JP6438786B2 - 信号中に含まれる正弦成分抽出装置、正弦成分抽出方法及びプログラム - Google Patents
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Description
この位相については、雑音重畳音声の位相を用いることの是非が議論されているが、近年,元音声の位相を推定して雑音除去性能を向上させる研究が非特許文献1などに見受けられるようになってきた。
一方、音声信号などの入力信号に含まれる正弦成分を抽出する研究がなされてきた。例えば、特許文献1には,微分方程式とその積分表現を用いて正弦成分の周波数,振幅及び位相を抽出することについての記載がある.特許文献2には、音声信号の正弦成分を瞬時周波数アトラクタとして抽出することにより、正弦成分を抽出することについての記載がある。特許文献3には、瞬時周波数アトラクタを用いた周期信号の基本周波数(周期の逆数)を抽出する方法についての記載がある。
しかしながら、これら従来から提案されている方法では正弦成分の検出精度がそれほど高くないという問題があった。
フーリエ変換部は、入力信号に窓関数を乗算してフーリエ変換する。
正弦成分検出部は、フーリエ変換部が変換して得た周波数ビンの出力の振幅と位相に対し、特定の周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力の振幅よりも、その特定の周波数ビンの出力の振幅が大きく、かつ、近傍の周波数ビンの出力の位相がその特定の周波数ビンの出力の位相とほぼ同じであるような特定の周波数ビンを検出する。
比算出部は、正弦成分検出部が検出した特定の周波数ビンの出力と、その周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力から、それらの出力の振幅の比を算出する。
周波数検出部は、比算出部が得た比から入力信号に含まれる正弦成分の周波数を検出する。
正弦成分算出部は、フーリエ変換部が変換して得た特定の周波数ビンの出力と、周波数検出部が検出した正弦成分の周波数から、窓関数の特性を利用して、その正弦成分の振幅及び位相を算出する。
ただし、周波数が互いに数ビン程度近接している正弦成分がある場合、これらの周波数に近い中心周波数を持つそれぞれのビンの信号の値には、これらの正弦成分をフーリエ変換した信号の和が表れる。したがって、この場合はそれぞれの正弦成分の周波数に最も近い中心周波数を持つそれぞれのビンの出力の振幅は、必ずしもそれらの近傍のビンの出力の振幅より大きいとは限らず、また、近傍のビンの出力の位相は、ほぼ同じ位相にならないことがある。このような場合については、それぞれの正弦成分の近傍のビン間の振幅・位相に対して別々に、比算出部、周波数検出部、正弦成分算出部を用い、正弦成分を分離する。
さらに、フーリエ変換部が変換して得た特定の周波数ビンの出力と、周波数検出部が検出した正弦成分の周波数から、窓関数の特性を利用して、その正弦成分の周波数、振幅及び位相を検出する正弦成分算出工程を含む。
ただし、周波数が互いに数ビン程度近接している正弦成分がある場合、それぞれの正弦成分の近傍のビン間の振幅・位相に対して別々に、比算出工程、周波数検出工程、正弦成分算出工程を経ることにより正弦成分を分離する。
ただし、周波数が互いに数ビン程度近接している正弦成分がある場合、それぞれの正弦成分の近傍のビン間の振幅・位相に対して、別々に比算出、周波数検出、正弦成分算出をする手順を含む。
図1に、本発明の実施の形態例の正弦成分抽出装置の構成例を示す。
入力端子11に得られる入力信号が、乗算器13に供給される。
乗算器13で窓関数が乗算された入力信号は、フーリエ変換部である離散フーリエ変換回路14に供給される。離散フーリエ変換回路14は、窓関数が乗算された入力信号を短時間フーリエ変換する。離散フーリエ変換に高速フーリエ変換を用いることができる。
入力端子11に得られる入力信号中に正弦成分が複数あり、それらの周波数が互いに十分離れていて、一つのビンに複数の正弦成分が現れない場合に、正弦成分検出部16は、記憶部15で記憶された周波数ビンの信号の内で、振幅が極大、すなわち、近傍のビンの出力の振幅よりも大きく、かつ、位相が同相、すなわち、近傍のビンの出力の位相と等しい周波数ビンを検出する。例えば、正弦成分検出部16が周波数ビンkを検出したとき、周波数ビンkに近接した周波数ビンk−1,k−2,…と周波数ビンk+1,k+2,…の信号の振幅は周波数ビンkの信号の振幅より小さく、これらの近接した周波数ビンの信号の位相は周波数ビンkの信号の位相と等しい。周波数ビンkに近接した周波数ビンk−1,k−2,…と周波数ビンk+1,k+2,…の範囲は窓関数に依存して決まる。
