラフィッシュのような大量飼育が容易な小型魚類に対して免疫拒絶反応を生じることなく、他家組織の移植が可能となった。また、rag1、alb1及びroy遺伝子が機能しないゼブラフィッシュを用いれば、皮下に移植された組織の生着、成長などが容易に検出できる。また、本発明のスクリーニング法を用いれば、大量飼育により、多量の薬物の組織に対する作用を容易にスクリーニングすることが可能となる。
組織(精巣断片)の移植方法の模式図を示す。 移植された組織の組織学的解析を示す。HEはHE染色を、BrdUは抗BrdU抗体を用いた免疫染色を示す。矢頭はBrdUを取り込んだA型精原細胞、矢印はB型精原細胞、および精母細胞を示す。 腫瘍化組織の皮下移植を示す。A:腫瘍化精巣。B:移植に用いた腫瘍化精巣の断片。C:移植3ヶ月後の腫瘍化精巣。D,E:Bを移植した直後の宿主。F,G:移植3ヶ月後の宿主。 移植により増幅された腫瘍化組織の皮下移植による継代を示す。 移植した腫瘍化組織の組織切片像を示す。各図の左上の記号は、図4の継代を示す。矢印初期精原細胞、矢頭は精子、二重矢頭は精巣卵を示す。 A:ゼブラフィッシュ生後3日の胚2個体の移植2ヶ月後。B−D:Aの組織切片像を示す。 3日胚の移植2ヶ月後を示す。移植条件はA−Dの写真の上部に示す。この実験では、vasプロモーターによって生殖細胞でEGFPが発現するため生殖巣が緑色蛍光を発するトランスジェニック個体(vas::EGFP)の胚を移植に用いた。A−D:移植組織の明視野での観察像。a−d:緑色蛍光観察像を示す。A’−d’:赤色蛍光観察像を示す。胚はEGFPと関係の無い自家蛍光を持つため赤色蛍光を同時に観察し、EGFPによる蛍光(矢印)と自家蛍光(矢頭)を区別した。c”,d”:移植組織中の精巣部分の組織切片像(HE染色)を示す。E:移植に用いた3日胚の胴体の切り出し方を示している。 vas::EGFPトランスジェニック個体の6日胚の移植2ヶ月後を示す。移植条件はA−Dの写真の上部に示す。A−D:移植組織の明視野での観察像。a−d:緑色蛍光観察像を示す。矢印はEGFPの蛍光を示す。bの個体は自家蛍光が強くEGFPの蛍光と区別が付きにくいため、赤色蛍光観察(b’)を行って自家蛍光(矢頭)を特定した。a”−d”:移植組織中の精巣部分の組織切片像(HE染色)を示す。 A:rag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない成魚皮下に、sox17:EGFPトランスジェニック個体由来の腫瘍化精巣断片を移植し1ヶ月後の宿主の明視野観察。a:Aの緑色蛍光観察。矢印は移植された腫瘍化精巣を示す。sox17:EGFPトランスジェニック個体では精原細胞でEGFPが発現するため腫瘍化精巣を緑色蛍光でより明確に観察する事が出来る。B:Aの宿主から取り出した腫瘍化精巣の明視野観察。b:Bの緑色蛍光観察。C:移植する前の腫瘍化精巣断片の組織切片像。D:移植1ヶ月後の腫瘍化精巣(B)の組織切片像。矢印は初期精原細胞、矢頭は精子を示す。
本発明の継代維持法及びスクリーニング法に用いる魚は、(1)rag1遺伝子が機能しない魚、又は(2)rag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない魚である。ここで、rag1遺伝子が機能しない魚としては、非特許文献6に記載のrag1遺伝子が機能しないゼブラフィッシュが挙げられる。
rag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない魚としては、後記実施例に示すように、本発明者が作製したゼブラフィッシュが挙げられる。この3種の遺伝子が機能しないようにするには、例えば、rag1遺伝子が機能しない魚と、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない魚とを交配させ、3重遺伝子欠損魚を選択すればよい。
