発明の詳細な説明
〔相互参照〕
本出願は、2012年9月27日に出願された米国特許出願第13/629,321号の国際出願である。上記出願は2012年7月16日に出願された米国特許出願第13/550,106号の一部継続出願である。上記出願は、2009年12月29日に出願された米国特許出願第12/649,110号(現在米国特許第8,232,073号(2012年7月31日公開))の継続出願である。上記出願は2009年1月2日に出願された米国特許仮出願第61/142,291号、2009年3月27日に出願された米国特許仮出願第61/164,365号、2009年8月28日に出願された米国特許仮出願第61/238,079号の利益を主張する。米国特許出願第13/629,321号は2011年11月18日に出願された米国特許仮出願第61/561,698号の利益も主張する。これらの全てはその全体が本書に参照として組み込まれている。
〔発明の背景〕
ヒトの多くの疾患はグリコシル化の変化によって引き起こされ、あるいは関連している。これらの変化を疾患のバイオマーカーとして使用するため、解析的な手法が変化の定量に使用される。公開されている手法において、未変化の、または一部が未変化のグリカンを分解し、定量するために、抗体、クロマトグラフィーおよび/または質量スペクトルの技術が使用される。これらの手法は、生物学的サンプル内における存在し得るグリカン構造の複雑さおよびその数に起因して、困難なものである。ある1つの疾患の状態において、数千種類もの異なる新規な構造のグリカンが存在し得る。しかしながら、各々それら自身は疾患の弱いマーカーである。
〔発明の概要〕
本書で説明されるのは、グリカン分解酵素を用いてバイオマーカーの集団へと変性される、グリカンの集団である。いくつかの実施形態において、本書で説明されるのは、グリコサミノグリカンリアーゼを用いてオリゴ糖の集団へと変性される、グリコサミノグリカンの集団である。本書でさらに説明されるのは、バイオマーカーの集団についての重要な情報、バイオマーカーの集団、およびバイオマーカーの集団を提供した生物学的サンプルを提供するための、バイオマーカー(すなわち単糖等の非還元末端グリカン残存化合物)の集団をキャラクタリゼーションするための分析機器の使用である。いくつかの実施形態において、本書で説明されるのは、オリゴ糖の集団、グリコサミノグリカンの集団、およびグリコサミノグリカンの集団を提供した生物学的サンプルに関する重要な情報を提供するための、オリゴ糖の集団をキャラクタリゼーションするための分析機器の使用である。
ある実施形態において、本書で提供されるのは、生物学的サンプルにおけるグリカンの蓄積ならびに/または異常なグリカンの生合成および/もしくは分解を検出する方法であって、
a.グリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性し、グリカンの非還元末端からグリカン残存化合物を遊離させること;
b.機能的なグリカン分解酵素によって遊離した上記グリカン残存化合物の量を、分析機器を用いて測定すること、
を含む方法である。
いくつかの実施形態において、本書で説明される方法は、個体を、異常なグリカン生合成、分解または蓄積に関連する疾患または異常を有すると診断する方法であって、
a.1つ以上の非還元末端グリカン残存化合物を含むバイオマーカーであって、上記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、上記疾患または異常を有していない個体と比較して、上記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーを生成すること、および
b.生成した上記バイオマーカーの存在を検出するために、および/または、生成した上記バイオマーカーの量を測定するために分析機器を使用し、上記バイオマーカーの存在または上記バイオマーカーの集団の測定を表示または記録すること、
を含む方法を含んでいる。
いくつかの実施形態において、上記バイオマーカーの存在および/または量の測定は、上記疾患または異常の存在、同定および/または重症度の決定に利用される。
ある実施形態において、本書で提供されるのは、個体を、異常なグリカン生合成、分解または蓄積に関連する疾患または異常を有すると診断する方法であって、
a.グリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性して、グリカンの非還元末端からグリカン残存化合物を遊離させること;
b.機能的なグリカン分解酵素によって遊離した上記グリカン残存化合物の量を、分析機器を用いて測定すること;および
c.遊離したグリカン残基の量が異常であるか否かを決定すること、
を含む方法である。
いくつかの実施形態において、本書で提供されるのは、グリカンの異常な分解、生合成、および/または蓄積に関連する障害の治療をモニターする方法であって、
a.グリカンの異常な分解、生合成、および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤を、それを必要とする個体に投与した後、分析機器を用いて、変性させた生物学的サンプルに存在する非還元末端グリカン残存化合物を含むバイオマーカーであって、上記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、上記疾患または異常を有していない個体と比較して、上記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーの集団の量を測定すること、および
b.上記グリカンの異常な分解、生合成、および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤の投与の前のバイオマーカーの量または増加率と比較して、緩やかに増加または減少したか否かを決定すること、
を含む方法である。
いくつかの実施形態において、上記グリカンの異常な分解、生合成、および/または蓄積に関連する障害は、リソソーム蓄積症、癌性疾患、炎症性疾患、感染症、中枢神経系疾患、または心血管疾患である。いくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素は、グリコシダーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、デアセチラーゼ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素は、エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼから選択されるグリコシダーゼである。いくつかの実施形態において、上記グリカン残存化合物は、単糖、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性させることは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性させることを含む。いくつかの実施形態において、上記グリカンは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて、同時に、順番に、またはそれらを組み合わせて処理される。いくつかの実施形態において、非還元末端グリカン残存化合物の集団の量を測定する前に、非還元末端グリカン残存化合物は検出可能なラベルで標識される。いくつかの実施形態において、上記検出可能なラベルは、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色団ラベル、またはアフィニティラベルである。いくつかの実施形態において、遊離したグリカンの量は、UV−Vis分光法、赤外線分光法、質量分析法、またはそれらの組み合わせを用いて測定される。
ある実施形態において、本書で提供されるのは、個体を、異常なグリカンの生合成、分解または蓄積に関連する疾患または異常を有すると診断する方法であって、
a.1つ以上の非還元末端グリカン残存化合物を含むバイオマーカーであって、上記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、上記疾患または異常を有していない個体と比較して、上記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーを生成すること、および
b.生成した上記バイオマーカーの存在を検出するために、および/または、生成した上記バイオマーカーの量を測定するために分析機器を使用し、上記バイオマーカーの存在または上記バイオマーカーの集団の測定を表示または記録することを含んでおり;
上記バイオマーカーの存在および/またはその量の測定は、上記疾患または異常の存在、同定、および/または重症度の決定に利用される、方法である。
いくつかの実施形態において、上記疾患または障害は異常に機能するグリカン分解酵素によって引き起こされ、上記異常に機能するグリカン分解酵素および上記正常に機能するグリカン分解酵素は同じタイプである。いくつかの実施形態において、上記異常に機能するグリカン分解酵素は、異常に低い量で存在すること、不適切に機能すること、またはそれらの組み合わせの結果として異常に機能する。いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積は、異常な量のグリカンの蓄積を含む。いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積は、異常な量の正常なグリカンの蓄積を含む。いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積は、異常な量の異常なグリカンの蓄積を含む。
いくつかの実施形態において、上記正常に機能するグリカン分解酵素は、グリコシダーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、デアセチラーゼまたはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、上記正常に機能するグリカン分解酵素は、エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼから選択されるグリコシダーゼである。いくつかの実施形態において、上記グリコシダーゼは、ガラクトシダーゼおよびグルクロニダーゼからなる群より選択されるエキソグリコシダーゼである。
いくつかの実施形態において、上記グリカン残存化合物は単糖である。いくつかの実施形態において、上記グリカン残存化合物は硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルはそのグリカンを変性させる前に精製される。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルの精製プロセスは、含有する単糖の除去、含有する硫酸塩の除去、含有するリン酸塩の除去、含有する酢酸塩の除去、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性させることは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性させることを含む。いくつかの実施形態において、上記グリカンは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて、同時に、順番に、またはそれらを組み合わせて処理される。
いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積に関連する障害は、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IVA、MPS VI、またはファブリー病である。いくつかの実施形態において、上記遊離したグリカン残基の量が異常であるか否かを決定することは、検出可能なラベルで上記グリカン残基を標識すること、および標識されたグリカン残基の量を分析機器を用いて測定することを含む。いくつかの実施形態において、上記検出可能なラベルは、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色団ラベル、またはアフィニティラベルである。いくつかの実施形態において、遊離したグリカンの量は、UV−Vis分光法、赤外線分光法、質量分光法、またはそれらの組み合わせを用いて測定される。
ある実施形態において、本書で提供されるのは、個体を、疾患または異常(例えば、異常なグリカンの生合成、分解または蓄積に関連する)を有すると診断する方法であって、
a.グリカン残存化合物を含む第1のバイオマーカーであって、上記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、上記疾患または異常を有していない個体と比較して、上記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーを生成すること、
b.グリカン残存化合物を含む第2のバイオマーカーであって、ステップ(a)において規定されるものと同じまたは異なる消化ステップにおいて、上記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、上記疾患または異常を有していない個体と比較して、上記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーを生成すること、
c.生成した上記第1のバイオマーカーおよび上記第2のバイオマーカーの存在を検出するために、および/または、生成した上記第1のバイオマーカーおよび上記第2のバイオマーカーの量を測定するために分析機器を使用し、上記第1のバイオマーカーおよび上記第2のバイオマーカーの存在または上記第1のバイオマーカーおよび上記第2のバイオマーカーの集団の測定を表示または記録すること、および
d.生物学的サンプル中の上記第1のバイオマーカーおよび上記第2のバイオマーカーの量をモニターする、および/または比較すること、
を含んでおり、
上記第1のバイオマーカーおよび上記第2のバイオマーカーの存在および/または量の測定が、上記疾患または異常の存在、同定および/または重症度の決定に利用される、方法である。
いくつかの実施形態において、上記第1のバイオマーカーは、非還元末端グリカン残存化合物である。いくつかの実施形態において、上記疾患または障害は、異常に機能するグリカン分解酵素によって引き起こされ、上記異常に機能するグリカン分解酵素および上記正常に機能するグリカン消化酵素は同じタイプである。いくつかの実施形態において、上記非還元末端グリカン残存化合物は単糖である。いくつかの実施形態において、上記非還元末端グリカン残存化合物は単糖ではない。
いくつかの実施形態において、上記第2のバイオマーカーは、上記第1の非還元末端グリカン残存化合物のバイオマーカーが生成されるものと同一のグリカンの還元末端から誘導または生成される。いくつかの実施形態において、上記第2のバイオマーカーは、上記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーが生成されたものと同一のグリカンの内部オリゴ糖構造から誘導または生成される。いくつかの実施形態において、上記疾患または障害は、上記個体におけるグリカン分解酵素の異常な機能によって引き起こされ、上記第2のバイオマーカーは、上記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーを、上記個体内において異常に機能するグリカン分解酵素を用いて処理することによって生成され得る。
いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの生合成、分解または蓄積に関連する疾患または異常は、リソソーム蓄積症である。いくつかの実施形態において、上記リソソーム蓄積症はムコ多糖症である。いくつかの実施形態において、上記ムコ多糖症はMPS I、II、IIIA、IIIB、IIIC、IIID、IVA、IVB、VI、またはVIIである。いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの生合成、分解、または蓄積に関連する疾患または異常は、異染性白質ジストロフィーまたはクラッベ病である。いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの生合成、分解、または蓄積に関連する疾患または異常は、ガングリオシドーシスである。いくつかの実施形態において、上記ガングリオシドーシスは、テイ−サックス病、サンドホフ病、ABバリアント、またはGM−1ガングリオシドーシスである。
いくつかの実施形態において、上記第2のバイオマーカーとの組み合わせにおける、または関連における、上記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーの存在および/または測定は、グリカンの異常な生合成に関連する障害の治療をモニターするために使用される。いくつかの実施形態において、上記第2のバイオマーカーとの組み合わせにおける、または関連における、上記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーの存在および/または測定は、グリカンの異常な分解または蓄積に関連する障害の治療をモニターするために使用される。いくつかの実施形態において、上記治療は酵素補充療法である。いくつかの実施形態において、上記非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーが減少するとともに、上記第2のバイオマーカーが増加しないことは、グリカンの異常な分解または蓄積に関連する障害の治療に対するポジティブな反応を示唆する。
いくつかの例において、本書で説明される方法は、例えばUS 2010/0184013号(その全体が本書に参照として組み込まれる)に規定される、非還元末端グリカンバイオマーカーである第1のバイオマーカーの利用が含まれる。ある実施形態において、上記第1のバイオマーカーはC4〜C5の非還元末端飽和オリゴ糖である。いくつかの実施形態において、上記第1のバイオマーカーの非還元末端残基(例えば、1つ以上の二糖および/または1つ以上の三糖)は炭素−炭素の不飽和を含まない。
いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積またはそれに関連する障害は、異常に機能するグリカン分解酵素によって引き起こされ、上記異常に機能するグリカン分解酵素およびグリカン分解酵素は同一のタイプ(例えば、変性のプロセスにおいて利用されるのは機能するグリカン分解酵素であるが、異常に機能する酵素は、例えば欠失、挿入、置換、またはその他の酵素の配列への変異に起因して利用されない)である。ある実施形態において、上記異常に機能するグリカンは、異常に低い量で存在すること、不適切に機能すること、またはそれらの組み合わせの結果として異常に機能する。いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積は、異常な量のグリカンの蓄積を含む。ある実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積は、異常な量の正常なグリカンの蓄積を含む。いくつかの実施形態において、上記異常なグリカンの蓄積は、異常な量の異常なグリカンの蓄積を含む。
ある実施形態において、上記バイオマーカーは、元の生物学的サンプルには存在しない。いくつかの実施形態において、上記バイオマーカーは、含有するグリカンの集団を単離した後の生物学的サンプルには存在しない(例えば、本書に記載されたプロセスによるグリカンの変性の前)。
ある実施形態において、上記正常に機能するグリカン分解酵素は、グリコシダーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、デアセチラーゼ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、上記正常に機能するグリカン分解酵素は、エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼから選択されるグリコシダーゼである。ある実施形態において、上記グリコシダーゼは、ガラクトシダーゼおよびグルクロニダーゼからなる群より選択されるエキソグリコシダーゼである。いくつかの実施形態において、上記生成されたバイオマーカーはグリカン残存化合物である。いくつかの実施形態において、上記グリカン残存化合物は、単糖である。ある実施形態において、上記グリカン残存化合物は硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、またはそれらの組み合わせである。ある実施形態において、上記グリカン残存化合物は、2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、500g/mol未満、400g/mol未満、300g/mol未満、260g/mol未満、200g/mol未満、または100g/mol未満などの分子量を有する(例えば、本書に記載されたプロセスの含まれ得るいずれかの検出可能なラベルが付されるより前に)。
いくつかの実施形態において、本書に記載された任意のプロセスはさらに、含有するグリカンを変性させる前に、生物学的サンプルを精製することを含む。いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルの精製プロセスは、含有する単糖の除去、含有する硫酸塩の除去、含有するリン酸塩の除去、含有する酢酸塩の除去、またはそれらの組み合わせを含む。
ある実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性することは、正常に機能する複数のグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性することを含む。いくつかの実施形態において、上記グリカンは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて、同時に、順番に、またはそれらを組み合わせて処理される。
具体的な実施形態において、異常なグリカンの蓄積に関連する障害は表1〜4に記載のいずれかの障害(例えば、MPS1)であり、上記正常に機能するグリカン分解酵素は表1〜4に記載のいずれかの酵素(例えば、L−イズロニダーゼ)である。
いくつかの実施形態において、上記遊離したグリカン残基の量が異常であるか否かを決定することは、検出可能なラベルで上記グリカン残基を標識すること、および標識されたグリカン残基の量を分析機器を用いて測定することを含む。ある実施形態において、上記検出可能なラベルは、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色団ラベル、またはアフィニティラベルである。いくつかの実施形態において、遊離したグリカンの量は、UV−Vis分光法、赤外線分光法、質量分光法、またはそれらの組み合わせを用いて測定される。
いくつかの実施形態において、本書で提供されるのは、グリカンの異常な分解、生合成、および/または蓄積に関連する障害の治療をモニターする方法であって、
a.グリカンの異常な分解、生合成、および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤を、それを必要とする個体に対して投与した後に、上記個体から採取した生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つの正常に機能するグリカン分解酵素を用いて処理し、非還元末端グリカン残存化合物を遊離することによって調製された、変性した生物学的サンプルに存在する非還元末端グリカン残存化合物の集団の量を測定するために分析機器を用いること;
b.遊離した非還元末端グリカン残基の量が、上記グリカンの異常な分解、生合成、および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤の投与の前の量または増加率と比較して、緩やかに増加または減少したか否かを決定すること、
を含む方法である。
いくつかの実施形態において、上記グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害は、リソソーム蓄積症、癌性疾患、または感染症である。ある実施形態において、上記正常に機能するグリカン分解酵素は、グリコシダーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、デアセチラーゼ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、上記正常に機能するグリカン分解酵素は、エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼから選択されるグリコシダーゼである。ある実施形態において、上記グリカン残存化合物は、単糖、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性することは、正常に機能する複数のグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性することを含む。ある実施形態において、上記グリカンは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて、同時に、順番に、またはそれらを組み合わせて処理される。
いくつかの実施形態において、非還元末端グリカン残存化合物の集団の量を測定する前に、非還元末端グリカン残存化合物は検出可能なラベルで標識される。ある実施形態において、上記検出可能なラベルは、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色団ラベル、またはアフィニティラベルである。いくつかの実施形態において、遊離したグリカンの量は、UV−Vis分光法、赤外線分光法、質量分析法、またはそれらの組み合わせを用いて測定される。
〔図の簡単な説明〕
本発明の新規な特徴は、特許請求の範囲における詳細によって規定される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用されている例証的な実施形態を規定する以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
図1は、本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供していない正常な生物学的サンプルに存在する化合物を説明する。
図2は、本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供した正常な生物学的サンプルに存在する化合物を説明する。
図3は、本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供していない、異常なグリカンの蓄積に関連する障害に罹患している個体の生物学的サンプルに存在する化合物を説明する。
図4は、本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供した、異常なグリカンの蓄積に関連する障害に罹患している個体の生物学的サンプルに存在する化合物を説明する。
図5は、非還元末端および内部の二糖を決定するためのスキームを説明する。ヘパランリアーゼによるヘパラン硫酸オリゴ糖の消去的解重合により、不飽和ウロン酸部分(点線の丸)を含む内部二糖残基(破線の矢印)が放出される。その末端位置に起因して、鎖の左端から遊離した非還元末端は記載のとおりΔ4,5−二重結合を欠き、対応する内部の二糖よりも18amu大きい。アニリン([12C6]An)による還元的アミノ化は、LC/MSによる種々の二糖の分離を容易にし、括弧内に示された分子イオンについてm/z値を得る。グリカン構造は、図43の下部に定義された幾何学記号によって図式的に表されている。グリコサミノグリカン由来の構成オリゴ糖の表示を単純にするために、我々は二糖構造コード(DSC)15を用いる。DSCにおいて、ウロン酸はUで示され、G、IまたはDはそれぞれ、不特定のヘキスロン酸、D−グルクロン酸、L−イズロン酸またはΔ4,5−不飽和ウロン酸を示す。ヘキソサミンは、上のケースではグルコサミンを示し、下のケースではガラクトサミンを示し、また、N−置換基は、水素、酢酸基、硫酸基または他のいくつかの置換基についてそれぞれ、H、A、SまたはRである。エステル結合した硫酸基の存在および位置は、硫酸基が位置する炭素原子の番号によって、または存在しない場合には0によって表されている。例えば、I2S6は、2−スルホイズロン酸−N−スルホグルコサミン−6−スルフェートで構成される二糖を指し、D2S6は同じ二糖であるがΔ4,5−二重結合をウロン酸内に有するものを指す。
