JP6456029B2 - 多角体−標的分子複合体の製造方法、多角体−標的分子複合体、タンパク質及び核酸 - Google Patents

多角体−標的分子複合体の製造方法、多角体−標的分子複合体、タンパク質及び核酸 Download PDF

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Description

本発明は、多角体−標的分子複合体の製造方法、多角体−標的分子複合体、タンパク質及び核酸に関する。
カイコなどの昆虫に多角体病を引き起こす病原体には、核多角体病の病原ウイルスである核多角体病ウイルス(Nucleopolyhedrovirus、NPV)と細胞質多角体病の病原ウイルスである細胞質多角体病ウイルス(Cypovirus、CPV)があり、前者はDNAウイルスであるのに対して、後者はRNAウイルスである。NPVはバキュロウイルスベクターとして多くの研究者に広く利用されている。
多角体病ウイルスは、感染後期には感染細胞内に多角体と呼ばれる封入体を全細胞タンパクの約半分に達するほど大量に作り、その中に多数のウイルス粒子を封入する。多角体に封入されたウイルスは、紫外線や熱などの外界からの不活化作用から保護され、長期間感染性を保持することができる。
多角体は、多くの溶媒や界面活性剤によっても溶解せず安定であるが、pH約10以上のアルカリ条件で溶解する。多角体に封入されたウイルス粒子が昆虫に食べられると、腸の高いpHにより多角体が溶解され、ウイルス粒子が放出され、感染が起こる。
非特許文献1には、多角体タンパク質であるポリヘドリンタンパク質のN末端に存在するH1 α−へリックスとの融合タンパク質をコードする遺伝子を、ポリヘドリンタンパク質をコードする遺伝子と細胞内で共発現させることにより、細胞質多角体病ウイルスの多角体の結晶構造に融合タンパク質が封入された多角体を調製できることが記載されている。
Ijiri H., et al., Biomaterials, vol 30, 4297-4308, 2009
しかしながら、非特許文献1の方法は、H1 α−へリックスとの融合タンパク質をコードする遺伝子を細胞中で発現させるものであるため、多角体に封入できる標的分子はタンパク質に限られる。
そこで、本発明は、タンパク質である標的分子のみならず、タンパク質以外の標的分子も多角体に封入することができる、多角体−標的分子複合体の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、タンパク質に限られない標的分子が多角体の結晶構造に封入された、多角体−標的分子複合体を提供することを目的とする。本発明は更に、上述の多角体−標的分子複合体の材料となるタンパク質及びこのタンパク質をコードする核酸を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
(1)多角体病ウイルスの多角体の結晶構造に標的分子が封入された、多角体−標的分子複合体の製造方法であって、
配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質をコードする核酸を、細胞に導入する第1工程と、
第1工程の後、細胞に導入した核酸にコードされたタンパク質が発現し、発現したタンパク質が多角体の結晶の形成を完了する前までの所定時間、細胞をインキュベートする第2工程と、
第2工程後の細胞の培地に標的分子を添加して、更に細胞をインキュベートする第3工程と、を含み、
前記標的分子が、有機物質である、製造方法。
(2)前記所定時間が12〜48時間である、(1)に記載の製造方法。
(3)前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、前記配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質が、金属原子に配位性を有するアミノ酸残基を有するタンパク質であり、
前記有機物質が、金属原子を含有する物質である、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記金属原子を含有する物質が、金属錯体、金属原子含有タンパク質又は金属原子含有有機化合物(但し、金属錯体を除く。)である、(3)に記載の製造方法。
(5)多角体病ウイルスの多角体の結晶構造に標的分子が封入された、多角体−標的分子複合体であって、
配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質が結晶化してなる多角体の結晶構造に標的分子が封入されており、
前記標的分子が、有機物質である、多角体−標的分子複合体。
(6)前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、前記配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質が、金属原子に配位性を有するアミノ酸残基を有するタンパク質であり、
