以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明は、複数種類の光学特性を有する撮影光学系を使って複数種類の画像を撮影可能な撮像装置、撮像方法、撮像手順及びそれらの応用技術に対して広く適用可能であり、その適用可能な技術分野は特に限定されない。例えば、ユーザ操作に応じて撮影を行う撮像装置だけではなく、自動的に撮影を行う撮像装置に対しても本発明は適用可能であり、また静止画を撮影する撮像装置だけではなく、動画を撮影する撮像装置に対しても本発明は適用可能である。
図1は、本発明を適用可能なデジタルカメラ10(撮像装置30)の一例を示す斜視図である。図1に示す例では、デジタルカメラ10のカメラ本体の前面に撮影光学系11及びフラッシュ13等が設けられ、カメラ本体の上面にレリーズボタン12等が設けられている。図1の符号「L」は、撮影光学系11の光軸を表す。
図2は、本発明を適用可能な自動追尾撮像装置14(撮像装置30)の一例を示す斜視図である。図2に示す自動追尾撮像装置14では、ギア19を含む保持部18と保持部18に取り付けられた撮影光学系11とが、装置本体15上に設けられる台座16に固定的に据え付けられている。台座16は、装置本体15の垂直方向Zの軸を中心に回転自在に設けられており、図示しないパン駆動部により垂直方向Zの軸を中心にしたパン動作が行われる。ギア19は水平方向Xの軸と同軸上に設けられ、図示しないチルト駆動部からギア19を介して駆動力が伝達されることにより、撮影光学系11が上下方向に回動させられてチルト動作が行われる。これらの撮影光学系11、保持部18(ギア19)及び台座16は、防塵及び防滴用のドームカバー17によって覆われている。
以下に説明する本発明の各実施形態及び各変形例は、例えば図1に示すようなデジタルカメラ10に対して適用されてもよいし、図2に示すような自動追尾撮像装置14に対して適用されてもよい。
<第1実施形態>
図3は、第1実施形態に係る撮影光学系11及び撮像素子24の断面構成を示す図である。
撮影光学系11は、相互に独立した特性を有する第1光学系21及び第2光学系22を含み、特に本実施形態では焦点距離の異なる光学系によって第1光学系21及び第2光学系22が構成される。すなわち本実施形態の撮影光学系11は、「広角画像撮影レンズ群」によって構成される第1光学系21と、「望遠画像撮影レンズ群」によって構成される第2光学系22とを含み、撮像素子24によって広角画像及び望遠画像が同時的に撮影される。
図3に示す第1光学系21は、同一の光軸L上に配置される第1広角用レンズ21a、第2広角用レンズ21b、第3広角用レンズ21c、第4広角用レンズ21d及び共通レンズ23を含む。一方、第2光学系22は、第1望遠用レンズ22a、第1望遠用反射ミラー22cが設けられる第1望遠用反射体22b、第2望遠用反射ミラー22eが設けられる第2望遠用反射体22d、及び共通レンズ23を含む。本例の第1光学系21(特に第1広角用レンズ21a、第2広角用レンズ21b、第3広角用レンズ21c及び第4広角用レンズ21d)は、中央光学系を形成する。一方、本例の第2光学系22(特に第1望遠用レンズ22a、第1望遠用反射体22b、第1望遠用反射ミラー22c、第2望遠用反射体22d及び第2望遠用反射ミラー22e)は、第1光学系21が形成する中央光学系の周辺に設けられ、第1光学系21が形成する中央光学系とともに同心円を形成する。なお共通レンズ23は、光軸L上に配置され、第1光学系21と第2光学系22との間において共用される。
このように本例の撮影光学系11は、共通の光軸Lを有する第1光学系21及び第2光学系22であって、相互に異なる焦点距離を有する第1光学系21及び第2光学系22を含む。
撮像素子24は、光軸Lと垂直を形成する方向に関し、複数の受光センサ25が2次元的に配置されることにより構成される。特に本実施形態の撮像素子24は、第1光学系21を介して照射される広角画像光と第2光学系22を介して照射される望遠画像光とを同時に受光し、広角画像(第1撮影画像)を生成するための撮像信号と望遠画像(第2撮影画像)を生成するための撮像信号とを出力可能な指向性センサを構成する。すなわち本実施形態の撮像素子24は、第1光学系21及び第2光学系22の各々に対応して設けられる複数の受光センサ25であって、第1光学系21及び第2光学系22のうち対応の光学系を通過した光を瞳分割して選択的に受光する複数の受光センサ25を有する。
図4は、図3に示す撮像素子24の詳細な断面構成例を示す図である。
本例の撮像素子24を構成する複数の受光センサ25は、第1光学系21に対応する「広角画像用の第1の受光センサ25a」と、第2光学系22に対応する「望遠画像用の第2の受光センサ25b」とを含み、これらの第1の受光センサ25a及び第2の受光センサ25bは2次元的に交互に配置される。撮像素子24に含まれる複数の第1の受光センサ25aは、「第1光学系21を通過した光を選択的に受光する第1センサ群24a」を構成し、広角画像を生成するための撮像信号を出力する。また撮像素子24に含まれる複数の第2の受光センサ25bは、「第2光学系22を通過した光を選択的に受光する第2センサ群24b」を構成し、望遠画像を生成するための撮像信号を出力する。このように本例の撮像素子24は、第1光学系21に対応する第1センサ群24aと第2光学系22に対応する第2センサ群24bとを含む。
第1の受光センサ25a及び第2の受光センサ25bの各々は、マイクロレンズ26、フォトダイオード29、及びマイクロレンズ26とフォトダイオード29とが配置される中間層27を有する。中間層27には遮光マスク28が設けられており、第1の受光センサ25aではフォトダイオード29の受光面の周辺部に遮光マスク28が配置され、また第2の受光センサ25bではフォトダイオード29の受光面の中央部に遮光マスク28が配置される。遮光マスク28の配置は、第1光学系21及び第2光学系22のうちのいずれに対応するかに応じて決定され、各遮光マスク28は、対応しない光学系からの光をブロックする一方で対応する光学系からの光をブロックすることなくフォトダイオード29に受光させる。
本例では、遮光マスク28を含む受光センサ25によって、第1光学系21及び第2光学系22のうち対応の光学系を通過した光を瞳分割して選択的に受光する複数の受光センサが実現されているが、他の手段によって瞳分割が実現されてもよい。例えば、マイクロレンズ26の前段(例えばマイクロレンズ26と共通レンズ23(図3参照)との間)に遮光マスク28が設けられてもよいし、遮光マスク28以外の遮光手段(例えば液晶シャッター等)が用いられてもよい。
なお、中間層27には遮光マスク28以外の部材が設けられてもよく、例えばRGB(赤緑青)等のカラーフィルタや配線・回路類が中間層27に設けられてもよい。
図5は、図3に示す撮影光学系11(特に第1光学系21)及び撮像素子24(特に第1センサ群24a(図4参照))に入射する広角画像光Wの光路を示す図である。本実施形態において広角画像光Wは、第1光学系21の第1広角用レンズ21a、第2広角用レンズ21b、第3広角用レンズ21c、第4広角用レンズ21d及び共通レンズ23を順次通過し、撮像素子24上に広角画像が結像する。
図6は、図3に示す撮影光学系11(特に第2光学系22)及び撮像素子24(特に第2センサ群24b(図4参照))に入射する望遠画像光Tの光路を示す図である。本実施形態において望遠画像光Tは、第1望遠用レンズ22aを通過(透過)し、第1望遠用反射ミラー22c及び第2望遠用反射ミラー22eの各々により反射された後に共通レンズ23を通過し、撮像素子24上に望遠画像が結像する。このように、第1望遠用反射ミラー22c及び第2望遠用反射ミラー22eの各々により反射されて光路が折り返されることにより、焦点距離の長い望遠画像撮影用の第2光学系22の光軸Lの方向に関する長さを短くすることができる。
次に、上述の撮影光学系11及び撮像素子24によって取得される広角画像(第1撮影画像)及び望遠画像(第2撮影画像)において生じうる画質の低下について説明する。
撮影光学系11及び撮像素子24において、第1光学系21を経て撮像素子24に到達する広角画像光と第2光学系22を経て撮像素子24に到達する望遠画像光との瞳分割の性能が十分ではない場合、広角画像光と望遠画像光との分離が不十分となって、広角画像と望遠画像とが重畳的に混在した画像が得られる。すなわち、広角画像光のみを受光することが意図された第1センサ群24a(第1の受光センサ25aのフォトダイオード29(図4参照))に望遠画像光が漏れ込むと、望遠画像成分の一部が重畳された広角画像が得られる。同様に、望遠画像光のみを受光することが意図された第2センサ群24b(第2の受光センサ25bのフォトダイオード29(図4参照))に広角画像光が漏れ込むと、広角画像成分の一部が重畳された望遠画像が得られる。
このように第1光学系21を経た撮影光(広角画像光)と第2光学系22を経た撮影光(望遠画像光)との間において干渉があると、撮像素子24を構成する各受光センサ25の出力には、本来分離されて受光されないはずの画像成分の信号が混ざり込んでしまう。
本件発明者は、上述の事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、被写体に対して撮像装置30(撮影光学系11)が相対的に移動した場合に、広角画像と望遠画像との間において像位置の変化が異なることに注目し、そのような像位置変化の相違を利用した画像処理によって高品質な広角画像及び望遠画像の両者を取得する手法を新たに見いだした。
例えば図3に示す撮影光学系11において、広角画像の撮影に用いられる第1光学系21と望遠画像の撮影に用いられる第2光学系22とは、共通の光軸Lを持ち、広角画像の画像中心と望遠画像の画像中心とは同一である。一方、同一の被写体を第1光学系21及び第2光学系22を使って広角画像及び望遠画像として撮影する場合、撮像素子24上における像の大きさについては第2光学系22を通過した被写体像(望遠画像)の方が第1光学系21を通過した被写体像(広角画像)よりも大きくなる。このように同一被写体を広角画像及び望遠画像として撮影する場合に、望遠画像における被写体像の方が広角画像における被写体像よりも大きくなる。そのため、パン及びチルト等によって第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの状態が変化した場合の像位置に関しても、広角画像では変化量が相対的に小さくなり、望遠画像では変化量が相対的に大きくなる。
なお、広角画像と望遠画像との間における被写体像の大きさの比は、収差等の他の影響を考慮しなければ、広角レンズ(第1光学系21)の焦点距離と望遠レンズ(第2光学系22)の焦点距離との比に概ね一致する。例えば、定数を「k」により表し、広角レンズ(第1光学系21)の焦点距離を「fw」により表し、望遠レンズ(第2光学系22)の焦点距離を「ft」により表し、撮影光学系11を含む撮像装置30のパンの角度を「θ」により表し、広角レンズ(第1光学系21)を通過した像の撮像素子24(第1センサ群24a)上での移動量を「Sw」により表し、望遠レンズ(第2光学系22)を通過した像の撮像素子24(第2センサ群24b)上での移動量を「St」により表すと、以下の式(1)及び式(2)が成立する。
(1) Sw=k・fw・tan(θ)
(2) St=k・ft・tan(θ)
第1光学系21と第2光学系22との間において撮影光が干渉し合って混信が生じていても、パン及びチルト等によって第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの状態が変化した場合の像位置の移動量は、広角画像と望遠画像との間において異なる。そのため、第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの状態の変化の前後において、本来意図されている所望像と本来意図されていない混信像との間において位置関係にずれが生じることになる。
本件発明者は、この「光軸Lの変化の前後における、所望像と混信像との位置関係のずれ」を利用することにより、広角画像及び望遠画像の各々において混信像の成分の影響を大幅に低減し、広角画像及び望遠画像の視認性の悪化を非常に効果的に防ぐことができる新たな手法を見いだした。
図7は、第1実施形態に係る撮像装置30の機能構成例を示すブロック図である。
本例の撮像装置30は、上述の撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)及び撮像素子24(第1センサ群24a及び第2センサ群24b)の他に、画像生成部32(画像合成部33)、メインコントローラ37、画像処理部38、画像記憶部39、表示コントローラ40、表示部41及びユーザ操作部42を有する。画像生成部32(画像合成部33)、メインコントローラ37、及び画像処理部38は、例えば1つ又は複数のマイクロプロセッサが図示しない記憶部に記憶されている各種ソフトウェアを実行することにより実現される。