図6は、MPSの非還元末端炭水化物を説明する。各MPSサブクラスについて欠損している酵素は、MPS I、II、IIIA、IIIB、IIIC、IIID、VIおよびVIIに特徴的な遊離したNRE炭水化物と共に幾何学記号を用いて表示されている。マトリックスは、各MPSサブクラスについて理論的に可能な全てのNRE炭水化物を、DSCを用いて示している。黒い背景と白いフォントのボックスは、検出され、その同一性がコクロマトグラフィーおよびスタンダードと同一のマススペクトルならびにエキソグリコシダーゼまたはプロピオン酸無水物に対する感受性によって確かめられた構造を表す。灰色の背景のボックス中に示される推測の構造は、液体クロマトグラフィー/マススペクトルデータから示唆される(すなわち、それらのサイズならびに硫酸基および酢酸基の含有量が提案された構造と合致する)。白い背景のボックス中の構造は、理論的に可能であるが、観察されていない。遊離の分子イオンおよびイオン対試薬ジブチルアミン(DBA)を用いて形成された付加イオンの両方についてのm/z値が記載されている。種々に修飾された糖についての1文字名称は図5に記載されている。グリカンの構造は、図面の下部に定義された幾何学記号によって図式的に表されている。
図7は、MPS Iおよびサンフィリッポ症候群のヘパラン硫酸において見出された非還元末端の分析を説明する。(a)MPS Iの繊維芽細胞(GM01391)から解重合されたヘパラン硫酸を、[12C6]アニリンでタグ付けし、スタンダードの[13C6]アニリン標識した不飽和二糖およびI0S0と混合した。サンプルをLC/MSによって分析し、全ての既知のNREおよび内部の二糖について抽出したイオン流を記録した:ピーク1、D0A0;ピーク2、D0S0;ピーク3、D0A6;ピーク4、D0S6;ピーク5、D2A0;ピーク6、D2S0;およびピーク7、D2S6。星印は[12C6]アニリンタグ付きNRE([13C6]アニリン標識したI0S0スタンダード(挿入図)と共に移動した)を表す。(b)パネルAに示されるI0S0のピークについてのマススペクトル。(c)MPS IIIA(GM00643)、(d)MPS IIIB(GM01426)、(e)MPS IIIC(GM05157)および(f)MPS IIID(GM17495)の繊維芽細胞から精製されたGAGをNRE分析に供した。分かり易くするために、単糖および三糖(dp3)のNREに対応するm/z値について抽出されたイオン流のみが、各サンプルについて示されている。NRE構造が商業的に入手可能なスタンダードと比較することによって同定された場合は、DSCおよびグリカン記号において名前を示す。MPS IIIAおよびMPS IIICのサンプルにおけるdp3(0Ac、4S)NRE残基を、イオン対試薬を伴う付加イオン([M−2H+DBA]−1)(それゆえ、それらのm/z値は129amu増加した)として検出した(図6を参照)。パネルcおよびf中の挿入図は、単糖バイオマーカーS0およびH6それぞれ、ならびに対応する[13C6]アニリンタグ付きスタンダードのマススペクトルを示す(パネルcおよびf中の矢印)。
図8は、様々なMPS障害についてのGAGサンプルの体系的診断スクリーニングを説明する。示されているのは、患者または動物モデル源から抽出したGAGサンプルに存在する診断的な非還元末端グリカンの検出に基づくMPS発見のためのフローチャートである。検出基準は、NREのサイズ(単糖、二糖および三糖)、m/z値および構造的特徴(酢酸塩(Ac)または硫酸塩(S)の数)に基づく。完全に不明なものについては、サンプルの一部をヘパラン硫酸およびコンドロイチン/デルマタン硫酸NREについて並行して分析する。
図9は、MPS IIIAのサンプルにおける全ヘパラン硫酸とN−スルホグルコサミン(S0)との比較を説明する。(a)正常(黒色の棒)の尿およびMPS IIIA(薄灰色の棒)の尿からのヘパラン硫酸を分析した。各二糖およびNRE N−スルホグルコサミン(S0)をスタンダードと比較して定量した。三糖のスタンダードは利用できないため、S0U2S0について抽出したイオン流の値が示されている。(b)パネルAにおけるものと同様に、正常(黒色の棒)の脳およびMPS IIIA(薄灰色の棒)の脳のヘパラン硫酸の分析。(c)GAG抽出およびその後の分析の前に、MPS IIIA細胞を、0.06mU/mlのスルファミダーゼと共に48時間インキュベートして酵素置換した。ヘパラン硫酸(黒色の棒)、単糖バイオマーカーS0(薄灰色の棒)および三糖バイオマーカーS0U2S0(濃灰色の棒)の量を測定し、酵素補給していない細胞からのサンプルと比較した。バーは平均±標準偏差を表す、n=3。
図10は、MPS I NREバイオマーカーとI0S0スタンダードとの構造比較を説明する。タンデム型質量分析を、[13C6]アニリンタグ付きI0S0スタンダードにおいて行った。優勢な娘イオンおよびm/z値に基づくそれらの割り当ては、マススペクトル中に示されている(a)。I0S0の最初の環内開裂の模式図も示されている。m/z値は各フラグメントイオンの隣に示されている。[12C6]アニリンで標識した後、MPS I患者(GM01391)由来の培養繊維芽細胞からのヘパラン硫酸において見出された推定I0S0NREもタンデム型質量分析に供した(b)。各CIDスペクトル中に示されているm/z値は、[13C6]アニリンと[12C6]アニリンとの質量の差に合致する。スタンダードとMPS I NREとの間の同一性は、類似のCIDスペクトルによって示唆される。
図11は、MPS I、MPS IIおよびMPS VIIにおいて見出された非還元末端構造の分析を説明する。(a、d)MPS I(GM01391)、(b、e)MPS II(GM00615)および(c、f)MPS VII(GM02784)の繊維芽細胞から精製したGAGサンプルを、ヘパランリアーゼ(a、b、c)またはコンドロイチナーゼABC(d、e、f)による酵素的な解重合に供し、続いてGRIL−LC/MS分析に供した。各サンプルにおいて検出されたヘパラン硫酸およびコンドロイチン/デルマタン硫酸のNRE構造と一致するm/z値について抽出した累積イオン流を示す。確実なスタンダードの非存在下では、個々のバイオマーカーの相対存在量は、イオン化効率における違いに起因してこれらのスペクトルから得ることができない。ウロン酸の同定は、同重体種(例えば、G0S0およびG0S6はそれぞれI0S0およびI0S6から決定する)のクロマトグラフィーによる分離、α−L−イズロニダーゼに対する感受性の違い、および細胞における酵素の欠損の性質に基づく推論に基づく。推定構造はDSCおよびグリカン記号の両方ならびにそれらのm/z値で表される。2つの同重体種をCID分析によって見分けることができなかった場合(パネルdにおけるI0a4/I0a6およびパネルeにおけるI2a4/I2a6)には、両方の化学種を示している。
図12は、α−イズロニダーゼ処理による、MPS Iにおける非還元末端バイオマーカーの除去を説明する。MPS I(GM01391)を有する患者の繊維芽細胞から単離した等量のヘパラン硫酸を組み換えα−イズロニダーゼまたはBSAで処理した。次いでサンプルを[12C6]アニリンでタグ付けし、10pmolの[13C6]アニリン標識I0S0スタンダードと混合して、GRIL−LC/MSによって分析した。BSA処理したサンプルについてのマススペクトルは、MPS I NREおよびI0S0スタンダードを示す(a)。イズロニダーゼ処理したサンプルのマススペクトルは、MPS Iバイオマーカーの喪失を示す(b)。検出された全ての化学種についてのm/z値を主要なピークの上に示す。
図13は、イズロネート−2−スルファターゼによる、MPS IIにおいて見出された非還元末端バイオマーカーの除去を説明する。MPS II(GM00615)由来の繊維芽細胞から単離した等量のヘパラン硫酸を、NRE分析の前に、BSAまたは組み換えイズロネート−2−スルファターゼで処理した。BSA処理したサンプル(黒線)およびイズロネート−2−スルファターゼ処理したサンプル(赤線)について、2−O−硫酸化および非2−O−硫酸化NRE種と一致するm/z値について抽出した累積イオン流は、クロマトグラムに示されている。各処理後に検出された化学種についてのm/z値に合致するNRE構造が示されている。
図14は、MPS VIのコンドロイチン硫酸のNREのGRIL−LC/MS分析を説明する。MPS VI(GM00519)の繊維芽細胞から精製したGAGを、コンドロイチナーゼABCによって酵素的に解重合させ、続いてGRIL−LC/MS分析に供した。[13C6]アニリンで標識したNRE単糖構造GaINAc6S(a6)およびGaINAc4S(a4)スタンダードと一致するm/z値について抽出した累積イオン流が示されており(下の赤線)、MPS VIのサンプルにおいて検出された[12C6]アニリンで標識された内在a4が示されている(上の黒線)。マススペクトルは上の線におけるa4ピークについて示されており、内在の[12C6]アニリンタグ付きa4(m/z=377.11)および[13C6]アニリン標識a4スタンダード(m/z=383.13)についての同位体クラスターのm/z値と共に挿入図において示されている。
図15は、スルファミダーゼによる、MPS IIIAにおける非還元末端バイオマーカーの除去を説明する。2人のMPS IIIA患者(GM00643およびGM00934)由来の繊維芽細胞から精製したヘパラン硫酸を、GRIL−LC/MS分析の前に、BSA(黒色の棒)またはスルファミダーゼ(薄灰色の棒)で処理した。[13C6]アニリン標識S0スタンダード(10pmol)を各サンプルに添加し、S0の回復を計算するために用いた。
図16は、サンフィリッポ症候群のサブクラスにおいて見出されたNRE三糖のCID分析を説明する。MPS IIIA、MPS IIIBおよびMPS IIIC患者の繊維芽細胞由来のヘパラン硫酸において検出された代表的な三糖NRE構造を、衝突誘起解離に供した。最もあり得る構造を、検出された生成物イオンと共に示す。各親イオンについての構造パラメーターを各構造の下に記載している。MPS IIICの三糖における非置換のグルコサミン残基の存在を確認するため、アニリン標識したサンプルをプロピオン酸無水物(PA)(第一級アミンおよび第二級アミノの両方と反応する)でアシル化した。濃い矢印は、プロピオン酸無水物によるアシル化を受けることができる第一級アミンおよび第二級アミノを指している。MPS IIICの三糖は全て、2つのプロピオニル基の付加に合致する質量を得た。それに対して、MPS IIIAおよびMPS IIIBの三糖は、アニリンによる還元的アミノ化に由来する架橋した第二級アミンにおけるプロピオニル化に起因して、1つのプロピオニル基をピックアップした。それゆえ、MPS IIICの三糖への第二級プロプリオン酸基の付加は、それらが非置換グルコサミンユニットを含むことと合致する。MPS IIICのNRE三糖についての2つのみの生成物イオンの検出に起因して、2つの潜在的な構造が可能である。
〔発明の詳細な説明〕
本発明の好ましい実施形態が本書に示され記載されているが、当該実施形態は例示のために規定されているに過ぎない。多数の変形、変更および代替が、本発明から解離することなく当業者により想起され得る。本書に記載の本発明の実施形態の様々な代替が、本発明の実施において採用され得ると理解されるべきである。以下の請求項が発明の範囲を規定し、これらの請求項およびそれに相当するものの範囲に含まれる方法および構造が、それによって包含されることが意図される。
グリコサミノグリカンは還元末端および非還元末端を含む。正常な生物学的プロセスによりグリコサミノグリカン(50〜80kDaの正常な構成要素を有するヘパラン硫酸など)は単糖に分解される。異常なグリコサミノグリカンの分解、生合成および/または蓄積に関連する障害は、グリコサミノグリカンおよびその断片の蓄積を引き起こし得る。
ヒトの疾患の多くは、グリコサミノグリカンの変化により引き起こされる、またはそれに関連している。これらの変化を疾患のバイオマーカーとして使用するために、分析的な方法が変化を定量するために使用される。いくつかの方法は、抗体、クロマトグラフィーおよび/または質量分析法の技術を使用して、正常な、または部分的に正常なグリカンを分析および定量する。当該方法の使用は、生物学的サンプル中に存在し得るグリカンの構造の複雑さおよび数に起因して困難である。この複雑さを解決するため、グリカン消化酵素を用いて重合体グリコサミノグリカンから生成される均質なオリゴ糖を遊離し定量する方法が開発された。個々のオリゴ糖を疾患のバイオマーカーとして使用することは不十分である可能性がある。結果として、オリゴ糖バイオマーカーを組み合わせて、疾患の存在、重症度の予測、および治療への反応の特徴づけに関連する必要な見識を提供する機会が存在する。
本書で提供されるのは、例えばヒトの疾患における、異常なグリカンの蓄積を検出する方法である。いくつかの例において、本書に記載のプロセスは、生物学的サンプルから得られたグリカンの非還元末端における、疾患に関連する残基化合物を有する全てのグリカン(例えば単糖および/またはその修飾物(硫酸化、アセチル化、リン酸化など))の存在量を測定することによって、変化を定量する戦略を含む。
ある実施形態において本書で提供されるのは、生物学的サンプルにおいてグリカンの蓄積を検出する方法であって、
a.生物学的サンプルのグリカンを、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて変性し、グリカンの非還元末端からグリカン残存化合物を遊離させること;
b.機能的なグリカン分解酵素によって遊離した前記グリカン残存化合物の量を、分析装置を用いて測定すること、
を含む方法である。
ある実施形態において、前記方法は、異常なグリカンの蓄積を有する個体、または異常なグリカンの蓄積に関連する障害を有する個体を診断することに関連する。
それゆえ、具体的な実施形態において、本書で提供されるのは、個体を、異常なグリカンの蓄積、または異常なグリカンの蓄積に関連する障害を有すると診断する方法であって、
a.生物学的サンプルのグリカンを、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて変性し、グリカンの非還元末端からグリカン残存化合物を遊離させること;
b.機能的なグリカン分解酵素によって遊離した前記グリカン残存化合物の量を、分析機器を用いて測定すること;および
c.遊離したグリカン残基の量が異常であるか否かを決定すること、
を含む方法である。
ある例において、異常なグリカンの蓄積を検出する方法は、疾患状態において生成した変質グリカンが、数千の特異な構造の生産を引き起こす、生合成酵素の活性の変化によって(例えば、発現の増加、活性の増加、基質の増加などを介して)引き起こされるという報告に基づき機能する。
例えば、ある例において、α2,3シアリルトランスフェラーゼは、非還元末端のα2,3位に結合したシアル酸を与える数千種類の異なるグリカン(潜在的に異なるグリカンクラスに由来する)の新規な発現を引き起こす。これらの新規の構造の限定されたセットを既知の方法で定量することによって、疾患に関連する一部の構造のみが測定される。あるいは、ある実施形態において本書で提供されるとおり、グリカンを含むサンプル(粗製のもの、または特定のグリカンクラスについて精製したもの)をα2,3シアリダーゼで処理し非還元末端シアル酸を遊離させた場合、遊離シアル酸(非還元末端グリカン残基)を測定することができる。このシグナルは、α2,3シアリルトランスフェラーゼの発現の変化を原因とする疾患状態において作られる、数千種類もの変化したグリカン構造の大部分を代表し得る。加えて、ある実施形態において、遊離したシアル酸のシグナル(すなわち測定)に依存して、シアル酸の蓄積が異常であるか否か、および/または当該シアル酸の蓄積レベルが障害と関連しているか否かについて、決定がなされる。
プロセスの別の例は、エキソグリコシダーゼ(例えばβ−ガラクトシダーゼ)で処理された、グリカンを含む生物学的サンプル(精製されたもの、またはそうでないもの)に関連する方法を含む。いくつかの当該実施形態において、酵素処理は選択された酵素の特異性において(例えばβ結合したガラクトシダーゼ残基)、非還元末端単糖を開裂し、それらを遊離単糖(例えばガラクトース)として遊離させる。様々な実施形態において、遊離単糖は単離され、任意の分析方法(HPLC、MS、GCなど)によって定量され、非還元末端β結合ガラクトース残基のレベルにおける変化を示す任意の疾患が検出または診断される。
類似の方法も、任意に、特に異常なグリカンの蓄積に関連する障害の治療において、治療法または治療計画をモニターする、および/または決定する方法に利用される。例えば、ある実施形態において本書で提供されるのは、グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害の治療をモニターする方法であって、
a.グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤を、それを必要とする個体に投与した後、前記個体から採取した生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つの正常に機能するグリカン分解酵素を用いて処理し、非還元末端グリカン残基を遊離することによって調製された、変性した生物学的サンプルに存在する非還元末端グリカン残基の集団の量を測定するために分析機器を用いること;
b.遊離した非還元末端グリカン残基の量が、前記グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤の投与の前の量または増加率と比較して、緩やかに増加または減少したか否かを決定すること、
を含む方法である。
いくつかの実施形態において、本書に記載された任意のプロセスは、
a.変性させた生物学的サンプル中に存在する1つ以上のグリカン残存化合物の集団の量を、変性させた生物学的サンプルと実質的に類似の方法で処理された対照の生物学的サンプル中に存在する1つ以上のグリカン残存化合物と比較すること、
を含んでいる。
ある実施形態において、本書に記載された任意のプロセスにおいて利用される対照の生物学的サンプルは、診断される障害に罹患していない個体から提供された。別の実施形態において、対照の生物学的サンプルは、診断される障害に罹患している個体から採取される。ある実施形態において、コントロールの生物学的サンプルから得られた結果は、データベースに蓄積される。その場合、試験サンプルは、任意に、データベース内の複数の対照データと比較される。さらに、ある実施形態において、本書に記載された任意の診断プロセスは、任意に、単独でまたは他の診断技術と組み合わせて利用される。他の診断技術は、非限定的な例として、症候分析、生検、生物学的サンプル中の他の化合物の蓄積の検出などを含む。いくつかの実施形態において、対照の生物学的サンプルは、任意に、同一の個体から、実質的に同一の時間に、単純に異なる箇所(例えば、炎症/関節炎を起こした滑液と対側の関節炎ではない関節)から採取される。他の実施形態において、対照の生物学的サンプルは、任意に、同一の個体から、異なる時点において(例えば、当該方法が治療をモニターする方法に利用される場合、治療の前および後)、採取される。
いくつかの実施形態において、本書で提供されるのは、グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害の治療をモニターする方法であって、
a.グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤を、それを必要とする個体に投与した後、分析機器を用いて、変性させた生物学的サンプルに存在する非還元末端グリカン残存化合物を含むバイオマーカーであって、前記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、前記疾患または異常を有していない個体と比較して、前記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーの集団の量を測定すること、および
b.バイオマーカーの量が、前記グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤の投与の前のバイオマーカーの量または増加率と比較して、緩やかに増加または減少したか否かを決定すること、
を含む方法である。
いくつかの実施形態において、前記グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害は、リソソーム蓄積症、癌性疾患、炎症性疾患、感染症、中枢神経系疾患、または心血管疾患である。
いくつかの実施形態において、前記正常に機能するグリカン分解酵素は、グリコシダーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、デアセチラーゼ、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記正常に機能するグリカン分解酵素は、エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼから選択されるグリコシダーゼである。いくつかの実施形態において、前記グリカン残存化合物は、単糖、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性させることは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性することを含む。いくつかの実施形態において、前記グリカンは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて、同時に、順番に、またはそれらを組み合わせて処理される。
いくつかの実施形態において、非還元末端グリカン残存化合物の集団の量を測定する前に、非還元末端グリカン残存化合物は検出可能なラベルで標識される。いくつかの実施形態において、前記検出可能なラベルは、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色団ラベル、またはアフィニティラベルである。いくつかの実施形態において、遊離したグリカンの量は、UV−Vis分光法、赤外線分光法、質量分析法、またはそれらの組み合わせを用いて測定される。
ある実施形態において、本書で提供されるのは、
a.非還元末端(NRE)グリカンバイオマーカーを、少なくとも1つの他のグリカンバイオマーカー(例えば、非還元末端グリカンバイオマーカー、還元末端バイオマーカー、および/または内部グリカンバイオマーカー)とともに使用する方法である。いくつかの例において、前記2つのバイオマーカーの使用は、疾患の重症度および/または治療に対する反応についての詳細な情報を提供する非常に有益なツールを提供する。様々な観点から、本書に記載された方法で検出および/または分析されるバイオマーカーは、任意の適当な方法において(例えば、比率比較または同時比較において)比較される。
b.少なくとも2つの異なるグリカンバイオマーカー(例えば、各バイオマーカーは、独立に、非還元末端グリカンバイオマーカー、還元末端バイオマーカー、および内部グリカンバイオマーカーから選択される)を使用して、グリコサミノグリカンの蓄積および/または生合成における欠陥によって引き起こされる疾患を同定または診断する方法である。
ある局面において、当該方法は当該バイオマーカーの量を互いに比較することを含む。具体的な実施形態において、前記比較は、グリコサミノグリカンのリアーゼ消化によって生成されるグリカン断片である前記バイオマーカーの比率を決定することに関連する。
ある実施形態において、本書で提供されるのは、個体を、異常なグリカンの生合成、分解または蓄積に関連する疾患または異常を有すると診断する方法であって、
a.1つ以上の非還元末端グリカン残存化合物を含むバイオマーカーであって、前記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、前記疾患または異常を有していない個体と比較して、前記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーを生成すること、および
(b)生成した前記バイオマーカーの存在を検出するために、および/または、生成した前記バイオマーカーの量を測定するために分析機器を使用し、前記バイオマーカーの存在または前記バイオマーカーの集団の測定を記録または表示すること、
を含んでおり、
前記バイオマーカーの存在および/または量の測定が、前記疾患または異常の存在、同定および/または重症度の決定に利用される方法である。
いくつかの実施形態において、前記疾患または障害は異常に機能するグリカン分解酵素によって引き起こされ、前記異常に機能するグリカン分解酵素および前記正常に機能するグリカン分解酵素は同じタイプである。いくつかの実施形態において、前記異常に機能するグリカン分解酵素は、異常に低い量で存在すること、不適切に機能すること、またはそれらの組み合わせの結果として異常に機能する。いくつかの実施形態において、前記異常なグリカンの蓄積は、異常な量のグリカンの蓄積を含む。いくつかの実施形態において、前記異常なグリカンの蓄積は、異常な量の正常なグリカンの蓄積を含む。いくつかの実施形態において、前記異常なグリカンの蓄積は、異常な量の異常なグリカンの蓄積を含む。
いくつかの実施形態において、前記正常に機能するグリカン分解酵素は、グリコシダーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、デアセチラーゼまたはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記正常に機能するグリカン分解酵素は、エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼから選択されるグリコシダーゼである。いくつかの実施形態において、前記グリコシダーゼは、ガラクトシダーゼおよびグルクロニダーゼからなる群より選択されるエキソグリコシダーゼである。いくつかの実施形態において、前記グリカン残存化合物は単糖である。いくつかの実施形態において、前記グリカン残存化合物は硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、またはそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、生物学的サンプルはそのグリカンを変性させる前に精製される。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルの精製プロセスは、含有する単糖の除去、含有する硫酸塩の除去、含有するリン酸塩の除去、含有する酢酸塩の除去、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性させることは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて生物学的サンプルのグリカンを変性させることを含む。いくつかの実施形態において、前記グリカンは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素を用いて、同時に、順番に、またはそれらを組み合わせて処理される。
いくつかの実施形態において、前記異常なグリカンの蓄積に関連する障害は、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IVA、MPS VI、またはファブリー病である。
いくつかの実施形態において、前記遊離したグリカン残基の量が異常であるか否かを決定することは、検出可能な標識で前記グリカン残基を標識すること、および標識されたグリカン残基の量を分析機器を用いて測定することを含む。いくつかの実施形態において、前記検出可能なラベルは、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色団ラベル、またはアフィニティラベルである。いくつかの実施形態において、遊離したグリカンの量は、UV−Vis分光法、赤外線分光法、質量分光法、またはそれらの組み合わせを用いて測定される。
ある実施形態において、本書で提供されるのは、個体を、疾患または異常(例えば、異常なグリカンの生合成、分解または蓄積に関連する)を有すると診断する方法であって、
a.グリカン残存化合物を含む第1のバイオマーカーであって、前記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、前記疾患または異常を有していない個体と比較して、前記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーを生成すること、
b.グリカン残存化合物を含む第2のバイオマーカーであって、ステップ(a)において規定されるものと同じまたは異なる消化ステップにおいて、前記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、前記疾患または異常を有していない個体と比較して、前記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない、バイオマーカーを生成すること、
c.生成した前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの存在を検出するために、および/または、生成した前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量を測定するために分析機器を使用し、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの存在または前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの集団の測定を表示または記録すること、および
