JP6446496B2 - 霊長類胚性幹細胞の培養 - Google Patents

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Description

(連邦政府後援研究に関しての記述)
決定済み。
(発明の背景)
本発明は、霊長類胚性幹細胞培養物の培養方法及びその方法で有用な培養液に関する。
霊長類(例えば、サル及びヒト)の多能性の胚性幹細胞は、着床前の胚から派生されてきた。例えば、米国特許番号5,843,780 及び文献 J. Thomson et al., 282 Science 1145-1147(1998)参照。本明細書において言及されたこれらの刊行物及びあらゆる他の刊行物の開示は、あたかも完全に本明細書において述べられているかのように参照によって組み込まれる。長期の培養にも関わらず、これらの細胞は、3つ胚体胚葉すべての後生的派生体を形成する発生能を安定して保持している。
霊長類(特にヒト)ES細胞株は、広範囲に及ぶヒト発生生物学、薬物発見、薬物検査及び移植医薬に関連した有用性を持っている。例えば、着床後ヒト胚に関しての最近の知見は、主として限られた数の静的な組織学領域に基づくものである。倫理的な配慮のために、初期ヒト胚の発生の決定を制御する根本的な機構は、本質的には未開拓のままである。
マウスは実験学的哺乳類発生生物学の頼みの綱であり、発生を制御している多くの基本的な機構はマウスとヒトの間で保存されてはいるが、初期のマウスとヒトの発生の間には著しい違いが存在する。霊長類/ヒトES細胞は、それ故にそれらの分化と機能に対する重要な新たな見識を与えるはずである。
霊長類ES細胞の分化型派生体は、新たな薬剤の標的遺伝子を同定するため、新たな化合物の毒性若しくは催奇形性の試験のため及び病気の細胞集団を交換する移植のために用いられうる。ES細胞から派生された細胞の移植により扱われるであろう潜在的な状態としては、パーキンソン病、心筋梗塞、若年発症糖尿病及び白血病などが挙げられる。例えば、J. Rossant et al. 17 Nature Biotechnology 23-4 (1999) 及び J. Gearhart, 282 Science 1061-2 (1998) を参照。
長期間増殖能、長期間培養後の発生能及び核型安定性は、霊長類胚性幹細胞培養物の有用性に関する重要な特徴である。そのような細胞(特に繊維芽細胞の支持細胞層上の)の培養液には、そのような培養の際に所望の増殖を与えるために、通常は動物血清(特にウシ胎仔血清)が補われてきた。
例えば、米国特許番号:5,453,357、5,670,372 及び 5,690,296 には、様々な培養条件が記載されており、これには、何らかの塩基性繊維芽細胞増殖因子の型が動物血清と共に使用されている条件が含まれている。残念ながら、血清は、バッチごとに変わりやすい特性を持つ傾向にあるため、このように培養液の特性に影響する。
国際公開番号:WO 98/30679 には、培養液中のある種の胚性幹細胞の増殖を支えるために動物血清の代わりに血清非添加培養液を供給することに関しての議論が存在した。この血清代替物は、アルブミン若しくはアルブミン代替物、1つ若しくはそれ以上のアミノ酸、1つ若しくはそれ以上のビタミン、1つ若しくはそれ以上のトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、1つ若しくはそれ以上の抗酸化作用物質、1つ若しくはそれ以上のインスリン若しくはインスリン代替物、1つ若しくはそれ以上のコラーゲン前駆体及び1つ若しくはそれ以上の微量成分を含んでいる。この代替物は、更に白血病阻害因子、造血幹細胞因子若しくは細毛状の神経栄養因子も添加されうると言及されていた。残念ながら、霊長類の胚性幹細胞の培養(特にそれらが繊維芽支持細胞層上で成長した)であるが故に、これらの培養液は、十分に判明していなかった。
血清添加培養液(例えばウシ胎仔血清)との関連で、国際公開番号WO 99/20741は、霊長類の幹細胞の培養におけるbFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)のような様々な増殖因子使用の利点について議論している。しかしながら、栄養物血清なしの培養液は記載されていない。
米国特許番号:5,405,772 では、造血細胞及び骨髄間質細胞に対する増殖培養液が記載されている。この目的のために、血清欠乏性培養液中での繊維芽細胞増殖因子の使用が提案されている。しかしながら、霊長類の胚性幹細胞の増殖条件については記載されていない。
一番初めのヒト胚性幹細胞培養は、ヒト胚性幹細胞が未分化状態を保持したまま増殖されることを可能にする性質を有する繊維芽細胞の支持細胞を使用して培養された。その後、直接指示細胞を使用するのと同じ作用を持ついわゆる調製培養液を作製するためにその培養液を支持細胞に暴露することで十分であることが発見された。支持細胞若しくは調整培養液なしでは、培養液中のヒト胚性幹細胞は、未分化状態を維持することはできないであろう。支持細胞の使用あるいは培養液の支持細胞への暴露でさえも、培養液に不必要な物質による汚染の危険にさらすため、支持細胞及び調整培養液の使用を避けることが望ましい。本明細書において、支持細胞に暴露されていない培養液は非調製培養液といわれる。
それ故に、動物血清使用を必要としない霊長類の胚性幹細胞の安定的な培養技術に対する必要性は未だ存在しうる。
(発明の要約)
ある側面において、本発明は、霊長類胚性幹細胞の培養方法を提供する。幹細胞を、本質的に哺乳類胎児血清を含まず(好ましくは、本質的にどのような動物血清をも含まず)繊維芽細胞の支持細胞層以外の出所から供給される繊維芽細胞増殖因子を含む培養液中で培養する。ある好ましい方法においては、従来は幹細胞培養を維持するために必要であった繊維芽細胞の支持細胞層は、十分量の繊維芽細胞増殖因子の添加により不要なものとなる。