画像生成部32は、第1センサ群24aから出力される第1撮影画像データD11に基づいて第1生成画像データD21を生成し、第2センサ群24bから出力される第2撮影画像データD12に基づいて第2生成画像データD22を生成する。本例の画像生成部32は画像合成部33を有し、この画像合成部33が複数の撮影画像を合成することにより生成画像データを生成する。すなわち画像合成部33は、第1光学系21の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の第1撮影画像データD11の位置合わせを行い、それらの位置合わせされた複数の第1撮影画像データD11を合成することにより第1生成画像データD21を生成する。同様に画像合成部33は、第2光学系22の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の第2撮影画像データD12の位置合わせを行い、それらの位置合わせされた複数の第2撮影画像データD12を合成することで第2生成画像データD22を生成する。
このように複数の撮影画像データを位置合わせ後に合成することにより、所望の画像成分については明瞭さを向上させることができる。一方、所望の画像に含まれる混信画像成分は、撮影画像の位置合わせが行われることにより撮影画像間で異なる場所に配置されるので、合成後の生成画像データにおいては、相対的に強度が小さくなり目立たなくなる。この効果は、合成する撮影画像データの数を多くするほど顕著になる。
画像合成部33による位置合わせ処理及び合成処理の具体例については後述する。
なお、複数の第1撮影画像データD11の各々は同じ被写体を撮影対象とした画像に関し、また複数の第2撮影画像データD12の各々も同じ被写体を撮影対象とした画像に関することが好ましい。したがって、被写体が経時的に変化する場合には画像間の撮影周期を短くすることにより、被写体の動きの影響が複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12に現れないようにすることが好ましい。
画像生成部32において生成された第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22は、例えば、後段に設けられる画像処理部38、画像記憶部39及び表示コントローラ40等に送られたり、画像生成部32を制御するメインコントローラ37に送られる。
画像処理部38は、送られてくる第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22に対して任意の画像処理を行い、画像処理後の第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22を画像記憶部39、表示コントローラ40或いはメインコントローラ37に送ってもよい。画像記憶部39は、送られてくる第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22を記憶する。表示コントローラ40は、送られてくる第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22に基づいて再現される広角画像(第1生成画像)及び/又は望遠画像(第2生成画像)を表示部41に表示させる。
メインコントローラ37は、撮影光学系11、撮像素子24、画像生成部32、画像処理部38、画像記憶部39、表示コントローラ40、表示部41、ユーザ操作部42及び撮像装置30を構成するその他の各部に接続されて、各部における処理機能を制御する。ユーザ操作部42は、ユーザによって操作されて各種の指示コマンドが入力され、ユーザ操作部42に入力された各種の指示コマンドはメインコントローラ37に送信され、メインコントローラ37は、ユーザ操作部42からの指示コマンドに基づいて撮像装置30の各部を制御することができる。
図8は、画像合成部33の機能構成例を示すブロック図である。
本例の画像合成部33は、アライメントデータ取得部34及び合成処理部35を有し、複数の第1撮影画像データD11から第1生成画像データD21を生成し、また複数の第2撮影画像データD12から第2生成画像データD22を生成する。
アライメントデータ取得部34は、複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量及び複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量を取得する。すなわち、画像合成部33には第1光学系21の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の第1撮影画像データD11が入力され、第1光学系21の光軸Lのズレを解消するために必要な「入力された複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」がアライメントデータとしてアライメントデータ取得部34により取得される。同様に、画像合成部33には第2光学系22の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の第2撮影画像データD12が入力され、第2光学系22の光軸Lのズレを解消するために必要な「入力された複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」がアライメントデータとしてアライメントデータ取得部34により取得される。ここで言う「位置ズレ量」は、任意の観点によって定めることが可能であり、例えば「複数の第1撮影画像データD11」及び「複数の第2撮影画像データD12」の各々に関して、画像中の所望像(例えば主要被写体)の位置を同じ位置とするために必要なピクセルシフト量によって表現可能である。
合成処理部35は、アライメントデータ取得部34によって取得された「複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」に基づいて複数の第1撮影画像(広角画像)の位置合わせを行い、位置合わせされた複数の第1撮影画像(広角画像)を合成することにより第1生成画像データD21を生成する。同様に、合成処理部35は、アライメントデータ取得部34によって取得された「複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」に基づいて複数の第2撮影画像(望遠画像)の位置合わせを行い、位置合わせされた複数の第2撮影画像(望遠画像)を合成することにより第2生成画像データD22を生成する。このように位置合わせ後に画像合成を行うことにより、本来意図されている所望像の画質を維持或いは向上しつつ、本来意図されていない混信像の影響を大幅に低減することができる。
なおアライメントデータ取得部34及び合成処理部35における処理手法は特に限定されず、任意の手法によって「複数の第1撮影画像データD11の位置合わせ及び合成」及び「複数の第2撮影画像データD12の位置合わせ及び合成」を行うことができる。
図9は、アライメントデータ取得部34及び合成処理部35の処理の一例を示すブロック図である。
本例のアライメントデータ取得部34は、移動量基礎データD31からアライメントデータD32を取得する。すなわちアライメントデータ取得部34は、「複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」及び「複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」を算出するための演算式(例えば上記の式(1)及び式(2)参照)に基づき、その位置ズレ量の算出に必要な基礎データ(例えば上述の定数「k」、第1光学系21及び第2光学系22の焦点距離「fw」及び「ft」、及び撮影光学系11を含む撮像装置30のパンの角度「θ」等)をメインコントローラ37等から移動量基礎データD31として取得し、アライメントデータD32を算出する。そして合成処理部35は、アライメントデータ取得部34から送られてくるアライメントデータD32に基づいて、複数の第1撮影画像データD11の位置合わせ及び合成を行うことにより第1生成画像データD21を生成し、また複数の第2撮影画像データD12の位置合わせ及び合成を行うことにより第2生成画像データD22を生成する。
このように本例のアライメントデータ取得部34(画像合成部33)は、第1光学系21の光軸Lの状態及び第1光学系21の焦点距離fwに基づいて複数の第1撮影画像の位置合わせを行い、第2光学系22の光軸Lの状態及び第2光学系22の焦点距離ftに基づいて複数の第2撮影画像の位置合わせを行う。したがって本例は、「複数の第1撮影画像データD11を取得する際の第1光学系21の光軸Lの状態の相違量」及び「複数の第2撮影画像データD12を取得する際の第2光学系22の光軸Lの状態の相違量」が予め把握可能なケースに好適であり、例えば、自動追尾撮像装置14(図2参照)等によって撮影光学系11の光軸Lの状態を能動的にコントロールして変えることができる場合に適用可能である。
図10は、アライメントデータ取得部34及び合成処理部35の処理の他の例を示すブロック図である。
本例のアライメントデータ取得部34は、第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12を解析することによりアライメントデータD32を取得する。すなわちアライメントデータ取得部34は、複数の第1撮影画像データD11を解析することにより「複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」を取得し、複数の第2撮影画像データD12を解析することにより「複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」を取得する。
なお、位置ズレ量を取得するための画像解析の手法は特に限定されず、アライメントデータ取得部34は、任意の画像解析を行って「複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」及び「複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」を取得することができる。例えば、「複数の第1撮影画像(広角画像)の各々における基準像部」及び「複数の第2撮影画像(望遠画像)の各々における基準像部」の位置を画像解析によって取得し、解析によって取得される「基準像部の位置」に基づいて「複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」及び「複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」を取得してもよい。なお、ここで言う基準像部は、任意の観点で定めることができ、エッジ(輪郭)に関する画像特徴データや周波数に関する画像特徴データ等に基づいて定められてもよい。したがってアライメントデータ取得部34は、例えば顔認識処理等の被写体認識処理を使って検出される主要被写体像を基準像部として使ってもよく、撮影画像中の主要被写体の位置に基づいて「複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」及び「複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」を取得してもよい。
そして合成処理部35は、アライメントデータ取得部34から送られてくるアライメントデータD32に基づいて、複数の第1撮影画像データD11の位置合わせ及び合成を行うことにより第1生成画像データD21を生成し、また複数の第2撮影画像データD12の位置合わせ及び合成を行うことにより第2生成画像データD22を生成する。
このように本例のアライメントデータ取得部34(画像合成部33)は、複数の第1撮影画像データD11を解析してその複数の第1撮影画像データD11の各々における第1基準像部の位置を取得し、その第1基準像部の位置に基づいて複数の第1撮影画像データD11の位置合わせを行い、また複数の第2撮影画像データD12を解析してその複数の第2撮影画像データD12の各々における第2基準像部の位置を取得し、その第2基準像部の位置に基づいて複数の第2撮影画像データD12の位置合わせを行う。したがって本例は、「複数の第1撮影画像データD11を取得する際の第1光学系21の光軸Lの状態の相違量」及び「複数の第2撮影画像データD12を取得する際の第2光学系22の光軸Lの状態の相違量」が予め把握可能なケースだけではなく、それらの相違量を予め把握できないケースにも適用可能である。そのため本例は、例えば、自動追尾撮像装置14(図2参照)等によって撮影光学系11の光軸Lの状態を能動的にコントロールして変える場合に適用されてもよいし、デジタルカメラ10(図1参照)の手振れ等によって撮影光学系11の光軸Lの状態がランダムに変わる場合に適用されてもよい。