d.生物学的サンプル中の前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量をモニターする、および/または比較すること、
を含んでおり、
前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの存在および/または量の測定が、前記疾患または異常の存在、同定および/または重症度の決定に利用される、方法である。
いくつかの実施形態において、前記第1のバイオマーカーは、非還元末端グリカン残存化合物である。いくつかの実施形態において、前記疾患または障害は、異常に機能するグリカン分解酵素によって引き起こされ、前記異常に機能するグリカン分解酵素および前記正常に機能するグリカン消化酵素は同じタイプである。いくつかの実施形態において、前記非還元末端グリカン残存化合物は単糖である。いくつかの実施形態において、前記非還元末端グリカン残存化合物は単糖ではない。
いくつかの実施形態において、前記第2のバイオマーカーは、前記第1の非還元末端グリカン残存化合物のバイオマーカーが生成されるものと同一のグリカンの還元末端から誘導または生成される。いくつかの実施形態において、前記第2のバイオマーカーは、前記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーが生成されたものと同一のグリカンの内部オリゴ糖構造から誘導または生成される。いくつかの実施形態において、前記疾患または障害は、前記個体におけるグリカン分解酵素の異常な機能によって引き起こされ、前記第2のバイオマーカーは、前記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーを、前記個体内において異常に機能するグリカン分解酵素を用いて処理することによって生成され得る。
いくつかの実施形態において、前記異常なグリカンの生合成、分解または蓄積に関連する疾患または異常は、リソソーム蓄積症である。いくつかの実施形態において、前記リソソーム蓄積症はムコ多糖症である。いくつかの実施形態において、前記ムコ多糖症はMPS I、II、IIIA、IIIB、IIIC、IIID、IVA、IVB、VI、またはVIIである。いくつかの実施形態において、前記異常なグリカンの生合成、分解、または蓄積に関連する疾患または異常は、異染性白質ジストロフィーまたはクラッベ病である。いくつかの実施形態において、前記異常なグリカンの生合成、分解、または蓄積に関連する疾患または異常は、ガングリオシドーシスである。いくつかの実施形態において、前記ガングリオシドーシスは、テイ−サックス病、サンドホフ病、ABバリアント、またはGM−1ガングリオシドーシスである。
いくつかの実施形態において、前記第2のバイオマーカーとの組み合わせにおける、または関連における、前記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーの存在および/または測定は、グリカンの異常な生合成に関連する障害の治療をモニターするために使用される。いくつかの実施形態において、前記第2のバイオマーカーとの組み合わせにおける、または関連における、前記第1の非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーの存在および/または測定は、グリカンの異常な分解または蓄積に関連する障害の治療をモニターするために使用される。いくつかの実施形態において、前記治療は酵素補充療法である。いくつかの実施形態において、前記非還元末端グリカン残存化合物バイオマーカーが減少するとともに、前記第2のバイオマーカーが増加しないことは、グリカンの異常な分解または蓄積に関連する障害の治療に対するポジティブな反応を示唆する。
(グリカンの蓄積)
様々な例において、グリカンの蓄積は、生物学的サンプルにおいて、自然なグリカンの生合成および/または分解のプロセスの結果として起こる。いくつかの例において、異常なグリカンの蓄積は、生物学的サンプルにおいて、生物学的サンプルが得られた個体における障害または疾患の結果として起こる。
ある実施形態において、本書に記載された方法によって観察可能な異常なグリカンの蓄積は、疾患状態ではない個体には通常起こらない方法においてグリカンの蓄積と関連する。
いくつかの実施形態において、上記蓄積は、異常なグリカンの、蓄積を含む。ある例において、これらの異常なグリカンは、特定の疾患状態ではない、個体において、またはその特定の生物学的サンプルにおいて通常生産されないグリカンを含む。それゆえ、いくつかの実施形態において、異常なグリカンの蓄積は、グリカン自体が異常である、グリカンの蓄積(特に、任意の有意な量における)を含む。言い換えれば、上記グリカンは、個体が非疾患状態の、または正常な状態の、または野生型の状態である場合に、当該個体またはその特定の生物学的サンプルに存在する、異常なグリカンである。
いくつかの実施形態において、上記蓄積は、グリカンの、異常な蓄積を含む。いくつかの例において、これらのグリカンは、非疾患状態の個体において通常生じるが、より低いもしくは高いレベルである、またはそれらが生産される場所のみに起因して異常であるグリカンである。それゆえ、いくつかの実施形態において、異常なグリカンの蓄積は、異常な量または異常な場所における、正常に生ずるまたは異常なグリカンの蓄積を含む。言い換えれば、グリカンの蓄積の量は、個体が非疾患状態の、または正常な状態の、または野生型の状態である場合に、当該個体またはその特定の生物学的サンプルにおいて異常である。
(生物学的サンプル)
本書に記載された方法およびプロセスに従った分析に適した生物学的サンプルは、非限定的な例として、血液、血清、尿、毛髪、唾液、皮膚、組織、血漿、脳脊髄液(CSF)、羊水、乳頭吸引液、喀痰、涙液、肺吸引液、精液、糞便、滑液、爪、または類似のものを含む。具体的な実施形態において、本書に記載された方法およびプロセスに従った生物学的サンプルは、非限定的な例として、尿、血清、血漿、またはCSFを含む。ある実施形態において、サンプル中のグリカンを検出するプロセスは、個体から、グリカンを含む試験用の生物学的サンプルを用意することを含む。いくつかの実施形態において、個体から試験用の生物学的サンプルを用意することは、個体からサンプルを得ること、または別の供給源(例えば、上記個体からサンプルを得た技術者または機関)からサンプルを得ることを含む。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは適切な供給源、例えば個体の任意の組織または細胞(例えば、尿、血清、血漿、またはCSF)から得られる。ある実施形態において、グリカンが回収された組織および/または細胞は、肝臓組織もしくは細胞、脳組織もしくは細胞、腎臓組織もしくは細胞、または類似のものから得られる。
ある実施形態において、本書に記載させた任意のプロセスに従ったサンプルは、任意の個体から採取される。いくつかの実施形態において、上記個体は、異常なグリカンの蓄積、生合成、および/または分解に関連する障害に罹患している疑いのある個体である。ある実施形態において、上記個体は新生児または胎児である。
いくつかの実施形態において、本書で提供されるのは、単離されたグリカンであって、生物学的サンプルから単離されたグリカンと、1つ以上のグリカン分解酵素とを含む組成物である。ある実施形態において、上記組成物は、本書に記載された任意の方法に従って生成される1つ以上のバイオマーカー(例えば、当該バイオマーカーは非還元末端グリカン残存化合物である)をさらに含む。ある実施形態において、本書で提供されるのは、本書に記載されたバイオマーカー(例えば、標識された、または標識されていない非還元末端グリカン残存化合物)、分析機器、またはクロマトグラフィーのレジンである。
(分解酵素)
ある実施形態において、任意の適切な酵素が、グリカンの非還元末端からグリカン残存化合物を除去するために任意に利用される。ある障害(例えば本書に記載のもの)において、様々なタイプの異常なグリカンの蓄積が生ずる。ある例において、このタイプのグリカン蓄積は、任意の適切な酵素(例えば本書に記載のもの)を用いて検出および/または定量される。例えば、表1〜4は本書に記載されたプロセスの様々な実施形態において使用される様々な酵素を例証している。所望の特異性を有する任意の酵素が、本書に記載された任意のプロセス(すなわち、非還元末端構造を遊離すること)において、任意に利用される。本書に記載されたプロセスにおける使用に適した酵素は、非限定的な例として、真核生物の酵素、原核生物の酵素、天然の酵素、または組み換え酵素を含む。
ある実施形態において、異常なグリカンの蓄積に関連する障害は、異常に機能するグリカン分解酵素によって引き起こされるものに関連する障害を含む。様々な実施形態において、異常に機能するグリカン分解酵素は、異常に低い濃度で存在する、不適切に機能する、またはその組み合わせの結果として、異常に機能する。例えば、異常に機能するグリカン分解酵素は、正常な量のグリカン分解酵素を有する個体(例えば、非疾患状態の、正常な状態の、または野生型の状態の個体)に存在するのと比較して、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満の量において存在する結果として、異常に機能する。さらなる実施形態、または代わりの実施形態において、異常に機能するグリカン消化酵素は、正常な量において存在するが、グリカンの分解において適切に機能しない。例えば、当該酵素は、その配列中に、当該酵素のグリカン分解特性を減弱または消失させるアミノ酸置換を有し得る。
グリカンの異常な蓄積が、少なくとも部分的には、異常に機能するグリカン分解酵素に起因するいくつかの実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素が任意に利用される(特には、異常に機能するグリカン分解酵素と正常に機能するグリカン分解酵素とは同じタイプである)。
本書に記載された様々な実施形態において使用される正常に機能するグリカン分解酵素は、非限定的な例として、グリコシダーゼ、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、デアセチラーゼ、シアリダーゼ、またはこれらの組み合わせを含む。より具体的な実施形態において、正常に機能するグリカン分解酵素は、グリコシダーゼ(例えば、エキソグリコシダーゼまたはエンドグリコシダーゼ)である。より具体的な実施形態において、上記グリコシダーゼはエキソグリコシダーゼ(例えば、ガラクトシダーゼおよびグルクロニダーゼ)である。いくつかの実施形態において、上記酵素は、本書に記載された方法において検出および/または測定される様々なグリカン残存化合物(例えば、単糖、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シアル酸、またはこれらの組み合わせ)を除去するために使用される。
ある実施形態において、ある1つの、または正常に機能するグリカン分解酵素は、任意に、標的であるグリカン残存化合物を遊離させるために使用される。生物学的サンプル中のグリカンの複数の酵素処理は、様々な実施形態(例えば、最初にグリカンの非還元末端を修飾しなければ、特定の酵素が、標的であるグリカン残存化合物を遊離できない場合)において有用である。例えば、第1の酵素は、第2の酵素が単糖の除去に利用できるよう、硫酸塩を除去するために任意に利用される。様々な実施形態において、上記グリカンは、複数の正常に機能するグリカン分解酵素で、同時に、順番に、又はこれらを組み合わせて処理される。
本書に記載された方法の様々な実施形態において使用される様々な酵素は、非限定的な例として、グリコシダーゼを含む。本書に記載された方法において任意に利用されるグリコシダーゼの非限定的な例は、非限定的な例として、BRENDA(包括的酵素情報システム)によって3.2.1Xとして分類されている酵素を含んでおり、当該酵素として、3.2.1.1 α−アミラーゼ、3.2.1.B1 細胞外アガラーゼ、3.2.1.2 β−アミラーゼ、3.2.1.3 グルカン1,4−α−グルコシダーゼ、3.2.1.4 セルラーゼ、3.2.1.5 リケニナーゼ、3.2.1.6 エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ、3.2.1.7 イヌリナーゼ、3.2.1.8 エンド−1,4−β−キシラナーゼ、3.2.1.9 アミロペクチン−1,6−グルコシダーゼ、3.2.1.10 オリゴ−1,6−グルコシダーゼ、3.2.1.11 デキストラナーゼ、3.2.1.12 シクロヘプタグルカナーゼ、3.2.1.13 シクロヘキサグルカナーゼ、3.2.1.14 キチナーゼ、3.2.1.15 ポリガラクツロナーゼ、3.2.1.16 アルギナーゼ、3.2.1.17 リゾチーム、3.2.1.18 エキソ−α−シアリダーゼ、3.2.1.19 ヘパリナーゼ、3.2.1.20 α−グルコシダーゼ、3.2.1.21 β−グルコシダーゼ、3.2.1.22 α−ガラクトシダーゼ、3.2.1.23 β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.24 α−マンノシダーゼ、3.2.1.25 β−マンノシダーゼ、3.2.1.26 β−フルクトフラノシダーゼ、3.2.1.27 α−1,3−グルコシダーゼ、3.2.1.28 α,α−トレハラーゼ、3.2.1.29 キトビアーゼ、3.2.1.30 β−D−アセチルグルコサミニダーゼ、3.2.1.31 β−グルクロニダーゼ、3.2.1.32 キシランエンド−1,3−β−キシロシダーゼ、3.2.1.33 アミロ−α−1,6−グルコシダーゼ、3.2.1.34 コンドロイチナーゼ、3.2.1.35 ヒアルロノグルコサミニダーゼ、3.2.1.36 ヒアルロノグルクロニダーゼ、3.2.1.37 キシラン1,4−β−キシロシダーゼ、3.2.1.38 β−D−フコシダーゼ、3.2.1.39 グルカンエンド−1,3−β−D−グルコシダーゼ、3.2.1.40 α−L−ラムノシダーゼ、3.2.1.41 プルラナーゼ、3.2.1.42 GDP−グルコシダーゼ、3.2.1.43 β−L−ラムノシダーゼ、3.2.1.44 フコイダナーゼ、3.2.1.45 グルコシルセラミダーゼ、3.2.1.46 ガラクトシルセラミダーゼ、3.2.1.47 ガラクトシルガラクトシルグルコシルセラミダーゼ、3.2.1.48 スクロースα−グルコシダーゼ、3.2.1.49 α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、3.2.1.50 α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、3.2.1.51 α−L−フコシダーゼ、3.2.1.52 β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ、3.2.1.53 β−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、3.2.1.54 シクロマルトデキストリナーゼ、3.2.1.55 α−N−アラビノフラノシダーゼ、3.2.1.56 グルクロノシル−ジスルホグルコサミングルクロニダーゼ、3.2.1.57 イソプルラナーゼ、3.2.1.58 グルカン1,3−β−グルコシダーゼ、3.2.1.59 グルカンエンド−1,3−α−グルコシダーゼ、3.2.1.60 グルカン1,4−α−マルトテトラオヒドロラーゼ、3.2.1.61 マイコデキストラナーゼ、3.2.1.62 グリコシルセラミダーゼ、3.2.1.63 1,2−α−L−フコシダーゼ、3.2.1.64 2,6−β−フルクタン6−レバンビオヒドロラーゼ、3.2.1.65 レバナーゼ、3.2.1.66 クエルシトリナーゼ、3.2.1.67 ガラクツラン1,4−α−ガラクツロニダーゼ、3.2.1.68 イソアミラーゼ、3.2.1.69 アミロペクチン6−グルカンオヒドロラーゼ、3.2.1.70 グルカン1,6−α−グルコシダーゼ、3.2.1.71 グルカンエンド−1,2−β−グルコシダーゼ、3.2.1.72 キシラン1,3−β−キシロシダーゼ、3.2.1.73 リケニナーゼ、3.2.1.74 グルカン1,4−β−グルコシダーゼ、3.2.1.75 グルカンエンド−1,6−β−グルコシダーゼ、3.2.1.76 L−イズロニダーゼ、3.2.1.77 マンナン1,2−(1,3)−α−マンノシダーゼ、3.2.1.78 マンナンエンド−1,4−β−マンノシダーゼ、3.2.1.79 α−L−アラビノフラノシドヒドロラーゼ、3.2.1.80 フルクタンβ−フルクトシダーゼ、3.2.1.81 β−アガラーゼ、3.2.1.82 エキソ−ポリ−α−ガラクツロノシダーゼ、3.2.1.83 κ−カラギーナーゼ、3.2.1.84 グルカン1,3−α−グルコシダーゼ、3.2.1.85 6−ホスホ−β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.86 6−ホスホ−β−グルコシダーゼ、3.2.1.87 カプセルポリサッカライドエンド−1,3−α−ガラクトシダーゼ、3.2.1.88 β−L−アラビノシダーゼ、3.2.1.89 アラビノガラクタンエンド−1,4−β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.90 アラビノガラクタンエンド−1,3−β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.91 セルロース1,4−β−セロビオシダーゼ、3.2.1.92 ペプチドグリカンβ−N−アセチルムラミダーゼ、3.2.1.93 α,α−ホスホトレハラーゼ、3.2.1.94 グルカン1,6−α−イソマルトシダーゼ、3.2.1.95 デキストラン1,6−α−イソマルトトリオシダーゼ、3.2.1.96 マンノシル−グリコプロテインエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、3.2.1.97 グリコペプチドα−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、3.2.1.98 グルカン1,4−α−マルトヘキサオシダーゼ、3.2.1.99 アラビナンエンド−1,5−α−L−アラビノシダーゼ、3.2.1.100 マンナン1,4−マンノビオシダーゼ、3.2.1.101 マンナンエンド−1,6−α−マンノシダーゼ、3.2.1.102 血液型物質エンド−1,4−β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.103 ケラタン−スルフェートエンド−1,4−β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.104 ステリル−β−グルコシダーゼ、3.2.1.105 3α(S)−ストリクトシダインβ−グルコシダーゼ、3.2.1.106 マンノシル−オリゴサッカライドグルコシダーゼ、3.2.1.107 プロテイン−グルコシルガラクトシルヒドロキシリシングルコシダーゼ、3.2.1.108 ラクターゼ、3.2.1.109 エンドガラクトサミニダーゼ、3.2.1.110 ムチナミニルセリンムチナミニダーゼ、3.2.1.111 1,3−α−L−フコシダーゼ、3.2.1.112 2−デオキシグルコシダーゼ、3.2.1.113 マンノシル−オリゴサッカライド1,2−α−マンノシダーゼ、3.2.1.114 マンノシル−オリゴサッカライド1,3−1,6−α−マンノシダーゼ、3.2.1.115 分岐デキストランエキソ−1,2−α−グルコシダーゼ、3.2.1.116 グルカン1,4−α−マルトトリオヒドロラーゼ、3.2.1.117 アミグダリンβ−グルコシダーゼ、3.2.1.118 プルナシンβ−グルコシダーゼ、3.2.1.119 ビシアニンβ−グルコシダーゼ、3.2.1.120 オリゴキシログルカンβ−グリコシダーゼ、3.2.1.121 ポリマンヌロネートヒドロラーゼ、3.2.1.122 マルトース−6'−ホスフェートグルコシダーゼ、3.2.1.123 エンドグリコシルセラミダーゼ、3.2.1.124 3−デオキシ−2−オクツロソニダーゼ、3.2.1.125 ラウカフリシンβ−グルコシダーゼ、3.2.1.126 コニフェリンβ−グルコシダーゼ、3.2.1.127 1,6−α−L−フコシダーゼ、3.2.1.128 グリチルリジネートβ−グルクロニダーゼ、3.2.1.129 エンド−α−シアリダーゼ、3.2.1.130 グリコプロテインエンド−α−1,2−マンノシダーゼ、3.2.1.131 キシランα−1,2−グルクロノシダーゼ、3.2.1.132 キトサナーゼ、3.2.1.133 グルカン1,4−α−マルトヒドロラーゼ、3.2.1.134 ジフルクトース無水物シンターゼ、3.2.1.135 ネオプルラナーゼ、3.2.1.136 グルクロノアラビノキシランエンド−1,4−β−キシラナーゼ、3.2.1.137 マンナンエキソ−1,2−1,6−α−マンノシダーゼ、3.2.1.138 アンヒドロシアリダーゼ、3.2.1.139 α−グルクロニダーゼ、3.2.1.140 ラクト−N−ビオシダーゼ、3.2.1.141 4−α−D−{(1→4)−α−D−グルカノ}トレハローストレハロヒドロラーゼ、3.2.1.142 限界デキストリナーゼ、3.2.1.143 ポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ、3.2.1.144 3−デオキシオクツロソナーゼ、3.2.1.145 ガラクタン1,3−β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.146 β−ガラクトフラノシダーゼ、3.2.1.147 チオグルコシダーゼ、3.2.1.148 リボシルホモシステイナーゼ、3.2.1.149 β−プリメベロシダーゼ、3.2.1.150 オリゴキシログルカン非還元末端特異的セロビオヒドロラーゼ、3.2.1.151 キシログルカン特異的エンド−β−1,4−グルカナーゼ、3.2.1.152 マンノシルグリコプロテインエンド−β−マンノシダーゼ、3.2.1.153 フルクタンβ−(2,1)−フルクトシダーゼ、3.2.1.154 フルクタンβ−(2,6)−フルクトシダーゼ、3.2.1.155 キシログルカン特異的エキソ−β−1,4−グルカナーゼ、3.2.1.156 オリゴサッカライド還元末端キシラナーゼ、3.2.1.157 ι−カラギーナーゼ、3.2.1.158 α−アガラーゼ、3.2.1.159 α−ネオアガロ−オリゴサッカライドヒドロラーゼ、3.2.1.160 キシログルカン特異的エキソ−β−1,4−グルカナーゼ、3.2.1.161 β−アピオシル−β−グルコシダーゼ、3.2.1.162 λ−カラギーナーゼ、3.2.1.163 1,6−α−D−マンノシダーゼ、3.2.1.164 ガラクタンエンド−1,6−β−ガラクトシダーゼ、3.2.1.165 エキソ−1,4−β−D−グルコサミニダーゼ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
本書に記載された方法の様々な実施形態において使用される他の酵素は、非限定的な例として、スルファターゼ(例えば、BRENDA(包括的な酵素情報システム)によって3.1.6.Xとして分類される酵素)を含んでおり、当該酵素としては、3.1.6.1 アリールスルファターゼ、3.1.6.2 ステリル−スルファターゼ、3.1.6.3 グリコスルファターゼ、3.1.6.4 N−アセチルガラクトサミン−6−スルファターゼ、3.1.6.5 シニグリンスルホヒドロラーゼ;ミロスルファターゼ、3.1.6.6 コリン−スルファターゼ、3.1.6.7 セルロース−ポリスルファターゼ、3.1.6.8 セレブロシド−スルファターゼ、3.1.6.9 コンドロ−4−スルファターゼ、3.1.6.10 コンドロ−6−スルファターゼ、3.1.6.11 ジスルホグルコサミン−6−スルファターゼ、3.1.6.12 N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、3.1.6.13 イズロネート−2−スルファターゼ、3.1.6.14 N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ、3.1.6.15 N−スルホグルコサミン−3−スルファターゼ、3.1.6.16 モノメチル−スルファターゼ、3.1.6.17 D−ラクテート−2−スルファターゼ、3.1.6.18 グルクロネート−2−スルファターゼ、3.10.1.1 N−スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
本書に記載された方法の様々な実施形態において使用される、ある酵素は、非限定的な例として、デアセチラーゼ(例えば、エキソデアセチラーゼ)を含んでおり、エキソデアセチラーゼは、非限定的な例として、α−グルコサミニドN−アセチルトランスフェラーゼ(2.3.1.78)または類似の酵素を含む。
本書に記載された方法の様々な実施形態において使用される、ある酵素は、非限定的な例として、炭水化物ホスファターゼを含んでおり、例えば、3.1.3.1 アルカリホスファターゼ、3.1.3.2 酸ホスファターゼ、3.1.3.B2 ジアシルグリセロールピロホスフェートホスファターゼ、3.1.3.3 ホスホセリンホスファターゼ、3.1.3.4 ホスファチデートホスファターゼ、3.1.3.5 5'−ヌクレオチダーゼ、3.1.3.6 3'−ヌクレオチダーゼ、3.1.3.7 3'(2'),5−ホスフェートヌクレオチダーゼ、3.1.3.8 3−フィターゼ、3.1.3.9 グルコース−6−ホスファターゼ、3.1.3.10 グルコース−1−ホスファターゼ、3.1.3.11 フルクトース−ビスホスファターゼ、3.1.3.12 トレハロース−ホスファターゼ、3.1.3.13 ビスホスホグリセレートホスファターゼ、3.1.3.14 メチルホスホチオグリセレートホスファターゼ、3.1.3.15 ヒスチジノール−ホスファターゼ、3.1.3.16 ホスホプロテインホスファターゼ、3.1.3.17 [ホスホリラーゼ]ホスファターゼ、3.1.3.18 ホスホグリコレートホスファターゼ、3.1.3.19 グリセロール−2−ホスファターゼ、3.1.3.20 ホスホグリセレートホスファターゼ、3.1.3.21 グリセロール−1−ホスファターゼ、3.1.3.22 マンニトール−1−ホスファターゼ、3.1.3.23 糖−ホスファターゼ、3.1.3.24 スクロース−ホスフェートホスファターゼ、3.1.3.25 イノシトール−ホスフェートホスファターゼ、3.1.3.26 4−フィターゼ、3.1.3.27 ホスファチジルグリセロホスファターゼ、3.1.3.28 ADP−ホスホグリセレートホスファターゼ、3.1.3.29 N−アシルノイラミネート−9−ホスファターゼ、3.1.3.30 3'−ホスホアデニリルスルフェート3'−ホスファターゼ、3.1.3.31 ヌクレオチダーゼ、3.1.3.32 ポリヌクレオチド3'−ホスファターゼ、3.1.3.33 ポリヌクレオチド5'−ホスファターゼ、3.1.3.34 デオキシヌクレオチド3'−ホスファターゼ、3.1.3.35 チミジレート5'−ホスファターゼ、3.1.3.36 ホスホイノシチド−5−ホスファターゼ、3.1.3.37 セドヘプツロース−ビスホスファターゼ、3.1.3.38 3−ホスホグリセレートホスファターゼ、3.1.3.39 ストレプトマイシン−6−ホスファターゼ、3.1.3.40 グアニジノデオキシ−シロイノシトール−4−ホスファターゼ、3.1.3.41 4−ニトロフェニルホスファターゼ、3.1.3.42 [グリコーゲンシンターゼ−D]ホスファターゼ、3.1.3.43 [ピルベートデヒドロゲナーゼ(アセチル転移)]−ホスファターゼ、3.1.3.44 [アセチル−CoAカルボキシラーゼ]−ホスファターゼ、3.1.3.45 3−デオキシ−マンノ−オクツロソネート−8−ホスファターゼ、3.1.3.46 フルクトース−2,6−ビスホスフェート2−ホスファターゼ、3.1.3.47 [ヒドロキシメチルグルタニル−CoAリダクターゼ(NADPH)]−ホスファターゼ、3.1.3.48 プロテイン−チロシン−ホスファターゼ、3.1.3.49 [ピルベートキナーゼ]−ホスファターゼ、3.1.3.50 ソルビトール−6−ホスファターゼ、3.1.3.51 ドリチル−ホスファターゼ、3.1.3.52 [3−メチル−2−オキソブタノエートデヒドロゲナーゼ(2−メチルプロパノイル転移)]−ホスファターゼ、3.1.3.53 [ミオシン軽鎖]ホスファターゼ、3.1.3.54 フルクトース−2,6−ビスホスフェート6−ホスファターゼ、3.1.3.55 カルデスモン−ホスファターゼ、3.1.3.56 イノシトール−ポリホスフェート5−ホスファターゼ、3.1.3.57 イノシトール−1,4−ビスホスフェート1−ホスファターゼ、3.1.3.58 糖末端ホスファターゼ、3.1.3.59 アルキルアセチルグリセロホスファターゼ、3.1.3.60 ホスホエノールピルベートホスファターゼ、3.1.3.61 イノシトール−1,4,5−トリスホスフェート1−ホスファターゼ、3.1.3.62 マルチプルイノシトール−ポリホスフェートホスファターゼ、3.1.3.63 2−カルボキシ−D−アラビニトール−1−ホスファターゼ、3.1.3.64 ホスファチジルイノシトール−3−ホスファターゼ、3.1.3.65 イノシトール−1,3−ビスホスフェート3−ホスファターゼ、3.1.3.66 ホスファチジルイノシトール−3,4−ビスホスフェート4−ホスファターゼ、3.1.3.67 ホスファチジルイノシトール−3,4,5−トリスホスフェート3−ホスファターゼ、3.1.3.68 2−デオキシグルコース−6−ホスファターゼ、3.1.3.69 グルコシルグリセロール3−ホスファターゼ、3.1.3.70 マンノシル−3−ホスホグリセレートホスファターゼ、3.1.3.71 2−ホスホスルホラクテートホスファターゼ、3.1.3.72 5−フィターゼ、3.1.3.73 α−リバゾールホスファターゼ、3.1.3.74 ピリドキサールホスファターゼ、3.1.3.75 ホスホエタノールアミン/ホスホクロリンホスファターゼ、3.1.3.76 脂肪ホスフェートホスファターゼ、3.1.3.77 アシレズクトンシンターゼ、3.1.3.78 ホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート4−ホスファターゼ、もしくは3.1.3.79 マンノシルフルクトース−ホスフェートホスファターゼ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態において、本書に記載されたプロセスは、特定の非還元末端構造を解明するための第1の酵素によるインキュベーションおよび消化、第2の酵素によるインキュベーションおよび消化を含む。ある実施形態において、この複数の酵素による手法はバックグラウウンドを低減するために有用である。例えば、MPS IIにおいて、全ての非硫酸化非還元末端ウロン酸を解明するために、サンプルを2−Oスルファターゼで処理する前にイズロニダーゼおよび/またはグルクロニダーゼ(この酵素は硫酸化イズロン酸を開裂しない)で処理する。この手法は、全ての非硫酸化非還元末端ウロン酸を明らかにするので、2−Oスルファターゼによって脱硫酸化すると、新たに脱離可能になったウロン酸が、既に硫酸化された(およびそれゆえにイズロニダーゼおよび/またはグルクロニダーゼの作用に対する抵抗性を有する)ものになる。