本発明における魚としては、大量に飼育できる点から小型魚類が好ましく、小型の淡水魚がより好ましく、様々な遺伝子改変魚が作成されているゼブラフィッシュ又はメダカがさらに好ましく、世界中で広く使われているという意味においてゼブラフィッシュが特に好ましい。
また、rag1遺伝子等が機能しないためには、当該遺伝子全体が欠損している場合、当該遺伝子の一部が欠損して機能しない場合及び当該遺伝子が他の遺伝子に置換されている場合等が含まれる。
本発明で移植に用いる他家組織としては、同種異系組織を用いることができる。本来は同種間であっても通常、遺伝情報が均一な近交系同士でない場合は免疫拒絶反応が生じて移植組織が生着しないので、同種異系の様々な遺伝子改変個体や、疾患個体の組織の移植に有用である。
また、他家組織には、他家の正常組織及び他家の疾患組織が挙げられる。正常組織を移植する場合、例えば胚性致死のゼブラフィッシュ突然変異体を死ぬ前に移植する事によって、突然変異体の臓器を長期間に渡って調べる事も可能であり、種々の研究に用いることができる。また、疾患組織としては、腫瘍組織、自己免疫疾患組織等の治療が困難な疾患の組織を用いることができる。
稚魚に移植する既存の方法とは異なり、成体宿主魚の皮下に収まる大きさの組織、器官を移植することが出来るため、ゼブラフィッシュの器官レベルを移植することができる。移植する組織を細胞単位にまで解離する必要がない点が既存の稚魚を用いる移植法に対する利点である。
器官レベルで移植が可能という観点から、他家組織の移植は成長しきった成魚の皮下が望ましい。ゼブラフィッシュの稚魚は体長が数ミリと小さいため、移植に技術を要し、細胞レベルの移植が精一杯であり組織を移植することはほとんど不可能に近い。成魚とは、該当稚魚の成長魚であり、例えばゼブラフィッシュの場合、体長3cm以上又は生後60日以降であるのが好ましい。皮下への移植は、本発明者が近交系間で移植する際に用いた手法に従い、麻酔した宿主の腹部の表皮を切り、その切り口から表皮と筋肉の間にピンセットを差し込んで移植するスペースを作り、組織を挿入すればよい。
他家組織を移植した魚は、10μg/mLの抗生物質(gentamicin)を含む0.4×PBS中で暗所で4日間餌を与えずに飼育して傷口を修復させ、その後は通常と同様に飼育すればよい。本発明に用いるrag1遺伝子又はrag1、alb1遺伝子及びroy遺伝子が欠損した魚は、他家組織を移植しても免疫拒絶反応を生じることが少ないので、生育が良好である。
なお、rag1、alb1及びroy遺伝子が機能しない魚を宿主とした場合には、体表面が透明となり、移植後の組織が生着、成長する様子が肉眼で観察可能である。
このようにして魚に生着、成長した他家組織は、増殖するものであれば摘出して断片化し、他の同様な遺伝子が機能しない魚の皮下に移植すれば、当該他家組織を継代し維持・増幅することができる。
本発明のスクリーニング法においては、他家組織の移植前又は後に、被検物質を前記魚に投与するか、移植組織を培養して培地中に被検物質を加えて取り込ませる事ができる。宿主への被検物質の投与手段としては、飼育水槽に投入して経口的、及び鰓や体表面から体内に浸透させて摂取させる方法、腹腔に注入する方法が採用できる。飼育水槽に所定の濃度になるように投入するのが簡便である。
移植後の他家組織の生着、成長や縮小を検出すれば、被検物質の移植した組織に対する薬理作用をスクリーニングすることができる。対照として、被検物質を投与しなかった魚中の移植組織を用いればよい。例えば、移植する組織として腫瘍組織を用いれば、短期間に、大量の魚中の腫瘍組織に対する増殖抑制作用がスクリーニングできる。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1(rag1突然変異体における同種異系移植片の受容性)