前記有機物質が、金属原子を含有する物質である、(5)に記載の多角体−標的分子複合体。
(7)前記金属原子を含有する物質が、金属錯体、金属原子含有タンパク質又は金属原子含有有機化合物(但し、金属錯体を除く。)である、(6)に記載の製造方法。
(8)前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、前記配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質。
(9)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質をコードする核酸。
本発明によれば、タンパク質に限られない標的分子を多角体の結晶構造に封入することができる、多角体−標的分子複合体の製造方法を提供することができる。本発明はまた、タンパク質に限られない標的分子が多角体の結晶構造に封入された、多角体−標的分子複合体を提供することができる。本発明はまた、上述の多角体−標的分子複合体の材料となるタンパク質及びこのタンパク質をコードする核酸を提供することができる。
(a)は、野生型のポリヘドリンの結晶化により得られた多角体の光学顕微鏡写真である。(b)は、ポリヘドリンタンパク質のC末端にヒスチジンが6個連続したアミノ酸配列が付加されたタンパク質の結晶化により得られた多角体の光学顕微鏡写真である。(c)は、実施例1の多角体−標的分子複合体の光学顕微鏡写真である。 図2は、実施例1の多角体−標的分子複合体の赤外線吸光分析の結果を示すグラフである。 図3は、ルシフェラーゼレポーターアッセイの結果を示すグラフである。
[多角体−標的分子複合体の製造方法]
1実施形態において、本発明は、多角体の構成物質であるポリヘドリンタンパク質をコードする核酸を細胞に導入する第1工程と、第1工程の後、所定時間細胞をインキュベートする第2工程と、第2工程後の細胞の培地に標的分子を添加して、更に細胞をインキュベートする第3工程と、を含む、多角体−標的分子複合体の製造方法を提供する。以下、各工程について詳細に説明する。
《第1工程》
第1工程では、多角体の構成物質であるポリヘドリンタンパク質をコードする核酸を細胞に導入する。ここで、ポリヘドリンタンパク質は、製造する多角体−標的分子複合体に封入する、標的分子に応じて選択する。ポリヘドリンタンパク質として、標的分子を結合可能な部位を有し、かつ結晶化により多角体を形成することが可能なものを使用する。ポリヘドリンタンパク質と標的分子との結合様式としては、配位結合、共有結合、水素結合等が挙げられる。
1実施形態において、ポリヘドリンタンパク質は金属原子に配位性を有するアミノ酸を含む部位を有しており、標的分子は金属原子を含有する物質であってもよい。
(金属原子に配位性を有するアミノ酸を含む部位)
金属原子に配位性を有するアミノ酸としては、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、セリン等が挙げられる。金属原子に配位性を有するアミノ酸を含む部位としては、上述したアミノ酸から選択される1種以上のアミノ酸を含む部位が挙げられ、例えば、ヒスチジンが約6個連続した部位、多角体の結晶内部の空隙に金属原子に配位性を有するアミノ酸が露出した部位、多角体の結晶表面に金属原子に配位性を有するアミノ酸が露出した部位等が挙げられる。
(金属原子を含有する物質)
金属原子を含有する物質としては、金属錯体、金属原子含有タンパク質、金属原子含有有機化合物(但し、金属錯体を除く。)が挙げられる。
金属錯体としては、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、ルテニウム、レニウム等から選択される1種以上の金属原子を含有する物質が挙げられ、例えば、Mn(CO)Br、Mn(CO)Cl、Ru(CO)Cl、Fe(CO)12、Re(CO)Cl等が挙げられる。
金属原子含有タンパク質としては、サイトクロムP450、ヘモグロビンを代表とするヘムタンパク質、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、アルコール脱水素酵素を代表とする非へムタンパク質が挙げられる。
金属原子含有有機化合物(但し、金属錯体を除く。)としては、プロトポルフィリン、クロロフィル等が挙げられる。
ヒスチジンが約6個連続した部位に結合する物質としては、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、マンガン等から選択される1種以上の金属原子を含有する物質が挙げられる。より具体的には、金属錯体である、Mn(CO)Br、Mn(CO)Cl、Ru(CO)Cl、Fe(CO)12、Re(CO)Cl;金属原子含有タンパク質である、サイトクロムP450、ヘモグロビンを代表とするヘムタンパク質、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、アルコール脱水素酵素を代表とする非へムタンパク質;金属原子含有有機化合物である、プロトポルフィリン、クロロフィル等が挙げられる。