繊維芽細胞増殖因子は、哺乳類の発生に不可欠な分子である。現在のところ、20以上の既知の繊維芽細胞増殖因子配位子及びそのための5つの繊維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体(及びその接合変異体)が存在する。一般的に D. Ornitz et al., 25 J. Biol. Chem. 15292-7 (1996) 、米国特許番号 5,453,357を参照。これらの因子におけるわずかな変異が種間に存在すると予想されており、このように繊維芽細胞増殖因子という言葉は、種限定的なものではない。しかしながら、我々は、ヒト繊維芽細胞増殖因子、より好ましくは組み換え遺伝子から作製されたヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子を好んで使用する。この化合物は、Gibco BRL-Life Technologies 及びその他から容易に多量に入手可能である。
この特許の目的のためには、培養液は、たとえ別々の成分(例えば、ウシ血清アルブミン)が血清から分離され、次に外因的に加えられていようとも本質的にそれでも指定の血清を含まなくてもよいことが言及されているべきである。その要点は、血清それ自身が加えられた時に、可変性が副産物に影響する点である。しかしながら、そのような血清から精製した1つ若しくはそれ以上のとても明確な成分を添加すれば、このようなことは起こらない。
好ましくは、この方法を使用して培養された霊長類胚性幹細胞は、i)未分化状態においてin vitroで無限の増殖が可能で、ii)長期間の培養後においても、3つの胚体胚葉のすべての派生体(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)に分化可能で、かつiii)長期間の培養を通じて正常な核型(正倍数体)を維持しているという点で、真のES細胞株であるヒト胚性幹細胞である。それ故に、これらの細胞は多能性であるといわれる。
この培養は、培養液中で1ヶ月以上もの間(好ましくは6ヶ月以上、より好ましくは12ヶ月以上もの間でさえも)、幹細胞が内胚葉、中胚葉及び外胚葉組織の派生体へ分化する能力を維持し、幹細胞の核型を維持したまま、胚性幹細胞が安定的に増殖することを可能にする。
別の側面においては、本発明は、霊長類胚性幹細胞の別の培養方法を提供するものである。幹細胞を、本質的に哺乳類胎児血清を含まず(好ましくは、本質的にどの動物の血清をも含まない)、繊維芽細胞の支持細胞層以外の出所から供給される繊維細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化することのできる増殖因子を含む培養液中で増殖させる。増殖因子は、望ましくは、繊維芽細胞増殖因子であるが、繊維芽細胞増殖因子受容体を活性化するように設計されたある種の小さな合成ペプチド(例えば、組み換え改良型若しくは変異型のDNAから作製された)であってもよい。一般的に、T. Yamaguchi et al., 152 Dev. Biol. 75-88 (1992) (signaling receptors) を参照。
更に別の側面においては、本発明は、霊長類胚性幹細胞の培養のための培養系を提供するものである。この培養系は、繊維芽細胞の支持細胞層以外から供給されるヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子を有している。この培養系は、本質的に動物血清を含んでいない。
更に本発明の別の側面は、前述の方法を使用して派生する細胞株(好ましくは、クローン化細胞株)を与えるものである。"派生する"とは、直接的若しくは間接的に派生する株を網羅した最も広義の意味で用いられている。
動物血清のバッチ間の違いに起因する結果における可変性は、その結果回避される。その上、繊維芽細胞増殖因子を使用する一方で、動物血清の使用を避けることが、クローニング効率を高めうることが発見された。
それ故に、霊長類胚性幹細胞に非可変性かつより効率的なクローニングを可能とする培養条件を提供することが、本発明の長所である。本発明の別の長所は、本明細書及び特許請求の範囲の調査後に明らかになるであろう。
(好ましい実施態様の詳細な説明)
幾つかの以下の実験において、発明者の一人は、培養液への血清添加なしでヒトES細胞株を培養する本発明の方法及び培養液系を使用した。2つのクローン化的に得られたヒトES細胞株は、成分として血清を含まない培養液中で培養された時に、クローン的な派生の後8ヶ月以上も増殖し、3つの胚体胚葉すべての後生的派生体への分化能を保持していた。
下記の他の実験群において、比較的多量のヒト繊維芽細胞増殖因子(FGF)の添加が、血清及び支持細胞すら存在しない状態におけるヒト胚性幹細胞の培養と増殖を補助することが実証さてきた。これは、動物細胞若しくは動物細胞が培養された培養液のどちらにも暴露されていない幹細胞の培養を可能にする。これらの幹細胞培養条件(つまりは、支持細胞及び調整培地なし)は、本明細書において支持細胞非依存的いう。支持細胞によって調製される培養液の使用に基づいて従来の培養条件が記載され、支持細胞非存在なものとして記載されている。しかしながら、調製培地の使用は、未だ培養液を調整するために使用されなければならない支持細胞の使用への依存性を排除できない。本明細書に記載された技術は、正常の核型を有し未分化のままで、永久的かつ支持細胞非依存的なヒト胚性幹細胞の培養を可能にする。
最初のヒトES細胞株H9の派生、培養及び特徴付けに対する技術は、J. Thomson et al., 282 Science 1145-1147 (1998) に記載された。以下に記載された実験では、この細胞株及び他の細胞株によって行われたが、その方法及び結果は、特定のES細胞株とは無関係である。
