JP6362332B2 - ニューロフィードバックを用いた無意識学習法 - Google Patents
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そこで、本願の発明者による研究において、MMNの振幅を円の半径に対応させ、この半径を大きくするように努力させたところ、聴かせていた二つの音の識別率が向上することが、明らかになった。この研究で重要な点は、被験者はこの円の半径が何に対応しているか知らないにもかかわらず、この円の大きさを大きくすることができ、さらに、識別率が向上した点である。
一般に、ピッチの違いを学習する場合、オドボール刺激なる様式に従って、音のシーケンスの中に、カテゴリー1の音(例えばやや低い音)を多く入れ、たまにカテゴリー2の音(例えばやや高い音)を入れるという音響刺激を被験者に聴かせる(図2)。このとき、カテゴリー1とカテゴリー2の音の違いが知覚できた場合、カテゴリー2の音を聞いたとき(つまり、割合的に少しの方の音を聞いたとき)にMMN(mismatch negativity)という脳波の波形が観測される。このMMNの振幅は、カテゴリー間の違いがより明確に知覚できればできるほど、より振幅が大きくなることが知られている。それ故、被験者にこのMMNの振幅の値をNFBすることで、この二つのカテゴリー間の音の違いをどれぐらいしっかりと知覚できているかが被験者に伝わる。被験者は、このNFBに基づき、この音の知覚の仕方を学習していくことができる。しかし、この開示では、NFBが正解もしくは不正解の二択から連続量に変化しただけであり、学習する対象に意識を向けることなく、ゲームなど他のことをしている間に自然と学習が進んでいるという状態には至っていない。
上記fMRIは、大型の装置であり、通常の教育現場等で利用することは困難である。また、目標とする脳活動パターンが既知でないとこの手法を利用できないため、すでにある程度弁別可能な状態からその処理能力を強化するということに利用できるが、そもそも弁別が不可能な課題について学習することができないという問題点もある。
本発明の場合、上記課題提示手段はオドボール法で提示するものであり、また、上記脳波信号はMMN(ミスマッチネガティビティ)信号であり、上記脳波信号検出手段はMMN信号検出手段であり、
(1) 上記の課題について説明を受けた第1被験者に上記学習装置を用いて、選別前の課題信号について学習させ、上記学習により上記課題について上記MMN信号が所定の閾値を超えた場合に上記課題を残すことで、第2被験者の学習に用いる課題である学習課題を選別するステップと、
(2) 選別された上記学習課題または上記MMN信号の基となる刺激を含む上記学習課題について、第1被験者とは異なる第2被験者に、上記学習課題についての説明なしに上記課題提示手段を用いてオドボール法で繰り返し提示し、同時に、上記MMN信号検出手段を用いて検出したMMN信号の強度が大きくなるように上記第2被験者を促すステップと、
(3) 上記学習課題または上記MMN信号の基となる刺激を含む上記学習課題における上記弁別対象を個別に上記第2被験者に提示して、上記学習の成果を確認するステップと、
を、含むものである。
複数の被験者が同じ学習課題に取り組む場合には、例えば、上記(1)のステップは共通に用いることができ、あるいは既知の場合は省略することができ、上記(2)のステップは、各被験者について繰り返し行われるものであり、上記(3)のステップは、上記(2)のステップを複数回経験した後実施することができる。上記(3)のステップの後に上記(2)のステップに戻ることもあり得る。
本発明は、もともと被験者が弁別不可能であった弁別課題を、被験者自身が弁別課題を行っていることを知らないという無意識的状態にもかかわらず弁別可能とする。
これにより、音としては単に聞き流しているだけの状態で、かつ、ニューロフィードバックがどのような意味を持っているかもわからないにも関わらず、学習が進むという効果が得られる。
特許文献1の開示では、被験者は、基本的に音響刺激に注意をして、ちゃんと違いを識別しようと努力した上で、ニューロフィードバックを受ける。
しかし、本発明では、被験者には、特に音に意識を向ける必要は無いという指示をした上で、MMNの大きさに対応した円の大きさを大きくするように努力するということをさせた。ちなみに、被験者は円の大きさが何に対応しているかを知らない。非特許文献2とは異なり、MMNを利用していることで事前に被験者の脳活動パターンを調べる必要がない。
上記のNFBの下、被験者は1000Hzと1008Hzとを意識せずに識別すべく訓練された。この訓練では、80%が1000Hzの刺激で残りが1008Hzであり、誘発されるMMN応答を強めるようにした。音響刺激は、0.5秒中でランダムに与えられた。図2(a)に実験の時系列を示す。MMN信号強度は最新の20音データについて算出する。その内容は、(標準刺激:16試行、偏奇刺激:4試行)である。算出したデータは、緑色円板で視覚的にフィードバックする。その円板の径がMMN信号強度に対応する。被験者に対する指示は、「ヘッドフォンからの音を無視して、ディスプレイ上の緑色円板をできるだけ大きくすること」である。
(1)まず、既存手法の場合は、以下のようになっている。
1−1:被験者に脳波計をつける。
1−2:被験者はplayやprayといった単語を聞いて、どちらかを区別できるように学習を行う。
1−3:これを行っているときのMMNをフィードバックすることで、たとえ間違っていても、脳が正しく判断し始めているかどうかを被験者に伝える。
