以下の詳細な説明は、輸送機に関し、当該輸送機は、システムの冗長性を増すためのモジュール式の装置センターを有する。また、ワイヤの重量及び必要なワイヤコネクションの数を最小限に抑えることによって、輸送機全体の重量及び輸送機の製造時間を低減できるように、輸送機内にわたって複数のモジュール式装置センター(MEC)を分散配置したものである。本発明は、多くの異なる形での実施形態が可能であり、本発明の原理を、開示した特定の実施形態のみに限定する意図はない。以下で言及した方向、例えば、「前」「後」「左」「右」などは、輸送機の後方から前方を見た場合のものである。以下の詳細な説明において参照する添付図面は、本開示の一部を構成するものであり、特定の実施形態又は実施例を例示的に表している。図面において、同様の要素には同様の参照数字を付している。以下、本開示の様々な側面に関し、図面を参照しつつ説明する。
本開示の側面は、種々の輸送機において利用することが可能である。そのような輸送機としては例えば、航空機、宇宙船、衛星、船舶、潜水艦、及び、旅客用、農業用又は建設用の輸送機などがあげられる。本開示の側面は、輸送機の他の様々な構成においても適用することができる。直接的な効果が奏されるのは、非導電性のフレーム、シャーシ又は外板を有する輸送機であるが、本願で開示する特徴は、導電性材料によって形成された輸送機にも好適かつ有益であろう。本開示の側面をわかりやすく説明するため、本明細書では、主要な例として複合材航空機10をあげているが、開示の側面の多くが複合材航空機10のみに限定されないことは容易に理解されよう。
当業者であればわかるように、図1に示した例示的な航空機10は、一般的に胴体(fuselage)とよばれる本体を有しており、これは実質的に複合材料又は複合材で形成されている。航空機10の胴体の複合材外板は、胴体フレームの曲率に合わせて曲げられている。胴体は、前方セクション12、中央セクション14、および後方セクション16等の、複数の航空機セクションに分けられる。隣接する航空機セクションの間には、セクションブレーク(section breaks)18、20、22が規定されている。複合材航空機10は、任意の数のエンジンを有する。図1に示すように、左エンジン30は左翼に支持されており、右エンジン32は右翼に支持されている。エンジン30、32のそれぞれが、ローターを有しており、これらはローターバーストゾーン38(図5A)を規定している。このゾーンは、エンジン30、32の一方に関する何らかの事象又は動作的な不具合の結果、エンジン30、32間の胴体及び航空機システムへの損傷が起こりうる領域である。
複合材航空機10におけるセクションの数は、任意に設定可能である。複合材航空機10内のセクション又はシステムの位置は、ローターバーストゾーン38を基準として、これよりも前方あるいは後方であると規定することができる。胴体フレームの間には、床ビームが延びており、これらの床ビームの上には客室が、下には貨物を保管するための貨物エリアが設けられている。胴体フレームと床の間に延びるスタンチョン(stanchions)は、複合材航空機10の床を補強する支柱である。客室エリアは与圧され、貨物エリアは、例えばその一部又は全体が与圧される。ダクトは、客室の上方の複合材航空機10のクラウン部、又は胴体フレームとスタンチョンの間などの床の下の貨物エリアに配置されうる。
各エンジン30、32に対し、1つ又は複数の主一次電源が装備される。これらは例えば、高電圧AC左発電機34a、34b及び高電圧AC右発電機36a、36bである。(以下、一括的及び/又は全体的に、「左発電機34」、「右発電機36」、「発電機34、36」と呼ぶ場合もある。)左発電機34a、34bからは、一次電力供給手段40a、40bが延びており、右発電機36a、36bからは、一次電力供給手段42a、42bが延びている。図1に示すように、一次電力は、一次電力供給手段40a、40b、42a、42b(以下、一括的及び/又は全体的に、「電力供給手段40、42」と呼ぶ場合もある)を介して、複合材航空機10内に全体的に分配される。複合材航空機10は、1つ又は複数の高電圧AC補助電源ユニット発電機54をさらに有し、これは、発電機34、36の1つ又は複数が停止した場合の冗長性を確保するとともに、エンジン30、32が作動していないときに電力を供給するためのものである。複合材航空機10が駐機され、エンジンが作動していない時には、高電圧AC補助電源ユニット発電機54などの1つ又は複数の電源によって航空機に電力を供給することができる。
本開示において、低電圧及び高電圧とは、航空機産業において通常低電圧又は高電圧と規定されている電圧であり、例えば、RTCA社により発行されたアビオニクスハードウェアの環境試験基準である「DO-160, Environmental Conditions and Test Procedures for Airborne Equipment」に記載された電圧である。本開示を通して、230VACを高電圧と称するが、230VACより高い又は低い所定範囲内の電圧も高電圧と呼ぶこともできるであろう。また、28VDC及び115VDCを低電圧と称するが、28VDC及び115VDCより高い又は低い所定範囲内の電圧も低電圧と呼ぶこともできるであろう。
図1の複合材航空機10は、専用の集中型装置ベイに電力及び通信装置を収容するといった構成を採用していない。すなわち、そのような装置の代わりに、各々がMECと呼ばれる複数のモジュール式電力及び通信装置センターを有しており、これら電力及び通信装置を複合材航空機10全体に分散配置している。例えば、1つ又は複数のMECが、前方セクション、中央セクション、及び、後方セクション12、14、16のそれぞれに配置されている。各MECは、電力変換を局所的に行うものであり、例えば以下により詳しく述べるように、一次MEC44、二次MEC46、又は、補助もしくは予備MEC48のいずれかである。一次MEC44、二次MEC46及び予備MEC48を、1つ又は複数の適切な参照数字44、46、48を付して概括的にMECと呼ぶ場合もある。一次電力は、発電機34、36から、電力供給手段40、42を介し、セクションブレーク18、20、22を横切って、各MEC44、46、48の一次電力入力に分配される。
フォールトトレランス(fault tolerance)を最適なものとするために、航空機10は、航空機10の後部に配置された予備MEC48と、航空機10の前方セクション、中央セクション、後方セクション12、14、16のそれぞれに配置された少なくとも2つのMEC44、46を含みうる。例えば、図1においては、各航空機セクション内に複数のMEC44、46、48を設けることによって冗長性を実現することができ、セクションブレーク18、20、22を越える必要はない。好ましくは、予備MEC48に加えて、各セクション12、14、16毎に、一次MEC44及びこれに相当する二次MEC46を設け、MEC44、46からなる2×3の構成としてもよい。また、異なる4個の航空機セクションがある場合には、MEC44、46からなる2×4の構成としてもよい。また好ましくは、MEC44、46、48は、航空機10の長さ方向に沿って、互いに対して左側及び右側に交互に離間配置してもよい。なお、本開示は、MEC44、46、48の特定の数および配置に限定されるものではない。
装置負荷50は、航空機に配備される様々な電気的負荷であり、例えば、ディスプレイ、ファン、環境ユニット等を含むが、これらに限定されるわけではない。場合により、装置負荷50は、列線交換ユニット52(LRU)(図4)であってもよい。各航空機セクション12、14、16内の複数の装置負荷50は、電力及び通信に関して1つ又は複数の区域(zone)にグループ分けされる。複数のシステムにわたる複数の装置負荷50が属する各区域は、最も近くにあるMEC44、46と関連付けられて、当該MECによる所定の対応(service)を受ける。好ましくは、装置負荷50の各区域は、単一のセクション内に位置しており、同じ区域内における少なくとも1つのMEC位置と関連付けられる。好ましくは、接続ワイヤ又はラインは、セクションブレーク18、20、22を横切らない。
一般に、航空機10内のあらゆる装置負荷50は、電力と通信データの両方を必要とする。データは、何をすべきかを装置負荷50に伝えるために、又は、現在の状況についてフィードバックを与えるために必要であり、電力は、意図した機能を装置負荷50に実行させるために必要である。仮に、一の装置負荷50に対し、電力とデータとが異なる装置センターから供給される場合には、電力又はデータの一方が途切れると、当該装置負荷50は不確定な状態となる。このような不確定状態を回避するため、各MEC44、46、48は、関連付けられた区域内に局所的に配置された装置負荷50のそれぞれに対応すべく、他のMECとは独立に、電力及び通信データの両方を提供する構成とされている。一の装置負荷50に対する電力及びデータ通信は、同期化又はグループ化されていてもよい。その場合、例えば、当該装置負荷50に対して提供される電力とデータ通信の両方が、1つの供給源、例えば最も近くにあるMEC44、46、48に由来する。同期化された電力及び通信データは、しばしばパワーチャネルと呼ばれる。1つの区域内の複数の装置負荷50が、ある特定のMEC44、46から電力を受け取るように構成されている場合には、これらの装置負荷50にデータを与えるネットワーク通信スイッチは、その同じMEC44、46によって給電される。
MEC44、46、48は、主電源から受け取った電力を分配するように構成されている。MEC44、46、48は、それぞれ独立して一次電力を二次電力に変換しうる。二次電力は、MEC44、46、48から分配されて、各区域内の装置負荷50のそれぞれに個別に供給することができ、セクションブレーク18、20、22を横切って延びる二次分岐電力ネットワークは存在しない。この場合、例えば、一次電力の制御及び変換の作業は、航空機10のそれぞれのセクションにおける各一次MEC44が担うこととなるので、一次電力だけがセクションブレーク18、20、22を横切って複数の一次MEC44間で分配される。好ましい構成においては、高圧電力供給手段及びデータバックボーンのみがプロダクションブレークを横切って配置される。
一次電力だけをセクションブレーク18、20、22を横切って分配することによって、航空機10の複数のセクションにまたがって二次電力を分配するために必要とされるワイヤの量を減らすことができる。これは、分散型MECアーキテクチャが、各セクション内に別個の二次電力分配ネットワークを形成し、これによって二次配線の配線長を短くすることができるからである。こうすることによって、隣接する胴体セクション同士を接合する際に必要とされる二次コネクションの数だけでなく、航空機全体で利用されるワイヤの総重量も減らすことができる。さらに、二次電力配線長が短くなるため、電力供給手段の配線の総ループ面積が、電流リターンネットワークでの構成と比べて短くなる。また、セクションブレークを横切って延びるワイヤの二次電力ネットワークが減る又は無くなるため、航空機生産工程が改善される。セクションブレークを横切って延びる二次電力ワイヤを減少させたことによって、他のセクションに対する依存度が低減されるため、航空機10の最終組み立て前のより早い段階で、検査及び組み立て品質確認を容易に行うことができる。
図1に示すように、一次電力供給手段40aは、左エンジン30の発電機34bから中央セクション14に入って中央セクション14の左側に示したMEC44へと延び、セクションブレーク20を横切って、前方セクション12の左側に示したMEC44に至り、さらに前方セクション12の前方における左側に示したMEC44に至る。一次電力供給手段40bは、左エンジン30の発電機34aから中央セクション14に入って左側のMEC44へと延び、セクションブレーク22を横切って、左後方のMEC44に至り、次に、左後方のMEC48に至る。電力供給手段42aは、右エンジン32の発電機36aから中央セクション14に入り、セクションブレーク20を横切って、前方セクション12の右側に示したMEC44に至り、次に、前方セクション12の前方における右側のMEC44に至る。一次電力供給手段42bは、右エンジン32の発電機36bから中央セクション14に入って中央右側のMEC44へと延び、セクションブレーク22を横切って、右後方のMEC44に至り、次に、右後方のMEC44に至る。このような構成に代えて、電力供給手段40a、40bが、航空機10の1つ又は複数のセクションにおける右側のMEC44に一次電力を供給するようにしてもよい。この場合、電力供給手段42a、42bは、航空機10の1つ又は複数のセクションにおける左側のMEC44に一次電力を供給することになる。