多角体の結晶内部の空隙に金属原子に配位性を有するアミノ酸が露出した部位に結合する物質としては、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、ルテニウム、レニウム等から選択される1種以上の金属原子を含有する物質が挙げられる。より具体的には、金属錯体である、Mn(CO)Br、Mn(CO)Cl、Ru(CO)Cl、Fe(CO)12、Re(CO)Cl;金属原子含有タンパク質である、サイトクロムP450、ヘモグロビンを代表とするヘムタンパク質、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、アルコール脱水素酵素を代表とする非へムタンパク質;金属原子含有有機化合物である、プロトポルフィリン、クロロフィル等が挙げられる。
多角体の結晶表面に金属原子に配位性を有するアミノ酸が露出した部位に結合する物質としては、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、ルテニウム、レニウム等から選択される1種以上の金属原子を含有する物質が挙げられる。より具体的には、金属錯体である、Mn(CO)Br、Mn(CO)Cl、Ru(CO)Cl、Fe(CO)12、Re(CO)Cl;金属原子含有タンパク質である、ミオグロビン、ヘモグロビン;金属原子含有有機化合物である、プロトポルフィリン、クロロフィル等が挙げられる。
(ポリヘドリンタンパク質)
本実施形態の第1工程で細胞に導入する、ポリヘドリンタンパク質をコードする核酸としては、例えば、ポリヘドリンタンパク質のC末端にヒスチジン残基が6個連続したアミノ酸配列が付加されたタンパク質をコードする核酸が使用できる。この場合の標的分子としては、金属原子として、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、マンガン等から選択される1種以上を含有する物質が使用できる。核酸としては、ポリヘドリンタンパク質を発現させることができる限り、使用する発現系に応じてDNAであってもRNAであってもよい。ポリヘドリンタンパク質のC末端にヒスチジン残基が6個連続したアミノ酸配列が付加されたタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に示す。
1実施形態において、本発明は、ポリヘドリンタンパク質をコードする核酸を提供する。本実施形態に係る核酸は、配列番号1のアミノ酸配列をコードする核酸、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質をコードする核酸であってもよい。ここで、1若しくは数個とは、1〜15個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を意味する。また、「多角体形成能を有する」とは、対象のポリヘドリンタンパク質が、多角体の結晶を形成することができることを意味する。
1実施形態において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質を提供する。
1実施形態において、ポリヘドリンタンパク質は反応性有機官能基を有しており、標的分子は有機化合物であってもよい。反応性有機官能基としては、システイン、リシン、チロシン残基の側鎖である基が挙げられる。また、標的分子としては、マレイミド誘導体、アルケン誘導体、コハク酸イミド誘導体、有機ジアゾニウム化合物が挙げられる。
(細胞)
ポリヘドリンタンパク質をコードする核酸を導入する細胞としては、昆虫細胞、甲殻類細胞、クモ類細胞等が挙げられる。より具体的には、昆虫細胞株であるSf9細胞株、Sf21細胞株等が挙げられる。
ポリヘドリンタンパク質をコードする核酸の導入方法としては、ウイルスベクターを感染させる方法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。ウイルスベクターとしては、バキュロウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター等が挙げられる。
《第2工程》
第2工程では、第1工程の後、所定時間細胞をインキュベートする。インキュベート中に、第1工程で細胞に導入した核酸が発現し、ポリヘドリンタンパク質が翻訳される。第2工程におけるインキュベートの時間を適切な範囲に設定することが、多角体への標的分子の封入効率を高めるうえで重要である。インキュベートの時間は、細胞への核酸の導入後、ポリヘドリンタンパク質が多角体の結晶の形成を完了する前までの時間であることが好ましく、細胞への核酸の導入後、ポリヘドリンタンパク質が発現し、多角体の結晶化が始まる前までの時間であることがより好ましい。
第2工程におけるインキュベートの時間は、Sf21細胞株にバキュロウイルスベクターを感染させて約27℃での培養条件下でインキュベートした場合において、0時間を超え168時間以下であることが好ましく、12〜48時間であることがより好ましく、24〜36時間であることが更に好ましい。