本明細書では、繊維芽細胞増殖因子(FGF)の培養液中での補助添加及びヒトES細胞のクローン化が記載されている。FGFの添加は、2つの明確な点で重要である。第一に、中程度のレベル(例えば、4 ng/ml)でのFGFの添加は、血清を欠く培養液中での未分化ヒトES細胞の培養を可能にする。このレベルにおいて、幹細胞の分化速度はFGF低レベル状態と比較して緩やかであるが、最終的には幹細胞は分化する。第二に、より高レベルでのFGFの添加は、幹細胞が、培養液中で正倍数性の未分化型ヒトES細胞の多分化能を永久に維持するために少しも支持細胞を必要としないという点で、培養液の条件を支持細胞非依存的なものとする。
この第一の現象は、ヒトES細胞中のFGF受容体との相互作用におけるFGFの作用により作動されるものと信じられている。血清の使用を避けるために、多くの既存のFGF変異種が培養液中に使用されることは、特に重要なことではない。ここで、FGF2としても知られている塩基性FGFすなわちbFGFが一般に使用されるが、これは、単にbFGFがFGF群因子の中で手軽に市販で入手可能なものの1つであるという理由によるものである。20よりも多い異なるFGF群因子が同定されており、これらは、FGF-1からFGF-27と称される。本明細書においてFGFの濃度はbFGFの量で与えられるが、一方で、FGFの濃度はFGF受容体の刺激量の定量化により得られる傾向にあること及びFGFの濃度が他のFGF群因子に対して上方若しくは下方に調整されなければならないかもしれないことを理解しておくべきである。bFGFに対しては、ES細胞培養液中の好ましいFGF濃度は、およそ 0.1 ng/ml からおよそ1000 ng/mlの範囲であり、およそ 4ng/ml の範囲を超える濃度は培養液中での血清要求性を避けるのに有用である。
意外にも、ヒトES細胞培養液中におけるFGFの第二の特性に対しては、FGFの変異種の選択が何らかの臨界を有していることが分かった。この効果のために、bFGFの濃度がおよそ100 ng/ml の時に、この条件は、血清及び支持細胞の双方に対する必要性を回避する、つまりは、培養液を支持細胞非依存的にするのに十分であることが分かった。この効果のために、FGF群因子のFGF2(bFGF)、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18は、それぞれ、ヒトES細胞培養を支持細胞非依存的にするためには培養液中に100 ng/ml の濃度で十分であることが分かった。それに対して、FGF群因子のFGF1(酸性FGF)、FGF1β、FGF3、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF10、FGF16、FGF19及びFGF20 は、支持細胞非依存性を支えるのに100 ng/ml では十分でないことが分かった。我々は、データを持ち合わせていないが、これらのFGF型を使用した結果が濃度の効果によるものではなく、高濃度の特定のFGFも支持細胞非依存性を支持することに成功しないであろうと信じている。FGF9に対しては、我々のデータは、このレベル(100 ng/ml)でFGF9がヒトES細胞培養を支持すると示唆しているが、そのデータは、不確かである。
ヒトES細胞が培養液中で支持細胞非依存的であることを支持するのに十分であろう効果的FGF変異体の的確な最低量は、現時点では正確には分かっていないが、経験的な試験によって決定されうる。FGF2に対しては、培養液中の100 ng/ml のFGF2だけで十分である一方、4 ng/ml を培養液に添加することだけでは、培養液中における正倍数性の未分化ヒトES細胞の永久的維持には十分ではないことが分かっている。4 ng/ml 程度の少量を含む非調整培養液中で培養されたES細胞は、しばらくの間、そしておそらくは1回か2回継代の間、未分化状態のままでいるだろうが、最終的には分化を始めるだろう。我々の手中において、ES細胞を培養して永久に未分化状態かつ正倍数性のまま維持する培養液の能力は、ES細胞が増殖型、未分化型、正倍数性のままで、さらに、ヒトES細胞の特徴的な形態を維持しつつ少なくとも6回継代培養された時に発揮される。本明細書で用いられたように、FGFの維持濃度は、未分化型、正倍数性及び増殖状態で少なくとも6回継代の間、ヒトES細胞の維持を支持するのに必要なそのFGFの濃度である。FGF2に対しては、最低維持濃度は、4 ng/ml と100 ng/ml の間であり、その正確な最低維持濃度は、これらの量の間に入れるための下記の手順を用いて決定されうる。他の効果的FGF、例えばFGF4、FGF9、FGF17及びFGF18に対しては、それぞれのFGFに対応した最低維持濃度が同様の試験により決定されうる。
下記の実施例中で記載されている明確なヒトES細胞培養液中でヒトES細胞は、完全なる繊維芽細胞の支持細胞非存在下及び調製培地もなしで正倍数性を維持したまま永久に培養されうる。ES細胞は、このように真に支持細胞非依存的である。このヒトES細胞は、特徴的形態(小さく、そしてはっきりしない細胞膜を有しぎっしり詰まっている)、増殖及び全部ではないがたくさんの人体中の細胞型へ分化する能力を含むあらゆるヒトES細胞のすべての特徴を維持している。このヒトES細胞は、また、免疫不全マウスに注入した時に全ての3つの根本的な細胞層を形成することができる特徴を維持している。特に、このES細胞は、外胚葉、中胚葉及び内胚葉に分化する能力を維持している。このES細胞は、更にES細胞の状態を表示する多分化能と関連する核転写因子Oct4の発現のような指標を提示する。この過程及び最後までを通じて、このヒトES細胞は、正常な核型を維持している。