また、左エンジン30の発電機34a、34bのうちの一方が、ローターバーストゾーン38の前方における航空機の一方側に一次電力を供給し、左エンジン30の発電機34a、34bのうちの他方が、ローターバーストゾーン38の後方における航空機の他方側に一次電力を供給するようにしてもよい。この場合、例えば、右エンジン32の発電機36a、36bのうちの一方が、ローターバーストゾーン38の前方における、左発電機34a、34bの一方によって給電された側とは反対側に一次電力を供給する。また、右エンジン32の発電機36a、36bのうちの他方は、ローターバーストゾーン38の後方における、左発電機34a、34bの他方によって給電された側とは反対側に一次電力を供給する。
図2は、各エンジンに配備する2つの発電機を、航空機10のローターバーストゾーン38を境として分割配置する構成を示している。これは、エンジン30、32に動作上の問題が発生した場合でも、一次電力の利用可能性を向上させるものである。仮に、エンジン30、32のうちの一方が失われた場合、あるいは、エンジン30、32のうちの一方における発電機34、36が停止した場合であっても、残りのエンジン30、32の残りの2つの発電機34a、34b、36a、36bが、前方及び後方の両方の一次電力を航空機10に分配することができる。左エンジン30の発電機34a及び右エンジン32の発電機36aは、ローターバーストゾーン38の前方の、前方タイバス76によって互いに接続された一対の一次電力スイッチングバス96aに給電する。左エンジン30の発電機34b及び右エンジン32の発電機36bは、ローターバーストゾーン38の後方の、後方タイバス78によって互いに接続された別の一対の一次電力スイッチングバス96aに給電する。中央タイバス80によって、前方の一次電力スイッチングバス96aの少なくとも1つが、後方の一次電力スイッチングバス96aの少なくとも1つと接続されている。従って、1つのエンジン30、32に動作的な不具合が発生した場合でも、残りのエンジン30、32から前方及び後方に電力が分配されることによって、航空機10は、その全長に沿った一方側において、電力及び制御を維持することができる。電力及び制御は、配線の量を増やすことなく、1つのエンジン30、32から、ローターバーストゾーン38の前方及び後方の両方に分配される。図2はまた、以下により詳しく説明するように、装置負荷50に対する電力の変換及び分配を行うべく、一次電力スイッチングバス96aが二次MEC46に電力を分配する構成を示している。二次MEC46には、予備MEC48を接続してもよく、これにより、以下により詳しく説明するように、一次スイッチングバス96aが一次主AC電源を利用できない場合に、バックアップ電力を供給することができる。
1つ又は複数の区域内において、装置負荷50を機能させるための所定の対応が行われない状態は、主に2つの理由で起こる。発電機34、36のすべてが停止し、これによって、MEC44、46のいずれも一次電力を利用できない状態となったためか、あるいは、ローター又はタイヤのバーストなどの事象によりバス96の1つ又は複数が物理的に損傷を受けたためである。このような場合、1つ又は複数の主一次電源の停止に基づき、4つの発電機34、36のいずれかから、あるいは補助電源ユニット発電機54から供給される高電圧電力のルート変更が行われる。この変更は、図3の一次電力バスネットワークシステム90によって示すように、複数のスイッチの組み合わせの開閉によって、タイバス76、78、80を介した一次バスレベルで実現される。1つ又は複数の実施形態において、1つ又は複数の独立型(standalone)ソリッドステートスイッチ、例えば接触器、が、一次電力スイッチネットワークシステム90に含まれている。各ソリッドステートスイッチは、他の電力システムコンポーネントが利用できるかどうかに関係なく、局所的な保護、電圧感知、及び電流感知のうちの1つ又は複数を実現するように構成された自己充足的な制御機能を有する。独立型ソリッドステートスイッチは、他の電力システムコンポーネントからのデータを必要とせずに機能することができる。ソリッドステートスイッチを開閉することによって、一次電力スイッチングバスの1つ又は複数を通ってMEC44、46、48の1つ又は複数へと向かう一次電力が遮断あるいは送給される。図3においては、特定の接触器が、最初は閉状態又は開状態のいずれかで描かれている。開状態の接触器を示す記号は2本の平行線である。一方、通常閉状態の接触器は、同じ平行線に斜線を横切らせることで示している。独立型ソリッドステートスイッチは、当該スイッチを通る電流を制限するために、パルス幅変調機能を含んでいてもよい。高電圧バス及び変換の停止に基づくMEC44、46、48間の二次電力及び低電圧DCのルート変更は、図3に描かれた一次電力バスネットワーク90によって示されるように、スイッチの組み合わせの開閉によって行われる。
各MEC44、46、48は、一次電力及び二次電力の両方を有しており、中央コンピューターシステムに依存せずに、閉ループ処理及びセンサーの局所的制御を独立して行うことができる。分散型電力システム制御アーキテクチャによって、輸送機全体の電力分配ステータスをMEC44、46、48間で共有することができるが、他のすべてのMEC44、46に対する予備電力の分配も行うMEC48を除いて、各MEC44、46、48は、各MECに近接する装置負荷50に対し所定の対応をするだけである。各MEC44、46、48は、最も近接する装置負荷50の区域に関連付けられたデータを管理し、これによって、各MEC44、46、48は、それ自身の装置負荷50の区域内で独立して動作を行う。
また、各MEC44、46、48は、好ましくは、バス電力制御のためのソリッドステートスイッチングを有し、回路保護も実現する。図3において、発電機34、36に接続された一次電力供給手段40、42からの電力は、一次電力スイッチングバス96aに通電する。各一次電力スイッチングバス96aは、MEC44内の一次電力スイッチングバス96b、及びMEC46内のスイッチングバス96cに分岐する。図4に示し且つ以下により詳しく述べるように、分配フィード98によって一次電力スイッチングバス96bと接続された各一次電力スイッチングバス96aは、単一の一次MEC44に通じている。
図4を参照すると、各MEC44における、一次電力スイッチングバス96aを備える部分は、高電力部分120であり、各MEC44における、一次電力スイッチングバス96bを備える部分は、低電力部分122である。一次MEC44の高電力部分120は、航空機10が利用できる任意の高電力主電源から一次電力を受け取るように構成されており、しばしば、一次電力スイッチングネットワーク装置302(図12A〜12C)と呼ばれる。航空機10内の一次MEC44の高電力部分120のネットワークは、高電圧一次電力スイッチングネットワークを規定する。
低電力部分122は、好ましくは、機内搭載の電源からの電力の一部を処理するものの、高電力部分120と同じ電圧を処理することも可能なように構成される。一次電力スイッチングバス96cは、図4に示した二次MEC46に通じている。図4は、二次MEC46と、一次MEC44の低電力部分122との類似性を最もよく示している。一次MEC44は、航空機10内における一次電源のルート変更を行うための、一次電力スイッチングバス96aにかかる一次レベル電力ネットワークバス構造を含んでいるが、二次MEC46はこれを有していない。異常動作中だけでなく正常動作中においても、一次及び二次MEC44、46の両方が、一次電力及び予備電力を有している。二次MEC46は、一次MEC44と同様に、最も近接する装置負荷50に対して所定の対応を行う。
図3に戻り、分配フィード98は、各一次MEC44の一次電力スイッチングバス96aと96bの間に延びており、分配フィード100は、一次MEC44の各バス96bと、同じ電源から電力を直接受け取る二次MEC46の一次電力スイッチングバス96cの間に延びている。また、左発電機34aに関連付けられた一次MEC44の一次電力スイッチングバス96bと、右発電機36aに関連付けられた一次MEC44の一次電力スイッチングバス96bとの間に、クロスタイ102が延びている。また、左発電機34aに関連付けられた二次MEC46の一次電力スイッチングバス96cと、右発電機36aに関連付けられた二次MEC48の一次電力スイッチングバス96cとの間に、クロスタイ104が延びている。左発電機34bに関連付けられた一次MEC44の一次電力スイッチングバス96bと、右発電機36bに関連付けられた一次MEC44の一次電力スイッチングバス96bとの間に、クロスタイ106が延びている。発電機34bに関連付けられた二次MEC46の一次電力スイッチングバス96bと、右発電機36bに関連付けられた二次MEC46の一次電力スイッチングバス96bとの間に、クロスタイ108が延びている。クロスタイ102、106のそれぞれには、補助電源ユニット発電機54が接続されている。
図5Aは、航空機10内における、一次MEC44、二次MEC46、及び予備MEC48のフォールトトレラントな結合一次及び二次電力分配ネットワークの一構成を示す。より詳細に示すために、図5B〜図5Eは、4つの別個の部分のクローズアップ部分図を示しており、これらを隣り合わせに配置すると図5Aに示した全体システムとなる。図5B〜図5Eのそれぞれにおける2本の一点鎖線は、各部分図の切れ目を示す。図5Bは、図5Aの左上部分を示す。図5Cは、図5Aの右上部分を示す。図5Dは、図5Aの左下部分を示し、図5Eは、図5Aの右下部分を示す。また、図5Fは、図5Aのシステムの予備MEC48の一構成を示す。図3Aに示した接触器も、図5A〜図5Fに記号で表しているが、図5A〜5Fに対しては参照数字が無く、また、これらは、他の図面においても、参照数字の無い状態あるいは異なる参照数字を付して示す場合がありうる。
図5Aにおいて、一次MEC44及び二次MEC46は、航空機10の前方セクションに合計4つ存在し、航空機10の後方セクションにも合計4つ存在するように配置されている。好ましくは、一対の前方セクションのそれぞれに1つの一次MEC44と1つの二次MEC46とが存在し、一対の後方セクションのそれぞれにも1つの一次MEC44と1つの二次MEC46とが存在する。図5Aは、航空機10の後方セクション内の予備MEC48も示している。予備MEC48用の非時限(non-time limited)電源としては、例えばRAMエアタービン(RAT)128があり、他の独立した時限予備電源としては、バッテリーもしくは燃料電池などがある。すべての発電機34、36に動作上の不具合が起こった場合、RAT128を起動することによって、予備MEC48に予備電力の供給が行われる。また、発電機34a、34b、36a、36bに動作的な不具合が起こった場合、MEC44、46のうちの1つ又は複数に上記の予備電力が供給される。バッテリー598は、非時限RAT128の起動時に、MEC44、46のうちの1つ又は複数ならびに予備MEC48に対して一時的な動作電力を供給する。
発電機34a、34b、36a、36bのうちの1つが停止すると、一次MEC46の一次電力スイッチングバス96aにおいて電力が得られない。従って、この非給電一次MEC44の一次電力スイッチングバス96bの低電力部分122に接続された装置負荷50には所定の対応が行われず、また、隣接する非給電の二次MEC46の一次電力スイッチングバス96cに接続された装置負荷50にも所定の対応が行われない。この場合、接触器の組み合わせを適宜開閉することにより、一次レベルでのルート変更を行い、他の残りの作動状態の電源のうちの1つから電力を送給する。これにより、非給電の一次MEC44の一次電力スイッチングバス96aに通電することによって、該当する装置負荷50に給電するとともに、隣接する任意の非給電の二次MEC46の一次電力スイッチングバス96cに通電することによって、該当する装置負荷50に給電する。