図11は、第1実施形態に係る画像生成部32における生成画像データ(第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22)の生成フローを示すフローチャートである。
まず、撮影画像データ(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)が画像生成部32によって取得される(図11のステップS11)。なお撮像素子24(第1センサ群24a及び第2センサ群24b)から出力される撮影画像データが直接的に画像生成部32に入力されてもよいし間接的に画像生成部32に入力されてもよく、撮影画像データが撮像素子24から他の処理部に入力され、この他の処理部から画像生成部32に入力されてもよい。
そして画像生成部32の画像合成部33(アライメントデータ取得部34)において、第1光学系21の光軸Lのズレを解消するために必要な「入力された複数の第1撮影画像データD11の相互間の位置ズレ量」及び第2光学系22の光軸Lのズレを解消するために必要な「入力された複数の第2撮影画像データD12の相互間の位置ズレ量」を示すアライメントデータが取得される(S12)。
そして画像生成部32の画像合成部33(合成処理部35)において、第1光学系21の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の第1撮影画像(第1撮影画像データD11)の位置合わせが行われ(S13)、位置合わせされた複数の第1撮影画像(第1撮影画像データD11)が合成されることにより第1生成画像(広角画像:第1生成画像データD21)が生成される(S14)。同様に、画像生成部32の画像合成部33(合成処理部35)において、第2光学系22の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の第2撮影画像(第2撮影画像データD12)の位置合わせが行われ(S13)、位置合わせされたその複数の第2撮影画像(第2撮影画像データD12)が合成されることにより第2生成画像(望遠画像:第2生成画像データD22)が生成される(S14)。
図11に示す上述の一連の処理の適用対象は特に限定されず、例えば図1に示すようなデジタルカメラ10をユーザが手で保持して撮影を行うことで取得される撮影画像データ(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)に対して上述の一連の処理が適用されてもよい。また、図2に示すような自動追尾撮像装置14によって撮影取得される撮影画像データ(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)に対して上述の一連の処理が適用されてもよい。特に、図2の自動追尾撮像装置14のように撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lの状態を能動的且つ正確に変えることができる場合には、下述のように、生成画像(第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22)の画質を効果的に向上させることができる。
図12は、撮像本体部44が光学系アクチュエータ45によって移動可能であるケースの一例を示すブロック図である。なお図12には、撮像本体部44(撮影光学系11及び撮像素子24)、光学系アクチュエータ45及びメインコントローラ37のみが図示されているが、図12に示す撮像装置30は、図7〜図10に示す各部(例えば画像生成部32等)も含む。
本例の光学系アクチュエータ45は、メインコントローラ37の制御下で、撮影光学系11及び撮像素子24を含む撮像本体部44をコントロールして、撮影光学系11を移動して第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの状態を変えられる。
光学系アクチュエータ45の具体的な形態は特に限定されず、例えば図2に示すような撮影光学系11をパン及びチルトするパンチルト装置であってもよい。すなわち、光学系アクチュエータ45がパン駆動部及びチルト駆動部を含み、この光学系アクチュエータ45によって撮像本体部44(撮影光学系11及び撮像素子24)のパン動作及びチルト動作を行うことにより、第1光学系21の光軸L及び第2光学系22の光軸Lを2次元的に異なる状態とすることができる。この場合、光学系アクチュエータ45は、メインコントローラ37により予め設定された位置情報(移動量情報)に従って、撮像本体部44(撮影光学系11及び撮像素子24)のパンチルト動作を行うことが好ましい。予め設定されたパンチルト量に基づいて第1撮影画像(広角画像)及び第2撮影画像(望遠画像)の各画像に生じる被写体像の移動量は、撮像装置30の設計値から予め算出されたり、撮像装置30の実機においてキャリブレーション撮影を行うことにより予め計測されたりしておくことが可能である。このようにして得られる「第1撮影画像(広角画像)及び第2撮影画像(望遠画像)の各画像における被写体像の移動量」に基づいて、撮影光学系11の光軸Lの状態変化による所望像の位置変化を打ち消すように、撮像された画像群に対して補正(位置合わせ処理)が行われる。
なお上述のように複数の第1撮影画像(第1撮影画像データD11)は、第1光学系21の光軸Lが2次元的に異なる状態において撮像されて第1センサ群24aから出力されることが好ましい。しかし、例えば第1光学系21の光軸Lが1次元的に異なる状態において撮像されて第1センサ群24aから出力されてもよい。同様に複数の第2撮影画像(第2撮影画像データD12)は、第2光学系22の光軸Lが2次元的に異なる状態で撮像されて第2センサ群24bから出力されることが好ましいが、例えば第2光学系22の光軸Lが1次元的に異なる状態において撮像されて第2センサ群24bから出力されてもよい。
またメインコントローラ37によりパンチルト動作を制御可能な雲台を光学系アクチュエータ45として使用することもできる。この場合、例えば図1に示すようなデジタルカメラ10をそのような雲台(光学系アクチュエータ45)に据え付け固定することにより撮像装置30を構成してもよい。
なお光学系アクチュエータ45による「第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの状態の変更」の態様は特に限定されない。光学系アクチュエータ45は、例えば、第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの「方向」を変えてもよいし、被写体に対する第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの「相対位置」を変えてもよい。すなわち、画像生成部32(画像合成部33)に入力される複数の第1撮影画像データD11は、第1光学系21の光軸Lの方向が異なる状態において撮像されて第1センサ群24aから出力されてもよいし、被写体に対する第1光学系21の光軸Lの相対位置が異なる状態において撮像されて第1センサ群24aから出力されてもよい。また画像生成部32(画像合成部33)に入力される複数の第2撮影画像データD12は、第2光学系22の光軸Lの方向が異なる状態において撮像されて第2センサ群24bから出力されてもよいし、被写体に対する第2光学系22の光軸Lの相対位置が異なる状態において撮像されて第2センサ群24bから出力されてもよい。
なお、第1光学系21及び第2光学系22の光軸Lの「方向」や「相対位置」を変える手法は特に限定されない。例えば、図2に示すようなパンチルト装置によって第1光学系21及び第2光学系22をパンチルト動作させて光軸Lの向き(角度)を変えることにより、「光軸Lの方向」を変えることができる。また第1光学系21及び第2光学系22を被写体に対して相対的にスライドさせて光軸Lを水平方向及び/又は鉛直方向に移動させることにより、「光軸Lの相対位置」を変えることができる(後述の図39参照)。
このようにメインコントローラ37の制御下において光学系アクチュエータ45が撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lの状態を能動的にコントロールすることにより、第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22の基礎となる複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12を、予め定められる所望の光軸状態において取得することが可能になる。これにより画像生成部32(画像合成部33)は、複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12から高画質の第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22を生成することができる。
例えば、画像合成部33は、撮影画像データの加算平均を利用した合成手法により生成画像データを取得することができる。すなわち画像合成部33は、位置合わせされた複数の第1撮影画像データD11を加算して加算後のデータの平均を算出することにより、複数の第1撮影画像の合成を行って第1生成画像データD21を生成することができる。また画像合成部33は、位置合わせされた複数の第2撮影画像データD12を加算して加算後のデータの平均を算出することにより、複数の第2撮影画像の合成を行って第2生成画像データD22を生成することができる。
図13は、撮影画像データの加算平均を利用した合成手法により生成画像データを取得するケースの一例を示すフローチャートである。まず、メインコントローラ37によって撮影用の光軸Lの状態が決定される(図13のS21)。そして、その決定に従って光学系アクチュエータ45が撮像本体部44をコントロールして撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lを移動させる一方で、撮像本体部44(撮影光学系11及び撮像素子24)によって複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12の撮像が行われる(S22)。このように、メインコントローラ37により予め決定された撮影用の光軸Lの状態に従って撮像された複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12は画像生成部32(画像合成部33)において位置合わせされて合成され(S23)、第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22が生成される。
また画像合成部33は、撮影画像データの重み付き平均を利用した合成手法により生成画像データを取得することができる。すなわち画像合成部33は、撮像の際の第1光学系21の光軸Lの状態に応じて定められる重みに基づいて複数の第1撮影画像データD11の重み付き平均を算出することにより、複数の第1撮影画像の合成を行って第1生成画像データD21を生成することができる。また撮像の際の第2光学系22の光軸Lの状態に応じて定められる重みに基づいて複数の第2撮影画像データD12の重み付き平均を算出することにより、複数の第2撮影画像の合成を行って第2生成画像データD22を生成することができる。
図14は、撮影画像データの重み付き平均を利用した合成手法により生成画像データを取得するケースの一例を示すフローチャートである。本例においても、図13に示す例と同様に、メインコントローラ37によって撮影用の光軸Lの状態が決定され(図14のS31)、その決定に従って、光学系アクチュエータ45により撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lが移動させられ、撮像本体部44(撮影光学系11及び撮像素子24)により複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12の撮像取得が行われる(S32)。ただし本例では、「複数の第1撮影画像データD11」及び「複数の第2撮影画像データD12」の各々に関し、合成用の重み係数がメインコントローラ37によって決定される(S33)。そして画像生成部32(画像合成部33)は、複数の第1撮影画像データD11の位置合わせ及び複数の第2撮影画像データD12の位置合わせを行い、合成用の重み係数を使って重み付き平均演算を行って撮影画像の合成を行って(S34)、第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22を生成する。