本明細書の一番初めの実験では、ヒトES細胞は、放射線照射を受けた(35グレイのガンマ放射線照射)マウス胎児繊維芽細胞上に撒かれた。この実験に用いる培養液は、80%の"KnockOut”ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco BRL, Rockville, MD)、1 mM L-グルタミン、0.1 mM β-メルカプトエタノール及び1 % 非必須アミノ酸ストック(Gibco BRL, Rockville, MD)に20 % のウシ胎仔血清(HyClone, Logan, UT)若しくは20 % のもともとマウスES細胞に最適化された血清非存在の代替物であるKnockOut SR(Gibco BRL, Rockville, MD)のどちらかが追加されたものを含んでいる。KnockOut SRの成分は、国際公開番号:WO 98/30679において血清の代替物として記載されている。
別の実験において、培養液は、血清若しくは前述の血清代替物であるKnocoOut SRが追加され、また、ヒト組み換え型塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF, 4 ng/ml)の添加あり若しくは添加なしのものであった。培養液中の好ましいbFGFの濃度範囲は、1 ng/ml から500 ng/ml の間であった。
培養条件を変化させた状態におけるクローン化効率を測定するために、H-9細胞は、7分間 0.05% トリプシン/0.25% EDTA と共に単一細胞集団に分離され、遠心分離により洗浄され、更に、分裂不活性化されたマウス胎児繊維芽細胞上に撒かれた(6ウェルプレート1ウェルにつき105 ES cells)。単一細胞集団からクローン化ES細胞株の派生体への増殖を確認するために、個々の細胞集団は、実体顕微鏡下での直接観察によって選択され、マイクロピペットを用いて20% 血清代替物と4 ng/ml のbFGFを含む培養液と共にあるマウス胎児繊維芽細胞の支持細胞を含む96ウェルプレートの各々のウェルに移された。
クローンは、1 mg/ml のIV型コラゲナーゼ(Gibco BRL, Rockville, MD)と共に5-7日毎の所定の継代をすることにより拡大された。派生から6ヶ月後に、H9細胞は、標準的なG-分染法(20の染色体スプレッドが分析される)によって、正常なXX核型を示した。しかしながら、派生から7ヶ月後には、単一の核型プレパラートにおいて、16/20 の染色体スプレッドが正常のXX核型を示したが、4/20 のスプレッドが第13番ショートアーム染色体への転座、第20番染色体の反転、第4番ショートアームへの転座及び複合的な断片化を含む任意の異常を示した。その後、派生から8、10及び12.75ヶ月後において、H9細胞は、検査された全ての20染色体スプレッドにおいて、正常な核型を示した。
我々は、動物血清を含む前述の培養条件におけるヒトES細胞のクローン化効率が(bFGFの存在、非存在に関わらず)非常に低いことを観察した。我々は、更に、動物血清非存在下で、クローン化効率が上昇し、bFGF存在により更に上昇することをも観察した。FGFの添加が、一般にヒトES細胞の増殖を促進し、ヒトES細胞のクローニングを促進する際の特別の支援であることが明らかになった。
下記に述べられたデータは、プレートに撒かれた105のそれぞれのES細胞から生じる延べコロニー数+/-標準誤差(コロニークローン化効率の割合)である。20%の胎仔血清を含みbFGFを含まない条件では、240+/-28の結果であった。20%の胎仔血清とbFGFを含む(4 ng/ml で)条件では、ほぼ同じ結果で、260+/-12であった。血清非存在(20%の血清代替物存在)の条件では、bFGF非存在で633+/-43の結果であり、bFGF存在では826+/-61の結果であった。このように、血清は、クローン化効率には不利に作用し、血清の存在しない条件下でbFGFの存在は、クローン化効率の範囲で追加的な相乗作用の利益を有していた。
血清存在下での長期間のヒトES細胞の培養は外因的に供給されたbFGFの添加を必要とせず、(上述のように)血清含有培養液へのbFGFの添加は、ヒトES細胞のクローン化効率を著しく上昇させるとは言えない。しかしながら、血清非存在培養液においては、bFGFは、ヒトES細胞の初期のクローン化効率を上昇させた。
更に、外因性のbFGFの供給が、動物血清非存在下において霊長類胚性幹細胞が未分化状態で増殖し続けるためにとても重要であることが発見されてきた。外因性のbFGFを欠く血清非存在培養液中で、ヒトES細胞は2週間の培養によって一律に分化した。LIFのような他の因子の添加は(bFGF非存在下で)、分化を抑制しなかった。
明らかとなったこの結果は、特にクローン化株に適用できる。その際、拡大のためのクローンは、直接的な顕微鏡観察下で96ウェルプレートのウェルに細胞を個々に撒くことにより選択された。96ウェルプレートのウェルに撒かれた192のH-9細胞のうち、2つのクローンがうまく拡大できた(H-9.1及びH-9.2)。これらのクローンの両方ともに、その後血清代替物とbFGFを添加した培養液中で継続的に培養された。
H-9.1及びH-9.2細胞の両方共に、クローン化後の8ヶ月以上の継続的な培養の後においても正常のXX核型を維持していた。H-9.1及びH-9.2クローンは、血清非存在培養液中での長期間の培養後においても3つの胚体胚葉すべての派生体を形成する潜在能を維持していた。6ヶ月間の培養の後、H-9.1及びH-9.2クローンは、正常の核型を持っていることが確認され、それからベージュのSCIDマウスに注入された。
H-9.1及びH-9.2細胞は、消化管上皮(内胚葉)、胚性の腎臓、横紋筋、平滑筋、骨組織、軟骨(中胚葉)及び神経組織(外胚葉)を含む3つの胚体胚葉のすべての派生体を含む奇形腫を形成した。高度に継代されたH-9.1.及びH-9.2細胞の奇形腫中に観察された分化の程度は、低継代のH9親株細胞によって形成された奇形腫中に観察される程度に匹敵していた。
上記の記載から、動物血清は増殖の支えとなる一方で、ヒトES細胞培養に有益な化合物と有害な化合物の両方を含みうる複雑な混合物であることが十分に理解されるはずである。更に、種々の血清群は、ヒトES細胞の活発な未分化増殖を支援する能力において大きく異なる。血清をはっきりと確定された成分に置き換えることは、血清群のバリエーションに伴う効果の可変性を低下させ、より慎重に定義された分化研究を可能にするはずである。