(グリカン残存化合物)
本書に記載される任意のプロセスに従って、検出され、測定され、分析され、および/または他の方法によって特徴づけられるグリカン残存化合物は、グリカンの非還元末端から遊離した任意の好適なグリカン残基(例えば、個体の生物学的サンプルから得られたグリカン)を含む。具体的な例において、グリカン残存化合物は、例えば、オリゴ糖、単糖、硫酸塩、シアル酸、酢酸塩などを含む。
本書における任意のプロセスで有用である具体的なグリカン残存化合物は、表1〜4に記載されている。
いくつかの実施形態において、生成されるバイオマーカーは、グリカン残存化合物である。いくつかの実施形態において、グリカン残存化合物は、単糖である。具体的な実施形態において、グリカン残存化合物は、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、またはそれらの組み合わせである。具体的な実施形態において、グリカン残存化合物は、2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、500g/mol未満、400g/mol未満、300g/mol未満、260g/mol未満、200g/mol未満、100g/mol未満などの分子量を有する(例えば、本書に記載されるプロセスにおいて含まれてもよい任意の検出可能なラベルを用いて標識する前に)。
(バイオマーカー比)
本書で提供される種々の局面において、種々のバイオマーカー(例えば、酵素によるグリコサミノグリカンの脱重合によって生成された飽和非還元末端構造または内部不飽和二糖)の同時測定または比は、疾患の重症度および治療への反応についての情報を明らかにする。診断されるか、または他の方法によって分析される具体的な疾患に応じて、これらの比較(例えば、同時測定または比)は、種々の飽和構造および不飽和構造を用いる。
例えば、いくつかの実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表1に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS Iである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーは、表1のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表1のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9、3、4または6のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表1からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表2に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS IIである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表2のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表1のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表2のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表2からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表3に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断するか、または他の方法によって分析する障害は、MPS IIIAである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表3のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表5のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表3のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表3からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表4に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS IIIBである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表4のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表1、2または8のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表4のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表4からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表5に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS IIICである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表5のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表4のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表5のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表5からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表6に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断するか、または他の方法によって分析する疾患は、MPS IIIDである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表6のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表4または5のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表6のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方は、表6からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表7に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS VIである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表7のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表8のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表7のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表7からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表8に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS VIIである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表8のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表3、4、6または7のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表8のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表1からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表9に示される非還元バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表9からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表10に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS IVAである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表10のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表8のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表10のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表10からのものである。
さらなる実施形態において、本書に記載される任意のプロセスにおいて使用するバイオマーカーの1つ以上は、表11に示される飽和バイオマーカー(グリカン断片)の1つを含む。具体的な実施形態において、診断されるか、または他の方法によって分析される障害は、MPS IVBである。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、表11のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表8のバイオマーカーである。他の実施形態において、第1のバイオマーカーは、表11のバイオマーカーであって、かつ、第2のバイオマーカーは、表9のバイオマーカーである。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーの両方が、表11からのものである。
本書において使用するとき、IdoAおよび
は、イズロン酸(例えば、α−L−イズロン酸)糖残基である。本書において使用するとき、GlcAおよび
は、グルクロン酸(例えば、β−L−グルクロン酸)糖残基である。本書において使用するとき、
は、IdoAおよびGlcAなどの非還元ウロン酸(UA)である。本書において使用するとき、GlcNおよび
は、グルコサミン(例えば、2−デオキシ−2−アミノ−β−D−グルコピラノシル)糖残基である。本書において使用するとき、Glc(Ac)1および
は、2−アミノ基がアセチル化されているグルコサミン(例えば、2−デオキシ−2−アミノ−β−D−グルコピラノシル)糖残基である。本書において使用するとき、Galおよび
は、ガラクトース糖残基である。種々の具体的な例において、イズロン酸、グルクロン酸、グルコサミン、および/またはガラクトース糖残基は、非還元末端糖残基の4位および5位の炭素において飽和しているか、または、炭素間において不飽和ではない。他の例において、任意の糖残基の1つ以上は、例えば、本書で与えられるオリゴ糖の非還元末端における糖残基の4位および5位の炭素の位置において、不飽和である。本書において使用される記号の命名法は、2007年10月に改正された、The Nomenclature Committee for the Consortium for Functional Glycomicsによって公布された“Symbol and Text Nomenclature for Representation of Glycan Structure”に従う。
C4およびC5の位置において飽和している非還元末端糖残基および、C4およびC5の位置において不飽和である非還元末端糖残基の実例として、C4およびC5の位置において飽和しているL−イズロン酸(IdoA)残基は下記のような構造を有している。
一方で、C4およびC5の位置において不飽和であるオリゴ糖の非還元末端におけるL−イズロン酸(IdoA)は、下記のような構造を有してもよくて、当該構造は、
等である。C4およびC5の位置において飽和している非還元末端糖残基を有するオリゴ糖は、本書において、“C4−C5非還元末端飽和オリゴ糖”として示される。
(NREバイオマーカーの比)
具体的な実施形態において、本書に提供される方法は、NREバイオマーカーである第1のバイオマーカーと、別のNREバイオマーカーである第2のバイオマーカーとを比較することを含む。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、特定の疾患(例えば、MPS疾患、または変質したGAG合成もしくはGAG分解に関連する他の疾患)に特異的である。具体的な実施形態において、第2のバイオマーカーは、特定の疾患(例えば、本書において与えられる表による)には予期されないであろうNREバイオマーカーである。
いくつかの実施形態において、本書に記載される方法は、ERT療法と共に用いられる。上記実施形態のいくつかにおいて、当該方法は、ERT療法の有効性をモニターするために利用される。
ある局面において、疾患特異的NREの存在量と、用いられる酵素補充療法(ERT)の作用のあとに生じるNREの存在量との比を調べることによって、ERTが、所望の細胞の区画(リソソーム)において作用していることを確かめ得る。いくつかの例において、治療への反応におけるグリカン基質の還元が、リソソームにおけるERTの有益な作用を反映しているのか、または、リソソームの外側の酵素の治療的ではない有益な作用を反映しているのかを確かにするために、上記比を調べることは重要である。これは、ERTの髄膜への送達などのようにERTが送達された同一のポートを介してバイオマーカー分析のための液体をサンプリングする必要がある治療上のアプローチにおいて、特に重要である。ERTが、細胞外(血液中、CSF中、またはサンプリングポート内)において作用している場合、後続のリソソーム酵素は、生成グリカンを効果的には分解しないであろう。これは、疾患特異的NREの除去、および、一般的に異なる疾患に関連するNREの生成に導く。
例えば、具体的な一実施形態において、診断され、および/または他の方法によって分析される疾患は、MPS IIである。上記例のいくつかにおいて、第1のバイオマーカーは、IdoA2S−GlcN(+/−NS、+/−6S)などのMPS II疾患特異的NREバイオマーカーである。ERT(2−スルファターゼ)がリソソームにおいて作用する場合、このNREは、MPS II患者において機能的である後続のリソソーム酵素によって直ちに除去される生成2−O脱硫酸化IdoA2S−GlcN(+/−NS、+/−6S)である。反対に、ERTがリソソームの外側において作用する場合、第1のバイオマーカー(MPS IIのNREバイオマーカー)[IdoA2S−GlcN(+/−NS、+/−6S)]は除去されて、第2のバイオマーカー(例えば、[IdoA−GlcN(+/−NS、+/−6S)]などのMPS IのNRE)が生成する(細胞外作用NRE、EANRE)。いくつかの例において、他のリソソーム酵素が、リソソームの外側において、有意な活性量で存在しないために、MPS Iマーカーは安定である。いくつかの症例において、NREは、他の内因性酵素の作用を介して、他のNRE構造に転換される。いくかの局面において、上記技術を用いて、かつ、MPS IIのNREおよびMPS IのNREを同時にモニターすることによって、疾患の重症度、および治療への特異的な反応を決定する。他のMPS障害、または異常なグリカンの蓄積、生合成および/または分解に関連する任意の他の障害のための類似した方法が、本書において意図される。
例示的な実施形態において、ERT治療後のMPS II患者におけるMPS IのNREバイオマーカーの生成は、ERTがリソソームにおいて効果的には作用していないことを示す。種々の局面において、各々の疾患に関連性のある、疾患特異的NREとEANREとの比は、目的の疾患のNREと、ERTによって生じる関連性のあるEANREとに従った各々の疾患クラスごとに異なる。具体的で例示的な実施形態において、本書に記載される方法は、示された疾患に対して利用する場合、下記の特異的な第1のバイオマーカーおよび第2のバイオマーカーを利用する:
MPS I
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・二糖 IdoA−GlcN(+/−NS、+/−6S)
・EANRE
・MPS IIIAおよびMPS IIIBファミリーからの単糖および三糖
MPS II
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・二糖 IdoA2S−GlcN(+/−NS、+/−6S)
・EANRE
・MPS Iファミリーからの二糖
MPS IIIA
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・三糖:GlcNS−GlcA/IdoA(+/−2S)−GlcN(+/−NS、+/−6S)
・EANRE
・MPS IIICファミリーからの二糖
MPS IIIB
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・三糖:GlcNAc−GlcA/IdoA(+/−2S)−GlcN(+/−NS、+/−6S)
・EANRE
・MPS Iファミリー、MPS IIファミリーおよびMPS VIIファミリーからの二糖
MPS IIIC
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・三糖:GlcN−GlcA/IdoA(+/−2S)−GlcN(+/−NS、+/−6S)
・EANRE
・MPS IIIBファミリーからの二糖
MPS IIID
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・三糖:GlcN(+/−NS)6S−GlcA/IdoA(+/−2S)−GlcN(+/−NS、+/−6S)
・EANRE
・MPS IIIAファミリーおよびMPS IIIBファミリーからの二糖
MPS IVA
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・KS由来の単糖、二糖および三糖:Gal6S、Gal6S−GlcNAc(+/−6S)、Gal6S−UA(+/−2S)−Gal(+/−6S)
・CS由来の単糖、二糖および三糖:GalNAc6S(+/−4S)、GalNAc6S(+/−4S)−UA(+/−2S)−GalNAc(+/−4S、+/−6S)
・EANRE
・MPS IVBファミリーからの単糖および二糖
MPS VI
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・CS由来の単糖および三糖:GalNAc4S、GalNAc4S−UA(+/−2S)−GalNAc(+/−4S、+/−6S)
・EANRE
・ヘキソサミニダーゼ欠損症からのNRE
MPS VII
・疾患特異的NRE(飽和した断片)
・二糖:GlcA−GlcN(+/−NS、+/−6S)
・EANRE
・MPS IIIAファミリー、MPS IIIBファミリーおよびMPS IIIDファミリーからの二糖。
(NREバイオマーカーと非NREバイオマーカーとの比)
ある実施形態において、本書に与えられる方法は、NREバイオマーカーである第1のバイオマーカーと、非NREバイオマーカー(例えば、還元末端グリカン残存バイオマーカーまたは内部グリカン残存バイオマーカー)である第2のバイオマーカーとを比較することを含む。いくつかの実施形態において、第1のバイオマーカーは、特定の疾患(例えば、MPS疾患)に特異的である。具体的な実施形態において、第2のバイオマーカーは、内部バイオマーカー(例えば、表9からのもの)である。より具体的な実施形態において、上記方法は、異常なグリカンの生合成、分解および/または蓄積と関連する障害の処置のための治療法と組み合わされて利用される。
ある実施形態において、第2のバイオマーカーは、非NREマーカー(例えば、上述のEANRE以外のもの)である。ERTの非治療的作用は、特定のNRE構造を除去してしまうのではあるが、グリカンの蓄積のレベルを低下させないため、疾患特異的NREと他の非NRE構造との比も、ERTの作用の部位を決定するために使用され得る。
例示的な実施形態において、ここで、診断される疾患、または、別な方法で分析される疾患は、MPS IIであって、疾患特異的NREは、IdoA2S−GlcN(+/−NS、+/−6S)である。ERT(2−スルファターゼ)がリソソームに作用した場合、このNREは2−O脱硫酸化されて、IdoA−GlcN(+/−NS、+/−6S)で終結するGAG断片を生じる。その断片は、MPS II患者において機能的である後続のリソソーム酵素によって直ちに除去される。反対に、ERTがリソソームの外部において作用する場合、リアーゼによって遊離する内部HS断片の存在量は一定であり続ける。従って、MPS IIと、ΔUA−GlcNAcまたはΔUA−GlcNSなどの内部HS由来の構造とを同時にモニターすることによって、治療の真のリソソーム活性が測定され得る。
いくつかの実施形態において、本書に記載される方法は、本書に記載される疾患の重症度を決定するために利用される。上記実施形態のいくつかにおいて、異なるバイオマーカー(例えば、NREバイオマーカー)の存在量の比を、疾患の重症度、および/または治療に対する反応を決定するために、分析してもよいし、利用してもよい。
例えば、各々のMPSクラスは、蓄積する多数の特異的NRE構造を有する。いくつかの実施形態において、異なる特異的な構造の比は、疾患の重症度が変わるごとに変化する。例えば、MPS IIにおいて、疾患の重症度に従って異なる存在量で見いだされる多数のHS由来のNRE(IdoA2S−GlcNS、IdoA2S−GlcNS6S、IdoA2S−GlcNAc、IdoA2S−GlcNAc6S)およびCS/DS由来のNRE(IdoA2S−GalNAc4S、IdoA2S−GalNAc6S、IdoA2S−GalNAc、IdoA2S−GalNAc4S6S)がある。これら別個のNRE構造の比をモニターすることによって、疾患の重症度についての情報、および治療に対する反応についての情報を取得し得る。
いくつかの実施形態において、本書に記載される方法は、疾患を特定するために利用される。具体的な実施形態において、NREバイオマーカーの比、または内部GAGリアーゼ生成バイオマーカーの比を、上記方法において利用する。ある実施例において、リアーゼ消化の後に生成された種々のNREおよび内部不飽和糖の存在量の比を、ヒトの疾患の存在を示すために使用し得る。
具体的な実施形態において、本書に記載される方法は、骨盤異形成症(HS、CSおよびDSから生じるグリコサミノグリカンリアーゼ生成断片の比を変えるUDP糖供与体の減少を引き起こす)を特定するために利用される。他の例示的な実施形態において、ヘパラン硫酸の2−O硫酸化に必要とされる酵素の欠陥を、不飽和2−O硫酸化二糖(リアーゼ消化によって生成された)と、非2−O硫酸化二糖との比を調べることによって特定し得る。いくつかの例において、この比の減少は、ヘパラン硫酸の2−O硫酸化の途絶、およびヒトの疾患の存在を示す。さらなる例示的な実施形態において、4−O硫酸化コンドロイチンおよびデルマタン硫酸の生合成における欠陥は、不飽和4−O硫酸化二糖(非4−O硫酸化二糖へのリアーゼ消化後に生成される)の比を調べることによって特定され得る。いくつかの例において、この比の減少は、コンドロイチン硫酸の4−O硫酸化の途絶、およびヒトの疾患の存在を示す。よりさらなる例示的な実施形態において、PAP(3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸)合成または運搬の欠陥を、リアーゼ生成グリコサミノグリカン断片の存在量の比、またはリアーゼ生成グリコサミノグリカン断片の割合の比における変化において特定し得る。
(障害)
ある実施形態において、異常なグリカンの蓄積に関連する障害は、それと共に関連する障害が、異常に機能するグリカン分解酵素によって引き起こされることを含む。種々の実施形態において、異常に機能するグリカン分解酵素は、異常に低い量で存在すること、不適切に機能すること、またはそれらの組み合わせの結果として、異常に機能する。例えば、異常に機能するグリカン分解酵素は、正常な量のグリカン分解酵素を有する個体(例えば、疾患に罹っていない状態、正常型の状態、または野生型の状態の個体)に存在する量の、50%未満の量、40%未満の量、30%未満の量、20%未満の量、10%未満の量または5%未満の量で存在している結果として、異常に機能する。さらなる実施形態または代わりの実施形態において、異常に機能するグリカン分解酵素は、正常な量で存在するが、グリカンを分解する上で適切に機能しない。例えば、上記酵素は、それらの配列において、酵素のグリカン分解の性質を減退または排除するアミノ酸の置換を有していてもよい。
