JP6391163B2 - 真空圧密工法 - Google Patents

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Description

本発明は、真空圧密により地盤改良を行う真空圧密工法に関する。
軟弱な粘性土地盤に対して気密シートを敷設せずに真空圧密により地盤改良を行う真空圧密工法が公知である。その内の真空圧密ドレーン工法においては、プラスチックボードドレーン材をその一端に気密性キャップと排水ホースを接続し軟弱地盤に打設し、排水ホースの他端側で真空ポンプに接続して真空圧密改良を行うが、気密性キャップを地中1.0〜1.5m程度の深さに設置することで、地表面の粘性土が気密シートの役割を果たす(特許文献1)。
表層に泥炭層がある軟弱地盤を真空圧密ドレーン工法により改良して盛土を築造する場合には次の問題があった。泥炭層は、透水係数が10-5〜10-2m/s程度以上であるため、真空圧密改良の際の気密シール層にはなりえない。気密シール層の透水係数としては,10-7m/s以下の透水係数が必要である(非特許文献1参照)。泥炭層の上に透水係数の大きい砂(10-5〜10-4m/s程度)を1m程度載荷すると、その質量によって泥炭層の圧密沈下が起こり、透水係数が低下する。しかしながら、初期の透水係数が10-3m/s程度以上の泥炭層(含水比は数百%以上)では沈下しても圧密後の透水係数が10-7m/s以下になることはありえない。
以上の理由から、図4のように、表層に泥炭層のある地盤において、泥炭層にセメント等の固化材を混合して固化版5を形成してから、気密性キャップ12と排水ホース13を一端に接続したプラスチックボードドレーン材(以下、「PBD」ともいう。)11を打設し、遮水壁15を打設し、排水ホース13の他端側から負圧を作用させて真空圧密ドレーン工法を実行するようにし、固化版5により透水係数を低下させ、この固化版5を負圧シール層として利用してきた。
特許第4493522号公報
「真空圧密ドレーン工法技術資料」8頁 真空圧密ドレーン工法研究会 2013年3月発行
図4のように気密シール層として固化材からなる固化版5を泥炭層の上に形成する方法には次の課題があった。
(1)固化版5の強度が大きいためPBD11が打設できず、このためPBD11の打設箇所に先行削孔する必要がある。
(2)高い真空圧力を確保するために、この削孔部分を粘土系泥水材料で充填し気密にする必要がある。
(3)地盤改良工事の全体に占める気密シール層の形成のためのコストが大きくなる。
また、改良対象の地盤上に盛土を築造する場合には、気密シール層の形成と盛土の築造とを同時にできれば施工上好ましく、コスト的にも有利である。
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、泥炭層のような透水係数が比較的大きい層が表層に存在する地盤において真空圧密工法を経済的に実行可能な工法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための真空圧密工法は、表層に透水係数が10-5m/s以上の層を有する地盤に対する地盤改良のための真空圧密工法であって、透水係数が1×10-7m/s以下でコーン支持力が400kN/m2以上の低透水土層を前記表層上に形成し、前記低透水土層を真空圧密の際の負圧シール層として利用する。
この真空圧密工法によれば、改良対象の地盤がその表層に透水係数が10-5m/s以上の比較的透水係数の大きい層を有する場合、透水係数が1×10-7m/s以下の低透水土層を表層上に形成し、この低透水土層を真空圧密の際の負圧シール層として利用できるので、従来のように気密シール層として固化材からなる固化版を表層に形成する必要がなく、このため、泥炭層などのような透水係数が比較的大きい層が表層に存在する地盤において真空圧密工法を経済的に実行することができる。また、低透水土層が、400kN/m2以上のコーン支持力を有するので、低透水土層上で重機による各種作業が実施可能である。
上記真空圧密工法において、上端に気密性キャップを有するドレーン材を、前記透水係数が10-5m/s以上の層内に前記気密性キャップが位置するように、前記低透水土層を貫通して前記地盤内へ打設することが好ましい。これにより、低透水土層が真空圧密の際の負圧シール層として確実に機能することができる。
また、前記低透水土層は、地盤改良対象地で調達した砂質土と粘性土とを混合し、前記表層上へ直接撒き出すことで形成することが好ましい。この場合、砂質土と粘性土との混合土について、透水係数1×10-7m/s以下、および、コーン支持力400kN/m2以上の品質を満足することを、予め試験を行うことで確認しておくことが好ましい。
また、前記地盤上に盛土を築造する場合、前記低透水土層を盛土の一部として利用することが好ましい。地盤の表層に形成した低透水土層を盛土の一部として利用するので、真空圧密が終了しても低透水土層が無駄にならずに施工上効率的であり、コスト的にも有利である。