その上、血清を含む培養液中における低いクローン化効率は、従来から使用されている血清中の幹細胞の生存に有害な、特に単一の細胞群で撒かれた時の幹細胞の生存に有害な化合物の存在を示唆している。これらの化合物の使用を避けることは、それ故に強く望まれている。
(支持細胞非依存的培養)
以下の追加的実験は、FGFを高濃度で含むが血清及び支持細胞の存在しない状態におけるES細胞株の培養に向けられた。3つの異なる培養液配合物が、この研究において用いられたが、これらの培養液配合物とは、ここでは、UM100、BM+及びDHEMのことである。専門語UM100は、100 ng/ml のbFGFが添加された非調製培養液のことである。このUM100培養液は、Gibco Knockout Serum Replacer 製品を含むが、あらゆる種類の繊維芽細胞の支持細胞の使用を含まず若しくは必要としない。BM+培養液は、基礎的な培養液(DMEM/F12)に添加物を加えたものであり、下記に記載されているように、これもまた支持細胞なしで細胞の培養を可能にするが、この培養液は血清代替物製品を除いている。最後に、DHEMという名前は、確定したヒト胚性幹細胞培養液のことである。この培養液もまた、下記に記載されているように、ウシアルブミンを含むBM+培養液とは対照的に、完全に無機成分及びヒト蛋白だけを含む状態でヒトES細胞の培養、クローニング及び永久増殖に十分である。
(UM100/BM+/DHEM培養液中でのヒトES細胞株H1及びH9の培養)
UM100培養液は、次のとおり調製された。80%(v/v)DMEM/F12(Gibco/Invitrogen)並びに1 mM グルタミン(Gibco/Invitrogen)、0.1 mM β-メルカプトエタノール(Sigma-St. Louis, MO)及び1 % 非必須アミノ酸ストック(Gibco/Invitrogen)を補完した20%(v/v)Knockout-Serum Replacer(Gibco/Invitrogen)からなる非調製培養液(UM)。この培養液を完成させるために、100 ng/ml のbFGFが添加され、培養液は、0.22 μM ナイロンフィルター(Nalgene)を通して濾過された。
BM+培養液は、次のとおり調製された。16.5 mg/ml BSA(Sigma)、196 μg/ml インスリン(Sigma)、108 μg/ml トランスフェリン(Sigma)、100 ng/ml bFGF、1 mM グルタミン(Gibco/Invitrogen)、0.1 mM βメルカプトエタノール(Sigma)及び1 % 非必須アミノ酸ストック(Gibco/Invitrogen)をDMEM/F12(Gibco/Invitrogen)に加え、オスモル濃度を5 M NaCl で340 mOsm に調製された。この培養液は、その後、0.22 μM のナイロンフィルター(Nalgene)を通して濾過された。
DHEM培養液は、次のとおり調製された。16.5 mg/ml HSA(Sigma)、196 μg/ml インスリン(Sigma)、108 μg/ml トランスフェリン(Sigma)、100 ng/ml bFGF、1 mM グルタミン(Gibco/Invitrogen)、0.1 mM β-メルカプトエタノール(Sigma)、1 % 非必須アミノ酸ストック(Gibco/Invitrogen)、ビタミンサプリメント(Sigma)、微量の無機化合物(Cell-gro(登録商標))及び0.014 mg/Lから0.07 mg/L のセレン(Sigma)をDMEM/F12(Gibco/Invitrogen)に加え、オスモル濃度を5 M NaCl で340 mOsm に調製された。培養液中のビタミンサプリメントは、チアミン(6.6 g/L)、還元されたグルタチオン(2 mg/L)及びアスコルビン酸PO4を含んでいてもよいことに注意する。また、培養液中の微量の無機化合物は、それぞれ1000倍の溶液として販売されているTrace Elements B(Cell-gro(登録商標)、カタログNo.:MT 99-175-Cl)及びC(Cell-gro(登録商標)、カタログNo.:MT 99-176-Cl)の組み合わせである。Trace Elements B及びCがそれぞれCleveland's Trace Elements I及びIIとして同じ組成物を含んでいることは、技術的によく知られている(Cleveland, W.L., Wood, I., Erlanger, B.F., J. Imm. Methods 56:221-234, 1983を参照)。この培養液は、それから、0.22 μMのナイロンフィルター(Nalgene)を通して濾過された。最終的に、滅菌した明確な脂質(Gibco/Invirogen)がこの培養液を完成させるために加えられた。
あらかじめMEF(マウス胎児繊維芽細胞)支持細胞上で成長したH1若しくはH9ヒト胚性幹細胞は、機械的にディスパーゼ(1 mg/ml)と共に継代され、マトリゲル(Becton Dickinson, Bedford, MA)上に撒かれた。細胞密度が細胞継代をするのに十分であると判断されるまで、毎日適切な培養液が交換された。細胞は、それから、記載されているようにディスパーゼで継代され、マトリゲル(Becton Dickinson)上に維持された。
(増殖速度)
各種の培養液中でのヒトES細胞の増殖速度を測定するために、細胞はおよそ5x105 cells/well の細胞密度で6ウェル組織培養プレート(Nalgene)に三つ揃いで撒かれた。3日目、5日目、7日目に、三つ揃いのウェルは、トリプシン/EDTA(Gibco/Invitrogen)で処理され、個別化され、細胞数が測定された。7日目に、追加的なウェルが、トリプシンで処理され、細胞数が測定され、およそ2x105 cells/well の細胞密度で新しいプレートに撒きなおすために使用された。トリプシン処理されてきた7日目の培養は、ES細胞の表面マーカーであるOct4, SSEA4及びTral-60がFACS分析により定量分析された。増殖速度は、3つの継続的な継代に対して収集された。増殖速度の実験は、UM100で培養されたヒトES細胞が、CM(調製培地)で培養されたヒトES細胞と同程度にしっかりと育つことを示唆している。