MPS Iは、リソソーム酵素のL−イズロニダーゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、イズロン酸を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。非還元末端上にイズロン酸を有するグリカンは、この酵素欠陥に起因して、高いレベルまで蓄積する(ヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS Iを、個体において、当該個体から採取された生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄し(例えば、水または緩衝液を用いて)、遊離単糖を除去して、次に、イズロニダーゼで処理する(例えば、グリカン残存化合物のイズロン酸を遊離させるために)。ある実施形態において、インキュベーションの後に、遊離したイズロン酸を、例えば、画定されたMWカットオフ膜を介して遊離単糖を洗浄すること(または他の方法)によって単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、単糖は、通過画分中にあるであろう。単離された単糖溶液を、任意で、乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、イズロン酸含有量について分析する。この方法は、MPS I疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS IIは、リソソーム酵素の2−スルファターゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、2−O硫酸化ウロン酸を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。非還元末端上の2−硫酸化ウロン酸を有するグリカンは、この酵素欠陥に起因して、高いレベルまで蓄積する(ヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IIを、個体において、当該個体から採取された生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離硫酸塩を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、2−スルファターゼで処理する(例えば、グリカン残存化合物の硫酸塩を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離した硫酸塩を、遊離単糖を洗浄することによって任意で単離する(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介して、または、任意の他の好適な方法によって)。上記実施形態のいくつかにおいて、遊離硫酸塩は、通過画分中にある。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、硫酸塩含有量について分析する。この方法は、MPS II疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。他の例示的な実施形態において、2−スルファターゼを用いた処理後に、生成した2−O脱硫酸化非還元末端ウロン酸残基を、イズロニダーゼまたはグルクロニダーゼを用いて任意で遊離させる。上記実施形態のいくつかにおいて、生成遊離単糖を、例えば、遊離単糖を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜、または任意の他の好適な方法を介して)任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、遊離イズロン酸または遊離グルクロン酸は、通過画分中にある。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS II疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS IIIAは、リソソーム酵素のN−スルファターゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、N−硫酸化グルコサミン残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。非還元末端上にN−硫酸化グルコサミン残基を有するグリカンは、この酵素欠陥に起因して、高いレベルまで蓄積する(ヘパラン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IIIAを、個体において、当該個体から採取された生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄し(例えば、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、遊離硫酸塩を除去して、N−スルファターゼを用いて処理する。ある実施形態において、インキュベーション後に、遊離した硫酸塩を、例えば、遊離単糖を洗浄することによって(画定されたMWカットオフ膜または任意の他の好適な方法を介するなどして)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離硫酸塩は、通過画分中にある。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、硫酸塩含有量について分析する。この方法は、MPS IIIA疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。さらなる実施形態、または代わりの実施形態において、N−スルファターゼを用いた処理後に、生成したN−脱硫酸化非還元末端グルコサミン残基を、ヘキソサミニダーゼによって任意で遊離させる。上記実施形態のいくつかにおいて、遊離した単糖を、任意で単離する(例えば、画定されたMWカットオフ膜、または任意の他の好適な方法を介するなどして、遊離単糖を洗浄することによって)。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離グルコサミンは、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIIA疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IIIAを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄し(例えば、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、遊離単糖を除去して、ヘパリンリアーゼなどのN−スルホグルコサミニダーゼを用いて処理する。いくつかの実施形態において、遊離した硫酸化単糖を、例えば、遊離単糖を洗浄することによって(画定されたMWカットオフ膜、または任意の他の好適な方法を介するなどして)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離N−硫酸化グルコサミンは、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIIA疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS IIIAを、個体において、当該個体から採取された生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄し(例えば、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、遊離単糖を除去して、N−スルファターゼを用いて処理する。ある実施形態において、その後、生成グリカンを、N−脱硫酸化非還元末端グルコサミン残基がアセチル化されるように(例えば、N−アセチルトランスフェラーゼを用いて)処理して、その後に、ヘキソサミニダーゼを用いて遊離させる。上記実施形態のいくつかにおいて、生成遊離単糖を、例えば、遊離単糖を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜、または任意の他の好適な方法を介して)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離N−アセチルグルコサミンは、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離組成物を、任意で乾燥させるか、または他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIIA疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS IIIBは、酵素N−アセチルグルコサミニダーゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、N−アセチルグルコサミン残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。この酵素欠陥に起因して、非還元末端上にN−アセチルグルコサミン残基を有するグリカンは、高いレベルまで蓄積する(ヘパラン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS IIIBを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離N−アセチルグルコサミンを除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、アセチルグルコサミニダーゼまたはヘパリンリアーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のN−アセチルグルコサミンを遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したN−アセチルグルコサミンを、遊離単糖を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、遊離単糖は、通過画分中にある。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIIB疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IIIAを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄し(例えば、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、遊離酢酸塩を除去して、デアセチラーゼを用いて処理する。遊離した酢酸塩を、例えば、遊離酢酸塩を洗浄することによって(画定されたMWカットオフ膜、または任意の他の好適な方法を介するなどして)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離酢酸塩は、通過画分中に存在する。いくつかの実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、酢酸塩含有量について分析する。この方法は、MPS IIIB疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS IIICは、酵素N−アセチルトランスファーゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、グルコサミン残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。この酵素欠陥に起因して、非還元末端上にグルコサミン残基を有するグリカンは、高いレベルまで蓄積する(ヘパラン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS IIICを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離グルコサミンを除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、ヘキソサミニダーゼまたはヘパリンリアーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のグルコサミンを遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したグルコサミンを、遊離グルコサミンを洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離グルコサミンは、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、かつ、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIIC疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IIICを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離グルコサミンおよび/または遊離N−アセチルグルコサミンを除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、グルコサミンN−アセチルトランスフェラーゼを用いて処理された後に、ヘキソサミニダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のN−アセチルグルコサミンを遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したN−アセチルグルコサミンを、遊離N−アセチルグルコサミンを洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離N−アセチルグルコサミンは、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、かつ、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIIC疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS IIIDは、酵素グルコサミン6−Oスルファターゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、6−O−硫酸化グルコサミン残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。この酵素欠陥に起因して、非還元末端上に6−O−硫酸化N−アセチルグルコサミン残基を有するグリカンは、高いレベルまで蓄積する(ヘパラン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS IIICを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離硫酸塩を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、6−O−スルファターゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物の硫酸塩を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離した硫酸塩を、遊離硫酸塩を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離グルコサミンは、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、硫酸塩含有量について分析する。この方法は、MPS IIID疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IIIDを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離硫酸塩および/または遊離N−アセチルグルコサミンを除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、6−Oスルファターゼおよびヘキソサミニダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のN−アセチルグルコサミンを遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したN−アセチルグルコサミンを、遊離N−アセチルグルコサミンを洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離単糖は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIID疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IIIDを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離硫酸塩および/または遊離N−アセチルグルコサミン6−O硫酸を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、ヘキソサミニダーゼまたはヘパリンリアーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のN−アセチルグルコサミン6−O硫酸を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したN−アセチルグルコサミン6−O硫酸を、遊離N−アセチルグルコサミン6−O硫酸を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離単糖は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IIID疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS IVAは、酵素リソソーム酵素ガラクトース/N−アセチルグルコサミン6−Oスルファターゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、6−O−硫酸化ガラクトース残基および6−O硫酸化N−アセチルグルコサミン残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。この酵素欠陥に起因して、非還元末端上に6−O−硫酸化ガラクトース残基および6−O−硫酸化N−アセチルグルコサミン残基を有するグリカンは、高いレベルまで蓄積する(コンドロイチンおよびケラタン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS IVAを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離単糖を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、6−O−スルファターゼおよび/またはN−アセチルガラクトサミン6−Oスルファターゼならびにガラクトシダーゼおよび/またはヘキソサミニダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のGalおよび/またはGalNAcを遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離した単糖を、遊離単糖を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離単糖は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における、化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IVA疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS IVAを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離硫酸塩を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、6−O−硫酸化ガラクトース残基および/または6−O硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を脱硫酸化することが可能な6−O−スルファターゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物の硫酸塩を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離した硫酸塩を、遊離硫酸塩を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離硫酸塩は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、硫酸塩含有量について分析する。この方法は、MPS IVA疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS IVBは、酵素リソソームβ−ガラクトシダーゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、ガラクトース残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。この酵素欠陥に起因して、非還元末端上にβ−ガラクトース残基を有するグリカンは、高いレベルまで蓄積する(ケラタン硫酸および他のグリカンを含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS IVBを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離単糖を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、ガラクトシダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のGalを遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離した単糖を、遊離単糖を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離単糖は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS IVB疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS VIは、N−アセチルガラクトサミンを脱硫酸化する酵素4−Oスルファターゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、4−O−硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。この酵素欠陥に起因して、非還元末端上に4−O−硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を有するグリカンは、高いレベルまで蓄積する(コンドロイチン硫酸を含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS VIを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離硫酸塩を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、4−O−硫酸化N−アセチルガラクトサミン残基を脱硫酸化し得る4−Oスルファターゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物の硫酸塩を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離した硫酸塩を、遊離硫酸塩を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離硫酸塩は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、硫酸塩含有量について分析する。この方法は、MPS VI疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
上述したように、ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、MPS VIを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離N−アセチルガラクトサミンを除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、4−O−硫酸化Nアセチルガラクトサミン残基を脱硫酸化することが可能な4−O−スルファターゼを用いて処理して、次にヘキソサミニダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のN−アセチルガラクトサミンを遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したN−アセチルガラクトサミンを、遊離単糖を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離単糖は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GCなど)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS VI疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
MPS VIIは、リソソーム酵素β−グルクロニダーゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素は、グルクロン酸残基を含むグリカンを分解するために、リソソームにおいて必要とされる。この酵素欠陥に起因して、非還元末端上にグルクロン酸残基を有するグリカンは、高いレベルまで蓄積する(コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸などを含む)。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、MPS VIIを、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離グルクロン酸を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、グルクロニダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のグルクロン酸を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離した単糖は、遊離単糖を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離単糖は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、単糖含有量について分析する。この方法は、MPS VII疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
また、本書に記載される方法は、異なるグリカンクラスの相対的な存在量を明確に定めるために使用され得る。
ファブリー疾患は、リソソームα−ガラクトシダーゼにおける欠陥によって引き起こされるヒト遺伝疾患である。この酵素欠陥に起因して、非還元末端α−ガラクトース残基を有するグリカンが大量に存在する。ある実施形態において、本書に記載される方法を用いて、ファブリー疾患を、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離単糖を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、非還元末端の単糖を遊離させることが可能なガラクトシダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したグリカン残存化合物を、遊離グリカン残存化合物を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離グリカン残存化合物は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、グリカン残存化合物含有量について分析する。この方法は、ファブリー疾患を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
いくつかの実施形態において、表1に記載されているように、他の酵素およびプロセスは、任意で、他のリソソーム蓄積症(LSDs)を診断するために利用される。表に記載されているように、好適な酵素を、特定の疾患にとって適切であるように選択し得る。
腫瘍学−シアル酸を介したメラノーマおよび神経芽細胞腫
癌の特徴は、変質したグリコシル化である。グリコシル化における変化は、グリカンの、生合成、代謝回転、提示、安定性、可溶性および分解を調節する酵素および因子における変化の反映である。これらの変化の多くは、変質した構造を有するグリカンが生成される結果となる。ここで記載される方法は、癌疾患を患う個体に存在するグリカンの非還元末端上に存在するそれらの構造変化を評価する(例えば、異常なグリカンの蓄積を測定する)ために、種々の実施形態において利用される。
本書に記載される方法に係る診断および/または治療のモニタリングに適した癌疾患のいくつかの例は、非限定的な例として、悪性黒色腫および神経芽細胞腫を含む。いくつかの例において、上記癌は、ガングリオシドの生合成、代謝回転、提示、安定性、可溶性または分解における変質を有する。いくつかの例において、これらのシアル酸で修飾された糖脂質を、これらの腫瘍型を有する患者の生物学的サンプル(例えば、血清)において、検出し、および/または、他の方法によって特徴づけるか、もしくは、分析する。いくつかの実施形態において、ガングリオシドの異質集団の存在量を、血液中のガングリオシドから放出されるシアル酸または他のグリカン残基を測定して、定量化する。
この酵素変性に起因して、ガングリオシドおよび他のグリカンは、体内において高いレベルで存在する。ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、癌(例えば、悪性黒色腫または神経芽細胞腫)を、個体において、当該個体から採取された生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、シアル酸を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、シアル酸を遊離させることが可能なシアリダーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のシアル酸を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したシアル酸を、遊離シアル酸を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離シアル酸は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における化学的誘導体化または酵素による誘導体化を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、シアル酸含有量について分析する。この方法は、癌(例えば、悪性黒色腫または神経芽細胞腫)を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