具体的には、ある特定の周波数ビンで第1の正弦成分の位相の信号を検出し、その特定の周波数ビンに近接した周波数ビンで第1の正弦成分の位相とほぼ同じ位相の信号を検出したとき、それらの周波数ビンの信号を記憶部15から読み出して、比算出部17に供給する。また、これらの読み出した周波数ビンとは別の周波数ビンから第2の正弦成分の位相の信号を検出し、第2の正弦成分の位相の信号を検出した周波数ビンに隣接した周波数ビン(又は近傍の周波数ビン)で第2の正弦成分の位相とほぼ同じ位相の信号を検出したとき、その2つの周波数ビンの信号を記憶部15から読み出して、比算出部17に供給する。
次に、図2のフローチャートを参照して、実施の形態例の正弦成分抽出装置で行われる処理の流れを説明する。
まず、離散フーリエ変換回路14が、窓関数が乗算された入力信号の短時間フーリエ変換処理を行う(ステップS21)。この短時間フーリエ変換処理のために乗算された窓関数は、窓長の時間軸中点を時刻0とする実数値偶関数である。また、離散フーリエ変換回路14は、乗算器13で入力信号に窓掛けをすることによって短時間フーリエ変換を行うことができる。
そして、正弦成分検出部16は、正弦成分を含む周波数ビンを検出する(ステップS22)。短時間フーリエ変換で得た周波数ビンの出力の振幅が近傍のビンの出力の振幅よりも大きく、かつ、近傍のビンの出力の位相と等しい周波数ビンがあるか否かを判断する。入力した信号に近接した正弦成分が含まれるときは、振幅が近傍のビンの出力の振幅よりも大きくても、位相が近傍のビンの出力の位相と等しくなるとは限らないが、その場合には、近傍のビン間で位相が等しいビンを検出する。
正弦成分を含む周波数ビンが検出できない場合には、処理を終了する。
次に、ステップS22の判断に戻り、正弦成分検出部16が、別の正弦成分を含む周波数ビンがあるか否かを判断する。
次に、実施の形態例で示した処理を行う具体的な例について説明する。
まず、入力端子11に得られる入力信号x(t)が、以下の[数1]式で示すように、振幅Aと初期位相φを持つ周波数fの正弦成分であるとする。
したがって、[数4]式より、周波数ビンkに依らずにX(k,t)の位相はx(t)の位相に等しく、振幅はx(t)のW(fL−k)倍である。
また、このことは周波数fの正弦成分の短時間フーリエ変換は、fL−n<k<fL+nの範囲の周波数ビンkのそれぞれのメインローブの中にあり、正弦成分x(t)はそれぞれの周波数ビンkの出力X(k,t)にも現れる。
図4は、窓関数がミニマム3ターム(Minimum 3-term)窓の場合の近接する周波数ビンの重なりを示す図である。この図4に示すように、W(ξ)はW(ξ−3)、W(ξ−2)、W(ξ−1)、W(ξ+1)、W(ξ+2)、W(ξ+3)と重なっている。
このことは逆に、窓関数のサイドローブにおける|W(ξ)|が十分小さければ、周波数fの信号は、その近傍の周波数ビンにだけ出力が現れる。ミニマム3ターム(Minimum 3-term)窓に対しては、周波数ビンkについて、ξ=fL−kより、図4の−0.5<ξ<0.5の範囲の周波数fの正弦成分は、k−3番目の周波数ビンからk+3番目の周波数ビンに出力が現れる。
たとえば、周波数fがξ=fL−k=−0.4となる正弦成分に対しては、図5に示すように、周波数ビンk−2には信号x(t)にW(−0.4+2)を掛けた信号が、周波数ビンk−1にはW(−0.4+1)を、周波数ビンk,k+1,k+2には、それぞれW(−0.4),W(−0.4−1),W(−0.4−2)を掛けた信号が出力される。
まず、正弦成分の周波数fに最も近い中心周波数を持つ周波数ビンをkとする。このとき、ξ=fL−kと置くと、ξは−0.5<ξ<0.5の範囲にある。
周波数fの正弦成分の近傍に他の正弦成分がない場合は、[数4]式から近傍の周波数ビンk+i(i=・・・,−2,−1,0,1,2,・・・)での値は、次のようになる。
X(k+i,t)とX(k,t)の振幅の比のdB値rを、次式[数11]のように求める。
ミニマム3ターム窓に対しては、正弦成分の周波数fと周波数ビンkに対してξ=fL−kとすると、ri(ξ)[dB]は、図7に示すようになる。この図7は、第k番目の周波数ビンの出力に対する第k+i番目の周波数ビンの出力の比を示す。
ここで、ミニマム3ターム窓の場合には、ri(ξ)の逆関数ri −1(r)を、例えば、以下の[数15]式に示すように逆正接関数を用いて近似することができる。図8は、この逆関数を示す図であり、周波数ビンの出力の比に対するξを示す。
1.信号x(t)の短時間フーリエ変換X(k,t) (k=0,1,・・・ )を求める。