これに代えて、MEC44、46、48に物理的障害が発生し、その結果、その装置負荷50に給電されない場合、電力送給ルートを変更することによって、給電されている別のMEC44、46、48から非給電のMEC44、46、48の装置負荷50に給電してもよい。ルート変更することができる電力の量に応じて、装置負荷50のすべて、又は、重要な(critical)負荷のみなどの一部だけに給電を再開してもよい。また、すべての電源が失われ、MEC44、46、48に給電されない場合には、燃料電池又はRAT128を備える予備MEC48によって、他のMEC44、46の重要な装置負荷50に給電することができる。重要な負荷とは、航空機10が継続して安全な飛行及び着陸を行うために、給電しておかなければならない装置負荷50のことをいう。これに対し必須の(essential)負荷とは、例えば無線装置やその他の通信装置などのように、備えていることが望ましいが、航空機10の飛行自体にはその作動が必要なわけではない装置負荷50のことをいう。また、非必須の(non-essential)負荷とは、食品調理装置、装飾照明、客室娯楽システムなどを含め、例えば乗客の快適性のための負荷など、最も優先度の低い装置負荷50のことをいう。
一例として、補助電源ユニット発電機54は、主発電機34、36のうちの一方が停止することにより非作動となった装置負荷50に対して、所定の対応を行うことができる。仮に発電機34bが停止した場合、前方タイバス76、後方タイバス78、中央タイバス80における接触器の組み合わせによって、残りの主発電機34、36から一次電力が直接供給される。これに代えて、一次電力は、補助電源ユニット発電機54から、作動状態の別のMEC44、46を介して、クロスタイ102、104、106、108のうちの1つ又は複数を通って、非給電の一次MEC44の一次電力スイッチングバス96a又は非給電の二次MEC46の一次電力スイッチングバス96cに供給することもできる。
MEC44、46のうちの1つ又は複数が物理的な動作不具合を有する場合、動作的に不具合のあるMEC44、46のそれぞれに関連付けられた区域内の複数の装置負荷50のすべて又は一部を、最も近接する他のMEC44、46の1つ又は複数と関連付けることができる。例えば、一次MEC44が物理的に停止した場合、その停止したMEC44によって所定の対応が行われていた装置負荷50に対して、別のMEC44、46又はMEC44、46の組み合わせが当該対応を行うようにしてもよい。MEC44、46は、停止したMEC44によって所定の対応が行われていた装置負荷50のタイプを判定し、MEC44、46の組み合わせの1つ又は複数が、これらの非給電の装置負荷50に所定の対応を行うべきかどうかを判断することができる。停止した一次MEC44の最も近接する二次MEC46が追加の装置負荷50に所定の対応を行うべきであると判断された場合には、その二次MEC46にもともと関連付けられていた区域を拡大し、停止した一次MEC44によって以前は所定の対応が行われていた区域を包含させる。
これに代えて、追加の装置負荷50を、停止した一次MEC46に近接する二次MEC46と、別の一次MEC46とで、分担してもよい。この場合、最も近接する作動状態の一次MEC44に関連付けられた装置負荷50の区域を拡大することによって、停止した一次MEC44によって所定の対応が行われていた区域の一部を包含させる一方で、最も近接する作動状態の二次MEC46に関連付けられた装置負荷50の区域を拡大することによって、停止した一次MEC44によって所定の対応が行われていた区域の残りの部分を包含させる。いずれの場合においても、停止したMEC44、46に近接する1つ又は複数の他のMEC44、46を供給源とすることによって、この停止したMEC44、46によって所定の対応が行われていた装置負荷50に対し、独立して対応することができる。
各二次MEC46、及び、各一次MEC44の各低電力部分122は、変換装置に連結された接触器を含む。変換装置は、230VACを整流してこれを28VDCなどの、バス136用の主DC出力に変換する変圧整流器(TRU134)と、230VACを低電力AC出力バス140用の115VACに変換するためのオートトランス又はオートステップダウントランスユニット(ATU)138とを含む。各二次MEC46、及び、一次MEC44の各低電力部分122は、第2のTRU142をさらに含み、これは、単に冗長性のためだけではなく、継続して安全な飛行及び着陸を行うために欠かすことのできない、重要な負荷のみに電力を供給するためのものである。第2のTRU142を重要な負荷のみに制限することによって、予備電源が過負荷とならないようにすることができる。
図6は、例えば前方セクション12における、二次電力バス構成を示しており、当該構成においては、一次MEC44の低電力部分122の一次電力スイッチングバス96bと、二次MEC46の一次電力スイッチングバス96cとが、結び付けられている。上述したように、別のMEC44、46によって、損傷したMEC44、46の非給電装置負荷50のすべてに対応するかあるいは一部のみに対応するかは、利用可能な電力次第である。例えば、ある航空機セクション内における1つのMEC44、46の1つのTRU134が停止した場合、その不具合のあるTRU134に接続された装置負荷50のうち最も重要な負荷に対して、様々の接触器及びバックアップバス148を介して二次電力を供給する、同じ航空機セクション内の別のMEC44、46によって、所定の対応が行われうる。
好ましくは、後方セクション16のMEC44、46は、補助電源ユニット発電機54と近接しているため、当該発電機からの二次電力タイイン(tie-ins)を有しており、これによって電力供給手段ワイヤ重量を最小限に抑えることができる。また、図2及び図6に示すように、航空機10の前方セクション12内のMEC44、46は、外部電源ユニット56のような外部電力地上サービス装置から、115VACなどの低電圧レベルで、タイインする。ただし、地上から、前方セクション12内のMEC48の低電力AC出力バス140への115VACは、双方向ATU138によって、230VACなどのより高い電圧に変換することができ、これを、航空機10の他のセクション内の他のMEC44、46に分配することができる。また、上述したように、通常より重要な負荷に使用される第2のTRU142によって、バックアップバス148を経由するバッテリーバス294からのバッテリー電力を、失われた重要負荷に供給することができる。
図7に示すように、各MEC44、46、48の内部に位置するコンピューティング(ソフトウェア及びハードウェア)及びネットワークインターフェイス(CNI)モジュール162は、分散型コンピューティング機能及び双方向データのゲートウェイルーティングを実現する。各CNIモジュール162は、2つのフェールセーフのコンピューティングシステムを含み、これらがフォールトトレラントのコンピューティングシステムとなる。各フェールセーフコンピューティングシステムは、互いに対して冗長である。このフォールトトレラントコンピューティングシステムは、ハードウェア及び/又はソフトウェアの突発的な動作不良に対して適切に対応することによって、航空機10内のシステム機能が損なわれないようにする。CNIモジュール162は、内部システム通信バス(例えば、フレックスレイ、コントローラエリアネットワーク(CAN)、ARINC664、TTP、又はその他のバス技術)を介して、内部MECコンピューティング機能及び外部MECコンピューティング機能に対して、データの送受信を行う。航空機10の他のMEC44、46、48は、ARINC664などのデータネットワーキング仕様を用いて、図7にそれぞれ参照数字188及び190として示した外部データ通信チャネルA及び外部データ通信チャネルBを介して、CNIモジュール162と通信することになる。
CNIモジュール162は、航空機10の局所化された区域内で使用される特定のソフトウェアアプリケーションをホストする分散型コンピューティング要素である。CNIモジュール162上でホストすることができるシステムアプリケーションの例としては、AC及びDC電力システム、貨物ドアシステム、乗客入口ドアシステム、ランディングギアシステム、及び、客室キャビンシステムがある。CNIモジュール162と通信するコンピューティング機能は、TRU134、TRU142、ATU138、ブレーカーモジュール166のソリッドステートスイッチ、発電機34、36の1つと関連付けられた発電機制御ユニットGCU168、ソリッドステート電力分配モジュール170、及び、遠隔データ集信装置である。以下により詳しく説明するように、CNIモジュール162は、MEC44、46、48内において、内部データチャネルA202及び内部データチャネルB204を介して、TRU134、142、ATU138、ブレーカーモジュール166、GCU168、電力分配モジュール170と通信する。
CNIモジュール162は、これらのコンピューティング機能に対してデータを送受信する。CNIモジュール162は、さらに、他のMEC44、46、48及び航空機コンピューティングシステムに対して、ステータス及び正常動作性を送受信する。各CNIモジュール162は、他のMEC44,46、48で起こっていることを把握しつつ、個々のMEC44、46、48の作業量を管理する。MEC44,46、48のCNIモジュール162が情報を受信すると、そのコンピューティング機能が、どのシステムがデータを必要とするかを判断し、データの正常性を分析し、あらゆる電力システム異常に反応し、時間的制約のあるタイムセンシティブな情報をそれを必要とするコンピューティング機能に供給し、システムレベル論理アルゴリズムを実行し、飛行機レベルシステム欠陥を報告し、その区域のためのAC及びDC電力の分配を制御する。
図8は、セクションブレーク18、20、22によって区切られた、空間的に分散されたMEC44、46、48間の通信バスインターフェイスを有するデータネットワーク構造を示している。この構成によれば、故障が起こっても通信を継続可能とするために必要な冗長性がもたらされるだけでなく、個々のMEC44、46、48のそれぞれが他のMEC44、46、48と通信することができる。セクションブレーク20によって、航空機の前方セクション及び後方セクションが規定される。必要なネットワーク通信スイッチの数は、MEC44、46、48の数及び希望するフォールトトレランスによって決まる。図8は、3対のネットワークスイッチ182a〜b、184a〜b、186a〜b(以下、一括的及び/又は全体的に「ネットワークスイッチ182、184、186」と呼ぶ場合もある)を備える9個のMEC44、46、48を示している。各ネットワークスイッチ182、184、186は、インターフェイスしているMEC44、46、48のそれぞれのCNIモジュール162から二次電力を受け取ることができる、レイヤ3ネットワークスイッチなどの多層ネットワークスイッチであってもよい。より多くのMEC44、46、48が存在する場合は、同じレベルのフォールトトレランスを実現するのに、より多くのネットワークスイッチが必要となるであろう。
各MEC44、46、48は、通信チャネルA及びBを有する。各一次MEC44のチャネルA及びBは、別の一次MEC44又は予備MEC48のいずれかの、2つの対応するA又はBスイッチに接続されている。各一次MEC44は、チャネルA又はチャネルBのいずれかに1つのスイッチ182、184、186を有する一方、航空機の後方セクションの予備MEC48は、Aチャネル及びBチャネルの両方に一対のスイッチ182、184、186を有する。スイッチ182a、184a、186aは、チャネルAに対応し、スイッチ182b、184b、186bは、チャネルBに対応する。外部通信データ線192は、スイッチ間データ線を表す。