(接着ダイナミクス)
各種の培養液中でのヒトES細胞の接着率を測定するために、細胞は2x105 cells/well の細胞密度で6ウェル組織培養プレート(Nalgene)に撒かれた。30分から48時間までの範囲の時点において、接着していない細胞は洗い流され、接着している細胞はトリプシン/EDTA(Gibco/Invitrogen)で剥がされ、数が測定された。これらの実験は、UM100の増殖速度のデータが、UM100とCMに対する同等の増殖速度ではなく、より優れた細胞接着とより緩やかな増殖の組み合わせによるものであるのかどうかを調べるために行われた。我々は、接着の割合が、試験が行われた全ての時点において両方の培養液に対して同等であることを発見した。このように、どちらの細胞も同じ速度で増殖した。
(ヒトES細胞のFACS分析)
ヒトES細胞は、トリプシン/EDTA(Gibco/Invitrogen)+ 2 % ヒヨコ血清(ICN Biomedicals, Inc., Aurora, OH)を37℃で10分間処理して6ウェル組織培養プレート(Nalgene)から剥がされた。細胞は、等容量のFACS Buffer(PBS + 2 % FBS + 0.1 % アジ化ナトリウム)に希釈され、80 μMの細胞濾過器(Nalgene)を通して濾過された。ペレットは、1000 RPMで5分間の遠心分離により集められ、1 ml の0.5 % パラホルムアルデヒド中に再び懸濁させられた。ヒトES細胞は、37℃で10分間固定され、そのペレットは、上述の通り集められた。そのES細胞は、2 ml のFACS Bufferに再び懸濁させられ、総細胞数が血球計で測定された。細胞は、上述の通りペレット化され、90 % エタノール中に氷上で30分間浸透化された。ヒトES細胞は、上述の通りペレット化され、1x105 cellsの細胞が、FACSチューブ(Becton Dickinson)中の1 ml のFACS Buffer + 0.1 % Triton X-100(Sigma)に希釈された。hESCが上述の通りペレット化され、FACS Buffer + 0.1 % Triton X-100(Sigma)に希釈された50 μlの1次抗体中で再び懸濁された。適切な対照抗体のサンプルが、並行して用いられた。hESCは、4℃で一晩中インキュベートされた。上清は流し除かれ、細胞は、50 μlの二次抗体(Molecular Probes/Invitrogen)中に室温において暗がりで30分間インキュベートされた。FACS分析は、CellQuest Software(Becton Dickinson)を用いてFascalibur(Becton Dickinson)セルソーターで行われた。FACS分析を行うためのこの方法は、このようにES細胞を持っていることを示すために細胞表面のマーカーを検出することを可能にする。観察されたその結果は、UM100中で培養されたヒトES細胞が個体数としてOct-4に対して90 % 陽性であるということであった。これは、CMで培養されたES細胞と比べても遜色なく、その細胞がES細胞集団であることを確かなものとしている。SSEA4及びTral-60の分析に対しては、その方法は、細胞がパラホルムアルデヒド若しくはメタノール中で取り扱われないことを除けば、Oct-4に対してのものと同様に行われた。細胞染色の後に、細胞は、FACS緩衝液(Tritonを含まない)中に再び懸濁させられ、上述の通りFACS緩衝液(繰り返しになるが、Tritonを含まない)中で適切な抗体と共に分析された。未分化ES細胞培養は、これらの2つの細胞表面マーカーに対して同様に平均しておよそ90 % 陽性であった。これは、上記で議論されたFACS分析によって実証された。
(結果)
ヒトES細胞株H1細胞は、ここでは、ヒトES細胞の形態及び特徴を保持したままUM100培養液中で33継代以上(164回の細胞数倍増以上)培養された。H1細胞は、ヒトES細胞の形態及び特徴を保持したままBM+培養液中で6継代以上(70日間)培養された。H9細胞は、DHEM培養液中で5継代以上(67日間)培養された。H9及びH7ヒトES細胞もまた、UM100培養液中で未分化状態のままそれぞれ22継代及び21継代培養された。BM+及びUM100で培養された細胞のその後の試験は、正常の核型であることを証明した。
(FGFの型の研究)
ヒトES細胞の株H1は、調製培養液中の標準的な条件下で試験培養液に移される前に3回継代の間培養された。その試験条件に対して、細胞は24時間(day 0)調整培養液上で培養され、それから翌日(day 1)、試験培養液に移された。その後、細胞は、それぞれの試験培養液中で培養された。ヒトES細胞株H9は、また、並行して試験培養液に移される前に調整培養液中のマトリゲル上で5継代の間培養された。
細胞は、次の手順を用いて継代された。培養細胞は、6ウェル組織培養プレートに適切な密度(およそ7日間かかる)で育てられ、それから、培養細胞は、1 ml Dipase(1mg/ml)(Gibco/Invirtogen)で37℃において5-7分間処理された。Dipaseは、それから取り除かれ、2 ml の適切な増殖培養液に交換された。5 ml ピペットを使用して、細胞は、機械的に組織培養プレートから剥がされ、それからピペッティングによって分散させられた。
細胞は、それから1000rpmで5分間、臨床の遠心分離機でペレット化された。ペレットは、それから適切な容量の培養液に再び懸濁され、好ましい希釈率で再びプレートに撒かれた。