2.信号x(t)中に複数の正弦成分があっても、それらの周波数が互いに十分離れ、X(k+i,t) (i=・・・,−2,−1,0,1,2,・・・)に複数の正弦成分が含まれていない場合は、その正弦成分について以下を行う。
(a)正弦成分の周波数fに最も近い中心周波数を持つ周波数ビンをkとし、ξ=fL−kとする。近傍に他の正弦成分がないときには、X(k+i,t)(i=・・・,−2,−1,0,1,2,・・・)はx(t)と同位相になる。
(b)[数11]式を用いて、X(k+i,t)とX(k,t)の振幅の比のdB値rを求める。
(c)[数12]式,[数13]式を用いて周波数fを計算する。
(d)周波数fからW(ξ)を計算し、[数14]式を用いてx(t)を求める。
(e)[数1]式からx(t)の振幅A、位相φを求める。
ここでは、信号x(t)が第1の正弦成分x1(t)と第2の正弦成分x2(t)の和x(t)=x1(t)+x2(t)であり、それぞれの周波数f1とf2が近接している場合を考える。これらの周波数に近い周波数ビンの短時間フーリエ変換の値X(k,t)は、[数16]式となる。
ここで、ξ=f11L−kと置き、−0.5<ξ<0.5とし、x2(t)の周波数がηビン離れ、f2L=f1L+ηとする。
まず、ηが正の場合、つまり、低い周波数の正弦成分をx1(t)とする場合を説明する。
信号x(t)が、ηビン離れた2つの正弦成分x1(t)とx2(t)の和であることから、次の[数17]式,[数18]式で表される。
そこで、[数11]式及び[数9]式から、次の[数21]式が成立する。
ηが負の場合、次の[数25]式及び[数26]式で示される。
ここでは、図9に示すように、周波数fがξ=fL−k=−0.4となる正弦成分と2ビン離れたξ=1.6の正弦成分が存在する場合を想定する。
図10は、この周波数fがξ=fL−k=−0.4とξ=1.6の正弦成分に対するある時刻tにおけるX(k,t)と、その成分X1(k,t)及びX2(k,t)を示す。
この図10に示すように、近接したビンに正弦成分がある場合は、各ビンの出力はそれぞれの成分を合わせたものとなり、同じ位相にはならない。しかしながら、他の正弦成分から離れたビン間では、同じ位相となる。図1の構成では、この同じ位相のビンを検出して、x1(t)やx2(t)の推定を行うものである。
1.x(t)の短時間フーリエ変換X(k,t)(k=0,1,・・・ )を求める。
2.x(t)中に複数の正弦成分があり、近接する信号成分の周波数が近接しすぎず、[数19]式あるいは、[数27]式が成り立つ場合は、以下のように正弦成分の抽出を行う。
(a)[数21]式あるいは[数29]式を用いて、周波数f1の正弦成分に対応するビンから離れたビン間の振幅の比rを計算する。
(b)この比rから、[数22]式あるいは[数30]式を用いて、ξを計算する。
(c)ξから、[数23]式あるいは[数31]式を用いて、周波数f1を計算する。
(d)周波数f1から、[数24]式あるいは[数32]式を用いて、x1(t)を求め、その振幅と位相を求める。
このため、本発明によると、信号中から正弦成分が抽出できるようになり、信号の周波数推定、ピッチ同期分析、波動の到来方向推定など様々な分野で本発明が利用できる。また、本発明は、雑音が重畳している信号から正弦成分を抽出するための基礎となる方法であり、雑音除去、音声強調,音声や楽曲などの信号分離の基礎技術として期待できる。
図11は、本発明の正弦成分抽出装置を音解析に適用した例である。
すなわち、図11に示すように、マイクロフォン1と音入力装置2とを接続する。そして、音入力装置2は、マイクロフォン1から入力された信号による音信号を生成する。音入力装置2により生成された音信号は、音声解析装置3に供給される。
また、音入力装置2により生成された音信号は、正弦成分抽出装置4に供給される。この正弦成分抽出装置4は、図1に示す構成の装置であり、音信号に含まれる正弦成分として、音信号に含まれる基本周波数の正弦成分やその高調波の正弦成分を抽出する。そして、正弦成分抽出装置4で抽出された正弦成分の周波数,振幅,位相の情報が、音声解析装置3に供給される。音声解析装置3は、正弦成分抽出装置4から供給される正弦成分の周波数,振幅,位相の情報に基づいて、入力した音信号の解析を行い、解析結果を出力端子5に出力する。
すなわち、図12に示すように、マイクロフォン1から音入力装置2に入力された信号による音信号を生成し、その生成された音信号が音源分離装置6に供給される。音源分離装置6は、マイクロフォン1に入力された音が、複数の正弦成分からなる音である場合に、その複数の音源成分を分離するものである。