一般に、セクションブレーク20の一方側にある各MEC44のネットワークスイッチは、他の一次MEC44又は予備MEC48の2つのネットワークスイッチに接続されており、これらのMEC44、48の少なくとも1つは、セクションブレーク20の他方側にあり、1つは航空機10における反対側にある。例えば、セクションブレーク20の前方にある前方右の一次MEC44のネットワークスイッチ182aは、セクションブレーク20の他方側で、後方左の一次MEC44のネットワークスイッチ184a及び予備MEC48のネットワークスイッチ186aの両方に接続されている。また、セクションブレーク20の前方にある前方左の一次MEC44のネットワークスイッチ182bは、セクションブレーク20の他方側で、後方右の一次MEC44のネットワークスイッチ184b及び予備MEC48のネットワークスイッチ186bの両方に接続されている。予備MEC48のネットワークスイッチ186bも、航空機10における反対側のネットワークスイッチ184bに接続されている。ネットワークスイッチ184aも、予備MEC48のネットワークスイッチ186aに接続されている。
二次MEC46のそれぞれも、他の2つの一次MEC44又は予備MEC48との2つのデータチャネルを有する。外部通信データ線196は、一次MEC44のネットワークスイッチから二次MEC44に直接つながるデータ接続を表す。各二次MEC48のチャネルのうちの1つは、セクションブレーク20の他方側にある一次MEC48の同じチャネルのネットワークスイッチに接続されており、もう1つのチャネルは別の二次MEC46に接続されている。従って、図8には、セクションブレーク20を横切る8個のデータバスコネクション、及び、セクションブレーク18、22のそれぞれを横切る4個のデータバスコネクションが示されている。この構成によれば、航空機内の配線の総重量だけでなく、セクションブレークを横切る通信配線の量も、最小限に抑えることができる。航空機10のクラウン内及び床内の空間を利用することによって、データバス同士を離間させておくことができる。正常なCNIモジュール162は、局所的な環境情報及び他の正常なCNIモジュール162からの通信を利用することによって、電力システムの構成の変化に対して適切に対応することができる。
いずれか2つのMEC44、46、48が給電されると、通信ネットワークがアクティブになり、データが存在する状態となり、これら2つのMEC44、46、48が互いに十分に通信できるようになる。この通信ネットワークは、一対のMEC間のどの1つのコネクションが失われても、いずれのMEC44、46、48の機能性も低下しないという点で、フォールトトレラントなネットワークである。また、MEC44、46、48の間でどの2つの通信コネクションが同時に失われても、その結果は、最大でも、MEC44、46、48のうちの1つだけとのデータ通信が失われるだけである。
例えば、前方右の一次MEC44のチャネルAのネットワークスイッチ182aが喪失しても、前方右の一次MEC44に対する通信が完全に失われることにはならない。これは、チャネルBを介して、前方右の一次MEC44に対する通信を継続しうるためである。チャネルAを介して前方右の一次MEC44と通信していた他のMEC44、46、48は、チャネルBを介して直接通信するか、あるいは、前方右の一次MEC44にチャネルBを介して接続されている他のMEC44、46、48を介して通信することができる。また、仮に、前方右の二次MEC44へのチャネルBコネクションに加えて、前方右の一次MEC44のチャネルAのネットワークスイッチ182aも失われた場合、前方右の一次MEC44に対する通信は、チャネルBを介して継続することができるが、前方右の二次MEC44との通信だけは、チャネルA及びチャネルBの両方が喪失するため、失われるであろう。
本開示の1つの態様は、分散型電力制御アークテクチャである。電力のみならず、電力制御も、各MEC44、46、48間で分散される。個々のMEC44、46、48が集める局所的データに基づいて、各MEC44、46、48は、関連付けられた区域の独自の電力制御を行い、これによって、他のいずれのMEC44、46、48に依存する必要なく、該当する装置負荷50を構成あるいは制御する。電力のルート変更の必要性などの、本当に必要なデータのみが、他のMEC44、46、48のCNIモジュール162に送信される。
地上における航空機10の通常のパワーアップは、好ましくは、MEC44、46、48の順次的なパワーアップである。通常のパワーアップは、バッテリー598を介して行われ、当該バッテリーは、静止インバーター290及びバックアップバス148を介して、MEC44、46におけるすべての予備バス160に給電する。バッテリー598が利用できない場合、外部電源ユニット56から限られた量の外部電力が送給されて、予備MEC48がパワーアップされる。予備MEC48がパワーアップされると、予備MEC48から他の一次及び二次MEC44、46のそれぞれに電力が分配され、それらのCNIモジュール162がパワーアップされ、各MEC44、46内の接触器が、利用可能な電源で適宜設定される。一方、通常の飛行動作中にMEC44、46が非給電となった場合、順次的なパワーアップは利用されない。MEC44、46のうちの一つのCNIモジュール162が一次電力を有しない場合、2つのMEC44、46間の低電力相互接続、例えば一次MEC44と二次MEC44との分配フィード100による接続によって、上述したように、非給電のMEC44、46になおも給電する手段が提供される。
CNIモジュール162は、他のMEC44、46、48からの構成データ(configuration data)だけでなく、他のシステム又はLRUからの入出力通信を読み込む。各MEC44、46、48の構成データを送信することによって、他のMEC44、46、48のそれぞれが、航空機10の他の場所で何が起きているかを判断することができる。CNIモジュール162は、次に、このデータを用いて、そのMEC44、46、48内のブレーカー及び接触器の構成設定を行い、次に、その区域内の装置負荷50についての構成データをチャネルA又はB上に書き込むことによって、他のMEC44、46、48に送信し、他のMEC44、46、48が同じ作業を行うことができるようにする。各CNIモジュール162は、通信入出力及び受信する環境データの有効性をチェックし、必要な場合には、これを精緻化することによって、独自の環境データ及びブレーカーのステータスを決定する。CNIモジュール162は、その区域内の自身のブレーカー及び接触器にどのように命令したいかを把握すると、その構成データを他のMEC44、46、48へと送信する。
各MEC44、46、48のCNIモジュール162は、そのMEC44、46、48に割り当てられた境界線内の装置負荷のみを制御する。個々のMEC44、46、48の各CNIモジュール162は、他のMEC44、46、48の装置負荷の構成を設定したり、それらのブレーカー又は接触器をどのような構成設定にするかを決定したりはしない。ただし、すべてのMEC44、46、48は、互いに作用し合うことによって、航空機10の一次及び二次電力システムに対して、統一性のある一体的な電力伝送機能をもたらすことが可能である。適切に機能しているMEC44、46、48のCNIモジュール162は、動作上の問題を有するMEC44、46、48に反応し、付加的な故障を伴う場合であっても、電力タイバス76、78、80、分配フィード98、100、及びクロスタイ102、104、106、108を介して、電力のルート変更を行うことができる。コンピューティング及びネットワーキングアーキテクチャは、フェールセーフであり、且つ、フォールトトレラントである。CNIモジュール162が動作上の問題を有する場合、当該モジュールが接続された負荷のすべてが、予め定義されたデフォルトの「フェールセーフ」状態に入ることになる。隣接するCNIモジュール162は、自身の区域の外にある他の装置負荷を制御する能力又は権限を有していない。
図9に示したCNIモジュール162は、CNIモジュール162の一方側にチャネルAに対応する1つのネットワークスイッチ182、184、186を有し、他方側にチャネルBに対応する別のネットワークスイッチ182、184、186を有する。両方のネットワークスイッチ182、184、186が、外部データ通信接続を行うための1つ又は複数のポート206を有する。CNIモジュール162のそれぞれの側は、以下により詳しく述べるように、MEC44、46、48内の内部データ通信接続を行うための1つ又は複数のポート208をさらに有する。CNIモジュール162は、チャネルA及びチャネルBのデータ通信を処理することに関連する複数の命令を実行するための2つのマルチコアプロセッサ242、244を含む。各プロセッサ242、244は、ポート208においてMEC44、46、48内の通信データを送受信するための命令を処理したり、ポート206を介していずれかのネットワークスイッチ182、184、186でMEC44、46、48の外部の通信データを送受信するための命令を処理したりすることができる。CNIモジュール162の一方側にあるプロセッサ242、244のうちの1つは、一方の通信チャネルに対応し、CNIモジュール162の他方側にある別のプロセッサ244は、もう一方の通信チャネルに対応する。ただし、それぞれのプロセッサ242、244が、他方の通信チャネル用のネットワークスイッチ182、184、186へのクロスオーバーを有しており、各プロセッサ242、244が、チャネルA及びチャネルBの両方の通信の読み込み及び処理を行うことができるようになっている。
CNIモジュール162などのMEC44、46、48のトラスシステムに配置された各コンポーネント又はLRU52は、光学的にラベルを読み込むためのバーコードリーダー248を含みうる。バーコードリーダー248は、QRコードを読み込むためのクイックレスポンス(QR)コードリーダーであってもよい。バーコード(図示せず)は、MEC44、46、48内、あるいは、航空機10内のバーコードリーダー248に近接した他の場所に配置されうる。バーコードリーダー248がバーコードを読み込むことによって、MEC44、46、48は、識別情報、位置情報、時間追跡情報、及びその他の設定情報などの情報を入力することができ、これによって、MEC44、46、48のCNIモジュール162のソフトウェアパラメータを設定することができる。例えば、バーコードリーダー248が、CNIモジュール162の位置を読み込むことによって、MEC44、46、48は、航空機10のどのセクション又はどの側に当該モジュールが位置しているのかを把握することができる。また、CNIモジュール162の位置を把握することによって、MEC44、46、48は、最も近くにある装置負荷50を把握することができる。設定情報は、他のMEC44、46、48、航空機10内の他の場所、又はメンテナンス施設などの航空機10の外部の中心施設に送信されうる。
以下に説明するように、MEC44、46、48から分配される電力の量次第では、CNIモジュール162は、トラスシステムの1つ又は複数の転送層からの1つ又は複数の追加の電力入力288(例えば28VDC又は115VAC、およびパワーレギュレータ238)を必要とする場合がある。例えば、28VDCが、バーコードリーダー248用のユースポイントレギュレータ(point of use regulator)280に入力される。各CNIモジュール162は、さらに、1つ又は両方のネットワークスイッチ182、184、186に給電するために、1つ又は複数の他のMEC44、46、48のCNIモジュール162の電力出力286から、1つ又は複数のDC電力入力284を受け取る。電力入力284及びパワーレギュレータ246は、1つの電力故障によっていかなる処理チャネル又は通信チャネルも停止することがないように、冗長性をもたらす。
トラスシステムの転送層からの入力288によるMEC44、46、48に対する給電が完全に途絶えても、CNIモジュール162、ネットワークスイッチ182、184、186、パワーレギュレータ246及びバーコードリーダー248を有するMEC44、46、48は、なお給電されうる。他のMEC44、46、48の他のCNIモジュール162の冗長な電力出力286から送られる1つ又は複数の電力入力284のために、非給電状態のMEC44、46、48のCNIモジュールは、決して電力を失わず、隣接するMECからの電力をルート変更して、それ自体のMEC44、46、48の1つ又は複数の転送層をパワーアップすることができる。これにより、MEC44、46、48は、その後も、その装置負荷50の一部又はすべてに対し所定の対応を行うことができる。またCNIモジュール162は、十分に機能する状態を維持し、他のCNIモジュール162と通信することができるので、MEC44、46、48のトラスシステム及び通信ネットワークをアクティブに保つことができる。