この培養液配合物は、FGF添加の選択以外は不変であった。基本的な培養液は、好ましい試験条件に依存した可変のFGFを含むUM100であった。次のFGF変種が、それぞれ100 ng/ml で培養液に添加され試験された。:FGF1(酸性FGF)、FGF1β(酸性FGFのアイソフォーム)、FGF2(塩基性FGF)、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20。全てのFGFは、商業的に購入されたか若しくは組み換え宿主で生成された。
ヒトES細胞培養を支持する特定のFGFの能力は、それぞれの継代後に検証された。ヒトES細胞培養を支持すると判定された条件は、適切に培養中において支持細胞非依存的に未分化状態で増殖させ、効果的に継代させることができ、ヒトES細胞マーカーであるOct4、SSEA4及びTral-60を発現し続けた培養を支持した。培養中でヒトES細胞を支援しないと判定された条件は、形態観察により明らかとなる細胞の重要な分化をその中で起こす培養液を生じた、そして、その細胞は、コロニー継代によって増殖できなかった。ヒトES細胞培養を支持するFGF変種は、FGF2、FGF4、FGF17及びFGF18であった。未分化状態でヒトES細胞の維持を支持しなかったFGF変種は、FGF1、FGF1B、FGF3、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF10、FGF16、FGF19及びFGF20であった。FGF9を添加した培養液に対しての結果は、初めは欄外であった。処置を繰り返したところ、100 ng/ml で添加されたFGF9もまた培養中の未分化ヒトES細胞を支持しうるであろうことが明らかとなっている。
現時点で、FGF4、FGF17及びFGF20を添加された培養液は、未分化ヒトES培養細胞H1細胞を8継代の間支持した。同様の複製であるFGF4、FGF9、FGF17及びFGF18は、ヒトES細胞株H9及びH14においてそれぞれ3回継代及び2回継代の間進展した。
本発明は、その好ましい実施態様について上記に記述されてきた。この概念の他の形態も、特許請求の範囲内に含まれることを意図する。例えば、組み換え的に生成されたヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子が、上述の実験で使用されたが、自然に単離された繊維芽細胞増殖因子もまた適している。その上、これらの技術はまた、サル及び他の霊長類細胞培養にも適していることも実証されるはずである。
このように、特許請求の範囲は、本発明の全ての範囲を審査するために向けられるべきである。
(産業上の利用可能性)
本発明は、霊長類胚性幹細胞の培養方法及びそれと共に用いる培養液を提供する。
(好ましい態様)
本発明の好ましい態様は、以下の通りである。
1.ヒト胚性幹細胞の培養方法であって、
幹細胞を本質的に哺乳類胎児血清を含まない培養液中で培養し、アミノ酸類、ビタミン類、塩類、無機物類、トランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、インスリン若しくはインスリン代替物、アルブミン及び支持細胞層以外の出所から供給され少なくとも維持濃度で存在する繊維芽細胞増殖因子を含む幹細胞培養液中で培養することを含み、前記培養液は、支持細胞層若しくは支持細胞層への培養液の暴露を必要としない少なくとも6回継代されたヒト未分化増殖型正倍数性胚性幹細胞の培養と増殖を支持する能力のある培養方法。
2.培養液中に本質的にいずれの動物の血清をも含まない上記1に記載の方法。
3.FGFが、FGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択された上記1に記載の方法。
4.FGFが、100 ng/mlで培養液中に存在するFGF2である上記1に記載の方法。
5.血清及び支持細胞層を含まない既知組成培養液中でのヒト胚性幹細胞の培養方法であって、
幹細胞をアルブミン、アミノ酸類、ビタミン類、無機物類、少なくとも1つのトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン若しくはインスリン代替物を含む培養液で培養し、前記培養液は本質的に哺乳類胎児血清を含まず、繊維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化する能力のある少なくともおよそ100 ng/mlの繊維芽細胞増殖因子を含み、前記繊維芽細胞増殖因子は支持細胞層以外の出所から供給され、前記培養液は支持細胞層若しくは調製培養液を含まないで幹細胞が未分化状態で増殖することを支持する培養方法。
6.前記の培養工程が、内胚葉、中胚葉及び外胚葉組織の派生体へ分化する幹細胞の能力を維持し、幹細胞の核型を維持したままの一ヶ月間以上の培養液中での胚性幹細胞の増殖を含む上記5に記載の方法。
7.FGFが、FGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択された上記5に記載の方法。
8.ヒト胚性幹細胞の培養物であって、
ヒト胚性幹細胞を含み、
アルブミン、アミノ酸類、ビタミン類、無機物類、少なくとも1つのトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン若しくはインスリン代替物を含む幹細胞培養液であって、本質的に哺乳類胎児血清を含まず、少なくとも繊維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化する能力を有する維持濃度の繊維芽細胞増殖因子を含み、血清非存在下、支持細胞層非存在下及び支持細胞層に暴露された培養液も非存在下で永久に幹細胞を培養可能な培養液を含み、
幹細胞が未分化状態において永久に正常な核型状態であることを維持することが可能な培養物。
9.繊維芽細胞増殖因子が、少なくともおよそ100 ng/ml の濃度で培養液中に存在するFGF2である上記8に記載の培養物。