なお、上述のように撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lを光学系アクチュエータ45によって能動的に所望状態に調整可能な場合には、複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12を撮影する際の光軸Lの状態パターンを工夫することにより、より一層効果的に混信成分を低減することができる。
例えば、複数の第1撮影画像データD11及び複数の第2撮影画像データD12を撮影する際の光軸Lの状態分布を、1次元又は2次元のガウス分布に従って設定してもよい。この場合、画像合成後の第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22の各々に残存する混信画像成分は、第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12に含まれる混信画像成分とガウス分布との畳み込みに基づくことになるため、非常に滑らかにボケた像となる。そのため第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22に基づく画像(広角画像及び望遠画像)の各々は、観察時に混信成分が目立たず、好ましい画質を持つことになる。
なお、同一の被写体に関する複数の画像を2次元的に相互に少しずつ位置をずらして重ねて合成することは、数学的には、「2次元の空間分布を持つ信号f」に「ずらし合成の分布g」を畳み込む演算(コンボリューション:f*g)によって表現可能である。
図15は、「2次元の空間分布を持つ信号f」に「ずらし合成の分布g」を畳み込む演算を説明するための概念図であり、(a)は位置に応じた輝度分布を持つ「信号f(画像データ)」を例示し、(b)は位置に応じた重みを規定する「ずらし合成の分布g(畳み込みカーネル)」を例示し、(c)は(a)に示す信号fに対して(b)に示すずらし合成の分布gを畳み込む演算を行った結果を例示する。なお図15(a)及び図15(c)において、縦軸は輝度の大きさを示し、横軸は1次元的な位置を示す。また図15(b)において、縦軸はずらし合成の分布gの重みの大きさを示し、横軸は1次元的な位置を示す。
図15(c)からも明らかなように、同一の被写体に関する複数の画像を2次元的に相互に少しずつ位置をずらして重ねて合成することにより、図15(a)に示す画像信号に含まれる高周波の空間周波数成分は、低周波の空間周波数成分に比べて強く抑制される。その結果、合成画像はいわゆる細部がボケた画像となる。なお説明の便宜上、図15(a)〜図15(c)は1次元的な位置を基準とした関係例を示すが、2次元的な位置を基準とした場合にも同様の関係例が成立しうる。
合成の基礎となる複数の画像を有限個であるとすると、位置のずらし量は離散的になるため、畳み込み演算のカーネルである「ずらし合成の分布g」は複数のデルタ関数の和に基づく伝達関数となり、その伝達関数をフーリエ変換して得られる関数は周波数伝達特性を表す。
混信画像成分を「綺麗にぼかす」という目的の場合、伝達関数として、高周波成分を低減させるローパスフィルタを用いると好ましい結果が得られることが知られている。上述の複数のデルタ関数の和により構成される「畳み込み演算のカーネル(ずらし合成の分布g)」にローパスフィルタの効果を持たせるには、例えば以下の手法1及び/又は手法2を利用することができる。
(手法1)複数のデルタ関数の強度分布をガウス分布状に設定する。
(手法2)複数のデルタ関数の密度分布をガウス分布状に設定する。
図16は、ずらし合成の分布gを構成する複数のデルタ関数の強度分布の一例を示す図であり、特に複数のデルタ関数の強度分布(重み)をガウス分布Gに従って設定する例を説明するための図である。図16において、縦軸は強度(重み)の大きさを示し、横軸は位置を示す。本例のように、ずらし合成の分布gを構成する各デルタ関数の強度(重み)をガウス分布Gに従って定めることにより、「畳み込み演算のカーネル(ずらし合成の分布)」にローパスフィルタの効果を持たせることが可能である。
図16に示すような「ずらし合成の分布g」を混信像に適用することは、例えば、均等に位置をずらして撮影することにより取得される画像の強度(例えば輝度)に関し、中央位置(すなわち基準状態の位置)に近いほどデルタ関数に大きな重みを持たせて、撮影画像データの重み付き平均を行うという合成処理に相当する。
したがって、上述のように画像合成部33が重み付き平均を利用した合成手法により生成画像データを取得するケースにおいて、例えば第1光学系21の光軸Lの状態に応じて定められる重みを、第1光学系21の光軸Lの状態に基づくガウス分布よって定めたり、第2光学系22の光軸Lの状態に応じて定められる重みを、第2光学系22の光軸Lの状態に基づくガウス分布よって定めたりすることにより、混信像を綺麗にぼかすことができる。
図17は、ずらし合成の分布gを構成する複数のデルタ関数の強度分布の他の例を示す図であり、(a)は位置に基づく強度分布に密度差を設ける例を説明するための図であり、(b)はその密度差をガウス分布Gに従って設定する例を説明するための図である。図17(a)において、縦軸は強度(重み)の大きさを示し、横軸は位置を示す。図17(b)において、縦軸はデルタ関数の頻度(存在数)を示し、横軸は基準状態を示す位置からの距離を示す。
図17(a)に示す例のように、ずらし合成の分布gを構成する複数のデルタ関数の強度(重み)が相互に同じであっても、位置に応じたのデルタ関数の強度分布に密度差を設けて、光軸Lの基準状態に近い位置ほどデルタ関数が密に存在し、光軸Lの基準状態から離れた位置ほどデルタ関数が疎に存在するようにずらし合成の分布gを定めることにより、「畳み込み演算のカーネル(ずらし合成の分布)」にローパスフィルタの効果を持たせることが可能である。
図17(a)に示すような「ずらし合成の分布g」を混信像に適用することは、例えば、光軸Lの位置をずらして撮影を行う場合に光軸Lの配置分布を不均等にし、中央位置(すなわち基準状態の位置)に近い位置ほど高密度に撮影を行って多数の撮影画像を取得し、その撮影により得られる撮影画像データの加算平均を行うという合成処理に相当する。
したがって、上述のように画像合成部33が加算平均を利用した合成手法により生成画像データを取得するケースにおいて、第1光学系21の光軸Lが基準状態に近い程、複数の第1撮影画像が密に撮像され、第1光学系21の光軸Lがその基準状態から離れる程、複数の第1撮影画像が疎に撮像されて、第1撮影画像データD11が第1センサ群24aから出力されたり、第2光学系22の光軸Lが基準状態に近い程、複数の第2撮影画像が密に撮像され、第2光学系22の光軸Lがその基準状態から離れる程、複数の第2撮影画像が疎に撮像されて、第2撮影画像データD12第2センサ群24bから出力されることにより、混信像を綺麗にぼかすことができる。
また、とりわけ図17(b)に示すように、ずらし合成の分布gを構成するデルタ関数の頻度(存在数)を、基準状態からの距離に関してガウス分布Gに従って定めることにより、より効果的に混信像に対するローパスフィルタ効果を実現することができる。なお、図17(b)に示すデルタ関数の頻度(存在数)は、基準状態から所定の距離の範囲内に存在するデルタ関数の数に基づいて定められる。このように複数の第1撮影画像を撮像する際の第1光学系21の光軸Lの状態の分布密度がガウス分布に基づいて定められたり、複数の第2撮影画像を撮像する際の第2光学系22の光軸Lの状態の分布密度がガウス分布に基づいて定められることにより、混信像をより綺麗にぼかすことができる。
なお図16及び図17は1次元的な位置を基準とした関係例を示すが、2次元的な位置を基準とした場合にも同様の関係例が成立しうる。
また、図16に示す例と図17に示す例とを組み合わせてもよい。すなわち画像合成部33が重み付き平均を利用した合成手法により生成画像データを取得するケースにおいて、光軸Lが基準状態に近いほど複数の撮影画像が密に撮像され、光軸Lがその基準状態から離れるほど複数の第1撮影画像が疎に撮像され、撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lの状態に応じて定められる重みを、その光軸Lの状態に基づくガウス分布よって定めることが好ましい。また、この場合にも、図17(b)に示すように、撮影画像を撮像する際の撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lの状態の分布密度がガウス分布に基づいて定められることが好ましい。
なお、ずらし合成の分布gを構成する各デルタ関数の強度(重み)は、ガウス分布G(図16参照)以外の分布に従って定められてもよく、またずらし合成の分布gを構成する複数のデルタ関数の強度分布の密度差も、ガウス分布(図17(b)参照)以外の分布に従って定められてもよい。
図12〜図17に示す上記例では、撮影光学系11の光軸Lの状態を光学系アクチュエータ45によって能動的にコントロールするケースを説明したが、上述の「複数の撮影画像の位置合わせ及び合成を行う画像生成手法」は、撮影光学系11の光軸Lの状態を能動的にコントロールしないケースにも適用可能である。すなわち図1に示すデジタルカメラ10をユーザが手で保持して画像撮影を行う場合にも、上述の「撮影光学系11の光軸Lの状態を能動的にコントロールするケース」と同様に、混信像の影響を低減した所望像を取得することが可能である。
例えば、撮影画像を解析して画像のぶれ成分を検出し、そのぶれ成分に基づいてぶれの影響を低減するぶれ補正技術が一般的に使用されている。したがって上述のような広角画像及び望遠画像をデジタルカメラ10によって撮影する場合にも、広角画像及び望遠画像の各々における所望像は混信像よりも信号強度が強く、一般的に行われているぶれ成分検出手法を用いることにより、所望像(主要被写体等)の撮影ぶれ(手ぶれ)を検出することは可能である。複数の画像を撮影する際に撮影ぶれが生じると、結果的に、撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lが異なる状態において画像が撮影される。したがって、撮影ぶれ(手ぶれ)を伴って取得される複数の撮影画像(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)に対して、上述の「撮影光学系11の光軸Lの状態を能動的にコントロールするケース」と同様に、所望像の位置合わせを行って合成処理を行うことにより、所望像におけるぶれの影響を低減できるだけではなく、生成画像(第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22)における混信像の影響を低減できる。また本例のように、デジタルカメラ10等のようにユーザによって保持されて撮影が行われる撮像装置30は、パンチルト装置のような光学系アクチュエータ45を設ける必要がないため、装置構成を簡素化することができ、低コストに実現され、また小型化も容易である。
次に、本実施形態の具体的な実施例について説明する。
図18は、パン動作による望遠画像のズレ量を説明するための図であり、(a)は第1のパン位置で撮像された第2撮影画像(望遠画像)を示し、(b)は第2のパン位置において撮像された第2撮影画像(望遠画像)を示す。図19は、パン動作による広角画像のズレ量を説明するための図であり、(a)は第1のパン位置において撮像された第1撮影画像(広角画像)を示し、(b)は第2のパン位置において撮像された第1撮影画像(広角画像)を示す。なお図18(a)及び図19(a)は、それぞれ同一の光軸Lを有する第1光学系21及び第2光学系22を使って撮像された画像である。同様に、図18(b)及び図19(b)は、それぞれ同一の光軸Lを有する第1光学系21及び第2光学系22を使って撮像された画像である。また図18(a)及び図18(b)に表されている「Sw」は、第1のパン位置と第2のパン位置との間における望遠画像中の同じ像箇所の位置の相違(位置ズレ量)を示し、上記の式(1)によって表されうる。同様に、また図19(a)及び図19(b)に表されている「St」は、第1のパン位置と第2のパン位置との間における広角画像中の同じ像箇所の位置の相違(位置ズレ量)を示し、上記の式(2)によって表されうる。なお「Sw」及び「St」によって表される位置ズレ量は、図18及び図19において、同一箇所の位置ズレ量を示す。
図18及び図19からも明らかなように、同じパン移動量であっても、望遠画像の位置ズレ量と広角画像の位置ズレ量は相違し、一般に、望遠画像の位置ズレ量の方が広角画像の位置ズレ量よりも大きい(Sw>St)。