図10A〜図10Dは、図5A〜図5Eに示した一次MEC44のそれぞれの高電圧一次電力スイッチングバス構造の様々な構成を示す。どの発電機34a、34b、36a、36bが4つの一次MEC44のそれぞれに直接給電するか、4つの一次MEC44が前方であるか後方であるか、及び、それらが航空機10の左側にあるか右側にあるかに基づいて、それぞれをR1、R2、L1、又はL2と呼ぶ場合がある。R1は、発電機36aから一次電力を受け取る前方右の一次MEC44に対応する。R2は、発電機36bから一次電力を受け取る後方右の一次MEC44に対応する。L1は、発電機34aから一次電力を受け取る前方左の一次MEC44に対応する。L2は、発電機34bから一次電力を受け取る後方左の一次MEC44に対応する。
図10Aは、図5A及び図5Bの前方右の一次MEC44(R1)における、一次電力スイッチングバス96a及びソリッドステートスイッチング装置を有する高電力部分120を示す。図10Bは、図5A及び図5Cの後方右の一次MEC44(R2)における、一次電力スイッチングバス96a及びソリッドステートスイッチング装置を有する高電力部分120を示す。図10Cは、図5A及び図5Dの前方左の一次MEC44(L1)における、一次電力スイッチングバス96a及びソリッドステートスイッチング装置を有する高電力部分120を示す。図10Dは、図5A及び図5Eの後方左の一次MEC44(L2)における一次電力スイッチングバス96a及びソリッドステートスイッチング装置を有する高電力部分120を示す。合わせて、図10A〜図10Dは、各一次MEC44のための接続性を実現することができるソリッドステートスイッチング装置の一般的なアーキテクチャ及びレイアウトを示している。
図10Aは、前方右の一次MEC44(R1)のための一次バス構造、ソリッドステート要素、及び接続を最もよく示したものであり、別の場所に配置された他の一次MEC44と比較してソリッドステート要素の数が最も少ないものである。ただし、他の一次MEC44に対して必要とされる機能性を含めるために、図10Aに示した最少の構造を拡大して、追加のソリッドステート要素(仮想線で示す)を含めてもよい。追加のソリッドステート要素は、設置された各MEC44、46、48のすべてのスロットに設けてもよいし設けなくてもよい。
4つの一次MEC44のための図10A〜図10Dに示した4つの構成のそれぞれは、主発電機34a、34b、36a、36bのうちの1つからの一次電力コネクション210、及び、前方タイ又は後方タイ76、78のいずれかとのコネクション212を有する。各構成は、関連付けられた二次MEC46への出力コネクション214も含む。各構成は、2つの高電流ソリッドステート接触器216、218及び2つの低電流ソリッドステート接触器220、222も含む。2つの高電流接触器216、218は、コネクション224において、互いに接続されている。一方の高電流接触器216は、主一次電力をオンオフするためのコネクション210で接続されており、他方の高電流接触器218は、一次MEC44が航空機10の前方セクション又は後方セクションのいずれにあるかに応じて、前方タイ又は後方タイ76、78用のコネクション212で接続されている。低電流接触器220は、関連付けられた二次MEC46用のコネクション214に接続されている。他方の低電流接触器222は、以下により詳しく説明するように、分配フィード98と組み合わされて、各一次MEC44の高電力部分120と低電力部分122との間の電力をオンオフするためのものである。
図10Cに示した左前方の一次MEC44(L1)は、中央タイ80からのコネクション252と前方タイバス76用のコネクション212の間に、別の高電流接触器250を含む。図10Dに示した後方左の一次MEC44(L2)は、前方左一次MEC44(L1)が含む追加の高電流接触器250に加えて、中央タイバス80用のコネクション252と補助電源ユニット発電機54用の入力コネクション262の間に、別の高電流接触器260を含む。また、この後方左の一次MEC44(L2)は、予備MEC48につながる低電流接触器232も含み、高電圧AC電力が、タイ270を介して自動変圧整流器ユニット(ATRU)272及びバス274に送られる。
図10Bに示した後方右の一次MEC44(R2)はまた、高電圧AC電力を有する予備MEC48を、タイ234を介してATRU236及びバス240に接続するための、低電流接触器232を含む。4つの構成はすべて、図10A〜10Dのそれぞれに示すように、230VACの電力をオンオフするための、低電流接触器278などの追加の接触器を有するという選択肢を有する。
製造を容易にし、在庫の利用可能性を向上させるため、図10A〜図10Dのそれぞれに示した様々なアーキテクチャを再構成し、図11に示すような、一次電力スイッチングネットワーク装置(PPSND)302と類似のレイアウトを有する単一の構造とすることができる。これは、上述したように、一次電力スイッチング構成、及び、MEC44が航空機10内のどこにあるかに応じて、様々な負荷のための任意の接触器232、250、260、278を有するものである。各PPSND302は、各一次MEC44の高電力部分120に対応しており、且つ、共通の電源及び出力を共有するように構成されている。また各PPSND302は、オプションとして追加の接触器232、250、260、278を有し、予備MEC48から一次電力を直接受ける、あるいは、補助電源ユニット発電機54から一次電力を受ける構成とされている。これに際し、上記追加の接触器は、必要に応じて、前方タイバス、後方タイバス、中央タイバス76、78、80と接続される。図5Cに示すように、後方右の一次MEC44の高電力の一次電力スイッチングバス96aは、タイ234によって予備MEC48に接続されている。図5Dにおいて、前方左の一次MEC44は、前方タイバス76を介して前方右の一次MEC44の接触器218a〜cに接続されるとともに、中央タイバス80を介して後方左の一次MEC44の接触器250a〜cに接続されている。図10Dに示す後方左の一次MEC44は、最も多くの接触器を有している。これは当該MECが、後方タイバス及び中央タイバス78、80を介して他の複数の一次MEC44に接続され、且つタイ270を介して、接触器232a〜cを有する予備MEC48に接続されることによる。
図12A〜12Cに示した実質的に同一のPPSND302a〜cは、発電機34、36の一方からの三相一次電力を受け取るために、一次MEC44とともに使用することができる。図示のPPSND302a〜cは、前方右の一次MEC44(R1)と組み合わせて使用するように表示されているが、これら3つのPPSND302a〜cは、他のいずれかの一次MEC44用の三相電力を受け取るために使用することもできる。各一次電力供給手段40、42は、好ましくは、一次MEC44に接続される4つの導体からなる電力ワイヤであり、導体のうちの3つが、三相電力のうちのA相、B相、又はC相のいずれかを搬送する。4つ目の導体は、第4のPPSNDに接続される中性線ワイヤとすることができる。
さらに図11及び図12A〜12Cを参照すると、A相電力は、図12AのPPSND302aの一次電力スイッチングバス96aに電力供給すべく、コネクション210aで受け取られ、B相電力は、図12BのPPSND302bの一次電力スイッチングバス96bに電力供給すべく、コネクション210bで受け取られ、C相電力は、図12CのPPSND302cの一次電力スイッチングバス96cに電力供給すべく、コネクション210cで受け取られる。ソリッドステート要素は、図12A〜図12Cのそれぞれにおいて正方形で示しており、ソリッドステート要素の組が、図11に示す接触器216、218、220、222、232、250、260、278を構成する。
図12A〜図12Cにおいて、末尾に「a」「b」「c」がつく参照数字は、それぞれ、A相の電力、B相の電力、C相の電力を使用するコンポーネントを示しうる。ただし、そのような参照数字自体は、電力の特定の相を具体的に指すのではなく、一括的及び/又は全体的に同じコンポーネントのことをいう場合もある。接触器210a〜cは、それぞれ、高電力の一次電力スイッチングバス96a〜cに給電する。一次電力は、一次電力スイッチングバス96a〜cのそれぞれから出て、接触器218a〜cを介して、前方タイバス76a〜c(又は後方タイ78a〜c−これは一次MEC44が航空機10の前方セクションにあるか後方セクションにあるかによる)に至る。これに代えて、電力は、前方タイバス76a〜cから出て、接触器218a〜cを介して、一次電力スイッチングバス96a〜cに至ることもできるであろう。一次電力は、また、コネクション252a〜cにおいて、一次電力スイッチングバス96a〜cと関連する接触器250a〜cを介して、中央タイバス80a〜cに対して送受給することができるであろう。一次電力は、補助電源ユニット発電機54から、コネクション262a〜cに接続された電力タイ130によって、接触器260a〜cを介して、一次電力スイッチングバス96a〜cに供給することもできるであろう。
一次電力は、一次電力スイッチングバス96a〜cから、接触器220a〜cを介して、二次MEC46用の出力コネクション214a〜cに供給される。一次電力はまた、一次電力スイッチングバス96a〜cから、接触器222a〜cを介して、出力コネクション390a〜cに供給され、分配フィード98を介して、一次MEC44の低電力部分122に供給される。PPSND302a〜cの出力コネクション390a〜cからの三相一次電力は、トラスシステムを通って、PPSND302a〜cと同じMEC44、48内の他のコンポーネントに送られうる。分配フィード98は、好ましくは、出力コネクション390aに接続されたA相電力用の第1のワイヤ、出力コネクション390bに接続された第2のワイヤ、出力コネクション390cに接続された第3のワイヤ、を有する4つのワイヤの導体である。
三相の高電力は、図12A〜図12Cに示すPPSND302a〜c上の出力コネクション340a〜c又は出力コネクション342a〜cを利用することによって、一次MEC44の高電力部分120から、任意の負荷又は補助的な負荷に分配されうる。図11に示した接触器232及び接触器278は、図12A〜図12Cに示した出力コネクション340a〜c及び出力コネクション342a〜cに対応する。補助的な負荷に対する又は当該負荷からの、230VACの電力は、PPSND302a〜cの接触器232a〜c、278a〜cによって制御される。PPSND302a〜cが、図5A及び図5Eに示すように左後方の一次MEC44(L2)において利用される場合、PPSND302a〜cの出力コネクション340a〜cに接続される補助三相負荷の1つは、予備MEC48であろう。そのような場合、予備MEC48から三相電力を供給するタイ270は、4本のワイヤからなる導体であり、3つのPPSND302a〜cのそれぞれに一本のワイヤが接続され、中性線としての第4のワイヤが第4のPPSND302に接続される。図12A〜図12Cは、異なる2つの三相負荷が直接接続された状態を示しているが、他の多くの三相負荷に対しても、追加のコネクションを有する特定の一次MEC44によって所定の対応を行うことができる。