《第3工程》
第3工程では、第2工程後の細胞の培地に標的分子を添加して、更に細胞をインキュベートする。標的分子の終濃度は0.001〜100mMであることが好ましく、0.01〜10.0mMであることがより好ましく、0.1〜5.0mMであることが更に好ましい。標的分子の終濃度が0.5〜2.0mMであると、標的分子の多角体への高い封入効率が得られる傾向にある。
第3工程における細胞のインキュベーションの時間は、Sf21細胞株にバキュロウイルスベクターを感染させた場合において、約27℃での培養条件下で、4〜10日間であることが好ましく、6〜8日間であることがより好ましく、7日間であることが更に好ましい。第3工程における細胞のインキュベーションの時間が7日間を超えても、多角体−標的分子複合体の結晶化はそれ以上進まない傾向にある。
《多角体−標的分子複合体の精製方法》
製造された多角体−標的分子複合体は、遠心法、界面活性剤法等の方法により精製することができる。遠心法では、例えば多角体−標的分子複合体を産生した細胞に蒸留水を加えて破砕し、遠心分離で回収する操作を繰り返す手順により、多角体−標的分子複合体を精製することができる。界面活性剤法では、例えば多角体−標的分子複合体を産生した細胞に界面活性剤を加えて細胞を溶解し、遠心分離で回収をする手順により、多角体−標的分子複合体を精製することができる。
精製された多角体−標的分子複合体は、蒸留水、緩衝生理食塩水、抗生物質を含む蒸留水等の溶液中で保存することができる。
[多角体−標的分子複合体]
1実施形態において、本発明は、多角体病ウイルスの多角体の結晶構造の内部に標的分子が封入された(担持された)、多角体−標的分子複合体を提供する。ここで、多角体−標的分子複合体を構成するポリヘドリンタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質であってもよい。
また、上述したように、多角体−標的分子複合体を構成するポリヘドリンタンパク質は、金属原子に配位性を有するアミノ酸残基を有するタンパク質であり、標的分子が、金属原子を含有する物質であってもよい。さらに、金属原子を含有する有機物質は、上述した金属錯体、金属原子含有タンパク質又は金属原子含有有機化合物であってもよい。
多角体−標的分子複合体中の標的分子は、多角体により保護されるため、標的分子を多角体−標的分子複合体に封入することにより、紫外線、熱、乾燥、尿素溶液への浸漬、酸への浸漬、界面活性剤を含む溶液への浸漬等に対する安定性を向上させることができる。
また、多角体−標的分子複合体は、細胞親和性がある(生体毒性が低い)ことから、金属含有薬物の貯蔵及び制御放出や、生体内での小分子の反応制御への応用が可能となる。
小分子の反応制御とは、小分子の捕捉、小分子の放出、小分子の合成、小分子の分解等である。
また、例えば多角体−標的分子複合体のpHを例えば10以上に変化させることにより、標的分子を制御放出することができる。pHの変化以外にも、光照射、温度変化、活性分子の添加により作用物質を放出する標的分子を複合体に封入することにより、光照射、温度変化、活性分子の添加による作用物質の制御放出が可能となる。光照射により物質を放出する標的分子としては、例えばMn(CO)Brが挙げられる。Mn(CO)Brは光照射によりCOを放出する。
ところで、脳梗塞、アルツハイマー病、発癌、肝臓疾患には、CO、NO、O等のガス分子が大きく関与していることが知られている。これらのガス分子は細胞内に浸透し、神経伝達、転写因子活性等に影響している。
従来、ポリマー、ゲル、多孔性材料にCO放出材料を担持させて、常温常圧でのCOの放出や、水中でのCOの放出を行ったことが報告されているが、材料に生体毒性があることや、合成過程が煩雑である等の課題がある。これに対し、多角体−標的分子複合体は、細胞親和性があり、製造も容易である。
例えば、CO、NO、O等のガス分子放出材料を標的分子として封入した多角体−標的分子複合体により、細胞親和性があり、ガス分子を制御放出可能な新たな材料を提供することができる。このような材料を、例えば、iPS細胞やES細胞により構築された評価システムに組み込むことにより、脳梗塞、アルツハイマー病、発癌、肝臓疾患等の医薬品開発に利用することができる。
また、多角体−標的分子複合体を用いることにより、標的分子を細胞系全体に均一にではなく、特定の領域に局在させて作用させることも可能となる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
標的分子として、金属錯体であるMn(CO)Brを用いて、多角体−標的分子複合体を製造した。
《トランスファーベクターの作製》