まず最初にゼブラフィッシュrag1突然変異体(rag1-/-)において移植片に対する免疫拒絶反応がおこるか検討を行った。図1に示す様にAB/Tu系統の精巣断片を各系統に移植した。すなわち、AB/Tu系統の精巣を約5分割し、rag1-/-、wild-type(IndiaもしくはTM系統)の雄の皮下に移植した。移植した宿主は10μg/mLの抗生物質(gentamicin)を含む0.4×PBS中で暗所で4日間餌を与えずに飼育して傷口を修復させ、その後は通常の飼育水中で4週間飼育した。移植片の解析は、移植片が回収された場合はブアン固定し組織切片を作成して観察した。その結果を表1に示す。各系統に移植されたAB/Tu系統の精巣断片(同種異系)のうち、4週間後に移植片が拒絶反応によって消失せずに回収された数を示す。Rag1突然変異体に移植された移植片の大部分は拒絶されずに生存し、その他の系統に移植された場合は全て拒絶された事が分かる。この結果は、rag1突然変異体では少なくとも同種異系組織に対しては免疫拒絶反応をおこさない事を明らかに示している。
この時、回収された移植断片をBrdUで3時間処理して組織切片を作成し、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色および抗BrdU抗体を用いた免疫染色を行った。すなわち、Rag1突然変異体に移植され、生き残った移植片をBrdUを添加したL−15培地中で3時間培養し、ブアン個体を行って組織切片を作成した。BrdUの標識、検出にはCell proliferation kit(GEヘルスケア)を使用した。結果を図2に示す。HE染色では精巣の組織構造に異常は見られず(図2HE)、様々なステージの生殖細胞の核でBrdUが検出された(図2BrdU)。BrdUは増殖中の細胞DNAに取り込まれる性質を持っており、この物質を取り込んだ細胞は増殖活性を持っている事になる。魚類の精子形成では、生殖細胞の精子への分化と細胞分裂が密接に関与しているため、生殖細胞の増殖活性を調べる事で精子形成が行われているか調べることができる。そのためこの結果は、移植された精巣断片の組織構造が正常に維持され、精巣の主たる機能である精子形成も維持されていた事を明確に示している。これらの結果から、rag1突然変異体は同種異系組織に対する拒絶反応を起こさず、移植された組織本来の構造や機能を維持する事が出来るという移植実験の宿主として理想的な特性を備えている事が明らかになった。
実施例2(rag1突然変異体を宿主に用いた腫瘍化精巣の維持・増幅)
rag1突然変異体が腫瘍化組織の移植実験に使用可能か検討を行った。すなわち、腫瘍化精巣を取り出し(図3A)、腫瘍化精巣は巨大でそのままでは移植困難なため移植可能なサイズに断片化した(図3B)。この断片をrag1突然変異体の雄に皮下移植した(図3D,E)。3ヶ月後には移植部分が大きく膨らみ(図3F,G)、元の腫瘍化精巣とほぼ同サイズにまで成長していた。BとCは同じ倍率の写真であるため、移植により大きく成長する事が分かる。移植断片の成長は宿主の外見からも観察することができる(D−G,矢印)。これらの写真は図4のB系統の腫瘍化精巣を用いた時の写真である。この様に大きくなった移植片を取り出し、更に移植を行って継代を行いその結果を図4にまとめた。
我々はこれまでに4つの腫瘍化精巣を得ており、この移植実験に使用した。次に成長した移植断片を再度断片化して再移植を行い、移植片の継代が可能か検討した。すなわち、4つの腫瘍化精巣を用いて皮下移植実験を行い、移植によって成長した移植断片を用いて継代を行った。図4中、各カラムの左側は移植実験を行った日付を示している。全ての移植断片は1ヶ月以内に外見から観察出来る程に成長するため、一ヶ月以内での成長した移植断片数をGraft Growthの項に、1ヶ月間生存していた宿主の数を1 month survivalの項に記載した。Restの項は現在まで生存している宿主の数を示す。A系統のA3−1、A3−2、A4−1の移植実験では宿主が一ヶ月間生き残れない場合が多く、A2−1の段階で移植片の悪性度が増加した事が示唆された。他の系統の移植実験では、飼育上の問題以外で宿主の死亡が続出することは見られなかった。
この実験に用いた4種の腫瘍化精巣は再度断片化して移植しても大きく成長し、1年以上の長期間に渡って維持できることが明らかとなった。