1−3−1:このフィードバックのみではなく、MMNの大きさに従って刺激を変えてもよい(たとえば、単語の速度を変えるとか、音の大きさを変えて、MMNが小さい場合は聞き取りやすいものにする等)。
1−3−2:被験者は、フィードバックされたものがMMNに対応していることを知っている。
1−4:被験者は言語学習をしていることがわかっているため、訓練と評価は同時(訓練をしたら、その評価がすぐにフィードバックされる。)
(2)これに対して、本発明の場合は、以下の様にする。
2−1:被験者に脳波計をつける。
2−2:被験者はplayやprayといった単語を聞きながら、提示されているMMNの大きさを反映した円を大きくする。
2−2−1:聞いている単語に関して、学習しようとする必要はない。
2−2−2:円の大きさがMMNに対応していることを被験者に伝える必要はない。
2−2−3:提示されるものは円である必要はなく、たとえばゲームのパラメータに対応させていてもよい。
2−3:何度か訓練をすることにより、MMNを反映した円を意図的に大きくできるようになる。
2−4:訓練をした後に、LとRの違いの聞き取り評価をする。
最後の訓練日のBADテストの後で、被験者に円板サイズがなぜ変化したかを質問したところ、その誰の返答も、実験における音響刺激に関するものではなかった。これは、われわれの実験の目的を被験者が知らなかったことを示している。本発明のNFB法を用いた無意識学習法では、学習者に音響刺激に注意を払う事を求めず、学習者は学習の事実も知る必要が無く、無意識的に識別力を改善できる。
上記の実施例では、周波数の接近した単純な2つの音によるオドボール課題について例であったが、被験者にとって識別が困難な2つの単語について識別訓練を行う場合は、異なるが識別が困難な点の単語の発音開始からの位置を予め見出しておき、MMNの検出は、その時点の近傍で行うことによって、フィードバック信号を得ることができ、本発明を適用することができる。
また、本発明を、臭覚について行う場合は、被験者を無臭の風のある環境で、被験者に臭気成分を含むガスをパルス上に噴出させることによって、オドボール課題を実現することができ、本発明を適用することができる。
2 刺激提示装置
3 イヤホン
4 脳波計
5 電極
6 信号処理装置
7 フィードバック装置
Claims (6)
- 被験者に2つの弁別対象間の弁別を課題とする課題信号を提示する課題提示手段と、該被験者の脳波信号を検出する脳波信号検出手段と、検出した脳波信号の強度情報を含み、該被験者に帰還する帰還信号を生成する信号処理手段と、生成された帰還信号を該被験者に提示するための帰還信号提示手段と、を用いた学習装置を用いて該被験者の脳波の状態を示す情報を該被験者に帰還することで、該被験者の情報処理能力を改善する学習方法であって、
上記課題提示手段はオドボール法で提示するものであり、また、上記脳波信号はMMN(ミスマッチネガティビティ)信号であり、上記脳波信号検出手段はMMN信号検出手段であり、
(1) 上記の課題について第1被験者に上記学習装置を用いて、選別前の課題信号について学習させ、上記学習により上記課題について上記MMN信号が所定の閾値を超えた場合に上記課題を残すことで、第2被験者の学習に用いる課題である学習課題を選別するステップと、
(2) 選別された上記学習課題または上記MMN信号の基となる刺激を含む上記学習課題について、第1被験者とは異なる第2被験者に、上記学習課題または上記MMN信号の基となる刺激を含む上記学習課題についての説明なしに上記課題提示手段を用いてオドボール法で繰り返し提示し、同時に、上記MMN信号検出手段を用いて検出したMMN信号の強度が大きくなるように上記第2被験者を促すステップと、
(3) 上記学習課題または上記MMN信号の基となる刺激を含む上記学習課題における上記弁別対象を個別に上記第2被験者に提示して、上記学習の成果を確認するステップと、
を、含むことを特徴とするニューロフィードバックを用いた無意識学習法。 - 請求項1における(2)のステップにおいて、上記学習課題または上記MMN信号の基となる刺激を含む上記学習課題についてオドボール法で繰り返し提示する際に、上記弁別対象間の入替えを行って提示することを含むことを特徴とするニューロフィードバックを用いた無意識学習法。
- 上記帰還信号提示手段に提示する帰還信号は、MMN信号強度の累積値用いた帰還信号であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載のニューロフィードバックを用いた無意識学習法。
- 上記課題信号を上記第2被験者にビデオゲームを介して提示し、上記帰還信号を上記第2被験者に提示する上記ビデオゲームの進行を制御する入力信号として用いることで上記MMN信号の強度が大きくなるように上記第2被験者を促すものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のニューロフィードバックを用いた無意識学習法。
- 上記課題信号は音響信号であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のニューロフィードバックを用いた無意識学習法。
- 上記課題信号は映像信号であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のニューロフィードバックを用いた無意識学習法。
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