また、前記透水係数が10-5m/s以上の層は、たとえば、改良対象の地盤の表層に存在する泥炭層である。
本発明によれば、泥炭層のような透水係数が比較的大きい層が表層に存在する地盤において真空圧密工法を経済的に実行可能である。
本実施形態による真空圧密ドレーン工法を実行可能なキャップ付きドレーン材を用いた真空圧密システムを概略的に示す図である 本実施形態による真空圧密ドレーン工法による地盤改良の各工程S01〜S08を説明するためのフローチャートである。 本実施形態で利用可能な砂質土、粘性土、および、これらの混合土のJIS A 1204による粒度分布を示すグラフである。 表層に泥炭層がある地盤に真空圧密ドレーン工法を適用する際の従来技術を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態による真空圧密ドレーン工法を実行可能なキャップ付きドレーン材を用いた真空圧密システムを概略的に示す図である。
図1のように、真空圧密システム10は、改良対象の地盤G内の間隙水を吸引するように、地表面S上に形成された低透水土層20から地盤G内に打設された多数本のプラスチックボードドレーン材(PBD)11と、各PBD11の上端に接続された気密性キャップ12と、各気密性キャップ12に接続された排水ホース13と、各PBD11の内部を減圧するために排水ホース13の端部側に接続される真空ポンプPと、を備える。
なお、PBD11の外側には、PBD11を包囲するように鋼矢板や鋼管矢板等からなる遮水壁15が泥炭層の下方の粘土層に達するように地盤Gに打設されている。また、PBD11や気密性キャップ12は、たとえば、特許文献1に開示された構成とすることができる。
図1のように、改良対象の地盤Gには、表層に泥炭層、その下に粘土層、さらにその下に砂層が存在し、粘土層が本実施形態の真空圧密ドレーン工法による改良対象である。
図1の泥炭層の上に低透水土層20がたとえば1m程度の盛土に形成されている。低透水土層20は低透水砂質土からなり、この低透水砂質土は、たとえば、地盤改良対象地で調達した砂質土と粘性土との混合土で作製され、かかる混合土を泥炭層上へ直接撒き出すことで形成できる。かかる低透水砂質土層20は、PBD打設機械を支持可能な400kN/m2以上のコーン支持力(コーン指数qc)、および、1×10-7m/s以下の透水係数を有するので、PBD打設機械の支持力と気密シール層としての低透水性との両方を確保している。
図1の破線で示すように、改良対象の地盤G上に道路建設や構造物設置等のために盛土21を築造する場合、低透水土層(低透水砂質土)20は、盛土21の一部(最下部)として利用することができる。
図1のように、地盤G内に打設されたPBD11の上端の気密性キャップ12は低透水土層20を貫通して泥炭層内に位置する。泥炭層の上部に存在する低透水土層20は、その透水係数が1×10-7m/s以下であるので、図1の真空圧密システム10により真空圧密を実施する際に、気密シール層としての役割を果たすことができる。
なお、泥炭層とは、低湿地に生育した植物が低温で嫌気性の環境下に堆積してできた高有機質土であり、著しく多孔性、高含水比、高圧縮性などの特徴を有し(「土質工学標準用語集」地盤工学会発行)、10-5〜10-2m/s程度以上の比較的大きな透水係数を有する。
次に、本実施形態による真空圧密ドレーン工法による地盤改良の工程について図1,図2を参照して説明する。図2は、本実施形態による真空圧密ドレーン工法による地盤改良の各工程S01〜S08を説明するためのフローチャートである。
まず、地盤改良対象地で砂質土と粘性土を調達し用意する(S01)。これらの砂質土と粘性土を、たとえば3:2の質量比で混合した混合土を作製し、この混合土のJIS A 1204による粒度分布を図3に示す。図3のように、混合土の細粒分含有率(75μm以下の質量比)は約35%であった。
上記混合土に対して締固めた土のコーン指数試験を「締固めた土のコーン指数試験方法」(JIS A 1228)に基づいて実施すると、コーン指数qcは870kN/m2であった。また、この混合土に対して変水位透水試験を「土の透水試験方法」(JIS A 1218)に基づいて実施すると、透水係数kは8.72×10-8m/sであった。上述のように、上記混合土は、コーン指数qc(コーン支持力)および透水係数kとも低透水砂質土としての要求品質を満足しているので、真空圧密ドレーン工法における負圧シール層として使用可能であることが判明した。
次に、砂質土と粘性土を3:2の質量比で2層に積み重ね(S02)、積み重ねられた砂質土と粘性土とをバックホウ等により混合する(S03)。
この混合土を図1の表層の泥炭層上に湿地ブルドーザにより1m厚で撒き出すことで、表層に低透水砂質土層20を形成する(S04)。