MEC44、46、48のうちの1つ又は複数は、1つ又は複数の絶縁層によって分離された1つ又は複数のデータ及び/又は電力転送層の取り付け構造体を有するトラスシステムを含みうる。トラスは、航空機10内での簡単な取り付け又は交換を実現できるように構成されており、シートメタル、熱可塑性材料、複合材料、又はその他の適切な材料などの硬質材料又は可撓性材料によって形成することができる。航空機内において、電力又はデータを、トラスシステムの取り付け構造体上の様々な箇所又は航空機内の様々な箇所に送ることができる。2013年6月28日に出願された米国特許出願第13/930,024号「トラスインターコネクト(TRUSS INTERCONNECT)」に記載されているように、いくつかの構成において、ビア又はトラスインターコネクトなどの構造によって、1つの層内の1つ又は複数の電力線又はデータ線を、統合されたトラスシステムの1つ又は複数の他の層内の1つ又は複数の電力線又はデータ線と、電気的に接続することができる。また、インターコネクトを用いることによって、統合されたトラスシステムの上面層に取り付けられたLRUを電気的に相互接続したり、電力をトラス内に送ったりトラスからLRUに送ったりすることができる。PPSND302a〜cを有するLRUは、導電性のボス(突起)を有している。インターコネクトがLRUを通ってトラスシステムの中に入ると、インターコネクトは、ボスならびにトラスシステムの転送層内へと拡大し、LRUとトラスシステムとの間に電気的な接続を確立する。
いくつかの構成において、統合されたトラスシステムは、電力システム及びデータシステムの両方を電気的に接続しうる。さらなる構成において、トラスインターコネクトは、統合されたトラスシステムの1つ又は複数の層の間に機械的な接続も確立することができる。追加の構成において、トラスインターコネクトは、繰り返し挿入及び取り出しができるように構成されており、これによってトラスインターコネクトを再利用することができる。
図13は、MEC44、46、48の多層統合トラスシステム500の分解斜視図である。統合されたトラスシステム500は、絶縁層502a〜502b(以下、一括的及び/又は全体的に「絶縁層502」という)、及び、転送層504a〜504c(以下、一括的及び/又は全体的に「転送層504」という)を含みうる。いくつかの構成において、絶縁層502と転送層504とが交互に配置されることによって、絶縁層が、少なくとも部分的に転送層504同士を電気的に切り離している。さらなる構成において、絶縁層502は、少なくともその一部が、転送層504のうちの1つ又は複数を、転送層504のうちの他の1つ又は複数から物理的に切り離すように構成される。また、いくつかの構成において、絶縁層のうちの1つ又は複数は、客室と貨物室の間の煙又は水滴のバリアとして作用しうる。
MEC44、46、48のコンポーネントは、取り外し可能にトラスシステム500に固定することができる。例えば一次MEC44の高電力部分120に対応する、図3の電力バスネットワークシステム90の一部は、PPSND302a〜cと共に、トラスシステム500の上面絶縁層502aに取り付けられたLRU52に収容される。LRU52内には、電力バスネットワークシステム90と共に、マイクロプロセッサが設けられており、これが、CNIモジュール162からチャネルA及びチャネルBのデータ入力を受信することによって、すべての接触器216、218、220、222、232、250、260、278を制御する。
三相一次電力506a〜d(以下、一括的及び/又は全体的に「三相一次電力506」という場合もある)が、主発電機34、36のうちの1つから、電力バスネットワークシステム90内のPPSND302a〜cに供給される。A相の電力506a、B相の電力506b、C相の電力506c、又は3つのすべてが、出力コネクション390a〜cから、絶縁層502を通って、トラスシステム500の1つ又は複数の転送層504に送られうる。三相一次電力506の中性線506dも、絶縁層502を通って、トラスシステム500の1つ又は複数の転送層504に送られうる。通信データは、1つのMEC44、46、48から、2つのデータチャネル188、190(通常チャネルA及びBとよばれる)を介して、任意の他のMEC44、46、48に送信される。図13に示すように、トラスシステム500の取り付け構造体は、トラスシステム500に取り付けられたシステムコンポーネントに別々の通信チャネルを提供するように構成された別個の層を備える。データチャネル188、190の両方が、絶縁層502を通って、トラスシステム500の1つ又は複数の転送層504に繋がっていてもよい。例えば、転送層504aは、データ転送経路536を含み、転送層504bは、データ転送経路538を含む。データ転送経路536、538は、転送層504cなどの1つ又は複数の層502、504によって、互いに隔てられていてもよい。PPSND302を有する電力バスネットワークシステム90と、CNIモジュール162との間でやりとりされるデータ通信は、データチャネル188、190を介して送受信される。データチャネル188は、転送層504aの転送経路536を通り、データチャネル190は、転送層504bの転送経路538を通る。
いくつかの構成において、転送層504は、1つ又は複数の電力転送経路、データ転送経路、又はこれら両方を含むように構成される。例えば、転送層504cは、三相一次電力506のうちのB相電力506b及び中性線506dに対応する電力転送経路512a及び512bを含みうる。電力転送経路512aは、例えば230VACのB相電力を受け取り、図13に示したCNIモジュール162などの、トラスシステム500に取り付けられた別のLRU52に転送する。転送経路512bは、中性線506dを介して、CNIモジュール162から、PPSND302のうちの1つに戻る電流リターン経路である。
各MEC44、46、48は、複数のMEC44、46、48からの二次電力を分配するための少なくとも1つの電力分配モジュール170も含む。各電力分配モジュールは、1つ又は複数のLRU52として構成することができる。各電力分配モジュール170は、好ましくは、三相すべてを受け取るが、それらを複数の単相リードにバランスよく分配する。図13に示すように、A相506a及びB相506bは、トラスシステム500の2つの異なる転送層504を通って、電力分配モジュール170に供給される。次に、各電力分配モジュール170は、単層の二次電力を、それぞれ特定のMEC44、46、48に割り当てられた区域内の低電力装置負荷50に分配する。各MEC44、46、48に関連付けられた複数の装置負荷50は、好ましくは、3つの電力相に対して均等に分配される。好ましくは、低電力装置負荷50のそれぞれは、ツイストペア導体によって、電力分配モジュール170に接続されている。本出願は、図面の1つ又は複数において、特定の数の接続を示しているが、利用可能な二次電力の量に応じて、任意の数の装置負荷50に対して、MEC44、46、48による所定の対応を行うことができる。
図14は、トラスシステムのいくつかの層を有する一次MEC44を示す。一次MEC44は、TRU134、142、ATU138、CNIモジュール162、電力分配モジュール170、及び、PPSND302を含む。一次MEC44は、PPSND302を含むが、MEC46、48は含まない。二次MEC46は、PPSND302を含まない点を除き、図10BのMEC44と同様に図示することができる。2つのTRU134、142、ATU138、CNIモジュール162、電力分配モジュール170、及び、PPSND302は、相互接続メカニズム562を挿入することによって、転送層504内のトレース又は金属化されたインターコネクトに電気的に相互接続される。相互接続メカニズム562は、TRU134、142、ATU138、CNIモジュール162、電力分配モジュール170、及び、PPSND302のそれぞれを通って、各転送層504内のビア566内に挿入されている。
トラスシステムは、チャネルA用のトレース536を有する転送層504a、及び、チャネルB用のトレース538を有する転送層504bを含む。TRU134、142、ATU138、電力分配モジュール170、及び、PPSND302のそれぞれは、専用のチャネルAトレース536及び専用のチャネルBトレース538に接続されている。ただし、各転送層504におけるトレース536、538の数は、プロトコルに依存する。他の実施例において、TRU134、142、ATU138、電力分配モジュール170、及び、PPSND302は、すべて、同じチャネルAトレース536及び同じチャネルBトレース538に接続することもできるであろう。
図14におけるトラスシステムは、転送層504c、504d、504e、504fも含む。転送層504cは、MEC44、46、48のトラスシステム及びそれに接続されたシステムに給電するための、230VACなどの三相一次電力506に対する複数のトレース570を含む。それぞれのトレース570は、A相の電力506a、B相の電力506b、C相の電力506c、及び中性線506dに対応する。2つのTRU134、142、ATU138、CNIモジュール162及びPPSND302は、ビア566を介して、相互接続メカニズム562によって転送層504cのトレース570に接続されている。三相一次電力506は、発電機34、36からPPSND302を通って転送層504cに供給される。その後、2つのTRU134、142、ATU138及びCNIモジュール162は、転送層504cのトレース570から三相一次電力506を受け取ることによって、給電される。
二次電力は、TRU134、142及びATU138から、転送層504d、504e、504fに分配される。転送層504d、504eは、28VDCなどの低電圧の層であり、それぞれが、正のトレース574、負のトレース576、及び、中性のトレース578を含む。これらの転送層504のうちの1つ、例えば転送層504eは、RAT128又は燃料電池から第2のTRU142を介して、予備の電力を供給しうる。転送層504d、504eのトレース574、576、578からの28VDCの電力は、電力分配モジュール170に分配される。転送層504fは、A相の電力580、B相の電力582、C相の電力584及び中性線586を含む、115VACなどの低電圧の三相の層である。転送層504fのトレースからの115VACの電力も、電力分配モジュール170に分配される。
電力分配モジュール170は、ツイストシールド導体ペア314によって装置負荷50に二次電力を分配するために、二次電力用の転送層504d、504e、504fのトレースに接続され、且つ、チャネルA及びB202、204用のトレース536、538に接続されている。一次電力は電力分配モジュール170から分配されないので、電力分配モジュール170は、三相一次電力506の転送層506bには接続されていない。トラスの転送層504a、504bのチャネルA及びB202、204からの通信データは、電力分配モジュール170が、装置負荷50にサービスすべくツイストシールド導体ペア314に対する二次電力をいつオンオフするかを制御する。
図14に示すように、CNIモジュール162は、MEC44、46、48のトラスシステムの各層504におけるすべてのトレースに接続されている。CNIモジュール162に対して複数の電圧入力が存在するので、パワーレギュレータが、必要とされる電圧への変換を行う。1つ又は複数の層504上のいずれかのトレースが給電状態になると、CNIモジュール162はアクティブになる。例えば、すべてのMEC44、46、48が一次電力を失った場合、RAT128又は燃料電池によって予備MEC48に電力を供給し、これによって、予備の層504eのトレース574、576、578に給電することができるであろう。転送層504eのトレース574、576、578内の電力によって、CNIモジュール162を作動させることができるであろう。CNIモジュール162はまた、ネットワークスイッチ182、184、186で使用するための通信データを、転送層504a、504bのトレース536、538のそれぞれから、チャネルA及びB202、204の両方を通じて受信する。
図14はまた、好ましくはMEC44、46、48のトラスシステムの転送層504上に配置されたバリア588も示している。図17に示すようにトラスシステムが床構造内に配置された場合、当該バリアは、貨物室から煙が客室に入るのを阻止するための煙バリアとして機能したり、航空機10内のどこかに水滴が落ちるのを防ぐための水滴バリアとして機能したりする。例えば、バリア588は、MEC44、46、48の電気コンポーネントに水滴が落ちるのを防ぐことができるであろう。バリア588に代えて、あるいはこれに加えて、絶縁層502のうちの1つ又は複数を、煙及び/又は水滴バリアとすることもできるであろう。例えば、トラスシステムの一番上の絶縁層502を、水及び煙に対するバリアとして作用するように構成することができるであろう。