図20は、混信像(広角画像)を含む望遠画像(所望像)のズレ量を説明するための図であり、(a)は第1のパン位置において撮像された第2撮影画像(望遠画像)を示し、(b)は第2のパン位置において撮像された第2撮影画像(望遠画像)を示す。図21は、混信像(望遠画像)を含む広角画像(所望像)のズレ量を説明するための図であり、(a)は第1のパン位置において撮像された第1撮影画像(広角画像)を示し、(b)は第2のパン位置で撮像された第1撮影画像(広角画像)を示す。
図18及び図19を参照して説明した位置ズレに関する上述の原則は、撮影画像が本来の所望像に加えて混信像を含むケースにおいても同様に適用される。すなわち、撮影画像が望遠画像(図20参照)及び広角画像(図21参照)のうちのいずれの画像を意図したものであっても、撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lの状態の相違に基づく位置ズレ量は、望遠画像の方が広角画像よりも大きくなる(Sw>St)。
図22は、第1実施形態における撮影画像の合成メカニズムを説明するための図であり、(a)は第1のパン位置において取得された「混信像(広角画像)を含む望遠画像(所望像)」を示し、(b)は(a)に示す望遠画像(所望像)の一部と混信像(広角画像)との位置関係の概略を示し、(c)は(b)に示す位置関係を簡略的に示し、(d)は第2のパン位置において取得された「混信像(広角画像)を含む望遠画像(所望像)」を示し、(e)は(d)に示す望遠画像(所望像)の一部と混信像(広角画像)との位置関係の概略を示し、(f)は(e)に示す位置関係を簡略的に示し、(g)は(b)に示す概略図と(e)に示す概略図とに基づく合成表示例を示し、(h)は(c)に示す簡略図と(f)に示す簡略図とに基づく合成に関する概念図を示す。
上述のように混信像(広角画像)と所望像(望遠画像)との相対位置は、光軸Lの状態に応じて変化する。したがって、例えば図22(a)〜図22(c)に示す第1のパン位置における「混信像(広角画像;第1混信成分C1参照)と所望像(望遠画像;第1所望画像成分R1参照)との間の相対距離」は、図22(d)〜図22(f)に示す第2のパン位置における「混信像(広角画像;第2混信成分C2参照)と所望像(望遠画像;第2所望画像成分R2参照)との間の相対距離」よりも大きい。図22(g)及び図22(h)に示すように、所望像(第1所望画像成分R1及び第2所望画像成分R2参照)の位置に基づいて、第1のパン位置において撮像された撮影画像と第2のパン位置において撮像された撮影画像との位置合わせを行うと、「第1のパン位置において撮像された撮影画像に含まれる混信像(第1混信成分C1参照)」と「第2のパン位置において撮像された撮影画像に含まれる混信像(第2混信成分C2参照)」との間で位置がずれる。そのため所望像の位置に基づいて位置合わせされた「第1のパン位置において撮像された望遠画像及び第2のパン位置において撮像された望遠画像」を合成すると、所望像(望遠画像;第1所望画像成分R1及び第2所望画像成分R2参照)は位置が一致した状態において合成されるため非常に鮮明な画像となる。しかし、混信像(広角画像;第1混信成分C1及び第2混信成分C2参照)は位置が一致しない状態において合成されるため相対的に画像強度が下がり目立たなくなる。
図23は、第1実施形態に係る撮像装置30によって取得される望遠画像の生成例を示す図である。図23(a)は複数の撮影画像(望遠画像)を示し、図23(b)は複数の撮影画像の位置合わせ及び合成によって生成される望遠画像の一例を示す。図24は、第1実施形態に係る撮像装置30によって取得される広角画像の生成例を示す図である。図24(a)は複数の撮影画像(広角画像)を示し、図24(b)は複数の撮影画像の位置合わせ及び合成によって生成される広角画像の一例を示す。
図23及び図24の各々に示す例は、第1光学系21(広角画像用光学系)の焦点距離と第2光学系22(望遠画像用光学系)の焦点距離との比が「7:1」であり、水平方向H(パン方向)に1画素単位で9画素相当移動させるとともに垂直方向V(チルト方向)に1画素単位で9画素相当移動させて合計81枚(=9×9)の撮影画像(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)が取得される(図23(a)及び図24(a)参照)。そして、81枚の撮影画像の位置合わせ処理及び合成処理が行われて生成画像(第1生成画像データD21(図24(b)参照)及び第2生成画像データD22(図23(b)参照))が取得される。
「図23(b)」と「図20(a)及び図20(b)」との比較や「図24(b)」と「図21(a)及び図21(b)」との比較からも明らかなように、本実施形態のように光軸Lが異なる状態において取得される複数の撮影画像の位置合わせを行った後に合成処理を行うことにより、混信像の影響を非常に効果的に低減することができる。特に本実施形態の撮像装置30では、焦点距離の異なる光学系により同時に撮像された複数種類の画像(広角画像及び望遠画像)のうちのいずれの画質も損なうことなく、全ての種類の画像の画質を改善することができる。
<第2実施形態>
本実施形態において、上述の第1実施形態に係る撮像装置30と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図25は、第2実施形態に係る画像生成部32の機能構成例を示すブロック図である。
本実施形態に係る画像生成部32は、上述の画像合成部33に加え、第1撮影画像(広角画像)及び第2撮影画像(望遠画像)の補正を行う画像補正部60を有する。
この画像補正部60は、撮像素子24(第1センサ群24a及び第2センサ群24b)から送られてくる第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12を補正し、第1撮影画像(広角画像)における第2光学系22を通過した光の影響を低減し、第2撮影画像(望遠画像)における第1光学系21を通過した光の影響を低減する。そして画像補正部60によって補正された第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12は画像合成部33に送られ、画像合成部33において第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22が生成される。
画像補正部60における上述の混信除去処理の具体的な手法は特に限定されず、例えば以下の手法に従って、画像補正部60は撮影画像から不要光の影響を低減することができる。
<混信除去処理例>
図26は、第1光学系21と第2光学系22との間における撮影光の干渉(クロストーク)による画質の低下の影響を受けた広角画像(図26(a)参照)及び望遠画像(図26(b)参照)の一例を示す。
上述のように、撮影光学系11及び撮像素子24において瞳分割の性能が十分ではない場合、広角画像光のみを受光することが意図された第1センサ群24a(図4参照)に望遠画像光が漏れ込むため望遠画像成分の一部が重畳された広角画像が得られ(図26(a)参照)、望遠画像光のみを受光することが意図された第2センサ群24b(図4参照)に広角画像光が漏れ込むため広角画像成分の一部が重畳された望遠画像が得られる(図26(b)参照)。
図27は、光学系間における撮影光の干渉のメカニズムを説明するための概念図である。
図27において符号「Iw1」は真の広角画像を示し、符号「It1」は真の望遠画像を示す。ここで言う「真の広角画像Iw1」及び「真の望遠画像It1」は、第1光学系21を通過する撮影光と第2光学系22を通過する撮影光との間で干渉が起きていない状態において撮影取得される画像である。一方、符号「Iw2」は第1センサ群24a(第1の受光センサ25a)から実際に出力される撮像信号から生成される出力広角画像を示し、「It2」は第2センサ群24b(第2の受光センサ25b)から実際に出力される撮像信号から生成される出力望遠画像を示す。
図3に示す撮影光学系11及び撮像素子24を具備する撮像装置30(図1及び図2参照)によって広角画像及び望遠画像を撮影する場合に、撮像装置30(特に撮像素子24の遮光マスク28)が十分な瞳分割性能を有していれば、図27に示す真の広角画像Iw1及び真の望遠画像It1を表す撮像信号が撮像素子24から出力される。しかしながら上述のように、瞳分割性能が十分ではなく広角画像光と望遠画像光との間において干渉がある場合には、図27に示す出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2のように、広角画像及び望遠画像が混在した多重画像を表す撮像信号が第1センサ群24a及び第2センサ群24bの各々から出力される。
例えば図27に示すように、真の広角画像Iw1の撮影光のうち、第1センサ群24a(第1の受光センサ25a)によって適切に受光される成分を示す分布情報(指標)を「広角検出ゲイン分布D1」とし、第2センサ群24b(第2の受光センサ25b)によって不適切に受光される成分を示す分布情報を「広角混信ゲイン分布D2」とする。また真の望遠画像It1の撮影光のうち、第1センサ群24a(第1の受光センサ25a)によって不適切に受光される成分を示す分布情報を「望遠混信ゲイン分布D3」とし、第2センサ群24b(第2の受光センサ25b)によって適切に受光される成分を示す分布情報を「望遠検出ゲイン分布D4」とする。
この場合、真の広角画像Iw1に対して広角検出ゲイン分布D1を適用することにより得られる広角画像成分であって第1センサ群24a(第1の受光センサ25a)に受光される広角画像成分を「真広角画像成分E1」とする。また真の望遠画像It1に対して望遠混信ゲイン分布D3を適用することにより得られる望遠画像成分であって第1センサ群24a(第1の受光センサ25a)に受光される望遠画像成分を「混信望遠画像成分E2」とする。また真の広角画像Iw1に対して広角混信ゲイン分布D2を適用することにより得られる広角画像成分であって第2センサ群24b(第2の受光センサ25b)に受光される広角画像成分を「混信広角画像成分E3」とする。また真の望遠画像It1に対して望遠検出ゲイン分布D4を適用することにより得られる望遠画像成分であって第2センサ群24b(第2の受光センサ25b)に受光される望遠画像成分を「真望遠画像成分E4」とする。
この場合、第1センサ群24a(第1の受光センサ25a)から出力される撮像信号によって生成される出力広角画像Iw2は、真広角画像成分E1と混信望遠画像成分E2とを加算して得られる画像に基づく。また第2センサ群24b(第2の受光センサ25b)から出力される撮像信号によって生成される出力望遠画像It2は、混信広角画像成分E3と真望遠画像成分E4とを加算して得られる画像に基づく。
撮像装置の瞳分割性能が優れているほど、広角画像光と望遠画像光とは精度良く分離されて撮像素子24により受光され、混信望遠画像成分E2及び混信広角画像成分E3の成分割合はゼロ(ブランク)に近づき、出力広角画像Iw2は真の広角画像Iw1に近づき、出力望遠画像It2は真の望遠画像It1に近づく。一方、撮像装置の瞳分割性能が劣るほど、広角画像光と望遠画像光とは十分に分離されずに撮像素子24により受光され、混信望遠画像成分E2及び混信広角画像成分E3の成分割合は増え、出力広角画像Iw2において混信望遠画像成分E2の割合が大きくなり、出力望遠画像It2において混信広角画像成分E3の割合が大きくなる。
このように光学系間において撮影光の干渉がある場合に撮像素子24から出力される撮像信号は、真の画像に検出ゲイン分布を適用して得られる画像成分と、別チャンネルの画像に混信ゲイン分布を適用して得られる画像成分とが加算されたものに相当する。このような指向性センサ(撮像素子24)における混信(クロストーク)により、広角画像及び望遠画像が重なった画像(撮像信号)が出力されるため、瞳分割性能が十分ではない撮像装置からは画質劣化した撮影画像が出力されることとなる。
そこで本実施形態の画像補正部60(図25参照)は、広角画像データ及び望遠画像データの補正処理を行って、「広角画像に混入した望遠画像成分(すなわち第2光学系22を通過して第1の受光センサ25aにより受信された望遠画像の撮影光成分)」の影響及び「望遠画像に混入した広角画像成分(すなわち第1光学系21を通過して第2の受光センサ25bにより受信された広角画像の撮影光成分)」の影響を抑制する。
画像補正部60において行われる補正処理の具体的な手法は特に限定されず、例えば、画像補正部60は、広角画像(第1撮影画像)及び望遠画像(第2撮影画像)の検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列の逆行列に基づいて広角画像及び望遠画像の補正処理を行うことができる。