腫瘍学−ヘパラン硫酸非還元末端を介した骨髄腫
本書に記載される方法に従って(すなわち、上記方法を用いて、グリカンの変質した分解を分析することによって)診断されて、かつ/またはモニターされるヒトの癌の例は、多発性骨髄腫である。ある例において、多発性骨髄腫は、一般的に、ヘパラナーゼを生成する。ヘパラナーゼは、ヘパラン硫酸をより小さな断片に切断したことによって、新しい非還元末端構造を露出させるエンドグリコシダーゼである。本書に記載されるある実施形態において、これらの新しい非還元末端構造の存在を、本書に記載される任意の方法を用いて(例えば、新しいグリカン非還元末端の存在を検出するために、種々のグリコシダーゼまたはスルファターゼと共に生物学的サンプルをインキュベートすることによって)検出する。
この酵素変性に起因して、グリカン(ヘパラン硫酸などを含む)は、体内において高いレベルで存在する。ある実施形態において、本書に記載される方法を使用して、癌(例えば、多発性骨髄腫)を、個体において、当該個体から採取される生物学的サンプルから診断する。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルを、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置して、任意で洗浄して(例えば、遊離単糖および/または遊離硫酸塩を除去するために、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)、非還元末端の単糖または硫酸塩を遊離させることが可能なスルファターゼ、イズロニダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘキソサミニダーゼまたはリアーゼを用いて処理する(例えば、グリカン残存化合物のシアル酸を遊離させるために)。いくつかの実施形態において、インキュベーション後に、遊離したグリカン残存化合物を、遊離グリカン残存化合物を洗浄することによって(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介するか、または任意の他の好適な方法によって)、任意で単離する。上記実施形態のいくつかにおいて、検出および/または定量化のための遊離グリカン残存化合物は、通過画分中に存在する。ある実施形態において、生成単離溶液を、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理し、サンプルを濃縮して、その後に、任意の好適な分析技術(例えば、検出前における、化学的誘導体化、または酵素による誘導体化、を用いるかまたは用いない、HPLC、MS、GC、pH検出など)によって、グリカン残存化合物含有量について分析する。この方法は、癌(例えば、多発性骨髄腫)を検出するため、疾患の重症度を測定するため、または、治療に対する反応を測定するために用いられ得る。
腫瘍学−腺癌
腺癌は、増加したシアリル化およびフコシル化を含むグリコシル化における変化に関連する。記載される方法は、非還元末端のシアル酸の量または非還元末端のフコースの量について、患者からのグリカン(特異的なグリカンクラスについて、全量の、または、精製された、または、濃縮された)を分析することによって、シアリダーゼまたはフコシダーゼを用いた処理後に、これらのグリカン残基の放出を測定することによって、疾患を測定するために用いられ得る。
他の適用
表12〜15に記載されるように、グリコシル化における変化と関連する種々の疾患を、本書に記載される方法に従って、任意で診断し、および/またはモニターする。種々の障害は、非限定的な例として、リソソーム蓄積症、癌、神経系疾患(痴呆、アルツハイマー病など)、肝疾患、骨疾患、感染症などを含む。
リソソーム蓄積症(LSD)を有する個体を診断する方法(例えば、病状、または病状の重症度を含む)、または、リソソーム蓄積症(LSD)の治療をモニターする方法が、本書において与えられる。本書に記載される種々の実施形態に従って、任意で、診断され、および/またはモニターされる疾患の具体的な実施形態は、表10において与えられる。また、表12は、LSDを患っている個体、またはLSDを患っていると疑われる個体(例えば、前スクリーニングプロセスまたは予備的なスクリーニングプロセスを介して)からの生物学的サンプルを処理するために任意で利用される特異的な酵素の種々の非限定的な実施形態を示す。その上、表12は、リソソーム蓄積症(LSD)を診断し、および/またはモニターするために、任意で、検出され、および/または測定される遊離したグリカン残存化合物のような、本書に記載される種々の実施形態において遊離させられる種々のグリカン残存化合物をさらに示す。
癌の病状を有する個体を診断する方法(例えば、病状、または病状の重症度を含む)、または癌の治療をモニターする方法が、本書において与えられる。本書に記載される種々の実施形態に従って、任意で診断され、および/またはモニターされる疾患の具体的な実施形態は、表13において与えられる。また、表13は、癌病状を患っている個体、または癌病状を患っていると疑われる個体(例えば、前スクリーニングプロセスまたは予備的なスクリーニングプロセスを介して)からの生物学的サンプルを処理するために任意で利用される特異的な酵素の種々の非限定的な実施形態を示す。その上、表13は、癌病状を診断し、および/またはモニターするために、任意で、検出され、および/または測定される遊離したグリカン残存化合物のような、本書に記載される種々の実施形態において遊離させられる種々のグリカン残存化合物をさらに示す。
異常なグリカンの蓄積に関連する病状を有する個体を診断する方法(例えば、病状、または病状の重症度)が、本書において与えられる。本書に記載される種々の実施形態に従って、任意で診断され、および/またはモニターされる疾患の具体的な実施形態は、表14において与えられる。また、表14は、異常なグリカンの蓄積と関連する種々の病状を患っている個体、または異常なグリカンの蓄積と関連する種々の病状を患っていると疑われる個体(例えば、前スクリーニングプロセスまたは予備的なスクリーニングプロセスを介して)からの生物学的サンプルを処理するために、任意で利用される特異的な酵素の種々の非限定的な実施形態を示す。その上、表14は、種々の病状を診断し、および/またはモニターするために、任意で、検出され、および/または測定される遊離したグリカン残存化合物のような、本書に記載される種々の実施形態において遊離させられる種々のグリカン残存化合物をさらに示す。
異常なグリカンの蓄積に関連する感染性病状を有する個体を診断する方法(例えば、病状、または病状の重症度)が、本書において与えられる。本書に記載される種々の実施形態に従って、任意で診断され、および/またはモニターされる疾患の具体的な実施形態は、表15において与えられる。また、表15は、異常なグリカンの蓄積と関連する種々の感染性病状を患っている個体、または異常なグリカンの蓄積と関連する種々の感染性病状を患っていると疑われる個体(例えば、前スクリーニングプロセスまたは予備的なスクリーニングプロセスを介して)からの生物学的サンプルを処理するために、任意で利用される特異的な酵素の種々の非限定的な実施形態を示す。その上、表15は、種々の感染性病状を診断し、および/またはモニターするために、任意で、検出され、および/または測定される遊離したグリカン残存化合物のような、本書に記載される種々の実施形態において遊離させられる種々のグリカン残存化合物をさらに示す。
図1は、本書に記載される酵素によるグリカン残基遊離プロセスを経ていない正常な生物学的サンプルに存在する化合物を示す。図2は、本書に記載される酵素によるグリカン残基遊離プロセスを経た正常な生物学的被検体に存在する化合物を示す。図3は、本書に記載される酵素によるグリカン残基遊離プロセスを経ていない、異常なグリカンの蓄積に関連する障害を患う個体の生物学的サンプルに存在する化合物を示す。図4は、本書に記載される酵素によるグリカン残基遊離プロセスを経た、異常なグリカンの蓄積と関連する障害を患う個体の生物学的サンプルに存在する化合物を示す。
(検出および測定)
本書に記載されるグリカン残存化合物(例えば、オリゴ糖、単糖、硫酸塩、リン酸塩、シアル酸、酢酸塩などを含む)を、任意の好適な方法で、本書に記載されるプロセスにおいて、検出し、および/または測定する。いくつかの実施形態において、グリカン残存化合物を、修飾されていない形態で検出し、および/または測定する。他の実施形態において、グリカン残存化合物を、検出可能なラベルで、前もって標識して、標識されたグリカン残存化合物を検出する。
いくつかの実施形態において、標識されていない化合物を、例えば、pH、定量的な核磁気共鳴(NMR)などによって、任意の好適な方法で任意で検出し、および/または測定する。
種々の実施形態において、本書に記載される方法は、遊離したグリカン残基の量が異常であるかどうかを決定することを含んでおり、かつ、上記決定は、検出可能なラベルを用いてグリカン残基を標識することと、標識されたグリカン残基の量を分析装置で測定することと、を含む。具体的な実施形態において、検出可能なラベルは、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色ラベル、または親和性ラベルである。いくつかの実施形態において、遊離したグリカンの量を、UV−Vis分光法、IR分光法、質量分析法またはそれらの組み合わせを用いて測定する。
本書に記載される任意のプロセスまたは方法の種々の実施形態において、任意の、適切で、検出可能なラベルを、任意で利用する。いくつかの実施形態において、本書に記載されるプロセスまたは方法において有用で、検出可能なラベルは、非限定的な例として、質量ラベル、抗体、親和性ラベル、放射性同位体ラベル、発色団、蛍光ラベルなどを含む。
本書の種々の実施形態における使用に適した蛍光ラベルは、非限定的な例として、2−アミノピリジン(2−AP)、2−アミノ安息香酸(2−AA)、2−アミノベンザミド(2−AB)、2−アミノアクリドン(AMAC)、p−アミノ安息香酸エチルエステル(ABEE)、p−アミノベンゾニトリル(ABN)、2−アミノ−6−シアノエチルピリジン(ACP)、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)、8−アミノナフタレン−1,3,6−三硫酸(ANTS)、7−アミノナフタレン−1,3−ジスルフィド(ANDS)および8−アミノピレン−1,3,6−三硫酸(APTS)などを含む。蛍光ラベルを、蛍光ラベルおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどを用いた還元的アミノ化によって結合させ得る。
本書の種々の実施形態における使用に適した質量ラベルは、非限定的な例として、D−2−アントラニル酸、D−2−アミノピリジン、D−ヨウ化メチル、13Cヨウ化メチル、重水素化ピリジルアミン、D−ビオチンなどを含む。質量ラベルを、当業者に知られる任意の方法によるパーメチル化または還元的アミノ化によって結合させ得る。
本書の種々の実施形態における使用に適した親和性ラベルは、非限定的な例として、ビオチンおよび誘導体を含む。
本書の種々の実施形態における使用に適した放射性同位体ラベルは、非限定的な例として、トリチウム化ホウ素ナトリウム(NaB3H4)、3H、14C、32P、35Sなどを含む。
本書の種々の実施形態における使用に適した発色団は、非限定的な例として、4−アミノ−1,1’−アゾベンゼン、4’−N,N−ジメチルアミノ−4−アミノアゾベンゼン、アミノアゾベンゼン、ジアミノアゾベンゼン、Direct Red 16、CI Acid Red 57、CI Acid Blue 45、CI Acid Blue 22、CL Mordant Brown 13、CI Direct Orange 75などを含む。発色団を、発色団およびシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元的アミノ化などの、当業者に知られる任意の方法によって標識付けする。
いくつかの実施形態において、検出可能なラベルは、抗体である。具体的な実施形態において、抗体を、質量ラベル、放射性同位体ラベル、発色団、蛍光ラベルなどの検出可能な化合物に結合させる。いくつかの実施形態において、抗体は、それ自体を検出し、および/または、抗体は、例えば、発色団、蛍光物質などのような種々の方法により検出可能であるか、または、抗体は、プローブを用いた種々の方法により検出可能である(例えば、ドットブロット技術、免疫検出技術など)。
ある実施形態において、検出可能なラベルを、任意の技術、特に、利用される検出可能なラベルに適した任意の技術を用いる本書に記載されたプロセスに従って、検出し、および/または定量化する。いくつかの実施形態において、好適な検出技術は、非限定的な例として、質量分析器、核磁気共鳴分光器、UV−Vis分光器、IR分光器、蛍光光度計、燐光光度計、放射線スペクトロメータ(例えば、シンチレーション計数器)、薄層クロマトグラフィー技術などの1つ以上を含む。ある実施形態において、本書に記載される任意のプロセスで、グリカン残存化合物を、定量的な核磁気共鳴などの好適な技術を用いて、任意で、直接的に検出する。また、定量的な核磁気共鳴を任意で利用して、検出可能なラベルの存在を定量化および/または検出する。ある実施形態において、1つ以上のグリカン残存化合物を、好適な液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS)を用いて任意で検出する。
いくつかの実施形態において、グリカン残存化合物を、抗体またはプローブで標識して、かつ、任意の好適な方法(例えば、ドットブロット技術、免疫検出技術(例えば、ELISA)など)を用いて定量化する。
本書に記載されるプロセスに有用な種々の分析方法は、非限定的な例として、質量分析、クロマトグラフィー、HPLC、UPLC、TLC、GC、HPAEC−PAD、電気泳動法−キャピラリーまたはゲルなどを含む。ある実施形態において、ここで、クロマトグラフィーの技術を利用し、任意の好適な溶媒システムを任意で用いる。ある実施形態において、カラム(例えば、Cosmogel DEAE、Tsk Gel DEAE、Cosmogel QA、Cosmogel CM、Cosmogel SPなど)を、例えば、およそpH6、7または8の平衡化溶媒(例えば、酢酸カリウム溶液、塩化ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、酢酸アンモニウム溶液などの緩衝液または塩溶液)を用いて任意で充填する。いくつかの実施形態において、緩衝液または塩溶液は、およそ10mM、20mM、30mM、50mM、100mM、500mM、1M、2Mなどの濃度を有する。任意の好適な流速は、例えば、0.5mL/min、1mL,min、1.5mL/min、2mL/minなどを用いる。平衡化の後に、直線濃度勾配を任意で利用する。いくつかの実施形態において、直線濃度勾配を、1−20分間、1−10分間、10−20分間、1−5分間、5−10分間などにわたって流す。ある実施形態において、当該濃度勾配は、例えば、上記のような緩衝液または塩溶液(例えば、0Mから0.5Mまで、0Mから3Mまで、0.5Mから2Mまで、0Mから2Mまで、1Mから2Mまで、0Mから3Mまで、2Mから0Mまで、3Mから0Mまで等)である。濃度勾配が最終濃度に到達したら、溶出液を、任意で、好適な時間のあいだ最終濃度に維持する(例えば、1−20分間、5−10分間、10−15分間、1−5分間、1−10分間、15−20分間など)。最終濃度を任意で維持したあと、溶出液を、第二の溶媒または第二の溶媒システムに交換してもよい(例えば、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールなどのアルコール、アセトニトリル、水など)。第二の溶媒システムへの交換は、例えば、15秒間、30秒間、45秒間、60秒間、2分間、3分間などの時間にわたってもよい。第二の溶媒システムを、任意で、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間などの時間、維持する。第二の溶媒システムのサイクルの後に、カラムを、任意で、最初の溶媒条件に戻す。
(精製)
ある実施形態において、本書に記載された方法は、生物学的サンプルを、例えば当該生物学的サンプルから非グリカン化合物を除去するために、精製することを含んでいる。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルはそのグリカンを変性する前に精製される。
ある実施形態において、グリカンを含む生物学的サンプル(精製された、または、精製されていない)はまた、生物学的サンプルに元々存在する全ての遊離しているグリカン残存化合物(例えば、単糖)がサンプルから除去されて、バックグラウンドのシグナルが低減するように(例えば、透析、スピンカラム、ゲル濾過などを用いて)調製され得る。
いくつかの実施形態において、本書に記載された任意のプロセスは、生物学的サンプルから単糖を除去すること、生物学的サンプルから硫酸塩を除去すること、生物学的サンプルからリン酸塩を除去すること、生物学的サンプルから酢酸塩を除去すること、生物学的サンプルからシアル塩を除去すること、またはそれらの組み合わせを含む、生物学的サンプルを精製するステップを含む。例えば、いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、画定されたMWカットオフスピンカラム(回転させた場合、大きな分子を保持する)に任意で載置、および/または、任意で洗浄(例えば、1倍以上の体積量の水または緩衝液を用いて)などされる。
ある実施形態において、生物学的サンプルの精製は、さらにまたは代わりに、例えば、それに含まれるグリカンの分画、精製、濃縮などを含んでもよい。いくつかの例において、当該精製技術は、1つ以上の当該グリカンの変性の前に生物学的サンプル中の異なるグリカンクラスを単離および/または分離するのに適している。より具体的な例において、当該精製技術は、1つのグリカンクラスの異なるサブセットを単離および/または分離する(ハイブリッドのN−結合構造から複合N−結合グリカンを単離するなど)ために利用される。ある実施形態において、生物学的サンプルは、特定のグリカンクラスについて富ませるような形で、任意で調製される。例えば、PHAアフィニティーカラムは、複合N−結合グリカンのサブフラクションを単離するために任意で利用され、一方、ConAカラムはN−結合グリカンの別のサブセットを富ませるために利用され得る。
いくつかの実施形態において、本書に記載された任意のプロセスは、本書に記載されたプロセスから得られたグリカン残存化合物の精製(例えば、分析される前におけるグリカン残存化合物の精製)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、グリカン残存化合物は、任意の適当なプロセス(遊離グリカン残存化合物を洗浄することなど)によって任意で単離される(例えば、画定されたMWカットオフ膜を介して、または、任意の他の適当な方法によって)。さらに、ある実施形態において、生成単離グリカン残存化合物を含む組成物は、任意で乾燥させるか、または、他の方法によって処理され、サンプルが濃縮されて、その後に、任意の好適な分析技術によって、グリカン残存化合物含有量について分析される。
いくつかの実施形態において、本書に記載されたプロセスは、試験サンプルおよび/または対照サンプルのさらなる処理ステップを含む。例えば、いくつかの実施形態において、サンプルは均質化および/または精製される。具体的な実施形態において、均質化は、任意の適当な方法(非限定的な例として、塩基溶液、超音波処理、組織粉砕または他の化学薬品を用いることが挙げられる)において達成される。いくつかの実施形態において、障害の重症度は、所定の閾値量が測定されるか否か(例えば、対照(1つまたは複数)と比較して)、または、閾値シグナルが測定されるか否か(例えば、蛍光計、または、生成したバイオマーカーを検出および/もしくは測定するために利用される他の分析装置において)を決定される。同様に、本書に記載された障害のキャリアは、ある実施形態において、所定の閾値量が測定されるか否か(例えば、対照(1つまたは複数)と比較して)、または、閾値シグナルが測定されるか否か(例えば、蛍光計、または、生成したバイオマーカーを検出および/もしくは測定するために利用される他の分析装置において)を決定される。
ある実施形態において、本書に記載されたサンプル(試験サンプルおよび/または対照サンプルを含む)は、グリカンの処理(例えば、リアーゼ処理)および/または特徴づけの前に任意で精製される。試験サンプルおよび/または対照サンプル(すなわち、その中に見出されたグリカンの1つ以上または全て)は、任意の適当な精製技術を用いて任意で精製される。試験サンプルおよび/または対照サンプルは、サンプル中に見出されたグリカンの標識の前または後を含む、本書に記載されたプロセスにおける任意の適当な時点において、任意で精製される。ある実施形態において、精製技術は、遠心、電気泳動、クロマトグラフィー(例えば、シリカゲルまたはアルミナカラムクロマトグラフィー)、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(例えば、逆相HPLCまたはキラルもしくはアキラルカラム)、薄層クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過または透過またはサイズ除去クロマトグラフィー、ゲル電気泳動)、分子ふるいクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ除去、濾過(例えば、フロリジルまたは活性炭プラグを通して)、沈殿、浸透、再結晶化、フルオラス相精製、蒸留、抽出、等電点電気泳動、超臨界流体抽出、分取フラッシュクロマトグラフィー(例えば、UV−Vを用いたフラッシュクロマトグラフィーが検出器)および/または質量分析器(例えば、Biotage(商標)suite of productsを用いて)など含む。
いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸などのグリカンは、コアタンパク質(プロテオグリカンを一緒に形成する)または脂質に結合して天然に見出される。いくつかの実施形態において、本書で提供されるのは、処理および分析のための、グリカンの処理の前にプロテオグリカンまたはグリコ脂質からグリカン断片(例えば、ヘパラン硫酸断片)を分離する精製プロセスである。
(治療のモニタリング)
ある実施形態において提供されるのは、グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療する方法であって、
a.グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤(例えば、抗LSD薬、抗癌剤など)を、それを必要とする個体に投与すること;
b.本書に記載された任意のプロセスに従ってリアーゼ消化した生物学的サンプル(例えば、尿、血清、血漿またはCSFサンプル)に存在するグリカン残存化合物(例えば、単糖、硫酸塩など)の量を検出するまたは定量するための、本書に記載された任意のプロセスを用いて、上記個体におけるグリカンの蓄積をモニターすること、
を含む方法である。
さらなる実施形態または代わりの実施形態において提供されるのは、グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害の治療をモニターする方法であって、
a.グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤(例えば、抗LSD薬、抗癌剤など)を、それを必要とする個体に投与した後、1つ以上の非還元末端グリカン残存化合物(例えば、単糖)を含むバイオマーカーを生成するステップ、
を含む方法である。
いくつかの実施形態において、上記バイオマーカーは飽和単糖であり、上記バイオマーカーは、上記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化酵素を用いて処理することによって生成されるものであり、酵素処理の前において、上記バイオマーカーは、上記疾患または異常を有していない個体と比較して、上記疾患または異常を有する個体由来のサンプル中に豊富には存在しない。ある実施形態において、グリカンの蓄積をモニターすることは、生成した上記バイオマーカーの存在を検出するために、および/または、生成した上記バイオマーカーの量を測定するために分析機器を使用し、上記バイオマーカーの存在または上記バイオマーカーの集団の測定を表示または記録することを含み、ここで上記バイオマーカーの存在および/または上記バイオマーカーの量の測定は、上記治療をモニターするために利用される。
いくつかの実施形態において、上記薬剤は1回以上投与される。ある実施形態において、上記薬剤は、複数回投与される。いくつかの実施形態において、上記薬剤は、1回以上、負荷投与量において(例えば、負荷投与量スケジュールにおいて)投与され、続いて維持量において(例えば、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、週1回などの維持量スケジュールにおいて)投与される。いくつかの実施形態において、グリカン(1つ以上のグリカン残存化合物によって測定する)の蓄積が増加または加速し始めたとき、投与量は任意で調節される(例えば、維持量が増加される、またはされなる負荷投与量または投与スケジュールが利用される)。
いくつかの実施形態において、グリカンの蓄積をモニターすることは、上記個体由来の生物学的サンプル中の、または当該生物学的サンプルから単離された、グリカンの集団を、少なくとも1つのグリカン消化リアーゼを用いて処理して、上記グリカンを1つ以上のグリカン残存化合物の集団に変性させることによって調製された、変性した生物学的サンプルに存在する上記1つ以上のグリカン残存化合物の存在を検出するために、および/または、上記1つ以上のグリカン残存化合物の量を測定するために分析機器を使用するステップを繰り返すことを含む。具体的な実施形態において、上記ステップは、定期的な間隔(例えば、毎日、隔日、2日毎、3日毎、4日毎、毎週、毎月、3ヶ月毎、年4回、6ヶ月毎、年1回など)において、投与後の決まった時間(例えば、薬剤の投与後4時間、薬剤の投与後6時間、薬剤の投与後8時間、薬剤の投与後12時間など)において、投与の実施前(例えば、薬剤の投与の直前、薬剤の投与の2時間前など)において、または任意の他のモニタリングスケジュールにおいて、繰り返される。
いくつかの実施形態において、グリカンの蓄積をモニターすることは、期間を超えて(例えば、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年などを超えて)行われる。いくつかの実施形態において、リアーゼ消化した生物学的サンプル(例えば、尿、血清、血漿またはCSF)中の1つ以上のグリカン残存化合物の量を定量する方法は、上記個体から得られた生物学的サンプルを1つ以上のグリカンリアーゼで処理した後に、上記個体由来のリアーゼ消化した生物学的サンプル中の1つ以上のグリカン残存化合物を検出することおよび/または測定すること(例えば、分析装置を用いて)を含む。ある実施形態において、上記グリカンリアーゼは、上記個体から得られた生物学的サンプルに存在するグリカンからグリカン残存化合物を調製するのに適切である。ある例において、変性した生物学的サンプルにおける1つ以上のグリカン残存化合物の代表的な一部が、任意の適当な検出可能なラベル(例えば、質量ラベル、放射性同位体ラベル、蛍光ラベル、発色団ラベル、アフィニティラベル、抗体)で標識される。いくつかの実施形態において、上記プロセスは、そのようなグリカン残存化合物の集団および/または標識されたグリカン残存化合物の特徴づけを表示すること、または記録することを含む。
いくつかの実施形態において、本書の治療において記載された薬剤は、グリカン蓄積阻害剤、グリカンの分解を促進する薬剤、グリカンを分解する酵素を活性化する薬剤、グリカンの生合成を阻害する薬剤などを含む。いくつかの実施形態において、グリカンの生合成を調節する薬剤は、ヘパラン硫酸の生合成を選択的に調節する薬剤、コンドロイチン硫酸の生合成を選択的に調節する薬剤、デルマタン硫酸の生合成を選択的に調節する薬剤、ケラタン硫酸の生合成を選択的に調節する薬剤、ヒアルロナンの生合成を選択的に調節する薬剤、またはそれらの組み合わせである。抗LSD薬は、非限定的な例として、イミグルセラーゼ(Cerazyme)、ラロニダーゼ(Aldurazyme)、イデュルスルファーゼ(Elaprase)、ガルスルファーゼ(Naglazyme)、アガルシダーゼβ(Fabrazyme)、アルグルコシダーゼα(Myozyme)、アガルシダーゼα(Replagal)、ミグルスタット(Zavesca)を含む。