ここで、音入力装置2が生成した音信号が、正弦成分抽出装置4に供給され、この正弦成分抽出装置4が音信号に含まれる正弦成分を抽出し、抽出された正弦成分の周波数,振幅,位相の情報が、音源分離装置6に供給される。音源分離装置6は、正弦成分抽出装置4から供給される正弦成分の周波数,振幅,位相の情報に基づいて、入力信号に含まれるそれぞれの音源からの正弦成分を分離し、個別の出力端子7,8に出力する。例えば入力信号が複数の楽曲の演奏信号であるときには、図12の構成を利用して、1つ1つの楽器ごとの演奏信号を分離することができる。
Claims (8)
- 入力信号に窓関数を乗算してフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部が変換して得た特定の周波数ビンの出力の振幅と位相と、その周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力の振幅と位相から入力信号に含まれる正弦成分を検出する正弦成分検出部と、
前記正弦成分検出部が検出した特定の周波数ビンの出力の位相と、その周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力の位相がほぼ同じである周波数ビンについて、それらの出力の振幅の比を算出する比算出部と、
前記比算出部が算出した比から前記入力信号に含まれる正弦成分の周波数を検出する周波数検出部とを備える
信号中に含まれる正弦成分抽出装置。 - 前記比算出部が算出して抽出した周波数を、正弦成分を定義する式に代入して、正弦成分の振幅又は位相を算出する正弦成分算出部を備えた
請求項1に記載の信号中に含まれる正弦成分抽出装置。 - 前記窓関数は、窓長の時間軸中点を時刻0とする実数値偶関数で窓の両端で値が小さくなる特性を持つ関数であり、前記窓長を有限に設定することで、前記フーリエ変換部が短時間フーリエ変換を行う
請求項1または2に記載の信号中に含まれる正弦成分抽出装置。 - 前記フーリエ変換部が変換して得た周波数ビンの出力の位相として、第1の正弦成分の位相と第2の正弦成分の位相が含まれ、それぞれの正弦成分の位相が別の複数の周波数ビンの出力から検出されたとき、前記比算出部は、それぞれの位相の2つの周波数ビンの出力の比を算出して、入力信号に含まれる複数の正弦成分を検出する
請求項1〜3に記載の信号中に含まれる正弦成分抽出装置。 - 前記比算出部が比を算出する周波数ビンは、前記フーリエ変換部が変換して得た周波数ビンの出力の内の極大を検出した周波数ビンと、その極大を検出した周波数ビンの近傍の周波数ビンで位相が等しいあるいはほぼ等しいビンである
請求項1〜3のいずれかに記載の信号中に含まれる正弦成分抽出装置。 - 前記入力信号は音声信号であり、前記比算出部が算出する周波数は、音声信号に含まれる基本周波数である
請求項1〜5のいずれかに記載の信号中に含まれる正弦成分抽出装置。 - 入力信号に窓関数を乗算してフーリエ変換するフーリエ変換工程と、
前記フーリエ変換工程で変換して得た特定の周波数ビンの出力の振幅と位相と、その周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力の振幅と位相から入力信号に含まれる正弦成分を検出する正弦成分検出工程と、
前記正弦成分検出工程により検出した特定の周波数ビンの出力の位相と、その周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力の位相がほぼ同じである周波数ビンについて、それらの出力の振幅の比を算出する比算出工程と、
前記比算出工程で算出した比から前記入力信号に含まれる正弦成分の周波数を検出する周波数検出工程とを含む
信号中に含まれる正弦成分抽出方法。 - 入力信号に窓関数を乗算してフーリエ変換するフーリエ変換手順と、
前記フーリエ変換手順で変換して得た特定の周波数ビンの出力の振幅と位相と、その周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力の振幅と位相から入力信号に含まれる正弦成分を検出する正弦成分検出手順と、
前記正弦成分検出手順により検出した特定の周波数ビンの出力の位相と、その周波数ビンの近傍の周波数ビンの出力の位相がほぼ同じである周波数ビンについて、それらの出力の振幅の比を算出する比算出手順と、
前記比算出手順で算出した比から前記入力信号に含まれる正弦成分の周波数を検出する周波数検出手順とを、
コンピュータに実装して実行させる
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