以下、検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列の逆行列に基づく画像補正処理の具体例について説明する。
図28は、真の広角画像Iw1、真の望遠画像It1、出力広角画像Iw2、出力望遠画像It2及び検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの関係を示す図である。なお図28に示す「真の広角画像Iw1、真の望遠画像It1、出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2」は、それぞれ図27に示す「真の広角画像Iw1、真の望遠画像It1、出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2」に対応する。
撮像素子24(第1の受光センサ25a及び第2の受光センサ25b)から出力される撮像信号から生成される出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2は、図28に示すように、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列M」と、「第1光学系21及び第2光学系22の各々を通過した撮影光によって生成される本来の広角画像及び望遠画像である真の広角画像Iw1及び真の望遠画像It1」との積で表される。
検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mは、図28に示すように、広角検出ゲイン分布D1、広角混信ゲイン分布D2、望遠混信ゲイン分布D3及び望遠検出ゲイン分布D4によって構成される2×2行列である。なお図28に示す「広角検出ゲイン分布D1、広角混信ゲイン分布D2、望遠混信ゲイン分布D3及び望遠検出ゲイン分布D4」は、それぞれ図27に示す「広角検出ゲイン分布D1、広角混信ゲイン分布D2、望遠混信ゲイン分布D3及び望遠検出ゲイン分布D4」に対応する。
図29は、図28に示す行列式に対して「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列M」の逆行列M−1を適用して得られる行列式を示す図である。図29に示すように、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列M」の逆行列M−1と「撮像素子24(第1の受光センサ25a及び第2の受光センサ25b)から出力される撮像信号から生成される出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2」との積によって、「本来の広角画像及び望遠画像である真の広角画像Iw1及び真の望遠画像It1」を取得することができる。
図30は、図29の行列式を簡略化して表した行列式を示す。図30において「W1」は真の広角画像Iw1の画素成分(画素値)を集合的に表し、「T1」は真の望遠画像It1の画素成分を集合的に表し、「W2」は出力広角画像Iw2の画素成分を集合的に表し、「T2」は出力望遠画像It2の画素成分を集合的に表す。また図30において「A」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ広角検出ゲイン分布D1、望遠混信ゲイン分布D3、広角混信ゲイン分布D2及び望遠検出ゲイン分布D4を構成する要素を集合的に表す。
図31は、図30に示す「W1」を構成する要素w1_11〜w1_mnを示す。すなわち「W1」は、真の広角画像Iw1の画素成分(画素値)に対応する要素w1_11〜w1_mnによって構成される。なお「m」及び「n」はそれぞれ2以上の整数を示し、「m」と「n」とは同じであってもよいし異なっていてもよい。
同様に、図30に示す「W2」、「T1」及び「T2」も、それぞれ出力広角画像Iw2、真の望遠画像It1及び出力望遠画像It2の画素成分(画素値)に対応する要素w2_11〜w2_mn、t1_11〜t1_mn及びt2_11〜t2_mnによって構成される(図示省略)。また図30に示す「A」、「B」、「C」及び「D」も、それぞれ広角画像及び望遠画像の各画素に応じて定められる要素a11〜amn、b11〜bmn、c11〜cmn及びd11〜dmnによって構成される(図示省略)。
図32は、図30に示す行列式に基づいて導出される「w1_ij」の算出式を示す。図33は、図30に示す行列式に基づいて導出される「t1_ij」の算出式を示す。図32及び図33において「i」は1〜mのうちのいずれかの整数を示し、「j」は1〜nのうちのいずれかの整数を示す。図32及び図33に示すように、真の広角画像Iw1の画素成分(画素値)に対応する要素w1_11〜w1_mn及び真の望遠画像It1の画素成分(画素値)に対応する要素t1_11〜t1_mnは、出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2と逆行列M−1とから演算により算出することができる。
本実施形態の画像補正部60は、図32及び図33により表される演算式に基づいて広角画像データ(第1撮影画像データD11)及び望遠画像データ(第2撮影画像データD12)の補正処理を行うことにより、「広角画像に混入した望遠画像成分」の影響又は「望遠画像に混入した広角画像成分」の影響を低減することができる。
厳密に補正処理を行う観点からは、検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布は広角画像及び望遠画像の各々を構成する画素の数と同じ数の要素によって構成され、検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布を構成する要素毎(対応画素毎)の逆行列M−1が画像補正部60において用いられることが好ましい。ただし、シェーディングが小さい場合等のように「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布を構成する要素」が「広角画像及び望遠画像を構成する画素の一部又は全部」において近似するケースでは、計算コストを優先させる観点から、その近似範囲において共通の代表値によって「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布を構成する要素」を表してもよい。したがって「広角画像及び望遠画像を構成する画素の全部」が近似する場合には、検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布を単一の代表値によって表すことができ、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列の逆行列に基づく補正処理」を簡素且つ高速に行うことが可能になる。
なお広角検出ゲイン分布D1、広角混信ゲイン分布D2、望遠混信ゲイン分布D3及び望遠検出ゲイン分布D4に基づく行列M(図28〜図30の「A」、「C」、「B」及び「D」参照)は、撮影に使用する撮影光学系11及び撮像素子24によって定められる。画像補正部60は、この行列Mから予め導出される逆行列M−1の要素を記憶保持しており、その記憶保持している逆行列M−1の要素を出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2に適用することにより、広角画像における望遠画像の撮影光の影響を低減し、望遠画像における広角画像の撮影光の影響を低減することができる。
また上述の画像補正部60における「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」は、撮像素子24から取得される広角画像データ(第1撮影画像データD11)及び望遠画像データ(第2撮影画像データD12)に対して行われるが、これに限定されない。例えば、画像記憶部39等のメモリに記憶され画像生成部32に出力される広角画像データ(第1撮影画像データD11)及び望遠画像データ(第2撮影画像データD12)に対し、画像補正部60における「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列の逆行列に基づく補正処理」が行われてもよい。
また上述の画像補正部60における「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」は、実際には、広角画像データ及び望遠画像データを構成する色チャンネル毎に行われる。画像補正部60は、その色チャンネルの各々に関する「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1」を記憶保持する。例えば、撮像素子24(第1の受光センサ25a及び第2の受光センサ25b)がRGB(赤緑青)のカラーフィルタを有し、RGBデータによって構成される広角画像データ(第1撮影画像データD11)及び望遠画像データ(第2撮影画像データD12)が撮像信号として撮像素子24から出力される場合、画像補正部60は、RGBの各々の色チャンネルに関する「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1」を保持して出力広角画像Iw2及び出力望遠画像It2に適用する。
図34は、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」を行った場合の画像例を示し、(a)は広角画像例を示し、(b)は望遠画像例を示す。図35は、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」を行った後に第1実施形態に係る「位置合わせ後の合成処理」を行った場合の画像例を示し、(a)は広角画像例を示し、(b)は望遠画像例を示す。
図34(a)に示す広角画像例では、望遠画像成分のうち明るい画素成分の混在が多少目立つ。また図34(b)に示す望遠画像例では、広角画像成分のうち鋭い輪郭成分の混在が多少目立つ。一方、本実施形態に係る図35(a)に示す広角画像例及び図35(b)に示す望遠画像例では、図34(a)に示す広角画像例及び図34(b)に示す望遠画像例において目立った混在成分が低減され、全体として視認性に優れた高画質の画像となっている。
図36は、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」を行った後に第1実施形態に係る「位置合わせ後の合成処理」を行った場合の他の画像例を示す。
図36(a)は、撮像素子24(第2センサ群24b)から出力される望遠撮影画像(第2撮影画像データD12)の一例を示し、広角画像成分及び望遠画像成分が「広角画像成分:望遠画像成分=0.49:0.51」の比率で混合している。
図36(b)は、撮像素子24(第1センサ群24a)から出力される広角撮影画像(第1撮影画像データD11)の一例を示し、広角画像成分及び望遠画像成分が「広角画像成分:望遠画像成分=0.51:0.49」の比率で混合している。
図36(c)は、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理(図28〜図33参照)」を図36(a)に示す望遠撮影画像に適用することにより得られる望遠画像(第2撮影画像データD12)を示す。図36(c)に示す例では、「逆行列M−1に基づく補正処理」では混信成分(広角画像成分)を完全には除去することができず、除去残差が残っている。
図36(d)は、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理(図28〜図33参照)」を図36(b)に示す広角撮影画像に適用することにより得られる広角画像(第1撮影画像データD11)を示す。図36(d)に示す例では、「逆行列M−1に基づく補正処理」では混信成分(望遠画像成分)を完全には除去することができず、除去残差が残っている。
図36(e)は、第2光学系22の光軸Lの状態を2次元的に変えることにより取得される複数の望遠撮影画像(第2撮影画像データD12)であって、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理(図28〜図33参照)」を適用した後の望遠撮影画像(図36(c)参照)を複数示す。
図36(f)は、第1光学系21の光軸Lの状態を2次元的に変えることにより取得される複数の広角撮影画像(第1撮影画像データD11)であって、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理(図28〜図33参照)」を適用した後の広角撮影画像(図36(d)参照)を複数示す。