図4に示した移植実験に用いた腫瘍化精巣断片の一部をブアン固定し、組織切片を作成してHE染色を行った(図5)。図5中、写真左上の名前は図4に同名で示した各移植実験の時に用いた移植断片を示す。図4の結果から移植断片の悪性化が進んだと思われるA4−1の断片では精子形成細胞がほとんど無くなっており、組織が変性した事が分かる。A系統の断片ではSmolowitz(Biol Bull 2002, 203: 265−266.)のセミノーマに関する報告にも記載されている様な精巣卵が観察される(図5A、C、D、二重矢頭)。その他の断片ではSmolowitの報告と様様に初期の精原細胞(矢印)が豊富に見られるが、精子(矢頭)は少ない。D系統の断片では他の腫瘍化精巣と違い初期の精原細胞しか観察されないが、D系統の腫瘍化精巣はNI161突然変異体由来であり、NI161の表現形と合致している。
A系統の腫瘍精巣では継代によって宿主が早期に死亡してしまう現象が見られ、図5に示す様にこの様なケースでは移植した断片の性質が変性している事が分かった。本来であれば腫瘍化精巣が発生した個体は長くは生きられないため、ここまで精巣が変性してしまうまえに死亡してしまう。宿主が早期に死亡してしまう事から、腫瘍化精巣が長期間生き続ける事によって、悪性度が高まったといえる。この事から、移植された腫瘍化精巣の性質は必ずしも完全に維持出来る訳ではなく、継代には注意が必要である事が分かった。一方、その他の3種の腫瘍化精巣では宿主が早期に死亡してしまう傾向は見られず、組織学的にも大きな差は今のところ見られないため、移植による腫瘍組織の変性はそう頻繁に起こるものではないものと思われる。また多くの場合、移植後の宿主の精巣が見つからない現象が見られたため、宿主の精巣と移植された腫瘍化精巣は拮抗することが示唆された。以上の結果から、rag1突然変異体は腫瘍化組織の移植実験の宿主として十分に使用可能である事が示唆された。
実施例3(rag1突然変異体を用いた個体(胚)の移植)
これまでrag1突然変異体を宿主に用いる事によって、精巣および腫瘍化精巣の移植が可能である事が明らかとなった。次のステップとしてその他の組織も移植可能であるか検討を行った。その際、移植可能な大きさであり、かつ全ての種類の器官を備えている3日胚を用いて移植実験を行った。すなわち、形態形成がほぼ終了した3日胚2つをrag1突然変異体1個体に移植し、2ヶ月間飼育した。移植胚は融合していたが、宿主中で拒絶されず大きく成長し、眼球や拍動する心臓を観察する事が出来た(図6A)。この胚をブアン固定し、組織切片を作成してHE染色を行ったところ、眼球(図6B)、筋肉(図6C)、腸管(図6D)等が観察された。
これらの結果から、rag1突然変異体は精巣以外の組織の移植実験にも使用可能な事が分かった。
しかし、この時の移植胚では生殖巣を観察する事が出来なかった。移植精巣は宿主の精巣と拮抗する傾向がある事が把握出来ていたため、次にdead−end遺伝子のノックダウンによって生殖細胞を除去したrag1突然変異体を用いて再度胚移植実験を行った。この実験では生殖細胞でEGFP遺伝子を発現するvas::EGFPトランスジェニック個体の3日胚と6日胚を1匹丸ごと、および胴体のみの状態で移植した。
すなわち、vas::EGFPトランスジェニック個体の3日胚を1匹丸ごと、および胴体のみの状態で1匹の宿主(rag1突然変異体)につき1つずつ同時に移植した。宿主は正常なrag1突然変異体と生殖細胞を欠失したrag1突然変異体を用い、移植後2ヶ月間飼育した。飼育後、移植胚を取り出してEGFPの蛍光を観察した。胚には自家蛍光(図7a、b、c、d矢頭)があるため、赤色蛍光用のフィルターの観察も行いEGFPの蛍光と区別した(図7a’、b’、c’、d’矢頭)。1匹丸ごとでの移植でも、胴体のみの移植でも宿主の生殖細胞が欠失している宿主を用いた場合ではEGFPの蛍光が観察され(図7c、d矢印)、組織切片の観察によって精巣組織が形成され精子形成が行われ精子が形成されている事が確認された(図7c”、d”sperm)。また、生殖細胞を持つ正常な宿主では精巣は観察されなかった。図7Eの胚の写真は、移植胚の胴体の切り出し方を示している。