10.支持細胞層非依存的なヒト胚性幹細胞の培養物であって、
幹細胞培養液中のヒト胚性幹細胞を含み、
前記幹細胞培養液は、アルブミン、アミノ酸類、ビタミン類、無機物類、少なくとも1つのトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン若しくはインスリン代替物を含み、本質的に哺乳類胎児血清を含まず、FGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択された繊維芽細胞増殖因子を少なくとも維持濃度で含み、
幹細胞が正倍数体及び未分化状態であり続ける支持細胞非依存的な培養物。
11.繊維芽細胞増殖因子が、少なくともおよそ100 ng/ml の濃度で存在する上記10に記載の培養物。

Claims (9)

  1. ヒト多能性幹細胞の培養方法であって、
    幹細胞を本質的に哺乳類胎児血清を含まない培養液中でかつアミノ酸類、ビタミン類、塩類、無機物類、トランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、インスリン若しくはインスリン代替物、アルブミン及び支持細胞層以外の出所から供給され少なくとも維持濃度で存在する繊維芽細胞増殖因子(FGF)を含む幹細胞培養液中で培養することを含み、前記FGFは、FGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択され、かつ100 ng/mlであり、前記培養液は、支持細若しくは支持細への培養液の暴露を必要としない少なくとも6回継代に対するヒト未分化増殖型正倍数性多能性幹細胞の培養と増殖を支持する能力のあるとを特徴とする方法。
  2. 培養液中に本質的にいずれの動物の血清をも含まない請求項1に記載の方法。
  3. FGFが、100 ng/mlで培養液中に存在するFGF2である請求項1に記載の方法。
  4. 血清及び支持細を含まない既知組成培養液中でのヒト多能性幹細胞の培養方法であって、
    前記幹細胞をアルブミン、アミノ酸類、ビタミン類、無機物類、少なくとも1つのトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン若しくはインスリン代替物を含む培養液で培養し、前記培養液は本質的に哺乳類胎児血清を含まず、繊維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化する能力のある少なくとも100 ng/mlの繊維芽細胞増殖因子(FGF)を含み、前記繊維芽細胞増殖因子は支持細胞層以外の出所から供給され、前記繊維芽細胞増殖因子は、FGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択され、前記培養液は、支持細若しくは調製培養液を含まないで少なくとも6回継代に対して幹細胞が未分化状態で増殖することを支持するとを特徴とする方法。
  5. 前記の培養工程が、内胚葉、中胚葉及び外胚葉組織の派生体へ分化する幹細胞の能力を維持しつつ、幹細胞の核型を維持したまま一ヶ月間以上の培養液中での多能性幹細胞の増殖を含む請求項に記載の方法。
  6. 支持細胞依存的なヒト多能性幹細胞の培養物であって、
    幹細胞培養液中のヒト多能性幹細胞を含み、
    前記幹細胞培養液は、アルブミン、アミノ酸類、ビタミン類、無機物類、少なくとも1つのトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン若しくはインスリン代替物を含み、本質的に哺乳類胎児血清を含まず、FGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択された繊維芽細胞増殖因子(FGF)を少なくとも100 ng/mlの維持濃度で含み、
    前記幹細胞が少なくとも6回継代に対して正倍数体及び未分化状態で維持される支持細胞非依存的な培養物であことを特徴とする培養物。
  7. アルブミン、アミノ酸類、ビタミン類、無機物類、少なくとも1つのトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン若しくはインスリン代替物を含む培養液であって、該培養液は、本質的に哺乳類胎児血清を含まず、少なくとも繊維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化する能力を有する維持濃度の繊維芽細胞増殖因子(FGF)を含み、前記繊維芽細胞増殖因子(FGF)は、FGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択され、かつ100 ng/mlであり、血清非存在下、支持細非存在下及び支持細に暴露された培養液も非存在下で、永久に霊長類多能性幹細胞を培養可能であり、かつ前記幹細胞を未分化状態で永久に維持することが可能であることを特徴とする培養液。
  8. 前記幹細胞が、ヒト多能性幹細胞である、請求項記載の培養液。
  9. アルブミン、アミノ酸類、ビタミン類、無機物類、少なくとも1つのトランスフェリン若しくはトランスフェリン代替物、少なくとも1つのインスリン若しくはインスリン代替物を含む培養液であって、該培養液は、本質的に哺乳類胎児血清を含まず、少なくとも繊維芽細胞増殖因子シグナル伝達受容体を活性化する能力を有する維持濃度の繊維芽細胞増殖因子(FGF)を含み、前記FGFが100 ng/mlでありかつFGF2、FGF4、FGF9、FGF17及びFGF18からなる群より選択され、血清非存在下、支持細非存在下及び支持細に暴露された培養液も非存在下で、霊長類多能性幹細胞を培養可能であり、かつ
    前記幹細胞を未分化状態で少なくとも6回継代に対して維持することが可能であることを特徴とする培養液。
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