ポリヘドリンタンパク質のC末端にヒスチジンが6個連続したアミノ酸配列が付加されたタンパク質(以下、「PH−His」という場合がある。)をコードするDNA(配列番号2)を組み込んだトランスファーベクターを作製した。具体的には、QUickChangeKit(アジレントテクノロジー製)と別途発注したプライマーを用いて変異を導入した。このDNAを制限酵素DpnIにて処理し、ヒートショック処理にて大腸菌に導入した後37℃で16時間寒天培地上培養、続いて37℃で16時間振盪培養を行った。大腸菌からDNAを精製し、エントリーベクター(pENT)として用いた。続いて、pENT 100μg及びpDEST 150μgを混合し、LR反応によりPH−His遺伝子を挿入したトランスファーベクターを作成した。LR反応物をヒートショック処理にて大腸菌に導入した後、37℃で1時間SOC培地中で培養し、続いて37℃で一昼夜寒天培地上で培養した。大腸菌からDNAを精製し、トランスファーベクターとして用いた。
《組換えバキュロウイルスの作製》
PH−His発現用のバキュロウイルスを作製した。具体的には、上述のトランスファーベクター、BaculoGold linearized DNA(BDバイオサイエンス社製)、pTrans plasmid DNA 100ng/μL、Lipofectin reagent(Lifeテクノロジー社製)14μLを混合し、トランスフェクション試薬とした。Sf21細胞に27℃で24時間吸着させた。10%ウシ胎仔血清を含む培地2mLを加え、27℃で4日間培養した。この細胞培養上清を組換えバキュロウイルスとして使用した。
《標的分子》
標的分子として、金属錯体であるMn(CO)Br(シグマアルドリッチ社製)を用いた。Mn(CO)Brは、アセトニトリル又は水に溶解し、波長300〜450nmの光を照射するとCOガスを放出する。
《多角体−標的分子複合体の製造》
(第1工程:バキュロウイルスの細胞への導入)
上述したPH−His発現用バキュロウイルスを細胞株Sf21に導入した。具体的には、1×10個のSf21細胞を225cm細胞培養フラスコに播種し、10%ウシ胎仔血清を含む培地40mLを加え、増殖させたウイルスを含む上清1mLを導入し27℃でインキュベートした。
(第2工程:バキュロウイルスの細胞への導入後のインキュベーション)
PH−His発現用バキュロウイルスを感染させたSf21細胞を、ウイルス感染から36時間、27℃の環境下でインキュベートした。これにより、導入されたPH−Hisタンパク質が発現し、かつ多角体の結晶の形成が認められる前の段階になった。理論に拘泥するものではないが、この状態の細胞は、細胞膜の透過性が上昇しているため、通常は細胞膜を透過しにくい標的分子であっても、培地中に添加するだけで細胞膜を透過して、細胞内に入るものと考えられる。
(第3工程:培地への標的分子の添加及びインキュベーション)
ウイルス感染から36時間後のSf21細胞の培地にMn(CO)Brを終濃度1mMとなるように添加し、更に6日間遮光下でインキュベートした。以上の手順により、多角体−標的分子複合体が製造された。
《多角体−標的分子複合体の確認》
(多角体−標的分子複合体の精製)
製造した多角体−標的分子複合体を精製した。具体的には、多角体−標的分子複合体を産生した細胞に蒸留水を加えて破砕し、遠心分離で回収する操作を5回繰り返した。
(光学顕微鏡観察)
精製した多角体−標的分子複合体を光学顕微鏡で観察した。具体的には、多角体−標的分子複合体を含む緩衝生理食塩水を一滴取り、カバーグラスで挟んで倒立実体顕微鏡で観察した。図1(c)に、実施例1の多角体−標的分子複合体の光学顕微鏡写真を示す。多角体−標的分子複合体の結晶が得られたことが確認された。また、図1(a)に実施例1の多角体−標的分子複合体と同様にして撮影した、野生型のポリヘドリンの結晶化により得られた多角体の光学顕微鏡写真を示す。また、図1(b)に実施例1の多角体−標的分子複合体と同様にして撮影した、PH−Hisのみの結晶化により得られた多角体の光学顕微鏡写真を示す。
(赤外線吸光分析)
精製した多角体−標的分子複合体の赤外線吸光分析を行い、多角体の結晶構造にMn(CO)Brが封入されているか否かを確認した。具体的には、多角体−標的分子複合体を蒸留水に分散させた後、減圧乾燥により粉末状の多角体を回収し、KBr(臭化カリウム)錠剤法にて観測を行った。図2に赤外線吸光分析の結果を示す。多角体に配位したMn(CO)Brに由来する赤外線の吸収ピークが検出され、多角体の結晶構造にMn(CO)Brが封入されたことが確認された。
[実験例1]
《ルシフェラーゼレポーターアッセイ》
実施例1の多角体−標的分子複合体を用いて、COを制御放出し、細胞に刺激を与える検討を行った。
COが細胞に導入されると、NFκBが活性化する。そこで、レポーターとしてNFκB結合部位を有するプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を有するプラスミドDNAを用いて、ルシフェラーゼレポーターアッセイを行った。具体的には、HEK293細胞を96ウェルプレートに1.0×10個/ウェルで播種し、37℃、5%COの条件下で15時間インキュベートした。細胞の培地にはイーグル最小必須培地を使用した。続いて、超遠心により精製した実施例1の多角体−標的分子複合体を100000個/120μLの終濃度で培地中に添加し、上と同条件でインキュベートした。多角体−標的分子複合体の添加から1時間後にインキュベーター内で白色光を3時間照射し、その2時間後、11時間後、20時間後にそれぞれルシフェラーゼレポーターアッセイを行った。ルシフェラーゼレポーターアッセイは、培地を除去した後、アッセイキット(東洋インキMLT100)を33μL添加し、室温で5分反応させた後ルミノメーター(ATTOAB−2100)を用いて測定した。