次に、低透水砂質土層20の上にPBD打設機を載せ、図1のように低透水砂質土層20および泥炭層を貫通してPBD11を地盤内の粘性土層へと打設する(S05)。このとき、PBD11は、その上端の気密性キャップ12が泥炭層に位置するように打設される。このように多数のPBD11を最小の平面配置がたとえば1.0mの正方形となるようにして打設する。
次に、排水ホース13を、集水管(図示省略)等を介して真空ポンプPに接続等することで、図1の真空圧密システム10を構築する(S06)。
次に、真空ポンプPを作動させ、PBD11を通して地盤内に負圧を作用させることで、地盤内の間隙水を外部へと排水しながら、地盤Gに対し負圧による圧力載荷を所定期間実施する(S07)。
次に、図1の破線で示すように地盤Gに盛土21を築造する(S08)。盛土21は、低透水砂質土層20の上に築造され、低透水砂質土層20が盛土21の一部となる。
以上のように、本実施形態による真空圧密ドレーン工法によれば、改良対象の地盤がその表層に透水係数が10-5m/s以上の比較的透水係数の大きい泥炭層を有する場合、透水係数が1×10-7m/s以下の低透水砂質土層20を表層上に形成し、この低透水砂質土層20を真空圧密の際の負圧シール層として利用するので、従来の図4のように気密シール層として固化材からなる固化版を表層に形成する必要がなく、このため、固化版への削孔、および、その削孔部分への材料充填が不要となる。このような図4の従来の気密シール層の形成コストよりも本実施形態の低透水砂質土層20の形成コストの方が低廉であるので、泥炭層などのような透水係数が比較的大きい層が表層に存在する地盤において真空圧密ドレーン工法を経済的に実行することができる。また、低透水砂質土層20が、400kN/m2以上のコーン支持力(コーン指数)を有するので、低透水砂質土層20上で重機によるPBD打設作業等の実施が可能である。
また、図1のように、PBD11を、泥炭層内に気密性キャップ12が位置するように低透水砂質土層20を貫通して地盤G内へ打設することで、低透水砂質土層20が真空圧密の際の負圧シール層として確実に機能することができる。
また、図1の破線のように、地盤G上に盛土21を築造する場合、低透水砂質土層20を盛土21の一部としてその最下部で利用できるので、真空圧密が終了しても低透水砂質土層20が無駄にならずに施工上効率的であり、コスト的にも有利である。
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、図1の低透水砂質土層20の形成のための混合土の作製作業は、地盤改良対象地近傍で実施してよいが、これに限定されず、離れた場所で実施してから運搬するようにしてもよい。
また、図2の盛土築造工程S08は、負圧作用工程S07の開始とほぼ同時に開始するが、その途中から開始してもよい。盛土築造に際し負圧作用のない場合は、盛土を5cm/日程度の上昇速度で施工するのが一般的であるが、負圧作用を併用する場合は、盛土は盛土下部の地盤を外側に押し出すように変形させる一方、負圧作用は盛土とは反対に内側に変形させることから、盛土の上昇速度を20〜30cm/日に増加させることができる。このため、負圧作用を併用することで盛土築造の工期の大幅な短縮を図ることができる。
本発明によれば、真空圧密工法により地盤改良をする対象地盤がその表層に泥炭層のような比較的透水係数の大きい層を有する場合、従来よりも気密シール層形成のコストダウンを図ることができ、このため、真空圧密工法による地盤改良を経済的に実行することができる。
10 真空圧密システム
11 プラスチックボードドレーン材、PBD
12 気密性キャップ
13 排水ホース
15 遮水壁
20 低透水土層、低透水砂質土層
21 盛土
G 地盤
P 真空ポンプ

Claims (5)

  1. 表層に透水係数が10-5m/s以上の層を有する地盤に対する地盤改良のための真空圧密工法であって、
    透水係数が1×10-7m/s以下でコーン支持力が400kN/m2以上の低透水土層を前記表層上に形成し、
    前記低透水土層を真空圧密の際の負圧シール層として利用する真空圧密工法。
  2. 上端に気密性キャップを有するドレーン材を、前記透水係数が10-5m/s以上の層内に前記気密性キャップが位置するように、前記低透水土層を貫通して前記地盤内へ打設する請求項1に記載の真空圧密工法。
  3. 前記低透水土層は、地盤改良対象地で調達した砂質土と粘性土とを混合し、前記表層上へ直接撒き出すことで形成する請求項1または2に記載の真空圧密工法。
  4. 前記地盤上に盛土を築造する場合、前記低透水土層を盛土の一部として利用する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空圧密工法。
  5. 前記透水係数が10-5m/s以上の層は、泥炭層である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空圧密工法。
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