既存の複合材航空機において、電流リターンネットワークは、フォールト電流リターン経路、個人の安全の保護経路、及び、航空機システムの雷防護経路を提供する。ただし、上で説明したように、電流リターンネットワークによって、かなりのワイヤ重量が航空機に追加されることは望ましいものではない。
さらに、これらの既知の航空機の電流リターンネットワークは、電圧オフセットが大きくなりがちである。電流リターンネットワーク上には、ACおよびDC電圧の双方が存在しうる。電流リターンネットワーク上における航空機内のすべての装置負荷のリターン電流は累積的であり、電源接地点から負荷接地点までの間において電流リターンネットワークに沿って電圧降下が生じる。電流リターンネットワークに沿った電圧降下は、電源接地点を起点として航空機の後ろに向かうほど増加し、その大きさは、電流リターンネットワークのインピーダンス及びそれを通る電流に比例する。
図15は、三相(3φ)の一次電力506が、主発電機34、36のうちの1つ又は複数から、絶縁された複数のTRU134及び絶縁されていない複数のATU138に送られる様子を概略的に示している。図15によく表れているように、TRU134及びATU138は、分散型アーキテクチャの一部として、航空機内に分散配置されている。少なくとも1つのTRU134及び少なくとも1つのATU138が、MEC44、46、48のうちの1つに対応する。TRU134は絶縁されているので、どこでも都合のよい場所で接地することができる。また、TRU134は分散されており、TRU134は互いに異なる場所で接地することができるので、DCリターン電流は、それぞれのMEC44、46、48に対して局所的なままである。ただし、リターン電流は、もはや累積的ではなく、DCオフセット電圧はゼロである。
図16は、ATU138又はTRU134からAC電力又はDC電力が分配される様子を概略的に示している。ただし上でより具体的に説明したように、一次電力506はまず電力変換装置に分配され、次に電力分配モジュール170に分配される。なお、電力分配モジュール170は、各低電力装置負荷50に対し、複数のツイストシールド導体を介して接続されており、それぞれの導体を流れる電流は、実質的に大きさが同じで方向が反対である。実際には、導体を流れる電流の大きさは、わずかに異なりうる。一例として、ツイストシールド導体ペア314は、パワー導体310と、中性線又はリターン導体312とを含む。中性線導体は、三相電力供給手段に接続されていてもよい。
一次電力506を変換した後、AC電力は、各ATU138から、パワー導体310によってAC装置負荷50aに分配され、電流は、各AC装置負荷50aから、ツイストシールド導体ペア314の対応するリターン導体312を介して戻される。DC電力は、各TRU134から、パワー導体310を介して、DC装置負荷50bに供給される。電流は、各DC装置負荷50bから、ツイスト導体ペアの対応するリターン導体312を介して戻される。
A相の電力506a、B相の電力506b、及びC相の電力506cは、発電機34、36から分配される。図には、三相一次電力506用の発電機34、36からの第4のワイヤも描かれており、これは中性線506dである。AC装置負荷50aのそれぞれは、中性線506dに接続された、破線で示すシールド終端ワイヤ590を含み、DC装置負荷50bのそれぞれは、中性線506dに接続された、同じく破線で示すシールド終端ワイヤ592を含む。装置負荷50a及び50bは、それぞれ、シールド終端ワイヤ590、592によって中性線506dに接続されているが、負荷リターン電流はもはや累積的ではない。図16において、中性線506dの一部は、電流リターンネットワーク(CRN)として表れるように構成されているが、これは単に、局所化された二次電力分配にツイストワイヤ導体ペアによる小さいループを使用した結果、電圧差がゼロになることを示すためである。航空機10のMEC44、46、48間の、分配された三相一次電力506の中性線506dは、安全用接地バス(SGB)と呼ばれることがあり、CRNの一部として通常利用される導体よりもずっと小さい。従って、CRNは、ツイストワイヤ導体ペアによる局所化された二次電力分配を有する複合材航空機10では、もはや必要とされない。本構成では、ツイストワイヤ導体ペアが、電流リターンを可能とする。また、ツイストワイヤ導体ペアによって形成されるループの断面積は、CRNの大きなループによって形成される断面積よりもかなり小さく、これにより、複合材航空機10に対する落雷による悪影響を低減する。比較すると、ツイストペアの導体は、例えば約16〜約20米国ワイヤゲージ(AWG)であるが、CRNの導体は、約2AWG又はそれより大きい直径である。
図16は、航空機10の前方セクション、中央セクション、及び、後方セクションに配置された複数の一次MEC44間における、発電機34、36からの一次電力の分配も示している。各一次MEC44は、上述したように、それぞれ装置負荷50b及び装置負荷50aに対し所定の対応を行うためのTRU134及びATU138を含む。電力は、各MEC44から、ツイストシールド導体ペア314によって、各装置負荷50に分配される。図16は、補助負荷520に230VACを供給する一対のMEC44も示している。図12A〜図12C及び該当する記載部分で説明したように、補助的な負荷に対する又は当該負荷からの230VACの電力は、一次MEC44のPPSND302の接触器232、278によって制御される。
図16は、最前方の一次MEC44による所定の対応を受ける、アビオニクスなどの複数のLRU52も示している。図16は、予備電力を供給するためのバッテリー598も示している。図16においては、バッテリー598は、最も前方の一次MEC44のみに予備電力を供給しているが、バッテリーの予備電力は、好ましくは、すべての一次MEC44に供給される。
図17は、統合されたトラスシステム600を示しており、これは、航空機の製造において、上記で説明したような1つ又は複数の電力及びデータ転送経路を提供するために使用しうるものである。1つ又は複数のMEC44、46、48は、輸送機システム、MEC44、46、48のコンポーネント、装置負荷50、LRU52、又は他の装置のうちのすべて又は一部を取り付けるための支持又は取り付け構造体として、トラスシステム600を含みうる。
トラスシステム600による取り付け構造体は、複数の個別構成要素から成るマルチパーツ式あるいはモジュール式のアセンブリであってもよい。これらの構成要素は、積み重ねたり、取り外し可能に連結したり、互いに固定したりすることが可能であり、単一の構造体として航空機10内に設置しうる、統合された取り付け構造体を形成することができる。各構成要素は、上述したような1つ又は複数の転送層及び1つ又は複数の絶縁層を有しうる。マルチパーツ式トラスシステム600の各構成要素は、互い対して取り外し可能であってもよく、これによって、損傷を受けていない構成要素を航空機10から取り外すことなく、損傷を受けた構成要素のみを修理又は交換することができる。各構成要素の1つ又は複数の層も、交換することができる。また、トラスシステム600全体を取り外すことなく、トラスシステム600の1つの要素を交換することもできるであろう。また、トラスシステム600の全体又は少なくとも一部は、例えば床ビーム又は胴体フレーム部材などの航空機10の支持構造体から取り外し可能であってもよい。これに代えて、トラスシステム600を、まるごと設置又は交換される単一の一体構造体として製造してもよい。トラスシステム600は、胴体の側壁内の薄い構造空間、すなわちフレーム部材同士の間およびフレーム部材の深さによって規定された空間内を延びるように構成されているか、あるいは、床内の空間、すなわち航空機10の客室と貨物室との間および床ビームの深さによって規定された空間内を延びるように構成されている。これに代えて、トラスシステム600などのトラスは、従来の装置ベイ内に設けるように構成された物理的形状を有することもできるであろう。航空機10の側壁内に取り付けられるトラスシステム600は、好ましくは、航空機10の胴体の曲率に対応している。図17は、シートレール610の下で、横方向に延びる床ビーム608の間を、側壁から側壁へと延びるよう構成されたトラスシステム600を見上げた状態の底面図である。トラスシステム600などのトラスシステムによって航空機10の床又は側壁内に配置されたMEC44、46、48は、航空機10の客室内及び貨物室内における、当該MEC44、46、48に近接する装置負荷50に対して所定の対応を行うことができる。
トラスシステム600は、隣接する2つの内側床ビーム608の上側を延びる小幅の中間部分と、これら2つの内側床ビーム608の両側から外側に向かって次の床ビーム608まで延びる両端部分とを有する構成とすることによって、電力分配モジュール170などのコンポーネントを取り付けるための広い面を有している。1つ又は複数の実施形態において、トラスシステムは、隣接する床ビーム608同士の間、又は、互いに離間した床ビーム608同士の間において所定の幅および長さを有することで、貨物室からの煙が客室に入ることを防ぐための煙バリアとして、及び/又は、客室からの水滴が貨物室に落ちることを防ぐための水滴バリアとして機能するのに適した構成とされている。
図17はさらに、一次MEC44のトラスシステム600に取り付けられたCNIモジュール162、電力分配モジュール170、TRU134、142、ATU138、PPSND302を示している。TRU134は、PPSND302の出力コネクション390からの230VACを受け取る。TRU134は、電力分配モジュール170に給電するために、28VDCの電力バスに接続する。各電力分配モジュール170は、一次MEC44と関連付けられた装置負荷50とインターフェイスするためのコネクション596を有する。
トラスシステム600の各構造要素は、上述したように、1つ又は複数の転送層及び絶縁層を有している。転送層のうちの1つは、MEC44、46、48の1つの部分から、同じMEC44、46、48の別の部分に高電圧電力を転送するように構成されうる。例えば、高電圧電力は、トラスシステム600内で、転送層を介して、LRU52として構成されるとともにトラスシステム600の表面に取り付けられたPPSND302に供給されうる。低電圧二次電力も、トラスシステム600の別の転送層を通って、トラスシステム600の表面に取り付けられた低電力装置負荷50に供給されうる。また、通信データも、トラス600の転送層を介して、トラスシステム600の表面に取り付けられた航空機システムのコンポーネントに供給することができる。トラスシステム600の1つの転送層は、トラスシステム600の表面に取り付けられたシステムコンのポーネントにチャネルAを提供することができ、別の転送層は、同じシステムにチャネルBを提供することができる。
1つあるいは複数の例において、航空機10は、当該航空機10の特定の環境下で電力要素及びデータ要素と共に用いるように構成された1つ又は複数の遠隔MEC(RMEC)410を含んでいてもよい。RMEC410は、一次又は二次MEC44、46をよりシンプルしたもので、TRU134、142や、ATU138などの電力変換装置を備えていない。RMEC410に対する二次電力の供給は、MEC44、46、48のいずれによって行ってもよい。また、1つ又は複数の別個の二次電力をRMEC410に入力してもよい。このような二次電力は、最も近接する一次又は二次MEC44、46における1つ又は複数の電力分配モジュール170から供給され、その電圧は、当該RMEC410に関連付けられた負荷用の特定の電圧である。ローカルサブシステムの負荷にAC電力が必要な場合には、PPSND302から直接RMEC410にAC電力を供給してもよい。