vas::EGFPトランスジェニック個体の6日胚を1匹丸ごと、および胴体のみの状態で1匹の宿主(rag1突然変異体)につき1つずつ同時に移植した。宿主は正常なrag1突然変異体と生殖細胞を欠失したrag1突然変異体を用い、移植後2ヶ月間飼育した。飼育後、移植胚を取り出してEGFPの蛍光を観察したところ、6日胚を移植した場合では全ての移植胚でEGFPの蛍光が観察された(図8a、b、c、d矢印)。これらの胚の組織切片の観察によって精巣組織が形成され精子が形成されている事が確認された(図8a”、b”、c”、d”sperm)。
これらの結果から、rag1突然変異体は様々な組織の移植に使用可能ではあるが、移植する組織が宿主の組織と拮抗する場合は注意が必要である事が分かった。
実施例4(alb;roy;rag1三重突然変異体を用いた移植組織の可視化)
これまでの結果より、ゼフラフィッシュrag1突然変異体は少なくとも同種異系組織の移植実験に宿主として使用可能である事が示された。しかし、この突然変異体では正常に色素細胞が形成されるため、成体に組織を移植するとそのままでは移植片を観察出来ず、解析するには宿主を殺して移植片を取り出す必要がある。この点を改良するため、色素細胞が形成されないために成体でも魚体が透明になるalb;roy二重突然変異体とかけ合わせてalb;roy;rag1三重突然変異体を作成した。この個体を宿主としてsox17::EGFPトランスジェニック個体由来の腫瘍化精巣断片3つを3個体に移植した。この移植片ではsox17プロモーターによって移植片内の多数を占める精原細胞でEGFPが発現するため、移植片をEGFPの蛍光により観察することができる。移植1ヶ月後に宿主を麻酔して生かしたまま観察したところ、移植片が観察され(図9A、矢印)、蛍光観察ではさらに明瞭に移植片が観察された(図9a、矢印)。この結果はalb;roy;rag1三重突然変異体を宿主に用いる事によって移植組織を生きたまま観察する事が可能になった事を示している。
取り出した移植片(図9B、b)を固定し組織切片を作成しHE染色を行った。移植された腫瘍化精巣(図9D)では精子(矢頭)が少なく、大部分が初期精原細胞(矢印)で占められており、移植前の腫瘍化精巣(図9C)と同様な特徴が観察された(図9C、D)。この結果から、alb;roy;rag1三重突然変異体を宿主に用いても、rag1突然変異体と同様に移植組織が維持される事がわかった。以上の結果から、alb;roy;rag1三重突然変異体を宿主に用いる事により移植片が維持され、宿主を生かしたまま継時的に観察していく事が可能になったといえる。

Claims (6)

  1. rag1遺伝子が機能しない、又はrag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない成魚皮下に他家組織を移植し、当該成魚を移植傷口が修復するまで抗生物質存在下で飼育することを特徴とする他家組織の魚体内での継代維持法。
  2. 魚が、ゼブラフィッシュである請求項1記載の継代維持法。
  3. 他家組織が、魚の他家組織である請求項1又は2記載の継代維持法。
  4. 他家組織が、他家腫瘍組織である請求項1又は2記載の継代維持法。
  5. rag1遺伝子が機能しない、又はrag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しない成魚皮下に他家組織を移植し、当該成魚を移植傷口が修復するまで抗生物質存在下で飼育し、当該移植の前又は後に被検物質を投与し、当該他家組織に対する被検物質の作用を検出することを特徴とする当該他家組織に作用する薬物のスクリーニング法。
  6. rag1遺伝子、alb1遺伝子及びroy遺伝子が機能しないフィッシュ。
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