図36(g)は、図36(e)に示す複数の望遠撮影画像(第2撮影画像データD12)の「位置合わせ処理及び合成処理(図23参照)」を行うことにより得られる望遠生成画像(第2生成画像データD22)を示す。図36(g)に示す例は、第1光学系21(広角画像用光学系)の焦点距離と第2光学系22(望遠画像用光学系)の焦点距離との比が「7:1」であり、水平方向H(パン方向)に1画素単位で9画素相当移動させるとともに垂直方向V(チルト方向)に1画素単位で9画素相当移動させて合計81枚(=9×9)の望遠撮影画像(第2撮影画像データD12)から得られる望遠生成画像(第2生成画像データD22)を示す。
図36(h)は、図36(f)に示す複数の広角撮影画像(第1撮影画像データD11)の「位置合わせ処理及び合成処理(図24参照)」を行うことにより得られる広角生成画像(第1生成画像データD21)を示す。図36(h)に示す例は、第1光学系21(広角画像用光学系)の焦点距離と第2光学系22(望遠画像用光学系)の焦点距離との比が「7:1」であり、水平方向H(パン方向)に1画素単位で9画素相当移動させるとともに垂直方向V(チルト方向)に1画素単位で9画素相当移動させて合計81枚(=9×9)の広角撮影画像(第1撮影画像データD11)から得られる広角生成画像(第1生成画像データD21)を示す。
「図36(g)及び図36(h)」と「図36(c)及び図36(d)」との比較からも明らかなように、「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」に「位置合わせ処理及び合成処理」を組み合わせることにより、混信成分が低減され、全体として視認性に優れた高画質の画像を提供することができる。また「図36(g)及び図36(h)」と「図23(b)及び図24(b)」との比較からも明らかなように、「位置合わせ処理及び合成処理」に対して「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」を組み合わせることにより、より一層効果的に混信成分を低減することができる。
特に図36(a)に示す望遠画像及び図36(b)に示す広角画像は、それぞれ混信成分の比率が「0.49(=49%)」であり、本来意図されている所望像に対する混信像の割合が非常に大きい。そのような場合であっても、本実施形態の画像生成部32のように画像補正部60による補正処理と画像合成部33による補正処理とを組み合わせることにより、図36(g)及び図36(h)に示すように混信成分をほぼ視認することができないレベルにまで低減した生成画像(第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22)を取得することができる。したがって本実施形態によれば、画像分離性能(瞳分割性能)が低い安価な撮像素子24であっても、混信成分を効率的に低減した高画質の生成画像を取得することができ、非常に有用である。
なお画像補正部60は、上述の「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」以外の補正処理を行ってもよい。画像補正部60は、例えば「広角画像データ(第1撮影画像データD11)を補正して第1光学系21の収差の影響を低減する補正処理」や「望遠画像データ(第2撮影画像データD12)を補正して第2光学系22の収差の影響を低減する補正処理」を行ってもよい。また画像補正部60は、位置補正(平行移動)などの幾何的な補正に加え、撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光学特性を反映した台形補正等の変形補正や、シェーディング或いは色調を調整する補正を行うための処理を行ってもよい。画像補正部60によって適切な画像補正処理を行うことにより、本来意図される所望の画像成分については、ノイズやブレなどの不要成分が低減され、より一層明瞭な生成画像(第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22)を得ることができる。
また、図25には画像合成部33よりも前段に画像補正部60が設けられる例が示されているが、画像補正部60が設けられる位置は特に限定されない。例えば図37に示すように、画像生成部32において複数の画像補正部(第1画像補正部60a及び第2画像補正部60b)が設けられてもよく、画像合成部33よりも前段だけではなく後段に画像補正部(第1画像補正部60a及び第2画像補正部60b)が設けられてもよい。図37に示す画像生成部32では、例えば、第1画像補正部60aが上述の「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」を行い、画像合成部33が第1画像補正部60aによる補正後の撮影画像データ(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)から生成画像データ(第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22)を生成し、第2画像補正部60bが生成画像データ(第1生成画像データD21及び第2生成画像データD22)に対して他の補正処理を行ってもよい。また図38に示すように、画像生成部32において画像合成部33よりも後段に画像補正部60が設けられてもよい。
<第3実施形態>
本実施形態において、上述の実施形態に係る撮像装置30と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
上述の実施形態では、撮影光学系11及び撮像素子24を含む撮像本体部44を移動させながら撮像を行うことにより、第1光学系21の光軸Lが異なる状態において複数の第1撮影画像(広角画像)が撮像され、第2光学系22の光軸Lが異なる状態において複数の第2撮影画像(望遠画像)が撮像される。これに対して本実施形態では、被写体を移動させながら撮像を行うことにより、第1光学系21の光軸Lが異なる状態において複数の第1撮影画像(広角画像)が撮像され、第2光学系22の光軸Lが異なる状態において複数の第2撮影画像(望遠画像)が撮像される。
したがって以下に説明する本実施形態は、例えば顕微鏡等によって撮像装置30が構成される場合に好適である。
図39は、第3実施形態に係る撮像装置30を例示するブロック図である。図39には、撮像本体部44(撮影光学系11及び撮像素子24)、光学系アクチュエータ45、メインコントローラ37、被写体64、被写体保持部65及び被写体アクチュエータ66のみが図示されているが、図39に示す撮像装置30は、図7〜図10に示す各部(例えば画像生成部32等)も含む。
本実施形態の撮像装置30は、被写体64を保持する被写体保持部65と、メインコントローラ37の制御下において被写体保持部65を移動させる被写体アクチュエータ66とを更に備える。
被写体保持部65は、被写体64を固定的に保持可能であれば、具体的な保持手法は特に限定されない。
また本例の被写体保持部65は、被写体アクチュエータ66によってスライド移動し、被写体アクチュエータ66は、撮影光学系11(第1光学系21及び第2光学系22)の光軸Lと垂直を成す方向に2次元的に被写体保持部65を移動させることができる。
本実施形態の撮像装置30において、メインコントローラ37の制御下において、被写体64を被写体保持部65によって移動させながら撮像本体部44によって被写体64の撮像を行うことにより、「第1光学系21の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の広角画像(第1撮影画像)」及び「第2光学系22の光軸Lが異なる状態において撮像される複数の望遠画像(第2撮影画像)」を取得することができる。
なお本実施形態のように被写体64を移動させる場合、撮像本体部44によって取得される撮影画像(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)における被写体像は、「被写体アクチュエータ66及び被写体保持部65による被写体64の移動方向」とは逆方向に移動する。例えば被写体64が水平右方向HR(図39参照)に10cmスライドすると、撮影画像(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)における被写体像は相対的に水平左方向(図39の符号「HL」参照)に10cmスライドする。
パンチルト装置による撮影光学系11の光軸Lの「向き(角度)」を変えるケースに比べ、本実施形態のように撮影光学系11の光軸Lの「相対位置」を変えるケースでは、撮影画像(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)における被写体像の動き量は小さくなる傾向がある。したがって比較的小さな被写体64の撮像を行う場合のように、撮影光学系11の光軸Lの状態を緻密に変化させることが必要とされるケースに対して本実施形態の撮像装置30は好適である。
なお本実施形態において、被写体アクチュエータ66及び被写体保持部65による被写体64の移動と、光学系アクチュエータ45による撮像本体部44(撮影光学系11及び撮像素子24)の移動とが組み合わされて、複数の撮影画像(第1撮影画像データD11及び第2撮影画像データD12)が取得されてもよい。
<他の変形例>
本発明は上述の実施形態及びその変形例に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
例えば上述の実施形態同士が適宜組み合わされてもよく、「被写体64側を移動させて撮像を行う」上述の第3実施形態に係る撮像装置30に、上述の第2実施形態に係る「検出ゲイン分布及び混信ゲイン分布によって構成される行列Mの逆行列M−1に基づく補正処理」を適用してもよい。
また上述の実施形態では、2種類の光学系(第1光学系21及び第2光学系22)によって撮影光学系11が構成される例について説明したが、3種類以上の光学系によって撮影光学系11が構成されてもよい。
また、上述の各構成及び各機能は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の処理ステップ(処理手順)をコンピュータに実行させるプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的記録媒体)、或いはそのようなプログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することが可能である。
また、本発明を適用可能な態様は図1に示すデジタルカメラ10及び図2に示す自動追尾撮像装置14には限定されず、撮像を主たる機能とするカメラ類の他に、撮像機能に加えて撮像以外の他の機能(通話機能、通信機能、或いはその他のコンピュータ機能)を備えるモバイル機器類に対しても本発明を適用することが可能である。本発明を適用可能な他の態様としては、例えば、カメラ機能を有する携帯電話機やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)及び携帯型ゲーム機が挙げられる。以下、本発明を適用可能なスマートフォンの一例について説明する。
<スマートフォンの構成>
図40は、本発明の撮像装置の一実施形態であるスマートフォン101の外観を示す図である。図40に示すスマートフォン101は、平板状の筐体102を有し、筐体102の一方の面に表示部としての表示パネル121と、入力部としての操作パネル122とが一体となって形成される表示入力部120が設けられる。また、その筐体102は、スピーカ131と、マイクロホン132と、操作部140と、カメラ部141とを備える。なお、筐体102の構成はこれに限定されず、例えば、表示部と入力部とが独立して設けられる構成を採用したり、折り畳み構造やスライド機構を有する構成を採用することもできる。
図41は、図40に示すスマートフォン101の構成を示すブロック図である。図41に示すように、スマートフォン101の主たる構成要素として、無線通信部110と、表示入力部120と、通話部130と、操作部140と、カメラ部141と、記憶部150と、外部入出力部160と、GPS(Global Positioning System)受信部170と、モーションセンサ部180と、電源部190と、主制御部100とを備える。また、スマートフォン101の主たる機能として、基地局装置と移動通信網とを介した移動無線通信を行う無線通信機能を備える。
無線通信部110は、主制御部100の指示に従って、移動通信網に接続された基地局装置との間で無線通信を行う。その無線通信が使用されて、音声データ及び画像データ等の各種ファイルデータや電子メールデータなどの送受信、及びWebデータやストリーミングデータなどの受信が行われる。
表示入力部120は、表示パネル121及び操作パネル122を備えるいわゆるタッチパネルであり、主制御部100の制御により、画像(静止画像及び動画像)や文字情報などを表示して視覚的にユーザに情報を伝達し、また表示した情報に対するユーザ操作を検出する。