いくつかの実施形態において、1つ以上の抗癌剤は、アポトーシス促成剤である。抗癌剤の例は、非限定的な例として、ゴシポール、ゲナセンス、ポリフェノールE、クロロフシン、全てのトランスレチノイン酸(ATRA)、ブリオスタチン、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、5−アザ−2’−デオキシシチジン、全てのトランスレチノイン酸、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、ゲルダナマイシン、17−N−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、フラボピリドール、LY294002、ボルテゾミブ、トラスツズマブ、BAY 11−7082、PKC412またはPD184352、Taxol(商標)("パクリタクセル”とも呼ばれ、微小管形成を促進および安定化することによって作用する周知の抗癌剤である)、およびTaxotere(商標)などのTaxol(商標)の類似体を含む。共通の構造的特徴として基本タキサン骨格を有する化合物も、安定した微小管に起因してG2−M期において細胞を抑える能力を有することが示されており、本書に記載された化合物と組み合わせて癌を治療するのに有用であり得る。
抗癌剤のさらなる例としては、細胞有糸分裂活性化タンパク質転移酵素シグナリングの阻害剤、例えば、U0126、PD98059、PD184352、PD0325901、ARRY−142886、SB239063、SP600125、BAY 43−9006、ワートマニン、またはLY294002;Syk阻害剤;mTOR阻害剤;および抗体(例えば、リツキサン)が挙げられる。
他の抗癌剤としては、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;クラブリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクオン;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキセート;エフロニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸ナトリウムエストラムスチン;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンIl(組み換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトジリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスペル;マイトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;ペグアスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルホス酸ナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェナル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;硫酸ビングリシネート;ビンロイロシン硫酸塩;酒石酸ビノレルビン;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシンが挙げられる。
他の抗癌剤としては、20−epi−1、25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アムバムスチン;アミドックス;アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレライド;アナストロゾール;アンドログラフォライド;血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背方化形態形成タンパク質1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗新生物薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィディコリン;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリンス;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β−アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルフォキシミン;カルシポトリオール;カルフォスチンC;カンプトセシン誘導体;カナリア痘IL−2;カペシタビン;カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリンス;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクフォスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロダイデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシフォスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;9−ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルビシン;ホルフェニメクス;ホルメスタン;ホストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビサセタミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫賦活性ペプチド;インスリン様成長因子−1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール、4−;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン−Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトールスタチン;レトロゾール;白血病抑制因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;脂溶性二糖ペプチド;脂溶性白金化合物;リソクリンアミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルロトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチを含む二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽細胞成長因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍抑制因子1ベースの治療薬;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシドB;マイコバクテリウム細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;O6−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導物質;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキザウノマイシン;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリサルフェートナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金−トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質Aベースの免疫調節因子;タンパク質キナーゼC阻害剤;タンパク質キナーゼC阻害剤、微細藻類;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras−GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe 186;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi 1模倣物;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調節因子;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプタートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作用性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラディスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオダイド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣物;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;チタノセンジクロリド;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子治療薬;ベラレソール;ベラミン;ベルディンス;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;バイタクシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物、またはホルモンを含む、さらに他の抗癌剤は、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロロエタミン、シクロホスファミド、クロラムブシルなど)、アルカリスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルマスティン、ロムスチンなど)、またはトリアゼン(例えば、デカルバジンなど)である。代謝拮抗剤の例としては、葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)、またはピリミジン類似体(例えば、シタラビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
天然物の例としては、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド)、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン)、酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ)、または生物応答調節剤(例えば、インターフェロンα)が挙げられるが、これらに限定されない。
アルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロロエタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メイファレンなど)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルマスティン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンなど)、またはトリアゼン(デカルバゼンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。代謝拮抗剤の例としては、葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)またはピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル、フルオロウリジン、シタラビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
ホルモンおよびアンタゴニストの例としては、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン)、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール)、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン)、アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド)、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えば、ロイプロリド)が挙げられるが、これらに限定されない。癌の治療または予防のための、本書に記載された方法および組成物において使用することができる他の薬剤としては、白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボブラチン)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、副腎脂質抑制剤(例えば、ミトタン、アミノグルテチミド)が挙げられる。
いくつかの例において、生物学的サンプルに存在するグリカン残存化合物の同定および/または量の検出および/または定量は、グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を有していると疑われる個体において、当該障害を同定する、および/または、診断するために用いられる。
いくつかの例において、生物学的サンプルに存在するグリカン残存化合物の同定および/または量の検出および/または定量は、グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を有していると診断された、または有していると疑われる個体において、当該疾患の重症度および過程をモニターするために用いられる。いくつかの例において、生物学的サンプルに存在するグリカン残存化合物の同定および/または量の検出および/または定量は、グリカンの生合成および/または分解を調節する(例えば、促進する、および/または、阻害する)薬剤の投与量を算出するために用いられる。
ある例において、本書に記載された治療方法において利用される治療薬の選択された投与量を投与した後に、個体の状態は改善されず、生物学的サンプルに存在するグリカン残存化合物の同定および/または量の検出および/または定量は、疾患、障害または異常の重症度および過程、以前の治療、個体の健康状態および薬剤に対する反応、ならびに治療する医師の判断に応じて改良される治療計画について提供する。
ある実施形態において、個体におけるグリカンの蓄積をモニターすることは、第1の蓄積の結果(例えば、治療が開始される前または他の任意の時における最初の見解(initial reading))および第1の結果の取得に続く第2の蓄積の結果を得るために、当該個体から得られたサンプルにおけるグリカン残存化合物(1つ以上のグリカン残存化合物)の量を(例えば、本書に記載された任意の方法に従って)検出することまたは定量することを含む。いくつかの実施形態において、治療が、グリカン残存化合物レベルを効果的に減少させ、維持させ、または増加速度を減少させているか否かを決定するために、治療を受けている個体由来から実質的に同様に得られたサンプルにおいて、第2の結果は第1の結果と比較される。ある実施形態において、第1の結果と第2の結果との相違に応じて、治療は変更され得る(例えば、投与される薬剤の量が増加または減少する;あるいは、治療薬を代わりの治療薬と置き換えるなど)。ある実施形態において、治療薬の投与量は維持レベルまで減少され(例えば、グリカン残存化合物レベルが十分に減少した場合);そのような状況において、グリカン残存化合物レベルをさらにモニターする(例えば、減少または維持されたグリカン残存化合物(例えば、単糖)のレベルが達成されることを確認するために)ことが任意である。
あるいは、本書で提供されるのは、個体において治療に対する反応を検出する方法、または、個体において治療に対する反応を予測する方法であって、
a.グリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を治療するための薬剤を、それを必要とする個体由来の複数の細胞(例えば、LSDまたは癌などのグリカンの異常な分解、生合成および/または蓄積に関連する障害を患うヒト由来の複数の繊維芽細胞、血清、血漿、またはCSF細胞)に投与すること;
b.本書に記載された任意のプロセスに従って上記複数の細胞由来のリアーゼ消化された生物学的サンプルに存在するグリカン残存化合物(例えば、単糖、硫酸塩、シアル酸、リン酸塩、酢酸塩など)の量を検出または定量するための本書に記載された任意のプロセスを用いて、上記複数の細胞におけるグリカンの蓄積をモニターすること、
を含む方法である。
具体的な実施形態において、検出または測定された上記グリカン残存化合物は、1つ以上の単糖である。個体由来の複数の細胞は、当該個体から直接採取された細胞、および/または、個体から採取された後、その集団を増やすために培養された細胞を含むことが理解されるであろう。
〔実施例1〕
本書で述べられている方法を例証するために、正常な患者およびMPS IIIAと診断された患者から得たヒト尿サンプルを使用した。MPS IIIA患者は、へパラン硫酸中に存在する非還元末端グルコサミン残基を脱N−硫酸化するリソソーム酵素の機能が低下している。この特異な非還元末端グリカン残基(N−硫酸化GlcN)は、ヘパリンリアーゼを用いてグリカンを処理することによって遊離することができ、HPLCにおける蛍光検出によって定量することができる。以下に示されるように、正常な個体からこのように調製されたグリカンはN−硫酸GlcNを欠いており、一方MPS IIIA患者は非常に高レベルで有している。
精製:生物学的サンプル(細胞、組織、血液、血清、またはそれに類するもの)を0.1〜1.0NのNaOH(例えば、0.1N、0.2N、0.3N、0.4N、0.5N、0.6N、0.7N、0.8N、0.9N、または1.0N)中で均質化および可溶化し、そして酢酸またはNaOHで中和する。次に、少量のサンプルを取り、標準的な方法を用いてサンプルのタンパク質含量を測定する。0.01〜0.5mg/mL(0.01mg/mL、0.07mg/mL、0.12mg/mL、0.17mg/mL、0.22mg/mL、0.27mg/mL、0.32mg/mL、0.37mg/mL、0.42mg/mL、または0.5mg/mL)のプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン、ぺプシン、プロナーゼ、パパイン、またはエラスターゼ)を、pH5.5〜7.5(例えば、5.5、6.0、6.5、7.0、または7.5)で0.1〜0.5M(例えば、0.1M、0.16M、0.23M、0.32M、0.39M、0.44M、または0.5M)のNaCl、0.01〜0.1M(例えば、0.01M、0.02M、0.04M、0.06M、0.08M、0.1M)のNaOAc中で、1〜24時間(例えば、1h、2h、4h、6h、8h、12h、18h、24h)の間、25〜40C(例えば、25C、30C、35C、または40C)で処理する。当該サンプルを希釈してイオン強度を低下させ、0〜300mMのNaClを含む5〜100mM(例えば、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、75mM、80mM、90mM、95mM、100mM)のNaOAc pH5〜7中でイオン交換カラムにロードする。洗浄後、結合したグリコサミノグリカンを、0.8〜3M(例えば、0.8M、1M、1.2M、1.4M、1.6M、1.8M、2M、2.5M、または3M)のNaClを含む5〜100mMのNaOAc pH5〜7(例えば、5、5.5、6、6.5、7)で溶出する。溶出したグリカンを、エタノール沈殿、サイズ排除または他の方法によって濃縮し脱塩する。精製したグリカンを、さらなる分析のために乾燥する。
非還元末端残基の遊離:10〜300mMの酢酸ナトリウム、トリス、リン酸、または他の適切なバッファ、0.02〜1mM(例えば、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1)の酢酸カルシウム、pH5〜8(例えば、5、5.5、6、6.5、7、7.5、または8)に精製したグリカンを再懸濁し、ヘパリンリアーゼI、II、III、IとII、IとIII、IIとIII、またはIとIIとIII(100μlの反応においてそれぞれ0、0.15〜1.5ミリユニット、IBEX社(カナダモントリオール))を用いて25〜37℃で1〜24時間、消化する。
グリカン残基の蛍光タグ付け:乾燥したグリカンサンプルを、2〜100μLの0.003〜0.1M(例えば、0.003M、0.003M、0.03M、0.06M、0.1M)AB、AA、AMAC、またはボディパイ色素中に再懸濁し、1〜120分(例えば、1〜10分、10〜15分、15〜20分、20〜25分、25〜30分、30〜40分、40〜50分、50〜60分、60〜90分、90〜120分)の間、室温でインキュベートする。次に、2〜100μL(2μL、5μL、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、または100μL)の1MのNaCNBH4で反応を開始させ、反応を25〜100C(例えば、25C、30C、35C、40C、50C、60C、70C、80C、90C、100C)で進行させる。
グリカン残基の検出:タグ付けした糖のHPLC分離を、以下の条件を用いて行った。カラムタイプ:適切な長さおよび内径の、130A BEH フェニル粒子(1.7、2.5、3.5、5、または10uM粒径)、130A BEH C18粒子(1.7、2.5、3.5、5、または10uM粒径)、HSS C18粒子(1.8、3.5、または5uM粒径)、または300A BEH C18粒子(1.7、3.5、5、10uM粒径)。
バッファ条件:
A=0〜20%メタノールを含む酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、または塩化ナトリウム(例えば、0M、10mM、20mM、30mM、40mM、100mM、500mM、1M、2M)
B=メタノール、エタノール、またはイソプロパノール等の100%アルコール
初期条件:70〜95%A、0〜30%B
流量は、0.05〜1ml/分で一定
5〜65分で70〜90%A、10〜30%Bまで勾配を下げる
8.1分の時点で、5〜20分で勾配を0〜20%A、80〜100%Bにする
5〜65分で初期条件まで戻す。
図1は、酵素的なグリカン残基の遊離に供していない、正常な患者の尿において検出された溶出した化合物のHPLCの軌跡(すなわち、バックグラウンドシグナルを提供する)を表している。図2は、実施例1で述べられている酵素的なグリカン残基の遊離に供した、正常な患者の尿において検出された溶出した化合物のHPLCの軌跡を表している。図3は、酵素的なグリカン残基の遊離に供していない、MPS IIIA患者の尿において検出された溶出した化合物のHPLCの軌跡(すなわち、バックグラウンドシグナルを提供する)を表している。図4は、酵素的なグリカン残基の遊離に供した、MPS IIIA患者の尿において検出された溶出した化合物のHPLCの軌跡を表している。
〔実施例2〕
実施例1に記載している手順は、本書に記載されている酵素を利用し、本書に記載されているグリカン残基化合物を検出して、表1〜4に挙げられた疾患のために反復および/または変更される。
〔実施例3:MPS I、II、VIおよびVIIの細胞のNRE分析〕
本手法の潜在的有効性を実証するために、ヒトMPS I患者(α−イズロニダーゼ[IDUA]欠損症)および正常なヒトドナーから得た真皮繊維芽細胞を生育した。細胞を増殖させ8週間に至るまで培養において維持し、顕著にリソソームを蓄積させた。細胞層に残存しているGAGを抽出し、酵素的解重合に供し、次いで[12C6]アニリンによる還元的アミノ化を行った。サンプルを、10ピコモルの各[13C6]アニリン不飽和二糖スタンダード、および合成した[13C6]アニリンタグ付きI0S0と混合した。全てのあり得る候補の構造を、図6および図7aに示されている抽出イオンクロマトグラムについて調査した。ピーク1〜7は、既知の不飽和二糖と共に移動し、予想されるm/z値を有した。MPS Iサンプルは、正常な繊維芽細胞サンプルにおいては存在しなかった、星印でマークしたさらなるピークを有していた。このピークは、アニリンタグ付きI0S0スタンダード(図7a内の拡大挿入図)と同様の溶出位置を有していた。このピークにおけるマススペクトルは、m/z=511.1および提案された構造I0S0と合致する同位体クラスター、ならびに対応するm/z=517.1および[13C6]アニリンタグ付きスタンダードについて予想される同位体クラスターを与えた(図7b)。さらなる検証を衝突誘起解離(CID)を用いて行ったが、これはI0S0スタンダードによる構造的同一性を実証した(図10)。また、MPS I患者から得た細胞からのへパラン硫酸の消化は、構造I0S6と合致するm/z=591.1の二糖を生じさせた(図11a)。この物質は内部の二糖D2S0と共に移動するので、図7aに示されているクロマトグラムにおけるピーク6内に含まれていた。しかし、この物質は、18amuの差を考えれば、質量検出装置によってD2S0から容易に区別された。α−L−イズロニダーゼによるMPS Iサンプルの前処理は、それらの同一性を裏付けるネイティブなNRE構造の喪失をもたらした(図12)。3人の異なるMPS I患者から得た繊維芽細胞は、I0S0およびI0S6と同定されたNRE種を示した。これらの存在は、正常なヒト繊維芽細胞から調製したサンプルには見られないものであった。
MPS II(イズロノ−2−スルファターゼ[IDS]欠損症)およびMPS VII(β−D−グルクロニダーゼ[GLCA]欠損症)も、非還元末端ウロン酸のプロセシング(それぞれ、イズロネート−2−硫酸の脱硫酸化およびグルクロン酸の除去)の欠陥によるヘパラン硫酸の分解に影響を与える。MPS IIおよびMPS VII患者の繊維芽細胞に由来するGAGの消化後、飽和NRE二糖を検出した(図6ならびに図11bおよび11c)。MPS IIのNREについてのマススペクトルおよびそれらの溶出位置は、予想される二糖バイオマーカー、I2S0およびI2S6と合致していた。MPS VIIのへパラン硫酸の分析はより複雑であり、G0A0、G0A6、G0S0およびG0S6として暫定的に同定された4つの二糖を生じた。組み換え型IDSによるMPS IIサンプルの処理は、NREをMPS Iにおいて見出されるものに変えた(それぞれI0S0およびI0S6;図13)。
MPS I、MPS II、およびMPS VIIも、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸の分解に影響を与える。コンドロイチナーゼABCを使用したこれらGAGの分析は、各障害について診断的なNRE二糖のセットを生じさせた(図6)。MPS Iは、二硫酸化二糖I0a10に加えて、一硫酸化NRE二糖I0a4およびI0a6を生じさせた(図11d)。MPS IIはI2a4およびI2a6(図11e)を生じさせ、MPS VIIはG0a0、G0a4、G0a6およびG0a10(図11f)を生じさせた。
MPS VI(N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼ[G4S]欠損症)から得たコンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸の分析は、アニリンタグ付きa4スタンダードと共に移動したN−アセチルガラクトサミン−4−硫酸(a4、図6)の蓄積を実証した(図14)。a4は、液体によってクロマトグラフ的に、6−スルホ−N−アセチルガラクトサミン(a6)から部分的に分解することに注意されたい(下部パネル)。しかし、生物学的サンプルは、これらの細胞内でのN−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼにおける欠損に合致するa4を主に生じさせた。三糖種は検出されなかった。
〔実施例4:MPS IIIの細胞のNRE分析〕
MPS障害のサンフィリッポファミリーを、上記と同様の方法を使用して分析した:MPS IIIA(スルファミダーゼ[SGSH]欠損症)、MPS IIIB(α−N−アセチルグルコサミニダーゼ[NAGLU]欠損症)、MPS IIIC(N−アセチルトランスフェラーゼ[HGSNAT]欠損症)およびMPS IIID(グルコサミン−6−スルファターゼ[GNS]欠損症)。これらの障害は、へパラン硫酸のリソソーム分解のみに影響し、NREグルコサミン残基を処理する酵素内に共通の欠陥を有する。ヘパリンリアーゼは、グルコサミンユニットとウロン酸との間の結合を切断するため、サンフィリッポのへパラン硫酸の分析は、MPS I、IIおよびVIIにみられる二糖とは相対している、NREから得られる診断的な単糖(グルコサミン誘導体)または三糖(グルコサミン−ウロン酸−グルコサミン誘導体)を生じさせはずであることが期待された。