各RMEC410は、局所的に電力が供給され且つコンピューティング機能が実行されるように、二次電力及び通信の分配を行うが、これは特に当該RMEC410に近接するローカルな航空機システム装置及びコンポーネントを対象としたものである。RMEC410は、個別の二次電力を分配する機能を有する一方、電力変換装置を含まないので、ローカルのセンサー及びコンポーネントとMEC44、46との間の配線量が少なくなる。このため、航空機全体のワイヤ重量及び航空機10にわたるワイヤの複雑さが低減され、航空機10の組立を迅速に行えるようになる。また、組立て確認(build verification)が簡単になり、航空機の最終的な組み立てが迅速化される。これは、RMEC410を他の装置(当該RMECにデータを供給し且つ当該RMECから命令及び電力を受け取るように構成された装置)とともに、単一ユニットシステム内(乗客入口ドアシステム又はメインランディングギアシステムなど)に収容することが可能であり、このようなシステムに対する製品適格性の確認を、当該システムを航空機10内に設置する前又は設置直後に行うことができるからである。
RMEC410は、航空機10における加圧されたエリア並びに非加圧エリアで使用することができる。RMEC410は、航空機の加圧部分の外部から加圧部分に通信を送ることができる。例えば、RMEC410は、ノーズホイール格納部(well)エリアあるいはメインホイール格納部(well)エリアにおいて使用してもよく、これらのエリアには、例えば、ランディングギアシステム、ノーズホイールステアリングシステム、ブレーキシステム、油圧システムなどが設けられている。また、RMEC410は、ドア表示システム、フライトロックシステム、非常用電源、及び、前方又は後方貨物ドアシステムを有する乗客入口ドアエリア及び貨物ドアエリアにおいて使用してもよい。RMEC410は、エンジンデータ集信装置システムならびに主翼フラップ及びスラットシステムを有する主翼エリア及びエンジンエリアで使用することもできるであろう。RMEC410を使用しうる他のエリアは、化粧室、ギャレー、照明装置、乗客シートの電力システム用のキャビン領域である。RMEC410は、パネルコンポーネント及びウィンドウ加熱システムを有するフライトデッキエリア、ならびに、前方及び後方貨物取扱システムを有する貨物室エリアにおいて使用してもよい。RMEC410は、環境制御及び冷却システムにおいて使用してもよい。
図18に示すように、1つ又は複数の例において、航空機10は、乗客入口ドアシステム404、前方貨物ドアシステム406、及び、後方貨物ドアシステム408のそれぞれ用のRMEC410、2つのノーズホイールシステム用の一対のRMEC410、2つのメインホイール格納部システム用の一対のRMEC410、コックピットのパネル用のRMEC410、左及び右のメインエンジンデータ集信装置用のRMEC410、左及び右主翼スラット用のRMEC、ならびに、左及び右主翼フラップ用のRMEC410を含む。
図19は、フォールトトレラントな電力及び通信システム412を有するRMEC410のブロック図である。RMEC410は、RMEC410に近接する航空機サブシステムのニーズに応じてカスタマイズ可能である。RMEC410へ電力を供給するための電気回路はすべて、LRU52に収容することができる。その場合、特定のローカルサブシステムのセンサー及び他のコンポーネントは、RMEC410のLRU52とインターフェイスする。これにより、いくつものワイヤの束が航空機10の加圧されたヴェセル(vessel)内に貫通して延びるのを回避することができる。ローカルサブシステムのセンサー又はコンポーネントのいずれかと関連付けられたワイヤは、航空機10の加圧されたヴェセル内に貫通して戻るのではなく、RMEC410に直接インターフェイスすることによって、RMEC410に近接して配置される。好ましくは、加圧されたヴェセルの外側の装置と、MEC44、46、48に関連付けられたRMEC410の区域内における装置との間には、直接の電力経路およびデータ経路は存在しない。RMEC410の関連付けられた区域内における複数のソースからのデータを1つの経路に結合する集信装置を用いることによって、航空機10の加圧部分内への貫通の程度を最小限にすることができる。例えば、A及びBのデータチャネル188、190及び2つのツイストシールド導体ペア314のみが、RMEC410に対して二方向通信及び二次電力を供給すべく、航空機10の加圧部分を貫通する。RMEC410は、航空機10の加圧部分の外から、航空機10の加圧部分に通信を送ることができる。RMEC410は、二次DC電力を得るために一次MEC44又は二次MEC46のいずれかとインターフェイスしている。この二次DC電力は、当該一次又は二次MEC44、46の、同じ又は異なる分配モジュール170に接続された2つのツイストシールド導体ペア314によって分配されるものである。
MEC44、46のCNIモジュール162からのチャネルA及びBの通信データが、通信バス電子回路414、416で受信され、2つのツイストシールド導体ペア314が電源回路418、420に28VDC又は115VACを供給する。不揮発性メモリ428を有するチャネルA及びチャネルBマルチコアマイクロコントローラ電子回路422、424は、通信データを受信及び処理することよって、RMEC410内の他の電子回路とインターフェイスされたセンサー及びその他のコンポーネントをデジタルで制御する。マイクロコントローラ422、424のうちの一方が、動作的な不具合を有する場合、他方のマイクロコントローラ422、424が、機能又はデータを喪失することなく引き継ぐ。
RMEC410からの通信がタイムセンシティブであるか否かにより、RMEC410が、一次MEC44又は二次MEC46のどちらと通信するのかを決定してもよい。例えば、RMEC410の装置負荷に関連付けられた通信がタイムセンシティブである場合には、RMEC410がそのタイムセンシティブな通信データを一次MEC44に送信することが好ましい。RMEC410からの通信がタイムセンシティブでない場合は、RMEC410は、その重要性の低い通信データを二次MEC46に送信することができる。このように、RMECの1つ又は複数からのタイムセンシティブな通信データを一次MECに送信する一方、1つ又は複数のRMECからのタイムセンシティブでない通信データを二次MECに送信するようにしてもよい。タイムセンシティブな通信の一例は、ランディングギアが、短い滑走路の端部において、障害物を避けるために一定時間内に上がるかどうかである。タイムセンシティブではない通信の一例は、乗客用設備に故障があることが判明したような場合である。MEC44、46とRMEC410との通信は、CAN、ARINC664、Flexray又はその他のバスアーキテクチャのいずれかによって実現することができる。
RMEC410の1つ又は複数の構成にさらに含まれ得る電子回路は、近接センサー434とインターフェイスするための近接センサー電子回路432、個別スイッチ438とインターフェイスするための個別入力スイッチ電子回路436、温度センサーとインターフェイスするための温度センサー電子回路440、及び、ローカルサブシステムのモータなどの装置の位置を特定するための可変差動トランス(VDT)446とインターフェイスするための可変差動トランス電子回路444である。
図19はさらに、負荷50にDC又はAC電力を供給するための、遠隔MEC410の1つ又は複数の電力分配電気回路450に加えて、ソレノイド454、リレイ456、スイッチ458、ライト460及び点火装置462を示している。ただし、負荷50、ソレノイド454、リレイ456、スイッチ458、ライト460及び点火装置462の使用及びその数は、各遠隔MEC410のサブシステムの構成及び位置に依存する。回路を完成させるため、遠隔MEC410は、接地されたリターン経路出力を提供するための1つ又は複数の個別出力スイッチ電気回路452も含む。負荷50、ソレノイド454、リレイ456、スイッチ458、ライト460及び点火装置462用のすべてのワイヤは、RMEC410に局所化されている。
図20A及び図20Bは、メインランディングギアの制御及び表示システム用のRMEC410の1つ又は複数の構成のブロック図を示している。RMEC410及び、RMEC410とインターフェイスするメインランディングシステムは、航空機10の加圧されたヴェセルの外側に位置している。図20A及び図20BのRMEC410は、冗長な通信及び電力チャネルを有するフォールトトレラントなコンピューティングシステム412、ならびに、近接センサー電気回路432を含む。MEC410の右側のソレノイド454は、1つ又は複数のソリッドステート電力制御及び表示電気回路466、及び、1つ又は複数の接地及びオープンアナログ個別出力制御及び表示電気回路468とインターフェイスする。ソリッドステート電力制御及び表示電気回路466及び接地/オープンアナログ個別出力制御及び表示電気回路468の両方が、MEC44、46の電力分配モジュール170から、例えば28VDCなどの電力入力470を受け取り、スイッチ472を介してソレノイド454に電力を供給する。スイッチ472のロジックが正しい場合、電力及び接地の両方がソレノイド454に提供されて、ランディングギアのドアを開閉し、ランディングギアの傾斜、上昇及び下降が可能となる。ランディングギアシステムの油圧ラインがいつ加圧されたかを示すために、油圧トランスデューサー476を監視するための1つ又は複数の油圧トランスデューサー電子回路474を含んでいてもよい。RMEC410のプログラムジャンパーピン電子回路478は、ジャンパーを追加するあるいは除去することによって航空機のサブシステムの構成を変更する。
図21A及び図21Bは、乗客入口ドアシステム404の乗客入口ドアに使用するための、RMEC410の1つ又は複数の構成のブロック図を示している。RMEC410及び、RMEC410とインターフェイスする乗客入口ドアシステム404は、航空機10の加圧されたヴェセルの内部に位置している。図21A及び図21BのRMEC410は、冗長な通信及び電力チャネルを有するフォールトトレラントなコンピューティングシステム412、ならびに、近接センサー電気回路432を含む。近接センサー434は、乗客入口ドアシステム404の位置状態を示す。
MEC410の左側の近接センサー434及び近接センサー電子回路432は、以下のそれぞれの回路とインターフェイスする。すなわち、乗客入口ドアがいつ閉まったか、ラッチされたか、及びロックされたかを示すための乗客入口ドア制御パネル482を備える1つ又は複数の制御パネル個別出力電子回路480と;フライトロックアクチュエータ486を備える1つ又は複数のフライトロックアクチュエータ個別出力電子回路484と;励起ライン、感知ライン、電力ライン、接地ライン及び油圧トランスデューサー476を有する空圧リザーバ490を備える1つ又は複数の圧力トランスデューサー個別入出力電子回路488と;乗客入口ドアスイッチ494用の1つ又は複数の個別入力電子回路と;にインターフェイスする。乗客入口ドア482、フライトロックアクチュエータ486、空圧リザーバ490及び乗客入口ドアスイッチ494用の配線はすべて、乗客入口ドアシステム404内にあり、RMEC410に局所化されている。
次に、図22を参照すると、輸送機の遠隔の電力及びデータ要素に電力及びデータを供給するための例示的な手順700が示されている。別段の示唆が無い限り、図示しここで説明する工程よりも数多くの工程又は数少ない工程が行われる場合もありうる。また、別段の示唆が無い限り、これらの工程は、記載した順序とは異なる順序で行われる場合もありうる。
手順700は、1つ又は複数の電源が一次電力を生成する工程702で始まる。工程704は、一次電力をMEC44、46、48に分配することを含む。工程706において、各MEC44、46、48は、装置負荷50に二次電力の供給を含む所定の対応を行う。工程708において、少なくとも1つのMEC44、46、48は、RMEC410に二次電力を分配する。工程710は、RMEC410を、1つ又は複数の電力及びデータ要素と関連付けることを含む。工程712において、各RMEC410は、1つ又は複数の電力及びデータ要素に二次電力を分配する。
上述した要旨は、単に例示的なものであり、限定的に解釈されるべきではない。本明細書に記載した要旨に対し、図示及び説明した実施例及び実施の態様にとらわれることなく、且つ、以下の特許請求の範囲に記載される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の改変及び変更を行うことができる。