図3にルシフェラーゼレポーターアッセイの結果を示す。図3において、実施例1の多角体−標的分子複合体を「錯体集積多角体結晶」と表記した。対照実験として行った、(1)培地に何も添加しなかった点以外は上述したものと同様の実験を行った群(図3において「コントロール」と表記した。)、(2)培地にMn(CO)Brのみを1.0μMの終濃度で添加した点以外は上述したものと同様の実験を行った群(図3において「錯体」と表記した。)、(3)PH−Hisのみの結晶化により製造し、超遠心により精製した多角体を100000個/120μLの終濃度で培地に添加した点以外は上述したものと同様の実験を行った群(図3において「多角体結晶」と表記した。)の実験結果も図3に示した。
実施例1の多角体−標的分子複合体を培地に添加し、光照射を行った場合のみ、NFκBの活性化が確認された。この結果から、多角体−標的分子複合体から制御放出させた標的分子を用いて、細胞応答を誘導することができることが示された。すなわち、Mn(CO)Brを標的分子とする多角体−標的分子複合体は、COの制御放出が可能な薬剤として使用可能である。
本発明によれば、タンパク質に限られない標的分子を多角体の結晶構造に封入することができる、多角体−標的分子複合体の製造方法を提供することができる。本発明はまた、タンパク質に限られない標的分子が多角体の結晶構造に封入された、多角体−標的分子複合体を提供することができる。本発明はまた、上述の多角体−標的分子複合体の材料となるタンパク質及びこのタンパク質をコードする核酸を提供することができる。

Claims (7)

  1. 多角体病ウイルスの多角体の結晶構造に標的分子が封入された、多角体−標的分子複合体の製造方法であって、
    配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、C末端に少なくとも6個連続したヒスチジン残基を有するアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質をコードする核酸を、細胞に導入する第1工程と、
    第1工程の後、細胞に導入した核酸にコードされたタンパク質が発現し、発現したタンパク質が多角体の結晶の形成を完了する前までの所定時間、細胞をインキュベートする第2工程と、
    第2工程後の細胞の培地に標的分子を添加して、更に細胞をインキュベートする第3工程と、を含み、
    前記標的分子が、金属原子を含有する物質である、製造方法。
  2. 前記所定時間が12〜48時間である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属原子を含有する物質が、金属錯体、金属原子含有タンパク質又は金属原子含有有機化合物(但し、金属錯体を除く。)である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 多角体病ウイルスの多角体の結晶構造に標的分子が封入された、多角体−標的分子複合体であって、
    配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、C末端に少なくとも6個連続したヒスチジン残基を有するアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質が結晶化してなる多角体の結晶構造に標的分子が封入されており、
    前記標的分子が、金属原子を含有する物質である、多角体−標的分子複合体。
  5. 前記金属原子を含有する物質が、金属錯体、金属原子含有タンパク質又は金属原子含有有機化合物(但し、金属錯体を除く。)である、請求項4に記載の多角体−標的分子複合体。
  6. 前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、前記配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、C末端に少なくとも6個連続したヒスチジン残基を有するアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質。
  7. 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸、又は、配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、C末端に少なくとも6個連続したヒスチジン残基を有するアミノ酸配列からなり、かつ多角体形成能を有するタンパク質をコードする核酸。
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