MPS IIIAのサンプルの分析は、鎖の内部セグメントから生じた典型的な不飽和二糖、およびコントロールまたは他のMPSサンプルに存在しない38.5分における特異なピークを示した。この物質は、[12C6]アニリンタグ付きN−スルホグルコサミン(S0、m/z=335.1)において予想される特徴的なマススペクトルを有し、確証された[13C6]アニリンタグ付きスタンダードと共に移動した(m/z=341.1、図7c、挿入図)。ヘパリンリアーゼ解重合より前の、スルファミダーゼによる2つの異なるMPS IIIAサンプルの処理は、S0バイオマーカーを破壊したが、それは提案された同定と合致する(図15)。MPS IIIAのへパラン硫酸の消化もまた、酢酸基および硫酸基の数において異なる三糖を生じさせた(図7c、dp3)。最も突出した化学種dp3(0Ac、3S)を、CIDによって分析したところ、S0U2S0と合致する断片化パターンを与えた(図16a)。ウロン酸はグルクロン酸であり得たが、イズロン酸がN−スルホグルコサミンユニットを繰り返し含んでいる鎖のセグメントにおいて優勢であった。
MPS IIIBのサンプルの分析では、1−2酢酸基および1−3硫酸基の存在と合致するm/z値を有する3つのNRE三糖が得られた(図7d)。MPS IIIBはα−N−アセチルグルコサミニダーゼの欠損によって特徴付けられるため、末端糖は、A0U2S0として同定された優勢な三糖(m/z=794)のCID分析によって確認されたN−アセチルグルコサミンであるはずである(図16b)。同様に、MPS IIICからのNREは、グルコサミンN−アセチルトランスフェラーゼの欠損に起因して、遊離した非置換アミンを含むと予想された。4つの三糖が検出されたが、全て酢酸基を欠いていた(図7e)。dp3(0Ac、3S)のCID分析およびプロピオニル無水物による誘導体化は、H6U0S6またはH0U2S6と合致する構造を示唆した(図16c)。
MPS IIIDの細胞は、末端のN−アセチルグルコサミン単位から6−O−硫酸基を除去することが可能な6−スルファターゼを欠いている。MPS IIIDのへパラン硫酸のNRE分析は、N−非置換GIcNH26S(H6)に対応する335のm/z値を有する1つの単糖種を検出した(図7f)。H6がMPS IIIAにおいて見出されたS0と同重体である一方、その保持時間は非置換アミンの存在に起因して有意に短いため、これらのマーカーは容易に識別された。さらに、MPS IIIDにおけるH6は、その同一性を確証しているアニリン[13C6]タグ付きスタンダードH6と共に溶出した(図7f、挿入図)。N−アセチルグルコサミン−6−硫酸は検出されず、非還元末端の6−O−硫酸N−アセチルグルコサミン単位を有する三糖NRE種も何ら検出されなかった(図7f)。
〔実施例5:NREバイオマーカーの使用〕
大多数のMPS GAGサンプルが多様なNRE糖を生じさせた(図6)が、各MPS障害のためのバイオマーカーとして1つの特異なNREを選択し、そしてNRE構造のサイズ(単糖、二糖および三糖)、硫酸化の程度、および液体クロマトグラフィーの間の保持時間に基づいて、それらを決定木に組み入れることが可能であった(図8)。診断決定木は、他の炭水化物バイオマーカーの包含によってより頑強になる(図6)が、図8に示されている特定のNREは8つのMPS障害を診断するのに十分である。診断のためのこれらのマーカーの潜在的有用性を決定するために、正常なコントロールの被験者および種々のサンフィリッポ症に罹患している患者からの9つの異なるヒト尿サンプル、同様に2つのイヌ尿サンプル(1つは正常、もう1つはMPS Iのもの)、ならびにMPS IIIBマウスからの肝臓、脳および腎臓のGAGを選別した。図8に略述されたスキームを用いて、全てのサンプルを正しく診断した(表16)。
表16.マウスの組織ならびにヒトおよびイヌの尿から精製したGAGサンプルの分析。GAGを抽出し、図8に示されたスキームを用いてMPSの診断的バイオマーカーについて分析した。診断的マーカー:MPS I=I0S0;MPS II=I2S6;MPS IIIA=S0およびS0U2S0;MPS IIIB=A0U2S0;MPS IIIC=dp3(0Ac、3S04)、酢酸基を含まず3つの硫酸基を含む三糖;MPS IIID=H6;MPS VI=a4;MPS VII=G0S0。
多様なMPS IIIAの細胞株の分析は、S0バイオマーカーの著しい蓄積を示したが、これはヘパラン硫酸貯蔵のレベルと完全に一致する(表17)。正常な繊維芽細胞は、微量のS0を生じさせた。一般的に、正常な細胞、組織および尿からのサンプルは、罹患した患者または動物からのサンプルにおいて見られるNREバイオマーカーの量が1%未満を示した。
5つの正常な繊維芽細胞を分析した(CRL−1634(ヒト包皮の繊維芽細胞)、GM00200(異染色性脳白質ジストロフィー患者の同正の臨床的非罹患者)、GM05659、GM08398、およびGM15871(エーラス・ダンロス症候群患者の同正の臨床的非罹患者))。平均値±標準偏差値を提示する。多様なMPS IIIA株についての値は、酵素活性についての複数回の分析、ならびに、へパラン硫酸貯蔵およびS0バイオマーカーについての1回の判定を表す。
脳および尿中のGAG含有量に基づいたリソソーム貯蔵の検出は、検出および定量のために使用される様々な方法(特には、色素結合または変位に基づいた間接法)があるため挑戦的であった。MPS IIIA(Sgsh-/-)および野生型のマウスから得た尿および脳サンプル、ならびにMPS IIIAのヒト繊維芽細胞を、図8に記載されているスキームを用いて分析した。この方法を用いたところ、全へパラン硫酸およびバイオマーカーS0は、MPS IIIA尿サンプル中に野生型と比べて12倍の蓄積を示した(図9a)。三糖バイオマーカーS0U2S0はSgsh-/-尿において容易に検出可能であったが、野生型の尿においては実質的に検出できなかった。脳サンプル中において、へパラン硫酸レベルは12倍に上昇し、一方バイオマーカーS0は野生型と比べて60倍に増加した(図9b)。三糖マーカーは、基本的にSgsh-/-サンプル中にのみ存在した。
NER構造が治療的酵素置換をモニターするためにより精密かつ高感度なアッセイを受け入れる余裕があるか否かをテストするために、MPS IIIAのヒト繊維芽細胞の培養を、GAG抽出および分析の前に、48時間の間、組み換え体スルファミダーゼによって補充した。酵素置換は、へパラン硫酸およびS0とS0U2S0バイオマーカー両方の有意な低下を招いた(図9c)。よって、NREバイオマーカー、特に三糖は、介入戦略の治療効果をモニターするのに有用である。
〔実施例6:I0S0の合成〕
全ての感湿反応を、真空乾燥したガラス製品を使用しアルゴン雰囲気下で行った。全ての市販の物質を、他に断らない限り、精製せずに使用した。CH2Cl2は、使用前に窒素下で水酸化カルシウムから新たに蒸留した。トルエン、DMF、ジエチルエーテル、メタノールおよびTHFを無水で購入し、さらに精製することなく使用した。モレキュラーシーブ(4Å)を、使用前に真空下で火炎活性した。全ての反応は、特に記載がない限り、室温で行った。TLC分析を、適用できる場合は紫外線吸収(254nm)による検出を用いて、シリカゲル60 F254(EMD Chemicals社)上、エタノール中の20%硫酸で噴霧し、続いて〜150℃において炭化することによって、または、エタノール中の10%硫酸中の(NH4)6Mo7O24H2O(25g/L)の溶液で噴霧し、続いて〜150℃において炭化することによって行った。カラムクロマトグラフィーを、シリカゲルG60(Silicycle社、60−200μm、60Å)上で、またはBondapak C-18(Waters社)上で行った。1Hおよび13CNMRスペクトルを、sun workstationsが装備されたVarian inova-300 (300/75 MHz)、inova-500 (500/125 MHz)およびinova-600 (600/150 MHz)分光計を用いて記録した。化学シフトは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)と比較した百万分率(ppm)で報告する。NMRデータは以下のように示す。ケミカルシフト、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、dd=ダブルダブレット、m=マルチプレットおよび/もしくは多重共鳴)、ヘルツ(Hz)のカップリング定数、積分。全てのNMRシグナルは、1HNMR、13CNMR、COSYおよびHSQC実験に基づいて帰属させた。質量分析スペクトルを、Applied Biosystems 5800 MALDI-TOFプロテオミクス分析器において記録した。使用した基質は、内部標準として、2,5−ジヒドロキシ−安息香酸(DHB)およびUltramark 1621であった。
β−D−イドピラノシルロネート)−(1→4)−(2−N−スルホアミン−2−デオキシ−α/β−D−グルコピラノシド)(7)(IOSO)の合成を以下に記載する。
a)NIS、TMSOTf、0°C、DCM、73%;b)EtSH、p−TsOH、96%;c)TEMPO、BAIB、DCM、H2O、1h;d)CH2N2、THF(2段階、83%);e)LiOH0.22M、THF、99%;f)PMe3、NaOH、THF;g)Et3N、SO3Py、NaOH、(2段階、66%);h)Pd(OH)2/C、H2、83%。
ベンジル(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−4,6−O−ベンジリデン−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α/β−D−グルコピラノシド(3):グリコシル供与体1(467mg、1.05mmol)およびグリコシル受容体2(877mg、0.375mmol)をフラスコ内で合わせ、トルエン(3x3mL)によって同時蒸発させ、DCM(8.7mL)中に溶解した。新たに活性化した粉末の4Åモレキュラーシーブを加え、上記混合物を周囲温度で30分間攪拌した。反応混合物を冷却し(0℃)、NIS(0.236g、1.052mmol)およびTMSOTf(19.08μL、0.105mmol)を加え、次いで供与体の消費をTLCが示唆するまで攪拌を続けた(〜10分間)。この混合物をNa2S2O3水溶液でクエンチし、DCM(2x10mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、トルエンおよびEtOAcのステップグラジエント法(100〜80%)を使用したシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した結果、二糖3(658mg、73%)を得た。1H NMR (500 MHz, CDC13): δ 7.44-7.25 (m, 30H, CH Aromatic), 5.28 (s, 2H, CH benzylidene x 2), 5.00-4.96 (m, 4H, H2, H'1, H1α, H'2 CHH Bn), 4.92 (d, 1H, J = 11.5 Hz, CHH Bn), 4.84 (d, 1 H, J = 11.0 Hz, CHH Bn), 4.80 (d, 1H, J = 11.0 Hz, CHH Bn), 4.76-4.55 (m, 10H, CHH Bn x 4, CHH Bn x 2, CHH Bn x 2, H6bα,β), 4.45 (dd, 1H, J = 2.0 Hz, J = 12.5 Hz, H6aα), 4.35 (d, 1H, J = 8.0 Hz, H1β), 4.14 (t, 1H, J = 3.5 Hz, H5α), 4.11 (t, 1H, J = 4.0 Hz, H6β), 3.91-3.75 (m, 3H, H'5, H'4, H4β), 3.71 (bs, 1H, H'3), 3.51 (m, 1H, H2β), 3.44-3.42 (m, 2H, H5β, H2α), 3.25 (t, 1H, J = 9.5 Hz, H3β), 3.19 (d, 1H, J = 11.0 Hz, H'6b), 3.10 (d. 1H, J = 11.5 Hz, H'6a).13C NMR (75.5 MHz, CDC13): δ 170.4, 170.2, 138.1, 137.9, 137.6, 128.9, 128.4, 128.3, 128.0, 127.9, 127.9, 127.6, 127.4, 127.1, 126.1, 100.4, 98.0, 97.0, 81.2, 77.4, 77.0, 76.5, 75.0, 74.9, 73.8, 73.7, 73.5, 72.1, 69.0,69.0, 67.1, 62.3, 60.3, 33.9, 24.8, 20.9, 20.8, 19.9, 19.8, 18.4, 18.3, -2.1, -3.3. HRMS-MALDI: (M + Na+) calcd for C44H47N3O12, 809.3159, found 809.3155。
ベンジル(メチル2−O−アセチル−3−O−ベンジル−β−D−イドピラノシルウロネート)−(1→4)−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α/β−D−グルコピラノシド)(4):二糖3(0.633g、0.781mmol)のDCM溶液に、エタンチオール(0.345mL、4.68mmol)およびp−TsOH(29.6mg、0.156mmol)を添加した。得られた反応混合物を、室温で1時間攪拌した。反応混合物をEt3Nでクエンチし、減圧下で濃縮した。残渣を、トルエンおよびEtOAcのステップグラジエント法(100〜80%)を使用したシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した結果、高純度なジオール(0.543g、96%)を得た。激しく攪拌したDCM:H2O(0.15M、2/1、v/v)の混合物中のジオール(0.533g、0.738mmol)の溶液に、TEMPO(22.96mg、0.147mmol)およびBAIB(0.594g、1.845mmol)を添加した。出発物質がより低いRfのスポットへと完全に転換したことをTLCが示唆するまで、攪拌を続けた(〜45分間)。反応混合物を、Na2S2O3水溶液でクエンチし、得られた混合物をEtOAc(2x10mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。油状残渣をTHE(0.1M)に溶解し、反応混合物が黄色で安定するまで、新たに用意した過剰量のジアゾメタンのエーテル溶液で処理した。過剰量のジアゾメタンを、混合物が無色になるまでAcOHの添加によってクエンチした。混合物を減圧下で濃縮し、残渣をトルエンによって同時蒸発させた。トルエンEtOAcのステップグラジエント法(100%〜50%)を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって残渣を精製した結果、化合物4(0.34g、83%、2ステップ)を得た。1H NMR (500 MHz, CDC13): δ 7.39-7.15 (m, 30H, CH Aromatic), 5.06 (bs, 2H, H'1), 4.98 (d, 1H, J = 3.5 Hz, H1α), 4.92-4.88 (m, 3H, H'2, H'5, CHH Bn), 4.74-4.58 (m, 7H, CHH Bn x 4, CHH Bn x 3), 4.50 (dd, 2H, J = 1.5 Hz, 12.0 Hz, H6bα, H6bβ), 4.36 (d, 1H, J = 12.5 Hz, H6aα), 4.31 (d, 1H, J = 8.0 Hz, H1β), 4.22-4.18 (m, 2H, H5α, H6aβ), 3.96 (bt, 1H, J = 10.0 Hz, H'4), 3.88-3.85 (m, 3H, H3α, H4α, H4β), 3.71 (d, 2H, J = 2.5 Hz, H'3), 3.49-3.47 (m, 1 H, H2β), 3.45 (s, 3H, CO2CH3), 3.41-3.36 (m, 2H, H2α, H5β), 3.25 (t, 1H, J = 9.5 Hz, H3β), 2.10 (s, 3H, CH3 Ac), 2.06 (s, 3H, CH3 Ac). 13C NMR (75.5 MHz, CDCl3): δ 170.5, 170.5, 169.4, 169.3, 169.1, 137.8, 137.7, 137.1, 136.4, 128.9, 128.5, 128.4, 128.1, 128.1, 128.0, 127.8, 127.4, 127.3, 127.3, 125.2, 100.2, 97.9, 96.6, 81.1, 78.4, 77.4, 77.0, 76.6, 75.0, 74.6, 74.4, 74.3, 74.3, 73.1, 72.2, 70.8, 69.8, 69.3, 68.4, 67.6, 67.1, 67.0, 66.2, 63.4, 62.0, 51.9, 20.8. HRMS-MALDI: (M + Na+) calcd for C38H43N3O13, 749.2795, found 749.2790。
ベンジル(3−O−ベンジル−β−D−イドピラノシルロネート)−(1→4)−(2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α/β−D−グルコピラノシド)(5):化合物4(70mg,0.09mmol)のTHF溶液(1.4mL)に、LiOH(0.4mL、0.1M)を室温で添加した。攪拌を40分間続け、HCl水溶液(1.0M)の添加によって反応混合物のpHが9.0になった後、得られた混合物を減圧下で濃縮し、残渣を、トルエンおよびメタノールのステップグラジエント法(100%〜70%)を使用したイアトロビーズ上におけるカラムクロマトグラフィーによって精製した。適切な画分を減圧下で濃縮した結果、化合物5(60mg、99%)を得た。1H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 7.44-7.23 (m, 30H, Aromatic), 5.04-4.98 (m, 4H, H'1, H1α, CHH Bn, CHH Bn), 4.94 (d, 2H, J = 12.0 Hz, CHH Bn), 4.92-4.75 (m, 3H, CHH Bn, CHH Bn, CHH Bn), 4.70 (d, 1H, J = 12.0 Hz, CHH Bn), 4.63 (t, 2H, J = 10.5 Hz, CHH Bn, CHH Bn), 4.58 (d, 1H, J = 12.0 Hz, CHH Bn), 4.44 (d, 1H, J = 8.0 Hz, H1β), 4.41 (dd, 2H, J = 4.5 Hz, J = 19.0 Hz, H6bα, H'5), 4.12 (t, 1H, J = 9.5 Hz, H4α), 4.04 (t, 1H, J = 9.5 Hz, H4β), 3.98-3.79 (m, 5H, H6a,bβ, H6aα, H5α, H3α), 3.57-3.52 (m, 4H, H'2 x 2, H'3 x 2), 3.46-3.43 (m, 2H, H3β, H5β), 3.39-3.35 (m, 2H, H2α, H2β). 13C NMR (75.5MHz, CD3OD): δ 176.7, 140.2, 140.0, 138.7, 129.3, 129.2, 129.0, 128.3, 101.9, 101.3, 101.2, 98.2, 82.5, 82.2, 82.0, 79.4, 77.5, 77.0, 76.6, 76.0, 75.7, 75.0, 74.9, 73.8, 73.3, 73.0, 72.8, 72.4, 72.2, 71.9, 70.5, 67.9, 64.3, 62.2, 62.1, 49.9, 49.7, 49.4, 49.1, 48.8, 48.5, 48.2; HRMS-MALDI: (M + Na+) calcd for C33H37N3O11, 651.2428, found 651.2422。
ベンジル(3−O−ベンジル−β−D−イドピラノシルウロネート)−(1→4)−(2−N−スルホアミン−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)(6):化合物5(20mg、0.03mmol)のTHF溶液(2mL)に、THF(0.24mL、0.24mmol)およびNaOH(0.1M、3.0mL、0.3mmol)中のPM3の1.0M溶液を加えた。反応混合物を室温において1時間攪拌し、反応の進行をTLC(H2O/アセトニトリル、10/90、v/v)によって追跡した。可視化剤としてニンヒドリンを使用することで、アミノ基の存在を示した。反応の完了後、HCl水溶液(0.1M)の慎重な添加によってpHを9.0に調整した。混合物を減圧下で濃縮し、残渣をトルエンによって同時蒸発させた。粗残渣の無水メタノール溶液(5.0mL)に、ピリニジウム三酸化硫黄(23.8mg、0.15mmol)、トリエチルアミン(1.5mL、0.30mmol)および水酸化ナトリウム(0.6mL、0.06mmol)を添加した。出発物質の消失をRP−018 TLC(H2O/メタノール、60/40、v/v)が示すまで、室温において攪拌を1時間続けた。混合物を減圧下でトルエンによって同時蒸発させ、H2O中に溶解し、Bio−Rad 50x8 Na+樹脂(0.6x2.5cm)のショートカラムを通過させた。残渣を、水およびメタノールのステップグラジエント法(90/10〜60/40、v/v)で溶出したスモールRP−018カラムに供した。適切な画分を凍結乾燥した結果、化合物6(15mg、66%)を得た。1H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 7.53-7.23 (m, 15H, CH Aromatic), 5.38 (d, 1H, J = 3.5 Hz, H1α), 4.96 (d, 1H, J = 4.5 Hz, H'1), 4.92 (d, 1H, J = 10.5 Hz, CHH Bn), 4.87-4.73 (m, 5H, CHH Bn, CHH Bn, CHH Bn, CHH Bn, CHH Bn), 4.59 (d, 1H, J = 11.0 Hz, CHH Bn), 4.46 (bs, 1H, H'5), 4.01-3.99 (M, 2H, H'4, H4α), 3.85-3.83 (m, 2H, H6a,b), 3.74 (bd, 1H, J = 9.5 Hz, H5α), 3.68 (t, 1H, J = 10 Hz, H3α), 3.56 (m, 3H, H2α, H'2, H'3). 13C NMR (75.5 MHz, D2O): δ 176.8, 140.1, 139.53, 129.4, 129.4, 129.2, 129.1, 129.0, 128.5, 128.3, 102.5, 100.5, 80.1, 79.9, 78.1, 74.6, 73.9, 73.5, 72.2, 71.7, 71.6, 71.1, 63.4, 58.2, 49.8, 49.5, 49.3, 49.0, 48.7, 48.4, 48.1。
β−D−イドピラノシルウロネート)−(1→4)−(2−N−スルホアミン−2−デオキシ−α/β−D−グルコピラノシド)(7):炭素(デグサタイプ、20%、出発物質の重量の1.5倍)上のPd/(OH)2を、tBuOHおよびH2O(1/1、v/v、2mL)中の化合物6(4mg、6μmol)の溶液に加え、水素の雰囲気下に置いた。反応は、C18 TLC(H2O/アセトニトリル、10/90、v/v)が示唆した16時間後に完了した。混合物をシーライトに通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を水に再溶解し、次いで溶離液としてH2Oを使用したBio−Rad 50x8 Na+樹脂(0.6x2.5cm)のショートカラムを通過させた。適切な画分を凍結乾燥した結果、化合物7(2mg,83%)を得た。1H NMR (500 MHz, D2O), α-anomer: δ 5.45 (d, 1H, J = 3.5 Hz, H1α), 4.81 (t, 2H, J = 6.0 Hz, H'1), 4.52 (t, 2H, J = 4.5 Hz, H'5), 3.94-3.85 (m, 1H, H5α), 3.84-3.80 (m, 3H, H'4, H6a,b), 3.74-3.61 (m, 3H, H3α, H4α, H'3), 3.47-3.44 (m, 1H, H'2), 3.26 (dd, 1H, J = 3.5 Hz, J = 10.0 Hz, H2α); 13C NMR (150 MHz, D2O): δ 176.6, 101.2, 91.2, 78.2, 72.7, 71.7, 71.3, 70.5, 69.6, 60.2, 58.2。
本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供していない正常な生物学的サンプルに存在する化合物を説明する図である。
本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供した正常な生物学的サンプルに存在する化合物を説明する図である。
本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供していない、異常なグリカンの蓄積に関連する障害に罹患している個体の生物学的サンプルに存在する化合物を説明する図である。
本書に記載されている酵素的なグリカン残基の遊離プロセスに供した、異常なグリカンの蓄積に関連する障害に罹患している個体の生物学的サンプルに存在する化合物を説明する図である。
非還元末端および内部の二糖を決定するためのスキームを説明する図である。
非還元末端および内部の二糖を決定するためのスキームを説明する図である。
非還元末端および内部の二糖を決定するためのスキームを説明する図である。
MPSの非還元末端炭水化物を説明する図である。
MPSの非還元末端炭水化物を説明する図である。
MPS Iおよびサンフィリッポ症候群のヘパラン硫酸において見出された非還元末端の分析を説明する図である。
MPS Iおよびサンフィリッポ症候群のヘパラン硫酸において見出された非還元末端の分析を説明する図である。
MPS Iおよびサンフィリッポ症候群のヘパラン硫酸において見出された非還元末端の分析を説明する図である。
MPS Iおよびサンフィリッポ症候群のヘパラン硫酸において見出された非還元末端の分析を説明する図である。
MPS Iおよびサンフィリッポ症候群のヘパラン硫酸において見出された非還元末端の分析を説明する図である。
MPS Iおよびサンフィリッポ症候群のヘパラン硫酸において見出された非還元末端の分析を説明する図である。
様々なMPS障害についてのGAGサンプルの体系的診断スクリーニングを説明する図である。
様々なMPS障害についてのGAGサンプルの体系的診断スクリーニングを説明する図である。
MPS IIIAのサンプルにおける全ヘパラン硫酸とN−スルホグルコサミン(S0)との比較を説明する図である。
MPS IIIAのサンプルにおける全ヘパラン硫酸とN−スルホグルコサミン(S0)との比較を説明する図である。
MPS IIIAのサンプルにおける全ヘパラン硫酸とN−スルホグルコサミン(S0)との比較を説明する図である。
MPS I NREバイオマーカーとI0S0スタンダードとの構造比較を説明する図である。
MPS I NREバイオマーカーとI0S0スタンダードとの構造比較を説明する図である。
MPS I、MPS IIおよびMPS VIIにおいて見出された非還元末端構造の分析を説明する図である。
MPS I、MPS IIおよびMPS VIIにおいて見出された非還元末端構造の分析を説明する図である。
MPS I、MPS IIおよびMPS VIIにおいて見出された非還元末端構造の分析を説明する図である。
MPS I、MPS IIおよびMPS VIIにおいて見出された非還元末端構造の分析を説明する図である。
MPS I、MPS IIおよびMPS VIIにおいて見出された非還元末端構造の分析を説明する図である。
MPS I、MPS IIおよびMPS VIIにおいて見出された非還元末端構造の分析を説明する図である。
α−イズロニダーゼ処理による、MPS Iにおける非還元末端バイオマーカーの除去を説明する図である。
α−イズロニダーゼ処理による、MPS Iにおける非還元末端バイオマーカーの除去を説明する図である。
イズロネート−2−スルファターゼによる、MPS IIにおいて見出された非還元末端バイオマーカーの除去を説明する図である。
MPS VIのコンドロイチン硫酸のNREのGRIL−LC/MS分析を説明する図である。
スルファミダーゼによる、MPS IIIAにおける非還元末端バイオマーカーの除去を説明する図である。
サンフィリッポ症候群のサブクラスにおいて見出されたNRE三糖のCID分析を説明する図である。
サンフィリッポ症候群のサブクラスにおいて見出されたNRE三糖のCID分析を説明する図である。
サンフィリッポ症候群のサブクラスにおいて見出されたNRE三糖のCID分析を説明する図である。