表示パネル121は、LCD(Liquid Crystal Display)又はOELD(Organic Electro−Luminescence Display)などを表示デバイスとして用いる。操作パネル122は、表示パネル121の表示面上に表示される画像が視認可能な状態によりお設けられ、ユーザの指や尖筆によって操作される一又は複数の座標を検出するデバイスである。そのデバイスがユーザの指や尖筆によって操作されると、操作パネル122は、操作に起因して発生する検出信号を主制御部100に出力する。次いで、主制御部100は、受信した検出信号に基づいて、表示パネル121上の操作位置(座標)を検出する。
本発明の撮像装置の一実施形態として図40に例示されるスマートフォン101の表示パネル121と操作パネル122とは一体となって表示入力部120を構成し、操作パネル122が表示パネル121を完全に覆うような配置となっている。その配置を採用した場合、操作パネル122は、表示パネル121外の領域についても、ユーザ操作を検出する機能を備えてもよい。換言すると、操作パネル122は、表示パネル121に重なる重畳部分についての検出領域(以下、「表示領域」と称する)と、それ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分についての検出領域(以下、「非表示領域」と称する)とを備えていてもよい。
なお、表示領域の大きさと表示パネル121の大きさとを完全に一致させてもよいが、両者を必ずしも一致させる必要はない。また、操作パネル122が、外縁部分及びそれ以外の内側部分の2つの感応領域を備えていてもよい。さらに、その外縁部分の幅は、筐体102の大きさなどに応じて適宜設計されるものである。更にまた、操作パネル122において採用される位置検出方式としては、マトリクススイッチ方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、及び静電容量方式などが挙げられ、いずれの方式が採用されてもよい。
通話部130は、スピーカ131及びマイクロホン132を備え、マイクロホン132を通じて入力されたユーザの音声を主制御部100にて処理可能な音声データに変換して主制御部100に出力したり、無線通信部110或いは外部入出力部160により受信された音声データを復号してスピーカ131から出力したりする。また、図40に示すように、例えば、スピーカ131を表示入力部120が設けられた面と同じ面に搭載し、マイクロホン132を筐体102の側面に搭載することができる。
操作部140は、キースイッチなどを用いたハードウェアキーであって、ユーザからの指示を受け付ける。例えば、図40に示すように、操作部140は、スマートフォン101の筐体102の側面に搭載され、指などにより押下されるとスイッチオン状態となり、指を離すとバネなどの復元力によってスイッチオフ状態となる押しボタン式のスイッチである。
記憶部150は、主制御部100の制御プログラムや制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称や電話番号などを対応づけたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータ、及びダウンロードしたコンテンツデータ等を記憶し、またストリーミングデータなどを一時的に記憶する。また、記憶部150は、スマートフォン内蔵の内部記憶部151と着脱自在な外部メモリスロットを有する外部記憶部152とにより構成される。なお、記憶部150を構成する内部記憶部151及び外部記憶部152のそれぞれは、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk
type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card
micro type)、カードタイプのメモリ(例えば、MicroSD(登録商標)メモリ等)、RAM(Random Access Memory)、或いはROM(Read Only Memory)などの格納媒体を用いて実現される。
外部入出力部160は、スマートフォン101に連結される全ての外部機器とのインターフェースの役割を果たし、通信等(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB:Universal Serial Bus)、IEEE1394など)又はネットワーク(例えば、インターネット、無線LAN、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identification)、赤外線通信(Infrared Data Association:IrDA)(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)(登録商標)、ジグビー(ZigBee)(登録商標)など)により他の外部機器に直接的又は間接的に接続する。
スマートフォン101に連結される外部機器としては、例えば、有線/無線ヘッドセット、有線/無線外部充電器、有線/無線データポート、カードソケットを介して接続されるメモリカード(Memory card)やSIM(Subscriber Identity Module Card)/UIM(User Identity Module Card)カード、オーディオ・ビデオI/O(Input/Output)端子を介して接続される外部オーディオ・ビデオ機器、無線接続される外部オーディオ・ビデオ機器、有線/無線接続されるスマートフォン、有線/無線接続されるパーソナルコンピュータ、有線/無線接続されるPDA、及び有線/無線接続されるイヤホンなどがある。外部入出力部160は、このような外部機器から伝送を受けたデータをスマートフォン101の内部の各構成要素に伝達したり、スマートフォン101の内部のデータが外部機器に伝送されたりするように構成されてもよい。
GPS受信部170は、主制御部100の指示に従って、GPS衛星ST1、ST2〜STnから送信されるGPS信号を受信し、受信した複数のGPS信号に基づく測位演算処理を実行し、スマートフォン101の緯度、経度及び高度によって特定される位置を検出する。GPS受信部170は、無線通信部110及び/又は外部入出力部160(例えば、無線LAN(Local Area Network))から位置情報を取得できる場合には、その位置情報を用いて位置を検出することもできる。
モーションセンサ部180は、例えば、3軸の加速度センサなどを備え、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の物理的な動きを検出する。スマートフォン101の物理的な動きを検出することにより、スマートフォン101の動く方向や加速度が検出される。その検出の結果は、主制御部100に出力される。
電源部190は、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の各部に、バッテリ(図示しない)に蓄えられる電力を供給する。
主制御部100は、1つ又は複数のマイクロプロセッサを備え、記憶部150が記憶する制御プログラムや制御データに従って動作し、スマートフォン101の各部を統括して制御する。本例においては、例えば画像生成部32(画像合成部33)、メインコントローラ37、及び画像処理部38の役割を主制御部が果たす。また、主制御部100は、無線通信部110を通じて音声通信及びデータ通信を行うために、通信系の各部を制御する移動通信制御機能と、アプリケーション処理機能とを備える。
アプリケーション処理機能は、記憶部150が記憶するアプリケーションソフトウェアに従って主制御部100が動作することにより実現される。アプリケーション処理機能としては、例えば、外部入出力部160を制御することにより対向機器とデータ通信を行う赤外線通信機能や、電子メールの送受信を行う電子メール機能、及びWebページを閲覧するWebブラウジング機能などがある。
また、主制御部100は、受信データやダウンロードしたストリーミングデータなどの画像データ(静止画像や動画像のデータ)に基づいて、映像を表示入力部120に表示する等の画像処理機能を備える。画像処理機能とは、主制御部100が、上記画像データを復号し、その復号結果に画像処理を施して、その画像処理を経て得られる画像を表示入力部120に表示する機能のことをいう。
さらに、主制御部100は、表示パネル121に対する表示制御と、操作部140や操作パネル122を通じたユーザ操作を検出する操作検出制御とを実行する。
表示制御の実行により、主制御部100は、アプリケーションソフトウェアを起動するためのアイコンや、スクロールバーなどのソフトウェアキーを表示したり、或いは電子メールを作成するためのウィンドウを表示する。なお、スクロールバーとは、表示パネル121の表示領域に収まりきれない大きな画像などについて、画像の表示部分を移動する指示を受け付けるためのソフトウェアキーのことをいう。
また、操作検出制御の実行により、主制御部100は、操作部140を通じたユーザ操作を検出したり、操作パネル122を通じて、上記アイコンに対する操作や、上記ウィンドウの入力欄に対する文字列の入力を受け付けたり、或いは、スクロールバーを通じた表示画像のスクロール要求を受け付ける。
さらに、操作検出制御の実行により主制御部100は、操作パネル122に対する操作位置が、表示パネル121に重なる重畳部分(表示領域)に該当するか、或いはそれ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分(非表示領域)に該当するかを判定し、操作パネル122の感応領域やソフトウェアキーの表示位置を制御するタッチパネル制御機能を備える。
また、主制御部100は、操作パネル122に対するジェスチャ操作を検出し、検出したジェスチャ操作に応じて、予め設定された機能を実行することもできる。ジェスチャ操作とは、従来の単純なタッチ操作ではなく、指などによって軌跡を描いたり、複数の位置を同時に指定したり、或いはこれらを組み合わせて、複数の位置から少なくとも1つについて軌跡を描く操作を意味する。
カメラ部141は、CMOS(Complementary Metal Oxide
Semiconductor)などの撮像素子を用いて電子撮影するデジタルカメラである。また、カメラ部141は、主制御部100の制御により、撮像によって得た画像データを例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)などの圧縮した画像データに変換し、その画像データを記憶部150に記録したり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力したりすることができる。図40に示すようにスマートフォン101において、カメラ部141は表示入力部120と同じ面に搭載されているが、カメラ部141の搭載位置はこれに限らず、表示入力部120が設けられる筐体102の表面ではなく筐体102の背面にカメラ部141が搭載されてもよいし、或いは複数のカメラ部141が筐体102に搭載されてもよい。なお、複数のカメラ部141が搭載されている場合には、撮影に供するカメラ部141を切り替えて単独のカメラ部141によって撮影が行われてもよいし、或いは、複数のカメラ部141を同時に使用して撮影が行われてもよい。
また、カメラ部141はスマートフォン101の各種機能に利用することができる。例えば、カメラ部141で取得した画像が表示パネル121に表示さてもよいし、操作パネル122の操作入力手法の一つとして、カメラ部141で撮影取得される画像が利用さてもよい。また、GPS受信部170が位置を検出する際に、カメラ部141からの画像が参照されて位置が検出されてもよい。さらには、カメラ部141からの画像が参照されて、3軸の加速度センサを用いずに、或いは、3軸の加速度センサと併用して、スマートフォン101のカメラ部141の光軸方向を判断することや、現在の使用環境を判断することもできる。勿論、カメラ部141からの画像をアプリケーションソフトウェア内で利用することもできる。
その他、GPS受信部170により取得された位置情報、マイクロホン132により取得された音声情報(主制御部等により、音声テキスト変換を行ってテキスト情報となっていてもよい)、及びモーションセンサ部180により取得された姿勢情報等などを静止画又は動画の画像データに付加して得られるデータを、記憶部150に記録したり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力したりすることもできる。
なお上述の画像生成部32、画像処理部38、表示コントローラ40及びメインコントローラ37等(図7参照)は、例えば主制御部100によって実現可能である。